マダラ「月の眼計画と言ったな、あれは嘘だ」(25)

月の眼計画――――
輪廻天生の術による俺、うちはマダラと十尾の復活。
十尾の人柱力となってその膨大なチャクラで幻術を月に投影し、
全ての人々を幻術の世界に引き込み理想の世界を創る――
まあ、今しばらくはオビトに動いてもらってはいるが――



オビト「……………………一旦、結界を止めるか――――」



消えゆく結界。歓喜する忍連合軍の勇士たち。
これでまた、ナルトを僅かながらでも援護できる。
ナルトと一緒に戦える。忍たちは皆、そう思った。



――しかし、つかの間。――



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………バキバキィッ………!!!

忍「!?」

あれは何だ。植物のようだ、木遁の術か何かか。

――いや、違う。あんな巨大でおぞましい術など、誰一人として知らない。

呆然とする中、幹は太く、太くなり、四方八方に根のようなものを伸ばし、
更に更に規格外の大きさになってゆく。

その頂の高さ、100メートル、200メートル、いや300メートル、
未だ止まらず――っ!!こ、これは――。



次々と忍たちが掻っ攫われ、吹っ飛ばされていく。それでとどまらない。



忍「ぎゃああああああああぁぁぁァァァ――――」

あちらこちらで断末魔が響く。

縛られれば最後、ナルトから貰うことのできた九尾チャクラごと、
生命チャクラを根こそぎ奪われ、命を落としていくのだ。



一瞬にして優に百の命が散った。

逃げる人々。止むことのない追撃。止むことのない、悲鳴。

忍「に、逃げろ……!こいつ、チャクラを一気に吸収しちまうぞ!
  逃げないと死ぬぞ!」

枝、1本1本がまるで意志を持ったかのように、忍連合に容赦なく襲い掛かる。

忍「こ、こんなのありかよ!一人一人確実に生きてるオレ達を狙ってんだ!」

思わず出てしまう、弱音。

ビー「な、なんでオレだけなんでこんなに多いんだ、バカヤローコノヤロー!!」

牛鬼「これが神の樹……その名も神樹だ!十尾の最終形態だ!!
   お前のチャクラが他の奴らより多いって分かってやがったんだ。
   これじゃ……ナルトが皆に渡したチャクラも意味がねェ!」

どうしようもない、性能。

柱間「むっ!こ……こいつはいったい何ぞ!?」

さしもの柱間も、思わず呻く。キッと相手を睨みつけるが、その相手は涼しい顔で。

マダラ「本来チャクラとはこの神樹のものだ!ここにある全てのチャクラ……
    そしてお前の莫大なチャクラもな」

柱間「何!?」

驚く柱間の無知をあざ笑うそぶりを見せつつ、彼は続ける。

マダラ「かつて神樹からチャクラを奪ったのは人の方だ……。
    コレはそれを取り返そうとしているだけだ!」

柱間「何の話だ!」

マダラ「……果てしない時の流れは本来の事柄に霧をかけていく……
    なぜ、忍が生まれたか、知っているか? 柱間」

柱間「…………」




マダラ「――まだ人がチャクラというその概念すら持たぬはるか昔……
    その時でさえ――人は互いに争い続けていた」


   ヒュゥゥーーーー…………




マダラ「ジャガイモはそんな争いに関わる事なく、ずっと人々から神の植物として崇められてきた……
    そしてある日……」






柱間「……………………うん?」

オビト「……………………は?」

マダラ「……どうした柱間?ついでに、オビト」

柱間「おぬし、今なんと?」

マダラ「二度言わせるな。つまりだ、ジャガイモはそんな争いに関わる事なく、
    ずっと人々から」

柱間「……し、神樹とやらの話が何故にジャガイモの話にすり替わる?」

マダラ「やれやれ、そんなことも分からないのか……
    柱間細胞とまで権化扱いされていながらの体たらく、失望したぞ」

柱間「」

柱間(キョロキョロ)

柱間「おーい、ちょっと誰か通訳頼もー(半泣き)」

ナルト(分身体)「どーした、初代のおっちゃーん!手間かけさせんなよー!」シュパッ

柱間「だって、こいつが訳の分からない事言うんだもん…」ショボーン

マダラ「フン、まあこの馬鹿でもいいだろう。
    ……お前、ジャガイモの芽や緑色の皮層には毒があることを知っているか?」

ナルト「……帰るってばよ」

柱間「ちょ、ちょっと待つぞ、頼むから!!」

ナルト「なんでよ――。そりゃあいくら俺でも知ってるけど、
    それがどうしたって言うんだってばよ!」

マダラ「ジャガイモは知っての通り生産性の素晴らしい食材として重宝されてきてな。
    連作障害が起きやすく病気にもやや弱いが、寒冷地ややせた土地でも育つ。
    すぐ増える上に高カロリー。調理も容易だ。幾度となく飢饉を救い、
    昔から人々に神の植物として崇められてきた……
    おっと、ちなみに一般に食す部分は果実ではなく塊茎と呼ばれる地下の茎だからな、
    くれぐれも間違えるなよ」ドヤァ

ナルト「お、おう……(こいつウゼェ)」

マダラ「今ほど食料生産に余裕がない時代、食料生産性はそのまま戦の勝敗に直結した。
    そんな折、争いに勝つため連作障害の問題を解決して、
    ジャガイモの生産量を一気に増やそうと禁断の遺伝子組み換えに手を付け食した姫がいた。
    その姫の名は『大木カグヤ』。生物学および遺伝子工学に関して逸脱した頭脳を持つ
    彼女の品種改良によって、通常の2倍以上大きいジャガイモを
    それまでと同数だけ収穫できるようになった」

柱間「た、大木……」

ナルト「…へ、へえ…よ、よかったってばよ」

マダラ「しかしカグヤは、大きくしただけジャガイモの自衛能力が高まり、
    ソラニンを始めとする芽の毒が強まってしまうことに気付いた。
    無毒化させることも試みたが、ジャガイモの成長のしやすさの方にしわ寄せがきて、
    せっかくの収穫量が激減してしまう。
    仕方なく、間違って芽を少々食べても致死には至らない程度の毒に抑えられる範囲で、
    ジャガイモの大きさをできるだけ大きくしようと自ら食して身を挺してまで研究を続けた」

柱間「う、うむ」

マダラ「3倍の大きさにしたところ、芽のお浸しを5 g食べただけで3日3晩下痢が続き周囲から冷やかされた。
    7倍の大きさになった頃には、芽のフライを3g食べた瞬間に意識が飛んで、
    気が付いたら台所で倒れていて1週間が経っていた」

ナルト「…………何がソイツをそこまで駆り立てたんだってばよ」

マダラ「そして、10倍にしたとき……
    そろそろ食材としての有用性限界だろうと分かり切ってはいるが、
    引くに引けなくなったカグヤが憔悴しつつも調理しようとすると――
    ジャガイモが振り下ろした包丁を通さなくなった」

ナルト「えっ」

柱間「えっ」

マダラ「訳の分からないまま20倍にすると自律して転がって動けるようになった。
    興味が勝ってきて30倍にすると肉弾戦で人がタイマンで殺されるようになった。
    ……50倍にすると数個解き放つだけで町1つが滅んだ。

    そう、凝縮に凝縮を重ねたジャガイモの芽の毒は、
    チャクラという凄まじいエネルギー体として昇華され、
    経絡系にチャクラを流す今の忍のようにジャガイモに力を与えたのだ。
    チャクラという言葉の由来も、『倉にある茶色』、すなわちジャガイモだ」

ナルト柱間「「」」

マダラ「強引に鉄器で砕いてなお歯や胃腸をボロボロにされながら、
    カグヤは泣きながら毎晩毎晩芽を食べ続けた。
    膨大な保存食料と新たな力を得た姫は人々の争いをたった一人で治めた。
    それが……最初にチャクラを持った人間だった。
    ――やがてカグヤに子ができると、その赤子は生まれながらにチャクラを
    その身に宿していて、ついでにジャガイモ畑の開拓が生きがいだった――」

オビト「」

柱間「なんと……」

ナルト「うっそだー!?」

マダラ「――だがチャクラを取られたジャガイモの枝葉や種イモは、
    驚くことに本格的に自身の意思を持ち、チャクラを取り返そうと
    動き突然変異を伴いつつ暴れ出した。……それが十尾だ。
    そしてそれを止めたのがカグヤの子だった。
    大木歯衣…鎧を纏う歯でジャガイモの強さを気にせず食い荒らして反撃しつつ、
    チャクラの教えを説き忍宗を始めた忍の祖……北道仙人と呼ばれた男だ」



ナルト(おい九喇嘛、テメエなんで黙ってたんだ)ジトッ

九喇嘛(い、いや。ワシもツユと知らんぞ……)アセ

牛鬼(そうだぞ、俺たちは何も知らねえ。9体の尾獣として分かれたときから北道仙人がくたばるまで、
   それなりに時間があったが、農作業に勤しむ姿なんて一度たりとも見た事…)

ナルト(…………それ、さっき言ってた連作障害避けの休耕期にたまたまぶつかったんじゃ?)

九喇嘛牛鬼(( そ れ だ ))

ビー(休耕という事実へ思考が急行、尾獣の2人はまさに窮口、イエー)シャキーン

ナルト「えーっと、俺ってば頭は悪いんだけど、要するに、だな」

柱間「今しがた忍連合に襲い掛かるあの神樹とやらの正体は……」

ナルト柱間「「――ドでかいジャガイモの成れの果て?」」

マダラ「そうだが?今や幻術をも使いこなすまさに神の大木だ、すごいだろう」フフン

ナルト「そうだが?じゃねええええええっ!でもジャガイモすげえええっ!!」

マダラ「驚くのはまだ早いぞ、ナルト。月に向かって伸びていく一輪の花が、あるだろう」

ナルト「え?あ、ああ。確かにあるってばよ」

マダラ「あれはな、カグヤが削ぎ落とし損ねた唯一の芽が、
    カグヤを憎みに憎んで月を破壊せんと少しでも近づこうとしているそうだ。
    あっはっは、中々カグヤもウッカリ屋だとは思わんか?
    ジャガイモの芽1個忘れたばかりに虐殺・幻術用不沈兵器の降臨だ」

ナルト「どうでもいいってばよ!?ってか、それじゃあお前が月を利用する意味ってなんなんだ!」

マダラ「月に瞳術が映るわけないだろう、阿呆か。効果なら神樹単体で十分だ。
    本当は『ジャガイモの芽計画』だったのを、ダサいとオビトに笑われそうだったもので、
    適当に話をでっち上げて泣く泣く『月の眼計画』にしたまでだ。お前はオビトよりは賢いな」

オビト「」

オビト「――――――――っ!マダラーーッ!!お前、よくもっ!!」

マダラ「?どうした、そんなにキレて。お前にはお前のやることがあるだろう。
    だいたい、恩恵をたっぷり受けていながら神樹の侮辱をするということなら
    お前も容赦はしない」

オビト「……おん、けい?何の、ことだ?」

マダラ「北道仙人が後世に残した芽…いや眼の力が3つある。
    樹の脈を読み取り適切な処置を施すことで長生きさせる百眼。
    真円を見極め切り倒した時の商工業的価値判断が円滑にできる車輪眼。
    そして、模様から長期的な成長過程を読み取り今後に活かせる年輪眼だ。
    これらのおかげで世界の文明は一気に発達したと言えるだろう」

柱間「今でいう白眼、写輪眼、輪廻眼だとか申すのではなかろうな、わっはっは!」

マダラ「ビンゴだ」

柱間「…………えええええ~」

オビト「」バタッ

ナルト「あ、倒れたってばよ」

マダラ「案山子を畑に突っ立たせてリンの力でジャガイモを育てている夢でも見るといい」

柱間「……どうして、そんなことを……お前が……!?」

マダラ「うちはの石碑に記されていることだ。
    争いを止めるために禁断の遺伝子組み換えに手を付けた『人』が……
    その後、どうなってしまったか、説明がいるか?
    そう、何も変わらなかった。それどころかさらに食料争いは凄惨になったのだ。
    オレはそれを知って絶望した。この世界に本当の品種改良は無いのだよ、柱間!
    その手段に手を付けた時より、人は呪われ……より憎しみ合う事を決定づけられたのだ!
    忍そのものがその愚かさを象徴する存在だとは思わないか!?」

サスケ(馬鹿が…トマトなら病気に強いものを…)

ナルト(そういう問題じゃねえよ。あと、実はそこまで病気に強くないってばよトマトは)

サスケ(……そうか)チョット ショック

柱間「全然思わんぞ。というかお主、そこまで植物が好きだったのか」

マダラ「樹はいいぞ、柱間ァ。
    見ているだけで心が癒され、登るだけで腹が満たされる。
    昔から、植物を愛でる奴は大物というではないか。
    お前の木遁も素晴らしいものだ、そうだろう」ポワワーン

柱間(ビクッ)

マダラ「…ゴホン、口が滑った。お前ら、一つ言っておく。
    どうせ、与太話としか思っていないだろうが、
    ジャガイモに従うというのも滑稽さを一回りさせて乙な物だろう。
    忍は術の腕ではなく家庭菜園の腕を競い、各家庭に盆栽が並び、
    皆が明日の天気についてでも語りながらのどかに微笑んでいる。
    ナルト、お前は最強の庭師になって世界中に力を認めさせればいい。
    どうだ、まさに平和、理想郷だと思わないか?
    ちなみに俺は旬の食材を絶妙に活かして皆に振る舞う料理人になりたい」

ナルト「ぜっっったいに嫌だってばよ!!オビトの目指す幻想も御免だけど、
    そんなフザケた植物のフザケた幻術に囚われるのも当然断固拒否っ!!だってばよ!!」

マダラ「でもお前の趣味ってガーd」

ナルト「それ以上いけない」

柱間「ジャガイモに頼った力が……幻術が……
   お前の言っていた『さらに先の夢』だってのか!」

マダラ「……ああ。ほんの少しも違わない」コクコク

マダラ「このジャガイ……ゴホン、神樹のつぼみが開花した時、
    花の中の眼が天頂の月に映るわけでもなく、無限月読は完全となる。
    そして、それを為すのは…このオレだ。料理人の座は譲れん」

柱間「とりあえず、未知の植物ではなくジャガイモの派生というのであれば策はあるやもしれぬ!
   誰か、植生に詳しいものを急ぎここへ――」

ナルト「お、おう!まかせてくれってb――」






マダラ「あいにく――駄目だな」

柱間「えっ」

ナルト「そんなのっ!お前に決められる筋合いは、ねえっ!!」

マダラ「……あー、いや。そういうことではなくてな」

ナルト「じゃあ、なんなんだってばよ!!?」

マダラ「聞いてなかったか?俺やオビトの采配とか気分次第とかではなく、
    ジャガイモは――」

ナルト「……ジャガイモは?」

マダラ「アニメ的引き伸ばしを決して許さない程度には」

    ―――――キラッ!!
――――育成スピードが、速いのだよ―――

柱間「あっ」

    ――――ピカーーーーッ!!!!

ナルト「う、う、うわああああああああああああああっ!!」

オビト「……ハッ、り、リーン!!!」

サスケ「ポテト、トマト……この戦争が終わって結婚して、
    俺に子供ができたら、サラダって名前、付けるんだ……ハ、ハハ……」

世界は、幻術に、飲み込まれた――――

マダラ「無限(ジャガイモ)つく(る)よみ(なで)…完成――」

                        ~BAD END~

  普通におしまい。
  アニメを見て衝動的に書きました。すいません。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2023年04月10日 (月) 04:38:36   ID: S:fpS_no

面白かったwwジャガイモwww

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