雪歩「真美ちゃん、そ、その、お話が………あります」 (19)

真美ちゃんと一緒に遊園地へ行ったあとの帰り、分かれ道で。

またね、って言って分かれ道を進もうとした真美ちゃんの手を掴み、よくある分かれ道での告白さながら話を始めました。

でも、それは例え話ではなく今の状況そのもの。

真美「ど、どったの、ゆきぴょん?急にマジメな顔して」

真美ちゃんはとても驚いているようです。しかし、心なしか真美ちゃんの頬や耳がだんだん赤くなっているように見えました。

まるでこの後に続く言葉がわかっているかのように。待っているかのように。

雪歩「私、ね」

真美「…………うん」

雪歩「………………」

言葉が詰まります。でも、言わなきゃ。

シンプルに、正直に、はっきりと。

ぎゅっと勇気を振り絞り、なんとか声帯を震わせ、一言。

雪歩「……ま、真美ちゃんのこと……」

そしてなぜだか、二言目は思ったよりもあっさりと出てきたのでした。

雪歩「好き」

言った途端、真美ちゃんの顔がぶわぁっと赤くなり、それと同時に顔をうつむけてしまいました。

……ドキドキします。生まれて始めての愛の告白です。

それも、女の子から女の子への、イレギュラーな。

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言うことは言ったので、私は真美ちゃんからの返事を静かに待ちます。

依然顔は俯いたままで、きっと必死に色々考えているんだな、というのがひしひしと伝わってきます。

少し経って、真美ちゃんの口が微かに動きだしました。

真美「ほ…………」

真美「……ほんと?」

想定外の三言目を言うことになりそうです。けれども、そこまでは困りません。答えは決まっていますから。

雪歩「……うん、本当だよ」

そう言うと、今度はさっきよりも早く真美ちゃんが答えます。

真美「じゃ、じゃあっ」

何でしょう?どこが好きなのか、でしょうか?沢山ありすぎて言い切れないくらいです。

しかし真美ちゃんが言ったのはそうではありませんでした。

真美「ちゅー、して」

雪歩「えっ!?」

思っていたよりも遥かにハードルが高いです。ちゅー、つまりキスです。

真美「ま、真美のこと、好きなら、ちゅーしてよ」

少し顔を上げて、上目遣いで言ってきました。

なんて効果的なお願いなんでしょう。私はすぐに真美ちゃんに近付きます。

雪歩「ほ、ほんとにいいの?真美ちゃん……」

真美「た、確かめるだけ。ゆきぴょんが、ホントに真美のこと好きなのか……」

真美ちゃんは全てを私に委ねて、立ちつくしています。

なら、私もそれに答えなくちゃ。

雪歩「……わかった、真美ちゃんがそう言うなら」

ゆっくりと、両手を肩に乗せます。ピクッ、と真美ちゃんの体が震え、私もどんどん緊張してきました。

ごくり。

けれど真美ちゃんは俯いたまま。どうすればいいでしょう。

「上向いて」………ちょっとナンセンス?じゃあ、こうかな。

雪歩「私を見て」

真美「ん。…………んうっ」

返事をして顔を上げ、顔がはっきりと見えるようになった瞬間に真美ちゃんのくちびるを奪いました。

キスしていたのはほんの2,3秒程度でしたが、くちびるを離す時は惜しむようにゆっくりとしていて、とろけるような余韻がありました。

キスを終えてもなお、お互いの顔は近付いたまま。

至近距離で見る真美ちゃんの顔はなんだかいつもより一層綺麗に見えて、さらに少しとろーんとした目は私にちょっぴりイケナイ気持ちを与えていました。

真美「ゆきぴょん」

そう言って私の背中に手を伸ばし、そのまま自分が引き寄せられるかのように私に抱きついてきました。

あまりの事態に言葉が出ませんでしたが、真美ちゃんはそのまま続けます。私の耳元で、ささやくように。

真美「真美も、好き」

ばくばくばくばく、と心臓がものすごい速さで動き出します。

もしかして、密着している分、真美ちゃんの心臓の動きも伝わってきているのでしょうか?

よくわかりません。よく考えられません。

お互い何も言わず、ただ耳元で吐息を感じるだけです。

す、すごく恥ずかしい……!

どうしよう、どうしよう……………と、考えているうちに真美ちゃんがギブアップをしました。

真美「も、もう無理っ!!」

抱きしめていた腕を離し、そのまま一歩後ろへ下がって、真っ赤な顔を隠します。

真美「こ、こーゆーの、……やっぱ恥ずいね………」

全くもって同意見でした。

雪歩「そ、そうだね………」

中学生の男女が告白をした後のようなもどかしい空気の中、なんと切り出せばいいかわかりません。

真美「……っあ、あのさ」

こんな時でも、真美ちゃんは流石です。話を途切れさせないよう、とっさに自分から話しはじめました。

真美「その………えと、いつから、とか………なんで、とか………教えて?」

もじもじしながら聞いてきたのは、いつから真美ちゃんが好きなのか、なんで好きになったのか、ということのようです。

正直に言うのは少し恥ずかしい。でも、真美ちゃんもきっと同じくらい恥ずかしいんだろうと思い、正直に答えることにしました。

雪歩「え、えっと……いつから、っていうのははっきりわからないけど………いつも元気で、キラキラしてて、なのに私みたいな暗い子にいつも話しかけてきてくれて、素敵だな、って……」

雪歩「………思ってたら、いつの間にか見かけるたびにドキドキするようになってて……ああ、好きってこういう事なんだなって、気付いたの」

真美「そ、そうだったんだ………なんか、ちょっと嬉しいかも」

雪歩「あ、でも」

ふと、前から気になっていたことを、とても恥ずかしい暴露の締めに話してみようと思いました。

雪歩「真美ちゃんの背がどんどん伸び始めてきた頃、しょっちゅう背比べに誘ってきたよね。その時、顔が少しずつ近くなってきて、もしかして真美ちゃんも、とは思ってたんだ」

真美「…………~~っ!」

真美ちゃんが急に目を見開きます。おや、この反応はひょっとして。

真美「あ、あんね、最初は普通に背比べしたかっただけなんだよ!でも、ゆきぴょんの事意識するようになってからは、ちょ、ちょっとだけ、そういうのは狙ってたり…………してた、かも」

図星のようでした。

真美「あ!あとね、ゆきぴょんは暗いんじゃなくて、大人しい……ってゆーか大人っぽい感じっしょ?」

雪歩「お、大人っぽい……?そ、そんなことないと思うけど……」

それに、大人しいというよりは地味です。

真美「だってさ、ほら、真美っていっつもドタバタしてるし、元気ーっ!って感じのイメージっしょ?」

真美「んでも、ゆきぴょんはなんていうか、何しても画になる?みたいな感じで、やっぱそういうの憧れちゃうなーって」

照れます。すごく照れます。も、もうやめて、真美ちゃん。

と思っていたところで。

真美「隣のシラスは青く見える!みたいな!」

きっと真美ちゃんも狙っていなかったであろういきなりのギャグです。さっきまでの緊張した空気もあって、思わず吹き出しました。

雪歩「真美ちゃん、シラスじゃなくて芝生」

真美「ありゃ、そだっけ?」

雪歩「ふふっ」

気付けば、なんとなく緊張も解けていました。まるでいつも通り会話しているようです。

話している内容は、普段絶対に言わないようなことばかりですけどね。

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