ヒストリア「ケニーの夢」(27)

※最新話までのネタバレあり


―――ウォール・マリア陥落後

レイス卿 領地

ヒストリア「お母…さ…」

母「お前さえ…お前さえ産まなけ」

ザシュッ!

ドシャッ…


ヒストリア「あ…」

ケニー「後はお前だ…悪く思うな」スッ

ロッド「待て」

ヒストリア「!」

ロッド「…偽名を使い…遠く離れた地で慎ましく生きるのなら、見逃してやってはどうだ」

ケニー「…はい?」

ヒストリア「…」

ロッド「お前たち、ヒストリアを連れていけ」

黒服「はっ」ザッザッ

ヒストリア「!!」

ヒストリア「はっ…」

ヒストリア「はなせええええええ!!!」

黒服「うわ、なんだこいつ!?」

ロッド「!?」

ケニー「…」

黒服「ええい、おとしくしろ!」

ヒストリア(なんで…なんで、こんな目にあわなきゃいけないの…やだ…もうやだ…)

ケニー「…」


ヒストリア「はあ…はあ……いつか、…お前たちを………」ギロッ

ロッド「!」

ロッド(…まさか、あんな反抗的な態度を取るとは……)

ケニー「……」

ケニー(いい目するじゃねぇか、あのチビ)

――開拓地―

クリスタ「…」

「あの子、なんか怖いよね…無口で無表情だし…」

「まあ、何かあったのかも知れないしそう言うなよ」

クリスタ「…」

クリスタ(あと二年、そしたら私は訓練兵団に入る)

クリスタ(そして憲兵になって…あいつらに近づき、いつか必ず復讐してやる…)

ケニー「よお、おっかねぇ顔してどうした」ポンッ

クリスタ「!?」ビクッ

クリスタ「な、なんであんたがいるんだ!?」

ケニー「久しぶりに顔を見に来てやったんだよ…大きくなりやがって。いや、全く変わってねぇな」

クリスタ「ふざけんじゃないわよ!!」

ペチンッ

クリスタ「いたっ!」ズキッ

ケニー「非力な上に殴った自分の手が痛いたぁ、情けねぇな」

クリスタ「う、うるさい、消えろ!!」

ケニー「……お前、俺たちに復讐しようと考えてたろ?」

クリスタ「!」

ケニー「お前の目付き見りゃ分かるよ」

クリスタ「…だから?私を監視にでも来たの?」

ケニー「いや?レイス卿には内緒でな…個人的にお前に興味があってきた」

クリスタ「は?」

ケニー「…俺達の部隊に入ってみねぇか?」

クリスタ「………」

ケニー「もちろん、レイス卿にバレたら俺もお前も不味いがな……」

クリスタ「なに言ってんの?意味わからない…私にとったらあんたは憎い敵なのよ」

ケニー「お前さぁ…この世界に不満があるだろ?」

クリスタ「あるけど、あんたらの存在もその不満の一部よ」

ケニー「そう言われちゃ言い返せねぇな」

クリスタ「バカバカしい……もう目の前に現れるな」ザッザッ

ケニー「待て待て!お前…そんな非力な状態で復讐なんか出来ると思うか?」

クリスタ「…訓練兵団に入るから」

ケニー「訓練兵団に入りたいなら好きにすりゃいいが…それまでの二年の間でも俺の部隊に入ってみろよ」

ケニー「対人戦に関してなら訓練兵団に入るより俺らの下で訓練した方がいいと思うがな」

クリスタ「…」

ケニー「本当に復讐したいならなりふり構ってられないはずだぜ?」

クリスタ「…」

クリスタ「なんでそんな私を勧誘したがるの…あんたはあっち側の人間でしょ?」

ケニー「ああ、そうだな。だが…俺の本心は別のところにある」

ケニー「俺の夢はな…このクソッタレな世界をひっくり返すことだ」

クリスタ「…」

クリスタ「だから…なんで私を勧誘したがるのよ」

ケニー「言っただろ、興味があったからだって。レイス家の娘が復讐の為にこの世界をひっくり返す…面白そうじゃねぇか」

クリスタ「バカじゃないの」

ケニー「俺の部隊は、同じようにこの世界に不満を持つ奴等の集まりだ」

ケニー「一緒にこの世界を動かしてみねぇか?」

クリスタ「…」

クリスタ「…わかった、とりあえず力をつけるために……あんたらの部隊に入ってみる…」

クリスタ「ただし、私はあんたの命も狙ってるから……覚悟しておきなさいよ」ギロッ

ケニー「ははは、好きにしろよ!」

―――――

白服「…」

ケニー「と、いうわけだ。これから二年ちょっとの間だが…このチビを頼むぜ」

クリスタ「…」

眼鏡「隊長…その子は、まさか…」

ケニー「ああ、ヒストリアだ」

白女「前々から変な人なのは知っていましたが……まさかここまでとは呆れてものも言えません」

ケニー「まあまあ、こいつも同意の上だしよ。だが王様には内緒だぜ」

クリスタ「…」

ケニー「そうだな。おい、お前…ヒストリアの面倒は任せたぞ。子供好きだろ?」

女「え、私がですか!?」

ケニー「心配すんな、もしレイス卿に見つかったらヒストリアが迷子になって外で凍えてたから拾って来たと言えばいい」

白女「どんな言い訳ですかそれ」

女「うう…わかりましたよ」

ケニー「よし、じゃあ俺は仕事があるから出てくるぜ」ガチャ

白女「…はあ…」

女「よろしくね、ヒストリア」

クリスタ「うん」

―――

パンッ! パンッ!

クリスタ「………」

眼鏡「んー……全弾的から外れてるな」

白女「まだまだダメね」

クリスタ「…どうしたらいいの?」

女「えっとね…ああ、構えかたも良くないね…」
クリスタ「…」

女「…はあ…」

クリスタ「…どうしたの?」

女「あ、いや、ごめん…何でも…」

白女「…小さい子供に人の殺し方を教えるのは…やっぱり罪悪感があるね」

女「!」

クリスタ「…」

女「…うん、ごめんね…実は私も…やっぱり小さい子供にこういう事を教えるのは…気が進まなくて……」

クリスタ「…気にしなくていいよ」

―――――夕方

ザッ ザッ ザッ

クリスタ「ふう…ふう…」ザッザッ


白女「ヒストリア、そろそろ止めときなよ」

女「訓練に真面目なのはいいけど…無理のし過ぎも体に良くないよ」

クリスタ「…うん」


ケニー「よお!ヒストリアの調子はどうだ!?」バンッ

眼鏡「あ、お疲れ様です。隊長」

クリスタ「…」ギロッ

ケニー「ははは!睨まれちまったぜ!」

白女「私ももし立場が違ったら貴方とは関わりたくないですね」

ケニー「言ってくれるぜこいつは」

クリスタ「…」ザッザッ

女「あ、待ってヒストリア!」タッタッ

クリスタ「…」

女「ごめんね…隊長はいつもあんな調子で…」

クリスタ「…あいつは…人を殺す仕事してる癖になんであんなにヘラヘラできるの」

女「……」

女「まあ…事情は知ってるから、君が隊長を嫌うのも当然だよ」

クリスタ「うん、あいつも私にとったら敵だよ」

女「…」

クリスタ「…でも。あなたや、他の人達は…悪い人には思えない。なのに…」

女「…隊長の夢に共感したからかな……」

クリスタ「…」

女「確かにあの人は…正直人としては好きじゃないけど。でも…この世界を変えたいって気持ちは同じだと思うの………隊長を擁護する訳じゃなけど、ああいう性格になったのも元はこんな世界が原因だと思うし」

女「私もこの世界を変えたいと思っている。だから…その為なら、手を汚すことだってやる。辛くてもね…」

クリスタ「…」

女「…でも、やっぱり人殺しに慣れるのは良くないよ」

クリスタ「…」

女「出来たら私は…なるべく君には手を汚して欲しくない……」

クリスタ「……」


ケニー「おおい、飯だ!飯!早く来ねぇと全部食っちまうぜ!!」

女「ご飯だって…行こうか、ヒストリア」グッ

クリスタ「…うん」

―――――夜



女「…」

クリスタ「スー…スー…」

女(…起きてるときは冷たいような顔してるけど、寝顔はやっぱりまだ子供ね…)

クリスタ「…スー…」

女(さて、私も寝るかな…)

クリスタ「んん…待って…」ギュッ

女「!?」ビクッ

クリスタ「…お姉ちゃん……」

女(寝言か…)

クリスタ「…お姉ちゃん………まだ…行かないで…」

女「……」

女(今日は隣で寝てあげようか)

―数日後―

白女「…で、中央憲兵内から王政に反乱を企ているものがいるそうです」

ケニー「ふん、中央憲兵になって王政に近づいたあと反乱か……」

眼鏡「どうしますか」

ケニー「もちろん殲滅する」

女「あの…もしかしたら彼等も私達の思想に共感してくれるかもしれません。まずは話をして…」

ケニー「やりたきゃ勝手にやりゃいい。聞いてくれるかは知らねぇがな」

クリスタ「…」

ケニー「ヒストリアはいい子に待っておけよ」

クリスタ「…」プイッ

女「…ふう…」

クリスタ「…ねえ…」

女「!」

クリスタ「…」

クリスタ「…その…」

女「…」

クリスタ「…ちゃんと…帰ってきて…」

女「うん。戻ったら一緒に訓練の続きしようね」

クリスタ「うん」

白女「ほら、行くわよ」

女「はい!」ザッ

クリスタ「…」

―ウォール・シーナ―


中央憲兵「…本当にやるのか、クーデター…」

中央憲兵「ここまで来て何を言ってるんだ!俺達はこの為に中央憲兵にまでなったんだぞ!」

中央憲兵「そうだな、行くぞ…」

バキュウウウウウンッ!!!

中央憲兵「」ズシャアアアッ

中央憲兵「うわああ!?」

中央憲兵「どこからだ!?」

ケニー「見つけたぜえええ!!!」バシュンッ

白女「敵は12人…囲め、逃がすな!」

眼鏡「了解!」

中央憲兵「くそっ!」ガチャ

女「もう抵抗しても無駄です!!」

中央憲兵「うるせえ!」パンッ パンッ

女「うっ…待って!」

女「貴方達は…この世界に不満があるから、クーデターを起こそうとしてるのでしょ!?まずは私達の話も聞いて…」

中央憲兵「耳を傾けるな、撃て!!」パンッパンッパンッ

女「う!!」

女(やっぱりダメか…簡単に行くわけが無い…)ガチャ

兵士「あああ!!」パンッパンッ

女(よく見たら別の兵団の兵士も混ざってる……やるしかない!!)ガチャ

兵士「…」ガチャ

女「!!」

女(まだ10代くらいの女の子!?)

白女「何をしてる、早く撃て!」


女(…ダメだ…引き金が引けな…)

ケニー「おい!!」

兵士「わあああ!!」

パンッ!!!

――――――

パンッ!パンッ!

クリスタ「…」

クリスタ(前よりは的に当たるようになったかな…)


ズル…ズル…

クリスタ「!」



白女「…」


クリスタ「…」キョロキョロ

眼鏡「…あいつなら、隣の部屋だ…」

クリスタ「!」

女「…」ボロッ

クリスタ「!!?」ダダダッ!

クリスタ「…あっ…」

ケニー「ベタベタ触んな」

クリスタ「…」

女「…ヒス…トリア…」

クリスタ「こ、この怪我……」

女「だ、大…丈夫…すぐに、良くなる…から……」

ケニー「嘘はつくなよ」

女「…」

クリスタ「あっ…えっ…?」

女「………ごめんね……ドジしちゃって……わたし…」

クリスタ「しゃ、喋ら…ないで…」ゴシッ

女「ヒストリア………泣かないで……」

クリスタ「…」

女「…ヒストリアは…君は…まだ、子供で…未来の可能性が、たくさんあるんだから………憎しみだけで、動いたらダメだよ…」

クリスタ「え?」

女「あまり、過去に縛られずに…もっと…子供らしくしていいんだよ…」

クリスタ「な、なにを…」

女「…私を撃った人を恨まないで…彼等もただ…自分が信じるものの為に………」

クリスタ「………」

女「…そういえば…今度…一緒に…近くの森まで走るって…約束してたね………」

クリスタ「うん…うん、だから……まだ…」

女「ごめんね…約束…守れな……」

クリスタ「や、やだ…死んじゃ…やだ…」



クリスタ「…ねえ…」


クリスタ「…」







クリスタ「ああああああああ!!!」

クリスタ「…どうして……どうしてこんなことに…」


ケニー「どうしてだ?こいつは自分でこの部隊を選び、自分の意志で殺し合いをして少しのミスで死んだ…それだけだ。どうしてもこうしてもあるかよ」


クリスタ「なに、その言い方………何とも思わないの?」ギロッ

ケニー「ああ。俺は他の奴と違って異常者だからな、わかるだろ?」

クリスタ「…」

ケニー「俺は人が死ぬのが当然な糞みてぇな環境で育ってきた…1人死んだくらいでウジウジする気もねぇよ」

クリスタ「…もう喋らないで」

ケニー「…だが、まあ…こいつは、人のいい奴だったな。こういう奴も嫌いじゃなかった」

クリスタ「…」

ケニー「…お前が選ぼうとしてる道はこういう事が当たり前に起こる。お前自身にもな。それは忘れんなよ」ザッザッ


クリスタ「…」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom