オリジナルSS『星飾りの騎士』 (35)

がおっしゅ!

とある二つのサイトに載せたSSを、なんとなーく、ここにも載せます。
一週間を〆切に、ちょこちょこと載せてゆきたいと考えています。

あなたの楽しみの一つになったらな、と思います。


夢のない世界で、騎士と少女が巡り会う。
二人は、アニムスという星の意思を集め、世界に夢を取り戻す事を約束する。
立ちはだかる悪夢を乗り越え、世界に、夢を取り戻す事はできるのか。


それでは、はじまりはじまり。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418111728

どこかで

どこかで。
木製の小さなベッドに横たわり、青空を眺める、幼い少年。
小さなノックの音に、少年の顔には笑みが浮かんだ。


どこかで。
人々が星に祈り、紅い太陽に蒼い月が重なったその時。
八つの光が地に落ち、世界は、虹色の光に包まれた。


どこかで。
何かを待ち焦がれるように、時折空を見上げ。
何かを願うように、時折俯く少女。


どこかで。
彷徨いながらも、まるで導かれるように歩む騎士。
頭の中で揺れる靄を払い、また、歩を進ませた。


どこかで、物語は始まった。

1 星飾りの少女

―朝焼けの草原

鎧を纏いし騎士が一人。
迫り来る、翼を生やした、人型の化け物と交戦している。

騎士「世界は、一体どうなってしまったんだ?」

左手に盾を構え、右手に持つハルバードを、強く握り締める。

騎士「せあっ!」

そして、空から襲い来る攻撃をかわし、翼ごと敵を切り裂くと。
続けて、巧みに武器を振るい、一体一体、確実に倒してゆく。

騎士「せえあっ!」

それから、最後の一体を一閃すると、騎士は、おもむろに地平線の先を見つめた。

騎士「…………」

視線の先、朝靄の彼方、大きな町が見えた。

騎士「っ!」

突然、騎士の胸がうずく。

騎士「またか……」

呼吸を整え、そう呟くと。また。
騎士は町に向け、ゆっくりと歩を進めた。

―朝焼けの草原

鎧を纏いし騎士が一人。
迫り来る、翼を生やした、人型の化け物と交戦している。

騎士「世界は、一体どうなってしまったんだ?」

左手に盾を構え、右手に持つハルバードを、強く握り締める。

騎士「せあっ!」

そして、空から襲い来る攻撃をかわし、翼ごと敵を切り裂くと。
続けて、巧みに武器を振るい、一体一体、確実に倒してゆく。

騎士「せえあっ!」

それから、最後の一体を一閃すると、騎士は、おもむろに地平線の先を見つめた。

騎士「…………」

視線の先、朝靄の彼方、大きな町が見えた。

騎士「っ!」

突然、騎士の胸がうずく。

騎士「またか……」

呼吸を整え、そう呟くと。また。
騎士は町に向け、ゆっくりと歩を進めた。

―荒廃した町

騎士「ここも、誰もいないのか……」

当てもなく歩き。

騎士「あれは……」

巡り着いた広場の一つで、一人の少女が、静かに空を見上げていた。

騎士「良かった……!人だ!」

騎士は、急いで少女の元へと向かう。

騎士「あの!」

その声に振り向く、青い髪の少女。

少女「待ってたよ」

騎士「え?」

少女は、純粋な翡翠の瞳で、驚く騎士を見上げている。

騎士「君はこの町の、そのー……生き残り、だよね」

少女「いいえ」

騎士「では、どうしてここに?まさか、他の町から来たの?」

少女「それも、いいえ」

混乱する騎士を前に、少女は続けて言った。

アレッタ「私の名前はアレッタ。とでも、名乗っておこうかしら」

騎士「と、とでも?」

その時。高台にある教会の鐘の音が、突然、町全体に響き渡った。

騎士「他にも誰か、生き残りがいるのか……!」

アレッタ「それもまた、いいえ。あそこにいるのは、星」

騎士「星?すまないけど、今、君の冗談には付き合えない」

そう言って騎士は、高台にある教会を見上げた。

騎士「とにかく。一緒に行こう」

アレッタ「うん」


―街中

騎士「僕から離れないでね。近くに、魔物が潜んでいるかも知れないから」

アレッタ「大丈夫。ここにはいない」

騎士「わかるの?」

アレッタ「うん」

騎士「そっか……。長い事、ここに一人でいたんだね」

アレッタ「…………」

騎士「安心して。今は、僕が傍にいる!」

アレッタ「ありがとう」

騎士「うん!」

―高台にある教会

騎士「立派な門構えだなー」

アレッタ「待って」

騎士「どうしたの?」

アレッタ「あれを見て」

騎士「あれと言うと、あの石像のことかな?」

アレッタ「うん」

騎士「まさか、怖いの?僕がいるから、大丈夫だよ」

アレッタ「大丈夫じゃなかったら?」

騎士「え?」

重い音がひとつ。

アレッタ「とても危険なものだったら、どうする?」

またひとつ。

騎士「魔物……だったのか」

翼を生やし、角の生えた。まるで、悪魔の様な石像が二つ。
その目に、赤い光が灯った。

アレッタ「そいつは、悪夢よ」

騎士「悪夢?」

アレッタ「うん」

と、鐘が再び、突然鳴り響き。

騎士「!」

ついに石像が動いた。

騎士「下がってて!」

騎士はハルバードを強く握り締め、盾を構えた。

騎士「せあああ!」

そして、気合の入った声と共に駆け出し、武器を突き出す。

騎士「かっ!」

しかし。石像には、傷一つ付けられなかった。

騎士「ったー!」

アレッタ「そいつの名は、ガーゴイル」

騎士は立て続けに迫る攻撃を、盾で防ぐ。

アレッタ「斬撃はおろか」

隙を見て反撃に出るが、軽い音が響き、騎士の手を痺れさせた。

騎士「っく~……!」

アレッタ「打撃も通用しないから、気をつけてね」

騎士「それを早く言って……危ない!」

アレッタの前に立ちはだかり、敵の攻撃を防ぐ。

騎士「っ!どうすれば……!」

アレッタ「私の力を使って」

騎士「君の?さっきから何を」

アレッタの両手から放たれた水流が、二体を、教会の門に叩きつけた。

騎士「なっ……!」

アレッタ「私は、この星の意志」

アレッタの体が、青白い光に包まれる。

アレッタ「そして、人々の夢」

光が、騎士と一体化する。

アレッタ「力の使い方、伝わってる?」

騎士のハルバードを、激しく回転する水流が包み込んだ。

騎士「わかる……。ああ、わかるよ!」

アレッタ「じゃあ、話は後にして」

騎士「まずは、あれを倒そう!」

鋭い一撃をいなし、迫るもう一体に、武器を突き出す。
水流が、抉るようにガーゴイルを貫いた。

騎士「凄い……!」

貫かれたガーゴイルは、靄となり消えた。

アレッタ「残り一体」

背後から迫る攻撃を、盾でいなし。

騎士「せあっ!」

体を回転させ、敵の背中に全力で、水流を叩き付ける。
ガーゴイルは門を破壊し、教会内へと投げ込まれた。

アレッタ「さあ、とどめよ」

水流が大きく、そして勢いを増す。

騎士「っ!」タッ!

騎士は、強く地面を蹴った。

騎士「せえええ!」

起き上がり、騎士に向け、炎を吐き出すガーゴイル。

騎士「あああ!!」

突き出された水流は、炎もろとも、見事ガーゴイルを貫いた。

騎士「はぁ……はぁ……はぁー」

少女の姿に戻るアレッタ。

アレッタ「お見事」ぱちぱち

騎士「ありがとう……」

と、その時。
教会の奥から、ゆっくりと、小さな光が漂ってきた。

騎士「つ、次は何!?」

アレッタ「アニムス。私と同じ、星の意思よ」

メル「あの……聞こえますか?」

騎士「うん。なんとなく聞こえるよ」

メル「メルは、メルキュリアスと言います……」

騎士「え?」

メルは、椅子の陰に隠れている。

アレッタ「この子は、臆病な性格みたい」

騎士「はぁ」

メル「メルキュリアスだよー」

騎士「メルキュリアス」

アレッタ「おいで。メルキュリアス」

光が、ふよふよとアレッタに近づく。

アレッタ「私はアレッタ。よろしくね」

メル「うん」

アレッタ「さ、この中に」

メル「ここに?」

アレッタ「うん。これは、特別な首飾りなの」

メル「わかった」

そう言って、アレッタの首飾りについている宝石の一つと、同化した。

アレッタ「狭くて、ごめんね」

メル「いいよ」

騎士「あのー。さっぱり訳がわからないんだけど」

アレッタは、首飾りを騎士に渡した。

メル「ひゃあー!」ピュー

すると。メルは光になって、逃げてしまった。

騎士「これをどうして僕に?」

アレッタ「あなたに必要なものだから」

騎士「僕に?」

アレッタ「うん。さっきの様に、星の力を借りる為に」

騎士「だめだ。頭が痛くなってきた……」

アレッタ「旅の道中。追い追い、ゆっくりと話すよ」

騎士「旅?」

アレッタ「うん。アニムスを集める旅」

騎士「えーと、それは……」

アレッタは、ジッと、騎士を見上げている。

騎士「……とにかく、君にとって。とても大切なことなんだね」

アレッタ「うん」

騎士「よし、わかった!君が困っていると言うのなら、僕は騎士として、喜んで手伝うよ」

アレッタ「ありがとう」

騎士「それと、君のことは僕が必ず護ると、今ここに誓おう!……ただし」

アレッタ「ただし?」

騎士「ちゃんと説明をしてほしい」

アレッタ「うん、わかった」

騎士「……しかし」

メル「……」

騎士「僕が首飾りをしては、あの子が……」

アレッタ「メル、大丈夫よ。あなたも感じるでしょ?」

メル「う、うん……」

ふよふよと、慎重に騎士に近づく。

メル「…………」

騎士「ごめんね。怖い思いをさせて」

メル「ううん。あなたは、私を助けてくれたから」

騎士「えーと、さっきのから?」

メル「うん。ありがとう」

騎士「どういたしまして」

メルは、首飾りに宿った。

騎士「これから、よろしくお願いします」

メル「よろしくお願いします」にこっ

騎士には、メルが笑ったように感じた。

2 飾らない笑顔

―夕日の霞む砂漠

アレッタ「これは、過去のお話。とある民が、星の力を手にする儀式を執り行ったの」

騎士「星の力を手にする儀式……?」

アレッタ「その結果。私たちは意志を持ち、アニムスという光になった」

騎士「その、アニムスのいる場所。君にはわかるんだよね?」

アレッタ「うん。星は引かれ合うものだから。ね?」

メル「うん」

騎士「二人は、今回。初めて知り合ったんだよね?」

メル「うん」

騎士「すごく、仲いいね」

メル「うん」

騎士「僕とは?」

メル「うーん……」

騎士「…………」

アレッタ「続けるよ。……その後。アニムス達はこの星を廻り、また、この地に集まったの」

騎士「どうして。と、聞きたいところだけど」

一陣の砂煙。

メル「ひゃあ……!」ビクッ

その後に姿を現したのは、腐った死人の群れだった。

騎士「う……。あれは?」

アレッタ「グール。でも、おかしい……」

騎士「何が?」

アレッタ「…………」

グールが動く。
騎士もそれに合わせ、前進した。

アレッタ「倒すのに苦労はしないはず。がんばって」

騎士「ああ、ありがとう!」

騎士は、次々とグールの群れを薙ぎ倒す。

アレッタ「…………」

敵の動きは遅く、倒すのに、そう苦労は必要としなかった。

騎士「せあっ!」

だが、その時。

アレッタ「しまった」

騎士「どうしたの?!」

二人はいつの間にか、ハイエナの群れに囲まれていた。

騎士「くっ!新手か……!」

アレッタ「いいえ。そいつらもグールよ」

騎士「え!?」

アレッタ「グールは、ハイエナに化けるとも伝えられているの。でも……」

ハイエナとグールの群れは、二人にジリジリと詰め寄る。

アレッタ「こんな風に、知的に活動するかしら……」

騎士「アレッタ。君の力を貸してほしい」

アレッタ「うん」

アレッタはアニムスとなり、騎士に宿る。

騎士「よし、かかってこい!」

それを合図に、一斉に飛び掛る敵。

騎士「せあっ!」

騎士は武器を砂に突き立て、身の回りに、激しい水流を起こした。

アレッタ「よくできました」

敵の群れは方々に吹き飛び、靄と消えた。

アレッタ「お見事」ぱちぱち

騎士「まだまだ!」

そう言って、生き残ったハイエナ達の攻撃を盾でいなすと、豪快に切り裂いてゆく。

騎士「せえあっ!」

そして、流れるような動きで、残るグールを殲滅した。

騎士「ふぅ……」

アレッタ「お疲れ様。と言いたいところだけど」

メル「向こうに、何かいるよ!」

紫に染まった砂煙の先、怪しげな瞳が、こちらを見つめていた。

アレッタ「そいつは多分、ジャック・オー・ランタン」

騎士「ジャック・オー・ランタン?」

アレッタ「諸説あるけど、わかりやすく言えば、かぼちゃのお化け。かしら?」

騎士「そのままだね」

アレッタ「後、そいつは悪者じゃないよ」

騎士「でもあいつ、悪い顔してるよ」

アレッタ「それは元々」

騎士「あ、そうなの?」

アレッタ「でも、目の前にいるのは、悪夢」

騎士「では、やっぱり敵?」

アレッタ「うん」

騎士「ややこしい……」

ジャックは、ゆらりゆらりと、こちらへ迫ってくる。

メル「ききききたよー……!」

アレッタ「きっとそいつが、グールを統率していたのね」

騎士「何はともあれ。敵だというのなら、倒すまでだ!」タッ

アレッタ「まって」

騎士による、先制攻撃。
しかし、その一撃は、宙に浮く鬼火を貫いた。

騎士「!?」

黄色い炎が、騎士を飲み込む。

騎士「ぐああ!」

アレッタ「これは鬼火……!」

アレッタの意思で、騎士の体が水流に包み込まれた。

騎士「はぁ……助かったよ」

アレッタ「うん。それと気をつけて。本体はまだ近く、どこかに潜んでる」

砂煙が視界を塞ぎ、音を掻き消す。

メル「右!」

騎士はとっさに、その方向に向けて盾を構え、鬼火を防いだ。

ジャック「ケケケッ……」

ジャックは小さく笑い、また、姿を消した。

騎士「メルキュリアス。君にはわかるんだね」

メル「うん。声が聞こえるの」

騎士「では、僕を助けてもらえるかな?」

メル「うん。わかった」

水流を武器に纏わせ、騎士は静かに構える。

騎士「…………」

メル「……後ろ!」

振り向きざまに突き出された武器は、見事、敵を貫いた。

ジャック「クケッ……!」

メル「まだだよ!」

しかし、敵による最後の反撃。
騎士は、その放たれた鬼火を盾で防ぐと。

騎士「これで、とどめだ!」

水流を、さらに激しく回転させた。

メル「やった!」

ついに、ジャックは靄となり、夜空の星に消えた。

騎士「ありがとう。メルキュリアス」

メル「うん!」

アレッタ「二人の距離、縮まったみたいだね」

メル「うーん……それは……」

騎士「えー……」

メル「ふふっ!」クスクス

騎士「え!?どっちなの?!」

メル「どっちかな?」

騎士「もー……からかわないでよ」

メル「ふふふ!」

流れ星がひとつ、三人の頭上を駆け抜けた。

よし、今日はここまで!

ありがとうございました!

半角になっていなかったのは気づかなかった。
ご指摘、ありがとうございます。

説明は追々していきますので、お楽しみに。

もう一話、投稿しておこう。


3 星飾りの悪夢

―寂れた古城

メル「後ろからも来たよ!」

騎士「っ!」

騎士は迫りくる、包帯に包まれた人型の敵を、一斉になぎ払う。

騎士「ふー……」

アレッタ「そいつは、ミイラ」

騎士「グールとは、何か違うの?」

アレッタ「グールが生ものなら、ミイラは乾物かしら」

騎士「まるで、食べ物みたいな言い方だね……」

アレッタ「食べてみる?」

騎士「いいえ」


―の中庭

メル「また後ろ!」

背後より忍び寄る、二つの影を。

騎士「せあっ!」

振り向き、十字を描くように切り裂いた。

騎士「はぁ……。ミイラばかりで、アレッタが見つからない……」

メル「騎士さんが罠にはまるから……」

騎士「僕は何もしていない」


アレッタ「これは罠かしら」ぽち

下から突き出て、二人を遮る石壁。

騎士「アレッターーー!」ドンドン!


騎士「……ま、いいや。メルキュリアス」

メル「無理だよ。悪夢が濃くて、感じ取れないの」

騎士「それは、アレッタも同じか……」

メル「うん。多分……」

騎士はため息一つして、また、歩を進めた。

騎士「……ねえ、メルキュリアス。君たちアニムスは、どうして、この地に集まったの?」

メル「メル達は、もう宙に帰れないの。だから、この星を巡り廻って、居場所を探したの」

騎士「居場所。それが、あの教会?」

メル「ううん。メルはあそこで、悪夢に捕らわれちゃったの」

騎士「あれは、そういうことだったんだね」

メル「うん。それでね、結局、居場所は見つからなくて。メル達はこの地で呼ばれたから、この地に戻ってきたんだよ」

騎士「なるほど。アレッタの話していた儀式か」

メル「うん」

騎士「星の居場所かー。難しそうだなー……」

―とある部屋

アレッタ「ここは……」

アレッタは、ふと見つけた、焼け焦げた書物を拾う。

アレッタ「星……の……」

表紙の文字は読めず、中を見てみるが、中も煤けて、読む事は出来なかった。

アレッタ「……」パタム

そっと閉じ、それを床に戻すと。

アレッタ「…………」

言葉なく、部屋を後にした。


―小部屋

一方で騎士は、とある部屋に迷い込んでいた。

騎士「この部屋は一体?」

メル「嫌な感じがするよ……」

騎士「それに、血の臭いがするね……」

と、四方の出入り口が、鉄格子によって塞がれてしまった。

メル「もー」

騎士「僕のせいではないからね」

続けて天井より、剣と盾を武装した、五体の骸骨が降って来た。

メル「ひゃあああ!!」ビクッ!

騎士「何だこいつら!」

アレッタ「あら、ついに骨だけに」

騎士が振り向いた先、鉄格子の向こう側に、アレッタの姿はあった。

騎士「アレッタ!無事かい!?」

アレッタ「うん。そいつは、スケルトン。ただの骨よ」

騎士「そのままだね」

メル「じゃあ、食べられないね」

騎士「食べる気は初めからないから!」

アレッタ「くるよ」

スケルトンが迫る。

騎士「くっ!」

スケルトンは、それぞれ、方々から攻撃を開始した。

騎士「これは面倒だね……!」

敵の巧みな剣さばきに、刃が、徐々に騎士の鎧に命中する。

アレッタ「距離をとって、一体一体、確実に倒すのはどうかしら?」

騎士「よし、それでいこう!」

ハルバードの柄の下方を持ち、回転し、敵との距離を空けた。

騎士「まずは一体!」タッ!

そして間髪いれず踏み出し、武器を突き出す。
しかしそれは、敵の盾によって防がれてしまった。

騎士「まだまだ!」

そのまま力ずくで敵を押し、壁に叩きつけると。
一瞬の隙を突き、切り伏せる。

アレッタ「よくできました」

続けて、背後より迫る刃を。

メル「またまた後ろ!二体!」

盾で弾き、空いた胴体を、真っ二つに薙ぎ払った。

騎士「このまま、一気に切り伏せる!」

ハルバードのリーチを生かし、一体の顔面を貫き砕くと。
そいつを、残る一体に投げつけた。そして。

騎士「とどめだ!」

最後に、騎士は飛び上がり。

騎士「せえあっ!」

崩れた二対に向けて、一気に武器を振り下ろすと、二体を叩き伏せた。

アレッタ「お見事」ぱちぱち

ここで、一つの鉄格子が開いた。

騎士「一つだけ?アレッタ!」

騎士は、アレッタに駆け寄る。

アレッタ「どうしよう」コンコン

アレッタは、依然、鉄格子の向こうである。

騎士「うーん……」

メル「ねえ。アニムスになったら?」

アレッタ「あ、その手があったね」

騎士「…………」

アレッタは一度アニムスとなり、騎士と合流した。

騎士「はぁ……。とりあえず、一段落だね」

アレッタ「うん。ごめんなさい」

騎士「いいよ」

アレッタ「許してくれるの?」

騎士「僕は君を護ると誓った。それは、何があってもだ」

アレッタは微笑む。

アレッタ「ありがとう」

騎士「うん。さ、行こう」

二人は、開いた鉄格子の先へと進んだ。

騎士「ここは……」

そこは、少し崩れた大きな部屋で、玉座だけが、ポツンと置いてあった。

アレッタ「星を感じる……」

騎士「どこ?」

部屋には、ぽつぽつと、日の光が差し込んでいる。

メル「メルと違って、悪夢に飲まれてる……」

騎士「悪夢に飲まれてる?」

ふと。騎士の視線の先に、小さな光が見えた。

騎士「!」

次の瞬間。騎士の鎧を、鋭利な鉤爪が襲った。

騎士「っ!」タッ

瞬時に距離を取り、とっさに盾を構える。

騎士「ありがとう。メルキュリアス」

メル「うん」

カランという音と共に、鉤爪がひとつ、床に落ちた。

騎士「君の力は、鎧や盾を堅牢にしてくれるんだね」

騎士の鎧と盾は、高貴な姿に変化していた。

メル「でも、油断しないでね。頭は護れないから」

騎士「構わないよ。元々、被り物はどうも苦手なんだ」

メル「そう」

騎士「それで、アレッタ。あいつは?」

目に見える、その不気味な姿。
小柄で、赤い帽子を深く被り、その下に覗く、燃えるような赤い瞳。
そして長く薄気味悪い髪に、突き出た歯が、そう感じさせた。

アレッタ「そいつは、レッドキャップ」

アレッタはアニムスとなり、首飾りに宿る。

アレッタ「とっても素早くて、鋭利な鉤爪で獲物を裂くの」

騎士「なんて恐ろしいやつなんだ……でも」

アレッタ「私の力は使えないからね」

騎士「え?」

アレッタ「星の力が交じり合えば、大変なことになるの」

騎士「そうなの?っと!」

騎士はなんとか、攻撃を防ぐ。

騎士「とにかく無理なら、このまま倒すまでだ!」

アレッタ「がんばって」

騎士「ああ!いくよ!メルキュリアス!」

騎士は、武器を持つ手に力を込め、駆ける。
一方でレッドキャップは、新しい鉤爪を装着した。

騎士「せあっ!」

突き出す武器は身軽にかわされ、騎士の顔面に向けて、鉤爪が伸びる。

騎士「っ!」

なんとかそれをかわし、体勢を整える。

アレッタ「気をつけて。そいつ、頭が良いみたい」

騎士「そうみたいだね。では、どうしたものか……」

レッドキャップによる、激しい猛攻。

騎士「っ!」

何とか防ぎきるが、鉤爪は壊れない。

騎士「さっきは壊れたのに、どうして……!」

アレッタ「悪夢だけじゃない。星の力が」

突然の爆発。

騎士「!」

しかし、騎士は無事だ。

メル「すごい力……!」

騎士「びっくりしたー……!」

アレッタ「大丈夫?」

騎士「ああ」

アレッタ「今のもきっと、星の力よ」

騎士「星の力……」

アレッタ「うん。私たちと同じ」

レッドキャップの鉤爪は、赤い靄に包まれている。

騎士「手ごわい力だけど、逆に好機だね」

メル「どうして?」

騎士を狙い、振るわれた鉤爪に合わせ、何度も爆発が起こる。

騎士「ぐあっ!」

そのひとつ、騎士は爆風に吹き飛ばされた。
その隙に迫るレッドキャップ。

騎士「くっ!」

騎士はとっさに体勢を整え、後ろに跳んで攻撃をかわすと、続けて爆発も防いだ。
そして立ち上がり。

騎士「わかった!降参だ!」ザッ

目一杯腕を広げた。

騎士「もういい!好きにしろ!」

メル「ええ!?」

アレッタ「ありゃま」

レッドキャップはニヤリと笑い、腕を高く上げると、嬉しそうに鉤爪を振るった。

騎士「……」

炸裂。部屋には、爆煙が立ち込めた。
そしてついに、天井が崩れ、夕日が部屋に差し込んだ。

騎士「…………」

その夕日が照らしたものは、貫かれ苦しむ、レッドキャップの姿であった。

騎士「いい目眩ましになったよ」

レッドキャップ「ギャアアア!!」

奇声と共に我武者羅に振るわれた鉤爪は、騎士の頬を焼いた。

騎士「とどめだ!」

そう言って、相手を空に投げ飛ばし。

騎士「せえあっ!!」

見事斬り伏せた。

アレッタ「お見事」ぱちぱち

騎士「ありがとう。血に飢えていなかったら、こちらがやられていたよ……」

メル「危険な賭けをしたね」

騎士「おかげで頬が、いつつ。大火傷だ……」

人の姿に戻ったアレッタが、騎士の頬に手を添える。

騎士「冷たくて、いい気持ち……」

アレッタ「応急処置だけど、あなたなら、すぐ治ると思うよ」

騎士「僕なら?」

ウェヌス「おっはよーっす!」

騎士「はい?」

突然の声に振り返ると、夕日に輝くアニムスがひとつあった。

ウェヌス「あたし、ウェヌス!」

そのとっても元気な声は、騎士を唖然とさせた。

今度こそここまで!
また明日!

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