志希「プロデューサーのキモチ、分からなくなっちゃった」マキノ「……」 (12)

※あらすじ
P×志希 ただし出てくるのはほぼ志希とマキノのみ 短い
志希「プロデューサーのキモチ、分からなくなっちゃった」
マキノ「……(らしくないこと、言ってるわね)」


志希「プロデューサーと、つきあうんじゃなかったかなぁ?」文香「……」
志希「プロデューサーと、つきあうんじゃなかったかなぁ?」文香「……」 - SSまとめ速報
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↑の続編ですが、読まなくてもぜんぜん支障なさそうです。



※一ノ瀬志希
http://i.imgur.com/GjO1LxL.jpg

※八神マキノ
http://i.imgur.com/XGS6iYA.jpg




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1417937646


「ねーねーマキノちゃーん。この香水、どうかな?
 プロデューサーにプレゼントしようと思ってたんだけど」
「香水には詳しくないけど……これは、女性向けのように思えるわ。
 男性に贈るのであれば、これより甘さを抑えて、爽やかさを増やしたら――」



「――それじゃあ、ダメなんだよ、マキノちゃん」
「それはまた、どうしてかしら?」
「この香水のニオイ、実は……」


この間、あたしのプロデューサーは、
あたしに某香水ブランドに絡むおシゴトを取ってきてくれた。

あたしが香水を自作しているのを見て以来、
いつかは……と思って、粘ってくれてたらしい。

『……最近ミョーなニオイさせてると思ったら、プロデューサーって香水を覚えたてなの?
 言ってくれれば、男のヒトにも合いそうな匂い、あたしが選んであげたのに♪』



ニオイ、というモノは、芸能界では軽視されがちらしい。

外見や音声と違って、メディアで拡散することが難しいのと、
そもそも嗅覚がダメになってる人が世の中に多い――鼻はデリケートで、すぐ鈍る器官だしね――ので、
大勢の人に効果的に訴求するモノを作りにくいんだそうな。

あたしのプロデューサーも例外じゃない。
ニオイについてプロデューサーが気にしてることと言えば、体臭予防ぐらい。

『それに、せっかく香水の勉強してくれてるトコ悪いけど……
 キミのニオイは、素が一番あたしの好みだよ♪』

そんなプロデューサーが、いきなり香水をつけるようになったから、
何事かと思ってたんだけど、あたしの仕事を取るために勉強してくれてたんだね。

あー、そーゆーことなら嬉しいなぁ、もー!



『でもー、今キミがつけてる香水はちょっとヘンかなぁ。女のヒトみたいだよ……そうだ!
 キミがサンプルになってくれるなら、あたし、男のヒト向けの香水も考えてみよーかな?』

プロデューサーが最近つけてる香水は、日によって種類がマチマチだけど、
全体的にフェミニンで甘ったるい。これ、汗とか疲労臭と混じると阿鼻叫喚になるよ。

それはいけない!
このあたしがついていながら、プロデューサーにそんな惨状を晒させるワケには……



『え? “何の話だ”って――ソレ、自分で着けてるわけじゃないの?』

プロデューサーは、不思議そうな顔であたしを見ていた。
が、それも一瞬。すぐに手をポンと叩いて、“ああ、匂い移りしたのか”とか言い出した。

『ちょっと待てキミぃ……その“匂い移り”してるの……明らかに女モノ、だよね』



ふーん、そーかー。

プロデューサーは、あたしほど鼻が利かないから、“匂い移り”には気づかなかったけど
“匂い移り”するようなコトされた覚えは、あるんだね……。

『ねー、プロデューサー』

穏やかじゃないねー。
あたしの知らないニオイを、プロデューサーがプンプンさせるなんて。



『近いうちに、あたし、プロデューサーのための香水を作ったげるよ。
 だから、絶対つけてね。絶対だよ?』


「……って言ったのに、プロデューサー、あたしのお手製、着けてくれなかったんだよー!」
「志希。あなた、プロデューサーが女モノの香水つけてるのはおかしい、って自分で言ったわよね」

「うん。で、マキノちゃんに渡したコレ、作ってあげたの」
「あなたの香水も、どちらかと言えば女モノよね。おかしくないかしら?
 自作の香水を着けて欲しいなら、もっと男性に合う匂いを……」



「……だってぇー、あたしのニオイって、こんな感じなんだもーん♪
 コレ着けてもらえば、あたしが近くにいない時でも、
 プロデューサーにマーキングできると思ってさー」

「志希。ちょっと失礼」
「ひゃっ……まっマキノちゃんっ!? あっ――」



「――ふむ。単体で嗅げば、確かに近い気はするけど。
 プロデューサーの体臭と混ざったら、匂いが変わってしまうのでは?」
「ううっ……あんなトコやこんなトコまでマキノちゃんに……
 なんだよー! ちょっとドキッとしちゃったじゃないかー!」」

「双方の認識に、埋め難い齟齬があるようね。帰っていいかしら」
「い、いや。何でもないですマキノさん、ハイ」



「だいたい、いい大人のプロデューサーが、
 18だかそこらの女の子の匂いさせてたら、それこそアブナイでしょう」
「……でもー、だからって、あたしのプロデューサーにニオイつけるなんてー」

「あなたって、私が思ってたより独占欲強いのね」



「んー……例えば、ね。マキノちゃん。キミの付き合ってるヒトが、
 ある日、見慣れない小物を持ってたとするじゃない?
 それで、話を聞いてみたら、知らない女の人からもらったモノだってさ……」
「…………」
「ねー! 気になるでしょう?」



「気になるのは理解できるけれど、マーキングは明らかに論理が飛躍していると思うわ」
「くっ、さすが理論派……」
「あなたの志向が理論を逸脱しているだけよ。度し難いわ」



「あたしは……今でこそ、割と頑張ってアイドルやってるんだけどさ。
 元々アイドルにキョーミあったわけじゃなくて、プロデューサーに一本釣りされたから、
 このプロダクションでアイドル始めたんだよね」
「聞いた話によると、一本釣りというか、プロデューサーに釣られに行ってたらしいわね」
「まぁね」

「で……プロデューサーは、あたしに色々アイドルのコト教えてくれて、
 あたしは今までになかった自分の魅力を、プロデューサーにいっぱいもらった。
 マキノちゃんトコも、そんな覚え、あるでしょう?」
「そうね。元々アイドルに深い関心はなかったという点で、私もあなたと同じだった」

「それから、あたしはプロデューサーに変えられちゃった。
 前は、容姿を云々されることがあったって、気にも留めなかったのに、
 今じゃ、数えきれないファンに向けて、ステージの上から目一杯愛想振りまいてる」
「志希は、すっかりアイドルらしくされちゃったのね」

「そーそー。しかも、そうやってアイドルらしくしてるのが、何だかんだ言って楽しいんだよ」
「それはいいこと、ね」

「でも、楽しい理由は……
 あたしをアイドルとして面倒見てくれてるのがプロデューサーだから、って思うんだ」



「アイドルは、結局ファンの大部分を、顔も名前も知らないママ終わっちゃう。そんなヒトたちだよ。
 それでも、アイドルやってファンの歓声浴びて嬉しい! ってあたしが思えるのは……」
「……志希のアイドルとして見せる姿が、好きな人と作り上げたモノだから、ってことかしら」
「マキノちゃんも、自分のプロデューサーのコト考えると、そーゆーフシ、無い?」
「それは……」

「……どうかしら、ね。あの人と、私」
「まぁ、マキノちゃんについては、もし話したくなったら言ってよ♪
 今日のおかえしだと思って、あたしが聞いたげる。ヒトに聞いてもらうのは、いいコトだよ」



「プロデューサーは、さ。あたしに“アイドルとしての姿”をくれた。
 だから、あたしも何かプロデューサーにあげたい。これぞあたし、というモノを。
 より贅沢を言うなら、そのモノがプロデューサーをさらにステキにしちゃう、なんてモノだとスゴくいい!」



「……志希。目的は理解できたけど、あの香水という手段はムリがあると思うわ」
「うぅ、ダメかぁ」



「……マキノちゃん。自分で言ってて思ったんだけどさ」
「何かしら?」



「あたしは“プロデューサーに、色々アイドルのコト教えてくれて、
 今までになかった自分の魅力を、プロデューサーにいっぱいもらった”って言ったよね」
「ついさっき、言ってたわね」

「……それって、プロデューサーのおシゴトとして、当たり前のことだよね」
「えっ」

「……当たり前とは、いくらなんでも過小評価ではないかしら」
「マキノちゃん。あたしのプロデューサーは只者じゃないんだよ。
 他の担当の子とか見てても、そーゆーコト、サラッとこなしちゃうんだ。とんでもないよね」
「……まぁ、あなたがそう言うのなら」



「だから、プロデューサーがおシゴトの一環としてあたしに触れてるのを、
 あたしが勝手に惚れた腫れたって、はしゃいでんのかなー……なんて思っちゃう時、あるんだ」
「…………はぁ」


「志希。確かに、感情はギブ・アンド・テイクといかないものよ。
 私はこんなにあなたのことを思っているのだから、
 あなたも私のことを思って……とか、当人だけの論理ね」
「マキノちゃんの視点から、そう冷静に言われると、
 自分がひどく身勝手な人間に思えてきちゃうね……」
「…………」


「けど、身勝手でも、あたしは……」



「尻込みもいい加減にしなさいよ、志希」



「し、尻込みって、マキノちゃん……?」
「ごめんなさいね。志希がさっきからウジウジと、らしくないものだから、つい……」

「私は口下手だから、キツイ言い方になってしまうかも知れないけど、よければ聞いて……。
 “自分がプロデューサーを好くのと同じぐらい、プロデューサーにも自分を好いてもらいたい”
 ……と、あなたは思ってるんでしょう? でも、プロデューサーの気持ちが読めない」
「……うん……」

「だから、香水を持ちだしてプロデューサーにマーキングして、
 鼻で気持ちを分かるようにしたかった……いや、分かったような気分になりたかった」

「そう……かも、ね」
「ダメよ、それじゃ」
「うっ……」



「たとえ知るのが怖くても、好きな人のことなら、知らずにはいられないわ。
 それが、その人の気持ちなら尚更。しかも志希、あなたは頭が良くて堪え性が無い。
 いつまでもひとりでウジウジしてられる性格じゃないでしょう」

「……マキノちゃんの言うとおり、だね……。あたし、らしくなかったよ!
 知りたいのに、分からないコトなら、確かめないと!」





「志希……もし、知りたくないことを知ってしまったら、私が慰めてあげるわ。
 一応、私にもあなたの背中を押した責任はあるし」
「なんか立ち直りそうになったら、出鼻くじいてきたー!?」
「だって、あなたのプロデューサーについては……私、よく知らないから」



「ところで、マキノちゃん」
「……まだ何かあるの?」

「さっきの“好きな人のことなら、知らずにはいられないわ”ってセリフ……
 すっごくキモチ篭ってたけど、もしかして、マキノちゃんの実体験?」



「……志希」
「……なぁに?」

「私の言ったこと、忘れなさい」
「とんでもない、こんなありがたーいお言葉を! あたし、覚えたら死んでも忘れなーい!
 むしろマキノちゃんの受け売りとして、みんなに広めちゃおうかな♪」


(おわり)


読んでくれた人どうも。

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