二宮飛鳥「空の雲凍って降り注いだ」 (39)


シンシンシンシン……ビュオッ!

346プロダクション事務所:中庭


タブレット「日本全国を襲った寒波は現在……三河湾に……ルの日野茜氏が出国したとの……追って降雪情報をお送……朝のニュー……」


橘ありす「うぅ……くしっ」ズシャズシャ


二宮飛鳥「歩きながら見るのは、褒められたことじゃないね」ズシャズシャ


ありす「朝早く行こうと思ったら、ニュース見そびれちゃったんです……ダメですか?」


飛鳥「善いことさ。誰もが持ってたはずのナニカを、君は持っているんだろうね」


ありす「はぁ。それにつけても、足がとられますね……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419130019


二宮飛鳥(14)

http://imgur.com/AH15LpU.png


橘ありす(12)

http://imgur.com/Plg3Zp4.png



飛鳥「そうだね。こうも積もってなければ、ふっ、晶葉のウサちゃんシャンクで移動が出来るんだけど」


ありす「何です、それ」


飛鳥「セグウェイ……いや、簡易バイクみたいなものだよ。事務所が広いから、移動手段として重宝してるんだ」


飛鳥「少し前までは、カブが使われてたらしいけどね」


ありす「そうですか。……あ、見えてきましたね」


346プロダクション事務所x塔y階:事務室前廊下


ありす「もう皆、来ているんでしょうか」


飛鳥「レッスンルームまでの中継ポイントに丁度いいからといって、この天気だからね」


飛鳥「Pやちひろさん達ならともかく、あまり期待は出来ないね」


ありす「……そうですか」シュン


飛鳥(遊び相手がいないのは、堪えるものがあるのかな)


飛鳥(……人のことは言えないか)


飛鳥「ボクの私物で良ければ、知恵の輪やトランプくらいはあるよ」



ありす「どういうことですか?」


飛鳥「これ以上は、無粋だよ。さて、先に入るといい」ガチャ


ありす「ありがとうございます。……でも、すみません。私が開けるべきところを」


飛鳥「堅苦しいのは、好きじゃ無いね」


飛鳥「善意を受け取ることは、最大限の感謝のひとつなんだ。どうか入って、まず暖を取ってほしい」


ありす「……いつか、倍にしてお返ししますから」


飛鳥「楽しみにしてるよ。じゃあ、どんどんありすに信用を預けないとね」クスッ


ありす「何の話なんです?失礼します……えっ!?」


飛鳥「どうかしたのかい」


ありす「あ、あれ、あれ……!」


346プロダクション事務所x塔y階:事務室


南条光「751、752、753……もうすこしっ、ふぬぬぬぬ……!」プラーン


ありす「ミノムシの光さんが、腹筋してるんです!」


飛鳥「吊るされた男(ハングドマン)の正位置……修行、努力か」


ありす「あんなの身を結ばないというか、見てて辛いです!」


飛鳥「確かに、リンゴのように赤い顔をしてるね。リンゴ可愛や可愛やリンゴ……」


ありす「何の話ですか!?おろしましょうよ」


光「780……781……どぁぁっ782、783、784……!」フゥ、フゥッ


飛鳥「そうだね。事務所と光を繋ぐ、へその緒を絶とうか!」シュルシュルドサッ


ありす「……光さんは?」


光「809、810……」フッ、フッ、


飛鳥「この通り、抱えられながら腹筋してるよ。頭に血がすっかり登り切って、まったく周りが見えてないみたいだ」オットット


光「813、814、815、816……」フッ、フッ、


ありす「どうしましょうか」


飛鳥「とりあえずソファに置いておこう。この調子なら、千回目くらいには元に戻るよ」


ありす「わかるんですか?」


飛鳥「理解るさ。光のセカイにおける絶対不変の定数を覗けたわけでは無いけれど」


飛鳥「例えば犬の次の行動が如く、推測は出来るんだ」


ありす「はぁ。そうですか」


ありす「……いいなぁ」ボソッ


飛鳥「これからのことを考えよう。ありすはPから、どう連絡を受けているんだい?」


ありす「あ、はい。レッスン室に行くなら、一旦休憩室で待機してろって、昨日のメールに」


飛鳥「やはり同じか……光を休憩室に運んだら、一緒に光で遊ぶかい?」


ありす「光さんは、オモチャじゃないです……。寒いから、お茶を淹れて来ますね」


南条光(14)

http://imgur.com/MpOkKvU.png


飛鳥「ふぅん、そう。光の分は、ボクのに合わせておいてくれ」


ありす「わかりました。飛鳥さんだから、コーヒーとか?」


飛鳥「ありすの趣味に任せるよ。緑茶で無ければ、温かい限り何でもね」ファサァ


ありす「じゃあ、任せてください。休憩室で落ちあいましょう」スタスタ


飛鳥「火傷に気をつけてね」


ありす「私だって、そこまでドジじゃないですから」


ガチャ、バタン


光「913、914、915、916……」


飛鳥「……毎度、凄い集中力だね。ボクが眼中にないか」ツンツン


飛鳥「トランプ、何処にしまったかな」ガサガサ


……………………………………………

346プロダクション事務所x塔y階:給湯室

ありす「近いのは嬉しいですね。足場よし、と」ギシギシ


ありす「……ていっ」ピョンッ、パシッ


ありす「……ナイス着地」ドヤァ


ありす「もう少し、せめて5センチくらいは、背が欲しいな……土台があっても、足りないなんて……」ハァ


ありす「でも、私の見立ては、間違ってませんでしたね。インスタントは」


インスタントコーヒー「空っぽですまない」


ありす「……むぅ。Pさんの力を借りますか」スッスッ


ありすsタブレット:SNSアプリ「ありす及びPトークルーム」


<=//[:ALICEさんが入室しました


ALICE:Pさん、おはようございます。今見てますか?


ありす(少し厳しいかな。朝早いし)


ティロンッ

<=//[:頭文字Pさんが入室しました


ありす(やったぁ)ガッツポ


頭文字P:おはよう


頭文字P:どうした


ALICE:給湯室のコーヒーが切れてるんです。私物の紅茶を借りていいですか?


頭文字P:了解


頭文字P:他に切れている物は無いか


ALICE:えっと、ホワイトココアが切れてます。あと、塩が足りないです。

それとは違いますけど、文章がまとまってから送信してください。目に五月蝿いです


頭文字P:了解。連絡ありがとう


<=//[:頭文字Pさんが退室しました


ありす「……もう。そっけなさすぎます」


ありす「でも、これでお茶が淹れられますね……あっ!」


ありす「場所聞くの忘れちゃった……私って、時々こうだから……はぁ」


ありす「冷蔵庫の中とかかな……」バタンッ


ありす「あ、これは……ふふっ、二人とも喜んでくれるかな……」


346プロダクション事務所x塔地下2階:廊下

ガタガタ、ゴトッ、ゴソッ!


モバP「いっ……くしっ。冷え込みすぎるな」


モバP「ありすが来てるってことは、飛鳥と光も来てると考えるべきかな……」ピッ


モバP「塩よし、ココアよし、コーヒーよし。それに、ダンボールと……重っ」ズシッ


モバP「パワーローダー……なんて、大げさ過ぎるか」


ちひろ「あ、Pさんいたいた!おはようございます!」トットットットッ


モバP「おはようございます。どうかなさいました?」


ちひろ「昨日、スケジュール票が更新されたんですよ!それの更新をお願いしたくって」


モバP「それはどうも。ただ、昨日の夜にメール貰ってますよ?」


ちひろ「あれっ?……あ、そうでした!すみません、先走っちゃって!」


モバP「いや、ちひろさんのお陰で忘れずにすみました。今更新します」ピポパポ


Psスマホ「キュッキュッキュピニャア!キュッキュッキュピニャア!」


ちひろ「重そうな荷物ですね……ご愁傷様です。でも、一声かけてくれたら、私が取りましたよ?」


モバP「大丈夫です。急ぎの用は無いですし、備蓄室はもっと冷えますから」


ちひろ「うわぁ、難儀な……。あ、じゃ、お互いお仕事頑張りましょうね!」タッタッタッタッ!


モバP「はい!……って、そんなに急いで、何処へ行くんです?」


ちひろ「愛海ちゃんたちに、除雪車の応援が来たって伝えにですー!」タッタッタッタッタッタッタッタッ!


モバP「……朝っぱらから、元気でいいなー……」


スマホ「更新したよーー!!」


モバP「おあつらえ向きに、よしよし……」


モバP「……おおー。アイドルだけじゃなく、プロデューサーの予定までまとめてあるのか」スッスッ


モバP「ピンチヒッターを頼みやすくなるし、これは便利だ」スッスッ


モバP「CuPは仙台にまゆ……さんと出張。一週間は音信不通なのは、いつものことか」


モバP「PaPさんは茜及びヘレンさんと一緒に……木星?」


モバP「……また俺一人でお留守番か 」


モバP「っていうか、もう何人か回してくれるって話は何処にいったんだろ。……ふわぁ……」トボトボ


チーンッ


モバP「お、サンキューエレベーター」


346プロダクション事務所x塔y階:休憩室


ガチャ

ありす「すみません、コーヒー切れてたので、紅茶にしました……。あの、飛鳥さん?」


飛鳥「白と黒は、絶対に交わらないんだ。フフッ、さみしいね……」ペラッ


光「たとえそうであったとしたって……!アタシは、絶対に降参しないぜ!レイズ!」


ありす「あ、腹筋済ませたんですか」


飛鳥「そうかい。ならば、不粋なコトバは必要無いね……!」


ありす「……あの、飛鳥さん、光さん。返事してください」ブンブン


飛鳥(何があろうと揺るがない。もはや妄執や狂騒の域に達した、真白に煌めく鼓動……光のそれに勝る意思を、ボクは持っているんだろうか)


飛鳥(……あるさ。きっと、絶対に!例えこの指が折れようと……今という時を、生き抜くために!)ドロドロドロドロドロー!


飛鳥(来たね、JOKER(キリフダ)……勝ったッ!)


ありす「光さーん、カバンについてる苺、借りちゃいますよー……?」


飛鳥(これで、フルハウスの条件は全てクリアされた)


飛鳥(しかし……光の手の内が読めない)


光「…………」ズゴゴゴゴ


飛鳥(迂闊だった……光はそもそも、芝居慣れしているんだ。このボクが、プレッシャーされてるとでも言うのか!)


光『その通りだよ、飛鳥!ポーカーは、理想並べて叶うほど甘くないんだ!』ピキィン!


飛鳥(とでも、言いたそうな圧力が……肌にピリついてる!)ピキィンピキィン!


ありす「あのー……お茶があがりましたよ」


飛鳥(退くべきか、進むべきか。それが問題だ……この勝負は捨てて、次に賭けるか?)


飛鳥(……ボクは……イヤだ!)


ありす「ケーキだって、切りましたよ……?」


光「ありすちゃんのケーキ!そっ……それは本当か!?」ガバッ


ありす「私のじゃなくって、Pさんが用意してたものですけどね」


飛鳥「その他所見が、隙になる……フルハウスだ!」バァン!


光「なにっ!?……こっちは、ノーペアだぁぁ!」ガクッ


ありす「威張ることじゃないですよね、それ!?」


飛鳥「ハッタリだけで勝とうとするなんて、なかなか強かだね……うん、楽しいゲームだったよ」


光「レナさんが、そういうものだって教えくれたんだ!それよりケーキ、ケーキ♪」


ありす「急かさなくたって、たくさんあるから大丈夫ですよ」コトッコトッコトッ


ありす「ところで、どうしてポーカーしてたんですか?」


飛鳥「戦いに理由を求めてはいけないよ。いただきます」ゴクッ


光「したいからするんじゃ、ダメかなぁ?いただきまーすっ!」


飛鳥「ン……結構なお点前で」


ありす「ジンジャーとカモミールのミルクティーです。前飲んでみたとき、すごく温かくって 」


光「ありすちゃんって、こんな難しそうなのも作れるんだ……カッコいいな!」


ありす「そんな……。タブレットが詳しいだけです」


飛鳥「ふぅん。なら、そのタブレットを可愛がって、褒めてあげるといいだろうね」


ありす「褒める、ですか?」


光「雨の日も風の日も一緒の……うん、確かに、タブレットはありすちゃんのバディみたいなものだな!」パクパク


ありす「そんなもの、ですか。タブレットがバディ……」


ありす「……ふふ……」テレテレ


飛鳥「光、どうしたんだい?カップが進んでないみたいだけど」


光「バナナとシナモンのケーキを、先に食べてるだけだって」


飛鳥「それにしては、飲み方がスロー過ぎる」


飛鳥「……まさか、ミルクが苦手なのかい?」


光「しょんなっ!?……おほんっ、そんなワケないだろ?」


ありす「……苦手と言ってくれたら、ミルクは抜きましたよ?」シュン……


飛鳥「泣かせた泣かせた。ヒーローが無実のティーンを泣かせた」


光「飛鳥ぁっ!?……うっ、ごめんなさい!でも、アタシはちゃんと飲むよ!」ゴクッゴクッ


飛鳥「苦手なら、辞めたっていいんじゃないかい?」


光「いや、もっと背が欲しいって言うか……」←身長140cm


ありす「……心中お察しします」←141cm


飛鳥「もう一声欲しいとは、まあ確かに思うけどね」←154cm


光「あ、あわれまないでくれーっ!?」


……………………………………………

チーンッ

346プロダクション事務所x塔:y階廊下

モバP「よっこいせっ。……よし、休憩室と給湯室まで、もう少し……っ!」ンションショ


モバP「……あれ、電気が点いてる。使われてるのかな」


346プロダクション事務所x塔y階:給湯室


ピトッ

モバP「……ケトルがまだ暖かい。奴らまだ遠くに行ってませんねデカ長」


モバP「……ココア、ホントに切れてるな。ゴミは回収して、茶葉はゴミに入れて……」ガサガサ


モバP「……あ。紅茶の場所聞いてなかったのに」


モバP「見つけられたってことなら、良かった……あれ」


まな板「クリームまみれだよぉ」


包丁「私、汚れちゃった……」


モバP「……水に浸けておいてあるのはいいが、慌てん坊の橘ありすめ……」


モバP「……洗ったら行くか。ぱっぱと済ませないと」ザーッ!


モバP「……俺の分、残ってるかな」


……………………………………………

346プロダクション事務所x塔y階:休憩室


ありす「そうだ。どうして吊るされてて、おまけに腹筋してたんですか?」


飛鳥「大方、麗奈のイタズラに引っかかったんだろう。光は警戒が薄いからね」


光「バレてたかー……うん、そんな感じ!」


ありす「秘密にすることなんです?」


飛鳥「聞くタイミングには、恵まれていなかったね」クスッ


光「朝イチで来たら、足を取られちゃってさ。いやー不覚不覚」


光「で、降りられなかったし、ついでに腹筋とかしちゃおっかなーって」


ありす「その発想がわかんないです」


飛鳥「特訓好きが、変わらない様で何よりだよ」


光「で、夢中になり過ぎちゃって……気づいたらソファにいて、びっくりしたよ!」


飛鳥「ん、世の中不思議なこともあるものだね」


光「飛鳥が運んでくれたんだろ?本当にありがとねっ」


飛鳥「フ……台車のお陰さ」


ありす「それにしても。一千回も腹筋をしてるんですか?」


光「うん!いつ何時何があっても、臨機応変に動くためには特訓が必要だからな!」シュバババッ


飛鳥「発声に役立つしね。ボクもそのタフさとストイックさを見習いたいものだよ」ピラッ


光「飛鳥っ!?な、何すんの!?」


飛鳥「へぇ、いい鍛え方、という奴なのかな」コンコンコショコショ


光「あははははっ!ちょ、飛鳥、くすぐったぁ……指つめた、くて、んひゃ、んふっ、ん……はぁっ」


ありす「何をやって……そんなに凄い腹筋なんですか?」


飛鳥「タブレットを通さずね。キミの目で、確かめるんだ」


ありす「はぁ。……光さん、失礼しますね」


光「あっ、ちょ、あんま、まり見ないでぇっ、あひゃはひはぁっ!?んっ、んっ……」


ありす(……すごい。しっかり詰まってます。音がよく膨らむわけです)


ありす「……光さん。失礼ついでに、失礼させてください」ツンツン


光「ひ、卑怯だぞっ!?一人に寄ってたかってー!ひゃんッ」こちょこちょ

ガチャッ


モバP「おはよう、俺の分のケーキは残ってるかー……って?」


飛鳥「」


ありす「」


光「」オヘソーオヘソーオヘソー


飛鳥「や、やあ。いい天気だね。晴朗なれど波高しと言うか」アセアセ


ありす「え、えっと、その、これは勉強と言いますか。はい!光さんの腹筋を勉強して、私も鍛え方を学ぼうかなって!」アセアセ


光「……ほれみろぉ」


モバP「……フケツ」ジロッ


ありす「ちちち違うんです!そんな不浄なことはしてないというか!身の潔白は何処までもクリーンだから、つまり弁護士と朝青龍でして!」


飛鳥「何を言っているんだい?それに、まだそこまで慌てる展開じゃあわわないさあわわ」エクステフサファサファッサファサ


光「P!飛鳥とありすちゃんは何も悪くないんだ!ダメってわかってても止められなかった、弱いアタシがいけないんだ!」


飛鳥「油に燃えたぎるダイナマイト投げこまないで欲しいな、光」


モバP「……箱を、事務室に置いて来るから。邪魔をして悪かった。下で待ってる」スタスタ


ありす「違います!チャンスです!汚名挽回、じゃなく返上のチャンスをください!Pさーん!」ダッ


……………………………………………

十数分後

346プロダクション事務所:中庭

ありす「……だから、あれはただの事故で、本当に悪意のあってしたことでも無くてですね。あの、ちゃんと聞いてますか?」シカシカカユウマ


モバP「わかったわかった。直接触れると低温火傷を起こすから、ハンカチに包んで使ってくれ」ワシャワシャポイ


飛鳥「匣の中身は、ホッカイロだったんだね。……さっきはごめんね、光」ホカホカ


光「大丈夫だって!ちょっとくすぐったかったけど、特訓だと思えば何でもないさっ」ビシッ


飛鳥「何の特訓なんだい?」


光「そりゃ、いつ改造手術されてもいいようにとか、第1話で事務所が壊滅しても生き延びられるようにとかさー」


ありす「縁起でもないですよ、それ」


飛鳥「なるほど。備えあればなんとやら、なワケだね」


ありす「それにしても、箱一杯もカイロがあったんですね」


モバP「もしもの時に、例えば帰宅困難者を受け入れたりしたいのだとさ」


光「ふーん……なんか、秘密基地みたいだな!」


ありす「一般に開かれてるし、秘密じゃないと思いますけど」


光「うーん、それはそうだけど……」


光「例えばさ、社食のお蕎麦屋さんからVTOLが飛び立したら、ナイスな展開じゃないか?」


ありす「よくわかんないです」


飛鳥「ふふっ。無いと理解っていても、そういうメルヒェンなのは嫌いになれないね」


光「おおっ!わかってくれるんだな!?こんなに大きいと、地下に色々あるかもって思っちゃうよねっ!?」


飛鳥「非現実的なのに、信じた存在があったのはボクも同じなんだ。ある種のシンパシィ、なのかな……フフ……」ファサァ……


ありす「何て言ってるんですか?」


モバP「いつかわかる。……いや、わかっちゃいけない気がするな」


ありす「そんなことですか……」


ビュオッ!


ありす「うっ、凍みますね……」ゾクッ


モバP「本当にな。……あ、こら!光、先走りすぎるな!」


光「急いだ方がいいんだろ?先を行く、理屈に変わりはないさっ!」ポスポスポスポスッ


飛鳥「放っておいたら、飛ばされそうだね」


モバP「急かしてない!マフラーひとつで、冷えないのか」


ありす「さっきまで運動してたから、あったまってるんです。多分」


モバP「そう。……飛鳥は寒くないのか。ダメージドって、見てるだけでも冷えそうだ」


飛鳥「問題ないよ。動けば暖かくなると証明されたし、人で暖をとる手段もあるからね」トストストストスッ!


モバP「飛鳥まで、走っちゃって!?」


ありす「……何で二人とも、あんなに元気なんですか?私より子どもになっちゃったみたいです」


モバP「雪が珍しいのだろうし、もともと子供っぽい性だと思うが」


モバP「飛鳥なんか、月夜に踊り出して、近所迷惑になったことも何度かあってだな……おーい、二人ともー!転ぶなー!?」


飛鳥「湯たんぽ確保……っと」


光「わわっ。離せー!」ジタバタ


飛鳥「君の赤マフラーは余っているんだ。その分くらいは、分けてもらうよ?」キュッキュッ


光「うー、いいけどさー……髪まで必要なのか?」


飛鳥「無意味に意味を見出してこそが、高等生物のレゾン・デートルだろう?」


光「何それ?」


飛鳥「光はあったかいってことさ」


モバP「きゃつらは、男子小学生のような真似を……ありす、どうした?」


ありす「……別に。二人の裾が濡れちゃったのが、心配なだけです」ムスー


モバP(構ってもらう人がいないと、目に見えてむくれるな……)


モバP「雪降ってるのに、暴れたりするからだな。……ありす、動くな!」ガバッ


ありす「えっ?ーーうわぁっ!?」バサッ


モバP「暴れたら落ちる。前屈みになって、風をいなすんだ」トストストストス!


ありす「お、下ろしてくださ……おろしっ」


飛鳥「やぁ、お疲れ様。二人が隣に立ってくれると言うなら心強いね」


モバP「勝手に先走られちゃ、追うしかないでしょうが。……よいしょっ」


ありす「か、肩車なんて……やめてくださいよ、もう」ゼェハァ


モバP「すまなかった。今度埋め合わせる」


光「いいなあ。視点高くなって、何か見えたりした?」


ありす「それがしがみ付いてるので必死だったから……あ、でも、遠くにビルが見えました」


光「どんなビルだった!?聞かせて聞かせて!」ズイッ


飛鳥「光、今は一連托生なんだ。引っ張らないで欲しいな」グイッ


モバP「少し間違ってないか?」


ありす「あんまり差は無かったです。ただ少しだけ、空が近いだけで」


光「大違いだよ、それ!……そうだ、どうしてPは、ありすちゃんを運んで来たの?」


ありす「私、貨物じゃ無いんですけど」


モバP「飛鳥先輩と光先輩が寒そうだと、可愛い後輩殿心配してたそうでな。マフラーを貸しておやり」


ありす「Pさん?一体何をうぐっ」


モバP(頼む。今の二人の手綱は、俺一人じゃ握りきれそうにない。ありすの助けが、どうしても必要だ)ヒソヒソ


ありす(私の、ですか?)コソコソ


モバP(ありすのだ)


飛鳥「何を話してるんだい?」


ありす「何でもないです。光さん、マフラー減ってますし、共有しませんか?」フフン


モバP(言っちゃいけないだろうが、煽てて育てるものだな……)


光「えっ、大丈夫だよ?アタシの分はあるし、子どもは風の子だから」


飛鳥「善意は素直に受け取るんだ。ほら、今だけがその時だよ」ガシッ


ありす「何から何まで、今日はありがとうございますね。飛鳥さん」キュッキュッ


光「またぁ!?離せー!やめろアスッカー!」


ありす「……これでよし、と。光さん、ペースを守ってくださいね」


光「わかった……でも、ありすちゃんの髪まで巻き込まれてるけど、いいの?」


ありす「いいんです。……えへへ」


モバP(……かなりヤキモチ焼きなんだな……)


飛鳥「P、こういうのに見覚えがあるんだけれど、どうにか言い表してくれないかな」


モバP「じゃあ、お言葉に甘えて。……フキノトウの下に住む……」


ありす 光「ちっちゃくない(です)!140cmはある(ます)!」バァーン!


モバP「……すまん」キーン


飛鳥「……耳元は、シゲキテキ過ぎたかな……」キーン


その後四人はレッスンルームに到着し、暖房をつけてトレーナーたちを待った。

しかし、運悪くも降雪状況は悪化し、トレーナーたちの到着は大いに遅れることとなった。

到着するまでの間、四人は飽きるまで自主練とポーカーを満喫した。

後日「雪山の最終決戦」ごっこをやり過ぎて、こじらせた光と飛鳥の看病のために、Pとありすは奔走するハメになったのだが、それは話の本筋ではない。



おわり


近頃、本当に寒いですね。
本筋に関係しないので割愛しましたが、
二宮飛鳥「メビウスの輪から抜け出せなくて」
橘ありす「波間さすらう難破船のように」
と世界観が共通してます。

PVの346プロって、大学みたいにどでかいですね。

拙い作品に最後まで付き合っていただいて、本当にありがとうございました。



おまけ 嘘次回予告

ありす「新たなアイドルのデビューに驚かされたのに、もっと驚いたのは、961さんと876さんと私たちが共同戦線を張っちゃったことです」


ありす「挙句に、一つのエレベーターに愛さんと茜さんが一緒になれば、菜々さんの香りに圧倒されてしまいます。それは、しまったことでした」


ありす「次回、シンデレラガールズ『千葉から来た者』。見なきゃ何にもわかりません」

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