相原雪乃「光陰矢の如し」 (84)

アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。

当SSはアイドル名「ことわざ」でタイトルをつけているシリーズです。


以前のお話に戻る場合はSS wikiを通ってください。
http://ss.vip2ch.com/ss/%E3%80%90%E3%83%87%E3%83%AC%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%80%91%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%8F%E3%81%96%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA

前々回
宮本フレデリカ「明日は明日の風が吹く」
宮本フレデリカ「明日は明日の風が吹く」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1415/14157/1415713716.html)

前回
本田未央「五十歩百歩」
本田未央「五十歩百歩」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1417/14177/1417784321.html)


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 ─ 前回のお話 ─


・Coプロの渋谷凛休業中

・そんな彼女の帰りを望む人が多数いる

・○○プロのモバPは傷心旅行中




 ─ ○○プロ・事務室 ─


相原雪乃「・・・由々しき事態ですわ!」

藤居朋「いや、雪乃さん、それ昨日も言ってた・・・」

雪乃「毎日言わないと絶対忘れてしまいますわ!」

朋「いや・・・あ、はい」

小松伊吹「どしてあたし達呼ばれたの?」

雪乃「皆さん・・・今の自分たちの状態を見て同じ事を言えるんですか!?」


朋「え?」←キャミ装備、いろいろ見えてる

伊吹「ん?」←美顔パックつけて、ゲームしてる

五十嵐響子「なんでしょうかー?」←ケーキ作り中、顔にチョコついてる


雪乃「少々たるみ過ぎじゃありませんか・・・?」


朋「いやー・・・だってさ」



モバP(以下P)『旅行行ってきます』



朋「ってな感じでPがいなくてさ、気合入らないっていうか・・・」

伊吹「だねー、でもPがくれた仕事はちゃんとやってるじゃん。何がダメなの?」

雪乃「気が緩み過ぎなのですわ・・・」

雪乃(ここは○○プロのリーダーとして、皆を導かないと・・・)


西川保奈美「雪乃さん、ドリンクどこかしら?冷蔵庫になかったのだけど・・・」

雪乃「へ?ああ、えっと・・・冷蔵庫になければ上の階の倉庫にありますわ」

保奈美「ありがとうございます。レッスン終えたばっかりなので皆に配ってきますね」

雪乃「   」ブワッ

保奈美「え、え、ええっ!?」

雪乃「保奈美ちゃん・・・なんて良い子なんでしょうか・・・」

朋「あれ、でもレッスンって3時間前に終わってなかったっけ?」

保奈美「私と巴ちゃんと亜季さん、それとクミさんでレッスンの見直ししてたんです。そしたら時間を忘れて熱中してしまいまして・・・」

雪乃「   」ドバー

保奈美「ゆ、雪乃さん・・・?」

雪乃「・・・な、なんて・・・なんて良い子なんでしょうか・・・!!!」

雪乃「Pさんがいなくても積極的にアイドルとしての研磨を忘れていない・・・素晴らしいですわ・・・」

保奈美「い、言いすぎですよ、雪乃さん」

伊吹「言いすぎだってさー」

響子「そうですよー(便乗)」

雪乃「貴方達がたるみ過ぎなのです!!!!!」

3人「ひーっ!!!!」



 ─ 女子寮・雪乃の部屋 ─


雪乃「どうしましょう・・・Pさんがお休みになってまもなく一週間ですわ」

雪乃「帰ってくるまであのメンバーを私1人で皆をまとめきるのは少々難がありますわね・・・」

雪乃「このままだとまた母乳が出るようになってしまいますわ」

雪乃「・・・うーん」


コンコン


雪乃「はい、開いてますわ」

矢口美羽「雪乃さーん、今いいですか?」


雪乃「美羽ちゃん・・・ごきげんよう、今お茶を淹れますわ」

美羽「お邪魔します!あとで柚ちゃんも来ます!」

雪乃「今日は美羽ちゃんはお泊りでしょうか?」

美羽「そうなんです!みんなで一緒に色々話そうって♪」

雪乃「ふふっ、それで私に何か用ですか?茶菓子が欲しいなら・・・」

美羽「い、いえ、私が個人的に聞きたい事があったからです!」

雪乃「?」

美羽「雪乃さんがどうやってこのプロダクションに来たのか、それを教えて欲しいんです!」

雪乃「ふむふむ」

美羽「○○プロの最初のアイドルは雪乃さんだって聞いたので雪乃さんがどうやってアイドルになったかを聞けば参考になるんじゃないかと思って・・・」

雪乃「・・・分かりましたわ。私の昔話でよければお話しますわ。柚ちゃんも同じ理由でしょうか?」

美羽「はい。柚ちゃんもアイドルとしての一歩を今か今かと待っている仲間です。雪乃さんのお話・・・良い刺激になると思います」


柚「雪乃サン、お邪魔するねー」

雪乃「ようこそ、待ってましたわ柚ちゃん」

柚「待たせてしまいましたー。あっ、マドレーヌにピョッキー!」

雪乃「柚ちゃんが好きそうなモノを用意しておきましたわ」

柚「わーい♪アタシ、雪乃サンの事だーいすき♪」

美羽「柚ちゃんは世渡り上手というか・・・なんというか・・・」

柚「雪乃サンはちゃんとアタシの事見ててくれるし。Pサンと同じくらい信用してるヨ」

美羽「口が上手いんだから」

雪乃「ふふっ♪でも気を付けてくださいね。おだて過ぎると逆効果ですわ」

柚「え゛?」

雪乃「大人になると分かりますわ。たった一言で人生が左右される恐怖がありますから・・・」

柚「Pサンもそんな感じ?」

雪乃「Pさんも失言などしないように気が滅入るまで配っているようですが」

雪乃「まぁ、そんな話はこれくらいにして・・・」

美羽「雪乃さんの昔話、ですね!」




雪乃「・・・私とPさんの出会いは、暖かい春の日でしたわ」




 ─ ◇◇女学院 ─


雪乃(私は高校、大学が一貫している女子学院に所属していました。一応、有名校ではありましたが私は平凡な女子生徒でしたわ)


「雪乃ー!はやく行こー!」

「遅れてしまいますわ。このままだと1日4000個のゴージャスプリンが売り切れてしまいますわ!!」

雪乃「はぁ・・・はぁ・・・お、お待ちください~・・・!!!」



雪乃(友人といつも良いお茶とお菓子を探し回ったり、旅行に行ったり。今でこそお嬢様アイドルと呼ばれていますが、普通の・・・普通の高校生でしたわ)

雪乃(桜が散り、木々がいよいよ緑を芽吹こうとするあの日までは・・・)

雪乃(この日は友人と人気のお菓子店へと行こうという約束の日でした。学校でも話題になる有名店で、授業が終わり次第、走って向かうという予定でした)


「雪乃ちゃん、このままだと間に合いませんわ」

「雪乃ー、追いていっちゃうよー?」

雪乃「はいーっ」


雪乃(皆さん足速すぎですわっ!どうしましょう、角を曲がって見えなくなってしまいましたわ)

雪乃(皆が先に駆けていってしまい、私は一人ぼっち。なんとか追いつこうとせっせと走っているところでした)


?「キミっ!」

雪乃「はい?」

雪乃(突如、横から声をかけられました)

?「◇◇女学院の子かな?」

雪乃「え、ええっと・・・」

雪乃(不審者!?不審者ですの!?)

雪乃(服装はジーパンにライダースジャケット。人相は大人と言い切るには皺がなく、子供というには正反対の大人びた雰囲気でした)

?「って、ああ、ごめんね。いきなり話しかけて、実は・・・」


雪乃(目の前に突如現れた不審者・・・いえ当時大学生のPさんに話しかけられました)

雪乃(女学校に通ってたが故に男性との接触は親と先生がほとんど。稀にパーティーなどで話しかけられたりしますが、初対面の男性に話しかけられたのはほぼ初めてでした)



雪乃「あわ、あわわわわわ・・・」

P「え、あ、どうしよう・・・。俺、そんなにおかしかったかな・・・」

雪乃「えっと、あの・・・」

P「ご、ごめんね!じ、じゃあ、◇◇女学院ってどこかな?出来れば教えてほしいんだk・・・うぇ、噛んだ・・・」

雪乃(自分も相手も慌てふためき、混乱する2人。私は頭の中が真っ白になってどうする事も出来ませんでした)

雪乃(そこに救い(?)の手がやってきました)

「雪乃さんっ!!!!!!!」

「雪乃─────っ!!!」

雪乃(先に行ってしまった友人がいなくなっていた私を心配して戻ってきました。友人の片方が私とPさんを見るなり、私の手を引いて思いっきり走り出しました)


雪乃「えっ、ちょっと・・・あ、走れますって!!」

「不審者に出会ったらすぐ走って逃げる、ですわ!先生にも教えてもらいましたよね!?」

雪乃「は、はい」

P「え、あ、いや・・・」

雪乃(Pさんからは私とは反対にやや怯えた声が聞こえてきました。思わず振り返ると・・・)

P「あ、ちがっ、俺は・・・話を聞いてくれ!!」

「テヤ────ッ!!!」

ゴスッ!

P「はぅ・・・!!?ぐぅ・・・!!」

雪乃(静止しようとしたPさんは為す術もなく腹に正拳突きを食らわされてました。あまりの痛さに彼は膝をついて倒れこみます)

雪乃(え、あ、あの人は・・・)

「雪乃走って!!」

「あんなの放っておいて逃げましょう!!!」

雪乃「で、でも・・・!」

P「うぐぐぐ・・・・・・、・・・?」


雪乃(仮にも若く、怪しいと言うには若干の違和感があったとはいえ、不審者であると自分に言い聞かせて私は友人に手を引かれていきました)


雪乃「これがPさんとの初めての出会いですわ」

美羽「え、そんだけ!?」

雪乃「え!?け、結構ショッキングだと思うんですけど・・・」

美羽「まぁ・・・昔のPさんも災難というかサンドバッグというか」

柚「でも意外。もっと出会った時からイチャイチャしてるもんだと」

雪乃「・・・えっと、こんな事聞くのもなんですが・・・私の事、そんなにPさん狂いに見えますか?」

美羽「はい、口開けば・・・Pさんの事を言っている気がします」

柚「雪乃サンの9割はPサン」

雪乃「・・・・・・////」ポー!

美羽「雪乃さんが煙噴いてる・・・」

柚「石炭で動いてるのカナ?」

雪乃(ちょっと・・・抑えた方がよろしいですわね。このままだと年少組に悪い影響が・・・)

雪乃(って、美玲ちゃん・・・もう影響が行ってましたわ・・・)



雪乃(次の日、友人らと顔を合わすなり、やはりあの不審者の話題となりました)



「雪乃さん!あれはどう見ても不審者でしたわ!!」

「まー、あの後夜のトイレ行きは確定だったろうね。危ない危ない」

雪乃「えっと、はい、そうですね」

「犯罪者に人権はありません!あるのは贖罪だけです!」

「どうしたの雪乃。なんだか悩んでるみたいだけど」

雪乃「あの人、道を聞いてただけだったのですが・・・(最終的には)」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

雪乃「むしろ私たちが犯罪者になってしまうのではないのでしょうか?」

「変なヤツがうろついてるのが悪い!」

「そうですわ!自己防衛ですわ!」


雪乃(この2人は後ほど教師にたんまり説教を頂くので割愛しましょう)


雪乃(この時は不審者と思われる人と出会い不安で一杯でした。また会ってしまったらどうしよう、殺されてしまうのでは?誘拐されてしまうのでは?と恐怖していました)

雪乃(でも私の裏では、初めての見知らぬ異性からのコンタクトに胸をドキマギさせて何が起こるのかを期待してた面もあります)

雪乃(そんな時でした)



[相原雪乃さん、相原雪乃さん、教員室に来てください]


雪乃「?」

「昨日のヤツじゃない?」

「っ!雪乃さん、行かなくても大丈夫ですわ!」



雪乃(この時は心臓がビクッと硬直しました。もしかして昨日の方は大事なお客様で、酷い失態を見せたから報復が来てしまったのかと心配してしまいました)

雪乃(止めようとする友人らをやさしく言葉で払い、私は教員室へと向かいました)



「相原さん、昨日落としましたね?」



雪乃(教員室に向かった私に、担任はそう言って1つの手帳を渡しました。そう、学生手帳です)

雪乃「え!?・・・あ、本当ですわ!いつもだったらカバンに入れて・・・」

「昨日、若い男性の方がアナタの落し物だ、と事務員の方に渡してくれたそうです」

雪乃(もしかしたら手を引っ張られた時に落としてしまったのかも・・・)


「名前の方は聞いてませんでしたが、大学生ぐらいの方だそうです」

雪乃「あ、はい・・・」

雪乃(出会ったあの人ですわね。もしかしたら報復行為があるかもしれませんわ。仮にも膝をつくほどの痛み、どれほどの恨みがあるかどうか・・・)

雪乃(そんな心配が私の頭の中を駆け巡りました。手帳を落としたって事は多分、名前はあちらにバレてましたから)



「雪乃さん、何もありませんでした!?」

雪乃「ええ・・・大丈夫ですわ」

「心配しすぎなんだってー」

「雪乃さんはどこか抜けてますの、いずれ強姦魔にあってもおかしくありませんわ!」

「それはありえるかもねー」

雪乃「あ・・・はは・・・」


雪乃「当時、私は皆の中では・・・そうですね、由愛ちゃんのようにマスコット扱いでした」

美羽「雪乃さんが由愛ちゃん扱い・・・」

柚「まぁ由愛チャンは庇護欲そそるって言われてるもんねー」

雪乃「由愛ちゃんを見ていると昔を思い出しますわ。何やっても誰かが付いてきますから」



成宮由愛「はくちっ」

早坂美玲「お、おい!由愛!風邪引いたんじゃないのかッ!!」

村上巴「これは早急に対処しなくてはな」

櫻井桃華「そうですわね、体は資本ですわ」

由愛「大丈夫ですよ。誰かが噂していr」

美玲「今湯たんぽ出してやるからなッ!あと体温まるスープの作り方教えてもらったんだ、飲んでくれっ!」

巴「半纏を出してきたぞ。はよ着ぃ」

桃華「エアコンで横になりやすい室温にしてきましたわ。布団に入るとよろしいですわ」

由愛「みんな・・・えへへ」


雪乃(その日、家に帰ってきた私はふとある事を考えましたわ)

雪乃「もしかしたら、この手帳に変態染みた事がされてしまっているのでは・・・?」

雪乃「下着泥棒は盗んだその下着で性的欲求を解消をする、なんて事も聞いた事があります。もしかしたらこの手帳にも・・・」

雪乃(恐る恐る手帳を開き、中身を確認しました)

ポトッ・・・。

雪乃「ひっ・・・!」

雪乃(ページとページの間から何かが落ちました。これは・・・)

雪乃「名刺とメモ帳・・・?」


雪乃(・・・『落し物です。ご確認ください』・・・)


柚「なんだかPサンらしい固苦しさだね。普通、それくらいの男の子なら色々言ってくるんじゃないの?」

雪乃「私も私の友人も最初は同じ事考えていましたわ」

美羽「“名刺”にはなんて書いてあったんですかっ!?もしかして“指名”してくださいみたいな・・・」

柚(みうさぎ・・・ちょっと高度過ぎない?それ)

雪乃「ふふっ、実はまだ持ってますの♪」

柚「わ、なにこれ」

雪乃「今までの名刺をコレクションしたモノですわ。これは仕事をする上で大切ですわ」

柚「あたしたちも名刺交換って出来るようにした方がいいの?」

雪乃「基本的には成人したメンバーはするように言われてますが、未成年組はPさんがやってくれます」

雪乃「あ、でも一方的に渡されてしまう時もあると思います。しまうケースだけでも用意した方がいいですね」

美羽「えっとメモメモ・・・」

柚「みうさぎー、そのメモ写真に撮ってみんなに送ろうよ」

美羽「そうだねっ!みんな可愛いのを買ってくるんだろうなぁ」

雪乃「ちょっと脱線しちゃいましたが、これが当時のPさんの名刺です」


──────────────────

○○○大学 文学部メディア文芸科
     P
◇◇◇‐◇◇◇◇‐◇◇◇◇
〒□□□‐□□□□
&&県%%市@@町ωω‐ω
E-mail:zStarskyAndHutch@yahaa.co.jp

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柚「かたい・・・」

美羽「なんというか、真面目の塊って感じですね・・・」

雪乃「そうですわね♪でも今も昔もそうそう変わりませんわ。ほら、メールアドレスの所・・・」

美羽「・・・えっと・・・ゼット・・・エス・・・?」

柚「ナニコレ(二度目)」

雪乃「zは分かりませんが、『スタスキー&ハッチ』という映画のタイトルを使っているそうですわ♪」

柚「あー、まぁ、Pサンって映画の話する事多いもんね」

雪乃「大学の影響とも聞きますが、元から本人が映画好きだったんでしょうね」

美羽「はー・・・今確か・・・」

雪乃「えっと、もしかして2人ともPさんのプライベートメールアドレス知ってる感じ・・・?」

美羽「はい。一応、中学生組は仲間に相談できないような事もあるかも知れないからってプライベートの連絡先を教えてもらってます」

柚「まー、あたしは3人目の義理の妹だし。持ってて普通だよネー」


雪乃「い、今すぐ教えてください!!・・・いや、Pさんに教えてもいいか、と聞いてから教えてください!!!」

柚(うぉぅ、すごい形相・・・)

雪乃「せ、せめて・・・!せめて!どんなメールアドレスだけ教えてください!!」

美羽「えっと、確か・・・『HoleAndYukinoQueen』だったはずです」

柚「アナと雪の女王・・・じゃなくて穴と雪乃女王・・・」

美羽「やっぱりPさんと雪乃さんって結ばれてるんですかね」

雪乃「・・・・・・////」ボンッ

柚「あちゃー、雪乃さんにカウンターヒット」

美羽「って、わわわわ!ゴメンなさい・・・って柚ちゃんも一緒に謝って!」

柚「え、あや・・・まぁ、すみませんでした・・・何について謝ったの?」

美羽「あれ?なんだっけ?」

雪乃「いえ、気にしなくても大丈夫ですわ・・・////」

雪乃(さ、最近の朋ちゃんや音葉ちゃんに毒されてるせいで、穴という言葉が私についてるのが性欲をぶつけられているように見えて仕方ないですわ・・・)



雪乃(コホン、話を戻しましょう)


雪乃(私はPさんに対して友人が起こしてしまった暴行のお詫びと手帳を拾ってくれたお礼がしたくて、この名刺にあるメールアドレスに連絡する事にしました)



雪乃『P様、相原雪乃と申します。先日は私の友人がご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。そして私の手帳を拾って頂きありがとうございます』

雪乃『個人情報の塊であったため、貴方のような誠実な方に拾ってもらえなければ大変な事になってたと思います。つきましては改めてお詫びとお礼がしたいと思っています。私に出来る事であれば、なんでもおっしゃってください。可能な限りお力になります。(以下署名)』


雪乃(・・・メールはなかなか帰ってきませんでした。もしかしてメールアドレスを間違えたのでは?と心配になりましたが一週間ほどして返事が届きました)



P『相原雪乃様 初めまして、Pと申します。先日はお騒がせしました、もっといい会い方があったのではないかと自分の中で反省している所存でございます。相原様には1つ、私から頼みたい事が一点あります。それを相談したいという事もあり、後日お茶でもどうでしょうか?お返事待ってます。(以下署名)』



雪乃(返ってきたメールだけで私は飛び跳ねるように喜んでしまいました。まるで告白メールが成功するかのように)

雪乃(私は当然のように了承のメールを送り返しました。これからどんな事が起こるんだろう、私の頭の中では夢物語が広がってました)

雪乃(後ほど、Pさんに説教喰らうんですが)



 ─ カフェ ─


雪乃(約束の日。私はお気に入りの服とヒールを履いて場所へと向かいました)

雪乃(正直、力を入れすぎたと今でも思ってます)

P「改めて初めまして相原さん。Pと申します」

雪乃「は、はい!初めまして・・・相原です・・・」

雪乃(Pさんが集合場所に選んだのはお洒落なカフェでした。しっとりとした雰囲気に柑橘系の紅茶が似合いそうな所です)

P「はははっ、そんなに肩を縮こまらせないで♪何もしないって」

雪乃「はい・・・」

雪乃(男の『何もしない』というのは嘘。少しでも意識を許してしまうと狼になって襲ってくる・・・そう教えられた私は少々オドオドしてました)

雪乃(でも、半分・・・何かを期待していました。彼氏が出来るとか・・・そういう事を。レイプから始まる恋も聞き覚えがあります、だから、ちょっとだけ・・・)


P「あ、でも『何でもする!』っての男に返しちゃダメだよ。男は性欲に忠実な人多いから」


雪乃「え、あ、ごめんなさいですわ・・・」

P「ははっ、ちょっとした説教だよ。だから次から気をつければいいんだ。気を病まないでね?」

雪乃「はい・・・」


雪乃「私はここで物凄く肩透かしを喰らってしまいましたわ。誠実通り越して堅物でしたからね」

美羽(Pさんだ・・・)

柚(すっごいPサンだ・・・)

雪乃「本当に今も昔も変わりませんわね」

雪乃「私の立場も、あの人の立場も今も変わってませんわ・・・」


P「さてと、聞きたい事がいくつかあるんだ。まずは・・・そうだな、あそこの学園楽しい?」

雪乃「はい、あの女学校は他と比べて自由度が高く、生徒間で旅行など行く場合は場所によっては支援をしてくれたりします」

P「学校が支援してくれるの!?へぇ、例えば・・・イギリスとか?」

雪乃「はい。イギリスやアメリカはもちろん、我が校で一番人気の高いのはオランダでしょうか」

P「オランダ、ねぇ」

雪乃「先生の中にオランダ出身のハーフの方がいるんです。この先生が人気で町の歩き方や必要な言葉を教えてくれる関係で人気とも言えます」

P「はははっ、なるほどなー!確かに人脈があるかないかで大きいもんなぁ」

P「相原さんはどこか行きたい所ある?」

雪乃「私はそうですわね、デンマークの方に行ってみたいとは思ってます」

P「デンマーク?参ったなぁ、デンマークの事はまったく知らないよ」

雪乃「ふふっ、知らないから行ってみたいというのもありますよ?」

P「それもそっか・・・ははっ」


雪乃(何気ない談話がこの後10分ほど繰り返されました。授業のこと、子供の頃の事とか・・・)

雪乃(ですが、そんな時間もすぐに終わってしまいます)


P「って、このまま脱線し続けるとダメか・・・」

雪乃「え、脱線?」

P「単刀直入に話そう。相原さんの知ってる人の中に美人の女性はいる?」



美羽「って、あれ?」

柚「もしかして最初は雪乃サン狙いじゃなかったの?」

雪乃「そうですわ。Pさんは社長の教えで芋づる式に美人を探すつもりだったそうです。美人の友人は美人、みたいに」

美羽「芋づる式・・・」

柚「それならPサンも雪乃サンの事、美人だと思ってたんじゃない?」

雪乃「そうだと良いのですが・・・聞いた事なかったですわ」


雪乃「え、え、え・・・」

P「えっと、ね・・・改めて名刺あげるね」


──────────────

○○プロダクション
     プロデューサー代理
     P
◇◇◇‐◇◇◇◇‐◇◇◇◇
E-mail:MaruMaru@Prodaction

──────────────



P「私はプロデューサーの卵なんです。今は・・・アルバイト扱いですが」

雪乃「アイドル・・・」

P「はい!まだ会社は建ててないですが、書類上はちゃんとした企業です」

P「と言ってもアイドルはまだ1人もいないんですよね。あっ、社長はある有名芸能事務所の元幹部ですよ!だから技量も運営も出来る方です」

雪乃「・・・つまり、アイドルになれそうな子は知らないか、という事ですか?」

P「はははっ、そうなりますね」

雪乃「・・・・・・ちょっと思い出します」

P「はい、お待ちしています」

雪乃(アイドルか、アイドルなんて、テレビのCMでしか見たことない・・・だからこの時は悩みました。誰を紹介するべきか)

雪乃(協力すると言った以上はなるべく答えていきたい、ですが下手に合わない人やアイドルが嫌いな人を教えるわけにいけません)

雪乃(どうしたら、そう考えてた時でした)


P「・・・・・・」ワクワク

雪乃「・・・・・・」


雪乃(Pさんは子供のように手いたずらしたり、辺りをキョロキョロしたり、忙しない感じでした)

雪乃(あとで聞くと、ずっとスカウトに失敗していたから、協力者が現れて初めて上手くいきそうで緊張してたそうですわ)

雪乃(ですが・・・私はこの姿を見て、ふと考えてしまいました)






雪乃(・・・私ではダメなのでしょうか)






雪乃(私はブサイクなのか)

雪乃(私に魅力はないか)

雪乃(アイドルとしては不十分なのか)

雪乃(普段、周りには誰かがいた私でした)

雪乃(何か疑問になれば疑問に答えてくれる人がいて、意見を言えば批評をしてくれる人がいた・・・)

雪乃(でも今は、誰も何も答えてくれません)

雪乃(相手はただ私に聞いてるだけで、私には何も返さない、何も残らない)

雪乃(初めて、自分が認められてないと感じた時でした)


雪乃(・・・考えれば考えるほどこの人をギャフンと言わせたくなりました)

雪乃(別に自分が絶対美人だとか、ナルシストだとかいう意味ではありません。でも・・・)

雪乃(自分の中に残る幼さが、負けず嫌いな自分が小さく反逆したがっている、そんな瞬間でした)




雪乃「・・・Pさん」

P「はい、なんでしょう?」

雪乃「興味あるという方はいます」

P「本当ですか!?ぜ、是非教えてください!!」

雪乃「・・・です」

P「?」

雪乃「私です・・・」

P「え、アナタは・・・」

雪乃「私では・・・ダメなんでしょうか」

P「え、えっとぉ・・・!」

雪乃「ダメなんでしょうか?」

P「え、えーっと・・・」

雪乃「・・・・・・」ジー


P「・・・・・・ご、ゴホン!」

雪乃(軽い咳払いで誤魔化されてしまいました)

P「相原さん、アイドル業界というのは物凄く圧力の強い業界です。下手な事をすれば一瞬で淘汰されてしまいます」

P「・・・それでもやりたいですか?」

雪乃「・・・・・・はい」

P「アナタのご友人からは必然的に離れる事になります。それでもよろしいですか?」

雪乃「・・・はい」

P「これからのアナタの運命を棒に振るかもしれません。貴重な学生生活をドブに捨てるような事になるかもしれません」



P「それでも・・・私に委ねてくれますか?」



雪乃「はい」


雪乃「私は子供がワガママを言うように反射的に即答してしまいました。これが・・・私のアイドルとしての第一歩でした」


美羽「・・・・・・」

柚「・・・・・・」


雪乃「・・・と、参考になりましたか?」

美羽「え、えっとぉ・・・」

柚「また言うけど、意外」

雪乃「そうですかね」

柚「あたしやクミちゃんさんみたいに生活のためー、とかみうさぎや肇サンみたいにアイドルに対する憧れーって感じじゃないんだね」

雪乃「そうですわね。ふふっ、今も昔もPさんに認めて欲しかった、それだけかもしれませんわね」

雪乃「でも、本質は変わっていますわ。前はただただアイドルに合っているかどうかを言ってほしかった、今はPさんに女として認められたい」

柚「ふーん」

美羽「その願い、叶っていますか?」


雪乃「・・・・・・」


柚「あ~、みうさぎやらかした~」

美羽「い、いや別に皮肉とかそういうつもりで言ったわけじゃ・・・!!」

雪乃「ふふっ、分かっていますわ。アイドルとして、上手くいってるかどうか見極めたいのでしょう?」

美羽「まー・・・大体そんな感じです」

雪乃「私は・・・貪欲です」

雪乃「おそらくファンの人が増えても増えても、まだ足りないと言い続けるかもしれません」

雪乃「“誰か”が認めてくれない限り、ずっとステージの上で戦い続けると思いますわ」

柚「・・・Pサンが認めたら、アイドルを辞める?」

雪乃「さて、どうでしょう」

雪乃「いずれ辞める日が来るのですし、アイドル相原雪乃の次は女優相原雪乃になるかもしれません。無職になるかもしれません」

雪乃「明日、何が起こるかなんて分かりませんし、あっという間に年を越えます」

雪乃「だから、アナタたちも今の一瞬を大事にしてください。いいですね?」

柚「は~い」

美羽「はいっ!」


雪乃「では、次にアイドルになって初めてのトレーニングの時について話しましょうか」

柚「え、まだあるの?」

雪乃「ふふっ、あの時は目で見えたものがすべて新鮮でしたからね。今でも全部言えるつもりですわ」

柚「で、でもさー時間見てよー」

美羽「23時・・・」

雪乃「では、せっかくですし皆さん連れてきてください♪夜通しでお菓子パーティーと行きますわ♪」


2人「ひーっ!!!!」



次の日・・・。




 ─ ○○プロ・事務室 ─



雪乃「ふぁ・・・、ちょっと話しすぎたかもしれませんわね・・・」

伊吹「今日が全員集まってのレッスン日じゃなかったらヤバかった」

柚「・・・まだ眠いぃ~」

美羽「私もー・・・」

雪乃「ごめんなさいね、柚ちゃん、美羽ちゃん」

柚「美味しい栗金団食べれたからもーまんたい」

雪乃(あの栗金団は誰が持ってきたのでしょうか?肇ちゃん・・・でしょうか)





「・・・空中お掃除、・・・星空布団、・・・へこたれない発案者、あーさっぱり分からん!」




雪乃(何か聞こえますね。あれ、この声・・・)

柚「あれ、Pサン帰ってる?」

伊吹「ホントだっ!!Pー!!待ってたよー!!」


P「おう、ただいま」


柚「どこ行ってたのー、お土産あるよね?」

P「冷蔵庫に入れてある。あとでみんなで食べてくれ」

柚「えっへへー、だよねだよねPサンだいすきー♪」

伊吹「ほらほら、そんな事言ってると音葉とかに連れ去られちゃうよ」

柚「えー、大丈夫だってー」

伊吹「ホントかなー?ねー、雪乃さん」

雪乃「ほへっ!?え、えっと・・・分かりませんわ」

P「んなことより、今日は皆レッスンだろう?早く行きなさい」

柚「はーい。みうさぎいくよー」

美羽「ま、待ってー!」

伊吹「雪乃さん、先行ってるよー」

雪乃「ああ、3人とも・・・」


雪乃「・・・・・・」

P「・・・・・・」

雪乃(ふと、目が合いました)

雪乃(突如来た沈黙が息苦しいとは思いません。ですが、ジーという蛍光灯の音、2人きりの事務室、早朝の特徴でもある明るさと暗さ・・・)

雪乃(それらが合わさって僅かに感じるどんよりが、Pさんにどう言葉をかければいいのか分かりません)

雪乃「Pさん・・・」

雪乃(私は誤魔化すように小さく、彼の名前を呼びました)

P「・・・・・・もう大丈夫だよ」

雪乃「え?」

雪乃(・・・目を伏せて、彼は小さく胸を張りました)

P「大丈夫。もう死ぬなんて事、言わないから」

雪乃「・・・・・・」

雪乃(もう心配させまい、そんな意思が伝わってきました。私は“殺して”なんて呟いた時より前からずっとアナタの事を心配してきたつもりですわ)

P「・・・・・・」

雪乃「・・・・・・Pさん」

P「なんですか?」

雪乃(でも、そんな彼を試してみたくなったのは、私がまだ幼いからでしょうか)







雪乃「私では、ダメでしょうか?」






雪乃(色んなニュアンスを含めて、私はこの言の葉を贈りました)

雪乃(あの時の言葉をもう一度、贈りました)



雪乃(あの時、あの後に本当はなんて言おうとしたのか)

雪乃(今のアナタを思うイメージ像に、アイドルになれているか見て欲しいから)

雪乃(皆の先輩としてしっかり行動出来ているか調べてほしいから)

雪乃(アナタの女性として相応しいかどうかが知りたいから)


雪乃(どれでもいい、とにかく返事が欲しい)

雪乃(あれもこれもと湧き出る想いは、私が構ってちゃんなだけかもしれません)



P「ッ・・・・・・」

雪乃(私はじっと見つめました)

P「・・・・・・」

雪乃(Pさんも気付いています。この反応はあの時の言葉を覚えています)

P「・・・雪乃さん」

雪乃(彼は重たい口をゆっくりと開いて、静かに深呼吸してから私に言葉を投げかけてきました)

雪乃「はい」



P「・・・俺は、情けない男です」


P「こんなにまでたくさんの子に慕われてて、答えを出せない。環境や立場、性格、色んなモノに取り囲まれ取捨選択すら満足に出来ない」


P「でも、ある2つの事だけは満足に言えます」


雪乃「2つ?」


P「1つは俺は俺の大好きな人たちを輝かせる仕事に就けてるんだって事」


雪乃「はい」


P「もう1つは・・・あの時、アイドル相原雪乃のプロデューサーになれて良かったって事です」


P「もしかしたらもっと良い素材と出会えたかもしれないし、悪い素材と巡りあったのかもしれません」


P「でも、今の俺には、アナタが最高のアイドルです」


雪乃「・・・・・・」


P「・・・・・・」


雪乃「・・・ふふっ♪」ギュッ

雪乃(急に胸の奥が温かくなって、私はスッと彼の腰に手を回しました)

P「こ、こら雪乃さん、いきなり抱きついたら・・・」

雪乃「Pさんはズルいですわ♪」

P「ず、ズルい!?ってかいろいろ当たってますよ////」

雪乃「なら満足行くまで体感してくださいな♪」

P「もう満足です!耳が熱くなってるからっ!ってかブラしてないのっ!?////」

雪乃「あっ////すみません、今朝は急いでたもので・・・」

P「Oh,No!!」

雪乃(首と耳を真っ赤にした彼を惜しむように手を離しました。正直、もっとしていたかったのですが)


雪乃「Pさん」

P「はい?」

雪乃「・・・また数年後、同じ質問をしますわ」


雪乃「その時は、どんな答えが返ってくるか・・・楽しみにしてますわ」



P「ははっ・・・k」

雪乃「光陰矢の如し」

P「あう、セリフ取られた」

雪乃「時間なんてあっという間に過ぎます、だから・・・」






雪乃「“お返事”、ちゃんと用意しておいてくださいね」





終わり

以上です。今回はここまでです。
読んでくれた方はありがとうございます。

「光陰矢の如し(こういんやのごとし)」とは時間が経つのはあっという間という意味です。

さて、次回は

・五十嵐響子「砂糖食いの若死」

となります。

おまけはおまけは前回の続き、ちょっと独自の解釈があるので気に入らないって設定があるかもしれません。

ではまた。



前回のおまけの続き。



 ─ 砂浜 ─


P(手に取った手帳には・・・おそらく救助したであろう女性の名前が書いてあった)

P(しかし救急隊が自らの使命を果たすため全速力で彼女を根城へ連れて行ってしまっていたため、戻す事はできなかった)

P(となると・・・)

P「俺が手渡しするしかないな」

浅利七海「そうれすね~・・・あ、プロデューサー!あれも・・・」

P(俺と共に行動していた少女、浅利七海はある一角を指した)

P「あれは・・・帽子か?」

P(確かに飛び込んだ女性は帽子を被っていた。どんな帽子かは確認しきれなかったが、多分あの波に揺られているあの帽子がそうだろう)

P「分かった、拾ってくる」




・ ・ ・ ・ ・ 。



 ─ 食堂 ─


P「うぅ、さみぃ・・・はっくしゅんっ!!」

七海「落ち着いたら冷えちゃったれす」

P「そうだな・・・すぐに戻ろう」

P(七海ちゃんはずっと日の暮れた海の風に当たり、すっかり冷え込んでしまってたようだ。俺は海水を浴びたのでもってのほかだ)

P「これどうしようか」

P(拾った帽子はツバがとても広いキャペリンハットであった。海水浴びてげんなりしてしまっている)

七海「ちゃんと渡してあげるのが一番だと思いますのー♪」

P「んと、近くにクリーニングのお店あったかな?」

七海「遠くにいかないとないれす」

P「むぅ・・・となると明日遠出するか・・・」

七海「そうれすね~七海も付いて行っていいれすか?」

P「ん(了承)俺は土地勘ないから、案内してくれると助かるよ」


七海「えへえへ♪七海に任せてほしいのれす。それじゃあ七海はお風呂入れてくるれす」

P「・・・お願いね」

P(七海ちゃんは俺がお婆さんの家で泊まってほしいみたいだな・・・、懐かれたというかなんというか。でもまぁ今回はお邪魔するとしよう)

P(変な事に巻き込まれてしまったし、下手に1人で行動するのはよくないだろうしね)


P「それよりも・・・うーむ」


P(手元にある手帳を見ると一瞬であの女性が何故飛び込むような事をしたのか、そこまで追い込まれていたのか、それとも夢遊病みたいなやつなのか)

P(そんな考察が頭の中を駆け巡る。すでに俺の意思はあの女性をどうにかしたい、何かできないことはないかとエンジンがついていた)


P「・・・今は目覚めるのを待とう。この手帳があの女性のモノだと決め付けるのもまだ早いし、別人の可能性がある」






P「あ、着替えが無い・・・」





・ ・ ・ ・ ・ 。



P(服に関しては七海ちゃんのお婆さんのお店にずっといたおじさんらが家の余ったのをやると持ってきてくれた)

P(サイズがバラバラだが、無いよりはずっとマシ。感謝しよう)

「あー、でもこの服じゃ5歳ぐらい老けて見えるな、はっはっはっ!!!」

P(・・・・・・感謝しよう)

七海「今お風呂を沸かしてるれす!ご飯食べたらすぐれす!」

P「そっか、ありがとね」

P(シャワーだけでも浴びるのは・・・ダメだったんだろうかと疑問に思うが考えないでおこう)


P(夕食はお婆さんの手料理を頂いた。お婆さんが言うには『落ち着くまで居ていい。代わりにその間、七海ちゃんの面倒を見ろ』との事だ)

P(良くも悪くも女の子といることは慣れている。その扱いには自信ないけど)


七海「プロデューサーは都会っ子なのれすか?」

P「んー、そうだなぁ・・・都会に住むけど、いろんな所に首を突っ込んでるってのが正しいかな」

七海「???」

P「この女の子知ってる?」

七海「・・・分からないれすよ」

P「まぁ当然か。この子はウチで育ててアイドルとして活躍してる子でね、大和亜季って言うんだ」

七海「すごく強そうな名前れすね」

P「ははは、実際いろいろ強いよ!銃を持たせたらピカイチなんだから」

七海「自衛隊の人なんれすか?」

P「あ・・・自衛隊・・・」

七海「?」

P「いや、ごめんね。自衛隊のイベントとかにこの亜季ちゃんを使えないかなーって模索しちゃったよ」

P「とりあえず、銃のおもちゃで遊ぶ事が好きな子なんだ」

七海「ほー」

P「この子に付いて行って一緒にサバゲーって遊ぶ事があるんだ」

七海「サバれすか!サバなのれすか!!」

P「鯖じゃないよ!サバイバルの方だよ!!」



P(何気ない談義が続いた。七海ちゃんはアイドルという仕事に興味があるようだった)

P(自分の好きな事を使って、自分を輝かせる)

P(アイドルという言葉を知っていても、そのアイドルという意味を知らずにいた・・・そんな感じだった)



七海「七海もアイドルやってみたいれす」



P(そうは言うものの、釣りや魚を推すだけなら○○プロには肇ちゃんがいる。これからいろいろとアイドルとしてやっていく上で彼女が希望している事だ。その二番煎じをやった所でこの七海ちゃんが勝てる要素は薄い)

P(ライバルと属性が被るならともかく、味方同士で潰しあうのもあまり、ね)


「お風呂沸いたよ。もう遅いから2人一緒に入ってくれ」

七海「はーい」

P「はー・・・は?」

「・・・変な気起こしても何も聞こえんよ。どーせこの辺りは閑散としてんよ」

七海「?」

P(お婆さんは俺の耳元で確かにそう言った。つまり、ヤれと。いやいや中学生の体に欲情する俺じゃ・・・いや、美玲ですでにやらかしてるな、俺は・・・)



 ─ 風呂場 ─


P(お婆さんが1人暮らししてるのもあって、風呂場は一応バリアフリーに改造されてあって広さもあった・・・が)

七海「2人はちょっと狭いれすね~」

P「・・・ごもっとも」


P(しかもタオルが少ないときた。まぁ、仮にもご老人が1人暮らししてる家だ。そこまで必要ないとはいえ・・・)

P(俺も七海ちゃんもほぼ丸出しなんだよなぁ・・・)

七海「プロデューサー、背中洗ってあげましゅ~♪」

P「ん、ああ、ありがとう」

七海「・・・プロデューサーの背中って大きいれすね」

P「キミのお父さんには勝てないだろう」

七海「父さまもすごいれす。傷だらけれすよ」

七海「でもどっちも暖かいれす」

P「・・・ほー」

P(心臓の辺りがポカポカしたのと同時に背中が痒くなる)

P(この子は本当に言葉に含んだ想いをそのままぶつけるのが得意というかクセなんだな)


P「んー気持ちいい。背中って自分じゃ見えないからね」

七海「父さまにも褒められた秘伝の技れすよー。背中の垢を鱗を落とすように・・・」

P「そう聞くと痛みを感じてきた」

七海「そうれすか~?」

P「俺の鱗が落ちるのか・・・あ゛~考えたら怖気が!」

七海「大丈夫れすよ、生え変わります」

P「そういうもんなのかな・・・よし、やられてばかりじゃダメだし、俺も七海ちゃんの背中を洗ってあげよう」

七海「わーい♪」




P(アカン)


七海「どうしたんれすか?」

P「い、いや・・・なんでもない」

P(なるべく彼女を見ないようにしていたが、彼女の肩越しに鏡でガッツリと丸見えになってしまった。その・・・アレとコレとか)

P(俺はロリコンだったのか?と疑問が湧くが、美玲とのキスを思い出すとその気もあるな、とヘコむ)

七海「まだれすか~?」

P「すまんすまん」

P(こうなったら目だ。彼女の目を見てよう・・・)

P「・・・・・・」ジー

七海「そんなに見つめられたら困るれすよ~////」

P(・・・違うアカンを引いたようだった)





P(あの救助した女性が目を覚ました、という連絡が来たのは今から4日後の事である)

P(さすがに4日も連続だといけない気分よりも平常心が上回ったが、結局七海ちゃんとは毎日一緒に風呂に入らされた事も付け加えておく・・・)



 ─ 病院 ─


P「あー・・・体固くなりそう」

七海「ずっと車運転してましたしね」

P「1時間もかかると途中で休憩挟みたくなるものだよ」

七海「喉乾いてませんか~お水買ってきましゅ~?」

P「それじゃあお願いね」

七海「了解れす~」



P(そして今日はあの女性に荷物を返すために病院にやってきたのであった)

P(安全に安全を重ねた運転をしたために来るのに1時間もかかってしまった。腰が痛い)



P「帽子も全力でクリーニングしてもらった!手帳も忘れてない!よし!」

P(七海ちゃんが到着次第、一息入れて、瀬名さんの所へ行こう)




 ─ 病院・病室 ─



P(ここが瀬名さんの部屋。相部屋になった人は・・・誰かいるみたいだけど、今はいないみたい)

七海「プロデューサー、あの人・・・起きてますれす」

P「お、本当だ」

P(・・・ぼんやりと、壁を見つめている女性の姿があった。少し痩せこけている・・・悪い痩せ方ってやつだ)


コンコン。


P(俺は開きっぱなしの扉を叩き、『失礼します』と一言かけて部屋へと入った)

P「?」

P(瀬名さんは気付かず、まだ壁を見つめる)

P「・・・瀬名さん?」


瀬名詩織「・・・え?」


P「瀬名さんでいいんだよね?」

詩織「誰・・・!?誰ですか・・・!?」

P「えっと・・・こないだキミを・・・」

詩織「・・・っ!!」


P(彼女は急に慌て始めた。この慌てようは俺のセリフのせいじゃない、何か忘れていた事を急激に思い出したパターンだ)


詩織「・・・帽子!帽子は・・・!!!」

P「あ、これ、海に流されちゃったぼ・・・」

詩織「ッ!!!」

P「おわっ」


P(彼女は俺の手元にあった帽子を奪い取るように取り上げ、深く被った)


七海「大丈夫れすか?」

P「ああ、ちょっとビックリしただけだよ」

P(怒っちゃダメだ怒っちゃ・・・。見ず知らずの人間が急にずけずけと自分の領域に入ってきたら不安になるのも当然)

P「瀬名さん、でいいんだよね?」


詩織[首を縦に振る]


P「よかった、拾った手帳が別人のだったらどうしようと思ってたんだ。手帳、ここに置いておきますね」

詩織「・・・・・・」


P「でも何故、飛び込んだのですか?」

詩織「・・・・・・」

P「もちろん今日は荷物を渡しに来たのもありますが、私はそれが気になって・・・」

詩織「・・・・・・の?」

P「え?」

詩織「・・・なぜ、死なせてくれなかったの・・・?」

P「私は誰かのために動くのが好きだからです。見殺しにする趣味はない」

詩織「なんで見殺しにしてくれなかったの・・・?」

P「・・・私にはできない」

詩織「・・・イヤよ・・・もうイヤ」

P「なんで?」

詩織「貴方の顔なんて見たくない」

P「・・・」

詩織「消えて・・・、二度とこないで」

P「そうも行きません」

詩織「嫌、放っておいて・・・」

P「泣いているじゃないですか。私はそういう人を放っておけません」

詩織「嫌・・・嫌・・・」

P「無理に、とは言いません。ですが、私は関わった人たちを皆笑った顔にしてあげたいとは・・・」




詩織「顔なんて・・・分からないのよ!!!!!!!」




P「ッ!?」


P(ま、まさか・・・この子・・・)

詩織「嫌ッ・・・!イヤッ・・・!!!!!」

七海「プロデューサー・・・」

「どうしたんですかっ!!」

P「ナースさん・・・」

「何をしたんですか、彼女に!!」

P「すみません、私が少し無理強いをしてしまい、彼女を混乱させてしまいました。今日のところは帰ります」





P(俺たちは尻尾を巻くように、病院を後にした)





 ─ 食堂 ─


P「うーむ・・・」

七海「プロデューサー、どうするのれす?」

P「難しい」

七海「?」

P「俺はあの瀬名さんは鬱だと思ったんだ。だから原因を知って、先回りするように解決して、あとはカウンセリングを受けてもらおうかと考えていたんだ」

七海「思ったけろ?」

P「でもあの様子じゃ鬱じゃない。いや、鬱は少し入ってるかもしれないけど、もっとそれ以上に彼女を混乱させているものがある」

七海「?」

P「七海ちゃん、相貌失認って聞いた事あるか?」

七海「ないれす」

P「有名な人だと映画俳優のブラッド・ピットだな。とにかく、人の顔は見えるけど、それが人の顔だと判らないんだ」

七海「???」


P「あー・・・どうしよう、そうだな・・・人の顔ってさ、いろいろあるけど、どれも顔ってわかるじゃん?」

七海「そうれすね」

P「目が2つ、鼻が1つに鼻の穴が2つ、口1つ、眉2つに輪郭で囲って顔が出来てる。まぁ他にもパーツあるけど、その組み合わせが判らないんだ」

七海「顔の組み合わせが判らない・・・」

P「相貌失認は見えるが故に他のもので補って生活ができてしまうからね。例えば服や髪型、体型で把握してしまう」

P「でもこれは全人口の2%・・・数百人に1人はいるというごく身近な症状なんだ」

P「あの調子だと最近、自分が相貌失認だと気付いてしまったんだろうな」



P(そしてあの大きな帽子は人の顔を見ないようにするためか・・・)



七海「混乱してるんれす?」

P「そうだな。そうであって欲しい。じゃないと、俺は助けるのを諦めるしかない」

七海「・・・・・・」

P「自己満足だって言われてもしょうがないけどさ、むず痒い思いしたくないし、させたくない」

P「今日は失敗だった。嫌々言われてちょっとムっと来ちゃった。でも、今度は彼女の立場に立つんだ」

七海「・・・大丈夫れすよ。七海が付いてます」

P「ありがとう、ちょっとだけ日を置いてまた行こう」



それから3日後・・・。




 ─ 病院・病室 ─




P「部屋の隅で座っててくれ」

七海「はいれす」



P「やぁ、瀬名さん」

詩織「誰・・・ですか?」

P(やはり、顔が分からないのか・・・)

P「キミを助けてしまった人」

詩織「・・・ッ!!!こないで!!こないで!!!」

P「嫌だね。今日の私は・・・ううん、俺は頑固だよ」

詩織「いやっ・・・いやっ!!」

P「落ち着いてくれ。俺は話したいだけだ。満足したら帰る」


詩織「・・・・・・」

P「そうそう、落ちついて話してくれればすぐ終わる」

P「ねぇ、瀬名さん。なんで海に飛び込んだんだい?」

詩織「死にたいからよ・・・!自殺しようと・・・」

P「ならキミの大学の方がオススメだよ」

詩織「!?」

P「調べさせてもらったよ。△△海洋大学・・・いいところだね、立地もいいし、比較的新しくて、しかも7階建てだ」

詩織「・・・・・・」

P「屋上は開いてないけど、7階に大きな窓があるトイレがあったんだ。真下はレンガ、あそこから飛び降りた方がより効果的、確実に死ねると思うけど」

詩織「・・・・・・」

P「海にした理由、教えてくれるかな?」

詩織「・・・・・・」

P「・・・・・・」



P(10分ほど粘って・・・彼女はようやく口を開いた)


詩織「・・・海が好きだからよ・・・私の故郷・・・」

P「ほう・・・」

詩織「・・・・・・」

P「海に帰りたかった?」


詩織[首を縦に振る]


P「そっか。ふふっ、ロマンチックだね」

詩織「・・・え?」

P「いいじゃないか、女は舟なんて言うし、昔の映画でも『俺の骨は海にでも蒔いてくれ』なんて言うしね」

詩織「・・・・・・」

P「海はなんで好きになったの?」

詩織「生まれてずっと海と生きてきた・・・」

詩織「私がこんなになっても・・・海は離れなかった・・・」

詩織「・・・・・・私を癒してくれたのは海だけだった」


P「・・・・・・」

詩織「・・・ずっと、ずっと変わり続ける水面が、泣いている私を摩ってくれた・・・」

詩織「波の音が・・・潮の匂いが・・・私の唯一の救いだった」

P「そっか・・・だからか・・・」

詩織「・・・・・・?」

P「キミは・・・相貌失認なんだろう?」

詩織「!?・・・どうしてそれを・・・」

P「自分で言ってくれたじゃないか。『顔なんてわからない』って」

詩織「・・・・・・」

P「今のを聞いて納得しちゃったよ。なんで飛び込んだのかさ」

詩織「え?」

P「また行こうよ、キミの好きな海に」

P「・・・そこにいる七海って子はお魚好きでよく海に行くんだ。俺たち2人に海のいい所教えて欲しいな」

詩織「・・・え・・・あ・・・」

P「自殺するならその後でもいいじゃない。俺が見届けてやるよ」

詩織「・・・・・・わ、私は・・・」

P「俺に教えてくれ、キミの好きな事をさ」

詩織「う、う、ううぅ・・・」

P「?」

詩織「殺して・・・殺してぇ・・・」


P『殺して・・・殺して・・・』


P「っ・・・」


七海「プロデューサー・・・」

P(これを・・・俺は皆に見せたのか・・・)

詩織「死なせて・・・死なせて・・・!!」

P(ダメだろ・・・“家族”や“仲間”が見たらさ・・・!)

P「死ぬならっ!!!」

詩織「っ!?」

P「・・・俺を殺してからにしてくれ」

詩織「・・・・・・え?」

P「気にしないで。俺も一週間前まで自殺しようとしてたんだ」

詩織「え、え、え・・・?」

P「どうせ死ぬんだから、人一人殺しても変わらないでしょ?」

詩織「そ、そんな・・・」

P「ふふっ、ほらほら。キミの細くて綺麗な指で死ねるなら役得さ」

詩織「え、あっ・・・!」


P(俺は彼女の両手を取り、自らの首に触れさせた)

詩織「・・・!!」

P「力を入れて、せーの!」

詩織「え、あっ・・・あの・・・」

P「1、2の、3っ!」

詩織「・・・で」

P「・・・あの世でも仕事できるかな」

詩織「で・・・」

P「ふふっ。まだかなー?」




詩織「・・・出来ません・・・」




P「・・・・・・優しいんだな、瀬名さんは」


詩織「私は・・・私には・・・出来ません・・・」

P「瀬名さん」

詩織「?」

P「俺の首、しっかり触ってみてよ。優しくでいいからさ」

詩織「・・・あっ」

P「ドクンドクンって波打ってるの判るでしょ」

詩織「・・・・・・」

P「・・・俺もキミの首、触っていいかな?」

詩織[首を縦に振る]

P「ほー・・・ふふっ、あったかくて優しい。俺と同じように波打ってる」

詩織「あ・・・・・・」

P「俺と同じところあるじゃない」

詩織「・・・・・・」

P「相貌失認?俺と喋るのに何か問題あるの?」

P「ほんの少しの違いなんて、俺は大好物だね」

詩織「大好物・・・?」

P「ああ、ちょっと人と違うところがあれば、それは最高の人間さ」


詩織「・・・・・・」

P「俺は女性アイドルのプロデューサーをやってるんだ」

P「女の子を育てて、誰よりも人気を取りにいく仕事さ」

P「今、この業界は大混戦でね、同じような子がいっぱい現れちゃってるんだ。だから、違うところがある子はバンバンザイってことさ」

詩織「アイドル・・・」

P「・・・ああ、女の子が皆憧れる職業だ」

詩織「・・・私も幼い頃・・・テレビで“聞いて”、憧れました・・・」

P「そっか・・・アイドルはいつの時代だって力を持ってるからな」

詩織「・・・・・・」

P「アイドルは・・・選ばれた人間しかなれないわけじゃない。人を魅了するのがアイドルさ」

詩織「・・・私はそんな力・・・」

P「いいや、俺は魅了されたぞ?」

詩織「そんな嘘・・・!」

P「嘘じゃない。キミの海の話を聞いて興味が湧いた」

詩織「・・・・・・」

P「ウチのアイドルに海って名前が付くぐらい、ウィンドサーフィンが好きなやつがいてな、そいつから教えてもらって、俺もそこそこ海に詳しいつもりだ」

P「そんな俺が興味が湧いたって事は相当なんだぞ~?」

詩織「私にそんな・・・」




P「教えてくれ。キミの大好きなものを」



P(彼女は2分ほど黙った後、口を開いた)

P(俺は七海ちゃんを膝の上に座らせ、二人で彼女の発表を聞いた)

P(自分の好きな事を日が暮れるまで話してくれた。波の音、海鳥の声、太陽が沈む瞬間・・・自分を励ましてくれた事象を彼女は詩を歌うように呟いた)

P(自分の地元である沖縄の綺麗な海の事を、大好きな海に関する事お仕事につきたくて単身で今の大学に来た事を、検査で自分が顔を覚えられない事を知ってしまった事を)

P(家族や友人に話せない、こんな姿を知らせたくないと、見せたくないと、ずっと悩んでいた事を話してくれた)

P(波のように寄せては返せを繰り返し、徐々に彼女の心も見えてきた・・・)

P(帽子はまだ深く被ってるけど、それでも俺と七海ちゃんにはその声はまっすぐ届いた)


詩織「すぅ・・・すぅ・・・」

七海「眠っちゃったれす。でも怒ってるって感じはないれすよ」

P「思いっきり喋って、疲れちゃったんだよ。多分、学校でもあまり喋らなかったんじゃないかな」

七海「でも喋ってる時はすごく幸せそうだったれすよ~」

P「・・・そうだね。今までは彼女への理解者が少なかったんだろう」

P「いや、ごめん。理解する前に彼女が優しいから、自分から離れていってしまったって言ってたね」

七海「・・・七海にもっと出来る事ないれすかね?」

P「出来れば、ちょくちょく来てあげてよ。俺も来るからさ」

七海「お安いごようれす♪」


P(それから俺は七海ちゃんと共に毎日瀬名さんの元へと通った)

P(こんな形で出会ったとはいえ、この出会いを無駄にはしたくない)

P(・・・だが、もう仕事に戻らなくては・・・)

P(そういえば、いつの間にか宮本フレデリカとの接触によるフラッシュバックがすっかり消えていた)

P(死に物狂いで瀬名さんを助けたおかげだろうか・・・)




P(自宅に戻ってから二週間後。仕事に戻った俺は時間を見つけて、瀬名さんのいる病院へとやってきた)



P(自宅に戻ってから二週間後。仕事に戻った俺は時間を見つけて、瀬名さんのいる病院へとやってきた)

P(彼女は心臓マッサージの際の肋骨の骨折でまだ入院していた)



P「瀬名さん、こんにちは」

詩織「えっと・・・P・・・さん・・・かしら・・・?」

P「うん、Pですよ」

詩織「よかった・・・合ってて・・・」

P「ははっ、帽子はまだ外せそうにないですか?」

詩織「この子は・・・まだ外せそうにありません・・・」

P「そっか、でもいつか・・・いや・・・外さなくていいさ。それでもキミの声と想いはいくらでも伝わる」

詩織「・・・ナースさんから、声色がよくなったと聞いたわ・・・」

P「そうだね。前よりも砕けた喋り方になってる」

詩織「そうかしら・・・?」

P「うん。良くなってる証拠だよ。病は気から、なんでも抱え込むのはよくない」

詩織「・・・1人でも多くの人に自分の事、伝えたおかげかしら・・・?」

P「そうだね。まだまだ瀬名さんの中の氷を解かすには時間が必要そうだけど・・・それでもこれは大きな一歩さ」


詩織「Pさん・・・」

P「ん?」

詩織「ありがとう。ムリヤリ淵から引き上げてくれて・・・」

P「ははは、超強引だったけどね。人に自分を殺させようとするなんて」

詩織「でも、そのおかげで人と話す事を・・・自分を見せる事を・・・思い出せた・・・」

詩織「1人で戦い続けたのが・・・バカみたい・・・」

P「ああ、困ったら、誰かと話すのがいい。友人でも、先生でも、こうやって出会えた偶然の人でも」

詩織「ふふっ・・・♪今・・・自分が人と話す事を喜んでいるのを少しずつ理解しているの・・・」

詩織「いつか・・・お礼させてほしいわ・・・」

P「ふふっ、待ってます。いまは体をしっかり治してください」

詩織「ええ・・・」


七海「詩織さーん!!あ、プロデューサー来てたんれすね!!」

P「おう・・・ってなんだその頭の輪っか」

七海「えへえへ♪これがあると詩織さんがすぐに七海だって分かるんれすよ~」

P(・・・・・・確蟹)

詩織「本当に助かるわ・・・七海ちゃんにはずっと助けられてる・・・」

P「・・・・・・」

七海「プロデューサーどうしたんれす?」


P(七海ちゃんの印象ががっつり変わった、一目で分かる印象が付与されている・・・)

P(・・・もし・・・もしだが・・・瀬名さんがいれば・・・)

P(いや過信してはダメだ。ましてや・・・)


七海「プロデューサー!!」

P「おおうおうごめんごめん」

詩織「・・・今日は動いてみてくれ、とナースに言われているわ・・・」

七海「だから近くの海まで見に行くんれす!」

P「ほーそっかそっか」

詩織「・・・Pさんも一緒に」

七海「プロデューサーも一緒れすよ!!」





P「もちろん、ご一緒するよ」







おまけ終わり


以上で2話続いたおまけパートは終了です。

柚の虐待、里美のインプリティングと同等かそれ以上に重たい内容になっちゃってると思います。
最初は詩織ちゃんがなんで帽子を被ったイラストばかりなのかを疑問に思い、ハゲ説、帽子は頭の一部説、帽子は実はUFOでキャトルミューティレーション中説、本体が帽子説etc立てていきましたが
人の顔を見たくない、コミュニケーションしたくないのではないかというのが一番しっくりきたのでこのSSではこのような属性が付いています。

今更ですが当SSは二次創作です。ゲーム本編もとい原作や他の人が書くSSとは違う設定が盛り込まれている可能性があります。
ご注意を。

次回は響子ちゃんを中心に普通に仕事するお話です。

ではまた。


PS.雪乃さんと朋ちゃんの新規SRはよ

PS2.キュートサンタで興奮して鼻血出た

ありすちゃんボイスおめでとう!

当SSでも活躍しているメンバーがちょくちょくランクインしてて嬉しいです。
あとお嬢、美玲、ちゃま とかいう私殺しの並びしていることに驚愕

次々回のタイトルが決まりました。

・杉坂海「沈黙は金」

です。

それでは。

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