鷹城恭二「Beitになってしばらく経った」 (243)


アイマスsideMのssです。
男性の新人P(元アイドル)がBeitの3人をプロデュースして、ゲーム内の通常営業をなぞる話です。
今回は鷹城恭二が中心の話です。※一部捏造があります

前作:エムマスP「Beitのプロデュースをする事になった」(下北沢編)
エムマスP「Beitのプロデュースをする事になった」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406648675/)


Beit
覚醒前
http://i.imgur.com/3mA938t.png

覚醒後(衣装はファーストライブ時)
http://i.imgur.com/OJyZLFv.png


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418395953


P「おはようございます」ガチャ

山村「Pさん、おはようございます」

P「山村さんは相変わらず早いですね」

山村「そりゃあ事務員ですからね。何度かPさんに先を越されてこっちは形無しなんですから」

P「いやあ、なんかすいません」

山村「…あれ、眼鏡どこにやったかな」

P「だから頭の上についてますって」

山村「Pさんいい加減にして下さいよ。僕だってそろそろ本気で……本当だ」

P「いつもそれやってますよね」

山村「ブルーライト用眼鏡なんでつい忘れちゃうんですよね。この眼鏡軽いし。ほら」ヒョイ

P「本当だ、めっちゃ軽い」

P「……いやいやいやいや」


P(Beitの3人のプロデューサーになって早2ヶ月と少し―…)

P(この前CDデビューもした、オリコンはデイリー9位、週間は12位だった)

P(初めてのシングルにしてはかなり上出来だ。…315プロはなんだかんだお金はあるから、広告比のお陰ではあるけど)

P(…次は10位以内入りたいよなあ。CDの売り上げが厳しい時代とは言え…)

P(でも何より3人とも、皆真面目で一生懸命にアイドルをしてくれてる)

P(それも凄く楽しそうに)

P(3人とも、色々事情はあるらしいけど…楽しく前向きにやってくれているのならそれで良い)

P(僕が昔アイドルやってて事務所潰したって話もちゃんと引かないで聞いてくれたし…)

P(ただ、3人に出会ってからそんなに自分がアイドルだった事に関して、未練は無くなった)

P(それよりも、3人のプロデューサーで居る方がよっぽど楽しくて、やりがいがある)


P「……さ、今日も頑張りますか!」


みのり「おはようございます」ガチャ

P「おはようございますみのりさん。ああ、またお花…いつもありがとうございます」

みのり「おはようプロデューサー。良いよ、好きでやってる事だから」

みのり「それにここ、すっかり俺たちの部屋みたいになってるしね」

P「そうですね…本来ここ事務室ですもんね…」

山村「そうです、本来は僕とプロデューサーしてない職員の部屋です」

P「そう言わないで下さいよ…っていうか315プロって事務員山村さんしか居ないんですか?」

山村「だからいつでもPさんに戻って来て良いですよって言ってるじゃないですか」

P「嫌です!!絶対戻りません!!」

P「みのりさん達は基本ここでくつろいでるけど、他のアイドルってどうしてるんだろ…」

みのり「他のプロデューサーは皆上のオフィス階に居るんだっけ。そしたらきっとアイドルもその部屋に居るんじゃないかい?」

P「みのりさん的にはそれ美味しい所ですよね…すいません」

みのり「良いよ別に、この部屋も気に入ってるから」

みのり「……でも俺も315プロの人間だし、ちょっと覗くくらいなら…」

P「…今度オフィス階に行く時あったら一緒に連れてきますよ」

みのり「! でもそんな邪な気持ちで…うーん…」

P(ぷぷ、悩んでる悩んでる)

P(…っていうかみのりさんだってそのアイドルの内の一人なんだけどなあ…)


恭二「おはよう」ガチャ

P「おはよう恭二。髪濡れてるけど…もしかして事務所のシャワー室使った?」

恭二「上のジムで1時間身体鍛えてから浴びたから今回は合法だろ」

P「いや、まあ良いんだけど…まだ恭二の水道代は確保出来ない…か」

P「僕も仕事もっと取りに行かないと駄目だなあ」

恭二(本当はそんな事無いんだけどな。少なくとも今月末はCD出したし安泰だよ)

みのり「恭二、あんまりプロデューサーを困らせないように」

恭二「だって楽だし、それに…」

みのり「それに?」

恭二「…何でも無いっス」

恭二(家に居るより、ここに居る方が楽しい)


ピエール「おはようございます!」ガチャ

P「ピエールおはよう。カエールも」

ピエール「オハヨウ!ボク、プロデューサーサンニアエテ、ウレシイ!…カエールもボクも、元気!」

みのり「おはようピエール」

恭二「はよ。朝から騒がしいな」

P「それだけ元気って事だよ」

ピエール「プロデューサーさん!じゃん!ボク、日本語の読み書きテキスト、おわった!」

P「前ファンの人から貰ったやつ…終わった!?結構分厚いのに…本当だ」パラパラ

ピエール「ボク、すごい?!かっこいい?!」

P「うん、えらい偉い」

ピエール「やったー!」

恭二「次は文字を綺麗に書く練習した方が良いな」

みのり「最初の頃より大分綺麗になったよ」

恭二「あとはサインだな…」

みのり「ピエルになったままだからね…」

ピエール「? 二人とも、どうかした?」

みのり「ううん、何でもないよ」

恭二(この顔を見るとサイン間違ってるとか言えないんだよな…)


P「よし、三人揃ったね…えっと、今日の写真集の打ち合わせの事なんだけど」

恭二「社長がCD出した勢いでいきなり取って来た仕事か…」

P「そう言わないでさ…社長の動向読めなかったのは謝るから」

P「で、写真のシチュエーションとかでこう言うのが良い、みたいなのがあれば教えて欲しいなって。企画書に入れておくから」

みのり「それって何でも良いのかい?」

P「実現可能そうなやつなら…とか言っても今合成とかで大体なんとかなりますよね」

ピエール「皆と遊ぶ!」

P「遊ぶ?3人共仲良いし結構良いかも…ありがとうピエール」メモメモ

みのり「うーん、そうだなあ…ああ、花と一緒に撮りたいかも」

みのり「前見た写真集の中で、花に囲まれて撮られてるアイドルが居てね。とても素敵だったから」

P「なるほど…みのりさんらしい。それに皆似合いそうですね」メモメモ

P「恭二は何かある?」

恭二「生活感のあるやつ。服脱いだり着たりするの面倒だしな」

P「また淡白な……でもそう言うのって意外とウケが良いんだよなあ…」メモメモ

みのり「洗面台で歯ブラシくわえてたり朝食作ってたりするやつだね」

P「それでカメラに朝食あーん、みたいな…」

恭二「…そんな事するのか?」

P「するよ。愛しいものを見る目で」

ピエール「恭二、またにーってする?」

みのり「するよ。ほら、にーって」

恭二「カメラに向かってはちょっと……」


P「よし、これと僕が選んだのと混ぜて…3人の希望はプッシュしておくか」

ピエール「プロデューサーさん、何選んだ?」

P「アイドルっぽいのをいくつか…具体的に言うとプールか海で水着とかシャワーとか半裸でベッドとか」

恭二「何で脱ぐやつが多いんだよ」

P「アイドルと言ったら水と半裸だからだよ」

みのり「大体どのアイドルもやってるよ。今度持って来ようか?」

恭二「いや、大丈夫っス。出来たらやらない方向で頼む」

P「3人共身体が貧相って事無いからやっても良いと思うけど…」

P「恭二は最近身体鍛えてるし、ピエールは元々武道やってたから体幹良いし、みのりさんも…何気に身体つきしっかりしてますよね」

みのり「そう?」

みのり(荒れてた頃は身体作らないとすぐ倒されちゃったし…)

P「…みのりさん?」

みのり「あ、あはは。昔はもうちょっとだけ筋肉あったよ。歳かな?」


P「…よし、企画書印刷して…」ポチ

ピエール「ホチキスぱちぱち、手伝う!」

P「ありがとうピエール。じゃあこれお願いします」

ピエール「わかった!」

P「そう言えばピエール、学校始まってしばらく経ってると思うけどどう?勉強平気?」

P「っていうか学校終わってから事務所に来ても良いのに…」

ピエール「!!」ビクッ

ピエール「ウ、ウン…平気!」

P(……うん?)

みのり「そう言えばピエール、普段からあまり学校の話しないよね」

恭二「って言うか初めて会った時も真っ昼間から遊園地で風船配ってたよな…?」

P(それってもしかして……)

P「……ピエール。正直に言って欲しいんだけど…」


P「もしかして、学校行ってないんじゃない?」

ピエール「……」


ピエール「……うん…」

P「あー…やっぱりか…」

恭二「今までの感じだと、こっち来てから学校に手続きさえしてないだろ」

ピエール「…ふたり、心配性。ボクが目の届かない所行くの、こわい」

みのり「二人って…いつも一緒に居るSPの人達の事?」

ピエール「ウン…。学校、行ってみたいけど…勉強はふたり、見てくれる。だから、大丈夫」

ピエール「それに、事務所行けば、みんないる。だから、寂しくない!」

P「ピエール…」

みのり「俺には到底考えられない世界だけど…そっか、そう言う事もあるんだ」

恭二「金持ちすぎるって言うのも大変だな」

恭二(まあ、過保護にされてるだけマシだとは思うけど)

P「…そっか、なんか変な事聞いちゃったね」

P「…あ、印刷全部出て来た。ピエール、ホチキスで止めてくれる?」

ピエール「うん!」 パチ

P(そっか、ピエールは学校行ってないのか…)

P(……学校?)


P「さて、カメラマンさん達に挨拶しに行きますか!」

恭二「今日の写真集の会議ってどこなんだ?」

P「えーっと、渋谷にあるスタジオだよ。今回撮ってくれるカメラマンさんのスタジオだって」

P「確かアイドルとかイケメン俳優撮るのが上手い人だよ。あと企画の人とか編集さんとかかな…ちゃんと挨拶してね」

ピエール「笑顔であいさつ!」

P「そうそう。笑顔が大事だよ」

みのり「じゃあ渋谷までだったら…国道じゃなくて、この先の信号曲がる方が早いと思うよ」

P「…みのりさん、運転変わります?」

みのり「プロデューサーの運転の方が安心だよ」

P「そんなハンドル握ると性格変わっちゃうみたいな…」

P(…とりあえず、ラジオつけるか)ピッ

『~~♪』

ピエール「! ボクたちの歌!デビューのうた!」

恭二「…本当に流れてるな」

みのり「こうやって、ラジオで流れると新鮮だね」

P「もうラストのサビか…もうちょっと早く付けておけば良かった」

恭二「あんたはいつでも聞けるだろ」

P「いつでも聞いてるよ?通勤中とか」

みのり「本当かい?」

恭二「恥ずかしい奴だな……」

P「プロデューサーですから!」

ピエール「プロデューサーさんも、歌って!」

P「ええ?僕ひとりじゃなあ~…ピエールも歌う?」

ピエール「うたう!」


 渋谷

 
P「…で、例の如く早く着きました、と。本当凄いですねみのりさんのその特技」

みのり「ふふ、ありがと」

P「時間余ったから手土産買うか…渋谷だったら東急ビルの地下とかに何かあるけど…」

恭二「渋谷って確か西村フルーツパーラーあったよな?」

P「ん?ああ、多分駅出て遠くない所にあるよ」

恭二「あそこのゼリー、美味かったぜ。確か6個入り」

P「そっか、今日はあっちの人4人くらいだし丁度良いのかな…余るくらいの方が」

ピエール「ゼリー食べられる?」

P「僕たちの分も買おうか?」

ピエール「やったー!」

みのり「ピエールはおねだりが上手だね」

P「一種の才能ですねこれは」

P「…それにしても恭二って随分ハイソなお店知ってるね?僕二十歳の時全然存在知らなかったけど」

恭二「あー、昔実家でよく…」

恭二「いや、なんでもない。とっとと行こうぜ」

P(…恭二から実家の話、初めて聞いたかも)



「2つで4320円になります」

P「!? じゃ、じゃあ5000円からで……」

「かしこまりました。680円のお返しになります。ありがとうございました」


 ウィーン


P「……ゼリー12個で4300円って高くない?」

恭二「財布大丈夫か?」

P「手土産の分は経費で落とすから大丈夫だけど……恭二って実は坊ちゃんなの?」

恭二「……そうでもない」

みのり「でもきっと美味しいゼリーだよ」

P「そうですね。自分達の分もあるんだし…これは帰ったら事務室の冷蔵庫入れておくから」

恭二「ひとつ360円のゼリーだからな、丁寧に扱えよ」

P「知りたくない内容の時に特技披露しないでよ!」

ピエール「スタジオで食べるの、だめ?」

P「うーん、僕達は話を聞く側だから帰るまで我慢しよっか」

ピエール「はあい」

P「ま、丁度スタジオもこの辺だし高いのも良しとするか…このまま道なりに進んで、ゲーセンの近くだって」


P「こんにちは。今回はよろしくお願いします。315プロのBeitです。私プロデューサーのPと申します」

みのり「Beitの渡辺みのりです。よろしくお願いします」

恭二「鷹城恭二です。よろしくお願いします」

ピエール「ボク、ピエール。初めまして!」

「初めまして、齋藤社長からお話は聞いていますよ。CDデビューおめでとうございます」

P「あ、ありがとうございます!あとこれ、良かったら皆さんで食べて下さい」

「おや、ゼリー…まだまだ暑いですもんね。有り難く頂きます」


P「こちら企画書になります。値段は年齢層を考えて、一般的なアイドルと同等、あるいは少し安いくらいが良いかと…2500円以内が良いかなと思ってるんですが」

「デビューしたてですからね、少し低額くらいの方が食いつきは良いかもしれません。となると本のサイズを…」

みのり「最近A4サイズより小さい写真集も増えてますよね。写真集って言うよりフォトブックみたいだけど」

恭二「初めてだしそう言うのもありかもしれないな」

P「寧ろその方が良いかも。そしたら1冊2500円以内には収まりそう…」

「サイズをひとつ落としてB5だと2200円前後になりますかねー」


「あ、このページがそちらの希望する撮影のシチュエーションですか?」

P「はい、そうですね…特にこの3つは3人の希望なのでもしよろしければ…」

「そうですね、割とどれも王道なので組み込めそうかな、と思いますが…。シチュエーションは10前後欲しいですし」

「花とのショットはギャップ狙いでも行けそうですね。蜷川実花っぽく黒と鮮やかな画面にして」

みのり「ああ、そう言うのも良いですね」

P「あ、あとここには書いてないんですけど…もうひとつあって」

P「…学校をテーマに撮影って可能ですか?」

ピエール「!!」

「学校?」

P「Beitは学生のファンが多いみたいですし、身近かなって思ったんですけど…」

P(って言うのは建前で、ピエールが学校行きたがってたからなんだけど…)

「うーん、そうですね。そう言うコスプレ要素的なものも楽しいかもしれないですね」

「ピエールくんは現役だけど…二人は抵抗ない?」

恭二「あ、ああ…大丈夫です」

みのり「俺は先生の方が良いかもしれません」

「いや、渡辺さんもいけると思いますけどね、生徒」

みのり「そんな、あはは…」

みのり(正直そんな危ない橋渡りたくないよ……)


「じゃあその辺のこちらのテーマと重ね合わせて、後日またご確認お願いします」

「ああ、あとやっぱりアイドルですし脱ぐと思うのでアイドルの皆さんは今の内にある程度鍛えておいて下さい」

恭二「!」

みのり「は、はい。わかりました」

ピエール「ぬぎぬぎする?身体鍛える?」

P「ピエールは心配ないよ…まあ、他の二人も別に心配しなくて良いけど」

「じゃあ、このままこちらの希望も述べさせて頂きますと―…」


P「ふー…何とか無事終わった。気さくな人で良かった。さ、ゼリーがドロドロになる前に帰ろう」

恭二「しばらくジム通いはやめられなさそうだな」

みのり「俺もジム行った方が良いかな」

恭二「いや、みのりさんはこれ以上やらなくて良いんじゃないスかね…俺が貧相に見える」

みのり「そんな事ないよ、恭二は細くてもスタイル良いんだから」


ピエール「…プロデューサーさん」

P「うん?どうしたピエール」

ピエール「ボク、学校行けない。だから学校、テーマにした?」

P「あはは、バレてたか」

ピエール「嬉しい。ありがとう」

P「まだ案が通るか分かんないけどさ、通ればちょっと学校気分味わえるかもってくらいだし」

ピエール「そしたら学校、恭二もみのりも一緒。きっと、凄くたのしい!」

みのり「俺は生徒役は厳しそうだから先生が良いけど」

恭二「俺も完全にコスプレだろ…仮にみのりさんが先生だったとして…」

恭二(漢字が読めない可能性があるよな…)

みのり「どうかした?」

恭二「…みのりさんは校務員のおじさんが似合ってるんじゃないスか」

みのり「えっ……随分ニッチな所にいくね?」


今回も大体こんな感じで行きますよ
ついでに作品の時間軸は下北沢営業後でファーストライブイベントをこなしたイメージです
前回ss書いてから5ヶ月くらい経ってるけどこのss自体は前回の話から全然時間が経ってないので9月の中頃からスタートです
今と季節真逆な感じです

おお 乙!
前も読んでたよー
今回も楽しみにしてる


>>18
とても嬉しいサンクス
前回より1の妄想がすごい感じだけどこれからも頑張る


 数日後 事務室


みのり「おはよう」ガチャ

恭二「おはざす」

P「おはよう…あれ、二人とも早いね」

みのり「上のジムで身体動かしてたんだ」

恭二「みのりさんはやらなくても十分だろ」

みのり「そんな事ないよ、恭二みたいに若い訳じゃないんだから」

P「それでシャワーもばっちり、と?」

恭二「ここで仕事するようになってからかなり良い生活させてもらってる」

P「事務所の施設でね!!」

P「こうなったら恭二を高級マンションの一角に住まわせる程度には仕事入れて稼がせてやる…」

恭二「悪いけど貯金するつもりだからそれはないな」

P「恭二ってそう言う所慎ましやかだよね…」


恭二「でもプロデューサーもみのりさんとジム行くと面白いかもな」

みのり「俺面白い事何もしてないけど」

恭二「軽々とバーベル上げてましたよね。涼しげな顔で」

P「その顔で…?意外とがっしりしてるなとは思ってたけど…その顔で…?」

みのり「顔は関係ないよ…でもこれもひとつのギャップ萌えってやつになる?」

恭二「アイドルがバーベル押してるの見てときめく女が居るのかはちょっと」

P(みのりさんの事、本気で怒らせたら怖そうだな…)


ピエール「おはよう!賢と会った!」ガチャ

山村「おはようございます。…貴方達、またこんな早く来て…」

P「おはようございます。出社前だから別に良いじゃないですか」

山村「もう完璧にBeitの3人も居座ってますね…楽しいから良いですけど」

ピエール「恭二!べんきょう、おしえて!」

恭二「分かった、そこのソファで待ってろ」

みのり「恭二、ピエールに勉強教えてるんだね」

恭二「学校行ってなくてもある程度勉強はするべきだろ。…っつっても殆ど日本語の練習っスよ」

P「恭二頭良いもんなあ」

恭二「でもピエール、日本語以外は殆ど出来てる。日本語以外はいつものSPが教えてるんだろ」

ピエール「恭二!はやくー!」

恭二「わかった、今行く」

みのり「恭二、凄いね。俺は勉強得意じゃないから尊敬するよ」

P「僕も大学行って勉強らしい勉強は全然覚えてないですよ」

みのり「そういうもの?」

P「大学生ってそういうもんです。お恥ずかしながら…」

P(…さて、今日のメールチェック)カタカタ


P「…あ、写真集のシチュエーション決まったみたい」

みのり「本当かい?見せて欲しいな」

P「良いですよ。3人の希望は大体通ってるな…撮影スケジュールも載ってるし印刷して渡しますね」

みのり「二人の事も呼んで来るよ」

P「お願いします」

P(…お、やった!学校のシチュエーションも採用されてる!)



P「…で、これが撮影場所とスケジュール。スタジオ撮影は朝から晩までで一気に撮る事になってる…撮影期間は全部で2週間……激務だ」

みのり「2週間で全部撮り終わるのかな…」

恭二「発売が11月の下旬…大丈夫か?」

P「僕も頑張るので、一緒に頑張りましょう…」

ピエール「でも、撮影、色んな服着られる!ボク楽しみ!」

P「ピエールのそう言う所、本当良いと思うよ」

ピエール「えへへ」

P「今のこの勢いのまま写真集出したいからね。無理しない程度に頑張ろう!」


ピエール「プロデューサーさん、学校の撮影、最後?」

P「そうみたい。多分普通のスタジオにそれっぽい場所がないから別の所なんだろうね」

みのり「あ…良かった、俺は生徒じゃないみたいだ」

恭二「くそっ…俺だけコスプレかよ…」

ピエール「コスプレ?」

P「服装で非日常を楽しむ事だよ」

ピエール「恭二、コスプレ、きっと楽しい。着ぐるみといっしょ」

恭二「現役男子中高生と同じ歳の奴に慰められても全然慰めにならないだろ…俺には着ぐるみ趣味無いし」

恭二「まあ、ピエールの為だしな…コスプレのひとつやふたつ…」

みのり「恭二もノリ気になったね」

P「とりあえず最初の撮影は都内の公園か…ピエールの案の皆で遊びたいってやつだ。日にちは一週間後…」

P「……集合午前5時!?」


ピエール「午前、…朝?」

みのり「あはは…そうだね…人が居ない内に撮りたいんだろうけど」

恭二「本気かよ…いや、人が居る中で撮るよりはマシか…」

P「…これ前日は早く帰すから、協力して」

P「僕はここに泊まった方が早い気がするな…皆も直接の方が早い?」

ピエール「ボク、直接いくのが早い。いつものふたり、車運転する」

P「いつもの二人…ああ、ピエールのSPか…SPって大変だなあ…。みのりさんは?」

みのり「うーん、俺も自分で車使った方が早いかもしれないな…近くに駐車場ってある?」

P「えーっと、周辺の地図……ばっちりありますよ。じゃあ二人は直接で…」

恭二「プロデューサー、あの…俺の近所の電車、まだその時間動いてない」

P「あー…じゃあ拾った方が良いか…恭二は免許持ってないもんなあ」

恭二「悪いな」

P「良いよ。あとピエールはお家の人が居るから良いとして…二人にはモーニングコールするよ」

みのり「助かるよ」

恭二「正直自分で起きられる自信がない」

P「なるべく自分で起きる努力はしようよ!」


P「そうだ。みのりさん、前テレビ出たいって言ってましたよね?」

みのり「ああ、うん。確かに言ってたけど」

P「Jupiterの天ヶ瀬冬馬くんとの深夜のバラエティ番組っていけそうですか?もちろん収録で」

みのり「本当かい!?」ガタッ

P(うわ、凄い勢い!)

恭二「そんな仕事あるのか?」

ピエール「冬馬、テレビでよく見る!」

P「えっと、Jupiterが最近深夜バラエティ番組やってて、3人がそれぞれ持ち込み企画をするって番組なんですけど」

P「それに天ヶ瀬くんが新人アイドルにアイドルの悩みを聞く、みたいな企画をやりたがってるって話聞いて」

P「もしかしたらBeit、それ取れないかな、と…」

みのり「やりたい!やらせてもらえるなら凄くやりたい!」

みのり「……あっごめん、自分もアイドルなのに、こんなのおかしいね」

P「そんなに目輝かせなくても、会おうと思えば会えるじゃないですか…同じ315プロなんだし」

みのり「い、いや…そんな恐れ多いよ……」

ピエール「315プロ、ボクたち以外のアイドル、どこ居る?」

恭二「上のオフィス階かジムに居るみたいだな。今日もボクシングやってる奴居たし。あいつはよく見かける」

P「話しかけたりしないの?」

恭二「必要ないからな。多分お互い話しかける方じゃない」

ピエール「圭と麗…あと四季、たまに会う…けど他の皆、あまり喋らない」

P「Jupiterなんか特に忙しいみたいだしなあ。事務所に寄る暇なんてないのかも…」


P「じゃあとりあえず、みのりさんもやりたがってるしJupiterのプロデューサーさんと話してみるか…」

みのり「もし本当に仕事する事になったら……凄い緊張するね」

恭二(それはみのりさんだけだろ…)

ピエール「みのり、楽しそう」

みのり「そうかな…あ、そう言うの顔に出さないようにしないと失礼だよね!あははっ」

P(みのりさんでもはしゃぐんだなあ…)

P「一応同じアイドルですからね、ナメられないようにしゃんとしましょう」

みのり「う、うん。俺だってBeitの、アイドルの一人だもんね」

恭二「緊張してトチったらこっちで何とかするんで」

ピエール「みのり、のびのびお仕事する!」

みのり「あ、ありがとう皆…でも俺ってそんなに頼りないかな…」

P(こう言うのってメールで良いのかな?同じ社内だし…直接連絡した方が良いか)



P(かと言って315プロを代表するアイドルのプロデューサーが急に電話取れるのかと言われると…)prrr……

「はいもしもし。こちらJupiterですー」

P(う、うわ!出た!)

P「あ、どうも315プロのBeitのPと申します。Jupiterの深夜バラエティのゲスト出演の件なんですが—…」

「あ!もしかして出てくれる気になりました!?いや〜Beitって最近デビューしたばっかりのフレッシュなアイドルでしょ!?この企画にぴったりなんで是非!」

P「えっ本当ですか!?でもそんなあっさり…」

「良いの良いの!じゃあ軽い打ち合わせしましょうか。こっちは空いてるのが6日後の夜なんですけど、大丈夫ですか?」

P「あ、はい!大丈夫です。僕だけで良いんですよね」

P(その日は写真集の撮影の前日だからアイドルだけには絶対負担はかけられない……!!)

「大丈夫ですよー、じゃあ金曜日の夜21時からよろしくおねがいしますー」

P「お、おねがいします!」 プッ ツー ツー…


P「……出演、決まったっぽい」

みのり「え、ええっ!?ど、どうしよう。俺何したら良いかな」

恭二「…とりあえず落ち着いたらいいんじゃないスか?」

ピエール「みのり、深呼吸!すーはーすーはー」

みのり「すー…はー……プロデューサー、嘘じゃないよね……?」

P「嘘じゃないですよ!って言うかみのりさんの今の顔夢見る乙女みたいになってますよ」

みのり「当たり前だよ!憧れのアイドルだよ!?」

恭二(それは当たり前の事なのか……!?)

ピエール「すごい、本気のみのり……アツい……」


 数日後 会議室


P(さて、と…Jupiterのプロデューサーと会議する事になったけど)

P(…何で天ヶ瀬くんが居るんだ?)

P「初めまして。BeitのプロデューサーのPと言います。よろしくお願いします」

ジュピターP「こちらこそ、よろしくお願いします」

P「あの…明日撮影が早くて、アイドル全員帰してしまったんですけど…やっぱり連れて来た方が良かったですかね?」

ジュピターP「良いですよ。冬馬がついてきただけなんで」

冬馬「何だ、そっちのアイドル居ねえのかよ。顔合わせくらいした方が良いと思ったのに」

ジュピターP「そう言うな、あっちにだって都合があるんだから」

P「申し訳ありません。でも多分、きっと収録で初めて会った方が面白いですよ」

冬馬「どう言う事だ?」

P「うーん、会えば分かると思います」

冬馬(…マジでどう言う事だ?)


天ヶ瀬冬馬
http://i.imgur.com/Tk1HrHv.jpg



ジュピターP「それで、Beitは315プロの一番新しく話題性のあるグループですよ、と…」

P「はい、正直同じ315プロの先輩アイドルとして、胸を借りられればな、と言う気持ちなんですけど」

冬馬「そんなんで大丈夫なのかよ」

P「テレビ出演は初めてなので…はは」

ジュピターP「普段いじられっぱなしの冬馬が先輩面出来る良い機会だけど、どうだ?不満か?」

冬馬「なっ…そう言う事は言わなくて良いんだよッ!」

P「でも、Jupiterって961プロの時と違って大分親しみやすい部分増えましたよ。僕は良いと思うな、そう言うの」

P「もちろん961プロの時もかっこよかった。男のアイドルって凄いなって思いました」

冬馬「…そうかよ」

P(…まあ、僕はそうなれなかったけど)


冬馬「分かった。そのなんだ…Beitだっけか。良いぜ、やってやるよ。元々俺が選んだ企画だしな」

P「本当ですか!ありがとうございます」

ジュピターP「やったな冬馬!これでようやく先輩風吹かせられるぞ!」

冬馬「アンタはいちいちうるせぇんだよ!!」

ジュピターP「ほら、315プロの後輩ユニットが結構年上が多かったし、現在既に他番組で活躍してるユニットが多かったので…」

ジュピターP「315プロのまるっきり新人!って後輩はJupiterにとっても初めてなんですよ」

P「あ…そうだったんですか……」

ジュピターP「だからBeitにはぴったりだと思います、この企画。先程仰った通り、CDデビューしたばかりで話題性もありますしね」

冬馬「俺の企画でみっともない事だけはすんなよ、とだけ言っといてくれ」

P「分かりました。じゃあ話をすすめさせて頂きますと…」


P(はー…終わった。まさか企画はあっちがほぼ用意してるとは思わなかった…)

P(やっぱり売れっこアイドルはプロデューサーも敏腕だなあ)

P(僕もいつかあんな風に……いつになるか分かんないけど)

P(そう言えば天ヶ瀬くん、結構あの後も真面目に企画について話してたな…)

P(結構真面目なんだ。あの子)

冬馬「……おい」

P「ああ、天ヶ瀬くん。今回は企画受けてくれてありがとう。Beitがお世話になります」

冬馬「当然、だぜ!俺のやる企画だし、自分で見とかないとな」

P「Jupiterの他の二人は違う企画するんですよね」

冬馬「まあな。俺の企画が一番良かったって思われるくらいにするつもりだ」

P(それにしても…961プロの時に比べて、随分雰囲気が丸くなったというか…TVでしか見た事ないけど)

P「何か、あれだね。天ヶ瀬くんってテレビで見るより随分まるっこいですね」

冬馬「どう言う意味だよ、別にあの頃と比べて太ってねえよ!」

P「ああ、そうじゃなくて、雰囲気がいいって事」

冬馬「…そうかよ」

P「否定はしないんですね」

冬馬「まあな、ここに来て色々…環境とか、変わっちまったし」

P「良い人そうでしたよ、Jupiterのプロデューサーさん」

冬馬「別にあいつがって訳じゃねえよ!!」

P(図星か…この子なんだろう…小学5年生の甥を思い出すな…)

P「とにかく、新しいJupiterの天ヶ瀬くんとの仕事、楽しみにしてます」

P「Beitに、凄く仕事楽しみにしてる人がいるから」

冬馬「お、おう?」

P「後輩の期待、裏切らないでかっこよく決めてくれると嬉しいです」

冬馬「そっちこそ、先輩アイドルの期待裏切るんじゃねーぞ!ハードル上がってんだからな!」

P「はは、それではまた」


P(天ヶ瀬くん、面白い子だなあ)

P(顔合わせしても良かったんだけど、どちらかと言うとみのりさんが天ヶ瀬くんに緊張してるのを収録で見せたいよな…)

P(もうちょっと我慢してもらおう)


ジュピターP「お、冬馬何やってんだ、行くぞー」

冬馬「あ、ああ」

ジュピターP「Beitのプロデューサーさんと話してたのか?」

冬馬「まあな」

冬馬「……」

ジュピターP「いやあ、仕事がやりやすそうな人で良かった……って冬馬、どうかしたか?」

冬馬「いや、なんでもねえよ」

ジュピターP「あっそ。じゃあ戻ろう、翔太と北斗が待ってる」

冬馬(…あのプロデューサーの顔、どこかで…どこだ?)


 事務室


P「お疲れ様でーす。……で、明日は朝の5時から撮影会…」

P「冷蔵庫に飯は入れたから、仕事して―…シャワー浴びて寝れば良いか。ジャージも着替えも持って来たし…」

P「目覚ましは4時…いや3時半にかけないと間に合わないか…?」

山村「どうしたんですかPさん、さっきからぶつぶつ言って」

P「いや、明日現地に朝の5時集合なんで泊まるんですけど…」

山村「ああ…なるほど。Pさん職場に泊まらざるをえなくなってますね…」

P「まだ2回じゃないですか。大丈夫ですよ、普段ちゃんと帰って寝てますし」

山村「これから帰れない回数がどんどん増えますね」

P「下手な予言はやめてください!!」

山村「じゃあお先に失礼します。…ちゃんと起きて下さいね?」

P「分かってますよ!あ、あと山村さん、眼鏡おでこに付けっぱなしですよ」

山村「…もうこれファッションとして成立しませんかね?」

P「山村さんが良いならそれで良いですよ。おやすみなさい」 バタン

P「さて、もう10時か…天ヶ瀬くんの持ち込み企画は任せてくれ!って言われたから、確認のメール来るまでやる事ないんだよなあ…」

P「…仕事探すか…いや、やっぱり寝るか…」ボスン

P「あー…やばい、ここのソファやっぱり気持ち良い…zzz」


ppppp………


P「……んあ?」パチ

P「…ああ、そっか、今日は事務所に泊まりだった…えっと今…」

P「4時……やばいちょっと寝坊した。恭二とみのりさんに電話しないと」prrr……

P「…あ、もしもし、みのりさんですか?おはようございます」

みのり『おはようプロデューサー、まだ眠そうだね』

P「ちょっと寝坊しました…恭二拾ってすぐ行きますんで…はい、よろしくお願いします」ピッ

P「…みのりさんは正直、問題無さそうなんだよなあ…よし、次は恭二」prrrrr……prrrrr…

P「……」prrrrr……prrrrr…

P「……出ない!!」prrrrr……prrrrr…

恭二『……はい』

P「あっ出た!起きた!?今から行くから絶対そのまま寝るなよ!!」

恭二『…わかった、鍵あけとくから、あとはたのんだ…zzz』

P「恭二!おい!頼むから頑張って起きて!おいっ……切れた…」

P「ああ~~…もう眠気吹っ飛んだよ…早く行こう」

P「……っとと、バイタルゼリー持って行こう。恭二の分も」


 住宅街

P「…恭二の家、ここかな?貰った住所はここで……うん、合ってる」

P(慎ましやかな生活を送ってるとは思ってたけど…本気で慎ましやかだな)

P「…恭二?おーい、迎えに来たんだけど…起きてる?」ピンポーン

P「…恭二ー!おーい!!」ピンポーン

「朝から騒いでんじゃねえよ!うるせえな!!」

P「ヒッ…すいません!」

P(上の階から…?すごい怖い…早く出てくれ恭二~!!)

P「……あ、あれ…鍵開いてる…」ガチャ

P「おじゃましまーす…恭二、いますかー…?」

P「……返事がない…勝手に上がるけど悪く思うなよ…」コツ

P(わっやばい何か蹴った!)

P(……ん?なんだこれ…鷹城グループの冊子?会報誌みたいな?)

P(鷹城グループって確かこう…色んな事やってる会社だよね。最近はレコード会社にも手出してるんだっけ…)

P(何で恭二がこんなもの持ってんだ?)

P「おーい、恭二…どこに……」


P「し、死んでる…!!」


P「…じゃなくて、起きろって恭二!撮影あるんだから!」

恭二「……ああ、プロデューサー…?」

P「そうだよ、プロデューサーだよ!撮影なんだから早く起きてよ!」

P「とりあえずこれ、飲んで…」

恭二「10秒チャージ、2時間キープ……」ヂュー

P「イエス!バイタルゼリー!!」


 車内


恭二「…あれ、飲むと目覚めるな」

P「よく分かんないけど、体力底上げされてるみたいな気分にはなるね…」

P「とりあえず起きたみたいで良かった。ベルト締めて」

恭二「おう」

P「30分くらいで着くから寝てて良いよ」

恭二「あれ飲まされたらもう眠れないだろ」

P「確かに」

恭二「ピエールとみのりさんは大丈夫か?」

P「みのりさんは僕より早く起きてたみたい。凄いねあの人」

P「ピエールはSPの二人が居るから大丈夫だとは思うけど…ごめん恭二、僕の携帯から連絡してもらって良い?」

恭二「分かった。……あ、もしもしピエールか?眠そうだな、俺は大丈夫だ。分かった、じゃあ後でな」ピッ

P「どうだった?ちゃんと起きてたみたいだけど」

恭二「眠そうだった」

P「そりゃそうだ」


P(あ、やばい…さっきの鷹城グループの会報誌、持ったままだ…部屋でバイタルゼリーあげる時に慌てて一緒に鞄にしまったんだった)

P「ごめん、さっき恭二の部屋の中から冊子持って来ちゃったから返すよ。鞄の中に入ってる」

恭二「ああ分かった。……!」

P「恭二、そんなん持ってまだどっかに就職するつもり?」

恭二「…いや……そうじゃない」

P「今更アイドルやめますって言ってももう無理だからな!まあ、恭二のやりたい事が変わるならそれも考えるけどさ…」

恭二「分かってるよ。途中で投げ出したりしない」

恭二「少なくともしばらくはアイドルだから安心してくれ」

P「はは、頼むよ」

恭二「…プロデューサー、これの中身見たか?」

P「別に興味なかったし見てないけど…一応恭二のものだし悪いじゃん」



恭二(興味ない、か…)

恭二「あんた、良いキャラしてるよ」

P「大丈夫?恭二まだ眠いんじゃない?」

恭二「眠くないって言ってるだろ」

恭二「俺も要らないもんだから、その会報誌捨てておいてくれ」

P「? 良いよ、分かった。捨てておく」

恭二「……あんたは本当、俺の事を根掘り葉掘り聞かないんだな」

P「ん?まあね」

恭二「そう言う所、安心する」

P(…聞かれたくない気持ちは分かるしなあ)


 都内 撮影場所の公園


P「おはようございます!BeitのプロデューサーのPと申します。本日はよろしくお願いします!」

恭二「鷹城恭二です。よろしくおねがします」

「おはようございます」「宜しくお願いしますー」

「鷹城くん現場入りましたー」「三脚立てといてー」

みのり「二人とも、おはよう」

P「おはようございますみのりさん。もう着替えてる」

恭二「いつもと雰囲気違うんスね」

みのり「そりゃあ写真集だから服も選んでもらってるし…恭二は…意外と元気だね」

恭二「プロデューサーに叩き起こされたからな」

P「恭二も着替えておいで。ピエールは…まだ来てないか」

ピエール「……オハヨウ…」

P「噂をすれば…って、ピエール眠そうだなあ。大丈夫?」

ピエール「だいじょうぶ…」

みのり「撮影始まれば元気になりそうな気がするけど…恭二があっちで着替えてるから行っておいで」

ピエール「ボク、きがえる…ねむい…」

P「あはは、頑張れがんばれ」


ピエール「恭二、いくよ!」

恭二「何で俺にばっかりスマッシュ打つんだよ」

みのり「恭二、行くよ!」

恭二「みのりさんもかよ」

恭二「よし、次はみのりさんに当てるぞピエール」

ピエール「みのり!スマッシュ!」

みのり「当てるのはやめてよ」

P(…で、撮影が始まれば元気、と…。大変素直で宜しい)

「3人共、調子良いですね」

P「そうみたいですね。早朝の撮影なんて初めてですけど」

「でも元気そうで良かったです。Pさんは少し…眠そうですね」

P「あはは、お恥ずかしい…」

「しっかりしてくださいよー。全然話変わるんですけど、そう言えば恭二くんって…」

P「? 恭二がどうかしました?」



「鷹城グループの社長の次男って本当ですか?」

P「……え?」


「いや、ただの噂ですけど、Pさんならご存知かなーって」

P「苗字が一緒なだけじゃないですか?鷹城なんて苗字珍しいですけど…」

「そうですよね。大企業の跡取り息子がアイドルなんて…」

P「やだなあ、そうですよー」

P(ああ、でも……恭二、鷹城グループの会報誌持ってた…)

P(あれってもしかして社員向けの冊子じゃないのか…?)

「どうかされました?」

P「ああ、いえ!早朝の仕事が初めてなものでちょっとぼーっと…」

「もー、しっかりしてくださいよー」


P(……恭二は何で、あれを持ってたんだ?)


「お疲れさまでした」「撮影完了ですー」「次は明後日スタジオで、よろしくお願いしますー」

P「ありがとうございました!次回もよろしくお願いします」

P「…3人とも、お疲れ様。まだ大分早い時間だけど」

みのり「でも朝動くとすっきりするね」

ピエール「もうねむくない!げんき!」

恭二「俺は帰って寝たい」

P「バイタルゼリーの効果切れたか…でも僕も眠いや…仕事あるけど」

P「ああそうだ、天ヶ瀬くんとのバラエティ番組、決まりそうだよ」

みのり「! 嬉しい…けど、アイドルとして分別を持たなくちゃいけないよね」

恭二「みのりさん、顔に出てるんスけど」

ピエール「みのり、嬉しそう!」

みのり「絶対本番までに顔に出るのは何とかするよ…」

P「良い仕事になりそうで嬉しいです。じゃあとりあえず、事務所行って昼飯食べようかな…」

P「3人は撮影で弁当食べてたけど僕は食べてないからね!!」

みのり「恭二、また"温めますか?"って言ってたね」

P「ああ、だから弁当持ってた時皆笑ってたのか」

恭二「両手で弁当持つとついな…いい加減忘れて欲しいんスけど」

ピエール「恭二の手、あったかい?」

恭二「普通だよフツウ」


 夜 事務室

山村「お疲れさまです。お先失礼しますね」バタン

P「はーい、お疲れさまでしたー」

P「あー…疲れた。朝早かったから凄い眠い…」

P「皆は午前中で帰しちゃったしな…皆も眠いだろうし」

P「僕もそろそろ帰…あ」

P(恭二の部屋から持って来た鷹城グループの会報誌…まだ捨ててないや)

P「…………」

P("そう言えば恭二くんって…鷹城グループの社長の次男って本当ですか?"…ねえ…)

P(いやでもそんなはずは…本人は至って慎ましやかな生活してる訳だし)

P「これ見たら、何か分かる…?……いやいやいやそんな」

P(僕を信頼してくれた恭二を裏切る事になる)

P(大体昔の恭二に何があろうと恭二が自分から話してくれるまでは……)

P(でも恭二、あんまり自分の家が好きそうじゃなかった)

P(そう言う所をケアするのはプロデューサーの仕事ではないのかな……干渉し過ぎか……)

P「…ごめん恭二っ!!」バサッ


P(上半期の売り上げの話とか細かく書いてある…新しく取り込んだ企業の名前も細かく…社員の名前も入ってる)

P(これやっぱり、社員向けの会報誌だ……ん?)

P「この社長、恭二と同じ目の色……ん?こっちは…副社長?随分若い…」

P(やっぱ恭二と同じオッドアイだ。恭二とよく似てる。苗字は…やっぱり鷹城……)

P(と言う事はこれって――)


P「あー……見るんじゃなかった……」


 数日後 スタジオ


「鷹城くん、次こっちの衣装お願いします」

恭二「はい、着替えてきます…」

P「恭二、よぼよぼしてるね…」

みのり「スタイル良いからね。色々着せられてるみたい」

ピエール「恭二、沢山服着る。全部似合う」

P「羨ましいなあ…」

「ピエールくんこっち準備出来たのでお願いしまーす」

ピエール「はーい!」

P「………」


恭二「プロデューサー、ちょっと良いか?」

P「ヘアッ!?う、うん」

恭二「…大丈夫か?ウルトラマンみたいになってるぞ」

P「い、いや…急に出て来たから…えっと何?」

恭二「さっきのとこっちの服、どっちが良いかと思って。あのスタイリストさんどれも良いって埒があかない」

P「そうだな……」チラ

恭二「……」

P「……何?」

恭二「そっちこそ何だよ、チラチラこっち見て」

P「そんな事してないよ!えっと、僕は恭二が今着てる方が良いと思う。確かに両方似合うけど…もう着替えたくないでしょ?」

恭二「まあな。これでプロデューサーがこっちが良いって言った、って正当な理由が出来た。ありがとう」

P「うん、いってらっしゃい」


P(恭二はあれから僕が、鷹城グループの会報誌を捨てたもんだとばっかり思ってる)

P(恭二の昔の事、聞かないから救われてるって言われたのに。俺だってその気持ちは痛いくらい分かるのに)

P(これって裏切り、だよなあ…)

P(なんというか、後ろめたさが勝ってまともな返事が……)

P「……」

みのり「プロデューサー、恭二と何かあった?」

P「へっ!?え、い、いや何でもないですよ!!あはは」

みのり「…どちらかと言うと、プロデューサーだけが何か気にしてる感じ、かな?」

P(!!)

みのり「ずっとプロデューサーだけおかしかったから、少し気になって」

P「……ああー…」

みのり「図星?」

P「ハイ…」


P「…僕、恭二の信用を裏切るかもしれません」

みのり「またどうしてそんな」

P「恭二にとって知って欲しくない事を知ってしまったかもしれないです……」

みのり「あー…」

P「このままだと恭二にバレますよね。そろそろ僕の挙動不審さバレそうだし…」

みのり(うーん、どうしたものかな…)

P「みのりさんだったら―…嫌ですよね、僕に昔の事聞かれるの」

みのり「俺?」

P「僕だって自分から話してなかったら、絶対聞かれたくない。…僕は今でこそ昔はアイドルやってましたって言えますけど」

P「それはBeitの皆が許してくれるから、何も聞かないでくれたから話せたんです」

みのり「…そうだね。俺も恭二やピエールも、プロデューサーのそう言う所に救われてるよ」

P(うん、やっぱり皆そうだ)

P「…じゃあ、やっぱり忘れます!」

P「恭二にとってはきっと、聞かれたくない事だから」

P「僕は皆の今が明るければそれで、良いと思ってますから」

P「恭二も僕が知りたがらない所に救われてるって言ってたので……」

みのり「そう、それも間違いじゃないと思うよ」

P「みのりさんにそう言ってもらえると、心強いなあ」

みのり「そうかな?…あ、呼ばれた。俺も行かなくちゃ」

P「はい、いってらっしゃい。あとみのりさん、その格好、キマってますよ!」

みのり「ふふ、ありがとう」


「渡辺さん、視線こっちお願いしまーす」

みのり(プロデューサーは自分の昔の事をちゃんと話してくれた)

みのり(恭二は自分から話す前に察せられてしまった…けど、)

みのり(俺だっていつか話す時が来るのかもしれない)

みのり(その時、俺は彼に話す事が出来るのかな?もし聞いたとしてプロデューサーはどうするんだろう)


みのり(昔は荒れてて人を傷付けてばかりだった、向かって来るもの全部傷付けてた気がする。それが強いと思ってた)

みのり(自分が一番強いと思ってた――その所為で、俺が変な勘違いをした所為で叔父さんは死んだ)

みのり(そうやって全部告げてもプロデューサーは、俺を軽蔑する事なく、今まで通りに迎えてくれるんだろうか)


「…渡辺さん?表情硬いですよー珍しい」

みのり「…あ、ああ、ごめんなさい。もう一度お願いします」ニコ

「うーん、やっぱり渡辺さんはそう言う顔が似合いますよ!」カシャ カシャカシャ

みのり(…無理だよ、そんなの)


P「皆、お疲れさま!写真撮るだけでもくたくたになるんだね…見てるだけでもちかちかしたよ…」

ピエール「ボク、写真すき。でもしばらく、いらない…」

恭二「服選ぶの面倒くせえ…」

みのり「朝から晩までスタジオに箱詰めはちょっと……」

P(やっぱり朝から晩まではきつかったよなあ…発売近すぎるのも問題だな。今度から気を付けよう)

P「でももう撮影の山場は越えたから!あとは別の日このスタジオでの恭二がやりたがってた撮影と…」

ピエール「さいごの日!学校のお写真!」

P「うん。皆が楽しみにしてた学校の撮影だよ」

恭二「俺は別に楽しみじゃない。この歳でコスプレは堪える」

ピエール「…恭二、学校たのしみ、ちがう?」

恭二「あー……そう言う顔するのやめろ。そう言う意味じゃないから」

ピエール「やった!恭二楽しみ!」

恭二「…撮影自体はな」

みのり「ふふ、恭二もピエールの悲しい顔には叶わないね」

恭二「くそっ自分は教師役だからって高みの見物っスか…」

P「まあまあ、20で学生役なんて俳優や他のアイドルも普通にやってるから気にしないで」

恭二「そう言われると相対的に慰められてる気になるな」

P「そういうもんだよ」


P「もうすっかり遅いけど…ピエールは事務所にお迎え来る?」

ピエール「多分もう来てる。賢、相手してくれてる」

P(あんなガタイの良い強面のSPを二人山村さんが…?あとで謝っておこう)

みのり「俺は今日自分の車で来たからこのまま帰るよ」

恭二「俺は…悪い、この時間終電無くなってる」

P「じゃあ恭二送ってからピエール事務所まで乗せてくか…」

P「みのりさんはここで…明日は特に仕事らしい事無いですけど」

みのり「じゃあ、気が向いたら来るよ。ジムも出来たら行きたいし」

みのり「恭二もバーベル上げられるようになったんだよね」

恭二「まだ50kgだ。みのりさんは自分の体重プラス10kgくらい上げてるからな」

P「…アイドル好きな女の子って意外と筋肉苦手な娘多いからほどほどにして下さいね?鍛えるのが楽しいのはちょっと分かるけど」

ピエール「ボクもジム、行く?」

P(ピエールはまだそのままで居て欲しい)

みのり「ピエールは武道してるから、鍛えなくても大丈夫だよ」

ピエール「ボク、ムキムキ!?」

P「だ、だめだよ!ピエールが鍛えるのはあと5年くらい経ってからじゃないと…ファンの人もびっくりするから!」

恭二「ファンの目って厳しいんだな」



P「じゃ、お疲れさまでした。何事もほどほどに!気を付けて帰って下さいね」

みのり「プロデューサーもね。それじゃおやすみ」

恭二「おやすみ」

ピエール「みのり、おやすみ!」

P「…さ、二人も行こうか」


 車内


P「さっきからピエール静かだけど…寝た?」

恭二「寝てるな。見事なまでに」

ピエール「すぴー……zzz」

P「一日中ずっと写真撮ってたもんなあ。そりゃ四六時中キメ顔してたら疲れるよね」

P「恭二は平気?寝てても良いけど」

恭二「眠気はそんなに…でも相変わらず笑えって言われるとちょっと…」

P「普通に喋る時は結構笑えてると思うけど」

恭二「そうか?」

P「3人で撮ってた…この前公園で遊んでた時とかは笑えてた気がする」

P「ひとりで撮られるとカメラの事意識しちゃうんじゃない?」

恭二「そっか、…カメラを意識しないって難しいな」

P「笑ってない恭二も良いけど、笑ってる恭二も良いもんだから」

恭二「注文が多いぞ」


恭二「あんた、戻ったな」

P「え?」

恭二「いや、ここ最近挙動不審だったから」

P「…あーうん、疲れてたのかも」

恭二「無理はするなよ。あんたに倒れられちゃしょうがないし」

P「善処します」

恭二「…っと、ここで良い。コンビニで夕飯買って帰る」

P「恭二も晩飯コンビニオンリーとかじゃないよね?」

恭二「流石に早く帰れたら炊事はしてる。その方が安く済むしな」

P「偉いな…僕も見習わないと」

恭二「あんた本当に少しは気をつけろよ。…じゃ、お疲れ。ピエールにもよろしく」バタン

P「うん、お疲れさま。おやすみ」 ブロロロ……



P「…僕、いつも通りに出来てたよね?」

P(ちゃんと、忘れられるかな)

P(多分それが一番良いんだろう。大丈夫、ちゃんと出来る)

ピエール「……あれ…恭二、いない…」

P「あれピエール起きた?恭二はさっき下ろしたよ」

ピエール「ばいばいするの、わすれ……zzz」

P「……おやすみ」


 数日後 撮影スタジオ(教室のセット)


ピエール「! 学校のセット!黒板!」

P「あ、こら!衣装ではしゃぎすぎない!」

ピエール「わあ、チョークで絵描く、たのしい!」

恭二「ピエールは楽しそうだけど……やっぱり自分で見るとコスプレにしか見えない」

みのり「そう?似合ってるよ。俺もスーツなんて凄い久しぶりに着たよ」

恭二「眼鏡、珍しいっスね。これもギャップってやつですか?」

みのり「頭良さそうに見える?」

恭二「はあ、まあそうっスね」

みのり「微妙な返事だなあ」

恭二(普段も黙ってればそれなりに頭良さそうなんだけどな…)

「これ小道具なんで皆さんに各自持ってもらって…まずは授業受けてる感じでお願いします」

ピエール「みのり、授業なにしてくれる?」

みのり「えっ?そ、そうだな…国語の教科書があるから朗読くらいなら…」パラパラ

みのり「………」

みのり「……ごめん、恭二読んで」

恭二「そうなると思った」

P「じゃあ恭二窓際から2列目の前から三番目の席、ピエールはその斜め後ろの席座って、ノートと教科書開いて」

「ああ、そんな感じです。それっぽいですよ」

「適当に授業っぽく振る舞って下さい」

みのり「じゃあ、鷹城くん。教科書36ページの一番最初から」

ピエール「恭二、がんばれ!」

恭二「応援されなくても出来る。――こんな夢を見た。腕枕をして枕元に坐っていると仰向に寝た女が……」


「ピエールくん、そこから窓の方覗いて…うん、良い笑顔」

ピエール「えへへ!恭二も、にーっ」

恭二「……にーっ」

みのり「鷹城くんの笑顔30点」

恭二「おい先生面するのもいい加減にしろよ」

P(うん、皆楽しそうにやってる)

P(恭二も僕が鷹城グループの会報誌覗いた事気付いてない)

P(…うまくやれてる。やっぱりこれで良かったんだ)

P(恭二の家は多分……鷹城グループの社長のもとで暮らして、何かあって家を飛び出して…アイドルになったんだろう)

P(それで頑張ってるなら、本人がそれで良いと思ってるならそれで良いんだ)

P(……けど、恭二は鷹城グループの…家の事をどう思ってるんだろう?)

P(あの感じだと、良くは思ってないみたい)


「Pさん?大丈夫ですか?」

P「えっ?あ、ああ…はい、大丈夫ですよ?」

「そうですか?何か思い詰めた顔してましたから」

P「最近仕事が捗って忙しいんですよ。Beitの3人が頑張ってくれてるんで」

「ピエールくんから写真集の後はテレビ撮影だーって言ってましたよ」

P「ああ…まだ終わってない仕事については外部の人に勝手に言っちゃだめなんだけど…あとで言っておかなきゃ」

「ふふ、まだ手がかかりそうですね」

P「楽しそうに仕事するのは凄く良いんですけどね」


「そう言えば、この前恭二くんが鷹城グループの社長の息子さんって話したじゃないですか」

P「!!」

「あれって本人から聞いたりしました?」

P「い、いえ!っていうかそんな訳無いだろって言われちゃいました」

「やっぱりそうですよね~話すと全然普通の子だし」

P「そうですよ、本人は結構質素なアパート生活ですし…あはは」

P(……僕に言わないって事は多分そう言う事なんだよね?)

P(恭二の知られたくない事は、僕も守らなきゃ)


みのり「ピエール、楽しそうだね」

ピエール「うん、楽しい!」

恭二「でも大した事ないだろ、日本の学校って」

ピエール「そんな事ない!」

ピエール「恭二が居て、みのりが先生で、プロデューサーさんは……ボクたちの事あそこで見てくれてる」

ピエール「こんな楽しい学校、今まで無かった!」

恭二「…そうかよ。それ、プロデューサーにも言ってやれ」

みのり「きっと喜ぶよ。ピエールに楽しんでほしくてプロデューサーはこの仕事選んだんだから」

ピエール「…ウン!ボク、すごくうれしー!」

「あ、良い顔ですねー。鷹城くん笑えるじゃない」 カシャ

恭二「まあ人間なんで多少は」

ピエール「恭二、照れてる?」

恭二「照れてない」

みのり「顔赤くなってるよ」

恭二「なってない!」


ピエール「プロデューサーさん!ボクの制服、似合ってた?」

P「うん、ばっちりだよ!みのり先生の授業も積極的に発言してたな」

みのり「あはは、授業の真似するとピエールが楽しそうだったから、つい」

P「みのりさんも先生役、似合いますね。ドラマとかで当てられないかなあ」

P「恭二もまだ学生服いけるみたいだし…」

恭二「俺はコスプレはやりたくない」

P「演技だって、演技」

恭二「…それなら我慢する」

P「いつかそういう仕事取れたらいいなあ」

ピエール「ドラマ!やりたいっやりたい!」

P(ピエールはビジュアル特化だし演技も映えるかも…今日も初めての日本の学校だったけど大分楽しそうになりきってたし)

みのり「プロデューサー、仕事してる時の顔してるね」

恭二「ピエールのおねだりには誰も逆らえないって事だな」

ピエール「おねだり?」

P「あーだめ、それ知ったらピエールがおねだりを武器にするから!」

みのり「それは怖いなあ」

恭二「誰も逆らえないしな」

ピエール「?」


ピエール「プロデューサーさん、今日ボク、学校行った。プロデューサーさんが連れて行ってくれた」

ピエール「日本来て、また素敵な思い出増えた!アリガトウ」

P「……うん、どういたしまして」

恭二「これで撮影は終わり、か。最後がこれでなんだかんだ良かったかもな。案外疲れなかった」

みのり「この前、朝起きてご飯を食べる、ってやつ、本気で寝ちゃったからね…」

ピエール「あの時、早起き続いた…ねむかった」

P「花と一緒に撮影してるやつも凄かったなあ。皆別人みたいで」

みのり「本になるのが楽しみだね」

恭二「完成は2ヶ月先か…どうなるだろうな」

ピエール「ボク、いっぱい買う!」

P(やっぱり皆にはこんな風にずっと笑顔で居て欲しい)

P(……少しぐらい嘘ついたって、皆の事を守りたいな)

来てた
すごく面白い


>>58
前回から5ヶ月経ってやっとこさ来たよ
これからの展開が心配なんだけどそう言われると嬉しい


P「あれ恭二、今日はそのまま帰るの?」

恭二「ああ。そろそろ家の掃除しないと」

P「アイドルなのに生活感あるなあ……僕も家の洗濯物とか溜まってるや。明日はオフだからゆっくりしなよ」

恭二「分かった、明後日は10時に事務所だったよな。じゃあお疲れ」

P「うん、お疲れ」



恭二(これで写真集の仕事は一段落…か。次はJupiterの天ヶ瀬冬馬とバラエティ…)

恭二(なんだかんだ順調にやっていけてる。…俺だけの力ではないけど)

恭二(でも俺だけの力じゃない今の方が、コンビニ店員やってた時よりイキイキしてる気がする)

恭二「……変だな」


prrr…prrr……

恭二「? 誰だ?プロデューサー何か伝え忘れでも…」

恭二「……!!」

恭二(親父から…?何だ今更…)

恭二「……もしもし」

『ああ、恭二か。元気か?』

恭二「何の用だ?」

『息子の声を聞いて調子を聞くくらい親の務めだと思うが?』

恭二「さっさと話せよ。俺は別にあんたの声を聞きたい訳じゃない」


『……相変わらずかわいげの無い息子だな、お前は』

『Beitだったか。CDデビューしたそうだな。おめでとう、と一応言っておこうじゃないか』

『今度写真集を出すそうじゃないか』

恭二「何であんたがそれを知ってるんだ?まだ一般には情報出してないはず……」

『察しが悪いのも相変わらずか…家を飛び出した馬鹿息子らしい』


『近々鷹城グループは芸能方面にも手を出すのは知っているな?』

恭二「! GREEN RECORDの事か…Beitのファーストライブの仕事があんたの懐に入ってると思うと虫酸が走るぜ」

『そう言うな。これも我が息子の為にしている事だ』

恭二「は…?」

『今度お前等が世話になる写真集の出版社の一部から買い取らせて貰うつもりだよ』

『ゆくゆくはBeitに専用のレコード会社でも付けてやろう。それこそ先日お前等の世話をしてやったCDショップでも良い』

『どうだ?Beitは成功を約束されたようなものだが…嬉しいか?』

恭二「待て、どういうつもりだ!?それに俺はあんたの力がなくたって自分で……!」

『まだそんな事を言っているのか?』



『お前のお遊びに長い時間付き合う暇はこちらには無い』

『どうせ成功すればお前も満足するだろう?お前の力などたかが知れている』

恭二「何だと…」

『だからさっさとお遊びを成功させて早く帰って来い。その為の手助けなど容易い』

恭二「要らねえって言ってるだろ!!俺がどんな気持ちであんたの元から消えてやったと思ってる!?」

『知らんよ、そんな馬鹿息子の勝手な思い込みなど――知りたくもないがな』

恭二「俺はあんたの人形みたいになるのはごめんだって言ってんだ!自分だけの力で―…」

『お前だけの力で今、お前は立てているのか?』

恭二「ッ……!!」

『…その様子だとおんぶにだっこと言った所か?聞いて呆れるな』

恭二「強力しあって、互いに支え合ってるって言ってくれ。あんたの下では出来ない事だ」

『…下らないなれ合いだな』

『それにこの話はお前にとってもBeitにとっても悪い話ではないはずだが?』

『お前が居る事で、お前が鷹城グループの息子である事で成功が約束されているんだ。お前等にとっては十分利益に繋がる』

恭二「!」

『自分だけの力で―…お前の勝手な願望でこの話を蹴るのも良い。だがこの話を蹴ってお前等は耐えられるか?』

『鷹城グループを敵に回して尚、Beitがアイドルとして成功するという確信があるか?』

恭二(……俺だけじゃない、みのりさんの…ピエールの夢…プロデューサーの夢…)

『…まあ、返事は聞かない。分かり切っているからな』

『切るぞ。馬鹿息子の相手をするのは疲れる』 ピッ ツーツー…


恭二「……クソッ!」

恭二(言えなかった…成功する確信があるって)

恭二(俺だけの力で立ててるって……!)

恭二「…でも当たり前だ、その通りなんだから」

恭二(俺は一人の力でアイドルになってるんじゃない……一人じゃ結局、何も出来てない)

恭二(俺とみのりさんとピエール、そしてプロデューサーの夢を同時に叶えられる確証は今の俺にはない)

恭二(…幸い、鷹城グループは会社としてはかなり大きい)

恭二(俺の夢がひとつ潰れて、皆の夢の夢が叶うなら……)

恭二「………」

恭二「…はは、上手くいかないもんだな……」

前作から見てた
恭二のSRは多分ガシャですね!悲しくないです!
ちょっとだけど他のユニットも出てきて嬉しい

>>65
恭二も早くSR欲しい所…でもBeitは割とバランスよく恵まれてるからこの調子で行くと嬉しい
恭二のサインは凄いシンプルそうだなあと予想
前作から読んでくれてありがとう。これからも他ユニットがちょこちょこ出るよ


 テレビ局 スタジオ


P「…さ、いよいよ天ヶ瀬くんとのバラエティ撮影だけど……」

みのり「き、緊張してきた…俺、変じゃないかい?いつも通り?」

ピエール「みのり、いつもより挙動不審」

みのり「えっ!ど、どうしようプロデューサー」

P「そんなにアガらないで下さい。天ヶ瀬くんも良い人みたいですし大丈夫ですから」

みのり「そう言われても…アイドルになる前からコンサートとか行ってたアイドルと一緒に仕事するのは…」

P(行ってたんだ……)

P「そう言えば、先輩アイドルが新人アイドルの疑問に答えてくれる…ってやつ、何か考えました?」

P「Jupiterのプロデューサーさんは何でも良いよ、無茶振りでも…って言ってたけど」

みのり「失礼のないようにするつもりだよ」

ピエール「冬馬への質問、ばっちり考えてある!」

P(何か不安だなこの二人……頼みの綱はやっぱり常識人の恭二……)

P「……恭二?」

恭二「? どうかしたか?」

P「いや、会話に混ざって来ないなと思って」

恭二「いつもそんなに積極的に絡んでないだろ」

P「そう?いや、何か今回みのりさんもあがってるし頼みの綱は恭二だけだなーって…」

恭二「……どうだかな」

P「?」


恭二「行こうぜ、そろそろ時間だ」

P「あっ…もうこんな時間か。きっと天ヶ瀬くんなら何でも受け止めてくれるし、安心して行っておいで。きっと大丈夫だから」

みのり「う、うん。そうだよね。ありがとう…行ってきます!」

ピエール「テレビ撮影、たのしみ!みのり、恭二、行こ!」

P「……?」

P(…恭二、何か元気ないな?初めての仕事だし先輩相手だし、恭二も緊張してるのかな)

P(さっきあんな事言っちゃったし…俺、恭二に頼りすぎてるかも)

P「とりあえずJupiterのプロデューサーさんに挨拶して来よう…」


P「どうも今回はお世話になります。Pです」

ジュピターP「ああ、どうもどうも。どうですか調子は」

P「おかげさまで。あ、あのBeit大丈夫ですか?天ヶ瀬くんに迷惑かけてたりなんて…」

ジュピターP「いや、冬馬は迷惑かけられるくらいの方がバラエティ映えするんで大丈夫ですよ。どんどん振ってもらって」

P「エッ!?」

ジュピターP「ほら、スタジオの方見て下さい」


みのり「あ、あの…!質問というかお願いなんですけど…"君を見失う…Alice"ってやってもらって良いですか?」

冬馬「何でここでそれやらなきゃいけねえんだよ!!」

ピエール「先輩アイドルの力、見たい!」

冬馬「…っ!しょうがねえな、一回しかやらねえからよく見てろよ」


 ♪Alice or Guilty


冬馬「君を見失う…Alice」 キラッ

みのり「ありがとうございます!!良かったらGuiltyの方もお願いします!!」

ピエール「すごーい!」

冬馬「!? あ、ああ、どうだ。これがプロってやつ、だぜ!」

恭二「……何かすいません」

冬馬「…ああ、お前はまともなのか……」


P「……う、うわあ……本当すいません…」

ジュピターP「いやあ面白いなあBeit。今日が初対面で正解でした。やっぱ冬馬はツッコミが映えますよ」

P「あはは、そうですかね……」

P(ピエールはいつもの感じだけどみのりさんはこれ、後で見返したら大変な事になりそうだ……)

P(恭二は……いつも通り、よりちょっとテンション低いかな。こっちからだとあんまり顔が見えない)

ジュピターP「それにJupiterもこうやってバラエティ慣れしてくれると今後嬉しいですしね。本当は喋っても面白いのに」

P「そうですね。昔の時はパフォーマンスは一流だけど、どこか影がある感じがしました」

ジュピターP「俺も3人につく前はそうなんだろうと思ってたんですけど、喋ってみてもったいないなって思って」

P「僕も今のJupiter、良いと思います。勿論前の時も良かったですけど…」

P「打ち合わせした時、天ヶ瀬くんに雰囲気が柔らかくなった、って言ったら満更でも無さそうでした」

ジュピターP「ハハッあいつ俺にはそんな事一言も言わないのになあ」

P「…良いですね、そうやって信頼し合ってるのって」

ジュピターP「そう?Beitだってそうでしょ?」

P(僕は…3人の事…信頼出来てるのかな?)

P(僕が恭二に後ろめたい気持ちを持ってるのは否定出来ないし…その癖恭二に頼りすぎてる所あるみたいだし…)

P(それに3人は僕の事、信頼してる?)

ジュピターP「…Pさん?どうかしました?」

P「あ……いえ、僕はまだまだだなって…先輩に学ぶ事が多いのはアイドルだけじゃないみたいです」

ジュピターP「仕事の悩みとかあったら聞きますよ。どう?今度一杯?」

P「アハハ、ありがとうございます。でも忙しいんでしょう?」

ジュピターP「まあね、これでも315プロの稼ぎ頭抱えてるんで」


「ではこれにて撮影終了になりますーお疲れさまでしたー」

冬馬「お疲れ様でした!!」

みのり「! お疲れさまでしたっ」

ピエール「ありがとうございましたっ!」

恭二「……お疲れさまです」

ジュピターP「あ…撮影終わった。良かったですね、順調に終わって」

P「ええ、そうですね。一安心です」

P(…とは言ったけど、恭二やっぱり元気無さそうだったな)

ジュピターP「ん?冬馬がこっち向かって…お疲れ冬馬。ん、Pさんに用事か?」

冬馬「ああ。おいBeitのプロデューサー、ちょっと顔貸せよ」

P「……僕?」


 廊下


P「天ヶ瀬くん、何か用ですか?うちのアイドルが何か…」

冬馬「いや、そう言うんじゃねえよ。なんというか…あー、よし」

冬馬「あんたと初めて会った時にどっかで見た事ある気がしてよ…」

冬馬「あんた、昔アイドルやってただろ?961プロに居た時あんたの映像見たのを思い出したぜ」

P「!」

冬馬「俺も元は一人でアイドルしてたからな…あんたの映像時々見て参考にさせて貰ってた」

冬馬「あんたがアイドルだった頃はまだ全然男のアイドル居なかったしな。こういう奴も居んのか、くらいだったけど」

P「…そっか、そう言う事ってあるもんなんですね」

冬馬「…否定しないのか?」

P「はい、一応事実なんで」

冬馬「あんたが何で今プロデューサーやってるのか俺は知らねえけどな…本当にやる気あんのか?」

P「…あの時の事で思う事は色々あるけど、今は精いっぱいやるつもりです」

P「少なくともあの時よりは、今の方が夢があるから。僕は今プロデューサーとして、Beitの3人の夢を背負ってるつもりです」

冬馬「フーン……」


冬馬「じゃあ今日のあれは何だよ」

P「え…?」

冬馬「分かってねえとは言わせねえ。鷹城の事だ」

冬馬「目、死んでたぜあいつ。他二人が暴走してるからストッパー役で何とかなってたけどな」

冬馬「鷹城だけ質問してこなかったし笑いもしねえ。あいつ本当にやる気あんのかよ」

P「あ、あります!彼には夢だってあります。ちゃんと自分のなりたい姿があるんです!」

冬馬「昔のあんたみたいな顔してるのにか?」

P「っ…!?」

冬馬「おい…本気で分かってねえのか?マジもんの馬鹿だなあんた…」

P(だって恭二は逃げないアイドルになりたいって…親の期待に堪えられなくて家を飛び出して、でもそれは逃げてる訳じゃないって…)

P(! その親が鷹城グループの社長……)

P(それに今日の恭二の態度……)

P(もしかしてもう既に何か起こってるのかもしれない)

P(恭二と…鷹城グループの間に――)


P「ご、ごめん天ヶ瀬くん!僕行かなきゃ!確かめないと行けない事があるから!!」

冬馬「敬語抜けてんぞ」

P「あっごめんなさい!でも僕行かないといけないんです!!」

冬馬「良いよ別に、敬語もいらねえ。大体俺の方が年下だろ?早く行けよ」

冬馬「あんたのアイドルが出したSOSにやっと気付いたんだ。さっさと片付けてこいよ」

P「ありがとう!!この埋め合わせは必ず!!」バタバタ……

冬馬「ふん…行ったか」

冬馬(あんたが本当に3人の夢背負ってるって言うんだったらちゃんと向き合ったらどうだよ…とまで言ってやるつもりだったけど)

冬馬(そこまで尻拭いしてやる必要はないよな。その心配も無さそうだし)

冬馬(元アイドルのプロデューサー、何かしらワケありのアイドル……)

冬馬(Beitだけじゃねえ、これから315プロに居るアイドル達が全員いまのJupiterの座を——いや、それ以上を狙ってやがる)

冬馬「…面白ぇな、後ろから追って来るライバルっていうのは」

ジュピターP「何かかっこいい事言ってるけど、冬馬お前ズボンからシャツ出てるぞ」

冬馬「アッ!?あんたいつからそこに居たんだよ!?」


ピエール「あ…プロデューサーさん、帰って来た」

みのり「どこに行ってたんだい?随分慌ててるけど…」

恭二「スタッフさんに挨拶済ませておいたぞ」

P「ご、ごめん僕の仕事なのに…でも今すぐ事務所に戻ろう!」

みのり「何かあった?」

P「いやまだ表面上は…でも何か起こるかもしれません」

P「それに確かめないといけない事があるから」

P(……恭二の事だって)チラ

恭二「…?」

ピエール「プロデューサーさん…こわいかお、してる」

P「ごめん…こう言う時こそ笑顔、だよね」

ピエール「…ウン。でも不安なら、無理して笑顔、作らなくて良い」

P「…ありがとう」


 事務室


P「ただいま戻りました…!」ガチャ

山村「Pさん!大変です!!」

P「えっ何ですか山村さん、いま僕、確認したい事が…」

山村「何で僕の言う事は蔑ろ前提なんですか!Beitの事ですよ!!」

山村「2ndシングルの話が来てます!」

P「ええっ!?こんな時に!」

山村「でもその…少し問題がありまして」

山村「あの、鷹城グループってあるでしょう?最近芸能方面にも力を入れ始めたみたいで…」

山村「それでBeit専用のレコード会社を立ち上げるってお話なんです」

山村「今度写真集を出す出版社も、鷹城グループが手を出し始めていると聞きました」

山村「元々ファーストライブを行ったCDショップでBeitが選出されたのも鷹城グループが関係していたみたいです」


山村「どういう理由かは分かりませんが、Beitを囲い込んでます。正直蹴ればどうなるか分かりません」

山村「でもこの話を受けてしまったらBeitは315プロのアイドルではありますが、大分他のアイドルと状況を逸した形になると思います」

山村「運営も任せてくれて良いとの事でした…恐らく3人をうちの事務所で好き勝手するのを許すつもりはないでしょう」

みのり「ほぼ移籍…になる、って事かい?」

山村「…そう取ってもらって構いません」

恭二「……!」

P(遅かった…!)

ピエール「皆、むずかしい事言ってる…ボクに出来ること、ある?」

P「そうだな…ピエールは、笑ってて。皆がすぐ笑えるように。笑顔で待機だ。出来る?」

ピエール「…ボク、皆の事笑顔にしたい。だったら、まずボクが笑顔、する!」

みのり「でも急になんで…そんな事をするならJupiterとか先にデビューした2組の方が適してるはずだよ」

P「……それは、」

P(…恭二、さっきから俯いて何も言ってない…そうだよね。まさかこんな事になるなんて…)

P(……恭二、ごめん。もう隠してやれない…ここで言わないと―…)グッ


恭二「…悪い、俺の所為だ」

P「!」

みのり「何で恭二が……あ…まさか、この鷹城って」

恭二「そうだよ、俺の実家だ。今まで黙ってて悪かった…鷹城グループは俺の親父の会社だよ」

恭二「この前電話がかかってきて、今山村さんが言った通りの事を言われた」

恭二「アイドルとして成功させてやるから遊びはやめて早く帰ってこいって言われたよ」

恭二「鷹城グループとしても収益になるし、成功すればそれで満足するだろって」

みのり「……そうだったんだね」

ピエール「恭二……」

P「でもそれじゃあ恭二が自分の力で、逃げないでアイドルやりたいって言うのは…?」

恭二「こうなると無理だな。少なくともあんな家の力を使ってる時点でもう俺の夢は終わったようなもんだ」


恭二「でも、この話は蹴らないでいいと持ってる」


P「え…?」


みのり「そんな、恭二は…それで良いと思ってるって事?」

恭二「ああ、俺の夢の代わりに、みのりさんやピエールの夢は叶える事が出来る」

恭二「レコード会社やレーベルが違った所でアイドルとして成功する事が出来る。そう約束されたんだ」

P「ちょ…ちょっと待ってよ、」

恭二「トップアイドルになればピエールの世界平和だって、みのりさんのアイドルに惹かれた理由だって、きっと分かる」

恭二「プロデューサーが俺達をトップアイドルにするのだってきっと叶うだろうな」

恭二「俺ひとりが我慢すれば――」

P「ちょっと待てって言ってるだろ!!」

P「そんなんで僕が納得すると思ってるのかよ?!お前の夢を犠牲にしてピエールやみのりさんが喜ぶと思ってるのか?!」

みのり「ちょっとプロデューサー、おちついて」

P「さっき撮影終わってから、天ヶ瀬くんに言われたよ!"鷹城の目が死んでた"って!夢がないままアイドルしてた僕の目と一緒だって——」

P「恭二だって納得してないだろ!?僕はそんなの絶対に認めな…」

恭二「……ッ!」



恭二「…じゃあどうしろって言うんだよ!!」バキッ


p「っ!いってェ……」

ピエール「恭二!プロデューサーさん殴るの、だめ!」

恭二「…この話蹴ったらどうなると思ってる!?蹴ってこの先Beitがどうなるか分かってるのか!?」

恭二「それにBeitだけじゃなくて315プロ全体に迷惑かかったらあんたでも責任取れないだろ…」

恭二「良いんだよこれで!俺は納得してる、だからあんたも納得しろよ!!」

恭二「……俺の夢なんて、どうなろうが俺の勝手だろうが!!」

みのり「恭二、いい加減にしろ」

恭二「みのりさん…離して欲しいんスけど」

みのり「頭冷やしておいで。それだったら離すよ」

恭二(力強いし目つきも鋭い…敵わないなこの人には)ググッ…

恭二(……いや、俺は誰にも―…)

恭二「くそっ……」 バタン


山村「…鷹城くん、行っちゃいましたね…」

ピエール「プロデューサーさん、大丈夫?」

P「うん…ちょっと口切れただけだから」

みのり「血出てるよ」

P「口濯げば何とかなります。それにしても…みのりさんも怒るんですね」

みのり「いや、プロデューサーの怒鳴るのもなかなかだったよ」

ピエール「プロデューサーさん怒ってるの、初めて見た」

P「ごめんね、怖かったよね」

ピエール「ウウン、恭二の事思って怒ってるの、わかった。そう言うのは、怖いじゃない」

P「……恭二、怒ってるかな…」

ピエール「恭二、どうした?お家の人と何かあった?」

P「そっか、うん……ピエールにも分かるように話そうか」

山村「一応消毒して下さいよ。それで話しましょう」

P「……はい」


ピエール「恭二、どうして怒ったの?どうして夢、諦めようとしてるの?」

P「まず、恭二の夢は家の力——恭二のお父さんやお父さんの経営している会社の力を借りないで、自分の力で成功する事だ…と思う」

P「でもそれをお父さんは許してないみたいなんだ」

P「恭二のお父さんからしてみればそれは滑稽なのかもしれない…だから、成功する代わりに鷹城グループの力を使う事をBeitに求めてる」

ピエール「でも、恭二の夢は……」

P「……そう。それを簡単に言うと…さっき言ってたみたいに恭二が我慢して、ピエールとみのりさんの夢が叶うって事になる」

P「そうすればトップアイドルにもなれる。大きなスポンサーと資金源がBeitに来る事になるからね」

P「でもそれと引き換えに315プロの皆とは居られなくなるかもしれないし、今までみたいに僕が仕事を取って来て」

P「皆の希望を聞いたりとかは出来なくなるかもしれない」

ピエール「それじゃあ、四季や圭と麗とも、会えなくなる?冬馬とも?」

P「…もしかしたら」

みのり「穏やかじゃないね…こんな事プロデューサーがアイドルしてた時も無かっただろうし、難しい問題だ…悔しいけど」

ピエール「皆と会えなくなるの、いやだ…」

P「僕だって嫌だよ…でも断ったら恭二の言う通り、どうなるか分からない」

P「鷹城グループって言うのは、大きな会社なんだ。それに写真集を出す予定の出版社も、この前お世話になったGREEN RECORDだって手が回されてる」

P「断ったら写真集が無しになるかもしれないし、仕事がめっきり減る可能性だってある」

みのり「恭二はそれが怖いんだろうね。自分の夢の所為でBeitが潰されると思ってる」

P(恭二が悪い訳じゃない。悪いのは―…)


P「皆、本当にごめん」

みのり「別にプロデューサーが謝る事じゃないよ」

P「…僕、知ってたんです。恭二が鷹城グループの社長の息子だって…だけど言わなかったし、本人にも確認しなかった」

P「怖かったんです。恭二の過去を勝手に掘り下げて信用を失うのが…」

P「僕、馬鹿だよ。昔と…アイドルだった頃と同じ事してる。本当の事を聞くのが怖くて結局人に任せっきりだ」

P「それが信頼だと勘違いしてた―…本当駄目だな、僕。プロデューサー失格です」

みのり「プロデューサー…」


ピエール「ボク、いやだ!」


P「…へ?」

ピエール「圭と麗、それに四季…冬馬と会えなくなるのも…ここから離れるのも、恭二の夢がなくなるのも、笑顔じゃないのも…」

ピエール「プロデューサーさんが笑顔じゃないのも、いや!」

ピエール「ボク、皆の事笑顔にするの、夢。だから恭二が笑えないのも、プロデューサーさんが笑えないのも嫌」

ピエール「二人が笑顔じゃないなら、ボクの夢、一生叶わない」

P「……ピエール」

みのり「…ピエールの言う通りかもね。俺も仲間の夢を犠牲にして叶える夢なんて嫌だよ」

みのり「プロデューサーだって、本意じゃないだろ?」

P「……はい」

P(…そうだ、プロデューサーになった僕の夢は―……)


恭二「……」

恭二(殴ってそのまま飛び出して来ちまったけど…どうすっかな…)

恭二(事務室には帰れないし…家に帰るのも……って言ってジムに来てる俺もどうかと思うけどな…)

恭二(……ん?あそこに居るのは…)

「おや?鷹城くんか。久しぶりだな」

恭二「…硲さん。お久しぶりです」

道夫「調子はどうだ?…浮かない顔をしているようだが」

恭二「別に何も」

「あれー?ミスターはざま!そのboy、知り合い?」

道夫「ああ、前にレッスンに付き合った事があった」

「へえー、あっこの子知ってる!my productionのnew idol、Beitの鷹城恭二!」

恭二「あ、ああ、そうです」

類「初めまして、舞田類だよ。Call me マイケル!よろしく!」

類「ミスターはざまと…今居ないけど、ミスターやましたとS.E.Mって言うユニットしてるよ」

恭二「はあ…鷹城恭二です、よろしく」

恭二(なんだこの人…英語の発音やけに良いな)

道夫「ちなみに舞田くんは元英語教師だ」

類「俺達全員、元teacherだから。どう、凄い?ちなみにミスターやましたは元scienceのteacherだよ☆」

恭二(……別の意味ですごいな)


S.E.M
http://i.imgur.com/VXtgkvc.png



類「ふんふん、なるほど……」

恭二(何だこの人、人の事ジロジロ見て)

類「所でミスターたかしろ、ちょっと俺と勝負しない?」

恭二「何であんたに付き合わなくちゃいけないんスか?」

類「実は俺、明日auditionを控えててさ。一人では初めてなんだ」

類「だから一足先にdebutしたミスターたかしろにlessonしてもらおうかなって!」

恭二「…まあ、今暇ですし良いっスよ」

類「Oh,very thank you!じゃあレッスンスタジオへ行こうか。hurry,up!」

道夫「おい舞田くん、今の鷹城くんは…」コソ

類「良いじゃない、young boyの悩みを聞くのもteacherのworkでしょ」コソコソ

道夫「…そう言う事か」


 レッスンスタジオ


類「I'm home!ミスターやました、助っ人連れて来たよ」ガチャ

次郎「ああ、随分若い子連れて来たねえ…これならるいも安心だ。おじさんにはアドバイスとかキツイから」

恭二「え、なんスかこれ。踊れば良いんですか?」

類「Yeah.that's right!のびのびやってくれればそれで良いからさ!」

道夫「私と山下くんが審査員だ。情熱のあるパフォーマンスを見せてくれ」

次郎「ばっちり審査しちゃうよー。ま、どこが良いかなんて適当だけど」

類「ミスターやましたのそう言う所、niceだよネ。よし…ミスターたかしろ、Are you ready?」

恭二「…ああ、いつでも良いぜ」

類「OK、Let's start!!」


類「Yes!ここがjust timing……!決まった!」

道夫「舞田くん、アピールが上手く行ったのは分かったからもっと静かにやりなさい」

類「あれっ……あはは、sorry……」

次郎「うーん、相変わらずるいは楽しそうで良いねえ」

道夫「しかし鷹城くんは高いポテンシャルを秘めている。油断は出来ない」

次郎「確かに凄いなー。これが若い力か……ま、るいが楽しそうだから良いんじゃない?」


恭二(…この人、凄い楽しそうにやってるな…元教師って言ってたけどこう言う仕事があってるのかも)

恭二(俺は……アイドル、どうやって楽しんでたっけ)

恭二(あんなに楽しくて達成感があって、嬉しかったのに―…夢が無くなった瞬間、全然分からなくなっちまった)

恭二(でもこれで良いんだ、俺の夢が破れた所で誰にも迷惑かけない)

恭二(……本当は、諦めたくない)


次郎「あー…うん、これはるいの方が良かったかなあ。贔屓目無しに」

類「really!?ミスターはざまは?」

道夫「私も舞田くんに一票だ。君の楽しそうな表情は情熱的だったよ」

類「Thank you!これで明日のauditionもclearしてみせるよ☆」

恭二(……当たり前だ。この人達は今の俺とは違う)

恭二(なのに、何でこんなに悔しい——)

道夫「…鷹城くん。君は大分技術があがったようだな。私とレッスンした時とは見違えたようだ」

道夫「でも、圧倒的に情熱…楽しむ気持ちが感じられない。舞田くんは技術面は君には劣るが…それをカバーする魅力があった。生きている魅力だった」

道夫「前に見た君は…技術こそ無かったが、情熱はあった。私に歯向かって来るやる気もあったしな」

道夫「鷹城くん、今日はまるで機械のようだったよ。実に惜しい」

恭二「……ッ!!」

類「実は俺、ミスターはざまからミスターたかしろの事聞いてたんだよね。近々beautifulなidolが出て来るぞ!って」

類「確かにミスターたかしろからは、学ぶ事が沢山ありそうだ。でも今日の君からはそれが感じられない」

類「何かあった?俺達で良ければ話聞くけど…Please talk me!」

恭二「何であんた達に…」

道夫「若き者の悩みを聞くのも教師の役目と言う事だ」

恭二「…教師って仕事は難儀なもんだな」


道夫「なるほど、それで君は自分の夢と引き換えに、相手の夢が叶う…逆に自分の夢を優先すれば相手の夢は叶わない、と……」

次郎「若いのに難しい事言うねえ、君」

恭二「そうスかね…」

道夫「今君のユニット…Beitはそんな問題に直面していると言う事か?」

恭二「まあ、そうなります。詳しくは言えないですけど」

類「I see. それがミスターたかしろの抱えてる悩みか…想像以上にbadだね…」

恭二「それで、俺は皆の夢を優先すべきだって言ったんスけど…プロデューサーがそれに怒って…俺も頭に来て」

恭二「プロデューサー殴って部屋から出てきました」

類「Oops…余計にbadだ…」

次郎「若いねえ…青春だよ」

道夫「山下くん、もうちょっと真面目に考えたらどうだ?」

次郎「だってそうでしょ?自分の夢を自分だけのものと思ってる辺り、何か若いなあって」

恭二「…どういう事スか?」

次郎「例えばさー、おじさん達も夢バラバラなんだよねえ。硲さんはアイドルで教育変えたいけど、るいはグローバルなアイドルになりたい」

次郎「俺なんかお金稼げればそれで良いわけよ。それでも、俺達ってチームなんだよね」


道夫「そうだ、こうは言っているが山下くんは最近実にアイドルに対して燃えている。情熱的だ」

類「この前もアイドルの雑誌読んで研究してたしね!」

次郎「そう言うのは言わない約束でしょー…まあ、そう言う事」

恭二「どう言う事だ?」

次郎「一人の夢が叶わない時点で、それはチームの夢じゃないって事」

道夫「私は舞田くんと山下くんの為に、そして私自身の為に日々尽力している。舞田くんも山下くんもそれは同じだろう」

道夫「君達だってそうではないのか?」

類「one for all,all for one.それは弱い証明じゃなくて、自分自身を、人を強くする誇りだよ☆」

恭二「……俺の夢が、皆の…?」

恭二(そう言えばプロデューサーも…"お前の夢を犠牲にしてピエールやみのりさんが喜ぶと思ってるのか!?"…とか、言ってたっけ)

恭二「……」


道夫「君のプロデューサーは若いし言葉で全てを伝えるのは難しいだろう。だが行き着く所はきっとそこに違いない」

道夫「帰りなさい。伝えるなら早い方が良い」

次郎「でも喧嘩はほどほどにねー。一応アイドルなんだし」

類「今度はperfectな状態でまた勝負しよう!次も負けないよ☆」

恭二「ああ…そうだな。先生ってヤツは、世話焼きが多いみたいだ」

恭二「ありがとう、目が覚めたよ」

類「行くの?」

恭二「行くよ。まだ何とかなりそうな気がする」 バタン


類「Foo!走ってった走ってった」

次郎「やー、若いねえ。おじさん久々に震えちゃったよ」

類「ミスターやましたもアツい事言ってたよ☆」

次郎「やだねー、若いのと一緒に居るとついつられちゃう」

道夫「あれで元気になってくれると良いが…」

類「No problem!ミスターたかしろ、目つき変わってた。あれなら大丈夫だよ」

類「…だからone more!もう一度だけ明日の確認させて!」

次郎「ええ~もう見るのも疲れたよ~。明日に備えて帰っといた方が良いって」

道夫「念には念を…か、私も見習ねばならないな」

次郎「硲さんはやる気……ま、もうちょっと付き合いますか」


恭二(何て言おう…謝るのが先か?)

恭二(でも謝るにしても…謝る事が多すぎる)

恭二(それより前に殴り返されるかもしれないな…顔は無い…として腹とか…)

恭二(まあ、それくらいなら) ガチャ

P「……おかえり」

恭二「…ただいま」

ピエール「恭二、こっちきて」

恭二「なんだよ」

みのり「おかえり、恭二」ゴッ

恭二「てっ…急になんスか」

ピエール「おかえり!」ドカッ

恭二「~っ!!いてぇよ!」


みのり「俺のは殴れないプロデューサーの分」

ピエール「ボクのパンチ、皆の分」

P「目、覚めた?」

恭二「あ……」

P「自分の夢も叶えられない奴に、人に夢を与える事なんて出来ないよ」

P「それに僕の夢は、3人の夢を叶えてトップアイドルにする事だから――」

P「恭二が自分の力で夢を叶える以外は、絶対に許さない」

恭二「……欲張りだな、あんた」

P「まあね」


P「あとごめん、僕本当は知ってたんだ…恭二が鷹城グループの人だって」

恭二「…あの会報誌、読んだんだな。捨てとけって言ったのに」

P「言えなくてごめん。あと裏切ってごめん」

恭二「別に裏切られてない」

P「…良かった」

ピエール「みのり、恭二とプロデューサーさん、笑ってる」

みのり「そうだね、ピエールのおかげだよ」

ピエール「…えへへ」


みのり「…さて、どうしようか。鷹城グループの件、蹴るにしても社長に…」

P「山村さん、これって社長知ってるんですか?」

山村「いや…不思議がってましたし鷹城くんが鷹城グループの社長の…って言うのは知らないはずです。気付いてるかもしれませんが…」

P「蹴っても仕事が無くならない方法…そんなの無いよなあ…」

恭二「…いや、無い事はないけど」

ピエール「恭二、何か方法、知ってる?」



恭二「……直談判に行く。返事はいらないって言われたけど、俺が返事しに行く」


ピエール「……」

みのり「……」

P「……いや、それはさ…」

恭二「じゃあ他に方法あるのかよ」

みのり「流石に恭二の負担が大きすぎるよ」

ピエール「恭二、そのまま幽閉される?帰って来ない?」

恭二「怖い事言うなよ…それはない、と思う」

P「…でも、唯一望みがあるとしたらそれかあ…僕も一緒に行くから、土台を固めてから行けば何とかなるかも」

恭二「本当か?」

P「でも危ない橋渡るのには変わりないから…社長に聞いてみないと」


みのり「どうするとかは考えてるのかい?」

P「んー、まず、今のレーベルに新曲のお願いをする。発売の目処が立った所で恭二と直談判に…っていうのだったら2ndシングルは出る」

ピエール「その先は?」

P「……直談判次第」

みのり「ま、まあそれは今までも変わらないから…」

恭二「あと2ndシングルが確定するんだったら写真集と一緒にイベント出来ないか?」

恭二「出来たらあいつに…親父に見てもらいたい。俺に力があるかどうか」

ピエール「アイドルの恭二見たら、きっと、わかってくれる!」

みのり「今度は恭二のお父さんを笑顔に、か…うん、やってみようか」

P「写真集発売ってあと2ヶ月ないくらいだけど…出来るのかな…」

P「それにまたスケジュール押すよ?良いの?」

恭二「アイドル出来なくなるかもしれないんだ。そんな事言ってる場合じゃない」

ピエール「恭二……」

P「いや、そんな事させないよ。絶対大丈夫にしてみせる」

ピエール「プロデューサーさん、かっこいい!」

P「あはは、まだ何もしてないよ…」


P「とりあえず僕は社長と直談判かな…」

みのり「前もこんな事あったね」

P「デビューシングルを出したいって社長に直談判しに行った時ですね…あの時も心臓バクバクだったなあ」

ピエール「次も、きっと大丈夫!」

P「そうだね…そう言われると心強いよ」

恭二「俺も出来る事をやる。やっぱり俺ひとりの力ではどうにもならない…悪いな」

P「最初から恭二の力でどうにかしようなんて思ってないよ」

P「Beitの問題なんだから、Beit全員で解決しないと」

恭二「…同じような事、S.E.Mの人達にも言われたよ」

P「えっ会って来たの?」

恭二「この前の—…ほら、俺が出て行った時に世話になった。教師って面倒だけど、凄い仕事だよ」

P「それでいてアイドルだもんなあ…凄いよ本当。今度お礼に行こうか」


 翌日 社長室前


P「いつ来てもここは緊張するなあ…」

P「……ま、今回は一人じゃないし」

恭二「俺は緊張してる」

P「大丈夫だよ、社長良い人だから」

P「……よし、行こう」

P「社長、失礼します。Pです」コンコン

齋藤「おお、Pくんか!入ってくれ!」


P「失礼します」ガチャ

恭二「…失礼します」

齋藤「おや?今日は鷹城くんも一緒かい?君との直談判は毎回ドキドキするよ」

P「こっちの台詞ですよ。…えっと、先日の鷹城グループの件でお話が」

齋藤「その件についてはこちらも困っていてね…どうして急に君たちが…」

恭二「あの…それは俺が家を飛び出したからです」

齋藤「…どういう事だ?」

恭二「俺、鷹城グループの人間です。親が社長で……でも俺は親から期待されてなくて…家から飛び出して315プロまで来ました。自分ひとりで何か出来る事はないかって…」

恭二「俺がちゃんと説明して来なかったから…アイドルとして成功すれば俺が戻って来るだろうと思ったみたいです」

恭二「…スイマセン、こんな事に巻き込んで」

齋藤「…そうだったのか……よく言ってくれた」

P「勿論、恭二も他のアイドルも本意ではありません…恭二はこんな事の為にアイドルになった訳ではないので」

齋藤「と、言うと?」

P「鷹城グループの話、蹴ろうと思ってます」


齋藤「しかしあそこまで大きな企業にこの事務所が太刀打ち出来るかどうかは…」

P「だから力を貸して欲しいんです。まず、2ndシングルのチャンスをBeitに下さい」

齋藤「でも別のレーベルから話が来ていただろう?その…鷹城グループが新たに作ると言う」

P「はい、ですから先手を打ちます。先に曲を用意してもらうつもりです。出来れば2ヶ月後には発売したいです」

齋藤「随分思い切った事をするな…確かに私達が世話になっているレコード会社やレーベルにはまだ鷹城グループは手を出していないようだが…」

恭二「それで、発売の目処が立った所で俺が直談判に行きます。あれでも親なんで…何かされるって事は無いと思います」

恭二「これは俺の問題です。俺に片をつけさせて下さい」

P「…僕も同行するので、よろしくお願いします」

P「もし、駄目だった場合…2ndシングルの先がどうなるか分かりません…」

齋藤「…そうだろうな。私も絶対大丈夫だと言う保証は出来ない」

P「あとはもしあちらにその気があれば…先日の写真集と2ndシングルの発売を併せてイベントをしたいと思っています」

P「その結果で決めてもらえば…と」

齋藤「なるほど。あちらも人間だ、もしかしたら分かってくれるかもしれない、と言う事か…どちらにしろ不確定…」

齋藤「悔しいが、私に出来るのは君たちがなるべく事務所に残れるように尽力するだけだ…不出来な社長で申し訳ないね」

恭二「大丈夫です。これは俺の問題なん……」

恭二「いえ、俺達Beitの問題です。俺達で何とかします」

P(恭二……)

齋藤「はは、頼もしいアイドルを持ったよ」


齋藤「そうだな…こちらとしても君たちが別のレコード会社に行ってしまうのは何としても阻止したい…」

齋藤「牽制、と言う訳ではないがBeitの公式HPを作る気はないか?」

P「公式HPですか?確かに今までは315プロのHP内のコンテンツでページがありましたけど…」

齋藤「JupiterとDRAMATIC STARSにはもう専用のHPがあってね…一応有料会員ページもある。…まあ、日記とかその程度だが」

齋藤「これはある程度会員数が増えたら、の話だが…ファンクラブ発足もあり得る」

齋藤「Jupiterの方はもうFC発足の準備が進んでいてね。これからHPの動向を見て、FCも増やす事になるだろう」

齋藤「どうだ。やってみないか?」

P「…! やります!!やらせて下さい!」

齋藤「相変わらずいい返事をするなあ君は!よし、それでは広報担当に話を進めておくよ。レーベルにも連絡をしておこう」

P「はい、営業は自分で行くつもりですが…一応よろしくお願いします」

齋藤「追って君の所に連絡が来るだろう。また忙しくなるな、頑張ってくれたまえ!私もサポート出来る所は全力でサポートするぞ!」

P「はい、ありがとうございます!それでは失礼します」

恭二「失礼します」 バタン


齋藤「…私としても、君たちを失いたくはないからな…」


P「はー……よし、これで首の皮一枚繋がった感じだ」

恭二「あとは直談判次第か…」

P「そう硬くならないで。何とかなるから」

恭二「どうだかな」

P「…それにしても社長、Beitの事買ってくれてるみたいだ」

恭二「ああ、でもこんな時に公式HPの立ち上げか…親父を刺激しなければ良いけど」

P「良いんじゃない?柔らかい感じの反抗だよ」

P「それにしても、鷹城グループの話蹴ったら315プロに骨埋める気持ちで居ないといけなくなったなあ」

恭二「物騒な事言うなよ…」

P「はは。…さ、事務室行って皆に報告しよう。これからが勝負だ」


 事務室

P「…と言う訳で、とりあえず315プロのページとは別にBeitのHPを作ってもらえる事になりました、と…」

ピエール「ほーむぺーじ?どんなかんじ?」

みのり「見てみようか?プロデューサー、PC借りていい?」

P「良いですよ。折角だし雰囲気見ておきましょうか。ついでにスマホでも見れます」ポチ

ピエール「わあ…!Jupiterのほーむぺーじ、かっこいい!」

みのり「961プロの時も同じようなのがあって、何度か見に行った事あるけど凄いかっこよかったなあ…」

みのり「載ってるのは簡単なプロフィールとディスコグラフィー…あと今後出る番組の一覧とかかな」

みのり「有料コンテンツは写真だったりブログだったりだけど」

P(…みのりさん、Jupiterの有料会員だったりしたんじゃ?)

恭二「ブログ書くのか?」

P「今は予定はないけど…書きたかったら書いていいよ。でもアップする前に僕がチェックするから当たり障りのないやつね」

恭二「難しそうだな」

ピエール「日本語、べんきょうなる?」

P「ああ~…そう言う意味では是非やりたい所だけど…まあ、広報担当の人次第かなあ」

みのり「あとオフショットとかあると嬉しいよね」

P「……ん?AltessimoのHP、近日公開予定…か。そっか、あの二人も頑張ってるんだね」

ピエール「また一緒にお仕事したい!」

P「そうだなあ、デビュー時期もそう遠くないはずだし、出来るかも…歌の上手い二人と一緒だと刺激になるしね」


P「…と、言う事で2ndシングルはとりあえず出す!」

P「だから今日はボイスレッスンしよう!最近写真集だ収録だでやってなかったから」

みのり「そう言われ見ればそうだね」

P「何事も基本が大事です。何があっても」

ピエール「ボク、久しぶりに歌いたい!」

P「よっしゃ!ビシバシいくぞ!」

恭二「……やっぱりあんたのそう言う所に救われてるよ」

P「ん?恭二何か言った?」

恭二「何でも無い。俺達の未来がかかってるからな…しっかりレッスン頼むぜ」

そう言えば総選挙結果発表お疲れさまでした
秋山クンSRおめでとう!
あとBeitこれからも応援しています


 数日後 レコード会社


P「社長がレーベルに話にすんなり話通した時は驚いたけど…事情を話したら2ヶ月後に発売って……出来るのかな?」

みのり「もし発売されたとして前のシングルとの間が全然空いてないけど大丈夫かい?」

P「次はシングル出すのもうちょっと開けましょうか…デビューシングルだって聞いて欲しいし」

恭二「シングルって出すまでの期間が決まってるのか?」

P「いや、そうじゃないけど…普通だったら最低3ヶ月は開くかな。やっぱり出したからにはある程度聞いて欲しいし」

P「スピードありすぎると一回休んだ時に飽きられかねないかも」

P「…3rdシングルが出せるかどうかはまだ未定だけどね」

ピエール「出す!絶対だす!」

P「そうだね、絶対出さなきゃ」

みのり「その意気だよピエール」

恭二「ああ、そもそもCD出すって不明瞭なものだろ、気にする事じゃない」

P「ありがとう皆。とりあえず2ndシングルの営業、行きますか!」


P「BeitのPです。今回もお世話になります」

「よろしくお願いします。お話を聞いた時は驚きました。この前デビューシングル出したばかりだと言うのに」

P「ええちょっと必要に迫られてるので…」

「…ああ、あの鷹城グループの件ですか。私としてもBeitの皆さんとは是非このままで居たいと思っているのですが…」

P「それはこちらも同じですよ。だから先手を取ろうと思いまして…」

「分かりました。今回はどう言う感じで行きましょう?」

恭二「あ…あの!もし良かったら作詞、俺にやらせてくれませんか?」

「へ?鷹城くんが?この前は3人で考えてましたけど、今度は一人で?」

P(えっ…ちょっと、聞いてないよ…!みのりさん、聞いてました?)コソコソ

みのり(いや、俺も初耳だよ…まあ、今回は恭二を中心にBeitの未来がかかってるから…)コソコソ

ピエール(恭二、いいなあ。ボクも作詞、したい!)コソ

P(ごめんピエール、今回は恭二に譲ってあげて)コソコソ

P「…ごほん、今回鷹城自身に少し新たな決意がありまして…もし宜しかったらなんですけど」

「良いですよ。この前のシングルの作詞も好評でしたし…」

恭二「! ありがとうございます」

「じゃあ今回はA面で鷹城くんを中心に、B面でピエールくんと渡辺さんを…B面はこちらで用意する形になってしまうと思いますが」

P「えっ2曲ですか!?大丈夫かなあ…そちらのご都合は…?」

「間に合わせて見せますよ。どうやらBeitの皆さんはやる気に満ちているみたいですしね」


「Beitの皆さんはこちらのレコード会社を選んでくれたんです。あちらに負けない曲を提供しないと」

P(貴方も大分やる気に満ちてるようだとお見受けしますが…ありがたい事です)


P「はあー…っとりあえず無事終わった。とりあえず恭二の作詞か…この前と比べて期間凄い短いけど大丈夫?」

恭二「問題ない。分からなかったら皆にも聞く」

ピエール「恭二、ボクの事、たよる!」

恭二「…そう言う事もあるかもな」

P「あれ?いつもはそんな事ない、とか言ってるのに」

恭二「そう言う屁理屈言ってられないくらい結構やばい。みのりさんにも手伝って欲しいっス」

みのり「良いよ。言葉選びは月並みだろうけど」

P「じゃあ、とりあえず今日もレッスンしようか!…って言っても午後までは僕も自分の仕事が…」

みのり「自主練か、しっかりステップアップしないとね…頑張るよ」

P「みのりさんって努力家ですよね」

みのり「努力は出来るうちにしておかないと」

恭二「俺もそう言う所、見習った方が良いか?」

P「良いよそのままで、恭二は頑張ってる」

ピエール「ボクも頑張ってる!ほめてー!」

P「もちろんピエールだって頑張ってるよ!どんどん課題クリアしてるし、自主練の結果ではたこ焼きおごってあげるよ」

ピエール「!! ボクがんばる!たこやき!」


 事務室


P「んー…まだ詞も曲ももらってないけど衣装はもう手配しないとまずいよなあ…」

山村「Pさん、どうかされました?」

P「あー、いや、無事こっちのレーベルからシングル出せそうなんですけど、それの衣装が…」

山村「急な話ですもんね…新規に衣装を、っていうのは厳しいですか?」

P「はい…でもこの前の衣装じゃ変わり映えしないしなあ…と思って」

P「…あ、そうだ。この前やったファーストライブイベントの衣装ってまだあります?」

山村「ありますよ。あれなら1度しか着てないからあり…かな?デビューシングルの衣装とは違う雰囲気でしたしね」

P「HPの雰囲気を2ndシングルの感じでまとめたいし…うん、これで行こう」

P「あとは今回の雰囲気と合うかどうかかな…多分行けると思うんですけど」

P「1曲目と少し違う感じになったら良いかなあ、と思ってはいて…恭二の歌詞次第かな」

山村「意外と合わせてみればどんなのにでも合いそうですけどね、あの衣装」

P「そうですかね?山村さんがそう言うなら……」

山村「頑張って下さいね。…僕もPさんに居なくなられると寂しいですから」

P「…当たり前じゃないですか。やだなー辛気くさい」

山村「その調子だと大丈夫そうですね」

P「…さ!あとはイベント会場を押さえてCDと写真集に整理券を…いや同時購入特典…うーん…」


みのり「…恭二、声が硬くなってるよ。スタッカートみたいになってる。空気の出し方…?が硬いのかも」

恭二「あ…はい、スイマセン」

ピエール「恭二、いまからキンチョー?」

恭二「…そうかもしれない」

みのり「そっか、一応発売の目処も立ったし直談判に行かないといけないか…」

恭二「ああ、絶対に何とかしてみせる。親父を説得しないと」

ピエール「恭二、パパと仲悪い?」

恭二「まあ、こんな事になってる時点で仲良くはないよな。ついでに兄貴とも険悪だよ。親戚とはまあ、何人か普通に話せるけど」

ピエール「そう……」

恭二「何でピエールがそんな顔するんだ?」

ピエール「な、なんでもない…」

ピエール(恭二もボクと同じ…)


みのり「…まあ、家族とは一緒に居られる内に仲良くしておくべきだとは思うよ。俺はね」

ピエール「!」

恭二「俺はそんな風には思えないんスけど…」

みのり「いずれ分かるって」

みのり(家族と居る時間ってずっとじゃないし、だからこそなんだけど…)

ピエール「ボク、恭二と恭二のパパ、仲良くなって欲しい」

恭二「無理だ。俺の事、息子だって思ってるかも怪しい」

みのり「そういうつもりで行くと成功するのも成功しないよ?」

みのり「争いは別の争いしか生まないからね」

恭二「……そういうもんですかね」

みのり「そうだよ」

みのり(…俺だってそうだったんだから)

ピエール(家族とは一緒に居られる内…か、難しい…みのりは正しい事をたくさん知ってる)


P「みんなー調子どう?はい、ポカリどうぞ」 ガチャ

恭二「ああ、サンキュ」

ピエール「プロデューサーさん、お仕事した?」

P「うん、衣装についてと公式HPについて。衣装はこの前のファーストライブイベントの衣装になりそうかな」

みのり「今回はアクティブな感じだね」

P「だってよ恭二」

恭二「ハードル上げるなよ」

みのり「期待してるよ」

P「それで2ndシングルのジャケットと公式HPの撮影はもうやらないといけなくて…急だけど明後日撮影するよ」

P「仕事的に言えばプロモーション撮影…って感じかな。色々混ざってるけど」

みのり「まだ曲も歌詞も出来てないけど…大丈夫?」

P「と、とりあえず前回よりはかっこいい、クールなイメージで…って大雑把な希望で…」

ピエール「かっこいい!?」ガタッ


P「えっピエールどうしたの?」

ピエール「ボク、かっこよくなりたい!プロデューサーさん、方法教えて!」

P「い、いやっ急に言われても…!っていうかどうして…」

みのり「ピエール、ファンレターでいつもかわいいって書かれてるからかっこよくなりたいんだって」

恭二「贅沢な悩みだよな」

P「あー…なるほど…そうだ、この前撮った写真集にかっこいいピエールの写真ってあると思うよ」

ピエール「ホント!?…でも、いまかっこよくなりたい」

P「恭二の真似してみれば?クールな感じするじゃない?」

ピエール「んー……こう?」 キリッ

恭二「やめろよ、しかも似てないし」

みのり「結構似てると思うよ?」

P「まあピエールはかっこいい顔も出来るんだからさ、HPの時はファンの娘たちをびっくりさせてやろうよ」

ピエール「ウン!ボク、かっこよくなる!」


P「あ、あと公式HPが出来た所で2ndシングルと写真集発売の告知をしようと思う。それのイベントの告知も」

みのり「恭二のお父さんにぶつける気満々だね?」

P「そんな大それた事では…まあ、行く気はないですってつもりではあるけど」

恭二「出版社は親父が手出してるらしいけど…写真集出せるのか?」

P「うん、確認したけど作業が進んでるからとりあえず初版は行けそう。校正がもうすぐこっちにも来るはず」

みのり「そっか、ひとまず最悪出せないって事はないのか…一応良かった、のかな?」

P「首の皮一枚繋がった程度ですね……とりあえず喜びましょう」

ピエール「プロデューサーさん。ボクのかっこいい写真、ある?」

P「校正来たら皆で確認しようか」


 数日後 撮影スタジオ


「少し右向いてこっち見てもらって良いですかー、あ、いいかんじですー」

ピエール「ボクのこと、かっこよくとれてる?」

「はいーばっちりですよー」

みのり「ピエール、嬉しいからってまだ笑っちゃ駄目だよ」

ピエール「はあい」キリッ


P(写真集の時もそうだったけど…こう言う路線もいけるんだなあ…かっこいい系のBeitもあり、と)

P(今回は前回のイメージも損なわない程度だけどいつかもっとギラギラ……いや、まず目の前のシングルに集中だ)

P(そう言えば恭二、歌詞の方はどうなってるんだろう…もう書いてるのかな?)

「はい、カメラ確認とセット変えるんで一旦休憩ですー」

みのり「はい、了解しました。ありがとうございます」

恭二「お疲れさまです」

ピエール「ふいー、皆も休んで!これプロデューサーさんから!」

「わー、ありがとうございます!ピエールくんは本当良い子ですねー」



P「どうですか?初めてのアイドル像は……って言ってもファーストライブと衣装同じだけど」

みのり「やれば何とかなると言うか…さっき画像見せてもらったら何とか形になってたよ」

恭二「この衣装初めて着た時はどうなるかと思ったけどな…色々出過ぎだろこの衣装」

ピエール「ボク、かっこよくなってた!うれしい1」

P「皆が納得してくれてて良かった。僕のプロバカだったらどうしようと思ってたよ」

恭二「プロバカ?」

P「プロデューサーバカのこと」

みのり「ふふ、プロデューサーは俺達を大事にしてくれてるからね」

ピエール「プロデューサーさん、おばか?」

P「んん~…Beitのことがすきってこと」

ピエール「……んふふ~」

恭二「何照れてんだよ」


「じゃあ先にピエールくんと渡辺さん、お願いしますー」

ピエール「はーい!プロデューサーさん、恭二、いってきまーす!」

みのり「行って来るね。駄目だったらアドバイス欲しいな、かっこいい雰囲気ってまだよく分かってないから」

P「十分かっこいいですよ、自信持って」

みのり「ふふ、ありがとう」

恭二「…行ったな」

P「カメラ同時に使えるの2台までだからね」

P「あ、そうだ。どう?歌詞の調子は」

恭二「それなり…ってところだな。今みのりさんに見てもらってる。ついでにピエールにも見てもらうか」

P「また僕には見せてくれないやつ?」

恭二「あんたには完成品を見せるだけで良いんだよ」

P「もうちょっと頼ってくれても良いのに……」

恭二「親父に直談判する時はどうせ死ぬ程世話になる」


P「…恭二のお父さん、そんなに怖い人?今直談判のアポ取りしてるんだけど」

恭二「怖い…だろうな、人から見れば。でも俺は出来悪かったし関心無さそうだったぜ」

恭二「だから余計怖いのかもな。ちゃんと見てもらった覚えが無い」

恭二「正直どうやって向き合えば良いのか今でも分かってない。大体叱られてばっかりだったし」

P「……そっか」

恭二「兄貴の方が大分出来る奴だったから……次男の方が要領よく育つって言うだろ、あれ嘘だよ」

P「それってあの…この前の会報誌に出てた役員の人?」

恭二「ああ。世界平和の為に鷹城を継いだ偉い奴だよ。俺とは違って頭も良いしな」

P「恭二だって少なくともBeitではキレ者で、器用で気が遣えるし僕も恭二に頼ってる」

恭二「……そうかよ」

P「僕、恭二の事頼り過ぎかな?」

恭二「良いよ、別に」


P(アイドルやり始めた頃、親の期待に応えられなくて家飛び出して…って言ってたっけ)

P(多分今の恭二は家族の事がコンプレックスになってるんだろう)

P(そう言う所、取り除いてやれたら良いんだけど…今度の直談判でどうにかなるかな)

P(…どうにかしなくちゃ。恭二はそのままでちゃんと、魅力的なアイドルなんだから)

「ピエールくん終わりましたー。次は鷹城くんお願いしますー」

恭二「呼ばれた。行って来る」

P「…うん、行っておいで」

P(恭二は自分で選んでここまで来て、アイドルになって、自分が何が出来るかって向き合おうとしてる)

P(それは下らない事なんかじゃないし、遊びでもないよ)

P(……それだけは恭二のお父さんに、分かってもらいたい)


みのり「あ、恭二。この前貰った歌詞の事なんだけど」

恭二「? 何か気になる所ありました?」

みのり「ううん、とっても良かった。沢山悩んでるんだなって分かったよ」

みのり「恭二の言葉選びは間違ってないと思うし、言い回しとか日本語は多分俺が書くよりちゃんとしてる」

みのり「だからアドバイスはしないよ」

みのり「恭二の思うまま書けば良い。俺達もプロデューサーも、それが一番だって思うだろうから」

恭二「……そう言うもんスかね」

みのり「ピエールもそう思うだろ?」

ピエール「? ウン、みのりのいうとーり!」

恭二「ピエール何の事だか分かってないだろ」

ピエール「分からないけど、みのり多分、間違ってない」

みのり「ほらね?」

恭二「分かったよ、最後まで自分でやってみる。ありがとう、みのりさん。あとピエールもな」

「鷹城くん、2番のカメラで交代お願いしますー」


恭二(俺の思うまま…か)

恭二(俺はどうなりたいんだろう、どんな姿を見せたいんだろう)

恭二(…親父に、なんて言いたいんだろう)

恭二(自分に、支えてくれる仲間にどんな言葉を贈ろう)


ピエール「…ねえみのり。ボクたち、このまま恭二とプロデューサーさん、見てるだけ?」

ピエール「笑顔で待って、二人の頑張り見る。それだけ?」

ピエール「…それだけしか出来ない?」

みのり「……ピエール…」

みのり「俺たちが直談判や恭二の家族の問題に首を突っ込む訳にはいかない」

みのり「これは恭二自身の問題だから…恭二が解決したいんだと思う」

みのり「恭二のやりたい事に俺たちが出しゃばるのは、多分恭二も嬉しくないんじゃないかな」

ピエール「……そっか。ウン、わかった」

みのり「…でも、」

ピエール「でも?」

みのり「それを応援したり、勇気づけたりするのは俺たちにしか出来ない事だよ」

みのり「俺たちなりの方法でね」

ピエール「……!」


P「ピエール、みのりさん?何ですか耳打ちなんてして」

みのり「ああ、いや…作戦会議だよ」

ピエール「ウン、プロデューサーさんにはないしょ!」

P「さっきも恭二に書いてる歌詞内緒って言われたんですけど…僕ってそんなに頼りないですか?」

みのり「それは違うよ、頑張った姿を見て欲しいんだ」

P「頑張った姿?」

みのり「俺たちに任せて良かった、俺たちをプロデュースして良かったって思わせたいって事だよ」

ピエール「プロデューサーさんのこと、びっくりさせる!」

P「……そっか、うん。僕は皆の事信じてるから、これからはあんまり言わないようにするよ」

ピエール「あんまり聞かれない…それ、逆に寂しい」

P「ははっわかった、時々様子聞くから」


みのり「ところで明日はレッスン以外は特に無かったよね?」

P「え?はい、確かに夕方までのレッスンだけですけど…」

みのり「よしじゃあピエール、明日だね」

ピエール「わかった!」

P「…何かするんですか?」

みのり「プロデューサーには内緒の秘密会議」

P「分かりました。くれぐれも気を付けて」

ピエール「やったー!」

P(今までこんな事なかったけど…何するつもりなんだろう?)

続編来てたの今気づいた!
BeitもPもどっちも好きだー続き楽しみにしてる!

>>125
Beitは良いアイドルって布教の為に始めたので、このssに出て来るPの事も好きになってくれるとは思わなかった。ありがとう
今週末くらいに終わりそうだからもうちょっと付き合ってくれると嬉しい


 翌日 レッスンルーム

P「…よし、今日のレッスンはここまで!皆お疲れさま」

恭二「夕方までぶっ通しだと流石にキツいな……」

みのり「久しぶりに筋肉痛になりそう…」

ピエール「へろへろする…」

P「僕も疲れた…けど途中からS.E.Mの皆さんも一緒にレッスンしてくれて、ありがとうございました」

類「Non!俺達も良い刺激になったよ!thank you!」

次郎「若いって凄いねー。あ、渡辺くんはおなじくらいか……じゃ、もうちょっと頑張んないとだめか…」

道夫「…鷹城くん、前会った時とは見違えたようだ。良い顔をしている」

恭二「あ…はい、あの時はありがとうございます」

P「僕からもお礼を言わせて下さい。恭二がお世話になりました」

ピエール「恭二、何した?」

みのり「ほら、この前の……」

恭二「二人は黙ってろ」

ピエール「わっ恭二おこった!」

みのり「あれは照れてるんだよ」

恭二「……」


道夫「…楽しそうだな、君達は」

恭二「そういうもんスかね…」

類「KIRA☆KIRAしててso goodだよ!」

P「あはは…すいません、今日はありがとうございました」

次郎「いいって事よ、もっと有名になったらサインちょーだい。お高い値段で売っちゃうからさ。そんじゃ、またね」 バタン



P「……S.E.Mって面白い人達揃ってるね」

恭二「俺もそう思う」

みのり「でも、皆良い人たちだね。アイドルとしても頑張ってる」

ピエール「負けてられない!」

P「負けん気強いなあピエールは」


P「そうだ、CD発売と写真集発売記念イベント、箱押さえたよ。キャパは1000人くらい」

ピエール「やった!ボクたち、またファンのみんなに会う!」

みのり「そう言えばまだ何するか決めてなかったね」

P「皆は何がしたい?」

恭二「それ、言うと思った」

P「希望は聞かないと」

みのり「うーん、CD発売だから新曲歌いたいけど…今回で2曲…デビュー曲も合わせて3曲じゃライブとは言えないよね」

ピエール「それにもっと、ファンのみんな、びっくりさせたい!」

恭二「そうだな…親父が見る可能性だってあるし、度肝抜くような事がしたい」

P「握手会もサイン会も一通りの事やったからね…うーん…」

恭二「…! なあプロデューサー、サプライズって出来るか?」

P「サプライズ?」

恭二「表向きは握手会かサイン会にして、サプライズで新曲をやる。前のサイン会では歌わなかったし、多分予想してる人は少ないはずだ」

ピエール「サプライズ、ファンのみんな、喜んでくれる!?」

みのり「そうだね…サプライズと言う手前長い間歌う訳にいかないから…逆に良いかも。お客さんの反応も楽しそうだ」

P「これは出来ないとは言えない雰囲気だな~…うん、やろう。僕もそれが良いと思う」

P「あと1000人規模だったら握手会の方が良さそうかな。サイン会だと裁くのに時間が掛かりそうだから」

恭二「よし、頼んだぜ」


みのり「……あ、ピエール。俺たちはそろそろ行かなきゃ」

ピエール「ほんとだ!恭二、プロデューサーさん、ばいばーい!」

P「はいはい。ちゃんとシャワー浴びてから帰る事ー!お疲れさまでした!」

恭二「…何だあの二人、何かやるのか?」

P「僕には秘密の作戦会議だって。恭二も言われてないって事はあの二人だけみたいだ」

恭二「今までプロデューサーはハブられてた事あったけど、俺は初めてだな」

P「……これがその寂しさだよ」

恭二「なるほどな…じゃあ俺は歌詞でも書くか。まだ事務室使っても良いよな?」

P「家で書かないの?」

恭二「ここの方が集中出来る」

P「好きなだけ居れば良いよ。僕が帰るまでだけどね」


 事務室

prrrr……prrr……

P「はい、もしもし315プロダクションのPです――はい、わかりました。来週の火曜日…、はい。よろしくお願いします。失礼します」ピッ ツーツー

P「……はあー…」

恭二「? プロデューサーどうかしたか?」

P「恭二、直談判の日にち決まったよ。来週の金曜日だって」

恭二「…って事は歌詞送る日と一緒だな。それまでに終わらせるよ」

P「一応ピエールとみのりさんにも言っておこうか。とりあえずLINEで良いかな…」

恭二「親父から直接だったか?」

P「ううん、秘書の人かな?この前も今回も話聞いてくれたのは女性だったよ」

恭二「……親父、やる気なさそうだな」

P「そうなの?」

恭二「多分俺達の話聞く気ないぜ。本当にやる気があるなら俺の時みたいに自分からかけて来るはずだ」

P「そっか…じゃあ聞いてもらえるように、一生懸命やるしかないね」

恭二「もっと何か無いのかよ。対策とかさ…俺もよく分かってないけど」

P「僕はただ、皆の気持ちを聞いてくれるように代弁するだけだよ。勿論自分の気持ちも言うけど…」

P「恭二だって、自分で思ってる事言わないとね」

恭二「…俺?」


P「恭二は自分でお父さんと向き合わないと…多分今でも、ずっと家に縛られた気持ちのままだと思う」

P「だから自分で言わないとさ、ずっとお父さんに言いたかった事、言えないままだよ」

恭二「……どうだろうな、考えておく」


恭二「無駄話しすぎたな。俺は歌詞の続きを書く」

P「まあ休憩だと思ってさ。僕も仕事しないとなあ…」 prrrr……prrrr……

P「わっまた電話だ…もしもし、ああーはい、公式HPの……はい、問題ないです。それで告知なんですけど…」

恭二(……忙しそうだな)

P「はい、それではよろしくお願いしますー失礼します。……ん?」

P(恭二、真剣な顔で歌詞書いてる)

P(どんな歌詞に、どんな歌になるんだろう……楽しみだな)


恭二「……」ピタ

恭二「……いや、こうじゃないな」

恭二(最初書いてる時はもっと荒っぽい感じだったけど…)

恭二(何だろう、Beitで居る自分はひとりの時より優しくなれる)

恭二(優しいとか支えられてるとかは、多分悪い事じゃない。一人じゃ何も出来ないことが分かった)

恭二(ピエールもみのりさんも……それにプロデューサーも、どこか不安なままここまで来てくれた)

恭二(ひとりじゃ不安なまま歩けない、だけど今こうして歩き出せてるのは——)

恭二(みのりさんは俺が書くそのままが正しいって言った。ピエールもそうやって笑った)


恭二(…よし、いい感じだ。このまま行こう)

恭二(このままこうして、優しい気持ちでいたい。それを伝えたい)


 数日後 事務室


山村「Pさん、写真集の校正届きましたよ」

P「ありがとうございます!すぐ皆と確認しないと…」

ピエール「!! 写真集、見る!」

みのり「ピエール、ずっと気になってたもんね」

恭二「これで半目とかあったら笑えるよな」

P(…とと、もう寄って来た。皆楽しみにしてたんだなあ)

P「よっしゃ、じゃあ確認しようか」ペラ

みのり「うわ、何か恥ずかしい…」

P「何言ってるんですか、キマってますよ」

ピエール「恭二、にーってしてる!朝ごはんあーんしてる!」

恭二「うるさい、そんな事言ったらピエールは次のページベッドで上半身裸だろ」

P「うん、どれも良いショットだと思うよ。…スケジュールはとんでもなかったけど……」


P「あ……教室のショットだ」

みのり「ふふ、皆良い顔してるね」

恭二「…こうやって写真になれば意外と気にならないな。コスプレに変わりはないけど」

P「だからーアイドルの場合別にコスプレじゃないんだって」

ピエール「えへへ、また学校行きたい!」

P「なんだかんだ皆楽しそうだなあ……うん、僕は特に気になった所ないけど皆は平気?これでOK出すともう直しがきかないから」

ピエール「う~ん、ない!まんぞく!」

みのり「俺も上手く出来てると思うよ」

恭二「俺も別に…写真集何冊も持ってるみのりさんが言うなら平気だろ」

P「それもそっか。イベント参加券も特に問題ないし…うん、大丈夫。じゃあメール出しておくから」


みのり「じゃあピエール、そろそろ行こうか」

ピエール「うん!」

P「最近二人でよく一緒に居るけど…何してるんですか?」

みのり「秘密の特訓だよ、もう少し待ってて。今追い込みだから」

恭二「もう少しで分かるのか?」

ピエール「わかる!お楽しみに!」

P「危ない事じゃないなら良いけど…恭二が寂しがってるよ」

ピエール「恭二、さみしい?」

恭二「別に寂しくはない」

みのり「ふふ、じゃあ行ってきます」

ピエール「いってきまーす!」 バタン


P「……あの二人、何してるんだ?本当に恭二、何も聞いてないの?」

恭二「一言も」

P「……さみしいなあ」

恭二「俺は別に寂しくない」

P「いや、僕が寂しい…はあー…仕事しよ……」

恭二「あんたなあ…いや、何でも無い」


恭二「じゃあ俺も隠し事するか…」

P「ええ?やめてよもう僕耐えられないから」

恭二「そうじゃなくて、出来た」ペラ

P「出来たって何が……あ、これ今度の新曲の歌詞?」

恭二「ああ、まだ多少直すつもりだけどな」

恭二「…自分の気持ちって言うのに自信が持てなくてさ。衣装みたいにアクティブな感じじゃないかもしれないし」

P「良いよそんなの。読むよ?」

恭二「目の前で読むなよ、俺あっち行ってるから」

P「はいはい分かったわかった」

P「……」

P(意外と明るい歌詞だ。もっと青二才的な感じかと思ってたけど)

P(これ、恭二の事なんだろうな…”みんな同じ不安抱えて支えあえる”か…)

P(僕も支えてもらってるよ、皆に)



恭二「…おい、何か言えよ」

P「え?ああ、ごめん見入ってた…。この状況で明るい歌詞なのにびっくりしたけど、凄い良い歌詞だと思うよ」

恭二「あんた、そればっかりだな」

P「え?」

恭二「良いしか言わない」

P「だって本当の事だよ。それにこれ、恭二の事なんだろうし」

恭二「まあな。Beitの自分でしか出来ない、Beitの3人で…それであんたも含めて4人でやりたい事がある」

P「……そうだね。じゃあ出来たらそこのPC使ってwordで打ち出しておいて」

恭二「分かった」

P「あと、デビューシングルより歌詞が正直でいいと思う」

恭二「……あっそ」

P(あれ、もしかして照れた?)


P(…さて、恭二も帰ってしばらく経ったけど……)

P「恭二の歌詞、どんな歌になるんだろう」

P「ピエールとみのりさんは何やってるんだろう…楽しそうだけど」

P(楽しみな事が沢山ある。Beitには未来が沢山待ってる)

P(ここで終わらせる訳にはいかない、皆の夢を叶えたい)

P(多分それが僕のやりたい事で、今の僕の夢なんだろうから)

P(だから恭二のお父さんにもちゃんと分かってもらわなきゃ)

P「……今の僕、そればっかりだなあ」

P「…仕事しよ。山村さんも帰っちゃったし僕も早く帰らないと」

>>131
誤字
×:P「はい、もしもし315プロダクションのPです――はい、わかりました。来週の火曜日…、はい。よろしくお願いします。失礼します」ピッ ツーツー
◯:P「はい、もしもし315プロダクションのPです――はい、わかりました。来週の金曜日…、はい。よろしくお願いします。失礼します」ピッ ツーツー


 翌週 金曜日


P(あー…ついにこの日が来た)

P(恭二のお父さんに…鷹城グループの社長に直談判…)

P「やばい、すごい緊張してきた」

P(いや、恭二も居るんだし怖がってたら駄目だ。出来る出来る…)



P「はー…よし。…おはようございます!」ガチャ

P「…あれ、ピエールとみのりさん?」

ピエール「プロデューサーさん、おはよう!」

みのり「おはよう。朝から元気だね、今日持って来たコスモスみたいだ」

P「あ、お花ありがとうございます。…何か二人嬉しそうですね?」

ピエール「ソ、ソンナコトナイ」

P(…これは二人の秘密の特訓が終わった感じかな?)

みのり「今日だったよね、恭二の実家に行くのって」

P「はい…今から緊張してます」

みのり「俺たち何も出来なかったけど、応援してるよ。辛い事があったら何でも言って」

P「ありがとうございます…でも事務室入ったら二人が何か楽しそうで、安心しました」

P「恭二も多分緊張してるから、きっと二人の事見て安心すると思います」

ピエール「…! ふふ~」

P「ピエール何笑ってるんだ?」

みのり「恭二が来ればきっと分かるよ」

山村「あ、おはようございますPさん。何か楽しそうですね」

P「二人が楽しそうなんですよ」

山村「相変わらず元気で何よりです」


恭二「おはよう」ガチャ

ピエール「みのり!恭二きた!」

P「おはよう恭二。…寝れた?」

恭二「親父に会うだけだ、別にどうって事ない」

みのり「さて、揃ったみたいだ。恭二、プロデューサー、ちょっとこっちに来てくれる?」

P「? 何ですか?」

恭二「何だよ来たばっかりなのに」

みのり「良いから良いから」

ピエール「……」チラ

みのり「……」チラ


ピエール「じゃーん!ボクとみのりから、プレゼント!」


P「……CD?」

みのり「聞いてみて、出来たら今すぐ」

恭二「良いけど…何のCDだ?」

P「まあとりあえず聞いてみて…CDプレーヤー、っと…」カチャ ウィーン…


 ♪夢の数だけ愛が生まれる
http://youtu.be/N6iJ-_cAnnc



恭二「……これって、」

みのり「俺たち、今回の件で何も出来ないから…何か出来ないかなって思って。力になりたかったんだ」

ピエール「レーベルのオニイサンと協力して、作ってもらった!」

みのり「曲も作れないし、やろうって思った時にはもう歌詞も書く時間無くて…ただイメージを伝えて応援歌作って欲しい、ってお願いして」

みのり「毎日レコード会社行って、練習したり収録したりしてたんだ。まだ曲は完成してないって言ってたけど」

ピエール「これ、ボクたちの応援歌。ボク、出来る事少ない。けど、何かをしないといけない人のこと、支えたい」

みのり「今日に間に合って良かった。恭二とプロデューサーが鷹城グループに行く日までには何とか伝えたかったから」

恭二「……」

P「…ありがとう。凄く元気の出る歌だよ。二人の声聞いてると安心する」

ピエール「…嬉しい!秘密の特訓、して良かった」

恭二「……」

みのり「恭二…駄目だった?これ恭二の書いた歌詞の歌のB面になる予定なんだけど…」

恭二「…こっち見ないでもらって良いスか」

ピエール「あーっ!恭二泣いてる!」

P「あっこらピエール!」

恭二「泣いてねえよ…」


恭二「泣いてないけど、その…嬉しい。二人がそうやって励ましてくれた事とか、力になりたいと思ってくれた事とか」

恭二「…一人だったら絶対出来ない事だから」

P「恭二……」

ピエール「一人じゃない、良い事。素敵な事。ひとりじゃないだけで、笑顔が増える」

みのり「俺もその通りだと思う。恭二が一人で抱え込むのやめて、本当に良かった」

恭二「勇気出て来た。これで親父の事倒せそうだ」

P「…ふふ、本当にありがとうございます。絶対良い結果持って帰ってくるんで…待ってて下さい」

みのり「うん、信じて待ってるよ」

ピエール「二人なら、絶対大丈夫!」

恭二「任せとけ」

P(あ…恭二が笑った)

P(何か僕も大丈夫な気がして来た。…二人の歌と恭二の笑顔か…うん、大丈夫だ)


P「いい返事だね恭二。…行こうか、このCD車に積んで聴きながら行こう」

みのり「いってらっしゃい。…こうやって俺達が送り出すのって、珍しいね」

ピエール「いってらっしゃい!良い子でお留守番する!」

P「はは、いつもと逆だ。…行ってきます!」

恭二「行ってきます」 バタン



P「……恭二、目赤くなってる」

恭二「そう言うのは黙っておけよ…」

P「車のなかで拭いておきな」

恭二「わかってるよ」

P(…嬉しかったんだな)


 鷹城グループ ビル前


P「…着いた。恭二、大丈夫?」

恭二「平気だ。あんたこそ縮こまってないだろうな」

P「大丈夫、二人の歌聴いてたし」

恭二「そうだろうな、顔が余裕そうだ」

P「恭二もだよ、安心した」

P「…とりあえず入ろうか。多分受付で話が通るようになってるはず」


P「すいません、315プロダクションのPと申します。本日11時から社長にお話が…」

「はい、かしこまりました。少々お待ち下さい」

「…確認取れました。社長室でお待ちです」

P「ありがとうございます。恭二、行こう」

「恭二様、お父様もご帰宅されるのをお待ちですよ」

恭二「! …そうですか、ご心配ありがとうございます」

P(恭二、目が笑ってないけど…)


P「それにしても大きなビルだなあ…」

恭二「確かに315プロよりでかいな」

P「うちの自社ビルも凄いなあと思ったけど、これには負けるかも…」

恭二「別にビルの大きさで会社の善し悪しが決まる訳じゃないだろ」

P「いやでもこのビルは威圧感あるでしょ」

P「…っと、ここか」

恭二「開けるぞ」

P「いや、待って…ううん大丈夫、いける」

恭二「大丈夫かよ」

P「僕が開けるよ。…先日お話を頂いた315プロのPです」コンコン

「ああ、入れ」

恭二「…親父の声だ」

P「……失礼します」ガチャ


「君がPくんか。うちの息子がお世話になっているようで…」

P「いえ、こちらこそ鷹城くんに頼りっぱなしで…」

恭二(プロデューサー、嫌に下手に出てるな…別にこんな奴にへこへこする必要は)

「…ん?恭二も来ていたのか」

恭二「……まあな」

P(……)

恭二(おいプロデューサー、早く本題に入ろうぜ。焦らしても無駄だぞ)

P(いや……もうちょっとだけ。ちょっと任せてみて)

「こんな出来損ないに頼るとは、プロデューサー…いや、事務所の方針が疑われるな?」

P「アイドルのやりたいようにやらせる、がうちの基本方針ですので」

「なるほど。とても優しい……いや、生温いと言った方が良いか。しかし君はプロデューサーとして絶対的な成功を前に不確かな道を歩ませるつもりか?」

P「どうでしょうか?私は鷹城グループの援助がなくても必ず成功すると思っていますが」

恭二「……!!」

「ほう?」


P「鷹城くんがわざわざご実家を出てまで315プロに来た理由をご存知ですか?」

「私の人形みたいになるのはごめんだ――そう言っていたかな?実に馬鹿息子らしい理由だと思うが」

P「そうでしょうか?実際、鷹城くんは初めてアイドルと言う道を自分で歩もうとしています」

P「私が知る限り、とても充実した……新たな達成感と言うものを本人に生んでいるみたいです」

P「それは人として大事な価値になると思いませんか?恭二くんのそう言う姿を一度でも、見た事がありますか?」

「……」


恭二「……俺が一人で立てないって言ったな」

恭二「その通りだ。俺は一人じゃ何も出来ない。Beitのふたり……それにプロデューサーが居なかったらとっくにあんたの事をブン殴ってる」

恭二「それが出来ないのは……しないのは、皆が居るからだ。ひとりじゃない、誰かが俺を待っていてくれている、求めていてくれるから我慢が出来る」

恭二「一人で立てないのは悪い事じゃない。俺だってきっと、何かを誰かに与えてる」

恭二「アイドルになってそれを知ったんだ。どうしようもない馬鹿息子でも、誰かのお陰で立てる。支えられてる」

恭二「そういうのは、あんたの力があっても実感出来ない。俺ひとり―…いや、皆と力を合わせてやっと感じられる、大事な気持ちだと思ってる」

恭二「お願いだ。俺に315プロのアイドルとして、ステージに立たせてくれ。俺は俺の力を試したい」スッ

P(恭二……そんな風に思って……)

P「鷹城くんもそう言ってます。彼を父親として、見守ってはくれないでしょうか?」スッ

「……は、下らん幻想だ」

恭二「ッ……」

P「……ご存知かもしれませんが、Beitは2ndシングルと握手会、HP開設の話が来ています」

P「貴方が何と言っても私は鷹城くんの夢を叶えるつもりです」

「宣戦布告と取っても構わない、そういう事だな?」

P「はい。私は今のBeitを信じていますから」

P(これ以上は正直厳しい……やっぱり駄目か……?)

P(僕が…恭二が何を言ってもこの人には届かないのか――)



「そこまで言うなら、一度様子くらい見てみてるのはどうでしょう?」ガチャ


恭二「え?」

P(……え!?誰かドア開けて入って来た?)


「あら叔父様、相変わらず素敵なステッキ。ふふっ」

恭二「楓……?何やってんだこんな所で」

楓「ごめんなさい恭二、叔父様に用事があったのだけれどあまりにも長いのでつい……お取り込み中だったみたいね」

P(え……この人、シンデレラプロダクションの高垣楓…!?)


高垣楓
http://i.imgur.com/lChyMNk.jpg


まさかの激寒駄洒落お姉さん
このスレのおかげで最推しが恭二くんになったのでSRのために貯金を始めました

オッドアイ仲間か


「高垣の娘が何の用かな?」

楓「お仕事でこの近くを通ったから寄っただけだったのですけど……叔父様たちのお話、お聞きしました」

「盗み聞きとは悪趣味な女だ」

P(え?これどういうこと?恭二って高垣楓と知り合いなの?)コソ

恭二(ああ…いや言う機会もないと思ってたけど…親戚だよ)コソコソ

P(そ、そうなんだ……へえ……ええ!?)コソ

楓「あの……お話を聞いて思ったのですけど、恭二がこんな風に叔父様に自分の気持ちをおっしゃるのは初めてでしょう?」

楓「どうでしょうか、アイドルとしての恭二のお仕事を一度見てみるのは。決めるのはそれからでも遅くないかもしれませんよ?」


楓「……それに、315プロダクションは今後シンデレラプロダクションのご贔屓にさせて頂く予定です」

楓「ですのでもし315プロダクションのグループを買収するつもりでしたらこちらにもお話を通して下さると嬉しいです」ニコ

恭二「……!?」

P(ええっ!?……あ、いや、よく分かんないけど今この人は味方だ……あくまで平常心……!)

「二人して私に立ちはだかる、か……。本当に可愛くないな、貴様は」

楓「そうさせたのは、叔父様ですよ?」

楓「では丁度打ち合わせもありますので失礼しますね。行きましょう恭二。……それに、プロデューサーさん?」

P「は、はい……!日時はまたお知らせします。是非Beitのイベントにいらしてください」ペコ

恭二「俺の気持ちは変わらない。…それをその眼で見て欲しい」

楓「では失礼します」ガチャ


「……はは、やってくれる。高垣楓……」



P「あ、あの…高垣さん。色々」

楓「じゃあ少しお時間よろしいですか?」

P「はい、大丈夫です」

楓「ここに居る訳にも行きませんしどこか入りましょうか」

楓「この近くに居酒屋がありますし、よろしければそこで」

P「まだお昼なんですけど」

恭二「とりあえず作戦会議か。腹も減ったしな」

楓「さ、行きましょう?」

P「は、はい……」

P(表情があんまり変わらない…何考えてるかちょっと分かんないな…)

恭二「言っておくけどプロデューサー、あいつ別に何も考えてないと思う」

P「え?」

楓(……お腹が空いたわ)


 居酒屋


楓「す、すいませんあんな事言って……扉越しに話を聞いていたら居ても立ってもいられなくなって…」

恭二「あそこに立ってる間3回くらい死んだかと思ったぜ」

P「でも高垣さんが居てくれたから助かりました。僕達の言葉だけでは多分……」

楓「そうでしょうか?彼も人の親です」

楓「お二人の言葉が全く響かなかったかと言われれば、そうでもありません。今は小さな、ヒビみたいなものかもしれませんが……」

楓「ヒビが響く、なんて。ふふっ」ニコ

P「は、はあ……」

恭二「楓、さっきも思ったけどその下らないダジャレそろそろやめた方が良いぞ」

楓「あら、面白くなかった?」

P「いや、なかなかエスプリの効いた…あはは」

楓「あ、すいません店員さん。炙り烏賊と……羅生門を」

恭二「その親父臭いセンスもやめろ」

P(ミステリアスな外見と比べて大分ギャップが……あのシンデレラプロダクションのアイドルなのに)


P「ところでシンデレラプロダクションが315プロを贔屓に……という話ですが、ハッタリですよね?はは……」

楓「半分嘘、半分本当…と言った所でしょうか。315プロは雰囲気が良いと聞いていますし、女性しか居ないシンデレラプロと一緒に仕事をすれば」

楓「双方よい結果が生まれるのでは、とは水面下で計画が進んでいるみたいです」

恭二「でもそれってファンが怖いだろ。慎重に行かないとまずい事になる」

P「……高垣さんと恭二なら親戚だし、そういうの問題ないんじゃ?」

楓「あら」

恭二「確かにな」

P「もし二人が良いのであれば是非それを足がかりに……なんて、そんな急に無理か……」

楓「どうでしょう?こちらのプロデューサーにかけあってみましょうか」

P「ほ、本当ですか!?」

恭二「シンデレラプロと一緒に仕事するようになれば親父も手は出せない……楓、もし良かったら…」

楓「……ええ、分かりました。なるべく事が上手く行くように頑張ってみますね」

P「ありがとうございます!」


P「じゃあ時間も時間ですし、そういうことでそろそろ……」

楓「Pさんは接待としてここに残って下さい。まだ飲み足りないので」

P「え!?でも僕まだ仕事……」

恭二「楓は一度飲んだら酔うまで止まらないから頼む。俺はいい加減事務所に帰らせてくれ」

P「ごめん事務所の方頼む、じゃあみのりさん達に軽くで良いから報告しておいて。明日僕からも報告するけど…」

恭二「俺の方こそ酒癖の悪い親戚押し付けて悪いな。それじゃ」

楓「恭二、」

恭二「ん?なんだよ」

楓「Pさんに高垣がたかる」

恭二「駄洒落やめろ!!」バタン


P「反抗期ですかね」

楓「いつもあんな感じです」

P「まあ、うん…そうですよね」

楓「あ、お酒来ました。飲みますか?」

P「いえ、僕は車なので」

楓「そうですか…じゃあひとりで楽しんじゃいますね」

楓「恭二も私がこうしてお酒を飲んでると、一緒に話を聞いてくれました」

P「意外と面倒見が良いですからね」

楓「私がお酒に任せて愚痴を言っている時、同じように愚痴を言っていました。家には居場所がない…と」

楓「だから恭二がアイドルになったと聞いて、シングルも聴いて……嬉しかったんです。あの子にも居場所が出来るかもしれない…と」

P「そうだったんですね」

楓「それに私もあまり家が好きな方ではありません。だからアイドルとして活動してる今、ようやく自分の居場所があるような気がします」

楓「恭二もそうだとしたら、凄く嬉しいです。恭二の歌声やジャケットの写真は、私が知っている顔より素敵でした」

P「……僕の方こそ、恭二の身の回りに高垣さんみたいな人が居て安心しました」

P「僕は家の事は分からない、恭二の今しか知りません。だから彼を身近に労ってくれる人が居るって分かって嬉しいです」

P「あの大きなお家で親戚っていうのがどれだけ影響するのかは僕には分からないですけど」

楓「Pさん、恭二の事をよく考えてくれているんですね」

P「そんな、大した事じゃないですよ」

楓「……貴方になら秘密、教えちゃおうかな」

P「え?」


楓「私と恭二、本当は姉弟なんです」


P「……」

楓「……」

P「……ええ!?」

楓「そんなに驚かなくても」

P「驚きますよ……冗談だって言うなら今のうちですよ」

楓「やだ、本当のことですよ」

楓「恭二が生まれる前の事ですが……叔父様…父は私の母と愛人関係になりました」

楓「生まれて来た私は愛人の娘……始末におけないと言う事で親戚である高垣の家に養子に出されました」

楓「でも恭二は叔母様との正式な息子です。だから厳密には腹違いの姉弟なんですよ。恭二は知りませんけど」

P「そんな事が現代社会で引き起こされるんですか……」

楓「ふふっ、大きな家と言うのはそういうものです。眼の色とほくろが似てるでしょう?叔父様が私に唯一くれたものです」

P「は、はい……そう言われてみれば……」

楓「これは個人的な願望ですが……私は恭二とアイドルとして、同じステージに立ちたいです」

楓「私は姉としてそばに居てやれませんでした。だからせめて先輩アイドルとして……彼と同じ居場所で彼の夢を見届けたい」

P「高垣さん……」

楓「……これからお仕事出来るの、楽しみにしてますね」ニコ

P「……はい!」


P「とか言ったけど」

楓「……zzz」

P「この人昼から寝ちゃったよ……仕事とか無いのかな?この人売れっ子アイドルだよね?」

P(何で僕にあんな事言ったんだろう)

P(でも、楓さんと居る時の恭二は普通だったな。ピエールとか、みのりさんと話してる時に似てる)

P(いつも家の話する時は恭二のお父さんと話す時みたいな感じだったから…何か安心した)

P(高垣さんはお父さんも人間だからって言ってたけど……どうなんだろう)

P(恭二や僕の言葉はあの人の中に少しでも残ってるんだろうか——)

P「あの、起きて下さい。そろそろ僕本当に戻らないとまずいです」

楓「……」

P「ちょっとー!高垣さーん!!」

楓「……ふふっ」

>>152
まさかの駄洒落お姉さんです
恭二最推しオメデトウ!このssが少しでも潤いになればと思う
さあ1と一緒に貯金クリスマスしよう……まだ間に合うはず…

>>153
オッドアイの色も似てるしほくろの位置一緒だしほどよく長身だし属性青だし
探せば割と共通点の多い恭二と楓さんは仲間


 後日 事務室


P(……高垣さんの言葉に感動してしまったのは良いとして)

恭二「おい、プロデューサー」

P「ヘアッ!?」

恭二「だからそのウルトラマンみたいな返事は何だよ」

P「あ、いや…ぼーっとしてた……」

恭二「気をつけろよ」

P(また恭二に隠し事が増えてしまった!!!)

みのり「まだ解決と言った感じではないし…プロデューサーとしては不安かな?」

P「エッイヤッそんな事ないです!それに今回の件でシンデレラプロダクションと仕事が出来るかもしれないし!」

ピエール「シンデレラプロダクション?どんなとこ?ボクたちと似てる?」

みのり「そうだなあ…あ、ピエール。ニュージェネレーションって知ってる?」

ピエール「しってる!この前も歌だしてた!3人組、ボクたちといっしょ」

みのり「あの3人組とか、あとは恭二の親戚の高垣さんや…見ない日はないってくらいのアイドルが沢山居る」

ピエール「すごい……!」

恭二「ピエールが目輝かしてるぞ」

P「……い、いつか必ず!Beitも見ない日はないアイドルにさせるからな!」

ピエール「プロデューサーさん、すごい……!」

恭二「俺が言うのもアレだけど…この状況でよくそんな事言えるな」

P「夢はでっかく!!」

ピエール「でっかく!!」

みのり「ふふ、その通りだね」


山村「あれPさん、今日レコーディングですよね?大丈夫ですか?」

P「わ!?もうこんな時間…!急いで社用車回して来るから準備して!!」

恭二「慌ただしいな」

みのり「まあ、いつもの調子ってことじゃない?」

ピエール「うたう、たのしみー」

恭二「ピエール薄着すぎないか?パーカー一枚貸すから羽織っておけ」

みのり「今度一緒に買いに行こうか」

ピエール「わー!あったかい!けど恭二の服ぶかぶか…」

P(なんだかんだ面倒見良いんだよなあ……)


 レコーディングルーム


ピエール「~♪」

みのり「相変わらずのびのびだね」

恭二「いつも楽しそうな所は尊敬する」

P「こう言う所も写真に撮ってファンに見せられたらな……」

みのり「そう言えばHP出来て少し経つけど、調子はどう?」

P「今はシングルの試聴とこれまでの活動記録と出演情報だけで有料コンテンツとか無いですけど、アクセス数は順調みたいです」

恭二「当たり障りの無い感じだな」

P「もし有料コンテンツが展開出来そうになったら、まずブログからかな。ピエールの日本語の勉強にもなるだろうし」

みのり「ピエールが喜びそうだね」

恭二「あんた、ピエールに甘いんじゃないか」

P「そりゃ最年少だし、最終的にはバラエティで喋れるくらいには……」

ピエール「なんの話?」ヒョコ

みのり「ピエール、おつかれ」

P「楽しかった?」

恭二「プロデューサーがピエールを甘やかしてる話だ」

ピエール「あまやか…?べたべたしてる?」

P「間違いではないけど語弊がある」

みのり「次は俺かな、行って来るよ」

P「期待してますよ、ボーカル隊長!」

みのり「あはは、ありがとう。歌には自信があるよ」


恭二「一時期本気で胃が痛かったけど、こうして過ぎると何とかなりそうな気がする。まだ何も解決してないけどな」

P「大丈夫、きっと解決するよ。ピエールとみのりさんが背中を押して、高垣さんが僕達を掬ってくれた」

ピエール「ウン、なんとかなる。絶対。みのりもきっとそう言う」

P「ピエールがそう言うなら大丈夫だよ」

恭二「あんたがそう言う事言うからすぐ調子に乗るんだよ」

ピエール「のってない!恭二だって、最近プロデューサーひとりじめしてる」

恭二「そんな事で拗ねるな。独り占めもしてない」

P(恭二の調子も大分戻って来たみたいだ。でも…)

P「……二人とも、みのりさんの歌声聴きたいんだけど」

「「ごめんなさい」」


みのり「恭二とピエール、随分楽しそうだったね?」

ピエール「プロデューサーさんに怒られた」

恭二「ピエールが騒ぐから」

P「あーまた同じ事しない!みのりさんお疲れさまです。相変わらずサラッとこなしますね…」

みのり「緊張してるよ。だってこのレコーディングルームで色んなアイドルが同じ事してるんだし」

P(そう言う所は相変わらずだなあ。謙虚というか……)

恭二「最後は俺か……二人がちゃんとやってるんだし、しっかりしないとな」

ピエール「恭二、がんばれー」

みのり「ハードル上がってるよ」

P「恭二にかかってるぞー」

恭二「……」ジロ

P「あはは、うそうそ。のびのびやれば大丈夫だよ」

恭二「…ああ、行ってくる」


みのり「恭二、いい感じだね。もっと気負ったりするかと思った」

P「みのりさんやピエールのお陰ですよ。それに高垣さんとか……」

P「恭二の周りには心強い味方が沢山居ます。だからあんな風にいつも通りで居られるんだと思いますよ」

ピエール「恭二、楽しそう」

P「ピエールの頑張りが恭二を笑顔にしてるんだよ」

ピエール「……えへへ」

みのり「鷹城グループの事は分からないけど…アイドルとしての鷹城恭二はもう大丈夫なんだろうなって思うよ」

みのり「それに、プロデューサーも居るし」

P「そうだと良いんですけど」

みのり「自信持ちなよ」

P(アイドルとしての鷹城恭二は大丈夫、か……そっか)

ピエール「プロデューサーさん、うれしそう!」

P「……そうかな?」


 事務室


P「…さて、三人も帰ったし電話しよう」

山村「どうしたんですか急に意気込んで」

P「ああ、写真集と2ndシングル発売の握手会の日取りを恭二のお父さんに報告しないといけなくて…」

山村「囲い込まれてからしばらく動きはないですが、手を引いたと言う話も聞きませんね」

P「はい、多分保留の状態なんでしょう。このまま上手く行くと良いんですけど」

山村「……鷹城くんの、Beitの熱意が伝われば良いですね」

P「ええ、そのつもりです」

P「ところで山村さんは仕事してるんですか?さっきからぼーっとしてますけど」

山村「し、してます!もちろん他のお仕事もちゃんとやっていますよ!!」

P(……本当かなあ。でも山村さんいじりは正直気が休まる)


P「……」prrr…prrr……

「もしもし、鷹城グループ受付でございます」

P「315プロダクションのPと申しますが…」

「かしこまりました。お繋ぎ致します」

P「お願いします」

P(相変わらずスムーズ……いつもだったらここで秘書さん的な女性が……)

「……何の用だ」

P(うわっお父さん本人が出た!?全然準備してないのに!!)

P「お、お久しぶりです。Beitの写真集と2ndシングル発売記念イベントの日にちをお知らせしようと……」

P「二週間後の日曜日、11:00からになります。日程が近くなったらDMと関係者に必要なパスも送りますので、ご確認下さい」

「懲りてないようだな」

P「はい。懲りるもなにも僕は皆の夢にまっすぐ応えたいだけですから」

「恭二にその価値があると?」

P「ええ、鷹城くんは器用で何でもこなすアイドルです。自分の出来る事をしたい―…」

P「貴方と目指す所は違うかもしれませんが、やれる事に全力で飛び込む強さがあります」

P「自分の弱さを認めて、それを克服しようと思う素直さもあります」

P「何より今、鷹城くんはアイドルとして楽しそうなので。僕にとってはそれだけで十分です」

「……」ブツッ ツー ツー……

P「あれっ切れた……」


山村「何だか余裕でしたね」

P「エエ?そんな事ないですよ。いま超心臓鳴ってますもん」

山村「少なくとも態度には出てませんよ」

P「でも今回の件で修羅場には多少強くなったような気がします……」

山村「プロデューサーらしくなってきましたね、Pさん」

P「えっ!?本当ですか!!」

山村「……とか言うと事務員に戻ってくれなさそうなのでやっぱりやめにしますね」

P「だから僕はもともとプロデューサー職です!!」

山村「来てくれると良いですね」

P「来ますよ、彼は絶対来ます」

山村「凄い自信ですね」

P(そう思わないとやってけないって言うのはあるけど—…)

P(高垣さんの言ってた事がちょっと分かってきたような気がする)

おつ
個人的には>>1の書く山村が好きだなー

恭二くんSRくるー???

>>172
サンクス。山村とは良い距離感で居たい個人的な願望がこのssに滲み出てる気がする

>>173
くる……きっとくる……恭二のSRキットクル……
今から貯金しても全然足りなさそうなのはそれは……ウン……

ということでBeitクリスマスイベントおめでとう
もう恭二のSRがガチャで来るだろうとばかり思ってるけど期待していいよね???(とれるとはいってない)


 数日後 事務室


P「おはようございます」ガチャ

P「あ、今日は山村さんに先越されちゃったみたいだ」

山村「おはようございます。Pさんがちゃんと仕事してるんですからね、負けてられないですよ」

P「細かい書類見る時眼鏡外すの老眼みたいですよ」

山村「ブルーライト用だから別に書類見るのには眼鏡必要ないじゃないですか」

P「そうでしたね、あはは」

P(最近PC向かってる時もおでこにつけたままですよ…とは言わない方が良さそうだなあ)


ピエール「おはよーございます!」ガチャ

P「ピエールおはよう。今日はピエールが一番乗りだ」

ピエール「! やったー!ボク、今日恭二に宿題見せる」

P「そう言えば勉強教えてもらってるんだっけ…何の宿題?」

ピエール「文字、きれいに書く。ノートに書く」

P「おおーちゃんと書いてる。偉いえらい。それにしてもこのノート懐かしいな…」パラパラ

山村「ショウワノートですよね」

ピエール「このノート、最初のページ面白い」

P「あー、表紙にちなんだまめ知識とか書いてあるんだっけ。懐かしい」

P「うん、ピエールが偉いから先に花丸付けちゃおう」キュッ

ピエール「わーい!!」

P(……上達してるかどうかは別にして)


恭二「おはざす」ガチャ

P「恭二もおはよう」

ピエール「あ、恭二来た!見て!プロデューサーさん花丸くれた!」

恭二「わかった、どれ……おいピエール!見本意識して書けって言っただろ!カタカナはまだしも日本語もっとしっかり書け」

ピエール「"ぬ"難しい!!」

恭二「めげるな!」

P「まあまあ、最後の方はマス目意識してるしその辺で……」

恭二「書くのも遅い字も汚いじゃクイズ番組とかで不利だろ。一人ずつだったら教えてやれない」

P「……ふーん」

恭二「なんだよ」

P「教育熱心だなあと思って。僕も頑張らないと」

恭二「? あんたは別にそこまで字汚くないだろ」

P「そうじゃなくてさ」

P(これからも仕事が来るって信じてる……よし、やる気になってきた)


みのり「おはよう……何か朝から賑やかだね?」ガチャ

P「おはようございますみのりさん。みのりさんが居ないと恭二とピエール収まりつかなくて……」

恭二「人を動物みたいに言うなよ」

ピエール「恭二、すぐ怒る」

恭二「別に怒ってる訳じゃない」

P「もー、この前のレコーディングでもそうやって〜…」


みのり「……二人とも、仲が良いのは良いけどあんまりプロデューサーに迷惑かけちゃ、駄目だよ?」ゴゴゴ……


恭二「……はい」

ピエール「……うん、ボクいいこする」

みのり「よろしい。元気な事自体は良い事だからね」

みのり「…で、プロデューサー。この花持って来たんだけど飾っても良いかい?」

P「わー、いつもありがとうございます!」

みのり「今日はマーガレットにしたんだ。季節の花だよ」

恭二(威圧感…)

ピエール(みのり、時々イチバン怖い…)


P「えーコホン、それで今日は握手会の内容を決めるミーティングをします」

恭二「はい」

ピエール「ハイ」

P「……もうそんなにかしこまらなくても良いよ」

みのり「確か握手会…と見せかけて軽いトークショーから始まって握手の間にサプライズで新曲2曲を披露、だったよね?」

恭二「ああ、それであってる」

ピエール「トークショー初めて。どんな事する?」

P「台本を軽く決めてそれにそって自由に話してもらう。雑談…ライブのMCの長いやつみたいなもんかな」

ピエール「3人でおしゃべり!」

P「そういうこと。で、喋る内容は2ndシングルの事と写真集の事と、……そうだ。今見せるからちょっと待ってて」スイスイ

恭二「どうした急にスマホなんていじって」


P「じゃん!実はHPでやってもらったんだ。トークショーで"Beitにしつもん!"ってコーナーを設けて、ファンの人からの質問に答える」

P「こっちで質問はある程度絞っておくから、これを3人に1回ずつくらいくじ引き形式で出してもらうかなって」

恭二「……それ台本使えなくないか?」

P「即興で答えるのも大事だよ。それに質問に悩んでるのも結構見てて楽しいし」

みのり「見てる時は楽しかったけど、やるとなると……」

ピエール「くじ引きたのしい!ボクやりたい!」

P「ほらー、ピエールはちゃんと楽しみにしてくれてるんだから」

恭二(人生初の握手会の悪夢再びか……)コソコソ

みのり(いや、もうあの時の俺たちじゃないよ。頑張ろう)コソ


P「とりあえず今日はトーク内容の台本を考えよう」

みのり「大事な事は決めておく、くらいで良いの?」

P「はい。がっつり全部台本にするとバレるので…言いたい事は決めておく感じで」

恭二「じゃあ各々言いたい事を繋いでくのが無難だな。言いたい事か、そうだな……」

ピエール「ボク、写真集のかっこいいページおすすめ!」

みのり「じゃあ各々どのページが好きか決めておこうか」

ピエール「あっ…でも学校のページ…一番すき……う〜ん……」

恭二「別にひとつに決めなくて良いだろ」

ピエール「じゃあぜんぶ!」

みのり「これは大きく出たね。ピエールに聞くのは最後にしようか」メモメモ


みのり「シングルに関しては…やっぱり恭二は言いたい事多いよね?」

恭二「言った所で辛気くさくならないスか?」

P「そこは良い塩梅で……歌詞に気持ちを込めました、みたいな…」

ピエール「あと、締切早かった」

恭二「それだ」メモメモ

P「大事な所そこ?まあシリアスになるよりは良いかな…」

恭二「B面の方はピエールもみのりさんも言いたい事あるだろ」

みのり「えっと……辛気くさい話にならないなら、急に色々やりたいって言い出してレコード会社のレベールの人に沢山お世話になったかな…」

ピエール「お世話になった。たくさんいのこりしてもらった」

P「なんでそう言う大事な事言わないんだよ!今度お礼しに行かないと……!」


P「……うん、これくらいで良いんじゃない?」

恭二「これだけ会話のネタあれば質問コーナーと合わせて30分持つだろ」

ピエール「質問コーナー終わったら、サプライズする」

みのり「そうだね。最後に握手会」

P「もし、恭二のお父さんが来てたら一番最後にするから」

恭二「あいつ来るのか?」

P「この前会場と時間電話で伝えたら本人が出たけど…DMも送ったよ。本人がどうしてるかは分からないけど」

みのり「…来るよ、きっと」

ピエール「恭二、だいじょうぶ」

恭二「ああ。…それに来なくても何とかしてみせる。鷹城の力が無くても俺には――皆がいる」

P「……」

みのり「恭二…」

ピエール「……」

恭二「何だよその反応……俺だけ恥ずかしいみたいになってるだろ」

みのり「いや、何か胸にぐっときたよ」

ピエール「感動した!」

恭二「気休めはいらない」

P(本当の事なんだけどなあ…)


 ピンポーン

「佑川急便です、お届けものですー」

山村「ありがとうございます。サインで大丈夫——」

P「!! 判子あります!!押します!!」

「!? あ、ありがとうございます…?失礼します」

P「お疲れさまでした!!」

山村「……?」

P「……ついに来た…!」

山村「えっと、通販ですか?」

P「違いますよ!写真集とCDのサンプルです!!」

P(っていうかこのやりとり前もしてなかったっけ……)

みのり「ついに来たんだね」

P「ああ〜…やっぱりこの瞬間緊張する」

ピエール「プロデューサーさん、足がくがく?」

P「ほら見て!がくがく!!」プルプル

恭二「そう言えばもう発売1週間前か。今回やっぱギリギリだったな……っていうかあんたもいい加減慣れろよ」

みのり「デビューシングルの時も緊張してたよね」

P「こ、今回は写真集もありますし!!」

恭二「そっちは校正で既にチェックしてるだろ」

ピエール「プロデューサーさん、一緒に開ける?」

P「大丈夫!こういうのは思い切りが大事……オラッ!!」バリッ

恭二「勢い良く行ったな」

>>174
残念ながら(?)ガシャSRは電撃オンラインによるとほくほくです
バレ駄目だったらごめんな


ピエール「おお……!見て、ボクかっこいい!!」

恭二「自画自賛だな」

みのり「でも前回と雰囲気が違って、2ndシングルとしてはいい感じじゃない?」

P「……!!」

恭二「プロデューサーのウケも良いみたいだな」

P「き、聴いても良い?」

みのり「もちろん。今回は恭二作詞のA面だけじゃなくて、カップリング曲だって俺とピエールには思い入れがあるし」

ピエール「ボクも!プロデューサーさんにいっぱい聴いて欲しいー!」

ピエール「プロデューサーさん、CDちょーだい!」

P「おうともよ!!」

ピエール「セット…した。いくよ、みんな……!」ポチ



 ♪CHANGE THE WORLD
http://youtu.be/Ym1jz4Qrg9M?list=PLdf7T54k99Q-8XLtrfvr6VC2hIk2sbwBg



ピエール「恭二、あの時みたいに泣く?」

みのり「泣く?」

恭二「泣かねえよ……」

P「僕は目頭が熱くなってるよ……」

恭二「そういうの良いって」

みのり「恭二は今回大変だったからね」

ピエール「恭二の頑張り、ちゃんとカタチになってる」

恭二「だからそういうのは…っ絶対こっち向くなよ」

P「ふふ、最近恭二よく泣くよね」

恭二「……ピエールはまだしも、あんたに言われると結構腹立つ」

みのり「ほら恭二、プロデューサーは仕事あるんだから」

P「じゃあ社長室と広報さんの所に行って来ますね」 バタン


P(……良かった。ちゃんと出るんだ、2ndシングル……)

P(まだ活動出来る。ここで終わらない気がする)

P「……本当に良かった」グス


みのり「良かったね、無事出るよ。俺たちの新しいシングル」

ピエール「恭二、嬉しい?」

恭二「…今回は巻き込んで悪かった。でもピエールやみのりさんと一緒で、プロデューサーに支えて貰って……自分の夢が改めて実感出来た」

恭二「Beitが良い、Beitで夢を叶えたい――そう思った」

恭二「何もなかった俺に仲間とか絆とか夢とか、そういうものをくれた事、感謝してる」

恭二「このシングルと写真集にはそれが詰まってる。本当にありがとう」

みのり「……」

ピエール「……」

恭二「何か言えよ。さっきもだったけど俺ばっかり…」

ピエール「きょ…っ恭二~~~!!!」

恭二「うわっ!?ピエール意外と重っ……」

みのり「恭二…っ!」

恭二「みのりさんまで来られたら潰れっ……ぐあっ!」 ドシャッ

恭二(なんだよ、結局皆して泣いてんじゃん…)


 社長室


P「失礼します。BeitのPです」

斎藤「おや、Pくんか。入りたまえ」

P「2ndシングルと写真集のシングルが届きました。社長にもご報告とサンプルを——」

斎藤「そうか、2ndシングルは無事出そうか。一先ず安心したよ。聴かせてもらったが素敵な歌だね」

P「! ありがとうございます!鷹城グループとの結果はまだ…決着がついていないのですが……」

斎藤「何、こちらが焦っても仕方が無いことだ。君はアイドルの為……いや、315プロの為に尽力してくれた」

P「…いえ。正直315プロの為だなんて、大それた事僕には考えられませんでした」

P「でもBeit全員の夢を叶えられるのはこの事務所だけだと僕は思っています」

P「3人の夢が――僕の夢なんです。それをトップアイドルと言う形でいつか叶えたい」

斎藤「ああ、それで良い。私はアイドルの幸せが一番だと信じている」

斎藤「それがいつかきっと、世界の夢に繋がると私は信じているよ」

P「絶対に負けません。きっと結果は2週間後に決まります」

斎藤「……逞しくなったな」

P「ええ、これもアイドル達のお陰です!それでは失礼します」 バタン


P「……よし」

P(良い歌だって言ってもらえた。やっぱり間違ってなかった。……僕もそう思う)

P(歌いたい気持ち、届けたい気持ち――それぞれの想いが音に乗ってる)

P(言葉では表現出来ないけど、そういうのは聴いてる人の心に伝わる……と信じたい)

P「……恭二のお父さんにも、高垣さんにも」

「おい」

P「ヘアッ!?…あ、天ヶ瀬くん」

冬馬「そんな驚かなくて良いだろ」

P「いや、何か久しぶりだね…ですね」

冬馬「別に敬語いらねえって。それにお前アイドルとして先輩だろ」

P「ハ、ハア……」

冬馬「2ndシングル、出すみたいだな」

P「何とか出そうです。天ヶ瀬くんとのバラエティ番組で起こった問題はまだ解決してないけど」

冬馬「あー…Beit今大変なんだってな。うちのプロデューサーからやんわり聞いた。ちょっと噂になってるぜ」

P「げっ……他のユニットと仕事やりにくくなったりしないかなあ…」

冬馬「お前らだけオフィス階じゃないしな。噂が一人歩きしてる感じは正直あると思うぜ」

P「ええ……」

冬馬「ま、そう言う時は俺とかJupiterのプロデューサーを頼れ!仕事無しって事にはならないようにしてやるよ」

P「そんな事出来るの?」

冬馬「当然、だぜ!315プロの稼ぎ頭なめんじゃねーぞ!」


冬馬「……そうやってお前等の事応援してる奴も居るんだ。2ndシングルだけでがっかりさせんなよ」

冬馬「もう一度俺と一緒に仕事したいんだったらJupiterと張り合うくらいしてみろ!!」

P「……天ヶ瀬くんって良い奴だよね」

冬馬「はあ!?何だよ急に」

P「ありがとう、これからもよろしく。出来れば今度はライバルとして」

冬馬「ああ、じゃあな。……っと、そうだ。近々シンデレラプロダクションとの仕事、来そうだぜ」

冬馬「お前のとこにも仕事来るかもな。ま、分かんねーけど」

P「! うん!」


冬馬「……あ、あと俺と撮ったバラエティ、来週オンエアだからな!!しっかり見ておけよ!!」

P「う、うん……わかった」

P(天ヶ瀬くん…宣伝上手、かな……?)


 事務室


P「ただいま戻りました」ガチャ

P「って……え!?3人とも何で泣いて……」

ピエール「きょ、恭二が……」

P「恭二また何かしたの?」

恭二「違う!よく見ろ俺だって泣いてるだろ」

みのり「恭二のさっきの台詞、プロデューサーにも聞かせたいよ」

恭二「あーそれだけはやめろ」

山村「鷹城くん、このシングルには自分の思いが詰まってるって」

P「そっか……うん、これで2ndシングル…Beitの新しい歌で恭二のお父さんを迎えよう」

恭二「親父を倒す」

ピエール「! たおすより、笑顔が良い!恭二のパパ、ボクたちでニコニコ!」

みのり「俺たちならそれが出来るはずだよ」

P「うん、恭二の気持ちがこもったこの歌で」

恭二「……そうだな、その方がBeitらしいかもしれない」

ピエール「それに新しいボクたち、写真集にいっぱいのってる!」

みのり「うん。Beitの沢山の顔を知ってもらいたいよね」

P「……勿論です!もっともっと皆こと、知って欲しいです!」

恭二「発売は丁度一週間後か……それで握手会はそのすぐだろ」

ピエール「ファンのみんなに、笑顔で報告したい!」


P「あ、そうだ。さっき天ヶ瀬くんからシンデレラプロと仕事あるかもって。恭二は高垣さんと仕事、出来たら良いね」

恭二「? 俺は別に楓じゃなくても…見飽きてるし。親戚同士は確かにファンの反感買わない安全牌か」

P(ああーッそうだ恭二は高垣さんの事従姉だと思ってるんだったーー!)

P「ま、まあそう言う事。二人とも背高くて映えるしなあ。二人でモデルの仕事とか来ないかなあ」

恭二「……服はしばらく良いな…」

P(あ、写真集のあれ、まだ堪えてるんだ……)

ピエール「ボク、着ぐるみきたーい!」

P「そう言えばシンデレラプロには着ぐるみ好きなアイドルが…」

みのり「プロデューサー、また仕事の顔になってるよ」

P「それに花に詳しいアイドルも居た様な気がする……」

みのり「プロデューサー?」

恭二「…これはもう聞こえてないんじゃないスか?」


 鷹城グループ 社長室


(……結局DMまで寄越してきた…。そこまでして鷹城グループと争うつもりか)

(あの男…最後まで結局退く素振りを見せなかった)

(あいつは恭二を買い被りすぎだ……だが私とてあいつの——)

「……いや、所詮下らないことに変わりはない」

楓「叔父様?いらっしゃいますか?」ガチャ

「…確認する前に入るんじゃない。…また私の邪魔をしに来たのか?」

楓「いえ、ただ…恭二の晴れの舞台。もうすぐだなあと思っただけです」

楓「…DMは机の上にあるようですね」

「ああこれか、捨てておけ」

楓「私に捨てる事が出来ると?」ニコ


「……お前達はそうして何度も私に反抗する。同じ様な目をして」

楓「叔父様から頂いた瞳です。叔父様が欲しがっていた自由を求めた結果です」

楓「私達は同じですよ。……ね、お父様」

「止せ、お前は高垣楓だ」

楓「恭二だって自分の力で立ち上がろうとしています。貴方に認めて欲しくて」

「……帰れ」

楓「ふふっ、過ぎた事を言いました。失礼します」 バタン


「…今更何を認めてやれば良いのだ」

(恭二の事も、楓の事も——)


楓(恭二、貴方はきっと―…かけがえのないものを手に入れるのでしょうね)

楓(私は――)

楓P「楓さん!探しましたよー勝手に居なくなっちゃうんだからー」

楓「すいません。少し親戚とお話を」

楓P「次の仕事に間に合うから良いですけど、ほら車乗って!」バタン

楓「あら、いけず……」

楓P「そう言う事はいわなくていーの!!ほら、お菓子でも食べててください。お腹空かせても大変でしょ」

楓「これは……キットカット?」

楓P「嫌いでした?最近楓さん、315プロと仕事したいだなんて積極的ですから。その分頑張ってもらおうかなって思ったんですけど」

楓「いいえ、甘いものも時々は……」

楓「……キットカットで、きっと勝つ。ふふっ」

楓P「楓さん、受験シーズンにはまだ早いですよー」 ブロロロ……

>>184
……。北斗くんおめでとう!!
バレはそんなに気にしないから大丈夫だよ

このssは明日くらいに終わるので来るJupiterとBeitイベに備えましょう


 数日後 握手会当日


P「おはようございます。Beitです。よろしくお願いします!」

恭二「よろしくお願いします」

ピエール「ヨロシクおねがいします!」ペコ

みのり「よろしくお願いします。あ、設営手伝います」

「Beit現場きましたー」「よろしくおねがいしますー」「すいません、じゃあとりあえず軽い椅子を……」

P(お、積極的に手伝ってる。けど…その服のままステージ出るから汚さないように!!)

P(とりあえず僕は責任者に…)

P「こんにちはBeitのプロデューサーのPです。本日はお世話になります」

「あ、こちらこそよろしくお願いします。すいませんアイドルの皆さんに設営してもらっちゃって」

P「進んでやってるんで大丈夫です。早く終わった方がリハも出来るし」

「で、そのリハなんですけどサプライズライブは音漏れの関係で早めに済ませたくて…」


「ところで今日、何か凄い人が来るって聞いたんですけど」

P「! それってまさか鷹城グループの…?」

「あ、はい。やっぱり鷹城くんってあのグループの関係者なんですか?」

P「まあ一応……これ以上は詳しく言えないんですけど」

「分かりました。あまりこちらからも言わないように務めます」

P「宜しくお願いします…」

「でも身内の晴れの舞台を見られるって良いですよねぇ。何か気合い入っちゃうな」

P「ええ、僕も精いっぱい頑張ります。本番になると出来る事少ないですけど」

「じゃPさんも使っちゃおうかな!これA3ブロックに運んで!」

P「了解です!あっこれ結構重い……」ガシャガシャ

ピエール「プロデューサーさん、ボクたちすぐ音合わせする!はやくー!」

P「あっ今行く!」ガシャガシャ

恭二「落ち着かないと転けるぞ」

みのり「プロデューサー、はりきってるね。俺たちも頑張らないと」


「マイク確認しまーす」「音響問題ありません」「椅子回収してー」

P(……マイクは問題無し、Beitの3人も調子良さそうか……うん大丈夫)

P「3人とも気になる所ない?」

みのり「大丈夫だよ」

恭二「歌ってて特に感じないな」

ピエール「なーい!!」

「じゃあマイク確認と音合わせ終了しますー、次は立ち位置と流れの……」



P「お疲れ、問題無さそう?」

ピエール「やっぱり歌うたうの、たのしいー!」

みのり「そう言えばファンの皆の前で歌うのは久しぶりだね」

恭二「これからも定期的にやって行きたい事ではあるよな」

P「皆がライブ好きで嬉しいよ。そう言えば、恭二のお父さん会場に来るみたい」

恭二「…お、おう」

みのり「ビビってる?」

ピエール「ビビる大木?」

恭二「ビビってはないけど、ラスボスを倒すかと思うと…」

P「ラスボス倒す前にトークショーと和やかな質問タイムは無いよ」

ピエール「それにラスボス、世界平和!世界平和、トップアイドルの更に先!」

みのり「そうかな、俺のアイドルの魅力の探求もなかなかだよ?」

恭二「俺の夢も全然終わってないしな…そう考えたら別に親父はラスボスでも何でも無い」

P「お、良いね。余裕出て来た」

恭二「まあな。だからビビってないって言っただろ」

恭二「それに俺が今までやって来た事、これからやりたい事をぶつけるだけだ。あとはどうにでもなる」

P「……うん。恭二のその気持ちが伝わればきっと、大丈夫だよ」


P「さ、そろそろ幕裏に入ろう。お客さんが入る」


 ザワザワ…… ガヤガヤ……


恭二「相変わらず凄い人だな……全員冷やかしじゃないのか?」

P「これからイベントなのにネガティブになるのそろそろやめない?」

ピエール「初めてやったライブの…いち、じゅう、ひゃく……??何倍?」

みのり「俺たちだけでは1000人単位でひとつの箱に入れた事無かったもんね。これは圧巻だ……」

P「でも気持ちはいつも通りで頼みますよ」

恭二「大丈夫だ、分かってる」

みのり「……あ、あれ恭二のお父さんじゃない?」

恭二「!!」ビクッ

みのり「あはは、冗談だよ」

恭二「笑えないんスけど…」

ピエール「でも本当に男の人も、ちょっといる?」

P「本当だ…みのりさんみたいな人って本当に居るんだ…ちょっと感動した」

みのり「そりゃ居るよ、そんな珍しいものじゃないって」

P「え?」

恭二「え?」

ピエール「エ?」

みのり「え?ピエールまで?」


みのり「……と、とにかく嬉しい事だよね、男性のファンも居るって」

恭二「誰のファンなんだろうな…ピエールか?」

P「ピエール、かわいいもんなあ。そう言うのって男の人も同じなのかな?」

ピエール「やだ!ボクかっこいい王子様がいい!」

P(クールさとスタイルなら恭二、最近流行りっぽい草食系感と包容力はみのりさん……いややっぱ可愛さとあどけなさでピエール)

P(駄目だ、同じ男なのに全く分からない!!)

P「……みのりさん誰のファンか分かります?」

みのり「誰かは俺にも見当はつかないよ…」

P「ですよね~……」


P「じゃあ恭二、気合いの入る掛け声よろしく」

恭二「俺か?そういうの苦手なんだけどな…」

P「そう言わずに、恭二が今回キーポイントだからね」

恭二「……よし。俺たち何とかここまで来たな。本当に感謝してる」

恭二「でも絶対にここで諦める訳には行かない。大丈夫だと言う自信もないけど……」

恭二「敢えて言う。俺たちは大丈夫だ!親父に俺たちの力、見せ付けてやろうぜ」

みのり「今ここで全力で楽しんでもらえばきっと分かってもらえる。アイドルの魅力を伝えよう」

ピエール「ボクたちの力で恭二のパパ、笑顔にする!それがまた平和、一歩近付ける!」

P「皆、行っておいで。皆がこのイベントを楽しむ事が一番だから!」



恭二「…プロデューサー」

P「うん?」

恭二「あんたには本当に感謝してる」

恭二「まだ始まったばかりだけど―…あんたにプロデュースしてもらって良かった」

P「……」

恭二「これからもよろしく頼む。じゃあ行って来るよ」

P「あ、待っ……てないよね。もう時間だし」


P(こうやって皆の背中を見てると…最初の頃よりよっぽど逞しいなあ)

P(アイドルってこうやって成長していくんだ。……僕はどうだっただろう)

P(Beitはこれからどうやって成長してくだろう。僕はどう支えてやれるだろう)

P(……僕も成長するのかな。皆みたいに——)

P「…やっぱりまだBeitでやること、沢山ありそうだ」


ピエール「みんなー!こんにちはー!」

キャー!コンニチハー!

恭二「……凄い光景だな」

みのり「こんなに沢山の人に集まってもらったの、初めてだね」

ピエール「皆に会えるのって、やっぱり嬉しいー!」 キャー

恭二「あー、ピエールが大人気なのは分かった」

「恭二くんもかっこいいー」「恭二くーん」

恭二「……急にやられるとどうして良いか分からない」 ドッ

みのり「じゃあそろそろ自己紹介しようか。Beitの渡辺みのりです。トークショーは初めてだけどよろしくお願いします」

ピエール「Beitのピエール!今日もたーくさん、笑顔になってね!」

恭二「Beitの鷹城恭二です」

みのり「……待って恭二、短い短い」 アハハ…

恭二「二人の後だと言う事ないんだよな」


P(きょ、恭二……まあいつも通りか。ふふ)


みのり「で、今日のイベントは2ndシングルと写真集の発売イベントだけど―…」

恭二「2ndシングル、週間ランキング6位でしたね」

三人「ありがとうございます!!」

「おめでとうー!」「買ったよー!」

ピエール「ボクたちの歌、いっぱい聴いてくれた?」 キイター

ピエール「聴いたーだって!カエール聞いた!?カエールモ、ウレシー!!」

恭二「嬉しそうだなピエール…何より皆のお陰だ。ありがとう」 

みのり「沢山の人が自分の歌を聴いてくれるって嬉しい事だよね」

ピエール「恭二、いっぱいがんばった」

みのり「何したんだっけ、皆に教えてあげて?」

恭二「初めて一人で作詞した。締切が凄い早かったな」

ピエール「仕事しながら作詞、タイヘン」

恭二「しかも誰も相談させてくれないしな。皆俺の思う通りにやれば、とか言って……その分思い入れがあるものは出来たけど」

みのり「それは恭二の為を思ってだよ!」

ピエール「親ライオン、子供を崖から落とす。それといっしょ」

恭二「俺をライオンと一緒にするなよ」



恭二「2ndシングルと一緒に写真集も出したな。これも撮影と締切が凄くて……」

みのり「待って恭二、さっきから締切の話しかしてないよ」

ピエール「恭二、締切だいすき?」

みのり「厳守するべきものではあるけど…じゃなくて、でも撮影は大変だったのは本当かな」

恭二「しばらく服着たくなくなったよな」 ザワ……

恭二「……あ、今の変な意味じゃないんで」 ドッ

ピエール「恭二、いっぱい服着てた」

みのり「恭二はスタイル良いからスタイリストさんに気に入られてたよね。…あ、ちょっと立ってみて」

恭二「? はい」

ピエール「いち、に、さん……」

みのり「ピエール、何等身?」

ピエール「えーっと…7……くらい?」

恭二「割と雑だな」

みのり「流石アイドルだね」

ピエール「ねー」


みのり「皆どのページがおすすめ?俺はやっぱり花との撮影が楽しかったかなあ」

みのり「…あ、スタッフさんが持って来てくれたよ。ありがとうございます」パラパラ

みのり「わー、すごいなあ。前のページとのギャップが……」

「見たーい!」「見せてー!!」

ピエール「みのり、お客さんに見せる!」

みのり「あっ…ごめん、自分だけで楽しんじゃったよ。これだね」 アハハ…

恭二「相当極彩色ですよねこのページ」

ピエール「そのページ、ボクもすき」

恭二「俺は……そうだな、なんだかんだ言って公園で遊ぶやつは楽しかったな」

ピエール「それ、ボクの案!」

みのり「3人でどう言うシチュエーションが良いか、案を出したんだよね。俺はさっきの花とのページ」

ピエール「ボク、公園でのページ。恭二、お部屋で朝過ごすページ」ペラ

恭二「このページの俺、眠そうだな…」

みのり「ベッド気持ちよかったよね。ピエールは跳ねて遊んでたっけ?」

ピエール「カエールとかえるごっこ!ぴょんぴょんした!」

恭二「で、ピエールは何がおすすめなんだ?」

ピエール「うーん……全部おすすめー!!」キャー

恭二「全部おすすめらしいんで、まだ買って無い人は買って下さい」

みのり「二人とも商売上手だなあ」


P(よし、皆楽しそう…台本からも逸れてない)

P(大勢の前で、自然にいつも通り話せてる……アイドルとして、これも大切な事だよね)

P(お客さんもリアクションしてくれたり、ありがた—…)

P(…! 後ろの方で話聞いてる男の人……恭二のお父さんだ!)

P(もうちょっと見るの楽そうな所に居ると思ってた。普通にお客さんに混じって……)

P(お父さんには、どんな風に見えてるだろう。恭二、楽しそうですよ)


(楓がああ言うから来てみたが…浮ついた集まりだな。下らない)

(客も品のない、若い客ばかりだ…)

「あ、あの……おじさんも、Beitのファンなんですか?」コソ

「! 違う、断じてファンなどではない」

「そ、そうですか…」

(……私は浮いているだろうか?)


(それにしても恭二があんな風に笑っているのを見るのは…久しぶりか。それとも初めてか…)

(私の息子は、あんな風に笑うのか)


恭二「そう言えばHPから質問いくつか貰ってたんだよな」

ピエール「いっぱい来てたってー!」

みのり「皆さん質問ありがとう」 キャー

みのり「その中から一人ずつ質問を引いて答える……名付けて?」

三人「Beitにしつもん!のコーナー」 パチパチ キャー

恭二「あ、何か箱来たぞ。スタッフさんどうもありがとうございます」

ピエール「この中に質問はいってる?」

みのり「どんな質問か楽しみだね。じゃあピエールからどうぞ」

ピエール「わーい!ボクいちばんのり!」

恭二「おいピエール、箱のなか届くか?」

ピエール「とどく!恭二すぐボクのこと馬鹿にするー!」

ピエール「うんしょ……これにきめた!」ズボッ

みのり「何になった?どれどれ……」


みのり「アイドルになる前は何をしてた?」


P(あ……ああ~~~!!まずいこれBeit向けの質問じゃない!!)

P(全員家庭の事情複雑そうなのに…!質問が多くてスタッフさんに頼んだのが間違いだったなあ……)

P(ど、どうしよう……みんなごめん!!何とか乗り切ってくれ!!)

P(僕プロデューサー失格かも……あああ……)


恭二「俺は……コンビニでバイトしてたな」

P(……え?)

「えーうそー」「どこのコンビニー?」

みのり「いらっしゃいませーって今でも出来る?」

恭二「……こほん」

ピエール「いらっしゃいませー!」 アハハ…

恭二「ピエールがやるのかよ……。あともっと流れるように言うとそれっぽくなる」

みのり「いらっしゃいませー! どう?こんな感じ?」

恭二「まあそんな感じですけど、みのりさんがやると声が良すぎてなんか違うんスよね」

みのり「それって褒めてる?」

ピエール「ほめてるほめてる!」

P(ああそっか、最近恭二の家の問題ばっかりに気を取られてたけど、元々三人ともアルバイトとかしてたんだ…)

P(恭二はコンビニ、みのりさんは花屋、ピエールは……何だろうあれ?着ぐるみの人?)

P(皆がアイドルで、すっかり忘れそうになってた……)


みのり「前やってた事か…俺はアイドルになる前、花屋で花売ってたよ」

「似合うー」「買わせてー」

ピエール「みのり、いつも事務所にお花届けてくれる!」

恭二「花って何が良いんですか?」

みのり「え?アイドルと一緒だよ。一生懸命育てれば育てた分、咲く事で返してくれるんだ」

みのり「俺たちもそう言う存在でありたいよね」
 
 パチパチ…スゴーイ

みのり「……あれ?俺なんか変な事言った?」

恭二「…みのりさんってそう言う所凄いっスよね」


ピエール「ボク、遊園地でカエールしてた!」

恭二「ピエールは俺のバイトしてたコンビニの近くの遊園地でカエルの着ぐるみ着て風船配ってたよな」

みのり「今でもカエルの着ぐるみ事務所に置いてあるよね」

ピエール「これからも着る!皆にカエールもっと見せる。ね、カエール!」

ピエール(カエール)「ボクモBeit、ガンバル。ケ~ロケロ」 カワイイー!

みのり「心強い仲間だね」

P(僕が初めて会った時、三人とも元々知り合いだったはず……)

P(そう言えば、三人がどうして出会ったのかはあまり知らないや)

P(いつかそういうのも、話してくれるのかな?)



みのり「じゃあ次の質問は俺が引こうかな」

恭二「間違えて二つ引かないで下さいよ」

みのり「やだなー恭二。いくらなんでも……」ズボッ

ピエール「…みのり、ふたつ手に取った」

みのり「あれ、おかしいな…あはは」 ドッ

恭二「やっぱみのりさん持ってるな……どっちにします?」

みのり「うーん、じゃあこっち。どれどれ」


みのり「…Beitのなかで付き合うんだったら誰が良い?」 キャー!


みのり(うわっ……アイドルにありがちな質問だけど、まさか自分がこれを引くとは…!)プルプル

P(アッやばいみのりさんが固まってる!頑張ってください、これはユニット制アイドルの宿命っ……!!ってスタッフさんに力説されました)

P(……王道の割に意図が分からない質問ぶっちぎりナンバーワンだよねこれ……答え難いし)

恭二「……どういう事だ?」

ピエール「ボクがふたりのこと、どっちか彼女にする?」

恭二「彼女はないだろ…これどっちか選ばなくちゃいけないのか?正直どっちも考えたくない」

みのり「まあそう言わずに!俺ならそうだなあ……うーん…俺がピエールって言ったら年齢差がちょっとアレだし恭二かな。結構しっかりしてるしね」

恭二「消去法かよ……俺はピエールで。なんだかんだ引っ張ってってくれる」

ピエール「じゃあボク、みのり!みのり優しくて、だーいすき!」

みのり「ありがとうピエール。俺もピエールのこと大好きだよ」

恭二「でもこれ自分が男目線か女目線かで変わって来ますよね」

みのり「……そういう生々しい所まで聞いてないと思うよ?」


恭二「最後は俺か…ピエール、質問箱持ってくれ」

ピエール「りょーかい!」

恭二「よし、これにするか」ズボッ

みのり「恭二、どんな質問引いた?」


恭二「……今後の目標は?だそうです」オオ…


ピエール「はーい!ボク、世界中を笑顔にする!それで世界、平和にする!」

恭二「相変わらず大きく出たな」

みのり「ピエールを見てると笑顔になるよね」

ピエール「えへへ…でも、ボクまだまだ。Beitもはじまったばっかり…だから、もっと色んな人を笑顔にしたい!」

ピエール「ボクたちの歌、ダンス……もっと上手くなって、ボク、お喋りも上手くなる」

ピエール「もっとみんなに楽しんでもらう!これがボクの目標」 パチパチ…

みのり「じゃあまず、このイベントを楽しんでもらえると良いね」

ピエール「! みんなー!楽しんでるー!?」 キャー

「たのしいー!」「ピエールくんかわいいー!」

ピエール「わーい!…あ、あとボク、かっこいいって思われたい。がんばる」 ドッ

恭二「それは割と先の事かもしれないな」


みのり「俺は…元々アイドル好きだったけど、見るのとやるのは全然違うなあってよく思うから…」

みのり「アイドルが素敵なものだって、ひとりでも多くの人に伝えられたら良いかな」

みのり「自分でもそれが何かまだ分からない所もあるし、もっとアイドルを知りたい」

みのり「アイドルを知って伝える…これが目標かな?」 パチパチ…

ピエール「拍手ー」パチパチ

恭二「ピエールもこういう具体的な事が言えるといいな」パチパチ

みのり「ありがとうございま…って二人は拍手しなくて良いよ」

ピエール「みのりかっこいいー!」

みのり「ピエールみたいに大きい目標じゃないけどね」

恭二「具体的な方が叶えやすいっスよ」

みのり「そう言う恭二は?」

恭二「俺は……」


恭二「俺は、アイドルになって自分の出来る事の少なさに驚いてる。今まで誰かと何かするって無かったし」

恭二「逆に言えば誰かと力を合わせたらこれだけの事が出来るって、何となくだけど分かった。それがとてつもなく魅力的な事も」

恭二「だからこの三人で…出来る事を増やして、俺自身も出来る事を増やして行きたい。自分が何が出来るかを試したい」

恭二「多分その先にトップアイドルがあるんだと思う」 ワー! パチパチ

みのり「……」パチパチ

ピエール「……」パチパチ

恭二「…何だよその拍手は」


P(恭二……)パチパチ

P(この話、恭二のお父さんも聞いてるのかな)

P(恭二の気持ちを受け止めてくれてるんだろうか)

P(……きっと今の恭二は彼の知らない部分が見えてる気がする)


(トップアイドル、か……所詮絵空事だ)

(それにあいつは出来る事より出来ない事の方が格段に多い)

(そんな奴に出来る訳がない)

(だが、あいつから滲み出る自信は何だ?どこから来ている?)


(……それが一人ではないと言う事、だとでも言うつもりか)


恭二「おい、もうこの話やめにするぞ」

ピエール「もっと恭二の演説、聞きたい~」 キキターイ

みのり「そういう訳にも行かないんだよピエール。実は…」チラ

ピエール「実は?」チラ

恭二「実はー…」チラ

三人「これからサプライズライブします!」 キャー!

みのり「やっぱり新曲は直接届けたいよねって事になって」

恭二「折角発売したしな」

ピエール「ボク、歌うのだーいすき!」

みのり「俺も大好きだよ!」

恭二「俺はまあ、そこそこ」 エー

恭二「えー、じゃないだろ。でもまあ……歌うのは楽しいよな」

ピエール「ふふ」

みのり「Beitは歌うのが大好きと言う事で…あ、スタッフさん大丈夫ですか?」

ピエール「準備おっけー!」

恭二「そろそろ行くか…じゃあ、聞いて下さい。CHANGE THE WORLD」


 ♪CHANGE THE WORLD


 I WANT TO CHANGE THE WORLD
 疾風(かぜ)を駆け抜けて
 何も恐れずに いま勇気と笑顔のカケラ抱いて
 CHANGE MY MIND
 情熱絶やさずに
 高鳴る未来へ 手を伸ばせば 輝けるはずさ IT'S WONDERLAND


恭二(親父の姿、全然見ないな…スタッフの人は気を利かせてああ言ってたけど、もう居ないのかもしれない。来てないって可能性もある)

恭二(分かってくれないと思ってもいざこの場に立つと聞いて欲しくなるもんだな)


 僕等(ぼくら)は同じ世界を泳ぎ続けてる 互いの願いへ届く日まで

 みんな同じ不安抱えて 支え合えるよ
 立ち止まる瞬間に 見つめてる この場所に居る


恭二(あんたがどう思ったとしても、俺はやるよ)

恭二(やりたい事がやっと、見付かった気がする)


 I WANT TO CHANGE THE WORLD
 この手離さずに
 見守る瞳を 受け止めたら 何だって出来るはず
 CHANGE MY MIND
 孤独(ひとり)にさせない
 みんなここにいる どんな事も 突き抜けていこう IT'S WONDERLAND


恭二(この三人で、プロデューサーと一緒に…トップアイドルになりたい)

恭二(その中で自分に何が出来るか―…それを知りたい)


三人「…ありがとうございました!」

「サイコー!」「かっこいいー!」パチパチ…

恭二「この歌が皆の支えになったり、応援歌になったら嬉しい」

ピエール「! ボクもいっしょ!」

みのり「沢山聴いて欲しいな。…あ、カップリング曲の方は俺とピエールが中心に考えたから、そっちも聴いてね」キャー!

「以上を持ちましてトークショーイベントを終了させて頂きます」

「握手会の方に移らせて頂きますので、Beitの三人は一度退場し、観客席の方はそのままでお待ち下さい」


P「皆お疲れ、凄く良かったよ!」

恭二「親父居なかったぞ。居なかったんじゃないのか?」

P「後ろの方で見てたよ。気付かなかった?」

恭二「あ……そうなのか。そうか……」

みのり「恭二、嬉しそうだね」

恭二「…まあ、そうスね。来ないと思ってたし…流石に握手会には来ないだろ」

ピエール「恭二、握手会で喋る。準備ばっちり?」

恭二「今回は人が多いから一人に割く時間は少ない。何とかなる」

「握手会準備出来ましたー!Beitの皆さん入場お願いします!」

みのり「呼ばれたね。そろそろ行かないと。えっとこれは…何までOKだっけ?」

P「……ハグまで求められたら応えてあげてください!あとは普通に握手で!」

恭二「いやそれは困る」

みのり「ハグとかまでは流石に求められないと思うけど…」

P「たまに突拍子のないことする人もいるから…あはは……」

ピエール「ぎゅーっとして笑顔!いってきまーす!」


「お疲れさまでした」

恭二「ありがとうございます」

「Beitって仲が良いんですね。見てて楽しかったです!」

恭二「…! はい。良いグループに恵まれました。これからも頑張ります」


「写真集のピエールくん、かっこよかったよ」

ピエール「ホントウ!?嬉しい!ボクもっとかっこよくなる!」

「楽しみにしてるね」

ピエール「がんばるから、ずーっとボクの事見ててね♪」

(ピエールくんって本当すごいのね…)


「ありがとうございました」

みのり「こちらこそありがとうございました。また来て下さい」

「渡辺さんがお花が好きって聞いて、フラワーアレンジメントを習うようになったんです」

みのり「わあ、嬉しいな。今度写真送ってよ。見てみたいな」


P(おお……皆受け答えが全然自然になってる…凄いアイドルっぽい)

P(いや、皆もうアイドルだ。アイドルになって…2ndシングルも出した)

P(まだまだこれからだけど、もう止まったり、後ろ向いたり出来ない)

P(そう言う所まで、三人は来たんだ……)

P(連れて来たのは僕……で、良いのかな。まだ実感も何もないけど)


恭二(次で最後か……ん?)

恭二「……親父?」

「…楓に行けと言われて、来ただけだ」

ピエール(! みのり、あの人……)コソコソ

みのり(何かあったら俺たちがフォローするんだよ。…プロデューサーも気付いてるかな…)チラ

P(……! 何かあったら出ます、目線ください)グッ

恭二「分かったと思うけど、俺はあんたと闘う事になったとしてもアイドルは辞めない」

恭二「自分でやりたい事が、やっと見付かったからな」

「そうか、なら闘うが良い。その足りない頭で――」

「……」

恭二「? それだけ言いに来たのか?じゃあさっさと……」

「お前のプロデューサーとやらを呼べ。出来れば人の居ない所で」

P「……僕?」


P「今日はわざわざお越し下さりありがとうございました。鷹城くんも喜んでました」

「は、そんな事はどうでも良い。今日呼び出したのは―…」

P(買収の件だよな……)

「あんなに楽しそうに、何かをする恭二を初めて見た。熱のある瞳で、笑って―…」

「学生時代は出来もしない勉強をするばかりだった。級友の存在も知らない。少なくともあんな顔は私には決して見せなかった」

P「…少し考えが変わったようですね」

「根本的には何も変わっていない。トップアイドルなど出来もしないだろうし、恭二にはそんな力も無い」

「……だが恭二は一人ではない」

「それは弱さでもあるが、弱き者にとっては強さであるのかもしれない。私にはそれが分からないが」


「賭けてみても良い、そう思えた。今回は手を引いてやる」

P「―…!! ありがとうございます!」

「後悔する事になっても知らんがな」

P「大丈夫です。あの3人なら!」

(恭二も、この男も……同じ目をしている。それだけではない、楓も―…)

(……本当に思い通りにならない、忌々しい奴等だ)


「あいつは出来が悪い。それは私がよく知っている。これからは泣きついても帰って来る場所はないと思え」

「だがもしやりたい事が叶った時は―…」

「家に帰って来なさい。……そう伝えてくれ」

P「…承知しました。あの…」

「何だ。まだ何か用か」

P「直接言わなくて良いんですか?」

「あんな馬鹿息子に言う必要など無い。失礼する」

P「はい!ありがとうございました!!」


P(恭二のお父さん、あの調子だと分かってくれたのかな…)

P(でも良かった。三人の力がちゃんと届けられた)

P(…それにしてもあの人、素直じゃないっていうか…)

P「そう言う所、親子っぽいなあ」


ピエール「あ!プロデューサーさん帰って来た!」

恭二「何も無かったか?」

みのり「多分穏やかな話ではなかったと思うけど…」

P「うん、聞いて皆。実は……」

恭二「どうせ全面戦争だろ」

ピエール「ボクたち、駄目だった!?」

みのり「た、タイマンなら程々に頑張るから……」


P「この件からは手を引くって!」


恭二「……本気か?嘘じゃないのか?」

P「嘘じゃないよ、後悔しても知らないって言われたけど」

みのり「じゃあ俺たち、このまま315プロのBeitとして仕事が出来るんだよね?」

ピエール「圭や麗、四季とも…賢とも一緒に居られる!?」

P「うん。これからも皆と一緒だ!」

ピエール「! やったー!!」

みのり「良かったあ……何か安心したら腰が抜けそうだよ…」ヘナヘナ

恭二「アイドルなのにリアルだからやめて下さいよ」

ピエール「みのり、大丈夫ー?よいしょ、っと」


P「恭二には伝言預かってる」

恭二「どうせロクでもない事だろ」

P「えーっと…恭二が出来ない事はよく分かってる。泣きついても帰って来る場所はない」

P「だがもし夢を叶える事が出来たら、その時は家に帰って来なさい。…だって」

恭二「……やっぱりロクな事じゃないな」

P「そうでもなくない?心配してるんだよ」

恭二「あんたにはその伝言が心配してる風に見えるのか?」

P「恭二もきっと分かる時が来るよ」


 車内

恭二「はー…あれから更に2回イベント回すと流石に疲れるな…」

みのり「何人と握手したんだろうね…」

ピエール「でも楽しかった!」

P「お疲れ三人とも。ちゃんと消毒した?」

ピエール「ばっちり!アルコールでピカピカ!」

P「本当だ。…そうだピエール、カエールもそろそろ洗ったらどう?最近くたびれて来てる」

ピエール「! じゃあ今日帰ったら、一緒にお風呂入る!」

恭二「ぬいぐるみと一緒に風呂に入る15歳か…今更だけどそれってアリなのか?」

みのり「良いんじゃない?ピエールだし」


P「そうだ、久しぶりにアイス食べようか。最初の頃やってたけど、最近仕事終わりにアイス食べてなかったよね」

恭二「もう秋終わって冬になるぞ」

ピエール「雪見だいふく!」

P「雪見だいふくは冬のアイスだよなあ」

みのり「CMこたつの中に入ってアイス食べてるけど、あれよく考えたら贅沢だよね」

ピエール「雪見だいふくとこたつ、日本の贅沢!」

恭二「そう言われたら雪見だいふく食べたくなって来たな」

P「じゃあ全員雪見だいふくね。皆がコンビニ行ったら大変だから僕買って来るよ」

みのり「ありがとう、車の中で待ってるね」

恭二「動かなくて良いって楽だな」

ピエール「恭二、アイドルっぽくない」

恭二「……ピエールにそれを言われるとはな…」


 コンビニ

P(雪見だいふくはえーっと……あ、今チョコクッキーと抹茶があるんだ)

P(チョコクッキー美味しそうだなあ。抹茶にはあずきのソース?が入ってる…迷うなあ……)

P(普通のもあるし……ああーどっちにしよう…)

「すいません、ちょっと良いですか?」

P「あ、ごめんなさい」

P(ん?普通の雪見だいふくを取ってった…)

P「……やっぱ普通が一番か」

P(よし、普通のふたつにしてあとは一種類ずつにしよっと)


P「お会計よろしくおねがいします」

「pontaカードありましたらご呈示下さいー551円になります」

P「カードあります。1001円からお願いします」

「1001円お預かりしますー」ピピ

P「……ん?」

P(今コンビニに流れてる歌、2ndシングルだ!)

P(こうやって全然関係ない所で流れるのって…何か凄く嬉しいかも……)

「? お客様?」

P「ヘアッ!?す、すいませんぼーっとしてました……」

「おつり450円になります。ありがとうございましたー」


P(ついニヤニヤしちゃったけど確実に僕怪しい人だったな……)


P「ただいまー買って来たよ。3種類あるから好きなの早いもの勝ちね」

ピエール「ボク、チョコクッキー!」

みのり「恭二先選んで良いよ」

恭二「俺普通のやつで」

P「みのりさんどっちが良いですか?」

みのり「うーん、じゃあ抹茶にしようかな」

P「じゃ僕は普通ので……暖房もっと付けようか」カチ ブオーン

ピエール「わー、あったかーい!」

恭二「この無駄感がクセになるよな」

みのり「えっこれ何かソース入ってるんだ。何かどろっとしてる…」

P「あっごめんなさいそれあずき入りソース入ってるらしいです!もしかしてあんまり美味しくない…?」

みのり「すっごくおいしい…!」

P「それは良かったですけど……」

ピエール「みのり、こぼれてる」フキフキ

みのり「あれっ……あはは、ありがとうピエール……」


P「そう言えば今コンビニで2ndシングルかかってたんだよ!」

ピエール「!! やったー!」

恭二「一応オリコン10位以内だしな」

みのり「折角だから聴きたかったね」

P「三人ともそろそろ世間に顔が割れてくるのでそこは多少我慢して頂いて……」

恭二「コンビニとか行けなくなるのか?」

みのり「トイレ行っちゃいけないみたいな?」

P「いつの時代のアイドルの話ですか」

P(そっか、これからそう言う事も考えて行かなきゃいけないか…)

恭二「はー、何とか山場を越えた感じがする」

P「肩の力が抜けたよ。明日からまた仕事探しだけど」

みのり「二人ともお疲れさま。今回は大変だったし少し休んでも良いんじゃない?」

ピエール「二人が倒れたら、ボクたち困る」

P「そうだなあ…最近レッスン出来てなかったし、これから歌番組とか出るかもしれないんだからちゃんとやっておかないとなあ」

P「でも2ndシングル出したしこのタイミングでっ…うう~ん……」

みのり「ふふ、迷ってるね」

P「休んで仕事してレッスンして…って何でいっぺんに出来ないんですかね…」

恭二「身体がひとつしか無いからだろ」

P「身体3つくらい欲しいなあ」

ピエール「ボクがトップアイドル、なったらプロデューサーさんの身体増やす」

P「えっどうだろう、その頃にはクローンのひとつやふたつ…」

恭二「そうでもないだろ」


P「それにしても、もう冬かあ…」

みのり「今年はいつも以上に一年過ぎるの早く感じるよ」

恭二「まだ2ヶ月くらいあるんスけどね」

ピエール「寒くなったら、なにする?」

P「いい加減アイスやめて、今度はラーメンとかにしようか」

みのり「男4人でラーメンか…男臭いけど良いね」

ピエール「ラーメン?たべもの?」

恭二「夜中に食べるのが最高に美味い」

P「や、やめてよピエールに変な事吹き込むの…でも夜中のラーメン美味しいよなあ」

ピエール「! ボクもラーメン食べる!夜中にラーメンする!」

みのり「ピエールは若いし大丈夫だよ」

P「そういうグルメ系の番組とか一回どうですか?ピエールとか日本の料理知らない内にする方が面白そう」

ピエール「グルメ番組、コナモノ食べれる!?」

恭二「随分ジャンキーだな」


P「……あ、そうだ仕事で思い出した!もしかしたらハロウィンイベントの仕事がBeitに来るかも」

P「さっきメール確認したら入ってて…仮装してお菓子を配るんだけど、どうかな?」

みのり「仮装!?…ってなにをしても良いのかい?」

P「あー…ごめんなさい、衣装は決まってます」

みのり「そっか……」シュン

恭二「今みのりさん絶対よからぬ事考えてましたよね?」

ピエール「みのり、悲しそう」

みのり「いや、大した事じゃないよ。あはは…」

みのり(……つい買っちゃったアイドルのレプリカの衣装、今年も着られないな……)

恭二「じゃあそれが親父の件がなくなって、初めての仕事になりそうだな」

ピエール「恭二もこれで、のびのび仕事する!」

みのり「良かったね、これもプロデューサーのお陰かな?」

P「いや、皆のお陰ですよ。恭二が折れないで、ピエールとみのりさんがそれを支えてくれた結果です」

P「それに天ヶ瀬くんや高垣さん…結構色んな人にアドバイス貰ったりしたし、僕なんてまだまだです」

P「…でも、Beitが今日ステージに立って、逞しくなった気がした。僕も負けてられないよ」

恭二「あんただってそれなりに成長してるだろ」

ピエール「ボク、プロデューサーさん頼りにしてる!」

みのり「皆プロデューサーの事、信頼してるんだから」

P「……ありがとうございます。これからも一緒に頑張りましょう!」


 事務室


P「お疲れさまです」ガチャ

山村「あ、Pさん!鷹城グループの件なんですが…」

P「もう解決したでしょう?」

山村「えっ何で知ってるんですか?」

P「さっき本人に会って来ました。恭二をよろしく頼むって」

恭二「そんな事一言も聞いてないぞ」

P「あの伝言も裏を返せばそんなもんだよ」

みのり「何より解決して良かったよね」

ピエール「賢ともずっといっしょ!」

山村「!! ピエールくん……!」バッ

ピエール「まだ圭と麗、居る!?ボク探してくる!」バターン!

山村「あれ……?」

P(行き場のない手だ……)


P「ぷぷ、ピエールは友達多いですからね」

みのり「元気だなあ…俺もオフィスの方行けばアイドルに会えたかも……でもそんな、アイドルの知り合いとか居ないし…」

恭二「行って来ても別に怪しくないっスよね」

みのり「や、やだなあ!恐れ多いよー!」バシッバシッ

恭二「痛っ!みのりさんが叩くと洒落にならないんで…っ本当に痛いんスけど」

P「そう言えばみのりさん、天ヶ瀬くんとのバラエティ、今日の深夜放送ですよ。見てきますか?」

みのり「もう家で録画ばっちりだよ。実は凄く緊張してるんだ……」

P「また仕事する機会、あるかもしれません。そしたら伊集院くんや御手洗くんとも仕事出来るかも」

みのり「う、うわあ…そう思うと今から緊張するよ」

恭二「…俺、あの時は本調子じゃなかった。またバラエティの機会があったら受けて欲しい。今度は絶対に成功させる」

P「……うん。もっといつもみたいにキレッキレの突っ込み頼むよ」

恭二「別にそうでもないだろ?」


「失礼します。ピエール様のお迎えに……」ガチャ

P「あ、ピエールの……いつもお疲れさまです。申し訳ないんですけど今ちょっと上の階で…同年代の子と遊ぶみたいですし大丈夫ですよ」

「なっ…そうですか、とうとうピエール様にも同世代のお友達が……」ポロポロ

P「あ、いやそんな、泣かないで下さい。嬉しいのは分かりますけど」

ピエール「あー!泣いてる!プロデューサーさん、泣かせた?」

P「泣かせてません!!!ほらそろそろ帰らないと」

ピエール「はぁい。プロデューサーさん、また明日!」

P「うん、また明日」


みのり「ふふ、子供は元気だね」

P「ピエール意外と友達多いよな」

P「ピエールはAltessimoの二人大好きだからなあ。また仕事したいなー…」

恭二「俺は硲さんに結構世話になってるからな。一緒に出演出来る機会があったら嬉しいけど」

みのり「俺はやっぱりJupiterかな。全員とは共演してないし、いつかあのユニットと肩を並べてみたい」

みのり「いつになるかは分からないけどね。あはは……」

P「みのりさん大きく出ましたね!可能な限り頑張ってみます」

P「……ハロウィンの件以外は、今日からまた仕事探しですけどね!」

恭二「もうしばらくは急にデカいグループ会社に移籍しそうになったりしないだろ。安心して仕事探せよ」

みのり「いつでも出来るように準備しておくから」

P「二人ともありがたいことです……」


みのり「じゃあ俺はそろそろ失礼するよ。明日は午後からで良いんだよね?」

P「はい。今日も忙しかったですし、ゆっくりして下さい」

みのり「じゃあバラエティ見てから寝て、朝JupiterのDVD…いや…今後の勉強の為にバラエティの見直し…」

恭二「あれ絶対休日を満喫しようとして失敗するパターンだよな」

P「それは言わないでおこう…」

みのり「ん、何か言ったかい?」

P「イエ何も」

恭二「何も」

みのり「…? 変な二人だなあ。じゃあおやすみなさい。二人もほどほどにね」バタン


P「はー…終わったおわった」

山村「今回Pさん結構忙しそうでしたもんね」

恭二「悪かったな」

P「そんな事ないよ、忙しいのは良い事だし。三人だって忙しかったんだから。それに恭二だって気疲れしまくっただろうし」

恭二「まあな。明日やっとゆっくり出来る。…その前に事務所のシャワー浴びるか」

P「あっこら山村さんの前では…っ」

山村「え?ああ、そう言うアイドル結構居るみたいですよ。社長には言わないので安心して下さい」

P「そ、そうなんですか?…安心しました」


P「前から気になってたけど恭二は銭湯行くお金もないの?僕が知らないだけでそんなにアイドルの給料低い?」

恭二「い、いや…そうじゃない」

P「じゃあ何か問題でも…」

恭二「貯金してる」

山村「ふふ、Pさん心配性もその辺に…」

P「切り詰めすぎだよ、アイドルなんだからもっと自分を大事に……!」

恭二「自分が居心地の良い場所に居るのだって、自分を大事にしてるのと同じだろ」

P「……へ?」

山村「あーあ、言わせちゃいましたね」

恭二「……シャワー室行って帰る。ついでにトレーニングジムも行く」バタン

P「えっ待って!もっかい!もっかいだけ!!」バターン!


山村「……仕事しようかな」


P「ま、待って恭二…アイドル始めた頃より大分体力ついたね……」ゼエゼエ

恭二「そりゃあ少しはな…」ゼエ…

P「さっきのは事務所が恭二の居場所になってるって事…で良いの?」

恭二「~~っ 何だよ一回で分かれよ…むず痒いだろそう言うの」

P「そっか…多分それ言ったら楓さんが喜ぶよ」

恭二「何で楓が出て来るんだ?」

P「恭二が思ってるより、恭二には沢山味方が居るんだよ」

P「恭二のお父さんだって、口では言わないけど……恭二が家を飛び出した時より、恭二の事分かってくれてると思う」

P「ピエールやみのりさん、他の315プロの皆も恭二の事応援してるんだよ」

恭二「…そうか。これからもっと、俺を見てくれたり、認めてくれる人が…増えるのか?」

P「うん、アイドルになって活動して…恭二を見てくれる人がきっと、沢山増える」

P「恭二を見て、それが力になって……応援してくれる人が、もっともっと増えるんだよ」

恭二「……それは…嬉しい事だよな」


P「それにさっきのイベントで、恭二がトップアイドルになるって言ってくれてちょっと嬉しかったんだ」

恭二「そう言うもんか?」

P「うん。トップアイドルを育てたい、って言うのは僕の夢だし。それが恭二の夢とちょっとでも重なったのかなって」

恭二「……そうだな。でも俺だけじゃない」

P「ん?」

恭二「俺の夢があってピエールの夢があってみのりさんの夢がある。あとあんたの夢もだ。それぞれ規模は違うけど―…多分どこかで繋がってる」

恭二「全部叶えるって言ったのはプロデューサー、あんただろ」

P「…! うん、恭二の言う通りだ。これからもよろしく。…ってことで、手出して」

恭二「ああ。力を合わせて目指すぜ、トップアイドル」コツ

P「もちろんだよ!」コツ


恭二「ところであんたどこまで付いて来る気だ?俺これからジム行くんだけど」

P「あっそうなの?俺も久しぶりに身体動かそうかな…仕事依頼するメールも出したし」

恭二「あんたスーツだろ。服どうすんだよ」

P「あー…えーと……恭二持ってない?」

恭二「Tシャツは2枚あるけど…ジャージはハーフパンツしか貸せない。長いのは俺が履く」

P「え、ハーフパンツ寒いよ…長いの貸して!お願い!」

恭二「さっき自分の事大事にしろって言っただろ!」

P「僕だって自分を大事にしたいんだよ!」

恭二「…しょうがねーな。じゃあじゃんけんで勝ったら貸してやる」

P「分かった。絶対勝つからね」

恭二「俺だって負けない」

P「よし、こい!」



「「最初はグー、じゃんけんポン!」」




  渋谷の営業活動を完了しました。
  次の営業をはじめよう!
  【渋谷】 → 【中野】



 おしまい


お疲れさまでした。
ファーストライブの雑誌の恭二が自分の家の事について話してたのでどっかで問題になったりするのかなーと思いました
Beitは過去について掘り下げ甲斐のあるユニットなのでそう言う所も良いユニットですね
多分このssのプロデューサーはアイドルのなかでは一番恭二と歳が近いので
同世代同士のやりとりが書けて楽しかったです
あと何よりsideM始めた時に恭二を見て「楓さんの弟…?」と思ってたのをここでぶつけられて良かったです

このss書いてる間にBeitのクリスマスイベント決まったのでクリスマス楽しんできます
じゃあhtml化以来出してきます。ここまで読んでくれてありがとうございました

乙!前回もだけど面白かった
みのりさんやピエールメインの話も読んでみたい


今回もおもしろかった!

>>240
240みたいに前作読んでたよーって言ってくれる人が居たのも嬉しかった。今回もありがとう
ピエールやみのりさんの話もいつか書きたいけど、ネタが弾切れ状態だからまた凄い時間がかかりそうだ……
今度はBeit全く関係ないsideMのssとかも書いてみたい所

>>241
読んでくれてありがとう
喧嘩シーンとか恭二のお父さんみたいな人書くの得意じゃないからドキドキだったんだ…

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