【R18?】男「わーい、肉便器らぁー」 (12)

 私が初めてそれを見たのは、まだまだものを知らない、小学生の、それも低学年の頃だった。

 あの時の私は、家族に連れられ、デパートの買い物なんぞの付き添いをしていた。しかし、無駄にでかい、なんでもあるデパートと言っても、子供にとってはおもちゃを見る位の楽しみしか無いものだ。そのことを承知している私の家族達も、私をおもちゃ屋に置いてどこかへとふらふら買い物に出かけていった。

 私は言い知れぬ疎外感を味わいながらも、なにか一つ買ってやるという父親の言葉にすぐ懐柔され、すぐに夢中となっておもちゃの吟味を始めたものだ。

 しばらく後、おもちゃを見始めて十分も経たない頃か。私の腹がグルグルとなり始めた。あー、朝牛乳を飲み過ぎたかー。私は短い懺悔を済ませると、前から欲しがっていたおもちゃに後ろ髪を引かれつつ、便所へと駆けた。

 ところで、デパートの便所というと、なんだか薄気味悪く感じるのは私だけだろうか?明るく騒がしい店内に比べると、静かで、少しばかり薄暗くすら感じるあの空間が、今でも私は苦手だ。となれば、あの時の私は言わずもがな、と言うものだろう。


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 恐る恐る便所の中に入って行った。中はしん、と静まり返り、人の気配がまるで無い。ああ、なんて運が悪い。一人でも誰か居れば、怖くなんか無いのに。私は嘆いた者だ。だが、私の腹の具合はもう限界まで来ている。私は自分の弱い腹を呪いつつ、適当な大便器の個室に入った。そして私は見てしまった。

 私は悲鳴を上げた。それもとびっきりの、ホラー映画に出てくる女みたいな、耳をつんざく様な奴だ。だってしょうがない。あんなものを初めて見た人間なら、だれだって悲鳴を上げざるを得ないだろう。

 私が見たモノは、明らかに異質なものだった。簡単に言えば、肉塊が洋式便器の形を成したもの、と言えば、想像しやすいだろう。それもただの肉塊ではない。赤黒く、解体されたばかりの、まだ血がこびり付いている様な、そんな肉塊だ。

 もちろん、すぐに逃げようとした。だが逃げられなかったのだ。個室のドアが突然、バタンと勢い良くしまり、そのあと押しても引いてもピクリと空かなくなってしまったのだから、それは逃げようが無い。

 となれば、助けを呼ぶしか無い。なんて思考があの時の私に出来たかわからないが、とにかく、泣きながら叫んだ。誰か助けて!ここから出して!!しかし、いくら叫ぼうとも人が現れる気配が無い。

 これはおかしい。いくらここが、デパートの隅にあるような便所でも、まっ たく人が来ないなんて、そんなことがあり得るだろうか?私はこの怪便器に閉じ込められてしまったのだ!幼い私の脳裏に、すっとそんな考えが入り込んで来た。

私は絶望した。私はこの便器に食べられてしまうのだ。怖くて、怖くて、涙と震えは止まらなかった。しかし、そんなときでも腹はグルグルとなり続け、便意を私に訴え続ける。

 この時、この時に私は便器に取り憑かれてしまったのだと思う。

 その時、私の頭は霞がかかったかの様に不明瞭なものとなり、体が勝手に動き出したのだ。そして、勝手に動く体がとった行動とは、あろうことか、ズボンを脱いだ上この怪便器に座ると言う、なんとも命知らずな行動だった。

 座った後、頭もハッキリとし、悲鳴を上げながら立ち上がろうとするが、体の支配は解かれていなかったようで、それも敵わず、私は座り続けるはめになった。

 その便器はぶよぶよしている上に、得体の知れない液によりしっとりと湿っている上、生暖かく、これ以上ないという不快感を植え付けさせるものだったが、私の腹はもう限界ということもあり、少しずつ私の肛門から便が押し出されていった。

 その便がどうなったのか。便器からでる咀嚼音が全てを物語っていた。この便器は食っているのだ、あろう事か、私の糞を。

 理解した瞬間、私吐いた。朝食べた食パンやら目玉焼きやら、それらが溶けて混じりあったものを、私は吐き出した。それでも私の脱糞は止まらず、その糞をぐちゃぐちゃとイヤらしい音をたてながら、便器が食らう。怖気が私の全身を走り回った。

 どれほど経っただろうか。ようやく私の脱糞が止まると、便器が今度は尻の穴を舐めて来た。この便器のどこから出て来たか分からない舌が、私の肛門にこびりついた残りカスを、全て舐め尽くす。それが本当に気持ち悪くて、私はまた胃の中のものを吐き出した。

 いつまでも続くかと思われた拷問のような時間であるが、便器が満足したのだろう。私を舐る舌を引っ込めた。すると、あれだけビクともしなかった扉が、独りでに開らいた。

 私はズボンを勢い良く腰の辺りまであげると、泣き叫びながらトイレから駆け出した。

 私の声は良く通ったのだろう。買い物を終えた家族に見つかり、ゲロ臭い私は、なにがあったのかと優しい声音で尋ねられた。

 そこで全てを話した。あの怪便器のことを、たどたどしい、少ない語彙で、けれど出来るだけ正確に答えてみせた。しかし私の家族は信じようとはせず、置いて行かれた私が不貞腐れてとった奇行、という風に捕られ、ろくに相手にされなかった。(今思えば、あの便器の魔力が家族にも及んでいたのかもしれない)

 結局あれは悪い夢だったのだ。家族に否定された私はそう決め込んで、このことを忘れようと、ことの時は心に決めたのだった。

ファーストコンタクト編終わり。
需要があったら続き書きます。

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