男「君は誰?」(24)

男「ねえ、何でこっち見てるの?」

男「…」

男「君だよ君!今僕の事見てるの君だけだろう?」

男「…ねえ、そのガラスみたいなの何?」

男「そこ狭くないの?」

男「…何か答えてくれたっていいじゃないか」

男「…あ、そうか」

男「そのガラスみたいなのが邪魔で聞こえてないのかな?」

男「なら外してあげるよ」

男「ちょっと…なんで逃げるのさ」

男「…もう知らない」





男「…ねえ、なんでついてくるの?」

男「近づこうとしても…逃げるし」

男「…少し怖いんだけど」

男「…」




男「まだついてくるの?」

男「ここが僕の家だよ」

男「まあ…普通の一軒家だよね」

男「むぅ…なにか答えてよ…」

男「ただいまー」

母「おかえりなさい」

男「わっ…まだ居たの?」

母「え?何を言ってるの?」

男「ほら、あそこのガラス越しの人」

母「え?どこに?」

男「そこにいるじゃないか!」

母「…ごめんなさい、私には見えないわ」

男「そ、そんな馬鹿な…」




男「…君は何者なんだい?」

男「何をするでもなく、ずっと見てる…」

男「母さんには見えないみたいだし…」

男「…」

男「あのさ…トイレ行くけど…流石についてこないでよ?」




男「だから…なんでくるのかなぁ…」

男「はずかしいじゃん?」

男「もう…」

男「君の性別がわかれば…また違うんだろうけども、それでもやだよ…」

男「お願いだから出て行ってよ~…」

男「…仕方ない…絶対回り込んでこないでよ?」

チョロロロ



男「ああもう!恥ずかしかった」

男「この変態!スケベ!」

男「野郎のトイレなんて覗いてどうするのさ…」

男「…」

男「いいや、とりあえず勉強するね」



男「まだいるの?」

男「すっかり日も暮れちゃったよ?」

男「…」

ゴハンヨー

男「はーい…」

パタパタパタ

男「いただきまーす」

父「なあ、男」モグモグ

男「なに?」

父「母さんから聞いたんだが…」

男「…ああ」

母「まだ…見えるの?」

男「…うん」

父「今はどの辺だ?」

男「えーと、そこかな」

父「浮いてるのか?」

男「浮いてるって言うか…」

男「うーん」

父「そこに窓があるような感じか?」

男「そうそれ!」

母「あなた…?何か知ってるの?」

父「…ああ、知ってる」

男「本当に!?これはなんなの?!」

父「…男、お前は本を読んだ事があるか?」

男「そりゃあ…」

父「じゃあ、それは読者だ」

男「え?」

男「ど、どう言う事?」

父「あ、映画の方がわかりやすかったかな」

男「え…?」

父「お前が映画を見る時、視点は主人公か?」

男「い、いや…tpだけど…」

父「そう、fpじゃないよな?」

男「…うん」

父「つまり…そこに窓を作って傍観してるわけだ」

男「あ…てことは…」

父「そう、お前には読者が見えてる」

男「僕の人生が…物語ってこと?」

父「そうだ、俺も若い頃あったんだ…」

母「…話についていけないわ」

父「すまんな母さん」

父「あ、丁度いい」

父「母さん、俺たちが付き合いたての頃覚えてるか?」

母さん「ええ、勿論」

父「じゃあ、あの嵐の待ち合わせも…」

母さん「覚えてます」

父「あの時…雨風吹き荒れて揉みくちゃの中で、何故俺が100mも離れた母さんを見つけることができたと思う?」

母「…偶然?」

父「いや、違う」

父「あの待ち合わせの時、普段俺の周りにいる筈だった読者の窓が消えて居たんだ」

父「んで、母さんを探してたら、窓が母さんの所に居てな」

父「そして、見つけることができたんだ」

母「そんな…」

男「今度は僕がついていけないよ」

父「すまんな」

男「良いんだけど…」

母「じゃあ…男は変な病気とかじゃないのね?」

父「ああ、そうだ」

母「ならいいわよ」

母「安心した……」

父「男、その窓にはお前は干渉できない」

父「ものを投げても当たらないし、気にしないのが1番だぞ」

男「う、うん…」

父「それに、時々消えるしな」

男「そっか…」




男「君は読者なのか…」

男「僕はどう見える?」

男「かっこいい?可愛い?」

男「なーんて…」

男「干渉できないんだもんなぁ」

男「ん?てことは、君にとって僕の言葉はメタ発言になるわけだ」

男「なんだか面白いなぁ」

男「でも、僕を見ても何も面白くないよ?」

男「幼馴染も居ないし、成績は中の下」

男「部活もやってないし…」

男「…まさか、なんかしらの事故に遭うとか…」

男「そんなことないよね」




青年「あ!久しぶりだね!」

青年「僕は大学生になったよ」

青年「君は?」

青年「…そうだよねぇ、干渉できないもんね」

青年「相変わらず普通の人生だよ」

青年「…実は居なかった君にとってはほんの数秒だったりしてね」

青年「ふふっ、学校行ってくるよ」



おじさん「おお、またまた久しぶりだね」

おじさん「もう、こんなに歳をとったよ」

おじさん「君はどうだい?」

おじさん「…ふふ、やっぱり干渉できないね」

おじさん「またいつでもおいで」

おじさん「といっても暫らく居るんだろうけど…」

おじさん「君は面白いなぁ」



おじいさん「やあ、何年ぶりだい?」

おじいさん「ワシはもう70になるよ」

おじいさん「そう考えると、君は10歳の頃から年齢がキリ番になるたびやってくるね」

おじいさん「…ダイジェストなのかい?」




おじいさん「…君か」

おじいさん「ワシの人生は面白かったかい?」

おじいさん「そろそろ…終わりそうだけど…」

おじいさん「…ワシは君を殆ど見てないけどね」

おじいさん「どんな人生に感じたのかな…」

おじいさん「ん?ひょっとして…君が意識される…と言う物語だったのかな」

おじいさん「ふふ、なんだか面白いなぁ」

おじいさん「ああ…眠たくなってきたよ」

おじいさん「君が楽しんでくれたなら…幸いさ」

おじいさん「そいじゃ…おやすみ」


end

展開早すぎワロタ


まいどありがとうございます

書き溜め投下終わって休憩がてらの一作でした
ふと、メタって面白いなと思いまして…

乙、

面白い着眼点だった(^o^)

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