山下達郎「職種に関わらず真面目に働いてる人が一番偉い」 (23)

僕はアーティストという言葉が好きではありません。
知識人とか文化人といった、上から目線の「私は君たちとは違う」と言わんばかりの呼称も全く受け入れられない。
名が知られていることに何の意味があるのでしょうか。
市井の黙々と真面目に働いている人間が一番偉い。それが僕の信念です。

昔からハワイやアジアなどの海外公演の誘いがたくさんありましたが、全く興味がありません。
そんな時間があったら、日本のどこかで真面目に働いているファンのために演奏し、歌いたい。
それが僕に課せられた責務だと思っています。

指物師が尺も何も使わずに目分量で切って、ビシッと寸分違わず枠をはめるとか、
グラインダーの研磨の火花でアンチモンが何%入っているか分かるとか、本物の職人技を見ると心底感動します。
きっとそういう職人たちは有名になることにはこだわりがないでしょう。人の役に立つ技術を自分の能力の限り追い求めているだけ。
それが仕事をする人間の本来の姿だと思います。

僕も姿勢は職人です。作った曲が誰かに喜んでもらえればそれでいい。
この社会は職種に関わらず、懸命な仕事人の働きによって回っていると思います。

 「夢は必ずかなう」という言葉が独り歩きしている時代ですが、僕は「夢はかなわない確率のほうがずっと高い」と思う人間です。

ですから、懸命に努力し、その結果夢がかなわなかった時にはどうするのか、それをも想定して仕事をするべきではないか。

「夢」は魅力的で力があるけれど、あくまで結果であって、夢を最初から暴走させてはいけないのです。

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