村人「みんなであの化け物を殺すんだ!」竜(な、なんで……?)(46)

この大陸にはいわゆる人類とは異なる、もう一つの人類が存在する。

その名も、竜人族。

彼らは普段は人間と変わらない姿をしているが、

いざ戦いとなると竜に変身し、強大な力を発揮できる一族である。

長年、この二つの種族は共存し合って生きてきた。



しかし、現在の国王は竜人族の強さを恐れ、弾圧策を強行。

少数民族である竜人族は徹底的に迫害され、大勢の竜人族が無実の罪で捕えられた。



この物語の主人公もまた、そんな竜人族の一人であった──

~ 村 ~

村人「おや? こんな村にお客さんだなんて珍しいね」

青年「ど、どうも……」

村人「いったいなんの用だい?」

青年「ぼく、昔から歴史に興味があって……」

青年「この大陸のあちこちの村や町を回って」

青年「それぞれの成り立ちを調べて書にまとめようかな、と思ってるんです」

村人「へぇ~、若いのに立派なもんだ」

村人「こんな村に大した歴史があるとも思えないけど、ま、頑張ってくれよ!」

青年のいったことには嘘が含まれていた。

竜人族は正体がバレたら一巻の終わり。

ゆえに一ヶ所に定住することは許されない運命(さだめ)──



しかし、無目的にぶらぶらしていたのでは、すぐさま竜人族だと疑われてしまう。

そのため、彼らが生き残るには

“それらしき旅の目的をでっちあげて、放浪し続ける”しかないのである。

青年「こんにちは」

村娘「こんにちは。あら、旅の方ね?」

青年「ぼくは大陸中を旅して、村や町の成り立ちや歴史を聞いて回っているのですが」

青年「この村の歴史に一番詳しい人は、どなたになるでしょう?」

村娘「そうねえ……やっぱり村長じゃないかしら?」

村娘「村長なら、あっちの一番大きい家で暮らしてるわよ」

青年「ありがとうございます!」

幼女「きゃっきゃっ」タッタッタ…

母「こらこら、転んじゃうわよ」



青年(のどかな村だなぁ……)

青年(もし、ぼくが竜人族なんかでなければ──)

青年(あちこち放浪することもなく、こういう村でのんびり暮らせたのに……)

~ 村長宅 ~

村長「旅のお方、こんな村によ~う来なさった」

青年「こんな村だなんてとんでもない。ここはとてもいい村ですよ」

青年「ところで……この村の成り立ち……歴史についてうかがいたいんですけど……」

村長「ふぉっふぉっふぉ、かまわんよ」

村長「こんな年寄りの話でよければ、いくらでも聞いていって下され」

村長「まずこの村の起源は~……」

村長「……であり」

村長「それから……」

村長「そして……」

村長「……なんじゃよ」



青年「ふんふん、なるほど……」カリカリ…



一般的な若者であれば眠気をもよおすような村長の説明であったが、

青年は熱心に聞き、メモを取った。

“大陸中を歩き回り、歴史をまとめる”

かくれみのに過ぎない目的といえど、青年はこの作業にやりがいを感じていた。

これが先ほど“嘘も含まれる”とした理由である。

さまざまな町や村に伝わる歴史は、時に繋がり、時に大きく広がり、

大陸の広大さ、奥ゆかしさといったものをまざまざと見せつけてくれる。



そして、青年は時々こう思うのだ。

なぜ、竜人族はこの大陸の歴史から締め出されてしまったのだろうか──と。

竜人族は温厚な種族であり、客観的に見ても、

彼らが竜になれることを悪用したという事実はどこにも残っていない。

なのに、今や大陸中に彼らが安住できる地域はどこにも存在しないのだ。

村長「どうなされた? 旅のお方」

青年「!」ハッ

青年「え、あ……」

青年「すっ、すみません! つい涙を……!」ゴシゴシ…

村長「ふぉっふぉっふぉ」

村長「こんな年寄りの話がおぬしのような若者の琴線に触れたというのであれば」

村長「それはとても光栄なことじゃわい」

青年「ハ、ハハハ……」

ドガシャァンッ!



村長「む!?」

青年「い、今の音は!?」

村長「くっ……山賊たちじゃな! しばらく大人しくしておったというのに……」

青年「山賊!?」

村長「旅のお方、お逃げなさい! 巻き添えを喰らいたくなかったらのう!」

青年「…………!」

外に出ると、およそ30人ほどの荒くれ者集団が、村内に暴れ込んでいた。



~ 村 ~

頭領「ガハハハハッ! 根こそぎ奪っちまえ!」

村人「やめろっ、やめてくれ~っ!」

頭領「うっせえ!」バキッ



山賊「ねえちゃん、裸にひんむいてやろうか!?」ガシッ

村娘「いやっ、いやぁぁぁっ!」



幼女「うわぁ~ん……」

母「ああ……この子だけは……」ギュッ…

村長「ワシらの村が……! くっ、これまでじゃな……」



青年「…………」ドクン…

青年(こののどかな村が、優しい村の人たちが、山賊たちに……!)

青年(許せない……!)

青年(そしてぼくには、山賊を追い払う力がある……!)

青年(だけど、その力を見せてしまったら、ぼくは──)

青年(ぼくは……!)

村人「助けてくれぇ~!」

村娘「いやぁぁぁっ!」

幼女「うわぁぁん!」

母「この子だけは、お許しをっ!」

村長「やめとくれっ! やめておくれぇ~!」



青年「…………!」

青年(見て見ぬフリなんか、できるわけないじゃないかっ!)



青年「うああああああああああっ!!!」メキメキ…



青年が叫び声を上げると、それに呼応するように肉体が変化していく。

村を救うため──

青年は自らの意志で、竜となった。





竜「グオォォォォォォンッ!!!」メキメキメキ…





突如出現した巨体に、周囲の人間たちは絶句してしまった。

竜「すぅぅ……」

竜「グオアアアアアッ!」

ゴオアアアアアッ!



灼熱の炎で構成された吐息が、山賊たちの間近にばら撒かれる。



竜「次は浴びせる! とっとと村から出ていけ!」



山賊「うわぁぁぁっ!」

頭領「に、逃げろっ! 逃げろぉぉぉっ!」



山賊たちはまさに蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

竜「ハァッ、ハァッ……追い払えた……!」

竜「皆さん、もう大丈夫で──」



村人「ひいっ……!」

村人「や、やっぱりだ! オレのいったとおりだろ!?」

村人「アイツ、竜人族だったんだよォ! 化け物だったんだよォ!」

村娘「ええ、ホントにね!」

村娘「あの若さで一人旅だなんて怪しいと思ってたのよ!」




竜「……え?」

村人「みんなであの化け物を殺すんだ!」

村娘「そうよォ! みんなで叩き殺すのよ!」

幼女「ころせぇっ!」

母「この子にだけは手を出させないわ!」



竜(な、なんで……?)

竜(なんでだよ! ぼくはあなたたちを助けたじゃないか!)



村長「ふぉっふぉっふぉ」ザッ…



竜「そ、村長さん……! あ、あのみんなに説明を──」



村長「まさに狙い通りというやつじゃな」ニィィ…

すると──

頭領「これでよかったのかい? 村長」ザッ

山賊「あの野郎、やっぱり竜でしたね」ザッ

村長「うむ、あぶり出し成功じゃ」

村長「あやつ、案の定正体を現しよったわ」

村長「あとはとっとと奴を屍にして王にくれてやれば、多大な報奨金にあずかれるぞよ」

歯をむき出して、村長が笑う。



竜(な、なんで山賊たちが……!? グルだったのか!?)

竜(いや、そもそも彼らは山賊でもなんでもなく──)

竜(全てはぼくを変身させるための罠だったんだ!)

竜(多分、ぼくがこの村にやってきた時から、全てが始まっていたんだ……!)

村人「まさかまだ、竜人族がいたとはなぁ~……」

村娘「飛んで火に入る夏の虫ってやつね」ウフッ

頭領「いったいいくらゴールドをもらえるか、想像もつかんぜ!」

山賊「まったくですねえ!」

幼女「おかね、おかね!」

母「これでもっといい暮らしができるようになるわね」

村長「さてと……それでは村人総出で愚かな竜の狩りを開始するかのう」ニィィ…



竜「あ、ああ、あああっ……!」

竜(ちくしょう、ちくしょう……ちくしょう!!!)

竜「よくも……よくもぉぉぉっ!」

竜「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!」



天まで轟くような咆哮。

絶望と憎しみが、竜の体内を駆けめぐる。

竜はその巨体に似合わぬ速度で、村人たちの群れに突っ込んだ。

そして、その前足についた大きな爪を──



ザシュウッ!



村長の胸めがけて振り下ろす。

鮮血が舞った。

胸を切り裂かれた村長は、微動だにしていなかった。

村長「よい一撃じゃった……」

竜「なっ!?」

竜「ヌガァァァァァッ!!!」ブオンッ



ズンッ!



今度は左前足で村長を押し潰そうとしたが、これでも村長はビクともしない。



村長「これほどの圧力は……三十年ぶりじゃな」

竜「…………ッ」

竜「村長さん、あなたまさか──」

村長「ふぉっふぉっふぉ、見抜かれてしもうたか」

村長「そう、全ては──村人全員で仕組んだ嘘だったのじゃ」

村長「怒れるおぬし……全力(マックス)のおぬしと──」

村長「すなわち全力のドラゴンと、一対一で全力で打ち合うためッ!」

村長「今の二発は、温厚なるおぬしをだました罰としてわざと受けた」

村長「どうじゃな……?」

村長「怒りは鎮まったかもしれんが、闘争本能は呼び起こされたじゃろう……?」

竜(た、たしかに……ッ!)

竜(もう村長さんと戦う理由はないけど──)

竜(ぼくは……村長さんと全力で戦いたくなってしまっているッ!)ゾクゾクッ



竜「グ……グオオオォォォォォォォンッ!!!」



村長「怒りに満ち満ちていたさっきより、ずっといい咆哮じゃ……」ビリビリ…

村長「こんなことなら、最初から素直に試合を申し込めばよかったのう」

村長「来るがよい」

村長「永き迫害で溜まりに溜まった抑圧(ストレス)──ワシで発散してみせい」バサッ…



村長が爪で切り裂かれた衣服を脱ぎ捨て、半裸となる。

未だ衰えを知らない筋肉が、

まるでそれぞれの箇所が独立した生き物かのように脈動していた。



竜「お望み通り……全力でいきます!」

村長「そうこなくてはな」ニィィ…



村娘「村長も本気になったわ! 死合いが始まる……ッ!」

村人「ったく、彼を怒らせる猿芝居は必要なかったってことか。悪いことしたな」

母「いいわね、ここからは一瞬たりとも見逃しちゃダメよ」

幼女「うん!」

村長の頭に噛みつこうと、竜が大きく口を開く。

ところが──



村長「ぬんッ!」バオッ

ガキィッ!

竜「おごぉ……っ!」ガクンッ…



強烈なアッパーカットが、竜の顎を打ち抜いた。



頭領「出やがった……ッ! 村長の得意技アッパーカット!」

山賊「あれで昔、顎を砕かれて……しばらくおかゆしか食えませんでしたよ」

よろめいた竜に、村長が拳でラッシュを仕掛ける。

ズドッ! ドドドドッ! ドガガッ!

竜「ガァッ……!」ヨロッ…

村長「シィィィッ!」

ドギャッ!!!



村人「村長の拳は岩をも砕く! こりゃあ決まっちまうぜ……」

村娘「いえ、青年君もさすがだわ!」

村娘「打撃の当たる箇所の皮膚を瞬間的に硬化させ、ダメージを軽減している!」



村長「やるのォ……」

竜「村長さんこそ……!」

村長「じゃがおぬし、まだ全力ではないのう」

村長「もっともっとぶつかってこいッ!」クイクイッ

竜「しかし……この村に被害が……」

村長「かまわん」

村長「それにな、この村の住民に戦いの余波で死ぬような輩はおらんよ」

竜「分かりました……ッ!」スゥゥ…

ゴォアアァァァッ!



竜は大きく口を開くと、巨大な炎を吐き出した。

先ほどニセ山賊たちにやった威嚇とはケタ違いの大きさ、熱量、破壊力。



幼女「ママァ~! むらがまるやけだよぉ~!」

母「村や町の一つや二つ壊滅してもお釣りがくるほどの価値が、この戦いにはあるのよ」

竜(生まれて初めて──正真正銘、全力で炎を吐いた……!)

竜(まともな人間なら、骨も残っていないはずだが……)

竜「!」ピクッ



村長は両腕をクロスさせ、耐えていた。

肉体のあちこちが焦げているものの、決定的なダメージにはまるで至っていない。



村長「ふぉっふぉっふぉ……。摂氏にして、12000℃前後といったところか……」

竜(全力のブレスで、あの程度のダメージ……!)

竜(やはり、村長さんは肉弾戦でなければ倒せないッ!)

ガキィッ!

村長の飛びヒザ蹴り。竜がのけぞる。

さらに──

バキィッ! ズガァッ! ドズゥッ!

振り下ろす肘、左拳によるストレート、前蹴り。

たまらず吐しゃ物をまき散らす竜。



竜「ゲボォッ……!」クルッ

村長(痛みに耐えきれず、背を向けおったか! これで終わりじゃッ!)



頭領「決まったァ! やっぱり村長だッ!」

山賊「ええ、村長の勝ちですぜ!」

────

長年、モンスターと戦い続けてきた眼帯剣士氏(45)はこう語る。



眼帯剣士「爪? 牙ァ? 火炎の吐息ィ……?」

眼帯剣士「ハハ……そりゃあ素人さんのお考えですな」

眼帯剣士「我々戦闘の専門家(プロ)からいわせてもらえば」

眼帯剣士「それらはいくらでも対処のしようがありますからなァ」

眼帯剣士「竜が繰り出す攻撃でもっとも対処しにくい攻撃……」

眼帯剣士「すなわち、竜にとっての一番の武器は──」

眼帯剣士「“尻尾”ですわ」

眼帯剣士「もし、奴らが遠心力をフルに利用して、尻尾をぶつけてきた場合」

眼帯剣士「奴らの尻尾は、絶大な速度と重量を持った鋼鉄の鞭と化す」

眼帯剣士「そんなシロモノをぶつけられて、生きていられる生物など存在しませんわな」

眼帯剣士「先読みできなければ、イッパツでミンチでしょうなァ……」

────

バチィンッ!!!



竜が村長に背を向けたのは、苦痛に耐えかねたからではなかった。

体を回転させ遠心力をたっぷり加えた尻尾を、村長に叩き込むためだったのだ。



完全に読み違えた村長は、尻尾を全身に打ちつけられてしまった。



村人「な、なんつう音……! 鼓膜が破れるかと思ったぜ!」

村娘「そうか……尻尾(テイル)ッ!」

幼女「だいぎゃくてーん!」

母「村長……最後の最後で詰めを誤ったわね」

頭領「人間でいうところの、後ろ廻し蹴りってやつだな……」

山賊「ですが……破壊力は蹴りとは段違いですぜ!」

村長「ふぉっふぉっふぉ……効いたわい。みごとじゃ」

竜「!?」ギョッ



竜だけではない──周囲のギャラリーですら驚いていた。

最終兵器“尻尾”ですら、村長の鍛え抜かれた肉体を打倒するには至らなかったのだ。



村長「大技の後は体勢が崩れる……ガラ空きじゃッ!」

竜(し、しまっ──)

村長(人間の急所は体の中心──すなわち“正中線”に集中する)

村長(それは竜とて同じッ!)

村長「チェイイィィィィッ!!!」



ズドッ! ドドドドドッ! ズドンッ!



正中線への集中砲火。竜はうめき声を上げる間もなく、崩れ落ちた。



ズズゥ……ン……



村長「むんっ!」バババッ



幼女「いっぽーんっ!」

一時間後──

竜「ううっ……!」

村長「ふぉっふぉっふぉ、もう目が覚めたか。さすがの回復力じゃ」

竜「村長さん……」

村長「久々に全力を出せたわい」

村長「老い先短い身、一度でいいから竜と戦ってみたかったんじゃ」

村長「戦いは好きではなかろうに、ワガママに付き合わせてしまってすまんかったのう」

竜「ぼくこそ……生まれて初めて全力で戦えて、スッキリしました」

竜「ですが、あれほど派手な戦いをしたら、きっと兵士が駆けつけてきます」

竜「そうなれば、村の人にも迷惑がかかる……」

竜「村長さんの手で、ぼくを殺して下さい……!」

村長「なにをいっておる」

村長「もはやおぬしとワシは──親友(ダチ)じゃよ」ニカッ

村長「むろん、見届けた村の者もまた親友じゃ」

村長「ワシの村に、親友を売ろうなどという輩はおらんよ」

竜「村長さん……」



パチパチパチパチパチ……!

村人「いい試合だった!」パチパチ…

村娘「かっこよかったわよ!」パチパチ…

幼女「どっちもつよーい!」パチパチ…

母「いずれ二人とも、私が倒してみせるわ」

頭領「山賊のマネをしたかいがあったってもんだ!」パチパチ…

山賊「ホントですねぇ」パチパチ…

二人の友情に、村中から拍手が送られる。

ところが──



国王「ふははははっ! そこまでだっ!」

ズラッ……!

村を取り囲む、およそ五千人の軍勢。



村長「むう……」

竜「こ、国王……!? なんでこんなところに……!?」



国王「たまたま近くの都市に視察に来ておったのだ」

国王「ところが、この村の方角から激しい音が聞こえたとの報告があってな」

国王「余自ら軍を率いて来てみれば案の定……というわけだ」

国王「この大陸に、貴様のような薄汚い種族が暮らせる場所など存在しない」

国王「すぐさまひっ捕えろ! 周囲の者も、抵抗するなら殺してもかまわんぞ!」

竜「みんな、逃げて……逃げてくれぇっ!」

村長「逃げる? なぜじゃ?」

村人「すばらしい試合を見せてくれた礼をしなくっちゃな」パキポキ…

村娘「というか、さっきから血がたぎっちゃって仕方ないわ」

幼女「ころしちゃっていいの?」

母「弱い者いじめはダメっていつもいってるでしょ? せいぜい半殺しにしときなさい」

頭領「さぁて……暴れるとするか!」

山賊「そうっすね!」

竜「ダメです! みんな殺されてしまう! 竜をかばったら同罪なんですよ!?」

村長「ふぉっふぉっふぉ」

村長「この村に、王国軍如きにおくれを取る輩はおらんよ」ニィィ…

15分後、王国軍は壊滅していた。



幼女「よわ~い」

母「コラッ、兵隊さんたちが傷つくでしょ!」

村娘「大丈夫? みんな生かしてあげてる?」

村人「かろうじて……ね」

頭領「ふん、あっけねえ!」

山賊「ま、こんなもんじゃないっすか?」

村長「戦闘後の……いいクールダウンにはなったのう」コキッコキッ



村長「おい、国王」グイッ

国王「ひいいっ!」

村長「今すぐに城に捕えてある無実の竜人族を釈放し」

村長「竜人族を迫害する政策もやめるのじゃ」

村長「でなくば、ワシら総出で城に攻め込むぞ?」ニコッ

国王「りょ、了解いたしましたぁ~!」



国王はすぐさま兵士たちを引き連れ、逃げ帰った。

即日中に幽閉されていた竜人族は解放され、竜人族を迫害する政策も撤廃された。


──
────

青年「ありがとうございました……! おかげで家族や仲間たちも釈放されました!」

村長「なんのなんの。しかしこれからどうするのじゃ?」

青年「色々考えたんですが、今まで通り……この大陸を見て回りたいと思っています」

青年「これからは旅をするために歴史を調べるのではなく」

青年「歴史を調べるために旅をします!」

村長「ふぉっふぉっふぉ、それはよいことじゃ」

村長「世界は広い……」

村長「竜になればあれほどの巨体を誇るおぬしですら、ちっぽけに見えてしまうほどにな」

村長「そんな世界を肌で感じれば、もっともっと大きくなれることじゃろう!」

青年「はいっ!」

青年「ところで、この村に来てから村長さんにはだまされっぱなしですけど」

青年「村長さんはもう一つ、ぼくに嘘をついていましたね?」

村長「へ?」

青年「久々に“全力を出せた”……と」

村長「ゴホンッ……なんのことやら」

青年「ハハ……ではこれで失礼します。またいつかお会いしましょう」

村長「うむ、達者でな」



後に青年が記述した書物『ドラゴン大陸放浪記』は世界中でベストセラーとなる──






─ 完 ─

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