魔法使い「えへへ、頑張りますっ!!」(267)

本編a まおう「よくきたなゆうしゃっ」勇者「なにこれかわいい」
まおう「よくきたな、ゆうしゃっ」勇者「何これかわいい」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1353157883/l50)

過去編 賢者「毎日楽しけりゃそれでいいよね」
賢者「毎日楽しけりゃそれでいいよね」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1353218482/)

今回は外伝的なものとなります。

それでは次から始まります。


勇者「戦士はあのごついの頼む!!」

戦士「まかせろ!!」

賢者「援護はお任せください!!」

勇者「いくぞっ!!」

魔法「えっと、ボクはどうすれば」

勇者「これでも投げてろっ」ボトボト

魔法「石…」


勇者「村滅びちまったけど随分と儲けたなぁ」カシャンカシャン

賢者「救援として来たけど間に合いませんでしたね…」

戦士「しょうがねぇだろ、とりあえずお宝お宝っ」

勇者「まぁ所有者がいないもんはもらっておくべきだよな」

魔法「あの~これって…」

勇者「ほれっ!!普段から役立たずなんだから荷物持ちぐらいしろっ」ドスッ

魔法「あうっ、すいません…頑張ります…」ズシ…

パチパチ

戦士「肉がうめぇ!!」

勇者「お前食いすぎだよ、ちょっとはこっちにもよこせっ」

賢者「まぁまぁまだまだありますからケンカしないでくださいよ」

魔法「シャクシャク」←食べれる草かじっている

魔法「あの…ボクにもお肉を…」

勇者「あー?」

魔法「あ、いえ…なんでもないです…]シャクシャク


ホーホー

魔法「んー」

魔法「えいっ!!」ボゥッ

ヘロヘロ~ ポンッ

魔法「うぅ…なんで使えないんだろう…」

魔法「魔法使いなのに魔法使えないっておかしいよね?」

魔法「こんなのじゃみんなの力になれない…」

魔法「もっと頑張らないと」グッ

勇者「どけぇ!!」ザシュ

魔物「ギャアアアアア!!」

戦士「ふんっ」ドスッ

魔物「ゲフッ」

賢者「高熱魔法!!」ボワァ

魔物「アァァァァっ!!」

魔法「えいっえいっ」ボコッボコッ

魔物「グエッグエッ」

魔法「まだまだ~」ボコッボコッ

魔物「ガァッグフッ」

勇者「何してんだてめぇ!!こっちはもう終わってんだよ!!」ゲシッ

魔法「んぅっ、はいっ!!すいません!!」


魔物「キイッ」シュバッ

魔法「いたっ」ザクッ

魔法「うぅ…あの、回復を…」

勇者「邪魔だ!!どけっ!!」ドンッ

魔法「うぁっ」ドサッ

魔法「仕方ないなぁ…」スリスリ←薬草すり込んでる


勇者「やっと街まで来れたな」

戦士「もう俺寝たいんだけどー?」

賢者「じゃあ宿屋探しましょうか」

魔法「…んぅ」ズキズキ

魔法(傷が治ってないから痛いな…)

魔法(我慢だ、我慢…)


宿屋の親父「いらっしゃい、何人だ?」

勇者「4人」

親父「すまんな今3人までしか泊まれないんだわ」

勇者「んじゃ3人でいいわ」

戦士「俺もう寝たいんだけどー?」

賢者「私も早く休みたいですね」

勇者「んじゃ今日は休むか」

魔法「あの…ボク部屋がないんだけど…」

勇者「一部屋とれんかったからどこかで寝てくれ」

魔法「あ、分かりました…」


魔法「部屋なかったんじゃ仕方ないかな」

魔法「今日どこで寝ようかな…」

魔法「でも…どっちにしろ寝られないかな…」ズキズキ

魔法「すごく痛んできた…」ズキズキ

魔法「もうここでいいや」バタリ

魔法「痛いけど星が綺麗だなぁ…」ポロ…

魔法「ボクどうしてこうもダメなんだろうなぁ…」ポロポロ

魔法「そりゃこんな役立たず誰も相手してくれないよね…」ポロポロポロ

魔法「うっ…」ズキズキ

魔法「少しでも寝ておこう…」

魔法「…」


魔法(待ち合わせに遅れちゃったな…)

魔法(だいぶ痛みがなくなってる…よかった)

魔法「すいません遅くなりました…」

勇者「おせぇんだよノロマがっ!!」ゲシッ

魔法「うぁっ!!」ズサ-ッ

賢者「さすがにやりすぎじゃ…」

戦士「まぁ約束どおり来れなかった奴のせいだしな」

賢者「まぁそうですね」

魔法「ごめんなさい…早く行きましょ」ニッコリ

勇者「あぁ…これ以上無駄な時間かけたくないしな」ペッ


勇者「なんだこりゃ!?」

戦士「毒虫がわんさかいやがるな」

賢者「これは下手に突っ込んだら危ないですね…」

勇者「おい、魔法使い」

魔法「はい?」

勇者「お前あそこ突っ込んで撹乱して来い」

魔法「えぇそれはさすがに無理ですよ…」

戦士「いいから行って来いって」ドンッ

魔法「あっ」ドサッ

虫「キィキィ」ワラワラ

魔法「ひ、ひぃ…」ズリ…

虫「キィィィィィィィ!!」ザカザカザカ

魔法「うわぁぁぁぁぁぁいやだいやだぁ!!」ブンブンッ


勇者「ふぅ…なんとかやったか…?」

戦士「もう残ってないみたいだな」

賢者「そうですね」

魔法「あ…は…うぁ…」

魔法(身体がいうこと利かない…)

勇者「よーしいくぞー」ザッザッ

魔法「…うぐっ」ズリズリズリ

賢者「ごめんなさいね」ドンッ

魔法「あっ…!!」ドサッ

魔法(置いてかれちゃう…)

魔法(力を振り絞って歩くんだ…)ググッ

魔法(んっ…少しだけ動くようになった…)ポテ…ポテ…


魔法「はぁはぁ…」

魔法(なんだか歩くたびに全身がひどく苦しくなって…)

勇者「おっせぇなてめぇは」ゲシゲシ

魔法「うぅ…」

勇者「なんだ?やけに顔色わりぃじゃねぇか」

魔法「ちょっと風邪でも引いたかな…あはは」

戦士「おい、しっかりしろやっ」ドンドン

魔法「うぁ…うげぇ」デロデロ


勇者「うおっ!!きたねぇ!!こっち向くなっ!!」ドゲシッ

魔法「あぅっ」ドサッ

賢者「これ使って顔でも洗ってくるといいです」スッ

魔法「あ、ありがとう…」

勇者「まぁあんな汚い顔されたままついてこられても困るしな」

賢者「えぇ、まぁ」

魔法「すいませんちょっと待っててください」ポテ…ポテ…


魔法「はぁはぁ…」

魔法「やばいなぁ…毒かな…」

魔法「風邪って言っちゃったけど」

魔法「すごく気持ち悪い…」

魔法「流石に毒消し草なんてもってないしなぁ…」

魔法「うぇっ…」デロデロ

魔法「でも我慢しないと…」

魔法「迷惑はかけられない…」


勇者「はぁ!?船が出ないだぁ!?」

船長「すまんな、修理に時間がかかってるんだ」

勇者「ちっ…しゃーねーな」

戦士「どうするんだよ、勇者」

勇者「賢者、この辺に時間潰せるところないか?」

賢者「えっと…カジノならありますけど」

魔法「…」フラフラ

勇者「2、3日かかるみたいだから暇つぶしながらのんびりしてるか」

賢者「まぁしょうがないですよね」


戦士「んじゃ早速行っちゃう?」

勇者「よっしゃ行こうぜ」

賢者「あ、私は宿屋の手配をしておきますね」トテトテ

勇者「おう、頼んだぜ」テクテク

魔法「あ…」

魔法「痛みでボーっとしててちゃんと聞いてなかったや」

魔法「船が出ないとかなんとか言ってたね」

魔法「しばらくここで足止め食らっちゃうのか…」


魔法「んー」ゴソゴソ

魔法「お金ほとんどないし何しようかな」

魔法「あれ?なんだろうこれ」ゴソ

魔法「お金があった…」

魔法「誰かのお金預かってたかな?」

魔法「まぁいっか持っておこっと」

魔法「よーしどこかに…」フラフラ


ドサッ


魔法(動けなくなっちゃった…)

魔法(体力が限界きちゃったんだ…)

魔法(このまま死ぬ…のかなボク…)


チョンチョン

魔法「…」

???「おーいこんなところで寝たら風邪引くぞー」チョンチョン

魔法「…」ビクッビクッ

???「…これ毒回ってない?」

???「そのまま放置とか信じられないわぁ」ゴソゴソ

???「ほーれ食べな食べな」グリグリ

魔法「あむ…むぐ…」

???「…」

魔法「んぅ…すぅ…」

???「落ち着いてきたかな…」

魔法「すぅすぅ…」

???「こんな所で寝てたらあれだし連れて行くか」


ズシッ

???「あー重たすぎるぅぅぅぅ」

???「こちとら非力なんだぞぉぉぉぉ」ズリズリ

??「えっと…手伝います」

???「誰だいあんた?」

??「手伝わせてください…」

???「何か知らないけど助かるよ、お願い」

??「はい」





魔法「…んぅ」

魔法「ここは…?」

???「やっと起きたかぃ」バサッ

魔法(この本読んでた人、誰?)

???「そぉい!!」バコッ

魔法「いたいっ!!」

???「あんたはバカなのかっ!!」

魔法「え?」

???「毒回ってるのにそのままにしてるってどうなんだっ!!」

???「あたしが見つけなかったら死んでたぞっ!!」

魔法「あ、ごめんなさい…」


魔法「ごめんなさい迷惑かけて…」ペコペコ

???「ったく…」ゴソゴソ

???「お腹は減ってる?」

魔法「えっと…はい」

???「じゃあこれ食べて」スッ

魔法「パン…」

???「しかもハチミツパンだ」

???「甘いものは疲れを癒してくれる効果がある」

魔法「ホントに食べていいんですか?」

???「渡したんだから食べてくれないと困る」

魔法「ありがとうございます…」

???「あんた、やけに低姿勢だね」

魔法「そうですか?」

???「…あとパンは持ってるだけじゃ食べれないから」

魔法「あ、いただきます…」モグ

???「ちょっとあんた見てたら面白くなってきたよ」フフッ

魔法「…ん」ポロポロ

???「いっ!?」ビクッ

???「ちょ、何で泣いてんだ!!」

魔法「あれ…パンがおいしいなって思ったら…」

???「おかしな子だね…」

魔法「甘くておいしいな…」ポロポロ

???「…」

しえん

???「あんた旅でもしてるのかい?」

魔法「あ、はい…仲間と一緒に…」

???「仲間いたんだ…」

魔法「はい、とっても強い人たちです」

魔法「ボクなんてまったく役に立てなくて」

魔法「すごく申し訳ないんですけどね…」

???「その格好は魔法使いあたりか」

魔法「そうですけど…んぅ」

???「ん?なんだい?」

魔法「魔法使いのはずなんですけど魔法使えないんですよ」

???「はぁ?」


???「そんな奴いるはずがないだろう」

魔法「いやホント使えないんです…」

???「じゃあ表でて」

魔法「え?」

???「ちょっと使ってみせてよ」

魔法「だから使えないって…」

???「恥なんてことないない」

???「見せてほしいんだ」

魔法「分かりました…」ムクリ

魔法「んー」

魔法「はぁっ!!」ボウッ

ヘロヘロ~ ポンッ

???「…」

???「終わり?」

魔法「ここまでしかできません…」

???「これって…」

魔法「ほぇ?」

???「いやいいわ」

???「しばらくこの街にいるの?」

魔法「船が修理中らしいので直るまでは…」

???「だったら明日もここに来なさい」

???「魔法使えるようにしたげるわ」

魔法「え」


魔法「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

???「やかましいっ!!」ボカッ

魔法「あいたっ!!」

???「1日2日あればある程度使いこなせるようになるはず」

魔法「何でそんなこと分かるんですか?」

???「使い方間違ってるから」

魔法「へ?」

魔法「でもこれ基本の使い方なんですけど」

???「面倒だから詳しくはまだ言わないけど」

???「あんたのそのやり方では一生使えない」

魔法「そんな…」ガクリ


???「まぁこれから使えるようになるからいいじゃん」

魔法「ホントに使えるんですか?」

???「使える」

魔法「貴方は何者ですか…」

???「…ん?」

魔法「いや何者ですかって…」

???「ただのエルフ」

魔法「…」

魔法「人間じゃなかったっ!!」ガビーン

エルフ「人間じゃなくて悪かったね」

魔法「でも人間にしか見えないんだけど…」

エルフ「そりゃ変身とか変装ぐらいするっしょ」

エルフ「人間は悪い奴もいるし」

魔法「そうですね…」


エルフ「と、いうわけで明日またここにおいで」

魔法「あ、はい」

エルフ「あとそのボロボロ服は帰る前に脱いで」

魔法「ちょ…これは脱げませんよ…」

エルフ「そんな足跡とか妙な液とかついてるもん着ておくな!!」

エルフ「脱ぎなさい」

魔法「だ、だめです…」

エルフ「ふぅ…しょうがないなぁ」

エルフ「ほらっ」ゴウッ

魔法「うわあああああ!!」メラメラ

魔法「熱…くない?」ボロ…

魔法「あ…」ベロン

魔法「いやっ」ババッ

エルフ「…女の子だったのか」

なにっ

魔法「誰にも知られないようにしてたのに…」

エルフ「なら余計に放っておけなくなったな…」ブツブツ

エルフ「はい、これあげる」

魔法「えっ?」

エルフ「その着てたやつよりいいやつだし手に入らない代物だよ」

魔法「そ、そんなものボクなんかに…」

エルフ「そりゃ手に入らないさ」

エルフ「あたしの自作だもの」

魔法「えぇっ!!」

エルフ「自作といっても魔法の力とか込めてるから普通以上に役立つよ」

魔法「…ありがとう」グッ

エルフ「だから掴んでるだけじゃダメだっていうに…」

魔法「…///」ゴソゴソ


エルフ「今日は帰りな」

魔法「はい…」

エルフ「あと敬語は必要ないから」

エルフ「あたしはただのエルフ」

エルフ「偉くもなんともない」

魔法「うん…」

エルフ「よし」

魔法「それじゃまた明日」ポテポテ

エルフ「うん、また明日」フリフリ

エルフ「…」

エルフ「どんな仕打ち受けてるんだあの子…」

エルフ「服もあれだけど傷がえらい多かったな…」



魔法「あ、どこ行けばいいか分からないや…」

魔法「宿屋かな?いっぱいあるから分からないな」

魔法「これ全部探してたら明日になっちゃうなぁ」

魔法「まぁいっか」

魔法「野宿は慣れてるんだっ」グッ

魔法「でもご飯は…どうしよう」

魔法「誰のか分からないお金ならあるけど」

魔法「勝手に使って怒られるのはやだしなぁ…」

ゴソゴソ

魔法「随分いっぱい入ってるなぁ」

魔法「…」

魔法「ダメだっ!!これは使わないっ!!」グイッ

魔法「手持ちでもパンぐらいなら買えるお金あるし」

魔法「今のうちに買ってこよう」ポテポテ


魔法「はぁ~お店がいっぱいだぁ…」

魔法「えっとパン屋さんどこだろう」

魔法「あっ」

賢者「…」トコトコ

魔法(賢者さんだ…)

魔法(でもボク嫌われてるから話しかけるのは…)

魔法(でも何してるんだろう?)

賢者「…」キョロキョロ

魔法(誰か探してる?)

魔法(勇者様達かな)

魔法(なんかちょっと寂しそう)


賢者「すいません…」

魔法(誰かに何か聞いてる?)

賢者「…」トコトコ

魔法(あ、どこか行っちゃった)

魔法「迷子になっちゃったのかな?」

魔法「…」

魔法「あ、せめて宿屋の場所聞けばよかった」ガビーン

魔法「でもパン屋さん見つけたっ」

魔法(やっぱり一人でもいいかな)

魔法(あの船の前にいれば合流できるもんね)

本日は以上です。

続きはまた夜に投下します。

おうまってる

しーえん
胸が痛いぜ……

僧侶の鬱ss思い出した

あ、ごめん
パクリとか言いたい訳じゃないからね
面白いから待ってる

投下再開しますっ!!
見てくれる人がいるだけで嬉しい、頑張る。


 -次の日-


魔法「ここだったかな」コンコン

エルフ「はーい」ガチャ

魔法「あのっ」

エルフ「あーよくきたね、あがって」

魔法「はい」

エルフ「こらっ」ゴチン

魔法「あたっ」

エルフ「また敬語に戻ってる」

魔法「あ、ごめんなさ…」

エルフ「ギロッ」

魔法「…ごめん」


エルフ「それよりほら座って」

魔法「うん…」チョコン

エルフ「とりあえずほら飲みなっ」ゴトン

魔法「ありがとう」コクコク

エルフ「ちょっとくつろいでから魔法の修行に入るから」

魔法「あ、うん」

エルフ「それにしてもよく今まで気づかなかったもんだよ」

魔法「魔法の使い方?」

エルフ「そうだよ、あんたもそうだけど仲間も気づくべきだと思うわ」

魔法「しょうがないよ」

魔法「ボクなんて雑用しか出来ないようなダメな子でしかなかったし」

エルフ「それでも普通は何か手を貸してくれるもんだけど」

魔法「みんな忙しかったりするし」ニコ

エルフ「…」

ミスって無駄に途切れた…



エルフ「よし、修行だ」スクッ

魔法「うん」ピョコン



エルフ「まず最初の段階で違うんだ」

魔法「魔力集めるところ?」

エルフ「うん、いつもどこに集中してる?」

魔法「えっと胸の中かな」

エルフ「じゃあこれから手の平に魔力集中させてみて」

魔法「えっと…んー」パァッ

エルフ「で、魔法の形作って放つ」

魔法「やぁっ!!」ボゥッ

メラメラ

魔法「で、できたできたっ!!」グイグイッ

エルフ「こらこら人の手を引っ張らないっ」

魔法「あ、ごめん」スッ


エルフ「出来る限りちゃんとした形にして色々出してごらん」

魔法「うんっ!!」

エルフ(嬉しそうに…)

エルフ(そりゃあの方法で出来るはずがないんだよ)

エルフ(気づいてないだろうけどあんたは普通の魔法使いに向かない)

エルフ(当たり前だ、だって…)

魔法「か、回復まで使えた!?」ポワァ

エルフ「よかったじゃないか」

魔法「いや、魔法使いなのに回復っておかしいよっ!!」

エルフ「あんたは特別なんだよ」

魔法「特別?」

エルフ「まだそれはいいや」

エルフ「ちょっと出かけてくるから」

魔法「え、修行は?」

エルフ「自由にやってていいよ」

魔法「わ、分かったっ」

エルフ(ちょっと会ってみようかね)

エルフ(この子の仲間とやらに…)


 ー街中 カジノ前ー


エルフ「カジノか」トコトコ

エルフ(こういう所が一番旅人なら来やすいんだけどね)

勇者「今日は調子わりぃな」

戦士「だからあそこは思い切って賭けるべきだって言っただろう?」

エルフ(明らかにこの辺の者じゃないね)

エルフ(一応、聞いてみるかな)

エルフ「あのぉすいません?」

戦士「ん?…おっ」

勇者「かわいこちゃんが俺に何の用かな?」

戦士「いや、俺だろう」

勇者「あーん?」

エルフ「あの…お聞きしたいことがあるのですけど」

勇者「俺にだよな?な?」

戦士「俺だよねー?」

エルフ「出来たらお二人に聞きたいのです」

勇者「二人かよ…それで何?」

エルフ「貴方達は旅してる人ですよね?」

戦士「おう!!平和のために頑張ってるんだぜ!!」

エルフ「ならば勇者ご一行様ですか?」

勇者「おう!!俺が勇者だぜ」

エルフ「へぇ…(失礼だけどまったく勇者に見えない)」

エルフ「それでお仲間に魔法使いの子っていますか?」

勇者「あー」ボリボリ

戦士「いることにはいるけど・・・なぁ?」

エルフ「何か問題が?」

勇者「何の用で魔法使い探してるか知らねぇけど」

勇者「うちのはやめておいたほうがいいぜ」


エルフ「え、何故?」

勇者「魔法使えないんだわ、魔法使いのくせに」

エルフ「…」

エルフ(これはなかなか…偶然の遭遇ね)

エルフ「何で使えないのですか?」

戦士「さぁ?気にしたこともなかったな」

勇者「いつか使えるからって仲間にしたけど」

勇者「いつまでたっても使えねぇんだもんな」

勇者「とんだグズ仲間にしちまったもんだよ」

エルフ「今までどういう風にその人は動いていたのですか?」

戦士「もちろん役立たずだから雑用とか?」

勇者「ばっか、囮とかあっただろ」

戦士「毒見とかなぁ」


ハッハッハ…

エルフ(なんだいそりゃ…)

エルフ(あの子が進んででそういう役割やってんじゃなくて)

エルフ「無理やりやらせてたのか」

勇者「えっ?」

エルフ「あの子の気持ちも知らずまるで捨て駒のようにしてたと」

エルフ「そういう事か…」

戦士「何を言ってるんだあんた」

エルフ「毒回ってても見てみぬふりとかできるんだ…」

勇者「そういやえらい顔色悪かったなあいつ」

戦士「昨日から姿見なくなったけど死んじまったかな?」

勇者「まぁゴミ当然だったからよかったけどな」

ガッ


エルフ「あんた、あの子を何だと思ってるんだっ!!」

エルフ「服に足跡とかついてたのは」

エルフ「あんたらが蹴ったんじゃないのかっ」」

エルフ「それにあの若さでなんだあの傷の量は!!」

エルフ「あれでも女の子なんだぞ!!」

エルフ「どんだけぞんざいにしてきてんだっ!!」

勇者「ちょ…女の子とか聞いてないぞ…」

戦士「おい…こんなところで騒ぐなよ…」

賢者「何があったのですか?」トコトコ

勇者「あ、賢者ぁ…この女が…」

エルフ「ふぅん…偶然って恐ろしいね」ジロッ

賢者「あ…」


エルフ「こんな奴らがあの子の仲間だって?」

エルフ「とんでもない間違いだ」

エルフ「あの子に魔法教えても返したくないな…」

勇者「アイツ魔法使えないって言ったじゃないか」

エルフ「あんたら何も見えてなかったのはよーく分かったよ」

エルフ「使い方もろくに見てないようじゃ分かるはずがないね」

エルフ「人を人と思えないような奴らにあの子は返せない」

戦士「何言ってんだっ!!あいつはうちの仲間だぞっ!!」

エルフ「使えるの分かった瞬間これだよ」


エルフ「あの子は傷つけられて体も心もボロボロなんだよ」

エルフ「これ以上何かするようなら」

エルフ「あんたら、ここで消していく…」ズズズズ…

勇者「この女の耳が…エルフか…?」

戦士「エルフって温厚な性格じゃなかったか!?」

勇者「そんなの知るかよっ!!」

勇者「エルフは戦ったことないけどやるしかないかっ」シャキン

賢者「こんなところでやめてください…」

エルフ「…あんたらの心の中、全部見えてたんだよ」

エルフ「あんたらだけは許せない…」ズズズズズ…


 -エルフの家の裏-


魔法「エルフさん遅いなぁ」メラメラ

魔法「いつの間にか結構使えるようになってきた」ボンッ ボンッ

魔法「嬉しいなぁ」

エルフ「そりゃ…よかったね」

魔法「おかえりエル…フ…さん?」

エルフ「ふぅ…」フラフラ

ガシッ

魔法「何があったの!?こんなにボロボロになってっ!!」

魔法「回復魔法っ」ポォッ

エルフ「おぉ…本当に使えるようになったんだね」


魔法「もうちょっと頑張ったら強いの使えそうなのにっ」ポォッ

エルフ「それでも十分だよありがとね…」ムクリ

魔法「それでどうしてこんなに傷ついたの?」

エルフ「ちょっとケンカしちゃってね」ドサッ

魔法「ケンカ?」

エルフ「全然大した奴らじゃなかったけど」

エルフ「半殺しにしたところで逃げられたわ…」

魔法「…」

エルフ「…もうあんた、あの仲間の元に戻っちゃダメだ」

魔法「え?」


エルフ「あんただって分かってたんだろう?」

エルフ「あいつらがあんたぞんざいに扱ってたって」

魔法「それはボクが役に立たなかったからで…」

エルフ「そうやってあんたがいい人なの利用して」

エルフ「いいように扱ってたのが現実なんだよ」

魔法「…」

エルフ「性別隠してたのは好都合だったね」

エルフ「それ知られてたらあんたはとっくに慰み者にされている」

魔法「そんな…」

エルフ「もうやめておきな」

エルフ「でも挨拶するならついていってあげるわ」

魔法「本当に悪い人たちだったの?」

エルフ「正直に言う、あんたはゴミ扱いだった」

エルフ「アタシは深い感情まで読めるから間違いない」


魔法「…はは…は…」ドサッ

魔法「ボク、ここまで何のために頑張ってきたんだろう…」ポロポロ

エルフ「…」

魔法「う…うぅ…」

魔法「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ」ポタポタポタ

エルフ「…あんたは決してここまで来たのに意味ないことはなかった」

エルフ「あたしという友達が出来たんだ」ギュッ

魔法「うえっんぐっうわぁぁぁぁぁっ」ギュー





勇者「ちっ、あのエルフクソ強かったぞ…」

賢者「動いてはいけません」ポォッ

戦士「二人がかりで劣勢とかありえねぇよ」

賢者「こう言うのもなんですが…」

賢者「あの人全力じゃありませんでしたよ」

勇者「…」

戦士「あれよりさらにつえぇのか…」

賢者「手を出してはいけない相手でしたね…」

勇者「ちっ」


勇者「なんであのエルフあんなにあのクズの肩もつんだよ」

賢者「…」

戦士「俺はホントは分かってるけどな…」

勇者「なんだよ?」

戦士「さすがに普通の考えなら…な…」

賢者「少し外を歩いてきます…」

戦士「いってら」

勇者「あのノロマ戻ってくるんだろうな…」

戦士「さぁな…」






エルフ「これはひどい」ビチャー

魔法「ごめん、びちょびちょにしちゃった」

エルフ「まぁすっきりしたでしょ?」

魔法「うん」グシグシ

魔法「よしっ」

魔法「ボク…みんなにお別れしてくる」

エルフ「ついていくわ」

魔法「うん、ありがとう」


魔法「でも、みんなの見えないところにいてほしいな」

エルフ「あくまで一人でって事かい」

魔法「危なくなったら出てきてほしいの」

エルフ「分かったよ」

魔法「こういうのが友達って言うのかな」

エルフ「そうだね」

魔法「じゃあ行こうっ」



勇者「お前…」

戦士「よくここにいるって分かったな」

魔法「ある人に聞いて…」

戦士「そうか」

魔法「勇者様…ずっと姿見せなくてすみませんでした」

勇者「あ、あぁ別にかまわない」

勇者「そんじゃ今日は宿で休むか?」

魔法「いいえ、勇者様たちとお別れを言いにきました」

勇者「何?」


魔法「色々考えましたがもうボクいなくてもやっていけそうなので」

魔法「ボクは抜けさせてもらいます」

勇者「おいっ!!勝手言うなよ!!」

勇者「ここのリーダーは俺だぞ!!」

勇者「勝手に決めてんじゃねぇよ!!」

魔法「なら…んぅ…」

魔法「ボクからも言わせてもらいます」

勇者「あん?」


魔法「勝手にボクの生き方を決めないでください」





支援


勇者「なっ…」

勇者「今まで何も言い返さなかったくせに…」

魔法「ボクは今まで弱かった」

魔法「今でも弱いです、えへへ」

魔法「でももう決めたことだから」

魔法「この決意は誰にも曲げさせません」

勇者「てめぇ…」

勇者「いや…今までの事は悪かったよ」

勇者「もうあんな扱いしねぇし」

勇者「もっと優しくするよ」


魔法「女の子だからですか?」

勇者「そりゃ女の子を男が守るのは当たり前だろう」

魔法「…知らなかっただけであれだけ仕打ち受けるんですね」

魔法「性別とかじゃなくて人としてダメでしたね」

魔法「ボクがついていこうとしてた勇者様は…」

勇者「おい!!流石にそんなこと言ったら俺は怒るぞ!!」

戦士「勇者…」

勇者「あんだよっ!!」

戦士「もう無理だよ、大人しく見送ってやれ」

勇者「無理じゃないだろう!?こうやって目の前に現れたんだぞ!!」

勇者「どんな手使ったって…ぁ…」

魔法「…それが本音ですか」


魔法「今までありがとうございました」

魔法「できればもう二度と会いたくないです…」

戦士「なんというか今まで悪かった」

戦士「じゃあな」

勇者「…」グッタリ

魔法「さようなら…賢者さんにもお別れ言っておいてください」ニッコリ

戦士「あぁ、言っておく」

戦士(多分俺達ここで終わりだろうな…)




エルフ「おつかれさん」

魔法「ちゃんと言えたよ」

エルフ「うん…聞いてた」

魔法「自分がまるで別人だった…」グタ・・・

エルフ「無理するからだよ」ポン

エルフ「帰ろう」

魔法「でもボク…帰るところ…」

エルフ「あぁ、あんたうちで暮らすの決定したから」

魔法「えぇっ!?」


 -夜-


エルフ「今日はこれぐらいにしようかな」

魔法「…」スゥスゥ

エルフ「って寝てるし」

エルフ「しょうがない子だね…」フワッ

コンコン

エルフ「誰だいこんな時間に…」ガチャ

??「…」

エルフ「あんた…」

エルフ「帰れ、もうあんたは何の関係もない人間だ」

エルフ「…」

今日はここまでっ!!

続きは起き次第はじめると思います。

わかった

さぁ投下しちゃうよ!

時々本編などと似てるようなシーンあるけどわざとやってる部分があります。
ご了承ください。

側近「な、ななな何ですか、それはーー!!!!」

魔王「あ...良いな、それ......//////」

側近「貴方も頬染めてんじゃないですよ!
......はぁ~全くこの兄弟は。弟様はルシファーだからまだ良いとして、何でドmで性欲全開な貴方がセラフィムの力を行使出来るんですか。
何でこんなのが魔王やってるんだろ」

魔王「でも側近ちゃんいつもまんざらでも無さそうじゃん」

メイド「ご飯出来ましたよ~」



魔法「んぅ…」

魔法「はっ!?お勉強の途中だった!!」

エルフ「もう朝だよ」

魔法「ほぇぇぇぇ!?」

エルフ「おはよう」

魔法「あ、おはよー」

魔法「寝ちゃってごめんね」

エルフ「旅で疲れてたんだろうしかまわないよ」

エルフ「ひとつだけ話があるんだけど」

魔法「なにかな?」

エルフ「これ…」スッ

魔法「手紙?」

側近「な、ななな何ですか、それはーー!!!!」

魔王「あ...良いな、それ......//////」

側近「貴方も頬染めてんじゃないですよ!
......はぁ~全くこの兄弟は。弟様はルシファーだからまだ良いとして、何でドmで性欲全開な貴方がセラフィムの力を行使出来るんですか。
何でこんなのが魔王やってるんだろ」

魔王「でも側近ちゃんいつもまんざらでも無さそうじゃん」

メイド「ご飯出来ましたよ~」

側近「な、ななな何ですか、それはーー!!!!」

魔王「あ...良いな、それ......//////」

側近「貴方も頬染めてんじゃないですよ!
......はぁ~全くこの兄弟は。弟様はルシファーだからまだ良いとして、何でドmで性欲全開な貴方がセラフィムの力を行使出来るんですか。
何でこんなのが魔王やってるんだろ」

魔王「でも側近ちゃんいつもまんざらでも無さそうじゃん」

メイド「ご飯出来ましたよ~」

側近「な、ななな何ですか、それはーー!!!!」

魔王「あ...良いな、それ......//////」

側近「貴方も頬染めてんじゃないですよ!
......はぁ~全くこの兄弟は。弟様はルシファーだからまだ良いとして、何でドmで性欲全開な貴方がセラフィムの力を行使出来るんですか。
何でこんなのが魔王やってるんだろ」

魔王「でも側近ちゃんいつもまんざらでも無さそうじゃん」

メイド「ご飯出来ましたよ~」


エルフ「誰からかは中身見たら分かるよ」

エルフ「会いに行くか行かないかはあんた次第」

魔法「中身知ってるの?」

エルフ「本人に直接聞いたからね」

魔法「…読んでみるね」ビリビリ

魔法「…」

魔法「…どうしよう」

エルフ「だからそれはあんた次第」

エルフ「よく考えて決めるといいよ」

魔法「…」

エルフ「ご飯でも作るかな」ガチャガチャ

誰だ、書き込むところ間違えたのw


 -10分後-


魔法「エルフさん、あのね…」

エルフ「うん?」

魔法「もしかしたらだけど」

エルフ「うん」

魔法「勘違いしてた事があるかも」

エルフ「何か思い出したのかい?」

魔法「行ってくるっ」ダダッ

エルフ「はいはい、いってらっしゃい」


 -近くの広場-


魔法「はぁはぁ…ここかな」

??「!?」

魔法「あ…」

??「…」

魔法「見つけた」

??「手紙…見たんですか?」

魔法「見たよ、賢者さん」

賢者「そう…ですか…」


賢者「来てくれないかと思ってました」

魔法「すっごく悩んでから決めたんだ」

魔法「でもあのまま悩まなかったら」

魔法「賢者さんにお礼言えなかった」

賢者「え?」

魔法「賢者さん、本当はボクを助けてくれてたんだよね」

魔法「今まで気づかなかったよ」

魔法「出来る範囲だけだったのかな」

賢者「私は…」

魔法「あれだけでも少しは楽だったんだよ」




 =夜空の見える丘=


魔法『すぅすぅ』

賢者『こんなところで寝てたんですね…』ナデナデ

賢者『女の子なのにこんなにボロボロに…』

賢者『回復魔法(中)』ポワァ

賢者『あまり魔力使ったら彼らにバレるからこれで許してください』



 =毒虫の洞窟=


賢者「ごめんなさいね」ドンッ

賢者(回復魔法)ポワァ

魔法「あっ…!!」ドサッ

賢者(強さ調整できなかった…ちょっとでごめんなさい…)



 =港通り=


エルフ「あー重たすぎるぅぅぅぅ」

エルフ「こちとら非力なんだぞぉぉぉぉ」ズリズリ

賢者「えっと…手伝います」

エルフ「誰だいあんた?」

賢者「手伝わせてください…」

エルフ「何か知らないけど助かるよ、お願い」

賢者「はい」

賢者(ずっと毒で苦しかったはず…)

賢者(これぐらいしか手を貸せないなんて…)

賢者(本当にごめんなさい…ごめんなさい…)



賢者「…」

魔法「こっそり回復魔法しててくれたんだよね?」

魔法「ほとんど記憶ないけど運んだりもしてくれてたよね」

魔法「本当に助かりましたありがとう」ペコリ

賢者「貴方が頭を下げる必要なんてないです」

賢者「下げるべきなのは私のほうです」ドサッ

賢者「あんなひどい事されてるのに私は何も出来なかった」

賢者「今まで助けることが出来なくてごめんなさい…」ズリッ

賢者「ごめんなさいごめんなさいっ…」ポタポタ


魔法「賢者さん、顔上げて?」

魔法「賢者さんだけでもボクの事気にしてくれただけで」

魔法「ボク、仲間としていられてよかった」ニッコリ

賢者「あ…」ポタポタポタ

賢者「あぁぁぁぁうぅぅぅぅぅ…」ポロポロポロ

魔法「これからも優しい人でいてほしいよ」ナデナデ



賢者「お恥ずかしい姿見せちゃいましたね」グシグシ

魔法「かわいかったよ」

賢者「勘弁してください…本当に恥ずかしいですよ…」

魔法「これから船に乗るんだよね?」

賢者「いいえ」

魔法「へ?」

魔法「でもあの人たちと行くんじゃ…」

賢者「あのエルフさんでしたっけ?」

賢者「彼らとの話を聞いちゃいまして」

賢者「あんな酷い人たちとこれからも一緒にいられるほど私は聖者じゃないですよ」

魔法「わーパーティ崩壊しちゃう」


賢者「もう勝手に崩壊でもさせてればいいんですっ」

魔法「全然優しい人じゃなかったっ」エヘヘ

賢者「まぁそれは冗談ですけど」フフッ

賢者「もう一緒にいられないのは確かですね」

魔法「そっか…」

賢者「今度はもっと魔法使いさんのような人がいるところにでも」

賢者「入ろうかなーっと思っています」

魔法「ボクみたいなってそんなのダメだよー」

賢者「貴方みたいな優しい子となら安心できますし」


賢者「そういえば魔法使えるようになったのでしょう?」

魔法「まだちょっとだけど使えるよ、ほらっ」ボッ

賢者「あら…その魔法の出し方って…」

賢者「また会えるかもしれませんね」ニッコリ

魔法「え?え?」

賢者「それじゃそろそろ私は行きますね」

魔法「あ、うん」


賢者「あと魔法使いさんに持たせていたお金は自由に使ってくれてかまいませんよ」

魔法「あれ、賢者さんのだったの!?」

賢者「あの滅びの村での貴方の取り分になるはずだったものですから」

賢者「気にせずどうぞ」

魔法「でもあれ泥棒なんだよね…」

賢者「やってしまったものはしょうがないですよ…」

魔法「うん、もう気にしない事にする」

魔法「ありがとう」


賢者「魔法使いさん」

魔法「ん?」

賢者「いつか私は罪を償いにきます」

魔法「?」

賢者「それでは…」コツコツ

魔法「またねー」ブンブン

魔法「なんだろう?ちょっと分からないこと言ってたなぁ」


 -エルフの家-


エルフ「遅い!!」

魔法「ご、ごめんなさい!!」

エルフ「とりあえずご飯食べよう」コトッ

魔法「え、うん」

エルフ「それでどうだったの?」モキュモキュ

魔法「賢者さんにお礼してきた」モグ

エルフ「ブーーーーーーッ!!」

魔法「うわ、きたないっ」

エルフ「普通あっちに謝らせるべきでしょうがっ」

魔法「だって…あの人本当は悪い人じゃなかったんだもん…」

エルフ「そうだったのかい」モグモグ


エルフ(なんてね、本当はもう知ってたけどね)

エルフ(最初のこの子運ぶ時に気づくべきだったね)

エルフ(再会した時は頭に血がのぼってたしねぇ)



 =前日の夜=


コンコン

エルフ「誰だいこんな時間に…」ガチャ

賢者「…」

エルフ「あんた…」

エルフ「帰れ、もうあんたは何の関係もない人間だ」

エルフ「…」

賢者「私は最後にあの子に謝りたくて」

エルフ「今までひどい目に合わせてきた人間が今更何を言うつもり?」

賢者「…私がすべて悪いのです」

賢者「止めようと思えば止められたのに」

賢者「私は見て見ぬふりをし続けたのです…」


エルフ「だからといって今頃謝るのはないんじゃないかい?」

賢者「分かっておりますっ!!」

賢者「それでも一度だけでも…あの子に謝りたかったのです…」

賢者「お願いします…会わせてください…」

エルフ「…」

エルフ「ダメだ」

賢者「…」

エルフ「今はあの子は寝付いたところだ」

エルフ「旅での疲れが極限までたまってる」

エルフ「話すなら明日の朝にしな」

賢者「あ、ありがとうございますっ」


エルフ「あと手紙を書いてくれないかな」

賢者「え?」

エルフ「会うかどうかはあの子の意思で決めさせようかと思う」

賢者「…」

賢者「分かりました」

賢者「私は何も言える立場ではありませんから…」

エルフ「あんた、本当は優しいんだな」フゥ

エルフ「本当に旅の途中であの子に何も出来なかったのかい?」

賢者「私はもう…」


 =商店街=


賢者「あの子はあれから何処に行ったのでしょう…」トコトコ

賢者「せめてこっそり私の部屋に来てもらおうと思ったのですが」

賢者「もうあれ以上あんな目に合ってほしくない」

賢者「ずっと見てただけの人が何言ってるんでしょうね…」

賢者「すいません…」

街人「ん?」

賢者「このあたりにローブを来た子を見かけませんでしたか?」

街人「いやぁ見てないねぇ」

賢者「そうですか、ありがとうございます」

賢者「またどこかで野宿するつもりでしょうか…」

賢者「あんな優しい子なのに…」ポロポロ

賢者「何もしてないのにあんな…」ポロポロ

賢者「もうちょっとだけ探してみましょう」グイッ トコトコ




エルフ(こっそり助けるぐらいならもっと頑張るべきだったろう…)
 
魔法「エルフさん?」

エルフ「ん?」

魔法「何だかボーっとしてた」

エルフ「考え事考え事」

魔法「そんなあっさりと…」

エルフ「で、あの人どこ行ったのさ?」

魔法「一人でどこかにいなくなっちゃった」

エルフ「パーティには戻らなかったのか」

魔法「うん、もういてられないって」

エルフ「まぁそれが普通よ」


魔法「エルフさん?」

エルフ「んー?」

魔法「また魔法教えてほしいんだけど」

エルフ「ぶっちゃけ使い方教えたら何も出来ないんだけどあたし」

魔法「えーなんでっ!?」

エルフ「言ったろう?あんたの魔法は特別なんだって」

エルフ「あたしの使えるのとは別物なんだよ」

魔法「その特別って何?」

エルフ「多分教えたらあんたの今までを否定してしまう」

魔法「どういうこと??」


エルフ「じゃあある事教えるからやってごらん」

魔法「?」

エルフ「胸に魔力を集中して」

魔法「それボクには出来ない魔法の使い方じゃ…」

エルフ「いいからやってみな」

魔法「う、うん」スウッ

エルフ「できたら手を握って胸に当て、手に魔力を持ってくる」

魔法「…」

エルフ「次にその手を前に突き出す」

魔法「…」スッ

エルフ「で、その手を開くと同時に魔法を開放」

魔法「…っ!!」ボワッ


魔法「え、なにこれぇ!?」メラメラ

魔法「蒼い…炎…?」メラメラメラ…

エルフ「聖なる命の炎」

エルフ「これが何を意味するか分かるかい?」

魔法「分からないよ」

エルフ「そいつはね…」




  「勇者の証なんだ」




魔法「え?」


エルフ「だから教えたくなかったのに…」

魔法「なんでボクがこれ出せるの?え?」

エルフ「もう頭では分かってるんだろ?」

エルフ「あんたは勇者の血を引いている」

エルフ「正真正銘の勇者なんだ」

エルフ「じゃないとあの炎は出せやしない」

エルフ「そいつが出せるのは世界に1人だけだ」

魔法「ボクが勇者…」

魔法「じゃあいままで一緒にいた勇者様は…」

エルフ「おそらくどこかの村あたりで」

エルフ「適当に祭り上げられたんじゃないかな」

エルフ「とんだ偽者さ」

勇者「…」


エルフ「あと魔法の使い方が違うのは勇者の力のせい」

エルフ「出し方が何故か違ったんだよ」

魔法「だからずっと使えなかったんだ…」

エル「そう、どんなに努力してもね」

魔法「でもボク今までそんなの両親からも聞いてないよっ」

エルフ「何か事情でもあったんじゃないのかい」

エルフ「あたしにそれ以上聞かれても答えられない」

魔法「ど、どうすればいいのかな?」

エルフ「あんた次第」


エルフ「お告げとやらもまだみたいだし」

エルフ「…何かミスでも起きてるのかもしれないけど」ボソリ

魔法「?…お告げって何?」

エルフ「女神様だっけ?話しかけてくるんだってさ」

エルフ「『貴方は勇者としてこれから魔王を倒せ』って言われた後」

エルフ「加護をかけてもらえるんだったかな」

エルフ「随分昔に聞いた話だからうろ覚えだけど」

エルフ「大体そんな感じだったと思う」

魔法「それ誰に聞いたの?」

エルフ「うちのおばあさま」

エルフ「昔に勇者と話した事あるんだって」

魔法「へぇ」


魔法「って、ボクはどうしたらいいんだっ」

エルフ「お告げきたら勇者として旅に出るといいよ」

魔法「ボクに勇者なんて出来るのかな…」

エルフ「だったら今から修行でもして強くなればいい」

エルフ「心も体も…ね」

魔法「もし勇者になったらエルフさん一緒に来てくれる?」

エルフ「無理」

魔法「即答!?」


エルフ「あたしゃこんなところに住んでいる異端者だ」

エルフ「魔族にも人間にも手は貸せない」

魔法「でもここ人間界だよ?」

エルフ「追放されたのさ」

魔法「こんないい人なのになんで!?」

エルフ「あたしは魔族も人間も否定したんだよ」

エルフ「敵にも味方にもなろうとしなかった」

エルフ「だから異端」

魔法「…」


エルフ「今では時々帰ってこいって言われてるけどね」

魔法「そうなの?」

エルフ「あたしがいなくなってからかは知らないけど」

エルフ「色々と考え方が変わったみたい」

エルフ「今では中立の立場にあるみたいエルフ族」

魔法「結局エルフさんは何がしたいの?」

エルフ「なかなか難しい質問ね」

エルフ「あたしはただ争いのない世界を望んでるだけ」

魔法「それって…」

エルフ「あたし一人じゃ叶えられない夢だけどね」

エルフ「笑ってやっておくれ」

魔法「笑わないよ!!」

魔法「すごくいい夢だよ」

魔法「ボクもできたらそんな世界になってほしいよ」

エルフ「でも現実はそう簡単じゃないんだよ」

魔法「よしっ決めた!!」

エルフ「ん?何を決めたんだい?」

魔法「ボク、勇者になったら魔族と和解する」

エルフ「正気かあんた?」

エルフ「あの魔王と戦いなしで話し合うのは無理だろう」

魔法「でもそうしないと争いのない世界はできないよ」

エルフ「…」

エルフ「…」

魔法「エルフさんのために絶対叶えてみせるっ」グッ

エルフ「会ってアホの子だとは思ってたけど」

エルフ「ここまで本格的にアホの子だとはねぇ…」

魔法「アホの子…」ズーン

エルフ「まぁ好きにやってみるといいよ」

魔法「頑張るよ!!」

エルフ(勇者ってこんなのだったのかねぇ)

エルフ(この子は勇者の中でも異端な気がする)


魔法「エルフさん、剣って使える?」

エルフ「武器は一通りには使いこなせるけど…」

魔法「じゃあ教えてほしいっ」

エルフ「その前に…あんたが剣を振るおうとするのは」

エルフ「自分のためかい?平和のためかい?」

魔法「大切な人を守るためかな」

魔法「絶対傷つけずに夢なんか叶えられないもんね」

エルフ「いつあんたの夢になったんだ…」


エルフ「まぁそれならいいわ」

エルフ「厳しくいくよ」

魔法「それじゃ…」

エルフ「できるだけ教えてあげるよ」

エルフ「専門じゃないからある程度までしか出来ない」

魔法「それでもかまわないよ!!」




 魔法使いの勇者と異端のエルフ

 この不思議な出会いが

 二人の未来を大きく変える

 でも待っているのは

 悲しい結末…





ちょっとここで一時停止。
続きは最低でも今日中には再開します。

おつおつ

再開しますわよ。
続き投下していきまーす。


 -半年後-


魔法「…」ボー

エルフ「いつになく呆けてるねぇ」

魔法「…」ボー

エルフ「こら」ゴチン

魔法「あぅっ」

魔法「なによー」

エルフ「何ずっとボーっとしてるんだい」

魔法「うん?」

魔法「お告げきいてた」

エルフ「…」

ドンガラガシャアアアアン!!

魔法「わ、エルフさんがひっくり返ったっ」


エルフ「そんな重大な事をそんなあっさり言うんじゃないよ!!」

エルフ「…それ途中で止めたのはまずかったかねぇ」

魔法「別にかまわないよー」

魔法「エルフさんが呼んでるよーって」

魔法「女神様にも言われてたし」

エルフ「言われるほどってどんだけ呆けてたんだ」

魔法「とにかくついにお告げ来ちゃったし」

魔法「旅立たなきゃ」ガタッ

エルフ「…」


エルフ(この半年でえらい成長したと思う)

エルフ(力に至ってはあたし以上についている)

エルフ(元々武器だけで戦っていたせいもあるのかもしれない)

エルフ(魔法に関してはある程度までいくと成長が止まった)

エルフ(万能ではないからね勇者は)

エルフ(どちらかは劣るのが普通だ)

エルフ(でも一番成長したのは…心だ)

魔法「あーローブどこ置いたんだろう…」バタバタ

エルフ(まぁこの子なら今の状態で十分戦える)

魔法「食料ってどれだけ積んだらいいのかなぁ」ゴソゴソ

エルフ(と、いっても知性の低い魔物とかぐらいしか相手しないだろうけど)

魔法「あとなんか忘れ物は~」ドタバタ

エルフ「…」


魔法「ああああああっ」

エルフ「やかましいっ!!」

ガツン!!

魔法「あいたぁ!!」

エルフ「準備ぐらい静かに出来ないのかい?」

魔法「ごそごそ」

エルフ「…右の火球と左の氷剣」ボワーッ カキーン 

エルフ「どっちをぶつけてほしい?」

魔法「すいませんちゃんとお話を聞きます」ドゲザー


エルフ「別にすぐ出かけなくてもいいだろう?」

魔法「でも早くしたいから…」

エルフ「慌てたっていい結果は残せないよ」

エルフ「明日あたりに出たらいいんじゃないかな」

魔法「…うん」

エルフ「あと全然関係ないけどローブは着るな」

魔法「えーなんでぇ?」

エルフ「あんたいつまで魔法使いのつもりだ」

魔法「え?」

エルフ「そんなもん着てる勇者いないよ」


エルフ「用意したげるからそれはやめなさい」

魔法「いやだよ!!」

エルフ「なんでだい」

魔法「だってエルフさんに初めてもらったものだもん…」

エルフ「…」

エルフ「だー!!そんなもんいつまでも大切に持ってるんじゃないよ!!」

エルフ「貸しなっ」バッ

魔法「あっ」

エルフ「ビリィ~」ビリビリィ

魔法「あーっ!!なにするのっ!!」

エルフ「待ってな」テクテク

魔法「ローブ…」ショボン



 -15分後-


エルフ「ほらっ」パサッ

魔法「あれこれさっきの…」

エルフ「あんまりあれだったからマントにしてきた」

魔法「わぁ…」

魔法「ありがとうっ」ニコー

エルフ「さっきのしょぼ顔が嘘のようだねぇ…」

魔法「似合う?似合う?」クルリンッ

エルフ「うん、似合ってる」

魔法「えへへ~」クルリンクルリン

エルフ「うれしそうにしちゃってまぁ…」ニッ


 -次の日-


魔法「ホントに来てくれないの?」

エルフ「あんたは自分の力で頑張ってみなさい」

魔法「…分かったよ」

魔法「頑張るから」

魔法「応援しててほしいな」ジー

エルフ「はいはい頑張れー」フリフリ

魔法「うわ、心のこもり具合が0だよっ!?」

エルフ「まぁ元気でやっていくんだよ」

魔法「うん…エルフさん」

エルフ「ん?」

魔法「今まで本当にありがとう」

エルフ「はいはい、早く行ってきなっ」ポン

魔法「はーいっ」


エルフ「今日からあんたは勇者」

エルフ「魔法使いじゃないんだ、分かるね?」

魔法「うん」

エルフ「すべて自分の行動が色々影響する」

エルフ「よく考えて進みなさい」

魔法「分かった」

エルフ「じゃあ行っておいで、勇者」

勇者「いってきます!!」ポテポテ

エルフ「なんという頼りない歩き方」

エルフ「半年じゃその辺はすぐ変わらないか…」

エルフ「さーて」

エルフ「これからまた汚れる作業にでも移りますか…」キッ

ガタガタ ガタガタ



 -街中-


勇者「出てきたのはいいけどどこから行けばいいんだろう??」

勇者「うーん…」

勇者「あ、そうだ酒場だっ」

勇者「旅してくれる仲間と情報収集は酒場だって言ってたー」ポテポテ

勇者「でも仲間かぁ…怖いなぁ…」

勇者「昔…とは違うんだよね」

勇者「今度はボクが勇者だもんね」

勇者「考えてても何も始まらないっ」

勇者「行ってから考えよっと」ポテポテ


 -酒場-


勇者「…こんにちはぁ」カラーン

勇者「人がまったくいないなぁ」

女性「そりゃ普通ここは夜にしか人がいないものよ、お嬢ちゃん」

勇者「あ、そうなんですか」

女性「冒険者ならたまーにいるけどね」

勇者「ボク、冒険者ですっ」

女性「あら、可愛らしい冒険者さんね」

女性「もしかしてお仲間さん探しに来たの?」

勇者「えっと…は、はい」

女性「何か希望はある?」

勇者「んぅ?」


女性「こういう人がいいとかこんな人はダメとか」

勇者「うーん」

女性「そこまで決まってないのね」

女性「じゃあお姉さんが決めちゃっていいかな?」

勇者「えっとぉ…」

女性「大丈夫よ、その人はとっても誠実な人だから」

女性「それになんか誰に誘われても行こうとしなかったのよね」

女性「すごく人気あったのにね」

女性「話ぐらいなら聞いてくれるかもしれないわ」


勇者「ここにいるんですかぁ?」

女性「隣のお店で働いてるわ」

女性「旅に出るまで資金とか生活費稼いでたみたい」

女性「ちょっと連れてくるから待っててね」

勇者「はいっ」

勇者「どういう人なんだろう…」

勇者「優しい人だったらいいな…」


 -10分後-


女性「お待たせ~」

勇者「あ」

女性「ちょっと着替えてくるみたいだからちょっと待ってね」

勇者「はいっ」

勇者「ドキドキしてきた…」ドキンコドキンコ

女性「そんなに緊張する事ないよ」

女性「あの人ならゆっくりでも話はちゃんと聞いてくれるよ」

勇者「そうですかぁ」ドキドキ

カラーン

女性「来たわね」

女性「じゃああとはよろしくね」パタパタ


??「お待たせしました」

??「何やらここで仲間を探しているっ…て…」

勇者「あれ?」

勇者(どこかで見た事がある人だ…)

??「魔法使い…さん?」

勇者「前はそうだったけど今は勇者ですっ」

??「あぁやっぱり勇者になられたのですね…」ギュッ

勇者「あ、えっと…」

??「前とちょっと雰囲気変わってしまいましたかね?」

賢者「賢者ですよ」

勇者「あああああああああああっ!!」


勇者「賢者さんだ!!ホントだっ!!」ブンブン

賢者「お、お久しぶりです」ガクガク

賢者「随分と半年前より明るくなられましたね」ニッコリ

勇者「そうかな?」

賢者「あの時の作り笑いじゃなく本当の笑顔になってます」

勇者「あ、分かってたんだ…」

賢者「えぇ…」

勇者「でも賢者さんの言うとおり今は本当に笑えてるんだ」ニコニコ

賢者「それはよかったです…本当に…」グスッ

勇者「もー泣かないでぇ」ナデナデ

賢者「すいません…また思い出してしまって」グシグシ

勇者「今は今…だよっ!!」

賢者「そうですね…」


賢者「もしかして今までずっとあの人の所に?」

勇者「うん!!色々教えてもらったりしながら暮らしてたよ」

賢者「あの人は誰よりも優しくて強い心を持ってた人でしたね」

勇者「さっき別れてきちゃったけど」

賢者「仕方ないと思います」

勇者「なんで?」

賢者「あの人はエルフ…人間にはエルフ族を酷い扱いしている人もおります」

賢者「貴方に迷惑かけたくなかったのでしょうね」

勇者「それで来なかったんだ…」

賢者「おそらくですけどね」


賢者「そういえば勇者さんがここに来たのは」

賢者「仲間探しに来たらしいですね」

勇者「うんっ…まだちょっと怖いけどね」

賢者「それなら私を連れて行ってくれませんか?」

勇者「賢者さんを?」

賢者「元々そのために私を呼んだのでしょう?」

勇者「賢者さんとは知らなかったけどねー」

賢者「でも勇者さん」

賢者「私は別れた日からずっとこの街にいました」

賢者「どうしてだと思います?」


勇者「分かんないよ…」

賢者「最初から貴方についていくと決めていたのです」

勇者「えっ!!」

賢者「きっともっと心も体も強くして」

賢者「勇者になってここへ訪れるだろうと信じておりました」

賢者「もう一度言います」

賢者「私を連れて行ってはくれないでしょうか?」

勇者「何でボクなの…?」

賢者「別れる時言った筈ですよ」

賢者「私は罪を償いたいのです」

賢者「貴方を救えなかった重く深い罪…」


勇者「でもそれはもう…」

賢者「これはあくまで自己満足の範囲です」

賢者「貴方が気にする事ではありません」

賢者「ただ私の気がすまないのです」

勇者「…分かったよ、仲間になってほしい」

賢者「ありがとうございます…」

勇者「ただひとつだけ」

賢者「なんでしょう?」

勇者「もうあまり自分を責めないで…」

賢者「…」

勇者「ね?」

賢者「…はい」


勇者「でもやったーっ!!まさか賢者さんが最初の仲間なんて!!」

賢者「ふふふ」

女性「あなたたち知り合いだったのねぇ」

勇者「うん!!」

賢者「今までお世話になりました」ペコリ

女性「話し相手いなくなるのはちょっと寂しいけど」

女性「まぁ頑張ってきなさいな」

賢者「えぇ」

勇者「お姉さんありがとう!!」

女性「私、何もしてないんだけどねぇ」ポリポリ

賢者「それでは…」

女性「いってらっしゃい」

勇者「ごー」カラーン




賢者「これからどうなさいます?」

勇者「あぅ、どこいけばいいか分からないんだぁ」

賢者「最終的には魔王城ですけど」

賢者「徐々に近づきながら進んでいくといいでしょう」

勇者「街とか村とかに寄りながら?」

賢者「そうですよ」

勇者「じゃあ頑張って次の街?村?に行くぞー」

賢者「ちなみに次は村ですね」

賢者「収穫祭やってて今賑やかになってるはずですよ」

勇者「わぁっ!!行ってみたい!!」

賢者「なら通るついでに見ていきましょうか」ニコ

勇者「はーい」


 -エルフの家-


男「おいっ遠慮せずに声だしてもいいんだぞっ」ズッズッ

エルフ「…っ…っ」

男「ほれっ!!ほれぇっ!!」ズッズッズッ

エルフ「…ぅ…っ」

男「ほらいけぇぇぇぇぇ!!」ブシャッ ドロドロ…

エルフ「~~~~っ!!」

男「はぁ…何も言いやがらねぇな…」ゴソゴソ

男「エルフとヤれるっていうから来たのに興ざめだ…」チッ

ガチャ バタンッ!!

エルフ「…クソ人間め」ドロ・・・


エルフ「汚すだけ…汚しやがって…」スッ

エルフ「浄化魔法」パアッ

エルフ「ふぅ…これで内部の洗浄と傷の完全修復は完璧」

エルフ「何もなかった状態になったね」

エルフ「あとは部屋の掃除か」スクッ

エルフ「…つっ!!」グタッ

エルフ「傷は治せても…痛みはなくならないんだよ…」ズキッズキッ

エルフ「体も心も…」ズキッ

エルフ「もう嫌だよこんなの…」ズキッズキッ

エルフ「勇者…」ズキッ


 -道中-


勇者「収穫祭楽しかったねっ!!」

賢者「そうですねぇ」

勇者「まさかあんなおっきいカボチャあるとは思わなかったっ」

賢者「本当、あれにはびっくりでしたよ」

勇者「次は森進んで大きな街に出るんだっけ?」

賢者「えぇそうですよ」

賢者「ここからは魔物に気をつけてくださいね」

勇者「うん…ちゃんと修行したから強くなったんだっ」

賢者「無理はしないように…ですよ」チョン

勇者「はーい」ニコー



勇者「結構強かった…はぁ」

賢者「ちょっと危なかったですね」

賢者「腕貸してください」

勇者「あ、うん」スッ

賢者「回復魔法(中)」ポアッ

勇者「ありがとぉ」フリフリ

賢者「いえいえ」

賢者「今日はここで野宿ですね」

勇者「もうちょっと進めないかな?」

賢者「だめですよ、暗くなってからは」

賢者「魔物が活発に行動しだすんですよ」

賢者「さっきのよりかなり危険を伴います」

勇者「そっか…じゃあここで休んで朝になったら頑張ろうっ」

賢者「はい」




ホーホー

賢者「勇者さん、寝ましたか?」

勇者「ううん、起きてるよー」

賢者「えっと…こっちに来てもらえますか?」

勇者「んぅ?うん」ポテポテ

賢者「できれば毛布も一緒に持ってきてください」

勇者「よいしょよいしょ、来たよー」ゴソゴソ

賢者「それでは…」ギュ

勇者「わ」ギュ

賢者「一人より二人のほうが暖かいですよ」ニコッ

勇者「ホントだね」ニコッ


賢者「何か勇者さん離れていたのでどうしてかと思いまして」

勇者「昔の癖…かな」

賢者「…」

賢者「そうですか」

賢者「私といる時は遠慮はいらないですよ」

勇者「うんっ」ギュ

賢者「私が周りを注意してますのでお休みになってください」

勇者「でも賢者さんはいつ寝るの?」

賢者「大丈夫ですよ」

勇者「んぅ」

賢者(寝てもすぐ起きれますからね私は)

賢者(旅していて身についたんですけどね)


賢者「ほら寝ておかないと明日フラフラになっちゃいます」ナデ

勇者「うん…」

賢者「おやすみなさい」

勇者「おやすみぃ」

勇者「…」

勇者「すぅすぅ…」

賢者「寝付くの早いですね…」

賢者「やっぱり癖っていうのはなかなか直らないものですね」

賢者「あの頃の行動を無意識に行ってるのでしょう」

賢者「でももうそんな事しないでいいのですよ」ナデナデ

賢者「私も貴方ももうあの頃とは違うのですから」ナデナデ


賢者「…それにしても可愛らしい寝顔ですね」

賢者「えいっ」プニッ

賢者「はっ」

賢者「こんな事してる暇じゃなかったです」

賢者「休んでおかないと…」

賢者「勇者さん、いい夢を…」ナデ…


 -次の日-


勇者「キノコー!!」ポコッ

賢者「申し訳ないのですがそれは毒キノコです…」

勇者「えー?でも食べられる奴と同じなんだけどなぁ?」

賢者「いえ、その傘の模様が若干違うんですよ」

賢者「確かそれの毒の効果は…」

勇者「うーん…」

勇者「ほぃっ」グイッ

賢者「むぐっ!?」モグ…

食わせた!?


勇者「食べたら分かるよっ」

賢者「ごほっ…そんな原始的な…」

賢者「あら…」ホワーン

賢者「なんだかやけに勇者さんが可愛く見えるですぅ」フラフラ

勇者「賢者さん…?」

賢者「思わず抱きしめちゃいますぅ」ギュー

勇者「うわあっ!?」ギュムッ

賢者「可愛いです可愛いですよぉ…」スリスリ

勇者「賢者さぁん、しっかりしてぇ~」



賢者「ひどい目に合いました…」

勇者「ご…ごめんね…」

賢者「さすがにあれはないと思いますよ…」

賢者「そこに座ってくださいっ!!」

勇者「はい…」チョコン

賢者「誰が毒キノコだって言ってるものを口に放り込めと言ったのですかっ」クドクド

勇者「すいませんすいません…」ペコペコ

賢者「幻覚程度で済んだからよかったものの…」

賢者「あれがもし人体に有毒だったどうするつもりですかっ」クドクド

勇者「ごめんなさいごめんなさい…」ペコペコ


ガサガサ

魔物「…チカヅケナイ」ポカーン

魔物「ナンダカコワイ…」ブルブル

勇者「んぅ…?」

賢者「聞いているのですかっ!!」ドンッ

勇者「んひっ!?聞いてますすいませんっ!!」ビクビク

魔物「ニゲヨウ…」コソコソ

魔物「ツブサレソウダ…」ビクビク

賢者「理解してもらうまでとことん話し合いますからねっ」

勇者「もう勘弁してぇぇぇ…」


 -大きな街-


賢者「すっかり遅くなっちゃいましたね」

勇者「賢者さんがずっとお説教するから」ボソッ

賢者「あれは貴方が悪いのでしょうっ」

勇者「もう悪かったって言ってるじゃないぃ」ウルウル

賢者「とりあえず宿を探しましょうか」

勇者「うん」

男「お?お姉ちゃんちょっと寄っていかないか?」

賢者「…いえ、結構です」トコトコ

男「そこのお姉ちゃんはどうだい?」

勇者「ここどういうお店なんですか?」

賢者「ちょ!?私たち急いでいますのでっ!!」グイッ

勇者「わぁぁぁぁ」ズルズル

男「…チッ」



賢者「はぁ…ダメですよああいうのに普通に答えては」

勇者「え、でも話しかけられたし」

賢者「あれはそういうところに誘い込んで…」

賢者「いえ、やめましょう」

勇者「んぅ?」

賢者「とにかく、ああやって寄っていかないかって誘われても」

賢者「絶対断ってくださいね」


勇者「ちょっと話すだけでもダメなの?」

賢者「ダメです、旅どころじゃなくなっちゃいます」

勇者「ああぅそれはやだなぁ」

勇者「分かったっ」

賢者「ふぅ」

勇者「じゃあ宿屋さんさがそっかー」

賢者「はい」

賢者(ある意味奴隷になりに行くようなものですからね…)


 -宿屋-


勇者「んぅ」ジー

賢者「どうなさいました?」

勇者「あそこでこっち見て踊ってるの誰かなって思って」

賢者「え?」ジー

ブラブラ

賢者「!?!?!??!!!?」

勇者「何か見てて面白い」キャッキャ

賢者「見ないでっ!!」ガシッ

勇者「え?なんでなんで?」

賢者「あれは見てはいけないものですっ!!」


賢者「お願いです!!見ないでくださいっ!!」

勇者「う、うん…」

賢者「驚かせてすいません…ここ出ましょう…」ゴソゴソ

勇者「え?」

賢者「ちょっと…シャレにならないですここは…」

勇者「何かいけないものだったの?さっきの」

賢者「いいから早く出ましょうっ!!」グッ

勇者「わわっ」

賢者(あぁ…踊ってる?人の下の方でブラブラしてるものが頭から離れない…)

今日の更新終了です。
朝、続き再開予定です。

(とんでもないシーンで中断してしまったのは反省してる。)

エルフたんが気になる( ^ω^ )

風もないのにぶーらぶら♪

賢者の保護者っぷりが

投下しますよプ~ラプラ。




賢者「裏口から行きましょうか…」コソコソ

勇者「これからどうするの?」

賢者「後で考えます…ついてきてください」コソコソ

勇者「んぅ、うん」

賢者「外に人がいても見ずに走ってください」

勇者「え?」

賢者「もしもの時は転送魔法使って森の出口まで戻ってください」

勇者「???」

賢者「行きますよ…」ググッ

ガチャ


勇者「えっと何も見ない…何も見ない…」

賢者「今のところは何もいませんね…」キョロキョロ

ゴトッ

勇者「?」

賢者「前を見て…」

勇者「…」コクリ

?「…」

賢者「…」

?「やぁお姉ちゃんどこかいくのかぃ」プラプラ 

賢者「きゃああああああああ!!」

賢者「走ってっ!!」ダダダッ

勇者「うんっ!!」ダダダッ

勇者(ちらっと見ちゃったけど)

勇者(さっきの人、裸だった)


賢者「何これ信じられないですっ…!!」ダダダッ

?「おーい待っておくれよー」トットットッ プラプラ

賢者「いやああああああああああああ!!」ズダダダダダッ







勇者「はぁふぅ…んぅ」

勇者「賢者さんとはぐれちゃった…」

勇者「どうしよう」

勇者「もしもの時は転送魔法で…っていってたね」

勇者「でももしもの時じゃないよねまだ」

勇者「何処にいようかな」ポテポテ



賢者「はあっはあっ…」タタタタタッ

賢者「ここ、こんな街でしたっけ…はぁはぁ…」

賢者「勇者さんはちゃんと逃げれたのでしょうか…」

賢者「あの子は聞いてなさそうでちゃんと聞いてるから」

賢者「きっと無事に逃げれてるでしょうけど」

賢者「心配ですね…」

?「つーかまえたっ」ガバッ

賢者「!?」

?「何で逃げるんだよぉ…おじさん何もしないよぉ」サワサワ

賢者「どこの口がそんな事言ってるんですか!?」ググッ


賢者「だ、だれかっ!?」

?「この辺は誰もいないよー」

?「この街は都市なのに何故か人口少ないんだよねぇ」

?「そんなことよりお姉ちゃん一緒に来てくれよぉ」

賢者「いや…やめてっ…」

?「もう一人のお姉ちゃんも連れてきていいからさぁ」

賢者「…あの子には何もしないで」

?「じゃあお姉ちゃんだけ来るー?」

賢者「分かりました…」

賢者(勇者さんはずっと辛かったんです)

賢者(あの子だけでも無事でいてもらうには)

賢者(私がなんとかしないと…)

賢者(どんな目に合ったとしてもっ)



 -森の出口-


勇者「結局ここまで来ちゃった」

勇者「賢者さんいない」キョロキョロ

勇者「──っ!?」

勇者「何か頭の中で何か見えた…」

勇者「…」

勇者「どこかのお店…」

勇者「賢者さんが座ってる…」

勇者「大人の人が何人か賢者さんの前に…」

勇者「…」

勇者「…『空間転移魔法』」

シュインッ!!



賢者「なんのつもりですか?」

?「またいいの連れてきたのぅ」ジュルリ

?「最近こんないい素材はなかなかなかったな」

賢者「私を辱めに合わせるつもりですか?」

?「違うよ」

?「あんたはここに来た時点で俺達の道具だよ」

賢者「最低っ!!」

?「おっほぉ最高のほめ言葉だ」

?「こっそりついてきてよかったよー」

?「気づいてくれなかったら突撃しないといけなかったんだよねぇ」


賢者「さっき言ったとおりあの子には手を出さないでください」

?「お姉ちゃんがいれば別にかまわないよぉ」

?「ずっとここに住んでもらうけどね」

?「ずっと…ずっと…ね」

賢者「つまらない事言ってないでさっさとすればどうですか…?」ブルブル

?「これは失礼…ではみなさん」

シュンッ!!

勇者「…」

?「さぁて…どんな味がするのかなっ…?」

勇者「旋風魔法っ」ブワッ

ドガァッ!! ガシャアッ!!


賢者「ゆ…ゆう…」

?「あがっ!?」ドサッ

?「ぐほっ!?」グタッ

勇者「…手を」スッ

賢者「え」

勇者「早く」

賢者「は、はいっ」グッ

勇者「空間転移魔法」

シュインッ!!



 -森の出口-

シュンッ!!

賢者「一体何が…」

勇者「…んぅ」ドサッ

賢者「勇者さん…?」

勇者「あ…」

賢者「え?」

勇者「危ないところだったぁ…」

勇者「使うなって言われてた魔法まで使っちゃったよ」

賢者「どうなっているのですか?」

勇者「えっとね」


勇者「ボクにもよく分からないんだけど」

勇者「さっきのお部屋に賢者さんが座ってるところが」

勇者「頭の中に流れたの」

賢者「え?」

賢者(頭に中に映像が見えたのでしょうか?)

賢者(何でそんな事できたのか…)

勇者「それで危ないって思って」

勇者「探してたら間に合わないから」

勇者「使うなって言われてた空間転移魔法使ってあそこまで行ったんだ」

賢者「空間転移…」


賢者(確かある程度イメージできる場所ならどんな所でも移動できるという)

賢者(転送魔法の上位魔法)

賢者(そしてもう失われているはずの古代魔法…)

賢者(あの人が教えたのでしょうね…)

勇者「あとはちょっと暴れて逃げた…かな」

賢者「いや、さっきのはすごかったです」

賢者「あんな流れるような動きで一掃してしまうとは…」

勇者「エルフさんが言ってたんだ」

勇者「必要最低限の動きで動作に気づかれずに倒せって」

勇者「相手が人間の時だけだけどね」

賢者「本当に貴方は強くなったのですね」

勇者「大切な人守るためにだよ」

賢者「そうですか…」


賢者「助けていただいてありがとうございました」

勇者「当然だよっ!!だって仲間だもんっ!!」

勇者「でも…」ギュッ

賢者「勇者さん?」

勇者「ボクのために自分を捨てないで」

賢者「…あの会話すら聞こえていたのですか」

勇者「お部屋に座ってるところからだけど全部見えたし聞こえたよ」

勇者「ボク言ったよね?」

勇者「自分を責めないでって…」

勇者「あんなので罪償ったらボクどうすればいいの?」

勇者「賢者さんダメにしちゃってボクだけ生きろって言うの?」

勇者「せっかくホントの仲間になれたのに」

勇者「こんなの…」


賢者「私は…」フルフル

賢者「…うぅ…っ…」ポタポタ

勇者「もう終わった事なんだよ…」

勇者「ボクのためにずっと罪に縛られるの…やめよ?」

賢者「ごめんなさい…ごめんなさいぃ…」ポロポロ






勇者「こんな所で寝ちゃった…」

賢者「…」スースー

勇者「本当にいい人なんだね」フワッ

賢者「んんっ…」

勇者「髪がサラサラでいいなぁ~」

勇者「やっと苦しんでたの解放されたのかな…」

勇者「初めて勇者として何かした気がするよ」

賢者「ブラブラが~追いかけてくるぅ~」ムニャムニャ

勇者「どういう夢なんだろう…?」

勇者「もうあの街にはいけないなぁ」

勇者「すぐ捕まっちゃいそうだしね…」

勇者「早く進んだほうがいいかな」

勇者「それで~進んでから…」


?「…」

勇者「…」

ヒュンッ!!

?「うひっ」

勇者「やっぱり探してたの…?」

シュバッ!!

?「いたい!!」

勇者「静かにしてくれる?この人寝てるんだよ?」


シュバッ!!

?「っ!!」

勇者「よくも賢者さんを怖がらせてくれたね?」

シュバッ!!

?「~~~~!!」

勇者「もう二度とボクたちに近寄らないで」

キンッ

?「!!」コクッコクッ

勇者「行っていいよ」

?「うぅ…」ズッズッ

勇者「これで多分朝までは大丈夫かな…」

勇者「大切な人なんだから…守ってみせ…る…」スゥスゥ




?「うぅ…なんだこれ…」ズリッ

?「なんで薬草すり込んでも血が止まらないんだ…」ドクドク

?「止まらねぇよぉ…」ドクドク

?「いてぇよ…助けて…」ガタガタ

?「たす…」ドサッ

?「…」



勇者「さぁ次の目的地はどこかなっ」

賢者「次は…農村のようですね」ペラッ

勇者「なんだかのんびりしてそー」

賢者「そうですね」トボトボ

勇者「…」

賢者「…」トボトボ

勇者「ブラブラ…」ボソッ

賢者「!???!!」バッ

勇者「あははっ、すっごい反応したっ」


賢者「な、何故それを…」

勇者「昨日寝言で言ってたよ」

賢者「え///」

勇者「何の事だかよく分からなかったけどねぇ」ケラケラ

賢者「聞かなかった事にしてくださいっ///」

勇者「はぁい」

賢者「もぉ…」プリプリ

勇者「よかった」

賢者「え?」

勇者「いつもの賢者さんだ」

賢者「あ…」


勇者「しょんぼりしてても楽しくならないよっ」

勇者「わらおっ」ニッコリ

賢者「貴方は本当にすごい人です…」

賢者「かないませんね」ニッコリ

勇者「えへへ」



 -山岳地帯-


勇者「わー高いなー」

賢者「あまり崖の近くに行かないでくださいね」

賢者「足元脆くなってますから」

勇者「了解っ」

勇者「んぅ?」ゴシゴシ

賢者「どうなさいました?」

勇者「何かあの辺の森がぼやけて見えるんだ」

賢者「?」ジー

賢者「えっと私には普通に見えるのですが?」

勇者「あっれー?」ゴシゴシ


賢者「これはもしかしたらあれかもしれませんね」

勇者「あれ?」

賢者「勇者さんは特別ですから」

賢者「あそこに何かあるのを見破れてるのではないでしょうか」

勇者「じゃあ本当に何かあるってこと?」

賢者「あくまで私の考えですけどね」

賢者「おそらく魔族の集落とかでしょうかね…」

勇者「えっ?」

賢者「魔法で見えなくされてるみたいなので」

勇者「エルフ族とか?」

賢者「その可能性は高そうですね」

賢者「彼らはすごい魔力を持っていますから」


勇者「エルフさんの故郷かな」

賢者「かもしれませんね」

勇者「エルフさんって追放されてあそこに住んでたんだって」

賢者「えっ?」

勇者「自分は異端だって言ってた」

賢者「でも、人間のいるところに…」

賢者「理由なく危険な場所には住まないでしょう」

勇者「じゃあ何でエルフさんあそこにいるんだろう?」

賢者「…」


勇者「元気にしてるかなぁ…」

賢者「勇者さん」

勇者「なに?」

賢者「戻ってみませんか?」

勇者「え?」

賢者「嫌な予感がするのです」

勇者「嫌な予感って?」

賢者「すいません、はっきりとは言えませんが」

賢者「色々と不審な点がありまして…」

賢者「戻っておかないと…後悔しそうで…」

勇者「…分かった」


勇者「賢者さんを信用するよ」

勇者「空間転移魔法で戻ろう」

賢者「ダ、ダメですっ!!」

賢者「それは身体に大きな負担がかかるはずです」

勇者「え、そうなの?」

賢者「それだから使うなって言われてたはずです」

勇者「んぅ…」ニギニギ

勇者「ごめんっ!!それでも使うっ!!」バッ

賢者「止めませんけどあまり無理はしないでくださいね…」ギュッ

勇者「うん、空間転移魔法!!」

シュインッ!!



勇者「んぅ…」フラッ

賢者「大丈夫ですかっ」スッ

勇者「だい…じょうぶだよ…」フラフラ

賢者「やはり無闇に使うものじゃありませんでしたね…」

勇者「それより…エルフさんの所に行こう…」フラフラ

賢者「…」

賢者(もうあれは使わせないほうがよさそうですね)

賢者(二度使っただけでこれではその内身体が…)



 -エルフの家-


勇者「え…?」

賢者「なんですかこれは…」

勇者「何か物がぐちゃぐちゃに…」

賢者「この何かよく分からない液体は何でしょうか…」

勇者「──っ!!」

賢者「どうしました?」

勇者(エルフさんが…え…なに…これ…)


勇者「…ぅ」ドサッ

賢者「勇者さん!?」

勇者「この…奥…行って」ズキズキ

賢者「え?でもそれより勇者さんが…」

勇者「お願い…行ってあげて…」ズキズキズキ

賢者「わ、分かりました…」トコトコ

勇者「エルフ…さん」



賢者「結構広かったのですねこの家…」コツコツ

賢者(もしかして勇者さんはまた何かの映像を見たのでしょうか…)

ザッザッ

賢者(何か物音がしますね)

賢者「エルフさん…?」ギィ

エルフ「…」フキフキ

賢者「…あの」

賢者(掃除してたみたいですね)

賢者(ただ荒らされただけではなさそうな…)

賢者「私の事覚えていますか?」

エルフ「…記憶力には自信があるよ」フキフキ

賢者「それはよかった」


賢者「ちょっと訳あって勇者さんとここへ戻ってきたのですが」

エルフ「!?勇者はどこにっ!?」

賢者「一番前の部屋でちょっと座り込んでいます」

エルフ「…部屋見ちゃったのか」

賢者「あの子に何かよく分からない能力があるのご存知ですか?」

エルフ「いいや…それよりあんたが仲間になってくれたのかい」

エルフ「それは安心した」

賢者「いや、そんなことよりあの子の能力の事です」

賢者「数日前に頭の中に映像が見えたと言われました」

エルフ「?」


賢者「私が危険な目にあいそうになってる映像が見えたらしいです」

エルフ「それが現実で起こってたっていうのかい?」

賢者「えぇちょうどひどい目に合わされそうになる少し前でした」

エルフ「あの子は底知れないねぇ」

賢者「ついでにここに来たのはその時に使った」

賢者「空間転移魔法のせいでぐったりしています」

エルフ「あのバカっ!!あれだけ使うなと…!!」

賢者「責めないであげてください」

賢者「私を助けるために使ってくれたんです」

エルフ「だからといってここに来るのに使うことないだろうっ」

賢者「すいません…あれがどういうのか分かって使わせました」

エルフ「…」


エルフ「で、戻ってきた理由は何だったの?」

賢者「貴方が何か隠してそうだったので」

エルフ「…」

賢者「えらく服が乱れてますね」

エルフ「掃除してたら転んだんだ」

賢者「この飛び散っている液体は何ですか?」

エルフ「実験してて失敗したのさ」

賢者「エルフさん」

賢者「貴方、ここで何人もの男の人に襲われましたね?」

エルフ「…」


エルフ「そうさ」

エルフ「ここに住み始めてから」

エルフ「何度も何度も」

エルフ「薄汚い人間にめちゃくちゃにされていた」

エルフ「これじゃ奴隷と同じさ」

エルフ「ただあたしには傷や汚れを浄化できる魔法がある」

エルフ「普通のエルフ族より魔力が桁違いだったみたい」

エルフ「おかげで古代魔法すら普通に使えるんだ」

エルフ「で、浄化すればあたしはまた無傷でいられるわけさ」

エルフ「ただね…」

エルフ「痛みだけは残るんだよ…」

賢者「エルフさん…」


エルフ「痛いんだよ…今も…」

エルフ「身体も…心も…」

エルフ「もうやだよ…」ポロ

エルフ「こんな生活もう…」ポロポロ

賢者「やっぱり本当はここから出たかったのですね」コツコツ

賢者「勇者さん呼んできます」

エルフ「っ!!ダメっ!!」


エルフ「こんなあたし見てほしくないっ」ポロポロ

賢者「ならその痛みをどうやって癒すのですか?」

賢者「おそらく半年の間」

賢者「誰もここに来なかったのではないですか」

賢者「理由は分かりませんが勇者さんがいたおかげでしょうね」

賢者「その間だけでも貴方は癒されてたはず」

エルフ「…」

賢者「すいません、何も知らない者が口を出して」コツコツ



勇者「あ、賢者さん」

賢者「勇者さん…」

勇者「分かってるよ…いるんでしょ奥に」

賢者「はい…会ってあげて下さい」

賢者「とても傷ついています」

勇者「分かったよ」ポテポテ

賢者「こちらへ来るまでにこの部屋だけ」

賢者「少しでも綺麗にしておきましょうか」

賢者「あまり触りたくはないですけどね…」



勇者「…」ソーッ

エルフ「何やってんだいそんなところで」

勇者「えっと…ただいま」

エルフ「おかえり」

勇者「んぅ」スッ

エルフ「なんだい?」

ギュッ

エルフ「何やってんの?」

勇者「すごく痛そう」ギュ

エルフ「…痛いよ」

エルフ「張り裂けそうなぐらい痛い…」ギュ

勇者「…」ギュウッ

エルフ「痛いよぉぉぉうわぁぁぁぁぁぁ…」ボタボタ

勇者「もう大丈夫だよ…」




エルフ「最初ここに来てすぐエルフだってバレちゃってね」

エルフ「そこからはずっと汚れる作業さ」

エルフ「汚れては浄化、汚れては浄化」

エルフ「何処に行っても同じだからここを動かなかった」

エルフ「勇者に会った時にはもう壊れる寸前だった」

エルフ「不思議なもので」

エルフ「勇者いた時は誰もやって来なかったんだ」

エルフ「変なオーラでも出してたのかもしれないね」

エルフ「癒しのオーラを…」

勇者「じゃあボクと会ってなかったら」

エルフ「あたしはもうここにいなかっただろうね」

賢者「…」


エルフ「いやホント戻ってきてくれて嬉しかった」

エルフ「今回は特にひどかってさ」

エルフ「あたしがいつも抵抗しないのにしたもんだから」

エルフ「逃げ回るたび部屋が汚されちゃったのよ」

エルフ「ホントひどいもんさ」

勇者「もういいよぉ…」

勇者「もう辛いこと思い出さなくていいんだよぉ…」

賢者「辛くても吐き出したい時もあるんですよ」

勇者「…」


エルフ「そうさ」

エルフ「でもおかげで何もかもすっきりしたよ」

勇者「エルフさん…」

エルフ「ん?」

勇者「ボクたちと一緒に行こ?」

勇者「異端とか関係ない」

勇者「ボク達は友達なんだ」

勇者「友達に危険を晒す事はもう出来ない」

勇者「それに夢を一緒に叶えたいからっ!!」


エルフ「…考えさせて」

勇者「それはいつまで?」

エルフ「そうだねぇ…」

エルフ「あんたの旅が終わるまで…かな」

勇者「そんなのっ」

エルフ「終わるまでには必ず行くから」

勇者「…」

賢者「進みながら待ちましょう、勇者さん」

賢者「エルフさんには色々と時間がほしいのですよ」

勇者「うん…」


勇者「必ず来てくれるよね?」

エルフ「もちろん」

勇者「約束」スッ

エルフ「分かったよ」グッ

勇者「ゆーびきったっ」

エルフ「んじゃ行って来なさい」

勇者「うんっ」

賢者「待ってますね」

エルフ「はいよ」

賢者「転送魔法」シューン

勇者「いってきまーすっ」

シュンッ


エルフ「さーてっと…」

ゴトゴト

エルフ「約束を破るわけにも行かないからね」

エルフ「もう汚されてる場合じゃないんだよ」ズズズズ…

エルフ「あたしに手を出す奴は…消していく…」ズズズズズ…



 -山岳地帯-


勇者「あーそういえば山道の途中だったぁ」グッタリ

賢者「頑張って進みましょうね」ニッコリ

勇者「が、頑張る…」ポテポテ

勇者「エルフさん…」

勇者「ホントに大丈夫なのかな…」

賢者「追放されて安全な場所も無く…」

賢者「ずっとあの場所で耐えていたはずです」

勇者「うん…」

賢者「夢…でしたっけ?」

賢者「争いの無い世界にするっていう」

勇者「エルフさんの大事な夢だよ」


賢者「耐えていたのはきっとそのためだったのでしょうね」

賢者「人間、魔族関係なしに傷つけないように…」

賢者「悪い人間ですらあの人は手を出さなかった」

勇者「だから汚されたんだよね」

賢者「はい…でもきっと今は違うと思いますよ」

賢者「破れない約束があります」

賢者「ある程度の犠牲出したとしても守るはずです…」

勇者「悪い人を…んぅ…」

賢者「分かってくれているなら言わなくてもいいですよ」

勇者「うん…」

賢者「さてっ!!山道はこれからきついですから」

賢者「気合を入れていきましょうか」

勇者「はぁい」



 -山小屋-


勇者「…」チーン

賢者「やっと山小屋の宿屋まで来れましたけど…」

賢者「勇者さん死んでしまいましたね」フフッ

勇者「あそこまできついとは思わなかったよぉ」

賢者「自然はバカにできないものですよ」モミモミ

勇者「あ~そこそこ~」

賢者「今日はのんびりしましょう」モミモミ

勇者「ん~ぅ」

賢者(ここを超えればもう少しで魔王城ですしね)



勇者「ひゃっほーい」ヌギヌギ

賢者「入る前からえらい楽しそうですね」ゴソゴソ

勇者「温泉って初めてだもんっ」

勇者「おっきいお風呂~♪」パタパタ

賢者「あ、こういうところは走ると…」

ズテーン!!

勇者「あうちっ!!」


賢者「もう…回復魔法」ポワッ

勇者「んぅ…ありがとぉ」

賢者「滑りやすいのですから走っちゃダメですよ」

勇者「気をつけますっ」パタパター

賢者「…ちょっとそこに座ってください」

勇者「すいません言う事聞きますので勘弁してください」ペコペコ

賢者「まったく…ほら入りますよ」ポン

勇者「はぁい」



勇者「すーい」チャプン

賢者「ふぅ」

賢者「気持ちいいし…夜空が綺麗ですねぇ…」

勇者「夜空って癒しだよねぇ」

賢者「えぇ、何か吸い込まれそうです」

勇者「ボクも癒しだっけ?」

賢者「エルフさんにだけですよそれは」

勇者「んぅ…賢者さんは癒されない?」

賢者「えっ、えっと…」

勇者「んぅ」ジー

賢者(ここは本音を出すべきでしょうか)


勇者「ボクは賢者さんに癒してもらってるよっ」ニコッ

賢者(あぁ…もういいです…)

賢者「勇者さんっ」ギュッ

勇者「わわっ」

賢者「癒されるに決まってるじゃないですかっ」

賢者「こんなにプニプニだし」プニプニ

勇者「んにゅんにゅ…」

賢者「こうやって抱きつくのをどれほど夢に見てきたかっ」


賢者「ちっこくて可愛いですっ」ナデナデ

勇者「これでも16歳なんだよぉ」プクー

勇者「いつかおっきくなるもんっ」

賢者「気にしてたのですか?」

勇者「んぅ…」

賢者「これは永久に保存して標本にしたいレベルです…」ギュー

勇者「何か今の賢者さん怖い…」カタカタ

賢者「震えてるのも可愛いですねぇっ!!」グイグイ

勇者「あうーっ!!」



勇者「」チーン

賢者「のぼせちゃいましたね…勇者さんが」

賢者「起きてますかぁ?」

勇者「」フリフリ

賢者「でも声は出すほど体力はないと?」

勇者「」クター

賢者「ふふっ、調子に乗りすぎてごめんなさいね」ナデナデ

賢者「勇者さんは癒しですし」

賢者「私は勇者さんの事を姉妹みたいに思ってます」

勇者「…」


賢者「こうやって一緒のいると本当そう思います」

賢者「ずっと近くで守っていてあげたい」

賢者「それが私の本音です」

勇者「ボクも同じだよ」

賢者「それならすごく嬉しいです」

勇者「優しいお姉ちゃんがいてボクは幸せだなぁ」ニコー

賢者「私もですよ」ニコッ



 -次の日-


勇者「はふはふっ」モグモグ

賢者「…すごい食べますね」

勇者「昨日体力使いすぎちゃったから補給しておこうと思ってっ」モグモグ

賢者「それはいいことですね」

勇者「はふはふっ」モグモグ

賢者「…」



 -5分後-


勇者「あ、なくなっちゃった」

賢者「10人前を完食ですって…」プルプル

勇者「もうこれぐらいで十分かなぁ」ポンポン

賢者「どこにそんな量が入ったのでしょうか…」ジロジロ

賢者(おそらく残りがあるならまだ入りそうな勢い…)

勇者「何かすごい目で見られてるっ」

賢者「勇者さんの不思議ですねこれは…」

勇者「?」



勇者「よーし出発だぁ」

賢者「はい」

賢者「今日は山を降りてその先の街まで行きましょう」

勇者「了解ですっ」ビッ

賢者「はしゃぎすぎないでくださいね」

勇者「昨日そのせいで死んだから分かっておりますっ」

賢者「ふふっ、それならいいです」

勇者「もうちょっとで最後なんだよね?」

賢者「えぇ…そろそろ気を引き締めないといけませんね」

勇者「大丈夫だよっ」

賢者「え?」


勇者「絶対戦いにはしないから」

賢者「本当に戦いなしで魔王と話し合いするつもりなんですね…」

勇者「もちろんだよっ」

勇者「どんな人かなぁ」ワクワク

賢者(あの恐怖の象徴の魔王相手に別の意味でワクワクしてるのは)

賢者(過去通しておそらく勇者さんだけでしょうね)

賢者(この子ならきっといい結果を出すでしょう…)




 -数日後 魔王城前-


勇者「ついに来たね…」

賢者「はい」

勇者「すごくいや~な空気だなぁ」

賢者「まぁ魔王が住んでるぐらいですからね」

勇者「お花とか植えて明るくすればいいのに」

賢者「それはそれでシュールな光景になりそうな…」

勇者「そうかなぁ?」

賢者「勇者さんの発想は変わってますね」

勇者「そうかなぁ?」


勇者「でもホントここまで来れたんだね…」

賢者「勇者さんが頑張ったからですよ」

勇者「賢者さんだっていてくれたし」

勇者「ここに来るまですっごく楽しかったよ」

勇者「いい思い出が出来ちゃった」

賢者「…勇者さん?」

勇者「あんな何も出来なかったボクがここまでできたのは」

勇者「エルフさんと賢者さんのおかげだよ」

勇者「今までありがとう」スッ


賢者「あの…勇…」

勇者「転送魔法」ブゥン

賢者「…何故、私の後ろに転送魔法陣を…」

勇者「最初からずっと決めてた事だったんだ」

勇者「ちゃんと魔王とお話するよ」

勇者「でも何があってもおかしくないから」

勇者「もう賢者さんはここでお別れしてほしい」

賢者「そ、そんなっ!!」

賢者「私が何のためにここまで…」

勇者「賢者さんは十分罪を償ったよ」

勇者「ううん、前に言ったあの時にもう終わっていたんだよ」

勇者「ボクに縛られないで」

勇者「ホントにここまでありがとう」


賢者「違うっ!!言ったじゃないですか!!」ブンブン

賢者「貴方は私にとって姉妹のようなものって!!」ポロポロ

勇者「うん、大切な人だってことだよね」

勇者「ボクにとってもそうだよ」

勇者「それにボクは勇者」

勇者「世界を救うのが仕事なんだよ」

勇者「大切な人たちは傷つけない」

賢者「勇者…さん…」ポロポロ

勇者「だから賢者さん」

勇者「大好きだったよっ元気でねっ」

ドンッ!!


賢者「勇者さぁぁぁぁぁん!!」シュンッ

勇者「…さよなら、お姉ちゃん…」グス…

勇者「行こう」グイッ

ギィー






 -魔王城 通路-

勇者「せいっ!!」シュバッ

魔物「ギャアアアアア」ドサッ

勇者「魔物が多いなぁ」

勇者「勝手に入り込んでるのかな?」

勇者「それに…魔族の人がいない…」

??『それはお主と一対一で相手をしたかったからだ』

勇者「この声…あなたは…」

??『この先の大扉の奥で我は待つ』

勇者「分かりましたっ」ポテポテポテ



 -魔王城 魔王の間-


ギギィ~

勇者「来たよ…魔王さん」

魔王「我に『さん』をつけるとは変わっておるなお主」

勇者「お話しする相手には丁寧に話すべきだから」

魔王「お話?」

魔王「はっはっはっ!!」

魔王「力で話し合うのだろう?」ゴオッ

勇者「うっ」ジュ

勇者「違うよ…」スッ

パァァァァァ


魔王「我の知らぬ魔法だな」

魔王「やっと戦う気になったかっ」

勇者「いいえ」

勇者「ボクは何もしません」

魔王「だったらそのまま朽ちる気か!!」ブワッ

勇者「うわっ!!」ドシャッ!!

勇者「あなたと大切なお話をしにきただけだよ…」

勇者「戦いは…しないっ」

魔王「だったらこの場で無駄死にするだけだぞ」

魔王「我にはお主と話す事などない」カッ

ドゴォォォォォォン!!

勇者「がぁぁぁぁぁっ!!」ドサッ

勇者「ボクの話を聞いてほしい…」ドクドク…


勇者「あなた達魔族と和解しにきたんだ」

魔王「何だと?」

魔王「それでも勇者か貴様っ」キラッ

ブシッ!!

勇者「あぁぁぁぁぁっ!!」ブシュッ

勇者「勇者だからこそ…だよ…」ドクドクドク…

勇者「できるなら共存出来ればいいと思っているんだ」

魔王「できるはずないだろう!!」ドッ

勇者「うっ!!」ドシャ

魔王「ここまで分からぬ事を言う勇者は初めてだ…」シャキッ

勇者「ボクは本気だから…」フラッ

魔王「狂っておるな…死ぬがいい」シュッ

ズブッ


勇者「う…がはっ!!」ビチャビチャ

魔王「貴様…戦わないなら回復ぐらいは普通するだろう?」ズルズル…ブシュッ

勇者「ぅあっ!!…そんなの…しない…よ」ボタ…

勇者「しても無駄なよ…うにしている…から」ボタボタ・・・

魔王「なに?」

勇者「さっきの魔法はね・・・」ボタ…

勇者「傷を再生できないようにする魔法だよ…」ボタ…

魔王「本気で狂っているのか?」

魔王「そんなことする理由が分からぬ…」

勇者「簡単な…ことだよ」ボタ…

勇者「ボクが本当に何も手を出さないという…」ボタ…ボタ…

勇者「本気であなたと和解したいって…」ボタ…

勇者「そのしょう…こ…だよ…」ドサッ

魔王「…こやつ」



ドォォォォォォォン!!!!


エルフ「勇者っ!!」

魔王「…お主は…エルフ族の者か」

勇者「約束…守って…くれた…んだ…」ピクピク

エルフ「なっ…勇者っ」ダッ

エルフ「何で1人で戦ってるんだよっ」

エルフ「賢者はどうしたんだ!!」

勇者「街に…帰し…ちゃった…ごほっ!!」ビチャッ

エルフ「な…」


エルフ「超回復魔法っ!!」パァァァァッ

勇者「…んぅ」ドクドク…

エルフ「え?」

エルフ「超回復魔法っっっ!!」パァァァァッ

勇者「きか…ないよ」ドクドク…

エルフ「なん…で…」

エルフ「あんたっ!!何をしたんだっ!?」ギッ

魔王「自分でやったのだこやつは」

魔王「信じられんだろうが我は攻撃しかしておらぬ」

エルフ「っ!!」


エルフ「勇者あんた…まさかアレを自分に使ったのか…」

魔王「あぁ思い出したわ」

魔王「無再生魔法」

魔王「どんな傷ですら再生できないようにする力か」

エルフ「…古代魔法って呼ばれたものだよ」

魔王「ほう」

勇者「だって…回復とか…してたら戦う気…あるって…思うじゃない」

エルフ「誰がそこまでしろっていったのよ!?」

勇者「ボク…」

エルフ「バカっ!!」


エルフ「何で人の夢のためにここまでするんだよあんた…」

勇者「素敵な…夢…だったん…だ…もん」

勇者「叶え…てあげた…かった」

エルフ「バカぁぁぁぁ!!!」ポロ

エルフ「夢なんてどうでもよかったんだよぉ…」ポロポロ

エルフ「あんたがいてくれたらそれでぇ…」ポロポロ

勇者「でも…ボクも…みたかった…」

勇者「争いの無…い世界…」

エルフ「ゆうしゃぁ」ボロボロボロ


魔王「…なんという者だ」

魔王「魔族の夢に命までかけようとするとは」

エルフ「あたしは最初から人間も魔族も関係なかった…」

エルフ「みんなが笑って手を取り合える世界を望んでいたんだ…」

エルフ「魔族の王であるあなたにもね…」

魔王「我が人間たちと手を取り合う…」

エルフ「それをやっていこうとしたんだよこの子は…」ボロボロ

勇者「ひゅ…ひゅ…」ドクドクドク…

エルフ「自分の命使ってでもみんなを幸せにしようとしたんだよ…」ボロボロボロ

魔王「勇者…」


勇者「ボク…みた…い」

エルフ「勇者!!何だい?」

勇者「あら…い…な……かい…」

エルフ「これから一緒に見ていこう!!」

エルフ「だから死んじゃダメだっ!!」ユサユサ

魔王「…もうこやつの命は最後の灯し火だろう」

魔王「勇者よ」

勇者「ま…お…さん」

魔王「肉体は無理だが想いだけなら残せるかもしれぬ」

エルフ「想い…?」


魔王「我とて愛や友情などの人間共と同じ心は持ち合わせている」

魔王「それでもよいなら我は手を貸そう」

勇者「み…れる…の?」

魔王「おぬしの想いがそれだけ強いのならばいつかな」

勇者「もち…ろん…強…いつもり…だよ」

魔王「そうか…おいっ!!いるか?」

魔王妻「どうなさいましたか?」コツコツ

魔王「妻の腹には我の子がいる」ナデ…

魔王「この子にお主の想いを受け継がせようと思う」

エルフ「それじゃあなたは…」

魔王「我にもできる限りではあるが共存の道とやらを進もう」

魔王「異論は無いな?」

魔王妻「私はあなたについてゆきますよ」ニコ


勇者「うれ…しい…な」

魔王「お主の力でなく想いの力に負けたのだ、我は」プイッ

エルフ「よかったね…勇者ぁ…」ボタボタボタ

勇者「ここから…がんば…らなきゃね」

魔王「では身心転生の儀を行う」コォォォォ

勇者「エルフ…さん」

エルフ「なんだい」

勇者「ボク…ずっと傍で…見守っている…から」

勇者「だから…夢を…叶えて…いこう…ね」

エルフ「うん…うんっ…!!」ギュッ


勇者「ボクの…大好きな…友達」ナデ…ナデ…

勇者「いつでも…傷を癒して…あげ…る…ね」ナデ…



コトッ



エルフ「ゆ…ゆうしゃぁぁぁぁ…あぁぁぁぁぁっ…」ギューッ

パアッ!!

エルフ「っ!?」


魔王「わが子の元へ想いが移る」

シュゥン

エルフ「っ…想いはそのお腹の子が守っていってくれるんだよね…」

魔王「きっとな」

魔王妻「きっと誰でも好きになる優しい良い子になりますよ」

エルフ「うん…勇者を眠らせてあげないと…」グイッ

魔王「ここでよいなら良い場所がある」

エルフ「ここでもこの子なら喜んでくれるよ」プラン・・・

魔王「ついてくるがいい」



 -魔王城 中庭-


サァァァァ

エルフ「いい風が吹いてる」

魔王「ここはちょうど地形の影響で人間界の風が入ってきておる」

エルフ「確かにちょうど眠るにはいい所だね」

エルフ「諦めかけた夢を蘇らせてくれてありがとう…勇者…」バサッ

魔王「それは魔力が付加されているものだな」

エルフ「あたしが初めてこの子にあげたものなんだ」

エルフ「これで目印になるね」

エルフ「おやすみ…勇者…」ポロポロ

魔王「あれだけ流しておいてまだ枯れぬのだな…」

エルフ「今まで泣かなかったからかな?」

魔王「そうか」


魔王「お主、ずっと人間界にいたようだな」

エルフ「そうだよ、今は帰るところも何もなくなっちゃったけどね」

エルフ「それでお願いなんだけど」

魔王「なんだ?」

エルフ「あたしをここに住まわせてほしい」

魔王「勇者の傍にいるつもりか?」

エルフ「それもあるけど」

エルフ「生まれてくるあなたの子供…」

エルフ「想いを受け継いだ子を見ていきたいんだ」


魔王「…」

エルフ「ここのメイドでも何でもする」

エルフ「お願い…」

魔王「別にかまわぬ」

魔王「ならば生まれてくる子の側近として働くがよい」

エルフ「畏まりました」スッ








 -??年後-


メイド「…以上です」

勇者「激しく話が重かった…」ズーン

メイド「それからずっと私は現魔王様の側近として仕えてきました」

勇者「側近なのにメイドだった時は呆然としたけどねっ」

メイド「こういう所で働くといったらこの姿でしょう」クルッ

賢者「意外に可愛いなあんた」

メイド「そりゃ女の子ですから」

賢者「女の子ってそんな年じゃないだ…ろっ?!」カッ

メイド「なにか?」ニコニコ

賢者「…何処から出てきたんだこのナイフは」ビィィィィィン


勇者「でもメイドさんって昔と随分話し方違うんだね」

メイド「えぇ、ここで働いてると自然と性格が変わっちゃいました」

賢者「それでも意地悪みたいだけどね」

メイド「…」ニコニコ

賢者「笑顔で威嚇するのやめてくれる…?」

勇者「でも…そっか…メイドさんの夢が最初だったんだね」

メイド「お恥ずかしいですけどね…」

メイド「私にできる事は本当に少ないですけど」

メイド「いつか皆で手を取り合える日が来るのを待っているのです」

勇者「あたし、頑張るよっ!!」グッ

メイド「さすが勇者様ってところですね」


勇者「その時の勇者ってあたしの親戚になるんだろうな」

勇者「会ってみたかったなぁ…」

メイド「もし生きていたらあの子の孫ぐらいが勇者様でしょうね」

勇者「そっか…どこか似てたりしたかな?」

メイド「優しいところは同じですよ勇者様たちは」ニコ

魔王「ゆぅーしゃー」ポテポテ

勇者「あぁっ!!今日もまおちゃんはかわいすぎっ!!」ギュッ

賢者「今更だけどあんたも十分変だと思うんだ」


魔王「んぅ…これ忘れていった」ザラザラ

勇者「あ、持ってきてたのに忘れてた」

勇者「ありがとね、まおちゃん」ナデナデ

魔王「えへへ~」

メイド「それでその袋の中身は何でしょう?」

勇者「いろんなお花の種だよ」

勇者「中庭に蒔いて魔王城を明るくしようかって思ってて」

メイド「えっ…」




 「あの子言ってましたよ」


 『お花とか植えて明るくすればいいのに』


 「って、魔王城の前でですよ?」






勇者「環境も悪くなさそうだし、お花咲いたら綺麗になると思うんだぁ」

賢者「あんたにしてはいい案じゃないか」

勇者「へへっ」

賢者「…」




 「よく聞きなさい私の孫よ…」


 「貴方がもし共存目指すような子と会った時」


 「持っているすべての知恵と知識をその子のために使いなさい」


 「何もしてあげられなかった私の代わりに…」






賢者「でも私はやる事があるので失礼するよ」テクテク

勇者「あっ!!手伝ってくれないのぉ!!」

賢者「こっちだって忙しいんだよ」

メイド「のわりにはふらふらしてるだけのようですけど?」

賢者「可愛い子見つけてはペロペロする人生を…」

勇者「…」

賢者「はっ」

賢者「…撤退っ!!」シュンッ

勇者「賢者のバカァ!!」


魔王「大丈夫だぞ勇者っ」

勇者「ん?」

魔王「わたしが手伝うー」ブンブンッ

勇者「ダメだっ!!我慢できないっ!!」ギュー

魔王「うにゅぅ~」ギュムッ

勇者「かわいいよぉぉぉぉ…もふもふ~」

メイド「勇者様のロリコンは相変わらず末期ですねぇ…」


勇者「でもホントにここで咲くかな?」

勇者「ちょっと不安だよ…」

メイド「大丈夫ですよ」

メイド「きっと綺麗に咲きますよ…」

メイド(あの子が眠っている場所だもの…)サァァァァッ




それから一年ほど経ち


花は綺麗にこの中庭を鮮やかに彩ってくれた。


儚くも美しく、力強く咲く姿は


あの時見た一番の友達のようだった。



眩しい笑顔と暖かいぬくもり。


この空間にいつまでも癒しを与えてくれる。


二人で約束した夢を見るために


今日も一日、しっかり生きていこうか。




おしまい

最後に分かるだろうけどある人の昔話でした。

一応単体でも読めるようにはしてるけど本編見てからのほうがオススメです。



次回予告

 魔王「勇者、好きっ!!」勇者「…今なんて?」


更新はちょっと別スレ終わってからの予定。

乙乙

おつー

乙です




魔物「キイッ」シュバッ

魔法「いたっ」ザクッ

魔法「うぅ…あの、回復を…」

勇者「邪魔だ!!どけっ!!」ドンッ

魔法「うぁっ」ドサッ

魔法「仕方ないなぁ…」スリスリ←薬草すり込んでる

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom