男「この世界に僕の友達は誰も居ない」 (29)

どこかの山中

男「それではそろそろ説明して貰いましょうか、自称神様」

神「フフフ」

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数時間前

「どうも」

男「……?」

「いやー今日も天気が良いですねぇ。貴方もそう思うでしょう?」

男「えっと……どちら様ですか?」

「……フフフ」

「貴方はこの世に神が居ると思いますか?」

男「……居るんじゃないですか。とびっきり意地悪いのが」

「ははは、そうかもしれませんね。まぁ、私はいないと思いますが」

男「…………あの、本当に何方ですか?」

「私ですか?……そうですね、私は」



「神様です」



男「…………は?」

神様「だーかーらー、神様」

男「貴方がですか?」

神様「はい」

男「…………お話しができて良かったです。さようなら」テクテク

神様「貴方の願いを叶えてあげましょう」

男「…………」ピタッ

神様「フフフ」

神様「こんな世界、もう懲り懲りでしょう?こんな自分だけに甘い世界なんて」

男「……なんの話ですか」

神様「私は貴方を見て思いました。あぁなんて、なんて」


「不幸なんだろうと」

神様「しかもそれが14年も続いて、本当に辛かったでしょう?何度も死のうとしたでしょう。だーかーらー」

神様「私が貴方のその願いを叶えて差し上げましょう」パチンッ


神様「この穴に飛び込みなさい。そうすればこんな甘ったるくて腐った世界におさらばできますよ?」

男「…………」

神様「さあ、早く!」

男「……僕は、僕は!」

男「………………さようなら、皆」テクテク

神様「一名様御案な〜い」チリンチリン



「フフフ」

男「それではそろそろ説明して貰いましょうか、自称神様」

神様「説明?はて何のことですか?」

男「惚けないでください。この世界は何なんですか?」

神様「あ〜それ?聞いちゃいます?聞いちゃったか〜」

男「…………」

神様「おぉそんな怖い目で見ないで下さいよ。言われ無くてもちゃんと説明しますって。体験プレイも終了した事ですしね」

男「ふん」

神様「フフフ」

神様「この世界。まぁ、お気付きかと思いますがここは貴方が生きていた世界とは別の、所謂異世界って奴です」

男「そんなの分かってるさ。人の反応を見ればね」

神様「流石です。では此処がどんな世界かと言いますと、魔法も超能力でも何でもアリな世界とでも思っていただければ結構です」

男「…………」

神様「ちなみに魔法や超能力という要素はこの世界にとってはオマケみたいな物でしかありません。ゲームの初回生産限定版についてくるアニメ何かと思っていただければ結構です」

男「良く分からない例えだね」

神様「……要は、この世界の主立った要素は別にあると言うことです。それが何か貴方には分かりますか?」

男「……僕に対する殺意、だろ?」

神様「大せーかーい。そう、この世界に存在する全ての人類は赤子から老人まで老若男女まるっと全部、貴方の事が憎くて憎くて堪らない。超能力や魔法なんて物は話を盛り上げる道具でしかありません」

男「僕を憎んでいる理由は?」

神様「それは禁則事項ですねぇ」

男「……この世界で僕は何をすればいい?」

神様「さぁ?私は貴方の、あの世界から消えたいと言う願いを叶えただけ。それ以降の事は貴方が決めて下さい」

男「……分かった」

神様「フフフ。あぁそれと。流石にただの人間としてこの世界にほっぽり出すのは忍びないので貴方にも超能力を授けて置きました」

男「どんな?」

神様「他の超能力者の力をコピーする能力です。あぁただし制限がありまして、使用回数は一日一回、コピー出来るのは視界に入っている何の能力分かる超能力者だけです」

男「…………分かった」(使えないなぁ)

神様「それではまた。貴方のこれからに幸有らん事を」ヒュンッ

男「さて、どうした物か……」

男「先ずは、水場を探すか。幸い此処は山の中だし川くらいあるだろ」テクテク

男「それにしてもあの、自称神様。まだ何か隠してたな。もう会うことも無いだろうしもっと色々聞いとけば良かったかな」テクテク

サラサラ サラサラ

男「……見つ、けた」

男「運が無い僕にしては早く見つけたな。逃げる時に自称神様がここまで誘導したのかな?」

男「まぁいいや。なんはともあれこれで一時は生きられる。水があれば二週間は大丈夫なんだっけ」テクテ ズボッ

男「!?」

男「なんだこれっ! まるで水の中に足を入れたような感じだ!ここは岩場でまだ川まで数メートルあるのにっ!」

「また会ったな糞野郎」

男「っ!…………あぁまた会いましたね。それで?僕を殺すんですか?それともこの状況から助けてくれるんですか?」

「そんなの、言わなくても分かるだろ」

男「助けてくれるんですか?」

「もちろん!」



「殺す!」

「安心しな。殺せと懇願する程度に痛め付けて殺してやる」テクテク

男「全然安心出来ませんよ」

男(武器を持ってない。と言うことは多分、魔法使いか超能力者、まぁこの世界での呼び方はしらないけど……この地面モドキの水モドキも彼の能力によるものの筈。何だ、一体何の能力何だ!)

「ははは、焦ってるなぁ。全くいい気味だぜ」

男「…………」

男(くそっ! 分からない。どうすれば!…………? 何だ、あれ。今まで気づかなかったけど岩が動いてる。しかも川の流れる速さとまったく同じだ。まるで『岩場まで川になったみたい』だ)

「おいおい、だんまりかぁ?」

男(もしかして彼の能力は!)

「あぁ? なぁにジロジロ見てんだよ」

男(もし、この予測が合っているなら! 何処かに無いのか『あれ』は!)

男「…………」キョロキョロ

「なぁに探してんだぁ? おい!」ガスッ

男「っ!」ピキッ

男(あった!後は『あれ』を彼に投げれば!)

男「ぐっ、うぅゥ」ガシッ

「お?そんな物で何しよおってんだぁ?」

男「……ぅらぁ!!」ヒュン

「うお! 危ねぇなぁ。まぁ効かないんだけどよぉ」

男(ビ、ビンゴ!僕が投げた物。それは石。そして石は彼に当たると同時に消えた!まるで『石が彼の身体の一部になった』かのようにッ!)

男「分かりましたよ……」

「俺に殺される未来が、か?」

男「いいや!貴方の能力と貴方を倒す方法を、だっ!」

書き溜めて来ます

「俺を、倒すぅ? あはははははははははははははは! あぁ腹痛てぇ」プルプル

「お前じゃ俺には勝てねぇよ!」ドゴォ

男「がっ!」

「おらおら何が俺を倒すだってぇ!?」バキッバキッ

男「ぶっ!ぐっ!」キッ

「おぉ怖いこわ……っ!?」

「あっ、頭が! まさか、『チップ』に異常がっ! ガぁぁァぁァァァぁぁ!」バタッ

男「『チップ』?…… 何はともあれ勝った、のか?」

チュンチュン パチパチ

「……う、ううん……はっ!」ガバッ

「……此処は何処だ?確かあいつを殺そうとしていたら『チップ』に異常が起きて……って!あいつは何処に行ったんだ!?」

男「ここに居ますよ」

「!?」

男「随分とお疲れだったみたいですね。一日以上寝ていましたよ?」ガタッ

「お前……何故、俺を殺さなかった」

男「生きる為ですよ。前の世界ではこんな事思った事なんてなかったんですが」

「前の世界?」

男「何でもありません。どうぞ」

「何だこれは」

男「焼いた魚ですが?」

「何故それを俺に寄こす!?」

男「決まってるじゃないですか」


男「仲間だからですよ」ニッコリ

「仲間だと! ふざけるな! 俺は……っ!?」ズキン

男「どうかしたんですか?」

「……お前には………関係、ない!」ズキズキ

男「関係無いことは無いんですがね。僕達は運命共同体なんですから」

「運命……共同体?」

男「はい。実は僕の能力は、他人の能力をコピーする、なんですよ」

「能力のコピー……」

男「そうです。そして貴方の能力を僕は貴方に使いました」

「俺の能力を?」

男「はい。貴方の『対象の差を無くす』と言う能力をね」

「……っ!?」

男「図星みたいですね」

「…………あぁ確かに俺の能力はお前の言う 、『対象の差を無くす』と言う物だ 」

男「それならやはり貴方は僕の仲間ですよ。いや、同類と言った方がいいかもしれませんね」

「どういうことだ……」

男「簡単な事です。貴方と僕の立場と言う差を無くしました。貴方はもうこの世界では僕と一緒。ただの殺意の対象でしかありません」

「嘘だ、そんなの」

男「そう思うなら街に出てみては? 十中八九貴方、殺されますよ?」

「…………俺はどうすればいい」

男「それを決めるのは僕じゃなく貴方ですよ。僕の仲間になるもよし。僕を殺すもよし。愛する人に殺されるもよし。貴方が選んで下さい」

「……………………分かった。仲間になるよ」

男「僕が言うのも何ですが、いいんですか?」

「他にどうすることも出来ねぇからならな。それに……」

男「それに?」

「楽になるか、苦しみながら生きるかってんなら後者の方が俺に似合ってるしな」

男「…………貴方」

「ふん」

男「Mなんですか?」

「ちげぇよ!」

男「気を取直して。僕達は晴れて仲間になった訳ですがまだお互いの事を毛ほども知りません。と、言う事で、先ずは自己紹介をしましょう。先ずは貴方からです」

「俺の名前はメガネだ。歳は21で大学生。好きな食べ物は魚と野菜。嫌いな食べ物は俺の幼馴染みの手料理。能力は『対象の何かしらの差を0にする』但し1日7回までしか使えない。あぁあと『超人』とのハーフだ」

男「な〜んか物凄く気になる単語が聞こえましたが先ずは自己紹介。僕の名前は男です。歳は14でもうすぐ15になります。食べ物の好き嫌いは特にありません。能力は『視界に入っている超能力者の能力をコピーする』ですが1日1回しか使えず相手の能力を知らないとコピーは出来ません。あと異世界人です」

メガネ「?」

僕「どうかしたんですか?」

メガネ「今スゴ〜く気になる単語が……まあいいや。あ、リーダーはお前でいいぜ。俺頭はからっきしだしよ」

僕「分かりました」

メガネ「それで、リーダーに提案なんだが……」

夜 住宅街

メガネ「ここだ」

僕「ここですか」

メガネ「あぁ」

僕「いいんですか?本当に」

メガネ「あぁ」

僕「…………分かりました。行きましょう」

メガネ「…………」ガチャ

「いらっしゃいませ」

メガネ「4日ぶりだな、幼馴染」

幼馴染「死んだのかと思っていたわ、メガネ」

数時間前

メガネ「それでリーダーに提案なんだが……」

男「?」

メガネ「正直今のままじゃ戦力不足だ。しかも2人とも能力に使用回数が付いてるしな。だから先ずは仲間をあと1人は増やした方がいいと思う。まあこれから何をするかにもよるんだけどよ……」

男「目標の方は置いといて……確かに、後1人欲を言えば2人は仲間が欲しいですね」

メガネ「だろ? で、俺は今日の内に街に出て俺の知り合いを1人仲間にして来たいと思うんだがお前が俺にやったみたいにな。リーダーはどう思う?」

男「……少し危険じゃありませんか?」

メガネ「夜に行けば問題無いだろ」

男「…………分かりました。行きましょう」

幼馴染宅

幼馴染「事情は分かりました。貴方の仲間になりましょう」

メガネ「本当か!」

幼馴染「メガネには言ってない」

メガネ「うっ……」

男「…………」

幼馴染「どうかされましたか?」

男「僕はある人に、この世界の人達は僕を殺したがっていると聞きました。実際、メガネさんにも殺されかけました」

幼馴染「それはそれは……家のメガネが御迷惑をお掛けしました」

男「…………済んだ話です。でも貴女は」

幼馴染「簡単な話ですよ。私は貴方を殺そうとは思っていません。確かに6年前は怒り狂いましたがね。今はもう許しても良いかなと思える程度には大人になったんですよ。だって済んだ話、なんですから」

男「…………本当にいいんですね?」

幼馴染「えぇ」

男「世界中を敵に回すことになりますよ?」

幼馴染「そちらにはメガネがいる。それだけで世界中を敵に回す理由には成り得ます。それが、あの人との約束ですから」

メガネ「…………」

男「分かりました。メガネさん」

メガネ「ん? あぁ……」

男「幼馴染さん。貴女は僕達の仲間です」

山中 川辺

幼馴染「ねぇメガネ。ここがさっき言ってた仮拠点?」

メガネ「おう! て、あれ? 今気付いたけど岩場が治ってるな」

男「今更ですか……」

幼馴染「男君、この男に知性を期待するのはやめておいたほうがいいわよ」

男「その様ですね」ヤレヤレ

メガネ「なんかこれからの俺のキャラが決まった気がする……」

メガネ「そう言えば、男って異世界人なのか?」

男「そうですけど……」

メガネ「へ〜そうなんだ〜、ってえぇぇ!?」

男「あの僕も2人に聞きたいんですけど、6年前に何があったんですか?」

幼馴染「ふむ…………どうやら、一から説明がいるみたいね」

数分後

幼馴染「男君が殺しの対象になっている理由ですが」

男「…………え?」

幼馴染「どうかしたの?」

男「理由とかあったんですか? 僕はてっきりゴキブリだ〜気持ち悪いよ〜ペチ〜、みたいな感じで殺しに来ているのかと」

幼馴染「そんなわけないじゃない。まあ男君は他の世界から来たみたいだし知らないのも無理ないか」

幼馴染「私達の力は何も自然に発生している訳ではありません。私達は生まれた瞬間とある女性の元に送られ、そこで力を授かります。六年前、その女性をこちらの世界の男君は殺害したのが事の始まりです。狂ってるって思うでしょ?言い方は悪いけど、たった一人の女性が殺されただけなのに、ってね。私達は愛していたのよ。それこそ、狂ってしまう程に、ね」

男「狂ってしまう程、愛していた、か…………」

『男の為に死ねてあいつはとっても幸せ者だなぁ!』ニッコリ

『むー、私が男君の為に死にたかったなぁ』プリプリ

男「……………」

幼馴染「男君?」

男「えっ? あぁはい?」

幼馴染「次、行っていいかしら」

男「……はい」

メガネ「おーい」

幼馴染「って、どうやらメガネが帰ってきたみたいですし、話はまた後で」

男「分かりました」

メガネ「いや〜大漁大漁♪」

ドッサリ 魚×5

幼馴染「流石、野生児ね」

メガネ「まぁなぁ」フフン

メガネ「? どうかしたのか? 男」

男「いいえ、何も」

メガネ「? ほら行こうぜ!」ダッ

男「……はい」

<って、ああ! お前なにしてんの?!

<何って、魚を焼いてるだけでしょ?見てわかんないの? 頭だけじゃなくて視力も悪いのかしらこの脳筋

<お前が料理をやったらダークマターが出来ちまうだろぉが! 何なんだよマジで! あれか、そうゆう魔法なのか!

<な、なんですってぇ!

男「……はぁ」クスッ

男「2人共、喧嘩は駄目ですよ!」タッタッタッ

金髪女「幼馴染の『チップ』の反応が消失しました」

スーツ女「おそらくメガネの能力による物だろうな」

白髪「ふぉっふぉっふぉっ、まさか東洋の魔女が敵に付くとはのう」

スーツ女「良かったじゃないか、バルタンジジイ」

白髪「全くじゃ。長生きはしてみるもんじゃのう」

半裸の男「行くのか? 白髪」

白髪「止めんでくれよ?」

半裸「…………死ぬなよ」

白髪「それは約束できんのう、ふぉふぉっ」

半裸「…………」

白髪「所詮、儂らはお偉方の使い捨ての駒。そこんとこ忘れちゃいかんぞ?」

金髪「…………」

スーツ「…………」

半裸「…………」

白髪「ふぉっふぉっふぉっ、楽しみじゃのう、東洋の魔女。それにもう一つの可能性よ。お主は儂に何を見せてくれるのかのう」

金髪「……! 皆さん!」

スーツ「一体何?」

金髪「メガネの能力の防御システムが出来たと、技術室から! 現在全人類のチップにインストール中です!」

スーツ「……へぇ、これでもうあっちに味方を増やす術は無くなった、か。さあてどうする? 糞野郎」

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