クーフリン「修業を終えたので、そろそろ嫁を迎えに行く」 (22)

クーフリン「影の国で修業をして、鮭跳びの術とゲイボルグの扱いを習得した。これでいつでもエウェルを迎えに行くことが出来る」


クーフリン「でもエウェルには俺が修業をしている間、かなり待たされたからな。今度は俺が少し待たせてやってもいいだろう」


?「馬鹿じゃないの!?」


クーフリン「!!」

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クーフリン「お前は! エウェルの友達で人妻のフェデルム!」


フェデルム「簡潔な自己紹介ありがとう。でも今はそれどころじゃないのよ馬鹿!」


クーフリン「一体何だって言うんだ」


フェルデム「あんたが馬鹿やってるうちにエウェルはマンスターの王様と結婚させられそうになってるのよ!」


クーフリン「それは本当か!?」


フェルデム「本当じゃなかったらこんなに必死こいてないわよ馬鹿!」


フェルデム「分かったらさっさと残り二人の馬鹿を連れて、あんたら三馬鹿で早くエウェルのところに行ってきなさいこの馬鹿!」


クーフリン「これが噂に聞くNTRか……なら、早くエウェルの元に行かなくちゃな!」


フェルデム「今から花嫁を強奪しに行くあんたも大概だと思うけどね! この馬鹿!」

?「ちっ、今回も賭博で負けちまった。この馬は期待外れだったみたいだな」


クーフリン「おーい、俺の御者兼幼馴染兼苦労人ポジションのレーグー!」


レーグ「何でお前そんなに説明的な呼び方なの?」


クーフーリン「大変だ! エウェルが他の男にとられちまう!」


レーグ「エウェル? ああ、お前がお熱だったけど門前払いされたあのお嬢さんね」


クーフリン「というわけで、俺が世界で一番愛してる女の為に早く馬を戦車に繋いでくれ!」


レーグ「影の国で女領主と一発ヤってきた奴の台詞とは思えねえな」


クーフリン「それはそれ。これはこれで」


レーグ「アルスターの猛犬ってか、犬畜生だな言動が」

クーフリン「そんなこと言わずに頼むぜレーグ!」


レーグ「まあ別に良いけどよ……というか、何だよあの戦車に積んであるやつ」


クーフリン「ああ、ゲイボルグのことか? かっけーだろ、あれ使えるの俺だけらしいぜ」


レーグ「いや、あの槍何かの生き物の死骸から出来てんだろ? ぶっちゃけ気持ち悪ぃよ、あれ。あんなもん戦車に積むなよ」


クーフリン「何言ってる。あの槍すげーんだぞ。如何にも必殺技っぽくて、どんな敵でも倒せそうな威力なんだぜ!」


レーグ「そうは言うけどよ。お前この前の戦いで太陽神の槍すらきかない相手を普通の投石器でぶち殺してたじゃん。親父の面目丸潰れにしてたじゃん。ゲイボルグいらねーだろ」


クーフリン「いやでもあれ地味だし。必殺技っぽくないし」


レーグ「そういう問題かよ」


クーフリン「その点ゲイボルグはすごいんだぜ。敵の腹を刺した瞬間棘がばっーと広がってさ。あれ綺麗なんだよな、花が咲いてるみたいで」


レーグ「それハラワタが飛び散ってるだけじゃねーか。ってか怖すぎだろ。完全に悪役の技だろ、それ」

?「よお、お前等。何話してんだ?」


クーフリン「おお、これは俺の幼馴染兼好敵手兼踏み台のコナルじゃないか!」


レーグ「悪意の籠った説明だな」


コナル「もしかして戦の話か? だったら俺も混ぜてくれ。傷も治ってきて体が疼いてんだ」


クーフリン「はは、何言ってんだよコナル。あの程度の掠り傷ならもう完治してる筈だろ?」


レーグ「腕がちぎれかかった状態を掠り傷とかどんな感性してんだよ」


クーフリン「ってなわけで、コナル。ちょっと花嫁ぶん盗りに行けね?」


レーグ「何で、ちょっとコンビニ行かね? みたいなノリなんだよ」


クーフリン「コンビニって何だ?」


コナル「さあ? 新手の妖精郷の名前か?」


レーグ「すまん、例えが悪かったな」

レーグ「何で、コナルーハーリングしようぜー、みたいな感じなんだよ」


クーフリン「馬鹿野郎! ハーリングは男達の力と技と魂がぶつかり合う熱い競技だろ!」


コナル「ああ、その通りだ。どれ、いっちょハーリングで決着をつけてから行くとするか!」


レーグ「何で球技の方を持ち上げてんだよ。肝心の花嫁の話おざなりじゃねーか」


クーフリン「そうだった!」


レーグ「忘れんなよ」


コナル「俺としたことが先走り過ぎたぜ。じゃあ早速、鈍った体をほぐす為に花嫁をぶちのめしに行くか!」


レーグ「おい、目的混ざってんぞ」


クーフリン「早くエウェルに見せてやりたいぜ、俺の立派なゲイボルグが弾けるところを」


レーグ「その名前だとホント下ネタにしか聞こえねーよな」


クーフリン「エウェル喜んでくれっかな?」


レーグ「ハラワタにしろイチモツにしろ引かれることは間違いねーだろうな」

レーグ「ってなわけで、エウェル嬢の城に到着したわけだが」


コナル「へへっ腕がなるぜぇ……」


レーグ「でも、城門は閉ざされてるぞ。どうする?」


クーフリン「すいませーん、宅配便でーす」


レーグ「何ですぐバレる嘘つくんだよ」


?「はいはーい、どちら様――って貴様等は!」


クーフリン「アルスターのクーフリンだ。俺の嫁ことエウェルをいただきにきた」


?「貴様のような小僧に娘はやらん。とっとと帰るんだな」


クーフリン「俺とエウェルは相思相愛なんだ。俺のゲイボルグを見せつけるまで、帰るわけにはいかない」


レーグ「おい、目的すり替わってんぞ」


?「貴様がどう思おうが娘はマンスターの王と結婚することが既に決まっている」

クーフリン「そんなことは俺が修業をしている間に勝手に決めたことだろうに。というかおっさん誰だ! 早くエウェルを出せ!」


?「き、貴様……親の顔も分からないのにそんな無礼な態度で娘を嫁に取ろうというのか!」


レーグ「全くもって正論なのが耳に痛いな」


クーフリン「はっ、まさかお前がエウェルなのか!? 少し見ない間にこんなナイスミドルになっちまって……」


レーグ「お前は何を聞いてたんだ」


?「ええい、わしはこの城の主でエウェルの父親のフォルガルだ! 覚えておけ小僧!」


クーフリン「ああ、覚えとくぜ。お義父さん」


フォルガル「貴様にそう呼ばれる筋合いはない!」


クーフリン「どうしてもエウェルを渡す気はないんだな?」


フォルガル「当たり前だ。誰が貴様のような青二才に」


クーフリン「なら力づくでも奪うまでだ。とうっ!」


フォルガル「!!」

フォルガル「ほう、それが噂の鮭跳びか。確かに城壁を一跳びで超える程の見事な跳躍だ」


フォルガル「だが、城内に降り立ったことで貴様は一気に不利になったぞ。者共相手をしてやれ!」


レーグ「さあ始まりましたケルト無双。実況は私レーグ。そして解説はこちらの――」


コナル「おい、ちょっと待て! 何で俺達は外野なんだよ!」


レーグ「いや、こうでもしないと俺達に出番ねえぞ。今俺の火壺で城門燃やしてるけどその前に終わっちまいそうだしな」


コナル「そもそも中の様子が分からねえのに実況も何も――」


レーグ「細かいことは気にするな。ああっーとクーフリン数回剣を振っただけで広間の兵士達を全滅させた―! 残るはフォルガルのみ!」


コナル「貴様こそ万夫不当の豪傑よー!」

クーフリン「さあ、あとはあんただけだ」


フォルガル「ええい、化け物め!」


レーグ「いやホントその通りだわ」


?「クーフリン……クーフリンなの?」


クーフリン「エウェル! ちょうど良かった。俺が君に相応しい男になったか見ていてくれ!」


クーフリン「レーグ! あれを!」


レーグ「いや、さも当然のようにあれって言われても分かんねえよ。なんだよあれって、灰皿か?」


クーフリン「今からお義父さんをボルグるから! 投げ渡してくれ! いや、ボるグ? ボルグる?」


レーグ「どっちでもいいわ。ほれ投げるぞー」


クーフリン「エウェル、今から俺がすることをよく見ててくれ!」

クーフリン「まず足の指でゲイボルグを挟む!」


クーフリン「次に相手に狙いを定めて投げるだけ!」


クーフリン「あとは穂先が敵に刺さったら勝手に破裂して敵を八つ裂きに! ね、簡単でしょう?」


レーグ「何の宣伝だよ」


フォルガル「ぐぎゃああああああああ!!!」


コナル「おっほ、エグい」


レーグ「曲芸かよ、とか嫁の父親を何躊躇いなくぶっ殺してんだよ、とか色々言いたいことはあるが、とんでもねえオーバーキルだったな」


クーフリン「どうだいエウェル。俺は君の望む男になったかい?」


エウェル「……ええ、あなたはとても立派になりました。私の想像を遥かに凌ぐくらい」


コナル「おっ、親父が挽肉になったってのに結構肝が据わってんな、あのお嬢さん」


レーグ「ついでに言えば、目も据わっちまってるけどな。エウェル嬢の方は精神的にオーバーキルされたらしい」

クーフリン「さあ、俺と一緒に来てくれエウェル」


エウェル「ええ、もう、何か、好きにして……」


コナル「ちっ、結局大した活躍も出来ず終いか」


レーグ「俺達がしたことと言えば、城を火の海にしたくらいか」


コナル「こう聞くと俺達も大概だな」


クーフリン「よーし、アルスターに向けて出発だレーグ! こんな結婚をしたのは後にも先にも俺だけだろうな!」


レーグ「お前みたいなのが何人も居たら国が滅ぶわ」


コナル「おい、遠くに見えるあの軍勢は何だ?」


エウェル「あの旗は恐らく、父の姉のミース叔母様の軍勢だと思います……」


クーフリン「敵討ちってわけか。いいぜ、何人だろうと相手になってやる!」


コナル「ヒャッハー! 今度こそ存分に戦えそうだな!」


レーグ「つまり、またケルト無双の時間ってことね」


クーフリン「ああ――俺達の闘いは、これからだ!!!」


レーグ「何で打ち切りみたいになってんだよ。いやまあ、ある意味間違ってねえけどよ」





この話はss用にクーフリンの結婚をおバカに書いたものですが、驚くべきことに全部が全部おバカに脚色されたものではないのです。


気になる人はサトクリフの「炎の戦士クーフリン」を読んでみてね! 今なら「黄金の騎士フィン・マックール」も読める文庫版もあるぞ!(ダイマ)

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