観測世界の艦娘達 日常・完結編 (1000)

前スレ

観測世界の艦娘達
観測世界の艦娘達 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408795039/)


日常編~完結編です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418744344

男(少佐に任務を貰った日から一週間後に資料が防衛機構に届けられる予定になっている)

男(つまり……今日だ)


武蔵「明日出発か。荷物は整えてあるのか?」

男「着替えとその他少々程度だ。そう準備に時間はかからないさ」

古鷹「カメラに……なにか遊べるものも必要かな?」

龍鳳「どの服を持っていけばいいかなぁ……」

武蔵「彼女達はまだまだ時間が掛かりそうだな」

日向「暇つぶしなら本でも持っていけばいいな」

北上「向こうでも十分遊べそうだしね~」

神通「あまり荷物が多くなると持ち運びも大変になりそうですし……」

響「ウォッカは持って行った方がいい?」

武蔵「瓶一本と持ち運びのボトルがあれば十分だな」

武蔵「向こうでは地酒も飲めそうだ」

男「現地で酒が飲めるのにわざわざ持参するのか」

武蔵「無論だ」

響「司令官もウォッカ、飲む?」

男「……考えておこう」


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男(少し風に当たるか)

コツコツ

男(肌に当たる風は冷たく、本当に冬なのだと思わせた)

男(防衛機構の施設を離れ、近くの公園まで歩いていく)

男「……」

チャリン...ガコン

男(こう寒い時の自動販売機で温められた珈琲というのはどうして美味いのだろうか……)

コツコツ

男「ん……」

男(公園の側にポツリと佇む自動販売機。その周囲には誰も居ないと思っていたが、足音がこちらに近づいてくる)

男(こう寒い日に公園でふらつく人間は早々居ないと思っていたのだが)

「よかったら私にも一本買ってくれないかな?」

男「ッ!?」

男(ゾクリと背筋に寒気が走る)

男(気がついた瞬間には全力で走りだそうとしていたが……)

「連れないなぁ」

ガシッ

男「……迂闊だったか……!!」

レ級「こんばんわ」

シュッ!!!

男(振り返りながらの渾身の蹴り。足首の辺りが吸い込まれる様に目の前の深海棲艦の首へと向かうが)

パシッ...

レ級「そんなに警戒しなくてもいいのになぁ」

男(まるで子供の投げたボールを受ける様に用意に止められた)

男(くっ……!!)

レ級「今日は君を連れていく為に来たんじゃないの」

男(沈黙。受け止められた体制からお互い動かず風の音だけが鳴っている)

レ級「よかったらでいいんだけど……少し話そうよ」

男「……」

男(柔和そうな表情を浮かべているが、次の瞬間には俺は殺されるか、その場で動けなくなっているに違いない)

男(……どうする。急な襲撃だが……これは……)

レ級「返事くらいしてくれてもいいと思うんだけどな……」

男「……目的は」

レ級「だから、少し話したいだけ」

男「……」

男(話す……対話が目的だと……本気で言っているのか)

レ級「そっちは丸腰、私はいつでも君を殺せるんだよ?それでもそうしていないんだから……ね?」

男「脅しのつもりか」

レ級「君に選択権はないの」

男「……」

血生臭くないですよ

男「……」スッ

男(脚の力を抜くとレ級は掴んでいた手を開いた)

男(お互いに力を抜いた姿勢ではあるが見合ったまま動かなくなる)

男「……」

レ級「……ふふん」

男(両手を後ろで組み、片方のつま先を立ててにこやかにしている)

男(この姿だけを見られたらこいつとは悪い関係とは到底思われないだろう)

男「……はぁ」

男(……)

男「何がいい」スッ

レ級「それじゃあ……いちごオレにしようかな」

チャリン

カシュッ

男(……まずい)

男(冷めてぬるくなったコーヒーを煽りながら隣に腰掛けるレ級を見る)

レ級「ふー……ふー……」

男(湯気の立ついちごオレを少しずつ少しずつ飲んでいく様子はどこか猫の様だった)

男「……煙は。大丈夫か」

レ級「煙草、吸うんだね」

男「……」カチンッ

シュボッ...ジジジ...

パチン

男「……ふー」

男「……」

男(なんで俺は深海棲艦と一緒に一服しているのだろうか……)

男(この姿を見られたらきっと独房行きだろうな)

レ級「……寒いね」

男(レ級は外套こそ羽織っているが薄着に見える。傍目から見ても寒そうには見えた)

ピトッ

レ級「……」

男「……なんのつもりだ」

レ級「だから寒いんだって」

男(肩をぴったりと密着させてくる。添えられた手は……冷たかった)

男「……はぁ」

男(白い息と一緒に濁りのある煙が舞い上がっていく)

男「……」

レ級「……」

男(この状況でも動じない俺は意外と豪胆なのかもしれない)

男(いや、気が抜けただけかもしれんが)

男「それで。用件は」

レ級「……もしも、君の大切な人が変わってしまったらどうするの?」

男「……」

レ級「今までのその人じゃ無くなって、まるで別人の様になってしまったら」

男「……それはつまり、どういう事だ」

レ級「好きな人は居ないの?」

男「……好きと言うと」

レ級「恋人にしたいとか、愛してる。とか」

男「……」

ゴクッ

男「……さぁな」

男(そんな事。考えた事も無かった)

男(いや……考える暇も無かった、か)

男(はっきり言って……俺の人生の中でそのような事を考えている余裕など与えられてはいなかった)

男(そもそも……出会いのきっかけすら……作る機会が無かったな)

レ級「気になる人は?本当に居ないの?」

男「……」

レ級「君の元にいる艦娘とか」

男「……どうだろうな」

男(おかげで今の今までそう言った話題にすら触れた事は無かった)

男(北上に話題を振られた時は……かなり動揺してしまった)

レ級「はぐらかさないでよ……」

男(頭の中ではこういう事なんだと知っているつもりだが……)

男(……多分、俺自身理解出来ていないのかもしれない。感覚がわからないのだと思う)

男「そんな話をする為にここまで来たのか」

レ級「最後まで聞いて」

男「……」

ここまでです

男「……」

レ級「私は……もう深海棲艦になってしまったからわからない」

レ級「そういう感情がね、抜け落ちていくの」

レ級「好きとか、嫌いとか」

レ級「嬉しいとか、悲しいとか」

男「……以前は人間だった、という事か」

レ級「きっと気づいてないだけだと思うよ」

レ級「誰かと接しているなら必ず」

レ級「君が気づいてないだけなのか、ありふれてしまって見失っているのかはわからないけど」

男(気づいていないだけ……か)

男(俺の愛する人間……)

ジジッ...

男(それを考えた途端に頭の中に靄の様なものが掛かる。ぼやけて輪郭が消えていく)

男(それが愛する事を理解していないからなのか、それとも拒んでいるからなのか。わからなかった)

レ級「人間は変わるよ。人を好きになる事はその人を自分の一部にする事」

レ級「自分の身体を引き裂かれた時、君はどうするの?」

男「……」

レ級「……私の知っている人は、狂った」

レ級「失った部分を憎しみと、恨みと、怒りで埋めて」

レ級「あの人はもう私の知っている人じゃない」

レ級「誰でもそう。自分の身体を引き裂かれたらなにかで穴埋めしようとする」

レ級「私はもうそう思う事は出来ないけど」

レ級「それはきっと悲しい事だと思う」

レ級「つぎはぎだらけの自分の身体は、前の自分のものじゃないんだよ」

男「……」

短いですが

前スレはあとで埋めておきます

レ級「あの人は……全力で君を殺しにくる。負の感情に狂わされながらね」

男「あの人とは……深海棲艦か」

レ級「まだ人間」

男「まだ……」

レ級「……君も早く気がつかないと、そうなっちゃうよ?」

男「……」

レ級「私もあの人も……気がつくのが遅すぎた」

男「……一体何が……」

レ級「それは……秘密、だよ」

チュッ

男「……!」

レ級「ごちそうさま。君の事、なんとなくわかった気がする」

レ級「あの人と似た目をしてる」

男「……」

レ級「……次に会う時は、多分[ピーーー]から。ね」


男(気がつくとレ級は姿を消していた。俺の手元には燃え尽きた煙草と冷えたコーヒーだけが残っていた)

>>28 修正


男「……一体何が……」

レ級「それは……秘密、だよ」

チュッ

男「……!」

レ級「ごちそうさま。君の事、なんとなくわかった気がする」

レ級「あの人と似た目をしてる」

男「……」

レ級「……次に会う時は、多分殺すから。ね」


男(気がつくとレ級は姿を消していた。俺の手元には燃え尽きた煙草と冷えたコーヒーだけが残っていた)

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男「……」

男(寮へ戻ると全員支度は終えたようでそれぞれ思い思いの事をしていた)

北上「遅かったじゃん」

男「少し寄り道をしていた」

男(まさか深海棲艦と会っていたとは言えないだろう)

古鷹「あ……お帰りなさい」

男「あぁ……ただいま」

古鷹「……」モジモジ

男「……?」

古鷹「あ、明日は楽しみですね!」

男「そうだな。皆とは初めての旅行だ、俺も楽しみにしている」

龍鳳「そういえば、明日のお宿は決まっているんですか?」

男「少佐が個人的におすすめらしい宿を紹介してくれたからそこに宿泊しようと思っている」

男「ふむ……なんでも趣きのある良い旅館だそうだ」

武蔵「食事は期待してもいいのだろう?」

男「そこまで言及してはいなかったが……」

日向「さて、私はもう寝るよ」

神通「私も……そうしますね」

響「だね。夜更かしして眠いまま出発はしたくない」

男「そうだな。朝は早くここを発つつもりでいるから、全員夜更かしはしないように」

古鷹「……私、決めたんだから」ボソッ


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男「……」モゾッ

男(……愛する人……か)

ジジッ...

男(……違う。これは……違う)

男(ぼんやりと、輪郭が見える)

男(靄に包まれてはいるが見慣れた姿が瞼に浮かんでいた)

男(……違う。これは……)

男(信頼、友情……どれも……違う)

男(……)

ここまでです

男(そして翌朝。俺たちは防衛機構のワゴン車を借りて出発するのだった)

日向「これだけの人数、乗れるものなんだな」

神通「荷物もそこまで多くはないですからね」

男(皆、それぞれいつもとは違う様な服装でいる)

男(まさに外へ遊びに出かける様な、そんな服だ。普段とは違う)

男「向こうへ着けば寒くなる。しっかりと防寒具は持ったな」

龍鳳「はい!ばっちりです!」

北上「それじゃ出発~」

響「……」

ブォォン...


男「……しかし。免許はここに入る以前に取ったが……」

男「戦闘車両や輸送車両以外を運転するとは思わなかった」

武蔵「なんなら変わってやってもいいぞ?」

男「のんだくれに運転させる訳にはいかないだろう」

武蔵「それはつまり飲んでもいいと言う事だな?」

武蔵「響よ、ウォッカを用意してくれ!」

響「そう言うと思っていたよ」スッ

男「やめんか!」

武蔵「ははは!冗談だ冗談」

男「全く、早朝から。しかもこんな狭い所で酒盛りなど始められてはたまったものではない」

男「……」

男(そういえば一人だけ静か……だな)

男「大丈夫か、古鷹」

古鷹「あ、はい。大丈夫です……」

男「そうか、それならいい」

古鷹「……ふふ」

男「……」

男(ちなみに席順だが。助手席に古鷹)

男(後部に武蔵、響、北上)

男(その後部に神通、龍鳳、日向が座っている)

男「……このカーナビは便利だな。初めてみたが」

古鷹「それは道順だけじゃなくてテレビも見れるみたいですよ」

男「ほう……そういえば車内の所々にスピーカーの様なものが付いているな。音楽も流せるのだろうな」

男「ん……渋滞情報も見れるか……」

古鷹「……♪」


響「ロシア料理で有名なのはボルシチじゃないかな」

武蔵「ぼるしち……?」

響「ビーツという野菜と玉ねぎや牛肉を煮込んだスープだよ」

武蔵「ふむ……それは是非正味してみたい所だが」

響「今度作ろうか?」

武蔵「なに、いいのか?」

響「ウォッカは勿論、お酒によく合うよ」

武蔵「ふふ、楽しみにしているぞ」

北上「よくお酒と食べ物の話で話題が尽きないね」

武蔵「北上も話に混ざればいいではないか」

北上「私はあんま食べないし……聞いてるだけでお腹いっぱいになってくるよ」

響「ロシアには美味しいお菓子にデザートもあるよ」

北上「……それは、ちょっと気になるかも」


日向「……」ペラッ

龍鳳「車の中で本を読むと酔いますよ……?」

日向「あぁ……私はそこまで酔いやすくはないから大丈夫だ」

神通「なんの本を読んでいらっしゃるのですか?」

日向「……孫氏兵法」

龍鳳「へ、兵法書ですか……」

日向「意外と飽きないものだぞ?」

お仕事です

男「しかし……今日は冬晴れのいい日和だ」

古鷹「スキーをするなら絶好の天気ですね!」

男「そうだな……」

北上「ねーねー提督。あとどれくらいかかるの?」

男「まだまだだ。途中高速道路のサービスエリアで休憩を入れる事も考えて……2時間は見た方がいいか」

神通「長旅も楽しいですよ」

北上「まぁ……たまには飽きないかもね」

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日向「……」チラッ

日向「……だいぶ景色も変わってきたな」

龍鳳「まさに旅行な気分ですね!」

男「旅行……という本音ではあるが建前上は任務だ。まずは国防軍駐屯地へ向かうぞ」

武蔵「長野の国防軍部隊といえば空挺部隊が有名だな」

男「あぁ……少数ではあるが国内では最高の練度だろうな」

男「山岳部隊の割合が多いがこちらは救助作戦などが多い」

男「前の九十九里沖海戦にはここの航空兵団と空挺部隊が参加していたな」

日向「敵戦闘機の撃墜数はトップ。負傷した隊員もいなかったそうじゃないか」パタン

男「戦闘機の動きなどを少し聞いておけば電子世界での艦載機の運用に役立つのではないか?」

龍鳳「そうですね……もっと確実に制空権を奪取して打撃を与えたいです」

日向「私は基本支援になるだろうが、やるべき事は同じだ」

男「訓練方法や兵の運用も見させてもらおう。現実の軍艦と艦娘は違う」

男「人間らしい動きに加え俊敏に動けるのだから、海軍の戦闘指揮だけでなく陸軍の指揮も交えて工夫しなければ」

男「それに……現実でも何が起こるかはわからんからな」

男「見えて来た……検問か……」

男(国防軍の人間と思しき人物が車を誘導している)

「どちらからお見えになられたのですか?」

男「かなみ市防衛機構所属、中尉だ。話は通してある」

「ではこの先誘導に従って移動して下さい」

男「わかった」


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ここまでです

武蔵「やはりうちより広大だな」

男「まぁそうだろうな」

「わざわざご足労おかけして申し訳ありませんでした」

男「いえ。問題ありません」

「まずはこちらへ。ここでは人目につきます」

男「皆、行くぞ」


男(応接間の様な場所に案内され、しばらく待つと胸元に勲章を付けた男が現れた)

「ご足労痛み入る。例の書類だが……」

男「こちらに」

「……確かに。長旅で疲れただろう、少し休んで行ってくれ」

男「ならば訓練の様子を見学させていただきたいのですが」

「それくらいならば構わない」

男「それと、戦術について少しご教授願えれば」

「戦術……艦娘は軍艦とは違う……という事か。私でよければ喜んで」

男「では。よろしくお願いします」

すんません眠気が酷いのでこれだけですが……

クリスマスで浮かれてるカップルを見ると虚しくなってきますね

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ブロロロ...


男「いや。とても為になった」

武蔵「あの訓練内容も真似出来る場所があるな」

北上「鉄条網の下を匍匐前進とかする必要あるの……?」

男「そこはそことして。射撃訓練や筋力トレーニングは真似してもいいだろう」

男「それに、電子世界での戦闘だけじゃない。現実でも俺たちは強くなければいけないのはこの間わかっただろう?」

男(まぁ……酷な事を言っているとは思うが)

神通「さらに精進しなければ……ですね」

古鷹「でもその前に……!」

男「そうだな。今は目先の楽しみに集中しても構わないだろう」

男(しばらくして……目に見えたのは一面銀世界の山々だった)

龍鳳「すごい……綺麗ですね……!」

男「ここから見える坂道全てがスキーのコースの様だな」

日向「平日だから人もそこまでいないな」

男「広々と遊べるのだから良い事だ」

響「まずは道具を借りなくちゃいけないね」

北上「すぐそこにレンタルショップがあったよ」

武蔵「うむ。ではスキーに挑むとするか」

むむむ……スキー行った事ないので結構悩ましいですね……

響「それじゃあ。私が指導させてもらうよ」

男「うむ」

響「今日みんながやるのはアルペンスキーって言われてるもので……」

武蔵「この二枚の板と棒を使うのだな?」

響「うん。まずはゴーグルやプロテクターがちゃんとついてるかもう一度チェックして」

古鷹「大丈夫!」

龍鳳「私も大丈夫です!」

北上「私はスノボやりたいなー……とは思うけど。これより難しいんだっけ?」

響「下手に転ぶと大怪我するからね」

神通「みんな怪我の無い様にしましょう」

響「まず私が簡単に滑ってみるよ」ザッザッ...

ズザァ...ザザッ

響「身体の芯はぶれないように。足元が動くから怖いと思うけどしっかり身体を支えて」

響「力んだりしないで、自然な体勢で」

男「簡単そうに見えるがこれは中々上手くはいかなさそうだな」

北上「そんじゃ早く滑ろ……」

響「その前に、止まり方と転び方に転んだ後の起き上がり方も練習してからだね」

龍鳳「転び方は大事だというのはよく聞きますね」

響「怪我の元だからね」

1レスずつとかほんと申し訳ないと思ってます。年末ヤヴァイ……

拘束時間も業務内容的にもかなりハードになってます……

一レスずつでも進めたいんですけどみなさん的にどうですか?もし休んじゃうと次の更新が多分来年の三日からになるのでしばらく間も空いちゃいますし……

それじゃあ次の更新は年明けにしたいと思います。すみません

来年もまたよろしくお願いします!

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします

男「……」フラッ

ボフッ

男「……」

ムクッ

ボフッ

男「……」

北上「なんかさ。真顔でやってるの見るとなんというか……」

男「……そんなに見るな」

武蔵「ん?なんだ。赤くなってるじゃないか?」

男「これは雪が冷たくてだな……」

古鷹「ふふ……」

龍鳳「そろそろ転ぶ練習も上手くなってきたんじゃないでしょうか!」

響「そうだね。それじゃあ少し滑ってみようか」

日向「……」スッ

神通「ゴーグル。すごく似合ってますね」

北上「あぁ……確かに。ニット帽にゴーグル、マフラーにふかふかのジャンパーって……」

日向「寒いんだから仕方ないだろ」

男「そうだな。寒さ対策は必要だ」

武蔵「そういう提督は山岳兵の様な格好をしているが」

男「装備をしっかり揃えてこそ安全性が増すというものだ」

男「それより、お前はその……むむ」

武蔵「なんだ?」

男「何故胸元だけその……薄いんだ」

武蔵「気になるか。もっと近くで見てみるか?」ケラケラ

男「そういう訳ではなくて……あのだな……と、凍傷になるぞ凍傷に!」

武蔵「大丈夫だ。下着に見えるだろうがこれは結構暖かい」

日向「流石だろう私のインナーは」

武蔵「これは侮れんな」

男「三人は友人同士遊びに来た女学生と言った所か」

北上「まーこんなもんでしょ」

古鷹「そこまでオシャレな服は持ってないですし」

龍鳳「神通さんはどこかお嬢様の様ですね」

神通「そ、そうですか……?」

武蔵「響はなんというか……ロシアだな」

響「それは帽子だけ見て言ってないかい?」

男「まぁ……とりあえず滑ってみようではないか」

神通「はい。参りましょう」

ザッザッ...

古鷹「提督とスキーかぁ……ふふ」

北上「……」

古鷹「な、なに?」

北上「もしかして……恋する乙女?」

古鷹「なっ……なな……」カァァ

北上「やっぱり……へぇ……ふぅん……」ニヤニヤ

北上「大丈夫。黙っておくからさ」

古鷹「うぅ……」

ガッ

古鷹「きゃっ……!?」フラッ

武蔵「む……!?」

神通「古鷹さん!」

ボフッ

古鷹「……」

龍鳳「だ、大丈夫ですか!?」

日向「躓いたのか……」

古鷹「だ、大丈夫です……ありがとうございま……」

男「……危ないな。足元には注意して歩くんだぞ」

古鷹「てっ……提督……そのっ……」

ここまでです

新年会なので今日はお休みです……(´・ω・`)

年も明けて仕事も落ち着いてきたので、ちゃんと毎日更新出来ると思います。でも毎日少しずつだしたまに覗いてくれると丁度いいくらいなんですかね

スッ

男「さて……まずはこの辺りから滑ってみればいいだろう」ザッザッ...

古鷹「……」

武蔵「提督よ、お前も中々やるじゃないか」ニヤニヤ

男「む……?」


響「まずは私が滑るから後に続いて」

ザッ...シャー

ザザッ

龍鳳「流石ですね!」

神通「上手く出来るといいですけど……」

日向「……」クイッ

ザッ...シャー

ズザザッ

日向「これは中々面白いな」

北上「結構上手いじゃん」

男「では。次は俺が滑らせてもらおうか」

ズザザッ

武蔵「ほう……中々やるじゃないか」

男「任務で雪中行軍ともなれば覚えておかなければなるまい」

古鷹「防衛機構の場所からしてそういう任務はあるんでしょうか……」

男「無いとも言えないだろう」

北上「限りなく無いに近いよねー」

シャー

北上「っと」ズザザッ

響「みんな初めてなのに上手いね」

龍鳳「なんだか後に残されると緊張します……」

武蔵「なに。好きに滑ればいいさ」

ここまでです。体調管理には気をつけながら更新したいですね

古鷹「じゃ、じゃあ私が滑ります!」

響「力を抜いて、楽な姿勢で」

男「……」

古鷹「……よし」

ザッ...

シャー

古鷹「わわっ!」

龍鳳「大丈夫!ちゃんと滑れてますよー!」

ズザザッ

古鷹「……」

男「古鷹も上手いな」

古鷹「そうですか?よかった……」

神通「次は私ですね」

シャー

ザザッ

響「今までで一番上手いかもしれない」

日向「フォームも崩れていなかったし、自然なかんじだったな」

神通「ありがとうございます」

龍鳳「私も頑張りますよ!」

シャー

ザザッ

龍鳳「綺麗に滑れてました?」

男「龍鳳も上手かったぞ」

武蔵「最後は……私だな」ザッザッ

武蔵「では……」

ザッ...シャー

武蔵「これは中々……」

ズザザッ

武蔵「面白いな」

男「ふむ、全員無事に滑ったか。よかったよかった」

響「それじゃあもう少しこの坂で練習してから、今度は少し長めの所にいこうか」


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北上「あー……疲れた」ボフッ

日向「だいぶ堪能したな」

響「そろそろやめにする?」

神通「でも、折角の雪なのにこれだけで終わらせてしまうのは惜しいですね……」

古鷹「それなら近くに広場があるみたい!」

龍鳳「広場……雪合戦はどうですか!?」

武蔵「合戦か……腕が鳴るな」グッ

男「なにか……物騒な事を考えてはいないだろうな」

武蔵「気のせいだろう」

男「まぁ……雪合戦もいいがまずは腹ごしらえだな」

武蔵「飯か!そうだなそれがいい!」

男「……忙しいなお前も」

お仕事です

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武蔵「シッ!!」ビュッ!!

バスンッ!!!

男「ぐはっ……!?」

武蔵「雪玉遊びも実戦と変わらん。いかに正確に攻撃を命中させ、仕留めるかが……」

ボスッ

北上「っしゃ!」グッ

武蔵「……」

武蔵「……ふふっ」コキッコキッ...

龍鳳「……もっと穏やかな遊びだと思ってたんですけど」

古鷹「そ、そうだね……」

神通「参ります……!」グッ

シュッ!!!

響「っ……」サッ

日向「……流石に本気の争いにはついていけないな」ペラッ...

バスッ

日向「……」

パタンッ

日向「……」ザッザッ...

日向「せいッ!!!」ブンッ!!!

ワーワー

男「……」パンパン

男「雪合戦とはここまで殺伐とした遊びだったのか……?」

日向「提督ッ!!これは遊びじゃない……」

男「日向……」

日向「別に読書の邪魔をされて怒っている訳じゃあないさ。全然違う、違うとも」

男「……」

古鷹「て、提督!危ない!」

男「ん?」

武蔵「余所見をしていると……死ぬぞ」ニィッ

バスンッ!!!!

男「ぐおっ……!?」

男(まるで鎮圧用ゴム弾だ。ゴム弾が顔面に……!!)

神通「相手が本気ならば、それに応えなければなりません。お許しを……」

シュッ!!!

バスッ!!!

男「……」

男「響。敵弾幕を回避しつつ弾薬を製造しろ」

男「北上、日向は後方から援護射撃」

日向「提督は」

男「……前へ出る……ッ!!」

雪合戦は戦争です

武蔵「さぁ、こい提督!」

男(まずは状況の整理だ)

男(遮蔽物は無し、敵は単縦陣……敵艦数は……)チラッ

龍鳳「……!」ブンブン!!

男(武蔵、神通の二隻)

男(こちらは俺が前面、左右後方に日向、北上)

男(さらにその少し後方に響、所謂魚鱗陣というものに近いか)

男(数ではこちらが圧倒的有利だが……数で押して勝てる相手ではない)

男「ふんッ!!」ブンッ

ボコッ!!

武蔵「私の拳の前ではその様な生温い球は通用せん!」

男(ならば戦略だ。戦略で相手を潰す)

龍鳳「……これ。終わりはどうなってるんですか」

古鷹「さぁ……」

龍鳳「あ、そういえば私あったかいお茶を淹れてきたんです!魔法瓶だから温かいですよ」

古鷹「それじゃあもらっちゃおうかな」


ブンッ!!

男「チッ……」ザッ

神通「……」

男(回避も紙一重か……)

男(この戦いの勝利条件は……勝利条件は何だ?)

男「……」

男(と、とにかく。相手に雪玉をぶつければいい)

男(雪玉で相手を潰す?つまりは降伏させると言う事か?)

男(……)

男「……響、球を」

響「固くていいのが出来てるよ」ポイッ

パシッ

男「ふんッ!!」ブンッ

お仕事です

武蔵「甘いッ!!」シュッ!!!

バスンッ!!!

男「雪玉を雪玉で相殺した……だと!?」

日向「三方向から攻撃をすれば……!!」シュッ

北上「ていっ!」シュッ

神通「させません!」ブンッ

北上「へぶっ!?」ボスッ

男「武蔵だ。武蔵を狙え!!」ブンッ!!

武蔵「あははは!!これほど愉快な戦闘は初めてだ!!」バスッバスッバスンッ

響「……」ペタペタペタペタ

男「やはり一筋縄ではいかないか……!」

神通「私を忘れてもらっては困ります!」シュッシュッ!!!

北上「そう簡単には当たらないよ~」

シュッ!!!

ボコッ!!!

北上「痛ったぁッ!?」

武蔵「ふふふ……」

古鷹「これ……すごく美味しい……!」

龍鳳「寒くても暖まる様に特製のブレンドなんです」

古鷹「へぇー……すごいなぁ」

男「躊躇わず投げ続けろ!」

武蔵「一筋縄ではいかぬと理解してなお同じ戦法か……」

男(いや、これでいい。これでいい……!)

武蔵「む……球切れか」

男「弾丸を作る暇を与えるな!」ブンッ

神通「わ、私が……」

バスッ

北上「へへっ……さっきのお返しだよ」

神通「……中々、やりますね」

日向「響、球の方は」

響「大丈夫、私がいる限り尽きさせないよ」ペタペタペタペタ

ヒュッヒュッ!!

武蔵「ええい、小癪な!!」ボコンッバスッ

男「いつまでその集中力が続くか……見ものだな……」

ここまでです

武蔵「ふっ」ダッ

男(な……こちらに突っ込んできた……!!)

男「っ!!」ブンッ

武蔵「悪いがお前が目的ではない」

スッ

男「……」

男「し、しまっ……」

ザッ

武蔵「……」

響「……」

武蔵「……」スッ

響「……」スッ

ボコンッ!!!

男「球を奪われたか……これは長期戦に……」

男「……長期戦。今何時だ?」

古鷹「午後四時です」

男「雪合戦もいいがそろそろ宿に移動しなければ……」

男「全員、ここまでだ。今夜の宿まで……」

武蔵「やるな……!」

響「そっちも」

シュババババ

男「ええいやめんか!」

お仕事です

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男(車通りの無い山路をひたすらに進んでいく)

男「これは……少しでも運転を間違えれば崖まで落ちてしまうな」

男(神経を張り巡らせておかなければいけないくらいに険しい道のりだ)

男(舗装こそされているものの道幅は狭く、曲がりが多い)

男(行先は上り坂で木々が生い茂り先の視界を遮っている)

古鷹「こんな所に旅館があるんですか?」

男「少佐の言う通りなら……だな。あの人が勧める事などあまり無い故に期待はしても良さそうだが」

武蔵「美味い飯が食えればそれでいい」

北上「私はお風呂に入りたい……へっくし!」

神通「だ、大丈夫ですか……?」

北上「なんか妙に雪玉をぶつけられてた様な気がするんだけど……」

武蔵「気のせいじゃないか?」

響「気のせいじゃないと思う」

武蔵「しかし響よ。あの動き、中々見所がある」

響「そう言ってくれると嬉しいかな」

武蔵「うむ。まるで数多の実戦を潜り抜けてきたような。そんな動きだった」

響「……」

龍鳳「な、なんだか……参加しなくてよかった……のかな?」

古鷹「私達も沢山雪玉をぶつけられてたかもね」

日向「それが楽しみ……なんだろうけどあれはな」

男「……ま、まぁ……少し大人気が無かったとは……思っている」

武蔵「そうだなぁ……」

男「お前もだ」


ブロロロロ...

男「そろそろ着いてもいい頃合いだと思うがな」

日向「結構な距離を走っているしな」

男「ガソリンには余裕があるが万が一……という事もある」

古鷹「あ、提督!川ですよ川!」

男「ん……」

男(視界が少し開け、視線の端に清流が見えた)

龍鳳「綺麗ですね……」

神通「本当に……」

武蔵「だが、だいぶ辺りも暗くなってきたな」

男「あぁ……」

男「本当に遭難などしたら洒落では……む」

北上「どしたの?」

男「ようやく着いたか……」

男(目の前に現れたのは趣きのある古風な旅館だった)

男(それほど大きくは無いが二階建てのようで、古風ではあるものの古びたような雰囲気でも無い)

男(由緒ある建物、と言った印象だな)

男(建物の裏手からは薄っすらと湯気が広がって見えていた)

武蔵「露天風呂か……風情があっていいじゃないか」

混浴?知らない子ですね

後半はほのぼの描いてて設定忘れそうになってたので電子世界の方から読み返してました。こう……どこかで話題に上がったのをたまたま見たりするとほんとありがたいなって思います

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男(チェックインを済ませると、二階の客室まで上がっていく)

男(少佐が土産の礼を先にしておくと宿を取っておいてくれたのだが……)

男「……広間一つに客室が四部屋か」

男「……」

武蔵「提督を含め全員で八人だ。八人となると……」

響「二人部屋になるのかな」

古鷹「二人……部屋……!」

北上「ふぅん……」チラッ

龍鳳「どうやって部屋割りを決めましょうか?」

日向「好きにすればいいんじゃないか?」

神通「公平にくじで決めた方が……」

男「……」

武蔵「……なにか不満あり気な顔じゃないか?」

男「不満……ではないが……」

男「その……俺と誰か。二人一緒の部屋、というのは……」

北上「別にいいんじゃない?」

龍鳳「みんな提督はそういう人じゃないって知ってますから気にする必要はないと思いますよ」

男「だが……俺が気にしなくとも相部屋になった誰かが気にするという事は……」

日向「私は別に」

神通「私も……」

響「私も大丈夫だよ」

古鷹「私も全然!全然気にしません!」

武蔵「私も酔い潰れて寝ている事もあるし気になどしないが」

ここまでです

男「むぅ……」

響「それで、決め方はどうするの?」

北上「じゃんけんでいいんじゃない」

日向「まぁ……公平にするならそれくらいしかないな」

武蔵「よし!全員拳を出せ!」グッ

古鷹「……よし!」

龍鳳「やりましょうか!」

神通「では……音頭は提督に……」

男「お、俺か……」

北上「まぁ……負けた人間と勝った人間に分かれながらやればすぐ終わるでしょ」

武蔵「それでいいだろう。こい提督!」

男「では……いくぞ」

1レスですが……

今更艦これ一話見たんですけどやばいっすね!翔鶴ちゃんかわいいまじかわいい

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男「さて……部屋割りも決まった訳だが」

古鷹「少しこの旅館を見て回りたいです」

龍鳳「いいですね。面白そう!」

武蔵「私は一杯やるとするか」

響「付き合うよ」

北上「疲れたー……少し休むよ……」

神通「そうですね。一息つきましょうか」

日向「あと少しでこれが読み終わるんだ」

男「では……とりあえず各自自由行動とするか」

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男「さて……」

男(自由行動と言っても特にする事はない)

男(適当に旅館の中をうろついているが……)

男「……風呂にでも入るか」

男(先ほどはいささかはしゃぎすぎてしまった……乾いた汗が少し鬱陶しい)


男「……」カチャ...スルッ...

男(露天風呂……か。そういえば初めて入る気がする)

男(旅行などまともにした覚えもなく、遠出して娯楽などもだ)

男「……少し、楽しみだな」

ガララッ...

男「っ……寒い……」

男(真冬の夜に裸で屋外に出れば当たり前だが……)

男「だが……これは見事だな……」

男(磨かれた石造りの床、15m程はあるだろうか。大きな湯からは煙が立ち込めている)

男(岩の浴槽の隣には先ほど見た清流が流れていた)

男(雪化粧をした木々の風景に囲まれながらの入浴は……確かに良さそうだ)

男「露天風呂に凝る人間もいるらしいが……なるほど確かにわかる」

男「っ……」ブルッ


男(身体の垢を落とし、乳白色の湯船へと足を入れる)

男「っ……」

男(一瞬の熱さに躊躇いながらも肩まで身を沈めると心地よかった)

男(外の温度差で頭は逆上せず身体は暖まる。これは本当にいい)

男「……はぁ」ザパッ...

男「この熱さも慣れれば丁度いいな」

男(それに案内板で見たが腰痛や神経痛などに効能があるそうだ)

男「……至れりつくせりだな」

男「……」

男(平和だ……)

男(……死線を潜り抜けて来てからのこの平和な時間は本当に……貴重だと思う)

男(すぐにでも崩れてしまうかもしれないこの時間を守る為にも……)


レ級『……次に会う時は、多分殺すから。ね』


男「……」

男(簡単にやれせはしないぞ……深海棲艦共……)

男「……」

男「……しかし」

男(そういえば少佐はいい宿だし面白いものもある……などと言っていた気がするが)

男(面白いもの……とは……)



ガララッ...



武蔵「さてひとっぷろ浴びるとするか……」

男「!?!?」

龍鳳「凄い……!」

古鷹「広いし凄く景色も綺麗だよ!」

日向「……」

神通「ここのお湯は筋肉痛に効くらしいですよ」

北上「あー……それは助かるかも……」

響「……」

男「なっ……」

男(入り口に立っていたのは、タオル一枚というあられもない姿の艦娘達だった……)

男(なんだ……これは一体どういう事だ……!?)

日向「ん……誰か先客が……」

武蔵「なんだ、先に入っていたのか。提督」

古鷹「てっ、提督!?!?」カァァ

龍鳳「え?えっ!?」

神通「っ……ぁ……!」ギュッ

北上「えっ、提督!?なんで女子風呂にいるのさ!」

響「……」ジー

男「まっ……まて!!違っ……こ、ここは男子湯ではないのか!?」

武蔵「男子湯とも女子湯とも書いて無かったが」

北上「それじゃあここって……」

古鷹「混……浴……」

男「こ、ここ……混浴……」

男「そ、そういうのはやはりいけな……だ、だが古来より混浴は存在し……だが現代では……ううむ……」ブクブク

男(視界に入るのは艶やかな女の肌)

男(タオル一枚なのだから当たり前だがなんとなくの身体のラインに胸元まで全て……見えている)

男(先ほどまで程よく温まっていた頭が……沸騰し始めた)

お ま た せ

混浴。いいですよね、リアルで綺麗な女性が入っているかどうかはアレだと思いますけど


それと。突然で申し訳ないのですがまた選択肢多数決させてもらってもいいでしょうか?

旧施設での選択でどのエンディングに向かうかは確定しましたが、この選択ではその内容が少しだけ変わります

古鷹と相部屋か武蔵と相部屋か。多数決で決めたいです。明後日の朝に多かった方で書きたいと思います

お手数ですがよろしくお願いします

男(少佐……嵌めたな……ッ!!)

武蔵「提督。冷酒でも飲みながらゆっくりしようじゃないか」

響「ウォッカと日本酒があるけどどっちがいい?」

男「ど、どちらでも……」

武蔵「では両方だな」

日向「……」

神通「……」

龍鳳「は、ははは……」

古鷹「……」プルプル

北上「……はぁ」

男(というか何故俺は一緒に浸かり続けているんだ)

武蔵「ん……」グイッ

武蔵「ふぅ……さ、飲め飲め」クイッ

男「あ、あぁ……」スッ

グイッ

男「……」

男(日本酒を呷ったが何故か味を感じなかった)

響「提督にもウォッカの素晴らしさを実感してもらわないと」グイッ

男「そう……だな。あぁ……も、もらうよ」

グイッ

男「……!!」

男(こ、これは中々に……来るな)

武蔵「さぁさぁどんどんいけ」

響「遠慮せず」

龍鳳「お、お酒攻めですね……」

北上「あれ……死ぬんじゃない?」

日向「二人共どうした?」

神通「……」

古鷹「……」

龍鳳「真っ赤ですよ……!」

北上「まぁ……気持ちは分かるよ。お互いにさ」

男「ん……」グイッ

武蔵「やはり温泉と言えば酒だな」

響「……」チビチビ

男(もう上がってしまおうか……だがそれでは俺が皆を避けているようでは……)

皆さんありがとうございました。古鷹で行かせてもらいます

すいません……体調が優れないので今日はお休みさせて下さい……

風邪拗らせました(´・ω・`)

皆さんも体調管理は気をつけて下さいね。乾燥とか生活サイクルとか結構風邪の元になると思います

攻殻機動隊の曲で有名なorigaさんが亡くなったそうですね。攻殻アニメはアニメ好きになった原点みたいなもので、歌声も聞き惚れたものです。それだけにものすごく悲しいです

これが終わったら攻殻っぽいの書きたいなー……

帰りには更新再開しますのでよろしくお願いします

男「……」ブクブク

古鷹「そういえば……」

武蔵「ん?どうかしたか」

古鷹「提督が防衛機構に来た理由は聞いたけど、みんなのは聞いた事無かった気がするな」

男「む……確かに。そうだな」

武蔵「では、ここは一つ暴露大会と行こうじゃないか」

北上「暴露大会……なんて言っても私面白い話なんか無いんだけど」

日向「ふむ。これはみんなの団結を深められそうでいいと思うぞ」

武蔵「面白話しでなくても構わないさ。話せる範囲で、話してくれれば構わない」

神通「それなら……私もお話してもいいです」

龍鳳「私も……そこまで凄い話ではないけど」

響「私は司令官の話を聞いた事がない。話して欲しいな」

男「まぁ……いいか」

男「俺は……知りたい事があってここに来た」

男「どうしても知らなければならない事。俺の人生に関わる事だ」

男「苦悩して、足掻いて、見つけたもの」

男「つい先日の事だが……知る事が出来た」

武蔵「……」

日向「……」

男「どんな現実でも受け入れる覚悟は出来ていた。それなのに、俺は……」

男「……だが、悩んだ末に俺は決意した」

男「その現実と共に生きる事」

男「その現実を抱えた上でこれからを過ごしていく事」

男「……それが俺がこの防衛機構にやってきた理由」

男「生きる糧だったものだ」

響「……そうか。司令官……」

神通「……」

北上「……」

武蔵「……一生、背負う事になる」

男「それが俺に課せられたものだ。運命を呪ったりはしない。運命なんというものは存在しない」

男「例えそれがあらかじめ与えられたものだったとしても、後々の選択は自分でするものだ」

男「俺は……一生背負う選択をした。それまでだ」

会社の付き合いでお酒ガバ飲みして細かく頭が回らないのでここまで

ケイブのシューティングはストーリーもゲーム内容もいいですよね。メジャーですけど首領蜂シリーズとか

個人的にはR-TYPEとか東方とかが好みですね

北上「なんか……重い話だよね」

神通「……提督」

古鷹「提督は、私達の見ていない所で苦しんでいたんですか」

男「自己解決しなければいけない問題だ。他人に頼って解決した所で意味は無い」

古鷹「でも!結果が同じならやっぱりみんなと一緒に考えて解決した方が……苦しく無かったかもしれないじゃないですか」

男「……結果だけではなく過程も必要だった」

男「例え良い結果が出たとしても過程で満足出来なければ意味はない」

古鷹「……」

男「……気遣ってくれているのは分かる。ありがたい事だが」

男「こればかりは、な。すまない」

龍鳳「その内容は教えていただけないのですか?」

男「……すまない」

古鷹「……」

武蔵「ほら、辛気臭いのはこんなものでいいだろう?」

日向「次は誰にする?」

男「世の中には言い出しっぺの法則というものがあるな」

武蔵「では、私か」

武蔵「私は至極単純な理由だがな」

武蔵「この街……いや。かなみ市を守りたかったからだ」

武蔵「昔になるが……中の良い友人がいてな。幼馴染みと言った方がいいか」

武蔵「いつも共に遊んでいたな……」

武蔵「だがある日……突然姿を消した」

武蔵「捜索願も出されたが結局……見つからなかったよ」

武蔵「学生の癖にどうも大人びていた。大和撫子……という言葉が一番合うのだろうか」

武蔵「もう……10年以上前の話だ」

武蔵「次世代兵器の話が世界中に知れ渡り、時代は戦争へと突き進んだ」

武蔵「その時に思ったのは。また何か失うのではないか」

武蔵「兵器の開発元である日本が来る戦争を回避出来る訳もない」

武蔵「また自分のすぐ側で、何も出来ずに失う事になるのではないかと」

男「その友人を失ったのはお前の失態では……」

武蔵「それはそうだな。だが……あの時はそうで無かったんだ」

武蔵「自分の無力さで失った。そう思った」

武蔵「だから私は強くなると決めた」

武蔵「私と同じ思いをする人間を少しでも減らしたいと思った」

武蔵「それで見つけたのが防衛機構だった……それだけの話だ」

男「……お前も十分辛気臭いぞ」

武蔵「そうだな。確かにそうだ……」グイッ

お仕事です

北上「次は私かなー。最後にはなりたくないし」

男「うむ。聞かせてくれ」

北上「と言ってもそんなに面白い話じゃないけどね」

北上「田舎からこっちまで来て、給料のいい仕事がしたかった」

北上「勉強は……まぁそこそこ出来たつもりだし。事務作業なら無理なくこなせるかなって思った訳」

北上「たまたま見つけたのが防衛機構で、就職したの。まさか事務作業どころか、"頭の中"でも現実でも肉体労働する事になるとは思わなかったけどさぁ……」

日向「それはなんというか……気の毒だな」

北上「ほら、あんま運動とか得意じゃなかったでしょ?今はそこそこなつもりだけど」

龍鳳「転職とかは考えていたりするんですか?」

北上「最初はね。やっばいとこ来ちゃったって思ったけど……結構楽しいしさ」

北上「給料には全然文句無いし。仕送りも出来て貯金も出来てるし……」

北上「……誰かを守るって、結構かっこいいよね。痺れるよ」

北上「……なんか……恥かしいな……よく言えたよね」チラッ

男「自分の思う事を素直に言える事は恥ずべき事ではないさ」

武蔵「いや……そういう意味ではないぞ提督よ」

男「……?」

響「顔、少し赤いよ」クスッ

武蔵「ううむ……頭の中で読み返すと……少しな」

男「……???」

古鷹「次、私が行きますね」

男「聞かせてくれ」

古鷹「私が防衛機構に入ったのは……防衛機構の人に助けられたからなんです」

古鷹「学生だった時に……交通事故にあっちゃって……」

古鷹「たまたまそこにいたのか来てくれたのはわからないけど、防衛機構の人たちが倒れている私の所に駆け寄ってくれて」

古鷹「必死になって助けてくれたんです」

神通「お怪我の具合は……」

古鷹「自転車に乗ってたのが良かったのか。目立ったのは肩を打撲しただけで済みました」

古鷹「でもその時はなにがなんだかわからなくて、肩も痛くて……動けませんでした」

古鷹「車が急に赤信号なのに飛び出して来たんですよ!びっくりしました……」

男「大した怪我にならず、よかった」

古鷹「はい!それで……」

古鷹「車はそのまま走って逃げちゃったんです」

武蔵「轢き逃げとは……屑だな」

古鷹「でもその後防衛機構の人たちが捕まえてくれたんです!」

古鷹「優しくて……かっこいい。そんな人たちと一緒に働きたい」

古鷹「私も困っている人を助けたい。そう思ったから防衛機構に入りました」

古鷹「でも……運動はあんまりだし。この間なんて……みんなが戦ってるのに怖くなっちゃって……まだまだダメですね」

男「そんな事はない。古鷹は……十分人間の役にたっている。それにその心さえあれば……より多くの人間を助けられるようになる。必ず」

古鷹「提督……!」

防衛機構所属の艦娘達にそこまで重い過去はありません。前作の施設が異常だっただけなので……

ちなみに本編には出ない設定なので話すと、武蔵の幼馴染みは大和です

神通「そ、それじゃあ……次は私が……」

男「神通か……大人しめな性格だが何故このような所に来たのかは気になる」

神通「……家から逃げて来たんです」

龍鳳「家出ですか!?」

神通「そう……なりますね」

神通「その……父は……株式投資企業の社長で。苺を触る様に育てられてきました」

北上「それってもしかして……」

日向「大企業のご令嬢、という事か」

神通「はい……」

神通「好きな事もさせてもらえず、親の決めたスケジュールに沿って、大人しく……一流の女性にする為に……とは両親は言っていましたが」

神通「耐えられなくなったんです。私だって……!自分の決めた事を自分で……やり遂げてみたかったんです」

神通「贅沢や……我儘に聞こえるとは思いますが……」

武蔵「確かに、金の無い人間からすれば金持ちの我儘に聞こえるだろうな」

武蔵「だが決められた事だけを淡々とこなしていくだけの日々。そう聞くとまるで……」

男「獄中と変わりないな」

神通「私はいつも……誰かに守られてばかりでした。傷つくのはいつも私ではない誰か。それが嫌でした」

神通「だから……私自身が、傷ついてでも誰かを守れる様な仕事がしたかったんです」

響「それで防衛機構に就職したんだ」

神通「はい……」

武蔵「しかし……それだけの規模の所から逃げ出して捕まらないとはな……」

武蔵「それに、箱入り娘にしては初見でもかなり武術に長けていた気がするが」

神通「剣道に居合道、薙刀や弓道も嗜む程度に教えてもらっていたので……」

武蔵「随分……固そうな苺だな」

神通「それと。両親には就職してからすぐに見つかっています」

神通「無理矢理に連れ帰れさせられそうになりましたけど……」

神通「……ふふ。その時でした」

神通「産まれて初めて、お腹の底から声を出して、私の思っていた事を全て話したんです」

日向「……」

神通「……しばらくは様子を見ると。そう言って帰っていきました」

男「それで決別している訳ではないのだろう?帰ってこいと言われたりはしないのか」

神通「……はい。今でもよく連絡も取ります」

神通「私が頑張っている事の証として仕送りもしています」

神通「……頑張れと、言ってくれます。一度も帰って来いと言われた事はありません」

神通「今思えば……自分の事を主張しなかったのがいけなかったんだと思います」

神通「全て……私が取った行動の結果だったんです」

神通「提督も仰った通り、運命なんて存在しない。私の選択で、そうなっただけなんです」

男「……そうか」

男「今そうして理解出来ているなら、大丈夫だ」

神通「はい……!」

北上「なんか……私の話ってスケール小さすぎ?」

男「話の内容の大きさなど関係ない。生きている人間一人ひとりの個性で、物語なのだ」

男「他人と比較して気にする必要などどこにもない」

ここまでです

龍鳳「次は私が……」

男「聞かせてもらおう」

龍鳳「私、元々は栄養士になりたかったんです」

北上「あ。なんとなくわかる」

武蔵「確かに。龍鳳の飯は美味いからな」

龍鳳「えへへ……で。料理も自分で凄く練習して、専門学校に行こうと思ってたんですけど……」

龍鳳「お家にお金が無くて行けなかったんです」

龍鳳「就職以外選ぶ事が出来なくて……就職活動を始めました」

龍鳳「色々な場所を調べていくうちにここを見つけて……」

龍鳳「みんなの為に命がけで働いてる人たちに美味しいごはんを食べてもらいたいって思ったんです」

龍鳳「私の料理を食べている間は、本当にくつろいで……お家でゆったりしているような気分になってもらいたい。そう思いました」

龍鳳「配属されてからは……それとは全然違う事をしてますけど」

男「いや、そうでも無いと思うぞ」

男「龍鳳の作る食事は本当に美味いし、食卓を囲んでいる時には心から安らげている」

龍鳳「そうですか……?」

神通「はい。私も、仲間達と取る食事はこんなにも美味しくて楽しいのかと驚きました」

武蔵「なんども言うが龍鳳の飯は美味い。美味い物を食べている時が一番落ち着くさ」

響「お酒は?」

武蔵「酒はまた別だ」

日向「衣食住揃って礼節を知るとも言う。食は大事なものだと思う」

古鷹「私も負けない様に練習しなきゃ……!」

龍鳳「ありがとうございます……!」

男「うむ。いい話ではないか」

日向「それじゃあ……次は私かな?」

響「……」

日向「私は……過去の自分と決別したかった」

日向「いや……新しく始めたかった、か」

日向「過去の自分はあまりにも……無知だった」

日向「一つの事に囚われていた。それが正しいのだと信じきっていた」

日向「愚かだった。自分を見失っていたのかもしれない」

日向「選択肢は無限にあったのに、私には一つしか見えていなかった」

日向「変えられたかもしれない未来を掴みたかった」

日向「変えられなかった自分を恨んだ」

日向「だから私はここに来たんだ。もう一度新しくやり直して」

日向「今度は自分の望んだ未来を掴む為に」

男「……そうか」

武蔵「……」

日向「それと……"戦場"が恋しくなった。というのもあるかもしれない」

古鷹「……一体何があったんですか」

日向「それは……秘密だ」

響「……」

日向「最後は響に話を聞かせてもらおうかな」

響「私は……」

響「……」

男「……どうした?」

武蔵「……」

日向「……」

響「……私は、ロシアから逃げ出してきたんだ」

響「留学という名目でロシアに渡ったけど。向こうは私に合わなかった」

響「向こうでも艦娘として働いていたから。日本に帰ってきて艦娘を運用している企業」

響「防衛機構がたまたま目に留まってここに入ってきたんだ」

古鷹「ロシアって大変なんですか」

響「うん。ものすごく」

ザバッ

ギュッ

龍鳳「へっ……!?」

男「なっ……」

響「……ふふん」

男(話終わったかと思うとすぐにこちらに向かってきて……腕が俺の首に絡みついた)

響「流石に……解放旅団を……虚構を追ってきたとは言えないから」ボソッ

ここまでです

男(濡れた肌と、髪と、タオルに巻かれていない柔らかなものの上部が俺の身体に触れている)

古鷹「は、はわ……!?!?」カァァ

武蔵「ほう……」

日向「……」

神通「あ……」

男「そ、それはわかったが……その……あの……」

響「……」パッ

ザバッ

響「少し酔いが回っただけだよ。先に上がらせてもらうね」

あ。寝落ちしてました(´・ω・`)

スタスタ...ガララッ


男「……」

武蔵「……ああ見えてアグレッシブな奴なのかもな」

古鷹「……うぅ」

北上「……」ナデナデ

日向「……」

神通「あ……あの、提督」

男「……」

龍鳳「……?」

武蔵「おい、そんなに恥ずかしかったのか。やっぱりウブだなお前は」ポンッ

男「……」フラッ

パシャンッ

日向「ん……」

龍鳳「ひっ」

男「……」ブクブク...

北上「こ、これって逆上せてるんじゃない!?」

武蔵「なに!?おいしっかりしろ提督!」バシャッ

ブンブン!!

男「うっ……うぐぉっ」ガクンガクン

神通「早くお風呂から上げないと……!」

古鷹「と、とりあえずお部屋に運んでそれからええっと……」

日向「誰が身体を拭くんだ?」

「「「「「「……」」」」」」

武蔵「ふむ……どうしたものか。流石に不可抗力とは言え見られたのを知ったら引きこもるかもしれんな」

日向「じゃんけんで負けた人が拭くっていうのは?」

北上「そ、それなら問答無用だね」

古鷹「もし当たったら……」

武蔵「大丈夫だ。少し距離を置かれるだけで済む」

古鷹「……」

龍鳳「ど、どうしましょうか……」

武蔵「……ふむ」ポリポリ

パシャンッ

男「……」ブクブク

神通「提督!!」

武蔵「おおっと」ガシッ

男「……」ガクッ

日向「……死んでるんじゃないか?もう」

男(死とは……こうも身近なものだと改めて痛感した)

男(響の卵の様に滑らかな肌と、湯に濡れて艶やかになった香りと、脳を超音速で蕩けさせる様な囁き)

男(程よい力で締められ胸元に柔らかなものに、弾力のあるものを包み込んだタオル……)

男(まるで対物ライフルで射抜かれたかの様に一瞬で、暗闇の底に引きずりこまれた)

男(息苦しくなったかと思えば劈く様な衝撃。柔らかく暖かなものに包まれたかと思えば再び息苦しくなる)

男(意識はゆっくりと、水底へ沈みゆく軍艦の如く)

男(霞んでいく視界に映るのは……上気した女性の顔、耳に僅かに届くのは……)


日向『誰が身体を拭くんだ?』


男(自分で……自分で拭かせて……くれ)

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ーーーーーー
ーーー


「……とく」

「て……く」

男(……俺は……どうなったんだ……)

「てい……く」

男(視界が薄ぼんやりと開けていく)

男(目の前には……)

「提督、大丈夫ですか……?」

男「う……ここは……」

男(寝起きの顔に水を打ったかの様に一気に視界が開ける)

男(俺は今布団の上で寝ている様だ。そして……)

男(浴衣姿の古鷹が、隣に座りながら俺の顔を覗いていた)

男「……暑い」

男(確か俺は……風呂で皆の話を聞いていて……それから……)

古鷹「今お水を汲んで来ますね」

男「……」ポー...

男(ああ……この感覚は……逆上せたのか)

男(……情けない)

古鷹「はい、どうぞ……」スッ

男「済まない……」ゴクッ

男(熱く熱せられた身体に冷たい水が流れ込む感覚はとても気持ちが良かった)

男「……なんというか。迷惑を掛けた様だな。済まない」

古鷹「だ、大丈夫です!」

男(そう言って笑う古鷹)

男(風呂から上がったばかりだからだろうか。顔はまだ上気したままだ)

男(しっとりとした髪の毛は彼女の普段の数倍……女性らしさを醸し出している)

男(それに加え浴衣は……俺の為に急いでくれたのか、汗のせいなのかはわからないが水分を含んでおり)

男(軽く張り付いているのが妙に妖艶に感じた)

温泉は楽しいですけど逆上せないように気をつけましょう

男「……」

男「……なんともこれは……息苦しいな……」

古鷹「まだゆっくりしてて下さい。氷も持ってきますか?」

男「いや、大丈夫だ」

古鷹「……」

男「……」

男(お互いに口を開かずにただぼんやりとしている)

男(なんとなくだが……もどかしい様な、むず痒い様な気もする)

男(それでも決して嫌な状況ではなかった)

コンコン

男「む……来客か」

古鷹「誰でしょうか」

武蔵「入るぞ」

武蔵「体調は?」

男「先ほどよりはマシ程度だな」

武蔵「文字通りゆでダコになりかけていたからな」

男「タコは……そうだな。勘弁してもらいたいものだ」

古鷹「……」

武蔵「悪いな。私が看病してやっても良かったんだが」

古鷹「いえ……相部屋ですから」

武蔵「で、そろそろ夕食の時間だが。皆で食うのか?」

男「そうだな……それがいい。もう少ししたら広間に集まるとしよう」

男「……」ポリポリ

武蔵「まぁ……まだ熱は冷めきらないようだし、もうしばらく休んでいるといい」

武蔵「なにかあったら頼ってもいいのだぞ?姉に甘えるのは弟の特権だ」ニッ

男「考えておく」

古鷹「……」ギュッ


男「……」

古鷹「……」

男「……ん?どうした、古鷹」

古鷹「あ、いえ!なんでも……」

男「俯いていると……そうだな……」

男「普段の元気な君が好きだからな。落ち込んだいる様に見え……」

古鷹「す、すす……」ボフッ

男「……どうした?」

男「……」

男「ま、待て!今のはだな……あの……言葉のあやというか」

男「いや別に間違っている訳でも無くてだなその……ううむ……」

古鷹「うぅ……」

男(まだ熱があるのか俺はまたとんでもない事を……)

男(むやみやたらに好きと言うのは……ううむ)

古鷹「……えへへ」

男「……」

お仕事です

男(うむ……やはりまだ熱がこもっている様だ)

男「……はぁ」

古鷹「どうかしましたか?」

男「いや……もう少しだけ休んだら食事にしよう」

古鷹「はい!」


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男(皆と豪勢な食事を済ませた後。俺は雪がちらつく寒空の下にいた)

男「……」カチンッ

ジジジ...

男(煙草の煙が雪降る空へと舞い上がる)

男「……」

男(旅館内は禁煙と言う事で、わざわざ表にまで出て煙を呑んでいる訳なのだが……)

男(いや、喫煙所はあるが……)

男「この方が風情がある……」

男(灰混じりの息を吐き出し、冷たい空気を吸い込む)

男(今度は真っ白な、汚れの無い息が空へ舞い上がり消えた)

男「……」

男(なんと言えばいいのだろうか。わからない)

男(今まで経験した事の無い様な満足感に包まれていた)

男(思い返せば本当に、こんなに楽しい経験をした事は無かった)

男(自分の姉だと気にかけてくれる仲間。懸命に自分の看病をしてくれた仲間。日々を共に過ごしてきた仲間)

男(……違う)

男(俺は……皆の事を……)

男(家族だと。思いたいのかもしれない)

男(大切な家族だと思いたいのだ)

男(これが……温かみなんだと。初めて感じた様な気がした)

レ級『……次に会う時は、多分[ピーーー]から。ね』


男「……はぁ」

男(優しげな思いが集まってくると同じくらいに、自分に迫る危機も思い出してしまう)

男「……無粋、だな」

男(だがそれだけきっと。大切だと思えている証拠でもあるのかもしれない)

男(きっと……)


古鷹「提督」

男「古鷹……」

男(浴衣姿の古鷹が震えながらこちらに歩いてくる)

男「風邪でも引いたら大変だぞ」

古鷹「提督も」

男「……頭の熱を冷ましていた」

古鷹「冷めましたか?」

男「ようやくな」

>>232


レ級『……次に会う時は、多分殺すから。ね』


男「……はぁ」

男(優しげな思いが集まってくると同じくらいに、自分に迫る危機も思い出してしまう)

男「……無粋、だな」

男(だがそれだけきっと。大切だと思えている証拠でもあるのかもしれない)

男(きっと……)


古鷹「提督」

男「古鷹……」

男(浴衣姿の古鷹が震えながらこちらに歩いてくる)

男「風邪でも引いたら大変だぞ」

古鷹「提督も」

男「……頭の熱を冷ましていた」

古鷹「冷めましたか?」

男「ようやくな」

男「……すぅ」

ジジジ...

男「さて……部屋に戻ろう」

古鷹「提督」

男(先ほどまで笑顔を浮かべていた古鷹だったが。旅館の中へ戻ろうとした瞬間)

男(真剣な表情で俺の腕を掴んだ)

男「……」

古鷹「……」

男(雪が二人の頭や身体にまとわりつく)

男(何故だかこの時の古鷹の姿はとても……美しく見えた)

男「……どうした」

古鷹「提督……私、決めていた事があったんです」

男「……」

古鷹「ずっと……ずっと前から思っていて。けど勇気が出なくて」

古鷹「でも。今日、今日絶対に……言わなきゃって……」

男「……古鷹」

男(古鷹の黒と金色の瞳が潤んでいる様に見えたのは気のせいだろうか)

男(口の端を噛みながら。絞り出す様にして、彼女は……)

古鷹「提督……私。ずっと……提督の事が……」


古鷹「好きでした」

ここまでです

男(それから……俺はどの様な返事をしたのか、古鷹はどの様な反応をしたのか)

男(よく……覚えていなかった)

男(部屋に戻ってもお互いにぎこちなく)

男(……あまりよく寝れなかったのだけははっきりと覚えている)


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ブロロロロ...


龍鳳「楽しかったですね!」

神通「はい。とても……」

武蔵「美味い酒に料理も堪能出来たしな」

日向「二人とも酒臭いぞ」

響「遅くまで晩酌をしてたからね」

北上「朝風呂でもしてきた方が良かったんじゃないの……?」

男「……」

古鷹「……」

武蔵「む……どうした二人とも」

男「あぁ……いや」

古鷹「べ、別になんとも……」

男「……土産。少佐に土産を買わないといけないな」

古鷹「そ、そうですね!私たちのお土産も必要ですし」

北上「あー……お土産かぁ」

武蔵「肉に地酒に山の幸。かぁ……」

龍鳳「葡萄にりんごもありますよ!」

武蔵「久々にやるか」グッ

日向「そんなに乗らないだろ、この車」

神通「なにはともあれ、いい旅行になって良かったです」

男「そうだな。いい旅行だった……」


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お仕事です

男「失礼します」ガチャ

少佐「帰ったか。ご苦労」

少佐「で、成果は?」

男「文書は予定通りに」

少佐「もう一つは」

男「ここに」ガサガサ

ドン

少佐「おお……!」

少佐「信州豚のソーセージにこれは……チーズか」

少佐「ハムもあるじゃないか!礼を言おう」

男「いえ。私もいい経験が出来ました」

少佐「そうか。それならよかった」

少佐「それと……私からのサプライズはどうだったかな?」

男「はい。堪能させていただきました。確かにいい宿でした」

少佐「……君も言う様になったな。少しは克服出来たか」

男「元より、あの様な感情は戦場には持ち出しませんが」

少佐「いや。戦場という極限の状況でこそあり得る話だ」

少佐「決して私が楽しむ為ではないぞ。あくまでそういう教訓を覚えてもらう為にだな」

男「お心遣い痛み入ります。これは私からも何か別のもので返さなければなりませんか」

少佐「ははは!そうだな……楽しみにしているぞ」

短いですが

これで日常編は終了です。ここから最終局面へ進んでいきます

日常編でこれだけ掛かったので最終章がこのスレで終わるかどうかちょっと怪しいですね……

男(それからは。平穏な日々が続いた)

男(深海棲艦がかなみ市に現れる事は無く、電子世界での出撃こそあったが大したものでは無かった)

男(結局、あの時に。どの様な返事をしたのかは思い出せていない)

男(古鷹は最初こそ何処となくよそよそしい様子ではあったが、しばらくしていつもと変わらぬものになった)

男(だが俺は……)

龍子「でやぁぁぁッ!!」

スパァンッ

男「くっ……」

カランカラン...

龍子「おいおい、どうしたんだよ急に。らしくねーぜ」

男「あぁ……すまない」

男(防衛機構での生活の中で、龍子に鍛錬をしてもらう事も多くなっていた)

男(龍子に稲。二人ともだいぶ打ち解けてきたと自分では思っている)

龍子「なにか、思い詰めてる事でもあんのか」

男「いや……大した事ではない」

稲「……」

龍子「……」

龍子「一点の曇りも無かったお前が急にうわの空になるなんて。真面目そうなお前じゃなにかあるとしか思えねーけどな」

稲「一人で抱え込んではだめですよ。お話ならいつでも聞きますから……」

男「……そうだな。だが今回は偶然だ」

男「もしなにかあれば、聞いてもらう事にする」

龍子「……」

稲「……」

男(あの時からだ。あの時から……)

古鷹『提督……私。ずっと……提督の事が……』

古鷹『好きでした』


男(ふとした時にあの瞬間の風景が、香りが、言葉が脳裏をよぎる)

男(鼓動が早まり息苦しくなる)

男(一度考え始めるとまるでシールを剥がす時の様に、脳にこびり付いて剥がれない)

男(古鷹と顔を合わせる時にも、平然を装ってはいるが)

男(何度も、何度もあの言葉が脳内で再生される)

男(あまりにも突然の事で対処しきれないのか、それとも……)

男(だがそれなのに。その後の事だけが思い出せない)

男(俺はなんと言ったのか。彼女はどう答えたのか)

男(靄がかかり、ノイズが鳴り響いている中を彷徨う様に。掴めない)

龍子「ま、それにしても。だいぶ上達したな」

稲「お姉ちゃんと同じくらい強いのです!」

男「いや、まだまださ」

龍子「元々が常人並みじゃ無かったからな。基礎を身体に叩き込んで柔軟な動きで対処する。それだけ出来りゃ相当になる」

龍子「オレよりも、強くなってるんじゃねえか?」

男「……だがこれだけではまだ足りない」

龍子「足りねえって……お前何と戦おうとしてんだよ」

男「……さてな。俺にもわからん」

龍子「……」

龍子「昔。お前みたいなやつを見た事がある」

龍子「そいつも、とにかく強くなろうと必死になってた」

龍子「……人間じゃねえ化け物と戦おうとしてるのかってくらいにな」

男「……」

稲「お、お姉ちゃんそれは……!」

龍子「ま。無理すんなよ?自分がぶっ壊れちまったらどーしよーもねぇ」

男「あぁ……そうだな」

稲「……」

龍子「少し休憩したらまた打ち合いでもするか!」

男「よろしく頼む」


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ここまでです

男「……」

コツコツ

男「……」ピタッ

武蔵「今帰ったのか」

男「あぁ。そうだ」

武蔵「……」ニヤッ

ビュッ!!!

男「ッ!!」

バスンッ

男(寮へ戻った俺を出迎えたのは武蔵の鋭い蹴りだった)

男「……なんのつもりだ」ググッ

武蔵「フッ……そうだな」スッ

武蔵「少し付き合え」

ガッドカッ

キュッ

男「……」ググッ

武蔵「……」

男「ふっ……!!」シュッ

武蔵「甘いぞ!!」キュッ!!

ブンッ

男「ッ……」パシッ

武蔵「ほう……今のを受け止めたか」

男「まだまだ行けるぞ」

武蔵「……少し休憩にしよう」


男「……」ゴクッ

武蔵「……お前、最近よく出掛けているみたいだが」

男「少しな」

武蔵「格闘……特に軍刀を使った格闘が見違える様になった」

武蔵「外で訓練でもしているのか」

男「……知り合いに剣術の腕が立つ人間がいる。その人間に教えを請うているだけだ」

武蔵「そうか……」

武蔵「その人間、女か?」

男「……それを聞いてどうする。女だが……」

武蔵「いや。自分の力で打ち放つのではなく、相手の力を利用して力にする術に思えたのでな」

武蔵「女性ではないかと踏んだまでだ」

男「……」

武蔵「……なぁ、提督」

武蔵「私だけでは心許ないか?」

男「……いや、そういう訳ではないが」

武蔵「ならば何故私以外の人間に教えを請う必要がある?」

男「……」

男「武蔵が心許ない訳ではない。ただ……」

男「いずれ迫り来る脅威に、潰されない為に」

男「お前や、他の仲間を守る為に。何よりも強くなければならない」

男「その為には様々なものを糧にしなければならない。それだけだ」

武蔵「そうか……」

男(汗を伝う額を拭う武蔵の表情は、何処となく寂しげに見えた)

男「……なにかあったか?」

武蔵「いや……なにも」ググッ...

男「……」

男(すると次には……拳を握り締めながら……口の端を噛み締めていた)

男「……やはりなにか」

武蔵「違う。違うさ……」

武蔵「……そうだな。お前の姉としては、弟の成長を見守る事は時に辛い、か」

武蔵「私の手を必要とされなくなるのは、少し……寂しい」

男「……」

武蔵「言うなれば……息子が実家から離れて一人になる時の母の様な心境、とでも言うのか」クスッ

男「……」

武蔵「もしお前が私より強くなったら……女らしくしおらしくしてみるか」

男「それは……どうなのだろうか」

武蔵「……しょうに合わなすぎるな」

男「そうだな……」

ギュッ...

男「……」

武蔵「……もし、私が戦闘や技術で必要無くなったとしても。それ以外の所で頼ってくれ」

武蔵「お前の……姉でいさせてくれ」

男「……わかった」


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『進行具合はどうだ?』

「こちらはほとんど終わりだよ」

『そうなると……相手の出方を待つだけか』

「そうだね」

『……危険な作戦になる。大きな犠牲を払うかもしれない』

『油断は……許されない』

「わかってるよ。こちらに相手の動向は逐一連絡する」

『頼む。必ず……成功させよう』

「……」

「……夢幻、か」


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ここまでです

「おいレ級。奴らはどうなってんだ」

レ級「大丈夫。まだ嗅ぎ付かれてないよ」

「ったく。いくら雑魚をぶつけてるったってよぉ。うぜぇったらありゃしねぇぜ」

「だが、奴らも間抜けではないだろう。囮と知りながらあえて攻撃を続けてるのやもしれん」

「まぁ……それでもいいけどよ」ニヤッ

「多分……いや確実にだ。"アレ"が出てくるのを待ってんだろ」

「我らの隠し玉。奴らにとっての"虚構"だからな」

レ級「でもそんなに簡単にはやられないでしょ?」

「機動力と瞬間の火力に特化してくればわからん」

「そうだな……そうすっと……」

「要は虚構が速攻で向かってこねぇ様にすりゃいい訳だ」

「……」

「わかってんだろ?そろそろ、始めようぜ」

「……」スッ

「いいだろう。で、あの男は……」

「ブッ殺すに決まってんだろ!!刻んで豚の餌にしてやる」

「レ級。始めるぜ」

レ級「うん」

「……やっとだ。やっと……」ギュッ

男「……すー」

男(煙が夜の闇の中へと消えていく)

男(ただぼんやりと空を見つめながら煙草を吸うのが最近癖になっている気がする)

男「はぁ……」

男(季節はもうそろそろ春と言った所だが、まだ外は外套を羽織らなければ肌寒い)

男「……ん」

男「今日の月は……青い……な」

男(星の殆ど見えない空に輝く月が今日は青く、輝きを灯している)

男「吉兆かそれとも凶兆か……」

男(出来るならなにも無い……それが一番に決まっている)

男「……」

ジジッ...


古鷹『提督……私。ずっと……提督の事が……』

古鷹『好きでした』


男「……」

男(不意にその声は現れる。静かだった俺の心を少しずつ……かき乱していく)

男(まだ……思い出せない。なんと答えたのか、わからない)

男(……結局古鷹はいつもと同じ様に戻ったとは言え)

男(やはり何処となく……隔たりが出来てしまった様な気がする)

男(俺は彼女を傷つけたのだろうか)

男(俺は……)

北上「てっ……提督!!!」ドタドタ

男(物思いに耽っていると北上が慌ただしそうにこちらへ駆け寄ってきた)

北上「ぜぇ……ぜぇ……や、やっと見つけた」

男「どうした。まずは息を整えてからだ」

北上「はぁ……すぅー……」

北上「はぁー……」

北上「って!!それどこじゃないし!!」

男「一体何があった」

北上「早く……少佐の所に……あーしんど……」

北上「第二級戦闘配置に第一級電子戦警報!本部も寮もサイレンで煩いんだから!」

男「第一級……」

男(時折防衛機構の内部に警報が鳴り響く事がある)

男(第一級から第三級までに分かれた危険度合いによって警報が鳴り響くのだ)

男(最下級の警報でさえ、殆ど鳴る事はないのだが)

男(恐らく、第一級は前代未聞なのではないだろうか)

男「わかった、すぐに向かう。北上は全員を室内リビングに集めておいてくれ」

北上「またダッシュか……りょーかい」ダッ

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男「失礼します」ガチャ

少佐「中尉……一体どこにいた」

男「少し離れていました。聞いた話の通り……警報が鳴っていますが第一級とは……」

男(本部に近づいた瞬間から警報の音が聞こえ出した)

男(本部内に入ればけたたましく鳴り散らしていた)

少佐「今すぐ艦娘と共に進水せよ。座標は本部で構わない」

少佐「詳細は追って話す。行け中尉!!」

男(いつもの柔和な表情からは想像も出来ない程に気迫に満ちた表情で声を荒げた)

男「わかりました。すぐに向かいます」

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男「全員、揃っているな」

武蔵「何があった」

男「俺にもわからん。だが想像を絶する危機が迫っているのは確かだな」

男「全員急ぎ第一進水室へ!!詳細は追って話す」

日向「穏やかではないな」

神通「……」

龍鳳「……」ゴクッ

響「……」

北上「やばいよね……これ」

古鷹「……」


レ級『……次に会う時は、多分殺すから。ね』


男「……」

男(そう簡単にはやらせんぞ……)

ここまでです

男「全員位置へ。ヘッドギア装着」

男(各々設置されたベッドへ寝転び、母体機器へと繋がれる)

男「オペレーターは響。任せた」

響「うん」

少佐『全員聞こえるな。ブリーフィングは進水後だ』

少佐『慌てず冷静に。対処して欲しい』

男『わかりました。進水開始します』

響「カウント開始。10、9、8」

男(遂に来たか……)

響「7、6、5」

男(どれ程の戦力かは知らないが……)

響「4、3、2」

男(撃破するのみ……!)

響「1、0。進水開始」

男(意識が奪われ、奈落に落ちるかの様な感覚に包まれる)

男(気がついた時には、何時もの海に立っているのだ)


男「全員艤装の状態を確認しろ。少佐」

少佐『全員、そこにいるな』

少佐『ブリーフィングを始める』

少佐『敵深海棲艦の一団が国防軍のファイアウォールを破壊』

少佐『データを侵食しながら、防衛機構のネットワークに接近している』

少佐『総数は……100を超えている』

男「100……」

武蔵「とんでもない数だな」

少佐『今だその数を増やしながらこちらへ接近して来ている。今後どうなるかは不明だ』

お仕事ですー

少佐『今回の戦闘は防衛機構戦力を最大限まで導入し、国防軍との共闘だ』

少佐『全体の足並みを揃え、防衛機構指揮官、国防軍指揮官との戦略によって敵を撃滅する』

少佐『私からの指示を仰ぎ、全力を持って戦闘を行う様に』

男「わかりました」

少佐『……今回の戦闘は想像を絶するものになるだろう』

少佐『死ぬなよ、中尉』

男「……えぇ」

少佐『座標をレーダーにマークした。その地点にまずは向かってくれ』

男「はい」

男「全員、レーダーを参照。まずはそちらに向かう」

男「単縦陣を維持しつつ進軍する。頼んだぞ」

男(空間を触るとそこに地図の様なものが表示された)

男(赤いポイントがマークされている。まずはそこまで向かう事になる)

男「……」

男(水中に沈んだ都市が月に照らされ煌めいている)

男(夜間戦闘か……敵の奇襲に気をつけなければな)

男「進軍開始」


男(水中から顔を出している朽ち果てたビルをかわしながら進んでいく)

武蔵「久しぶりに……面白い戦いになりそうだな」

龍鳳「艦載機発艦させますか」

男「レーダー地点にはどうやら味方の防衛陣地があるようだが……念の為だ。頼む」

龍鳳「はい!」

男(そう言うと龍鳳は弓を構える)

龍鳳「発艦!!」

ゴゴゴ...

男(龍鳳の背に黒い空間が広がる。矢を放つとその空間から戦闘機が姿を現した)

キィィン...

男(青い光を放つF-14が二機、闇夜へと飛び立った)

日向「ハリアーは準備しておく?」

男「あぁ。何時でも戦闘態勢に入れる様にしておいてくれ」

北上「ま、やりますか」

神通「気を引き締めて参りましょう」

古鷹「……」

男「響、聞こえるか」

響『大丈夫だよ司令官』

男「バックアップは任せた」

響『Принято』

男「ふむ……」

男(海面を疾走する艦娘達の後方に付き、エスカレーターにでも乗っているかの様に俺もまた立ち尽くしたまま移動を続ける)

チャキン...

男(護身くらいは出来なければな)

男(SCARの薬室に弾丸を装填する)

男(しばらくして見えて来たのは……)

武蔵「あれは……砦か」

男(タレットや対空砲、迫撃砲が幾つも設置された堅牢そうな正しく砦であった)

男(その周囲には現実世界と同様の姿の駆逐艦や巡洋艦)

男(次世代兵器でもある蜘蛛型駆逐艦、狼型駆逐艦、傀儡型軽巡洋艦)

男「国防軍か……」

日向「あれが……次世代兵器」

しんどいっす(´ ; ω ; `)

まぁ……投下時間が大体タイムカードみたいなもんですからね……最近の見るとこうげっそりします

男(他にも国防軍所属の艦娘部隊や防衛機構の艦娘などが前線に待機している)

男(まさに今ここで戦争が始まろうとしているのだ)

古鷹「……」

龍鳳「……戦争が……始まる……」

武蔵「……」グッ

神通「……」キュッ

北上「こりゃ……やばいよね……」

響『作戦決行地点に到着。これより少佐より作戦概要の説明があるよ』

少佐『防衛機構所属の人間、全員聞いているな』

少佐『これより我らが部隊は迫り来る深海棲艦部隊をここで迎撃する』

少佐『作戦立案、実行は防衛機構司令官及び国防軍司令官によるものである』

少佐『全員、心して掛かる様に』

男「……」ゴソゴソ

男(……まさかこの世界でも)スッ

カチンッ...シュボッ

男「……ふー」

パチン

男(煙草が吸えるとはな)

武蔵「おい。トレンチに手突っ込んで煙草なぞ吸っていると国防軍のお偉いに目を付けられかねんぞ」

男「……すぅ」

男(まぁ……確かにスーツにトレンチコートなどと言う格好は戦場には似つかわないが)

男「決戦の前だ。少し許せ」

男(あいつらは"俺"を狙ってこの場所に来ているのだ。誰も知らない事だが……)

男(誰も知らないからこそ俺自身に対する重みは変わってくる)

男(はっきり言って…緊張で心が折れそうだ)

男(だからこそ落ち着かなければ……冷静に考えればいけない)

少佐『作戦の概要を説明する』

少佐『敵は第三波にまで別れて進軍をしている』

少佐『一番規模の大きなものが第一波だ』

少佐『これをまず部隊長の指揮の元国防軍と連携。壊滅させる』

少佐『第二波は国防軍の所属である蜘蛛、狼、傀儡を先行させ囮する』

少佐『各部隊は二方向より囮と交戦中の深海棲艦部隊を挟撃、撃破』

少佐『一番少数である第三波を総力で攻撃。そのまま深海棲艦の前線基地まで進撃、奪われたネットワークを奪還』

少佐『大まかな流れはこうだ。頭に叩き込め』

少佐『各部隊長には指示書を送信する』

少佐『じっくり眺めている時間はない。至急読み完璧に覚えろ』

少佐『作戦開始報告や各部隊の報告。指示のタイミングは部隊長、オペレーターに任せる』

少佐『……各員、己の総力を以って立ち向かえ。健闘を祈る』

男「……すぅ」

男「はぁ……」

男(波状攻撃か……奴ら、深海棲艦の上位個体を揃えて来たな)

男(それとも……深海棲艦の指揮官が……)


「やっとか……やっと……奴を叩き潰せる」

「……レ級」ボソッ

レ級「……?」

「奴には悪いが……あの男は俺とお前で捕獲する」ボソボソ

レ級「うん」

「確実に各国を潰す為にはあの男が必要だ。分かってくれるな」ボソボソ

レ級「わかったよ」

「おい、なにコソコソやってんだよ。俺も混ぜろよ」

「なに、作戦の立案をしていただけだ。どうせなら確実に、お前の手で奴を殺したいだろう?」

「ほぅ……よく分かってんじゃねぇかよ」

「"瓦礫の森"に奴らを引き込む。後は……分かるな」

「……そういう事か。いいじゃねぇか、乗ったぜ」

「では……始めるとしようか」

男「さて……これがマニュアルか」

男(空間を指でスライドすると紙の資料の様なものが現れた)

男「……ふむ」

男(しばらく眺めた後、人差し指で横に切る様に資料に触れる)

男(するとその場から忽然と、資料が姿を消した)

響『国防軍前線部隊より入電、深海棲艦部隊第一波を観測』

男「全員、戦闘態勢。龍鳳、偵察機を帰還させてくれ」

龍鳳「はい!」

男「日向、龍鳳は合図を待ち。一斉に艦載機を発艦させろ」

男「国防軍の艦載機部隊とは別に側面から敵艦載機を叩け」

男「武蔵、部隊の矢面に立ち敵を圧迫しろ」

武蔵「切り込み役か……腕が鳴る」

男「神通、北上、古鷹は武蔵の後方より展開。誤射を気をつけながら武蔵を援護」

神通「……参りましょう」

北上「さてと……ハイパー北上様の本領発揮ってとこだよね」

古鷹「重巡の強さ、見せてあげます!」

男「では……全員、死力を尽くせ!!」

ここまでです

ブラックって言えば……ブラックなんですかねぇ。上には上がいると思ってるのでそこまで主張はしたくないですけど

で、関係無いんですけど。電子世界観測世界両方の主人公のコンセプトとして、スーツとコートが似合う。というのがあったり

電子世界の方は若めの中堅サラリーマン。黒スーツに赤ネクタイ。ロングコート

観測世界の方は軍人気質。黒スーツに黒ネクタイ。トレンチコート

だってスーツってやっぱりかっこいいですよね……?

響『総司令部より入電、敵深海棲群第一波に攻撃を開始せよ』

響『深追いせず、砦の防衛設備を利用し迎撃の形を取れ』

男「では、砦の正面まで移動するとしよう」

男(俺たちが動き始めたのと同時に他の部隊も動き出した)

男(防衛陣地を背に左右に別れて陣形を組んでいる)

男「所謂鶴翼か……だがこれでは砦が野晒しだな」

男「出来るだけ全砲門の射線上に誘いたい……と言った所か」

男「俺たちは砦正面に構えるぞ。総司令部に入電せよ」

響『了解。総司令部に入電』

男「こちらの艦載機が動き出したか」

男(辺りにいる軽空母、空母級の艦娘の背から次々と艦載機が発艦していく)

男(空に向かって、まるで鴉の群れの様に隊列を成しながら深海棲艦群へと向かう)

男「龍鳳、日向。艦載機発艦せよ」

龍鳳「はい!」

日向「いくぞ……!」

ゴォォォ...

男(それぞれ弓を番え、飛行甲板を突き出す)

男(二人の背、周囲に黒い空間が展開され、そこから艦載機が轟音を上げて一気に飛び出していく)

男「まずは航空戦だ。これで落ちてくれれば儲け物なのだが」

武蔵「そう上手くはいかないだろう。こちらも数は揃っているがやはり向こうの方が圧倒的に多い」

武蔵「少数精鋭が悪い訳ではない。ただ数が多ければ多い程少数の力は圧倒される」

武蔵「戦とはそういうものだ」

男「……そうだな」

男「一人十人分の戦力でも六十……これは敵わん」

男「……ならば、一人百人分の戦力として振る舞おうではないか」

男「どれだけ数を揃えた所で無駄だと教えてやるぞ」

バリバリのスーツマンです。お仕事です

キィィン...

龍鳳「対艦ミサイル発射!!」

日向「各隊に続くぞ!!」

男(群れを成した戦闘機群から一斉にミサイルが発射される)

男(ミサイルの弾幕が深海棲艦の群れに……)

ズドォォォ...!!!

男(直撃した。海面が大きく揺らぎ、爆炎に深海棲艦が飲まれる)

武蔵「さて、私たちも……」

男「まだだ。まだ動かなくともいい」

男(鶴の翼で相手を包み込むまではまだ動くべきではない)

男(左右を囲まれ前へ進む事しか出来なくなった奴らを叩き潰す)

響『国防軍部隊、左翼、右翼共に交戦開始』

男(深海棲艦群が射程に入ったのか、両翼先頭部隊が砲声を上げ始めた)

男(外側へ開く様に、隊列を成して動く様は行進を見ているかの様に正確に、美しく見えた)

ドンッドンッ...ドンッ...

北上「敵の先頭が近づいてきたね」

男「両側から攻撃され、一番手薄なこちらを狙って突撃……か」

響『深海棲艦群、前線基地正面へ突入する模様』

響『国防軍司令官より入電。前線基地配備の無人兵器の砲撃と共に攻撃を加えられたし』

男「……総員、斉射用意」

武蔵「フッ……」ジャコン

北上「まずは一撃……だね」

神通「……」チャキッ

古鷹「い、行きます!!」

龍鳳「敵艦載機と交戦!!制空権を奪取します!!」

日向「艦載機を運用しながら砲撃を加える。航空戦艦の腕の見せ所だ」ジャコン

男(龍鳳を除く全員が砲門に機銃を正面、迫る深海棲艦の群れへと向ける)

ドンッドンッ...

ズドォォォン!!!

男(大きく外れてはいたが近くに砲弾が落ち、水柱をいくつも作る)

男「まだだ、まだ引きつけろ」

ワォォォン...

ギギ...

男(後方から聞こえるのは前線基地に陣取る次世代兵器の駆動音に嘶きか)

バララララ!!!!!

男(視界の外から弾丸が、砲弾が深海棲艦へ降り注ぐ)

男「まだ早すぎる……」

響『国防軍司令官より入電、至急攻撃を開始せよ』

男「まだだ!まだ……待て」

ズドォォォン!!!!!


日向「着弾!!近いぞ!!」

武蔵「的を絞ってきたか……提督!!」

男「……」

北上「結構近いよ……どーすんのさ!!」

神通「静かに!!!」

男(神通の一喝。ここだ……!!)

男「撃て!!」

古鷹「撃てぇー!!」

武蔵「斉射!!!」

神通「砲撃!!」

北上「やっちゃえ!」

日向「航空戦艦の力、思い知れッ!!」

ドドドドドンッ!!!!!

ドゴォォォ!!!!


男(先頭を進んでいた深海棲艦が炎に包まれる)

男「砲撃を続けろ、一気に焼き尽くせ!!」

ドンッドンッドンッドンッ!!!!

男(正面、左右からの攻撃で深海棲艦群は炎の煙に飲み込まれていく)

男(さらに、制空有利となったこちらの艦載機から次々と対艦ミサイルが撃ち込まれ正に……地獄と化していた)

武蔵「呆気ないな!」ドンッドンッ

男「いや……奴らはまだ駆逐級や巡洋艦級ばかりだ。上位個体が見当たらない」

男(当然、これだけではあるまいな)

響『敵第一波、ほぼ壊滅。続けて第二波、来るよ』

男「到着が早い……早くも総司令部の作戦が狂って来たな」

響『総司令部より入電。次作戦提案中、現状を維持し交戦を続けよ』

男(艦娘達はなお、巨大な煙の中へ砲火を浴びせ続ける)

男(煙を掻い潜り出てくる深海棲艦は未だ無し)

響『総司令部より入電。第二波も同様に迎え撃つ、だそうだよ司令官』

男「わかった。全員の弾薬の補充を要請する」

響『了解、弾薬補充要請……承認を確認』

響『補充アプリケーション起動、弾薬数を最大まで増加』

北上「やっぱ、魚雷じゃないとだめだな~」

武蔵「補充か。丁度弾薬を使い切った所だ」

男「前線基地周辺では構わないが、敵支配領域に行けば補充は出来ない。気をつけてくれ」

ここまでです

あ、すいません。今夜はお休みでお願いします

男「さて……」

男(この戦闘。周囲の状況に合わせて行動するのが最善策か……)

日向「ん……両翼が下がって来たな」

男「……そうだな」

男(艦娘部隊は砲撃を続けながら後退していた)

男(恐らく体勢を一旦立て直し再度陣形を組み直すつもりなのだろうが)

武蔵「弾幕が薄れてきたぞ。掃討しに向かうか?」

男「いや、このまま遠距離で片付けよう」

男「掃討しに掛かって敵の第二波に当てられては困る」

短いですがお仕事に…

響『司令官。敵深海棲艦反応が増えたよ』

男「……なに」

響『第三波の後方、第四波だね』

男「第四波……」

武蔵「このまま数で圧し潰すつもりか……ッ」

北上「ねぇ……このままじゃジリ貧じゃない?」

男「……」

響『総司令部より入電、第四波、第五波の出現を確認』

古鷹「どうするんですか提督!」

男「……総司令部からの命令を待つ他ない」

男(このまま次々に押し寄せれば……身動きの取れないままに前線基地まで押し込められる)

男(鶴翼では無理だ。だが……)

神通「側面まで回り込んで奇襲などはいかがでしょう」

男「単独での行動は出来ない。これは国防軍との連合作戦だからな」

男「軍律違反になりかねない」

龍鳳「制空権確保!第二波からも艦載機が来ます!」

日向「ならどうする。提督」

男「個別で動けば各個撃破の可能性がある。あの大群にこれだけの少数での勝算があるのならそれでも動く」

男(やがて砲撃は水平線を黒く染める第二波へと向けられ始めた)

男(煙の消えた場所には……黒い破片や残骸が浮翌遊している)

少佐『中尉、聞こえるか』

男「はい。大丈夫です」

少佐『現場の人間……信頼の置ける者の意見を伺おうと思ってな』

男「信頼……ですか」

少佐『なにか不満でもあるか?』

男「いえ。この状態での防衛線維持は困難でしょう」

男「次々に敵の増援が押し寄せている状態。このままでは追い込まれるのを待つばかりです」

少佐『打って出るか。勝算は』

男「あります。春雷の如く速攻で蹴りをつければあるいは」

少佐『……わかった。総司令部からの指示を待て』

男「わかりました」

武蔵「敵が国防軍部隊との攻撃範囲まで来てるぞ!」

日向「ここは打って出なければ……」

男「浮き足立つな!!」

武蔵「ッ……」

男(冷静に考えろ。どうすればいい……)

カチン...シュボッ...

男「……はぁー」

男(第二波との戦闘が始まった。今度は深海棲艦の上位個体が混じっているからか。ただ単に砲撃を繰り返し前進するだけではない)

男(相手も考えて動くのだ。冷静に、落ち着いて判断しなければ)

ここまでです

日本語って一言で情景とか、雰囲気が伝わる様な。奥ゆかしく美しいものが沢山あって素晴らしいと思います

少佐『中尉。次の作戦を与える』

男「はい」

少佐『深海棲艦の発生元らしき情報の乱れを発見した』

少佐『おそらくそこが、今回の戦いの重要地点となるだろう』

少佐『……君にしか頼めない事だ』

男「……」

少佐『少数艦隊を率いて深海棲艦発生ポイントを急襲せよ』

男「……はい」

少佐『私から言える事は……必ず生きて攻略するんだ』

少佐『失敗でも構わない……とは言えないが……とにかく。全員無事に帰還せよ』

男「……必ず。生きて戻ります」

少佐『うむ。作戦の細かな内容は君に一任する。バックアップも全力でしよう』

少佐『敵に作戦を悟られる訳にはいかない。が……君の望む数の部隊を付けよう。どうする』

男「……」

男(……この作戦。はっきりと言ってしまえば無謀だ)

男(だが……こうでもしなければ。波状攻撃に押し潰されるのを待つだけだ)

男(援軍……を待つのも手だが。恐らくこの前線を守りきれなければ……)

男(防衛機構が深海棲艦に奪われる)

男(……奴らの目的が俺なのだとすれば)

男(深海棲艦の発生ポイントに到達した瞬間に……殺到するだろうな)

男(攻撃を仕掛けてきている深海棲艦を釣れればなお……)

男「……いえ。俺の部隊のみで作戦を遂行します」

男「ただでさえ戦力不足。そこからさらに減るとなれば……」

少佐『なっ……だがそれでは君の部隊は……!!』

男「……少佐。貴方がこの作戦を指示した訳ではないのはわかります」

男(俺は空間を撫でる様に手を動かした)

男(幾つもの記号や数字が浮かび上がり……CALLの文字が赤く光り現れた)

男『極秘回線に切り替えました。これなら傍聴されません』

少佐『……国防軍は我々を捨て駒にするつもりらしい』

男『容易に扱え、尚且つ自分達には被害がない。PMCとは元々そう言った利点があり使われるものです』

男『我々からしてみれば短期で多額の金が入り込む。危険を犯してでも取り入る事が何よりも重要』

男『ですが割に合わないと思えばすぐにでも契約を打ち切れる』

男『お互いに利用点があり。こうして共に戦っている』

男『……これを踏まえた上でお互いにとって重要な事は……』

男『信頼。一度引き受けたならばそれだけは必ず守る事。その前提があってこそです』

少佐『……』

男『他の防衛機構の部隊は前線基地の防衛に回しておくべきです。被害を最小限に抑える為にも』

男『仮に捨て駒として扱われ、その役目を全うしたとしても。我々だけなら被害は一番少なくて済む』

男『作戦が成功したなら防衛機構も、国防軍もお互いに万々歳です』

男『最も、誰も欠けさせるつもりはありませんが』

少佐『……私に発言力があれば、この様にはならなかったのかもしれない』

男『……バックアップ。よろしくお願いします』

少佐『……あぁ』


男「……全員。我々はこれより独自に動き、深海棲艦発生ポイントを急襲する」

武蔵「ふっ……そう来なくてはな!」

古鷹「その……私たちだけ……ですか?」

男「……そうだ。俺たちだけだ」

北上「それってさ、勝ち目あるの?」

男「……はっきり言えば皆無だ」

龍鳳「……」

北上「……」

神通「……可能性は自分達で広げるもの。勝てるかどうかは私たち次第、ですね」

男「そうだ。俺たちの行動によって決まる」

男「皆を死なせるつもりはない。必ず生きて帰そう」

日向「その言い方はまるで提督が犠牲になる様に聞こえる」

男「……そのつもりもないさ。俺含め、全員で帰るぞ」

男(恐らくだが、俺と少佐とのやりとりを聞いて国防軍の司令官が提案したのだろう)

男(少佐はこの様な作戦を考える様な人間ではない。常人よりは確実に頭が良い事は保証出来る)

男(……傍聴とはな。しているとは思っていたが)

男(さて……俺もやらねばな)

男「響、聞いていたな」

響『うん』

男「そのままサポートを頼む。無事帰還出来る様にな」

響『わかったよ。絶対に無事でいてね、司令官』

男「あぁ……勿論だ」

ここまでです

男「攻撃地点は遥か深海棲艦の向こう。気取られる事無く近づく事が重要になる」

響『なら、暗号化を掛けようか』

男「頼む」

男(暗号化とは、対象を誰にも解読出来ない様に処理を施す事で……要は敵にも味方にも見えなくなるという訳だ)

男(小規模なものなら大した事は無いが。規模が大きくなるにつれ処理に掛かる労力は格段に変わってくる)

男(俺を含め7人。これでも一人ではかなりの時間が必要に……)

響『暗号化の準備が出来たよ』

男「……」

男「全員、まずは戦線を離脱するぞ」


ザァァ...

男(味方の姿も敵の姿も米粒の様に小さく見える)

男(どうやら前衛の艦娘部隊が深海棲艦との乱戦にもつれ込んでいるようだ)

男「ここまで来れば問題ないだろう。響」

響『暗号化開始』

バジッ...ジジッ...


男(足元から電流が迸り、それが全身へと回っていく)

男(それが終わるが……見た目が特に変わる訳では無かった)

響『暗号化処理完了。あまり近づかなければ深海棲艦に気付かれないよ』

男「よし、では迂回して行くぞ。全速航行!」


『……そうか。わかった』

『ついに……動き出したか』

「うん……」

『しかし……それでは死にに行く様なものだ。無謀すぎる』

『俺たちには仲間がいた。だから出来た事だった……』

「どうするの?」

『……そのまま続けてくれ』

『なんとかしてみるさ』

ザァァ...


男(俺たちは再び陣形を組みながらの移動を開始した)

男(皆、一様に真剣な表情をしている)

男(……それもそうだな)

男(勝てる可能性は皆無と、そう言ったにも関わらず誰も反対もせずに移動してくれている)

男(皆、俺の事を信頼してくれているのだろうか……それとも)

男(……どれにせよ。俺は全員を生きて返す義務がある)

男(それだけは……確実だ)

お仕事です

日向「提督。航行速度が早すぎないか?」

武蔵「動きが大きければ大きいほど発見される確率は上がる……が」

男「確かに、暗号化が万能な訳ではない。敵に近づけば探索され場所を読まれるのは予想の範囲内ではある」

男「だが今は夜間だ。視界も狭まる」

男「更に奴らも列を成して大きな音を上げながら移動している」

男「それに加え決戦とも呼べる様な大戦線を敷こうとしているのだ。意識は砦の方へ集中して向けられているだろう」

男「砲声、航行音、視界不良。意識の外での行動である事」

男「これだけの要素があれば発見される危険性はかなり低まる」

男「こちらが超少数である事も理由に挙げられるか」

神通「それに……選り好みしているような時間は無い」

男「その通りだ。全速力を持って敵陣を最短で攻撃する事が俺たちに一番求められている事だ」

響『こちらの前線が後退。砦の射程範囲内に収まったよ』

男「前線を下げたか……」

響『全火力で深海棲艦に対抗している。第四波ももうすぐ到着する』

男「……あちらは地獄だろうな」

響『国防軍は各方面から部隊を編成。防衛に送り出したよ』

響『アメリカ軍も援軍を出したけど……どちらも到着は間に合わない』

男「全員。響と俺の会話は聞こえているはずだ」

男「……時間が無い。到達次第一気に畳み掛ける」

古鷹「他のみんなは……大丈夫なんですか……」

男「響、部隊の損害は」

響『国防軍の総艦娘数は25』

響『内7人は司令官の部隊』

響『総部隊数は4部隊』

響『大破した艦娘は1人、中破が2人』

響『国防軍が前線に出ていたからまだ被害は少ないね』

龍鳳「でも前線が下がった……」

北上「やられるのも時間の問題って……事だね」

男「ん……割り込みが入った」

響『了解』

少佐『中尉、聞こえるか』

男「はい」

少佐『支配領域を脱したか。通信も妨害される可能性が出てきたな』

男「深海棲艦に近づけば。連絡はほぼ取れないでしょうね」

少佐『……私にも出撃命令が下った』

男「……少佐」

少佐『国防軍の次世代兵器艦隊を率いて前線へ出よ。との事だ』

男「いくら最新鋭だとしても艦娘の様に運用するのは……」

少佐『分かっている。火力も、装甲も敵わない事はな』

少佐『だがそれだけ追い込まれている。乱戦の範囲は未だ広がり続け……』

少佐『国防軍の人間には多数の死傷者が出ている』

少佐『あれは男性が艤装を利用出来ないのを補う為に電子世界にも配備された』

少佐『外部から脳を直接繋げ、精神をあの兵器に移している』

少佐『当然破壊されれば……死ぬ』

男「……」

少佐『国防軍の進水室は痙攣を起こし、血を吐き出し、断末魔を上げる兵士で溢れているそうだ』

少佐『そいつが死ねば血だらけのシートにまた別の兵士が身体を預ける。またそいつが死ねば別の兵士が……』

男「まるで……死刑台ですね」

少佐『私もその死刑台に立つ時が来た様だ』

男「少佐」

少佐『どうした』

男「……ご無事で」

少佐「……ははは。私はまだ死なんさ。君にはまだ頼むべき事がある」

少佐『長野の次は北海道、沖縄、果ては海外だ』

男「……えぇ」

少佐『ではな。これが終わったら酒でも酌み交わそうじゃないか』

男「期待しています」

男「……」

古鷹「提督……」

男「……先を急ぐ。手遅れになる前にな」


ザァァ...

響『もうすぐ深海棲艦出現位置だよ』

男「龍鳳、日向。後方に艦載機を放ってくれ」

龍鳳「後方……ですか?」

男「俺たちが作戦領域に突入すると同時のタイミングで艦載機を突入させる」

日向「わかったよ」グッ

龍鳳「は、はい!」キリリッ...

キィィン...!!

男「このまま速度を維持、攻撃態勢」

男「誰も命を落とす事なく完了する。いいな!」

武蔵「あぁ!」

日向「わかった」

神通「神通の名に掛けて」

古鷹「絶対に……みんなで帰りましょう!!」

龍鳳「機銃の弾が無くなるまで全力を尽くします!!」

北上「私の魚雷。ぶちかましてあげるよ!」

男「……見えた」

男(俺たちが目指す先。そこには……)

ゴォォォ...

男(空母が艦載機を出現させる時に現れる黒い穴)

男(それもかなり巨大な物であるそこから深海棲艦が次々と送り出されていた)

男(禍々しいそれが……俺たちの破壊すべきもの)

男「突入を開始する!!」

北上「あんなのどうやって壊すのさ!!」

武蔵「物理的に破壊してやるに決まっているだろう?」

男「龍鳳、日向。全艦載機を持ってあの穴を攻撃!!」

男「日向、武蔵、神通は主砲を斉射。北上は魚雷を撃ち込んでやれ」

響『ジジッ...が、こちジジッ...に気がつジジジ...みたい』

男「通信も使い物にならんな……」

男「合図をする。一気に行くぞ!!」

ドンッドンッドンッ...


ズドォォォン!!!

男「撃てえええ!!」

ドドドドンッ!!!!!

北上「まっ、私って基本雷撃だしね。いっけえええ!!」ボシュボシュボシュッ!!!

龍鳳「対艦ミサイル発射!!」

日向「撃て!!!」


ズドォォォンッ!!!!!


男(激しい轟音と爆炎が穴を、周囲を飲み込む。範囲にいた深海棲艦が黒い血を吹き出しながら鉄屑へと成り代わる)

武蔵「提督!!次の指示は!!」

男「突撃だ」

神通「神通、参りますッ!!」シュッ

武蔵「この拳……存分に暴れさせてもらう……ッ!!」

古鷹「撃てぇーッ!!」ドンッドンッドンッ!!!

北上「まだまだ雷撃は続くからねぇ~」

龍鳳「深海棲艦の艦載機は出てきた所を全て撃てば制空を確保し続けられます!!」

日向「ハリアーは穴の攻撃を続行する。全火力で敵を一掃する!!」

男(進軍をしていた深海棲艦がこちらに引き返してくる)

男(だが主砲を撃ってくる気配は全く無い)

男(それもそうか……)


神通「はぁッ!!」シュッ!!!

ズバッ!!!

戦艦ル級「……ッ!!」ブシュゥゥゥ!!!

武蔵「どうした、その程度か!!」ブンッブンッ

戦艦タ級「……」ドゴッゴキッ

日向「私だって、近接は出来る」チャキッ

日向「近距離射撃、だがな」ドンッ!!!

古鷹「深海棲艦の中に行って撹乱させよう!!」

北上「砲撃戦はあんま得意じゃないんだけどなぁ……!!」

龍鳳「提督。私の後ろに」サッ

龍鳳「提督には指一本触れさせません!!」チャキッ

男(神速で敵の懐に潜り込み斬り裂く)

男(鋼鉄の装甲をも破壊する拳と脚)

男(爆風をもろともしない超近距離射撃)

男(敵陣を縦横無尽に駆け巡り)

男(自分の周囲には空から弾丸の雨が降り注ぐ)

男(まるで映画の中にいる気分だ……)

男「……」

男(敵は不意を突かれ統率が殆ど取れていない)

男(撃つ対象が定まらず動けない者、ただひたすら乱射を繰り返している者)

男(態勢を立て直される前に全て屠る事が出来れば……!!)

ここまでです

重巡リ級「……」バッ

男「ッ……!!」チャキッ

タタタンッ!!!

キンキンッ

男「やはり小銃など効かない……か」

龍鳳「提督!!」チャキッ

バララララ!!!

重巡リ級「ごぼっ……」

ドシャアアアンッ

男「……」

龍鳳「大丈夫ですか?」

男「あぁ……」

男「……この様な死地の中だと言うのになにも出来ない……か」

龍鳳「……」

男「……目の前の死合いをただ眺める事しか出来ないのは……やはりもどかしい」

武蔵「大軍勢とは言ったものの……数だけとはお笑い種だな」ドンッドンッ

日向「出来るだけかき乱しながら……態勢は立て直させない」チャキッ

バララララ!!!

北上「何体倒してもキリがないんだけどッ!!」ボシュッ

ドゴォォォ!!!

神通「鬼神の力……思い知りなさいッ!!」

空母ヲ級「……」ジリッ

神通「艦載機も出さずにたじろぐだけでは私は殺せませんよ?」シュッ!!!

男「皆命懸けで戦っているのに……」

男「……無力だ」

龍鳳「提督……提督は……」

古鷹「提督!!」

男「……!!」

古鷹「提督は無力なんかじゃありません!!」チャキッ

ドンッドンッドンッ!!!

古鷹「いつも冷静に、最善の作戦を練ってくれて……提督の指揮が無ければいけないんです!!」ザァァ...

古鷹「だから……そんな事言わないでください」ギュッ

男「……古鷹」

武蔵「……」チラッ

駆逐イ級「……」ガバァッ

武蔵「……」ギリッ

ドゴォッ!!!

駆逐イ級「!?」ベコッ...

武蔵「なぜだ……」ガシッ

ギリギリ

駆逐イ級「……」ググッ

武蔵「こうも……腹立たしく思うのは……どうしてだ」

ギリギリ

駆逐イ級「……」メキメキ...

武蔵「……答えろ」

ベキッ!!!

ビチャッ

武蔵「……チッ」

男「……そうだな」

ポン

古鷹「……っ」

男「ありがとう、古鷹」ナデナデ

古鷹「は……はい!」

男「邪な事を言った。許してくれ」

男「最後まで……気は抜けないな」


「そろそろ……だな」

「そんじゃ始めっとするか」

「墓場へ……ようこそクソ野郎」ニヤッ

ここまでです

あ。お仕事です(大事

日向「次から次へと……!!」ドンッドンッ

武蔵「雑魚もこれだけ大群になるとやはりやっかいではあるな……」

神通「いやぁッ!!」シュッ!!

ザバァッ!!!

神通「はぁ……はぁ……」チャキンッ

男「穴からの敵の流出は止まらず……」

男(奇襲は時間が命だ。奇襲してから殲滅するまでの時間が短ければ短い程その効果を発揮する)

男(逆に時間が経てば経つ程……)

龍鳳「敵が態勢を立て直し始めました!!」

古鷹「提督!!」ドンッドンッドンッ!!!

男(不味いな……予想通り敵は俺目掛けて攻撃を始めている……)

軽巡ホ級「……」バララララ!!!!

ピシッピシュッ

男「くっ……!!」バッ

龍鳳「提督!!大丈夫ですか!?」

男「掠めただけだ。気にするな……」

男(最悪……いやまだだ。まだ早い……)

男(策だ。策を練らなければ……)

ピシュッピシュッ!!!

神通「提督は私がお守りします」ダッ

駆逐ハ級「……」バララララ!!!

キンッキンッキンッ!!!

神通「その様な射撃。当たりはしません」チキッ...

龍鳳「退いて下さいッ!!」チャキッ

バララララ!!!

北上「しつこいよもぉ~!!」

古鷹「敵が集まって来ます!!」

武蔵「これは……少々不味いな……」

日向「提督の周囲に円陣を組んで守るぞ!!」

ドンッドンッドンッ!!!!

バララララ!!!!!

男(日向の声に全員が俺の周囲に集まる)

男(六角形を描く様に俺を中心に据える)

武蔵「沈めッ!!!」

日向「まだ……艦載機がある!!」

龍鳳「引き続き制空権を確保します。頑張って!!」

古鷹「当てさせないッ!!」

北上「やばいなぁ……」バララララ!!!

神通「くっ……!!」

男(弾丸が、砲弾が、俺目掛けて降り注ぐ)

男(だが……中心に集まる鉛弾は全て途中で弾き返されるか叩き落とされていた)

男(皆、決死の表情で戦っている)

男「……」

男(考えろ……打開策を……考えろ……!!)

軽巡ト級「……」バララララ!!!

ドシュッ

男「がっ……!!」フワッ

ザザッ!!!

古鷹「提督!!!」

男「ぐ……左肩が……」

男(そして決死の防衛線が早くも破られようとしている)

男(抜けた弾丸が……俺の肩を抉った)

武蔵「……許さんッ!!!」

男「が……ぐぅぅ……」

男(痛みで視界が点滅する。肩とその周囲が炎で焼かれているかの様に熱い)

男(左腕と手は……動かない)

男「全員!!!俺の事は気にとめるな!!!」

男「なんとしてでも……ッ……あの穴を……!!」

男(だが攻撃では塞ぐ事は出来なかった)

男(ならばどうすれば塞ぐ事が出来る……)

男「ぐっ……」フラッ

男(血がとめどなく流れ落ちる。現実世界に戻ればこれも治っているだろうが死ねばそれで終わりだ)

男(塞ぐ……塞ぎ方……破壊じゃない……別の……)

男(……違う。どうして塞げないのかを考えるんじゃない)

男(奴らは……どうやって開いた……!!)

男「全員!!!あの穴へ突入する!!!」

武蔵「なにっ!?」

北上「と、突入!?深海棲艦の巣かもしれない場所に!?」

男「どうやって塞ぐかを考えるのではなくどうやって開いたかを考えろ!!」

男「その様な事、向こう側に行ってみなければわからない!!」

日向「……わかった。行こう!!」

神通「反転します!!」

古鷹「提督の後ろは私が!!」

北上「……ええいままになれ!!」ダッ!!!

龍鳳「艦載機、突入します!!」

武蔵「面白い……行くぞ!!」

バララララ!!!!

男(敵の攻撃をかわし、光の無い黒へと突き進む)

戦艦タ級「……」ドンッドンッドンッ!!!!!

駆逐ロ級「……」バララララ!!!

空母ヲ級「……」スッ

キィィン...


男「飛び込め!!!」

バッ!!!!!


武蔵「う、うおおおおお!!!」

日向「これは……底なし!?」

北上「落ちるぅ~~~!!!!」

古鷹「きゃあああああ!!!」

神通「ひゃっ……」

龍鳳「ど、どこに繋がってるんですかぁぁぁ!!!」

ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


ジャリッ...

男「……」

ドクンッ...

男「……う」

男(ここは……どこだ……)

男(あの黒い穴に落ちた瞬間意識が飛んだ。そして目を覚ましたそこは……)

男「……っ」

男(黒い雲の浮かぶ紫色の空に輝く青い月)

男(朽ちたコンクリートで出来た様な枯れ木に廃ビルが立ち並ぶ)

男(周囲には他の皆も横たわっている)

男(俺がいるのは……廃墟の様な場所で。丁度大きな交差点の中央の様だ)

男(この交差点も亀裂や断裂が入り、かなりの時間放置されていた事が一目で分かる)

男(それに加え、信号機や止まっている車さえ……錆びついて動かなくなっていた)

男「なんだ……この薄気味悪い場所は……ぐぅぅッ!!」

男(穴の空いた肩が悲鳴を上げる。少なくともここは電子世界の一部という事になる)

男「……通信は」

『……』

男「砂嵐すら無し……か」

男(という事はここは全く先ほどとは別の空間。深海棲艦の巣……なのかもしれない)

古鷹「う……うん……」

男「!」

男「古鷹……しっかりしろ」ユサユサ

男(俺はまだ動く右手で古鷹の方を揺さぶる)

古鷹「あれ……提督……ここは……」

古鷹「ここは!?!?」ガバッ

男「さてな。深海棲艦の巣……なのかもしれない」

古鷹「……気味が悪い」

男「とりあえず。全員を起こして状況を把握する」

古鷹「はい!」


ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーー

男「という訳だ」

武蔵「つまりここが深海棲艦の巣であるかもしれないと」

男「そうだ」

日向「それにしては……音も気配もない」

神通「空気も物凄く淀んでいますし……」

北上「なんか……まとわりついてくるみたいで気持ち悪い……」

龍鳳「艦載機を使って偵察しましょうか?」


「その必要はねぇよ」

男「ッ!!今のは……」

ガシッ

「後ろだ」ニヤッ

男(俺の肩を掴んだのは金髪に、顔半分に刺青の入った男だった)

「やっと会えたなぁ……会いたかったんだぜ」

男(ピアスのぶら下がった唇を半月状に変えて……笑っている)

男「……悪いが。俺には君に面識は無いんだが」

「てめぇが知ってようが知らねぇが関係ねぇ。俺はてめぇを知ってる」

ギリギリ

男(男の肩を掴む手に力が篭る。少なくとも……友好的ではなさそうだ)

バッ

男「離せ」

「そんなに嫌がんなよ……なぁ?」

ここまでです

ザッ

武蔵「貴様、何者だ」

「わりぃが女共には興味ねぇ。用があんのはそこのクソ野郎だけだぜ」

武蔵「出会い頭にクソ呼ばわりか……いい度胸だ」

男「……」

男(一体こいつは何者なんだ……)

男(だらしなく着こなした黒のジャージからはとても……深海棲艦の様には見えない)

男「何故人間がここにいる」

「だから、お前に会いに来たっつってんだろ?」

男「……」

男(この異様な空間に立っているその男は……とてつもなく不気味に見えている)

ザッ

日向「次は誰だ!」

「また会ったね」

男「……レ級」

レ級「こんばんわ」

「おいレ級!!そいつには近づくなよ」

レ級「わかってるよ」

男「……まさか。まさかとは思うが」

男「その男……」

レ級「そうだよ」

男(脳裏にレ級との会話が現れる)


レ級『人間は変わるよ。人を好きになる事はその人を自分の一部にする事』

レ級『自分の身体を引き裂かれた時、君はどうするの?』
レ級『……私の知っている人は、狂った』

レ級『失った部分を憎しみと、恨みと、怒りで埋めて』

レ級『あの人はもう私の知っている人じゃない』

レ級『あの人は……全力で君を殺しにくる。負の感情に狂わされながらね』

男『あの人とは……深海棲艦か』

レ級『まだ人間』

レ級『私もあの人も……気がつくのが遅すぎた』


レ級『……次に会う時は、多分殺すから。ね』

男(わかった。この男に感じたのは不気味さでもなんでもない)

男(ほとばしる……狂気)

「さて……初めて会うのだから自己紹介が必要だろう」

男(また新手……ッ!!)

「自己紹介なんか要らねぇだろ!俺がこいつをぶっ殺せばそれで終わりじゃねえか!」

「まぁそう言うな。例え死ぬ相手にも礼儀は守る必要はある」

男(今度現れたのはくたびれたスーツを来たサラリーマン風の男だった)

「一応。お前たちの言う深海棲艦に属する」

「私は航空戦艦、幻(まぼろ)」

「チッ……戦艦虚(うつろ)」

「初めましてじゃない人もいるけど……戦艦レ級です」

お仕事です。男二人の名前にはちゃんと訳がありまして……

北上「戦艦に航空戦艦って……」

神通「艦娘……ですか……!!」

龍鳳「で、でも男の人には適性は無いんじゃ……」

古鷹「艤装も着けてないよ……」

虚「艤装?見たきゃ見せてやろうか」

虚「そんかわり、お前ら全員死んでもらうけどよ」

武蔵「提督……こいつらが何者かはわからんが……下がっていろ」

男「……」

武蔵「武人である私がそう簡単に抜かれるとは思うまい?」

男「……あぁ」

幻「さて……そろそろ始めようか」

レ級「……」

男(状況が目まぐるしく変わる。あまりにも唐突で、脳の理解が追いつかない)

男(こいつらは……こいつらは一体……)

男「お前たちは……人間なのか?」

幻「人間……と言えば人間だが」

虚「半分バケモンに足突っ込んじまってるよな」

男「半分……人間……深海棲艦」

男「……ッ!!!」


響『多分、深海棲艦がここまでして攻撃してくる理由は司令官に適性があるからで間違いない』

響『深海棲艦達に足りないものを、調達しようとしている』

響『深海棲艦の行動は上位個体が存在しないと纏まりがなく、バラバラに行動してしまう』

響『例えヲ級、ル級、レ級などの上位個体が存在したとしても、深海棲艦が纏まって行動出来る数は限られている』

男『奴らには指揮能力が足りないのか』

響『だから、深海棲艦には強大な軍団の指揮を取れる存在が必要なんだ』

響『適性のある人間に昇華薬を打つ。打った後に深海棲艦の血を分け与える事で深海棲艦と同じ存在にする』

響『深海棲艦が一番欲しがっているのは……深海棲艦達を指揮する者』

響『そう。膨大な量の深海棲艦を指揮出来る提督が欲しいんだ』

響『昇華薬はつまり、人間を強化する薬でも艤装適性を与える薬でもない』

響『深海棲艦の指導者を作り上げる薬なんだ』

武蔵『深海棲艦の提督はもう……何人か存在するのか?』

武蔵『それがいるだけで奴らは大規模な作戦を行える』

武蔵『九十九里沖海戦は……深海棲艦の提督がいたんじゃないのかい』

響『……』

響『いるはずだよ』


男「深海棲艦の……提督」

虚「ほぉ……よくわかってんじゃねえか」

幻「そこまで知っていると言う事は……昇華薬に……戦艦虚構……解放旅団の事も知っているな」

男「……ッ」

虚「ま、どこまで知ってようが関係ねぇ」

キュィィィン...ジャコンジャコンジャコン!!!!!

日向「……っ!!」

男(虚と名乗った男が腿のホルスターからハンドガンを抜くと……)

男(奴の背から無数の機銃が……生えた)

古鷹「なに……あれ……」

北上「ちょっと!!わけわかんないよ!!どうなってんのさ説明してよ!!!」

神通「提督。なにか私達に隠し事がおありですね」

男「……」

神通「……今はいいです。まずは……」

虚「さぁて、楽しいパーティーの始まりだ!!!」

幻「レ級……」

レ級「うん」

虚「殺してやる。肉の塊になるまで苦しめッ!!」

龍鳳「提督には近づけさせません!!」

武蔵「貴様一人でやれるのか?」

虚「俺一人で十分だ。あいつらは黙って見てるだけだからよ、安心しな」

武蔵「ふっ……舐めた真似をッ!!!」シュッ

男(先手を打ったのは武蔵だった。しなり空を裂く蹴りが虚の顔面へ向かう)

ガッ!!!

虚「やるじゃねぇか……」

男(だが虚も、左腕一つで防ぎ余裕の表情を見せている)

武蔵「言うだけの事はある……か」

ゴッ!!!

男(続けて動きの捉えられないほどの拳……いや掌底が繰り返し放たれる)

ガガガガガッ!!!!!

虚「ぎゃははははは!!!おもしれぇ!!おもしれぇよお前!!!」

男(交錯する拳と拳。当て防ぎ当て当て防ぎ。超高速で行われる一進一退の攻防戦)

男(覇気が、鋭い空圧が、周りに放たれているような錯覚に陥る)

男(最早口を開けて見ているしかないと言うまでに入り込む隙の無い戦いが目の前で繰り広げられているのだ)

武蔵「……強いッ」

虚「オラオラオラッ!!どうしたぁッ!!」

男(手数が多い方が有利になる。お互いにより早く、鋭く、多く拳を打ち込もうとする)

男(武蔵の表情は……いつもと違った)

男(どんな時にも余裕のある表情だった。だが今は……)

武蔵「……チィッ」

男(余裕など見せない。本気の表情だ)

男(全ての闘気と、殺意を込めた。そのような表情をしている)

ガガガガガッ!!!!!

男(尚も攻防戦は続く。お互い譲らず、拮抗しているかの様に見えたが……)

武蔵「ぐぅぅッ……!!!」

虚「ん、威力が落ちてきてるぜ。嬢ちゃん」

武蔵「舐めるな……小童がッ!!!」

男(徐々に、徐々に武蔵が……押されている)

男(ジリジリと崖へと追い詰められる様に、少しずつ、少しずつ)

日向「一旦離れて……撃つか」

武蔵「邪魔をするな!!!!」

日向「ッ……!!!」

武蔵「こいつとの戦いは私のものだ。これほどまでに熱くなった事は無い」

ガガガガガッ!!!!!

武蔵「いいだろう……私の本気……見せてやろうッ!!!」

虚「いいぜぇ!!見せてみろよ」

ガッ!!!!!


男(両者の拳が火花でも散らすのではないかという程の力でぶつかり合う)

ザザザ...

男(そして両者とも砂煙りを上げて後方へと滑り、さがった)

武蔵「提督よ」

男「なんだ」

武蔵「帰ったら……死ぬほど美味い飯と酒を食わせてもらうぞ」

男「……わかった」

グッ

武蔵「……」

男(目をつむり、俯く)

サァァ...

男(そよ風が武蔵の髪を揺らし、額から流れる汗を動かす)

男(ポタリ、ポタリと薄汚れた道路に雫を垂らした)

武蔵「シッ!!!」ダッ

男(重い気を鋭く吐くと、再び虚へと拳を放つ)

ガッ

虚「んだよ。さっきとこれっぽっちも……」

ビュッ!!!

虚「うおっ!?」

男(先ほどまでとは違う)

男(超高速の回し蹴りが虚の首を狙う)

虚「蹴りまでまざんのかよ!!ちと面倒くせぇな……」

武蔵「だぁぁッ!!!」

ビュッドガガガガッビュオッ

男(先ほどの猛烈な勢いのままに、足技まで交えて攻撃している)

男(まるで風に荒ぶる花びらの如く、舞い踊る)

仕事……と見せかけて法事なのでとんぼ返りでした

虚「ッ!!」ガッ

武蔵「まだまだ終わらんぞ!!!」ビュオッ

ドガガガガッ!!!!!

男(先ほどまで押されていたのとは裏腹に虚を押し返している)

神通「……強い」

古鷹「そのままやっちゃえー!」

男(だが……)

武蔵「はあああああ!!!」

ガガガガガッ

虚「くっ……お前焦ってんな!?」

武蔵「煩い!!!」

男(手数が多すぎる。相手は最小限の動きで攻撃を防いでいるのに対して)

男(あまりにも動きすぎだ……)

日向「あれ、まずいんじゃないか?」

北上「あれじゃすぐにスタミナ切れになるよ」

武蔵「ぐっ……うおおおおお!!!」

虚「ったく……この女どんだけ体力有り余ってやがる……!!」

武蔵「こちらとしては……さっさと倒れてくれると助かるんだがッ!」


幻「……」

レ級「……そろそろ?」

幻「まだだ。あの娘がこちらを見続けている」


龍鳳「……」ギュッ

虚「っつー……流石に腕もやべぇな」

武蔵「はあああああ!!!」

ドガガガガッ

虚「おい……そんな焦んなって。疲れちまうぜ?」

武蔵「ッ……」

男(しかしあの虚という男。なんて強さだ……)

男(それに加えあのレ級。幻という男も虚という男と同等の強さだとすると……)

男(かなり……厳しい)

男(なんとかして策を……練らなければ)


レ級「でも、彼が隙を見せてるのも今だけだよ?」

幻「確かに……そうだな。では……始めるか」


男(……一体どうすればいい。この状況を脱するには)

ザッ

龍鳳「提督」

男「……」チラッ

幻「待つのにも飽きたのでな。相手を願おうか」

レ級「……」チャキッ

神通「……」スッ

古鷹「……」チャキッ

日向「……」グッ

北上「……」キュッ

レ級「艦載機、発艦」

幻「……」ググッ

ジャコンッ!!!

男(レ級の背からは黒い空間が、幻という男の身体からは主砲に機関砲が生える)

龍鳳「艦載機、発艦!!」

日向「発艦開始!!」

キィィン...

神通「……参りますッ!!」ダッ

古鷹「いきます!!」

北上「っもう!やるしかないよね!」

ドンドンドンッ


レ級「艦載機はまず制空権を奪ってね」

幻「手を貸すか?」

レ級「私だけで大丈夫」


龍鳳「……っ!!」

男(龍鳳のトムキャットに日向のハリアーとドッグファイトを繰り広げているのは……)

男「F-15……Eか」

男(F-15E。通称ストライクイーグル)

男(頭上を風が掠めた時に特徴的な兵装が見え、判断した)

男(マクドネル・ダグラス開発のF-15の改良型である戦闘爆撃機)

男(多彩な兵装、電子機器を搭載しており。アメリカ空軍や海軍を始め世界各国で運用された名機だ)

男(F-14の後に開発された戦闘機、ましてやその改良型である)

男(性能面において劣勢であるというのは明白だ)

男(しかもあのストライクイーグル……黒塗りに塗装してある)

男(夜間である今。目視は非常に困難だ)

お仕事です

古鷹「提督……指示を」

男「……」

男(ここが正念場だ……)

男(血流が脳を、身体中をより熱く、 早く駆け巡る)

男(だが頭は既に冷え切っていた。異様の連続に耐え切れなくなってしまったのか、それとも……)

男(しかしそれでいい。頭は常に冷たく、だが心は、身体は熱く)

男(肩の痛みにも慣れた。焼け付くような痛みはやがて痺れへと。脳の回転の中に痛みの情報は要らない)

男(無数の映像がコマ切れになり、スライドの様に現れては消えていく)

男(考えろ……考えて……動く……!!)

男「龍鳳、日向の艦載機は徹底して敵艦載機に当たれ!」

男「敵はF-15D、ストライクイーグル。性能面では向こうが上手だが」

男「こちらには手数と経験がある!!」

男「敵艦載機に対して倍、倍々の数で攻撃しろ!」

男「日向、神通は幻と名乗ったあの男。古鷹、北上、龍鳳はレ級だ!!」

日向「航空戦艦としてどちらが上手か……見せてやる」

幻「いいだろう。こい……小娘!!」

神通「私もいる事、忘れないで下さいね」チャキッ

レ級「私は君たちの提督に用事があるの」

古鷹「提督に……」

北上「なんでもいいけど。やらせないよ」

龍鳳「私が貴方を倒します!」


男(情報を把握しろ。一秒でも早く処理して指示を)

男「龍鳳、日向。艦載機の電子兵装を活用しろ。全てを利用して相手を圧倒、撃滅だ」

龍鳳「はい!!」

日向「いいよ。わかった」

男(紫に染まる空に戦闘機が飛び交う)

男(ストライクイーグルの機動は中々のもので二機、三機に追われながらもかわし、後方を取ろうとしている)

男(だがこちらも陣形を組み、時に餌に群がる羽虫の様に、時に正確無比な行進の様に。相手を翻弄する)

男(お互いに後方を取られればフレアを撒き散らし、射程に入れば大旋回を、ミサイルにロックされればアクロバット飛行を)

男(一機足りとも落ちる事の無い。まるで航空ショーだ)

日向「陸上ではやはり……機動力が鈍る」ダッ

幻「遅いぞ……」チャキッ

日向「なっ……早いッ!?」

幻「死んでも怨むな……」

ガキンッ!!!!!

幻「むぅッ!!」

神通「……」ギリギリ...

男(日向が遠距離からの主砲、神通が近距離からの射撃、刀での超接近攻撃を狙う)

幻「はぁッ!!!」ガッ

ガキンッ!!!

神通「くっ……」ズザザッ...

チャキッ

神通「砲雷撃戦……撃てぇ!!」

ドンッドンッドンッ!!!

日向「当たれッ!!」ドンッ!!!

ドゴォォォッ!!!!!

日向「当たった!!」

男(幻の姿が砂煙りに飲まれる。神通と日向のの砲撃をまともに喰らいただでは済まないだろう。そう思ったが……)

バッ

幻「はぁッ!!」

神通「っ!?」バッ

ガキンッ!!!!

幻「中々の威力だな……甘く見ていた」

日向「無傷……!?」

神通「一筋縄ではいかない……という訳でしょうか」

幻「そう簡単にはやられはせんよ……」


北上「私の魚雷、受けて見る!?」ボンッボンッボンッ!!!!

男(北上の魚雷は放たれた瞬間、無反動砲の様に煙を吐きながらレ級へと直進する)

古鷹「援護します!!」ドンッドンッドンッ!!!!!

龍鳳「私も!!」バララララ!!!!!

ドゴォォォッ!!!!!

男(こちらもやはりレ級に魚雷が直撃したかの様に見えた。激しい爆炎と煙が立ち上る)

北上「どうよ炸裂弾と焼夷弾の感想は!」

レ級「危ない所だった」フッ

北上「ひっ」ゾワッ

北上「でえええい!!」ブンッ

スカッ

レ級「当たらないよ?」

男(……正直。かなりの実力差だ)

男(北上達が弱いのでは無い。あのレ級が強すぎる……ッ!!)

男(第一に連携が取れていない。これでは数の優位も意味が無い)

男「連携を取れ!!古鷹と北上はレ級を寄せ付けず一定の距離を保ちながら射撃」

男「龍鳳は一発一発。確実にレ級の顔面に当たるよう狙い澄まして撃て」

男「神通と日向はお互いに接近戦に持ち込め!」

男「正面と背後から連携を取り攻撃!!」

日向「でやあああ!!」ドンッドンッドンッ

幻「当たらんッ」

神通「後ろが好きだらけですよ」シュッ

ガキンッ!!!!

幻「ぐぅッ……」


古鷹「当たって!!!」ドンッドンッドンッ

北上「主砲は……まぁ……ええい!!」ドンッ!!

スッ...

龍鳳「狙い澄まして……撃つ」チャキッ

バァンッ!!!


ピシュッ!!

レ級「!?」

龍鳳「掠めた!?」

古鷹「この調子!」

北上「最後までやってやろうよ!!」

男(全員上手く動けている……これでやっと拮抗か)

キィィン...

男(航空戦の方は相変わらず。ギリギリの状態で撃ち合い続けている)


武蔵「まだだッ!!まだ終わらない!!」

ドガガガガッ!!!

虚「いい加減しつけぇってんだよ!!!」

ドゴッ!!!

武蔵「くっ……」ズザザッ...

武蔵「まだまだぁッ!!!」バッ

ドガガガガッ!!!

虚「流石に嫌になってきたぜったくよぉ……」

幻「流石に……あの男の指揮があると違うな」

レ級「そうだね」

神通「よそ見は禁物ですよ」チャキッ

幻「ふん」バララララ!!!!

キンッキンッキンッキンッキンッ!!!!!

神通「……」チキッ...

幻「相当の手練れ……か」

レ級「そろそろ……」

幻「あぁ……そうだな」ゴソゴソ

男(幻は神通に射撃を与えながらもポケットに手を入れなにかを探している)

幻「……」スッ

男(そして出て来たのは……)

幻「……少しどいてもらうぞ」

男(赤い液体の入った注射器だった)

男「注射器……だと?」

男(なにかの薬品か……それとも……)

神通「やぁッ!!」シュッ

スッ

神通「!?」

幻「……」ダッ

男(幻は注射器を右手に持ち……こちらに向けて走ってくる!!)

日向「なっ……行かせるか!!」ダッ

幻「遅い」ドンッ

ドゴォォォ...

日向「ぐっ……!?かはっ……」

男(ほんの一瞬だ。神通の斬り込みをかわし、立ち塞がる日向を主砲で撃ち抜き……)

ガシッ

男「ぐっ……」

男(俺の首を左手で締め始めた)

ギリギリ

男「ぐぁ……げほっ……」

男(距離は決して近く無かったはずだ。なのにこの一瞬で……こいつは……)

男(一連の動作をやってのけ、こちらまで近づいた……!!)

幻「悪いがこちらには時間が無いのでな。少し夢でも見ているといい」

男「夢……だと……」

ブスッ

男「かっ……!?」

男(首筋に針が差し込まれ、液体が身体に流れ込む)

男(その瞬間……)

男「ぐがあああああ!!?」

男(身体中が焼ける様に熱くなった)

ドサッ!!

男「あああああ!!!ぐぅぅぅ……ッ!!!!!」

男(まるで焚き火の中に投げ入れられたかの様だった。身体が蒸発してしまうのではないかと錯覚するほどの痛み、熱さ)

武蔵「提督!!!」

虚「隙ありっ!!!」ブンッ

ドゴォッ

武蔵「がふっ……!!」

神通「提督ッ!!!」ダッ!!!

幻「さて……続きを始めよう」

男(それからすぐに、幻は俺に興味を無くしたかの様に鬼の形相で迫る神通へと向かう)

ドクンッ...

男(痛みと熱さに少しずつ意識が飲まれていく)

男(視界が霞んでいく。音が遠くなる)

男(このような一瞬で、俺の命は奪われるのか)

北上「嘘……」

日向「……」

龍鳳「そん……な」

男(皆で帰ると言ったばかりなのに。危機的状況も乗り越えられると、思っていたのに)

男(たったこれだけ。これだけで……終わるのか)

男「っ……」

ピクッ

男(声が出ない。身体が動かない)

男(落ちていく。炎の中に……落ちる)

古鷹「提督……提督!!!!」

古鷹「嫌だ……嫌だあああああ!!!!!」

男(古鷹の絶叫を最後に、俺の意識は……途絶えた)


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ーーー

『……見つけた』

「わかった。ここだな、すぐに向かう」

「なぁに、すぐに着く。安心しろ」

「本当の戦争ってヤツを、教えてやるよ」

バサッ...

そりゃまぁ普通の人間が深海棲艦並みの化け物と対峙しようものなら一瞬ですよね

男「……」

男「……」

男「……ぁ」

男「こ……こは」

男(俺はベッドの上で横になっていた。ベランダから差す日が眩しく思わずシーツに潜り込んだ)

男「……」

男(長い間……苦しくて、熱かった。気がする)

男(喉も潰れ、身体に力も入らず。それでもなにか大切なものがあって)

男(ほんの一瞬。たったの一瞬でそれを奪われて……)

男(頭の奥がジリジリと痛む。これを思い出そうとすると余計に……痛い)

男「……夢。だったのか……?」

『嫌だあああああ!!!!!』

ジリッ...

男「ぐっ……」

男「……」

男(もう一度寝よう。次には治っているかもしれない)

男(頭を抱えながら俺は再び眠りに落ちようとした)

コンコン

男「……?」

男(扉を叩く音がする。誰か……来ているのか?)

ガチャ...

「なんだ……まだ眠っていたのか。早く起きろ」

バサッ

男「……」

男(折角かぶったシーツが思い切りめくり剥がされてしまった)

男(眩しさに恐る恐る目を開くと……)

「さ。もう朝食の用意は出来ているぞ」

男(サラサラとした長い髪の毛。きりりと整った美しい顔)

男(そんな女性が俺の目の前にいる)

男「誰……だ」

ジリッ

男「っ……」

「誰って……いつまで寝ぼけているつもりなんだ、全く……」

男(そう言いながらもにこやかな表情をしている)

男(どこかで……見た事がある……どこ……だったか……)

「私は君の姉でしかない。そうだろう?」

男「姉……」

男「姉……だったか。そうか……」

男(姉という言葉を聞いた瞬間。それで何故か納得してしまった自分がいた)

男(そうか……姉か……)

姉「……それもいいが弟。なんでそんなに汗をかいているんだ?」

男「汗……?」

男(言われて額を触ってみるとじっとりと濡れていた)

姉「なにか嫌な夢でも見たのか?」

男「……なにかと戦っていた」

姉「ほぅ……」

男「正確には多分……戦っているのを見ていた」

男「見ている事しか出来なかった」

姉「……」

ストッ...

男(姉はベッドの淵に腰を下ろすとそのまま俺の話を聞いていてくれる様であった)

男「他の皆は苦しんでいるのに俺はただ……立ち尽くしているだけだった」

男「ものすごく……悔しくて、苦しかった……と思う」

男「そうしたら次の瞬間。突然炎に飲み込まれて」

男「身体が焼けそうになって……」

男「声も出なくて……身体も、動かなくなった」

男「最後……意識が消える瞬間……」

男「誰かの叫び声が……確か……」

ジリッ

男「っ……」

男「……」

姉「嫌な……夢だったな」

男「嫌な夢だった……けれど何故か……」

男「あの夢が懐かしく感じる。もう一度見たい……気がする」

姉「自分から悪夢を見たいなんて……随分物好きなんだな」

男「そうかもしれない」

男(ひとしきり話し、お互いに笑いあうと)

姉「熱は無いか?今身体の調子は悪かったりしないか?」

男「いや……特に。でも頭が痛くなるな」

姉「頭痛か……どれ」

ピトッ

男(姉の少しひんやりとした手のひらが額に触れる)

男「……ん」

男(なんだろう……昔嗅いだ事のある様な香りが……)

ジリッ

姉「少し……熱があるかもしれないな。大学は今日の所は休め」

男「大学……俺は大学に通っているのか……」

姉「……もしかして、そういう遊びだったりしないだろうな?」

姉「なんて。そんな冗談言う様な人間じゃないのはわかってる」

姉「そうだ。君は大学生だ。勉強がしたいと言って自分から入ったのだろう?」

男「そう……だったかな。そうだったかもしれない」

姉「……熱と悪夢で頭が混乱しているんだろう。ここまで朝食を運んで来るから寝ているといい」

男「すまない……その……ええと……」

姉「お姉ちゃん、でいいぞ」

男「……姉さん」

姉「ふふ。そこはちゃんと覚えているみたいだな」

お仕事です

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姉「待たせた」ガチャ

男(しばらく待っていると姉が湯気の上る器を持って帰ってきた)

姉「思った以上に顔色が悪く見えてな。勝手だが粥にさせてもらった」

男「わざわざ作ってくれたのか……」

姉「なんせ私はお前の姉だからな」

男「……そうだな。俺の姉は……」


『私は……の姉の様なものだろう?』


ジリッ

男「っ……また頭が……」

姉「大丈夫か……?」

男「あ、あぁ……」

男(先ほどから続く頭の痛みはなんなのだろうか)

男(まるでなにかを思い出すのを阻んでいるかの様だ)

男(俺はなにか大切な事を忘れているのではないだろうか)

男(だが……それをこうも思い出せないのは……何故だ)

姉「……」カチャ...

スッ

男「ん……」

姉「ほら。私が掬ってやるから食え」

男「いや……一人でも……」

姉「いいから。病人は大人しく言う事を聞くものだぞ」

男「……」

姉「……あぁ、そうか。これだけ湯気が立っていれば火傷するかもしれないな」

男(姉は蓮華で掬った粥にふーふーと息を吹きかけると再び俺の口元にそれを差し出した)

姉「これなら食べられる」

男「……」

男(ゆっくりと口を開くと姉は程よく冷まされた粥を口の中へ運ばせてくれた)

姉「……どうだ?」

男「……美味い」

姉「そうか……それなら良かった」

ガチャ

「男の体調が悪いと妻から聞いたが……」

姉「あぁ……パパ。あまり良くはなさそうだよ」

男(今度部屋に入って来たのは白髪の男性だった)

男「……」

男(この人は……俺の……父親か)

男(初めて姿を見た瞬間は誰だかわからなかったが。すぐにこの人が俺の父親なのだと"理解"した)

父「あまり無理をするのはいけないぞ。勉強も大事だが、自分の身体を一番にしなさい」

男「……あぁ。心配……掛けたみたいで」

父「いいさ。今日はゆっくり休んで明日に備えるといい」

父「それに……男には優秀な看護婦が付き添ってくれているみたいだからね」

姉「ふふん」

男「……ふ」

男(思わず口元が緩んでしまう。なんとなく……嬉しく、胸が熱くなるのを感じた)

父「私は妻と出掛けてくるから。男を頼んだよ」

姉「いってらっしゃい」

男「……いってらっしゃい」

父「いってくる」

バタン

姉「……さて、食事の続きを」

姉「……どうした……?」

男「え……あっ……な、なんだ」

男(多分これがいつもの光景。昨日も、一昨日も、ずっと前から繰り返されて来た日常)

男(当たり前で、ありふれた事のはずなのに……)

男(何故だか物凄くこのやりとりを望んでいた気がして)

男(長い間我慢し続けてやっと手に入れたものに感じて)

姉「どこか痛むのか……?そこまで頭痛が酷いのか……?」

男(焦がれて、羨んで。その気持ちをずっと押し込めていて)

男「違うっ……違う……」

ポトッ...ポトッ...

男(解き放たれた。熱が、衝動が、胸を焼いていく)

男「うっ……うぅ……」

男(溜め込んだ水が溢れる様に涙が頬を伝った)

男(声を出して泣きたくて。でもそれを必死に堪えて、嗚咽が漏れた)

姉「……」

男「おかしい……まるで……夢を見ている気分だ……」ボロボロ...

姉「……」スッ

ナデナデ

姉「夢じゃないさ。私はここにいる」

男(姉の柔らかい掌が優しく頭を撫でる)

男(それに俺はとうとう耐え切れなくなり……)

男(姉の胸を借りて泣き続けた)

幸せな夢ほど覚めた時の辛さが大きくなると思います

男「……姉さんは今何をしているのだったか」

姉「ん?あぁ……私はパパと同じ研究所で働いているよ」

姉「深刻な病気の特効薬を作る。というのも中々大変なものだ」

男「上手くはいっているのか?」

姉「いや全く。いくつもの突破口は見つかるのにそれが正解に繋がっているかと言ったら話は別で」

姉「かと思えば突破口すら見つからず延々と同じ作業を続けていたり」

姉「難しいさ」

男「そうか……」

姉「だがパパはすごい。流行病の治療薬開発の最前線で働いている」

姉「私もいつか……な」

姉「君はなんの為に大学に通っているんだ?」

男「俺……は」

男(なんの為に大学に通っているのだろう)

男「……わからない」

姉「そうか、わからないか……まぁそんなものだろうな」

姉「今はそれでいい。ただ卒業までには……自分の行く先を決めておかねばな」

男「そう……だな」

姉「あぁ……なんだか久しぶりにゆっくりと雑談を交わした気がする」

姉「昼食の準備をするから。少し寝ているといい」

男「わかった。そうするよ……」

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ーーーーーーーーーー
ーーーーー


男「ん……」

男(気がつくと部屋も窓の外も真っ暗になっていた)

男「夜……か」

ジリッ

男「くっ……」

男(また頭が痛くなった。一体これは……なんなのだろうか)

男(ただの風邪とは違う。やはりなにか思い出させまいとなにかが……)

男「……煙草でも吸うか」

ガララッ...

男(ベランダに出た瞬間肌寒さが襲う。白い息が空を漂って消えた)

カチンッ...シュボッ

パチン...

男「……」

男(喉を煙が伝い肺に溜まり、脳にヤニが行き渡る)

男(強く煙を吐き出すとなんとも言えない気分になり、口に苦味が残った)

男「……」

男(煙草を吸う様になったのはいつの事だったか……)

男(……)

男(……思い出せない)

男(まるで記憶喪失だ。なにかを思い出そうとするとことごとく思い出せない)

男(だが……姉に事実を告げられた時には思い出すのだ。そうだったのだと)

男(思い出している……のか?俺には……思い出していると言うより……)

ストッ

姉「私にも一本くれ」

男「……」スッ

お仕事です

男「……すぅ」

男「ふー……」

姉「はぁー……」

男「……」チラッ

姉「……ん?」

ジリッ

男「っ……」

男(今……姉に誰かの姿が重なって見えた気が……)

男「……昼食を用意してもらったのに……すまなかった」

姉「別に構わんさ。少量しか作らなかったし私が夜食に貰ったよ」

姉「なにか作るか?」

男「いや……大丈夫だ。それよりも……」

スッ

姉「コーヒー。だろ?」

カシュッ

男「ん……」

男(煙でざらついた喉が苦味と潤いで満たされていく。煙草とコーヒーの味が混ざりあうとなんとも言えない美味さに変わるのはなんとなく不思議に思う所だ)

姉「……美味いな」

男「そうだな……」

姉「いつまでも。こうしてのんびりしていたいものだ」

男「……そうだな」

姉「本当にそう思っているのか?」クスクス

男「思っているとも。本当に」

姉「そうか……」

姉「さて。風呂は明日の朝にして早く寝たらどうだ」

男「……そうさせて貰いたいが」

姉「大丈夫。よく眠れるさ」

男「……そうだな。大丈夫だ」

姉「それじゃあおやすみ。男」

男「おやすみ……姉さん」

スタッ...ガチャ

バタン

男「……」

男「……寝るとするか」

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ーーー


男「……ん」

男(目が覚めると既に日は登り切っており、窓から日差しが差し込んでいた)

男「……今日は」

コンコン

姉「入るぞ」

男「おはよう……姉さん」

姉「おはよう、男。朝食の準備は出来ているぞ」

男「すぐに行く」


父「おはよう。今日は大学は休みだったか?」

男「大学……あぁ。休みだよ」

母「今日は久しぶりにみんなお休みだから。こうして全員朝ごはんを食べるのも久しぶりね」

男(姉によく似た顔つきの女性。この人は俺の母親だ)

男(家事はなんでもこなしてくれて笑顔の絶えない人で……)

ジリッ


『私……もう死にたい。ねぇ……どうしたらいいの……教えてよ……』


男「……っ」

姉「どうかしたか?」

男「いや……母さん」

母「どうかした?」

男「元気か?」

母「なに……どうしたの急に。元気に決まってるじゃない」クスクス

男(笑い方まで姉そっくりである)

男「そうか……ならいいんだ」

父「さて……たまには家族みんなで。なにかしないか?」

母「そうね……でもお姉ちゃんもお父さんも家でゆっくりしたいでしょ?」

母「よし。今日は私が腕によりを掛けて晩ご飯を作ります!」

父「それは楽しみだなぁ!」

姉「ママの料理はなんでも美味しいから。私も楽しみだよ」

姉「男もそうだろう?」

男「もちろん」

母「それじゃあみんな好きな事でもしてて!すぐにお掃除と洗濯終わらせて買い物に行くから!」

父「慌ただしいな……私も手伝うよ。荷物持ちくらいは出来る」

姉「私は男となにか……していようかな」

母「お姉ちゃんは本当に男が好きなのね」

姉「そうだな……これではブラコンだ」

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姉「さて、パパとママは買い物に出かけたが私達はどうする?」

男「手伝わなくて良かったのか?」

姉「察しろ、弟よ」コツン

男(にこやかな表情でデコピンを食らわせてきた)

男「むっ……察しろとは……」

姉「相変わらず鈍いな……デートだデート。たまには二人きりになる時間も必要だ」

男「ふむ……なるほど。それでは俺たちはどうするか……」

姉「テレビでも見るか?」

男「……テレビを見ていてもな」

男「外に出ないか?」

姉「っ……外か……」

姉「私は丁度借りてきたこの映画が見たくてだな……」

男「それなら午後見よう。父さんや母さんと見た方が面白い」

姉「そう……だな。じゃあゲームでもしよう!対戦ものなら幾つか……」

グイッ

姉「わわっ……」

男「俺たちも、デートだ」

姉「デート……そうか。そうだな」

姉「一緒になら……いいか」


男(俺たちは家から飛び出すとゆっくりと街並みを散策し始めた)

男「たまの休みにこれだけ天気がいい。外に出ない通りはないだろう?」

姉「それもそうか。それでどこまで?」

男「……少しこの辺りを見てみよう」

姉「街並み散策か。なんだか小学生に戻った気分だ」

>>442 修正


姉「私は丁度借りてきたこの映画が見たくてだな……」

男「それなら午後見よう。父さんや母さんと見た方が面白い」

姉「そう……だな。じゃあゲームでもしよう!対戦ものなら幾つか……」

グイッ

姉「わわっ……」

男「俺たちも、デートだ」

姉「デート……そうか。そうだな」

姉「一緒になら……いいか」


男(俺たちは家から飛び出すとゆっくりと街並みを散策し始めた)

男「たまの休みにこれだけ天気がいい。外に出ない道理はないだろう?」

姉「それもそうか。それでどこまで?」

男「……少しこの辺りを見てみよう」

姉「街並み散策か。なんだか小学生に戻った気分だ」

男(俺たちはただ肩を並べて歩いた)

男(住宅地、商店街、駅前)

男(裏通り、川べり……)

男(ゆったりと時間が流れていく。街並みを見ているだけでこれほどまでに心地よいとは思わなかった)

男「……この街は、こんな姿をしていたのだな」

姉「何時もは通りすぎるだけの場所も、こうして見てみると違う」

男「……いい街だ」

姉「そうだな……いい街だ」

男「……そうだ。このまま川べりを歩いて行ってみないか?隣町まですぐだろう?」

姉「それは……止めておいた方がいい」

男「……どうして」

姉「……ほら!昼食の時間に間に合わなくなる!」

男「なにか店でも探して入ろう。外食も悪くないだろう?」

男「多分……父さんも母さんも外で食べてくるに違いない」

姉「それは……そうだが……」

男「……なにかあるのか?」

姉「いや……そういう訳ではない……けれど」

男(どことなく、姉の顔色が悪くなった気がした)

男「……大丈夫か?」

姉「ん?あぁ……大丈夫だ」

姉「とにかく……あまり遠くへは行かない方がいいと思う」

男「……そこまで言うなら。止めておこう」

姉「……すまないな」

男「別に構わない。元々俺の我儘だ」

ここまでです

男(その後は家に戻り、家族と一緒の時間を過ごした)

男(とても久しぶりで……懐かしい様な。そんな気持ちになった)

男(明日は……なにをしようか……)


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ーーー


男「……ん」

男(目が覚めると既に日は登り切っており、窓から日差しが差し込んでいた)

男「……今日は」

コンコン

姉「入るぞ」

男「おはよう……姉さん」

姉「おはよう、男。朝食の準備は出来ているぞ」

男「すぐに行く」


父「おはよう。今日は大学は休みだったか?」

男「大学……あぁ。休みだよ」

母「今日は久しぶりにみんなお休みだから。こうして全員朝ごはんを食べるのも久しぶりね」

父「さて……たまには家族みんなで。なにかしないか?」

母「そうね……でもお姉ちゃんもお父さんも家でゆっくりしたいでしょ?」

母「よし。今日は私が腕によりを掛けて晩ご飯を作ります!」

父「それは楽しみだなぁ!」

姉「ママの料理はなんでも美味しいから。私も楽しみだよ」

姉「男もそうだろう?」

男「もちろん」

母「それじゃあみんな好きな事でもしてて!すぐにお掃除と洗濯終わらせて買い物に行くから!」

父「慌ただしいな……私も手伝うよ。荷物持ちくらいは出来る」

姉「私は男となにか……していようかな」

母「お姉ちゃんは本当に男が好きなのね」

姉「そうだな……これではブラコンだ」

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姉「さて、パパとママは買い物に出かけたが私達はどうする?」

男「手伝わなくて良かったのか?」

姉「察しろ、弟よ」コツン

男(にこやかな表情でデコピンを食らわせてきた)

男「むっ……察しろとは……」

姉「相変わらず鈍いな……デートだデート。たまには二人きりになる時間も必要だ」

男「ふむ……なるほど。それでは俺たちはどうするか……」

姉「テレビでも見るか?」

姉「丁度面白い映画を借りてきていたんだ」

男「そうだな……そうしようか」

姉「……」

男「……」

姉「ふふ……ここは中々に秀逸だな」

男「確かに。手に汗握りそうだ」

姉「一番の山場だからなぁ。兄の仇を取るのではなく今の仲間を守る事を決意した主人公は素晴らしい」

男「最大の敵との最終決戦か……」

姉「これは手強いな……」

男「……」

姉「……」

姉「男!まずいぞ!やられそうだ……」ギュッ

男「ううむ……敵との戦力差も奴の強さも桁違いだ」

姉「……」

男「……あ」

姉「た、倒れた……」

男「……」

姉「どうする!?このままでは仲間が……!」

男「……お、なにか来たぞ」

姉「これは……前作の主人公じゃないか!」

男「熱い展開だな……」

姉「強い……これなら勝てる……!」

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姉「いや。面白かった!」

男「最後にあの様な展開が待っているとは……」

姉「想像出来なかった……最後まで見応えがあったな……」

男「……父さんと母さんが帰るまでには時間があるな」

姉「そうだな……なにをしようか?」

男「……なら外にでも出ないか?」

姉「っ……外か」

男「あぁ……少し外の空気が吸いたい」

姉「……それよりも。食事はどうだ?腹も減っているんじゃないか?」

男「……そうだな。確かに腹は減った」

姉「なら私がなにか作ろう!少し手伝ってくれないか?」

男「わかった」

男(思えばこうして、姉と台所に立つのは初めてかもしれない)

姉「この野菜を切っておいてくれ」

男「わかった」

男(俺が野菜を包丁で細かくしている隣で姉が鍋と向かい合っていた)

姉「鶏肉も切ってくれ。そしたらフライパンでそれを焼くからな」

男(皮のついた鶏肉を一口大に切る。すると姉がそれを油の敷かれたフライパンへ乗せていく)

男(どうして油でなにかが焼ける音というのは、これほどに食欲を促してくれるのだろうか)

男(軽く焼き目がついた所で鶏肉を除けて、今度は野菜を炒めていく)

男(鶏肉から出た脂が野菜と絡み合い、いかにも美味そうな香りを漂わせていた)

姉「野菜に火が通ったら鶏肉を戻して……ここにブイヨンを入れる」

男(鶏肉と野菜の入ったフライパンに今度は鍋から黄金色に輝く液体を注ぐ)

姉「結構上手く出来たんだぞ。飲んでみるか?」

男「あぁ……少し貰おうか」

男(お玉で掬われたそれを一口、口の中へ)

男「……美味い」

姉「市販の固形ブイヨンでも良かったんだがな。折角だから作ってみた」

姉「野菜ともらってきた鶏の骨を入れただけだがこれほどまでに味が出るとは……」

男(エプロンを揺らしながら喜ぶ姉の姿は……なんとも言えない。心が安らぐ様なものだったと思う)

姉「あとはここにカレーのルーを入れて完成だ」

男「少し煮詰めるのか?」

姉「30分くらいな。その間に洗い物やらを済ませてしまえばいい」

男「そうだな」


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ーーーーー


男「いただきます」

姉「いただきます」

男(艶のある白米の上に姉と俺で作ったカレーを掛けた)

男「ん……美味い」

姉「うん、よく出来ている」

男(食欲をそそる香りと元々の空腹もあってか、一気にそれをかきこんだ)

男(素材と香辛料の旨みが口の中に広がっていく)

男(胃の中まで落とした瞬間には、幸福感とさらなる食欲に還元されていた)

姉「男が手伝ってくれて助かった」

男「俺は大してなにもしていない」

姉「そうでもないさ」

男「そうでもないか……」

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男(その後。両親が帰ってくると、久しぶりに家族団らんの時間を過ごした)

男(とても……とても大切で、幸せな時間だった)

男(明日は……なにをしようか)

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男「……ん」

男(目が覚めると既に日は登り切っており、窓から日差しが差し込んでいた)

男「……今日は」

コンコン

姉「入るぞ」

男「おはよう……姉さん」

姉「おはよう、男。朝食の準備は出来ているぞ」

男「すぐに行く」


父「おはよう。今日は大学は休みだったか?」

男「大学……あぁ。休みだよ」

母「今日は久しぶりにみんなお休みだから。こうして全員朝ごはんを食べるのも久しぶりね」

父「さて……たまには家族みんなで。なにかしないか?」

母「そうね……でもお姉ちゃんもお父さんも家でゆっくりしたいでしょ?」

母「よし。今日は私が腕によりを掛けて晩ご飯を作ります!」

父「それは楽しみだなぁ!」

姉「ママの料理はなんでも美味しいから。私も楽しみだよ」

姉「男もそうだろう?」

男「もちろん」

母「それじゃあみんな好きな事でもしてて!すぐにお掃除と洗濯終わらせて買い物に行くから!」

父「慌ただしいな……私も手伝うよ。荷物持ちくらいは出来る」

姉「私は男となにか……していようかな」

母「お姉ちゃんは本当に男が好きなのね」

姉「そうだな……これではブラコンだ」

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姉「さて、パパとママは買い物に出かけたが私達はどうする?」

男「手伝わなくて良かったのか?」

姉「察しろ、弟よ」コツン

男(にこやかな表情でデコピンを食らわせてきた)

男「むっ……察しろとは……」

姉「相変わらず鈍いな……デートだデート。たまには二人きりになる時間も必要だ」

男「ふむ……なるほど。それでは俺たちはどうするか……」

姉「テレビでも見るか?」

姉「丁度面白い映画を借りてきていたんだ」

男「そうだな……そうしようか」

男(午前中は姉と映画を見て午後は家族全員で過ごした)

男(久しぶりの感覚で……とても楽しかった)

男(明日は……なにをしようか……)


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無限ループって怖くね?

お仕事です

武蔵「ごぼっ……!!」

ビシャッ...

虚「さっきの威勢はどうした!!ああ!?」

ビュッ

(激しい攻撃が戦艦、武蔵を襲う)

ガッ

武蔵「これしき……どうという事も無い!!」

(鋭い正拳を受け、吐血しながらもまだ立ち上がる)

(虚と名乗る深海棲艦の力を操る男の機銃の掃射、激しい蹴りを喰らいながらもまだ足を踏み込み倒れようとしない)

(涼しげな表情で答えるが、身体は血だらけで艤装は半壊していた)

武蔵「砲が撃てなくともまだこの拳があるッ!!」シュッ

虚「……」ニヤッ

(武蔵の渾身の拳、だがそれは本来の力ではないはずだ)

バシッ

虚「なら……その腕へし折ってやるまでだ」

ブンッ!!!

ゴキィッ!!!!!

武蔵「ぐあああああッ!?!?」

(拳を受け止めてからの肘。嫌な音とともに腕があらぬ方向へと曲がる)

武蔵「はぁ……はぁ……ぐっ……」

(再び鋭い表情に戻ると歯をギリギリと鳴らした)

虚「次は脚だ。その次は肋。楽には死なせねぇ……!」


幻「倒ッ!!!」ドンッ!!!

神通「きゃあああ!!!」

ガンッガンッガンッ!!!!

神通「まだ……ここでは終われません……」

(幻と名乗る男の主砲をその身に喰らい、コンクリートを跳ねた凜とした顔付きの少女。軽巡洋艦、神通)

神通「提督を……提督を傷付けた貴方を……許さないッ!!!」

(艤装は傷付き、破けた服の下から生々しい傷を覗かせながら)

(それでもまだ……立ち向かう)

日向「……はぁ……はぁ……」

ズリッ...

(戦艦、日向は周囲に血だまりを作りながら。這っていた)

(その表情も、気配も。未だ闘志を失ってはいない)

日向「……負ける訳には……いかないんだあああ!!!」

グッ...

(痛烈な叫びを上げながら、重く閉じそうな瞼を必死に持ち上げながら。身体に力を込める)

幻「ほう……そこまでして尚戦うと言うか。面白い……見上げた根性だ」

幻「ならば……せめて一撃で屠ってやろう」ジャコン


レ級「楽しいね。みんなもそう思うでしょ?」

(深海棲艦、戦艦レ級は無邪気に舞いながら笑う)

北上「こっちは満身創痍だってのに……なんでそんな余裕なのさっ!!」

(激しく憤りながら、弾の残っていない主砲を戦艦レ級に向ける重雷装巡洋艦、北上)

龍鳳「だめ……艦載機が……落ちていく」

(次々と炎と煙を上げながら落ちていく艦載機を見つめ、絶望の表情を浮かべているのは軽空母、龍鳳)

古鷹「まだ……諦める訳にはいかないんだから!!」

古鷹「提督は……提督は必ず……戻ってきてくれる。絶対に!!!」

(強い決意を金色の瞳に湛え、強烈な殺意の前に立ちはだかる少女。重巡洋艦、古鷹)

レ級「……そっか……君は……」

(敗戦の色は濃く、彼女たちを蝕んでいく)

(このまま……終わってしまうのか……)

(いや……)


「随分派手にやってるなぁ!!俺も混ぜてくれよ!!」


バジッ...バチンッ...ジジジ...


虚「……あぁ?」

武蔵「はぁ……はぁ……」

幻「む……まさか……」

神通「……新手……ですか」

日向「……」

レ級「……なに?」

北上「こ、今度はなに……」

龍鳳「……」

古鷹「……ッ」

(突如聞こえる声。戦いの繰り広げられている交差点の中央。その上に雷光が走る)

(電気の爆ぜる音をけたたましく鳴らしながら、空間が裂けていく)

バチンッ...ゴゴゴゴゴ......

(裂けた空間はついに大きな口を開き、なにかが降って落ちた)

バサッ...ヒュォォォ......

虚「なっ……」

「……」ニッ

チャキンッ

ドンッドンッドンッ!!!!!

(鳴り響く砲声。次の瞬間には虚を爆炎が包み込んだ)

トサッ...

「少し……遅れたみたいだな」

(白をモチーフとした帽子、セーラ服)

(黒い外套がたなびき、身体に巻き付けた弾帯が見える)

(黒い眼帯を指先でいじりながら、鋭い目付きの……少女は言った)

「……解放旅団、所属。球磨型、木曾」

木曾「やっと尻尾を掴んだぜ……深海棲艦……!!」

幻「やはり……しかし早すぎる……!!」

虚「あっぶねぇ……も少しで肉片になるとこだったぜ……」

レ級「……解放旅団」

木曾「そこで寝てるのがお前らの提督か……」

『侵食型のウイルスね。単純なものだからすぐになんとかなるわ!』

木曾「任せたぜ。"俺たち"はこいつらを片付ける」

「そうだな……ここで終われば万々歳なんだけどな」

木曾「そう簡単にいくかと言われれば……答えられないな」

「ま、なんとかするさ」

(そう……なんとかしてみせる)

(まずはここで……勝負に出る!!)

虚「なっ……て、てめぇは……!!」

幻「むぅ……」チャキンッ

レ級「……」

「悪いが。ここで失敗する訳にはいかないんだ」

「手合わせ願おうか」

武蔵「解放……旅団……」

日向「……」

古鷹「……味方?」

北上「……もう、訳わかんない」ドサッ

神通「……」

龍鳳「……」

「あとは俺たちに任せて、少し休んでいてくれ」

『ウイルス抵抗プログラム起動。あとは彼次第』

「わかった。ありがとう」

「さてと……」グッ

「解放旅団所属。階級は少佐」

「虚構型戦艦1番艦」

虚構「戦艦虚構。行くぞ!!」


映画の内容は……言うまでもないですね

ここまでです

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男「……ん」

男(目が覚めると既に日は登り切っており、窓から日差しが差し込んでいた)

男「……今日は」

コンコン

姉「入るぞ」

男「おはよう……姉さん」

姉「おはよう、男。朝食の準備は出来ているぞ」

男「すぐに行く」


父「おはよう。今日は大学は休みだったか?」

男「大学……あぁ。休みだよ」

母「今日は久しぶりにみんなお休みだから。こうして全員朝ごはんを食べるのも久しぶりね」

父「さて……たまには家族みんなで。なにかしないか?」

母「そうね……でもお姉ちゃんもお父さんも家でゆっくりしたいでしょ?」

母「よし。今日は私が腕によりを掛けて晩ご飯を作ります!」

父「それは楽しみだなぁ!」

姉「ママの料理はなんでも美味しいから。私も楽しみだよ」

姉「男もそうだろう?」

男「もちろん」

母「それじゃあみんな好きな事でもしてて!すぐにお掃除と洗濯終わらせて買い物に行くから!」

父「慌ただしいな……私も手伝うよ。荷物持ちくらいは出来る」

姉「私は男となにか……していようかな」

母「お姉ちゃんは本当に男が好きなのね」

姉「そうだな……これではブラコンだ」

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姉「さて、パパとママは買い物に出かけたが私達はどうする?」

男「手伝わなくて良かったのか?」

姉「察しろ、弟よ」コツン

男(にこやかな表情でデコピンを食らわせてきた)

男「むっ……察しろとは……」

姉「相変わらず鈍いな……デートだデート。たまには二人きりになる時間も必要だ」

男「ふむ……なるほど。それでは俺たちはどうするか……」

姉「テレビでも見るか?」

姉「丁度面白い映画を借りてきていたんだ」

男「そうだな……そうしようか」

姉「おっと……その前に洗濯物を済ませないとな……少しだけ待っていてくれ」

男「わかった」

男(姉はパタパタと脱衣所に消えていった)

男(しばらく待たなければいけないのか……)

男「……」

男(チラリと窓の外を覗いてみる。道路を挟んで向かいの家が見えた)

男(通行人は……いた。女子高生だろうか……)

男(……どこかで見た覚えがある様な)

ジリッ

男「っ……!?」

男(突然、脈打つ様な頭痛に襲われる)

男(だがそれはすぐに収まってしまった)

男「……今の頭痛は」

男(この頭痛……何故だか初めてではない気がする)

男(気のせいだろうか……)

男「……それよりも」

男(先ほどの女子高生が気になる。そういう意味ではなく)

男(やはりどこかで見た事がある気がする。それになんと言えばいいのか)

男(とてつもない不安感を感じているのだ)

男(今追わなければ二度と会えない様な。この後彼女になにかある様な……)

男「……ッ」

ダッ

男(俺はいても立っても居られなくなり、家を飛び出した)


姉「……」

男「確か……こっちだな」

男(先ほどの女子高生が通ったと思われる道を駆け足で進む)

男(人影は無い。道を間違えたのだろうか)

男(いや、合っている。確証は無いが何故だか確信だけはあった)


男「はぁ……はぁ……」

男(まだ見えない。しばらくは探し続けていた気がするのだが)

男(いや……)

「……」

男(いた、俺の探していた女子高生。短く切られた髪に女の子らしい顔付きの少女)

男(彼女は……道の真ん中で立ち止まり、こちらを見ていた)

「……」

男「……」

お仕事です

ドクンッ...

男「うっ……!!」

「……」ニコッ

ドクンッ...

男(その少女の顔を見つめた瞬間だった。胸が張り裂けそうに痛み出す)

ドクンッ...

男「あっ……ぐ……」

ドサッ

男(苦しい……!!心臓が爆ぜてしまうのではないかと思う程。強く脈打っている)

男(両手で強く胸元を抑えた。このまま心臓を掻き出してしまいたい衝動に駆られながら強く、強く抑えた)

男(嫌な汗が流れる。呼吸が荒れる)

「……帰りましょう」

男「帰……る?」

男(冷たいコンクリートの上で身体を寝かせながら、歯を噛み締めながら少女の顔を見つめた)

ドクンッ

ジリッ

男(脳がジリジリと悲鳴を上げる。ノイズ混じりの映像が頭の中に浮かぶ)

姉「男!!」ダッ

姉「男……しっかりしろ……男……!」

男(俺を追ってきていたのか、姉が側に駆け寄ってきた)

姉「男……今すぐ私と家に帰ろう。帰ればすぐに良くなる……!」

「……提督。私たちの所へ、戻ってきて下さい」

ジリジリッ

ドクンッドクンッ

男「あああああ!!!」

ジリジリッ

ドクンッドクンッ

男(身体が燃える様に熱くなる。喉が焼ける)

男(心臓は激しい鼓動を続け、脳は荒れた映像とノイズを繰り返し流す)

男「……がっ……はぁっ……はぁっ……!!」

男(提督……?提督……とは……)

ジリジリッ

ドクンッドクンッ

姉「さぁ……立て!帰ろう!帰ってパパやママと一緒に……」

男(俺は……なにかを……忘れて……いる?)

「提督……」

男(少女はふと悲しい表情をすると。そのまま振り返り歩き出す)

男「ま……て……ッ!!君は……!」

男(少女は振り返る事も無く真っ直ぐに歩いていく)

男(何故だろうか。俺には姉の声が聞こえていたはずだった)

男(それなのに……)

ググッ

姉「男……さ、早く……」

ダッ!!!

姉「お、おい!!男、待ってくれ!!待って!!!」

男(焼け付く身体に力を込めて、少女の後を追う様に走った)

男(悲痛な姉の叫びが後ろから聞こえる。それでも俺の脚は止まる事は無い)

男(追わなければいけない。問い詰めなければ)

男(俺が何を忘れているのか。彼女は誰なのか)

男(抑えきれない衝動だけが俺の脚を動かしていた)

ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーー


男(少女を追って辿り着いたのは川べりだった)

男(少女はそこの……丁度隣町との境の場所に立っていた)

男(走っているうちに痛みや激しい鼓動、焦げる程の熱さは消えていた)

男(代わりに現れたのは。誰のものだかも分からない記憶)

男(凄惨な過去。歩むべき修羅の道)

男(仲間との絆。そして……)

男「……古鷹。古鷹というのか……」

古鷹「付いてきて下さい。全て……分かります」

男(古鷹は再び歩き出す。俺を待っているかの様にゆっくりと)

ザッ

男(雑草を踏みしめながら、古鷹の後を追う)

男(そして俺は……)

男「……」

男(俺はただ、立っていた。見ていた)

男(仲間が傷ついていく姿を。紫色に染まる空を)

男(倒れた……"自分自身"の姿を)

男「……そうか。そういう事だったのか」

男(両親や姉と幾度となく過ごした"一度きり"の休日は全て……俺の夢だった)

男「古鷹。俺は……」

古鷹「戻ってきて下さい。みんな待ってます」

男「……どうすればいい?」

古鷹「……それは」

姉「それは……」

男(視界が暗転する。瞬きした次の瞬間には)

父「……」

母「……」

姉「……」

男(家族が揃う。家のリビングにいた)

男(母、姉、父の順に並んで立っていた)

姉「男。これからどうする?」

父「私たちと一緒に、静かに。平和に過ごすか」

母「いつ死ぬかも分からない戦場に戻るか」

男「……」

男(考えるまでも無かった)

男「俺は戻る。仲間が待っている」

父「すぐにでも死ぬかもしれないのに?」

男「あぁ」

母「仲間が死ぬ所を見るかもしれないのに?」

男「そうだ」

姉「後悔するかもしれないのに?」

男「くどい。俺は夢を見ている暇など無い」

男「俺の父は非人道的な実験を行い、後悔しながら姉に殺された」

男「俺の母は一人残され、行き場を失い。狂い、心を殺した」

男「俺の姉は、友を失い。狂気に呑まれ、父を殺し、許されない愚行を繰り返し、殺された」

男「俺は……蔑まれ、疎まれた人生の原因を知る事が生きる目標で」

男「それを達成して、また新たな目標が出来た」

男「それが真実であり全てだ。ただの妄想にしか終着の無い夢など……無意味だ」

姉「……でもこの夢は。君が一番見たかったものだろう?」

男「……ッ!!」

姉「このプログラムは。対象の一番望むものを見せる様に組まれている」

姉「男。君が望んでいたのは……普通の家庭だ」

男「……」

姉「普通の家庭で、普通の家族と、普通の生活がしたかった。そうだろう」

姉「心のどこかで、いつかこんな光景が見れると信じていた」

姉「そうだね?」

男「……」

男「……そうだ」

姉「だから男の記憶を消させてもらったんだ。普通の家庭にそんな異常な人生も記憶も要らない」

姉「けれど、記憶を取り戻して……男。君は……」

男「今俺が望むのは……仲間の命だ。仲間が無事に生還する事」

姉「なのに……夢を見せてあげられないんだ」

姉「強烈な意志が、夢を見る事を拒んでいる」

男「夢を見て満足出来るのならそいつは本物の阿呆だ」

男「帰る方法を教えてもらおうか」

姉「……その前に一つ。聞かせて欲しい」

男「なんだ」

姉「男は……この夢を見れて良かった?」

男「……」

姉「それだけ……聞かせて欲しい」

男「……俺は」

男「……このような夢、見なければ良かった」

男「……心の隙間を大きく抉られたようだ。例え幸せな夢だったとしても」

男「見るべきではなかった」

男「……」

姉「……わかった。ありがとう」

姉「夢から覚めるには。プログラムの中心を破壊するだけでいい」

姉「君の手でね」

男「俺の手で……」

姉「それから……男はもう一つ望んでいる事があるね」

姉「とても小さな事だけど、それを叶える事は夢でも出来る」

姉「ほんのついでだけれど、叶えてあげよう」

男(いつの間にか姉の手には自動拳銃が握られていた)

男(それを躊躇いなく、父のこめかみへと向ける)

父「……男。家族を引き離して済まなかった」

父「自分の信念を曲げるな。自分がそうだと決心したのなら、必ず」

父「形は違えども、私の様に後悔しないように」

父「それでは。次に会う時も、また家族でいよう」

父「……次こそは……男の望む幸せな普通の家庭にしてみせる」

パァンッ!!!

ドサッ...

(父はそう言うと頭に風穴を開けて倒れた。脳漿と血が……穴から溢れ出して……水溜りを作った)

母「現実の私はもう……私でないのかもしれないけれど」

母「これだけは……これだけは自信を持って言える」

母「私は……貴方を心から愛していました」

母「……私の事は気にしなくていいから」

母「男は自分のやりたい事をして、好きなように生きて」

母「それが私の願いで……そうあってくれる事が一番望んでいる事だから」

母「……お願いね」

パァンッ

ドサッ

男(母もまた、父と同じ様に。どろりとした異物の混じった血液を周囲に広げながら、動かなくなった)

姉「……夢でもいいから、嘘でもいいから、家族の後押しが欲しい。それが男の小さな望み、だね」

姉「そうすれば……後腐れなく夢から覚められる」

姉「ほんの少しの迷いも無く仲間の元に戻れる」

男「……」

姉「最後は……男。君の手で終わらせるといい」

男(姉は父と母の命を奪った自動拳銃を、俺に差し出した)

男(そして俺もまた、迷う事なくその銃口を)

男(姉の額に向け、トリガーに指を掛けた)

姉「男。君の望む普通の家庭は、君の力で作る事も出来る」

姉「君はまだ気がついていないけれど。その要素はもう揃っているんだ」

姉「それは……男自身が見つけなければいけない」

姉「大丈夫。すぐに見つかる」

姉「もし何か困った事があったら君の仲間……」

姉「頼りになる新しい姉に助けてもらえ」クスクス

姉「それじゃあ。さようなら、男」

男「……さようなら。姉さん」

パァンッ...

ドサッ

男「……」

男「……さようなら」

ここまでです

ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


男「……ん」

男(長く……眠っていた気がする)

古鷹「て……提督!提督!」バッ

ギュッ

男「っ……!?」

男(重い目蓋を持ち上げ、周囲の状況を確認しようとすると古鷹が突然抱きついてきた)

古鷹「良かった……」

男「……古鷹」

男(女性の甘い香りと……血の香りが混ざって鼻の奥へ届く)

武蔵「やっと……目を覚ましたか」

日向「……」

神通「提督。お待ちしていました」

龍鳳「提督……」

北上「起きるの……少し遅いんじゃない?」

男(よく見れば全員俺の側にいた。そして皆同様な傷ついていた……)

男(特に武蔵と日向の状態が酷い。外見からはもう戦えないのではと思う程だ)

男「皆……戦いは……」

ドゴォォォッ!!!!!

男(響く爆音。それだけでまだ戦闘が続けられている事はわかった)

男(それでは今戦っているのは……)

「俺に勝負を挑んだのがそもそもの間違いだったな!まぁ……アレに挑んでいたなら尚更……か」

レ級「……」


虚「チッ……この化け物が……!!」

「俺もお前らも同じだろ?俺が化け物ならお前らも化け物さ。そうだろ?」

幻「……」

男(知らない男と女だった。男は笑う余裕すら見せながらあの男二人を圧倒している)

男(かたや女の方もレ級と拮抗した戦いを繰り広げている。だが表情……眼帯が特徴的な顔からは余裕が伺える)

武蔵「……虚構型戦艦1番艦、虚構に球磨型の木曾……だそうだ」

男「戦艦……虚構……!!」

武蔵「それと……木曾の方は……解放旅団所属、と言っていた」

男(戦艦虚構に解放旅団。木曾……)

男(まるでパズルのピースをはめていく様に頭の中で単語が空白を埋めていく)

お仕事です

男(顔は若く見えるが白髪混じりの男)

男(俺と似たようなスーツにベージュ色のロングコートをたなびかせながら虚、幻を同時に相手している)

男(しかも素手でだ。艤装も何も装備していない)

男(いや……太腿にホルスターが見えたがそれすら必要無いのだろう)

虚構「喰らえッ!!」

ドゴォッ

虚「ーーーッ!!!」

男「……なんだ、あれは」

男(見えなかった。恐らく正拳を繰り出したのだろう)

男(だが。俺が見たのはまず虚が腹部を丸めて吹き飛ぶ瞬間だった)

男(次にあの男……虚構が拳を突き出している所)

男(異常なまでの戦闘能力)

男(これが……昇華薬によって深海棲艦の力を取り込んだ実力か……!)

男(ならば。奴もまた狂人……という事なのか)

幻「破ッ!!!」ブンッ

ドゴォッ!!!

虚構「……」ザザッ

虚構「木曾流絶招、影。内の壱」

男(幻の艤装を使った当て身を片腕で受け流すと)

男(右腕を、矢を引き絞る様に構えた)

虚構「雷(はたたがみ)ッ!!!」

パァンッ!!!!!

幻「ッッッ!!!!!」

ザッドサッドサッドサッ

ボコォォォンッ!!!!!

男(まるで稲妻が落ちたかの様な音と共に、幻の身体がゴム毬の様に跳ねて吹き飛んだ)

男(そしてそのまま朽ちたビルの柱に、叩きつけられる)

ビチャッ...

男(その瞬間。血飛沫の華が乱れ咲く)

すいませんなんかクタクタなのでここまでで

久しぶりに友人に遊戯王やろうと言われたはいいが征竜一強時代のデッキ故現環境に合わせるべく30分でアキバを駆けずり回るという荒業をうんたらかんたら。ライフポイントもサイフポイントもやばいです

ふと思ったのは遊戯王で大日本帝国の軍艦カテゴリが出たら艦これと一緒に楽しめるのになぁ、と

男「……なんという。強さだ」

虚「弾丸でも喰らってやがれクソ野郎ッ!!!」

男(虚構の後方。虚が艤装の機銃の銃口を全て攻撃後の体制の虚構に向けられる)

バラダダダダダッ!!!!!

男(激しい炸裂音が何重にも重なり合い轟音を立てる)

男(文字通り火を吹かせた銃口から高密度の弾丸が虚構に向かう)

虚構「……」

フワッ...

男(だがそれが当たる事は無かった。まただ)

男(気がつけば虚構はクラウチングスタートの様な体勢を取り弾丸を回避していた)

男(その超低姿勢からだ。右手をコンクリートに添えて、曲げた右腕を……伸ばした)

ドンッ!!!!!

虚「な……なんっ……」

男(射撃体勢の虚には到底かわし切る事は叶わない)

男(大砲の弾の様に飛び出した虚構はそのまま……)

ドゴッ!!!

虚「うぐッ……!!!」

男(虚と接触した。幻に続き再びゴム毬の如く跳ねる)

ドサッドサッドサッ...

虚「かはっ……!」

男(最後は地面に叩きつけられ、吐血した)

虚構「地上は片付いた……か」

バシュッバシュッバシュッ

ドゴォォォッ!!!!!

虚構「……空が厄介だな」

男(虚、幻の二人が動かなくなると今度は制空権を得たF-15の部隊が虚構に向けて機関砲や対地ミサイルを放つ)

男「全員離れるぞ!!ここに居ては巻き込まれかねん」

男(虚構との距離は開いてはいるが。戦線を離脱でもしなければ十分巻き込まれる可能性はある)

男(巻き添えで爆死など笑える冗談ではない)

ここまでです

で。すごく関係ない話なんですけど。電車で座ってる時に、膝とか太腿にカバンとかコートの裾でツンツンされる事ってありません?しかも疲れて眠い時に限って

相手明らかに嫌がってて後ろも空いてるのになんで一歩引くとか気使えないんですかね。ちょっと本気で頭に来てイライラしてて更新止まってましたすいません……

こういう通勤とか会社ネタってSSで使えそうですよね。サラリーマン艦娘とか面白そう

虚構「地上は片付いた。空はまだか?それと……あぁ、頼むよ」

虚構「俺の艤装を見せてやるよ」スッ

男(虚構は何やら小さな声で呟くと俺たちに向けてそう言った)

ドゴォォォッ

男(その瞬間にミサイルによって煙幕が貼られ、虚構の姿が掻き消される)

男「動ける者は動けない者を背負うなりして意地でも動け」

武蔵「私は……一人でも大丈夫だ……」

神通「無理なさらないで下さい」スッ

男「日向、大丈夫だな」

日向「……あぁ」

古鷹「私も手伝います!」

北上「あそこが良さそうだよ!」

龍鳳「あの場所なら飛んできた破片も避けられそうです!」

男「ビルの陰か……分かった。行こう」

キュィィィン...

男(お互いがお互いを庇いながら移動を始めた。その後ろからは激しいレ級の艦載機の攻撃音が聞こえる)

バララララ!!!!!

男「……」チラッ

男「……!!」

男(だがそれに混じって一層大きな射撃音が聞こえ、振り返ると……)

男(虚構のいた場所。土埃の中から大量の弾丸が空に向かい放たれていた)

男(なんだあの弾丸の量は……機関砲でも売っているとしか……)

バシュッバシュッ!!!

男(そう思う最中、続けて土埃から放たれたのは対空ミサイル)

男(二本のミサイルが空を舞う艦載機に向けて突き進む)

男(今度は対空ミサイル……!?)

男「……よし。着いたな」

武蔵「はぁ……」

日向「……」

北上「次は……あそこ!」

バララララ!!!

チュンッ!!!

男(一機の艦載機がこちらに向けて機銃を放った。一歩物陰から出ていれば、穴が空いていたかもしれない)

男「少し休もう。とりあえずな……」

男(しかし……機関砲に加え対空ミサイルとは。人間技では……)

男「……人間、技じゃない。人間ではない……!?」

男(一つの答えが頭をよぎった。それは多分、確信に近い)

虚構『流石に、対空攻撃は難しいな』

男「……やはり。あれが……」

男(やがて土埃が晴れ、現れたのは……)

男(黒い塗装、巨大な姿)

男(どの次世代兵器にも当てはまらない。初めて見る姿である)

男(それはまるで……鋼鉄の巨人だ)

虚構のモデルはACの機体とマブラヴの戦術機だと言う話をしましたが、正確に言うとホワイトグリントと武御雷を足して2で割ったようなかんじです

格闘戦はもちろんの事射撃にも特化している分機動性は若干他の次世代兵器よりも低い。という設定です

見た目がそれなだけで性能あたりは参考にしてないですけどねー。兵装はデータ転送次第でほぼ無限に使えますし。もし現実世界に現れた場合物理に習うので武器庫みたいにも重力に逆らったりも出来ないですが

ちょっと比較用に他の次世代兵器と一緒にステータス乗せてみますね。S~Dランクでランク付けてみます

近接兵装:近接戦闘の際使用する兵装の性能です
遠距離兵装:遠距離戦闘の際使用する兵装の性能です
移動力:出力出来る速さです
突破力:難所を行軍する力です
装甲 :装甲の性能や耐久性です

他になにかありますかね……?

次世代兵器性能比較表

見方……

名前:その次世代兵器の名称です
説明:その次世代兵器の簡単な説明です

ステータス

近接兵装:近接戦闘の際使用する兵装の性能です
遠距離兵装:遠距離戦闘の際使用する兵装の性能です
移動力:出力出来る速さです
突破力:難所を行軍する力です
装甲 :装甲の性能や耐久性です

ステータス左側は電子世界での性能。右側は現実世界においての性能です

電子世界では古鷹型重巡洋艦一番艦 古鷹をオールBとして記載
現実世界では10式戦車をオールBとして記載しています

蜘蛛型駆逐艦

六足型無線式戦車。機動性を犠牲に多数の兵装を装備出来る他、輸送任務や難所を行軍するのにも役立つ

近接兵装 C C
遠距離兵装 B B+
移動力 C C-
突破力 B+ A++
装甲 B+ B


狼型駆逐艦

四足型無線式戦車。次世代兵器の中では最高峰の機動性だが、装甲や火力には難がある。AI搭載型も存在する

近接兵装 B- B+
遠距離兵装 D D
移動力 A+ B
突破力 B A+
装甲 D C-

傀儡型軽巡洋艦

二足型無線式戦車。人型ならではの行動や兵装が存在する。オールラウンドに戦闘が行える

近接兵装 C B+
遠距離兵装 B- B
移動力 B- C
突破力 C+ B+
装甲 C C

大蜘蛛型重巡洋艦

蜘蛛型駆逐艦の強化型。無線式と有人機が存在する

近接兵装 B B+
遠距離兵装 A A
移動力 D D
突破力B A+
装甲 A+ A

虚構型戦艦

二足型戦車。有人機である。戦艦虚構のデータの一部を利用して開発された。兵装、機動性、装甲どれも性能は高い

近接兵装 B A
遠距離兵装 B+ A
移動力 B B-
突破力 B B+
装甲 B+ B

まだ本編に記載の無い次世代兵器です

海鷂魚型潜水艦

エイの様な姿の巨大潜水艦。海中深く潜行し、大規模な魚雷爆撃や水中機雷をばら撒く。小型潜航艇も搭載可能

近接兵装 B A
遠距離兵装 A+ A+
移動力 B+ B
突破力 C B-
装甲 A A

海鷂魚型潜水艦のみ、電子世界では伊58をオールBとして
現実世界ではそうりゅう型潜水艦をオールBとして記載

弓兵型空母

二足型戦車。遠距離兵装しか持たないが、超小型無人機を搭載し、まさに陸の空母の如き働きをする

近接兵装 D D
遠距離兵装 A A+
移動力 C+ C
突破力 B- A
装甲 C- C-

ネームドシップです

※本編未登場は記載していません


虚構型戦艦一番艦 虚構

二足型戦車。日本国が有する虚構型戦艦のモデルとなった次世代兵器。その全貌は世界中に知るものは所有者である解放旅団のみ

近接兵装 A A+
遠距離兵装 A A+
移動力 B C
突破力 C- B+
装甲 A+ A

いやまぁそこまで艦娘のステータスをじっくり見たり現実の兵器にそこまで詳しい訳でもないので、おかしな部分はあると思います

あくまで自分はこんなかんじを想像して書いているだけなので、あまりがっちり当てにする必要はないと思います

男「あれが……戦艦虚構」

虚構『……あぁ。頼むよ』

男(手に持っているのはM61ガトリング砲に似たような兵器)

男(その大きさは艦載機兵装であるM61よりも優に大きい)

虚構『さて、空もこれで決着だ!』

キュィィィン

バララララ!!!!!

男(巨大なガトリング砲から無数の弾が空へと飛んでいく)

男(激しく薬莢が地面を叩き、反動からか虚構の脚がコンクリートを削りながら僅かに後退していた)

男(だがその対空攻撃はF-15を堕とすまでには至らない。それどころか攻撃は激しさを増す)

ドゴォォォッ!!!!

男(虚構の立つ場所の周囲は大穴が無数に空いている。それでも虚構自身に当たらないのは対地ミサイルをガトリング砲で撃ち落としているからだろう)

龍鳳「て、提督!」

男「どうした」

龍鳳「あっちの空から別の戦闘機が!」

男「ん……?」

男(虚構が激しい戦闘を繰り広げている方向とは反対。見ればまた戦闘機が隊列を成してこちらに向かっていた)

男(その戦闘機は近くで散開。F-15へ攻撃を始めた)

男(先ほど龍鳳が魅せていた戦いとは違う。限界の航空ショーなどではない)

ズドォォォ...

男(お互いがお互いを全力で落とし合う。まさに航空戦である)

またロングコートピラピラピラピラ……(^ω^#)

ここまでです


>>542
>その全貌は世界中に知るものは所有者である解放旅団のみ
「その全貌を知るものは所有者である解放旅団のみ」or「その全貌を知るものは世界中にただ解放旅団のみ」
かしらん

>>547 おおう……前者の打ち間違いですね。すみません

今日はお休みです……

男「あの……戦闘機も。解放旅団なのか……」

男(恐ろしい程の戦闘力である。これにいずれかの国の後ろ盾があるのは明白だ)

ガキンッ

男「……」


木曾「……」クルクル

レ級「強いね……現実ではどうなのかな?」

木曾「どこに居ようが俺はお前らに屈するつもりはないぜ」

男(ナイフを手の内でクルクルと回してながら答える)

レ級「そっか……」

バッ!!!

ガキンッ!!!

男(レ級の艤装と木曾のナイフがぶつかり火花を散らす。艤装と接触して破壊されない辺りアレは木曾の艤装の一つなのだろう)

木曾「いいねぇ……久しぶりに味のある戦いだ……ッ!!」

ガキンッ!!!

レ級「……」

虚「……ぐっ……がふっ……」

幻「まさか……これほどまでとは……思わなんだ」

虚「現実じゃこうはいかねぇ……本体は向こうだ。向こうで叩き潰してやる……!」

幻「一旦引くぞ。ここで死んでもつまらんだろう」

虚「……けっ」

幻「聞こえているな、レ級。撤退の陽動を頼む」


ガキンッ

レ級「……わかったよ」

ガキンッ!!!

木曾「誰かと通信でお喋りする余裕があるのか……舐めるなよッ!!」

ガキンッ!!!

レ級「また今度続きをしよう。ね?」

木曾「なに……?」

虚構『ん……空間に反応があるな』

ドドドドド...

男「……地鳴り、か?」

男(戦闘の余波とは別になにか、地面がわずかに揺れた)

龍鳳「……ど、道路の先を見て下さい!!」

男「……ッ!!」

男(龍鳳にそう促され、虚構の立つ向こうに目を凝らす)


駆逐イ級「グゴォォォ!!」

重巡リ級「……」

戦艦ル級「……」チャキッ


男(地平線を黒く塗りつぶす……深海棲艦の群れがこちらに向けて進軍していた)

男「あの……大群は……」

武蔵「……反対側からもだぞ」

男(周囲を確認する。虚構が立つのは巨大交差点のほぼ中央)

男(俺たちの視界から見えるのは虚構の向こう側とその反対、直線上だけである)

男(その両側から地鳴りと聞いた事も無いような鳴き声が聞こえ、黒い波が迫っていた)

男(さらに地鳴りと声はそれだけではない。ほぼ全方位から聞こえている)

虚構『……数で包囲して押し潰すつもりか。流石にこれの中全員を守りきるのは難しいか』

虚構『……あぁ、頼むよ。地対空ミサイルユニットを変更してくれ』

虚構『弾頭を変えるだけだ。すぐ終わるだろう?』

木曾「クソっ……アレを使うのか!」

虚構『それしか思いつかなかった。みんなを誘導してくれ!』

木曾「わかったがこいつは!!」バッ

木曾「……消えた」チャキッ


虚「……クソがッ!!」

レ級「大丈夫……?」スッ

ガシッ

虚「レ級。戻ったら……わかってんな」

レ級「……うん」

幻「……はぁ。では、一時撤退だ」

バチンッ...バチッ...ジジジ...

ここまでです

艦娘自体の能力は現実世界では皆無です。普通の女の子なので

次世代兵器に関しては設定だと結構大きいです。蜘蛛型で全長7m、全幅5m、全高3mくらいですかね。形状的にはタランチュラ想像していただけると
大蜘蛛型がそれのもう一回り大きいくらい。虚構型が直立してで全長8m、全幅2mくらい

傀儡型が一回り小さいくらい。狼型が蜘蛛型よりもさらに小さなくらい、ですかねぇ

虚構型戦艦一番艦虚構は他虚構型よりも少しだけ大きいかもしれないです……

電子世界でも現実世界でも大きさは変わらないです

あ。蜘蛛型の体長はレッグスパン含むです

やっぱり大きいっていいですよね!大きすぎてもアレですけど

木曾「おいお前ら!」ダッ

木曾「……」

日向「……久し……ぶりだな」

木曾「……そうだな。あれ以来か」

古鷹「あの……二人は知り合い……?」

日向「……そんな所だ」

木曾「それもいいが。早く虚構の脚元に移動しろ!」

武蔵「脚元だと……」

木曾「吹っ飛んでバラバラになりたくなきゃな!」

北上「吹っ飛んでバラバラって……なにする気なのさ……!?」

虚構『集束弾頭装填。射撃角度……よし』

木曾「走れッ!!!」

男「集束……クラスター爆弾か!!」

男「全員走れ!!巻き込まれれば本当にバラバラになるぞ!!」

神通「は、はい!」

虚構『……これ以上は待てない。撃つぞ!』

ドンッドンッドンッドンッ

男(俺たちはお互いに肩を貸し合いながら全力で走りだした。その瞬間、空高く弾頭が撃ち上げられ……)

ズドォォン...ヒュゥゥゥ

男(空中で炸裂、大量の爆弾が降り注ぐ)

お仕事です

男「はぁ……はぁ……っ!」

武蔵「ぐぅ……っ!!」

男「我慢しろ……!」

武蔵「この程度……なんともない!!」

木曾「酷いな……すぐにでも離脱した方が良さそうだ……」

日向「……」

神通「日向さん!」

日向「……大丈夫」

北上「いったっ……もぅなんか走ってばっかだよー!」

古鷹「お、落ちてくる!!」

龍鳳「急いで……ッ!!」

男(空に散らばった黒い粒が降り注ぐ)

男(俺たちの近くではないが……)

男「……ッ!!」

男「一発こちらに近いぞ!!」

木曾「チッ!!」チャキッ

パンッパンッパンッ!!!!

男(木曾は懐から自動拳銃を引き抜くと、一発だけそれてこちらに向かう黒い粒を撃った)

ドォォォン!!!

男(その音がまるで引き金になったかの様に)

木曾「全員耳を塞いで伏せろ!!」

ドォォォンドォォォンドォォォン!!!!!

男(凄まじい爆音が周囲を包んだ)


男「……」

パラパラ...

男(その瞬間の事は把握出来なかった。轟音が鳴り響く中、肩を貸していた武蔵ごと倒れ耳を塞いだ)

男(大地が揺れモスキート音の様な高音が耳を刺す)

男(どれくらい時間が経ったのか。目を開けると)

ゴォォォ...

男(丁度直立の虚構の近く。その周囲のビル群や道路の外側が廃墟と化し)

男(炎に包まれていた)

男「……なんて、破壊力だ」

虚構『いよいよだな。すぐに戻って準備を整えよう』

虚構『中尉。だったかな』

虚構『"また後で会おう"』

男「また……後で。だと」

虚構『強制離脱させるよ。その後の事は指示に従ってくれ』

男「待て!!お前は……これは……どうなっている……」

ジリッ...ジジジ...

男(視界が霞んでいく。景色は崩れ、細かな光となって拡散する)

虚構『……戦争さ』

男「ーーーッ」

男(言葉すら発せず。意識は光の中へと溶けていった……)

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ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


男「……ッ!!」

ガバッ

男「……進水室、か」

男(目を覚ましたのは進水室。現実に戻っていたのだ)

少佐「おお!!目を覚ましたか!!」

男「少佐……」

少佐「良くやってくれた!!連絡が途絶えた時には……不穏な考えが過ったが……」

少佐「深海棲艦の出現位置を破壊して戻るとは。お陰で連合軍は勢いを盛り返しつつあるぞ!!」

男「違います。あれは虚構……」

少佐「虚構?虚構とはどういう意味だ?」

男「……いえ。なんでもありません。それよりも少佐もご無事で」

少佐「次世代兵器は囮に使うのが精一杯だった。私も大蜘蛛に乗り前線へ向かったが……ここにいるという事はそういう事だ」

男「……そうですか」

少佐「……私は問題無いが君は少し休んでいるといい」

少佐「相当に、精神を消耗しているように見える」

男「いえ……この程度であれば」

少佐「いいから。部屋には戻れんがすぐそこの休憩所が空いている。仮眠でも取っていろ」

少佐「彼女達もじき目を覚ます。同じよう誘導するから心配するな」

男「……はい。では」

少佐「うむ。ご苦労だった」

ここまでです

男「……」

バタン

男(誰も居ない休憩所の扉を閉め、ソファーに寝転がる)

男「戦艦虚構……か」

男(あれだけの戦闘能力を有するものが現実にも存在する。それが一体何を意味するのだろうか)

男(彼と……彼女。木曾は解放旅団。それがこちらの近くまで来ているとはつまり)

男(……まさか。あの戦いだけで終わるはずはない)

男(虚にも、幻にレ級にも止めをさす所を見ていない)

男(それに……)


虚構『"また後で会おう"』


男「また……後で」

男(あの言葉は……また後でとはどういう事だ)

男(またすぐに、同じような戦闘が起こるということか)

男「……」

男(今は……少佐に言われた通りに眠るか)

男(疲労がどっと押し寄せた。きっと眠りにつくまでにはそう時間は掛かっていないはずだ)

男(瞼は鉛の様に重く、気がつけば……眠りに落ちていた)


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ーーーーーー
ーーー

お仕事です

男「……」

男(ほんの少し明るみの差した空に煙が漂う)

男「すぅ……はぁー……」

男(ほんのわずかな時間眠り、その後少佐から作戦終了の報告を受けた)

男(結果は成功だ。国防軍の前線基地は突破される事は無かった)

男(だが、甚大な被害が報告されているそうだ)

男(大量の武装、兵器のデータ破損。次世代兵器のデータも約半数を喪失したらしい)

男(そして、艦娘や国防軍、防衛機構の人間の死亡)

男(国防軍からは死傷者が100人に上り、未だその数は増えているそうだ)

男(艦娘も数人の死亡が確認されている)

男(防衛機構所属の人間も。今の所27人の死亡を確認)

男(艦娘は他の部隊から2人)

男(想像を絶する戦いだった。これから防衛機構や日本国はどう動くのか)

男(各国はどういった反応をするのか)

男(あれが深海棲艦のほんの一部の戦力だったとすれば)

男(最早国同士で争っている場合ではない。世界が深海棲艦に呑まれる可能性すらある)

男(まぁ……それは俺が考えるべき事では無い)

男「……ん」

グリッ

男(携帯灰皿には一杯に吸い殻が詰め込まれている)

男(今は……いつも煙草をひったくっていく人間も疲労困憊で眠っているからなのか)

カチンッシュボッ...パチン

男「ふー……」

男(簡単な報告は済ませた。しばらくは自体の収束に向けた慌ただしさに巻き込まれる事はないだろう)

男(眠ってしまってもいいのだが。眠気はいつの間にか吹き飛んでしまっていた)

男「……」

男(しかし……虚構と木曾はどこからあの空間に接続していたのだろうか)

男(仮にあの空間が近くにはあったが隔離されていた場所だったとして)

男(虚構と木曾……解放旅団は少なからず近くにいたはず)

男(日本国に近い場所。周囲の国からなのか、それとも……)

男(電子の世界においても国の位置関係というものは存在する)

男(国を挟んで接続しようとした場合。例えばA国を挟んで隣のB国に接続するとしよう)

男(自身のデータをB国まで転送するのにはA国のネットワークを経由しなければならないが)

男(通過しようとしたA国に探知、または阻害される可能性は十分にあるのだ)

男(つまり、リスクを出来るだけ減らし。即座に送り届ける為には隣国、またはその当国から接続する必要がある)

男(あれだけの強力なデータをそう簡単に隠蔽出来るものなのだろうか)

男(俺はそれを踏まえて解放旅団は近くに居ると。そう思った)

男(しかし。なんの為に、何が目的なのか。まるで分からない)

男(もし深海棲艦を攻撃する為に居たとするなら)

男(あの深海棲艦の侵攻を予測していた可能性がある)

男(そしてあの……"また後で会おう"。という言葉)

男(まだ深海棲艦の攻撃は終わってはいないのではないだろうか)

男(またすぐに、深海棲艦の侵攻が始まるのではないだろうか)

男(そう思ってしまう)

少佐「中尉、ここにいたか」

男「少佐……」

少佐「あぁ……別に正す事はない。今は力を抜いているんだ」

男(少佐に声を掛けられ、曲げた腰を正そうとしたが制止されてしまった)

少佐「私も今聴取から解放された所でな。少しばかり休憩だ」

男「そうですか……お疲れ様です」

少佐「うむ。それで……その、なんだ」

男「……」

少佐「少し酒に付き合え。たまには二人で飲もうじゃないか」

男(少佐が誰かと酒を飲んでいる所は見た事がない。恐らく……)

少佐「いや……まぁ。こうして気軽に話掛けられるのは君ぐらいだからな」

少佐「どうもここの人間は固くてかなわん」

男(固くなるのも頷けはする。仕事中は確かに手出し口出しをしてはいけない様な雰囲気を纏っている)

男(実際はそうでもないが)

男(それに。少佐は防衛機構を初期から支えてきた人間の一人でもある)

男(艦娘や実践部隊の指導は鬼……いや。修羅とすら言われている)

男(個人の限界を見極め。その限界を見ながらギリギリの所まで絞る)

男(それに加え戦闘の指揮や作戦運用なども適切に行える)

男(他の人間からすれば声を掛けるのすら躊躇いたくなるほどの功績者なのだ)

男「わかりました。行きましょう」

少佐「近場の店はこの騒ぎで開店などしていないだろうし……私の部屋で飲もう」

男「はい」


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ーーーーーー
ーーー

ここまでです

あまり関係のない話になるんですけど。SSって一番自分が書きたいものを書いてる訳で、最高の妄想の塊な訳じゃないですか

仕事がズルズル長くなってからは一日に一時間も触れないんですけど。DAWがあるので、このSSとか前作のSSの場面を妄想しながら短いフレーズとか打ち込んで遊んでると結構楽しいです

BGM投下ってアリなんですかね……流石にそこまで行くと嫌がる人もいるんじゃないかとか思ったり

DAWはFLstudioと音源はkomplete9と他に有料と無料のがちょぼちょぼと……環境は十分だと思うんですけど打ち込みスキルがクソです(^p^)

少佐「日本酒とワインと……芋焼酎と……なにが飲みたい?」

男「では……日本酒で」

少佐「うむ。ロックでいいな」

男「はい」


少佐「では、祝勝会という訳ではないが」

少佐「乾杯」

男「乾杯」

男(お互いにグラスを軽く掲げ、その中身を一口飲んだ)

男(米の甘みと香りが広がり、アルコールが喉を熱くする)

男(つまみには一口チーズと、柿の種がボウルに乗せられていた)

男「……」ポリポリ

少佐「……」ポリポリ

男(お互いにしばらく黙って酒を飲み、つまみをつまんでから。口を開いたのは少佐だった)

少佐「……今回の戦い。どう思う?」

男「……深海棲艦の侵攻の一部、ではないかと」

少佐「一部……か」

少佐「確かに。その様な気もする」

少佐「だが奴らの目的はなんだ。何故防衛機構を狙ったのか」

少佐「……」

男「狙うに値する物があるから、ではないでしょうか」

少佐「……なにか見当が?」

男「いえ。ただ深海棲艦がここをわざわざ狙う理由があるのなら、そうだろうと思ったまでです」

短いですがお仕事です

少佐「……そうか」

男「……」

男(奴らは俺を狙っている。必ずしもそれだけの理由で侵攻を開始したとは言い難いが)

男(俺と、その部隊だけをあの空間に閉じ込めたという事はつまりその目的は侵攻の一部にあったという事だ)

男(だがその様な事……話せる訳もない)

男(俺だけが犠牲になるだけならまだしも。もう……俺一人の問題ではない)

男(どうしようもない……)

少佐「……ふむ」

少佐「君は何か深い事を考えていたり、隠し事をしている時は少し眉が下がる癖がある」

男「はっ……?」

少佐「ふっ……冗談だ。だがその反応は図星だな」

男「……」

少佐「まぁ。何か隠していようと問い詰めたりはしないさ」

男「……何故?」

少佐「まさか君が深海棲艦と内通しているような人間だとは思っていないからな」

少佐「君はそうだな……真面目すぎる。良い言い方をするなら義理堅い、か」

男「……」

少佐「防衛機構の為に。いや、自分の為に防衛機構に尽力してくれる、そのようなかんじだ」

男「……少佐」

少佐「だがそれ故に。君は深くまで立ち入ろうとする」

少佐「そうだろう?」

男「……その推測はどこから?」

少佐「人の行動や言動。性格を見ればだれでも分かる。特に、もう何年の付き合いになれば尚更な」

少佐「中尉。君がどこまで、どの様な理由で、何に関わっているかは分からんが……」

少佐「私は出来る範囲でなら手を貸そう。君の為に、私の為にもなるならな」

男「……少佐。少佐は一体」

少佐「今は……まだ言わなくともいい。その時になって私の手が必要ならば、言うといい」

男「……それがもし無謀で愚かな考えだったとしても」

少佐「無謀か愚かかなどは私が決める事だ。私がそうでないと思えば全力を尽くすし、そうだと思うなら全力で君を止める」

男「……」

男「……その時が来たなら。頼みます」

少佐「その代わり貸しだからな!」

男「……もちろんです」


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ーーー


男(少佐との小さな祝勝会を終え、部屋へと戻る)

男(程よく酒気が回り、このまますぐにでもベッドへ潜り込みたい気分だった)

ガチャ...

男「……」

古鷹「……」

龍鳳「……」

北上「……」

武蔵「提督よ。悪いが少し付き合ってくれ」

男「……」

男(ドアを開けるとリビングに全員が着席して揃っていた。理由は……分かっている)

日向「提督から話をしてやってくれ」

響「……」

神通「全て。包み隠さず話していただけますね?」

男「……」

男(これほどまでに。口を開きたくないと思ったのはいつぶりだろうか)

男(だが……もう逃げ場などはなかった)

男(結局。俺の願望から始まった騒動に、全員を巻き込む結果になったのだ)

男「……話を聞いてどう思うかはお前たちの勝手だが」

男「……後悔しても俺は知らんぞ」

北上「いいからさっさと話なよ。こっちは覚悟決めてるんだからさ」

龍鳳「黙って隠し事なんて、絶対にダメです!」

古鷹「……提督一人の問題じゃないですから」

男「……」

男「わかった。少し長くなるが退屈しないで聞いてくれ」

男(俺は席に着くと、アルコールで鈍った脳を叩き起こして、整理しながら少しずつ。話していった)

男(この場所に来た理由。過ごして来た日々で培ったもの)

男(深海棲艦の襲撃の裏側。かなみ神社での出来事に)

男(あの廃墟での事)

男(そこで知った全て、深海棲艦の目的)

男(わずかな平和の中での思い、先ほどの襲撃の事)

男(全てだ。ありのままを、話した)

男(全てを話してしまえば楽になるのかと思ったが。最後の一言まで出し尽くした時に待っていたのは)

男(後ろめたさに、罪悪感。劣等感に)

男(重苦しい沈黙だった)

男「……」

男(全員が黙り込んでからどれほど経ったのだろうか)

男(重苦しい沈黙は淡々と続き、終わる気配がなかった)

男(いや。短い時間だがそれほどまでに長く感じているのかもしれない)

男「……つまる所を言うと」

男「俺は国家級の重犯罪者の血縁であり。その因縁に今も付き合わされている、という所だ」

男「父や姉と同じような道を歩むつもりは毛頭無いが、結果的に俺は二人と同じく。周囲の人間を巻き込んでしまっている」

男「……すまない」

古鷹「……提督は何もしていないじゃないですか」

古鷹「提督は何もしていないのに!そんなのって……酷いじゃない……酷いよ」

北上「どうして話してくれなかったのさ」

男「ならば。北上ならそれを抱えていたとして周囲の人間に話す事が出来たか」

北上「っ……!!」

武蔵「提督。それは言うべきではない」

男「……そうだな。どうにでもならない事くらい分かる。卑怯だな、俺は」

ここまでです

ちょっと頑張ってなんかBGM的なの作ってみます。艦これBGMのアレンジとかにはならないで普通にオリジナルで作ると思います

もし上手く出来たら上げてもいいですかね……?

男「……奴らは。俺がこの場所にいる事で攻撃を仕掛けてきた」

男「俺がこの場所にいる限り、奴らの矛先はこちらに向く」

男「皆を危険に晒す」

男「……」

男「身分は隠してはいるが。もしこの深海棲艦の執着に防衛機構が、日本国が気がつき、情報を洗い出したとすると」

男「当然俺の本当の経歴が露呈するはずだ。そうなれば俺だけでなく皆もどうなるかは分からない」

男「……」

武蔵「……」

日向「……」

古鷹「……そんなの。そんなの関係ないです」

男「……古鷹」

響「……」

古鷹「提督がどんな血縁関係でどんな生活を送ってきていても、提督は私たちの提督なんです!」

古鷹「誰にも替えられない……存在なんです」

古鷹「深海棲艦が提督を狙うなら、全員倒しちゃえばいいじゃないですか!!」

古鷹「提督の事がみんなに知られる前に、倒せばいいんです」

古鷹「だって……提督は……提督は……」ポロポロ

神通「古鷹さんの言う通りです。なにがあっても提督は私たちの提督です」

北上「別に。今更そういう事があったって知ったってさ、嫌いになんかならないよ~」

龍鳳「つまり。古鷹さんの言う通り私たちが提督を守ればいいんですよね!」

響「私も全力で力を貸すよ、司令官」

武蔵「……どうやら、みんなに隠していたのは余計な事だったようだな」

日向「そうみたいだな……」

男「……すまないな、皆」

古鷹「提督!」ゴシゴシ

古鷹「提督は謝っちゃだめです。提督はなにも悪くないんですから」

男「……そうか。では」

男「ありがとう」


少佐「……」

男『ありがとう』

少佐「……」コトッ

少佐「……そうか。そういう事だったのか」

少佐「……この録音は処理しておかねばな」カタカタ

少佐「……不本意ではあるが盗聴器を仕込ませてもらった……が」

少佐「……世の中にはやはり知らなくともいい事と言うのはあるものか」

少佐「……」

少佐「中尉……」


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男(それから翌日の昼も過ぎた頃)

男(俺たちの行く先を大きく変える決定的事件が起こるとは。思ってもいなかった)

男(いや。俺たちだけではない)

男(これは、世界を変える出来事だった)

男「……はぁー」

男(昼食を終え。食後の一服をしていた)

男(騒動から一晩明けて、ようやく収束の兆しを見せ始めていた)

ジジジ...

男(さて……これからどうしたものか)

コツコツ...

男(行く先の事を考えながら煙を漂わせていると、背後から足音が聞こえてきた)

男(あぁ……来ないとは思っていたがようやく来たか)

男(煙草はつい先ほど新しいものを買ったばかりだ)

男(一本や二本くらいなら別に……)

響「司令官」

男「……ん?」

男(聞こえると思っていた声とは違っていた。振り返ると……)

男「……響」

男(多少緩んでいた気持ちが一瞬で引き締まった)

男(現れたのは……)

男(防弾コートを羽織り胴にはアサルトライフル。AN-94をぶら下げ、マカロフ、スペツナズナイフを携えた響の姿があったからだ)

男「……」

響「始まるよ」

男「……何がだ」

響「装備を整えて。すぐに出られる準備を」

男「……響。お前は何者だ」

男(普段の彼女とは違う。氷の様に冷たい表情で俺を見据えていた)

ウオーーーン!!!

男(答えを聞く間もなく。施設全体に警報が鳴り響いた)

男「……これはなんだ」

響「戦争だよ。本当の」

男「戦争……だと」

『防衛機構職員へ通達。第一級戦闘配置、第一級電子戦警報発令。繰り返す』

男「第一級……何が起こっている」

響「説明してる時間はないよ」スッ

男(響は俺に背を向けると。一つの大きなトランクケースを俺に差し出した)

響「司令官の装備は全部揃ってるよ。早く」

男「皆はどうする」

響「他のみんなを殺したくないなら、早くして」

男「……」

男(それは所謂、脅しというものなのか)

男(一つ分かったのは。彼女はただ単に虚構を追ってきた訳ではない)

男(もっと深く。この事態に関わっているという事、それだけだ)

いよいよ最終局面へ

シュルシュル...

男「……」チャキンッ

男「それで。俺をどこへ連れて行くつもりだ」

響「それは着いてから教えるよ……あと」

響「私は敵じゃない。深海棲艦を倒す為にここにいるんだ、だから……」

響「ハンドガンに手を掛ける必要はないよ、司令官」

男「……」

男(ほぼ無意識的にホルスターに収まったガバメントに手が伸びていた)

男(それはきっと。響が深海棲艦側の人間なのではないかという考えが一瞬でも頭をよぎったからだろう)

男(本当に。信用してもいいものなのだろうか)

男(仲間の命で脅しを掛けるとはつまり……)

ザザッ...

少佐『中尉、聞こえるか!応答しろ!』

男「……」

男(胸元の無線から少佐の声が聞こえる)

男「応答は」

響「必要ないよ」

少佐『中尉、どうした。応答しろ、中尉!』

男「……」

響「行こう!」

ダッ

男(俺は走り出す響を……追うしか出来なかった)

男(状況が判断出来ない以上。どうする事も出来ない)

男(それに……仲間の命というカードを切られた以上)

男(俺には対等な交渉の材料の持ち合わせが無かった)

男(慌ただしく動き回る人間を避けて辿り着いたのは。車両の格納庫だった)

男(防衛機構入り口から敷かれたアスファルトを道なりに進むと丁度敷地の端にある)

男(地上に大量に車両を置けない為、地下に格納する事でそれを解決している)

男(四角型の建造物の中心に巨大な扉、中の中央部に巨大な昇降機が設置されている)

男(武装車両が列を成して敷地外へと進んでいたが既に全ての最後尾が見えていた)

男「格納庫とは……どこかへ向かうのか」

響「それも説明するよ」

男(俺たちは無人となった格納庫へと足を踏み入れる)

コツコツ...

男(薄暗く照らされた無機質な建物である。それの昇降機の端に俺たちは立った)

響「……」カタカタ

男(端には端末が設置されていて、これで昇降機を操作するのだ)

ガコンッ...ウィィィン...

男(響の操作で昇降機がゆっくりと動き出す)

男(この建造物は地下3階で構成されている)

男(装甲車や武装車両は1、2階。3階には一般車両が駐車している)

男(降りだして見えた最初の階には殆ど車両は残っていなかった)

ウィィィン...

男(ここでは止まらず次の階へ。こちらには多少軽機関銃を装備した車両などが止められていた)

男(だがこの階でも昇降機は止まらず降り続ける)

男(という事は一般車両でどこかへ向かうのか)

ザザッ

少佐『中尉。部隊の皆は響以外集まっているぞ!どうした!』

響「無線を切って」

男「……」

少佐『……まさか。なにかあったのか』

少佐『中尉、今どこにいる。応答しろ!応答……』

ブチッ

男「……これでいいのか」

響「うん。もうすぐ着くから」

男(やがて一般車両の並んで止まっている最終階にまで辿り着いたが……)

男(ここでも。昇降機は止まる事は無かった)

男「……待て。先ほどの階で最終のはずだ」

男「何故……それ以上に降りられる……」

響「あそこが最後じゃないからだよ」

男「……そろそろ。説明したらどうだ」

響「……」

クルッ

男(端末をずっと覗いていた響がクルリと振り返る)

響「私は。虚構を追ってきた訳じゃない」

男「……」

響「私は……」

響「解放旅団所属。特型駆逐艦の響だよ」

男「……解放旅団」

響「……司令官は戦艦虚構のデータの一部を利用して虚構型の戦艦が数隻作られてるのは知ってるよね?」

男「……あぁ」

響「あれは深海棲艦に対抗出来る兵器の中でも一番に強い、日本国のとっておきなんだ」

響「改良と研究は続けられて、今もどこかにいる」

響「それはどこにあるか。わかる?」

男「……」

男(確かに。虚構型戦艦の二番艦以降が製造されているのは知っている)

男(だがそれがどこに保管されているのか。考えた事も無かった)

響「深海棲艦は知ってるんだ」

男「なに……!」

響「そしてそれが自分達にとって脅威である事も」

響「深海棲艦を倒す為には虚構型戦艦が必要。だけど国はそれをまだ使うつもりはない」

男「何故?」

響「他の国に技術を流用されたくないから」

響「もっと高度な技術を利用して他国にそのノウハウを生かさせないようにする為」

男「……戦争で対抗手段を持たせない為か」

響「だからその場所を隠し続けてる」

男「……響はそれがどこにあるのか知っているのか」

響「知ってるよ。司令官も知る事になる」

ウィィィン...

男(どれだけ降ったのだろうか。やがて広い空間が姿を現した)

男(幾つものコンピューターが立ち並び、コードが無数に壁を這っている)

男(昇降機から真っ直ぐに引かれた先にある台座に置かれていた。いや……佇んでいたのは)

男「なっ……馬鹿な……これは」

男(灰色の都市迷彩の様な肌色)

男(赤く光る一つの瞳)

男(静かにこちらを見据える様に、待っていた)

男(鋼鉄の巨人……)

男「次世代……兵器」

響「日本国で製造された虚構型戦艦のうちの一つ」

響「あれが……」


響「虚構型戦艦二番艦、夢幻」

オリジナルは両目。二番艦以降はモノアイです(大事

男(電子世界で見た虚構とはやはり同じ人型と言っても形状はかなり違うものだった)

男(体躯はほっそりとしており、武装はごく少数のみ装備しているように見える)

男(右太腿の巨大なホルスターの様なものにはハンドガン。俺から見ればハンド"キャノン"に見えるが)

男(背には細身の太刀の様な物を)

男(夢幻の隣にはその夢幻と同じ長さはあろうまた巨大なライフル)

男(虚構は身体に更に武装を施し、装甲も厚く見えたが)

男(だがそれよりも……)

男「何故ここに……虚構型戦艦がある」

男「防衛機構は国防軍の傘下では……」

響「それは共同で開発を行っていたからだよ」

響「有力なPMCである防衛機構との接点をより濃く持とうとし。言い換えれば手足の様に使う為」

男「……」

少佐『……国防軍は我々を捨て駒にするつもりらしい』

男『容易に扱え、尚且つ自分達には被害がない。PMCとは元々そう言った利点があり使われるものです』

男『我々からしてみれば短期で多額の金が入り込む。危険を犯してでも取り入る事が何よりも重要』

男『ですが割に合わないと思えばすぐにでも契約を打ち切れる』

男『お互いに利用点があり。こうして共に戦っている』


男「……」

響「それに。自分達の元で管理するより他の場所で管理した方が見つかる可能性は極端に少なくなる」

響「公にされたとしてもある程度の言い訳は出来るしね」

響「虚構型戦艦の管理という接点から防衛機構と国防軍は深い繋がりがあるんだ」

響「実質。国防軍の傘下だよ」


男『……ところで、どこからその情報を?』

少佐『上層部に国防軍の人間と親交のある者がいてな。そこからだ』

少佐『その繋がりにはいろいろ助けてもらっているんだぞ』

男『それは……知りませんでした』

少佐『あまり他の者に言いふらさないで欲しい。広まっていい内容ではないからな』

男『……わかりました』


男「……そうか。そういう事か」

響「司令官にはこの虚構型戦艦二番艦、夢幻を操縦。いや、"身体"にして欲しいんだ」

男「悪いが、このような兵器の操縦の免許など持ち合わせていないぞ」

響「大丈夫だよ。今言った通り夢幻は"司令官の身体になるんだ"」

男「……しかし。何故俺を選んだ」

男「俺でなければいけない理由があるのか」

響「……司令官はね。司令官のお姉さんと同じ様に適性がある」

響「搭乗者が深海棲艦の力の適合者。いや……電子世界との適合者である事が、"本当の虚構型戦艦"を動かす条件なんだ」

男「それを使って……俺が深海棲艦と戦う?」

響「そう」

男(つまり……ここで極秘裏に保管されている虚構型戦艦を動かせる人間は俺しかおらず)

男(もし俺が搭乗してこれを動かした場合)

男(決定的な反逆となる)

男(もしその時に仲間が付いてきていた場合)

男(少なくとも普通の生活には皆戻れなくなる)

男(他のみんなを殺したくないのなら、という言い回しはつまりこれが理由……か)

響「虚構だけじゃあの深海棲艦の艦隊は撃退出来ない。圧倒的に足りないんだ」

響「夢幻がいれば。なんとかなる」

男「……やっと話が見えてきたな」

男「深海棲艦が大挙してきたという事か」

響「うん。深海棲艦の艦隊は真っ直ぐ東京湾を目指してる」

響「出撃した国防軍は全滅。もう目前にまで迫ってるんだ」

響「深海棲艦の目的は東京の制圧。もし東京が陥落したら……」

響「間違いなく日本国は深海棲艦に滅ぼされる」

男「……良くて分断され。世界各国の軍と深海棲艦との戦場になる、か」

響「同盟国のアメリカ、その他の国から増援が派遣されているけど……間に合わないだろうね」

響「敵は速攻戦で仕掛けて来てる。近場の国防軍が集結してるけどこれもすぐに壊滅させられる」

男「それだけの敵を虚構と夢幻で撃破出来ると」

響「出来るよ。確信はある」

男「……」

男(この話を聞く限りでは。俺はどちらにせよ今までの様には過ごせない)

男(反逆者として生きながらえ、逃亡生活を送るか)

男(深海棲艦に焼かれるか)

男「……」

響「ん……通信だ」

響「こちら響……うん」

男(響は小型のヘッドセットを取り出すと、何者かと会話を始めた)

響「うん……わかったよ」

スッ...

響「これを付けて」

男(そしてすぐに俺に手渡す)

男「相手は」

響「すぐにわかるよ」

男(俺は無言のままそれを受け取ると頭に装着した)

『また後でと言った意味。分かってくれたかな』

男「……虚構か」

虚構『話は……全て聞いたね。夢幻』

男「俺はまだ乗るとは言っていない」

虚構『……君には本当に申し訳ないと思ってる。こんな言葉では償えない事も知ってる』

虚構『人間一人の人生を変えてしまう事の罪の大きさも、知ってる』

虚構『全て承知の上で、君に頼むしかないんだ』

BGM制作。中々上手くいかないですね……早速没がちまちまと……

虚構『対次世代兵器用要塞』

虚構『深海棲艦が有している次世代兵器に決定的な打撃を与えられる兵器』

虚構『逆に。次世代兵器でならば破壊が可能な代物でもある』

虚構『これを撃破しなければ……大変な事態に陥る』

男「……深海棲艦はそのような物を」

虚構『頼む。夢幻に搭乗して、俺と一緒に戦って欲しい』

男「……」

男(この場で結論を出さねばならないのは明白である)

男(俺には時間など与えられていない)

男(この事は仲間にも打ち明ける事は出来ないだろう)

男(きっと……俺がそうであって欲しいだけなのかもしれないが)

男(付いてきてくれる。彼女達は……付き従ってくれるだろう)

男(そうでないならそうでない方がいいに決まっているが)

男(その可能性を考えた時。皆の人生まで破壊してしまうと考えた瞬間に)

男(最後の別れの時間すら与えられていないのだと。理解した)

男(そもそも俺は。どうしたいのだろうか)

男(俺は……自分の過去を知って。生きる理由を失い)

男(いつでも側に仲間がいてくれた事に気がついた)

男(そして俺は……仲間を守りたいと。これからは仲間を守っていこうと)

男(そう誓ったのだ)

男(……違う)

男(俺は……家族が欲しかった)

男(いつしか仲間を家族の様に。無意識の内に思っていた)

男(俺は俺の家族を守りたいのだ)

男(武蔵、日向、神通)

男(北上、龍鳳。響もだ)

男(そして……古鷹)

ドクンッ

男「……」

男(違う。これは……なんだ)

虚構『どうした』

男「いや……」

男(普通の生活をいつしか望んでいた)

男(ごく当たり前の生活は俺にとって特別に見えた)

男(だがそれが……もうそれが望めないのだとしても)

男(俺は……戦う以外に選択肢は残されていないのだ)

男「……」

男「……わかった。この次世代兵器」

男「虚構型戦艦二番艦、夢幻に乗ればいいんだな」

虚構『……ありがとう』

男「それで。どうすればいい」

虚構『響が教えてくれる。それに従ってくれ』

虚構『夢幻に搭乗した後は。別の人間がオペレーターを務める』

響「行こう」

男(別れを伝えられない苦しさと、俺の人生はこんなにも簡単に変わってしまうのかという虚しさと)

男(俺はまた……幼かった頃の、寂しかったあの日に戻るのかという辛さが。入り混じり、混沌としていた)

男(だがこれを戦う覚悟に変えなければいけないのだ)

男(……戦わなければ、いけないのだ)

コツ...コツ...

響「解放旅団の目的。知ってる?」

男「……深海棲艦を殲滅する事か?」

響「違うんだ。そうじゃない」

響「元々は人間の創りだした世界。電子の世界に産まれたのが深海棲艦」

響「……元々はね。ただデータの海を泳いでいただけだったんだ」

響「……そこで人間は過ちを犯した」

響「仕方なかったのかもしれないけど」

男「……」

響「人間にはね。ただのエラーにしか見えなかったんだ」

響「ファイルの中に、インターネットの中にあるゴミ。害悪」

響「それを駆逐しようとしたのが全ての始まり」

響「彼らは自分達の世界の外の生命を恨んだで、憎んで」

響「羨んだ」

>>640 修正


響「元々は人間の創りだした世界。電子の世界に産まれたのが深海棲艦」

響「……元々はね。ただデータの海を泳いでいただけだったんだ」

響「……そこで人間は過ちを犯した」

響「仕方なかったのかもしれないけど」

男「……」

響「人間にはね。ただのエラーにしか見えなかったんだ」

響「ファイルの中に、インターネットの中にあるゴミ。害悪」

響「それを駆逐しようとしたのが全ての始まり」

響「彼らは自分達の世界の外の生命を恨んで、憎んで」

響「羨んだ」

男「……羨んだ、とは」

響「自分達の居場所を奪った人間を恨んで、仲間を簡単に葬っていった人間を憎んで」

響「人間の世界と、電子世界どちらにも干渉出来る人間を羨んだんだ」

男「……」

響「だから。深海棲艦はこちらの世界にも現れた」

響「人間にされた行為を自分達も行う為に」

コツ...コツ...

男「報復……か」

響「深海棲艦の真意まではわからないけど、それが今に至るまでの過程」

男「それで……解放旅団の目的はなんなのだ」

響「解放旅団の総意は。お互いを引き離す事」

響「深海棲艦と人間。どちらもお互いに干渉させない事」

響「現実の世界は現実の世界として」

響「電子の世界は電子の世界として。個別に在り続ける事」

響「現実の世界はただ電子世界を観測する」

響「"観測世界で在り続ける事"

男「……観測、世界」

ここまでです

響「さてと。司令官」

男「……」

男(見上げると夢幻の胸部が膨らんでおり、そこへ梯子が掛けられていた)

ガコン...ガタガタ...

男(その胸部がゆっくりと開かれ。座席やパネル等が姿を現した)

男「……あれに座ればいいんだな」

響「うん。そうしたら地上まで上がって輸送ヘリコプターで戦場まで空輸する」

響「武装も別のヘリコプターで運ぶから安心して欲しい」

男「……」

スッ...カコン...カコン...

男(冷んやりとした梯子に手を掛け、少しずつ登っていく)

男(全てへの別れを告げる階段を登っていくかの様に)

男(今までを思い出しながら)

男(防衛機構で過ごした記憶も、俺の過去も、全ての真実も)

男(俺の記憶の一部だ)

男「……」


武蔵『提督』


カコン...カコン...


日向『提督』


カコン...カコン...


北上『提督』


カコン...カコン...


龍鳳『提督』


カコン...カコン...


神通『提督』


カコン...カコン...


響『司令官』


カコン...カコン...


古鷹『提督……私。ずっと……提督の事が……』

古鷹『好きでした』

男「……ッ」


男(どうしてこうも。胸が締め付けられるのだろうか)

男(荊の鞭で心臓を握り潰されようとしているかの様に)

男(苦しく。胸のうちを吐き出してしまいたかった)

男(だが……その様な事は出来るはずもない)

男(もし全てを吐き出してしまったのなら)

男(俺は俺でなくなってしまう)

男(ここで後ろを向くなど誰が許すものか)

男(なにより、一番俺が許すはずがない)

ドサッ...


男「……」

男(この座席に来るだけで。精神をかなり削った気がする)

男(内部を見渡すと、座席の前の開いた場所以外にも)

男(壁や天井の至る所にパネルやモニター。レバーが配置されていた)

響「そこを閉めたら内部電源が入るから。右に掛かってるヘッドギアを付けて」

響「司令官なら出来るよ」

男(遥か下から響がそう言った)

ガコン...ガタガタ...

男「これだけの物……操縦出来るのか」

響「出来るよ。絶対に」

男「……そうか」

ガコン

男(明かりが閉ざされ、暗闇へと落ちる)

パッ...

男(その瞬間。薄暗く内部が照らされた)

男「……」

男(右側を向くと確かにヘッドギアが壁に掛けられている)

男(これを手に取り、頭へと装着した)

男「……これだけでいいのだろうか」

『戦艦夢幻。自動接続ツール起動します』

男「……!」

『ようこそ搭乗者様。そのまま座席に身体を預けて数秒お待ち下さい』

『カウントダウン。3、2、1…』

『ダイブ。開始します』

キィィン...

男「ぐっ……」

男「こ、これは……」

男(視界がぐにゃりと曲がり、音が、世界が遠ざかっていく)

男(全てが細かく崩れていき、0と1に還元される)

男(この感覚……進水の時の……!)


ーーーーーーーーーーーーーーー
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ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

男「……」

男(脳が揺さぶられる様な気持ち悪さに包まれながら俺は目を覚ました)

男「……あ」

男(なんだろうか。視界が異常に高い様な)

男(辺りを少し見回してみる。微かに機械の起動音が聞こえた)

『成功したようね。初めまして、夢幻』

男(脳内に直接。声が聞こえる)

男「……誰だ」

『私は金剛型戦艦4番艦』

霧島『霧島です。今回は虚構と夢幻、両方のサポートを担当するわ!』

男「霧島……霧島だと」

男(霧島と言えば……あの蜂起に関わっていた……!)

男「……君も解放旅団か」

霧島『そうね、そして夢幻。貴方にも解放旅団として深海棲艦と戦ってもらう』

男「……」

男(段々と視界が鮮明になり、手や脚の感覚が戻る)

男(そして俺は……驚愕した)

男「なっ……!?」

男(俺の手脚が、身体が……)

男(戦艦。夢幻となっていた)

霧島『貴方の情報をその夢幻にインストールする為の媒体として電子世界を利用して……って、分かるかしら』

男「……簡単に頼む」

霧島『貴方の感じているものは全て夢幻のもの。でも貴方の本体は電子世界にある』

男「……電子世界を記憶媒体として利用している。という事か」

男(驚きながらも手を握ってみたり、脚を上げてみたりと動作してみる)

男(視界は俺が普段見ているものよりも鮮明に、細かく見えている気がする)

男(音もより正確に。小さな物音さえ聞き逃さないだろう)

男(全てが俺のものでないのに……その全てが今。俺のものとなっている)

霧島『私以外にも解放旅団全員が全力でサポートするわ。安心して……』

霧島『仲間を。日本国を守って』

男「……とりあえず。どうすればいい」

霧島『昇降機に乗って地上に出て。防衛機構の一番広い場所で待機して』

男「わかった……」

霧島『武装のチェックを。夢幻の装備は……』

霧島『KM-インフィニティ。アサルトライフル』

男(俺はゆっくりと俺のそばに立て掛けてあった巨大……いや。今は普通に見えるが)

男(ライフルを手に取った)

霧島『サブウェポンにはKM-ガバメント』

男(太腿の部分に掛けられた自動拳銃を右手で触る)

霧島『背中にKM-ファンタズマブレード』

男(背負っている身の多少細い太刀の事だろう)

霧島『基本武装はこの三つ。他の武装は現地で、状況に応じて支給するわ』

霧島『さてと。よろしくお願いします、夢幻』

男「……」

ズン...

男(一歩ずつ。足取りを確かめる様に歩いていく)

男(不思議なものだ。自分の身体でないものが本当に自分のものになった感覚というものは)

男(触覚や、恐らく痛覚もあるのだろう)

男(こうして話してはいるが。声だけは全て外部に漏れず無線の様だ)

男(歩く事を考えてはいけないな。こういう本能的な動きは考えれば考えるほどおかしくなる)

男(感覚に身を委ね。動く)

夢幻となった主人公は昇降機に登り地上へと向かう……

BGMはLinkin ParkのIridescentで。歌詞がこの先の……

夢幻の装備の頭文字は艦娘から。その後の名前は夢幻と掛けています

厨二臭くなるのは仕方ないね

ガコン...ウィィィン...


男(随分と小さく見える響の操作で昇降機がゆっくりと上へと登っていく)

男(……)

男(これも……自分の行いの報い……か)

男(これほどまでに……いや。人生で初めてかもしれない)

男(運命を。運命というものが存在するならば)

男(心の底から。運命を呪いたいと、そう思った)

男(何故、この様な結果を招いたのか)

男(何故、この様な結果でなければならなかったのか)

男(考えた所で、どうにもならない事などわかっていた)

男(逆に未来の事を考えても。予想がつくはずもまたないのだ)

男(今は……心を。全ての思いを束ねて)

男(戦わなければならないのだ)

男「霧島」

霧島『なんでしょうか』

男「……いや。なんでもない」

霧島『……すみません』

男「……仕方のない事だ。こうでなければならないのならそうする他ない」

男「……」

男(なにも問題ない。ただ……何も無かったあの頃に戻るだけだ)

男(蔑まれ、疎まれる。周囲の人間が俺を避ける。批難する)

男(幼かったあの頃に……戻るだけだ)

男(それで仲間が……救われるなら)

男(仲間の命が助かるのなら……それで構わない)

霧島『夢幻。そろそろ地上に出ます』

男「あぁ……」

男(外から溢れる日の光が近くなる)

ガコンッ...!!

男「……」

霧島『昇降機の停止を確認。夢幻、移動を開始して下さい』

男「わかった」

男(再び俺は。一歩一歩地面を踏みしめながら前へと進んでいく)


武蔵「どこにもいないぞ!!」

北上「部屋にも居なかったよ!」

龍鳳「本部にもいませんでした……」

日向「少佐に尋ねても行方がわからないと……」

神通「あとは……この車庫だけですね」

古鷹「提督……」

武蔵「だが車庫なんぞにいるとは……」

ズゥン...ズゥン...

北上「な、なになに!?なんの音!?」

神通「……!!!」

日向「どうし……た」

龍鳳「……え」

武蔵「なんだ……あの……巨大な……」

古鷹「……提督。提督なんじゃ」

武蔵「あの巨大な……兵器。次世代兵器なのかッ!?」

日向「なぜ……こんな所に……」


男「……ッ!!」

男(格納庫を出て見たのは。驚愕に満ち溢れた表情の仲間たちだった)

男「……くっ」

霧島『行きましょう。すぐそこの空き地でヘリと連結します』

男「……」

ここまでです

ドンッ...ドンッ...


男(仲間の声に背を向けて、俺は歩く)

男(ここで止まる事は……許されない)

バララララ...

霧島『迎えが来たわね』

男(空を見上げると一機のヘリがこちらへ飛んできていた)

男(あれは……)

男(確かあれはMi-26。史上最大のヘリコプターとして名が知られている)

男(コードネームはヘイロー。史上最大級の巨体と世界初である8枚の羽を持つ)

男(ペイロード。つまり運べる重量は28t)

男(全長は40mを越え、全高は8m近く。大型トレーラーすら軽々と格納して移動が可能な代物である)

霧島『あれはMi-26の改良型で、国防軍の戦車一台までなら持ち上げる事が可能です』

霧島『解放旅団の兵員が夢幻に降下。ワイヤーで吊るして空輸します』

男「そうか……」

ドンッ...ドンッ...

男(後方から仲間の声が……)

男(……俺を呼ぶ声が聞こえる)

武蔵「提督なのか!?返事をしろ!!」

北上「また隠し事!?また黙って……今度は一人でなにするつもりなのさ!!」

神通「提督……!!ご説明を!!」

日向「どこに……どこに向かう気だ!!」

龍鳳「あ……あのヘリコプターで運ぶつもりじゃ……!!」

男(振り返るな。振り払え)

男(これが……最良の……選択だと。信じる他ない)

バッ

男「……!!」

男(気持ちを押し込め、前進を続けようとした時)

古鷹「……」

男(目の前に……古鷹が立ちはだかった)

古鷹「提督……一人で抱え込まないで下さい」

男(両手を広げ、進路を塞いでいる)

男「……」

霧島『夢幻。貴方の歩幅ならなんなく跨げます』

男「……」

古鷹「提督……声を……聞かせて下さい」

古鷹「私にも……話して下さい」

古鷹「提督は……」

バララララ...!!!

男(すぐそこまで近づいてきたヘリの騒音に古鷹の声はかき消された)

男(歩みを……進めなければ……)

男「……」

霧島『……夢幻、移動を』

男「……何故。脚が動かない」

男(古鷹の壁など簡単に越えられるはずだ。なのに……)

男(進まなければならないと、分かっているのに)

男(脚は……ぴたりと動きを止めた)

古鷹「やっぱり……やっぱり提督……」

男(古鷹の声は俺に届かない。ただ嬉しそうに微笑む顔が……見えた)

男「霧島。無線は使えるか、虚構と連絡を取りたい」

霧島『無線……使えます。頭の中で周波数をイメージしていただくだけで大丈夫です』

霧島『虚構の周波数は……』

男(そこまで言って霧島は息を飲んだ)

男(俺はある周波数を脳内に浮かべ……念じる)

霧島『降下部隊!すぐに夢幻の身体に降下して!!すぐに輸送を!!』

男「……古鷹」

古鷹『……提督』

男(繋がった。確かに古鷹へ)

男「……」

古鷹『……』

バララララ!!!!

男(ヘリはやがて俺の頭上へと到達し。横扉から縄を伝って迷彩服を着た兵士がスルスルと俺の身体へと降りていく)

男「……すまない」

古鷹『どうして……一人で……』

男「……皆を危険に晒す訳にはいかない」

古鷹『……そんな』

ここまでです

男「仲間を……死地には送りたくない」

古鷹『……』

男「……」

古鷹『提督は……戻ってきますか』

男「……」

古鷹『また……また。今まで……通りに』

男「……」

霧島『接続はまだ終わらないの……』

男「……今まで通りに。戻れたらいいがな」

古鷹『戻れます!!絶対に……絶対に!!』

男「だがな……古鷹。この兵器を動かした時点で……」

霧島『ワイヤー接続完了。ヘリは高度を上げて!』

バララララ!!!

男(俺の脇腹や腹部、背中に取り付けられたワイヤーが強く引かれる)

古鷹『提督……』

フワッ...

男(そして少しずつ高度を上げていき。再び進み出す)

男「……しばらくの、別れになる」

古鷹『……!!』

男「永遠の決別とは言いたくはないが……」

男「……さよなら、だ」

古鷹『そんなの……急過ぎます……』

男「皆にも伝えておいてくれ。死ぬな……と」

ブツッ...


男「……」

霧島『……』

男「さて……と。吊るされている間は動かない方がいいな」

霧島『はい。落下の危険がありますから』

男「……逃げ出すつもりも裏切るつもりもない。が、言いたい事くらい言わせてくれ」

霧島『……』

男「行こうか。戦場へ」

男(巨大兵器を吊し上げたヘリは、戦場へと向かって飛んでいく)

男(最後まで……振り返る事は無かった)

お仕事です

男(まるで。自分自身の力で空を飛んでいるかのようだ)

男(ただ力を抜いているだけで身体は加速していく)

男(いつも見る街並みも空から見れば全く違うものなのだと。そう思いながら足元を見下ろしていた)

霧島『流石に大胆すぎましたね……騒ぎになりかけています』

男(小さな道路にポツポツと。小さな人間が立ち止まり、皆こちらを見上げている)

男(それもそうだろう。異様なまでに大きなヘリコプターに吊るされた巨人が空を移動しているのだ)

男(青い制服を着ているのは警察官だろうか。避難の誘導を行っているが皆一様に空の異変に目を向けている)

男「だがこの巨体では間違いなく道路は移動出来ないだろう」

男(恐らくこの身体は四階建てビル程はある。電線の多い日本国ではまず満足に移動すら困難だろう)

男(そもそも街中で戦闘する事を意識していないのだろうな……)

霧島『……夢幻に無線連絡が入っています』

男「相手は特定出来るか?」

霧島『防衛機構から。特殊な無線機器を使用しての介入かと』

男「……」

男(確証がある訳ではないが。誰から連絡が入ったのか見当だけはついた)

霧島『遮断し……』

男「受け取ってくれ。誰と会話した所で"これ"を止められる訳ではないだろう」

霧島『……わかりました』


男「……」

少佐『中尉』

男「……少佐」

少佐『やはり……君だったか』

男「……皆は」

少佐『全員艤装データが中破以上だ。電子世界には送れない』

少佐『実戦も……あれだけ疲弊していては困難だろう』

男「そう……ですか」

少佐『……何故夢幻の存在を』

男「ある人物から……』

少佐『所属不明のヘリが夢幻を吊し上げて移動しているとの報告と』

少佐『また所属不明の部隊が東京湾まで侵攻した深海棲艦を攻撃しているとの報告もある』

少佐『……解放旅団か』

男「……少佐も解放旅団の事を」

少佐『知っている。テロ組織と思われていたが近年略奪や占領行為は行わず深海棲艦と戦闘を繰り広げていると』

どうしても眠くなって寝てしまいました(´・ω・`)

ここからはMintJamの羅鮮をBGMに見ていただけると。Linkin Park繋がりならNew Divideもいいかなって思ったんですけど、曲調と歌詞はこっちの方が合ってるなと

BGM制作なんですけど気がついたら主題歌的なももを作っていたとか

でも曲調はトランスにしようかロック、ポップスにしようか、電子世界と現実世界の両方を舞台にしているしオルタナティヴなかんじにしようか

ヴォーカルはシンセサイザーにしようかソフトークでも使おうか。いっそVOCALOIDでも買ってしまおうかとか相当悩んでます

でも仕事の息抜きにもなるし、私生活が充実していく気がするんです。SSに限らず創作って楽しいですよね

あ。オルタナティヴロック、でした。これ以上はSS関係なくなりそうなので

また明日。よろしくお願いします

少佐『……中尉。夢幻を勝手に持ち出したと言う意味は重々承知しているな』

男「はい」

少佐『彼女達にも追求が及ぶ可能性も十二分にある』

男「これは俺一人の独断です。艦娘達は関係ない」

少佐『証拠は』

男「彼女達の制止を振り切りました。無線のやりとりのデータも……』

霧島『……』

男「残っています。あくまで俺の独断であり、彼女達は一切関係ない」

少佐『……まぁ。それだけあるのなら上々と言った所か』

少佐『……どうしても。そうでなければならなかったのか』

男「これが俺の選択です」

少佐『……』

男「……」

少佐『中尉、酒の席で……出来る範囲でなら手を貸すと。そう言ったのは覚えているか』

男「……少佐。貴方まで反逆者になる事は全くない」

男「どのみち……全てを知った時点で。防衛機構を去らなければならなかった」

男「今まで……ありがとうございました」

少佐『……中尉。私は……』

『君、夢幻が持ち出されたとの報告があるがどういう事だね!』

少佐『司令官殿ですか』

男「……」

『あれを奪われるとは……どう国防軍に弁明すればいいのか……』

『聞くところによると。君の部下らしいじゃないか』

男(聞こえるのは防衛機構総司令官の声。このままでは……少佐は)

男「少佐……俺の独断行動だと説明を……」

少佐『あれは私の命令です。中尉に夢幻の操縦の権限を与え、民間に輸送を依頼しました』

男「なっ……!」

少佐『夢幻を動かさなければ、東京湾に展開した国防軍もじきに敗走すると。そう判断した上での結論です』

『それは君が決める事ではない。私が命令を下すのだ』

少佐『司令、次世代兵器とはなんの為に存在するのですか』

少佐『民間人を守るためなどと綺麗事を述べるつもりはありません。あれは敵を殺す為のものだ』

少佐『どう足掻いても倒せない敵を倒す為の次世代兵器なのではないのですかッ!!』

男「……少佐」

『今はまだその時ではない』

少佐『ではいつ動かすのですか。日本国が深海棲艦に滅ぼされた後にですか』

『……貴様。私が大人しくしていれば……!!』

少佐『司令、私に夢幻とその他部隊を動かす権限を』

少佐『司令のお言葉を頂いたともすれば。防衛機構の兵も浮き足立つ事はないでしょう』

少佐『外部にもそう報告していただければ、きっと司令にも自ずと理が回ってくるはずです』

『ぐ……』

少佐『中尉。命令だ』

少佐『戦艦夢幻を持って深海棲艦を攻撃せよ。これは国防軍に貸しを作るチャンスだ』

少佐『私の直属の兵も護衛につかせよう。現場での判断は全て君に任せる』

『……少佐。あまりいい気になるなよ』

バタンッ!!

男「少佐……何故」

少佐『私は君を高く評価しているとも言っただろう』

少佐『私は何より君の判断を信頼する。君が解放旅団を信用するのなら私も信用しよう』

少佐『何より。一個人として、君の友人として。力を貸したい』

少佐『……だめだろうか』

男「……いえ。また、また酒でも飲みましょう」

少佐『そうだな、また一緒に飲もう。今度は私の勧める店にでも行こう』

少佐『中尉……』

少佐『君は、君の成すべき事を成せ。気鬱や迷いなどは捨て置け』

少佐『君がそう思ったなら、最後まで貫き通せ』

男「……わかりました」

お仕事です

少佐「ふぅ……」カタ...

少佐「さて。根回しと……俺に出来る事はやっておかなければ……」

少佐「……」

少佐「思えば。何故この防衛機構で働いていたのか……」

少佐「……今思えば、中尉と俺は似ている。まるで……自分を見ているかの様だった」

少佐「中尉の様な重い過去は無いが……必死に、限られた時間と選択肢の中で……最善を選ぼうとしていた」

少佐「このかなみ市を守る為。彼は仲間を守る為」

少佐「……そうか。だから……彼に手を貸したかったのか」

少佐「気を許せたのも……それか……」

少佐「……だが。彼は……俺よりも遥かに強い」

少佐「屈強な心。それが俺には無かった……」

少佐「国家の権力、上に媚びへつらい……とまでは言わないが」

少佐「尻込みしていた。俺がやるべき事を放棄してきた」スッ

コツコツ

少佐「中尉。君のお陰で思い出したよ」グッ

ガチャンッ

ガンガンガンッ!!!!!

『少佐!居るのだろう!!ここを開けたまえ!!』

コツコツ...

少佐「せめてもの償いだ。最後くらいは好きにやらせてもらうぞ」

男(時速100kmを超える速度で飛ぶ事しばらく。戦場が見えた)

バララララ!!!!!

ドンドンドンッ

ヒュゥゥゥ...

霧島『まずいわね……深海棲艦の揚陸部隊が着岸しようとしてる』

男(ビルなどの建物は炎を上げ崩れ落ち。この世の地獄と呼べそうな程の惨劇を演出していた)

男(海上には黒い姿が一面に。イ級などの駆逐艦からル級の様な人間の様な姿をした者)

男(漆黒に赤い血管が浮かび上がった様な色の駆逐艦。奥には戦艦や空母までが控えていた)

男(恐らくオーストラリア軍の所有物だったのだろう。深海棲艦の色を塗られ、深海棲艦の物として機能している)

男(陸上の国防軍は海岸線に布陣したのだろうか。だが激しい砲撃と銃弾の雨に晒され、皆一様に肉塊となり、鉄屑と成り果てている)

男(生き残った部隊か。それとも後続か)

男(海岸線の保持を諦め後退していく)

男(そこへ揚陸艦が着岸し。中からは感染者の群れが溢れ出していた)

男(空は黒い雲が立ち込め、少しずつ落ちていく日がその異様さを照らし出していた)

男(幾つもの戦闘機が飛び交い、墜ちていく)

男(本当にこれは……地獄のようだ)

男(ここが真に戦場なのだと、痛感した)

霧島『虚構から入電!』

虚構『……まるで。俺が見た夢の様だな……』

男「なんの話だ」

虚構『いや、なんでもない。国防軍の戦線が後退しているな』

虚構『解放旅団の部隊がもうじき到着する。夢幻、それと共に戦線を押し返すぞ』

虚構『俺は側面から奴らを急襲する。夢幻は君の身体だ』

虚構『感染者など相手にすらならないほど屈強なな。上陸した深海棲艦だけ狙えばいい』

男「わかった」

ここまでです

虚構『君なら出来ると信じている。頼むぞ』

男「あぁ……」

霧島『今度は……また防衛機構からの……」

男「受けてくれ」

虚構『では……俺も行くとするか』

ブツッ

少佐『中尉。度々すまない』

男「いえ。大丈夫です」

少佐『もうそろそろ……到着したかね』

男「……まるでこの世の地獄です」

少佐『そうか……』

少佐『防衛機構所属の部隊ももうすぐそちらに着く。コンタクトを取らせよう』

『こちら第一機動部隊』

少佐『俺だ。戦艦夢幻……中尉と繋がっている』

『まさか次世代兵器が防衛機構で眠っているとは……想像もつきませんでした』

『しかしそれでこの国が守れるなら……』

『私は防衛機構所属、コードネーム不知火です』

不知火『よろしくお願いします。中尉』

男「よろしく頼む」

少佐『中尉を頼んだぞ』

不知火『司令のご命令とあらば』

バキッ!!!

『少佐。付いてきてもらおうか』

少佐『ドアを破壊して入ってくるとはまた穏やかではないな』

少佐『作戦指揮の途中だ。出て行ってくれないか』

『いいや。君はもうこの作戦の指揮を取る必要はない』

『作戦の総指揮権限は移行された。君にはテロリストに加担した容疑が掛かっている』

男「少佐!!」

不知火『司令……』

少佐『不知火。最後まで中尉を頼む!』

不知火『はい。地獄の果てまでも』

少佐『中尉……』

ガッ

『大人しくしろ!!』

少佐『ぐっ……中尉、いいか!!最後まで……最後まで諦めるな!!』

少佐『任務を……完遂しろ。友よ……!!!』

男「少佐……!!」

少佐『離せッ!!クソッ』

チャキッ

『銃口を向けるか!!』

少佐『おっと……手が滑って通信機を……』

パンッパンッパンッパンッ

ザザッ...ザザザッ

少佐『破壊してザザッたようだ……』

ブチッ...

男「……少佐」

霧島『……』

霧島『不知火さんの周波数が送られてきました。通信しますか?』

男「頼む……」

不知火『……司令……司令……ッ』

不知火『……ここまでして司令が守りたかった存在』

不知火『中尉。身命を賭して貴方を守り抜きましょう』

不知火『不知火も……付いてきた部下達も……全員司令の刃となり戦ってきました』

不知火『今度は貴方の刃となります。司令の想いを……継ぎます』

男「……少佐は、いい人だった。少佐が居なければ……俺もまた違った人生を歩んでいたかもしれない」

男「俺の刃となるのなら……自分の命を最優先にしろ」

不知火『……ッ!!』

不知火『それでは司令の想いを』

男「少佐は不知火が命を落として喜ぶとは思えんがな」

男「状況を判断し、限界まで戦い、命を落とさず帰還する」

男「それが優秀な兵であり指揮官だ。いいな、不知火」

不知火『……わかり……ました』

男「それでいい。ではまた後で会おう」


霧島『もうすぐ降下地点に到達します。準備はよろしいですか』

男「あぁ……大丈夫だ」

霧島『降下地点は解放旅団の前線部隊が確保しています。不知火さんの機動部隊も合流しました』

男「そうか……ところで気になる事があるのだが」

霧島『なんでしょうか?』

男「この夢幻の……俺の意識は電子世界に置かれている……のだったか」

霧島『はい』

男「ならば虚構もそうなのか?」

霧島『はい。同じ地点に保存されています』

男「ならば……それも深海棲艦の攻撃に晒されるのではないか?」

男「まさか現実での進行だけとは言うまい」

霧島『確かに。電子世界でも深海棲艦の攻撃が始まっています』

霧島『虚構と夢幻のファイル保存区域にも。何重にも防衛機能を敷いていますが、何個かは突破されていますね』

霧島『ですがそちらについては安心していただけると』

霧島『超精鋭が……守りに付いていますから』

「ったく……艤装を着けるなんて……何年ぶりだろうな

「もう……十年以上前ですね」

「さてと……この先に……」


「ヘイ!こっちネ!」

「……ははっ。本当に居た……」

「お久しぶりです、金剛お姉ちゃん」

金剛「天龍に電!元気そうでなによりデース!」

金剛「今は何をしているんデスカ?」

天龍「児童養護施設……まぁ幼稚園みたいなもんだ」

電「私も同じ所で働いてます」

金剛「天龍は相変わらず……電はもう大人のレディーみたいネ」

電「えへへ……」

天龍「所で、隣に居るのは……」

比叡「金剛お姉様の妹、比叡です!!」

榛名「金剛型戦艦3番艦の榛名です」

金剛「それともう一人が……」

「お待たせしました」

天龍「……!」

電「はわわっ……お久しぶりなのです」

「お久しぶりね、天龍ちゃんに電ちゃん」

天龍「久しぶり……翔鶴姉」

翔鶴「元気にしてた?」

天龍「翔鶴姉こそ。脚はどうなんだ?」

翔鶴「ふふ……もう歩けるようになったわよ」

電「そうなのですか!よかった……」

翔鶴「さてと。ゆっくりお話ししてる時間は無さそうね」

ザァァ...

天龍「来やがったか……」

金剛「高速戦艦の威力、見せてあげるネ!」

比叡「気合い!入れて!行きます!」

榛名「榛名、参ります!」

翔鶴「艦載機、発射!」

電「電も……頑張ります!」

天龍「よっしゃ!天龍様の実力、見せてやるぜ!」

ぬいぬいは出したかったので……電子世界の艦娘達の主力メンバーも健在ですよ

すいません。今日は所用で書けなさそうです……(´・ω・`)

タタタンッタタタタンッ

霧島『あそこが降下予定地点です』

男(炎と煙の充満する都市の中に見えたのは多少広い公園だった)

男(公園の丁度中央。広場のまた真ん中に白くヘリポートのマークが施されていた)

男(公園の内周に沿う様に武装した兵士達が押し寄せる感染者に弾丸を撃ち込んでいる)

不知火『夢幻。応答願います』

男「あぁ、どうした」

不知火『少佐の作戦離脱に伴い、不知火と他部隊員は夢幻の指揮下に入りました。改めて、司令と呼ばせて下さい』

男「わかった」

不知火『では司令、現在部隊は多数の感染者と交戦中。この場所を守備しています』

不知火『司令の降下終了後、作戦の立案と指示をお願いします』

男「あぁ……」

男(遠目に無線機を片手にハンドシグナルで兵士達に指示を出し続ける不知火の姿を捉えた)

男(灰色の都市迷彩に身を包み、体格に合わないライフルをぶら下げていた)

男(顔は……普通なら戦争など知らぬはずの。女子中学生の様にも見える)

男(だがその眼光は鋭く、誰よりも冷たく感じた)

霧島『夢幻、降下準備!』

男(やがて速度を上げ飛行していたMi-26はホバリング状態へと移行し始める)

男(公園の中央部まで来てみると、それなりに大きく見えていたが自分の身体を横にして少し余る程度しかない事がわかった)

霧島『最低飛行ラインまで到達後、ワイヤーを自動で切断します!』

男(いよいよ……決戦の幕が開けようとしている)

男(戦艦夢幻として、戦うのだ)

不知火「総員、持ちこたえて下さい。夢幻の火力ならば感染者など恐るるに足りません」

少しですが……

霧島『夢幻。準備はいいですか?』

男「あぁ……問題ない」

霧島『降下後はまず周囲の感染者を攻撃。ある程度の殲滅を完了した後に確認されている深海棲艦。駆逐級の優先的攻撃を』

男「感染者はともかく、深海棲艦の相手は厳しいだろうからな」

霧島『その為の次世代兵器です』

男「国防軍の次世代兵器は。参戦しているのか」

霧島『もう少し時間が掛かる様です』

男「そうか」

霧島『最低飛行ラインに到達しました。切り離します』

男「……」

ブツンッ!!!

男(切れる音というよりは鉄が一瞬でねじ曲がるような音)

男(一瞬ふわりと身体が浮き……)

ズドォォォン...

男(土埃を上げて地面へと着地した)

不知火『司令、ご命令を』

男(着地で折り曲げた脚を伸ばしていると無線が入った)

タタタンッタタタンッ

男(感染者は海の方角から集中している。ならば……)

男「南には俺が向かう。漏らした感染者だけを攻撃してくれ」

男「北、東、西へ兵を集中させればいい」

不知火『はい』

男(南を向くと、公園の内側を飾る木々の向こうに感染者の行列が見えた)

男(最早常人ではない。化け物と化した人型達がひしめきあい、歩き、走りながら、こちらをまっすぐに目指している)

霧島『感染者相手なら遠距離武器を使う必要はないです。背中の太刀ならば一撃で感染者を制圧出来ます』

また短いですが。最近電車で起きてるのしんどくてこんなんですすみません

男(背に預けているのは言わば鋭い鉄板。これで人間に切りかかれば骨ごと寸断されるのは目に見えている)

男(姿勢を70度程曲げ、その太刀の柄を握る)

男(耳触りな金属音を響かせながらそれは機械的な見た目の鞘から抜かれ、その姿を現わす)

男「俺は……これだけの人間を殺すのか」

霧島『もう人ではありません』

男(そんな事はとうに理解している。今までに何人も感染者を屠って来た)

男(それでも。"人の形をしたもの"を斬る事に何も感じないほどに殺して来た訳ではない)

男(彼らにももしかすると救われる可能性があるのではないか)

男(救われる可能性のある命を奪う事は罪であるのではないか)

男(その様な考えが一瞬。ほんの一瞬頭をよぎった)

男「……馬鹿らしいな」

男(それならばとうに俺は罪人だ。死後の世界があるのならば確実に地獄に落ちる事だろう)

ジャキンッ

男(抜かれた太刀をいわゆる"正眼の構え"で握った)

不知火『それが……次世代兵器の兵装』

男「……」

ダッ!!!

男(夢幻の踏み込みは地面を抉った。激しい音を立てながら、樹木を障害ともせず薙ぎ倒し)

ドガガッ!!!

男(感染者の群れに衝突した)

男(肉の弾ける音がする。肉と骨がすり潰される音がする)

ジャキッ

男(嫌悪感を噛み殺しながら、太刀を横に構え)

ブンッ!!!

グジャッグジャッグジャッ!!!!!

男(地をなぞる様に振り払った)

男(手首に尋常ではない重みを感じながらも、それさえも無理矢理に押さえ込み、払い切る)

男(何十人もの感染者が放たれた凶刃によって切断され、勢いに押されビルに激突した)

ドゴォォォッ!!!

男(最後は振り払われた刃もビルに激突し、その動きを止めた)

ドゴッ...パラパラ...

男(壁面に埋まった太刀を引き抜くと、ドス黒い肉塊が出来上がり、路上を埋め尽くしていた)

男(刀身からは雨水の如く黒色の血液が流れ落ちる)

不知火『ひっ……う……!』

霧島『……想像以上の威力……』

男(それでも感染者はこちらへと押し寄せる。仲間であったの肉塊を踏みつけながら)

男「……チッ」

男(胸糞が悪いとは正にこの事を言うのだろう)

男(胸の奥に黒いなにかが渦巻き、蠢いている様な感覚)

男(不快感しか感じない)

ブンッ!!!

グジャッグジャッグジャッ!!!!!

ブンッ!!!

グジャッグジャッグジャッ!!!!!

グジュッ...

男(何度も、何度も刃を感染者の群れへ振るい)

男(脚にまとわりつく者は蹴り飛ばし、踏みつけた)

男(俺の周囲にも、前方にも。最早現実を帯びていない光景が出来上がる)

不知火『うぐっ……おえぇぇ……ッ!』

男「不知火。無理はしなくていい』

不知火『げほっ……げほっ……不知火は……問題ありません』

男(地面は肉で埋め尽くされ、顔や四肢の形が残ったものが転がっている)

男(周囲のビルも血飛沫で染まり、恐らく夢幻も元のカラーリングとは違うものとなっているだろう)

男(常人が見れば、発狂でもしかねない景色である事に間違いはない)

男「霧島。今の俺の姿はどう見える」

霧島『……地獄からの使者……ですね』

男「……そうか」

男(これは決別だ。前と同じ様な生活からの)

男(真に求めたのは完全に平和な普通の暮らし)

男(銃器を手に持つ事はあれど、理想に近いものはいくらでもあった)

男(これからは……もうそうはいかない)

男(心を鋼で覆い、顔は鉄で飾らなければならない)

男「地獄からの使者ならば、深海棲艦に取っての地獄を作り出してやらねばなるまい」

不知火『はぁっ……はぁっ……酷い臭い……』

男(流石に嗅覚は備わっておらず、匂いはわからないが)

男(相当な悪臭が蔓延しているのだろう)

不知火『全員鼻を塞ぎなさい。夢幻側の景色は直視しない事』

霧島『周囲の感染者の数もだいぶ減りましたね』

霧島『夢幻、虚構より入電!』

バラララッ!!!ガキンッ

男(霧島の発言の直後、激しい戦闘音が聞こえた)

虚構『夢幻、聞こえるか』

男「あぁ……」

虚構『感染者の群れの後方から駆逐級が侵攻を始めている』

ガキンッ!!!ドシュッ

虚構『前線を押し上げる為にも打って出てくれ!』

プツッ

ここまでです


ところで>>698で虚構が見た夢って
前作での昇華薬の副作用による幻覚のことなのかしらん

>>732 虚構が発言しているのは前作完結編の最終決戦直後の夢の事です

虚構が前作で死亡していた場合今作は最初からバッドエンド確定していた可能性もありました

男「ならば、南へ向かおう」

男「不知火。その公園を前線として再構築する」

不知火『ならば防備に重点を置きましょう』

不知火『司令の護衛は……』

男「……俺は、一人で行く」

不知火『それでは……ッ!』

男(はっきり言って車両にも搭乗していない人間を前進させるのは危険極まりない)

男(深海棲艦は駆逐級と言え、こちらの戦車を凌駕する力を持っている)

男(それに加え感染者の群れがよし寄せれば、よほどの大軍でない限り大打撃は免れない)

男「補給線の確保が最優先だ。そこを維持し、国防軍を押し上げさせて欲しい」

不知火『……わかりました』

霧島『夢幻。国防軍の次世代兵器が到着したようです』

男「そうか……」

男(次世代兵器……虚構型以外の力は一体どれほどなのだろうか)

グゥォォォ...!!!

霧島『早い……ッ!!感染者第二波来ます!!』

男(唸り声と地鳴りが遠く、目指す南から聞こえている)

男「深海棲艦は」

霧島『感染者より後方に』

男「ならば……するべき事は一つか」

ジャキンッ

男(血の滴る太刀を再び構え、踏み込む)

グジャッ!!!ブチッ!!!

男(自分が作り上げた肉の床を踏み潰しながら、駆ける)

不知火『司令……ご無事で……』

男(コンクリートを砕く音を響かせながら、燃え盛る街を駆け抜けた)

男(戦場を駆る鬼神の如く。確固たる決意がそこに込められていた)

男(日は少しずつ傾き始めている)

男(青く輝いていた空は煙に覆われ、濁った青は少しずつ枯れていた)

男(夜間は敵が黒色である以上非常に分が悪い)

男(それに加え……)

霧島『夢幻。もうそろそろ……ザザッ』

男「電波障害か」

霧島『はい。無線によるサポートはザザッ...無力化されます』

男(今までの経験上。深海棲艦の存在する付近には電波障害が発生する)

男(奴らがそういった兵器を使用しているのかはわからないが、通信が遮断されると言う事は非常に不利な状況に追い込まれるという事だ)

男「まて霧島。俺の意識は電子世界にある……という事は電子世界より遠隔でこの夢幻にアクセスしているのと同じではないのか?」

男(ここで俺は一つの疑問が浮かんだ)

男(肉体はここにあるとは言え、精神をまず電子世界に預け、そこから折り返してこの夢幻に繋いでいる)

男(なら二度も無線でのやり取りをしている事になる訳だが……)

霧島『その点な…ザザッありま……ザザザッ...』

ブツッ

男「……」

男(答えを待つ暇も無く、通信は途絶えた)

男(それでもこうして意識があるという事は特に問題はないのかもしれないが……)

感染者「……」

男(そう考えているうちに、先ほどの地点を目指していたであろう感染者の群れが見えてきた)

感染者「ギィアアアアア!!!」

男(最早人間ではない、喉が裂けてしまいそうな声を上げてこちらへ走ってくる)

男(よく感染者の群れを見てみると、日本人も混ざってはいるが大半が日本には住んでいないであろう顔立ちと服装の人間であった)

男(恐らく……深海棲艦に侵略された国の……)

ジャキッ...

がっちり寝落ちしてきました

男(歯ぎしりしながら、握る手に力を籠める)

ブォンッ!!!

グジャッ!!!

男(先ほどと変わらない。虐殺だ)

男(ただこちらに向かってくる感染者を太刀で凪いでやるだけ)

男(強い衝撃と共に感じる嫌悪感。目の前で起こる惨劇)

ビチャビチャッ

男(刀身から血液を迸らせながら)

男(振るう)

グジュッ!!!

男(振るう)

グジャッ!!!

男(これだけ続けていれば嫌悪感すら麻痺してくる)

男(先ほどから感染者の群ればかり……深海棲艦はどこにいる)

男(単調な作業。血を浴びるのにも、人型を斬るのにも……慣れた)

男「……」

男(ほとんど同じ動作を繰り返すうちに、考える事すらやめてしまいそうになっていた)

感染者「グギャアアア!!」

ドシュッ!!!

感染者「ガッ……」

ブシュゥゥゥ!!!

男(……)

男「……いや」

男(……おかしい)

男(電波障害は一向に継続されたまま。近くに深海棲艦がいるのは明白だ)

男(だが何故……姿を現さない)

男「……」

男(思考を止めるな。考えろ)

男(滞り、腐りかけていた脳に血液を循環させる)

男(事の異常さに飲まれ掛けていたのではないか?)

男(異常な状況であろうと、それが続けばそれが普通だと脳は錯覚してしまう)

男(異常が普通であると理解してしまった瞬間。自分も異常になるのだ)

男(考えて、動け)

男「……」

ブンッ!!!

ビチャッ

男「……」チャキッ

男(周囲は燃え盛るビル群。中央の通りからは感染者の群れ)

男(深海棲艦の姿はない)

男(……)

男「何故……このような単純な事に気がつかなかった」

男(脳に答えが浮かび上がった瞬間、息を呑んだ)

グジャッ...

男「チッ!!」

男(左手で太刀を持ったまま、右手のホルスターに手を掛ける)

ジャコンッ

ビチャッ!!!

男(肉塊を踏みつけながら、現れた)

男(燃え盛るビルの陰に、黒いなにかが蠢いている)

男「……そこだな」

男(照準をその陰に合わせ、引き鉄を引いた)

ズドォンッ!!!

男(片手の跳ね上がりを無理矢理押さえつけながら、撃つ)

ズドォンッズドォンッ!!!

男(まるで対物ライフルの様な弾丸が飛び出し、陰に呑まれていく)

ーーーーーッ!!!

男(その瞬間。声とも金属音とも取れない悲鳴の様なものが響き渡る)

おお……眠い。またおやすみいただきました

男「やはり……か」

男(視界に入らない様に近づいていた訳だ)

男(深海棲艦は路地裏からこちらを狙っている)

男(ならば……)

チャキッ

ザバァッ!!!!!

男(まとわりつく感染者を薙ぎ払い、アサルトライフルを構えた)

ジャキンッ

男(重い音と共に弾丸が薬室に装填される)

男(正確に狙いを付ける必要はない。ただ……撃つだけでいい)

ズガガガガガッ!!!!

男(まるで対空機関砲だ。肩越しに構えたライフルの反動を下半身全体で抑え込む)

男(連射性能は悪いが、威力は申し分無かったようだ)

ドゴォォォッ!!!!ゴゴゴゴゴ...!!!!!

男(深海棲艦の攻撃で弱ったビルを破壊するのは容易い)

男(柱に一撃を与えるだけでいとも簡単に次々と崩壊を始める)

グギャアアアアア!!!

男(明らかに人間のものとは違う。異形の悲鳴が次々に湧いた)

男(燃え盛る瓦礫が次々に路地裏を埋め尽くしていく)

男(巻き込まれた感染者が潰れ、弾けた)

ズガガガガガッ!!!!!

男(俺の目の前には電子世界にいる時と同様にパラメーターが浮かんで見えていた)

男(装弾数100発が次々と数を減らしていく)

男(薬莢が小気味良い音を立ててコンクリートを跳ねて踊る)

男(やがてビルの倒壊は連鎖を始め、周囲の建築物はドミノ倒しの様に瓦礫へと姿を変えていく)

男「……」

男(やがて耳をつんざく程の崩壊音が止むと、前後左右をも瓦礫が埋め尽くし、フィールドの様なものを形成していた)

男(燃え盛る瓦礫に周囲を囲まれた……か)

男(脱出は夢幻が人型とあり問題はない。炎の壁は感染者の流入を妨害し、深海棲艦も隠れる場所はない)

男(絶好の防衛線が形成された訳だ)

男「さて……」ジャキンッ

男(あとは残された感染者を排除し、再び深海棲艦を探し進軍を続けるだけだ)

男(電波障害はまだ解消されてはいない)

不知火「霧島さん……でしたか。司令と連絡は」

霧島『取れないわ。大体の位置はこちらで把握しているけど』

不知火「国防軍がこちらまで進軍をしてきた場合。共に前線を拡大し司令を援護します」

霧島『なら、もうしばらくそこを維持しつつ待機ね。国防軍の次世代兵器が到着するのはもうしばらく……』

ズゥンッ...ズゥンッ...

不知火「地鳴り……深海棲艦が!?」

「た、隊長!後方より……」

ズガズガズガズガ!!!

不知火「こちらに向かってくるのは……蜘蛛!?」

霧島『データ参照。あれは……大蜘蛛型重巡洋艦!』

不知火「国防軍が到着した?」

霧島『……おかしい』

霧島『大蜘蛛が一隻と後方に装甲車が追従しているだけ……』

ズガズガズガズガ!!!!!

不知火「……あの蜘蛛、こちらを無視して前線へ向かった……?」

霧島『一体これは……』

響『霧島さん。聞こえる?』

霧島『響ね。そちらの状況は?』

響『今……』

キキィィィ!!!!!

不知火「所属と階級を!!」チャキッ!!!

ガチャ...ザッ...

バタンッ

不知火「……貴方がたは」

男「……」

男(周囲に転がっているのは死体と、肉塊と、瓦礫だけだった)

男「一応……制圧は完了。か」

ザザッ...ザザザッ

男「なに……通信だと」

男(一呼吸おいた瞬間。反応するはずのない無線が反応を示した)

男(ノイズはやがてクリアになり、声が聞こえる)

『結構やるじゃねえかよ……これが次世代兵器の実力ってやつか』

男「……貴様は」

虚『今度はきっちり殺しに来たぜ。クソ野郎』

男(電子世界で聞いた声が、無線の向こうから聞こえた)

ここまでです

ゴォォッ!!!!!

男(そしてそれは一瞬だった)

男「くっ……!」

ガキンッ!!!

男(咄嗟に太刀を振りかざすと、今までに感じた事の無い程の衝撃が襲った)

男(コンクリートを削りながら滑り、次に目の前に見えたのは……)

男「……馬鹿な」

男(目の前に、太刀を交えていたのは)

虚『今ので刈り取ってやれっと思ったんだけどなぁ』

男(戦艦……虚構だった)

男「何故……虚構が……」

男(ガリガリと音を立てながら太刀を押し合い、肉薄していた)

虚『こいつぁ虚構じゃねえ。まぁ元にはなってっけどよ』

男「……」

男(確かに、見れば所々様子が違う)

男(黒を基本に繋ぎ目には赤い線という禍々しい塗装をしていて虚構とはこれも違う)

男(だが、性能面ではどうなのだろうか)

男(夢幻は、虚構型戦艦二番艦以降は戦艦虚構に大きく劣ると言われている)

男(同じ虚構の模造品だったとして、この妖しい機体はどれほどの実力を発揮するのか)

ガキンッ!!!ギンッ!!!

男(お互いに得物の範囲内に居ながら、それを激しくぶつけ合う)

男(火花を散らし、互いに譲る事はない)

ガキンッ!!!!!

男「ぐっ……!」

男(痛みの感覚はある。打ち合う度に衝撃が手を、腕を襲う)

男(だがここで太刀を取り落とせば確実に……)

男(俺は相手の得物を見た)

虚『ヒャハハハハハ!!!これだよこれ!!こういう殺し合いを俺ぁ待ってたんだ!!』

男(長さは夢幻の太刀とさほど変わりはしないが)

男(刀身に無数の刃が生えていた)

男(まるでチェーンソーの様な……)

虚『いいぜ。とっておきだ』

ブォンッブォンッ!!!!!

男「やはり……」

男(思った通りだった。細かな刃は動き始め、文字通りチェーンソーの様な状態になった)

男(普通に打撃を与えるのもいいが、あれを押し当てられれば……夢幻の装甲もタダでは済まないだろう)

虚『ズタズタになっちまえよ!!』

ブンッ!!!

男(横薙ぎに迫る刃を、太刀で受ける)

ガリガリガリガリッ!!!!!

男「ッ!!!」

男(嫌な音を立てて得物が悲鳴を上げる)

男(手に伝わる衝撃も先ほどの比ではない)

男「シッ!!」

ガキンッ!!!!!

男(力で押さえつけられていた太刀を大きく引き、チェーンソーに打ち付けた)

男(大きく弾かれたそれは一旦は離れたが、再び襲いかかる)

ブンッ!!!!!

男(袈裟斬りに降ろされたチェーンソーは確実に俺の中心を狙い澄ましていた)

男「……ッ」

ガキンッ!!!!!

男(太刀を振るい、弾きかえすしか防ぐ方法がない)

男(力強く打ち付けた、再びチェーンソーを跳ね除ける)

>>762 修正


男「シッ!!」

ガキンッ!!!!!

男(力で押さえつけられていた太刀を大きく引き、チェーンソーに打ち付けた)

男(大きく弾かれたそれは一旦は離れたが、再び襲いかかる)

ブンッ!!!!!

男(袈裟斬りに降ろされたチェーンソーは確実に俺の中心を狙い澄ましていた)

男「……ッ」

ガキンッ!!!!!

男(太刀を振るい、弾きかえすしか防ぐ方法がない)

男(再び太刀を力強く打ち付け、チェーンソーを跳ね除ける)

ここまでです

虚構の虚構が夢幻で虚構の模倣で虚構が本当で(白目

すいません。今日はがっちり飲んで上手く話がまとまらなさそうなので

終盤ですがまだまだ続くと思います。個人的に最初から考えていた一番書きたいシーンが近づいてるので結構モチベーションは上がってます

男(だが、弾くにも限界はある)

男(一撃が重く、握る手と太刀に相当のダメージを与えているのは言うまでもない)

男(どちらかが限界を迎えてしまう可能性は大いにある)

ガキンッ!!!!!

男(一進一退の攻防が繰り広げられている)

虚『どうしたぁッ!!そんなんで俺ぁ倒せねぇぜ!!』

ガキンッ!!!!!

男「チッ……!」

男(手の痛みに歯を食いしばりながらも打ち合う)

男(何合太刀を打ち据えたか覚えていないほどだ)

男(遠目に赤が空を侵食していく)

男(夜になるのはまずい……)

男(すぐにでも決着を……)

ガキンッ!!!!!

男「ぐっ……!」

虚『そうやってるだけじゃ終わりゃしねぇぞ』

男(考えろ。なにか打開策はないか)

男(考えろ……)

ガキンッ!!!!!

男(まず、銃器を使用する余裕はない)

男(片手で受けようものなら……どうなるかなど目に見えている)

男(かわす事も出来ないだろう。流石に身体の芯を狙っての斬撃をかわせる程の柔軟性はある訳がない)

男(少なくともこの攻撃は受け続ける他ないのだ)

男(ならばどうすればいい)

男(最善の手は……)

ガキンッ!!!!!

男(やはり、打ち合った後の一瞬の隙を狙う他ないか……!)

チャキッ

男(太刀を握り直し、構える)

ガキンッ!!!!!

男(今ッ!!)

男(チェーンソーを今までよりも強く打つ)

虚『ッ!!』

男(上方へ大きく弾かれたチェーンソー。胴体に大きな隙が出来た)

ブンッ

男(そこへ畳み掛けるように一撃)

ガンッ!!!!!

男(流石に……通らないか……)

虚『やってくれんじゃねぇか』

ブンッ!!!

男(相手の胴にぶつけた瞬間。弾かれた勢いを利用した斬撃が落ちる)

ザリザリザリッ!!!!!

男(太刀を相手の胴を這わせる様に動かし、その斬撃へとぶつける)

ガキンッ!!!!!

男(既の所で、チェーンソーを弾いた)

男(相手にダメージが通った様な振りはない)

男(今のはこちらの労力に見合わず、危険が大きかった)

男(ならば、別の方法を……)

ガキンッ!!!!!

お仕事です

虚『……あぁ。なんつーか……』

ガキンッ!!!!!

虚『飽きてきちまったなぁ』

男(突然。気だるそうな声が聞こえる)

虚『最後はお互い死ぬ程のギリギリの戦いってのをしてからてめぇを殺してやりたかったんだけどよ』

ドンッ!!!

男(その時の動きを俺は捉える事が出来なかった)

男(一定間隔の動きから一転。チェーンソーを弾かれた勢いのままに右手をそれから離し)

男(掌が胸元に穿たれた)

男『かはっ……!!』

男(鈍痛が胸を貫いた。あまりの痛みに息が止まる)

虚『弱えよ、お前』

ブンッ!!!

男(目を見開いた時には遅かった)

男(チェーンソーの唸りが左脇へ吸い寄せられる)

ガリガリガリガリッ!!!!!

男「グオオオアアアアアッ!!?」

男(肉が削られ、神経が微塵にされる。痛烈な痛みと共に装甲が火花を散らす)

男「ごっ……ガッ……!!」

ガリガリガリガリッ!!!!!

虚『まだあの女の方が手応えがあった』

虚『正直。期待ハズレだよてめぇには』

ズドンッ!!!

男(太刀を握る事すら出来ず、それを取り落とす)

男(痛みに悶えながら片膝を……ついた)

男(漏電し、爆発を起こす脳)

男(必死にそれを抑えようとするが、痛みがそれを許さない)

ガリガリガリガリッ!!!!!

虚『[ピーーー]よ』

男(落胆と軽蔑の入り混じった声で呟く)

男(高速回転する刃は外部装甲を切断し、内部に手を掛けようとしていた)

男「ッッッ!!!!!」

男(ギリギリと歯軋りしながら、目の前の状況を理解しようとする)

男(まだだ……ッ!!まだ……[ピーーー]る訳がないッ!!)

男(こんなにもあっさりと死んでたまるものか)

ガッ!!!!!

男「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!」

ギャリギャリギャリッ!!!!!

>>776 修正


男(漏電し、爆発を起こす脳)

男(必死にそれを抑えようとするが、痛みがそれを許さない)

ガリガリガリガリッ!!!!!

虚『死ねよ』

男(落胆と軽蔑の入り混じった声で呟く)

男(高速回転する刃は外部装甲を切断し、内部に手を掛けようとしていた)

男「ッッッ!!!!!」

男(ギリギリと歯軋りしながら、目の前の状況を理解しようとする)

男(まだだ……ッ!!まだ……[ピーーー]る訳がないッ!!)

男(こんなにもあっさりと死んでたまるものか)

ガッ!!!!!

男「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!」

ギャリギャリギャリッ!!!!!

>>777 再度修正。すいません


男(漏電し、爆発を起こす脳)

男(必死にそれを抑えようとするが、痛みがそれを許さない)

ガリガリガリガリッ!!!!!

虚『死ねよ』

男(落胆と軽蔑の入り混じった声で呟く)

男(高速回転する刃は外部装甲を切断し、内部に手を掛けようとしていた)

男「ッッッ!!!!!」

男(ギリギリと歯軋りしながら、目の前の状況を理解しようとする)

男(まだだ……ッ!!まだ……死ねる訳がないッ!!)

男(こんなにもあっさりと死んでたまるものか)

ガッ!!!!!

男「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!」

ギャリギャリギャリッ!!!!!

虚『なっ……』

男(最早考えなど無かった。目先の状況を打破するにはこれしかなかった)

男(回転する刃を左手で、握る)

男(意識などとうに飛んでしまってもおかしくはないほどの激痛)

男(それでも俺はチェーンソーを掴み、押し返した)

男「ぐぅぅ……ッ」

虚『はぁー……そりゃあ予想外だわ』

虚『そんじゃもう一発、受けとけや!!』

男(再び迫る刃。俺は……左手を翳し……)

金剛「全砲門、ファイア!!!」ドンドンドンッ!!!!!

天龍(金剛姉の強烈な砲撃が深海棲艦に直撃し、炎を上げて水へと沈んでいく)

比叡「お姉様をお守りするの!!撃って撃ってうちまくるッ!!」

榛名「榛名!!全力で参ります!!」

ドンドンドンッ!!!!!

天龍(戦艦級の砲撃が凄まじく、次々と深海棲艦を屠っていた)

ザッ!!!タッタッタッ!!!

スタンッ!!!

木曾「まだまだトロいなぁッ!!」ズドンッ!!!

天龍(木曾は海面を駆け抜け、まるでアクロバットの様な動きで深海棲艦を翻弄している)

翔鶴「敵戦艦、空母を無力化します」

天龍(翔鶴姉の艦載機の動きはまさに一糸乱れず。美しい程の裁きで敵艦載機を撃墜し、爆撃をしている)

天龍「ダァァッ!!!」チャキンッ

ズバッ!!!!!

重巡リ級「……」ブシュゥゥゥ!!!

天龍「ったく。流石に鈍ってんな」

電「あ、当たって下さい!」ジャコンッ

ボシュッボシュッボシュッ

天龍(かくいう俺と電は苦戦を強いられていた)

天龍(当たり前っちゃ当たり前だな)

天龍(正直、オレに関しちゃ艤装の適性自体ギリギリなのに。それ以上にブランクが脚を引っ張っている)

天龍「それにしても……あいつらどんだけ湧いてくんだよ」

天龍(深海棲艦は倒しても倒しても。遠くから連なりこちらへと向かっている)

翔鶴「深海棲艦もこちらが喉元だとわかっているのよ」

金剛「絶対にここを抜かせちゃノーなんだからね!」

木曾「俺たちの動きにも戦争の勝敗が握られてるって訳だ」

天龍「……そうかよ」

電「お姉ちゃん……」

天龍「……そうか……悪くねぇ」ケラケラ

天龍「天龍様の本気はこれからだってんだ!!なぁ電!!」

電「……はい!!」

男(翳した左手に刃が迫る)

男(ここで受けて……切り返す!!)

男(肉を切らせて骨を断つ。最善の策など思いつかず、これしか方法が無かった)

虚『その手ごと真っ二つだぜ!!』

ドンドンドンッ!!!!!

ドゴォォォッ!!!!!

虚『ガハッ……!?』

ズザザザザザッ!!!!!

男「……」

男(何が起きたのか。一瞬理解が追いつかなかった)

男(突如砲声が聞こえ、虚が後ずさりをした)

『だらしないぞ。提督』

ズンッ...ズンッ...

男(炎の壁を乗り越えて何かが現れる)

男「……まさか。何故……ここが」

『分かるさ。お前の行く先くらい』

男(緑を基調とした塗装。蜘蛛の様な姿)

男(大蜘蛛型重巡洋艦)

『無線が通じなくてな。そこの深海棲艦の無線に割り込む様にしたら何故か上手くいった』

虚『……このアマが』

男「……武蔵」

武蔵『随分やられた様だな。提督』

武蔵『だが、私が来たんだ。少しは当てにしてくれよ』

ここまでです

男「何故ここまで来た。その次世代兵器……国防軍から奪取したのか」

武蔵『落ちていたのを拾ったまでだ。ゆっくり遠回りしてから返すさ』

武蔵『それよりも……私は何故お前がその次世代兵器に乗っているのかが知りたいがな』

男「……」

武蔵『何故黙って出て行った』

男「……そうせざるを得なかったからだ。これが……最善の選択だった」

武蔵『……そうか』

武蔵『ならば。私がここに来たのも、私の最善の選択だ』

武蔵『そうだろう、提督』

男「……っ」ギリッ

男(……俺は、過ちを犯したのだろうか)

男(仲間を……家族を守るはずの選択は、家族を戦場へと送り込んだ)

男(胸が、ギリギリと音を立てて締め上げられた)

男(何故だ……何故。まるで……そうである事が正しいかの様に)

男(事情は進んでいく)

武蔵『さてと……あまりゆったり会話をしている時間は無さそうだぞ』

虚『……くだらねぇ』

虚『こんなゴミみてぇな会話を聞きに来たんじゃねえんだ!!』

虚『殺し合いだ!!俺ぁ息も出来ねぇくらいの殺し合いをしに来たんだ!!』

武蔵『フッ……いいだろう』

武蔵『あの世界でのケリは付けさせてもらう』

武蔵『さぁ、始めるぞ。提督』

男「……あぁ」

武蔵『どのような後悔も、勝てば全て解決する』

男「……そうだ。勝てばいい」

武蔵『いくぜッ!!!』

キュィィィン...

バララララ!!!!!


男(大蜘蛛の前方に装備された二本も砲身が弾丸をばら撒きながら回転する)

男(反動で後退せぬ様に六足を地に押さえつける様はまさに、蜘蛛そのものだった)

虚『チッ!!』

男(虚は身体を屈め、左手を突き出した)

虚『そっちがその気なら……喰らえや!!』

男(その手に持たれたのは夢幻のよりも小型の自動拳銃だった)

ガンガンガンガンッ!!!!!

男(だがスライドは後退する事無く、弾丸を連射し始める)

男「マシンピストルか……」

ガキンッ!!!バキッ!!!

武蔵『ぐっ……脚に被弾したか……!』

男「……ッ!」

男(俺はお互いの射線に入らない様に、太刀を拾い上げた)

男「フッ……!!」

男(そして積み重なった瓦礫をスターターに見立て、踏み込む)

ドゴォォォッ!!!

虚『ハッ!!それくらい読めてるぜ!!』

ガキンッ!!!

男「なに……」

男(左手が封じられている今、夢幻の一太刀をかわす事は出来ないと踏んだが)

男(右手に握ったチェーンソーにそれは阻まれた)

男『……たった片腕で受けるとは』

虚『テメェの乗ってやがる……夢幻っつったか』

虚『虚構と比べて、軽すぎんだよ』

ガキンッ!!!

男「シッ!!」ブンッ

キンッ!!!

ガキンッ!!!

男(何合が打ち合い、鍔迫り合いの状況へと持ち込む)

ガンガンガンガンッ!!!!!

男(その間にも、虚の持つマシンピストルからは弾丸が絶え間無く吐き出されている)

武蔵『提督がそれだけ密接していると……こいつは撃てないかッ』

男(武蔵は弾道を避ける様に、蜘蛛の脚を動かし周回する様に動く)

男(ならば、俺も一旦距離を取るべきか)

虚『おっと。もう少し付き合えよ』ブンッ!!!

男(だが、その間も無く立て続けに斬撃が襲い来る)

キンッ!!!キンッ!!!

男(何合も、何合も斬り結ぶ)

ガンガンガンガンッ!!!!!

男(虚構の模造品とは言え、此れほどまでに差が出るものか……!)

男(これでは埒が開かない)

ガキンッ!!!!!

虚『これだ……この感覚……!!』

虚『これが殺し合いだ……!!』

男「……」

武蔵『フンッ……』

虚『ギャハハハハハ!!!!』

虚『もっとだ。もっとギリギリの殺し合いをしようぜ!!!なぁ!!?』

男「……この、狂人が」

ここまでです

虚『狂人か。悪くねぇ』

ガキンッ!!!!!

虚『けどよぉ、俺からしちゃテメェも狂人に見えっけどな』

男「……戯言を」

虚『テメェは何かに囚われてる。そうだな……』

虚『綺麗事に囚われてる、綺麗事に狂ってるぜ』

男「……何を言っているのか理解出来んな」

キンッ!!!キンッ!!!

虚『ハッ!!だから狂人だっつってんだよ!!』

バキンッ!!!!!

男(強烈な打ち上げ。重量のあるはずの太刀が一撃で手から離される)

ガァンッ!!!!

男「チッ!!」

男(その瞬間。咄嗟に後ろへ飛び退く)

ブンッ!!!!!

男(すぐに俺がいた場所へ返しの斬撃が放たれた。それをなんとか、数十センチの距離でかわす)

虚『人間ってのはすぐ綺麗事並べて自分の身を守ろうとする。そりゃあそういうもんだ』

虚『けどよ、テメェは行きすぎてる』

虚『……何が怖い?』

男「……怖い、だと」

武蔵『提督!!奴の妄言に耳を傾けるな!!』

虚『るせぇすっこんでろ!!』

ガンガンガンガンッ!!!!!

武蔵『ぐぅ……ッ!!』

虚『全部、だよなぁ?自分の身を汚そうとする。傷つけようとする』

虚『全部が全部怖くてたまらねぇ。相当なチキンだ』

男「……その程度の挑発で逆上するとでも思ったか。愚策だな」

男(俺は太刀を諦め、ライフルを握った)

ジャキンッ

虚『普通の人間ならそこまでボロがでりゃ諦める。それだけやられりゃ諦めるさ。けどテメェはちげぇ』

虚『まだ保身が出来るって思い込んでんだよ!!まだ間に合うってな!!』

虚『とっくに……手遅れなのによぉ?』

男「黙れ……!」

武蔵『提督!!撃て!!』

男(俺は引きながら、狙いを定める)

バララララ!!!!!

男(激しい反動がストックを伝い、肩へと流れる)

男(ぶれぬ様に、小脇を締めながら残弾を気にせずに撃つ)

武蔵『はぁぁッ!!』

バララララ!!!!!

虚『まだ妄想に浸ってる。諦めが悪りぃ』

虚『嫌いじゃねえぜ。ただ……』

虚『木っ端微塵に殺してやりたくなるッ!!』

男「なに……」

男(二方向からの同時射撃。逃れるのは至極難しいはずだが)

男(まるでその弾道が分かっていたかの様に、難なくかわしていく)

ここまでです

バララララ!!!!!

男(残弾が次々と無くなっていく)

男(何故当たらない……ッ!!)

男(やはり……近接で攻撃するしかないのか……!!)

男(まるで本当に、それだけの巨躯の人間がいて動いているかの様に)

男(自然でいて無駄の無い動き)

虚『当たらねぇぞ!!』ジャキンッ

ブォォォンッ!!!!!

男(まずい……!)

男(虚は再びチェーンソーの刃を回転させると、姿勢低く懐目掛けて飛び込んでくる)

男(太刀は未だ取り落としたまま。ライフルの銃身で受けるか……)

ブンッ!!!

男(かわせるか……!!)

不知火「あなた方はここになにを……」

古鷹「提督を……助ける為です!」

日向「一人で行ってしまうとはな。幾ら次世代兵器と言えども、あれだけの軍勢を相手にはできないだろう」

不知火「ですが、ここにこうして居る意味。分からない訳ではないでしょう?」

神通「提督はその身を犠牲に私達を守ろうとしてくれています。なら……」

北上「提督も助けないと。提督だけ死んで帰って来ても意味ないじゃん」

龍鳳「全員で……戻るんです!違う形でも……今まで通りじゃなくても!」

不知火「……」

不知火「いいのですか?今ならまだ防衛機構。日本に戻れます」

不知火「この先は例え深海棲艦を倒しても、決して平和には、日常には戻れない」

響「その説明ならさっきしたよ」

お仕事です

響「それで、みんな付いてきたんだ」

日向「私はただ、戦いが恋しくなっただけだ」

日向「……いや。戦いの中に居る時こそ、今までの自分と決別出来ると思ったからか」

日向「それが私が信じた。正しいと思った新たな道だ」

龍鳳「……もっと危険な。死と隣り合わせの人達が居るって分かって」

龍鳳「提督もそういう人達の一部になろうとしていて。そういう人達にこそ、必要な人間になりたいんです!」

北上「防衛機構でかなみ市を守るってのもいいけどさ」

北上「ここを抜かれたらそれどこじゃないでしょ?」

神通「より多くの人を救えるのなら。この身など幾らでも捧げましょう」

神通「……提督一人では戦わせません。私もご一緒します」

古鷹「私もみんなと同じ。それとなにより……」

古鷹「私は!!提督の元に居たい。どんな形でも」

古鷹「提督の……近くに居たい」

不知火「……そうですか」

響「司令官とは連絡は?」

不知火「司令とは通信が途絶えて……いや。一瞬ですが」

不知火「女性の声が聞こえたような……」

不知火「それと。司令とは別の男性の声」

不知火「ほんの一瞬ですが」

響「……多分司令官は。深海棲艦の中でも、最上級の存在と戦ってる」

不知火「最上級……戦艦レ級?それとも……」

響「どれも違う。既存の深海棲艦よりも遥かに強い……」

響「深海棲艦の指導者」

響「それに敵地の真ん中じゃ、他の深海棲艦も集まって来てるだろうね」

日向「武蔵もそこへ飛び込んで行ったが!?」

神通「戦局は……芳しくなさそうですね」

古鷹「そんな……提督……!!」

北上「これだけ人がいるんだから助けに行けないの!?」

不知火「駄目です。この場を死守しなければ」

不知火「深海棲艦を押し返す前線の中核を担う場所です」

不知火「絶対に、抜かせる訳には行きません」

龍鳳「それじゃあどうすれば……」

古鷹「提督が!!提督が危ないのに……武蔵さんまで……」

不知火「……」

不知火「ですがこれは司令……中尉の命令でも……」

不知火「……」

不知火「いえ。不知火は……少佐に、中尉を頼むと。そう託された」

不知火「中尉の……司令の命を守る事……それが私の成すべき事ならば」

ザザッ

不知火「総員に通達。この場は放棄する、繰り返す。この場は放棄する」

不知火「中尉……戦艦夢幻の痕跡を辿り、移動を開始する」

「隊長、お言葉ですが国防軍はまだ……」

響「国防軍なら次世代兵器と合流してすぐそこまで来てるよ」

不知火「聞こえたな。すぐに移動を開始する」

「ハッ!!急ぐぞ!!」

不知火「……不知火も、これでいいのですね。少佐」

日向「……行こうか」チャキッ

龍鳳「必ず、助け出しましょう」

不知火「司令の元へは感染者の死体を辿れば辿り着けるはずです」

不知火「ですが、感染者や深海棲艦の激しい妨害にも会うでしょう」

不知火「気を引き締めて、誰も死なぬよう。行きましょう」

神通「はい……必ず」

北上「ちゃちゃっと終わらせてさ、みんなで帰ろうよ」

古鷹「提督……」

「準備、整いました」

不知火「わかった」

ザザッ

不知火「全隊、移動開始」

ザリッ!!!

男「……ッ!!」

男(間一髪。だが僅かに刃が装甲を掠めた)

男(まずい……このまま押し込まれれば……!)

男(先程の痛みはずっと残り続けている。本当に自分の身体が抉られた様な、その様な感覚だ)

男(夢幻の破損も優しいものではない。また同じ部分を攻撃されればどうなるか)

武蔵『提督!!どいてろ!!』

男(脳内に響く武蔵の声。見れば……)

男「……ッ!」

男(まるで獲物を捕らえようとしている蜘蛛の如く)

男(両前脚を大きく上げ、虚の後方で今に襲いかかろうとしていた)

虚『あぁッ!?』

ブンッ

男(振り向きざまに放たれる横一文字。だがそれは当たる前に……)

ドゴォォォッ!!!!!

虚『ぐはっ……このアマァッ!!』

男(大蜘蛛ののしかかりが虚を襲う)

武蔵『フッ……捕らえたぞ』

グググ...

虚『ぐ……この……!!』

男(違いに押し合い、硬直状態へと陥る)

男(いくらあの機体の出力が大きかろうと。戦車ほどの重量の物がそれに加え力ずくで押し込めようとしてくれば)

男(そう簡単には押し返せるはずもない)

武蔵『提督!!太刀を拾え!!』

男(武蔵の言わんとしている事は分かる)

男(俺は体勢を整え、落ちている太刀を……)

『どう?調子は』

虚『けっ……やっと来たか』

男(突如聞こえる何者かの声。いや、この声は……)

レ級『こんにちは。今度は殺しに来たよ』

男(荒ぶる炎と瓦礫を背に、戦艦レ級は佇んでいた)

ここまでです

虚『おいッ!!クソ野郎を[ピーーー]のは俺だ!!』

レ級『もう……待てないよ?』

男「……」

虚『聞いてんのかッ!!』

レ級『分かってる。でもその前にそれをなんとかしなきゃいけないんじゃない?』

虚『あぁ……んなのはわぁってら』

武蔵『フン……』

男(レ級が来た。とは言え最初にその姿を見たとき同様)

男(武装もなにもしていない。そう簡単には押されるはずはない)

男(ならばレ級は無視し、武蔵を援護する)

ガランッ...

男(太刀を拾い上げ、虚に向かい。走る)

ズドォンッ!!!

>>816 修正


虚『おいッ!!クソ野郎を殺すのは俺だ!!』

レ級『もう……待てないよ?』

男「……」

虚『聞いてんのかッ!!』

レ級『分かってる。でもその前にそれをなんとかしなきゃいけないんじゃない?』

虚『あぁ……んなのはわぁってら』

武蔵『フン……』

男(レ級が来た。とは言え最初にその姿を見たとき同様)

男(武装もなにもしていない。そう簡単には押されるはずはない)

男(ならばレ級は無視し、武蔵を援護する)

ガランッ...

男(太刀を拾い上げ、虚に向かい。走る)

ズドォンッ!!!

レ級『行かせないよ』

男(レ級の声が聞こえた瞬間)

ビュッ!!!!!

男「なっ……!」

男(何かが俺の右脚に絡みつく)

ギシッ...

レ級『……』

男(それを見ると、夕日に照らされ光を返した)

男「ワイヤー……」

男(何重にも編み込まれた、厚みのあるワイヤーだった)

男(一体どこから放たれた)

男(その線を辿り視線を移動させると……)

男「……なんだ。あれは」

男(いつそれが現れたのかはわからない)

男(そしてそれが……なんなのかも……)

男(レ級の背にいつの間にか、巨大な機械の様な物があった)

男(幾つもの脚が生え、不可解な形をしている)

男(黒く輝き、レ級の数倍の大きさはあろう)

男(そこからワイヤーが放たれていた)

レ級『これが私の……艤装』

男「艤装……だと。艤装は電子世界の中の物では……」

ギギギ...

男(軋む音を立て、脚が立ち上がっていく)

男(背にそれを着けていたレ級は浮き上がり、文字通り化け物の様な姿に見えた)

レ級『君達の次世代兵器の装備も艤装と呼ぶけど』

レ級『これは違うよ。これは……艦娘としての、深海棲艦としての艤装』

男「……」

レ級『次世代兵器を壊す為の次世代兵器』

ここまでです

男(あんなものの開発が深海棲艦に出来るのか

男(やはり……どこかの国の支援が……)

ブンッ!!!

ブチンッ!!!

男(俺は太刀を振るい、ワイヤーを切断した)

男「どうその兵器を開発したかは知らないが……」

男「……安々とやられはしないぞ」

レ級『……』

虚『押してダメなら引きゃあいい』

バッ!!!

武蔵『くっ……』

ズドォンッ!!!

虚『悪りぃが先に死んでもらうぜ』

武蔵『貴様に私が殺せるものならな……!』

男(本人が剥き出しになっているのが幸いだ)

男(太刀を横に突き立て、ライフルを握る)

ジャキンッ

男「……!」

バララララ!!!!!

カンッカンッカンッ!!!

男「……」

男(引き鉄に指を掛け放つ瞬間。鉄の装甲の様なものが現れ、レ級を守った)

男(後方から伸び、周囲を覆う様に現れた鉄の壁はライフルの弾丸では抜けなかった)

男(いや……このまま撃ち続ければ、あるいは)

バララララ!!!

シュルシュル!!!

男「ふんッ!!」

キンッ!!!

男(触手の様に伸びてきたワイヤーをライフルの先端部で弾く)

お仕事です

シュルシュルッ!!!!!

キンッ!!!!!

シュルシュルッ!!!!!

キンッ!!!!!

男(一体どれだけ飛んでくるのか。絶える事なく放たれるワイヤーをひたすらに弾く)

レ級『そろそろ……かな?』

男「……」

バララララ!!!!!

男(弾きの返しでライフルを撃ち、また弾く)

シュルシュルッ!!!!!

男「いい加減しつこいぞ!」

キンッ!!!!!

バキンッ!!!!!

男「……!?」

男(消炎器が……折れた……ッ!)

男(銃の先端部のフラッシュサプレッサーは重要な役割を担う)

男(弾丸は薬莢に納められた火薬の爆発力で前に飛ぶが)

男(その時の爆炎を抑えるのが消炎器だ)

男(これが無ければ撃つたびに炎が上がり視界が遮られる事になる)

男(つまりこのライフルはもう使い物にならなくなってしまった訳だ)

男「……ッ」

ガシャンッ!!!

男(破壊されたライフルを捨て、再び太刀を構えた)

男(自動拳銃ではこれの二の舞だ。ならば打つ手はこれより他はない)

男(激しい打ち合いで刃こぼれを始め、僅かに歪んだ太刀を構え、レ級を睨む)

レ級『……』

武蔵『ハァァッ!!!』

ガンッ!!!

虚『脚を振り回して格闘たぁおもしれぇ』

虚『そのポンコツでどんだけ戦えるってんだ!?』

武蔵『そのポンコツに倒される宿命を呪うんだな!!』

ガンッ!!!!!

虚『チィ……ッ!!』

男(懐深く潜り込み本体を叩くッ!!)

ズガァンッ!!!!!

男(舗装もボロボロに崩れた道路を蹴り、飛び出す)

レ級『私がワイヤーしか出せないと思ったのかな?』

ジャコンッ!!!!!

男(背中から現れたのはバルカン砲。M61)

男(砲身が回転し、毎分6000発という速度で弾丸を放つ兵器)

男(約算すれば100年もの間に渡り使い続けられているものであり)

男(人間など一瞬で肉塊に変貌させる事が出来る)

キュィィィン...

男(砲身が回転を始めたが、弾丸が出るまでは時間がある)

ズガンッ!!!ズガンッ!!!ズガンッ!!!

男(一気に接近し、一気に制圧する)

レ級『結構速いんだ』

男「疾ッ!!」

ブンッ!!!

ガァァンッ!!!!!

男(まずは一撃。レ級を守る鉄の板へ太刀を振るう)

男「まだッ!!」

男(そして二撃は回転する砲身へ……)

レ級『ふふ……残念』

バララララ!!!!!

男(太刀をまさに振り下ろそうとした瞬間、砲口が炎を上げた)

ガガガガガンッ!!!!!

男「ーーーッ!!!」

男(激痛。腹部が吹き飛んだかの様な痛みに……意識が一瞬途絶える)

男「ぐっ……ならば!!」

男(よろけ、射線から外れたのを狙い)

ブンッ!!!!!

男(蹴りをレ級のバルカン砲へと放つ)

ズガァンッ!!!!!

ベキッ!!!!!

男「これでお互い様だな……」

レ級『それは違うよ』

レ級『君の負け』

シュルシュルッ!!!!!

男「ッ!!」

男(抜かった……!!)

男(レ級が近距離でワイヤーを放たないという事など無かったのだ)

男(何本ものワイヤーが腕、脚、胴に絡まり。俺の動きを止めた)

男「ぐっ……」

男(力を込めても機体が軋み、身体が痛むのみで全く動く気配がない)

男(危機的状況……か)

武蔵『まだだッ!!』

ガンッ!!!!!

男(武蔵と虚の戦いは熾烈を極めていた)

男(一進一退の攻防。初めてとは思えない動きで相手を攻撃する武蔵)

男(人間的と言っていいほどの滑らかな動きでそれを捌く虚)

男(どちらも……俺の及ぶ域ではない)

ガンッ!!!!!

男(後ろ脚で胴を上げ、前脚を振り回したり、突く様な形で攻撃を仕掛ける)

キィンッ!!!!!

男(それをチェーンソーでいなす。そして斬撃)

ガキンッ!!!!!

男(だがそれを前脚で受け、再び攻撃を加える)

ベコッ!!!!!

男(だがその何十合と続いた打ち合いも終わりを迎える)

虚『クソがッ!!』

武蔵『その様なうすっぺら鉄の板で鉄塊の振り下ろしがそう何度も防げるか?』

ブンッ!!!!!

ガッ!!!

男(チェーンソーが歪み、武蔵が追撃を掛ける)

男(だがそれを虚は……左手で受け止めた)

虚『っらぁッ!!!』

武蔵『なにっ……!』

男(得物の破損など御構い無しに、それを蜘蛛の頭へと)

ガァァンッ!!!!!

武蔵『かはっ……!』

男(振り下ろした)

男「武蔵ッ!!」

グッ

ギリギリ...

レ級『いかせないよ』

ガァァンッ!!!

ガァァンッ!!!

ガァァンッ!!!

男(次々に振り下ろされるチェーンソーに、少しずつ本体が……潰れていく)

武蔵『ぐぅぅッ!!』

虚『死んじまえよ!!』

ガァァンッ!!!

ガァァンッ!!!

バキンッ!!!!!

男(チェーンソーが折れ、刃が宙を舞う)

虚『武器ってのはなぁ。自分が持ってきたものだけじゃねぇんだぜ?』

ガシャンッ!!!

男(残された柄を放り捨て、虚はビルの瓦礫から)

虚『はッ!!』

ガリガリガリガリッ!!!!!

男(赤色の鉄骨を抜き出した)

武蔵『離せこのっ……!!』

男(武蔵も逃れようともがくが、ぎっちりと固定され動かない)

男(まずい……このままでは……!!)

男(脳裏にふと、武蔵の死が浮かぶ)

男「まだだッ!!まだ終わりではないッ!!」

レ級『終わりだよ。君はどうやってこれから逃れるつもり?』

男(……逃れる方法など。いや)

男(無事に逃れる方法など、思いつかなかった)

男(無事でなくともいい。この場から状況が動くのなら!)

グググッ

男(俺は力を込め、前傾姿勢になった)

男(こうなれば……力ずくで逃れる以外手立てはない!!)

ギリギリ...

レ級『っ……!!』

シュルシュル!!!

ズドンッズドンッ!!!

男(レ級もワイヤーを地面に撃ち込み、耐える姿勢になった)

男(深海棲艦を倒す為の次世代兵器と、次世代兵器を倒す為の次世代兵器)

男(純粋な性能勝負だ)

ギリギリ...

男(装甲が潰れるのが分かる。糸が身体に喰い込んでいくのがわかる)

男(それでも。例え身体の一部を切断したとしても)

男(こうするしかない)

虚『っらぁ!!!』

ズガンッ!!!!

武蔵『ぐぅぅッ』

ズガンッ!!!

男(今度は突きで蜘蛛を攻撃し始めた)

バキンッ!!!!

男(鉄骨が折れればまた新しいものを引き抜き)

ガリガリガリガリッ!!!

ズガンッ!!!!!

男(それを突き立てる)

男(みるみる頭部は凹みを大きくしていき)

男(そのたびに武蔵の押し殺した悲鳴が聞こえる)

男(それもそのはずだ)

男(大蜘蛛型の搭乗席は)

男(その頭部にあるのだから)

男「うっ……ぐぁぁあああ!!」

ベキッ...バチンッ!!!

男(ワイヤーは腕に深く喰い込み、内部からは火花が散る)

男(無論。俺も腕が裂けていく痛みを味わっていた)

男「武蔵ッ!!!」

ベキッ...ベキベキッ......

バキンッ!!!!!

男「ぐあああああああ!!!!!」

男(左腕が……千切れた)

レ級『なっ……!?』

武蔵『提督……!!』

男(先程のものよりも格段に違う痛み。肩から先がちぎれ飛び)

男(火花と液体を撒き散らした)

男(歪む視界で……武蔵と。虚を見る)

男(その時だった)

男(その瞬間だった)

男(大切なものを失う。本当に大事なものを失う)

男(一番に恐れていた)

男(それが……)

虚『このクソアマァッ!!!!!』

男(虚の放つ一撃は、空を切り)

男(装甲に突き立てられ)

男(そのまま……)

武蔵『ッーーー』

ベキィッ!!!!!

男「ッッッ」

虚『……へっ』

男(まるで、果物にナイフを突き立てたかの様に)

グジャッ

武蔵『ごぼっ……!!』

男(蜘蛛の頭を……)

男(貫いた)

ここまでです

男「……武蔵」

武蔵『ぐぅ……あ……っ』

虚『……おいクソ野郎』

男「……」

グググ...

レ級『……』

虚『こいつはテメェの大事な人間なんだよなぁ』

男「……」

男(虚の言葉は聞こえはしたが答えるつもりは無かった)

男(そんな些細な事よりも。武蔵が殺される)

男(その事の焦りと怒りが、じわりと思考能力を奪っていく)

虚『テメェの姉貴はよ。こういう事を山ほどしてきた』

虚『俺からも!!他の人間からも!!大事なもんを盗んでいきやがった!!!』

虚『同じ思いを味わわせてやる……』

男「……貴様ッ!!」

ガンッ!!!

武蔵『うぐああああああ!!!!』

男(畳み掛ける様に、虚は鉄骨を踏みつけた)

男(甲高い音を立て鉄骨は沈んでいき、蜘蛛の頭に足がついた)

グググッ...

ギィ...ベキベキ...

男(蜘蛛の頭が軋み、少しずつ潰れていく)

男「外道が……」

虚『俺が外道ならテメェもテメェの姉貴も外道だボケ!!』

虚『テメェの大事なもんが汚く死に晒すのをよく見ておくんだな!!』

男「ぐぉぉッ!!」

ベキッ...ベキベキ......

レ級『今度は無駄だよ』

シュルシュル!!!

男(更に多くのワイヤーが絡みつき、文字通りがんじがらめの状態にされる)

男(最早ビクとも身体は動かなかった)

武蔵『ぐぅぅ……あああ……』

ベキベキ...

虚『……』

男「離せ!!!武蔵は俺と関係はない!!!」

男「もう……無力だ。戦う事は出来ない」

男「そいつは抵抗もしない!!」

虚『……それならよ』

虚『テメェの命と引き換えに、と言われたら。テメェが死ねばこいつは助けてやるっつったらどうする』

男「……俺の命で助かるのなら、無論だ」

男「俺の命と交換出来るのならッ」

武蔵『提……督』

虚『はぁーん……そうかよ。そんじゃあ……』

虚『死ねよクソアマ』

ギリギリ...

武蔵『うぐあああああッ!!!』

男「……」

虚『ギャハハハハハ!!!!助ける訳ねーだろ!!』

虚『そんだけ大事なら。殺すに決まってんだろ』

男「……」

男(どうあがいても。どう抵抗しても)

男(もう……武蔵は……助からないのか)

男(頭の血が引いていく。鼓動は収まり)

男(体温が下がっていくような気がした)

レ級『……』

男(夕日に照らされ、潰れていく影を。ただ見ている事しか出来ないのか)

ヒュルッ...

男(その時の俺は、いつの間にかワイヤーが全て解かれている事にも。気がつかなかった)

男(これが選択の結末なら……)

男(俺は、あまりにも……愚かな……)

武蔵『……提、督』

男「……」

武蔵『どうやら……私は……がはっ』

武蔵『もう……助からん……ようだ』

男「……やめろ。武蔵」

武蔵『こう……冷静になって……みると。色々と』

武蔵『思い出して……しまって……なぁ』

男(か細く、力のない声で。武蔵は語り出す)

男(その間にも、蜘蛛はその姿を)

男(歪めて行った)

お出かけついでに

武蔵『……提督。私……は』

武蔵『分かって……しまった……んだ』

男「……」

ギィ...ベキッ...

武蔵『……あの……時』

武蔵『古……鷹……が。提督に……』

武蔵『こ……く、白……している……のを。見た』

男「……ッ!」

武蔵『……はは。その時……に、私の……中に』

武蔵『黒い……感情が……産れた……んだ』

武蔵『お前……を、誰にも……渡したくない』

男「……武蔵」

ベキッ...ベキベキ...

虚『……』

レ級『……』

武蔵『……そして、後から……がはっ』

武蔵『気が……ついた……ん、だ』

男(……流石に。今の俺にも、この先武蔵が何を言わんとしているのか、想像がついた)

男(だがその言葉を聞いた瞬間に、全て終わってしまうような気がした)

男(これ以上。聞きたくは無かった)

男「武蔵……やめろ。まだ……助かる術は……」

武蔵『はぁ……はぁ……バカ……だな』

武蔵『内臓……が、潰れて……出血も……酷い』

武蔵『無理……だ』

男「そんな事は……!!」

武蔵『それ……でだ。私……は』

武蔵『……提督の……姉で……いたかった……訳じゃ……なかった……』

男「……」

武蔵『……お前が。古鷹に……気持ちが、向いていくのを。分かって』

武蔵『理解、したんだ』

ベキンッ!!!ベキベキ...

武蔵『わ……たしは、提督の……』

武蔵『提督の……そばに』

武蔵『姉として……では……ッ……なく』

ギギッ...ギィィ

男「武蔵ッ!!」

武蔵『一人の……女として……』

武蔵『愛さ、れる……女と……して』

武蔵『いた……かった……』

バキンッ!!!グジャッ...

男「……あぁ」

男(そう、武蔵が告げた瞬間)

男(蜘蛛の頭は……潰れた)

男(もう……武蔵の声を聞く事もなく)

男(廃材と化したものの隙間からは)

男(赤い液体が……溢れていった)

お仕事です

武蔵『私は提督の姉の様なものだろう?』

武蔵『まだまだだな……』

武蔵『私たちが相手にするのは人間だけでなく深海棲艦もだ。なにがあってもおかしくはない』

武蔵『肩に力が入っているぞ。もう少し落ち着け』

武蔵『落ち着いて、普段通りに行動するんだ』

武蔵『提督の過去を無理に掘り起こしたのは私だ。けじめは付けさせてもらうぞ』

武蔵『お前の父と姉の話、聞かせてはもらえないだろうか』

武蔵『お前がこうも感情的になったのは初めて見た』

武蔵『……きっと恐ろしいだろう。辛い現実が待ち受けているだろう』

武蔵『だがそれでも……提督は知るべきだ』

武蔵『お前の追い求めたものを、全てを』

武蔵『……それでもし生きる目的も希望も無くしたのなら』

武蔵『それでもいいじゃないか』

武蔵『それでお前の存在が消えて無くなる訳ではない。全て失ったのなら……また手に入れればいいだけの話だ』

武蔵『それに……まぁ……そうだな』

武蔵『例え最悪の展開だったとしても、お前は全てを失う訳ではないぞ?』

武蔵『私だって、他の艦娘だっているだろう?』

武蔵『お前の中では、私達の存在は無価値か?記憶の欠片にすら残らないような存在か?』

武蔵『……お前の生きる目的をまた、今度は一緒に探してやる事も出来る』

武蔵『私達に出来るなら全力でお前をサポートしてやるし、それに……』

武蔵『私はお前の姉のような存在だろう?弟は黙って姉に甘えていればそれでいい』

武蔵『だからこそ……ここでお前が折れてしまえば中途半端で終わってしまうだけだ』

武蔵『男なら最後まで貫いてみせろ』

武蔵『……絶望だけではなかったな』

武蔵『構わない。お前の可愛い所も見れたからな』

武蔵『そんな目で見るな、誰にも言わんさ』

武蔵『……そうだ。お前の言う通り、お前の元には私達がいる』

武蔵『どうせお前の事だ。俺が[ピーーー]ば全て終わる、なんて考えていたんじゃないのか?』

武蔵『ふん……ハッキリ言わせて貰うがそれは策にすらなっていないぞ』

武蔵『守らなければいけないものを自ら放り出のは根本から間違っている』

武蔵『深海棲艦の狙いは提督。ならば私たちが守るべきは提督』

武蔵『お前は何を守ろうとしている』

武蔵『……なぁ、言っただろう?』

武蔵『お前はすぐに溜め込もうとする。自分一人で抱えようとする』

武蔵『私たちを気にかけているなら余計なお世話だぞ』

武蔵『私たちはお前の事が迷惑だとも思っていなければ嫌いな訳でもない』

武蔵『私たちの好きでお前を守ろうとしているんだ。私たちの好きで……お前に手を貸そうとしているんだ』

武蔵『それでも気にするならそれは失礼だし……』

武蔵『それが嫌なら自分の身と私たちを守る方法を考えてみせろ』

武蔵『私は……お前の姉のような存在だからな』

武蔵『任せておけ。かわいい弟よ』

武蔵『……なぁ、提督』

武蔵『私だけでは心許ないか?』

武蔵『ならば何故私以外の人間に教えを請う必要がある?』

武蔵『……そうだな。お前の姉としては、弟の成長を見守る事は時に辛い、か』

武蔵『私の手を必要とされなくなるのは、少し……寂しい』

武蔵『言うなれば……息子が実家から離れて一人になる時の母の様な心境、とでも言うのか』

武蔵『もしお前が私より強くなったら……女らしくしおらしくしてみるか』

武蔵『……しょうに合わなすぎるな』

武蔵『……もし、私が戦闘や技術で必要無くなったとしても。それ以外の所で頼ってくれ』

武蔵『お前の……姉でいさせてくれ』

武蔵『なぜだ……』

武蔵『こうも……腹立たしく思うのは……どうしてだ』

武蔵『こいつとの戦いは私のものだ。これほどまでに熱くなった事は無い』

武蔵『いいだろう……私の本気……見せてやろうッ!!!』

武蔵『帰ったら……死ぬほど美味い飯と酒を食わせてもらうぞ』

武蔵『だらしないぞ。提督』

武蔵『分かるさ。お前の行く先くらい』

武蔵『何故黙って出て行った』

武蔵『……そうか』

武蔵『ならば。私がここに来たのも、私の最善の選択だ』

武蔵『そうだろう、提督』

武蔵『……提、督』

武蔵『どうやら……私は……がはっ』

武蔵『もう……助からん……ようだ』

武蔵『こう……冷静になって……みると。色々と』

武蔵『思い出して……しまって……なぁ』

武蔵『……提督。私……は』

武蔵『分かって……しまった……んだ』

武蔵『……あの……時』

武蔵『古……鷹……が。提督に……』

武蔵『こ……く、白……している……のを。見た』

武蔵『……はは。その時……に、私の……中に』

武蔵『黒い……感情が……産れた……んだ』

武蔵『お前……を、誰にも……渡したくない』

武蔵『……そして、後から……がはっ』

武蔵『気が……ついた……ん、だ』

武蔵『はぁ……はぁ……バカ……だな』

武蔵『内臓……が、潰れて……出血も……酷い』

武蔵『無理……だ』

武蔵『それ……でだ。私……は』

武蔵『……提督の……姉で……いたかった……訳じゃ……なかった……』

武蔵『……お前が。古鷹に……気持ちが、向いていくのを。分かって』

武蔵『理解、したんだ』


武蔵『わ……たしは、提督の……』


武蔵『提督の……そばに』


武蔵『姉として……では……ッ……なく』


武蔵『一人の……女として……』


武蔵『愛さ、れる……女と……して』


武蔵『いた……かった……』

>>868 修正

武蔵『……絶望だけではなかったな』

武蔵『構わない。お前の可愛い所も見れたからな』

武蔵『そんな目で見るな、誰にも言わんさ』

武蔵『……そうだ。お前の言う通り、お前の元には私達がいる』

武蔵『どうせお前の事だ。俺が死ねば全て終わる、なんて考えていたんじゃないのか?』

武蔵『ふん……ハッキリ言わせて貰うがそれは策にすらなっていないぞ』

武蔵『守らなければいけないものを自ら放り出のは根本から間違っている』

武蔵『深海棲艦の狙いは提督。ならば私たちが守るべきは提督』

武蔵『お前は何を守ろうとしている』

武蔵『……なぁ、言っただろう?』

男「……」

男「武蔵……それは……どういう……ことだ」

虚『……けっ。くだらねぇ茶番だぜ』

男(武蔵がそばにいた)

男(そうだ。いつでも彼女は俺のそばにいた)

男(いつも俺の事を気にかけてくれていた)

男(俺は……彼女を本当の姉の様に思っていた)

男(家族なのだと思っていた)

男(かけがえのない存在だった)

男(だが……最後のあの言葉)

男(俺を異性として……好いてくれていた)

男(彼女は俺の事を特別な存在として見ていてくれた)

男(その彼女の……選択を。俺は、奪った)

男(俺が……違えた。だから……武蔵は死んだ)

男(かけがえのないものを失った)

男(……あぁ。遅かったか)

男(なにもかも……とうにこうなると)

男(決まっていたのかもしれない)

男(俺の信じた道は……これだった)

レ級『……もしも、君の大切な人が変わってしまったらどうするの?』

レ級『今までのその人じゃ無くなって、まるで別人の様になってしまったら』

レ級『きっと気づいてないだけだと思うよ』

レ級『君が気づいてないだけなのか、ありふれてしまって見失っているのかはわからないけど』

レ級『人間は変わるよ。人を好きになる事はその人を自分の一部にする事』

レ級『自分の身体を引き裂かれた時、君はどうするの?』

レ級『……私の知っている人は、狂った』

レ級『失った部分を憎しみと、恨みと、怒りで埋めて』

レ級『誰でもそう。自分の身体を引き裂かれたらなにかで穴埋めしようとする』

レ級『私はもうそう思う事は出来ないけど』

レ級『それはきっと悲しい事だと思う』

レ級『つぎはぎだらけの自分の身体は、前の自分のものじゃないんだよ』

レ級『……君も早く気がつかないと、そうなっちゃうよ?』

レ級『私もあの人も……気がつくのが遅すぎた』

男「……はは。もっと早く気がつくべきだった」

男「随分と前に……知っていたではないか」

男(俺は……家族として。武蔵を愛していた)

男(お互いの感情の気持ちは違えど)

男(そうだったのだ)

虚『邪魔も無くなったな……レ級。手出すんじゃねぇぞ』

レ級『……』

男「……すまないな。武蔵」

男(視界が血の色で染まっていく)

男(心が黒で埋め尽くされていく)

男(目の前の男を殺せと。叫んでいる)

虚『いたぶって苦しませてから……殺す』

男「……死ぬのは貴様だ」

男「修羅への引導を渡してやる……ッ!!」

ここまでです

男(憎悪の感情が溢れ出す)

男(冷えた血脈は再び燃え上がり、灼熱を帯びた)

男(ただ目の前のこの男を屠る事。それだけが俺にとって武蔵の弔いであり、選択の結末なのだと感じた)

男(切断された左腕の痛みも薄れ、闘気が充満し最高潮まで昂ぶっていく)

男(そうだ……俺は今激昂しているのだ)

ギィィィッ...!!!

男(まるで俺の気持ちを代弁するかの様に、夢幻はその身体を軋ませ。鋼鉄の咆哮を上げた)

男(いや……夢幻は今正に、俺の身体なのだ)

男「……」

虚『……掛かってこいよクソ野郎』

虚『俺を殺してみろ!!!』

男「……永遠に地の底で泣き叫べッ!!」

ドゴォォォッ!!!

男(地を蹴り、真っ直ぐに虚へと向かう)

虚『頭に血が上りすぎだぜ?武器も無しに飛び込んで来るなんてよぉッ!!』

男(あの装甲を粉砕し、捻じ曲げ、形も残らぬ肉にしやる)

男(俺の思考はただその様な暴言を繰り返していた)

虚『っらぁッ!!』

ブンッ!!!

男(虚は手にした鉄骨を横薙ぎに払った)

バキィンッ!!!!!

男(俺はそれをかわそうともせず、腕の無くなった肩へとぶつかり破片が飛び散る)

男(更なる激痛が俺の身体を駆け巡った)

男(だが……その様な物。今の俺には枷にもならない)

男「……始めから」

ブンッ

虚『なっ……』

男(振るった拳は吸い込まれる様に伸び)

ガキィィィンッ!!!

虚『がっ……!?』

男(虚の顔側面へぶつかった)

男「こうしていれば……ッ!!」

虚『……チッ』

男(よろけながらも大勢を立て直そうとする虚の身体に更に追撃を加える)

ズガァァァンッ

男(右脚での蹴りを横腹にぶつけ、また拳を振り下ろす)

虚『グゥッ!!』

男(一方的な暴行の始まりだ。ただ相手が反撃をする前に)

男(殴る、蹴る、殴る、蹴る、踏みつける、殴る)

男(殴る、蹴る、蹴る、蹴る、殴る)

ガンッガンッガンッガンッガンッ!!!!!

男(相手だけではなく自分の身体も傷ついていく)

男(装甲は凹み、歪みを生じ、火花と共に破片が飛び散る)

男(だがそれでも、暴行やめはしない)

あぁ……すっかり寝落ちしてました。また明日に

男(止める訳にはいかない)

男(武蔵の命を。大切な家族の命を奪ったこの男を生かしておく訳にはいかない)

虚『がはっ……!!このクソがッ!!!』

ガンッ!!!!

男(拳を振り下ろした所に返しの蹴りが飛ぶ)

男(よろけ、虚から離れざるを得なかった)

虚『チッ……痛みがあるってのもいい事ばっかじゃねぇよなそりゃあ』

パラパラ...

虚『装甲がヒビだらけじゃねぇか……けど。これでお互い五分ってとこか』

男(立ち上がり、拳を構える。ボクシングの様な左腕を前に出した構え)

男(それに相対し、こちらも拳を握る)

虚『クハッ……ギャハハハハ!!』

虚『こうでなきゃ面白くねぇ!!』

虚『もっと、もっと殺り合おうぜ!!なぁ!?』

男「下衆が……ッ!!」

ビュッ!!!!!

男(最早考える事もなく。拳を繰り出す)

ガンッ!!!

虚『へっ。そんな甘っちょろい攻撃なんざ遠らねぇよ!』

男(攻撃の応酬。拳を受け、返し、また返し)

男(考えていた時よりも、格段と動きが違う)

男(ただ感じるままに。直感と本能に任せ殴る。蹴る)

男(響の言った身体にするとは、この事だったのかもしれない)

不知火「装甲車両前進!後に続け!」

古鷹(攻め寄せる深海棲艦に感染者)

古鷹(死体ともわからない肉片だらけの道を突き進むのは精神的にも辛いものでした)

古鷹(なにより、人の容姿をしたものを撃つ事)

古鷹(電子世界で深海棲艦と戦うのとは訳が違います)

古鷹(小銃を構え、撃つたびに。胸が苦しくて)

古鷹(辛い)

日向「大丈夫か。古鷹」

古鷹「はい。私は……大丈夫です」

古鷹(激しい銃声に砲声が飛び交い、人型の叫び声が木霊して)

古鷹(これが……本当の戦争なのだと。そう思いました)

今日も寝落ちっす

いや、最近体調崩してて結構しんどいんですよね。ごはんが喉通らなくて全然食べてないしあ^~艦娘の手料理が食べたいんじゃあ^~

あー……すいません。それじゃあ今日はお休みさせて下さい。再開は明後日になると思います

もう少し……なんですが、次スレに跨ぐ確率非常に高いです

次に書きたいやつの構想はなんとなく出来てはいるんですけどいろいろありすぎて迷う……電子世界を書く前に書いてたやつも続編書きたいしこれの続編というか設定引き継ぎしたのの妄想も捗るし。二刀流すると多分持たずにどれか自壊しそうなので一つに縛らないと……

不知火「もうそろそろ……夜か」

古鷹(煙の充満する空は赤く色づいていました)

不知火「もう少し、隊列の中程に入って下さい」

神通「やはり……足手纏いでしょうか」

不知火「いえ……ただ。あなた方は実戦部隊ではありませんよね」

不知火「無理をして戦う事もありません」

龍鳳「……」

北上「……わかったよ。みんな」

日向「……そうだな。仕方ない」

感染者「ガアアア!!!」ガバッ

隊員「やめろ!!来るな!!」タタタンッ!!!タタタンッ!!!

グジュッ!!!

隊員「あああああッ!!!!こいつッ!!俺の腕を!!!」

不知火「近寄らせるな!!」チャキッ

パンッ!!!

チャリン...

隊員「う……ぐ……」

不知火「大丈夫……?」

隊員「……隊長。俺はもうみんなとは居れないですね」

不知火「そんな事は……ッ!!」

隊員「ここに居る全員。それを分かってここにいる……」

隊員「だから、俺はここで落ちます」

不知火「……」

隊員「……では」チャキッ

パンッ...

不知火「……」ザッ

龍鳳「……そんな」

不知火「進みましょう。それしか……生き残る手段はない」

不知火「装甲車両の前進に遅れず進みなさい!!」

古鷹「……」

日向「……これが。戦うという事だ」

神通「……」

ガンッ...ガンッ...

タタタンッタタタンッ...

不知火「……射撃音に混じってなにか聞こえる」

隊員「隊長」

不知火「どうした」

隊員「この先、瓦礫が道を塞いでいます」

ガンッ...ガンッ...

ザリザリッ...

龍鳳「この音……前から聞こえます!」

不知火「瓦礫の向こう側から……」

不知火「死体の目印も瓦礫を境に途絶えている?」

隊員「はい」

不知火「……部隊を分ける!後方からの援護部隊と、あの瓦礫に爆薬を仕掛ける部隊だ」

不知火「あの瓦礫を爆破して突破しましょう。恐らく向こう側に……夢幻が」

不知火「あなた方の提督がいます」

お仕事です

体調はそこそこ良くなったので多分しばらくは大丈夫かと

BGMはこれだ!っていうのが出来なくて苦戦してます。仕事中にいいの思いついて帰ったら忘れる現象やめて欲しい

男(これは。文字通り死闘だ)

ガンッ...!!!

男(拳と拳がぶつかり合い、身体の破片が舞う)

男(俺の手は最早、朽ちかけていた)

男(ならばと脚を振るう。肩をぶつける)

ガキンッ!!!

虚『……!!』

男(こいつは……戦いを楽しんでいる)

男(殺し合いを……娯楽と思っているのだ)

男(俺はこんなにも、憎み、嫌悪し、忌んでいるというのに)

男(許せるものか。決して、決して許す事など出来ない)

バキンッ!!!

男「ぐ……ッ!!!」

男(痛みは臨界を迎え、脳はとっくに許容量を超えていた)

男(それでもこうして拳を震えるのは)


武蔵『提督』


男(彼女の顔が脳裏に、視界の向こう側に浮かぶからだ……!!)

男「ぐ……くっ……」

虚『はぁ……はぁ……どうした!?ビビったかよ!!』

男(歯が割れんばかりに噛み締められる)

虚『っしゃあッ!!!』

バリンッ!!!!!

男「がっ……!!」

男(虚の拳が顔面に命中し、仰け反る)

ガンッ!!!ガンッ!!!

男(だが踏みとどまる。ただ倒れてはいけない、屈する訳にはいかないと)

男(そう……心で叫んでいるからだ)

男「……武蔵……必ず……お前の……思いを……ッ!!」

男(きっと。俺は夢幻の中で涙を流していた)

男(煮えたぎる身体から、思いが溢れ落ちる)

男(黒い液体が視界を満たし、落ちていくのを感じた)

虚『……はぁん。兵器が涙を流す……か』

男(側から見れば、夢幻が泣いているようにも見えたかもしれない)

男(先ほどの攻撃で夢幻のモノアイ部分が損傷したのだろう)

男(だがそれでも。偶然の産物だったとしても)

男(これは俺の涙だ)

男「……貴様を屠るのに恐れも躊躇いもいらない」

男「廃品になれ、紛い物が」

ガンッ!!!

虚『紛い物つったらそっちもだろうが!』

バララララッ!!!タタタンッ...


レ級『……』


虚『らぁッ!!』

ズガンッ!!!

男「フンッ!!』

ガキンッ!!!

男(お互いに、廃品に身体が近づいていくも。決戦は続いていく)

男(これだけは譲れない。命を賭してでも)

タタタンッ...タタタンッ...

レ級『ねぇ……』

虚『あんだ!?今いいとこなんだから邪魔すんじゃねぇ!!』

レ級『銃声が近づいてる。国防軍か……それとも』

虚『しったこっちゃねぇ!!俺ぁこいつとの殺し合いをやってんだ!!!』

レ級『……私が行った方がいいのかな?』

ザッ...

レ級『……私は。私は……』

タタタンッタタタンッ!!!

レ級『……あ。そうか……そうだったんだ』

『爆破ッ!!』

ズドォンッ!!!!!

ここまでです

あんま関係ないですけどVOCALOID先生をお迎えしました。今の全然わからないし使うつもりもなかったんですけど

選択肢が増えて割にいろんな挑戦が出来そうで楽しみではあります

不知火「爆破!!」

ズドォンッ!!!!!

古鷹(瓦礫の壁の一部に取り付けられた爆薬が一斉に爆発した)

古鷹(爆裂音が轟いて、砂埃が舞い上がる)

不知火「くっ……まだ足りない……」

不知火「もう一度設置!今度こそ貫通させる!」

古鷹(その間にも感染者は押し寄せ、苦戦を強いられている)

古鷹(ここを抜けさえすれば……提督に会える……!!)

古鷹「……」チャキンッ

日向「古鷹」

古鷹「私たちにだって、出来る事はある!」

古鷹「みんな覚悟してここまで来てるのに……見ているだけなんて出来ないッ!!」

北上「……そうだよね」

北上「やってやろうか」チャキンッ

龍鳳「私も、戦えます!!」

神通「ここで負ける訳にはいけませんからね……参りましょう」

タタタンッタタタンッ!!!!!

古鷹(慌てないで……よく狙う……!)

タタタンッ!!!

古鷹(提督はいつも冷静で……落ち着いていた)

古鷹(絶対に慌てないで、考えて……)

不知火「設置を急げ!北側に分隊支援火器を!」

バララララッ!!!!!

古鷹「リロード!」

神通「援護します!」チャキンッ

タタタンッタタタンッ!!!

古鷹(弾幕を絶やす事無く撃ち込む事。それが今出来る最善策)

古鷹(それでも無駄に撃つのは……)

龍鳳「……」チャキ...

タンッ!!!

タンッ!!!

龍鳳「……」

古鷹(龍鳳はそんな中、確実に一発ずつ命中させていた)

古鷹(……そうだ。結局は弾幕じゃなくて、いかに早く倒せるか)

古鷹(どうやったら……)

不知火「爆破!!」

ズドォンッ!!!!!

古鷹(二回目の爆裂音。また砂埃が舞い上がり、視界を塞いでいく)

北上「ねぇ、そういえば響はどこに行ったのさ」

古鷹「え……?」

神通「そういえば……」

日向「戦いに気を取られ意識していなかった……」

龍鳳「確か……あの公園までは……」

響「……霧島さん、聞こえる?」

霧島『大丈夫よ。今の所は良好』

響「深海棲艦の航空部隊は?」

霧島『虚構が戦闘を行っている辺りで航空戦が展開されてるわ。夢幻のいる方面は大丈夫』

響「虚構の様子は?」

霧島『……次世代兵器と戦闘を行ってる』

響「……次世代兵器」

霧島『夢幻の方には虚構の亜種を、虚構の方には夢幻の亜種を送り込んだみたいね』

霧島『どちらとも連絡が取れないから、状況がどうなっているか……ただ。虚構なら大丈夫』

霧島『負けるはずないもの。私たち全員で造った、全員の想いが詰まった兵器だから。でしょ?』

響「霧島さんもそういう事言うんだ」クスクス

霧島『べっ……別にいいでしょ!』

響「電子世界の防衛は?」

霧島『あまりにも深海棲艦から送られてくるデータが膨大すぎて彼女たちだけじゃ捌ききれないかもしれない』

霧島『だから私も今必死にタイピングしてるんだけど』

響「そっか……」

霧島『それで、響の方はどうなの?』

響「うん。準備は終わったよ」

バララララ...

響「離陸を開始。目標地点へ移動する」

お出かけついでです。帰りもあるかもしれません

不知火「貫通しました。行きましょう」

古鷹「は……はい!」

古鷹(これで……提督に……!)

日向「提督に武蔵もいる。早く援護しよう」

不知火「装甲車両と少数部隊をここに残し残りは突入します」

不知火「スモークを投げて。それと同時に行きます」

タタタンッタタタンッ...

ガンッ...ガンッ...

不知火「……」ピンッ...

古鷹(不知火さんが発煙手榴弾のピンを抜き、構える)

不知火「ふんっ!」ブンッ

隊員「せりゃ!」ブンッ

カランッカランッカランッ...

ボンッ!!!

不知火「行きます。みなさん続いて下さい!」

神通「……」

龍鳳「……!」

北上「……」

日向「……」チャキンッ

古鷹「……」

古鷹(瓦礫の間に出来た空間へ、駆け込む)

古鷹(この先に……)

短いですが

男「うおおおおッ!!!」

虚『っらぁッ!!!』

ドンッ!!!

虚『オラオラ!!まだそんなもんじゃねぇだろ!!』

ブンッ!!!

ドゴッ!!!!!

男「ッ……!!」

男(どれだけの数拳をかわしたか分からない)

男(痛みの感覚がいつの間にか痺れへと変わり、感覚は昂ぶる感情と混ぜ合わさり失われていった)

男(恐らくだが、あまりの痛みに神経が耐えきれず麻痺しているのだろう)

男(このまま続けばその内に神経が破壊され動かす事すらままならなくなるだろう)

男(だがその様な事を考える余裕はなく、それはきっと相手も同じだろう)

男(明らかにお互いの動きは鈍り、消耗戦となっているのは火を見るよりも明らかであった)

男(特に切断部である左肩が酷い)

男(殴られても痺れすら感じる事が無くなっていた)

男(……無事に夢幻から降り立ったとしても。左腕はもう動かないかもしれない)

男(だがその様な事は関係ない)

男(ただ目の前の狂人を屠る事が出来るのなら……どの様な事でさえ厭わない)

男「貴様はッ……俺の一部を抉り奪い去った」

男「空虚は貴様への憎悪で……!!復讐で!!」

男「埋めさせてもらうぞ……!!」

虚『ケッ……勝手にやってろ!!』

ガンッ!!!!!

ドゴォォォッ!!!!!

レ級『……来る』ジャコン...

ザッ...

ボンッボンッボンッ!!!!!

不知火「突入!!遮蔽物を利用して包囲陣形を展開する!!」

ダッ...

チャキンッチャキンッチャキンッ...

不知火「……!!」

不知火「これは……」

ダッ...

日向「武蔵!提督!」

古鷹「……ッ!」

神通「……あれは。二つとも……次世代兵器ですか」

龍鳳「……すごい」

男「チッ!!」

ブンッ!!!

ガンッ!!!

虚『まだまだやれんぞッ!!』

シュッ!!!

ガンッ!!!

男(蹴りに殴り合いの応酬は続く)

男(なんとしてでも……ッ)

男(なんとしてでも、この男だけは……!!)

北上「ねぇ……あれ……」ガチャン...

日向「北上?銃を取り落とし……て」

不知火「……あれは。蜘蛛……大蜘蛛型の残骸……」

不知火「間から血が滴っているという事は死んでま……だ……まさか」

龍鳳「そ、そんな……」

古鷹「あ……あぁ……」ドサッ...

日向「……武蔵」

神通「武蔵さんが……」

北上「……死んだ」

古鷹「……嫌」

日向「ぐっ……あの次世代兵器に……殺されたのかッ!!!」

隊員「隊長!あの兵器の通信を傍受出来そうです!」

不知火「今すぐにやりなさい!!」

古鷹「嫌……だ。嫌だ……」カタカタ...

龍鳳「どうして……武蔵さん……」ポロ...

神通「……」ギリッ

北上「……提督。左腕無いじゃん」

不知火「車両から対戦車ミサイルを……早く!!」

古鷹「……提督が……提督が死んじゃう!!」

日向「待て!!まだそう簡単には……」

古鷹「嫌ッ!!!提督!!!提督!!!」

古鷹「死なないで……提督……!!」

ドクンッ...

男「……」

虚『……あん?』

男「なんだ……今のは」

虚『……あぁ?どうしたクソ野郎。頭でも逝っちまったのか』

ドクンッ...

男(なにかが聞こえた)

男(黒色の水に透明な一滴がポタリと滴れて……)

男(一点の純粋を作った)

ドクンッ...

男「なにかが……聞こえる」

ドクンッ...

男(まただ。蒸れた天蓋から雫が滴る様に、ポタリ、ポタリと……なにかが落ちる)

男「……」

虚『……ケッ、白けさせんじゃねえよ!!』

ブンッ!!!

バシィィィンッ!!!

虚『なっ……拳を掴みやがった……!』

男(聞いた事がある。懐かしい様な、待ち望んでいた様な)

男(遠くから、段々と近くへ)

男(それははっきりと……聞こえた)

男「……」

男「……」

男「……あぁ」

男(俺はなにかに取り憑かれていたのかもしれない)

男(修羅に堕ちていたのは、俺だった)

隊員「通信、傍受出来ました!」

不知火「貸して!」

不知火「司令、聞こえますか!!司令!!」

ダッ

バシッ!!!

不知火「ッ!?」

古鷹「提督!!提督!!」


古鷹『提督!!聞こえますか!!』

男「……古鷹」

古鷹『提……督……』

虚『おいおい……いつからこんなウジャウジャ居たんだよ……レ級!!何やってやがる!!』

レ級『……』

虚『聞こえてんだろ……どこ行った!!レ級!!』

男「……古鷹。何故ここへ」

古鷹『一人で行くなんて!!なんで私に話してくれないんですか!!」

男「……すまない」

古鷹『それに……武蔵さんは……』

男「……」

男「……すまない」

古鷹『……』

男「……俺は選択を誤った。結果がそれを導き出した」

男「武蔵が殺されるのを、ただ見ている事しか出来なかった」

男「憎悪に取り憑かれ、何も考えられずにいた」

古鷹『提督……』

男「古鷹。君のお陰で、俺は思考を取り戻す事が出来た」

男「……ありがとう」

古鷹『私は……』

男「……自分の選択の決着は自分で付ける。戻れ」

古鷹『ッ!!』

古鷹『でもそれじゃあ提督は……提督もボロボロで……』

男「滾る感情は殺さずに、だが冷静に」

男「大丈夫だ。だから……」

古鷹『またそうやって一人でなんでもしようとして!!』

古鷹『もううんざりです!!提督は一人でなんでも出来る人間なんですか!!』

男「……」

古鷹『武蔵さんが……武蔵さんが……死んだのは。提督のせいじゃありません』

古鷹『けど!!提督は今自分で自分を殺そうとしてるじゃないですか!!』

古鷹『提督が死んだら意味無いんです!!みんなで生きて戻るんです!!』

古鷹『だから……一緒に戦いましょう!!提督!!』

男「……」

男「……俺の責任は、俺の責任だ」

古鷹『提督……ッ』

男「だが……それを皆に分け与えてもいいのか」

男「それで……いいのか」

古鷹『提督の責任を分けたらみんなの責任です。みんなで分ければ簡単に終わります』

古鷹『一緒に戦いましょう』

男「……ありがとう……!」

ここまでです

古鷹「……」

日向「古鷹……」

古鷹「……言っちゃった」ペロッ

北上「ま。そう言ったからにはやらないとね」

神通「私たちにも出来る事はあります」

龍鳳「みんなで提督を助けましょう!」

日向「そうだな……武蔵の為にも。必ず全員で生きて帰ろう」

不知火「感染者の数が多すぎる……防衛を破られては」

日向「ならば。私たちも戦うぞ」

古鷹「行きましょう!」

男(さて……冷静に。かつ正確に行動しなければなるまい)

男(古鷹のお陰で考える余裕が出来た。感謝しなくては)

男(虚への怒りや憎しみは忘れずに)

男(思考は冷静に)

男(これが俺の戦い方だ)

虚『この……ッ!!』ブンッ

男(奇妙な感覚だ。先ほどの様に身体に痛みは感じない)

男(感情の昂りもある。目の前の男が憎くてたまらない)

男(傷ついた身体には熱がこもり、一秒でも早く終わらせたいと渇望している)

男(なのに、先ほどまで汚泥の中に使っていた脳は透き通った純水の中へ落とされた様に)

男(ひんやりとして冷たく、文字や音声が駆け巡る。思考が軽やかに重ねられ)

男(この男が放つ一撃も、ゆったりとした動きで繰り出されているかの様に見えた)

男「……」

ガンッ!!!

虚『こ……この動きは……ッ!?』

男(右拳を薙ぎ払いでいなし)

ブンッ!!!

男(即座に反応も出来ぬ様に低く右脚を繰り出す)

ガァァァンッ!!!!!

虚『かっ……ッ!?』

男(ただそれの繰り返し。深追いはせずひたすらに相手の行動を読み、捌く)

男(冷静を欠いたのがここまで追い込まれた原因か)

男(だが今、冷静を欠いているのは向こうだ)

男(深みに落ちていくのは目に見えていた)

虚『クソッタレがッ!!ふざけんじゃねぇ!!』

ガンッ!!!!!

男「……」

男(焦りと疲労が丸分かりだ。かくいう俺も疲労を隠せているとは全く言えないが)

男(ただ闇雲にすればいいという訳ではない)

男(それなりの戦い方がある。それに習えばいい)

虚『俺ぁテメェを殺さなきゃいけねぇんだ……』

虚『俺の女も!!俺の血縁も奪った女の姉弟のテメェをよ!!』

お仕事です

男「それならば俺も同じだ」

バッ...

男(虚が再び拳を繰り出す。それをかわし攻撃に転ずる為にはどうすればいいか)

男(姿勢を低く、相手の懐へ潜り込む)

男(これだけの単純な動きだ。戦いの始まりの時に行っていたならば簡単に反撃を受けていた事だろう)

虚『ッ……!!』フラッ...

男(だが今は違う。それだけの動きを読むことも出来ぬ程に疲弊し、頭に血が上っている)

男「何度でも言おう」

男(勢いを殺せず、そのまま前のめりになる虚)

男(隙だらけとなった腹部に向けて俺は)

男「大切な家族を奪った貴様を……殺す」ブンッ

ガシャアアアンッ!!!!!

虚『ーーーーーッ!!!』

男(腹部の装甲が砕け、内部が露わとなる)

男(なるほど。複雑だが強靭そうな部品が噛み合い、身体を形成している)

虚『……』

ドシャアアアンッ!!!!!

男(相手の勢いもあり壮絶な威力と重量となった拳は、重みのある虚構の模造品をそのまま押し倒した)

ガンッ!!!!!

男(更に追い討ちを掛ける様に腹部を踏みつけた)

男(これで最早起き上がる事は叶わぬはずだ)

グググッ...

バキッ...

男「……」

虚『がはっ……はぁ……うがぁ……ッ!』

ぐっすりと睡眠いただきました

男「……」

虚『はぁ……はぁ……』

男(虚の本体があるのは胸部。若干膨らみのあるここを潰せば)

男(終わる……)

虚『クソッタレが……はぁ……ッ』

虚『殺してやる……テメェの臓物引きずりだして……』

男「……」

ジャカッ...

男(俺はふと。腿のホルスターに銃が収められているのを思い出した)

ジャキッ...チャコン

男(スライドを引き、薬室の弾を変える)

男(正常に装填されたのを確認し銃口を)

ガンッ

男(その胸部へと突きつけた)

虚『引きちぎって!!背骨叩き折って』

虚『そんなんじゃ足りねぇ……もっと、もっと苦しませてやる……!!』

男「……」

男(最後はこれほどまでに呆気のないものなのかと)

男(歪み、脆くなった鉄の装甲の先で雑言を吐き続ける虚を透かす様に見ながら)

男(トリガーに指を掛ける)

虚『……チッ』

虚『……これで終わりかよ。結局俺もあいつも……地獄に落ちただけだった』

男「……言いたい事はそれだけか」

虚『スカしやがって……最後の最後まで……クソ野郎だ』

虚『そうだな……あぁ……アレだ』


虚『先に修羅で待ってるぜ』


ズドォンッ!!!!!

男「……」

男「……終わった……か」

男(夕日は殆ど沈みかかっていた)

男(この男との死闘を演じていた時間はほんの少しの間だったが)

男(俺にはその数十倍にも感じられた)

男(……)

ガタン...

男「……はぁー……」

男(片膝を付き、俺は溜め息を吐いた)


不知火『終わりましたか』

男「……あぁ。そうだな……」

ジャコン...

男「……」

不知火『司令?』

男「いや、まだだ……」

レ級「……」

レ級『終わったんだね』

男「……」

男(胸部が潰れ、ボロボロになった次世代兵器を見やる)

男(赤い液体が染み出し、もう誰の声も聞こえる事は無かった)

男「……何故、ワイヤーを解いた」

男「何故この男を助けなかった」

男「……お前の」

男「大切な、人間を」

レ級『……やっと分かったんだ、私』

男「……」

不知火「……誰……ですか?」

男「不知火。無線を一旦切ってくれ」

不知火「司令?それは……」

男「不知火」

不知火「……わかりました」

男「……」

レ級『何で君に執着してたのか。あの時、あんな事を話したのか』

レ級『やっと……やっと。分かった』

男(艤装は。付けていなかった)

男(彼女の後ろに無造作に置かれ、横たわっていた)

レ級『……私は』

レ級『私は……彼を。殺して欲しかったんだ』

レ級『君に』

男「……どういう事だ」

レ級『……』

男「……」

男(少しの、沈黙)

男(俺の背後からは絶え間なく、銃声と爆発音が聞こえていたが)

男(とても、静かだ)

レ級『それに……』

レ級『君に……彼と同じ様になって。欲しくなかった』

レ級『君は……すごく。彼に似てる』

男「……」

男(感情が消えていくと。彼女は言った)

男(だが、今の彼女の表情は)

男(悲しみをたたえた、笑顔だ)

レ級『私は……艦娘だった』

レ級『彼は私の提督で』

レ級『あの施設に。いた』

男「……」

ここまでです

レ級『……私と彼はね。恋人同士だったの』

レ級『結婚する事や、子供を産む事も許されなかった様な所だったけど』

レ級『いや……結婚は……したんだっけ……』

レ級『彼が指輪を買って来てくれて……』

レ級『ケッコンカッコカリだ。なんて言ってね』

男「……」

レ級『……でもね。あそこで私は……死んだの』

男「死んだ……とは」

レ級『正確には、人間で無くなった』

男「……」

レ級『君のお姉さんに。私は殺されたの』

レ級『深海棲艦の情報を書き込まれて、精神が蝕まれた』

レ級『それどころか、私はDNA情報までが書き換えられて……』

レ級『この現実でも』

レ級『深海棲艦になりかけてた』

レ級『そこから彼はおかしくなった』

レ級『前はね?優しかったんだ……』

レ級『君が見た彼とは別人だった』

レ級『……それから、反乱が起こって』

レ級『あの施設にいた人間は解放されたけど……』

レ級『私はもう普通の生活には戻れなかった』

レ級『隠れて過ごすしかなかった』

レ級『それしか生きていく方法がなかった』

レ級『でもそれじゃ終わらなかった』

レ級『彼は私をこうした人間を恨んで、日本という国を恨んだ』

レ級『あそこから逃げていく時にこっそり持ち出した』

レ級『昇華薬を使った』

レ級『……』

レ級『……彼にはね。ある適性があったんだ』

男「……適性。深海棲艦の力をものにする適性か」

男「……あの施設の少佐の様な」

レ級『違うよ』

男「……」

レ級『あんな中途半端な適性じゃない』

レ級『完全な深海棲艦になる適性』

レ級『私の様な作り物の深海棲艦じゃなく』

レ級『最上級の深海棲艦となり得る適性』

レ級『……確か。そういう人の事を……』

レ級『深海棲艦の器』

レ級『なんて呼んでた様な気がする』

男「……器。か」

レ級『彼もね。私が深海棲艦になってから』

レ級『怒りと憎しみでおかしくなっていったけど』

レ級『それ以上に、昇華薬を使ってから』

レ級『もう……どうしようもなくなってたの』

男「……」

レ級『隠れて過ごすのにも限界が来てたけど』

レ級『私はある人にあった』

男「ある人……」

レ級『その人の手引きで私と彼は日本を出た』

レ級『そしてたどり着いた所には……』

レ級『沢山の、深海棲艦がいた』

レ級『後は君も知ってると思う』

レ級『深海棲艦が公に現れて、国を飲み込んで』

レ級『彼の様な適性のある人間を探して』

レ級『君を見つけた』

男「……」

男「深海棲艦の提督となる適性とはつまり」

男「深海棲艦の器だったと」

レ級『そう。だから深海棲艦は君に執着した』

レ級『彼は……復讐の為だったけどね』

レ級『これはね。簡単な事態じゃないよ』

レ級『深海棲艦が現実に現れる様になった理由』

レ級『ここまでの規模になった理由』

レ級『私たち深海棲艦だけじゃ何十年も先になるはずだった事をこれだけ早く出来たか』

男「……やはり誰かの手引き……」

男「それも……どこかの機関。国レベルだな」

レ級『君は頭がいいね』

男「どこだ?」

レ級『それは……言えないよ』

男「……」

レ級『ねぇ……お願いがあるんだ』

コツコツ...

スッ...

男(彼女は次世代兵器の残骸の側まで寄ると、その肌を撫でた)

レ級『私を殺して』

男「……」

レ級『彼は最後まで。私を愛してくれていた』

レ級『私に囚われていた』

レ級『でも。それも終わって……私はもうここにいる意味はない』

レ級『私にまだ……ほんの少しでも人間としての意識があるうちに』

レ級『死にたい』

男「……分かった」

レ級『……ありがとう』

スッ...

男(彼女の話を聞き終えると。俺は立ち上がり手にしていた自動拳銃の銃口を……彼女に向けた)

レ級『……君を救ってくれた彼女を、大切にね』

男「……」

男(ふと、彼女は笑った)

男(その表情は深海棲艦の狂気をたたえたものでも、悲しみの入り混じったものでもなく)

男(人間らしい、笑顔だった)

ズドンッ!!!

グジャッ...

男(引き鉄を引いた)

男(そこにいた"人間"は爆ぜて、肉片となり跡形も無くなった)

男「……」

ジジッ...

男「不知火。終わったぞ」

男「こちらは全て……カタがついた」

男(悲しみでもなく、同情の念でもない)

男(虚しさだけが。俺の心に残っていた)

男(彼女も、虚という存在も)

男(犠牲者だった)

男(俺の殺してきたもののほとんどは全て)

男(犠牲者だったのだ)


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お仕事です。これで前スレ出た三択の言葉の全貌が露わになったかと

そろそろ次スレですね。またよろしくお願いします

観測世界の艦娘達 終焉
観測世界の艦娘達 終焉 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429742159/)

次スレです

不知火『司令、周囲の制圧を完了しました』

男「そうか……」

男(押し寄せる感染者を攻撃し続ける事数十分)

男(辺りは死体の山となっていた)

男(周囲の深海棲艦が消滅した事により、通信も回復しているようだ)

男「……はぁ」

ジャコン...ジャコン...

男(一息つくと、軋む脚を動かし。ある場所へ向かった)

男「……武蔵」

男(かつては姉で、大切な家族だったものが眠っている残骸の山)

男「……」

男(そっと、脆くなった右手で触れる)


武蔵『提督』


男「……!」

男(未だ、死んだ事が実感出来ていない)

男(あれだけの強さを誇った彼女が、死ぬなど)

男(今でも声が聞こえて来そうなほどだ)

男「……今は墓を建てる事も、弔う事も出来ないが」

男「いずれ、酒と煙草でも持っていく」

男「……せめて今は、窮屈だとは思うが」

男「……ゆっくり眠れ」

古鷹『提督』

男「……古鷹」

古鷹『……終わったんでしょうか』

男「……そうだな。これで……」

虚構『まだ終わりじゃないぞ。夢幻』

男(聞こえたのは虚構の声)

男「そちらは」

虚構『なんとかひと段落って所かな』

虚構『次世代兵器と戦っていたって?』

男「あぁ……虚構に似た機体だった」

虚構『こっちも、夢幻に似た機体と交戦した』

虚構『仕留める事は出来なかったが、敵の拠点を見つけた』

霧島『虚構、夢幻。良く聞いて下さい』

霧島『敵の出撃地点を割り出しましたが……』

霧島『姿形が捉えられません』

虚構『姿形が無い……?』

男(姿形が捉えられないとはどういう事なのか)

男(もうすっかり夜を迎えた辺りは暗く、確かに物が見えにくいが)

男(それでも全く見えないという事はない)

霧島『それで色々と……解析や赤外線で分析した結果』

霧島『巨大な母艦が、東京湾中央に停泊している事が確認出来ました』

男「巨大な母艦……?」

虚構『……まさか。光学迷彩か?』

男「光学迷彩……だと」

男(光学迷彩は、電磁メタマテリアルという自然界には存在しない物質を利用し)

男(光を回折させる事によりその光が透過している様に見せかける。という技術を利用した迷彩である)

男(だがその研究は数十年以上前からされているものの、完成には至っていない)

男(莫大な費用も掛かるだろう)

男(何故その未発達の最先端技術を深海棲艦が利用しているのか)

男(一般の人間でも分かるだろう)

虚構『これだ……こいつを俺たちは追っていた』

虚構『次世代兵器に対抗する為の。深海棲艦の最後の切り札』

虚構『何回も何回も深海棲艦を攻撃したが全くと言っていいほど捉える事が出来なかった』

虚構『こいつを破壊か掌握しなければ。また同じような事が繰り返される』

虚構『聞けば、通常の原子力空母などよりもはるかに巨大で』

虚構『多数の兵員、兵器を収容』

虚構『対地、対空兵装。弾道ミサイルまでも搭載』

虚構『あれの武装が全弾使用されればあっという間に街など』

虚構『火の海になってしまう』

男「……動く要塞だな」

霧島『その通りね。でも今ならまだ間に合う』

霧島『その次世代兵器に乗っていた深海棲艦』

霧島『虚と幻が指揮の権限を持っているらしいわ』

霧島『防壁は硬いけど……なんとか深部まで侵入出来そう』

男(まるで機関砲でも撃ち放っているかの様なタイピング音)

男(これを一人でやってのけているとすれば)

男(たった一人で、あの蜂起の裏で動いていたという事実にも頷ける)

霧島『……この母艦の名称が見れたわ』

霧島『対師団用特殊作戦空母』

霧島『コードネーム。深淵』

霧島『兵装も凄まじいわね……』

霧島『Block1B、ファランクスが4基』

霧島『ESSM 短SAM8連装発射機が4基』

霧島『RAM 近SAM21連装発射機が4基』

霧島『AN/SPY-3が1基に単装砲、M2機関銃が多数』

霧島『F/A-18FスーパーホーネットにMi-24ハインド、Mi-14ヘイズ』

霧島『併せて約84機』


霧島『まぁ……つまり』

霧島『相当やばいって事ね』

虚構『化け物だな……』

霧島『それと、ICBMを積んでるという情報はありませんでした。揚陸艦もほとんどが出払っているみたい』

男「……勝算は?」

虚構『……』

ここまでです。基本兵装は米国海軍の原子力空母を元に

正直こんなの来たらやばいですよね相当

虚構『内部には多くの深海棲艦も潜んでいるだろうな』

虚構『だけどこれは……物理的に内部を制圧した後、電子世界からも制圧を掛けなければ止まらない』

虚構『恐らく本体や兵器の操縦は全て電子世界から行われている』

男「二重で攻略しなければいけないのか」

虚構『まず段取りとしては、深淵に突入。搭乗している敵性を制圧』

虚構『ジャミングなど物理的障害を止めた後に』

虚構『電子世界も攻略する』

虚構『全て破壊して回るのもいいが後々残骸の回収や解析はされたくない』

虚構『こちらの手中に収めるのがベストだ』

霧島『ですが、海上からの突入は難しいですよ』

虚構『そこまで速度を出せる訳でもなく、大艦隊を保有している訳でもないからな』

虚構『……やはり、空か』

霧島『空から……ですか』

男「待て、大量の対空兵装に航空部隊がいるのだろう」

男「空からなど突入出来るものなのか」

虚構『……国防軍の航空部隊が残っている』

虚構『大半は敵性の航空機との戦闘中か、撃墜されているか』

虚構『だがまだ無傷の部隊が存在している』

霧島『長野駐屯地の空挺部隊ですね』

男(長野駐屯地といえば……俺が行ったあの場所か)

虚構『作戦協力が出来れば……あるいは』

霧島『ですが国防軍からすれば私たちは所属不明のテロリストに等しい』

霧島『どう交渉するんですか』

虚構『……』

男「……」

古鷹『……提督』

男(それまで押し黙っていた古鷹が口を開く)

古鷹『少佐なら……なんとか出来るんじゃないですか?』

男「……」

霧島『……」

不知火『……残念ですが』

男「少佐は……作戦指揮を降ろされた」

古鷹『そんな……』

男(夢幻出撃の罪を被って……)

ザザッ...ザザッ

『……これで……大丈夫そうだな』

男「……ッ!?」

男(ノイズと共に聞こえてきたのは。本来聞こえるはずのない声)

『どうやら……私の噂をしていた様だが?』

男「……少佐」

不知火『司令!!』

古鷹『え……?今、作戦指揮を降ろされたって』

少佐『あの程度で諦める訳がないだろう』

少佐『私は最後まで付き合うさ、中尉』

お仕事です。次は次スレから始めます

少佐『……』

少佐『空挺部隊に支援要請……掛け合ってはみるが一体どうするつもりだ』

虚構『それと、移動式のダイビングマシン……進水機もあればいい』

少佐『……それなら大型車両が用意出来る』

虚構『空挺部隊を囮に空から虚構、夢幻が降下』

虚構『深淵へ突入し制圧。その後深淵内部、移動式進水機から同時に深淵の電子世界部分へ攻撃』

虚構『システムを掌握する』

少佐『その深淵はどうする気だ』

虚構『光学迷彩は外さない。あたかも深海棲艦が撤退した様に見せかけ、そのまま略奪する』

少佐『……随分と。無謀だな』

男「……」

虚構『……』

おぉ、ミスったミスった。次スレで続きありますのでよろしくお願いします

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