ヤムチャ「プーアル! プロレス団体に就職したのは失敗だったぞ!」 (816)

居酒屋ーー


ヤムチャ「……ったく、ふざけんじゃねぇよ」

さくら「アハハ、まぁまぁ、ヤムチャさん」

ヤムチャ「プロレス団体に就職したのはいいけど……まさか、こんな事させられるとは思ってなかったなかったぜ……」

さくら「今だけの辛抱っすよ! ホラ、お酒飲んで忘れちゃいましょう! ぱーっと、ぱーっとっ!」

ヤムチャ「本当、酒でも飲まないとやってられないよ……股間蹴られて、笑い者にさせられて……くそっ、ふざけんじゃねぇよ……」

さくら「ほらほら、料理も沢山あるっすよ!? ヤムチャさん、どんどん食べて下さい!」

ヤムチャ「あ~ぁ……プロレス団体に就職したのは、失敗だったかもしれねぇなぁ……」

さくら「そ、そんな事ないっすよ……! ヤムチャさんは、才能ありますって、絶対!」

ヤムチャ「そういやさぁ……今日、おじいちゃんどうしたの……? おじいちゃん……」

さくら「……おじいちゃん?」

ヤムチャ「ほら、いつも試合実況してる所にいる人だよ。 あの髭のおじいちゃん」

さくら「あ~、元さんの事っすね!」

ヤムチャ「今日、あのおじいちゃんじゃなくて違う人が解説してたけど……おじいちゃん、病気とかになったの?」

さくら「元さんは、元気っすよ! 今頃、サガットさん達の試合を実況してると思うっす!」

ヤムチャ「あれ、 おじいちゃん、来てるんだ……? だったら、なんで違う人があそこにいたんだろ……? 遅刻でもしたのかな?」

さくら「……元さんの解説は、第四試合からっす」

ヤムチャ「……ん?」

さくら「……やっぱり、第四試合ぐらいにならないと、お客さんは少ないじゃないっすか?」

ヤムチャ「そうだね……今日の試合は、全然お客さんがいなかったよ……」

さくら「そういうお客さんの多い試合じゃないと……元さんの解説はないっす……お客さんの少ない試合で、元さんみたいな冷静な解説だったら、逆に盛り下がっちゃいますからね……」

ヤムチャ「ふ~ん……」

さくら「……第三試合までは、うちの選手が解説を務める事になってるっす」

ヤムチャ「……選手がするんだ? なんで、まだ?」

さくら「ほら、サガットさんとか、リュウさんとか、試合が終わった後によくマイクアピールしてるじゃないっすか?」

ヤムチャ「あ~、よく大声で何か言ってるねぇ?」

さくら「いくらマイクアピールだからって、何を言ってもいいってワケじゃないっすよ……やっぱりマイクアピールでも……より、お客さんを盛り上げる為の言葉選びが必要になってくるっす……」

ヤムチャ「……ふ~ん」

さくら「解説で、そういったお喋りの練習をしている……って、所じゃないっすかね……」

ヤムチャ「……お喋りの練習?」

さくら「実況の人も、戦いを真面目に実況したりせずに……ちょっと、面白可笑しく実況しようとしてるっす……ふざけた事を言ったり、ゲスト解説の話題を振ったり……」

ヤムチャ「……そういや、和気藹々とお喋りしてたなぁ。実況すら、真面目にしてもらえねぇのか、この位置は」

さくら「試合の流れと、そういった話題……そういうのを、上手く両立させて、解説してるっす……実況の人の無茶振りに上手く、言葉を選んで解説して……そういった事をしながら、マイクアピールの勉強をしてるっすよ……」

ヤムチャ「……って事は、俺の試合も、そういう風に面白可笑しく解説されてたって事ね?」

さくら「……そうっす」

ヤムチャ「くそっ、何言われてんだろな……どうせ、色々とバカにされてるんだろうな……」

さくら「……そうかもしれないっす。第二試合は、笑いを取りにいく試合っすからね」

ヤムチャ「なんだよなんだよ……すっかり、環境が変わっちまったなぁ……ふざけんじゃねぇぞ……?」

さくら「それは、自分も一緒っすよ……ヤムチャさん、頑張りましょうよ……」

ヤムチャ「……ん?」

さくら「女子部も基本的に第三試合だから……やっぱり、ゲスト解説のお喋りの練習と、面白可笑しい実況に使われる位置っす……」

ヤムチャ「さくらちゃんも、か……」

さくら「ジミーさんなんかは、そういった面白可笑しい実況をしてもらう為に……試合中、面白可笑しい行動をしてるっすけど……」

ヤムチャ「……あの人、今日は大暴れだったよ」

さくら「女子部は、試合自体は真剣にやってるっすよ……そういった面白可笑しい行動をしてるワケじゃないっす……なのに、無理矢理面白可笑しい実況をされてるっす……」

ヤムチャ「無理矢理……って、どんな事言われてるの……?」

さくら「エロトークが多いっすよ……女子部の誰が一番おっぱいが大きいか……とか、もっと露出のあるコスチュームにするべきだ……とか……」

ヤムチャ「おっぱい……ねぇ……?」マジマジ

さくら「……何処、見てるっすか?」

ヤムチャ「あっ、いやっ……! そういう、いやらしい意味で見たんじゃなくて……話の流れで、つい……ね……?」

さくら「……エッチ」

ヤムチャ「い、いやっ……! だから、違うって……! あっ、さくらちゃん、グラス空だよ……俺が、注いであげるよ……!」

さくら「……春麗さんは、その事にかなり苛立ってたっすよ」

ヤムチャ「……春麗さん?」

さくら「春麗さんの得意技は、蹴りなんっすが……春麗さんが蹴りを繰り出す度に『私もあの足で蹴られたいっ!』なんて、実況の人が言ってるんすよ……?」

ヤムチャ「……完全にセクハラじゃねぇか、ソレ」

さくら「それで、気合入れて臨んだ結果が、アレっすよ……現状を変えるどころか……状況は悪化してしまったっす……」

ヤムチャ「……」

さくら「ヤムチャさんも、今現状の位置が出来ないのは、わかるっすけど……焦って行動しても、女子部と同じ結果になってしまうような気がするっす……」

ヤムチャ(そうか……春麗さんも俺と同じように、焦ってたのか……)

さくら「やっぱり、地道にやっていく事が近道だと思うっすよ……?」

ヤムチャ(最初は、春麗さん冷たそうな人だと思ったけど……そりゃそうだよな……いきなり、自分よりいい位置で試合が出来る奴が入団してきたんだからなぁ……気に食わないのも当然か……)

ヤムチャ「……俺、さくらちゃんの言う通りだよ。スーパールーキーだよ」

さくら「……えっ?」

ヤムチャ「だって、いきなりさくらちゃんとか春麗さんの位置抜いて、第五試合スタートでしょ? いきなり、いい位置で出来てるんだもん。プロレス未経験の俺がさぁ」

さくら「い、いやっ……! そういう意味で言ったワケじゃ……」

ヤムチャ「今までの試合は……サガットさん達に助けられて、なんとかやれてただけなんだよ……俺のプロレスラーとしての実力じゃなかったって事だ……」

さくら「……」

ヤムチャ「試合をこなして、メッキが剥がれてきた姿がコレなんだよ……俺は第五試合の器じゃなかった……俺には、第二試合がお似合いだったってワケだよ……もう、特別扱いは終わりだ……」

さくら「そんな事、ないっすよ! ヤムチャさんは、空手軍団なんだから、実力をつければ、また第五試合に戻れるっす!」

ヤムチャ「うん、俺もその位置でやりたい……ブランカさんみたいなふざけた人相手じゃなくて……やっぱり、サガットさん達と真剣な戦いをして……お客さんの声援を貰いたい……」

ヤムチャ「でも、そこに戻るには……試合をリードする能力が必要か……くそっ、道のりは長ぇな……」

さくら「焦っちゃダメっすよ。ゆっくり行きましょう! ゆっくり!」

ヤムチャ「でもさぁ……? あまり、悠長にしてたら、俺空手軍団脱退って事にならない?」

さくら「……えっ?」

ヤムチャ「だって、俺の上にはナッシュさんとか、ユンさんとか……それに、ソドムさんとかいるんでしょ?」

さくら「ま、まぁ……」

ヤムチャ「その人達が、人気レスラーになっちゃったら……俺の代わりに空手軍団に入っちゃうって事に、ならない?」

さくら「まぁ、可能性としては……なきにしもあらず……って所っすかね……?」

ヤムチャ「やべぇじゃん! マジで、俺やべぇじゃん! マジで5試合でなんとかしないと……俺、ここまま第二試合で股間蹴られ要員になっちまうんじゃねぇの!?」

さくら「ヤムチャさん、焦ってもいい事はないっすよ! 女子部みたいになりたいんっすか!?」

ヤムチャ「……ま、まぁ、それはそうだけど」


プーアル「……でも、危機感を持つのはいい事ですね。今までのヤムチャ様に足りなかったのは、ソコですよ。ソコ」

ヤムチャ「そうだよな、プーアル!? 結構、やべぇよなぁ、俺!」

サガット「ヤムチャ君、いるかっ!?」

バルログ「反省会の時間ですよ!」

バイソン「お酒を飲もう! お酒を!」


ヤムチャ「あっ、サガットさんにバルログさん……それにバイソンさん……そんなに慌てて、どうしたんですか……?」


サガット「おぉ、良かった……ヤムチャ君がいて安心したよ……」

バルログ「も~う、バイソン、脅かさないで下さいよ……? ヤムチャ君が辞めるかもしれないって……穏やかに、飲んでるじゃないですか……」

バイソン「い、いやぁ……試合が終わった後のヤムチャ君の顔が険しかったからな……ま、まぁ、取り越し苦労で良かったじゃねぇか!」


ヤムチャ「皆さん、試合はもう終わったんですか?」

サガット「あぁ、今終わった所だよ……バイソンがバカな事を言い出したから……慌てて駆けつけたんだが……まぁ、要らぬ心配だったようだな……」

バイソン「そんなに責めないでもいいじゃねぇか……? まぁ、とりあえず、俺達も飲もうぜ!」

バルログ「ちょっと今日のメインイベントは興味ありましたけどね。ザンギエフさん対豪鬼さんですから……まぁ、でもここまで来たんです。飲みましょう」

サガット「……ヤムチャ君、どう言葉をかけていいかわからんが、俺は今日のヤムチャ君の試合はいい試合だったと思うぞ?」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「ただ、教えられたコブラツイストをかけるだけではなく……その前に、一つワンクッション置いた行動していたよな……? あれは、良かった。こちらも教えがいがあるよ」

ヤムチャ「あっ、ありがとうございます……」

サガット「それに、ラストのバックドロップも良かったぞ? 試合中、コツでも掴んだか?」

ヤムチャ「……えっ? あのバックドロップ、出来てたんですか?」

サガット「あぁ、実況もしっかり『バックドロップを仕掛けた』と言っていたぞ? あぁいったフォームのバックドロップが理想だな」

ヤムチャ「そこまでは聞いてませんでしたね……バックドロップ、モノに出来たのか。実感ねぇけどなぁ……」

ヤムチャ「それより、サガットさん!」

サガット「……どうした?」

ヤムチャ「俺、やべぇんすよ! ブランカさんにしばらく、第二試合で続けろって言われたんすよ!」

さくら「だから、ヤムチャさん……焦ってもいい事はないっすってば……」

ヤムチャ「サガットさん達の所に戻るには、試合をリードする能力が必要……って、言われたんっすけど、そういう能力って、どうやって身につけるんすかねぇ!?」

サガット「……ぬ?」

ヤムチャ「このままじゃ、俺、マジで空手軍団脱退って事にならないっすかねぇ!? 反省会しましょうよ、反省会! 俺、結構危機感感じてるんっすよ、今!」


プーアル「ううぅ……こんなに勉強熱心なヤムチャ様が見れるなんて……とりあえず、バルログさん、バイソンさん……ビール注ぎますね……?」

バルログ「プーアル君はいつも気が効きますね。ありがとうございます」

バイソン「おぅ! プーアル君、ありがとな!」


ヤムチャ「プーアル、ビール注いでるんじゃねぇ! お前も反省会に付き合え!」

サガット「まぁ、危機感を持ってやるのは、いい事だが……プーアル君、悪いが俺にもビールを注いでくれ……」

プーアル「ハイ、サガットさん、今注ぎますね……」

サガット「うむ、ありがとう。プーアル君はいつも気が効くな……」


ヤムチャ「いやいや、ビールはいいから、反省会しましょうよ、反省会!」


サガット「ヤムチャ君、試合をリードする能力……だったよな……? 一つ、聞きたいんだが……」

ヤムチャ「……ん?」

サガット「……自覚はないのか?」

ヤムチャ「えっ……? どういう事ですか……?」

サガット「その様子だったら、自覚はないようだな……では、そこから話すとするか……」

今日はここまで

頑張ってるヤムチャの姿を見ようとZ戦士達が試合会場にやって来て、プロレスのルールを知らない悟空とベジータが押され気味のヤムチャを本気で応援する事でヤムチャが自信を取り戻す・・・
みたいなイベントを挟んで欲しいなぁ。
ストファイキャラを使う事でプロレスのルールやノウハウを読者に理解させる事には成功してると思うから、あとはもう少しドラゴンボールらしい一面も見せて欲しいと思うんだわ。
偉そうな長文でごめん。

サガット「今日の試合……初めにヤムチャ君が行動を仕掛け、次にブランカさんがお客さんを笑わせる為の行動をして……最後にヤムチャ君が、攻撃を仕掛けて勝っただろう?」

ヤムチャ「えぇ、そうですね」

サガット「俺は最初にヤムチャ君が、攻撃を仕掛けてるのを見て、練習の成果を見せる為に頑張ってるんだな……と、感じたよ」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「試合後半で延髄斬りを仕掛ける為に、ブランカさんに足をとってもらい……コブラツイストを試合で披露する為に、その前にワンクッション置いた行動をしていたな? ヤムチャ君は、頑張ってると思ったよ」

ヤムチャ「そうですね。そこまでは、結構計算通りでした」

サガット「そして、次にブランカさんの反撃だ……と、言っても笑わせる行動だがな……ブランカさんは、犬の真似やゴリラの真似なんかをしていたな……?」

ヤムチャ「そうっすよ……お笑いショーの始まりっすよ……ここから、試合じゃなくなったんですよ……」

サガット「……まぁ、ヤムチャ君の言う通り、お笑いショーかもしれないな。お客さんは、そういった目で試合を見る」

ヤムチャ「……でしょ?」

サガット「……だが、俺達は違う」

ヤムチャ「……ん?」

サガット「俺達は同業者なんだ。そういった場合でも……俺達はヤムチャ君の事をプロレスラーとして見続ける。 俺達は、面白可笑しい試合内容でも、ヤムチャ君がプロレスラーとして、正しい行動が出来ているか……なんて、真面目に試合を見ているさ」

サガット「具体的に言うと、ヤムチャ君がジミーさんの行動を邪魔しない為の行動が、しっかりと出来ているかだな」

ヤムチャ「行動を邪魔しない為の行動……? なんか、また難しそうな言葉が出てきましたね……?」

サガット「言葉にすると難しいが、実際はそうでもない。ヤムチャ君は、ジミーさんが動きやすいように、やられた振りやダメージを受けた振りを続けていてくれただろう? それだよ」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「ヤムチャ君が動き始めると、ジミーさんは戦う事になってしまい、笑わせる為の行動が出来なくなるからな……ヤムチャ君は、笑わせる行動が終わった瞬間に、上手く行動を起こさないといけない……」

ヤムチャ「そうっすね……そう、言われましたし……」

サガット「動かない……と言っても、ただリングで寝ているだけじゃダメだ……腕にダメージを食らっているなら、腕を抑えながら寝ていたり……足にダメージを食らっているなら、足を抑えながら寝ていたりする必要があるな?」

ヤムチャ「……そうっすね。ダメージ食らってるんですもんね」

サガット「ジミーさんが犬の真似をしている時……俺はジミーさんではなく、ヤムチャ君を見ていたよ。噛み付かれて、顔を抑えているヤムチャ君が、どのタイミングで、顔から手を離し……どのタイミングで、起き上がり……」

ヤムチャ「……あらら、そんな所見てたんですか」

サガット「そして、どのタイミングでジミーさんに攻撃を仕掛けて、試合を作り直したかをな?」

ヤムチャ「……ほ~う」

サガット「やられ方も、起き上がるタイミングも、ジミーさんに再び攻撃を仕掛けるタイミングも……なかなか、良かったと思うぞ? きっと、ザンギエフさんもそこは見ていると思う」

ヤムチャ「マジっすか!? やったじゃん、俺!」

バルログ「ヤムチャ君、水を差すようで悪いんですが……」

ヤムチャ「……ん?」

バルログ「……今日の試合、ケン君は怒ってましたよ?」

ヤムチャ「えっ、 ケンさんが……!? なんで、また……!?」

バルログ「ケン君からの伝言です……『おめぇ、不意打ちしねぇんじゃなかったのか、コラ。側頭部、背後から蹴ってんじゃねぇよ』だ、そうです……」

ヤムチャ「えっ……? 俺、そんな事したっけなぁ……?」

バルログ「ほら、ジミーさんが犬の真似した後の……ヤムチャ君の一撃の事じゃないですかねぇ……? あれ、確か背後からの攻撃じゃありませんでしたっけ……?」

ヤムチャ「え~っと……あっ……! そういえば、俺、背後から攻撃したような……」

バイソン「でもよぉ? あれは、アリなんじゃねぇの? あれくらいで、色々言われてたらやってられねぇぜ」

バルログ「まぁ、私もそう思うんですけどね。でも、ケン君からは、自分で言い出した事ぐらいしっかり守れと伝えるようにと言われました。とりあえず、伝えておきます」

ヤムチャ「うわぁ、ケンさんも細かい所を見てるなぁ……やっちまったなぁ、怒られるんじゃねぇの、コレ……?」


サガット(ケンは早く戻って来いと怒っていたが……まぁ、あまりプレッシャーを与えるのもよくないだろう……今は、黙っておくか……)

ヤムチャ「……あれ? サガットさん、どうしたんですか?」

サガット「おっと、すまない……話を進めようか……」

サガット「ジミーさんの笑わせる行動が一通り終わったら、再びヤムチャ君が攻撃を仕掛けたよな……? 今日の試合は、ヤムチャ君の勝利なんだから、攻撃をする必要がある……具体的に言うと、急所攻撃を受けた後だ」

ヤムチャ「はい」

サガット「ヤムチャ君に、自覚はないようだが……俺は、そこでヤムチャ君は試合をリードしようとしているんじゃないか、と思ったよ」

ヤムチャ「……えっ、どういう事っすか?」

サガット「試合の決着時間は10分だったが……あの時、試合時間はもう10分近くなっていただろう?」

ヤムチャ「……そうっすね」

サガット「お客さんは知らないだろうが、俺達は知っている。俺は、試合時間が伸びるんじゃないかと思ってヤムチャ君の試合を見ていたよ。試合時間が伸びると、後ろに控えてる人間の試合時間を削ってしまう事になるかもしれないからな……」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「残り、1分や2分の攻防で……急速に試合を終わらせなければいけない……だが、そこに不自然な行動があってはいけない……」

ヤムチャ「……自然な流れで終わらせなければいけないですよね」

サガット「もう一度、確認するぞ? 本当に自覚はなかったのか? あれは、偶然の産物なのか?」

ヤムチャ「う~ん、まぁ、試合を終わらせなきゃ……とは思ってましたけど……試合をリードする……って事までは……」

サガット「俺は、ヤムチャ君が試合終了時間に間に合わせる為に……自分がリードして試合を作り始めたんじゃないか、なんて思ったんだけどな……」

ヤムチャ「……あそこは、俺がリード出来てたんですかねぇ?」

サガット「ほら、練習した足を取られてからの延髄斬りも打たなかったろ?」

ヤムチャ「あっ、そういやアレ、出すタイミングなかったんですよ!」

サガット「俺は、蹴りを打って……足を取られて……そしてそこから、延髄斬り……なんて攻防をしてたら、試合終了時間に間に合わなくなってしまうとヤムチャ君が判断したと思ったよ」

ヤムチャ「まぁ、ちょっとは思った部分もありますが……」

サガット「序盤に足を取られて、終盤でもう一度打つチャンスを作ったのに、時間の都合で出すタイミングを作れなかった……だが、練習の成果は見せたい……」

ヤムチャ「……」

サガット「ヤムチャ君が、足を取られていない状況で延髄斬りを繰り出した時……俺はそう思ったよ」

ヤムチャ「う~ん……」

サガット「そして、バックドロップ……トラースキック……狼牙風風拳は使わなかったが、自分の必殺技をフルに使って仕留めに行っただろ?」

ヤムチャ「一応、技は全部出してやろうとは思いましたね……」

サガット「残り、1分や2分の攻防で……自分の出していない必殺技を全て使い、自然な流れで相手を仕留めに行く……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「今日の試合は、完全にブランカさんが流れを作っていた試合だったが……ラストの攻防……あの部分だけ切り取って見ると、あれは完全にヤムチャ君が試合を作っていたぞ?」

ヤムチャ「マ、マジっすか……!?」

サガット「ヤムチャ君が計算していないと、いうのならば……どう説明すればいいかな……」

ヤムチャ(実は、試合を早く終わらせたいと投げ出しかけただけなんだけど……なんか、評価されてるぞ……? こりゃ、儲け物だな……)

プーアル「……ヤムチャ様、何か変な事考えてません?」

ヤムチャ「えっ……!? い、いやっ……変な事なんて、何も考えてないぜ……? 失礼だな、プーアル君は、ワハハハ……!」

プーアル「……なぁ~んか、怪しいですね」

サガット「……まぁ、あんな感じで自己主張してくれれば、きっと試合をリードする事も出来るようになるだろう」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「ヤムチャ君は、優しい。俺達と戦う時も、俺達に行動出来る選択肢をいくつも残した上で、行動してくれている」

ヤムチャ「はぁ……」

サガット「三つも四つも、反撃の手段を残しておいてくれなくても、一つあればいいんだよ。そうすれば、相手は状況にあった技をスッと出して、反撃してくれるからな」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「相手の行動を完全に制限してはいけない……だが、その事によって、自分の行動が制限されてしまっては、元も子もない」

ヤムチャ「ほう」

サガット「自分のやりたい事を好きにやって……相手に、少しだけ行動の余地を残しておいてやる……それくらい、自分勝手にしてみてもいいんじゃないかな?」

ヤムチャ「あれくらい、強引に責めちゃってもいいんですね……」

サガット「チキンレースみたいな物だ。相手の行動の余地を残さず、自分勝手に行動するのが、崖から落ちる事だとすれば……今のヤムチャ君はかなり手前でブレーキをかけているな」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「ギリギリのラインを責めるんだ。ギリギリのラインをな」

ダン「おぉ~い! ヤムチャ~、いるか~!?」


ヤムチャ「あっ、ダンさん……お疲れ様っす……」

プーアル「お疲れ様です!」


ダン「姉ちゃん、とりあえず、俺は焼酎ね……なぁ、ヤムチャ……?」

ヤムチャ「……どうしたんですか?」

ダン「おめぇ、折角らしくなってきたってのによぉ……? ここで辞めるのは、ちょっと勿体無さすぎるんじゃねぇか……?」

ヤムチャ「……えっ?」


サガット「……何っ!?」

バルログ「ヤムチャ君、やっぱり辞めるつもりで……!?」

バイソン「ホラ、俺の言った通りじゃん! やっぱり、俺の勘は鋭かったんだ! ……って、そうじゃねぇ!」

ダン「これくらいの経験、皆してるんだよ……ここはおめぇの踏ん張り所なんだからよぉ……?」

ヤムチャ「いや……あの、ダンさん……? 俺は、別に……」

ダン「バイソンだって、何年も第二試合でやってたんだぞ……? 毎日毎日、ケツ蹴られてやがったよ……」

バイソン「ヤムチャ君! ここで諦めるんじゃねぇよ、折角らしくなってきたってのに!」

ヤムチャ「いやいや、バイソンさん……俺はですねぇ……」

ダン「サガットだって、下積み時代は長いんだ……こいつはずーっと、第一試合でやってたよ。今日の試合より、お客さんいないんだぞ?」

サガット「ヤムチャ君! ヤムチャ君なら、必ずすぐにここに戻ってこれる! だから、もう少し頑張るんだ!」

ヤムチャ「あっ、大丈夫っす……大丈夫っすから、サガットさん……」

ダン「バルログは……確か、メキシコの方で、第二試合だったよな……? 言語の壁がある場所の第二試合なんて……おめぇよりもっとハードだよ」

バルログ「ヤムチャ君、我々が必ず力になってみせます! だから、もう少しだけ頑張って下さいっ!」

ヤムチャ「いやいやいや……だから……だから……」

ダン「……なぁ、ヤムチャ? 辞めんじゃねぇよ。今日の試合、俺は良かったと思うぜ?」

ヤムチャ「と、とりあえず皆さん、落ち着きましょう……そんなにいっぺんに言われても……」


バイソン「第二試合のコツなら俺が教える! だから、ここで踏ん張るんだ!」

バルログ「まだ、ヤムチャ君はいい所を見せていないんです! これからです!」

サガット「ヤムチャ君……俺が必ず、ヤムチャ君を一人前のレスラーにしてみせる! だから、今は信じてついてきてくれ!」

ダン「おめぇには、絶対才能あるって! レフェリー十年やってる俺が言うんだから、間違いねぇって!」


ヤムチャ「いやいや……だから……だから……」


バイソン「ヤムチャ君!」

バルログ「ヤムチャ君!」

サガット「ヤムチャ!」

ダン「おい、ヤムチャ!」

さくら「……うるさあぁぁぁい!」


バイソン「!」

バルログ「!」

サガット「!」

ダン「お、おう……どうしたんだよ、さくら……いきなり大声出しやがって、びっくりするじゃねぇか……」


さくら「皆して、ヤムチャさんが辞める辞めるって……バカみたいっすよ……」

ダン「いや、なんかジミーと喧嘩してたって聞いたからよぉ……?」

さくら「ヤムチャさんは、こんな事ぐらいで辞めたりしないっすよ……ねっ……?」ニコッ

ヤムチャ「お、おう……」

ダン「あれ……? なんか試合終わった後険しい顔してたような気がするんだけどな……?」

バイソン「あっ、俺もそう思ったんっすよ!」

さくら「そんなの、ダンさんとバイソンさんの勘違いに決まってるっす。ヤムチャさんは、ここで辞めるような、ヤワな人じゃないっすよ! ねっ?」

ヤムチャ「お、おう……辞めない……頑張って……プロレス、続けます……」

今日はここまで

>>25
DBメンバーで今現在、ヤムチャがプロレスやってる事を知っているのは三人
がっつり絡ませるのはもう少し先の事になると思う

DBの世界から離れていってるのはわかってるけど、必ず何処かでまたDBの世界と交わらせる展開にするから
ストーリーが進むの遅くて、そこまで持っていくのにちょっと時間がかかってる状態。そこはごめん
まぁ、気長にお付き合い下せぇ

ダン「なぁ~んだ、心配して損してたじゃねぇか……ジミーと口論してたって聞いたから、わざわざ飛んできてやったってのによぉ……」

ヤムチャ「あっ、そうだ……俺、ブランカさんと揉めたんだったなぁ……」

ダン「……なんだぁ? 口論してたってのは、本当なのか?」

ヤムチャ「まぁ、ちょっと色々とありましてね……? 明日、ちゃんと謝らないとなぁ……許してもらえるかなぁ……?」

プーアル「大丈夫ですよ、ヤムチャ様! 僕も一緒に謝りますから!」

ダン「……ジミーはよぉ? そういうのは、あまり気にしねぇ奴だから大丈夫だと思うぜ?」

ヤムチャ「……そうなんすか?」

ダン「あいつは、そういう事には鈍感って言うか……図太ぇ奴だからよぉ? 何事もなかったかのように、しれーっとやっておけばいいよ。おめぇが下手な事言って、また口論になっちまう方が心配だよ」

ヤムチャ「まぁ、でも……やっぱり、謝っておかなきゃ……しばらく、俺の教育係りになるらしいですし……」

ダン「わかった、わかった! だったら、俺が話つけておいてやるよ! 俺はジミーと仲良いからな。俺からジミーの方におめぇが詫び入れたがってた事、言っておいてやるよ」

ヤムチャ「……ダンさんが?」

ダン「……おめぇは、余計な事を考えずに、プロレスに集中しなさい。 今は、人間関係より、第五試合に戻る事が優先だろうが。俺も、おめぇがいねぇ第五試合はちっと寂しいよ」

ヤムチャ「……わかりました」

ダン「おらっ、そんなしみったれた顔してねぇで飲め、飲め! 明日も試合はあるんだ! 気ィ、抜いてるんじゃねぇぞ、ヤムチャ!」

ヤムチャ「うっす」

翌日ーーー


ヤムチャ「……なんで、俺、ここで皆さんと一緒にストレッチしてるんですかねぇ?」ググッ

バイソン「フンっ……! そりゃ、ヤムチャ君が……フンっ……! 俺達と試合をする可能性があるからだろうが……フンっ……フンっ……!」グイグイ

バルログ「ヤムチャ君は、まだ空手軍団の一員ですからね。シングルでは、第二試合でしょうが……リュウ君や、ケン君と一緒なら、私達シャドルーと戦う事になるでしょう……」

ヤムチャ「そうか……一対一じゃなければ、まだ第五試合で出来るのか……でも、一対一でやらないと、試合をリードする能力ってつかないんじゃないですかねぇ……?」

サガット「意識するだけで、何かは変わるだろう……複数の試合でも、自分が中心となって試合を動かしていく事を考えるんだ……」

ヤムチャ「う~ん……まぁ、どうせ覚えなきゃいけない事なんだろうけど……やっぱり、どうせだったら第二試合より、第五試合でやりてぇなぁ……」


プーアル「皆さ~ん! ザンギエフさんから、今日の予定試合表貰って来ましたよ~!」

サガット「おっ、プーアル君、いつもいつも本当にありがとう。助かるよ」

ヤムチャ「頼むっ……! 何かの手違いでもいい……! 第五試合でやらせてくれ……俺、頑張るから!」

本日の予定試合



第一試合(10分決着)
×コーディ ー ガイ ◯

第二試合(10分決着)
×ダルシム ー ヤムチャ◯

第三試合(15分決着)
◯さくら ー かりん×

第四試合(20分決着)
ガイル ー ヤン
◯ナッシュ ユン×

第五試合(20分決着)
ケン ー バルログ×
◯リュウ ベガ

第六試合(30分決着)
×サガット ー ザンギエフ◯

ヤムチャ「だ~めだ……やっぱり第二試合だったよ、ちくしょう……」

プーアル「まぁまぁ、ヤムチャ様……場所は違っても、やる事は同じですよ……頑張りましょう……」

ヤムチャ「この試合表見た時点で、今日のモチベーションが決まるんだけど、いきなり出鼻を挫かれた気分だぜ、おい……」

バルログ「まぁまぁ、ヤムチャ君……ダルシムさん相手だったら、ジミーさんみたいな変な試合にはなりませんから……今日は、普通の試合ですよ、きっと」

バイソン「それに、今日はヤムチャ君の勝ちじゃねぇか! どうせだったら、これを機会に格好いい勝ち方なんかを作っちまえばいいんじゃねぇか? どうせ、いつかは俺に勝つ時が来るんだし」

ヤムチャ「そうっすね……まぁ、今は試合をリードする能力を身につけなきゃならないんだし……これも、勉強っすね……」

プーアル「そうですよ、ヤムチャ様! 頑張って下さい!」

ヤムチャ「よし、じゃあダルシムさんと打ち合わせの前に……他の人達の試合もチェックしておくか……んっ……?」

サガット「……」

ヤムチャ「う、うおっ……! サガットさん、第六試合……メインイベントになってるじゃないですか!?」

ヤムチャ「これって、サガットさんの力が認められて、第五試合から第六試合にいけたって事ですよねぇ!? うわっ、いいなぁ」

プーアル「……ヤムチャ様は、人の事より自分の事です」

ヤムチャ「いやぁ、そりゃわかってるけどさぁ……? だって、こっちは第二試合になったてのに……サガットさんは、第六試合だぜ? やっぱり、羨ましいもんあるよ……」

サガット「……俺は、そこまでいい扱いじゃないさ」

ヤムチャ「……ん?」

サガット「おそらく、メインイベントに使える人間がいなくて……消去法で選ばれただけだろう……まぁ、それでも仕事はするがな……」

プーアル「消去法って……どういう事ですか……?」

サガット「ほら、最近リュウが負け続きだっただろう? 俺に負けて……ベガさんに負けて……豪鬼さんに負けて……」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「このままじゃ、リュウが弱いと思われてしまうからな……ここらで、リュウにも勝っておいてもらわなければ困る……昨日は俺から勝ち……今日は、負け役はバルログだが、ベガさんから勝つ事になっている……」

ヤムチャ「……あっ、そうっすね。ベガさん達から勝ってますね。これは、バルログさんが足を引っ張るって感じの試合になるんですか?」

バルログ「まぁ、そんな感じでしょう。その中で、リュウ君とベガ様の一対一でも、ベガ様に勝てたんじゃないか……? なんて、お客さん思って貰えるような試合を作る事が、今日の私の課題ですね」

ヤムチャ「うわぁ、試合をリードするなんてもんじゃねぇ……難しい事してますねぇ、バルログさん……」

バルログ「ヤムチャ君も、そのうち出来るようになりますよ。だから、頑張りましょう」

サガット「まぁ、そんな感じで他にメインイベントに使える人間が俺以外、いなかっただけだろう……力を認められて、第六試合になったわけではない……」

ヤムチャ「……」

サガット「まぁ、恐らくバイソンをセコンドに引き連れて……荒らしまわってくれ……なんて事だろうな……実質、俺とバイソン対ザンギエフさんの二対一だ……」

バイソン「俺がベガ様のセコンドについたら、リュウの試合の戦力差がひらいちまうからな! リュウ・ケン対ベガ様・バルログ・バイソンの二対三になっちまう」

ヤムチャ「あ~、その場合は……ベガさん達の方が勝っちゃいそうですね……」

バイソン「流石に、リュウをそこまで強くするわけにはいかねぇよ! バイソンは、サガットのセコンドについて忙しかったから、ベガ様の試合には参加出来ねぇで……」

バルログ「バイソンがいない事で、リュウ君達に卑怯な手段で攻めれなくなくった、私とベガ様が負けてしまい……」

サガット「ザンギエフさん相手に、俺とバイソンの二対一の卑怯な手段で挑んだにもかかわらず、返り討ちにされてしまう……と、いうのが、今日のシャドルーの理想の流れだろうな」

ヤムチャ「……うわぁ、なんか皆さんも苦労してますねぇ」

ヤムチャ「いいんすかねぇ? 俺、第二試合でやってて」

サガット「……ん?」

ヤムチャ「いやぁ、皆さん、シャドルーの仲間を助ける為に……他の試合に参加したりして、チームプレイでやってるじゃないですか?」

サガット「まぁ、そうだな」

ヤムチャ「リュウさんと、ケンさんがシャドルーの親玉と戦ってるってのに……俺は、呑気に第二試合でお笑いマッチだなんて……大丈夫っすかね……?」

サガット「……そういった事を出来るようにする為の、第二試合だ。ヤムチャ君、焦ってもいい事はないぞ?」

ヤムチャ「う~ん……まぁ、そうっすけど……」

サガット「とにかく、今は目の前の事、一つ一つをしっかりしていくんだ。ヤムチャ君は、毎日成長している……しっかりと取り組めば、またすぐにこの位置に戻ってこれる」

ヤムチャ「……」

サガット「とにかく、今日の第二試合で……自分自身に何か、課題を与え……それを実践するんだ……第一試合や第二試合で、綺麗な試合をする必要なんてない……この位置は逆に言えば、失敗を恐れずに、何でも好き放題に出来る位置なんだ」

ヤムチャ「うっす……! わかりました……!」

ダルシム「……ナマステ」


サガット「おっ、ダルシムさんが来てくれたようだな……ナマステ……」

バルログ「おはようございます。ナマステ……」

バイソン「なますて!」


ヤムチャ「な、なますて……?」

ダルシム「ヤムチャ君と試合の打ち合わせをしに来たんだが……」

ヤムチャ(この人も、変な行動してお客さんを笑わせる人なのかな……? どんな事、するんだろ……?)

ダルシム「……ヤムチャ君?」

ヤムチャ「あっ、はいっ……! 聞いてますよ……!」

ダルシム「よし、じゃあ部屋を移して打ち合わせに入ろうか……今日はよろしく頼むよ……」

バイソン「ヤムチャ君、頑張ってくれよ!」

バルログ「私達は見てますからね! ヤムチャ君の試合の事!」

サガット「好きな事をやるんだ……自分の好きな事を……」


ヤムチャ「……うっす!」

ダルシム「……ヤムチャ君?」

ヤムチャ「ん……? どうしたんですか……?」

ダルシム「昨日は、ジミーがすまなかったねぇ……あんな試合、君は望んでいなかっただろう……」

ヤムチャ「あっ、いやっ……こっちこそ、何かすいませんでした……!」

ダルシム「今日の試合は、昨日のような試合ではない……まぁ、私を好きに練習台に使ってくれたまえ……」

ヤムチャ「……練習台?」

ダルシム「おっと……細かい打ち合わせは、部屋を変えてからにしようか……? ここでは、シャドルーさん達の邪魔になってしまうからな……」

ーーー


ダルシム「さて、打ち合わせなんだが……ヤムチャ君に、色々と注文をしたい……申し訳ないね……」

ヤムチャ「あっ、はい……どうぞ……」

ダルシム「恥ずかしい話なのだが……私は、サガット君やバルログ君程の身体能力を持っていない……なんせ、歳だからな……」

ヤムチャ「は、はぁ……?」

ダルシム「彼らのような、スピーディでリングを動き回っている試合をする事は、私には向いていない……彼らなら、軽々と受け止められる蹴りでも……私にとっては、非常に困難な事だ……」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「私は、ゆったりとした試合がしたい……でないと、とてもじゃないが、君の動きについていけん……」

ヤムチャ「えぇ……? ゆったりとした、試合っすか……?」

ダルシム「……申し訳ないね」

ヤムチャ「いやぁ、いきなりそんな事言われても……そもそも、ダルシムさんが何処まで対応出来るかわからないですし……」

ダルシム「恐らく、打撃攻撃は全滅だろうな……あんな素早いパンチやキック……それに対応する事は、私には出来ん……」

ヤムチャ「打撃攻撃封印マッチって事っすか!?」

ダルシム「出す所では、出してくれても構わんよ? だが、反撃を求めたり……いいタイミングでのやられ方などは、あまり期待しないでくれ……」

ヤムチャ「おいおいおい……どうしたらいいんだよ、これ……?」

ダルシム「ヤムチャ君の場合は、ボディスラムとバックドロップとコブラツイストがあっただろう……? あぁいった技なら、上手く対応する自信はあるぞ……?」

ヤムチャ「よりによって、一番苦手な投げ技かよ……どうっすかね……?」

ダルシム「……勝手な事ばかりで、申し訳ないね」

プーアル「……ヤムチャ様、これを機会に投げ技の練習をしてみるっていうのは、どうですか?」

ダルシム「ふむ……そうしてくれると、ありがたいな……受け身には自信があるからな……いくらでも練習台になってやるぞ?」

ヤムチャ「あっ、練習台ってそういう意味だったんですか……でも……」

ダルシム「……どうした?」

ヤムチャ「何回も何回も同じ技してたら、お客さんは飽きちゃいますよね……? 俺、そんなに何回もやるの怖いっすよ……」

ダルシム「その辺りの攻防……上手く、考えてもらえないかね……?」

ヤムチャ「俺、投げ技は、二種類しかねぇからな……関節技入れても、3つだし……やべぇ、今日の試合困ったなぁ……」

ダルシム「そこさえ、してもらえれば、私は構わん。後は、ヤムチャ君に全て任せるよ」

ヤムチャ「ん、あれ……? 笑わせる行動みたいなのは、ないんですかね……?」

ダルシム「私には、ギャグセンスもない……そういった行動は、特にないな……」

ダルシム「おっと……そろそろ、時間だな……」

ヤムチャ「えっ、もう……!? 何にも決まってないじゃないっすか、この打ち合わせ!」

ダルシム「私は、シャドルーさん達や、ブランカさんの様な、激しい自己主張をせずに……相手の攻撃を受けるだけの、地味な選手だ……だから、十数年間ここでやっている……」

ヤムチャ「う~ん……自己主張しろってのは、俺の課題だけど……また、ぶっつけ本番かぁ……」

ダルシム「試合を引っ張っていく能力は、君には必要だろう……?」

ヤムチャ「まぁ、確かに……」

ダルシム「誰も、リングで自己主張しなければ、試合は動かない……今日の試合はヤムチャ君が動かしてくれ……」

ヤムチャ「いやぁ、いつかはやらねぇといけねぇと思ってた事だけど……今、来たか……! 今、来たのかよちくしょう……!」

プーアル「……いいじゃないですか、どうせいつかは、やらなくちゃいけないんですし」

ダルシム「よし、そろそろ試合が始まるな……ヤムチャ君、行こうか……」

ヤムチャ「え~っと、え~っと……どうすっかねぇ……」

また試合を書く流れになっちまったなぁ……
まぁ今日はここまで

ーーー


ヤムチャ「ゆったりとした試合……ゆったりとした試合……やべぇ、何にもプランが思い浮かばねぇ……」

プーアル「あっ、ヤムチャ様! 第一試合が終わりましたよ!」

ヤムチャ「やべぇ、もう始まっちまっうのか……第二試合は、始まるのも早いから、試合内容を考えてる時間、あんまりねぇんだよなぁ……」

プーアル「……大丈夫ですか、ヤムチャ様?」

ヤムチャ「コブラツイストを2回かけるとして、2回ずつで4分ずつ……だろ……? プーアル、どう思う? ちょっと長くねぇか?」

プーアル「それだったら試合の半分ぐらいが、コブラツイストになってしまいますからね……やっぱり、長いと思います……」

ヤムチャ「だよなぁ……って、事はコブラツイストは頭を整理させる時の為に残しておくか……コレ、また新しい技覚えないといけねぇんじゃねぇか……?」

プーアル「でも、今日の試合は今ある技だけでなんとかするしかないですよ」

ヤムチャ「困ったねぇ……どうすっかなぁ……」

プーアル「あっ、そろそろ第二試合が始まるみたいですよ! ヤムチャ様そろそろ入場ですよ、準備して下さい!」

ヤムチャ「くそっ、ぶっつけ本番……なんとかやりきるしかねぇ! ここをクリア出来たら、俺だって実力つくだろ!」

プーアル「ヤムチャ様、その意気です! 頑張って下さい!」

ーーー


ダン「さて、皆様……お楽しみいただいてるでしょうか!? ストリートプロレス!」

ダン「それでは、続いては……第二試合をお届けしますっ!」

ダン「孤高のヨガ戦士……ダルシム選手の入場ですっ!」


パチパチ……パチパチ……


ダルシム「……ナマステ」


パチパチ……パチパチ……


実況「さぁ、深々と観客に頭を下げながら、今ダルシムの入場です! ヨーガの達人ダルシム! ヨーガを格闘技と組み合わせ、独自のファイトスタイルを持ったダルシム! ゆっくりと、歩みを進めながら、今リングイ~ン!」

ダン「続きましては……空手軍団、三番弟子……」

ダン「ヤムチャ選手の入場ですっ!」


パチパチ……パチパチ……


ヤムチャ(何をしてわからねぇって事は……それだけ、俺に足りてないんだろ……)


実況「さぁ、お次は空手軍団三番弟子……ヤムチャ選手の入場です!」


ヤムチャ(ブランカさんの事は、嫌いだけど……多分、あの人ならこの試合でも、ダルシムさんの注文に応えながらも……笑いを取る試合をしたんだろうな……)


実況「さぁ、寡黙な表情での入場だ!」


ヤムチャ(ブランカさんとは、また試合で自己主張のぶつかり合いをする機会が来るだろう……この試合で、何も出来ないようじゃ……きっと、次の試合ではまた飲まれるだけだろう……だから、この試合で何かを掴まなければならねぇ……!)


実況「そして、今、ヤムチャがリングイ~ンっ!」

実況「さて、早速第二試合の実況をしていきたい所なんですが……本日、私テンションが上がっておりますっ! 自分自身でも浮かれている事は自覚しておりますっ!」

実況「だがしかし、それは仕方ないっ! 何故なら……本日のゲスト解説はこちらの方だっ!」


ローズ「ふふ、ローズです。よろしくお願いします」

実況「そうです! 本日のゲスト解説は、ローズさんにお越し頂きました! いつもいつも、筋肉質な野郎が隣にいる中……こんな、美しい女性が隣にいるなんて、いやぁ、たまにはいい事もあるもんだ!」

ローズ「嬉しいお言葉ですが……そんな事言うと、色んな方に怒られちゃいますよ?」

実況「そんな事は構わないっ! 私、本日は男気のある実況をしていきたいと思います! そしてあわよくば……」

ローズ「……あわよくば?」


マジメニヤレヨ、コノヤロー


実況「おっと……早速、私会場のローズファンに怒られてしまいました! やはり、公私混同はよくありませんね! 仕事は仕事! そして、恋は恋です!」

ローズ「私をセクハラ攻撃から守っていただいた、ファンの皆様に感謝ですね。それじゃあ、実況をしましょうか?」

実況「では、早速実況を! 本日のゲスト解説のローズさんは、非常~にお美しい方なんですが、美貌の秘訣なんかはあるんですかね?」

ローズ「早速、可笑しな質問が来ましたね?」

実況「いやいや、まぁまぁ……ダルシムとヤムチャはまだ、レフェリーのボディチェックを受けてる最中ですし、いいじゃないですか? きっと、女性ファンなんかも気になっている事だと思いますよ?」

ローズ「まぁ、そういう事なら……でも、やっぱり適度な運動と、睡眠は大切なんじゃないですか?」

実況「気をつけろよ!? 適度な運動と言っても、彼女はレスラーだ! 相当ハードな運動には違いないぞ!?」

ローズ「最近はヨガなんかもやってますよ? 健康にいいらしいですね」

実況「ほ~う、ヨガ……ヨガと言ったら、あの複雑なポーズなんかをして……んっ……?」

ローズ「複雑なポーズから、初心者向けのポーズまで、色々とあるんですよ。ネコのポーズから……コブラのポーズ……色々な種類があります」

実況「おっと、ヨガと言えばダルシムだった! しまったしまった、私すっかりローズさんとのお話に夢中になりすぎて、試合の事をすっかり忘れてしまっていました!」

ローズ「思い出して頂けて幸いです」

実況「本日のカードは、そのヨーガの達人のダルシムと、空手の達人ヤムチャ! 実況は滑り込みセーフと言った所か!? 今、ゴングが鳴らされます!」

ローズ「それでは、試合の実況をしていきましょうか」

ダン「ファイっ!」


ヤムチャ(よし、ゆったりと……ゆったりとした試合を……)

ダルシム「……」


実況「さぁ、先に動いたのはヤムチャ! ゆったりとダルシムの様子を伺ってます!」

ローズ「そうですね」


ヤムチャ(とりあえず、投げを仕掛けてみっかねぇ……? 打撃は遠慮してくれって言われたからな……掴みかかっていった方が、ダルシムさんは対応しやすいだろ……)

ダルシム「……ナマステ」ペコッ

ヤムチャ「……ん?」


実況「おっと、ここでダルシムが……両手を合わせて、ヤムチャに対してお辞儀をしたぞ?」

ローズ「礼儀正しい方ですね」

ヤムチャ(なんだ、なんだ……いきなりお辞儀して……試合中でも、礼儀正しい人なんだな、ダルシムさんって……まぁ、ここは……)

ダルシム「……」

ヤムチャ「……な、なますて」ペコッ


実況「おっと、ここでヤムチャも両腕を合わせて、同じようにお辞儀だ! こいつは、クリーンなファイトが見れそうな予感!」

パチパチ……パチパチ……

実況「お互いの相手に敬意を払って行動に、会場からは暖かい拍手が送られます!」


ヤムチャ(おぉ、拍手じゃねぇか……真似してみるもんだな……第二試合なのに、お客さんの反応が貰えたぜ……)

ダルシム「……ふむ」

ヤムチャ(よし、じゃあ試合を始めるか……先ずは掴みかかってみっか……! そしてそのまま……!)


実況「さぁ、先に仕掛けたのはヤムチャ! ダルシムを掴みにかかります!」

ヤムチャ「……おらぁっ!」グイッ

ダルシム「……ぐっ!」


実況「さぁ、ここでヤムチャがダルシムを掴んだ! ここから、スープレックスを繰り出すのか!?」

ローズ「ダルシムさんも、なんとか堪えてますね」


ヤムチャ「くそっ、くそっ……堪えてんじゃねぇよ……! このまま、ぶん投げてやるっ……!」

ダルシム「くっ……させんぞ……!」


実況「さぁさぁ、投げようとするヤムチャ! そして堪えるダルシム!」


ヤムチャ(ここで、投げちまってはまだ早いっ……! もうちょっとだけ、この投げを堪えている攻防を続けなきゃ、ゆったりとした試合が出来なくなっちまう……!)

ダルシム「ぐっ……ぐっ……!」

ヤムチャ(ダルシムさんは、上手く堪えてる振りを続けてくれてるんだ……お客さんがこの攻防を飽きないギリギリのラインを見極めて……そこで、投げるっ……!)

実況「さぁ、ヤムチャがスープレックスを仕掛けようとしているが……ダルシムは堪えているっ! なんとか、耐え凌ぐ事が出来るか!?」

ローズ「あまり、恵まれた体格をしてるとは言い難いですからね……堪えたり、ロープまで逃げるのは、少し難しいんではないでしょうか?」


ヤムチャ(ケンさんが隣にいたら……『行けっ! ヤムチャ、ぶん投げちまえ!』なんて、タイミング指示してくれたのかな……? だけど、今日は俺一人なんだ……タイミングは自分で判断するしかねぇな……)

ダルシム「くっ……くそっ……」

ヤムチャ「……うおおぉぉっ!」ググッ

ダルシム「……何っ!?」


実況「おっと、ここでヤムチャが強引にダルシムの身体を抱えあげたぁ!」

ローズ「やっぱり、体格的にはヤムチャ選手の方が有利ですからね」


ヤムチャ「タイミングはここだぁ! ボディスラムだぁ!」ドシーンッ

ダルシム「……ぐっ!」

実況「さぁ、ヤムチャが強引に落としていきました! 荒々しいボディスラムだ!」


ヤムチャ(ダルシムさんはダウンしたな……ここで追い討ちを仕掛けたいんだけど……)

ダルシム「……ううっ」

ヤムチャ(下手したら、展開が加速しちまうよなぁ……? ゆったりとした試合が出来なくなっちまう……)


実況「さぁ、ダルシムは大きくダウン! これは、思った以上にダメージがあったのか!?」

ローズ「あまり、恵まれた身体とは言い難いですからね……それほど、筋肉質でもないですし……スープレックス技には、少し弱い所があるんでしょう……」

実況「なるほど……確かに、恵まれた身体とは言い難いですねぇ?」

ローズ「でも、私もかじった程度の知識しかありませんけど……ヨガって身体が柔らかくないと出来ませんからね? 関節技なんかには凄く強いと思いますよ?」

実況「なる程! そういえば、ダルシムは関節技なんかも得意ですね!」


ヤムチャ(打撃攻撃を抑えてくれって、結構効くなぁ……投げ技で攻めるか、関節攻撃で攻めるか……それとも、他に何かするか……って言っても、他の何かってなんだよ……)

ダルシム「……ううっ」

ヤムチャ(……ん、待てよ?)

ヤムチャ(試合が始まって……お互いにお辞儀して……お客さんから、拍手を貰えたよなぁ……?)

ダルシム「……ううっ」

ヤムチャ(以前のサガットさんだって、そうだ……胸を突き出しただけなのに……お客さんから、反応を貰ってた……)

ダルシム「……くそっ」

ヤムチャ(攻撃するだけが、プロレスの行動じゃねぇんだ……打撃攻撃や、投げ技、関節攻撃……技を仕掛ける以外にも、お客さんに反応を貰う方法はあるっ……!)


実況「さぁ、ここからヤムチャはどう攻める!?」


ヤムチャ(アピールだよ……! お客さんにアピールすればいいんだよ! 上手くいけば、俺がアピールしている間に、ダルシムさんも起き上がってくれて、理想的な展開になるじゃねぇか……!)

ダルシム「……負けて、たまるものか」

ヤムチャ(どうせ、失敗してもいい試合なんだ……だったら、思いついた行動は全てやってみよう! 格好いいアピールしてやるぜ!)グイッ


実況「おっと、ここでヤムチャが拳を天高く突き上げたぁ!」

ヤムチャ「見たかコラァ!」

ダルシム「……ぬっ?」

ヤムチャ「いくら俺が空手軍団三番弟子だからって……俺だって、やれば出来るんだよ! 舐めてんじゃねぇぞ、コラァ!」


実況「おっと、ここでヤムチャがお客さんにアピールだ!」

クスクス……クスクス……

実況「おっと、だがしかしお客さんからは笑い声が聞こえるぞ!? これは、誠実さが裏目に出てしまったか!?」

ローズ「私は好きですよ」


ヤムチャ(う、うわぁ……恥ずかし……マジでやったつもりなのに、笑われてるよ……俺、こういう事言うの向いてないんだなぁ……)

ダルシム「確かに……空手軍団は強敵……こいつは、強い……」

ヤムチャ(俺も、お喋りの勉強しなきゃなぁ……ケンさん辺りに教えてもらわなきゃ……)

ダルシム「だが、私にも10年というキャリアがあるっ……! 負けてはいないぞっ……!」ムクッ

実況「おっと、ここでダルシムが起き上がった!」

ローズ「自分も負けてられない……とか、思ったんでしょうね……戦いの醍醐味です」


ダルシム「……ベテランの意地をみろっ! うおおおぉぉっ!」

ヤムチャ(ナーイス、タイミングだよ、ダルシムさんっ! 恥ずかしいから、俺に攻撃を仕掛けて下さい……! 早く、早くっ……!)

ダルシム「……フンっ!」ググッ

ヤムチャ「……う、うおっ!」


実況「さぁ、ここでダルシムがヤムチャを抱えあげたっ!」


ダルシム「君の技は、力任せのただただ荒い技だ! 正確なボディスラムとは……こうやるのだよっ……! うおおおっ!」ドシーンッ

ヤムチャ「……ぐっ!」


実況「そして、ヤムチャに対してボディスラムだ!」

ローズ「ベテランらしい、綺麗なフォームしてますね」

ヤムチャー、ナニヤッテンダヨー! カッコワルイゾー


ヤムチャ(……わかってるよ、ちくしょう)


クスクス……クスクス……

実況「さぁ、アピールをしたヤムチャが……逆に投げられてしまいました。この声援を聞くと、少し気の毒な気もしますねぇ、ローズさん?」

ローズ「そういう間の悪い人って結構いますよね? でも、可愛らしくていいんじゃないですか?」

実況「実はですねぇ……! 私にも少々、間の抜けた所がありまして……」

ローズ「その話は、今はいいでしょう。試合を実況しましょう、試合を」


ヤムチャ(今日は笑わせる試合じゃねぇのに、どうしてこうなっちゃうかねぇ……? 向いてない事はするべきじゃないのかねぇ……?)

ダルシム「……どうだ、ベテランの意地を見たか!」

ヤムチャ(悔しいなぁ……もっと、格好いい所見せたら、お客さんは笑うのやめてくれるかな……? それとも、もっと大惨事になるかな……? わかんねぇ……難しいな……)

今日はここまで

クスクス……クスクス……


ヤムチャ(くそっ、まぁこれ以上格好悪い事にはならねぇだろ……今日は急所も蹴られないんだしな……まぁ、思いついた事は全部やってみっか……よっと……)ググッ

実況「……おっ?」


ヤムチャ「……うるあぁっ!」シュタッ

実況「おっと、ここでヤムチャが素早くハンドスプリングで起き上がったっ!」

ヤムチャ(さっきの慣れねぇお喋りよりかは……格好良く見えてるんじゃねぇか、これ……? どうだっ……!?)


ダルシム「なかなか、やるな……」

実況「ダルシムの攻撃を受けたヤムチャですが……まだまだスタミナは十分といった所でしょうか!? 余裕を持って起き上がります!」

ローズ「いいですね」

ザワザワ……ザワザワ……


ヤムチャ(あれ……? なんか、お客さんの反応があるぞ……?)

ダルシム「くっ……やはり、若いだけあってスタミナはあるようだな……」


実況「さぁさぁ、まだまだスタミナ十分のヤムチャ! ここからどういった攻めを見せるのか!?」

パチパチ……パチパチ……

ローズ「場内の皆さんも、拍手で応援してますね」


ヤムチャ(おいおい……拍手まで来ちまったぞ……? わかんねぇもんだなぁ……やってみて正解だったよ……)

ダルシム「……くそっ」

ヤムチャ(第五試合でやったら、もっと盛り上がるんじゃねぇか……? ヤムチャコールみたいなもんだろ……? これ、今なら何やってもウケそうな気がするぜ……よし、ここから反撃だな……!)

ダルシム「くそっ、来いっ……! ヤムチャっ……!」

ヤムチャ(待てよ……? 今、ヤムチャムードが流れてるよなぁ……? 何をやっても受けるんだったら……ちょっと、調子に乗ってみてもいいんじゃねぇか……?)

ヤムチャ「へいへい! おっさん、おっさん!」

ダルシム「……ぬ?」

ヤムチャ「どうした、どうした、そんなもんかぁ!? 俺には、全然効いてないぞぉ!? ちゃんと朝飯食って来たのか、オイっ!」

ダルシム「……くそっ、これが若さか」


実況「さぁさぁ、ヤムチャは、自分には効いていないと大アピールだぁ! 三番弟子とは言っても、流石は空手軍団!」

ローズ「そうですね」


ヤムチャ(ほらほら、今度は笑われねぇじゃん……なんとなく、いい雰囲気になってきた気がするぜ……でも、あまり調子に乗ってると、ボロが出そうだから、この辺でやめとこうっと)

ダルシム「……くそっ」

ヤムチャ「今度はこっちの番だ……! 行くぜっ……!」


実況「さぁ、ヤムチャが仕掛けた! ダルシムを掴みにかかる!」

ヤムチャ(今日、使える技は……ボディスラム……バックドロップ……コブラツイストの三種類……)

ダルシム「……ぐっ!」

ヤムチャ(ボディスラムはもう使っちまったから……バックドロップとコブラツイストの二種類だけど……)


実況「さぁ、ヤムチャがダルシムを掴んだ! そして、それからどうする!?」


ヤムチャ(今は何をやっても受ける気がする……バックドロップで失敗した時だって、4発も5発もしたから、失敗したんだ……! だから今は、この試合で一番使いづらくなった……)ググッ

ダルシム「……ぐっ!」


実況「そして、ヤムチャがダルシムを抱え上げ……!」


ヤムチャ「正確じゃねぇ……? 上等じゃねぇか! それでも、やってやろうじゃねぇかボディスラムをよぉ!?」ドシーンッ

ダルシム「……うぐっ!」

実況「さぁ、お返しと言わんばかりのヤムチャの荒々しいボディスラムっ! ダルシムをマットに叩きつけます!」

ローズ「ダルシムさんとくらべると、フォームが荒いですね」


ヤムチャ(くそっ、フォームが荒いだと……? 失敗しちまったか……?)

ダルシム「……うぐぐ」


実況「やはり、この辺りは、ベテランとの差……って事なんですかねぇ、ローズさん?」

ローズ「まぁ、でもヤムチャ選手は打撃攻撃が主体だと思うんですね」

実況「なる程!」


ヤムチャ(くそっ……まぁ、実況の二人がそういうって事は……お客さんもそう思ってるんだろうな……ここは、ダルシムさんにも起きて欲しいし……何かアピールでもしておくか……)

ダルシム「……ううっ」

ヤムチャ「どうだどうだ!? 正確さはねぇけどよぉ……!? こっちには、パワーがあるんだ! パワーがよぉ!?」

実況「さぁさぁ、ダウンしているダルシムに対してヤムチャが吠えていきます!」

ローズ「勢いのある若手ですね。これは、ダルシムさんもベテランの意地を見せなきゃいけませんね?」


ダルシム「……ううっ、力だけに頼って、若手らしい戦い方だな」ムクッ

ヤムチャ「どうしたどうした!? ベテランってのは、そんなもんか、あぁ!?」

ダルシム「くそっ……! お望み通り……ベテランの技を見せてやろう……うおおぉぉっ!」ガシッ

ヤムチャ「来いや、おっさんっ!」


実況「さぁ、ダルシムも立ち上がり、ヤムチャに掴みかかるっ! ここから何を仕掛けるか!?」

ローズ「ベテラン選手の意地、見てみたいですね」

ダルシム「うおおっ……これが正確な……」ググッ

ヤムチャ「う、うおっ……!」

ダルシム「ボディスラムだっ……! フンっ……!」ドシーンッ

ヤムチャ「……ぐっ!」


実況「さぁ、今度はお返しと言わんばかりのダルシムのボディスラム! ヤムチャの身体をマットに叩きつける!」

ローズ「……面白いですよね」

実況「面白い……と、言いますと……?」

ローズ「いやぁ、同じ技でも……ベテランらしい綺麗なフォームで投げるダルシム選手と……力任せに投げている感じのヤムチャ選手……選手によって、同じ技でもこんなに違い出るんですね……?」

実況「なるほど……これは、力で攻める若手と……技で攻めるベテラン選手の対決ですね……!? さぁ、軍配が上がるのはどちらの方なんでしょうか!?」


ダルシム「どうだっ……!? 見たか、ベテランの力を……!」

ヤムチャ(くっ……どうする……!? もう一発、ボディスラム勝負にいったら、お客さんは飽きちまうんじゃねぇか……? でも、これダルシムさんは、そういう勝負を仕掛けてくれてるんだよなぁ……?)

ヤムチャ(でもこれ、俺が違う技で責めたら……ボディスラム勝負から逃げたって事になるんじゃねぇか……?)

ダルシム「はぁっ……はぁっ……」

ヤムチャ(今まで、チョップ勝負だって、終わらせる時はチョップで……キック勝負だって終わらせる時はキックだった……だったら、ボディスラム勝負も、ボディスラムで終わらせるべきなんじゃねぇの?)


実況「さぁ、この攻撃……ヤムチャにダメージはあったのか!?」


ヤムチャ(ここで、俺が負けて終わるか……それとも、もう一発撃って勝って終わるか……? どっちにする……? くそっ、でもどうせなら、勝ってみてぇな……)

ダルシム「舐めるなよ……若僧め……」

ヤムチャ(これ、もう一発ぐらい、いけるんじゃねぇか……? 危ない橋だけど、渡ってみっか……よしっ……!)ググッ

ダルシム「……ぬっ!?」

ヤムチャ「うるあっ!」シュタッ

ダルシム「くっ……! こいつ……!」


実況「だがしかし、ヤムチャはまたもハンドスプリングで素早く起き上がる! ヤングパワー恐るべし! 底なしのスタミナだ!」

ローズ「ふふ、ダルシムさんも内心焦ってるんじゃないですかね?」

実況「そうですね! なんだか、ダルシムから焦りの表情が見える気がします!」


ヤムチャ「おらおら! そんなおっさんのボディスラムで負けるような、タマじゃねぇんだよ、こっちはよぉ!」

ダルシム「……くっ!」


パチパチ……パチパチ……

実況「さぁさぁ、ヤムチャが勢いづいて来たか!? 場内のお客さんもその姿に拍手を送る!」


ヤムチャ(よ、よしっ……! この反応……もう一発なら、いける……! もう一発なら、いけるから、ここで綺麗なボディスラムを出して決めよう!)

ダルシム「くそっ……若手の勢い……恐ろしいな……」

ヤムチャ(もし、綺麗なのが決まらなかったら……その時は、ダルシムさんのボディスラムで負けて終わろう……でも、俺がリードしなきゃいけない試合なんだ……やっぱり、勝って終わりてぇな……)

ヤムチャ「いくぜっ……!」ググッ

ダルシム「……くっ!」


実況「さぁ、ヤムチャが掴みにかかる! これは、ボディスラム勝負だ! 力任せのボディスラムをベテランのダルシムに仕掛ける!」

ローズ「さぁ、どうなるでしょうか?」


ヤムチャ(落ち着いて、練習通りに……お客さんに格好良く思って貰えるように……焦るんじゃねぇ……)

ダルシム(おっ……? さっきより、少し高く上げているんじゃないか……? 今回は焦ってないみたいだな……)

ヤムチャ「うるあぁぁ! これで決めてやるぜっ……! 喰らいなっ……!」ドシーンッ

ダルシム「……ぐっ!」


実況「おっと……!? 今回は、綺麗なボディスラムが決まったぞ!? ベテラン相手のボディスラムを何度か受けて……ヤムチャも何か、掴んだか!?」

ローズ「そうですね。これはいいボディスラムです。これなら、ダメージも大きいんじゃないですかね!?」


ヤムチャ(おっ……? マジで……? あの解説、今褒めてたよなぁ……? やったんじゃね、コレ……?)

ダルシム(ふむ……いいボディスラムだったな……これじゃあ、しばらく立ち上がるわけにはいかんな……)

ヤムチャ「どうだ……!? そろそろくたばったんじゃねぇか、おっさんよぉ! えぇっ!?」

ダルシム「ぐっ……く、くそっ……!」

ヤムチャ(ど、どうなるんだ……? ダルシムさんは、起き上がってくるのか……?)

ダルシム「若手の底力……恐るべし……」ガクッ


実況「おっと、ここでダルシムの首の力が抜け……ガックリとダウンします!」

ローズ「ヤムチャ選手、決めましたね」

実況「ベテラン対若手のボディスラム対決は……若手のヤムチャに軍配が上がったぁ!」


ヤムチャ(チョップ攻撃と違って……投げ打ち合いだから、結構時間経っちまったよなぁ……? ちょっと、急いで試合展開を進めないといけねぇかもな……)

パチパチ……パチパチ……

ヤムチャ(まぁ、会場からは拍手はあるし……ラッシュかけるには、丁度いいだろ……今度は別の技、仕掛けるか!)

ヤムチャ「オラァ、続けて行くぜ……! エルボードロップだ……!」ドスッ

ダルシム「……ぐっ!」


実況「さぁ、ヤムチャがダルシムに対して、エルボードロップを落とした!」

ローズ「ここから、一気に攻めるつもりなんですかね?」


ヤムチャ「まだまだ、俺の投げは終わらねぇぜ……? ほら、おっさん、起きやがれ……!」ググッ

ダルシム「……ううっ」


実況「さぁ、そしてヤムチャがダルシムを引き下ろし……背後を掴んだぁ!」


ヤムチャ(さっきと同じ要領で……焦らず……お客さんに格好いい所を見せるんだ……! ここで失敗したら、また笑われちまう……!)

ダルシム「……うっ、くそっ!」

ヤムチャ「……うるああぁぁっ! いくぜっ!」ググッ


実況「そして、ヤムチャがダルシムの身体をそのまま抱え上げる!」

ヤムチャ「くたばれ、おっさん……! バックドロップだっ!」ドシーンッ

ダルシム「……ぐっ!」


実況「さぁ、ヤムチャがバックドロップダルシムを落としていった! これも、効いたんじゃないでしょうかねぇ?」

ローズ「えぇ、ヤムチャ選手がリズム掴んできましたね」


ヤムチャ(よしよし……バックドロップも出来るようになってきてるみたいだな……いい感じだぜ……)

ダルシム「……うぐぐっ」

ヤムチャ(コブラツイストを仕掛ける為に……前はロープに走って蹴りを入れたけど……今日は、違う方法使ってみるか……折角、アピールする事も覚えたんだしな……)

ダルシム「くそっ……ヤムチャめ……」

ヤムチャ(ここまで、俺はあまりダメージ喰らってねぇからな……余裕ぶって……っと)

ヤムチャ「どうだどうだ! 三番弟子だからって、こっちは空手軍団なんだ! 舐めんじゃねぇぞ!」

ダルシム「くそっ……確かに、こいつは三番弟子といえども、空手軍団っ……!」

ヤムチャ「そろそろ止めにしちまうか! 覚悟しやがれ!」パチパチ


実況「さぁ、ここでヤムチャが両手を叩いてフィニッシュ宣言か!? ここでダルシムを仕留めてしまうのか!?」

ローズ「いい感じに試合を進めていますけど……油断は禁物ですよ? 相手はベテランですからね」


ヤムチャ「おらっ、起きろっ!」ググッ

ダルシム「……ううっ」

ヤムチャ「……よっと!」シュルッ


実況「さぁ、ヤムチャがダルシムを引き起こし……素早く手と足を絡めた! これはコブラツイストの体勢だ!」


ヤムチャ「……いくぜっ! ギブアップしちまいな、ダルシムさんよぉ!」

ヤムチャ「……うるあぁっ!」ググッ

ダルシム「……ぐっ!


実況「さぁ、ヤムチャがコブラツイストで締め上げたぁ! これでギブアップを狙うのか!?」


ヤムチャ(よしよし……いい感じ攻めれてるじゃねぇか……今日の試合は、課題もクリア出来たんじゃねぇかコレ……?)

ダルシム「……うぐぐ」

ヤムチャ(もう、そろそろ試合終了も近づいてきたんじゃねぇか……この技の後、一つ二つの攻防して、試合は終わりだろ……)

ダルシム「……くそっ」

ヤムチャ(今日は、ボディスラムもバックドロップも受けれたし……アピールも出来た……お客さんに笑われちまった部分はあるが……急所攻撃で笑われたんじゃねぇんだ……まぁ、いいだろう……)

ダルシム「負けん……私は負けんぞっ……!」

ヤムチャ(ん、急所攻撃……? あれ……?)

ヤムチャ(そういや、今日の試合では、急所攻撃は別に受けなくてもいいけど……俺、今日の試合、ダルシムさんから何か攻撃受けたっけ……?)


実況「さぁ、ヤムチャがコブラツイストでダルシムの身体を締め上げる! これ、技のかかり具合はどうでしょうかねぇ、ローズさん!?」


ヤムチャ(ボディスラムは受けただろ……? でも、あれ受けた後、俺はハンドスプリングで起きたから、ダメージは殆どねぇようなもんだろ……?)


ローズ「結構がっちり入ってるますけど……まぁ、ダルシム選手はヨガの達人ですからね。ここで決めたいのなら、関節攻撃より3カウントを狙った方がよかったんじゃないかと思います」


ヤムチャ(これって、ちょっと俺の圧勝すぎる試合になってねぇか……? 試合をリードする為に……自分のいい所を見せようと頑張りすぎちまったから……)

ダルシム「うぐぐ……くそっ、くそっ……」

ヤムチャ(その分、ダルシムさんのいい所、出させてあげる事は一つも出来てねぇよ……! サガットさん達は、そういう事を俺にしてくれたんだし……俺もそういう事しないとマズいんじゃねぇか……!?)

ヤムチャ(危ねぇ、危ねぇ……頭を整理させる為にコブラツイストをかけて、正解だったな……圧勝しすぎってのも、よくねぇだろ……この後、ダルシムさんこ反撃で押されて、俺の反撃で決着……それが理想だ……)

ダン「おいっ、ダルシム! 大丈夫か!? ギブアップするのか!?」

ダルシム「うぐぐ……まだだ、まだギブアップはせんぞっ……!」

ヤムチャ(残り時間は何分だ……? 4分切っちまったか……? まぁ、3分間ダルシムさんの攻撃を受け続けて……最後は俺の、反撃でフィニッシュだ……大丈夫だろ……)


実況「さぁさぁ、ヤムチャのコブラツイスト! ダルシムは、これを堪えている!」

ローズ「ベテランの維持……ですね」


ヤムチャ(よし、ダルシムさん……そろそろ次の攻防に行こうぜ……返してくれ……そして、今度はあんたが格好いい所をお客さんに見せる番だぜ……)

ダルシム「うぐぐ……負けんっ……! 私は、負けんぞっ……!」

ダン「おいっ! ダルシム、大丈夫か!? ギブアップすんのか!?」

ダルシム「ヨーガには、もっと過酷で辛い体勢での修行があるのだ……! それに比べれば、こんな技などっ……!」

ダン「まぁ、いくらお前がヨガの達人でも……あんまり、無茶するんじゃねぇぞ!」

ダルシム「あぁ、わかっておる……この通り、私は大丈夫だっ……!」ビシッ


実況「さぁ、ダルシムはググッと力強い握り拳を作って、レフェリーに自分はまだまだ大丈夫だと、アピールしております!」

ローズ「そうですね。なんせ、ヨガの達人ですからね」

実況「やはり、ここは関節技より打撃攻撃で攻めた方がよかったのではないでしょうか!?」

ローズ「いや、わかりませんよ……? いくら、ダルシム選手が関節攻撃に強いといっても……がっつりロックはかかっていますからね。これはなかなか逃げれないんじゃないでしょうかね?」

実況「……となると、これは持久戦になるんでしょうかねぇ?」

ローズ「そうでしょうね……力で責めるヤムチャ選手と……柔軟な技で責めるダルシム選手って所でしょうかね? これも、両選手のスタイルの違いが見れて、面白い攻防ですね」

実況「さぁさぁ、力で責めるヤムチャと、技で責めるダルシムっ! この攻防を制するのは、一体どちらなんだ!?」

ヤムチャ(よし、ダルシムさん……そろそろいいぜ……? ブランカさんみたいにダンさん掴むなり、暴れるなりしてくれ……そうしたら、俺も技をとくからさ……?)

ダン「ダルシム、大丈夫なのか!? ギブアップすんのか!?」

ダルシム「これも一つの修行であるっ……! 私は、耐えるっ……! 耐えてみせるぞっ……!」

ヤムチャ(ダルシムさん、もうそろそろ返してくれもいいんだよ……? あんた、ベテランレスラーなんだから、わかってるハズだよねぇ……?)


実況「さぁさぁ、ダルシムはヤムチャにガッツリとロックされているっ! これは少し、長引きそうか!?」

ローズ「……そうですねぇ」

実況「それでは、その間に本日のゲスト解説のローズさんのお話も少しばかり聞いてみましょうか!?」

ローズ「可笑しな質問でなければ……なんでも答えますよ?」

実況「おっと……好みのタイプを聞こうとした、私の出鼻を早速挫かれてしまいました!」

ローズ「ふふ、戦いは先制攻撃です」


ダルシム(ふむ、いいタイミングで、話を始めてくれたな……残りが中途半端な時間だからな……このタイミングで話を始めてくれたのはありがたい……終わるまで待つか……)

ヤムチャ(おいおい……何か、雑談始めちまったぞ……? 大丈夫なのか……? このタイミングでダルシムさん、反撃したらマズいんじゃねぇの……?)

実況「先日、ストリートプロレス女子部の、ベルトが移動しましたよねぇ、ローズさん!」

ローズ「そうですね。絶対的なチャンピオン……春麗さんから、ベルトが移動しましたねぇ?」

実況「いやぁ、強く、そして素敵な太腿の女性でした! 私もあの足で蹴られたかった!」

ローズ「……それは、セクハラです。やめて下さい」

実況「おっと、失礼! ベルトを奪ったのは、キャミィ! 女子部のベルトは今、キャミィが手にしております!」

ローズ「キャミィ選手がベルトを取った事でね……女子部の選手は、皆燃えてますよ……」

実況「やはり、自分が春麗から、ベルトを奪いたかった……そういう事でしょうか?」

ローズ「そうですね。私も、さくら選手も、かりん選手も……やはり、ベルトを手にする為の試合の相手は……春麗選手だと、信じて疑わなかったですからね」

実況「……やはり、キャミィに先を越されて、悔しいと?」

ローズ「……はい」


ダン「おいおい、ダルシム大丈夫なのか……!?」

ダルシム「大丈夫だ……! 私は耐える……耐えるぞっ……!」

ヤムチャ(お、おいおい……そろそろダルシムさん、返してくれてもいいんだよ……? これ、時間大丈夫か……? 結構、コブラツイストかけて、時間経っちまったんじゃねぇの……?)

実況「女子部の選手は打倒、キャミィに燃えていると?」

ローズ「私達が目標にしていた所を、越えて行きましたからね。やはり、自分も負けてられないな……なんて、皆燃えていますよ」

実況「……なる程!」

ローズ「キャミィから、ベルトを奪い……そして……」

実況「……そして?」

ローズ「やっぱり、春麗さんとベルトを賭けた試合をしてみたいですね」

実況「春麗は絶対的王者ですからね!? やはり、ベルトが移動した今でも、そこを越えたいという気持ちは変わらないと……?」

ローズ「真のチャンピオンになる為には、やはり春麗選手から勝利する事は、私達の目標ですし、キャミィ選手がそれを成し遂げた今でも、気持ちは変わっていません」

実況「……ふむ」

ローズ「勿論、一歩先に進んでいるキャミィ選手から勝利する事も、チャンピオンになる為には、必要な事です。ですから、キャミィ選手に春麗選手……先日のベルト移動で、女子部の選手は皆、大きな刺激を受けましたよ」

実況「なる程……! 綺麗な薔薇には棘がある……! 美しい女子部の皆さんも、やはり、心の中にはメラメラとした闘志が煮えたぎってるんですね!?」

ローズ「例えが上手いような、下手なような……まぁ、でもそんな感じですね」


ダン「ダルシム、ギブアップか!? ギブアップすんのか!?」

ダルシム「まだだっ……! まだ、私は大丈夫だっ……!」

ヤムチャ(おいおいおい……! そろそろ、時間やべぇんじゃねぇか……? ダルシムさんの反撃……これ、間に合うのかよ、おいっ……!)

実況「いやぁ、大変貴重なお話を頂けました! ありがとうございます!」

ローズ「是非、女子部の戦いも注目してもらいたいですね」

実況「それでは、試合の方に戻っていきましょうか、ローズさん?」

ローズ「はい、よろしくお願いします」

実況「さぁさぁ! ヤムチャのコブラツイストがダルシムの身体を締め付けるっ! いくらヨガの達人といえども……こうも、長時間喰らい続けると危険なのではないかっ……!?」

ローズ「そうですね。腰へのダメージも……心配になってきます……」


ヤムチャ(おっ、ほらほら……? ダルシムさん、あの人達こっち見たよ……? 雑談終わったんじゃねぇかな……? 今、反撃したらあの人達、ダルシムさんの事、格好良く実況してくれるって……!)

ダン「おいっ、ダルシム、ギブアップすんのか!? そろそろやべぇんじゃねぇのか!?」

ダルシム「私は負けん……! 耐える……耐えるぞっ……!」

ヤムチャ(耐えなくていいから……! 早く、返してくれよ……! もう、試合時間あまり残ってねぇんだってば……!)

実況「さぁ、ダルシムはがっちりロックをされているっ! 腰へのダメージも心配だぞ、これは!」


ダン「くそっ、仕方ねぇ……こうなったら、レフェリーストップだ……このままじゃ、こいつの腰がイカれちまう……!」

ダルシム「レフェリーストップなどいらぬ……! ヨガの辛く苦しい修行に比べれば、この程度技など……!」

ダン「……強がってんじゃねぇよ!」

ダルシム「強がりなどではないっ……! うおおおぉぉっ……!」グイッ

ヤムチャ(きたっ……! やっと、きたっ……!)

ダルシム「……うおおおぉぉっ!」

ヤムチャ「……ぐっ!」ドスッ


実況「おっと、ここでダルシムが前のめりに身体を倒し、その勢いのままヤムチャ投げ飛ばした!」

ローズ「苦しい展開でしたが、なんとか耐え凌ぎましたね」

実況「さぁ、ヨガの達人、ダルシム! 苦しい所を逃れたが、腰へのダメージが心配か?」

ヤムチャ(試合終了時間が迫ってきてる……! ダルシムさん、俺はだうんしたままでいるから……なんでもいいから、俺に攻撃を仕掛けて、格好いい所見せてくれっ……!)

ダルシム「よ、よし……なんとか、返したが……」

ヤムチャ(……ん?)

ダルシム「……くっ」ガクッ


実況「おっと、ダルシム! 腰を抑えて、片膝つきます! やはり、長時間のコブラツイストで腰に来たか!?」

ローズ「長く仕掛けられてましたからね……いくらヨガの達人といえでも、腰に来たんでしょう……」


ヤムチャ(なんでだよ……! なんで、攻撃に来ねぇんだよ……! もう、ゆったりした試合いいだろ……時間がねぇんだよ……!)

ダルシム「くっ、流石に私といえども……これだけ長時間仕掛けられていると……辛いな、動けん……」

ヤムチャ(動けん……じゃねぇよ! 動かなくちゃいけないんだよ……! おいおいおい……どうするどうする……これ、やべぇんじゃねぇか……?)

実況「反撃にいきたいダルシムだが……腰へのダメージで動けません! これは、少し辛い展開か!?」


ダルシム「くそっ……後、10年若ければ……」

ヤムチャ(やべぇぞ……残り時間がねぇ……それなのに、ダルシムさんは動いてくれねぇ……)

ダルシム「……くそっ」

ヤムチャ(意思の疎通が出来てねぇって事か……? 別に、ダルシムさんにいい格好をさせずに、このまま試合を終わらせてもいいって事なのか……? あぁ、わかんねぇ……!)


実況「さぁさぁ、ダルシムは辛い状態だ!」


ヤムチャ(でも、今日の試合は俺がリードしなきゃいけねぇ試合なんだ……ダルシムさんが動かねぇなら……)

ダルシム「ううっ……」

ヤムチャ(俺が動いてなんとかするしかねぇだろっ……! ダルシムさんに反撃させてやる為によぉ!)ムクッ

実況「おっと、そうこうしているうちにヤムチャが起き上がったっ!」


ヤムチャ「随分、苦しそうだなぁ! おっさんよぉ!?」

ダルシム「……ぬっ?」

ヤムチャ「こっちはまだまだ、ピンピンしてるぜ! これで決めてやるぜ!」

ダルシム「……くそっ、若い奴め」

ヤムチャ「いくぜっ……! うるぁっ……!」シュッ

ダルシム「……ぐっ!」


実況「そして、ヤムチャは得意の打撃攻撃で責める! 先ずはミドルキックだ! 先程痛めつけた脇腹を狙っていく!」


ヤムチャ(これは、無理に対応してもらわなくてもいい蹴りだ……ダルシムさんが、どういう行動を取ろうとも、影響はねぇ……!)

ダルシム「……ぐっ!」

ヤムチャ「おらっ! 連発で喰らいなっ!」ガスガス

ダルシム「うっ……! ぐっ……!」


実況「さぁ、二発三発とヤムチャが脇腹に蹴りを打ち込む!」

ローズ「痛めつけた部分を重点的に狙ってますね。これは、ダルシム選手も辛いんではないでしょうか?」


ヤムチャ「おらおら! これでとどめにしちまうぜっ!」ググッ


実況「おっと、そしてヤムチャが天高く拳を突き上げたっ! これはフィニッシュ宣言か!?」


ヤムチャ「……もう、時間がないんです! 大技で反撃して下さいっ!」ブンッ

ダルシム「……ぬっ?」


実況「そして、ダルシムをロープに振ったぁ! 何か、カウンター攻撃を狙っているな!? さぁ、ヤムチャは何を繰り出す!?」

ローズ「……やっぱり、昇竜拳狙いなんですかね?」


ヤムチャ(ロープに振ってやったんだ……ゆったりと反撃チャンスを与えてやったんだ……あんた、10年選手なんだろ……? だったら、この状況にあったベストな反撃技の一つぐらい持ってるだろ……!)

ダルシム「……」

ヤムチャ(後はダルシムさんを信じて突っ込むだけだ……もう、時間もない……反撃チャンスはここだけだ……大技、期待してますよ……!)ダダッ


実況「さぁ、そしてヤムチャもロープで反動をつけて、ダルシム目掛けて突っ込んだぁ!」

今日はここまで

ヤムチャ(俺は、ノープランだ……このまま突っ込んでも、何も攻撃しねぇぜ……でも、ダルシムさん……あんた、ベテランレスラーなんだろ……? だったら、こっちの意図はわかってくれてるハズだよなぁ……?)

ダルシム「ううっ……くそっ……!」ググッ


実況「おっと、ここでダルシムが……!?」


ヤムチャ(よしっ、きたっ……! ダルシムさん、ナイスだぜっ……!)

ダルシム「ベテランの技術を甘く見るなっ……! フンっ……!」ググッ

ヤムチャ(……ん?)


ローズ「ダルシム選手、返しましたね! ベテランらしい、上手い切り返しです!」

実況「ここでダルシムが上手く切り返した! ロープの反動をつけて向かった来た、ヤムチャの頭を脇に抱え、そのまま締め付ける!」


ヤムチャ(投げ技じゃねぇ……打撃技でもねぇ……よりにもよって、じわじわ責める関節技かよっ……!)

ダルシム「うおおぉぉっ……! 締め付けてやるっ……!」


実況「こいつは、ダルシムのヘッドロック! ピンチの所をなんとか切り返したぁ!」

ダルシム「うおおぉぉっ……! このまま、締め上げてっ……!」ギリギリ

ヤムチャ(何やってんだよ、ダルシムさん……! 時間がねぇんだよ……こんな技をチンタラやってる場合じゃねぇだろが……!)


実況「さぁ、ダルシムがヤムチャの頭をじわりじわりと締め付ける! なんとか、これを返そうとヤムチャも懸命に?いているか!?」

ローズ「この辺は、ベテラン選手の上手い所ですね。ロックもガッチリ入ってますし……なかなか逃げられませんよ、これは」


ヤムチャ(やめろっ……! 離しやがれっ……! 時間がねぇのに、関節技なんかをちんたらやってる場合じゃねぇだろが……!)

ダルシム(残り時間は、2分弱といった所か……という事は、この技で時間調整をするとしようか……)


実況「ダルシムがリングのど真ん中で、ヤムチャを捉えたぁ! そしてそのままヘッドロックで締め上げているっ!」

ローズ「ダルシム選手……やはり、得意の関節技で攻めてきましたね」

ヤムチャ(くそっ、時間がねぇのに、こんな技してんじゃねぇよ……投げろよ……! 殴れよ、蹴れよっ……!)

ダルシム(……そろそろ、来るかな?)


ゲンコツノジカンダー!


ヤムチャ(ん、 なんだ……? お客さんの……声援……?)

ダルシム(よしっ……! 来たっ……!)ググッ


実況「おっと、ヤムチャの頭を抱えたまま、ダルシムが拳を突き上げアピールだ! これはこれは……!?」


げ・ん・こ・つ! げ・ん・こ・つ!


実況「そして、場内からも大げんこつコールだ! これはこれは、どうやら完全にダルシムは狙っていたようですね、ローズさん!?」

ローズ「そうでしょうねぇ。ダルシム選手も勝負かけてきたんじゃないですかねぇ?」

ヤムチャ(なんだ、このコールは……? 盛り上がらない第二試合のはずなのに、なんでこんな大声援が起こっているんだ……?)

ダルシム「いくぞっ……! 若僧めっ……!」


げ・ん・こ・つ! げ・ん・こ・つ!


ヤムチャ(ひょっとして……これが、ダルシムさんの……大技……?)

ダルシム「諸君も、ヨガコールで私に力を与えてくれっ……! うおおおぉぉっ…… ! ヨガスマッシュ!」


実況「来たぞ来たぞっ! げんこつの時間だっ! これは、ダルシムの必殺技のヨガスマッシュ!」


ダルシム「うおおぉぉっ……! ヨガっ……!」ガスッ

ヨガッ!

ヤムチャ(うおっ、頭を殴ってきやがったっ……! と、とりあえずリアクションしねぇと……!)

ダルシム「ヨガっ……!」ガスッ

ヨガッ!

ヤムチャ「……ぐっ!」

ダルシム「もう一発っ……! ヨガっ……!」ガスッ

ヨガッ!

ヤムチャ「……ぐわっ!」


実況「さぁさぁ、ダルシムがヨガスマッシュを打ち込む度に……場内から、ヨガコールが巻き起こるっ!」

ローズ「いいヨガの布教になりそうですね」


ヤムチャ(なんで、こんなに盛り上がってんだよ……? この人、今日の試合で何もしてないんだぜ……? なのに、どうしていきなりこんなに盛り上げる事が出来るんだよ……?)

ダルシム「テンポを上げるぞ、連続で打ち込むっ……! うおおぉぉっ! ヨガっ、ヨガっ、ヨガっ……!」ガスガス

ヨガッ!ヨガッ!ヨガッ!

ヤムチャ(お客さんは、ダルシムさんの打ち込むタイミングと同時に、コールをしてるよな……? いや、これ……ダルシムさんがお客さんのタイミングに合わせて、殴ってるのか……?)

ヨガッ!ヨガッ!ヨガッ!

ダルシム「ヨガっ……! ヨガっ………! ヨガっ……!」ガスガス

ヤムチャ(この人、知ってたんだよ……この技さえすれば、お客さんが盛り上がって……大コールが巻き起こる事を……)


実況「さぁさぁ、ダルシムが連発で打ち込むっ! それに応えるように、場内から大ヨガコール!」


ヤムチャ(ブランカさんとは正反対のタイプだ……ブランカさんは、お客さんを飽きさせないように、面白い行動を間髪入れずに繰り出して、笑わせていくタイプだけど……)

ヨガッ!ヨガッ!ヨガッ!

ダルシム「ヨガっ……! ヨガっ……! ヨガっ……!」ガスガス

ヤムチャ(この人は逆だ……いつ面白い行動をするのか……まだかまだかなんてお客さんを焦らして焦らして……そして、最後に持っていくわけなんだ……これだけ、盛り上がるんだから……下手に自己主張する必要はなかったって事なんだ……!)

ダルシム「これで、フィニッシュだっ……!」

ヤムチャ(おっ……大きく振りかぶったって事は、これがラストの一発か……?)


実況「さぁ、ダルシムが大きく拳を振り上げて、溜めを作り……!」


ヨガッ!

ダルシム「うおおぉぉっ……! ヨガっ……!」ガスッ!

ヤムチャ「……ぐわぁっ!」バタッ


実況「とどめのげんこつを打ち込む、ヨガスマッシュ! ヤムチャは、大きくダウンします!」


ダルシム「皆の声援が私の力になった……感謝する……ナマステ……」ペコッ

パチパチ……パチパチ……


実況「ダルシムは、両手を合わせ、四方の観客に一礼だ。状態からは暖かい拍手が送られます!」

ヤムチャ(やべぇな……ダルシムさんのいい所、見せるのはもう十分だ……あれだけお客さん盛り上がったんだから、もう十分だろ……)

ダルシム「よし……そろそろ、私も決めにいくとするか……」

ヤムチャ(でも、最後は俺の勝ちで終わらないといけねぇんだから……次は俺が攻撃仕掛けねぇといけねぇんだろ……?)

ダルシム「さぁ、ヤムチャ……ベテランの底力を見せてやるっ……!」


実況「さぁ、ゆったりとした動きでダルシムがヤムチャに近づいて……」


ヤムチャ(いけるのか……? 今の俺に、あれ以上の声援を貰う事が出来るのか……? 出ないと、この試合……俺が、全てリードしたはずなのに……ダルシムさんに全部、持っていかれるんじゃねぇのか……!?)

ダルシム「さぁ、起きろっ……! ヤムチャっ……!」ググッ

ヤムチャ(試合時間も、もう大して残ってねぇのに……これは、マズいんじゃねぇの……!?)


実況「ヤムチャを引き起こします! そして、そのまま背後を捉えたぁ!」

ダルシム「うおおぉぉっ! バックドロップだっ……!」ドシーンッ

ヤムチャ「……ぐっ!」


実況「さぁ、ダルシムがヤムチャをバックドロップでリングに突き刺す!」

ローズ「綺麗なフォームですよね」

実況「げんこつで痛めつけられたヤムチャの頭部がリングに真っ逆さまだ! これは効いたか!?」


ヤムチャ(くそっ……時間はもう残ってねぇ……早くなんとかしねぇと……ダルシムさんに持っていかれちまう……)

ダルシム「さぁ、起きるんだっ……! ヤムチャよ……!」ググッ

ヤムチャ(もういいだろ、ダルシムさん……! あんた、いい所見せたじゃねぇか……俺に反撃のチャンスをくれっ……! 時間がもう残ってねぇんだよっ……!)


実況「さぁ、ダルシムがヤムチャを引き起こし、再び背後を捉えたぁ!」

ヤムチャ(またバックドロップを仕掛けるのか……? そんな事はもういいから……!)

ダルシム「……フンっ」クルッ

ヤムチャ(……ん?)


実況「おっと、ここでダルシムが素早く自らの身体を回転させて、ヤムチャと背中合わせの状態に!」

ローズ「その体勢のまま両腕をロックしていますね」


ダルシム「……よっと」ググッ

ヤムチャ(う、うおっ……なんだこりゃ……背筋伸ばすストレッチでふざけてんじゃねぇんだからさぁ……?)


実況「そのまま、前屈みに倒れ、ヤムチャの背をマットにつけます!」

ローズ「逆さ押さえ込みですね。ベテランらしい渋い技で決めに来ましたね」


ダルシム「よしっ……! レフェリー、フォームだ! カウントを!」

ダン「おうっ! 任せておけっ!」

ヤムチャ(あれ……? 俺、今、フォールされてんの……? これ……?)

今日はここまで

ダン「ワンっ……!」

ヤムチャ(うおおっ、やべぇ……! カウント取られてるぞ……!?)

ダン「ツーっ……!」

ヤムチャ(今日の試合は俺の勝ちなんだから……ここは返さないといけねぇ場面だろ……!)

ダン「……スリ」

ヤムチャ「う、うおっ……!」グイッ


実況「さぁ、カウントは2.8といった所でしょうか!? ギリギリの所でヤムチャがなんとか返していきます!」

ローズ「上手く丸め込んだんですけどね……後、一息という所でしたね……」


ダン「カウントはツーだっ! カウントツー!」

ダルシム「くそっ……しぶとい奴め……」

ヤムチャ(うおっ、危ねぇ危ねぇ……マジで負けちまう所だった……とにかく、ここから反撃にいかねぇと……!)

ヤムチャ(時間がない……とにかく、俺も盛り上げて勝ちにいかねぇと……)ムクッ


実況「さぁ、ここでヤムチャが素早く起き上がる!」


ヤムチャ(第二試合では、狼牙風風拳は封印されているから……トラースキックでフィニッシュが理想だろ……だから、トラースキックに繋げる為の攻防を作らないと……)

ダルシム「くっ……! しぶとい奴め……!」

ヤムチャ(トラースキックを打つ為には……あぁ、ダメだっ……! ちんたらちんたら投げ技してたら、時間もオーバーしちまうし……そもそも投げ技で、あんなに盛り上げれる自信なんてねぇよ……!)


実況「さぁ、そしてそのままヤムチャが……」


ヤムチャ(なんとか、打撃攻撃で盛り上げねぇと……! とにかく、時間もねぇし仕掛けねぇと……!)ダッ

ダルシム「……来るか、若造めっ!」


実況「そのまま、ダルシムに正面から突っ込んだぁ!」

ヤムチャ「……うるあぁっ!」ガスッ

ダルシム「……ぐっ!」


実況「さぁ、正面からのショルダータックルっ! 勢いよくダルシムに突っ込んでいく!」


ヤムチャ(ここから、連続で打撃攻撃を与えて……いや、その前にアピールいておいた方がいいか……? あぁ、考える事が多い……!)

ダルシム「……くそっ!」

ヤムチャ「ラッシュ仕掛けて、そのまま仕留めてやるぜっ! ダルシムさんよぉ……!?」

ダルシム「……ぬっ?」


実況「さぁ、ヤムチャが吠えた吠えたっ! ここで、ヤムチャも勝負を仕掛けてきたか!?」


ヤムチャ「蹴りだっ……! うるあぁっ!」ガスッ

ダルシム「……ぐっ!」

ヤムチャ「お次は……チョップだ……! うおおおぉぉぉっ……!」バシーンッ

ダルシム「……ぐおっ!」

ヤムチャ「オラっ……! オラオラっ……!」ガスガス

ダルシム「……ぐっ、うおっ」


実況「さぁさぁ、ヤムチャの怒涛の連続打撃攻撃っ! 蹴りにチョップ ! チョップに蹴り蹴りっ!」

ローズ「ラッシュ仕掛けてますね」


ダルシム(手数が多いな……まぁ、フィニッシュにいく為の下準備をしているのだろう……)

ヤムチャ「オラオラオラっ……! 行くぜ行くぜっ……!」ガスガス

ダルシム(ここは一撃で沸くような投げ技の方が嬉しかったが……ヤムチャ君は、あいにくそこまで技を覚えていない……これは致し方ない事だな……)ヨロッ


実況「さぁさぁ、ヤムチャの連続攻撃を受け……ダルシムもフラついてきたかぁ!?」


ヤムチャ「オラっ! そろそろ、フラついて来たんじゃねぇか!? 行くぜっ!」

ダルシム「……ぬっ?」

ヤムチャ「うおおぉぉっ……! 正面からの……延髄斬り……! くたばりやがれっ……!」シュッ


実況「おっと、ここでヤムチャが正面飛びからの延髄斬りを放ちます!」

ヤムチャ「……うるあぁっ!」

ダルシム「……ぐおおぉぉっ!」バターンッ


実況「これには、ダルシムも大きくダーウンっ!」


ヤムチャ(ここで、起き上がりに合わせて……トラースキックを打ちたい場面だけど……)

ダルシム「……うぐぐ」

ヤムチャ(いけるのか……? さっきみたいに、歓声は起きるのか……? 延髄斬り打てば、拍手の一つでも貰えるとでも思ったけど……)キョロキョロ


シーン


ヤムチャ(拍手の一つも貰えてねぇよ……多分、これじゃあ、さっきみたいに盛り上がりはしねぇだろうな……)

ダルシム「……くそっ」

ヤムチャ(何か、工夫をしねぇと……何かねぇか……? 何か、いい方法はねぇか……?)キョロキョロ

ヤムチャ(そうだ、ロープだ……! 前に、ケンさんとダブルトラースキックを打った時は……ロープに振った、サガットさんが戻ってくる所にカウンターで仕掛けたんだったな……!)

ダルシム「……ううっ」

ヤムチャ(これだったら、ゆったりした攻撃でダルシムさんも対応しやすいだろうし……起き上がりに合わせるのより、格好良く見えるんじゃねぇか……?)


実況「さぁ、ヤムチャがダルシムに近づいて……」


ヤムチャ「オラっ、いつまでも寝てんじゃねぇ! 起きやがれ……!」グイッ

ダルシム「……ううっ」


実況「そのままダルシムを引き起こします!」


ヤムチャ(ダルシムさんがロープに走っている間に、アピールして……トラースキックの構えをして……フィニッシュ……これだけやったら、さっきみたいな声援がきっと……)

ダルシム(体内時計は正確なようだな……そろそろフィニッシュだな……)

ヤムチャ「よしっ、これでとどめだっ……! ロープに走りやがれっ……!」ブンッ

ダルシム「……う、うおおっ」


実況「そして、ヤムチャがダルシムをロープに振ったぁ!」

ヤムチャ「うるぁ! これでフィニッシュにしてやるぜっ!」


実況「さぁ、ヤムチャが拳を突き上げ、フィニッシュ宣言っ! フィニッシュ宣言だっ!」


ヤムチャ「狙いを定めて……カウンターで仕掛けるっ……!」ググッ


ローズ「おっ、ヤムチャ選手が構えましたね?」

実況「これは、トラースキックの構えだ! ヤムチャは、カウンターでトラースキックを狙っているぞ!?」


ヤムチャ(この技で……ダルシムさん以上の声援を貰ってやる……!)

ダルシム「ううっ……くそっ……!」

ヤムチャ「そこだぁ……! オラァ、トラースキックだっ!」スパーンッ

ダルシム「うっ……ぐわあぁぁっ……!」バターンッ


実況「決まったぁ! カウンターのトラースキックが完全にヒットしたぁ! ダルシムは大きくダーウンっ!」

ヤムチャ「……どうだっ!?」


パチパチ……パチパチ……


ヤムチャ(拍手は貰えた……拍手は貰えたけど……)

ダルシム「……強い」

ヤムチャ(ダルシムさん程の、声援じゃねぇ……あれだけの場内の熱狂は……俺の攻撃では起きねぇ……)

ダルシム「……ぐはっ」ガクッ

ヤムチャ(試合もリードしたし……ミスらしいミスもしてないはずだ……だけど、これじゃあ試合に勝って、勝負に負けたようなもんだよ……俺はダルシムさん程の声援を貰えてねぇんだから……)


実況「ダルシムはリング中央で大の字だっ!」


ヤムチャ(まだ、時間は残っているか……? 今、拍手貰えたんだから……ここでコブラツイストでも仕掛ければ、ひょっとしたら声援貰えたりしねぇか……?)

ダルシム「……」

ヤムチャ(どうするどうする……ここでフォールに入って、試合を終わらせるか……コブラツイストを仕掛けて……ダルシムさんにギブアップしてもらうか……)

実況「おっと、ここでヤムチャが……!」


ヤムチャ「……くそっ、レフェリー、フォールだ! カウントをとってくれ!」

ダン「おうよ! 任せておけっ!」


実況「フォールに入ったっ! 今、レフェリーがカウントを取ります!」


ダン「ワンっ……!」

ヤムチャ(ダメだ……コブラツイストにはいけねぇ……下手したら試合時間をオーバーしちまうし……)

ダン「ツーっ……!」

ヤムチャ(一番自信のある……トラースキックより、大きな声援が貰える気はしない……それに、何より下手な事をして、盛り下がっちまう事が怖ぇ……)

ダン「……スリーっ!」


実況「ここでスリーカウントっ! 試合は決着です! ベテランと若手の勝負は……若手のヤムチャに軍配が上がったぁ!」


ヤムチャ(これがベテラン選手か……一番美味しい所は、持っていかれちまったな……ちくしょう……)

ダルシム「……」

実況「さぁさぁ、第二試合はヤムチャの勝利に終わりましたが……試合を振り返ってみて、いかがでしたでしょうか、ローズさん?」

ローズ「勢いで責めるタイプのヤムチャ選手と……堅実な試合運びをしようとしているダルシム選手……両者、異なるタイプの選手でしたのでね、スタイルの違いが見れて、いい試合でした」

実況「なる程! さぁ、今リング上でヤムチャの勝ち名乗りが挙げられ……おっと……?」

ローズ「……ん?」


ダルシム「……うぅ」ムクッ

ダン「……ん?」

ヤムチャ「……ん」

ダルシム「ううぅ……ヤムチャよ……」ヨロヨロ


実況「ダルシムが起き上がり、ヤムチャに近づきます! 何か、仕掛けようというのか!?」

ダルシム「ヤムチャよ……」

ヤムチャ(なんだなんだ……?)

ダルシム「いい試合だったよ……感謝する……ナマステ……」ペコッ


実況「おっと、ここで敗者のダルシムが勝者のヤムチャに一礼!」


ヤムチャ「あっ、いや……こちらこそ……な、なますて……」ペコッ


ローズ「おっ、勝者のヤムチャ選手も一礼しましたね」

実況「礼に始まり、礼に終わる! ゴングが鳴れば、互いは争う敵になるが……! 再び、ゴングが鳴れば互いは友となる! 」


ダルシム「流石は、空手軍団だな!? 皆の者、勝者のヤムチャ君にもう一度、拍手を送ってくれ!」グイッ

ヤムチャ「う、うおっ……」


パチパチ……パチパチ……

実況「さぁ、ダルシムがヤムチャの腕を挙げ……勝ち名乗りを上げてやります! 場内からは再び、暖かい拍手!」

ローズ「ダルシム選手はこの辺りが潔いい選手ですよね」

ヤムチャ(この人……自分を知ってやがる……)

ダルシム「皆、拍手を感謝する……! ナマステ……!」

ヤムチャ(この人も恐らくジョバーだ……試合中、やられまくって……試合にも負けまくってるから……)

ダルシム「ナマステ……ナマステ……」

ヤムチャ(負けた後は、こうやって勝者を讃える事が……一番、自分を格好良く見せれる手段だって、知ってやがるんだよ……)


ダン「おいおい、いつまでやってるんだよ……? 試合は終わったんだから、そろそろ退場しろよ……」

ダルシム「おぉ、すまない……あまりにいい試合が出来たからな……それじゃあ、ヤムチャ君、退場しようか?」

ヤムチャ「うっす」


実況「さぁさぁ、それではこの辺りで第二試合の中継を終了したいと思いま~す! 本日のゲスト解説は……」

ローズ「ローズです。ありがとうございました」

実況「CMの後は……女達の戦いだぁ! 本日の試合は、さくら対かりん! この二人もローズさんと同じようにメラメラと闘志を燃やしているぞ!」


ヤムチャ(確かに地味な選手だったよ……ブランカさんや、バイソンさんとは全然違う選手だ……だけど、自分を知ってやがる選手だな……)

今日はここまで

ーーー


プーアル「ヤムチャ様、お疲れ様でした! 今日の試合は、珍しくよかったですよ!? 実戦の勘も戻ってきたんじゃないですか?」

ヤムチャ「……おう、プーアル。ありがとな」

プーアル「どうしたんですか? 今日の試合は課題もクリアしたんだし……もっと、胸張りましょうよ。どうして、そんな暗い顔してるんですか」

ヤムチャ「やる事は、全部やった……課題も、多分クリアしたと思う……だけど、それでもダルシムさんには勝てなかった……」

プーアル「何、言ってるんです……ヤムチャ様がトラースキック打って、勝ったじゃないですか? ヤムチャ様、もしかして……ボケてきちゃいました?」

ヤムチャ「そうじゃねぇんだよ……試合中の、ダルシムさんへの歓声……プーアル、お前も聞いただろ……?」

プーアル「えぇ、聞きましたが……」

ヤムチャ「俺はあれだけの歓声を貰う事が出来なかった……俺の勝利で終わった試合なのに……俺ばかり攻撃してた試合なのに……」

プーアル「……」

ヤムチャ「お客さんの大声援を貰ってたのは……試合に負けて……ずっと攻撃を喰らってばかりのダルシムさんだった……一番いい部分は、持っていかれちまったよ……」

プーアル「……そんな事、ありませんよ。ヤムチャ様だって、格好よかったですよ」

ヤムチャ「くそっ、お客さん沸かせる方法……難しいな……技がまだ、足りてねぇのかな……?」

ダルシム「……ナマステ」


ヤムチャ「……ん?」

プーアル「あっ、ダルシムさん、お疲れ様でした! ヤムチャ様の指導、ありがとうございます!」

ダルシム「いい試合だったよ。私の注文に応えて、ゆったりとした試合を作ってくれて、感謝する。私もやりやすかったよ」

ヤムチャ「……ありがとうございます」

ダルシム「色々と、お客さん盛り上げる為に、アピールもしていたな。あれなら、きっとお客さんも沸くだろう……まぁ、使い所を間違えないようにな……」

ヤムチャ「……使い所?」

ダルシム「あぁ、例えば今日のハンドスプリングで起き上がるのなら、せいぜい試合中に出せるのは、恐らく二度か三度だ……」

ヤムチャ「何度もやってると……お客さんは飽きちゃいますからね……」

ダルシム「ヤムチャ君は試合の序盤に使っていたが……あれは、試合の終盤の逆転劇の前に使った方がよかったのではないか……?」

ヤムチャ「……えっ?」

ダルシム「試合の序盤に、あれだけ派手なアピールをしてしまうと……試合の終盤で困る事になるぞ? それより派手なアピールを強要されてしまうからな……」

ヤムチャ「……なる程」

ダルシム「アピールだって、技だ……地味なアピールからスタートして、派手なアピールを最後まで取っておかないとな……」

ヤムチャ「くそっ……そこだったか、やっちまったな……」

ダルシム「……やっちまった?」

ヤムチャ「ねぇ、ダルシムさん……? もし、俺がそのアピール、最後まで取っておいて……それやって、フィニッシュの攻防しかけたら……」

ダルシム「……ふむ」

ヤムチャ「ダルシムさんより、お客さんの歓声貰えましたかねぇ?」

ダルシム「……ん?」

ヤムチャ「ほら、ヨガヨガなんて、言いながら俺の頭を殴ってたヤツ……あの時より、大きな歓声貰えましたかねぇ?」

ダルシム「ハハハ、何を言っている。それは無理な話だ」

ヤムチャ「……無理?」

ダルシム「私を何年選手だと思っている? 10年選手だぞ?」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「10年選手の定番のムーブ……お約束の行動……君は、そんな物と争っている場合ではないだろう……?」

ヤムチャ「いや、でも……やっぱり、あれだけ歓声貰ってると……負けたって気がしますから……」

ダルシム「そもそも、私のヨガスマッシュは、第二試合……この位置でこそ大歓声を貰えるが……ここより、上の位置になると、声援なんてもらえないさ」

ヤムチャ「いや、あれだけ歓声貰ってたじゃないですか?」

ダルシム「この位置は面白い可笑しい試合をする場所だからな……これより上の位置は、戦いを見せる場所だ……お客さんの求めている試合内容も、当然変わってくる……」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「そんな場所であんな攻撃はうけない……先日、ヤムチャ君はブランカ君戦ったが……ブランカ君が第五試合でシャドルー相手に同じ内容の試合をしても……お客さんは、喜んではくれないだろう?」

ヤムチャ「確かに……そうかもしれませんねぇ……」

ダルシム「試合位置にあった戦い方もある。今日のヤムチャ君の動き……あれは、第五試合だったら、きっと歓声が貰えたと思うぞ?」

ヤムチャ「えっ……? マジっすか?」

ダルシム「……というより、随分と派手な第二試合になってしまったよ。第三試合のさくら君とかりん君が上手く調整してくれるといいのだがな」

ヤムチャ「えぇ……? 俺、やっちまいましたかね……コレ……」

ダルシム「気にする事はない。この程度なら、大丈夫だ。というより、女子部は春麗君が離脱してピンチだからな……いい試合をしてもらわねば、困る」

ヤムチャ「まぁ、一応、後でさくらちゃんに謝っておきますよ……」

ダルシム「今日のヤムチャ君の試合……現場監督がどう評価するか、わからんが……」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「第五試合に戻る事が出来るのか……それとも、第二試合継続か……はたまた、それの以外の処置取るのか……」

ヤムチャ「戻りてぇな、第五試合に……」

ダルシム「……もし、次に私と戦う機会があるのなら」

ヤムチャ「……」

ダルシム「その時は打撃攻撃を使ってくれても、構わんよ……」

ヤムチャ「……ん?」

ダルシム「ただし、私と戦う時は、第二試合だ……打撃攻撃を使ってもいいが、第五試合のような激しい試合には、しないでくれ」

ヤムチャ「おいおいおい……ダルシムさん、打撃攻撃には対応できねぇんじゃないんですか?」

ダルシム「何を言っておる。相手の攻撃に対応出来ないレスラーなど、いる訳ないだろう?」

ヤムチャ「いやいやいや……! 試合前、自分で言ってたじゃないですか……!?」

ダルシム「ヤムチャ君に今必要なのは、試合をリードする能力だろう? ヤムチャ君が好き勝手に打撃攻撃で責めると、激しすぎる第二試合になってしまう可能性があるからな……そうならないように、ヤムチャ君の行動を制限させてもらったよ」

ヤムチャ「騙したんですね……?」

ダルシム「今日の試合で私が打撃攻撃に対応する力に目覚めたのだろう。騙してなんかいないよ」

ヤムチャ「……よくもまぁ、いけしゃあしゃあと」

ダルシム「まぁ、今日の試合内容なら……これからは打撃攻撃でも試合をリードする事が出来るんじゃないかな? 手数で責めるんじゃなくて……ゆったりと間を取って責める……いい勉強になっただろう……? 手数を増やす事だけが、正しい行動ではない……」

ヤムチャ(くそっ……ゆったりとした試合しろって言われなかったら、多分アピールする事は、思い浮かんでねぇから……してやられたって、ワケか……)

ダルシム「それじゃあ、私はそろそろ失礼するよ……今日の試合……現場監督に評価されてるといいな……」


ヤムチャ「……あっ、お疲れ様っす」

プーアル「ダルシムさん、今日はありがとうございました!」

ヤムチャ「……なぁ、プーアル?」

プーアル「……はい」

ヤムチャ「俺、勝ったけどさぁ……あの人に勝ったけどさぁ……?」

プーアル「……はい」

ヤムチャ「負けてるよね……? あの人に凄ぇ、負けてるよね……?」

プーアル「……あの人は10年やってるんでしょ? 仕方なんじゃないですかねぇ?」

ヤムチャ「おいおいおい……大丈夫かよ……本当にこんな調子で第五試合に戻れるのかよ……」

プーアル「大丈夫ですって! ヤムチャ様だったら、すぐ戻れますよ!」

ヤムチャ「ブランカさんやダルシムさん……あの人達は、サガットさん達とは別の強さを持ってるぜ……やっぱり、ベテランなんだなぁ……」

プーアル「ヤムチャ様は、才能あるんですから! キャリアなんて才能で吹き飛ばしちゃいましょうよ!」

ヤムチャ「吹き飛ばせたらいいんだけどねぇ……明日は、どうなるかなぁ……また第二試合か……それとも第五試合に戻れるのか……」

プーアル「も~う、ウジウジ男らしくないすねぇ……ホラ、落ち込んでないで、さくらさんの試合でも見て、勉強したらどうですか!?」

ヤムチャ「そうだな……今日は早く終わったから、他の試合見て勉強するか。あ~、そういやサガットさんはメインイベントだったんだ……羨ましいなぁ……」

プーアル「ヤムチャ様、しつこい!」

ーーー


さくら「……さくら締めっす! フンっ!」ググッ

かりん「……くっ」


実況「さぁさぁ、さくらが背後から、かりんの首を捉えて首を締め付けるっ! こいつは、さくらの得意技、さくら締めだっ!」

キャミィ「……はい」

実況「ここにきて、この攻撃は厳しいか!?」


さくら「このまま……落ちてもらうっす……!」ググッ

かりん「くっ……負けませんわ……!」


実況「さぁさぁ、さくらがかりんの首を締めあげる!」

キャミィ「……そうですね」

実況「どうでしょう!? これ、完全にロックはかかっているんですかねぇ、キャミィさん!?」

キャミィ「……そうでもないと思います」

ヤムチャ「なんだかんだでねぇ……さくらちゃんも凄ぇわ……」

プーアル「そうですね」

ヤムチャ「俺の試合なんか関係ねぇよ……歓声も貰えてるし……いい試合してるじゃねぇか……」

プーアル「ヤムチャ様の試合に刺激を受けたんですよ、きっと!」

ヤムチャ「……そんな訳ねぇだろ。まぁ、勉強にはなる試合だわ」

プーアル「そうですね、ヤムチャ様は勉強です!」

ヤムチャ「やっぱり、技の数だ……俺とは技の数が違うよ……だって、同じ技を殆ど使ってねぇもん……」

プーアル「……今日、サガットさんにでも相談してみます?」

ヤムチャ「そうするよ……サガットさんに相談して……新しい技を教えてもらわなきゃな……」

さくら「……はぁっ!」ググッ

かりん「負けません……負けませんわっ……!」ジタバタ


実況「さぁさぁ、かりんは背後から締め上げているさくらから逃れようと、大きく身体を揺さぶっております!」

キャミィ「……そうですね」

実況「これは、ロックを振りほどこうと、?いているのでしょう! どうでしょうか、逃げれるんでしょうかねぇ?」

キャミィ「……さぁ?」


さくら「……くっ、しぶといっす! やるっすね!」

かりん「ロックが完全にかかってませんわっ……! これなら、逃げれそうです……!」ジタバタ

さくら「……こうなりゃ、作戦変更っす! いくっすよ!」

今日はここまで
今年の更新はこれでおしまい 来年四日からまた再開します
とてもとても中途半端な位置で申し訳ありませぬ

さくら「……ふんっ!」ドスッ

かりん「……ぐっ!」


実況「おっと! 背後から、さくら締めを仕掛けているさくらが、そのままかりんへエルボードロップ! 強烈な肘打ちを叩きつけた」

キャミィ「……えぇ」

実況「これは……このままでは、ロックを振りほどかれてしまうと思ったさくらが、上手く切り返して一歩先にいったという感じなんですかねぇ、キャミィさん?」

キャミィ「……どうなんでしょうね」


かりん「くっ……流石、さくらですわ……」

さくら「よしっ……! このまま決めてやるっす……!」


実況「さぁ、かりんは大きくダウンします! そしては、さくらはそのままコーナーへ! これはこれは……何かを狙っているんでしょうかねぇ、キャミィさん!?」

キャミィ「……そうかもしれませんね」

かりん「……うぅ」

さくら「よしっ、いくっすよ……」


実況「さぁ、さくらが今コーナーポストに昇っております! こいつは、コーナーポストからのダイビング攻撃……さくら落としを狙っているんでしょうか!?」

キャミィ「……そうですね」


さくら「……」チラッ


実況「……おっと、今さくらがこちらの本部席の方を見ませんでしたかねぇ?」

キャミィ「……そうなんですか?」

実況「私、さくらと視線が合ってしまいました! ひょっとして、さくらは私の事を見ていてくれたのか!? こいつは、私、恋の予感です!」

キャミィ「……勘違いじゃないんですか?」


さくら「これで、決めてやるっす……! 次は、あんたの番っすよ……」ビシッ


実況「ほらほら、キャミィさん! さくらがこっちに指を指しているじゃありませんか!? これは、私に向かって言っているんですよ! 愛のフィニッシュ宣言っ! 愛のフィニッシュ宣言ですよ、これは!」

キャミィ「……はぁ」

かりん「うぅ……負けませんわ……」ムクッ

さくら「……よし」


実況「さぁ今、かりんがゆっくりと立ち上がった! そして、さくらは狙っている……狙っているぞ……!?」

キャミィ「……はい」


かりん「うぅ、さくら……? さくらは何処に行きましたの……?」キョロキョロ

さくら「かりん、 後ろっすよ!」

かりん「……後ろ?」クルッ

さくら「これで……フィニッシュっす……! いくっすよ、さくら落とし……!」

かりん「!」


実況「さぁ、さくらがコーナーポストから跳んだぁ! 私はしっかりと目に焼きつけるぞ! その愛のさくら落としを!」

キャミィ「……」

かりん「甘いですわ、烈殲破……! はぁっ……!」ヒュンッ

さくら「……何っ!?」


実況「おっと、だがしかし! コーナーポストから跳んでくるさくらに対して……かりんも高く跳んで向かっていく!」


かりん「撃ち落として差し上げますわ、このまま……はぁっ!」ガスッ

さくら「……ぐっ!」


実況「空中でお互いの身体が交差するっ! かりんはそのまま大きく弧を描くような動きの掌底をぶつけ、上からさくらをマットへと叩きつける!」

キャミィ「えぇ」

実況「ミサイル攻撃迎撃成功っ! こいつは驚きだ! かりんが下からの攻撃でさくらの身体を叩き落としたぁ!」


さくら「くっ、最後の最後で……油断したっす……」

かりん「オーホッホッホ! 何に気をとられてたかは知りませんけど……いつものキレがない攻撃でしたわね」

実況「さぁさぁ、かりんが高笑い。ちなみに私、あぁいった高飛車なタイプの女性も好みであります!」

キャミィ「……はぁ」

実況「いやぁ、一度尻に敷かれてみたい! さぁさぁ、そのままかりんがさくらに近づいて……引き起こしたぁ!」


さくら「……うぅ」ヨロッ

かりん「ベルトを見るのはいいですが……先ず、目の前の相手を見るべきじゃなくて?」

さくら「……くっ!」

かりん「今日のあなたのお相手は、この私ですわよ……私だってベルトを狙っているんです……容赦はしませんわ……はぁっ!」シュッ

さくら「……ぐっ!」


実況「そして、得意の掌底を打ち込んでいくっ! かりんが復活したか!?」

キャミィ「……そうですね」


かりん「容赦はしませんわよ……! はぁっ……たぁっ……!」シュッシュッ

さくら「うぅっ……くっ……!」

実況「さぁさぁ、かりんが二発三発と得意の掌底を打ち込む! これは、さくらもピンチか!?」


かりん「はぁっ……たぁっ……!」シュッ

さくら「……ううっ」ヨロッ

かりん「よし、これでフィニッシュにしてやりますわ……はぁっ!」


実況「さぁさぁ、大きくフラついているさくらを尻目に……かりんがロープへと走ったっ! これは、狙っているんでしょうかねぇ、キャミィさん?」

キャミィ「……わかりません」


かりん「とどめは……勿論、この技ですわ……!」

さくら「負けないっす……負けてたまるもんかっす……!」

かりん「いきますわっ……!神月流神扉開闢っ……!」


実況「ロープの反動をつけたかりんがやってきたっ! そして出るのか、神月流神扉開闢!」

かりん「……はあぁぁっ!」

さくら「……甘いっすっ!」シュッ

かりん「……何っ!?」


実況「おっと、ここで掌底を打ち出してきたかりんの腕を……さくらが上手く掴んで防御したっ!」


さくら「絶対、負けないっすよ……たああぁぁっ!」グッ

かりん「……くっ!」


実況「そしてそのまま、さくらはかりんに体重を乗せて……グラウンドへの体勢へと持っていきます! 脇固めですかねぇ? 上手いテクニックを見せました!」

キャミィ「……そうですね」


さくら「必ず、ベルトを取ってやるっすよ……見てるがいいっす……」チラッ

かりん「くっ……くっ……」


実況「おっと、さくらがまた私の方を見たぞ!? 大丈夫だ、私は応援しているぞ! 頑張れ頑張れ!」

キャミィ「……はぁ」

さくら「確か、腕をロックして……それから、フェイスロックを……」グイグイ

かりん「くっ……!」


実況「さぁ、さくらが何か仕掛けようとしていますが……フェイスロックですかねぇ? 何か、新技なのでしょうか?」

キャミィ「……さぁ?」


さくら「確か、こんな感じだったっす……! 決まったっす!」ググッ

かりん「うっ……!」


実況「おっと、これは……!? 腕を固めながらのフェイスロックですが……」

キャミィ「……えぇ」

実況「この技は、キャミィさんのCQC……キャミィ・クイック・コンビネーションの……ラストのフェイスロックではありませんかね!?」

キャミィ「……そうですね」


さくら「ベルトを取る力は……自分にだってあるっすよ……! キャミィさんに使える技なら……自分だって使えるっすよ……!」ググッ

かりん「くっ……ううっ……!」

実況「なんという事だ! さくらがキャミィの必殺技を使っている! ……という事は」

キャミィ「……」

実況「今日の試合中、私は何度もさくらと目が合ったと思っていたが……私に指を指してくれて愛の告白をしてくれていたと思っていたが……」

キャミィ「……」

実況「なんという事だ、それは全て間違っていた! さくらの全ての行動は……この私の隣にいる……」

キャミィ「……」

実況「キャミィさんを意識しての行動だったかのか! さくらは今日の試合、チャンピオンベルトを持っている、キャミィさんを意識していたのか!」

キャミィ「……はぁ」


さくら「さぁさぁ、ギブアップしてもらうっすよ……そして、ベルトの挑戦権を貰うっす……!」グイグイ

かりん「くっ……! ううっ……!」


実況「私、大失恋でありますっ! だがしかし、めげないぞ、実況は続けさせていただきます! さぁさぁ、さくらが締め付ける! これで決めてしまうのかぁ!?」

さくら「……はあぁぁっ!」グイグイ

かりん「……ううっ」

ダン「おい、かりん、大丈夫か!? どうすんだ、ギブすんのか!?」

かりん「ううっ……悔しいですが……ギブアップですわ……」

ダン「おいっ! タップしたぞ、ゴング鳴らせ、ゴングを! ギブアップだ!」


カンカンカーン


実況「おっと、ここでかりんがギブアップ! 試合は決着です! さくらのCQC……といっても、この技はキャミィでもコンビネーションでもありませんからねぇ……?」

キャミィ「……えぇ」

実況「変形クイックフェイスロックとでも言えばいいでしょうか? さくらの変形クイックフェイスロックで……試合は決着です!」

パチパチ……パチパチ……

実況「今、勝者の勝ち名乗りが挙げられます! 場内からは暖かい拍手だぁ!」

ーーー


ヤムチャ「……いやぁ、やっぱりねぇ、さくらちゃんも格好良い試合してるねぇ」

プーアル「そうですね」

ヤムチャ「やっぱり、投げにしても間接技にしてもさ……? 何処か、華やかさがあるよね。俺と違って」

プーアル「ヤムチャ様もそのうち、出来るようになりますって!」

ヤムチャ「そうなると、いいけどねぇ……おい、プーアル? さくらちゃん、試合終わったみたいだからさ、さくらちゃんの所に遊びに行こうぜ?」

プーアル「……えっ?」

ヤムチャ「一人で試合見てるの、退屈なんだよ……ほら、試合見て勉強する時は、いつも隣にバルログさんとかケンさんがいて、わかんない所はその場で聞けてたじゃん?」

プーアル「一人って……僕が隣にいるじゃないですか」

ヤムチャ「プーアルは、本格的な事はわかんないだろ? だからさ、次の試合からは、さくらちゃんに細かい所教えてもらいながら、見ようぜ」

プーアル「まぁ、ヤムチャ様がそう言うなら……」

ヤムチャ「……何かを飲み物でも買って行ったら、気が効く男って思われるかな? おい、プーアル、飲み物も買って行こうぜ!」


プーアル「……そのコミュニケーション能力を、リュウさんとか、ケンさんとか、ブランカさんとかに使えればいいんですけどね、ヤムチャ様は」

ーーー


実況「さぁさぁ、これにて第三試合は終了しました、今さくらが退場しようと……ん……?」


さくら「……次は、あんたの番っすよ」ビシッ


実況「おっと、さくらがこちらの本部席の方を指差したぁ! これは、私にへの愛の告白か!?」

キャミィ「……」

実況「……と言いたい所ですが、そうではありませんね。おそらく、さくらの狙いはこの私の隣にいる、キャミィさんでしょう!」

キャミィ「……」


さくら「よしっ、じゃあ、退場するっす! 会場の皆さ~ん、今日は応援ありがとうっす!」


実況「これはチャンピオンに、挑戦表明……でしょうかねぇ……? さぁ、さくらは今、退場します!」


パチパチ……パチパチ……

さくら「ありがとうっす! 次も必ず勝つっす!」

サクラチャーン! ベルトトレヨー!

さくら「任せるっす! 必ず、ベルト取って見せるっす!」

今日はここまで

実況「いやぁ、実に華やかな試合でしたが……キャミィさん?」

キャミィ「……はい」

実況「やはり、チャンピオンベルトを持っているというだけで……知らず知らずのうちに敵を作ってしまっている、という事なんでしょうか?」

キャミィ「……そうなんですか?」

実況「今日のさくらは……非常にチャンピオンを意識した戦い方だったじゃありませんか? 実際、キャミィさんの目にはどう映りましたかねぇ?」

キャミィ「まぁ、ベルトに挑戦してくるのなら、挑戦は受けますし……」

実況「……ほう」

キャミィ「戦う機会があるのなら……戦います……」

実況「……ほうほう」

キャミィ「えっと、彼女は私の事を意識しているようですが……まぁ、そういった事に左右されずに……」

実況「……あの程度の挑発など、チャンピオンにとっては、どうって事ないと?」

キャミィ「はい……まぁ、そんな感じです……」

実況「なる程、こいつは頼もしい自信だ。 自分のファイトスタイルを貫けば、自ずと結果はついてくる! あの程度の挑発など、屁の河童だ! ……そういう事でよろしいですね?」

キャミィ「……はい」

実況「確かに、さくらは本日のフィニッシュホールドは、キャミィさんのCQCを意識されていた様ですが……やはりキャミィさんのCQCと比べると、どうしても見劣りしてしまいますね!?」

キャミィ「……はい」

実況「次回のキャミィさんの試合では、本物のCQCを……是非、見せて下さいね。お願いしますよ!?」

キャミィ「……まぁ、機会があれば」

実況「……ついでに、私とのデートの約束なんかも、お願いしてもよろしいですかね!?」

キャミィ「……」

実況「おぉ~っと、辛いっ! 辛いぞ、無視は辛いぞ! これは、私の心にスパイラルアローがクリティカルヒットしてしまったか!?」

キャミィ「……」

実況「おっと……なんと、ここでお時間だと!? こんな状態で第三試合の中継は、お時間となってしまったのか!? 私、ラストのラストで大失敗か、これは!?」

キャミィ「……」

実況「それではラストに、本日のゲスト解説をもう一度紹介しておきましょう! 本日のゲスト解説は、女子部のチャンピオン……」

キャミィ「……キャミィです。ありがとうございました」

実況「CMの後は……ナッシュ・ガイル組レベンジなるか!? タッグチャンピオン選手権ですっ!」

ーーー


さくら「キャミィさん、お疲れ様っす!」

キャミィ「……お疲れ様でした」

かりん「ねぇ、キャミィ……? もう少し、頑張れなかったの……? こっちだって、頑張ってやってるんですから……」

キャミィ「……ごめんなさい」

さくら「まぁまぁ、かりん……キャミィさんは、マイクはあまり得意じゃないっすから……」

かりん「マイクは得意じゃないって……それでも、今ベルトを持ってるのはキャミィなんですから……もうちょっと、頑張ってもらわないと困りますわ……リングでは貴方を意識してやってるのに……」

キャミィ「……私の解説、ダメでしたか?」

さくら「まぁまぁ、二人共……ちょっと、落ち着きましょうよ……」

かりん「ダメも何も……キャミィは、何もしてないですわよ……ただ、相槌を打ってただけじゃありませんか……」

キャミィ「……ごめんなさい」

ローズ「キャミィちゃん、リング上では凄く生き生きしてるのに……どうして、マイクはあんな風になっちゃうのかしら……?」

さくら「ローズさんはマイクが上手いから、そんな風に言えるっすよ……ローズさんも出てきたら、話がややこしくなるから、もう辞めませんか、この話……?」

かりん「……春麗さんが抜けて女子部はピンチですわ。だったら、ベルトを持ってる人間が盛り上げていかなきゃいけませんわよ」

さくら「……そんな事言ったって、あれは事故っすよ。キャミィさんだって、好きでベルト巻いたワケじゃないっすよ。ねぇ、キャミィさん?」

キャミィ「……はい」

ローズ「……でも、キャミィちゃんも、いつまで経ってもマイク出来ないままじゃいけないでしょ?」

かりん「そうですわ」

さくら「……まぁ、そうっすけど」

ローズ「事故だろうが、何だろうがベルトを持ったのは事実でしょ? ベルトを巻いてるんだったら、中心になって回していかなきゃいけないんじゃないの?」

かりん「……このままじゃ、春麗さんが抜けた女子部は盛り上がりませんわ」

さくら「……だからって、キャミィさんに全部押し付けるのは、良くないと思うんっすよね? 皆で頑張りましょうよ?」

ローズ「……キャミィちゃん、あの話受けたら?」

かりん「……あの話?」

さくら「あ~、ダメダメ……! それは、まだ決定してないっすよ……! まだ、どうなるか、わからないっす!」

ローズ「でも、キャミィちゃんが、シャドルー軍団に入れば、苦手なマイクなんかはベガさんや、バイソンさんにして貰えるでしょ?」

かりん「……そんな話がありましたの?」

ローズ「……現状の女子部を回していくのなら、そうするしかないんじゃない? キャミィちゃんはマイク出来ないんだから」

キャミィ「……」

さくら「この少ないメンバーで、軍団抗争してどうっするすよ。女子部には、そこまで人数いないっすよ」

かりん「……でも」

さくら「……あ~、おしまいおしまいっ! この話はおしまいっす! 次の試合で自分とキャミィさんが、絶対盛り上げるっすから……! この話はとりあえず、保留にしておくっす!」

ローズ「……でも」

かりん「……何、怒ってんのよ、さくら」

さくら「別に怒ってないっすよ……ほらほら、散った散った……この話は、保留っす! とりあえず、保留!」

ローズ「……」

かりん「……」

さくら「あ~……頭、痛いっす……」

ヤムチャ「お、おう……さくらちゃん、お疲れ様……試合、良かったよ、勉強になったわ……」

さくら「あっ、ヤムチャさん……」

ヤムチャ「ご、ごめんね……? 別に盗み聞くつもりはなかったんだけどさぁ……口論してるのが、聞こえて……出るタイミング失ってさ……そのまま……」

さくら「……嫌な所、見られちゃったすね」

ヤムチャ「女子部も大変みたいなんだね……あっ、飲み物買ってきたんだけど、さくらちゃん、飲むかな……?」

さくら「……ありがとうっす」

ヤムチャ「春麗さんが抜けて……そっちはそっちで大変みたいなんだね……?」

さくら「春麗さんの穴埋めを誰がするかって話だったんですけど……いきなりキャミィさんには、キツいっすよ……キャリアが違うんだから、同じ会場人気を求めるのは無謀っすよ……」

ヤムチャ「……シャドルー軍団に入るとか言ってたみたいだけど?」

さくら「どうせ、ベガさんの思いつきだと思うっすよ……まぁ、サガットさんに、相談してみますかねぇ……」

ヤムチャ(困ったねぇ……楽しくお喋りが出来ると思って、ここに来たのに……タイミングが悪かったのかな……? これ、来ない方が良かったのかな……?)

さくら「?」

ヤムチャ「あっ、いやっ……え~っと、え~っと……飲みに行く……?」

さくら「あら、ヤムチャさん、どうしたんっすか……?」

ヤムチャ「いやぁ……今日は俺が、さくらちゃんの愚痴聞いてあげてもいいよ……? だから、飲みに行く……?」

プーアル「……ヤムチャ様、ここには勉強しに来たんじゃないんですか? なんで、お酒の話になるんですよ、ここで」

ヤムチャ「いいじゃねぇか、さくらちゃん、何か色々あるみたいなんだし……それに、プーアルだって結構楽しんでんじゃねぇか、あの飲み会」

さくら「そういや、今日のヤムチャの試合、良かったっすよ」

ヤムチャ「……おっ、マジで?」

さくら「ヤムチャさんが、いい試合したから……こっちも負けてられないって思ったっすよ。ヤムチャさん、何か掴みましたか?」

ヤムチャ「これ、さくらちゃんに褒められるって事は……明日は第五試合に戻れるんじゃねぇか……? 同業者に褒められるってのは、ちょっと自信になるな、これ」

プーアル「……ベジータさんや、ピッコロさんは、全く褒めてくれませんもんね」

ヤムチャ「うるせっ、プーアル! 黙ってろ!」

さくら「ヤムチャさん達は、いつも賑やかっすよね。ヤムチャさん達、見てると元気が出てくるっす」

ヤムチャ「……俺がプーアルに苛められてるだけなんだけどね」

プーアル「……違います。僕の言葉はヤムチャ様に対する愛のお説教です」

ヤムチャ「最近のプーアルには、愛が感じられない……感じられないよ……」

さくら「あはは、とりあえず着替えてくるから待ってて欲しいっす。悩んでてても仕方ないっすよね! とりあえず、飲みに行きましょうか!」

ヤムチャ「おう」

数十分後ーー


ヤムチャ「いやぁ、こうして見ると……やっぱりリュウさんも、ケンさんも、格好いいなぁ……うん、リングの外から見る分には格好いい……」

さくら「そりゃ、人気ナンバースリー人っすもん。当然っすよ」

プーアル「ヤムチャ様も負けずに頑張りましょう!」

ヤムチャ「おう、任せておけや。とりあえずは第五試合に戻らねぇとな……やっぱり、この位置で試合がしてぇわ……」

さくら「ヤムチャさん、その意気っすよ!」

ヤムチャ「……あ~、そういや、さくらちゃん、ごめんね?」

さくら「……何がっすか?」

ヤムチャ「いやぁ、飲みに行って愚痴に付き合うとか言ってたのに……こうやって、俺の勉強に付き合ってもらってさ……わからない所は教えてくれたりしてさ……」

さくら「仕方ないっすよ。だって、シャワー浴びて、着替えて出ててきたら、ヤムチャさんが食い入るように試合見てるんすもん」

ヤムチャ「……我ながら、恥ずかしい」

さくら「勉強熱心なのは、恥じる事はないっすよ? そういう事だったら、いくらでもこっちは付き合うっすよ!」

ヤムチャ「本当、ありがとね」


バイソン「ふぅ……いやぁ、今日の試合は疲れました……お疲れ様です……」


ヤムチャ「おっ、バルログさんも戻って来たみたいだな」

プーアル「バルログさん、お疲れ様です!」

さくら「お疲れ様っす!」

ヤムチャ「バルログさん、試合良かったですよ!」

バルログ「……う~ん」

ヤムチャ「……あれ、どうかしたんですか?」

バルログ「いやぁ、どうなんですかねぇ……試合自体は、そりゃいい試合は作りますよ、私は……ベガさんだっているんだし、相手はリュウ君とケン君です……」

ヤムチャ「……はぁ」

バルログ「でも、リュウ君がベガ様に勝てるかも……って、思わせるような試合……出来てましたかね……?」

さくら「……う~ん」

バルログ「試合は出来てたけど……課題は失敗……自己分析ではそんな感じですかね……」

ヤムチャ「俺は、格好いい試合だと思いましたけどねぇ……?」

バルログ「格好いい試合を見せるのは当然ですよ。それプラス課題をクリアしなきゃ……」

ヤムチャ「……はぁ」

バルログ「そういや、ヤムチャ君の今日の試合……あれ、課題クリアしてたんじゃないですか? 良かったですよ」

ヤムチャ「おっ、また褒められたぞ」


プーアル「ヤムチャ様、調子に乗らない!」

バルログ「これから、どうします? 飲みに行きます? それとも、サガット達の試合待ちます?」

ヤムチャ「なんか……今日は、皆の試合の終わる時間がバラバラっすよね……」

バルログ「……そういう日もありますよ」

ヤムチャ「どうせだったら、サガットさん達の試合が終わるの待ちましょうよ。ダンさんも連れて、皆で仲良く行きましょう」

さくら「ヤムチャさんが第五試合に戻れれば……待ち惚けの時間は減るっすよ?」クスクス

ヤムチャ「そりゃ、俺だってわかってるよ、さくらちゃん! だから、こうやって勉強してるんじゃねぇか」

バルログ「……本当、ヤムチャ君早く第五試合に戻って来て下さいね?」

ヤムチャ「後、二試合で戻ります……俺の計算ではブランカさんに勝つ試合が一試合……ダルシムさんに勝つ試合が一試合……それで、試合をリードする能力はクリアです」

プーアル「……またまた大きく出ちゃって」

バルログ「まぁ、期待してますよ。ヤムチャ君が戻れば……空手軍団とシャドルーの抗争もより盛り上げるでしょう」

ヤムチャ「うっす!」

今日は短かったな
まぁここまで

居酒屋ーー


サガット「ふむ。今日は皆の試合がバラバラだったからな……誰の試合から反省会をする? 一番最初に怒られたいのは誰だ?」

さくら「……あ~、じゃあ、自分からいいっすか、サガットさん?」

サガット「一番手は、さくらちゃんか……まぁ、試合内容自体は良かったと思うぞ、俺は」

ヤムチャ「俺も良かったと思いますよ!」

バルログ「えぇ、良かったですよ、さくらさん」

バイソン「本部席のキャミィに向かって挑発してたよな? いい間だったと思うよ」

さくら「まぁ、キャミィさんがチャンピオンになってしまいましたからね……あぁやっていかないと……」

サガット「……ふむ」

さくら「……で、その事で相談があるんすけどね?」

サガット「ほう、どうした……?」

さくら「やっぱり、キャミィさんと春麗さんじゃ、まだまだ会場人気違うじゃないですか?」

サガット「……そうだな」

さくら「それで、今春麗さんが抜けて……結構、ピンチの状況っすから、キャミィさんにシャドルー加入の話が出てるんですよ」

サガット「……ほう、ヒールターンというワケか」

さくら「そうすれば人気も上がるかもしれないし……マイク下手なキャミィさんの欠点もベガさんや、バイソンさんにカバーしてもらえそうっす……」

サガット「……その話を出したのは、ベガ様か?」

さくら「そうっす、ベガさん得意の思いつきっすよ……今の女子部の人数で、ベビーとヒールの構図を作っても、そもそも人数が足りないっすよ……」

サガット「結局、シャドルーといっても、女子部ではキャミィ一人だからな。少なくても、もう一人は欲しいが……しかし、そうなると今度はベビーの数が足りなくなるな……」

さくら「……この話、どう思うっすかねぇ?」

サガット「まぁ、マイク下手な点をカバーするという意味ではいいと思う」

さくら「……はい」

サガット「キャミィがシャドルー加入すれば、堂々とバルログやバイソンがセコンドについて……キャミィの代わりにマイクアピールを出来るんだからな」

さくら「……」

サガット「春麗が戻って来た時に、絶対王者の春麗と、ヒールのキャミィ、そしてそれを出し抜こうとしている、さくらちゃん達……タッグの試合は組みにくそうだが、シングルで回すんだったら、面白い試みだと思う……」

さくら「……う~ん」

サガット「……ただ、これは個人的な感想になるのだが」

さくら「個人的な感想でも構わないっすよ、お願いします」

サガット「今、シャドルーの戦力を増やしてしまうのは、好ましくないな……まぁ、それは俺達の努力不足なんだろうがね……」

さくら「……」

サガット「折角、ヤムチャ君が加わり、リュウ・ケン・ヤムチャ君の空手軍団と……俺と、バルログとバイソンの三人……戦力が拮抗してきたのに……」

ヤムチャ「……あれ、ベガさんは?」

バルログ「ベガ様は、ホラ……どっちかと言うと、ザンギエフさんと戦う機会が多いですから……空手軍団の始末は手下の私達に任せて、自分はゆっくりとザンギエフさんの首を狙っているというワケですよ」

ヤムチャ「ほ~う、なるほど……」

サガット「そこにキャミィが加わるとしたら、少しシャドルーの戦力が優ってしまうな……ましてや、キャミィはしばらくは女子部のチャンピオンでやっていくんだろ?」

さくら「……そうっすよね」

サガット「こっちとしては、キャミィのセコンドにバイソンやバルログを取られてしまうのも痛いな……バイソンやバルログは……俺とすれば、リュウの人気をあげる為に使いたい……」

バルログ「確かに……今日の試合は、セコンドにバイソンが欲しかったですね……その上で、リュウ達が勝ったら、結果は違ったものになったのかもしれません……」

ヤムチャ「……俺も第二試合でやってる場合じゃねぇな。 俺が早く戻らないと、またシャドルーが強くなっちまうのか」

サガット「そうだぞ? ヤムチャ君も早く戻ってきてくれよ、こっちに」

ヤムチャ「う、うっす……!」

バイソン「いっそよぉ、さくらちゃんも空手軍団に加入してみるってのは、どうだ? さくらちゃんだったら、空手スタイルでも出来そうじゃねぇか?」

バルログ「……ま~た、バイソンはそうやって場をかき乱す」

バイソン「なんでだよぉ? 空手軍団はさくらちゃんが加入で……俺達シャドルーはキャミィが加入……バランス取れてるじゃねぇか?」

ダン「おいおい、バイソン……だったら、その後の女子部はどうなっちまうんだよ……?」

バイソン「……ん?」

ダン「絶対王者の春麗と、シャドルーのキャミィと、空手軍団のさくら……かりんとローズはどう使うんだよ……これじゃあ、大したカードは組めねぇぞ?」

バイソン「あっ、そっか……」

さくら「やっぱり、女子部は女子部でなんとかやるしかないんすかねぇ……?」

サガット「なんだかんだ言ったが、春麗が抜けて女子部はピンチなんだ。 そういう状況なら、俺達も手伝うしかないさ。キャミィ本人の意思はどうなんだ?」

さくら「う~ん、キャミィさんはいきなりチャンピオンになって……その上シャドルー加入の話が出てきての、ダブルパンチっすから……」

サガット「……確かに」

さくら「まぁ、正直な話、戸惑ってるって感じですね。本人もまさか自分がチャンピオンになって、女子部を回していくのはまだ早いと何処かで感じてたと思うっす……」

バルログ「でも、事故であれ、ベルトを巻いてしまって春麗さんは離脱している状況でしょ? やっぱり、シャドルー加入じゃないとしても……何か動きを見せないといけないんじゃないんですかねぇ……?」

さくら「キャミィさんも、それはきっと理解してるっす……動こうとしてるけど、結果ついてこない……って感じっすかね?」

バイソン「まぁ、確かに昨日の試合はそんな感じがしたわ」

ヤムチャ「……チャンピオンになるって、大変なんだなぁ」

プーアル「でも、ずっと第二試合で続けるのも、大変なんじゃないですか、ヤムチャ様?」

ヤムチャ「あ~、それも大変そうだ……ずっと、ブランカさんと戦わなきゃいけねぇんだから……」

サガット「一度、キャミィをここに連れてきてみたらどうだ? さくらちゃんだけが何とかしてあげようと考えるより、本人もこの場にいた方が話も進むだろう」

さくら「……そうっすね。じゃあ、今度は連れてきますよ」

さくら「じゃあ、女子部の話は以上っす! じゃあ、改めて反省会を始めましょうか!」

ヤムチャ「さくらちゃんも大変なんだな……じゃあ、次は俺がいっていいっすか!?」

サガット「おっ、ヤムチャ君か……と、いっても今日の試合は良かったと、思うぞ……まぁ、先ずは自己分析から聞こうか……」

バルログ「ヤムチャ君の自己分析……楽しみですね……」

ダン「とんでもなくズレた事、言うんじゃねぇか、こいつはよぉ?」

ヤムチャ「そんなにズレた事は言いませんよ、ダンさん……先ず、自己分析では、今日の試合は結構リード出来てたんじゃないかとは思ってるんですけど……そこは、どうでしたか?」

サガット「おう、それは出来てたぞ。ヤムチャ君が試合をリードしてたな」

バルログ「……というか、ヤムチャ君、ああいうゆったりとした攻防も出来るんですねぇ? ダルシムさんとは、そんなに打ち合わせの時間なかったでしょ?」

バイソン「ダルシムさんに合わせてやったのか? 初顔合わせなのに、よく出来たじゃねぇか」

ヤムチャ「あ~、それはダルシムさんにゆったりした試合を作ってって言われてたんですよ……変な嘘つかれて……打撃攻撃、封印されちまいましたよ……」

サガット「……という事は、ぶっつけ本番であの試合を作ったのか。ヤムチャ君は、本当に才能があるな。凄いじゃないか」

プーアル「サガットさん、ヤムチャ様はそういう事言うと、すぐに調子に乗っちゃうタイプですから、言わないで下さい」

ヤムチャ「……プーアル、冷てぇなオイっ!」

プーアル「……だって、本当の事でしょ?」

ヤムチャ「でも、まぁ、なんだかんだで反省点はありますよ? サガットさん、俺、調子に乗ってません。大丈夫です」

サガット「ほ~う……では、その反省点を聞かせてもらおうか……」

ヤムチャ「あのねぇ……俺、試合が始まった時は、ダルシムさんに注文されてたから、ゆったりとした試合を……って思って、間をとって攻撃をしてたんですよ」

バルログ「あぁ、そういえば、色々とアピールしてたりしてましたねぇ?」

バイソン「あのハンドスプリングは良かったぜ! あれ、第五試合でやればウケると思うぜ!?」

ヤムチャ「でもねぇ……試合の終盤になったら……そういうゆったりとした試合を作ろうって感覚は、完全になくなってたんですよ……」

サガット「……ほう」

ヤムチャ「ダルシムさんが、大歓声を貰って……俺が勝つ瞬間には、それ以上の歓声を貰わなきゃいけないって思って……ラストの攻防は、めちゃくちゃ焦ってたんですよ」

ダン「俺は、焦ってたわりには、自分の持てる技を使って、コンパクトに纏めて、いい決め方だったと思うぜ?」

ヤムチャ「狼牙風風拳は出さなかったけど……自分の技は全て出しました……それでも、ダルシムさんにはお客さんの声援で勝つ事は出来なかった……」

サガット「……ふむ」

ヤムチャ「あれ、ラストにコブラツイスト駄目押しで仕掛けるべきか? って、思ったんですけど、コブラツイストをした方が良かったですかねぇ?」

サガット「う~ん……まぁ、あれはあれで完成だな……」

ダン「そうだな。あそこでコブラツイストを仕掛けるのは、蛇足だわ」

ヤムチャ「あっ、あれは仕掛けなくて正解だったのか……」

ダン「なぁ、サガット……? そろそろ、こいつに新技教えてやってもいいんじゃねぇの?」

ヤムチャ「……ん?」

ダン「ボディスラムとバックドロップはモノになってきたじゃねぇか。なんか、ドカンと一発……会場が湧くような、投げがあってもいいんじゃねぇか?」

ヤムチャ「……やっぱり、技の少なさが原因だったんですか?」

サガット「ヤムチャ君が、表現したい事を表現する為の道具……技の数が、足りなくなってきたみたいだな。正直、今日の試合を見て、それは感じたよ」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「今日、ヤムチャ君は、見よう見まねで相手をロープに振っていたな? それをカウンターする攻撃があってもいい。そうすれば、もっと会場を沸かせる事が出来るだろう」

ヤムチャ「……おっ、新技教えてくれるんですか?」

サガット「そうだな。どうせだったら、投げ技にするか。ボディスラムとバックドロップは出来るようになったんだし、これを機会に会場を沸かせれる、投げ技を教えるとしよう」

ヤムチャ「よっしゃっ! 今度は、格好いいのお願いしますよ!」

サガット「明日、道場で教えるとしよう……まぁ、楽しみにしておいてくれ……」

ヤムチャ「うっす!」

ヤムチャ「実感はあまりねぇけど……俺、結構成長してるんだな……自分でもビックリだわ……」

サガット「まぁ、その意気で早い所、第五試合に戻ってくれ。ヤムチャ君がいないと、こっちの抗争も盛り上げるのが辛いからな」

ヤムチャ「……俺が、空手軍団に戻って強くなれば、女子部の事助ける余裕って生まれますかね?」

サガット「……ぬ?」

さくら「……えっ?」

ヤムチャ「俺とケンさんで、サガットさんとバルログさん相手に出来るようになって……リュウさんは、ザンギエフさんとベガさんとベルトの取り合いをして……」

サガット「……」

ヤムチャ「……そしたら、バイソンさんがキャミィさんのセコンドについて、女子部の辛い状況を助ける事が出来ますよね?」

サガット「まぁ、そうなる事がこの団体の理想かも知れないが……あまり焦るな、ヤムチャ君……」

さくら「気持ちだけ、ありがたく受け取っておくっすよ」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「いくらなんでも数日でそんな状況にはならんよ。例え、ヤムチャ君にどんな才能があったとしてもな」

ヤムチャ「……」

サガット「ヤムチャ君が、そこまでエース格になるより……間違いなく春麗の復帰が先だよ。春麗の離脱は一ヶ月程度なんだからな」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「今日のヤムチャ君の反省点は、長期的なスパンで解決していくべきもの……女子部の問題は、春麗復帰までの一ヶ月間をどうするかという問題だ」

ヤムチャ「……いい発想だと思ったんですけどね」

さくら「発想は間違ってないっすよ! 人気レスラーが増えたら、その分、他に人員を回せるっすからね」

サガット「まぁ、焦らずいこう、ヤムチャ君……先ずは、第五試合に戻る事を考えないとな……」

ヤムチャ「……そうっすね」

サガット「よし、じゃあヤムチャ君の反省点はこんなモノかな……? じゃあ、次は誰がいく?」

バルログ「じゃあ、私が言ってもいいですか?」

サガット「よし、じゃあ次はバルログの試合だ。先ずは自己分析を聞かせてもらおうか」


ヤムチャ(難しいね、プロレスって……)

翌日ーー


ヤムチャ「ふんっ……ふんっ……! あっ、バルログさん、背中押してもらってもいいっすか……?」ググッ

バルログ「は~い、じゃあ背中押しますね。いきますよ~」

バイソン「ヤムチャ君、今日はえらく気合が入ってるな……どうしたんだ……?」

ヤムチャ「あだだだだ……新技教えて貰えるのに……下手したら、第二試合で早い時間にやる可能性もあるでしょ……? だから、今日は早めに来たんですよ……」

バルログ「ふむ、いい心掛けですね。感心します」

バイソン「なるほどねぇ……ヤムチャ君も、いい顔になってきたじゃねぇか……」

ヤムチャ「そうっすか……? あだだだだ……身体も、もっと柔らかくしなきゃなぁ、これ……」


サガット「よし、そろそろ身体も温まってきたんじゃないかな? それでは、練習始めようか!」

ヤムチャ「うっす!」

今日はここまで

他にも、ユーニ、ユーリ、ポイズン、いぶき、ジュリ、まこと、
何よりも本職女子プロレスラーのレインボーミカがおるやんけ(´・ω・`)
レインボーミカは意図的に出していないのかと思ったけど。

そして、それを言い始めたら男子勢だってアレックスやヒューゴ…なんて話が出てくるので自粛します。

サガット「今回、ヤムチャ君に覚えてもらう技は『スパインバスター』だ」

ヤムチャ「おっ、今回は格好いい名前ですね。どんな技なんですか?」

サガット「まぁ、口で説明するより、実際に見てもらった方が早いだろう。じゃあ、バイソン……今日も頼むぞ」

バイソン「えぇ~? 俺、その技受けたくねぇよ……」

バルログ「……バイソン、何言ってるんですか? ヤムチャ君の成長の為なんですから、技ぐらい受けて下さいよ」

バイソン「嫌だよ~、いくら俺でもアレは恥ずかしいもん……今回はバルログが受けてくれよ……」

バルログ「私だって、嫌ですよ……! どうせ、バイソン茶化すんでしょ……?」

サガット「……おいおい、何をしているんだ。早くしてくれよ」

ヤムチャ「アレ……これって、ひょっとして変な技なんですか……?」

サガット「変な技ではない。全く……バルログとバイソンは何を考えてるんだか……」


バイソン「じゃあ、公平にどっちが技受けるか、じゃんけんで決めようぜ! バルログ!」

バルログ「じゃんけんですか……仕方ないですねぇ……」

バイソン「じゃんけん……グーっ……!」

バルログ「じゃんけん……チョキっ……!」

バイソン「よっしゃっ!」

バルログ「……ゲッ!?」

サガット「技を受けるのはバルログのようだな……よし、じゃあ早速リングに上がってもらおうか……」

バルログ「い、いやっ……ちょっと待って下さいよ……! これって、三回勝負でしょ、三回勝負ですよね?」

バイソン「バルログ、男らしくねぇぞ? 負けたんだから、とっとと技を受けちまえ」ニヤニヤ

バルログ「バイソンは後出ししましたよね……絶対、後出しですよ!」

サガット「何をゴネてるんだ、バルログ……時間がなくなってしまうぞ、早くしろ……」

バイソン「そうだぞ、そうだぞ! 試合が始まっちまうぞ、早くしろよ」

バルログ「……も~う、バイソン茶化さないで下さいね?」

サガット「では、始めるぞ……この技は、立っている相手の正面で、身体を屈めて……」ググッ

ヤムチャ「ふむふむ」

サガット「そして、相手の両太腿を下から抱え……自分の身体を、伸ばして持ち上げるっ……!」グイッ

バルログ「……うおっと」

ヤムチャ「ふむふむ」

バイソン「まぁ、平たく言えば、駅弁の要領で相手を持ち上げるって訳だな! 今、サガットはバルログに駅弁を仕掛けているというワケだ!」

ヤムチャ「え、駅弁……?」

サガット「……おい、バイソン!」

バルログ「ほら、すぐそうやって、茶化す……! だから、嫌だったんですよ、私は!」

バイソン「そして、そのまま前に倒れこんで、相手の背中をマットに叩きつけるワケだな! 倒れ込む瞬間に『駅弁は疲れたから、正常位にしようか?』なんて、耳元で優しく言う事がポイントだ!」

サガット「……バイソン、いい加減にしろっ!」

バルログ「本気で怒りますよ!?」

バイソン「まぁまぁ、ヤムチャ君にわかりやすく説明してやってるんだからよぉ……とりあえず、最後まで技仕掛けろよ?」


ヤムチャ「……おいおい、バイソンさんのせいで、サガットさんがバルログさんに駅弁仕掛けてるようにしか見えなくなっちまったぞ。どうすんだよ、コレ」

サガット「まぁ、とりあえず……最後までやるか……うおおぉぉっ……!」

バルログ「……ぐっ!」ドシーンッ

バイソン「……とまぁ、これがまぁ『駅弁バスター』だ! わかったかい、ヤムチャ君?」

ヤムチャ「なる程……確かに駅弁から、正常位に持っていきましたね……」

サガット「……スパインバスターだ。バイソン、変な名前を教えるな」

バルログ「ヤムチャ君が、変な覚え方をしてしまったではないですか!?」

バイソン「俺はわかりやすく説明してやっただけじゃねぇか! バルログをイジってやろうなんて気持ちはそうそうないぜ、ホントにホントに」ニヤニヤ

バルログ「……バイソン、覚えてなさいよ」


ヤムチャ「ねぇねぇ……サガットさん、サガットさん……」

サガット「……どうした?」

ヤムチャ「この技……格好良くないっす……俺、違う技がいいです……チェンジ出来ませんかねぇ……?」

バイソン「は~いっ! ヤムチャ君から、チェンジ頂きましたぁ~!」

サガット「まぁまぁ、ヤムチャ君……言いたい事はわかる……バイソンの茶々のせいで、変な風に見えてしまうのはわかる……」

ヤムチャ「……でしょ? もう俺、変な目でしか見れませんよ、その技」

サガット「これは、わかりやすく説明する為に、丁寧にかけすぎたから、こうなってしまったんだ……こんな駅弁みたいな持ち上げ方は、本来行わない技だ……」

バルログ「ねぇねぇ、サガット……? そういう例えをするの、もうやめませんか?」

サガット「ガッツリ持ち上げるから、駅弁のように見える……この技は、こういった抱え上げ方をするだけで、見栄えを良くする為には……いかに、素早く、荒々しく仕掛けれるかがポイントだ」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「昨日はロープから返ってきた相手に仕掛ける、カウンター技を教えると言っただろう? 次はそういった仕掛け方をしてみようか?」

バイソン「もう一回ぐらい丁寧なお手本見せておいた方が、いいんじゃねぇの? ヤムチャ君は、まだわかってねぇんじゃねぇかな?」

ヤムチャ「いやいや、バイソンさん……もうわかりましたよ……格好いいやり方があるなら、俺もそっちが見たいです」

サガット「では、バルログ……次はロープに振るぞ? 今度は普通のヤツだ……恥ずかしい事は何もない」

バルログ「……最初からこっちで教えればよかったんじゃないですかねぇ? まぁ、とりあえずやりましょうか?」

サガット「……うおおぉぉっ!」ダダッ

バルログ「……ヒョオオオオっ!」ダダッ


ヤムチャ「サガットさんと、バルログさんが、お互いロープの反動をつけて、走りこんで来て……」


サガット「……フンっ!」グイッ

バルログ「……ぬっ?」

サガット「……うおおぉぉっ!」ドスッ

バルログ「……ぐっ!」


ヤムチャ「なぁ~る程……走り込んだ勢いのまま、相手を持ち上げて、そのまま落とすのか……これはさっきのとは全然違うわ」

サガット「……とまぁ、こんな感じだ。さっきのとは、全然違うだろ?」

ヤムチャ「確かに……今回のは、どっちかというと、タックルと投げの複合技みたいな感じに見えました」

サガット「結構、ヤムチャ君はボディスラムとバックドロップを綺麗に見せるのに、苦労していたみたいだからな。今回は逆に綺麗に見せなくてもいい、ラフな技をチョイスしてみたというワケだ」

ヤムチャ「……なる程。確かに、今のはバルログさんの事、ほとんど持ち上げてませんでしたもんねぇ」

サガット「高く持ち上げる事より、スピードを優先した方がいいかもしれないな……だが、スピードが上がるという事は、手順を素早く行わなくてならない。相手を怪我させないように、気をつけてくれよ?」

ヤムチャ「あ~、確かに……下手したら、走り込んだ勢いのまま……相手の身体に全体重乗せる事になっちゃいますもんねぇ……」

サガット「とりあえず、最初はゆっくりからでいい……では、バルログ……今回は頼むぞ?」

バルログ「ヤムチャ君……早めに習得しないと、お互いバイソンに弄られて大怪我してしまうので……頑張りましょうね!?」

バイソン「何、言ってんだよ! 優しいバイソンちゃんが、弄ったりするワケねけじゃねか!?」ニヤニヤ

ヤムチャ「う、うわぁ……あの人、弄る気満々だよ……困ったねぇ……」

バルログ「サガットの仕掛けたのを見て、イメージ出来てたじゃないですか。タックルと投げ技の複合技……そういったイメージで仕掛ければいいんですよ」

ヤムチャ「……なる程」


サガット「よし、では始めろ! 試合表が発表される前にマスター出来れば、儲け物だ!」

ーーー


ヤムチャ「……うるあっ!」グイッ

バルログ「……ぬっ?」

ヤムチャ「……らぁっ!」ドスッ

バルログ「……ぐっ!」


サガット「うむ、今回は覚えが早いな……なかなか見栄えもいい……」

バイソン「こんな見栄えじゃ、弄れねぇじゃねぇか。いい事だけども……ちょっと、つまんねぇなぁ……」

バルログ「……あのねぇ、バイソン」

ヤムチャ「……バイソンさん」

バイソン「冗談だよ、冗談! 本気にするなって!」


サガット「今回は早かったな、流石ヤムチャ君だ。どうやら、スパインバスターは物に出来たようだ!」

ヤムチャ「おっ、やったじゃねぇか。今回は、確かに早かったな! ラフな技は俺に向いてるのかもしれませんね」

ヤムチャ「これで、今日の試合で出来る事が増えましたけど……試合表の発表はまだですかねぇ? プーアル遅ぇな……」

サガット「もう少し、時間がかかるんじゃないか? 思ってたより、ヤムチャ君の覚えが早かったからな」

ヤムチャ「朝早くから、皆さんにも付き合ってもらったのに……なんか、ごめんなさいね……?」

サガット「こういう事なら、俺達はいくらでも付き合うさ。そうだな……時間も余った事だし……ついでに応用技なんかも、覚えてみるというのはどうだ?」

ヤムチャ「……応用技?」

サガット「あぁ、スパインバスターには、まだまだ使い方はある。もっと工夫したら、もっと派手なスパインバスターを作る事が出来るぞ?」

ヤムチャ「なんだか、面白そうな話ですねぇ。 そういう事だったら、付き合ってもらってもいいですか?」

サガット「よし、じゃあ早速、手本を見せるか。バルログ、もう一度付き合ってくれ」

バルログ「わかりました。もうバイソンに弄られる事はないでしょうし……喜んでお付き合いしますよ」

バイソン「あっ、その言い方、酷いなバルログ君! それじゃあ、まるで俺が茶々入ればかりしてるみたいに聞こえねぇか!?」

ヤムチャ「……実際、そうじゃないですか」

バイソン「ガハハ! ヤムチャ君、これまた御冗談を!」

サガット「今度は相手を持ち上げて叩きつける時に……自分の足を開脚して、自らも尻持ちをつく形で、ジャンプして相手落とすんだ」

ヤムチャ「ほうほう」

サガット「押し倒すのではなく……持ち上げて落とす……そういった形の方がいいな」

バイソン「あんまり、ガッツリ持ち上げると、また俺に弄られる事になるから、気をつけろよ!?」

サガット「まぁ、とりあえずやってみようか……よし、じゃあバルログ、いくぞ?」

バルログ「じゃあ、私がロープに走りますんで……サガットはその位置で待ってて下さい」

サガット「そうだな。この技は待機していた方がやりやすい。バルログ、頼むぞ」

バルログ「では、行きますよ……? ヒョオオオオっ……!」ダダッ

バルログ「……ヒョオオオオっ!」

サガット「甘いっ……! フンっ!」グイッ

バルログ「……何っ!?」

サガット「うおおぉぉっ……!」ピョンッ

バルログ「……ぐっ!」ドシーンッ


ヤムチャ「……ほうほう」


サガット「とまぁ、こうなるワケだ……さっきのは、タックルとの複合技みたいなイメージだったが……今回は、純粋な投げ技のイメージに見えるだろう?」

ヤムチャ「確かに、そうっすね」

サガット「そして今の、この俺とバルログの体勢を見てくれ……」

ヤムチャ「えっ……? サガットさんが、尻持ちをついてて……バルログさんが仰向けに寝てますけど……?」

サガット「バルログの両肩がマットについている状態で……俺は、バルログの足にしか触れていないが、それでも身体の一部分を押さえ込んでいる……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「これは、フォールをとって貰える体勢だ。この体勢維持し続けていれば、ダンさんがカウントをとってくれる」

設定的に周りが上手い人ばかりだから行けるか思ったが、まだ無理か...
そう言えば、普通にロープからのキックとかラリアット的なのはもうどっかでチラッとやってるって解釈でええんかな?

サガット「これは『スパイン・ボム』という技だな。投げ技とフォールの複合技だ。フィニッシュホールドにもなるぞ?」

ヤムチャ「あっ、俺、丁度前の試合でフィニッシュホールドどうしようか、迷ってたんですよ」

サガット「中盤にこの技を仕掛けて、相手にカウントツーで返されてしまう……そんな攻防も作る事が出来るな」

ヤムチャ「その技で仕留めきれなかったから……狼牙風風拳で確実にとどめを刺すって、事ですね」

サガット「第二試合でやる時なら、この技をフィニッシュホールドにしてもいいが……第五試合、俺達とやる時にはそういう使い方をして欲しいな」

ヤムチャ「そうか……フォールを仕掛けて返されたら、仕切り直しみたいな感じになりますし……そういうやり取りも必要ですね」

サガット「そうだな。相手に返してもらって仕切り直す為だけに、フォールを仕掛ける……フォールもある意味、また技だ」

ヤムチャ「なる程ねぇ……今度からはそういう事もしていかねぇとなぁ……」


バルログ「……あの~?」

サガット「……ん?」

バルログ「……私はいつまで、この体勢で?」

サガット「おっと、悪かった悪かった……よし、じゃあヤムチャ君にも、覚えてもらおうか」

ヤムチャ「うっす!」

今日はここまで
この手のは映像がないからどうしても伝わってない部分があると思うよ ごめん

>>303
魅力的なキャラはいっぱいいるんだけどね ただこの団体にそこまで資金力はないって感じかな
女子部の試合一試合の為にそのメンバーを入れるのはザンギエフも渋ってるんjでしょう 機会があれば面接イベントなんかも書きたいけどね

なんだかんだでキャラは多いけど、知名度的にはスト2=ターボがトップなのは確定だけど、ウル4やZEROシリーズの知名度がわからないので、魅力的なキャラでも敬遠してる部分がある
隠し球でジャスティス学園とかあるけど、それ出すより皆の言う通りKOFなんかの方が知名度は高いだろうし


>>322
本当に全ての攻防をガッツリ書いたら、本当それだけで一スレ使ってしまう事になるからね その辺は好きに想像して補完してくれたら有り難い
でもそういう解釈で合ってると思う 今までの試合を見る限りどうやらショルダータックルは見よう見まねで出来てるみたい


今日は語りが長くなったね ごめんよ

乙!
スパインバスターの参考動画どうぞ。

http://youtu.be/Lu_xGdAVmII

http://youtu.be/RjXYm6PU3qw

ーーー


ヤムチャ「……オラァっ!」グイッ

バルログ「……うっ!」

ヤムチャ「うおおぉぉっ……! うるあぁっ!」ピョン

バルログ「……ぐわあぁぁっ!」ドシーンッ


サガット「よしっ、いい感じだ! これなら試合中に使っても大丈夫だろう」

ヤムチャ「よっしゃっ! スパイン・ボムも何とかモノに出来ましたね!」

サガット「スパインボムはスパインバスターからの派生技だからな。例えば、2回ずつ撃とうと考えたら……計、4回相手ロープに振る必要がある。 この技には投げる前の行動があるんだ。多様するのは禁物だぞ?」

ヤムチャ「なぁ~る程……ロープにばっかり振ってるんじゃねぇ、なんて言われちゃいますね……」

サガット「ロープに振らなくても、格好良く見せれる投げ方……別の仕掛け方なんかもあってもいいかもしれないな」

ヤムチャ「なる程ね……じゃあ、何か考えてみましょうかねぇ……?」


プーアル「皆さ~ん! ザンギエフさんから今日の試合予定表貰ってきましたよ~!」

サガット「おっ、試合予定表が出来たみたいだな。プーアル君、いつもありがとう。では、別の仕掛け方は宿題にでもさせてもらおうかな……」

ヤムチャ「うわっ、宿題出ちまったよ……まぁ、何か考えてみますね。 じゃあ、早速今日の予定表を見てみるか……どれどれっと……」

本日の予定試合


第一試合(10分決着)
◯ガイ ー E本田 ×

第二試合(10分決着)
ダルシム ー ブランカ
◯ヤムチャ ディージェイ×

第三試合(20分決着)
×さくら ー キャミィ◯

第四試合(20分決着)
×バイソン ー ガイル
サガット ナッシュ◯

第五試合(20分決着)
◯ケン ー バルログ×

第六試合(25分決着)
×リュウ ー ザンギエフ◯

ヤムチャ「……ちくしょう、ま~た第二試合かよ」

プーアル「まぁまぁ、ヤムチャ様」

ヤムチャ「なんで、ダルシムさんとタッグなんだよ、昨日戦った人間が……どうして今日は仲間になってるんだよ……」

プーアル「……まぁまぁ」

ヤムチャ「だったら、ケンさんとタッグ組ませてくれよ……ケンさん、今日一人でやってるじゃねぇか。俺とケンさんのタッグと、バルログさんとベガさんのタッグでいいじゃん。俺、それだったら負けてもいいぜ?」

バイソン「ガハハ! ついに、ヤムチャ君もブックに口出すようになったか、成長したじゃねぇか!」

ヤムチャ「……成長してないっすよ。成長してないから、第二試合なんでしょうが」

バルログ「ヤムチャ君……ここが第五試合に戻る山場ですよ……?」

ヤムチャ「……ん?」

サガット「上手くいけば……最短で後、二試合でヤムチャ君は、第五試合に戻れるだろう……ヤムチャ君は評価されてるよ。間違いなくな……」

ヤムチャ「……それって、どういう事ですか?」

サガット「ヤムチャ君はジミーさん……ダルシムさん……そして今日は、タッグだがディージェイと対戦相手が変わっているだろう? 」

ヤムチャ「そうっすね。ディージェイって人とは、初めてですね」

サガット「人それぞれ、ファイトスタイルにも違いがある……今は、色んな人に合わせる戦い方を覚えてもらおうという事なんだろう……」

ヤムチャ「……この、ディージェイさんってのも、ベテランの方なんですか?」

サガット「どうだったかな…… 入団して、半年ぐらいじゃないかな? 若手だよ、ヤムチャ君と同じな……」

ヤムチャ「ちょっと待って下さいよ……それって、俺も半年間第二試合から抜け出せないって可能性もあるんじゃ……」

サガット「いや、このディージェイは……特別だ……」

バルログ「う~ん、ディージェイ君はねぇ……どうなんでしょ……」

バイソン「まぁ、とにかく、おっかねぇ奴だから……今日の試合、ヤムチャ君、頑張れよ!」

サガット「今までヤムチャ君は、試合慣れしていた俺達や……ベテランのジミーさんとの試合だっただろ? それがディージェイの場合なら……試合慣れしてない人間同士の戦いになるというわけだな……」

ヤムチャ「あっ、なる程……そう言われると、確かに一つステップアップしてますね」

サガット「今日のジミーさんとダルシムさんは……その二人のフォローの為に、互いの陣営についているというわけだ……あの二人は上手いからな……」

ヤムチャ「確かに……悔しいけど、それは認めざるを得ませんね……」

サガット「今日の一試合を上手くこなせれば……次にディージェイ君とシングルでやる機会が来るだろう……そこで、結果を出せれば、きっと第五試合だろう」

ヤムチャ「なんだよ、なんだよゴールが見えて来たじゃねぇか! 今日の試合は、俺の勝ちだし……だったらさっきの覚えたスパインボムで決めてみるかねぇ? 今日の課題はそれだ!」

サガット「まぁ、頑張ってくれ。ヤムチャ君が戻って来てくれないとこっちも辛いからな」

バルログ「そうですよ。今日の試合はケンとのシングルですか……私の昨日の試合評価されてたんですかねぇ……? これ、どうしましょ……?」

バイソン「……やっぱり、仮面つけていくしかねぇんじゃねぇの?」

バルログ「まぁ……そうですよねぇ……」

サガット「……バルログ、ボヤくな。チャンスと捉えろ、チャンスとな」

バルログ「いやいや、まぁまぁ……それは私だってわかってますよ……?」


ヤムチャ(あれ……? これって、俺が第二試合にいるせいで、ちょっと影響出たりしてるのかな……?)

ダルシム「……ナマステ」


サガット「おっ、ダルシムさんか……ナマステ……」

バルログ「おはようございます。ナマステ……」

バイソン「なますて!」

ヤムチャ「ナ、ナマステ……何か、この挨拶慣れねぇな……」


ダルシム「では、今日も……ヤムチャ君の事を借りていくよ……?」

サガット「はい、ダルシムさん、ヤムチャ君の事、よろしくお願いします」

ダルシム「私は、何もするつもりはないよ……私の力を借りているようでは……そちらに戻るのはまだまだだろう……?」

サガット「まぁ、そうかも知れませんね……」

ダルシム「では、ヤムチャ君……そろそろ行こうか……今日の試合、頑張ってくれよ……?」

ヤムチャ「……うっす! 頑張って、第五試合に戻ってやりますよ!」

サガット「気を抜くなよ、ヤムチャ君……頑張れよ!」

ーーー


ダルシム「さて……試合内容の打ち合わせだが……」

ヤムチャ「あれ……? ブランカさんと、ディージェイさんって人は……?」キョロキョロ

ダルシム「あの二人は、別室だ……下手に四人揃うと話が縺れてしまいそうだからな……ブランカ君は、ディージェイ君に付きっ切りだよ」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「まぁ、ヤムチャ君に必要なのは、アドリブ能力だ……二人と打ち合わせる必要はないだろう……」

ヤムチャ「まぁ、そうっすけど……」

ダルシム「では、今日の試合だが……先ず、ヤムチャ君に一つ、注文をしたい……」

ヤムチャ「また、打撃攻撃封印とかですか? もう、その手には乗りませんよ。俺、投げ技の新技覚えたんだから、それ封印されちゃたまったモンじゃないっすよ!」

ダルシム「ハハハ、随分と根に持っているみたいだな。もう、そんな嘘じゃないよ。今日の注文は簡単な事だ」

ヤムチャ「まぁ、話聞いてから……受けるかどうかは決めますよ。それで、注文って何ですか?」

ダルシム「今日の試合……絶対に、怒ったり、キレたり、途中で投げ出したり……そういう事だけは、しないで欲しい。それが私の注文だ」

ヤムチャ「って事は……また、ブランカさんが何か仕掛けてくるんですね……?」

ダルシム「いや、違う。今日の試合は、先ず私がブランカ君と戦い……そして、同時かもしくはそれに近い形で、ヤムチャ君と、ディージェイ君に交代する」

ヤムチャ「……あれ、ブランカさんとは戦わなくていいんですか?」

ダルシム「ヤムチャ君は、ディージェイ君と5分間、戦ってもらい……そして勝ってもらうつもりだが……」

ヤムチャ「5分か……それって、短いような気もしますね……」

ダルシム「私がブランカ君と戦ってる時に、乱入してくれても構わんよ? そこを含めれば、ヤムチャ君は10分間、動くチャンスはある」

ヤムチャ「なぁ~る程……ダルシムさんがピンチの時に……いいタイミングで助けにいけと……?」

ダルシム「逆に、私が有利な時に、来てくれてもいいぞ。そうすれば、二人掛かりで大きなダメージを与える事ができるからな」

ヤムチャ「……なる程」

ダルシム「まぁ、タッグマッチで試合権利がない時の動き方なんかも、勉強してもいいかもな。その経験は、きっと元の位置に戻った時に役に立つ」

ヤムチャ「そうっすね。ケンさんとの合体必殺技のダブルトラースキック撃つには……そういった能力も、必要そうです」

ダルシム「少し、話が逸れたな。まぁ、ヤムチャ君はディージェイ君と5分間、戦う事になるのだが……」

ヤムチャ「はい」

ダルシム「……はっきり、言おう。ディージェイ君は空気が読めない」

ヤムチャ「……はぁ?」

ダルシム「私やブランカ君……それにシャドルーの皆さんなんかは、ベテランだ。ヤムチャ君が、相手に行動を求めたら……その行動……もしくはそれに準ずる行動をしてくれる……自分で言うのも可笑しな話だがな」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「しかし、ディージェイ君は、それが出来ない。ヤムチャ君が求めた行動と、全く違う行動をしてくる事も多い。自分勝手に行動を起こして、ヤムチャ君が、どう対応していいかわからなくなる事も多いと思う」

ヤムチャ「はぁ……? それって、どういう事……」

ダルシム「もう一度、言おう。ディージェイ君は空気が読めないんだ」

ヤムチャ「……」

ダルシム「私もレスラー生活を数十年続けているが……彼のような読めない人間は初めてだ。彼は、ブランカ君がつきっきりで指導しているよ」

ヤムチャ「えっ、えっ……? ちょっと、ちょっと……」

ダルシム「だから、今日、ヤムチャ君はディージェイ君と戦ってもらうが……彼が勝手な行動をしても、絶対に怒ったり、試合を投げ出したりする事はしないでくれ」

ヤムチャ(サガットさん達が言ってた、おっかねぇって意味……こういう事だったのね……)

ダルシム「ただ、彼と試合を成立させる事が出来るようになれば、試合を動かせる能力は自然と身につき……きっと第五試合でも、活躍出来るようになるだろう」

ヤムチャ「なぁ~る程ねぇ……そういう事か……」

ダルシム「ディージェイ君との攻防で、困った事があるのなら、私が助けに行ってやる。何か、サインでも決めておくか? 試合中、サイン出せば私はヤムチャ君のフォローに行くぞ」

ヤムチャ「ダルシムさんにそこまで、言われると不安になってきますねぇ……? とりあえず、じゃあ汗を拭いながらダルシムさんの方を向いたら……って、事にしましょうか?」

ダルシム「よし、わかった。サインはそれだな。今日の試合……あえて、ディージェイ君とヤムチャ君に打ち合わせはさせないが……相手の行動で、大きく傾きかけた試合を、自らが修正する……そういう能力は絶対に必要になってくる」

ヤムチャ「はぁ」

ダルシム「ヤムチャ君が入団してからも、そういう試合はあっただろう? 試合中に相手が怪我をしたから、強引に試合を終わらせねばならない……そして、その事によって試合時間を伸ばす事を強要されてしまった……」

ヤムチャ「確かに……今の俺じゃ、そういう事が起きた時、ただただアタフタするだけですねぇ……そもそもそれで、失敗したんですし……」

ダルシム「試合時間の早い下の試合で何かが起きた時に、それをフォローするのは遅い時間に始まる上の試合の人間だ……普段は使わないが、上でやっている人間は、皆その能力を隠し持ってるんだよ」

ヤムチャ「なる程ねぇ……でも、そんなトラブルメーカーみたいな事ばかりしてるディージェイさんって、大丈夫なんですか? クビになったりしないんですか?」

ダルシム「いいものは持ってるんだと思うんだけど、本当に空気が読めないんだよ……そのせいでずっとこの位置ってワケだ。 現場監督からすれば、教育係の我々が駄目だとでも、思われてるんだろうな……」

ヤムチャ「う、うわぁ……ダルシムさんも大変ですね……」

ダルシム「……なら、ヤムチャ君が、成長して私の立場を良くしてくれ。そうしてくれると、私も幸いだ」

ヤムチャ「う、うっす……! とにかく、今日の試合よろしくお願いします」

ダルシム「おっ、そろそろ時間給だな……では、ヤムチャ君、そろそろ準備に行こうか?」

ヤムチャ「うっす!」

今日はここまで

>>329
補足ありがとね
ヤムチャがボディスラム出来てなかったてのは、こういう同じ投げでも全然印象が違うって事が言いたかったんだけど
本当に文章だけで表現は難しいね それでも付き合ってくれてる皆に感謝です

ーーー


ヤムチャ「さて、そろそろ入場かな……? 今日は5分間……前は試合時間が長いなんて言ってたのに、今度は短いと思うようになってきたぜ。これって、成長してるのかな?」

ダルシム「あぁ、間違いない。成長しているよ」

プーアル「ヤムチャ様、何か試合プランはあるんですか?」

ヤムチャ「五分間じゃ、俺の全ての技を出しきる事は出来ないんと思うんだよね……二つ三つ出せればいい方じゃないかな……? だから、ダルシムさんがピンチの時に乱入して、技使うのもありだとは思うんだけど……」

ダルシム「……ふむ」

ヤムチャ「ディージェイさんって人の事、ダルシムさんに脅されてるからなぁ……まぁ、相手の出方に合わせて修正していくしかないんじゃないかな?」

プーアル「へぇ~、ヤムチャ様も考えるようになりましたねぇ」

ダルシム「強引に動けば、その理想的な展開が出来るようになるかもしれんぞ? まぁ、頑張ってくれ。もし、何か困ったのなら……」

ヤムチャ「……サインですよね? わかってますよ」

ダルシム「うむ。それじゃあ、そろそろ呼び出されるぞ……準備はいいな?」

ヤムチャ「うっす!」


プーアル「ヤムチャ様、ダルシムさん、頑張って下さいね!」

ーーー


ダン「さて、皆様……お楽しみいただいてるでしょうか!? ストリートプロレス!」

ダン「それでは、続いては……第二試合をお届けしますっ!」

ダン「ダルシム選手! ヤムチャ選手の入場ですっ!」


パチパチ……パチパチ……


ダルシム「……ナマステ」

ヤムチャ「よっしゃっ!」


パチパチ……パチパチ……


実況「さぁ、今ダルシムとヤムチャが入場しております! このタッグチームは初ですかねぇ? どういったコンビネーションを見せるのか……期待しましょう! さぁ、ゆっくりと歩みを進めながら……今、両者がリングイ~ン!」

ダン「続きましては……ブランカ選手! ディージェイ選手の入場ですっ!」


パチパチ……パチパチ……


ブランカ「ウォゥ! ウォッ、ウオオオォッ!」

ディージェイ「イェーイ。 今日も、ファンキーな試合をしようぜぇ~」


クスクス……クスクス……


ディージェイ「Mr.ブランカ……? 今日は、オーディエンスの皆に……とびきりエキゾチックな夜をお届けしてやろうぜ~? さぁ、行こう」ガシッ

ブランカ「……ウオッ?」


実況「さぁ、お次はジャングル育ちの野生児ブランカと、陽気な男ディージェイの入場だ! あのブランカを手懐ける男がついに現れたのか! 野生児と人間の友情が芽生えた! 仲よさげに肩を組みながら、今、歩みを進めています!」

実況「さぁ、今、ブランカが両者がリングインしようと……ん……?」


ブランカ「オッ、コレハ……チョット、チョット……」

ディージェイ「ヘイヘイ、どうしたんだい? Mr.ブランカ? 何で、そんな所で立ち止まるんだい?」

ブランカ「チョット……肩カラ、手ヲ話シテクレ……俺、食イ物見ツケタ……」

ディージェイ「ホワーイ? ユーは何を言っているんだい? 早くオーディエンスにファンキーなビートをお届けしようぜ?」

ブランカ「……いいから、早く外して下さい。 邪魔なんです」ボソッ

ディージェイ「おっ、おう……ソーリー……」パッ


実況「おっと、ブランカがロープの一点を見つめているぞ……? これはこれは……違うぞ、それは違うぞ!?」

ブランカ「……コレ、クイモノ?」

ダン「俺、毎回言ってるよなぁ……? 食い物じゃねぇって……早くリングインしろ……」

ブランカ「コレ、ウナギ、ミタイダ……食エソウダ……」ガジガジ

ダン「おめぇは、いつになったら、学習するんだよ!? だから、ロープはウナギじゃねぇ、食うな! ゴムの苦~い、味しかしねぇだろうが、馬鹿野郎っ!」
グイグイ


クスクス……クスクス……

実況「やっぱりだ、やっぱり間違えてしまったぞ、野生児が! 本日もロープに噛み付いております! そいつは食べ物じゃないぞ! 良い子は真似するな!」


ダン「毎回、手間暇掛けさせんな……! ホラ、早くリングインしろよ、馬鹿野郎っ……!」グイグイ

ブランカ「ウガガ……ウガ……」

ディージェイ(Mr.ブランカは盛り上げるのが上手いなぁ……よ~し、ミーも負けてられないぞ……)

ディージェイ「ワーオ、Mr.ブランカ!? こいつはウナギなのかい!? ビックリだよ!」

ブランカ「……ん?」

ダン「……あ?」

ディージェイ「そういう事なら……ミーも、頂かせてもらおうかな……? いっただっきまぁ~す!」ガジガジ


実況「お、おっと!? なんと、ディージェイもロープに噛みつき始めたぞ!? 二人して、ロープを噛み噛み……なんだ、この光景は! なんだ、この光景は!」


ダン「おいっ、おめぇまで何やってんだよ! おめぇもやるんじゃねぇよ!」

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ……? このウナギ……なんだか、固くないかい……? 噛み切れないよ……これって、ひょっとして……ロープなんじゃないかなぁ~?」ガジガジ

ブランカ(百歩譲って、私のムーブを真似る事は許そう……でも、そういう事は言わないで欲しい……そんな事は、百も承知だよ……)ガジガジ

ダン「おめぇまで、やるんじゃねぇよ! 収集つかねぇだろうが! 早く試合をやれっての! ホラ、ブランカも!」グイグイ


実況「さぁ、こいつはレフェリーも大変だ! ブランカとディージェイ! 気ままな二人に……か~なり、振り回されていますかね!?」

クスクス……クスクス……

実況「その姿が滑稽にでも見えるんでしょうか!? 場内からは、笑い声が聞こえます! 一応、言っておくが、彼だって頑張ってるんだぞ!?」


ディージェイ(オーケー、オーケー……お客さんも温まってきたようだな……
最初のインパクトはやはり大切だからなぁ……ミーも一流に近づいてきたんじゃないかな……?)ガジガジ

ブランカ「……」ガジガジ

ダン「いい加減にしろオラっ! ホラ、とっとと二人共、リングインしやがれ!」


実況「さぁさぁ、レフェリーも悪戦苦闘! 試合が始まる前から、ブランカとディージェイは大暴れだ!」

ヤムチャ「……ダルシムさん?」

ダルシム「ん……? ヤムチャ君、どうした……?」

ヤムチャ「ディージェイさんって人……ノリがいい人じゃないですか……? お客さんの笑いも貰ってますし……空気読めてるんじゃないですかねぇ……?」

ダルシム「……ブランカ君の、あの行動は、私のヨガスマッシュと同じでな」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「まぁ、言わば……『待ってました』なんて、笑いをとっているんだよ……彼が長年続けている事で、笑いになっているんだ……」

ヤムチャ「……ふむ」

ダルシム「そこにディージェイ君が加わった形なんだけど……そこまで、大きな笑いになってないよね……この笑いならブランカ君一人で十分だとは思う……」

ヤムチャ「……」

ダルシム「ダン君の代わりにブランカ君を制止するとか……驚いたリアクションで戸惑うとか……他にも方法はあるだろ?」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「……ちょっと、入場が長くなってるな。試合中にやる分にはまだいいと思うんだけどね」

ヤムチャ「……なる程」

ダルシム「ディージェイ君はそういう蛇足のような行動が多いんだよ……ただ、本人に悪気は一切なんだ……彼も盛り上げる為に行動している……そこがなぁ……」

実況「さぁさぁ、収集がつかないようなので、今の間に本日のゲスト解説を紹介しましょう! 本日のゲスト解説は、デカい! ゴツい! だけど、動物を愛する優しい心を持つお方! T.ホークさんです」

ホーク「よろしくお願いします」

実況「ホークさんは、見た目はイカつい……おっと、失言でしたかね?」

ホーク「いや、大丈夫ですよ」

実況「あっ、ありがとうございます! それでは、続けさせてもらいます。見た目はイカついんですが……非常に動物好きだと、いう事で……ギャップがあるといいますか、なんだか人間味溢れる方という感じで、なんだかホッとしますよね?」

ホーク「ありがとうございます」

実況「結構ねぇ……ゲスト解説の方が、隣にお座りになられる機会多いんですが……やっぱりねぇ? レスラーなんてのは、血の気の多い方も大勢いらっしゃるので、私、顔色伺いながら、お話させて頂くという事も多々あるんですよ!」

ホーク「あはは」

実況「ホークさんみたいな方となら、私も安心して実況出来そうですね! 動物好きのホークさん……私は犬派なんですけど、ホークさんは犬派ですか? 猫派ですか?」

ホーク「う~ん、どっちの方が好きって事はないですね……どっちも好きです。犬も、猫も。可愛いですよね」

実況「……犬や、猫の他にお好きな動物などは、あったりするんですか?」

ホーク「……あっ、鳥が好きです!」

実況「ほ~う、鳥ですか。そういえば、ホークさんの必殺技にも、鳥の名が入ってる物もありますもんね!?」

ホーク「はい」

実況「『コンドルダイブ』や『コンドルスパイア』……いやぁ、ネーミングセンスが、これまた素晴らしい!」

ホーク「あはは、ありがとうございます」

実況「これは、やはり鳥のようなイメージで攻撃したい……なんて、イメージで、開発されたんですか?」

ホーク「そうです。鳥が好きだから、そういった鳥の優れた部分を、何か参考に出来ないかな、と思いましてね」

実況「ホークさんは、大柄な方なんですが……時には、やはりそういった、鳥が獲物を捕らえる時に見せるような、俊敏な動きを見せますもんね?」

ホーク「そうですね」

実況「今度は、狼や虎などの、イメージで技を作ってはいかがでしょう!? ……なんて、素人ながらに私も思ったりします!」

ホーク「検討させていただきます。そうすれば、ベルトに近づけるかもしれません」

実況「では、ホークさんのこれからの活躍に期待しましょう! ベルトをとった暁の祝勝会には……是非是非、私もお呼びして下さいね!?」

ホーク「今日、技のヒントを頂きましたからね。是非、呼ばせて頂きます」

実況「さぁ、なんだかんだお話している間に……ようやく、ブランカとディージェイがリングインしました。では、ホークさんの紹介はこの辺りにして……お次はリング上の四人の選手を解説していくとしましょう!」

今日はここまで
短かったな

乙っした
T・ホーク「狼とかいいですねえ」
T・ホーク「ウルフ・ゲイルファング&ウインドナックルなんてどうでしょう」
T・ホーク「狼を模した風のように素早い連続攻撃です」チラッチラッ → ヤムチャ

実況「さぁ、先ずはダルシム・ヤムチャ組! このチームはホークさんはどんな印象を持たれますか?」

ホーク「……そうですね」


ダルシム「おう、そうだそうだ……大事な事を言い忘れておったよ、ヤムチャ君……」

ヤムチャ「ん、何ですか……?」


ホーク「結構対象的なコンビで面白いですね。堅実なダルシム選手とヤムチャ選手……」

実況「……ほう」


ダルシム「試合中、私の事を呼ぶ時は『おっさん』でいい。 そういう風に呼んでくれ」

ヤムチャ「おっさん……? そんな失礼な呼び方でいいんですか?」


ホーク「ダルシム選手が持っていない勢いなどをヤムチャ選手が……ヤムチャ選手がいきすぎた場合にベテランのダルシム選手がフォローしてあげる……お互いがお互いにない場所を持っていて、なかなかいいんじゃないですか?」

実況「そういえば、ホークさんもフェイロンさんなんかと、よく組まれていますが、そういう感じですもんね?」


ダルシム「君の居場所は空手軍団だ……信頼を置くべき相手はリュウ君や、ケン君だ……私と下手に、信頼関係を気づいてしまうと……後々尾を引きずる事になるぞ……? 私とは、即席タッグなんて感じでいた方がいい……」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「よし、先ずは、私が行く……君は下がっていてくれ……」

実況「さぁ、先発はダルシムでしょうか? それでは、続いてのブランカ、ディージェイ組! こちらの印象はどうですかね?」

ホーク「……う~ん、まぁ読めない部分があるといいますか」


ディージェイ「早く、ミーのファンキーなビートをオーディエンスにお届けしたいぜ! 待ちきれないよ~!」

ブランカ「……時間がきたら、交代するので、大人しくしていて下さい」ボソッ


実況「まぁ、確かに……この二人は、個々でも読めないような二人が集まった、タッグチームですからね」

ホーク「特にブランカ選手……あの人は、本当に読めません……」


ディージェイ「Mr.ブランカが……ピンチだったり、優勢だったりしたら、ミーも参加は出来るんだよね……?」

ブランカ「大丈夫ですか……? まぁ、貴方の特訓……そして、ヤムチャ君の特訓にはなるでしょう……お好きにどうぞ……」ボソッ


実況「まぁ、ブランカはジャングルの奥地で育った野生児ですからねぇ、ホークさん」

ホーク「でもまぁ、そういった人には、ああいった能天気というか……陽気な人が合うんじゃないですかねぇ? ある意味、似た者コンビだと思いますよ」


ブランカ「動くなら動くで……何か新しい発見をして下さいよ……? むやみやたらに動き回っていいワケではありませんからね……では、私が出ます……下がっていて下さい……」

ディージェイ「Mr.ブランカ、早くピンチになってくれよ? ミーがいつまでもこんな所にいたら、オーディエンスはミーのファンキーなビートが聞けないからね」

実況「さぁ、どうやら両者が出揃ったでしょうか? ヤムチャ……それに、ディージェイが両者の陣営に下がります」

ダン「ったく、入場に時間かけやがって……よし、じゃあそろそろいいな……?」

ブランカ「ウガッ!」

ダルシム「……ふむ」

ダン「じゃあ、そろそろ試合始めっぞ……! よし、ゴングならせ、ゴングをよぉ!」


カーン


ダン「ファイっ!」

ブランカ「ヤッテヤルゼッ!」

ダルシム「……ふむ」


実況「さぁ、戦いの鐘の音が響き渡り、今は試合が始まりました! 先発はダルシムとブランカ! 先ずダルシムとブランカの戦いですっ!」

ダルシム「……ナマステ」ペコッ

ブランカ「……ウオッ?」


実況「おっと、先ずはダルシムが両手を合わせて、軽く一礼! 例え、相手が野生児だろうが、礼儀は忘れません! ダルシムはこの辺りが潔い男だ!」

ホーク「そうですね」


ブランカ「ソンナ、挨拶知ラナイッ! オ前、何シテルカ、分カラナイ!」

ダルシム「……ぬっ?」

ブランカ「隙ダラケダッ……! 喰ラエ、ローリングアタックッ!」ギュルンッ

ダルシム「う、うおっ……早いっ……!」

ブランカ「……ウオオオォォォッ!」ガスッ

ダルシム「くっ……うおっと……」ヨロッ


実況「おっと、だがしかし、そんなダルシムに対して、ブランカがローリングアタック! 野生児に人間の礼節は通用しなかったか!? ダルシムは、大きく尻餅をついてしまいました!」

ダルシム「くっ……不届きな者め……」

ブランカ「ヘッヘーンダ、オ前、弱イナ……アッカンベーダ!」

ダルシム「……くっ」

ブランカ「コイツハ弱イ! コイツハ弱イゾ! ウッホッホ!」ピョンピョン


クスクス……クスクス……

実況「さぁ、先ずは先制攻撃に成功して、ブランカが喜んでいるっ! だが、しかしその姿がゴリラそっくりなのだろうか!? 会場からは笑い声が聞こえるぞ!?」

ホーク「いや、ゴリラってあんな動きはしませんよ……?」


ダルシム「くそっ、そういう事なら、私も容赦はせん……行くぞっ……!」

ブランカ「弱イ奴ガ怒ッテモ、怖クナイゾ! ウッホッホ~、ウッホッホ~」ピョンピョン


ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ! 今のはファンキーな攻撃だったよ! 超~エキサイティングっ!」

ダルシム「……ぬ?」

ブランカ「……ん?」

ディージェイ「そんなにファンキーなビートを見せられると……ミーも乗ってきちゃうよ……こ~んな感じでね……?」ルンダルンダ


実況「おぉ~っと、ブランカの動きに合わせて……コーナーでディージェイが激しく踊っている! こいつも陽気な男だ!」

ホーク「……やっぱり、なんだかんだで似た者コンビですね」


ブランカ(まぁ~た、始まったよ……まぁ、とりあえず泳がせるか……)

ダルシム(君も一緒になって、踊る事はないんだと思うんだけどな……まだ試合の序盤だし……)

ヤムチャ(わかった……あいつ、ノリがいいってわけじゃねぇ……バカなんだ……)

ダルシム「くそっ、油断はしたが……そういう事なら、私も容赦はせんっ! 行くぞっ……!」ムクッ

ブランカ「……ウオッ?」


実況「おっと、ここでダルシムが素早く立ち上がり……そしてブランカに掴みかかったぁ!」

ダルシム「……フンっ!」ガシッ

ブランカ「……ウガッ!?」

ダルシム「くそっ、手が邪魔だな……まぁ、予想通りだが……そう簡単には、行かせてはくれんな……」

ブランカ「……グフフ、甘イゼ」


実況「さぁ、ダルシムがブランカと組み合い……ここから、どういった攻防きなるのか……ジワリジワリと組み合いながら、様子を伺ってますね……?」

ホーク「……そうですね」


ダルシム「……よしっ! ここだっ!」クルッ

ブランカ「……ウガッ?」

ダルシム「フッ、人を見かけで判断するのは良くないぞ……? 簡単に背後を取らせてもらえたよ……感謝する……」


実況「おっと、ここでダルシムが上手く、ブランカの背後を捉えた! 上手く身体を捻らせてブランカの背後を取った!」

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ! 何してるんだよ、もっとファンキーなビートを見せなきゃ! ミーも乗れないよ!」ルンダルンダ

ヤムチャ(あいつ、いつまで踊ってるんだよ……アレ邪魔だろ……俺がなんとかしなきゃいけねぇのかなぁ……? でも、リングではダルシムさんとブランカさんが組み合ってるしな……どうすっかねぇ……)


ブランカ「甘イノハ、オ前ダッ……!」クルッ

ダルシム「……何っ?」

ブランカ「……グフフ、今度ハ俺ガ、背後ヲ取ラセテモラッタゾ?」


実況「おっと、今度はブランカが同じような動きでダルシムの背後を捉えました! ここから、何を仕掛ける!? バックドロップか? ジャーマンか?」

ホーク「……ディージェイ選手の踊りも激しくなってきましたね?」


ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ! いいよいいよ、そのリズムだよ~!」ルンダルンダ


ダルシム(彼はいつまで踊っているんだ……関節技で責めたかったんだけど……予定を変更するか……)

ブランカ「グッフッフ……このまま投げてやる……」

ダルシム「……させんわっ!」クルッ

ブランカ「……ヌッ?」


実況「おっと、ダルシムは耐えた! 身体を捻らせ、再びブランカの背後を取り直し……いやっ、違うっ……!」

ホーク「……おっ?」


ダルシム「どうやら君も、テクニックは持っているようだな……だったら、今度は前でも、後ろでもなく……横から、攻めさせてもらおう……」

ブランカ「アレ、後ロジャナイ……? コイツ、俺ノ横デ止マッテ……」

ダルシム「この角度からなら入れやすいな……今度の攻撃は早いぞっ……! 腹部に、膝を喰らわせてやるっ……! はあっ!」ガスッ

ブランカ「……ウゴッ!?」


実況「おっとおっと、背後を取られたダルシムが、身体を反転させながら……そのままブランカの腹部に、膝蹴りを喰らわせたぁ!」

ホーク「スープレックス技で責めると思ったんですが……上手く切り返していきましたね……」


ヤムチャ(おぉ、ダルシムさんって、動ける人じゃねぇかよ……本当、騙されたわ……やっぱりベテランなんだな……)

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ! 何やってるだよ!? そんなビートじゃ、ミーは乗れないよ!?」ルンダルンダ

ヤムチャ(……でも、今の攻防って、踊ってるアイツに注目してるも、ひょっとしているんじゃねぇか? やっぱり、俺が動いた方がいいんじゃねぇの、コレ?)

ブランカ「痛イ……苦シイ……だんサン、助ケテ……」ヨロッ

ダン「……俺に言うんじゃねぇ。俺は知らねぇよ」

ダルシム「そうだ、レフェリーは関係ない……さぁさぁ、私の攻撃はまだまだ続くぞ……?」


実況「さぁ、いい所にでも入ったでしょうか? ブランカは、少し苦しんでいます! そしてそのブランカの身体をダルシムが掴んだぁ!」


ダルシム「さぁ、次は……コーナーに振り投げてやろう……! いくぞっ……!」

ブランカ「……待ッテ、チョットダケ、待ッテ」

ダルシム「問答無用っ……! フンっ……!」ブンッ


実況「さぁさぁ、ダルシムがブランカを……コーナー目掛けて振ったぁ!」


ブランカ「……うぐっ!」ドスッ

ディージェイ「ワオッ! もう、時間が来たのかい? ミーの出番が来たのかい!?」

ブランカ(下手にディージェイ君が、僕の身体に触れると……試合権が映ってしまうからね……ダルシムさん、間を空けずに来て下さい……相手は彼なんです……)

ダルシム「さぁさぁ、間を空けずにいくぞ……? 私のひ弱な攻撃でも……コーナーを背にして逃げ場のない状態の君なら……そこそのダメージにはなるだろう……はああぁっ……!」ダダッ


実況「そして間を空けずに、ダルシムが突っ込んできた! コーナーへの串刺し攻撃へと走ったぁ!」

ダルシム「……フンっ!」ゴスッ

ブランカ「……うぐっ!」


実況「さぁ、コーナーにいるブランカに、串刺しバックハンドエルボーでダメージを与えて行きます! クルリと身体を反転させて、肘をぶつけます!」


ディージェイ「これって、Mr.ブランカのピンチなんじゃないの!? ミーの出番!? ミーの出番じゃないの、コレ!」

ダルシム「君は、しばらく場外で寝ていてくれっ……! フンっ……!」ガスガス

ディージェイ「……なんだって?」


実況「そして、そのままダルシムは、コーナーにいるディージェイに掴みかかった! エルボー攻撃を連続で浴びせていきます!」


ディージェイ「Mr.ダルシム……そんな事したら、ミーのいい所をオーディエンスに見せれないじゃないか……!?」

ダルシム「もう十分、見せただろう! 次は他の人の番だ! とにかく、この一撃で……場外に落ちろっ……!」ガスッ

ディージェイ「……う、うおっ!」


実況「そして、とどめに大きく振りかぶって、エルボーバットを……振り抜いたぁ! ディージェイの身体が場外に落ちます!」

今日はここまで

ダルシム(ふぅ……これで、ディージェイ君も暫くは動かないだろう……彼にばかり注目がいってしまっても、よい事はない……応急処置だが、致し方ない行動だな……)

ヤムチャ(おぉ、ダルシムさんが……踊ってるあいつの事を蹴散らしたな……って事は、あれってやっぱり邪魔だったんだな……でも、俺が乱入してあいつを止めるのも邪魔になっただろうし……こうするしかなかったのかな……?)

ダルシム(さて、ディージェイ君を蹴散らした訳だが……ただただ、蹴散らしただけでは……やはり良くないな……仕方ない……)


ディージェイ「……ヘイヘイ、Mr.ダルシムは酷いよ。どうしてミーがこんな真似を」バタッ


ダルシム(激しすぎる攻防は、あまりしたくないからな……まぁ、ゆる~い攻防でもやらせてもらうか……)

ブランカ「ウゥ……酷イ事ヲシヤガッテ……」

ダルシム「ヤムチャ君、少し来てくれ! この老体に……一つ、手を貸して欲しい!」クイクイ

ヤムチャ「……ん?」


実況「おっと、ディージェイをエルボー攻撃で蹴散らしたダルシムが、ヤムチャに手招きをしています! これは何か連携攻撃を狙っているんでしょうかねぇ?」

ホーク「そうですね。ディージェイ選手を蹴散らして、いいチャンスですから」

ヤムチャ(おうおう、何だ何だ……ダルシムさんが呼んでるって事は……まぁ、間違った行動ではないはずだから……従っておこう……)


実況「さぁさぁ、ヤムチャがリングインして……コーナーにいるダルシムとブランカの元へと近づきます!」


ダルシム「老体の蹴りでは、苦しいのでね……一つ、君の力を借りたい……」

ブランカ「クッ……連携攻撃カ……」

ダルシム「交互に彼に蹴りを撃とう……あの陽気な男がいなくて、大チャンスなんだ……こんなチャンスは、是非とも生かさんとな……?」ニヤリ

ヤムチャ(あっ、なる程……そういう事か……!)

ダルシム「では、私から行くぞ……? はぁっ!」シュッ

ブランカ「……グッ!」


実況「さぁ、そしてダルシムが、コーナーにいるブランカに対して、蹴りを撃ち込みます!」


ダルシム「さぁ、次はヤムチャ君の番だ……? 空手軍団の蹴りがこんなに間近で見れるなんて、光栄だよ。私も学ばせてもらう……」

ヤムチャ(そっか……ここ、ダルシムさんに呼ばれなくても……自分から、行ってもいい場面だったな……わざわざ、動きで指示してくれたのか……こういう細かい所を学んでいかねぇといけねぇな……)

ダルシム(……あっ、そういえば)

ヤムチャ(『ありがとう』って言いたい……『ごめんなさい』って言いたい……だけど、試合直前に、仲良くする事よくねぇって言われたから……ここは……)

ダルシム(しまったなぁ……汗を拭いながら、彼の方を見るってサインをしているのを忘れていたよ……空手軍団のヤムチャ君を私が引っ張るだなんて、失敗してしまったかな……私も、ディージェイ君の行動に慌てていたのかな……? 反省しなくては……)

ヤムチャ「ヘイヘイ、おっさんおっさん……俺の力が借りてぇのか? まぁ、そんなヨボヨボの身体じゃ……確かに辛そうだぜ!」ニヤリ

ダルシム「……ん?」

ヤムチャ「本物の蹴りを見て……あんたも勉強しな……! ほれ、手本を見せてやるぜっ! おらぁっ!」シュッ

ブランカ「……ウグッ!」


実況「そして、お次はヤムチャっ! ヤムチャが蹴りを撃ち込みます! こちらは鋭い蹴りだぁ!」


ヤムチャ(こういった言葉……ダルシムさんが求めてる行動をする事がお礼だ……試合の後でいくらでも言えばいいんだ……今は行動で示そう……)

ダルシム(失敗したと思っていたが……ヤムチャ君が上手くフォローしてくれたようだな……若手に引っ張られるベテランなんて情けない……だが、ヤムチャ君……感謝するよ……)

ヤムチャ「次はおっさんの番だぜ? 俺みたいな、鋭い蹴り……やってみな!?」ニヤリ

ダルシム「ふむ……では、参考にさせてもらうよ……こんな感じでいいのか……? はあっ!」シュッ

ブランカ「……ウッ」

ヤムチャ「違う違う……鋭さが足りねぇよ……もう一度、お手本を見せてやるよ……ほれ、こうやるんだよっ!」シュッ

ブランカ「……ウグッ!」


実況「お次はダルシム! お次はヤムチャ! さぁさぁ、二人が交互に蹴りを撃ち込み……コーナーにいるブランカにダメージを与えていきます!」


ダルシム「……なる程、こうやって打てばいいのか?」シュッ

ブランカ「……ウッ」

ヤムチャ「違う違う……こうだこうだっ……!」シュッ

ブランカ「……ウグッ!」


ディージェイ(ミーはいつまで、こうやって寝ていればいいんだよ……こんな所に寝ているだけじゃ……とても乗れないよ……)

ダルシム(よしよし……いい感じだ……)

ヤムチャ(有利な状況……合体攻撃に見えるが、実は違う……実はただの単調な蹴りの連続だ……あまり長すぎるのもお客さんは、飽きちまう……)

ダルシム(後、二発ずつしたら……ヤムチャ君には戻ってもらおうか……なんだかんだで、まだ試合の序盤だし……ここは第二試合なんだからな……)

ヤムチャ(後、二巡ぐらいが限界だろう……二巡ぐらいしたら……ケンさんとしたみたいに、同時に仕掛けてフィニッシュにした方がいいんじゃねぇか……? ダルシムさんに、それっぽい口調で言ってみよう……)


ディージェイ(ヘイヘイ、ミーは退屈だよ……君たちがいい所を見せたいが為だけに……ミーをこんな目に合わせるなんて酷いよ……ミーだっていい所を見せたいのに……)


ダルシム「よし、次は私の番だな……? 参考にさせてもらうから……見ていてくれよ……?」

ヤムチャ「おうおう、おっさん! 頑張ってやってみな!」


ディージェイ(あれ、待てよ……? これって、Mr.ブランカがピンチの状況じゃないか……そうだよ……そうだよね、きっとそうだよ……!)

ディージェイ(しまった……! ミーは勘違いをしていた……! Mr.ダルシムは、Mr.ヤムチャと合体攻撃を仕掛ける事によって、Mr.ブランカがどうしようもない状況を作り出しているんだ……)


ダルシム「……はぁっ!」シュッ

ブランカ「……ウッ」


ディージェイ(Mr.ブランカがピンチならどうする……!? 彼を助ける人間は誰だ……それは、ミーだよ! タッグパートナーのミーしかいない……!)


ダルシム「フッ、どうだ? 私もよくなってきたんじゃないかな、ヤムチャ?」

ヤムチャ「おっさんはまだまだだな……まぁ、もう一度手本を見せてやるから……見ておきな……?」


ディージェイ(なんてこった……! ミーはMr.ダルシムの事を勘違いしていた……! Mr.ダルシムは、ミーをより格好よく見せる為に、一度ミーに攻撃して……二人掛かりで攻撃を仕掛けているんだ……!)


ヤムチャ「蹴りってのは……こうやって打つんだっ……! オラっ……!」

ブランカ「……ウグッ!」


実況「さぁさぁ、ダルシムとヤムチャが二人掛かりでブランカの胸板に蹴りを与えています! こいつは、野生児も辛いか!?」

ディージェイ(なんてこった……! こんな所で寝ている場合ではないよ!)ムクッ

ヤムチャ「……ん?」

ダルシム(今の起き上がり方……)

ブランカ(マズい……嫌な予感がする……)


実況「おっと、ここで場外にいるディージェイが素早く起き上がった!」


ディージェイ「Mr.ブランカっ! しっかり、するんだ! 今、ミーが助けてあげからね!」

ヤムチャ(う、うおっ……あいつ、急に起き上がって、リングに入って来やがった!)

ダルシム(くっ、ヤムチャ君に抑えておいてもらうか……? しかし、この合体攻撃も一段落はついていない……だったら、まだディージェイ君に攻撃される方が自然だ……)

ブランカ(あ~、あ~、やっぱり……とにかく、私は最後の最後まで動くわけにはいきませんね……ディージェイ君がやらかすならやらかすで……騒動の総纏めをしないといけませんから……)


実況「そして素早くリングイン! ブランカの救出へと走ったぁ!」

ディージェイ「Mr.ブランカ! 今、助けるよ! シュッ!」シュッ

ダルシム「……グッ!」

ディージェイ「そして、ターンしてもう一発っ……! これがミーのダブルローリングソバットだ!」シュッ

ダルシム(ここは……とりあえず、ダウンして泳がせよう……ダウン向きの技ではないが、致し方ない……)ヨロッ


実況「さぁ、先ずは身体をクルリと捻らせて、ステップしながらのソバットの連続攻撃! 先ずはダルシムにダブルローリングソバットを仕掛けた!」


ディージェイ「ミーのファンキーなビートはまだ続くよ……? さぁさぁ、リズムに乗っていこう!」

ダルシム「……何?」

ディージェイ「リズムに乗って……蹴りを打ち出していくよ~? Mr.ダルシム……耐えられるかなぁ~?」シュッ

ダルシム(何っ……!? まだ、私に攻撃を仕掛けてくるのか……!?)

ディージェイ「ファンキーなビートが刻まれてきたねぇ……ンッン~、いいリズムだよ」シュッ


実況「いやっ、ディージェイはさらに追い討ちを仕掛けているぞ!? 連続でのダブルローリングソバットでダルシムをダウンさせませんっ!」

ヤムチャ(お、おいっ……! 俺は、どうするんだよ!? 俺にも、攻撃仕掛けた方がいいんじゃねぇの!?)

ディージェイ「さぁさぁ、ファンキーにいくよ~!」シュッ

ダルシム(くそっ……! 無駄に早い攻撃だから……ダウンする暇も……反撃する暇すらない……)


ヤムチャ(ブランカさんの事は、放っておいて……ダルシムさんをアイツから救出した方がいいのか……!?)

ブランカ(私が復活して……私がヤムチャ君と戦って、我々が押している展開を作る事も出来るが……何故、いつもいつも、試合が荒れてしまうんだ……)


ディージェイ「リズムに乗っていくよ~!」シュッ

ダルシム(くそっ……その場その場の行動で……私は、何もできんぞっ……! 他の二人に任せるしかないっ!)


ヤムチャ(あぁ、くそっ……! 俺がなんとかするしかねぇ! とにかく、自然な流れで、アイツの暴走を止めねぇと……!)

ヤムチャ「……うるあぁっ!」ガスッ

ディージェイ「……うおっ!」ヨロッ


実況「さぁ、ここでヤムチャが背後から、ディージェイの後頭部にラリアットを仕掛け……ダルシムの救出に向かったぁ!」

ホーク「……少し、試合が荒れてきましたねぇ」


ディージェイ「何をするんだい……? ミーのファンキーなビートを邪魔するなんて……酷いじゃないか……?」クルッ

ヤムチャ(こいつ、ダウンしねぇ……! しまった、選択ミスだったか……? バックドロップ仕掛けて……無理矢理にでも、ダウンさせちまった方が良かったか……?)

ブランカ(ヤムチャ君、よく動いてくれたな……君に任せる……ここからの君の動き……それをクリア出来れば、第五試合に戻れるぞ……!)

ダルシム(ヤムチャ君、ありがとう……この隙に私はダウンさせてもらうよ……)ガクッ


実況「おっと、だがしかし、少しばかり攻撃を受けすぎてしまったか!? ダルシムは、ガクッと倒れこみます!」


ディージェイ「次はMr.ヤムチャ……君にミーのファンキーなビートを聞かせてあげよう……ホラホラ、リズムに乗っていくよ~?」

ヤムチャ「てめぇは、好き勝手にやってんじゃねぇぞコラァ!」

今日はここまで
短かったな

ダルシム(ぬっ……? 今のヤムチャ君のセリフ……ひょっとして本気で怒っているのか……? 試合前に言っておいたはずなのに……マズい、ヤムチャ君、冷静になれっ……!)

実況「ディージェイは不敵に笑みを浮かべ……おっと、次はヤムチャに仕掛けたっ!」


ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ヤムチャ……君も乗っていこう~! はぁっ!」シュッ

ヤムチャ「くっ……! 来やがったっ……!」

ディージェイ「リズムに乗って~、もう一丁っ! はぁっ!」シュッ

ヤムチャ「くそっ、 いい加減にしやがれっ……!」


実況「ディージェイはヤムチャにも、ダブルローリングソバットを仕掛けるっ! さぁさぁ、ディージェイが暴れているぞ!」


ダルシム(と、思ったら、意外と冷静に技を受けているなぁ……さっきのセリフは本気で怒っていると思ったが……どうやら、私の杞憂だったようだな……)

ブランカ(いいぞ……ダルシムさんとの一試合が生きているようだな……ここぞのタイミングで、彼を止めればいいんだ……慌てる必要はない……)

ディージェイ「ヘイヘイにリズムに乗っていくよ~! もう一丁っ!」シュッ

ヤムチャ(こいつ、何発同じ技打つんだよ……さっきから、そればかりじゃねぇか……!)

ディージェイ「ヘイヘイ~! いい、リズムだねぇ~」シュッ

ヤムチャ(あ~、ちくしょう……ぶん殴りてぇ……ぶん殴って止めるのは、簡単だけど……)


実況「さぁさぁ、ディージェイの連続のダブルローリングソバットで、ヤムチャは逆サイドのコーナーに、押し込まれていきます!」

ホーク「……ディージェイ選手、大暴れですねぇ」


ヤムチャ(腐っても、俺はZ戦士……そして、こいつは一般人なんだ……下手に本気を出しちまったら……こいつに大怪我をさせちまう可能性だってある……!)

ディージェイ「さぁさぁ、まだまだ行くよ~!」シュッ

ヤムチャ(あくまで、プロレスのルールの範囲内で、こいつの相手をしなくちゃならねぇ……こいつが、怪我しない範囲の中でな……)

ディージェイ「ンッン~、いいリズムだよ……」シュッ

ヤムチャ(ちくしょう……多分、こいつ格闘技か何かやってやがったな……地味に早い蹴りだし……サガットさん達と違って、地味に痛ぇ蹴りだ……くそっ、対応しにくいな……)

ディージェイ「ヘイヘイ、まだまだいくよ~」

ヤムチャ「……させるかっ! さっきから、ワンパターンなんだよ、この野郎っ!」シュルッ

ディージェイ「……お、おおっ!?」

ヤムチャ(よしっ……! 捉えたっ……! 掴んだっ……! 組み合ったっ……! こうすりゃ、こいつだって、技は出せねぇだろう……とりあえず、動きを止める事には、成功したぜ……)


実況「おっと、コーナーサイドに追い詰められたヤムチャが、ここで反撃か!? ディージェイの頭をうまく脇に抱え……動きを止めましたっ!」


ヤムチャ(よしっ、動きを止めて……ここからこいつをどうするか……? とりあえず、もう一度場外に落としたいから……)

ディージェイ「何するんだい、Mr.ヤムチャ……ミーの攻撃はまだ……」モガモガ

ヤムチャ(くそっ……! こいつ、暴れだしやがった……! こっちは、まだ考えが纏まってねぇってのに……ちくしょうっ……!)

ヤムチャ「……お前は、大人しくしてやがれっ!」ゴスッ

ディージェイ「……ウゴッ!」


実況「さぁ、そのままの体勢で、ヤムチャが膝をディージェイの腹部に打ち込みます!」


ヤムチャ(こいつが耐えれる範囲内での……強めのヤツを打ち込んでおくか……いくら、空気が読めない奴でも……痛みで指示されれば、動きを止めてくれって、意図はわかるだろうからな……)

ディージェイ「ヘ、ヘイ……! Mr.ヤムチャ……! 君は何て蹴りを打ち込むんだいっ……! Mr.ヤムチャは、プロレスがわかってないよ……ミーがリードしてるから、とりあえず離してくれよ!」

ヤムチャ(こ、こいつ……わかってねぇ……! 伝わってねぇ……!)

ディージェイ「ほら、早く離しなよ……! こんな地味なファイトじゃ……オーディエンスは満足出来ないよ……! ほら、早くっ……!」モガモガ

ヤムチャ(や、やべぇ……! また、暴れ出しやがった……! ここからどうするか、考えたかったのに……邪魔すんじゃねぇよっ……!)

ヤムチャ「……お前が動くのを、止めればいいんだよ! ホラ、大人しくしやがれっ!」ゴスッ

ディージェイ「……オゴっ!」


実況「さぁ、そして膝蹴りをもう一発! コーナーで二人が縺れ合いながらの攻防が、続いています!」


ディージェイ「Mr.ヤムチャ……君は一体、何を考えて……」

ヤムチャ「……お前は黙ってろっ! 今、どうすっか、考えてんだからよぉ! オラっ!」ドスッ

ディージェイ「……ガッ!」


実況「お次は背中に一発、エルボーを落としていきます! 試合権利のない二人の争いが続いてますねぇ、ホークさん?」

ホーク「……ちょっと、荒れた試合になりましたねぇ」


ディージェイ「Mr.ヤムチャ……いい加減に……」

ヤムチャ「うるせぇ……! お前は黙ってろっ……!」ガスッ

ディージェイ「……ウゴッ!」

ダン「何やってんだ! おめぇらは、糞がっ!」ズガズガ


ヤムチャ「……おっ、ダンさん?」

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ダン……ミーを助けてくれよ……Mr.ヤムチャは……」

ダン「……うるせぇ! おめぇらは、試合権利を持ってんのか、あぁ!? 今、試合権利を持ってるのは、ダルシムとブランカだろが!」


実況「おっと、ここでレフェリーが、両者の制止に向かいました。キツい口調で何かを言ってますねぇ?」


ダン「試合権利がねぇんだったら……大人しくコーナーで待機してやがれ! ホラ、ヤムチャ! いつまでやってんだ! そいつを離して、自軍のコーナーに控えてな!」

ヤムチャ「う、うっす……! すいません……」パッ

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ダン……貴方が水を差したら、オーディエンスは……」

ダン「おめぇもだよ、ディージェイ! 自軍のコーナーで、大人しく控えてな!」

ディージェイ「あのね……Mr.ダン……?」

ダン「……マジでいい加減にしろよ、ディージェイ? 俺が笑ってるうちに、済ませておいた方がいいぞ?」ギロリ

ディージェイ「……うっ!」

ダン「……早く戻れ。こういう事は試合の終盤にやれ、終盤によぉ」

ディージェイ「わかりましたよ……折角、いいリズムでやってたのに……Mr.ヤムチャが空気を読めないから、台無しだよ……」

ヤムチャ「……何だと?」

ダン「相手にするな、ヤムチャ……! 放っておけ……!」


実況「さぁ、レフェリーの制止によって、騒動は収まったでしょうか!? 今、ディージェイが自軍コーナーに引き下がります!」


ダン「よし、ヤムチャ……おめぇも戻れ! おめぇが上手くやってくれて助かったよ……」ボソッ

ヤムチャ「……えっ?」

ダン「あ~んな、蹴り打ちまくってる所に、俺も飛び込めねぇからな……おめぇが抑えておいてくれて……割り込む隙間が出来たよ……」ボソッ

ヤムチャ「……ダンさん」

ダン「オイ、コラ、あぁっ!? まだ、文句があんのか!? 試合権利がねぇって、言ってんのがわかんねぇのか、あぁ!?」

ヤムチャ(う、うおっ……ダンさん、いきなり怒り出して……情緒不安定だぞ、コレ……)

ダン「おい、コラ、ノーコンテストにしてやろうか、あぁ!? おめぇが早く戻らねぇと、この試合はノーコンテストだぞ、オラっ! わかってんのか!?」

ヤムチャ(なるほどね……そういう事か……)

ダン「……早く戻れっ! オラっ!」

ヤムチャ「……わかりました。下がります」

ダン「……ったく、試合荒らしてんじゃねぇよ、糞が!」


実況「さぁ、ヤムチャも自軍コーナーに引き下がります……なんとか、レフェリーの制止で、騒動は収まったでしょうか?」

ホーク「そうですね。落ち着きましたね」

実況「さぁ、リング上には、ダルシムとブランカ! と言っても、ダルシムはダウンしており……ブランカはコーナーでぐったりとしています。 荒れた展開から一転……ここから、どうなってしまうんでしょうか?」


ダルシム「ううぅ……」

ブランカ「……ウググ」

ダン「あ~、次はダルシムとブランカだな……ったく、やる事が多くて忙しいな……まぁ、先ずはブランカからなんとかすっか……」イソイソ

ブランカ「ウググ……」

ダン「お~い、ブランカ……? 大丈夫か、しっかりしろ……?」


実況「さぁ、レフェリーがコーナーのブランカに近づいて……意識を確認しているのでしょうかねぇ?」


ダン「お~い……? 聞~こえてま~すか~? しっかりしましょうねぇ~?」ペチペチ

ブランカ「……ウググ」


実況「さぁ、頬を叩いて意識を確認にしております。大丈夫なのでしょうか?」

ホーク「……二人がかりの蹴りで、思った以上にダメージがあったんですかねぇ?」


ダン「お~い……ブ~ランカちゃん~?」ペチペチ

ブランカ「……ウッ、ウウッ」パチッ

ダン「おっ、意識はあるみてぇだな……? 大丈夫か、やれるか……?」

ブランカ「ウガアアァァァァっ!」

実況「おっと、ここでブランカが起き上がりましたが……突然雄叫びをあげました! 近くにいた、レフェリーも突然の出来事に耳を塞ぎます」


ダン「なんだよ……いきなり大声、出すんじゃねぇよ……びっくりするじゃねぇか……」

ブランカ「だんサン、聞イテ、聞イテ!」

ダン「あぁ……? 何だよ……?」

ブランカ「俺、二人掛カリデ蹴ラレタ……! 痛カッタ! 悔シカッタ!」

ダン「……はぁ」

ブランカ「一人ハ、アソコノ、こーなーニイル奴! 一人ハ、ソコデ、だうんシテイル奴!」

ダン「……そうやって指を指すな。失礼だぞ?」

ブランカ「二人デ攻撃ナンテ、ズルイ、ズルイ! 俺、何モ出来ナカッタ! アンナノ、ズルイ、ズルイ! るーる違反!」ジタバタ

ダン「悪かったよぉ……? 今度からはさ、ちゃんと俺が止めるから……そんなに、暴れるんじゃねぇよ……?」


実況「おっと、ブランカは先程、二人掛かりで攻撃を受けて事を、根に持っているんでしょうかねぇ……? 少し、興奮しているようです!」

ホーク「ヤムチャ選手とダルシム選手を指差してましたからねぇ……おそらくそうでしょう。折角、仕切り直しになったのに……これまた厄介な事になりそうですね……」

実況「相手は野生児! 知能レベルは三歳児と考えた方がいいかもしれません! これは、先にダルシムに声をかけるべきだったのでは!?」

ブランカ「クソッ……俺、許セナイゾ……!」

ダン「あ~、待て待て……! とりあえず、一回、仕切り直そう……! 落ち着けって!」

ブランカ「俺ノ怒リハ、爆発寸前……」

ダン「だから、とりあえず落ち着けって……! 『待て』だ! いいな、ブランカ、『待て』」

ブランカ「……ウッ」ピタッ

ダン「よしよし……いいぞ、いいぞ……次は、『伏せ』だ! 『伏せ』」

ブランカ「……」ビシッ


実況「おぉ~と、そういえばブランカを手なづけるには、この方法があったか!? レフェリーがブランカに指示をすると……暴れていたブランカはピタリを動きを止めました!」


ダン「よし、そのままだぞ……そのままだ、ブランカ……今の間に俺はダルシムに声をかけるからよぉ……?」

ブランカ「……」ピタッ

ダン「よっしゃ、よっしゃ……今の内、今の内……早い所、ダルシムの意識も確認しねぇとな……ま~た、ブランカが暴れちまう……」イソイソ


実況「さぁ、その間に、レフェリーはダルシムの元へと向かいます! 急げレフェリー! こいつは、そういつまでも、待っていられる程賢い犬ではないぞ!?」

レフェリー、ガンバレー!

実況「今、会場から『レフェリー頑張れ』と声が聞こえたぞ!? こういった、こういった歓声は珍しいぞ!?」

クスクス……クスクス……

ダン(いつもは……もうちょっと、ウケるんだけどなぁ……こんな使い方をして、ジミー……悪ィな……)

ブランカ(中断した攻防の再開前に、場内を温めてくれたんですね……いつもより、笑いは少ないですが……おそらく、この芸はこの試合中にしている時間もないでしょうし……これでいいと思います)

ダン「おいっ、おいっ……! ダルシム、大丈夫か? しっかりしろ!」

ダルシム「う、ううっ……」ムクッ

ダン「大丈夫か……? まだ、やれっか……?」

ダルシム「気遣い、感謝する……私はまだ、やれるよ……」


実況「さぁ、今ダルシムが起き上がり……ここから、仕切り直しは整ったでしょうか?」


ダン「よっしゃ! 二人とも、準備はいいな!? それじゃあ、ブランカ……! 『伏せ』解除だ! もういいぞ!」ビシッ

ブランカ「……よしっ!」


実況「そして、レフェリーがブランカに指示をして……ブランカも戦闘体勢っ!」

パチパチ……パチパチ……

実況「なんとか、試合が立て直されましたかね? 場内からは拍手が送られます!」


ダン「いやぁ~、まさか俺が拍手を頂けるなんて……有難い話だねぇ……それじゃあ、二人とも、準備はいいな!?」

ダルシム「……あぁ!」

ブランカ「……任セロ!」

ダン「よしっ……! じゃあ、試合再開だ……ファイッ!」

書いててもっといい他のパターンもあったと思うけど、まぁこんな感じで
今日はここまで

ブランカ(今日の試合、入場にも時間がかかっている……そして、先程のやりとりも、予想以上に伸びてしまった……ダルシムさんとの、攻防……少し、スピードアップしていかないとなぁ……)

ダルシム「さぁ、いくぞっ……! ブランカよっ……!」

ブランカ「ウオオッ……! サッキノ仕返シダ……! 覚悟シヤガレッ……!」シュタッ


実況「おっと、ここでブランカが身体能力を見せたっ! クルッとバク転をして……」


ブランカ「……ウオオォォォッ!」ギュルンッ

ダルシム「何っ……!? 飛んだだと……!?」


実況「そして、間髪入れずに身体を丸めて高く飛び上がったぞ! こいつはバックステップローリングだっ! ブランカがトリッキーな動きで仕掛けたぁ!」


ダルシム「くっ……こいつ、早いっ……!」

ブランカ「……グフフ」


実況「さぁ、落ちてくる落ちてくるぞ! 頭上から、丸まった野生児が落ちてくる!」

ブランカ「……ウオオォッ!」ガスッ

ダルシム「……うおっ!」ヨロッ


実況「ブランカの攻撃を受け……少しばかり、ダルシムはフラつきます!」

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ! 今のは、いいリズムだよ~!」

ホーク「コーナーにいるディージェイ選手も、声援をおくってますね」


ブランカ「マダマダ、ダ……イクゾッ……! ウオオォッ……!」ギュルンッ

ダルシム「……何っ!?」


実況「おっと、ここで間髪入れずにもう一発っ! 今度は通常のローリングアタックだ!」


ブランカ「……ウオオオォォォッ!」ドスッ

ダルシム「うぐっ……こいつ、早いぞ……!」バターン


実況「よろけたダルシムの隙を見逃しませんっ! 隙を与えない、野生児特有の連続攻撃だ! これにはダルシムも……ダーウンっ!」

ブランカ「グッフッフ……俺ノ怒リハ、コンナ物デハナイ……」ダダッ

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ! ナイスビートだ! ミーも乗ってきたよ!」ルンダルンダ


ホーク「コーナーにいるディージェイ選手も乗ってきましたね……まーた、踊ってます……」

実況「さぁ、ブランカはダウンしているダルシムを尻目に、ロープに走る! ロープの反動をつけての攻撃か!? 何を狙っているんだ!?」


ブランカ「グッフッフ……行クゼ……!」

ダルシム「ううっ……くそっ、来てるな……なんとかしなくては……」

ブランカ「モウ、手遅レダ……イクゾ……スライディング、シテノ……!」

ダルシム「な、なんだ……この動きはっ……!?」

ブランカ「……だぶるパーンチダっ!」ドスッ

ダルシム「……うぐっ!」


実況「おぉ~っと、これはスライディングパンチとでも言えばいいでしょうか!? ヘッドスライディングのように、頭から滑り込み……その勢いのまま、ダルシムの脇腹辺りに拳を打ち込んだぁ!」

ホーク「珍しい技ですね」

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ! ナイスナイス!」ルンダルンダ

ヤムチャ(あの技……俺も使った事がある……ダウンしている相手に、ロープから走りこんだ勢いをつけて……スライディングして、相手の脇腹に打つ技だ……)

ダルシム「ぐっ、ぐおおぉっ……」

ブランカ「グッフッフ……ソコ、殴ラレルト、痛イ……俺、知ッテル……」

ヤムチャ(俺は足で蹴ったけど……ブランカさんは、手でやりやがった……はっきり言って格好悪い……俺の技の方が全然格好いい……)


実況「流石に脇腹をピンポイントで狙われると苦しいか!? ダルシムは少しばかり苦しんでいる模様です」


ヤムチャ(だけど、なんて言うか……格好悪いけど、ブランカさんのイメージにぴったりなんだよ……あのふざけた人だったら、綺麗な技より、こういう技の方が似合うんだろう……)

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ! ファンキーだぜぇ~!」ルンダルンダ

ヤムチャ(こういう所も学んでいかねぇといけねぇのかな……? というか、ま~たアイツ、踊り始めたぞ? どうすんだ、放っておいて大丈夫か?)

ヤムチャ(今、ダルシムさんはダウンしてピンチなんだし……俺が乱入して、ブランカさんに一撃与えて……そのついでに、アイツにも攻撃を仕掛けて場外に落ちておいてもらう……)

ブランカ(ふ~む、また踊り出しましたねぇ……ダメなワケではないのです……私が大技を仕掛けた時なんかに、ソレをしたらいいのです……ディージェイ君は、何でもやりすぎなんですよ……)

ヤムチャ(いや~、ダメだ……このタイミングで乱入は早いだろ……ダルシムさんはそこまで大技受けたワケではないんだし……ただ、痛めつけられてるだけだ……こんなタイミングで乱入繰り返してたら、いつまで経っても大技の攻防にはならねぇ……)

ブランカ(下手に刺激して、ヘソを曲げられるのも、困りますし……ここは、敢えて、乗っておきましょうか……)


ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ! ファンキーだったよ~!」ルンダルンダ

ブランカ「俺、強イダロ! でぃーじぇいモ、俺ノ強サヲ、見テテクレタンダナ!?」

ディージェイ「イーエス! 勿論、見ていたよ~! と~っても、ファンキーだぜぇ~!」

ブランカ「仲間二褒メラレテ、俺モ嬉シイ! 俺トでぃーじぇいハ仲間! 俺モ踊ル!」ピョンピョン

ヤムチャ(……ん?)


実況「おぉ~っと、ここでブランカも踊り始めたぞ!? コーナーでいるディージェイの動きを真似て……自らも同じように、踊っています!」

ブランカ「コンナ感ジデ、イイノカナ……? でぃーじぇいノだんす、難シイ! ア、ソレ……ヨイヨイ……」ピョンピョン


実況「踊っている! ブランカが踊っている! だが、何だろう……何処と無く、ぎこちないっ!」

クスクス……クスクス……

実況「人間界の踊りを真似るには、少しばかり知能が足りていないのか……!? 何だ、コレは! 上手く出来ていないぞ!?」


ディージェイ「……Mr.ブランカ」

ブランカ「ア、ソレ……ヨイヨイ……ホレ、ヨイヨイ……」


クスクス……クスクス……


ディジェイ(貴方ともあろうお方が……何故、ミーの動きを真似するんだ……これは、僕の行動じゃないか……人の行動を真似すればいいってものじゃない……それはいつもいつもMr.ブランカがミーに言っている事じゃないか!?)

ヤムチャ(あれ、アイツの動きが止まったぞ……? どういう事だ……?)

ディジェイ(何より、Mr.ブランカ……! 貴方にはリズム感の欠片もないっ……! そんなダンスじゃ、オーディエンスは乗せられないよ……!)

ダルシム(よくわからんが、ディジェイ君の動きが止まったぞ……? これは、仕掛けるチャンスだな……だが、慌ててはいけない……ゆっくりでいい……)ムクッ


実況「おっと、ここでダルシムがゆっくりと起き上がります! 脇腹を抑えている所を見ると、少しばかりダメージを受けている模様です!」


ブランカ「ア、ソレ……ヨイヨイ……ホレ、ヨイヨイ……」

ダルシム「呑気に踊っている場合ではないぞ……! ふんっ……!」グイッ

ブランカ「……ヌッ?」


実況「そして……踊っているブランカの右手を捻りながら掴んだぁ!」


ブランカ「ウガッ……! ウガガ……! 痛イ痛イ痛イ……!」

ダルシム「私のような老体では、君のような素早い攻撃や力のある攻撃は出来ん……」

ブランカ「痛イ痛イ痛イッ……! オ前、何シテル……!? 手ヲ離セ……!」

ダルシム「だが、関節技なら向いている……テコの原理で仕掛ける事が出来るからな……こいつは、アームロックという技だ? どうだ、痛かろう……?」


実況「さぁ、ダルシムがブランカの右腕にアームロックを仕掛ける! ブランカはかなり、痛がっている模様です!」

ブランカ「痛イ痛イ痛イ! だんサン、助ケテ!」

ダン「……ギブアップすんのか?」

ブランカ「ぎぶあっぷハシナイ……! ダケド、助ケテ……!」

ダン「……あのなぁ?」

ダルシム「安心しろ、ダン君……今、彼は痛みでパニックになっているだけさ……少し、冷静になれば力づくで……この老体から逃れる事が出来るだろう……こんな技では決まらんよ……」

ダン「お、おう……そうか……」

ダルシム「だが、そうは私もさせん……ブランカ君よ……少しばかり、激痛が走るが……まぁ、我慢しろよ……?」

ブランカ「痛イ痛イ痛イ! モウ、トックニ痛イ!」

ダルシム「これより、もっと痛い事だ……さぁ、覚悟しろっ……! フンっ!」グイッ

ブランカ「……ウオッ!?」


実況「さぁ、そしてダルシムはロックしたままの腕を……そのまま高々と上げたぁ!」

ダルシム「ふんっ……! ショルダーアームブリーカーだっ!」ガスッ

ブランカ「……アガッ!」


実況「さぁ、そして捉えた腕を一気に降り下げて、自らの肩口にブランカの腕の関節部分をぶつけるっ! テコの原理でブランカの腕にダメージを与えにいったぁ!」

ホーク「いくらブランカ選手に筋肉があるとしても……こうやって、関節部分をピンポイントで責められるのは、効きますよね」

実況「ダルシムのショルダーアームブリーカー! ブランカはかなり、痛がっている模様です!」


ブランカ「ナ、ナンダ……ソノ技……? 俺、ソンナ痛イノ知ラナイ……俺、オ前ノ事、怖イ……」

ダルシム「そんなに怯える事はない……別に腕は折れちゃいないだろう……? さぁ、もう一発、いこうか……?」グイッ

ブランカ「ウッ……! 嫌ダッ……! ヤメロ、離セッ……!」


実況「さぁ、そして逃さず、ブランカの手をもう一度掴みます!」

ホーク「ブランカ選手、かなり痛がっていますからねぇ……効果的ですね」

ヤムチャ(あの技、多分本気で仕掛けたら……マジで腕が折れちまうね……ダルシムさんも、そこはわかってるだろうし……加減してやってんだろう……)


ダルシム「さぁさぁ、もう一度行くぞ……?」ググッ

ブランカ「モウ、ヤメロォ……! ソノ技ハ、ヤメテクレェ!」


ヤムチャ(だから、これはブランカさんのやられ方が上手いって事だ……以前、バイソンさんに言われた時には、うっすらとしかわからなかったが……今、目の前で見て、はっきりとわかったよ……)


ダルシム「さぁ、覚悟しろっ……! フンっ……!」ガスッ

ブランカ「……ウガアアアァァァッ!」


実況「さぁ、そして、もう一発っ! ブランカの腕に、ショルダーアームブリーカーでダメージを蓄積させていくっ!」


ブランカ「ウアア……アガガ……オ前、何テ酷イ奴ダ……」

ダルシム「ははは、すまないすまない……だが、安心しろ……そろそろ、とどめにしてやるよ……」


実況「さぁ、ブランカは苦しそうです! 腕をダラーンと垂らして……これは、右腕はもう使えないか!?」

今日はここまで
最近短いし、それぞれ台詞もそこそこ長くなってる気がする
その辺見辛かったらごめんね

ダルシム「さぁ、いくぞ……ふんっ……!」ググッ

ブランカ「……ウオッ?」


実況「さぁ、ここでダルシムがブランカを掴みにかかったぁ! こいつは、ヘッドロックか……? ヘッドロックからの……狙っているのか!?」


ダルシム「皆の期待に応えたいのは、山々だが……」

ブランカ「ウオッ……! 離セ……離セ……」

ダルシム「このチャンス……逃す訳にはいかない……! だから、ここはこうだっ!」ググッ

ブランカ「……ウオッ?」


実況「おっと、これはフェイントか!? ヘッドロックのような体勢から、そのままブランカかの背中に自らの体重を乗せて……そのまま腹這いにダウンさせる!」


ダルシム「さぁ、いこうか……狙いは勿論……この右腕だよ……」ググッ

ブランカ「!」


実況「素早くグラウンドの体勢に持っていったぁ! そして、そのまま脇固めに持っていったぁ! 狙いは勿論……先程、痛めつけた、右腕だぁ!」

ブランカ「ウワアアアァァ! 痛イ、辞メロ! 何ヲ、スルンダ!」バタバタ


実況「痛めつけられた右腕を決められ、これには流石の野生児も?く! 暴れる! 泣き喚いている!」


ダルシム(なんだかんだ、あったが……そろそろ5分……交代の時間だ……)

ブランカ「ウワアアア! 痛イ痛イ痛イ! だんサン、助ケテ!」

ダン「大丈夫か!? どうする、ギブアップすんのか!?」


実況「さぁ、ロックのかかり具合はいかがですかねぇ? ホークさん?」

ホーク「いいんじゃないですか? いい感じだと思います」

実況「ロックはガッチリ決まっている! ここで、ダルシムが決めに来たか!?」

ホーク「まぁ、でもブランカ選手はパワーもありますからね……どうなんでしょう……」


ダルシム(このまま、ディージェイ君の方に逃げて……ロープブレイクと同時に交代だ……なんとか、繋ぐ事が出来たな……)

ブランカ「痛イ痛イ痛イ! ダケド、ぎぶあっぷハ、シナイ! だんサン、助ケテ!」

ダン「お前の理屈はいつも、わかんねぇよ……まぁ、ギブアップしねぇんだったら、ロープまで逃げな……ロープブレイクしたら、俺も助けてやるよ……ルールだからな……」

ブランカ「……ワカッタ! 俺、ろーぷマデ逃ゲル! 頑張ル!」

実況「さぁ、ブランカはか~なり、苦しんでいるっ! ロープまで逃げようとしているが……辿りつけるでしょうか!?」

ホーク「でも、ブランカ選手は結構パワーありますよ?」


ディージェイ「ヘイヘイ! Mr.ブランカ、何をやっているんだい! 見ちゃいられないよ!」


ヤムチャ(あっ、あの野郎……また、動きやがった……しまった、出遅れたな……)

ダン(おいおい、ディージェイ……大丈夫だよな……? わかってるよな……? ちゃんとしろよ……?)

ダルシム(……間違った、行動ではないが、少し不安だな)


実況「おっと、ここでディージェイがリングイン! ブランカの救出に向かいます!」


ディージェイ「Mr.ダルシム……貴方の攻撃は、ファンキーじゃない……とてもじゃないが、イケてない……さぁ、Mr.ブランカから、離れるんだ……」

ダルシム(もう、自分の出番直前だってのに……彼は本当に我慢が出来ないんだな……)

ディージェイ「ヘイヘイ、聞こえないのかい? だったら、嫌でもMr.ブランカから離れれるように……こうしてあげるよ……フンッ!」ガスッ

ダルシム「……ぐっ!」


実況「脇固めをしているダルシムに対して、ストンピング! 踏みつけていきます!」

ホーク「まぁ、ブランカ選手がロープまで逃げ切れるか……不安な部分もありましたしね……早め早めの対応でしょう」

ブランカ(まぁ、私が這いずって、ロープまで逃げるのも……こうやって、助けられた後に、ダメージを負った振りをしながら、彼の元に戻るのも……試合展開は変わりません……こういった、細かい部分での自己主張は上手いと思うんですが……)

ディージェイ「ヘイヘイ~! ミーはいつだってファンキーさ! リズムに乗って踏んづけていくよ~! フンッ……フンッ……フンッ……!」ガスガス

ダルシム「ぐっ……ううっ……うぐっ……!」

ブランカ(……ちょっと、やりすぎじゃないですかねぇ? 一撃与えれば、ダルシムさんは、倒れてくれますよ)


実況「おっと……ここで、ディージェイが連続ストンピング! ダルシムの身体を容赦なく踏みつける!」

ホーク「まぁ、念入りにって、感じですかね……? また、ブランカ選手がダルシム選手に掴まったら厄介ですからね」


ヤムチャ(おいおい……そろそろ5分だぞ……? お前の出番は、もう来るからよ……とりあえず、大人しくしておけよ……これ、俺も参加したら面倒な事になって、タッチ出来ねぇからいけねぇな……)

ダン(さっき、レフェリーの俺が目立っちまったから、もう大人しくしておきてぇんだけどなぁ……長ぇな……仕方ねぇ、やんわり警告しておくか……)

ディージェイ「フンッ……フンッ……フンッ……! イエーイ、ファンキーだねぇ~」ガスガス

ダルシム「ぐっ……ううっ……うぐっ……!」

ダン「……おい、ディージェイ? もう、いいだろ? そろそろ下がれ」

ディージェイ「ホワーイ!? 何故、ミーが下がる必要があるんだい!?」

ダン「……んあ?」

ディージェイ「Mr.ダン……貴方まで、どうしてミーの事を邪魔するんだ!? さっきも、ミーの事を邪魔しただろう!?」

ダン「おい、やめろよ……突っかかってくるんじゃねぇよ……」


実況「おっと、ここでディージェイがレフェリーに食ってかかります! コーナーに下がれとでも言われたのが……シャクに障ったのでしょうかねぇ?」


ダン「おいおい、落ち着けって……今は、目立ちたくねぇんだ……落ち着けよ……」

ディージェイ「目立つ事をして、オーディエンスを乗せるのが、僕達の使命だろ! Mr.ダン、貴方はさっきから、それの邪魔ばかりをしている!」

ダン「時と場合に寄るんだよ、それは……おめぇの今日の相手はヤムチャじゃねぇのか……目立つ事するのは、そこだろが……!」

ディージェイ「……Mr.ヤムチャ?」

ダン「こんな、ベテランのおっさん踏みつけまくって、盛り上がるんのか……? 違うだろ、なぁ、違うだろ……?」

ディージェイ「Mr.ダン……そうだよ……ミーの相手はMr.ヤムチャだった……」

ダン「……わかったんなら、さっさと下がれ」


実況「おぉ~っと……ここでようやく、ディージェイも落ち着いたか? 動きを止めます!」


ディージェイ「ミーは、Mr.ヤムチャと激しいバトルをして……オーディエンスを乗せていかなきゃならない……だから、ミーは行くよ……」

ダン「おうおう、行っちまえ……ほら、早く、自軍コーナーに行っちまえ……」

ディージェイ「Mr.ヤムチャ……さぁ、ミーと激しいバトルを始ようか……うおおおぉぉぉっ!」ダダッ

ダン「おいっ……! 何やってるんだ、そっちじゃねぇ!」


実況「いやっ、 落ち着いていない! 落ち着いていない! ディージェイは落ち着いていないぞ!? レフェリーの制止を聞いたように見えたのは……ディージェイのポーズだったか!?」

ホーク「……うわ」

実況「コーナーに待機しているヤムチャの元へと突っ込んだ! このディージェイの行動……私、読めませんっ!」


ヤムチャ(何やってんだ、コイツ……! 俺達の出番だろが……! なんで、このタイミング突っ込んで来るんだよ……!)

ディージェイ「ヘイヘイ、ヘイヘイ……さぁ、ファンキーに行くよ~!」ダダッ

ヤムチャ(食らうか……? 避けるか……? 掴みかかるか……? くそっ、ダメだ……完全にこれは想定外だった……考えが間に合わ……)

ディージェイ「イ~ヤッホオオォォォゥ!」ガスッ

ヤムチャ「……ぐわっ!」


実況「そのまま、コーナーに控えているヤムチャに対して、ジャンピングしてのニーアタックっ! ヤムチャを場外へと突き落とします!」


ダルシム(……何をしている、彼は!? もう、自分の出番はすぐそこだっただろう! 何故、このタイミングで)

ダン(俺の言い方がマズかったか……? しまった……これは、完全に俺のミスだ……!)

ブランカ(……入場の時のモタつき? そこが、計算に含まれてないんだったら)


ディージェイ(ミー達の出番まで、後2分ぐらいはあるんじゃないかな……? その間に、こうやってオーディエンスを温めればいいんだね……ナイス、アドバイスだ……Mr.ダン、感謝するよ……)

実況「さぁ、そしてそのまま、ディージェイは場外にダウンしたヤムチャを追いかけます!」


ヤムチャ(落ち着け落ち着け……まだ、やりようはいくらでもある……とにかく、お互いが交代出来る状況を作り出さねぇと……)

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ヤムチャ……起きなよ……さぁ、盛り上げていこう……」ググッ

ヤムチャ「ううっ……くそっ、舐めんじゃねぇっ……!」

ディージェイ「……ぬっ?」

ヤムチャ「うるぁっ……! 舐めんじゃねぇよっ!」ゴスッ

ディージェイ「アガガ、痛いよ、痛いよ……Mr.ヤムチャ……」


実況「場外でヤムチャが引き起こされ……いやっ! ヤムチャが上手く返した! ディージェイの身体を掴みに、エプロンサイドに叩きつけます!」


ディージェイ「何をするんだ、Mr.ヤムチャ……離すんだ……ミーを離すんだ……」モガモガ

ヤムチャ「うるせぇっ……! お前は大人しく、リングの端っこ、舐めてな……! 邪魔なんだよ……!」グリグリ


実況「そして、そのままエプロンサイドにディージェイの顔を押し付ける! こ~いつは、ディージェイにとっては少しばかり、屈辱的な攻撃だ!」

ホーク「そうですねぇ」

実況「気ままにやっている、ディージェイに対して……ヤムチャの怒りもついに爆発といった感じでしょうか!?」

ヤムチャ(理想はコイツを、向こうのコーナーで、大人しく待機させておく事だけど……)

ディージェイ「モガガ……モガガ……!」

ヤムチャ(暴れ回るコイツを、あっちのコーナーまで持っていく自信はねぇ……! 俺がダウンしたとしても、大人しく帰る様な奴じゃねぇだろ、コイツは……!)

ディージェイ「ううっ……離せ……離すんだ……Mr.ヤムチャ……」

ヤムチャ(どうすればいい!? もう、わかんねぇぞ! 何か指示をくれ、ダンさん!)チラッ


ダン(俺が場外に出て、二人を止めるか……? だが、ディージェイの野郎……それで、あっさり引き下がってくれるのか……?)


ブランカ「ウオオオォッ!」ムクッ

実況「おっと、ここでリング上のブランカが、起き上がった! さぁ、ブランカも……場外乱闘に参加か?」

ブランカ(タッグマッチでのディージェイ君が、まさかこんなに危険な存在だとは思わなかった……! ヤムチャ君、もう少しそのまま抑えておいてくれ……! 今、私が何とかしてみせるっ……!)

今日はここまで

ダン(ジミー……! おめぇが動いてくれるのか……よしっ、ここは任せるぞ、早い所ディージェイを何とかしちまえ……!)


ブランカ「ウオオオォッ! 俺ハ負ケナイゾッ! ウリャァッ!」ガスッ

ダルシム「……うぐっ!」


実況「いや、起き上がったブランカは……大きくタメを作ってブランカをストンピング! 踏みつけていきます!」

ホーク「そうですね」

実況「これは、場外でヤムチャとディージェイが乱闘してる隙に……決めてしまおうという事ですかねぇ? 恐らく、ダルシムもかなりのダメージを受けているでしょうから!」


ヤムチャ(お、おいっ……! ブランカさん、助けに来てくれねぇのかよ……!)

ディージェイ「離すんだ……離すんだ……Mr.ヤムチャ……ふんっ……!」グイッ

ヤムチャ(う、うおっ……やべぇっ……! 折角、捉えてたのに……逃げ出しやがった……! やべぇぞ、ダンさん……俺はどうしたらいいんだ……!?)チラッ

ダン(ジミー、どうするつもりだ……? ダルシムの事も場外に落として、おめぇらも場外乱闘おっ始めるつもりか……? でも、あまり試合荒らすんじゃねぇぞ……ここは、第二試合なんだからよぉ……!)

ブランカ「ウオオオォッ……! 起キロ……起ヤガレッ……!」ググッ

ダルシム「……ううっ」

ブランカ「……フンッ!」


実況「さぁ、ブランカはダルシムを引き起こし……そのまま、ロープへと振ったぁ!」


ダン(場外乱闘にはいかねぇのか……? ジミー、どうするんだ……? でも、ジミーにはきっと何か考えがあるに違いねぇ……だから、ここは……)

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ヤムチャ……ファンキーな攻撃とはこうやるんだよ……君は何もしなくていいから……ミーに任せておきなさ~い……」シュッ

ヤムチャ「くっ、来やがったっ……! うぐっ……!」

ダン「ヤムチャァ! おめぇは、暫くそこで何とかしてろ! こっちが、何とか立て直す!」


実況「レフェリーはリング内から、場外の二人に警告しているんでしょうかねぇ? おっと、そうこうしているうちに……ロープに振られた、ダルシムが返ってきたっ!」

ブランカ「……ウオオオォッ!」クイッ

ダルシム「……う、うおっ!」

ブランカ「……ウンガアアァァッ!」ドシーンッ

ダルシム「……うぐっ!」


実況「そして、カウンターのアームホイップを仕掛けるっ! 走ってくるダルシムを勢いを利用した技だ! 自分の右腕を上手く、相手の脇の下に差し込み、そのままフワリと投げて、ダルシムを背中からマットに落とす!」


ダルシム「う、うおおぉぉっ……!」ジタバタ


実況「ダルシムも腰を抑えて激しく悶えるっ!」

ホーク「見かけに似合わず、綺麗なフォームで高く上げて落としましたからね……ダメージも大きいんじゃないですか?」

実況「ヤムチャは今、場外でディージェイに掴まっております! これはこれは……試合を決めるチャンスか!?」


ディージェイ「ヘイヘイ……行くよ~?」シュッシュッ

ヤムチャ(何とかしろって言われたって……! くそっ、こいつ……好き勝手に攻撃しやがって……受けるので精一杯だぞ、これっ……!)

ブランカ「ウワアアアァァッ……! 痛イ……! 痛イヨオオォォ……!」

ダルシム「……ぬっ?」


実況「おっと……? だがしかし、ブランカも……自分の右腕を抑えて、激しく痛がっています! こいつは、どういった事でしょう、ホークさん?」

ホーク「アームホイップを仕掛けたのはいいんですが……その前に、ダルシム選手に、右腕を狙われた攻撃を仕掛けられてたでしょう……?」

実況「あ~、確かに……アームブリーカーに、脇固め! 結構、腕に攻撃を仕掛けられていましたね」

ホーク「なんだかんだで、ダメージは残っていたんですね……相手の勢いを利用する技といえども、右腕一本で投げているわけですからね……その負担に耐えれなかったんでしょう……」

実況「なる程! ブランカ……フォールに行けないっ……!」


ブランカ「ウウッ……右腕ガ痛イ……クソッ、今ガ大ちゃんすナノニ……」

ダルシム「うぐっ……どうやら、右腕を痛めつけていたのが、生きていたようだな……これは、幸運な展開だ……」

ブランカ「早クシナイト、アイツガ起キテシマウ……ダケド、腕ガ……腕ガ……」

ダン「おい、ブランカ……おめぇ、大丈夫か……? その右腕……試合出来るのか……?」

ブランカ「ウルサイ、ウルサイ! 俺ハ、絶対二勝ツ! ウルサイ、ウルサイ!」

ダルシム「相手も、辛いようだ……ここは無理に責めずに、少し様子を見て……」

ブランカ「モウ一回、チャント仕掛ケテ、コイツヲヤッツケル! 今度コソ、チャント、ヤッツケテヤル!」

ダン「でもよぉ……? その右腕腕じゃ……」

ブランカ「ウルサイ、ウルサイ、ウルサイ! 俺ニハ考エガアル!」バンバン


ヤムチャ「……ん?」チラッ

ディージェイ「ヘイヘイ~!」


ブランカ「オイ、でぃーじぇい! 助ケテクレ! オ前ノ力ガ必要ダ! 俺ヲ、助ケテクレ!」バンバン


実況「おっと、ブランカはリング上から、場外にいるディージェイを呼び寄せているのか? マットをバンバンと、音を鳴らしながら叩き、ディージェイの方を向いて、声をかけている模様です!」

ホーク「ディージェイ選手が……上手く、ヤムチャ選手をまければ、いいんですが……」

ヤムチャ(来たっ……! 天からの助け船……!)

ディージェイ(ヘイヘイ……Mr.ブランカ……どうして、こんなタイミングでミーを呼ぶんだ……ミーはこっちで盛り上げてるんだから……)


ブランカ「何シテル! ソンナ、弱ッチイ奴、早クヤッツケテ、俺ヲ助ケテクレ! 早ク、来イ!」


ヤムチャ(そうか、ブランカさんはこいつの味方なんだから……直接、コイツに指示を与えたって、構わねぇよな……でも、だったらもっと早くに指示してくれても……)

ディージェイ「ヘイヘイ……何なんだ、いったい……皆、ミーの邪魔ばかりしているじゃないか……」イライラ


ブランカ「何シテル! ソンナ、弱イ奴二手コズルナ! 早ク、ヤッツケロ!」


ヤムチャ(あっ、いや……違う……この場外乱闘の攻防……これはまだ、終わりきってねぇんだ……こいつが、俺の目の前で、急にクルリと背を向けて……何事もなかったようにリングに戻る……そんなの不自然じゃねぇか……)

ディージェイ「あぁ、なんなんだ……なんなんだ……」

ヤムチャ(仲間をリングに呼び寄せるのだって、そうだ……よっぽど有利な状況か……よっぽど不利な状況で呼び出さねぇと、不自然に見えちまう……ダルシムさんだって、そういう状況で、俺を呼び寄せてくれたんだし……)


ブランカ「二人デ合体技ヲ打ッテ、コイツヲヤッツケヨウ! でぃーじぇい、俺ヲ助ケテクレ!」


ヤムチャ(この場外を乱闘を終わらせるべきタイミング……コイツをとりあえず、リングの上に戻すタイミング……それが同時に出来るべき状況を、ブランカさんは、急ピッチで作ってくれたんだな……!)

ヤムチャ(問題は、コイツがブランカさんの……行動の真意を理解しているって話なんだが……)

ディージェイ「……ヘイヘイ、なんだよなんだよ」

ヤムチャ(してねぇな、こりゃ……ちくしょう……俺が、何とかフォローしなきゃいけねぇのか……ここには、俺しかいねぇんだからよぉ……)

ディージェイ「そもそも、ミーはMr.ヤムチャと戦ってるじゃないか……こ~んな状況じゃ、そっちに行けるわけないじゃないか……ミーはどうしたら、いいんだよ……」

ヤムチャ「……おい、早い所、俺をぶっ飛ばして、リングの上に戻った方がいいんじゃねぇか?」ボソッ

ディージェイ「……ん?」

ヤムチャ「俺をぶっ飛ばして……リングに戻れば……ブランカさんと合体技打てて、凄ぇ格好いい所を見せれるんじゃねぇか……? お前、大チャンスなのに……こんな所で何してるんだよ……?」ボソッ

ディージェイ「格好いい……!? 今、リングに戻れば、格好いい所が見せれるのかい!?」

ヤムチャ「あぁ、凄ぇ格好いい所、見せれるぜ……? こ~んな、場外乱闘の百倍は格好いいよ……だからよ、ホレ……なんか、あるだろ……? 俺に、大技でも仕掛けろよ……」ボソッ

ディージェイ「Mr.ヤムチャ……大技まで、かけさせてくれるのかい……!? 君は、まるで聖人のような人間だ!」

ヤムチャ「グダグダ言ってねぇで、早くしろオラっ! ぶっ飛ばしちまうぞ!」

ディージェイ「OK、任せてくれ! マシンガンアッパーだっ!」ドゴゴゴゴ

ヤムチャ「……おぐっ!」ヨロッ


実況「ここで、ブランカの期待に応えるように、場外でディージェイがヤムチャにマシンガンアッパー! ヤムチャの身体がガクッと崩れます!」

ホーク「……本当、大暴れですね」


ディージェイ「Mr.ヤムチャ……どうだい……? ミーの必殺技……と~っても、ファンキーなリズムだろう……?」

ヤムチャ「んな事、いいから早く戻れ、バカ……格好いい所、見せれなくなっちまうぞ……」ボソッ

ディージェイ「お、おう……そうだった……早くリングに戻らないと……」イソイソ


実況「さぁ、ヤムチャを蹴散らしたディージェイは、素早くリングインして、ブランカと合流! ブランカの呼びかけに、ディージェイが応えました!」


ブランカ「合体技の練習です……行きますよ? 貴方の技は見栄えが悪いんですから……ここで、綺麗なフォームを覚えて下さい……」ボソッ

ディージェイ「ヘイヘイ……ミーが苦手なスープレックスの合体技をここで、するのかい……? なんだよ、Mr.ヤムチャに騙されちゃったよ~」

ブランカ「……文句を言わずに、やりましょう。これも上に行く為には必要な事です」ボソッ

ディージェイ「ミーはもう、完成されているんだけどね……? まぁ、仕方ないな……これさえ出来れば、ミーは第六試合や、第五試合で出来るんだよね……?」


ヤムチャ(あ~、ちくしょう……アイツが、暴れ回るせいで……今日の俺、格好悪い所ばかり見せてねぇかな……? 下手したら、リュウさんやケンさんにも、怒られそうだし……俺もここから、巻き返していかねぇとなぁ……)

ブランカ「行クゾ……! でぃーじぇい!」

ディージェイ「OK!」

ダルシム「……ううっ」


実況「さぁ、ブランカとディージェイが、二人掛かりでダルシムを引き起こします!」


ブランカ「ろーぷ二振ルゾ! でぃーじぇい……!」

ディージェイ「OK、OK!」

ダルシム「……う、うおっ!」


実況「そして、二人掛かりでダルシムの身体をロープに振ったぁ! そして、ブランカ、ディージェイの二人は並んで、カウンターを狙っているっ!」


ブランカ「行クゾ……! でぃーじぇい……!」

ディージェイ「……スープレックスっていうのは、単調なんだよ。リズムがないんだよ」

ブランカ「……文句を言うなぁ! 相手はもう来てるんだ!」

ディージェイ「……オ、オーケー」


ダルシム(おいおい……大丈夫か……? この技……私も受けるの、怖いぞ……?)

ブランカ「……フンっ!」ググッ

ディージェイ「……よっと」ググッ

ダルシム「……う、うおっ!」


実況「さぁ、そして両者がタイミングを合わせて……!」


ブランカ「……ウガアアアァァァッ!」

ディージェイ「……よっと」

ダルシム「……うぐっ!」ドシーンッ


実況「二人掛かりでアームホイップ! ダブルアームホイップだぁ! ダルシムの身体をマットに叩きつける!」


ブランカ「……クッ」

ディージェイ「Mr.ブランカ……その右腕、どうしたんだい……? 怪我でもしてるのかい……?」

ブランカ「……でぃーじぇいノ、オカゲデ大丈夫ダ。今度ハ痛クナイ」

ディージェイ「痛がってるじゃないか……? Mr.ブランカ……何を言ってるんだ……?」


実況「ブランカは、右腕を気にしているようだが……先程までの痛がり方はしてませんねぇ、ホークさん?」

ホーク「そうですね。二人掛かりで仕掛けた事によって、負担が軽減されたんでしょう」

今日はここまで

どのレス拾ってどのレススルーすればいいかわからないぐらい意見出てるけど
その辺含めて、試合後か反省会にでも、書ければいいなと思ってます

ブランカ「ヨシッ……! ふぉーる二行クゾ! でぃーじぇいハ、こーなー二、下ガッテイテクレ!」

ディージェイ「Mr.ブランカ……この試合、決めるのは貴方じゃ……」

ブランカ「イイカラ、下ガッテテ! ヨシッ、だんサン……カウントヲ取ッテクレ……」


実況「そのまま、ブランカがダルシムの身体に覆いかぶさってフォールの体勢っ! さぁ、そしてレフェリーがやってきて……」


ダン「オラッ! ディージェイ、下がってろっ……! よし、ブランカ、カウント取るぜ!?」

ブランカ「ヨシッ、頼ムゾ!」

ディージェイ(そういや、Mr.ブランカは右腕を痛がってたな……ひょっとしたら、本気で痛めたのかもしれない……それで、この試合を途中で終わらせようとしているのか……? だと、したら……ミーが取るべき行動は……)


実況「カウントを取りますっ! さぁ、ここで決まってしまうのか!?」


ディージェイ「イエーイ! この試合はミー達の圧勝だったね! 楽勝、楽勝!」
ビシッ
ブランカ(……また、何をしているんだ。交代したいのに)

ディージェイ(こうやって……カッコ良いポーズを取って、決めないとね……勝利の瞬間……それは、一番スポットライトが当たる瞬間だ……ミーも格好良い所を見せないとね……)

実況「ズッシリとダルシムに覆いかぶさるブランカと、その隣で勝利を確信し、ポーズを取るディージェイ! さぁ、そして今カウントが入ったぁ!」


ダン「ワンっ……!」

ダルシム「……ううっ」

ダン「ツーっ……!」

ヤムチャ「何、やってんだおっさんっ……! うおおおぉぉっ!」ダダッ


実況「いやっ、ヤムチャがまだ生きていたっ! ヤムチャが生きていたぞっ!? 場外から、ヤムチャが素早くリングインして……」


ダン「……スリ」

ヤムチャ「……うるぁっ! どけぇっ!」ガスッ

ブランカ「……うぐっ!」

ダン「おぉ~っと、カウントはツーだ! カウントツー! カット成立だ!」


実況「ブランカに一撃お見舞いして、ダルシムを救出! ギリギリです! ギリギリカットが間に合いました!」

ホーク「危なかったですねぇ……ヤムチャ選手、いい動きをしました」


ヤムチャ(ブランカさんがフォールに入るって予想は正解だったみてぇだな……だが、安心するのは、まだ早い……こっからだ……ここから、いい所を見せながら……試合を立て直してやるっ……!)

ディージェイ「ヘイヘイ……Mr.ヤムチャ……君は何をして……」

ヤムチャ(先ずは、一番動きの読めないコイツからだ……ちょっと、強めに行くぜ……? 覚悟しろ……うおおおぉぉっ……!)ググッ

ディージェイ「……ん?」

ヤムチャ「邪魔だっ……! てめぇは場外に落ちてろ、このタコがっ!」スパーンッ

ディージェイ「……プゲっ!」バターンッ


実況「さぁさぁ、ヤムチャはまだ行くぞ! ディージェイの胸元に……トラースキックを打ち込んだぁ! ディージェイは、大きくダウンします!」


ヤムチャ(本当は顔にいきてぇけど……万が一怪我しちまったら困るからなぁ……)

ディージェイ「なんだ、なんだ……なんなんだ、これは……」

ヤムチャ(チッ……! この技喰らって場外まで落ちてもらいたかったが……流石に、そこまではしてくれねぇか……まぁ、いい……ある程度は想定内だ……だから、ここは……うおおおっ!)ググッ

ディージェイ「う、うおっ……! 何をする……何をするんだMr.ヤムチャ……そんな事したら、ミーが場外に落下しちゃうよ……」

ヤムチャ「いいから、場外で寝てな! おめぇは、邪魔なんだよ! 早く落ちろ!」ググッ


実況「さぁ、ヤムチャはロープを掴んで上手く体重を自分の足に乗せながら……ディージェイの身体を場外に蹴落とそうとしております。 ディージェイも、なんとか堪えようとするが……おっと、ここでディージェイが場外に落下ぁ!」

ブランカ「ウウッ……勝ッタト思ッタノニ……何ガ起キタンダ……?」ムクッ

ヤムチャ(そうそう、ブランカさんは、こっちが起きて欲しいタイミングで起きてくれるんだ……だから、慌てる必要はねぇ……邪魔者を始末してから、ゆっくりやればいいんだよ……)


実況「さぁさぁ、ヤムチャはまだ止まらないぞ! 今度はブランカ方へと向かったぁ!」


ヤムチャ「……おめぇも、暫く寝てろ。この野郎」ガシッ

ブランカ「……ウオッ!?」


実況「さぁ、そして背後からブランカを掴んだっ!」


ヤムチャ(ここは、是が非でも大ダメージが欲しい場面……落ち着けっ……焦るなっ……落ち着いてやれば、ちゃんと出来るんだからよぉ……うおおおぉぉっ!)グイッ

ブランカ「ウ、ウオッ……!?」

ヤムチャ「うるあぁぁっ! バックドロップだっ! 暫く、マットに寝てろや、この野郎っ!」ドシーンッ

ブランカ「……ウガッ!」


実況「そして、そのままバックドロップっ! こいつはいいのが決まったか!? なんとなんと、ヤムチャが一人で蹴散らしました!」

ヤムチャ(ふぅ、よしっ……今のは良かったんじゃねぇか……? えっと、次は……落ち着け落ち着け……)

ダン「おい、ヤムチャ……? おめぇ、ちょっと暴れすぎだぞ? とにかくコーナーに……」

ヤムチャ「うるせぇっ! 誰に指図してんだ、コラっ! おめぇもぶっ飛ばしてやろうか、あぁっ!?」

ダン「う、うおっ……!」ビクッ


実況「おっと、警告したレフェリーに対して……ヤムチャが、少し噛み付いてたか? ちょっと、冷静さが欠けているか?」

ホーク「そうですねぇ……まぁ、行動が読めない二人が相手だからって……冷静さは失ってはいけないと思います」


ヤムチャ(あっ、やべぇ、も~う……ダンさんがいきなり話しかけてくるから、間違えたじゃねぇかよ……ゴメンよ、ダンさん……俺、こういう言葉使い慣れてないんですよ……まぁ、このまま突っ切るしかねぇかな……?)

ダン(おいおい……ヤムチャの野郎まで、暴れだしたら、もう俺止めれねぇぞ……? とにかく落ち着けって……!)

ヤムチャ「おい、コラ! いつまで寝てんだよ、おっさん! 早く起きろ、くたばるには、まだまだ早いぞ!?」

ダルシム「う、ううっ……ヤムチャ君……」

ヤムチャ「おっさんの負けは、俺の負けにもなっちまうんだよ! もう、おっさんは休んでろよ、この役立たずが!」

ヤムチャ「コーナーに戻れば、いいんでしょ……? わかってますよ、そんな事は……」

ダン「……ん?」

ヤムチャ「オラッ、おっさん……! 俺は、コーナーで待っててやるからよぉ……? 這いずってでもいいから、来いや。もう交代だ!」

ダルシム「う、うむ……そうだな……それが、ベストな選択だろう……」

ヤムチャ「……ったく、待ってるから、早く来やがれ」ズガズガ


実況「いやっ、ヤムチャは一言二言、ダルシムに喝を入れた後……大人しくコーナーに引き下がります。 冷静でした。ヤムチャは冷静でした!」

ホーク「そうですね。今のうちに交代するのが、ベストな選択だと思います。ヤムチャ選手……結構、周り見えてますね」


ダン(何だよ、ヤムチャの野郎、ポーズかよ……よかったよかった……しっかし、アイツ結構迫力のある奴だな……マジでビビっちまったぜ……)

ヤムチャ(気になるのは……アイツの動き……ちくしょう、今から交代するんだから、邪魔だけはするんじゃねぇぞ……?)

ダルシム(ここでディージェイ君が乱入してきたら……また、ややこしい事になってしまう……だが、今の私は、こうやって這いずりながら、ヤムチャ君の元へ行くしかない……くそっ、焦るな……焦ってはいけない……)ズルズル

ヤムチャ「おっさん、何してんだよっ! 早く来いや!」

ダルシム「わかっているよ……ハハ、若者は元気があっていいな……」ズルズル


実況「さぁ、懸命に這いずりながらも、ヤムチャの元へ近づくダルシム! ヤムチャをコーナーで声を張り上げている!」


ヤムチャ「焦ってぇなぁ、おいっ……! 早く来いや、こっちによぉ……!?」

ダルシム「わかっているよ……そう、急かさないでくれ……これでも頑張っているんだ、私は……」ズルズル


ダール・シム! ダール・シム!

実況「さぁ、もう少しだ……ヤムチャの元まで、もう少しっ! 場内からはダルシムコールが流れる。この声援も……ダルシムの力となるか!?」


ヤムチャ(おっ、おぉっ……第二試合でも、こんな声援、貰えるのか……ちょっと、意外だな……)

ダルシム(やはり、派手な試合になっているようだな……声援は、有り難いのだが……他の者達に悪いな……)

ダール・シム! ダール・シム!


ディージェイ「どうして、Mr.ダルシムが声援を貰ってるんだい……? 彼は何もファンキーな事をしていないじゃないか……?」

ブランカ「ディージェイ君……ディージェイ君……私の声が聞こえてますか……? そのままの体勢で聞いて下さい……」ボソッ

ディージェイ「……ん?」

ブランカ「声援に紛れて……打ち合わせの再構成をしましょう……色々、言いたい事はありますが……それは、後です」ボソッ

ディージェイ「何を言ってるんだ、Mr.ブランカ……?」

ブランカ「……試合時間は残り三分です。ダルシムさんがヤムチャ君に交代したら、私もディージェイ君に交代します」ボソッ

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ……それは違うよ……試合時間はまだ5分はあるだろう……? だって、交代のタイミングは……」

ブランカ「その事も含めて、全ては後で話します……とにかく、試合時間は残り三分です」ボソッ

ディージェイ「ちょっと、待ってくれよ……いきなり残り時間三分だなんて……ミーはどうしたら、いいんだい……!?」

ブランカ「私から、タッチを受ける準備でもしたら、どうですか……? ほら、モタモタしてると……どんどん、時間が減っていきますよ……?」ボソッ

ディージェイ「!」

ダール・シム! ダール・シム!

実況「さぁさぁ、ダルシムがヤムチャに手を伸ばす! その距離、僅か30センチっ! ヤムチャも懸命に手を伸ばしている!」


ヤムチャ「ほら、おっさん……! もう、後少しだっ……! 踏ん張りなっ!」

ダルシム「ううっ、ヤムチャ君……後は任せるっ……!」パシッ

ヤムチャ「よっしゃっ……! 任せておきな、おっさんっ……!」パシッ


パチパチ……パチパチ……

実況「そして、ここでタッチが成立っ! 試合権はヤムチャへと移ったぁ!」


ダルシム「……ヤムチャ君、残り試合時間は大丈夫か? 体内時計は機能しているか?」ボソッ

ヤムチャ(そういや……残り何分だ……今日の試合、色々考える事が多すぎて……今、時間の感覚、完全にねぇぞ……)

ダルシム「その表情……確認して、よかったよ……残り時間は三分だ……色々とあったが……後は、三分以内に奴を始末すればいい……! ヤムチャ君、頼むぞ!」

ヤムチャ「おっさんの、そういう所……俺も学んでいかねぇとな……OK! おっさん、任せておきな! あの糞野郎を……ぶっ飛ばしてくるぜ!」


実況「さぁ、そしてヤムチャがリングイ~ン!」

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカっ……! 何をしている……! ミーに交代だっ!」ピョン

ブランカ「ウッ……ウウッ……」


実況「おっと、このタイミングで、ディージェイも復活だ! エプロンサイドにピョンと飛び乗り、手を伸ばして、ブランカからタッチを受けようとしている!」


ヤムチャ(俺が行ったら……ややこしい事になっちまう……ここは、交代させてやるか……)

ブランカ「ウッ、ウウッ……でぃーじぇい……ワカッタ……」ムクッ

ディージェイ「何やってるんだ、早くしなよ! Mr.ブランカ!」


実況「さぁ、ブランカが起き上がり、ディージェイに交代しようとしていますが……ヤムチャはその様子を不敵に眺めている! こいつは、ターゲットはディージェイか!?」

ホーク「なんだかんだで色々仕掛けられてますからね。正々堂々、リングの上で決着をつけたいんでしょうね」

実況「中腰の体勢で……鋭い視線で相手サイドのコーナーを見つめている! 視線の先には、ディージェイか!?」


ブランカ「……ウウッ、でぃーじぇい、後ハ任セル」パシッ

ディージェイ「も~う、Mr.ブランカはいつまで待たせるんだい!? 遅いよ!」


実況「そして、ここでタッチが成立! 試合権はブランカからディージェイに移り……ヤムチャ対ディージェイの対決です!」

今日はここまで

ディージェイ「全く、Mr.ブランカ、遅いよっ……! それじゃあ、行ってくるね!?」ピョンッ

ヤムチャ(奴が臨戦体勢を取ったら……こっちも、アピールと同時に仕掛けるっ……! タイミングさえ、間違えなければ、大丈夫だろ……)


実況「ディージェイが、トップロープを飛び越えながらのリングインっ! 軽快な動きです!」


ヤムチャ(よしっ、後はアイツが構えたら……)

ディージェイ「ヘイヘイ、さぁさぁ、ようやくミーの出番だよ~! オーディエンスの皆も乗っていこう~!」

ヤムチャ(……何やってんだよ、時間がねぇのに余計な事してんじゃねぇよ。コイツ、とことんバカなんだな)


実況「そして両腕を広げて、お客さんに大アピールも忘れませんっ! いやぁ~、実に陽気だ! この、ディージェイ、実に陽気な男だ!」

ホーク「まぁ、ちょっと陽気すぎると思いますけどね……でもまぁ、それが彼の持ち味と言えば持ち味なんでしょう」


ディージェイ「今夜はとびきり、ファンキーでエキゾチックな夜にしてあげるよ~! さぁさぁ、オーディエンスも乗っていこうっ!」

ヤムチャ(ったく、本当に仕方のねぇ野郎だな……)

ブー、ブーブー

ヤムチャ(……ん?)

ディージェイ「……ん?」

ブー、ブーブー

ヤムチャ(ブーイング……? な、なんだこりゃ……おいおい、交代したばかりだぞ……)


実況「おっと、だがしかし会場からの支持は得られていないようだっ! ディージェイ、少し哀しいぞ!?」


チョウシシ、ノッテンジャーネェ バカヤロー

ディージェイ「ヘイヘイ! 何て事を言うんだい!? ちょっと待ってくれよ……今からミーがファンキーなバトルを……」

ヤムチャ(そりゃ、ごもっともだよ……お客さんの言う事ごもっとだよ……おめぇ、勝手な事ばかりしてんだからよぉ……? おいおい待てよ……ブーイングが来てる中でのスタートかよ……最悪の状態からのスタートじゃねぇか……)


ホーク「……まぁ、相手が悪かったって所ですかね? なんせ、相手は三番弟子ともいえども、あの空手軍団ですからね」

実況「そうです! ディージェイの相手は……あの空手軍団の一員、ヤムチャだぁ!」


ディージェイ「ほら、今からミーが格好いいバトルを始めるんだよ!? オーディエンスも、もっとファンキーにいこうよ!?」

ウルセェ、バカヤロー! ヤムチャー、ソンナヤツ、ヤッチマエー!

ヤムチャ(う、うおっ……アイツのせいで、お客さんまで荒れ始めてんのか……!? でも、これはチャンスだ……! この声援、使わせてもらおう……!)

ヤムチャ「オーケー、任せなっ! 俺が、あのふざけた野郎を……ぶっ飛ばしてやるぜっ……!」

イイゾー! ヤムチャー!


実況「さぁ、そしてヤムチャも中腰の体勢から……身体を伸ばして臨戦体勢っ! それと同時に叫んだぁ!」

ホーク「さぁ、ここからです」


ヤムチャ「オラオラ、行くぜっ……! 散々好き放題しやがって……覚悟は出来てるんだろうなぁ……!?」ダダッ

ディージェイ「何故、このタイミングで突っ込んでくる……Mr.ヤムチャ……! こんな状況で……よくもまぁ、そんなに空気の読めない行動を……!」


実況「そして、ヤムチャがディージェイ目掛けて、突っ込んだぁ!」

ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!

実況「場内からの支持は完全にヤムチャのようだ! ヤムチャコールが巻き起こる! さぁ、ヤムチャ、空手軍団の力を見せつけれるか!?」

ヤムチャ(ちょっと待てよ……いくら何でも、盛り上がりすぎだろ……やべぇ、タックルに、いくつもりだったが……ダメだっ……! もっと派手な技を見せるべきだ、ここは……!)

ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!

ヤムチャ(どうするどうする……!? 何か技はねぇか……!? と、とにかくふんわり跳んでみよう……そして、飛び蹴りを仕掛けるっ……! うおおおぉぉっ……!)シュタッ

ディージェイ「ちょっと待て……! 何をしている、Mr.ヤムチャ……!」


実況「さぁ、そして走り込んだ勢いのまま……ヤムチャが高く跳んだぁ! 何を仕掛けるっ!?」


ヤムチャ(技名をつけるなら……ランニング延髄斬りって、所か……!? とにかく……派手に、格好良く、決まってくれっ……! うおおおぉぉっ……!)

ディージェイ「!」

ヤムチャ「うるあぁぁっ……! 喰らいやがれっ……!」ズガアァァッ


ダルシム(技が荒すぎる……! ヤムチャ君は、落ち着いていたと思っていたのに……どうやら、お客さんの声援で焦ってしまったようだな……!)

ディージェイ「……ぐわっ!」バターンッ

ヤムチャ(ぐっ……! どうだ……上手くいったか……!?)ドスッ


イイゾー! ヤムチャー!

実況「自らも倒れこんでしまうような、高い打点の荒々しい飛び蹴りを仕掛ける! これには、ディージェイも、ダーウンっ!」


ヤムチャ(くっ、受け身は失敗しちまったが、声援は貰えてる……まぁ、結果オーライって所だ……)

ダルシム「いいぞ、ヤムチャ君! そのままハンドスプリングで起き上がれ!」

ヤムチャ(……ん?)

ダルシム「ラッシュを仕掛けろっ! 奴がダウンしている、今がチャンスだ!」


実況「さぁ、コーナーにいるダルシムも乗ってきたのではないか!? 必死に仲間のヤムチャの事を応援しているっ!」


ヤムチャ(やべぇ、受け身を失敗した事、バレてるのかな……? でもまぁ、そうだよな……? 自然な流れでフォローしておかなきゃいけねぇ……お客さんにも、バレてるかもしれねぇしな……)

ヤムチャ「……うるぁっ!」シュタッ


実況「おっと、ヤムチャがそのまま、ハンドスプリングで素早く起き上がる!


ホーク「あ~、なる程……一見、無理な体勢での蹴りだと思ったのですが、ここまで計算してたワケですね……」


ヤムチャ「うるぁっ! まだまだ、いくぜっ!」


イイゾー! ヤムチャー!

実況「そして、ヤムチャが吠えるっ! どうやら、完全にリズムを掴んだか!? 会場はヤムチャムード一色だ!」


ヤムチャ(お客さんにはウケてる……蹴り自体は少し無茶をしすぎたが、その後のフォローで、なんとかなったんじゃねぇか、これは……)

ダルシム(全く、荒々しい技を仕掛けて……無茶しすぎだぞ、ヤムチャ君……前回の試合で閃いていて、よかったじゃないか……トータルでは、まだマシになった……)

ヤムチャ(……これは、宿題だな。 上手くやれれば、応用が効きそうだ)

ダルシム(……まぁ、彼の宿題だな。 応用すれば、派手で美しい見栄えになる)

ヤムチャ「オラオラ、まだまだ行くぜっ!」

ディージェイ(ヘイヘイ、何をやっているんだい、Mr.ヤムチャ……! いきなり蹴りを仕掛けるだなんて……)

ヤムチャ(お客さんは、俺を応援している……この声援に応えるには、ド派手な技を一発か……もしくは、手数を増やしてラッシュを仕掛けるべきだが……)


実況「さぁ、そしてヤムチャがダウンしている、ディージェイに近づいて……」


ヤムチャ(あ~、ちくしょうっ……! 打撃攻撃にセンスがあるって、浮かれてる場合じゃねぇな……裏を返せば、こういう時、打撃攻撃しか選択肢がねぇって事だ……)グイッ

ディージェイ「あたたた……! ヘイ、Mr.ヤムチャ……! 髪の毛を掴んで、無理矢理引き起こすなんて、酷いよ!」

ヤムチャ「うるせぇ、こうでもしなきゃ、おめぇは言う事聞かねぇだろうが! モタモタしてんじゃねぇよ、早く起きな!」


実況「そのままディージェイ髪の毛を掴んで、引き起こします! さぁさぁ、ここから、どうするっ!?」

ヤムチャ(とにかく、打撃のラッシュだ……いざとなれば、ちょっと強めに打ち込んで、こいつの動き止める事が出来る……! うるぁっ!)シュッ

ディージェイ「……おぐっ!」


実況「そして、ディージェイの腹部に蹴りをお見舞いだぁ!」


ヤムチャ「……うるぁっ!」シュッ

ディージェイ「……あがっ!」

ヤムチャ「……もう一丁っ!」シュッ

ディージェイ「……ふぐっ!」


実況「左足にローキック! 右脇腹にミドルキック! 得意の打撃攻撃を仕掛けてきたかぁ!?」

ホーク「なんたって、空手軍団ですからね」


イイゾー! ヤムチャー! ソノママ、ヤッチマエー!

ヤムチャ「任せておきなっ! このままコイツを、やっちまうぜっ……! オラオラオラっ……!」ガスガス

ディージェイ(グッ……! Mr.ヤムチャ……いくら自分の格好いい所を見せたいからって……こんな、好き勝手に行動するのはダメだよ……もっと空気読みなよ……!)


実況「さぁさぁ、ヤムチャが仕掛ける、仕掛けるっ! 完全にリズムを掴んでいる! ディージェイを蹴りの嵐で滅多打ちだぁ!」

ヤムチャ(ちょっと、一方的すぎる展開な気もするが……)ガスガス

ディージェイ「ぐっ……! ううっ……!」


ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!


ヤムチャ(会場からはヤムチャコール……俺が責めなきゃいけねぇ、状況だ……それに、コイツを泳がせるのは、残り時間の事もあるし、マズい気がする……仕方ねぇ事なのか……?)ガスガス

ディージェイ(くっ……! Mr.ヤムチャは自分の事しか考えてないからダメだっ……! だから、ここはミーがリードしないと……!)グイッ

ヤムチャ「……ん?」


実況「おっと、ここでディージェイが打撃攻撃の隙を上手くつき、距離を詰めてヤムチャの身体に掴みかかったぁ!」

ホーク「技を仕掛けにいった……と、いうより、クリンチですね。まぁ、精一杯の行動でしょう」


ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ヤムチャ……君は何を考えてるんだい……? 一旦、攻撃を中断してくれ……じゃないと、ファンキーなバトルは出来ないよ……?」ボソボソ

ヤムチャ(どうする……? ここで投げられて、反撃されるか? でも……)

ヤムチャー! イイゾー! キイテルゾー! ソノママ、ヤッチマエー!

ヤムチャ(そうなんだよ……場内からは、俺への声援が続いてるんだよ……だから……)

ディージェイ「Mr.ヤムチャはもっと、空気を読んで……」ボソッ

ヤムチャ「……うるせぇ! てめぇが言うな、この野郎っ!」ゴスッ

ディージェイ「……おごっ!」


実況「お~っと、だがしかし! 組みつかれながらも……ヤムチャは上手く、ディージェイの腹部に膝蹴りをお見舞いしたぁ!」

イイゾー! ヤムチャー!

実況「組みついていたディージェイも、この攻撃で流石に、手を離してしまう! さぁ、組み合っていた身体が再び離れたぞ!?」


ヤムチャ(ほら、歓声貰えるんだよ……これだったら、もう時間もねぇし……こいつのいい所、見せてやる必要なんてねぇんじゃねぇの……?)

ディージェイ(Mr.ヤムチャは、プロレスをわかっていない……さっきから、本気の打撃攻撃ばかり仕掛けてるじゃないか……そういう事なら、総合格闘技や、キックボクシングにでいけばいいじゃないか……!)

ヤムチャ(でも、よくよく考えれば……こいつ、試合の前半部分で暴れまわっててたからなぁ……? だったら、もういいんじゃねぇの……? いい所は充分見せただろ……)

ディージェイ(エキゾチックでファンキーな試合にはならないが……ミーだって、いい所を見せたいんだよ……そっちがその気なら、こっちだって……!)

今日はここまで

ヤムチャ「……うらぁっ! もう一丁っ!」シュッ

ディージェイ「ぐっ……! だが、ミーだって……いい所は、見せたいんだっ……! はぁっ!」シュッ

ヤムチャ「……う、うおっと!」


実況「さぁ、そしてヤムチャが再びローキックを仕掛けるっ! ディージェイの左足に打ち込み……いやっ、お~っと!?」

ホーク「おっ、ディージェイ選手も……追い詰められてきて、反撃に出ましたね?」

実況「ここで、ディージェイが反撃に出たぁ! 同じように右足でのローキックをヤムチャの左足に打ち込むっ!」


ヤムチャ(このタイミングで反撃して来やがったか……どうする? 受けてやるか……? こいつのいい所、今から作ってやるか……? だが、時間はねぇぞ……)

ディージェイ「自分勝手な行動は辞めるんだっ……! Mr.ヤムチャっ……!」

ヤムチャ「……ん?」

ディージェイ「……はあぁっ!」ガスッ


実況「おっと、ここでエルボーバットでしょうか!? それとも左足フックか!? とにかく、ヤムチャの顔に打撃攻撃を打ち込んだぁ!」

ヤムチャ(痛ぇ……こいつ、サガットさん達と違って、加減がわかってねぇ……今、本気で打ち込みやがったな……? 何考えてやがる……)

ディージェイ(Mr.ヤムチャ……君が悪いんだよ……? 君が、プロレスの範疇を超えた攻撃を繰り出すから……ミーだって、こうやるしかないんじゃないか……!)


ヤムチャー! ソンナヤツニ マケルナー!


ヤムチャ(あぁ、わかってるさ……わかってるとも……こんな空気の読めねぇ野郎に負けてたまるかよ……)

ディージェイ(さぁ、Mr.ヤムチャ……もう、君はそのままフラつけばいいんだ……そしたら、ミーが格好いい攻撃を仕掛けて……オーディエンスを満足させてあげるから……)

ヤムチャ(お客さんの声援があるって事は……俺が攻撃をしてもいい場面のはずだろ、ここは……だったら、仕掛けさせてもらおうじゃねぇか……こいつが耐えれる範囲内での、ちょっぴり強い攻撃をよぉ……?)ギロリ

ディージェイ(Mr.ヤムチャ……何故、君がミーを睨む! 君が勝手な行動ばかりするから、こうするしかなかったんだよ……! 怒るんじゃない、フラつくんだ!)


実況「どうやら、追い詰められたディージェイも必死の様です! なんとか、返していきました!」

ヤムチャ「強めのを打ち込むぜ……! おめぇは、黙って動きを止めてりゃいいんだよぉ!」ガスッ

ディージェイ「……うぐっ!」


イケー! ヤムチャー!

実況「だがしかし、間髪入れずに、ヤムチャが打ち込むっ! ミドルキックを脇腹にお見舞いだぁ! いいのが決まったか!?」


ヤムチャ「オラオラ……お前は、そのまま黙ってやられてなっ……! 今度はこっちだっ!」シュッ

ディージェイ「何故、Mr.ヤムチャはわかってくれないっ……! くそっ……!」

ヤムチャ「……何だと!?」

ディージェイ「Mr.ヤムチャ……動きを止めるのは、君なんだよ! いいから、止めなっ!」ガスッ

ヤムチャ「……うぐっ!」


実況「おっと、これはディージェイが上手くブロック! 蹴りを上手くブロックして……カウンターのエルボー……いや、フックですね、これは。フックを叩き込む!」

ヤムチャー! マケルナー!

ヤムチャ(この声援が聞こえねぇのかよ……今は、おめぇの出る幕じゃねぇんだ……! いいから、動きを止めろよ……うるぁっ!)シュッ

ディージェイ「ぐっ……! さっきから、そればかり……! 君は何を考えているんだっ……! はあぁっ!」ガスッ

ヤムチャ「ぐおっ……! てめぇだって、そればかりじゃねぇかよ! 自分の事棚に上げて言ってんじゃねぇぞ、ゴラァっ!」シュッ


実況「さぁ、ヤムチャが打ち込む! ディージェイが打ち込む! これは、お互いノーガードの打撃合戦か!?」

ワー、ワーワー!

実況「両者一歩も引かない、激しい打撃合戦! さぁ、打ち勝つのはどちらだ!?」


ヤムチャ「いいから、黙ってやられてろっ……! ボケ……!」シュッ

ディージェイ「やられるのは、Mr.ヤムチャ……! 君の方だよ……!」ガスッ


ダン(おいおいおい……盛り上がってんのは、いいけどよぉ……? こいつら、ひょっとしてガチでやってねぇだろうなぁ……? 試合終盤に、何やってんだよ……)

ヤムチャ「……うるぁっ!」シュッ

ディージェイ「……うおおおぉぉっ!」ガスッ


ワー! ワーワー!

実況「ヤムチャは蹴りで! ディージェイは、蹴りとフック巧みに合わせながらの、打撃合戦だ! まるでリング上でのストリートファイトを見ているようだ!」

ホーク「……えぇ」


ダン(おい、これどうするよ……? やっぱり、俺が何とかしねぇといけねぇのかよ……?)チラッ

ダルシム(くそっ、ディージェイ君のペースに完全に飲まれてるいるではないか……ヤムチャ君まで、我を忘れてどうする……!)

ブランカ(彼なりに、加減はしている様ですが……やりすぎです……あんな事を続けていたら……いつか誰かが大怪我します……)

ダン(あぁ、くそっ……! ダルシムも、ジミーの奴もコーナーにいやがる……あいつらに一番近いのは、俺だ……くそっ、試合時間は伸びちまうが……やっぱり、止めるかっ……!?)

ヤムチャ「おめぇが動き止めなきゃ、いつまで経っても、この試合は終わらねぇんだよっ……! いいから、これ喰らって……寝てなっ……!」ググッ

ディージェイ(……来る!)


実況「おっと、ヤムチャがここで、やや大振り気味に構えて……!」


ディージェイ(Mr.ヤムチャは、加減がわかってないくせに、どうしてそんな真似をする……! あんな大振りの本気の蹴り……とてもじゃないが、ミーには耐えられないよっ……!)

ヤムチャ「……うるああぁぁっ! 喰らって眠りなぁ!」ブンッ


実況「そして仕掛けたぁ! 大振りのハイキック!」


ディージェイ「……フンッ!」

ヤムチャ(こいつ……何で、このタイミングで避けるんだよ……馬鹿野郎っ……!)スカッ


実況「おぉ~っと、だがしかし、これはディージェイが上手く屈んで避けたっ! 避けたぞっ!」


ディージェイ「Mr.ヤムチャはプロレスがわかっていない……だから、ミーがリードしてあげるよ……」ググッ

ヤムチャ(や、やべぇ……こいつ、何か狙ってやがる……! 加減のわかってない、こいつに何か仕掛けられるのは……マ、マズいんじゃねぇか……?)

ディージェイ「……はあああぁぁぁっ!」ズドーンッ

ブランカ「!」

ダルシム「!」

ダン(馬鹿野郎っ……! 何て、パンチを打ってやがる!)


実況「う、うおっと……え~、ここでディージェイがカウンター気味に……ヤムチャに渾身の右ストレートをお見舞いしました」

ホーク「……」

実況「あ、あまりに……いいのが、決まりすぎてしまったか……? 先程、まで熱狂に包まれていた場内が……静寂に包まれます……」


ブランカ(……完全に私のミスだ。ディージェイ君に打ち合わせ無しは、危険すぎた)

ダルシム(どうする……ヤムチャ君の負けで試合が終わる……? マズい、それは空手軍団にも傷つける事になるぞ……)


ディージェイ「Mr.ヤムチャ……君は、いい所を見せたいが為だけに、ミーに強い攻撃を仕掛けていたが、それは違う……プロレスとはそうじゃない……ファンキーなリズムで、オーディエンスをエキサイトさせる事なんだ……」

ヤムチャ「……」

ディージェイ「そういう、野蛮な攻防がしたいのなら……総合格闘技やキックボクシングの世界にでも行ったらどうだい……? まぁ、元キックボクサーのミーから、言わせてもらえば……そっちの世界でも君は通用しそうにないけどね……」

ヤムチャ「……そうか。お前、元キックボクサーだったのか。蹴りも鋭いし、いい反応してると思ったよ。そういう事だったんだな」

ディージェイ「……ん?」


実況「渾身のストリートを顔面受けたヤムチャは、大きくダウン……いや、ダウンしないぞ!? パンチを顔面に貰った状況のまま、仁王立ちだ!」


ヤムチャ「でもなぁ、お前、知らないだろう……?世の中には……もっと、もっと強い奴がいるって事をよぉ……?」

ブランカ(……ヤムチャ君)

ヤムチャ「胸を貫かれるような……鋭い手刀、喰らった事あるか……?」

ダルシム(立っているだと……? 無事だったのか……!?)

ヤムチャ「腕の骨が砕けちまうような……重いエルボー、喰らった事あるか……?」

ダン(ヤムチャっ……! よく堪えたぞっ……! ナイスだ!)

ヤムチャ「一瞬で、天に召されちまうような……自爆技、受けた事あんのか……? あぁ……?」

ディージェイ「な、何故、ダウンしないんだ……」


ヤムチャ「お前の攻撃なんざ……この俺には全く効かねぇんだよぉ!」ギロリ


実況「ヤムチャは倒れないっ! ヤムチャは倒れないぞ!? そのまま不敵な表情でディージェイを睨んでいるううぅぅ!」

ヤムチャ「てめぇもチンケな世界で満足してねぇで……プロレスの勉強、少しはしやがれっ……!」ググッ

ディージェイ「……うっ!」


ヤムチャー! スゲェゾー!

実況「ヤムチャは倒れない! まだまだ責め続けるうぅ!」

ホーク「驚きの爆発力ですねぇ……ディージェイ選手も怯んでいます」

実況「さぁ、そのディージェイの頭を……両腕でガッツリ掴んだぁ!」


ヤムチャ「手加減はしてやるけどよぉ……? それでも、おめぇにとっては痛ぇ事だから……頑張って我慢しろよ……!?」

ディージェイ(な、なんなんだ……彼は……理解出来ない……全く、ミーには理解出来ないよ……!)

ヤムチャ「格の違いを見せつけてやるっ……! うおおおぉぉっ……! だぁっ!」ゴスッ

ディージェイ「……うぐああぁぁっ!」


実況「そのまま、ヘッドバッーットっ! 渾身の一撃をディージェイにお見舞いだぁ!」

イイゾー! ヤムチャー!


ディージェイ「あぁ、ううぅ……ど、どうしてだ……? 彼の頭は、まるで鉄のように硬い……どうして、そこまで頭を鍛える事ができる……?」フラフラ


実況「ヤムチャの怒りの一撃が炸裂だぁ! ディージェイは、頭を抑えかなりフラついているぞ!? ここがチャンス! ここがチャンスだ!」


ヤムチャ(……その体勢が、ベストっ!)

ディージェイ「ああぁ……ううっ……」フラフラ

ヤムチャ(スパインバスターを仕掛けるには……相手を一度ロープに振らなきゃいけねぇ……だが、奴が大人しく指示に従ってくれるとは、考えにくい……!)


ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!

実況「場内からは大ヤムチャコールっ! ここで決めたい場面だっ!」


ヤムチャ(アイツがフラついている、この状態でしかスパインバスターを掛けるチャンスはねぇ……! だが、足りねぇ……これだけの声援に応えるには……まだ、足りてねぇ……!)

今日はここまで

ヤムチャ(スパインバスターは……素早く、荒々しく仕掛けるのがポイントだが……ここまで、素早くて荒々しい事しか俺はしていない……だから、逆だっ……!)

ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!

ヤムチャ(だからこそ、逆だ……! 違った一面を見せるんだっ……! ゆったりでもいい……とにかく、ド派手な格闘技の試合で見れないような、投げを仕掛けるんだ……!)ググッ


実況「さぁさぁ、ヤムチャが深く腰を落としたぞ!? これは、何かを狙っているのか!? ここで決めに行くのか!?」


ヤムチャ「これは、プロレスなんだからよぉ! 行くぜっ、うおおおぉぉっ!」ダダッ

ディージェイ「……う、ううぅ」

ヤムチャ「……うおおおぉぉっ! だああぁぁっ!」ドスッ

ディージェイ「……うぐっ!」


実況「そのまま、ディージェイに突っ込んだぁ! タックルか!? それとも、スピアーか!?」

ホーク「……いやっ! 違います!」

ヤムチャ(相手の両太腿を抱え……そのまま、持ち上げるっ……!)ググッ

ディージェイ「う、うおおぉっ……!」


実況「おっと、そのままディージェイの身体を抱え上げるっ! どうやら、こいつはスパインバスターだっ!」

ホーク「……ですねっ!」


ワー、ワーワー

ヤムチャ(まだだ……まだ足りねぇ……こんな声援じゃ足りねぇ……もっとだ、もっと高く……! もっと派手に……!)ググッ

ディージェイ「う、うおおっ……! 何だって……!?」


実況「お~っと! こいつは、高い高い高いっ! 何て、高さだ!? ハイアングル気味にディージェイを持ち上げたぁ!」


オー、スゲー! タケー!

ヤムチャ(そうだ……! この声援だ……! ここから、コイツをリングに叩きつけるっ……! だが、まだまだ終わらねぇぜっ……!)

ヤムチャ(持ち上げる瞬間だけじゃねぇ……! 落としてる最中にだって、派手に見せる術はあるっ……!)

ディージェイ「うおおっ……! うおおぉぉっ……!」

ヤムチャ(このまま、自分の身体ごと……こいつの身体を、回転させてっ……!)グググッ

ディージェイ「うおおっ……! なんだなんだなんだっ……!」


実況「さらにさらにさらに! 自分の身体を捻らせて、旋回式だぁ! ディージェイの身体がスイングされながら……!」

ワー! ワーワー!


ヤムチャ(……叩きつけるっ!)

ディージェイ「……うぐああぁぁっ!」ドシャーン


実況「マットに叩きつけられたぁ! リングが大きく、大きく、軋みます! そして、そのままヤムチャはフォールの体勢に入っている! こいつは決まってしまたかぁ!?」

ヤムチャー! イイゾー!


ダン「よし、ヤムチャ、いいぞっ! そのまま、そいつが暴れねぇように、ガッツリ抑え込んでおきな!」

ヤムチャ(おおっ……偶然にも、フォールの体勢に入っているじゃねぇか……ダンさんが……カウント取りに来てくれたぜ……)

ダン「また、暴れられると……面倒だからよぉ……! よし、カウント取るぜっ!」


イケー! キメチマエー!


ブランカ「……ソウハ、サセナイゾ! でぃーじぇい、今、助ケテヤル!」

ヤムチャ「……ブランカさん!?」

ブランカ「でぃーじぇい、負ケルナ! 頑張レ! 俺ガ助ケテヤルッ!」


実況「おっと、ブランカがここで、ディージェイの救出の為にリング内へと向かったぁ!」

ダルシム「そうは、させんよ……さぁ、私も最後の力を振り絞らせてもらうとするか……」

ブランカ「……ウッ!?」


実況「だが、ほぼ同時のタイミングで……ダルシムもリングインっ! ブランカを止めにかかるっ……!」


ダルシム「君にヤムチャ君の邪魔はさせんっ……! 私が相手になろうでは、ないか……!」

ブランカ「オ前ミタイナ、弱ソウナ奴……突キ飛バシテヤルッ……! ドケッ……!」

ダルシム「おっと、そうはさせんっ……! ふんっ……!」シュルッ

ブランカ「……ウオッ!?」


実況「ダルシムはそのままカウンターで、ブランカを捉え……ヘッドロック! ヘッドロックの体勢だぁ! ブランカの動きを封じた!」


ブランカ「ウオッ……! クソッ、離セ……! 離セ……!」モガモガ

ダルシム「少しの我慢だよ、大人しくしておきたまえ……あまり暴れられると、私も君にげんこつをせざるを得なくなる……二人で大人しく、試合の行く末を見守ろうではないか……」


実況「これで邪魔者は完全にいなくなったぁ! さぁ、これで試合はフィニッシュか!?」

ディージェイ「なんだよこの試合……ミーのいい所が一つも……」

ヤムチャ「囀るんじゃんねぇ! 暴れるんじゃねぇ! これで終わりだっ!」ググッ

ダン「そのまま、抑え込んでおきな! よし、カウント行くぜっ!」


実況「そして、レフェリーが今、カウントを取りますっ!」


ダン「ワンっ……!」

イイゾー! ヤムチャー!

ダン「ツーっ……!」

キメチマエー!

ダン「……スリーっ!」


ヤムチャ「……よしっ!」

ワー!ワーワー!

実況「そして、ここでカウントスリー! 試合は決着だぁ! ヤムチャの豪快なスープレックスにて、試合は決着ウゥ!」

ホーク「いや~、流石空手軍団……一気に流れを持っていきましたね」

実況「完全に格の違いを見せつけたか!? ヤムチャの驚きの爆発力! そこから、一気に試合を持っていきました!」

ーーー


ケン「ハハハ。何やってんだよ、アイツはよぉ……」

バルログ「はぁ、覚えたばかりのスパインバスター……試合中にアレンジしましたねぇ……」

ケン「派手すぎるんだよ、試合がよぉ……? 第二試合で、あんな試合するなんて、アイツ何考えてるんだ……?」

バルログ「……まぁ、ディージェイ君が原因な所もありますけどね」

ケン「そろそろ、第二試合では限界じゃねぇか……? 派手な試合はこっちですればいいんだよ……こっちでよぉ……?」

バルログ「……まぁ、現場監督がこの試合、どう評価するかですね」

ケン「アイツが戻って来なきゃ、俺が負け役になっちまうから困るんだけどねぇ……まぁ、とにかくよぉ、バルログ……?」

バルログ「……ん?」

ケン「打ち合わせは……やり直さねぇとな……? 二番弟子の俺が、三番弟子のアイツに負けてちゃ……笑い話にもならねぇよ……」

バルログ「……そうですね。こんな内容じゃ、我々の試合もヤムチャ君に喰われちゃいます」

ーーー


ナッシュ「いやぁ、ディージェイ君のタッグマッチが、こんな結果になるとは……」

ガイル「……少し、予想外だったな」

バイソン「自由に動きすぎなんだよ……アイツはよぉ……?」

ナッシュ「コレ、我々の打ち合わせ内容も変える必要がありそうですね……?」

サガット「……そうだな。同じタッグマッチでも、ベルトがかかっているんだからな」

ガイル「相手がシャドルーさんってのは……幸か不幸か……」

バイソン「……幸じゃねぇの? 格上の俺達にだったら、その分バンバン大技仕掛けれるじゃん?」

ナッシュ「でも、そうなると、ケンさんとバルログさんが試合、作りにくくならないですかねぇ……?」

サガット「そうだな。俺達は、違う形で試合を作っていった方がいいかもしれない。連携攻撃や、合体技……そういったモノを中心にしていくか……」

ナッシュ「そうですね。そういう攻撃なら……シャドルーさんにも対抗できそうですし……上の人達も試合が作りやすくなるでしょう……上はシングルばかりですから」

バイソン「俺は、逆に二人の事を見下してさぁ、個人行動ばかりするから、そこの所、上手く突いてくれや!」

ガイル「……とにかく、細かい部分を、今から作っていきましょう。時間もないです」

ーーー


かりん「……相変わらず、ディージェイさんの試合は荒れますわね」

キャミィ「……そうですね」

かりん「でも、あのヤムチャって人……上手く対応してませんでした……? 新入りの方なのに、やりますわね」

キャミィ「……でも、凄く盛り上がってました」

かりん「キャミィ……? ひょっとして……プレッシャー受けてますの……?」

キャミィ「……」

かりん「大丈夫ですわよ! 女子部だって、今の試合に負けないような、凄い試合をしたら、いいだけの話ですわよ!」

キャミィ「……」

かりん「昨日の試合で、私達が、貴女にアピールしてましたし……今日はマイクが得意なローズさんも、解説で手伝ってくれるんだから、大丈夫ですわよ」

キャミィ「……はい」

かりん「どちらにしても……春麗さんが抜けた状況なんだから、盛り上げていかなきゃいけないのは、同じ事ですわ」

キャミィ「……」

かりん「ほら、キャミィ……? もうすぐ、出番ですわよ……? だから、もっとしゃんとした顔をした方がいいですわ」


キャミィ(春麗さんを越える試合……今の試合を越える試合……私がそういう試合をしなきゃ、女子部は……)

ーーー


ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!


ヤムチャ「よっしゃぁ! 俺の勝ちだっ!」

ダルシム「やったな! ヤムチャ君!」


実況「さぁ、場内のヤムチャが止む事なく続いているぅ! 今、リング上でヤムチャが勝ち名乗りを受けている!」


ブランカ「……さぁ、彼らの邪魔をしない様に、退場しましょう」ボソッ

ディージェイ「ヘイヘイ、Mr.ブランカ……聞いてくれよ……! Mr.ヤムチャは……!」

ブランカ「……黙れ」ギロリ

ディージェイ「!」

ブランカ「私の不手際もあったが……今日の試合、君には言いたい事が多すぎる……! 全ては控え室で話しましょう……」ボソッ


実況「さぁさぁ、敗者のブランカ・ディージェイ組は……それを尻目に退場します!」

ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!

実況「止まらない、ヤムチャコール! 勝者のヤムチャには、止む事のない声援と拍手が鳴り響きます!」

ヤムチャ「うっしゃぁ!」

ワー! ワーワー!


実況「さぁ、リング上でヤムチャが大きくガッツポーズ!」


ダルシム「……もう、煽るな。ヤムチャ君」ボソッ

ヤムチャ「……ん?」

ダルシム「いくら何でも、盛り上がりすぎだ……これ以上盛り上がると、上の方達に迷惑がかかるぞ……?」ボソッ

ヤムチャ(あっ、しまった……! テンションが上がって……お客さんの声援に応えすぎちまった……!)

ダルシム「過ぎた事は仕方ない……だが、これ以上の騒ぎになる事は、抑える事が出来る……下手な事はせずに、ここままひっそりと退場しよう……」ボソッ

ヤムチャ「……う、うっす!」

ダルシム(下手にヤムチャ君が締めると、また盛り上がってしまうからな……ここは私が締めるか……)ペコッ


実況「さぁ、ダルシムが、四方に向かって、深々とお辞儀して……」


ダルシム「では、ヤムチャ君……我々も退場しようか……?」

ヤムチャ「……うっす!」


実況「ヤムチャとダルシムは、退場します! 退場していく二人に惜しみない拍手が送られています!」

パチパチ……パチパチ……


ヤムチャ(確かに、盛り上がりすぎだよ……今までの試合……ここまでの声援を貰った事なんてねぇのに……)

ヤムチャー! ヨクヤッタゾー!

ヤムチャ(うおっ……! 客席から、俺の身体に触って激励してくれる人までいるよ……!)

ヨク、アノ、イケスケネェヤロウヲ、ブットバシテクレタナー! ヤルジャネェカー!

ヤムチャ(嬉しい……こんなに声援を貰えるのは嬉しい……だけど……)

ソノチョウシデ、アニデシ、タスケテヤレヨー!

ヤムチャ(本当は、貰っちゃいけねぇんだよなぁ……)

ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!

ヤムチャ(なんか複雑だなぁ……嬉しいよ……嬉しいんだけどさぁ……)

今日はここまで

実況「さぁ、まさに嵐のような第二試合が今、終了しましたぁ!」

ホーク「試合当初は、どうなるかと思いましたが……空手軍団のヤムチャ選手が格の違いを見せつけましたね」

実況「フィニッシュホールドは、え~……零距離ハイアイグル旋回式スパインバスターとでも言えばいいですかね?」

ホーク「あはは、何だか呼びにくいですね? 何か、新しいネーミングがいるのでは、ないでしょうか?」

実況「そうですね! では、正に嵐のような一戦だったので……それを踏まえて『トルネードスパイン』なんてのは、いかかでしょう!? どうでしょう、ホークさんだったら、どのような名前をつけますかね?」

ホーク「う~ん、自分の場合は……と、いうか自分の印象は……」

実況「はい!」

ホーク「ヤムチャ選手には狼の様なイメージ感じましたから、『ウルフバスター』なんてのはいかがですかね……?」

実況「おっと、確かにヤムチャの必殺技には『狼牙風風拳』なんてのも、ありましたね!? そちらもいい名前だぁ!」

ホーク「まぁ、決めるのはヤムチャ選手です。ひょっとしたら、もっといいネーミングがあるのかもしれませんね?」

実況「では、そのヤムチャは新技……それが、どういった技名になるのかも、踏まえて……これからのヤムチャの活躍に期待していきましょう!」

ホーク「そうですね。自分も負けてられません」

実況「……ホークさんも、いずれヤムチャと戦う機会があるかもしれませんもんねぇ!?」

ホーク「タイプは違いますが……自分も負けませんよ……鷹が狼を喰ってやります」

実況「力強いお言葉ありがとうございます! これからのホークさんの活躍にも期待していきましょう!」

ホーク「はい、ありがとうございます」

実況「さぁさぁ、ではそろそろお時間だ! 第二試合の中継はこの辺りで終了させて頂きます! 最後にもう一度ご紹介しましょう! 本日のゲスト解説は……」

ホーク「T.ホークです。ありがとうございました」

実況「CMの後は……ベルトを賭けた女の一戦っ! 春麗を破ってチャンピオンになったキャミィ! それに我らがさくらが挑むぅ!」

ーーー


プーアル「ヤムチャ様、ダルシムさん! お疲れ様でした!」

ヤムチャ「お、おう……プーアル、終わったよ……」

プーアル「凄い盛り上がりでしたよ! 僕も見ててドキドキしました! これだったら、ヤムチャ様も第五試合に戻れるんじゃないですか!?」

ヤムチャ「プーアル、盛り上がっちゃダメなんだよ……そりゃ、声援を貰えたのは凄く嬉しかったよ……? でも、盛り上がっちゃダメなんだよ……」

プーアル「……えっ?」

ヤムチャ「これ、やらかしちゃったかなぁ……? あ~、ケンさんとか怒ってんのかなぁ……? さくらちゃんにも迷惑掛けたのかなぁ……今、大変そうなのに……」

ダルシム「……済んだことは、仕方ない。まぁ、どっちにしろ上の方達には、これを越える試合をしてもらわないといけない。あまり、気にする事はない」

ヤムチャ「……ん?」

ダルシム「空手軍団とシャドルーの抗争も、行き詰まっているし……ナッシュ君と、ガイル君だってもっと人気が出てもいい……」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「それに、女子部だってチャンピオンの春麗君が抜けてピンチなんだ……どっちにしても、いい試合をしていかなければいけないのは、同じだ……」

ヤムチャ「ダルシムさんが、そう言ってくれるのは有り難いっす……」

ダルシム「そもそも、今日の試合がこんなにも盛り上がりすぎたのは、ディージェイ君のせいだ……ヤムチャ君にそこまで責任はないよ……現場監督は評価してくれると思うぞ?」

ヤムチャ「あっ、そうだ! ディージェイですよ、ディージェイ! あいつ、なんなんですか!?」

ヤムチャ「あいつ、ワケのわからない行動、沢山してやがったし……」

ダルシム「……すまない」

ヤムチャ「ちょくちょく、痛い蹴りやパンチ入れてきたし……あいつ、加減がわかってないっすよ!」

ダルシム「本当に、申し訳ない……そうだ! 最後の彼のパンチは大丈夫だったのか!? モロに喰らっていたように見えたが……」

ヤムチャ「あ~、アレは……まぁ、俺は鍛え方が違うから、一応大丈夫っすよ……でもまぁ、痛いもんは痛いっすけどね……」

ダルシム(鍛え方……? あんなパンチを耐えるトレーニング法があるのか……?)

ヤムチャ「でも、アレ……俺じゃなかったら、間違いなく事故ですよ、事故!」

ダルシム「そうだよな……迷惑かけて、本当にすまない……」

ヤムチャ「俺、プロレス始めたばかりで、まだ右も左もわからない状態ですけど……それでも、アイツは才能ないって、ハッキリわかりますよ!」

ダルシム「……」

ヤムチャ「アイツはクビにした方がいいですよ!? なんで、あんな奴、半年間も雇ってるんですよ!? もっと、他の人いるでしょうが!?」

ダルシム「……まぁ、ディージェイ君は少し変わった経歴を持っていてな」

ヤムチャ「……ん?」

ーーー


ブランカ「何を考えているんだ、君は! ヤムチャ君に、本気で仕掛けただろう!? いったい、何を考えている!?」

ディージェイ「へ、ヘイ……Mr.ブランカ……」

ブランカ「キックボクシングの世界で、いい所までいった君が……本気で、仕掛けたら、どうなるかぐらい想像はつくだろう! そこまで、君は空気が読めないのか!? あぁ!?」

ディージェイ「違うんだ……ミーの話を聞いてくれよ……」

ブランカ「我々は、こういった世界でやっているが……スーパーマンではない! 殴られれば人と同じように傷つく身体だ! その身体で試してみるか……あぁ……!?」

ディージェイ「待ってくれよ……! 先に仕掛けてきたのは、Mr.ヤムチャだって……!」

ブランカ「何故、ヤムチャ君が強い攻撃を仕掛けてきたと思う……? そこを考えてみろ……?」

ディージェイ「それは……Mr.ヤムチャが自分のいい所を見せたいが為だけに……」

ブランカ「……そこが、そもそもの間違いなんだよ。やはり、君は三流だ」

ディージェイ「なんて事を言うんだい……!? ミーは三流なんかじゃない、一流だ!」

ブランカ「……いい加減に、過去の事は忘れなさい」

ディージェイ「……えっ?」

ブランカ「君が一流だったのは、キックボクシングの世界……そして、音楽で活躍出来るミュージシャンだった時の話でしょう……?」

ディージェイ「……」

ブランカ「キックボクシングの世界で活躍しても……自分の優れた音楽の才能表現出来ずに、満足出来なくて……音楽の世界で活躍しても……自分の優れた格闘センスを表現出来ずに、満足出来なかったんでしょう……?」

ディージェイ「……あぁ」

ブランカ「だからこそ、君は……その二つの才能を両立させる事の出来そうな場所……格闘しながらも、他の事で自分を表現出来そうな場所……プロレスを選んだんでしょう……?」

ディージェイ「あぁ、ミーはいつか絶対に最強のミュージックファイターになってやるんだ」

ブランカ「君の才能は認めます。格闘センス……そして音楽で学んだ自己表現方法……今日のアピールだって、貴方のコンサートだったら、大盛り上がりなんでしょうね?」

ディージェイ「そうだよ。ミュージックを聴くなら、CDだけで充分だからね。コンサート会場に来てくれたオーディエンスには、それ以上の……アピールや、ダンス……そんな事をして特別な空間を与えてあげるべきなんだ……」

ブランカ「貴方はプロレスというものを、よく理解している。そして、その為に行動しているのは、わかります。だけど、まだまだレスラーとしては新米……右も左もわかってはいません……」

ブランカ「三流のギタリストが、他の人達を無視して……出しゃばった真似をしたら、どうなりますか……? 三流のベーシストが出しゃばった真似をしたらどうなりますか……?」

ディージェイ「……そ、それは」

ブランカ「貴方のコンサートで、そういった事が起きるのです。主役である貴方を無視して……三流のミュージシャンが突然、自己主張を始めるのです……貴方は許せますか……? そして、お客さんは受け入れてくれますか……?」

ディージェイ「そ、そんな事考えられないよ! ミュージックっていうのは、協調性だ! 協調したリズムがファンキーなビートを作っていくんだよ!?」

ブランカ「そうです。協調性です……貴方に足りないのは、そこです……」

ディージェイ「……えっ?」

ブランカ「一流になりたいのなら……先ずは、今の自分が三流である事を受け入れましょう……そして、そこから一歩進んでいきましょう……下手に一流の真似事をするのは、逆効果です……」

ディージェイ「……」

ブランカ「でないと……この場所で芽が出ないまま……格闘家としての寿命が尽きてしまうかもしれませんよ……? 満足出来ない、日々を……また、過ごしたいのですか……?」

ディージェイ「……」

ブランカ「とりあえず、貴方はそこで頭を冷やしておいて下さい……私は、ヤムチャ君に、謝罪してきます……パンチの一件も、心配ですしね……」

ーーー


ヤムチャ「はぁ……キックボクシングで、そこそこいい所いって……ミュージシャンでも一流なのか……変わった奴だなぁ……」

プーアル「どちらか一本に絞ったらいいと思いますけどねぇ……?」

ダルシム「まぁ、本人はなぁ……頑張ろうとしているのだが……どうもなぁ……」

ヤムチャ「本人がやりたいって言ってるんだったらなぁ……でも、大丈夫なんですかねぇ……?」

ダルシム「……なんだかんだで、才能はあると思う。ディージェイ君は」

ヤムチャ「いやいや……キックボクシングとミュージシャンでも、一流だとしても……プロレスは、また別でしょ……?」

ダルシム「教育係の私が、ベラベラと喋るのもよくない事だと、思うんだが……まぁ、ヤムチャ君だって彼と関わる事はあるだろうしな……知る必要はある、か……」

ヤムチャ「……ん?」

ダルシム「例えば、教育の試合だ……まぁ、ディージェイ君の過去は置いておくとして……総合的に見たら、試合を一番引っ張っていたのは、誰だろうか……? 考えてみてほしい」

ヤムチャ「えっ……? それは……」

ヤムチャ「……ディージェイ?」

ダルシム「そうだ。ディージェイ君だ……確実に間違った方向へ試合は進んでいたが……殆どディージェイ君が中心となっていただろう……?」

ヤムチャ「そうっすけど……でも、間違ってるんでしょ……?」

ダルシム「そう、間違っている。試合を間違った方向に動かそうとしている、ディージェイ君……それを修正しようとしている、私と、ブランカ君とヤムチャ君……いや、ダン君もいるな……一対四の自己主張のぶつかり合いだ」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「一対四の状況でも……試合を支配して……自分の空間を作り上げていたのは誰だ……? それは、紛れもなくディージェイ君だろ?」

ヤムチャ「そうっすけど……でも、間違った方向に進んでるんですよね……!?」

ダルシム「あぁ、間違っている。そこは断言しよう、確実に間違っている。だが……」

ヤムチャ「……ん?」

ダルシム「ディージェイ君はプロレスというものを理解している。理解して、やろうとしているのだが、少しズレたポイントに、試合展開を持っていっているのが、今の現状だ……」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「そのパワーを……正しい方向に向ける事が出来れば……ブランカ君や、バイソン君……自己主張の強い選手も、我が団体には多々いるが……それを超える力になると思わんかね……?」

ヤムチャ「……」

ダルシム「今日の大熱狂だって、そうだ……」

ヤムチャ「……ん?」

ダルシム「ディージェイ君が、自分勝手な行動を繰り返し……我々が、試合中、苛立つ場面もあっただろう……?」

ヤムチャ「まぁ、確かに……ありましたねぇ……」

ダルシム「その不満は、お客さんも感じている……ディージェイ君がいいタイミングだったのに、邪魔したな……なんて、小さな不満を募らせている……」

ヤムチャ「……」

ダルシム「そして、その小さな不満が積もり積もって……限界に近づいてきた時に……ヤムチャ君が、登場したってワケだ……」

ヤムチャ「俺が……あいつをぶっ飛ばしていい、空気が自然に出来上がってましたねぇ……」

ダルシム「ある意味、あの声援はディージェイ君のものとも言ってもいい。声援はヤムチャ君への応援だったが……裏返せば、あれはディージェイ君がやられる姿を、皆求めていたんだ……」

ヤムチャ「……」

ダルシム「あそこまでの声援を貰う事の難しさ……それはヤムチャ君も、わかっているだろう……? 思っていた反応より、小さかった……そんな経験は、ここまでの何試合かで感じた事はあるだろう?」

ヤムチャ「……確かに」

ダルシム「ある意味、天性的なものなんだろうと思うよ……だが、天性ではダメだ……ヒールのシャドルーさん達も、同じ事をしているが……彼らは計算で行っている……」

ダルシム「そういった、彼の良さを殺さないようにしつつ……足りない部分を補って、いいレスラーに出来ればいいのだが……なかなか難しいよ……」

ヤムチャ「あ~、ダルシムさんも苦労されてるんですねぇ……」

ダルシム「私やブランカ君が力不足なだけだよ……今日のディージェイ君に対して、ヤムチャ君も苛立ちを感じただろうと思うが……それは、ディージェイ君の責任ではなく、教育係の我々の責任だ……」

ヤムチャ「……えっ?」

ダルシム「ディージェイ君を恨むなら、私の事を恨んでくれ……全ての責任は私達にある」

ヤムチャ「いやいやいやいや……!」

ダルシム「ヤムチャ君だって、第五試合に戻りたいという目標があるのに、とんだ迷惑をかけてしまったな……本当に申し訳ない!」

ヤムチャ「いや、やめて下さいよ、ダルシムさん……! もう、わかりましたから……!」

ダルシム「……ん?」

ヤムチャ「いいんじゃないですか……? そういう事だったら……まぁ、俺もプロレスの仕組みはまだよくわかってないっすけど……頑張って、そのミュージックファイターってヤツになればいいじゃないですか!」

ダルシム「すまないな……ヤムチャ君、ありがとう……」

ヤムチャ「なるほどねぇ……まぁ、確かに厄介な野郎だけど……あいつにも、あいつなりの優れた所があるんだね……」

今日はここまで

ブランカ「……ヤムチャ君」

ヤムチャ「あっ、ブランカさん……」

プーアル「ブランカさん、お疲れ様でした!」

ブランカ「今日の試合……本当に、申し訳なかった……顔にいいのを貰っていたが……大丈夫かい……?」

ヤムチャ「あ~、それはもう大丈夫っすよ……」

ブランカ「……大丈夫なのか? ディージェイ君にも、私からキツく言っておくから、今臨在この様な事が起きないようにさせるよ」

ヤムチャ「……うっす。よろしくお願いします」

ブランカ「まぁ、お互いに注意しようではないか……私も……そして、君も……」

ヤムチャ「お互い……? 俺も……?」

ブランカ「あぁ、そうだ。ヤムチャ君も、だ……」

ヤムチャ「いやいや、俺は何もしてませんよ……? ちゃんと、試合やりましたよ……?」

ブランカ「ディージェイ君の言い分を聞くには……ヤムチャ君が、強い攻撃を仕掛けてきたから……自分も仕掛ける形になってしまった、らしい……」

ヤムチャ「いやいや、それはアイツが勝手な行動ばかりするからでしょう……?」

ブランカ「勿論そうだ。ディージェイ君は、勝手な行動ばかりしていたな……その事も、後でディージェイ君に言っておくよ……今日は夜通し反省会だ……」

ヤムチャ「俺は、その行動を止める為に……強めの攻撃をして……アイツに気づいてもらおうと……」

ブランカ「……本当にそうか? 君は100%、そういう感情で行動していたのか?」

ヤムチャ「……えっ?」

ブランカ「『こいつ、鬱陶しい奴だな……』『ムカつくヤツだな……』そういった怒りの感情が、そこにはあった様に、私は思う。そういった、感情も……少しはあったんじゃないかな……?」

ヤムチャ「……それは」

ブランカ「試合前に、伝えておいてくれっと言っておいたハズだが……ダルシムさん、伝えてないのですか……?」

ダルシム「それは今、この場で蒸し返す事か……? 確かに伝えたが……今、この場でヤムチャ君に言う必要があるのか……?」

ブランカ「……ヤムチャ君の成長の為には、必要な事ですから。試合前にダルシムさんから、絶対に怒ったり、キレたり、投げ出したりしないでくれ……そう、指示はされてますよね?」

ヤムチャ「それは……されましたけど……」

ブランカ「勿論、ディージェイ君がした事は許されたモノではありません……そこは、同じように彼が理解するまで、何度も何度も言い聞かせます……」

ヤムチャ「……はぁ」

ブランカ「しかし、何故その様になったのかを、突き詰めていくと……ヤムチャ君が怒りの感情を持って……自分に本気で仕掛けてきた、とディージェイ君は思ってしまったそうです」

ヤムチャ「でも、それは……」

ブランカ「わかってます。ディージェイ君が試合の空気を読まずに……勝手な行動ばかりして、フラストレーションが溜まった中で……強引でも、彼を動きを止めないといけない場面が来たからですね……?」

ヤムチャ「……はい」

ブランカ「その事は、ディージェイ君にも、同じように伝えます。彼が理解するまで……何度でも何度でも、同じ事を言い聞かせます。安心して下さい」

ヤムチャ「……ありがとうござます」

ブランカ「二人の微妙に噛み合ってない歯車のズレが、大きくなり、大きくなり……限度越えてしまったからこそ……あそこまでの、騒動になってしまったと……私は思います……」

ヤムチャ「……」

ブランカ「ヤムチャ君がダルシムさんの指示を守り切って……怒らないよう、キレないよう、ディージェイ君にはディージェイ君なりの努力がある事を、理解しようとしていれば……別の手段で、ディージェイ君に対応してあげれたかもしれませんね……」

ヤムチャ「……俺にも、問題があったって事っすね」

ブランカ「全てがヤムチャ君の責任だというワケではないですよ? ただ、今日の二人は、お互いの信頼が足りなかった……という感じですね……」

ヤムチャ「……信頼?」

ブランカ「まぁ、ヤムチャ君がディージェイ君の事を、どう思っているかはわかりませんが……試合中、迷惑をかけやがって……なんて事を思っていたでしょ?」

ヤムチャ「まぁ、嘘ついても仕方ないので……正直に言いますよ……はい……」

ブランカ「しかし、その事は第五試合で……シャドルーの方達や、空手軍団のリュウさんやケンさんも、ヤムチャ君に対して、思っている事なんですよ……」

ヤムチャ「……えっ?」

ブランカ「あの方々にとっては、ヤムチャ君がディージェイ君に感じたように……同じように、どんな行動をするか読めない存在です」

ヤムチャ「……」

ブランカ「彼らは、そんなヤムチャ君にも……何とか自分の意思を伝えよう、伝えようと……ヤムチャ君に、優しく接してくれませんでしたか……?」

ヤムチャ「そうっすね……すいません……ダルシムさんの、指示……守れてませんでした……」

ブランカ「私達は、リングの上で、プロレスという形式で……相手を痛めつけ、殴り、投げ、戦っています……」

ヤムチャ「……はい」

ブランカ「だけど、そこに本当の憎しみ……殺意……そういったものがあっては、なりません……」

ヤムチャ「……はい」

ブランカ「どんな相手でも、何があっても……相手の事を信頼して……優しく接してあげて下さい」

ヤムチャ「わかりました……今日の俺には……そういう所が足りませんでしたね……」

ブランカ「まぁ、他にも細かな部分の粗はあったような気がしますが……大まかな部分はこんな感じですね?」

ヤムチャ「……指導、ありがとうございます。勉強になりましたよ」

ブランカ「後の細かな部分は、シャドルーの皆さんや、ダンさんにでも、聞いて下さい。確か、飲み会に参加してるんですよね……?」

ヤムチャ「あっ、はい。参加してます」

ブランカ「ヤムチャ君は、話が早くて助かりますよ……まぁ、初めて私と試合した後は、どうなる事かと思いましたけどね……?」

ヤムチャ「いや、あれはですねぇ……初めての第二試合で、こっちもよくわからなかったから……」

ブランカ「まぁ、そういう事にしときましょうか。では、ダルシムさん……今日も私とディージェイ君の反省会に付き合って下さい……」

ダルシム「私は、君程強く言う事は出来んがなぁ……まぁ、相槌を打つぐらいは、出来るだろう……わかったよ……」

ヤムチャ「俺も、そっちの反省会参加しなくていいんですか……? 俺も、今は第二試合ですよ……?」

ダルシム「あ~、ヤムチャ君が来るのは勘弁してくれ……その場にヤムチャ君がいたら、ディージェイ君が全ての責任をヤムチャ君になすりつけようとして、また喧嘩が始まりそうだ……もう争いはこりごりだよ……」

ヤムチャ「いや、でも……」

ダルシム「シャドルーさん達に、指導されているんだろう……? あんなエース格の指導を受けているなんて……恵まれた事なんだぞ?」

ヤムチャ「……はぁ」

ダルシム「こ~んなベテランの老体連中と、仲良くしてもいい事はないぞ? ディージェイ君は仲良くする相手が私達しかいないだけだ」

ヤムチャ「う~ん……それはそれで、アイツも可哀想な気がしますねぇ……ミュージックファイターってヤツ、目指してるんでしょ?」

ダルシム「そもそも、私はミュージックファイターとは何かが、さっぱりわからんがな……あっ、そうそうヤムチャ君……?」

ヤムチャ「……ん?」

ダルシム「ラストの投げはよかったが……交代した間際にディージェイ君に飛び蹴りを仕掛けただろう……?」

ヤムチャ「あっ、はい! あれ、やっぱり荒かったですよね?」

ダルシム「荒かった、が……工夫次第では派手な技に出来る可能性を感じたよ……まぁ、シャドルーの皆さんにでも、相談してみたらどうだ? あの人達は、我々と違って派手に見せる攻防をしているんだからな」

ヤムチャ「うっす。俺も、思っていた部分はありました! わかりました、相談してみます!」

ダルシム「なんだ、自分でも思っていたのか……なら余計な一言だったかな……? まぁ、その調子で精進してくれ……」

ヤムチャ「うっす!」

ダルシム「では、ブランカ君……次は、ディージェイ君の指導に行こうか……? 彼はヤムチャ君程飲み込みが早くないからなぁ……困ったもんだ……」

ブランカ「……ダルシムさんも、もう少し強く言うべきなんですよ。ダルシムさんは、優しすぎる所がありますから」

ダルシム「そうは言ってもなぁ……私は温厚なんだよ……そういうのには向いていない……」


ヤムチャ「ブランカさん、ダルシムさん! 指導、ありがとうございました!」ペコッ

プーアル「あら、ヤムチャ様……ブランカさんとは、犬猿の仲でしたのに……どうしちゃったんですか……?」

ヤムチャ「いや、さぁ……前にダンさんに言われた事なんだけどよぉ……?」

プーアル「はい」

ヤムチャ「リングにいる対戦相手は、敵であり味方だ……レフェリーのダンさんも、中立の立場であり味方だ……って、言われたんだよ……」

プーアル「あ~、確かに、そんな事言ってましたねぇ……」

ヤムチャ「今日の試合で、よくわかったよ……まぁ、俺はディージェイの事を、邪魔をする敵……なんて、思ってたけどさぁ……?」

プーアル「はい」

ヤムチャ「俺、一人じゃ難しい事でも……中立の立場のダンさんや、敵であるブランカさんが……スッって俺の事、助けに来てくれたんだよね……?」

プーアル「……そうだったんですか」

ヤムチャ「信頼だよ、信頼……そうだよ、あの人達は俺が困った時、助けてくれるんだから……俺も、もっとあの人達の事、信じなきゃいけねぇ……あの人達も仲間なんだよ」

プーアル「なるほど!」

ヤムチャ「あの試合の復讐は……勿論、いつか絶対にしてやるよ……? でも、それは殴る蹴るじゃなくて……」

プーアル「はい」

ヤムチャ「あの人喰っちまうような、格好いい所見せて……第五試合に戻るための踏み台にする事が復讐だよ」

プーアル「そうですね! それがいいですよ、ヤムチャ様!」

ヤムチャ「まぁ、とりあえず、今は勉強だ……他の試合を見て、自分に足りない部分探してみるか……俺が盛り上げすぎちまったせいで……さくらちゃんの事も、ちょっと心配だしな……」

プーアル「でも、僕はヤムチャ様コールが起きてた時、嬉しかったですよ? まさか、あのヤムチャ様が! なんて、思いました」

ヤムチャ「……ここは、そういう試合する所じゃねぇんだって。とりあえず、さくらちゃんの試合見るか。もう始まってるんじゃねぇか?」

ーーー


さくら「春風脚っ……!」ガスッ

キャミィ「……くっ!」

さくら「はああぁぁっ! たああぁぁっ!」ガスガス

キャミィ「ぐっ……うっ……くっ……!」


実況「さぁさぁ、さくらの春風脚っ! 身体を回転させながらの、連続回し蹴りを叩き込む! 二発……三発……そして、四発っ!」

ローズ「こういったスタイルが、さくら選手の持ち味です。いいリズムで戦ってますね」


さくら「……とどめっすっ! はぁっ!」ガスッ

キャミィ「……くっ!」


実況「そして、締めのハイキックっ! 下から、キャミィの顎を蹴り上げたぁ! これには、キャミィもダーウンっ!」


さくら「よしっ……! いい感じっす……!」

キャミィ「……甘いっ!」シュッ

さくら「うっ……うおっと……!」

キャミィ「……はあぁっ!」


実況「おっと、だがしかし、すぐ様さくらに水面蹴りっ! ダウンと同時に身体を捻らせ、そのまま仕掛けたぁ!」

ローズ「……やっぱり、上手いですね。キャミィ選手には、テクニックだけではなく、こういったまるで猫のようなすばしっこい所があるんですよ」

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