歩美「今は遥か、遠い彼方」 (214)

歩美「......ここ、どこだろう?」

......また、いつもの夢。

歩美「誰もいない......。コナンくーん?哀ちゃん?光彦君?元太君?博士?」

......もう、何回目だろ?この夢。

歩美「......みんな、どこいったの?寂しいよぅ」

......多分、そろそろ。

灰原「歩美ちゃん......」

歩美「哀ちゃん!どこ行ってたの?みんなは?」

灰原「......」

歩美「哀ちゃん?」

灰原「......歩美ちゃん。あのね」

歩美「何?哀ちゃん?」

......やっぱり、おんなじ。でもこの後が。

灰原「あのね......」

「○○○○○○」

......やっぱり、分からない。

歩美「哀ちゃん?なんて言ったの?哀ちゃん?!」

灰原「......」ニコッ

歩美「哀ちゃん......?」

灰原「......」クルッ

歩美「どこ行くの?哀ちゃん......?待って......」

「哀ちゃん!!」


歩美「......」ムクッ

歩美「......やっぱり、夢」

歩美「また、あの夢かぁ......」

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歩美「また、哀ちゃんが何を言ってるか分からなかったなぁ」

そう。また。私はずっと同じ夢を見続けてる。

1人ぼっちの私の前に哀ちゃんが来て、何かを話しかけて来る。

でも、なんて言ってるか分からない。

その内、哀ちゃんは寂しそうな顔で微かに笑って何処かに行っちゃう。

そこでいつも目が覚める。

歩美「......何でいつも、あの夢を見るのかな」チラッ

独り言を呟いた後、机の上を見る。

そこには、みんながいる。

少年探偵団のみんなと博士。蘭お姉さんやおじさん。園子お姉さんや高木刑事や佐藤刑事達。

あの頃のみんなが写った写真が。

あの頃のみんなは、今はもう私の側にはいない。

......只1人を除いては。

これは、私の想い出を巡るお話。

そして、少しだけ私が前に進む為のお話。

そう。ちょっと大人になる為の、小さな小さな物語。



歩美「......はぁ。学校行く準備しなくちゃ」

写真を見てぼーっとしてたけど、ふと我に返る。

そう。学校に行かなくちゃ。

もっとも、今私が通ってるのは小学校じゃない。

今私が通ってるのは......。

歩美「おはよう、ママ」

歩美母「あら、おはよう。眠そうね」

歩美「うん。ちょっと......」

歩美母「早く準備しないと、遅刻するわよ?もうすぐテストなんでしょ?頑張らないと」

歩美「うん。分かってる」

歩美母「来年には大学受験だしね。早いわねぇ」

歩美「うん。ホントだね」

そう。今の私はもう来年に大学受験を控える歳。つまり高校生。

歩美母「他の子達は、どうするのかしらね」

歩美「みんな悩んでるみたい」

歩美母「そう。まあ無理もないかもね。そう言えば、あなたの昔のお友達はどうしてるかしらね」

歩美「うーん、分かんないよ。ずっと会ってないし」

そう。分からない。小学校以来、みんなとは会ってないのだから。

歩美母「そう。あ、ごめんね。遅刻するって急かしといて長話して」

歩美「大丈夫だよ。ちゃんと間に合うから」

と、言ったけど急がないと。

急がないと、待たせちゃう人がいるから。




歩美「......準備良しっと」

ママとの話を終えて、急いでご飯を食べて身支度をする。

何とか予定通りに家を出られそう。

歩美「急がなくちゃ。あ、いけない」チラッ

慌てて部屋を出ようとしたけど、机の上の写真を見て立ち止まる。

歩美「いってきます」

みんなに向かって挨拶する。これが毎日の私の日課。

もう10年近くになる、私の日課。

歩美「......さ、行こ!」

「いってらっしゃい」

歩美「えっ?」クルッ

誰かの声がした気がしたけど、振り返っても誰もいない。

歩美「......気のせいかな」

でも、気になる。あの声は......。

歩美「......あ、いけない!急がなきゃ!」

気になるけど、後で考えよう。

とにかく、今は急がなきゃ。

歩美「いってきまーす!」

歩美母「いってらっしゃい」

家を飛び出し、時計を確認。

歩美「ギリギリかも、怒られちゃうよ」

さっきも言ったように、私には待ち合わせをしてる人がいる。遅れるわけにはいかない。

歩美「......それにしても、さっきのは何だったのかなあ」

走りながら、部屋での出来事を振り返る。

微かに聞こえた気がするあの声。

あれは......。そうだ。哀ちゃんの声だ。

歩美「......あの夢もそうだけど、どうして最近こんなに哀ちゃんの事が気になるんだろ?」

歩美「……ずっと、会って無いからかな」

そう、私はずっと哀ちゃんに会って無い。

いや、昔の友達にも全然会っていない。

あの頃……。少年探偵団としてみんなと遊んだ頃からもう10年近く経つ。

その間、みんなとの接触は殆ど無い。

あれ程一緒だったのに、今では電話1本交わす事も無い。

小学校を卒業するまではまだチラホラ遊ぶ事はあったけれど、卒業してからは全然会う事も無くなってしまった。

仲が悪くなった訳では無いし、特にケンカをしたりした訳でも無い。

でも、自然と私達は疎遠になっていった。

ある日の出来事によって。

あの時……。

プップップーッ

歩美「えっ?!」

突然クラクションが鳴った。

いつの間にか考え込んでいる内に足が止まっていたらしい。

しかも横断歩道の真ん中で。

歩美「ご、ごめんなさい!」

いけないいけない。しっかりしないと。今は目的地に行くのが最優先。

それにしても、道の真ん中で止まってしまうなんて。

余程朝の夢が気になってしまっているのかな。

歩美「そうだ、話してみようかな……」

そうだ、待ち合わせ場所に着いたら話してみよう。

あの人に。

昔のみんなと疎遠になった中で、今も只1人私の傍にいるあの人に。

歩美「とにかく急がなきゃ。もうダメかな……」

ボーっとしていたせいで余計に時間を喰ってしまった。

間に合うと良いけど……。




歩美「ハァ、ハァ、着いた……」

さっきの場所から全力で走って、どうにかたどり着いたけれど……。

目的地に人の気配は見当たらない。

歩美「遅いから、もう行っちゃったのかな……」

「遅かったな、歩美」

歩美「あ……」

「もう行っちまうところだったぜ」

歩美「ゴ、ゴメンね……。コナン君」

コナン「珍しいな。オメーが遅刻するなんてよ」

歩美「ホントにゴメンね……」

コナン「ま、良いさ。俺もついさっき来たばかりだしよ」

良かった。コナン君、待っててくれたんだ。

コナン君。昔のお友達で、今も唯一私の側にいる人。

そして、私の大好きな人......。

歩美「ちょっとね、寝坊しちゃって。ごめんなさい」

コナン「だから気にすんなよ。さ、行こうぜ」

歩美「うん」

ホントは寝坊じゃないんだけど。

朝の話、今しようかな?

歩美「あ、あのね。コナン君......」

コナン「......」

歩美「コナン君?」

コナン「......ん?あ、ワリー。どうした?」

歩美「う、ううん。何でもないよ」

コナン「そっか」

歩美「コナン君こそ、何か考え事?」

コナン「......ま、ちょっとな」

歩美「そっか。大丈夫?」

コナン「ん?ああ。平気さ。気にすんな」

......また何か、考え事してたんだ。

いっつも、何考えてるんだろう?

知りたくて、側にいるのにずっと分からない。

コナン「......おい、置いてくぞ」

歩美「あ、待って!」

分からないまま先に行っちゃう。昔っからそう。

少し位、待ってて欲しいのに。

少し位、私の事を見て欲しいのに。

コナン「......大丈夫か?」

歩美「え?」

コナン「何かここに来た時から疲れた顔してるけど」

歩美「う、うん。大丈夫だよ?」

コナン「......そうか」

......でも、こうして気にかけてくれる時もあるから。ガマンしなきゃいけないかな。

コナン「......」

歩美「......」

......あれから学校に向かって歩き出したけど、会話が続かない。

もう慣れた、いつもの事なんだけど。

いつの頃からか、これが当たり前になっちゃった。

ホントはたくさんお話したいのに......。

コナン「......着いたな」

歩美「う、うん」

まごまごしてたら、学校に着いちゃう。

これもいつもの事。

いつも1歩が踏み出せないこんな距離が、子供の頃から続いてる。

歩美「また、ダメだった」ボソッ

コナン「何か言ったか?」

歩美「ううん。何でもないよ」

何気無い会話すら気軽に出来ない距離が、いつの頃からか見える様になってしまった。

あの頃の......。少年探偵団の頃の私達ならそんな事は無かったハズなのに。

コナン「急ぐぞ。遅刻しちまう」

歩美「うん」

変わってしまったから、なのかな。

私も......。そして、コナン君も。





結局校舎に入っても大して会話もしないまま、教室に着いた。

朝見た夢の話は、出来ないまま.

>>12訂正

最後の行
出来ないまま.→出来ないまま......。

コナン「ギリギリ間に合ったな。入るぞ」

歩美「うん」

仕方無い。今は時間が無いし、後にしよう。

遅くなっちゃったのは、私のせいなんだから。

歩美「おはよう」ガラッ

鈴木「あ、歩美ちゃん。おはよー」

仲村「おはよー!遅かったね?」

歩美「う、うん。ちょっとね」

鈴木「愛しのコナン君と、何かあった?」ニヤリ

歩美「ち、違うよぉ!!」

仲村「冗談だよ、冗談!」

......朝からクラスメートの手荒い歓迎。

この2人は入学した頃からのお友達だし、冗談だと言うのは分かってるんだけど。

......私自身がコナン君にキチンと伝えてない気持ちを大声で言うのは止めてほしい。

鈴木「あ、コナン君も来てたんだ。おはよ!」

コナン「ああ」スッ

鈴木「相変わらず素っ気ないねぇ。歩美ちゃんの王子様は」

歩美「だから止めてってば!」

恥ずかしさもあるけど、それよりも鈴木さんの素っ気ないね、と言う言葉が胸に響いた。

昔のコナン君は、そんな事は言われる人じゃなかった。

クラスの誰とも打ち解け、明るさとリーダーシップで何処にいてもみんなの中心になる人だった。

でも今は、そんな面影は感じられない。

今のコナン君は、昔とは全く違う人に見える。

目立つ事や人に近づく事を極力避けて、静かに静かに生きようとしてる様に見える。

段々と快活さを失うコナン君を心配して何とか理由を知りたかったけど、結局それが分からないままにここまで来てしまった。

仲村「全く。頭もルックスも良いのに。あれでもう少し人当たりが良ければねー」

歩美「ちょ、ちょっと不器用なだけなんだよ?とっても優しくて良い人なんだよ?」

鈴木「分かった分かった。朝からノロケないでよね」ニヤリ

歩美「だから違うってば......」

キチンとこの2人にコナン君が好きだと相談した事は無いのに。

私、そんなに分かりやすいのかな......。

ガラッ

担任教師「はい皆さん、席に着いて下さい。ホームルーム始めますよー」

歩美「あ、先生来ちゃった。後でね!」

鈴木「うん」

仲村「後でね」

そう言って席に向かいながら、コナン君の方を見る。

コナン「......」

虚ろな眼をしながら、空を見つめてる。

あの視線の先に、コナン君は何を見てるんだろう?

あの遥か先に、コナン君は......。





数学教諭「えー、では教科書152Pの続きから......」

ホームルームが終わり一時限目の授業が始まる中、私は朝の夢の件も含めて考え事をしていた。

何故あんな夢を見るのか?

何故それがこんなに気になるのか?

歩美「......うーん、分からないなぁ」チラッ

なんて呟きながら、隣のコナン君を見る。

席が最近席替えで隣合わせになって、こうして自然とコナン君を見れるのはちょっと嬉しい。

......変かな、私。

コナン「......」チラッ

なんて考えていたらコナン君と目が合った。

心臓がドキッとする。

コナン「なあ、歩美......」

話し掛けて来た!ドキドキが強くなって来た......。何だろ?と期待してたら......。

コナン「横、見た方が良いぞ」

歩美「え?」クルッ

振り向いたら、そこには......。

数学教諭「吉田。さっきから呼んでるんだが」

歩美「え、あ、あの......。すみません」

数学教諭「真面目なお前が珍しいな?具合でも悪いのか?」

歩美「い、いえ。ごめんなさい」

数学教諭「まあたまにはボーッとする時もあるのは分かるが、しっかりしろよ」

歩美「はい......」

数学教諭「良し。じゃ、続きを鈴木!」

鈴木「はーい」

......怒られちゃった。バカだなあ、私。

コナン「ボーッとしてるからだ」

歩美「うう......。先生呼んでたなら教えてくれても良いじゃない」

コナン「そりゃ悪かったな」フッ

そう言って微かに笑うと、コナン君はまた黒板の方に目を向けた。

歩美「......子供扱いされちゃった」ハァ

こんなだからいつまでもコナン君に相手されないのかな。

相手にされない、か。そうだ。そうかも知れない。

ふと思い付いた。何故私はあんな夢を見るのか。

それは......。あの夢が私の悩みに全て直結しているからかも知れない。

コナン君は何故変わってしまったのか。

私はそれに対してどうすべきなのか。

そして何よりも単純に......。夢に表れた哀ちゃんは今どうしているのか。

その全ての悩みが、あの夢に詰まっている気がした。

歩美「……やっぱり、このままはヤだなあ」

そう、ずっとこのままモヤモヤし続けるのはイヤだ。

自分の事も、コナン君の事も。

歩美「お昼休み、やっぱりコナン君に相談しよう」

そう小さくつぶやいて、私は顔を上げた。

……また先生に怒られたくないから。





キーンコーンカーンコーン……

英語教諭「お、チャイムが鳴ったか。今日はここまで」

やっと終わった。普段なら大して辛く感じない授業も、お昼休みを待つとなると凄く長く感じる。

鈴木「ねえ歩美ちゃん、一緒にご飯食べよ?」

歩美「あ、ゴメンね。私ちょっと用事が……」

仲村「そっか、ザンネン」

歩美「また明日ね、ゴメン」

お友達の誘いも断り、コナン君の所へ向かう。

また緊張して来た、誘いに乗ってくれるかな……?

歩美「コナン君、ちょっと良い?」

コナン「ん?どうした?」

歩美「あ、あの。ちょっと相談したい事があって。良かったらそのついでにお昼ご飯一緒に食べない?」

コナン「……ああ、いいぜ」

歩美「ありがとう」

コナン「んじゃ、どうする?人目につかない方が良いのか?」

歩美「え?あ、うん」

コナン「んじゃ、屋上行くか」

歩美「う、うん」

勇気を振り絞り誘ってみたら、意外な程すんなりOKしてくれた。

ちょっと嬉しい。

歩美「えへへ......」

コナン「何ニヤケてんだよ?悩みがあるんじゃねーのか?」

歩美「え?!あ、うん。その......」

コナン「変なヤツだな。さ、行くぜ」フッ

歩美「うん」

また鼻で笑われた。

でも今日はこうして相手をしてくれて嬉しい。

このまま全部上手く行くと良いなあ、なんて淡い幸せを感じてしまっていた。この時は。

でも......

それはすぐ崩れてしまう。ほんの僅か後に。

私が、触れてはいけないモノに触れたから......





ガチャッ......

コナン「お、誰もいねーな。珍しく」

歩美「ホントだね」

屋上に着いて辺りを見回すと、コナン君の言う通り誰もいない。

いつもはこの時間人でいっぱいなのに。

神様が私にちょっと力を貸してくれたんだろうか。

コナン「んじゃ、先にメシ食うか?」

歩美「う、うん!」

そうだ。話をする為の口実にご飯に誘ったんだった。

話をする事しか考えて無かったけど、良く良く思えばコナン君と2人でご飯食べるの何時ぶりかなあ。

コナン「よっと。歩美も座れよ。あ、汚れっから止めとくか?」

歩美「ううん。大丈夫」

私から誘ったのに、そんなの嫌がってられないもんね。


コナン「んじゃ、頂きますっと」

歩美「あれ?コナン君、ご飯それだけ?」

コナン君のお弁当を見ると、パンが1つにジュースとカロリーゼリーだけ。

とても足りる様には見えない。

歩美「お腹空いちゃうよ?それだけじゃ」

コナン「大丈夫だって。俺はこれ位で充分......」

グゥー......

コナン「あ」

歩美「あっ」

コナン「......」

歩美「......うふふ、やっぱりお腹空くよ。それだけじゃ」

コナン「......ワリー。実は弁当忘れてさ」

歩美「はい」スッ

コナン「え?」

歩美「私の、ちょっとあげる」

コナン「いや、それは良いよ」

歩美「良いから、ね?」

コナン「......じゃ、ちょっとな。ありがとう」

歩美「ううん。遠慮しない食べてね」

......コナン君、可愛いな。

まだこんな部分。ちゃんとあったんだ。

私にはそれがとても嬉しい。

コナン「......うん。旨いな」

歩美「本当?」

コナン「ああ、ホント」

歩美「良かった。口に合って」

......ほぼママが作ったのは内緒にしよう。

コナン「こんだけ料理出来りゃ、良い嫁さんになれんな」

歩美「えっ?!」

唐突な発言にびっくりした。

お嫁さんって......。コナン君、ひょっとして......?

コナン「良いヤツが見つかると良いな、歩美」

歩美「あ、そ、そうだね......」

一瞬期待した分物凄く凹んだ。

コナン君のバカ......。

良い人なんて見つかる訳無いじゃない。

あなた以外に......。

これだけ長く一緒にいるのに、何とも思われて無いのかなぁ......。

歩美「はぁ......」

コナン「ん?どうした?」

歩美「ううん。何でも」

いけないいけない。目的を忘れちゃってた。

私は悩みを話に来たんだから。

でも、この雰囲気を壊すのもやだなあ。

出来るだけ、然り気無く話題を持ってこう。

歩美「......でも、久し振りだね」

コナン「ん?」

歩美「コナン君と一緒にご飯食べるの」

コナン「ん、ああ。そうだな」

ここまでは良かった。

楽しい雰囲気のままいられた。でも......

歩美「......何だか懐かしいね」

「昔みたいで」

コナン「......!」

歩美「......コナン君?」

コナン君の顔色が変わった。昔みたいと言うワードを聞いた瞬間に。

歩美「どうしたの?コナン君?」

コナン「あ、いや。何でもねぇ。何でも......」

と、コナン君は言ったけど明らかに顔色が悪い。

コナン「......で、歩美。話って何だっけ?」

歩美「え?」

コナン「何か相談があるんだろ?」

歩美「う、うん」

どうしよう。こんな状態のコナン君に話をして良いのかな?

歩美「でもコナン君、何だか具合悪そうだよ?」

コナン「大丈夫だ。気にするな」

気にするな、と言われても無理だけど......。

でも、こう言ってくれてる以上は話さなきゃ。

歩美「う、うん。あのね?その、ちょっと聞いたら変に思うかも知れないけど」

コナン「......思わねーよ」

口調も重い。本当に大丈夫かな......。

一瞬悩んだが、意を決して私は話を始めた。

歩美「私ね、最近夢を見るの。おんなじ夢を毎日」

コナン「......夢?」

歩美 「うん。夢なんかで悩むなんてバカみたいだけど、どうしても気になるの」

コナン「まぁ、おんなじ夢を何度も見るなら気になるのは分かるが。どんか夢だ?」

歩美「うん。夢の中で私は、子供になってるの」

コナン「......で?」

また顔色が......。

歩美「その、子供の私は夢の中でひとりぼっちで......。みんなを探してるの」

コナン「......みんな?」

......イヤな感じがする。これ以上喋っちゃいけない様な。

歩美「うん。コナン君は勿論。博士とか、光彦君とか元太君、それに......」

ダメ、何故か分からない。でも言っちゃダメ!!

「哀ちゃん」

コナン「......!!!」

その瞬間。哀ちゃんの名を聞いた瞬間。

コナン君の顔は真っ白になった。

正に、蒼白に。

歩美「コナン君......?!大丈夫!?」

コナン「う、ぐっ......。はぁっ......」

凄く苦しそうな息をしている。

身体も震えてる。

歩美「コナン君、大丈夫!?」

コナン「ぐ、ぁ......」ガクッ

遂に腰が砕け、膝を着いてしまった。

歩美「コナン君っ?!」

コナン「う、うぅ......」

歩美「コナン君、しっかりして!!」

コナン「だ、大丈夫だ......。騒ぐな」

口調はハッキリしてるけど、汗が凄い。

震えも止まっていない。

歩美「で、でも」

コナン「大丈夫だ、心配させたな」スッ

そう言うとコナン君は立ち上がり、フラフラ歩き出した。

歩美「コナン君、大丈夫!?1人で行かないで......」

そう言ってコナン君に触れた瞬間......。

コナン「触るな!!」バッ

凄い勢いで振り払われた。

痛くは無いけど、そのスピードに身体が硬直してしまった。

歩美「......」

コナン君は、固まって動けない私を見て一瞬しまったと言う顔をした後、一息ついてこう言った。

コナン「......済まない。今日はこれでやめにしてくれ」

歩美「う、うん」

コナン「それから......。俺の前でアイツの名前を出さないでくれ」

歩美「あ、哀ちゃんの......?」

コナン「そうだ」

何故哀ちゃんの名前をそんなに嫌がるのか。

止せば良いのに、どうしても気になってついしつこく聞いてしまった。

歩美「な、何で?」

コナン「......」

歩美「何で、なの?」

コナン「......」

本当は、ここで止めようとした。

返事が無いのだから、もう止めようと。

でも、私の内側から溢れ出るモノがそれを阻んだ。

きっとこのコナン君の沈黙と、私の悩みは繋がっている。そう感じた。

でも、何よりももっとシンプルに。

返事が欲しかった。

何でも良いから。

私を見て、私に返事をして欲しかった。

もっとこっちを見てよ。

もっと声を掛けてよ。

私に意識を向けてよ。

そんな子供の様なワガママが急に顔を出してしまった。

歩美「ねぇ、どうしてなの?」

コナン「......」

歩美「哀ちゃんの名前を聞いて、何でそんなに不機嫌になるの?」

コナン「......」

歩美「哀ちゃんはお友達でしょ?何でお友達の名前を聞いて、そんなに不機嫌になるの?」

コナン「......」

歩美「どうしてなの?どうして教えてくれないの?哀ちゃんと何があったの?」

コナン「......」

歩美「答えてよ?私の悩みも、哀ちゃんが関わってるんだよ?」

コナン「......」

歩美「それに、コナン君が変わっちゃったのも......。何か関係あるんじゃないの?」

コナン「......」

歩美「ねぇ、答えてよ!」

何故私はこんなにコナン君に捲し立ててしまったんだろう。

人が答えにくい事を何度も聞くなんて、失礼な事なのに。

ひょっとしたらそれは、嫉妬だったのかも知れない。

私よりも大人びて、かっこよかった哀ちゃんへの。

そして、今この場にいないのにコナン君の心の深くにいる哀ちゃんへの嫉妬だったのかも知れない。

......だとしたら私、最低。

歩美「......どうしても答えてくれないの?」

コナン「......」

歩美「......バカ!コナン君のバカ!」

コナン「......」

歩美「何で何にも言ってくれないの?!ずっと、ずっと側にいるのに!!」

コナン「......」

歩美「悩みがあるなら、話してくれても良いじゃない!!私はコナン君の何なの?!お友達じゃないの?!」

コナン「......」

いつの間にか、自分の悩みを話すハズがコナン君の悩みを聞き出す事に目的が変わってしまった。

自分でも分かる程、気が動転してしまっていた。

そして、その勢いで私は......。

歩美「......もう良いよ。私はコナン君にとってどうでも良いんだ」

コナン「......」

歩美「コナン君は、自分の事しか考えて無いんだ。だから何も話してくれないんだ」

コナン「......!!」

歩美「コナン君なんて、コナン君なんて」

「だいっきらい!!」

......言ってしまった。

言ってはならない、決定的な1言を。

コナン「......」フッ

その言葉を聞いた瞬間、コナン君は微かに笑った。

ほんの一瞬。とても、寂しそうに。

そして、その笑みを見た瞬間に私も我に返った。

でも、もう遅かった。

コナン「......ゴメンな、歩美」

歩美「え、あ、あの......。私、そんなつもりじゃ」

コナン「いや、良いんだ。歩美の言う通り。俺は......。オメーの側にいるべき人間じゃあ無いんだ」

歩美「コナン、君......?」

世界が滲んで見える。

コナン君の寂しそうな声を聞いて、自然と涙が出てくる。

ああ、私は何て事をしてしまったんだろう。

でも時間は戻らず、更に後悔は加速する。

コナン「......元々俺は誰の近くにもいちゃダメなんだ。でも、歩美がいてくれるのが嬉しかったからついつい突き放せなかった」

歩美「......」ガタガタ

身体が震えだした。今度は私の。

私にとって1番言われたくない事が、コナン君の口から出る様な気がしたから。

そして、その通りに。

コナン「でも、ここまでだ。俺の罪にオメーを巻き込む訳にはいかない」

歩美「つ、み......?」

コナン「今までありがとな、歩美。でももう俺に関わるな。もう俺の事は考えるな。自分の事だけを考えろ」

歩美「......」ポロポロ

声が出ない。何と返事をして良いかも分からない。

コナン「......じゃあな。悩み、聞いてやれなくてゴメンな」

そう言ってコナン君は振り返り歩き出した。

待って、と言いたかった。

コナン君の言っている事は全然分からなかったけど、それでも呼び止めたかった。

でも、コナン君の辛そうな背中を見たら声が出なくなった。

とても、踏み込めない。

そう思ってしまった。

過ぎ去って行くコナン君を見つめながら、私は泣き続けた。

声も出さず、ただ立ち尽くし泣き続けた。

自分で引いた引き金の結果は、最も私の望まない形を招いた。

私は考えも纏まらず途方に暮れたまま、涙を流し続けた。

大きな喪失感だけが、私を包み込んでいた。





ポツッ

歩美「......!」

雨の雫が顔に当たる冷たさに、私は我に返った。

下を見れば、雨では無く涙の跡が点々と連なっている。

歩美「......コナン君」

取り敢えず現実に戻ったけれど、未だに頭の中はグチャグチャだった。

これからどうしたら良いのか。

今まで何をしていたのかすら、あやふやな状態だった。

そんな虚ろな意識でふと時計を見ると、もう昼休みも終わりに近づいていた。

歩美「......戻らなきゃ」

そう呟きお弁当を片付けて、教室に向かった。

さっきまでこのお弁当を2人で食べて楽しい時間を過ごしていたハズが、何故私はこんなに悲しい気持ちでいっぱいなんだろう?

そう思うとまた泣きそうになる。

でも、腫れた眼から涙が出る事は今日はもう無かった。

余りにも長い時間、泣き続けていたから。

歩美「謝らなくちゃ」ボソッ

そうだ、謝らなくちゃ。

コナン君に酷い事言っちゃったから......。

歩美「急がなきゃ!」

なるべく早く。休み時間が終わる前に。

謝りたい。仲直りしたい。

どうかコナン君、私を許して欲しい。

許されなくても、とにかく謝りたい。

私のワガママで、コナン君を傷付けてしまったのだから。

急いで、私の脚。

この気持ちが引っ込んでしまわない内に。

ズルズルと無かった事になる前に謝らなくちゃ。





歩美「はぁ、はぁ......」

屋上から全力で走ったせいで息苦しい。

でも休んでる時間が無い。

歩美「すぅー......はぁー......」

1度深く呼吸をして、教室のドアを開けた。

ガラッ......

緊張してドアを開けた私を待っていたのは、予想していない光景だった。

歩美「あ、れ......?」

コナン君が、いない。

私より大分先に降りていったハズなのに。

鈴木「あれ?歩美ちゃん遅かったね?」

歩美「あ、うん」

仲村「珍しいね、こんなにギリギリに帰ってくるなんて」

歩美「うん、ちょっとね」

なんて他愛ない会話でお友達に出迎えられたけど、コナン君の事が気になって仕方無い。

一体何処へ?

鈴木「あ、そう言えば」

歩美「?」

仲村「伝言だよ、コナン君から」

歩美「え?」

鈴木「早退するからって。先生には言っとくって」

歩美「そ、そうなんだ」

早退......。そんなに気に障ってしまったのかな。

謝る事も出来ないまま、いなくなっちゃった......。

鈴木「歩美ちゃん達、一緒にいたとばっかり思ってたけど。違ったの?」

歩美「う、うん」

仲村「そっか。でもどうしたんだろ?」

私のせいだ。コナン君......。

歩美「......」

鈴木「あれ?歩美ちゃん眼、腫れてない?」

歩美「え?」

仲村「ホントだ。眼が真っ赤だよ?」

しまった......。泣き張らした顔のまま来ちゃったから......。

歩美「えっと、その」

キーンコーン......

鈴木「あ、授業始まるね。またね」

歩美「うん......」

タイミングが良いのか悪いのか......。

チャイムが鳴ってくれたので、席に戻った。

でも、隣にコナン君はいない。

歩美「コナン君、ごめんね......」

本人に伝えられないごめんねを呟いて、席に着いた。

もうそれから家に帰るまでの事は、覚えてない。

それ位、今日の事はショックが大きかった。

出来るなら今日1日をやり直したい。

家に着くまで、そんな事ばかり考えていた。

快斗「毛利蘭キモスギワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

白馬「毛利蘭キモイ」

平次「毛利蘭キモ過ぎやろ…」

新一「毛利蘭というストーカーツノドリルは逮捕されろ」

目暮「毛利蘭臭い うんこ毛利蘭」

名探偵コナンの蘭ってなんであんなにキモいんですか? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コナンの推理の邪魔するし、すぐ泣き出して空気重くするし、新一新一うるさいし、
キチ○イにしか見えないんですけど。新一が絡む時の蘭はほんとにキモい。


すみませんが、蘭肯定派の人は回答しないようにお願いします。

コナン「毛利蘭と毛利蘭のファンは死ね!」

阿笠「新蘭キモイ 」

世良「新一×蘭キモい 蘭死ね 新蘭キモい」

コナン「蘭ファンキモい」

光彦「蘭が好きなやつは韓流ドラマが好きなクソババア」

コナン「毛利蘭キモスギワロタwwwwwwwwwwwwww」

小五郎「毛利蘭死ね!キモい蘭」

園子「毛利蘭 コンクリート女子高生」

青子「毛利蘭 ブサイク 不人気 需要なし 早く死ね 消えろ」

快斗「毛利蘭のファンであるクソババアどもは早く消えろ 新蘭キモスギ うんこカップリング 菅野智之」

コナン「蘭キモい 蘭ブス」

光彦「不正投票でたった一週間で4位から1位になった毛利蘭と毛利蘭のファンキモスギワロタwwwwww」

元太「蘭ファンは首吊れよwww塩酸かけられろwwww蘭ゴリラww不正投票蘭死ね」

コナン「歩美ちゃん可愛すぎワロタwwwwwwwwwwww毛利蘭は死ね」

それが叶う事はないと、分かってるけれど。





歩美「ただいま......」

結局、何も状態の変わらないまま私は家に帰って来た。

友達に大丈夫かと聞かれた気もするけど、それすら頭に入っていない。

帰り際コナン君にメールしても見たけれど、返事が来る事は無かった。

歩美「......やっぱり怒ってるよね」

そうに違いない。あんな悲痛な顔のコナン君は見た事が無かった。

私はきっとコナン君の中の触れちゃいけない所に触れたんだ。

そう思うと余計落ち込んできた。

歩美「はぁ......」ガチャッ

溜め息混じりにドアを開け部屋に向かう。

ママは仕事からまだ戻らない。

歩美「......疲れちゃった」

自分の部屋に着いた瞬間、どっと疲れが来た。

起きてるのが儘ならないくらい、急に眠たくなって来た。

歩美「ダメだ、眠たいよ......」

フラフラした足取りでベッドに倒れ込む。

緊張の糸が切れたのか、一瞬で視界が暗くなる。

歩美「......」チラッ

殆ど眠った様な状態で机の上の写真を見た。

視界が霞んでほぼ見えなかったが、コナン君と哀ちゃんだけはハッキリ眼に入った。

歩美「哀......ちゃん......」

そうだ、哀ちゃん。

コナン君の態度が変わったのは、哀ちゃんの話をしてからだった。

あれは何故だったんだろう。何が2人にあったのかな......。

歩美「......」

その疑問を考える事も出来ないまま、私は眠りに落ちていった。

まるで何かに眠らされてるんじゃないかと言う位、凄まじいスピードで。

面白すぎる
スレタイにコナン入ってなかったから見つけるの苦労したけど
このスレは間違いなく 神 ス レ ですね☆

>>1は神だ!
このSSはサイコー!過ぎる!!!!
感動した!!!
ブラボー!!ゲラゲラボー!毛利蘭死ね!灰原可愛い!歩美可愛い!

歩美ちゃんと結婚したいよおおおおおおおおおおおお
歩美ちゃん可愛ええええええええ
かわええええええええSEXしたいななななななあああああ

哀とコナンの間に何があったんだああああああ
気になるンゴオオオオオオ
ガチで気になるンゴオオオオオオオオ

一体何があったんやあああああああああああああ

ぐう気になるンゴオオオオオオオオオオオオ

ガチで神SSでやんす

>>1は人間国宝、神、GOD


サイコーや!サイコーや!
大好き!
歩美かわええええええええええええ

「おやすみなさい」

完全に眠りに落ちる瞬間、また誰かの声がした気がした。





歩美「......ここは?」

ああ、また夢の中だ。何故か分かる。

歩美「......みんな、どこ?」

またいつもと同じ夢......。

コナン「おーい、歩美!」

歩美「え?」

元太「どこ行ってたんだよ?」

歩美「元太君......?」

違う。いつもの夢じゃない。いつもなら夢には哀ちゃんしか出てこない。

光彦「あ、歩美ちゃん見つかったんですね!」

歩美「光彦君......?」

みんな、いる。あの時のみんなだ。

この光景、見覚えがある。

これは......。昔みんなでかくれんぼをした時の......?

灰原「やっと全員見つかったのね」

歩美「哀ちゃん......?」

間違いない。これは昔の想い出の中だ。

灰原「じゃあ、次は円谷君が鬼ね」

光彦「はい!」

元太「時間かかったよな、歩美が見つからなくて」

コナン「随分探して見つからなかったのに、こんな所に突っ立ってたからビックリしたぜ?またどっかの車に乗ってっちまったかと思った位なのにさ。何処に隠れてたんだ?」

歩美「え?あ、あの。ないしょ!!」

懐かしい風景。夢の中と分かっててもホッとする。

でも、こんなリアルな夢ってあるんだろうか。

まるであの頃にタイムスリップしたみたいなリアルさだ。

それも気になるけど、それ以上に気になる事がある。

この風景。この時期、これは......。

光彦「さあ、始めましょう!50数えますから隠れて下さいね!」

コナン「よし、逃げるぞ!」

元太「おう!」

灰原「隠れましょう、吉田さん」

歩美「う、うん」

間違いない。あの日だ。

私達少年探偵団が離れ離れになる、その少し前の......。

その兆しの見えた日だ。

灰原「どうしたの?」

歩美「う、ううん。何でもないの」

光彦「40、41、42......」

灰原「いけない、こっちへ」グイッ

歩美「え、あの......」

この流れ、間違いない。あの日もこうやって哀ちゃんと一緒に茂みへ......。






灰原「......どうにか隠れられたわね」

歩美「う、うん」

やっぱりここだった。

あの時もこうやって強引に引っ張られて2人で。

まるであの日をリプレイしているみたい。

灰原「見つからないと良いわね」

歩美「そ、そうだね」

さて、これからどうなるんだったっけ......。

あれ?思い出せない......?

そうだ、おかしいな。

自分でさっきあれ程重要な日だと悟ったのに、哀ちゃんが何を話していたか......?

思い出せない......?

灰原「ねえ、歩美ちゃん?」

歩美「え?」

灰原「あのね......?」

歩美「......!!」

その瞬間、身体に衝撃が疾走った。

夢の中で衝撃が疾走ったと言うのはおかしいけれど、そうとしか言えない。

これは......。この流れは、いつも見ている夢の続き?

私は、いつも昔の記憶の一部分を夢として見ていた?

あの日の出来事を忘れてしまっていたけど、その一部分を思い出して夢として見ていた?

何故?何故忘れていたの?

何故このタイミングで全てを思い出しそうなの?

灰原「......あのね」

歩美「......うん」

目を覚まそうと思えば、覚めそうな気がした。

でも、止めた。

色々頭が混乱しているけど、ここを逃せば前に進まない気がした。

だから、私は聞いた。

哀ちゃんの言葉を。

いや......。忘れていた私自身を。

見届けて、前に進もう。

そう私が決心したと同時に、哀ちゃんは話を始めた。

灰原「あなたに、聞きたい事があるの」

歩美「聞きたい事......?」

そうだ、何かを聞かれた気がする。

凄く真剣に。

灰原「あなたは、江戸川君の事......。どう思う?」

歩美「え?どうって?」

混乱する頭が更に真っ白になる。

コナン君をどう思うって?

好きか嫌いかって事?

そんなの、哀ちゃんは知ってるハズなのに?

歩美「......」

灰原「答えにくいかしら」

それはそうだよ......。

何で哀ちゃんは分かりきってる事を聞くの?

それに、思い出して来た。

私は、あの時違う理由で答えを渋ったんだ。

あの頃、子供心に感じていたから。

コナン君と哀ちゃんの間に、とても深い何かを。

友達を越えた関係になっていると、感じていたから。

だから余計に答えにくかった。

灰原「突然こんな事を聞くのはびっくりするわよね。無理も無いわ。でも、どうしても聞きたいの」

歩美「......何で?」

灰原「......あなたが私にとって1番の友達だから、と言う理由では納得して貰えないかしら?」

歩美「えっ......?」

灰原「あなたが私にとって1番の友達だからこそ、聞いておきたいの。あなたが江戸川君をどう思ってるか。いえ、あなたが......」

灰原「江戸川君を、愛しているか」

歩美「えっ?!あ、愛?」

驚いた。それこそ、心臓が止まるかと思う程に。

哀ちゃんが私に1番の友達と言った事も、コナン君の事を愛しているかと聞いた事も。

それに何と答えて良いか、分からなかった。

でも哀ちゃんの真剣な眼差しを見て、私は重くなった口を開いた。

あれ程に真剣な人に何も言わないのは失礼だと、感じたから。

歩美「わ、私はコナン君の事......。大好きだよ?」

灰原「それは、一生を一緒に過ごしたい程に?」

歩美「......!!?」

そこまで踏み込むのかと驚いたけど、私は止まらなかった。

歩美「うん。ずっとずっと一緒にいたい位大好きだよ」

灰原「......そう」ニコッ

笑った。哀ちゃんが......。とても嬉しそうに。

でも、ちょっと悲しそうに。

灰原「これで安心ね......」ボソッ

歩美「えっ?」

恐らく哀ちゃんは独り言のつもりで呟いたんだろうけど、その言葉は私の耳に届いていた。

「これで安心ね」と。

歩美「あ、哀ちゃんそれどういう......」

そう質問しようとした瞬間。

「見つけましたよ!」

歩美「え?」

光彦「灰原さん、歩美ちゃん、見つけましたよ!灰原の姿が先に見えましたから、次は灰原さんが鬼ですね!」

灰原「あら。話してたら見つかっちゃったわね」クスッ

そうだ、そうだった。

あの時も理由を聞こうとして、光彦君に見つかって......。

灰原「じゃあ、後2人を見付けてきてね?円谷君。でないと鬼を交代出来ないわ」

光彦「分かりました!」

灰原「さ、見つかってしまったし。行きましょう?歩美ちゃん」

歩美「う、うん」

......聞きたい。

普段あまり呼ばない歩美ちゃんと呼んだ理由を。

何故さっきの様な質問をしたのかを。

これで安心ね、とはどういう事なのかを。

歩美「哀ちゃん!!」

振り向き歩いて行こうとする哀ちゃんを呼び止めようとした瞬間......。

世界が暗転した。

一瞬、眼が覚めたのかと思った。

でも違った。暗くなった後場面が切り替わり......。

歩美「......あれ?ここは?」

元太「どうしたんだよ、歩美?」

光彦「元気無いですよ?」

歩美「え、あれ?かくれんぼは?哀ちゃんは?」

元太「何言ってんだよ?」

光彦「今学校に着いたばかりじゃないですか?」

歩美「学校?」

そうだ。この景色は帝丹小学校の教室だ。

光彦「それに、灰原さんもコナン君もしばらく休んでるじゃないですか?」

元太「熱でもあんのかよ?」

歩美「休み......?」

そうだ......。あの後結局コナン君達もすぐ見つかって哀ちゃんに話を聞く機会が無くて......。

メールしようかと思ったけど、やっぱり直接聞きたくて......。

次の日聞こうと思ったら、その日からコナン君と哀ちゃんがしばらく休んで来なくなったんだ。

じゃあ、じゃあ今日は......。この場面はまさか......。

小林「はーいみんな!席について!」

元太「あ、先生来たな!」

光彦「じゃあ、また後で!」

間違いない。この流れ。

小林「えーと、授業を始める前に皆さんに残念なお知らせがあります」

「何だろ?」「残念だって」「どうしたの?」

教室にざわめきが響いた。

覚えている。この数分ははっきり覚えている。

小林「えー、皆さんのお友達でありこのクラスの一員であった灰原哀さんですが......」

忘れるハズがない。だってあの時......。

小林「ご家庭の事情により、急遽転校される事になりました」

私達少年探偵団の絆は、終わりを告げたのだから。

光彦「えっ......?」

元太「先生!何言ってんだよ!?」

小林「......みんなの残念な気持ちは分かります。私もショックを受けています。本当に残念です」

光彦「そ、そんな......」

元太「嘘だろ?」

そう。嘘であって欲しかった。

時期では無かったけど、エイプリルフールでした。とでも言って欲しかった。

でも、嘘じゃなかった。

更に......。

小林「......辛い所に申し訳無いけれど、もう1つ悲しいお知らせがあります」

元太「まだ何かあるのかよ?!」

光彦「元太君、落ち着いて!」

小林「......今日来ていない江戸川コナン君の事です。ここ暫くお休みしていましたが、今日連絡がありました。暫くの間、ケガの治療の為に入院するとの事です」

「えー!!」「どうして?!」

小林「詳しくはまだ分かりませんが、暫くは学校に来られないとの事です。本当に残念です......」

元太「コナンまで、どうしてだよ......?」

光彦「一体何が、何があったんですか!?」

お知らせです。
これより先、特定のキャラのファンの方には見辛くなりますのて
【閲覧注意】でお願いいたします。

聞こえる。みんなの疑問が。不安が。

哀ちゃんとコナン君に何が起きたのか分からずみんな想いを口にしていた。

でもあの時私は......。何も言わなかった。

言わなかったと言うより、言えなかった。

あまりにも突然に、信じられない事が起きたから。

疑問も何も浮かばないまま、呆然と小林先生を眺めていた。

でも、今の。夢の中の私は、ありったけの声で叫んでいた。

歩美「どうして......?」

歩美「どうして哀ちゃんはいなくなったの?!何も言わないで?!」

歩美「コナン君はどうして入院したの?!」

歩美「ねえ、どうして?!どうして!?」

歩美「どうしてなの!!!」

そう叫んだ瞬間、世界はまた姿を変え......。

歩美「......?」

重たい瞼を開いた先には、天井が見えていた。

歩美「......眼が覚めたの?それとも夢?」

頭がまだボーッとしている。夢か現実か、良く分からない。

確かめる為に軽く頬をつねってみる。

歩美「......いたい」

どうやら夢ではないらしい。

現実に戻って来たみたい。

辺りを見渡すと、すっかり暗くなっていた。

かなり長い時間、眠っていたみたい。

とりあえず起きようと頭を上げた瞬間、

歩美「頭が痛い......」

強烈な頭痛が襲った。

痛みに身体を起こす事が出来ず、またベッドの上に倒れ込む。

結局私は、痛みが引くまで寝ているしかなかった。

そんな私の横で携帯のランプがメールの着信を告げているのに気付くのは、少し後の事だった。





頭痛と闘いながら、私は夢で見た事を整理していた。

あれは間違いなく、私の記憶だった。

今まで部分的に忘れていた、昔の記憶。

歩美「......何で、忘れてたんだろう」

忘れていた、と言うのは少し間違いだ。

哀ちゃんが転校した事、その少し前にかくれんぼをした事。

それ自体は記憶にあった。

でも私の中からは哀ちゃんが告げた言葉等の記憶が、ぽっかりと抜け落ちていた。

歩美「どうして......?」

いくら頭を捻っても分からない。

私にとって哀ちゃんがどうでも良い存在だから?

いや、有り得ない。そんな事は絶対に有り得ない。

私、いや......。

私達にとって哀ちゃんが大事だったからこそ、私達は離れ離れになっていったのだから。






哀ちゃんが私達の前から何も言わず姿を消し、コナン君が入院してから私達の仲はおかしくなっていった。

元太君が中心となり少年探偵団の活動を続けようとして見たものの、リーダーシップを発揮していたコナン君とそれを影から支える哀ちゃんのいない状態ではそれも儘ならなかった。

あの2人がいたからこそ、私達は少年探偵団になれたのだと気付かされた。

あの2人がいない私達は、正に保護者を失ったただの子供だった。

何をしようか決まらない。

決まっても具体的な行動が定まらない。

それが本来の子供の遊びなのだろうけど、今まで出来た事がコナン君達を失った瞬間出来なくなった事に少なからず私達はショックを受けた。

だんだんと熱は冷め、普通に遊ぶ事すらあまりしなくなっていった。

それでも、せっかくの繋がりを簡単に手放したくなかった私達は行動を起こした。

まず阿笠博士の家に行った。

哀ちゃんは何故急にいなくなったのか、コナン君は何故急に入院したのか?

疑問を投げ掛けた。

しかし、博士の口からそれを教えてもらう事は叶わなかった。

今は話せない。コナン君の事もそっとしておいて欲しい。

博士はそう繰り返すばかりだった。

その顔があまりに悲しそうだったから、私達はそれ以上追求する事はしなかった。

いや、出来なかった。

小林先生と一緒に、コナン君が入院している病院にもお見舞いに行ってみた。

でも、入院中コナン君は1度も私達に顔を見せてくれる事は無かった。

真実を追求する術を失い、私達はますます塞ぎ混んで行った。

それでも私はあの時希望を持っていた。

コナン君が退院してくれば、きっと元通りになる。

哀ちゃんの事もきっと教えてくれる。

それまでちょっと我慢しよう。

そうすればきっと、元の楽しい時間が戻ってくる。

そんな淡い期待を抱いていた。

そしてしばらく経ち、コナン君が退院して来る日がやって来た。

でも、その日は嬉しい日にはならなかった。

私の淡い期待は、ものの見事に崩れ去った。

退院して来たコナン君は、まるで死人の様に見えた。

眼には光は全く無く、顔には生気は全く感じられなかった。

今のコナン君も明るいとは言えないけど、あの時に比べたら遥かにマシに見える。

その位コナン君は変わり果てていた。

余りの変わり様に、退院おめでとうの言葉より心配が口から出た。

歩美「コ、コナン君?大丈夫?」

コナン「......ああ」

声にも力は無かった。

何を聞いても、か細い......。声なのか呼吸なのか判断に迷う程の返事しか返って来なかった。

好きな人の傷付いた痛々しい姿に、泣き出すのを思わず堪えたのを覚えている。

そんなコナン君を見てしまっては、もう何も聞く気にはならなかった。

ただただ心配だった。

何故こんなに辛そうなんだろう。

何故こんなに元気が無いんだろう。

元気にしてあげたい。

コナン君を助けたい。

それだけを考えていた。

でも、あの2人は違った。

元太「おいコナン!大丈夫かよ?」

光彦「一体何があったんですか?こんなにボロボロになって」

コナン「......もねぇ」

光彦「え?」

コナン「なんでもねぇよ......」

元太「何でもねー訳ねーだろ!」

何でも無い、と突き放すコナン君に2人は激しく詰め寄った。

今思うと、あの2人が詰め寄った気持ちも分かる。

突然起きた出来事に納得が行かない。

知りたい、と思う子供らしいシンプルな気持ち。

それをあの年齢で抑えなさい、と言うのが無理だった。

でも、あの頃の私はそうは思えなかった。

コナン君を苦しめないで。

そっとしておいてあげて。

そう願っていた。

でも2人は止まらなかった。

元太「何とか言えよ、コナン!」

コナン「......」

光彦「黙ってちゃ分からないですよ!話して下さいよ!友達でしょう?」

コナン「......」

元太「返事しろよ!」

コナン「......」

光彦「何でいつも隠し事ばかり!灰原さんの事も知ってるのに隠してるんでしょう?」

コナン「......せぇ」

元太「あ?」

コナン「うるせぇよ......」

元太「何ぃ?人が心配してんのに」

コナン「頼んでねぇよ」

光彦「失礼じゃないですか!そんな言い方!」

コナン「......もうとにかく、俺に構わないでくれ」

元太「な?」

コナン「もうどうでも良いんだ。もう何もかもどうでも良いんだ......」

どうでも良いんだ。

そう呟いたコナン君の迫力に私達は圧倒された。

もの凄い重みのある声だった。

悲しみ・痛みの詰まったその声に、皆それ以上何も出来なかった。

そう、何も出来なくなった。

コナン君に対して、何1つ。





あの日以来、元太君と光彦君はコナン君に近寄りもしなくなった。

異物に触れる様な態度で、以前の様な友達付き合いは一切しなくなった。

子供の眼からは、年齢に似つかわしく無い暗いオーラを放つコナン君が恐ろしかったのだと思う。

事実、私も怖かった。

でも、私はコナン君から離れなかった。

素っ気ない態度で扱われても、返事もされなくても、コナン君の側に居続けた。

そんな私が元太君と光彦君は面白く無かったらしく、何度も忠告された。

もうコナンに関わるな、と。

でも決して私はコナン君と関わる事をやめなかった。

その内、2人は私にもあまり関わらなくなり......。

少年探偵団は、完全にバラバラになった。

学年が進むにつれクラス替えもあり、会う事そのものが激減した。

幸い、私はずっとコナン君と一緒だったがあの2人とは2度と同じクラスになる事は無かった。

中学校までは一緒の学校ではあったけど、結局1度離れた関係はなかなか近寄る事も無く日々は過ぎて行った。

そんなある中学校卒業を間近に控えた日、私はほぼ同タイミングで元太君と光彦君から告白の呼び出しを受けた。

既に高校進学を決めた時期で、コナン君と私は同じ学校だけど、2人は違う所に行く事が決まっていてその前に気持ちを伝えたい、との事だった。

行く事自体を断ろうと思ったけど、昔からの友達の願いだからと思い2人の話を聞いた。

でも、行くべきでは無かった。

確かに、2人が私に告げたのは愛の告白だった。

小さい頃から歩美が好きだった。

だから付き合って欲しい、と。

でも2人の眼にはそんな気持ちは感じられなかった。

あの眼には、呪いが詰まっていた。

どうせお前はコナンが好きなんだろ?

どうせ断るんだろう?

そんな感情がひしひしと伝わって来た。

きっと2人は、怨みをぶつけたかったのだ。

私とコナン君を直接怨んでいなくても、小さな頃からの想いを踏みにじられたやり場の無い怒りをぶつけたかったのだ。

そんな気持ちをぶつけられて、私の心は重く沈んだ。

もう分かってはいたけど、元のみんなには戻れない。

その事実が悲しかった。

私は2人に別れを告げ、2人の連絡先を携帯から消した。

ひょっとしたら、きちんと真摯に想いを伝えてくれていれば、例え気持ちに応えられなくても違った道があったかも知れない。

でも、縺れた感情によってその道は閉ざされてしまった。

今となっては、2人が何をしているのか知るよしも無くなってしまった。

それでも尚、私はコナン君に付いていった。

少年探偵団がバラバラになった原因の1つが私があの2人に眼を向けずコナン君だけを追い求めた事だとしても。

コナン君からの見返りが無いとしても。

私はコナン君の側にいたかった。

それだけで幸せだった。

この気持ちが報われなくても、目の前にコナン君がいる事が堪らなく嬉しかった。

そうして付いていく内、コナン君にもちょっとずつ変化が現れた。

僅かずつだが返事をしてくれる様になり、通学も一緒にしてくれる様になった。

その内、だんだんと私と接してくれる機会が増え遂に......。

笑ってくれた。

私が通学中、つまずいて転んだのを見てコナン君は笑った。

あまりにも何も無いところで転んだ様子が可笑しかったと言ってた。

そして、手を取って大丈夫か?と聞いてくれた。

嬉しかった。

本当に嬉しかった。

もう1度笑っているコナン君が見たい。

そう思い諦めず付いてきた。

あまりの嬉しさに、思わず泣いた私を見てオロオロするコナン君が、とても愛おしかった。

それをきっかけに、私には笑顔を見せてくれる機会が増えて行った。

人との付き合いはあまりしないけとま、私には素顔を見せてくれると思っていた。

少しずつ立ち直ってくれていると思っていた。

そして、何処かでちょっぴり......。

私に特別な気持ちを持ってくれていると思っていた。

でもそれは幻に過ぎず......。

私は今日、コナン君を傷付けてしまった。

大事な大事な人を、私は傷付けてしまった。

光彦「毛利蘭キモスギワロタwwwwwww」

歩美「毛利蘭キモスギワロタwwwwwwwwww」

元太「毛利蘭キモスギワロタwwwwwwwwwww」

コナン「バ、バーロー!笑えねえよ、このブサイクはなあ付き合ってもないくせに俺を束縛する人間の屑なんだぞ」

灰原「まあ、このツノドリルが人間なのか判断は難しいわよね」

コナン「素晴らしい事件だったぜ!はよ毛利蘭死ね」


コナン「流石に毛利蘭キモスギルwwwwwwwwwwwwww見てて不快なんだよ糞が毛利蘭死ね不正投票のゴリラ毛利蘭死ね」

コナン「なんで付き合ってもいないのに新一の彼女ズラしてるんだよwwwwww」

コナン「キモいストーカー女のクソツノドリル毛利蘭死ね!!!!」
コナン「流石に毛利蘭キモスギルwwwwwwwwwwwwww見てて不快なんだよ糞が毛利蘭死ね不正投票のゴリラ毛利蘭死ね」

コナン「なんで付き合ってもいないのに新一の彼女ズラしてるんだよwwwwww」

コナン「キモいストーカー女のクソツノドリル毛利蘭死ね!!!!」

コナン「毛利蘭と毛利蘭のファンは死ね!」

阿笠「新蘭キモイ 」

世良「新一×蘭キモい 蘭死ね 新蘭キモい」

コナン「蘭ファンキモい」

光彦「蘭が好きなやつは韓流ドラマが好きなクソババア」

コナン「毛利蘭キモスギワロタwwwwwwwwwwwwww」

小五郎「毛利蘭死ね!キモい蘭」

園子「毛利蘭 コンクリート女子高生」

青子「毛利蘭 ブサイク 不人気 需要なし 早く死ね 消えろ」

快斗「毛利蘭のファンであるクソババアどもは早く消えろ 新蘭キモスギ うんこカップリング 菅野智之」

コナン「蘭キモい 蘭ブス」

光彦「不正投票でたった一週間で4位から1位になった毛利蘭と毛利蘭のファンキモスギワロタwwwwww」

元太「蘭ファンは首吊れよwww塩酸かけられろwwww蘭ゴリラww不正投票蘭死ね」

歩美「コナン君......」

ああ、思い出すのも辛い。

あのコナン君の顔を。

哀ちゃんの名前を聞いた時のあの顔を。

あの頃の、退院した頃と同じ死んだ目と辛そうな顔を。

もう2度とコナン君のあんな顔は、見たく無かったのに。

歩美「ごめんなさい、ごめんなさい......」

ごめんなさい、コナン君。

私はただ知りたかっただけなの。

あなたが何故苦しんでいるのか。

それを知りたいと思う気持ちが強すぎたの。

そう、知りたいと。知りたいと......?

歩美「......おかしい、なあ」

知りたい、と言うワードが頭に出た瞬間にふと気が付いた。

いつの間にか、悩みの焦点がずれている事に。

そう、私は知りたい事がある。

だから悩んでいる。

でも、そのポイントは哀ちゃんに対してのモノだったハズなのに。

気付かないうちにコナン君の事ばかり考えている。

知らず知らず、私は哀ちゃんから眼を逸らしている......?

歩美「何で......?」

ひょっとしたら、私は喜んでしまったのかも知れない。

哀ちゃんも元太君も光彦君もいなくなって、コナン君しかいなくなった時。

「ああ、これで私だけがコナン君の側にいられる」と。

だから私は、他の事から眼を逸らしたんだ。

友達がいなくなった事、みんなバラバラになった事、色んな都合の悪い事から眼を逸らしてコナン君だけを追いかけた。

そして、都合の良い綺麗な想い出だけを頭に残して写真に毎朝行ってきますを言う様になったんだ。

想い出を大切にしていると言うポーズを、自分にする為に。

歩美「......そっか、そうだったんだ」

歩美「私、こんなにひどい人だったんだ」

ふと気付いた自分の歪みに、思わず独り言が出た。

自分はこんなに身勝手な人間だったのかとショックを受けた。

コナン君が好きな余り、1番の親友である哀ちゃんの存在すら自分の中から消そうとしていたのだから。

余りの情けなさに、乾いた笑いすら出てくる。

歩美「......こんな私だもん。コナン君が好きになってくれる訳無いよね」

ふと口を付いたその独り言が、今日の結果を正に表している気がした。

歩美「......もう、何もかもイヤになっちゃった」

そう、イヤになっちゃった。

コナン君にはきっと嫌われた。

私はコナン君に何もしてあげられない。

そればかりか、自分の事しか考えられない。

想い出すら都合良く書き換えてしまう様に。

歩美「もう全部忘れたい、コナン君の事も哀ちゃんの事も」

そう呟き、布団に踞ろうとした時......。

パタンッ......。

何かが倒れる音がした。

歩美「何......?」

ふと眼をやると、そこには......。

歩美「......写真?」

そう、音の原因は1枚の写真立てが倒れた音だった。

半分虚ろな意識でその写真を手に取る。

歩美「......!!」

驚いた。声をあげそうになった。何故ならばその写真は......。

歩美「哀、ちゃん......」

そう、その写真は哀ちゃんと2人で写っている写真だったから。

歩美「何か、私に言いたいの?」

歩美「私にどうして欲しいの?」

歩美「言いたい事があるなら、側に来てよ」

歩美「ねぇ、哀ちゃん。哀ちゃん......」

歩美「会いたいよ、哀ちゃん......。声を聞かせてよ」

私の口からは不意に先程までの諦めムードの言葉ではなく、素直な気持ちが溢れ出していた。

それと同時に、哀ちゃんに対する愛おしさが込み上げてきていた。

まるで、何年も抑えていたモノが溢れ出る様に。

歩美「哀ちゃん、哀ちゃん......」

写真を抱き締め、私は思った。

ああ、そうか。私は哀ちゃんをずっと大好きだったんだ。

でも、哀ちゃんは黙っていなくなった。

それを私は裏切りと感じた。

これ以上無い、酷い裏切りと。

その感情と、コナン君への愛情。

2つを持つ事は、幼い私には出来なかった。

だから、片方のみを。コナン君への愛情のみを残して、もう1つの気持ちを隠した。

でも、消す事は出来なかった。

だから、大きくなって心の土手が大きくなるに連れてそれが表に出てきた。

それが、ああ言う感じで出てきた。

でも、今の私はそれを上手く処理できないでいる。

歩美「......私は、どうしたら良いの?」

歩美「分からない、分からないよ......」

ダメだ。あまりに色んな事が頭に浮かび過ぎて分からない。

どうしたら、良いの?

途方に暮れかけた、その時......。

「バーロ......」

「真実はいつも、1つしかねーんだからよ......」

歩美「......!」

コナン君の口癖が、頭を過った。

歩美「真実は、いつも1つ ......」

そうだ。どれだけ混乱しても、分からなくても。

私の本当の想いは、1つしかないハズ。

歩美「......知りたい」

知りたい。全てを。過去にコナン君と哀ちゃんに何があったのか。

歩美「......会いたい」

会いたい。哀ちゃんに。会ってありのままの気持ちを話したい。

歩美「......言いたい」

言いたい。コナン君に。ごめんなさいと。そして、そして、ハッキリ言いたい。

受け入れられなくても、あなたが好きだと。

心から、大好きだと。

歩美「......じゃあ、逃げてちゃダメだよね」

逃げてちゃダメ。そう言えば、昔哀ちゃんとそんな話をしたっけ。

じゃあ、闘おう。動きだそう。

自分の真実に辿り着くために。

歩美「それで良いかなあ、哀ちゃん......」

ふと呟いた1言に、写真の中の哀ちゃんが笑ってくれた気がした。

歩美「でも、何からしたら良いのかなあ」

意気込みが決まったは良いが、何処から手を付けたら良いんだろう?

また悩みそうだな、と思った時。微かな光が眼に入った。

歩美「あ、着信?メール?」

今まで気付かなかったけど、誰かから連絡が来ているみたい。

携帯を手に取り、画面を確認する。

歩美「コナン君......?」

連絡は、コナン君からのメールだった。

そこには、こう書いてあった。




【今日は、済まなかった。本当に済まなかった。俺はしばらく学校を休む。悪いが俺の事は、もう忘れてくれ。本当に、済まない。俺は、オメーをもう辛い気持ちにさせたくない。どうか、俺に構わず自分の幸せを考えてくれ。さよなら。今まで、ありがとう】



歩美「......コナン、君」

綴られたメールからは、痛みと悲しみが伝わってきた。

さよならの文より、私はそれが辛かった。

だけど、その分を見て私が口にしたのは......。

歩美「ヤだよ!」

泣き言では無かった。

イヤだ。イヤに決まっている。

こんな一方的なサヨナラなんてイヤだ!

コナン君まで哀ちゃんみたいにいなくなるなんて、イヤだ!!

歩美「コナン君のバカ!!」ダッ

そう叫ぶと、私の脚は勝手に走り出していた。

行かなくちゃ。会えるアテは無いけど、行かなくちゃ。

コナン君の元へ。コナン君の家へ。

なんて考えながら、深く息を吸う。

とにかく息を落ち着けないと、倒れてしまいそう。

歩美「スー......ハー......」

何度か深呼吸をして身体が安定してきた。

俯いて荒い呼吸をしていた顔を上げ、コナン君の家を見つめる。

歩美「やっぱり、おっきいなあ......」

久し振りに見たけれど、やっぱり立派なお家。

辺りの暗さのせいもあって、威圧感すら感じる。

そのせいか、来たのは良いけどこれからどうしようと言う不安が改めてクローズアップされて来た。

歩美「私、そもそもずっとコナン君の家に入って無いし......」

そう、少なくともコナン君の様子がおかしくなった頃からこの家には近付いた事すらない。

プライベートの時間にコナン君と関わる事も少なかったし、家に寄り付ける事もさせてくれなかったから。

そもそも、何故コナン君が探偵事務所を出てここに住んでいるのかすら良く知らない。

そう思うと、あまりコナン君の事を良く分かって無かったのかなとちょっぴり悲しくなる。

でも今更帰る訳にも行かないし。どうしよう、と悩んでいると......。

「ん?もし、間違っておったら済まんが、歩美君では無いかね?」

歩美「えっ?」

懐かしい聞き覚えのある声。

ゆっくり振り向くとそこには......。

阿笠「おお、やっぱり歩美君か!久し振りじゃの!!」

歩美「博士......。お久し振りです」

やっぱり、阿笠博士だった。

コナン君の家の側に住んでるのは覚えていたけど、このタイミングで会えるなんて。

阿笠「いやあ、懐かしいのぉ!元気にしておったかな?」

歩美「は、はい」

阿笠「そんなに固くならんで。いやしかし大きくなったのぉ!見違えるようにキレイになったわい!」

歩美「ありがとう、博士」

変化を褒めてもらったけど、反対に博士は全然変わってなかった。

昔と同じ、優しい顔。優しい話し方。

その雰囲気に、思わず笑みがこぼれた。

何とも言えない喜びが胸に溢れていた。

阿笠「しかし、どうしたんじゃ?こんな時間に?」

歩美「う、うん。あの......」

阿笠「まあ、立ち話もなんじゃ。中でお茶でもどうかね?何やら訳ありの様じゃし」

歩美「う、うん。良いの?」

阿笠「勿論じゃよ。ゆっくり話を聞かせておくれ」

歩美「うん。ありがとう......」

ずっと顔も見せなかった私に、博士は変わらない態度で接してくれる。

本当なら、もっと素っ気ない態度をされてもおかしくないのに。

考えれば、子供の頃私達はどれだけこの人にお世話になったんだろう?

そのお礼もしないまま疎遠になったのに。

怒りもせず私を受け入れてくれる博士の姿に、今の私には無い「大人」を感じた。

そんな博士を見て、私は決めた。

歩美「あ、あの、博士」

阿笠「ん?何かね?」

歩美「その......」

阿笠「まあ、とにかく入りなさい」

歩美「う、うん。お邪魔します」

歩美「......!」

話しかけようとしてタイミングを外してしまったけど、そんな事は忘れてしまう位驚いた。

ドアの向こうは......。博士の家の中は、何もかも昔と変わらない。

懐かしいあの頃のままだったから。

阿笠「さ、掛けなさい。コーヒーでもいれよう」

歩美「あ、ありがとうございます」

阿笠「敬語など使わんで構わんよ、楽にしなさい。ちょっと待っとってくれ。すぐ湯を沸かすから」

歩美「うん。分かったよ」

博士がコーヒーを持って戻ってきた。

随分手早いのは、恐らくインスタントコーヒーなのだろう。

まあ、そんな所に贅沢は言わない。

歩美「ありがとう、博士」

阿笠「いやいや。大したモノが無くてすまんのう」

歩美「気にしないで。あれ?」

阿笠「どうかしたかね?」

歩美「博士のカップ、欠けてるよ?」

阿笠「え?あ、こりゃいかん!」

歩美「危ないよ、取り換えた方が良いよ」

阿笠「いやはや、こりゃ参ったの」

どうやらそそっかしい所は変わってないらしい。が......。

阿笠「長い事1人じゃと、つい身の回りに無頓着になってな。ちょっと取り換えてくるわい」

歩美「う、うん......」

効いた。今の発言は。

博士に悪意は無いのは分かっているけど、不意に出たあの言葉に何とも言えない寂しさが感じられた。

そしてもう1つ、哀ちゃんはずっといないままだと言う事を含んでもいた。

一気に胸が重たくなる。しかし、何もせずには帰れない。

博士に迷惑を掛けるかも知れないけど、決めた事を実行しなくちゃ。

阿笠「いやはや、スマンスマン。何とか無事なヤツがあったわい」

歩美「そっか、良かったね」

戻ってきた博士に精一杯明るく振る舞う。

まず、場の雰囲気を良くしなくちゃ。

いきなりやる訳には行かない。

博士に会って決めた事を。そう......。

博士に、真実を聞く事を。

あの頃、子供の頃には出来なかった。でも今なら......。

今なら、答えてくれるかも知れない。

その為に、まず雰囲気を良くして埋めなくちゃ。

博士と私の間の、10年の距離を。

......正直、自分の行動がズルいと。ひどいと思う。

ずっと顔も見せなかったのに、心の傷になっているかも知れない部分に触れようとしてるのだから。

でも、もう止まれない。

ここで止めてしまったら、結局何も変わらない。

コナン君にも哀ちゃんにも近付けない。

私にとってそれは死んでいるのと変わらない。

覚悟を、決めよう。今度こそ。

想い出を粉々に破壊されたとしても、真実を知る為に。

自分の真実を、手にする為に。




阿笠「そうかそうか。高校でも元気にやっとるか」

歩美「うん。何とかね」

あれから暫く、他愛ない世間話は続いていた。

当たり障りの無い、普通の話。

でも、その中にはコナン君の事も哀ちゃんの事も出てこない。

訳ありの様だから話を聞かせて、と言いつつその話題を避けるのは何となく私の気持ちを察してるからだろうか。

そして、博士自身が触れたくないから......。

そう思うと、なかなか話を切り出せない。

どうしたら良いのか......?

阿笠「いやあ、しかし嬉しいのう」

歩美「え?」

阿笠「ずっと心配しておったんじゃよ、みんなの事はの。その歩美君がこうして元気に、しかもこんなに美しく立派な姿になって。ワシは嬉しいわい」

歩美「博士......」

悩んでいる最中、唐突に博士が話の方向を変えた。

懐かしさの余り、博士の気持ちも緩んだのだろうか?

なら、今しかない。

思い切って私も踏み込む事にした。

歩美「ありがとう、博士。ずっと顔も見せなかった私の事をそんなに心配してくれて」

阿笠「なあに。皆事情がそれぞれあるからの。仕方無い事じゃよ。こうして今顔が見れただけで十分じゃよ」

歩美「そうだよね。みんな事情があるもんね。そう、哀ちゃんにもコナン君にも......」

阿笠「......!」

博士の表情が明らかに変わった。

それと同時に空気が一気に張りつめる。

緊張が一気に身体を包み、鼓動が早まる。

心音が博士に聞こえそうな程に。

重圧で口も強ばり、上手く次の言葉が出てこない。

でもダメだ。ここで黙ってしまうともうチャンスは無いかも知れない。

止まりかけた身体を奮い立たせ、力を振り絞り二の矢を放つ。

歩美「......ごめんね、博士。急にこんな事言って。でも私、今日はその事で来たの」

阿笠「......」

博士から返答は無く、ただじっと私を見つめている。

その顔には先程までの笑みは無い。

口を真一文字に結び、今まで見た事も無い真剣な表情をしている。

やはり、この話題には博士を黙らせてしまう程の何があるのは間違いないみたいだ。

ただ、表情が変わり会話が無くなっても怒りや憎しみと言った感情は伝わってこない。

その点に救いを見出だし、言葉を続ける。

歩美「ごめんね、博士。いきなりこんな事言って......。私、ホントは博士にこんな事言いに来た訳じゃないんだけど......」

歩美「私、どうしても知りたい事があって来たの。本当はコナン君にそれを聞きたくて来たんだけど、その......。私お昼にコナン君とケンカしちゃって」

歩美「その、知りたい事を聞きたくて、でも私全然コナン君の事考えてなくて、でも私コナン君が......。あ、その、あの......」

しまった。焦りすぎちゃった。

言いたい事を言おうと切り出したは良いけど、いっぺんに言葉も気持ちも溢れだして何を言ってるか自分でも分からなくなってる......。

どうしよう、博士もきっと困ってるよね.....。

と、自分の言葉に我に還り恐る恐る博士を見ると......。

阿笠「......」ニコッ

歩美「......えっ?」

私の予想とは裏腹に、博士は笑っていた。

焦って捲し立てられて動揺していると思ってたのに、それとは真逆のとても静かな笑顔を私へ向けていた。

まるで、悩みを打ち明ける孫を見つめるおじいちゃんの様に。

阿笠「......いやあ、スマンスマン。つい歩美君の姿が微笑ましくての」

歩美「え?」

阿笠「何と言うかのう、女の子の孫がワシにおったらこんな感じかと思っての」

歩美「博士......」

意外だった。私の思ってた通りの考えを博士から聞く事になるなんて。

博士が話の方向を変えたのは、そのせい?

と、思っていたけれど。博士の口からもっと意外な言葉が飛び出した。

阿笠「......それ故に、辛くもあるがの」

歩美「えっ?」

阿笠「君がとても大きな悩みを抱えておる事は、一目見た時から想像はついた。でも中々切り出しにくそうにしておったからの。少し話をそっちに持って行ってみたんじゃよ。君がコナン君の家の前にいたことから、きっと過去の話の事じゃと踏んでの」

歩美「あ......」

阿笠「そして、今の歩美君の発言から確信を持てたわい。君は何らかの形で昔の事を知りたくなったとな。そうじゃろう?」

歩美「......うん」

阿笠「やはりそうか。いずれそんな時が来るとは思っとったがの。いざ来るとやはり辛いわい」

歩美「それは、博士に取っても辛い思い出だから?」

阿笠「それもある。じゃが、それ以上に......。歩美君に取っても辛い話になる。君も苦しむ事になる。それが辛いんじゃよ」

歩美「博士......」

そっか、そうだったんだ。

博士は何もかも察した上で、私を家に入れたんだ。

きっと、全てを覚悟の上で......。

阿笠「......正直に言って、この日を迎えたくは無かった。君達がワシ等の事を忘れて、幸せに生きてくれれば良かった。じゃが、こうなった以上今更ごまかしたりはせん。君が望むならすべてを話そう」

歩美「全てを......」

阿笠「うむ。ワシの知りうる全てをじゃ。じゃが、話してしまったらもう後戻りは出来ん。引き返すなら今じゃ」

歩美「引き返す......?」

阿笠「先程も言ったが、これからの話は君にも辛い話になる。それを聞かず引き返すのも、正しい選択じゃ」

歩美「......」

......博士の言葉に一瞬だけ迷った。

聞けば、きっと博士も傷つくと再度思ったから。

でも......。

歩美「......お願いします、博士」

阿笠「......!」

歩美「真実を、教えて下さい」

......理性で悩むより先に、心は答えを出していた。

今更、戻れないでしょう?なら、聞こうよ。

応えてくれる博士の為にも......。

阿笠「......うむ。分かった。では、まずここに至るまでの経緯を話して貰えるかの?」

歩美「うん。分かったよ」

......胸がざわつく。遂に近付ける。哀ちゃんとコナン君の真実に。

でも、私が知る事になるのは残酷な......。

余りにも残酷で重たい、現実だった。




博士に促されてから、私は今日までの出来事を話した。

コナン君と今まで過ごして来た日々の事。

コナン君の変化。

そして、今日のケンカの事。

哀ちゃんの話を聞いたコナン君の、あの苦しみ方を。あのメールの内容を。

全てを博士に伝えた。

阿笠「ふむ、なるほどのぅ......」

話を聞き終えると、博士は納得した様な表情でそう呟いた。

私の話を予想していたかの様に。

そして、暫く考えた様な表情をした後......。

阿笠「ちょっと、待っていなさい」

歩美「え?」

突然博士は立ち上がり、奥の部屋に消えていった。

一体、どうしたんだろう......?

少し不安を感じながら待っていると......。

阿笠「いやあ、待たせたの。ちょっと探し物をしててのう」

歩美「探し物?」

阿笠「うむ。君に渡すべきものがあってな」

歩美「え?」

阿笠「これじゃよ」

そう言って博士は、1枚のDVDを差し出した。

歩美「これは......?」

阿笠「うむ。これは......。哀君から君へ渡す様頼まれておったものじゃよ」

歩美「え?哀ちゃんが......?」

突然の博士の言葉に、私は混乱した。

哀ちゃんが何故こんな物を私に......?

阿笠「実はのう、これはもう10年も前に哀君から頼まれておったものなんじゃよ」

歩美「10年も前に?子供の時から?」

阿笠「うむ。そうじゃ。もし自分がここにいる事が出来ない時、自分に代わって君にこのDVDを渡して欲しい。君が成長し、自分の事を知りたいと願いワシの元へ訪れた時に、とな」

歩美「え......?」

ますます意味が分からなくなった。

何故そんな事をする必要があるの?

哀ちゃんはこうなる事を予測していた?

何故?どうして?

阿笠「......混乱するのも無理は無い。じゃがそのDVDを見ればはっきり分かる。哀君の全てがの」

歩美「全て......」

阿笠「うむ。もし君が興味や好奇心から過去の真実を知りたいと考えていたなら、まずワシから話をするつもりじゃった。この現実はあまりに重たい。じゃからまずワシから話をしてゆっくり理解して貰うつもりじゃった」

歩美「......」

阿笠「じゃが、君の話を聞いてその必要が無い事が分かった。君は既に真実に近い所におる。それに、君の覚悟も良く分かった。例えどんな真実を知る事になっても構わないと言う覚悟がの。なら、そのDVDを見るのが一番じゃ。真実を知るのにはの」

歩美「これを、見れば......」

阿笠「うむ。全て分かる」

......この中に、全てが。

一体、何が入っているんだろう......。

阿笠「......今見るのならば、そこのTVを使いなさい。帰って見ても構わんが」

歩美「......ううん。今、見る」

阿笠「分かった。ワシは外しておるから、終わったら呼んでくれるかの」

歩美「うん。分かった......」

阿笠「......本当に大丈夫かの?」

歩美「大丈夫。ここまで来て逃げたくない」

阿笠「分かった。では、後での」

そう言うと、博士は部屋を出ていった。

俯き加減で顔はまた見えなかったけど、背中に悲しさを漂わせながら。

決して、前向きな気持ちで見せたいものじゃない。

そんな想いが伝わってきた。

急にDVDを持つ手が重たくなる。

怖い。何が表れるのか。

電源をつけた時、何がそこに映るのか。

怖くてたまらなくなった。

歩美「......でも、これを見れば」

そう、これを見れば近付ける。会えるかも知れない。哀ちゃんに。コナン君の心に。

その想いが、怖さを打ち消した。

歩美「......今、行くよ。哀ちゃん」

そう呟いて、DVDをセットする。

ディスクが回転を始め、私1人になった部屋に機械音が響く。

その時間が......。機械が映像を読み込むまでの時間が途方も無く長く感じられた。

本当に、1分1秒が永遠に思える程に。

早く、始まって。早く、終わって。

そう思いながら待っていた、その時。

「......久し振りね、歩美ちゃん」

懐かしい声がTVから溢れる。

待つ間の重苦しい空気に耐え兼ね瞑っていた目を開けば......。

「......元気にしていたかしら?」

待ち望んでいた顔がそこにはあった。

探し求めていた人。逢いたかった人。

10年前の姿の灰原哀その人が、そこには居た。

歩美「哀ちゃん......」

思わず涙が出そうになった。

声も姿も、何もかもが懐かしい。

私の記憶の中の哀ちゃんと、全く変わらない。

ここに映っているのは間違いなく、私の愛したあの哀ちゃんだ。

灰原(映像。以下灰原)「この映像をあなたが見ていると言う事は、もうこの映像を撮ってから随分立つと言うことね。きっとあなたは美しい大人の女性になっているでしょうね」

灰原「立派になったあなたの姿が、目に浮かぶ様だわ。私よりきっと清楚で可愛らしい女性になっているでしょうね」

歩美「哀ちゃん......」

微かにクスッと笑いながら未来の私に話し掛ける哀ちゃんを見て、自然と笑みが溢れて来た。

でも......。

灰原「......その姿を間近で見られないのが、残念でたまらない」

歩美「......!」

その一言に、笑顔は吹き飛ばされた。

灰原「......今、画面の前のあなたはきっと混乱しているわよね。何故私がこんな事をしなければならなかったのかが分からなくて」

歩美「......そうだよ、哀ちゃん」

灰原「そもそも、これを見ているのだからずっと私がいなくて......。ずっと疑問を感じていたわよね。本当にごめんなさい」

歩美「そうだよ、哀ちゃん。だから、教えてよ......。何があったか、教えてよ!」

哀ちゃんの言葉が聞こえる度、私は話し掛けずにはいられなかった。

決して、交われないやり取り。

過去と未来の、時間を隔てた届かない会話。

分かっていても、話さずにはいられなかった。

きっと、哀ちゃんも同じ気持ちだと思うから......。

灰原「......この映像を見続ければ、あなたの知りたい事は全て分かる。あなたの望んでいる答えかどうかは、分からないけど」

灰原「けれど、それを話す前に......。確認したい事があるの。今から話す点を良く聞いて」

歩美「......?」

灰原「1つ目。私と江戸川君があなたの側にいる、もしくは私のみがあなたの側にいる場合にあなたがこの映像を見ている場合。その時は手違いだから、この映像は処分して。まあ、その場合真実はあなたに伝わっているからこの映像は見る事は無いはずだけど」

灰原「2つ目。私も江戸川君もあなたの側にいない場合。その場合は、この映像はすぐ破棄しなさい。そして、私達の事は忘れなさい。2度と調べてはいけない。あなたの為に」

歩美「......?!」

灰原「そして、3つ目。これが1番この映像を見る上で重要な事.....」

灰原「私はあなたの側におらず、江戸川君のみがあなたの側にいる場合。その時のみ、この映像を見て欲しい」

歩美「......??!ど、どうして?」

突然の哀ちゃんの問い掛けに、戸惑うしか無かった。

哀ちゃんがいたら?いなかったら?

安全の為?どうして?

灰原「......本当は、どのパターンでも安全かどうかは不安な所なのだけれど。博士から手渡されているのなら、大丈夫だと信じてる。これからの映像は、3番目のパターンだと思って話すわ。でも、良く考えて」

歩美「......何を?」

灰原「これから話す事は、決して聞いて気持ちの良い話しでは無いわ。辛く、重たい話になる。それをあなたに背負わせたくは無い」

歩美「哀ちゃん......」

灰原「だから、10分。10分間あげる。その間に考えて。この先を見るかどうかを」

歩美「......」

灰原「一方的にこんな話をしてごめんなさい。本当にごめんなさい。映像てしかあなたに謝れないのが申し訳無い」

歩美「哀ちゃん......」

灰原「一応、あなたがこの先を見ないと考えてお別れを言っておくわ。出来るなら、見て欲しくは無いから」

灰原「あなたは私の、最高の友達だったわ。あなたに会えて本当に良かった。あなたに会えて、私は幸せだった」

歩美「......!!」

灰原「本当に本当にありがとう。どうか幸せになってね。私は遠くからあなたをずっと見守っているわ」

歩美「哀......ちゃん......」

灰原「どうか身体に気を付けてね。いつまでも元気で。さよなら......」

歩美「哀、ちゃん......」

混乱した頭に、更に別れの言葉を言われ頭の中がメチャメチャになる。

更に、最高の友達と言われ嬉しい気持ちと、一方的に別れの言葉を言われた悲しみも合わさって感情が高ぶり、大量の涙が視界をゼロにする。

見るか見ないか、10分あげる。そう言われたけれど、今の私は何よりもまず泣き止むのを待つしか無かった。

とにかく、涙が出るのなら今は泣こう。

溜まったものが出切ってしまうまで。

少なくとも哀ちゃんが涙で霞む事無く、眼に映るまでは。





漸く涙が止まった頃には、リミットまで3分を切っていた。

聞くか聞かないか、哀ちゃんの出した選択の時まで。

最も、混乱していたさっきならともかくスッキリして落ち着いた今出す答えは決まっている。

この先を、見る。その為に来た。

ちょっと動揺したけど、それは変わらない。

けれど......。

泣き止んで冷静になった頭には、違う事が引っ掛かっていた。

歩美「......やっぱり、子供扱いされてるなあ」

そう。話を聞くかどうかでは無く、落ち着いた私が考えていたのはこれだった。

博士も哀ちゃんも、真実を話すと言いながら何度も聞いてきた。

本当に聞くのか?良く考えなさい、と。

それは、勿論気遣いであるのは間違いないけど。

それ以上に、私に対する過剰な不安にも見えた。

2人の態度は例えば、幼稚園の運動会とかで小さい子供をハラハラしながら見るお母さんの様な。

そんな感じに思えた。

つまり、私は結局大人扱いされていないのだ。

歩美「......ちょっと傷付くよ。哀ちゃん」

勿論、これは私の妄想に過ぎない。

けど、そうとしか思えなかった。

歩美「......なら、見せなきゃね」

そうだ。なら見せるしかない。

真実を受け止め、成長した自分を見せるしかない。

或いは、そう思わせる為に哀ちゃんは10分と言う時間をくれたのかも知れない。

......結局哀ちゃんの思うつぼの様な気もするけど。

歩美「......文句、言っちゃうからね」

そう。言っちゃうからね。

映像を見終わったら、言っちゃうからね。

最初にあなたが言った通り、私は大きくなったんだよって。

いつまでも、子供じゃないんだよって。

そう決めて、待った。その時を。

そして......。

灰原「......時間ね」

始まる。人生で1、2を争う位濃密な時間が。

その先に得るモノ、それは......。

ー永遠の、別離ー

灰原「......結局、見る事を選択したのね」

灰原「まあ、あなたは昔から強い子だったし。当然と言えば当然の選択だったかも知れないわね......」

話を始めた哀ちゃんの顔は、半ば呆れた様な。

でもちょっと嬉しそうな顔をしていた。

やっぱり、私の考えは当たってたみたい。

灰原「.....あなたが選択した以上、包み隠さず真実を話すわ。そうしなければ、失礼だものね」

灰原「ちょっと信じられない、現実離れした話になるけれど......。どうか最後まで落ち着いて聞いて欲しい。それがあなたに出来る、私の精一杯の事だから」

歩美「うん、分かったよ。哀ちゃん......」

何を聞いても、信じるよ。哀ちゃん。

どんな嘘みたいな話だって。

だって、友達だから。

灰原「ふぅ。では、行くわね。いきなりショックを受けるかも知れないけれど」

灰原「結論から言うと......。この画像を見ていると言う事は、私はもう......」


「この世には、いない」



歩美「......え?」

何を、言ってるの......?哀ちゃん......?

灰原「......まあ、正確にはいない可能性が高い。と言う話なのだけれど」

灰原「少なくとも、あなたの前に5体満足で出られる状況では無いのは間違いないわ」

歩美「何言ってるの、哀ちゃん......?」

灰原「何故かと疑問に思うわよね。それはね、私が闘いに行かなくてはいけないから。この映像をあなたが見ているのなら、私はその闘いで命を失う結果になったから」

歩美「闘い?命を失う?」

は?は?は?わかんない、わかんないよ哀ちゃん......?

何を、何を、言ってるの......?

どんな話でも、聞く覚悟だったよ?

信じるよって思ったよ?

でも、でも、信じられないよ。

哀ちゃんが、この世にいない......?

し、ん、じゃった......?

灰原「......このまま説明しても、理解出来ないと思うからもう1つ伝えておくわね。余計に混乱するかも知れないけれど」

灰原「私は灰原哀では、無い」

灰原「灰原哀と言う人間は、存在しない」

歩美「......え」

灰原「正確には、灰原哀と言うのは私の仮の名前と姿。本当の姿は、別にあるの」

歩美「......」

考えが追い付かない。

哀ちゃんが死んじゃっていて?

しかも哀ちゃんは哀ちゃんじゃなくて別の人?

それに仮の姿って何?

変身でもしたって言うの?そんな事って......。

灰原「......論より証拠ね。これから今の私が仮の姿だと言う証を見せるわ。まあ、ビデオで撮られた映像だから合成と言われたらそれまでなのだけれどね」

歩美「証......?」

灰原「......これを見て」

哀ちゃんはそう言うと、ポケットからカプセルの様なモノを取り出した。

灰原「これを今から飲むわ。その後に起きる変化をよく見ていてね」

歩美「何を、する気なの......?」

何が起きるの?怖い怖い怖い怖い!!

見たくない!今ある現実が全て壊れそうで怖い!

でも、眼を逸らせない......!!

灰原「じゃあ、行くわね。......ん、ゴクッ」

飲んだ......。あの得体の知れない薬を......。

歩美「な、何も起きないよね?おきな......っ?!」

何とか現実逃避しようとして呟いた独り言を呟いた瞬間、信じられない事が目の前で起き出した。

灰原「......う、ぁ、うぅぅっ!!」

哀ちゃんの顔が......。いや、身体が真っ赤になりだした。凄い熱がある人みたいに。

それと一緒に、凄い叫び声をあげて苦しんでいる。

灰原「ああっ!!ぐ、うぅぅっ!」

余りに苦しそうで、見ていられない......。

いつまでこれは続くの......?

歩美「もう、ヤだよ......。何で哀ちゃんがこんなに苦しまなくちゃいけないの?!」

たまらなくなってそう叫んだら瞬間、再び哀ちゃんに変化が見えた。

灰原「う、うぅぅっ!」

歩美「け、むり?」

気のせいか、身体から煙の様なモノが見える。

人間の身体が、そんなに熱くなるの......?

そして、その少し後。

灰原「う、う、うぅぅっ!ああああぁぁぁぁっ!!」

哀ちゃんが一際大きな叫び声を上げ、そして......。

灰原「ハァ、ハァ、ハァ......。な、何とか成功ね......」

画面から哀ちゃんは消え、苦しそうな顔の綺麗な女の人が現れた。

歩美「どうなってるの?あ、哀ちゃんはどこ......?」

突然の画面の変化に更にパニックになりそうになった、けど。

歩美「......?!あ、れ......?」

ある事に気付き、冷静さを取り戻した。

歩美「この、人......。会った事、ある?」

そう、見覚えがあった。この人は確か、小さい時に私達を助けてくれた人......?

灰原「......驚いたかしら?何が起きたか分からないわよね。ちょっと待ってね?流石に裸では話しにくいから」

歩美「あ......」

確かに、言われれば破れた服が辺りに散らばっている様に見える。そんな事も分からないくらい驚きの連続だったから、気付きもしなかったけど......。

でも、どういう事?破れた服が散らばって、大人の女の人が現れたなんて、まるで......。

灰原「お待たせ」

歩美「あ......」

私が疑問を頭の中でぐるぐる回してる内に、女の人は着替えて現れた。

白衣を着てあの時とイメージは違うけど、間違いない。あの時の人だ。

あの時も思ったけど、とても綺麗な人。

それに、赤みがかった茶髪に哀ちゃんに似た顔。

哀ちゃんが大人になったらこんな感じなんだろうけど、そんな事がある筈は......。

灰原「では、この姿で会うのは初めてでは無いけど改めて自己紹介するわね。私の名前は宮野志保」

歩美「宮野志保、さん......」

灰原「本職は薬などの研究をする学者。そして、灰原哀の......。本当の姿よ」

歩美「......!!本当、の ......?」

本当の......?じゃあ、さっきまでいた哀ちゃんは一体......?

灰原「さて、どこから話せば良いか......。出来るだけ簡潔に話すわね」

それから、哀ちゃん......。いや、宮野志保と名乗る人は自分の素性を語り始めた。

自分が、とある犯罪組織に属していた事。

その理由が、お父さんやお母さん。お姉さんまでもがその組織に関係していた事。

そして、宮野さんはその組織で研究者として働いていた等を話してくれた。

余りにも現実離れした内容だったけど、真剣な表情で話す宮野さんを見てそれが嘘ではないんだと感じた。

灰原「......ここまででも、正直信じられない話よね。でも、この先はもっとおとぎ話の様な有り得ない話になるわ。そんなバカな、と思うかも知れないけれど最後まで聞いて欲しい」

歩美「......うん」

......信じる信じない以前に、頭に入るかが不安だけど。

今はただ、聞くしかない。最後まで。

灰原「......私が薬品の研究をしていた事はさっき話したわね。私は、組織の命令である薬を作っていたの」

灰原「その薬は、あるとても不思議な効果を持っていたの。飲む事で身体の細胞を死滅させ、その身体を幼児期まで退行させる......。分かりやすく言えば、身体を子供のレベルまで若返らせる薬を」

歩美「若返らせる?!それってまさか......?」

灰原「その薬を飲み、私は宮野志保から……。灰原哀になった」

歩美「……!」

想像はした。でも、そんな夢みたいな話が……。

でも、それしか説明がつかない。いや、それなら納得がいく。

哀ちゃんの頭の良さ、大人びた所などは全部元から大人だったからだと言うなら……。

灰原「……私はある日、お姉ちゃんを組織に殺された」

歩美「……!」

灰原「私の為に生きたお姉ちゃんを、あっけなく殺された」

灰原「それを知った私は組織に歯向った。その報復をうけ、監禁され死を覚悟した私は先程話した薬……。通称APTX4869を飲み自殺しようとした」

灰原「だけど、偶然にも私の身体は死を選ばず幼児化した」

灰原「そして、小さくなった身体で組織の目を掻い潜り脱出……。阿笠博士に拾われた」

灰原「その時博士につけてもらった名前が、灰原哀」

灰原「......まあ、博士は愛情の愛にしようとしたんだけど、私には相応しく無いと思ったから哀の字にしたんだけどね」

......哀ちゃんらしい。

何となく愛の字を断る場面が想像つく。

灰原「......博士に拾われた私は、こうして灰原哀としてあなた方と一緒に小学生としての時を生きる事になった」

灰原「組織の目に時に怯え、時に戦いながら」

灰原「辛くなかった訳じゃない。でも、あなた方がいてくれたお陰で私は希望を無くさず生きる事が出来た。ありがとう」

歩美「......お礼を言うのはこっちだよ、哀ちゃん」

そう、お礼を言えるならいくら言っても足りない。

私の様な人間に、そこまで感謝してくれて。

灰原「......でも、そんな日々にも終わりを告げなければならない日が来る。灰原哀としての姿は仮のモノ。組織と決着をつけ、元の身体に戻らなければならない日が来る」

灰原「この映像を残すのは、その日が近付いたから」

灰原「私は、これからこの呪われた運命に決着をつけに行く」

灰原「私と......。私によって運命を歪められた人と共に」

歩美「哀ちゃんに運命を歪められた人......?」

哀ちゃんと一緒に戦う人、それはつまり......。

灰原「その人こそ、あなたも良く知る人」

灰原「江戸川コナン、その人よ」

......ああ、やっぱり。

哀ちゃんの話を聞いてたら、そんな気はした。

じゃあ、哀ちゃんと一緒に戦うと言う事はコナン君は......。

灰原「......話を聞いて察しているかも知れないわね。江戸川君もまた、本当は江戸川コナンでは無い事に」

灰原「彼もまた、私と同じ薬を飲む事で身体が幼児化した存在。本来歩むべきハズも無かった運命に、私の薬のせいで巻き込まれた人」

灰原「そして......。あなたには言いにくい事だけど......」

歩美「......!」

哀ちゃんの表情が一瞬変わった。

真剣な表情が一瞬、緩んだ。

それは、つまり......。

灰原「......彼は私の最大の理解者であり、私の最愛の人」

灰原「そして......。私を愛してくれた人」

......ああ、やっぱり。

あの顔はそうだった。あの顔は、好きな人がいる女の子の顔だったもん。

やっぱり哀ちゃん、コナン君の事が好きだったんだね......。

分かってはいたけど、やっぱりちょっと悔しいよ?哀ちゃん......。

それならそうと言って欲しかった。

何だか、勝負にすらならなかった。そんな気分だよ......?

......ウソツキ。

灰原「......私と彼は、元々は加害者と被害者。逃亡者同士。その程度の関係だった」

灰原「それ以上にはなり得るハズも無かった。けれど」

灰原「私は彼を愛してしまった。どうしようもなく」

灰原「何故か、と聞かれたらそれは説明しにくい事だけど......」

灰原「強いて言うなら、彼がバカだったかしらね」

灰原「どうしようもなく真っ直ぐで、どうしようもなく優しく不器用で女心が分からないバカだから」

灰原「彼を心から愛してしまったのかもね」

灰原「それはきっと、あなたにも分かって貰えると思うわ」

歩美「......うん、分かるよ」

凄く、分かるよ。

だって、同じだもん。私がコナン君を好きなのは......。哀ちゃんと同じだもん。

灰原「......本来、その想いは叶うハズは無かった。彼には別に愛してる人がいたし、その想いを伝える気も無かったから」

灰原「けれど、運命のイタズラは少しだけ私に味方した。ほんの少しだけ、ね......」

歩美「運命の、イタズラ?」

それって、どう言う事......?

灰原「......さて、この先の話だけど。申し訳無いけど話せないわ」

歩美「え?!」

灰原「......先程も話したけれど、この映像を見ているのなら私はもうこの世にはいない」

灰原「死人が全てを話すのも、どうかと思うしね」

歩美「そ、そんな......」

そんな、酷いよ哀ちゃん......。

ここまで来て、大事な話をしないでサヨナラしちゃうの?

そんなの......。

灰原「......だから、この先はあなたが掴んで」

歩美「え?」

灰原「私と彼に何があったのか。彼の正体は誰なのか。この先は、あなた自身が自らの手で掴んで」

灰原「そして彼を......。救ってあけて」

歩美「......!」

灰原「......恐らく、私1人が命を落とした事を彼はずっと責め続けてる」

灰原「それを救えるのは、あなたしかいない。彼を心から愛してるあなたしか」

歩美「......!!」

歩美「あ、哀ちゃん......」

灰原「......きっと今、あなたはこう思っているわよね。全てが分かると言ったのに、こんな形に話を持っていくなんて、と」

灰原「でも、全てを知る為には彼の口から聞くしかない。何故なら、私の死に際は私からは語れない」

灰原「それに、彼と私2人の言葉を聞いて初めて今まで何があったかを説明する事が出来る。だから私は、彼の元へあなたを導くしか無い」

灰原「......色々と無責任な事を言ってごめんなさい。一方的な話を押し付けて」

灰原「だけど、あなたなら私の話を理解して彼を助けてくれると。そして、あなた自身が真実に辿り着き幸せになってくれると信じてるわ」

歩美「......うん」

灰原「......実は、あなたにもう1枚DVDを用意しているの。それは、あなたが真実に辿り着いた後見て欲しい」

歩美「......!」

灰原「その中には、あなたへの最後のメッセージを込めてあるわ。見て楽しいモノかは分からないけど......」

灰原「その時にもう1度、会いましょう。その時を待っているわ」

灰原「......では1度、さようなら。またね」

灰原「私の最愛の友達、吉田歩美さんへ」

灰原「心からの感謝と、祈りを込めて」

歩美「......」

灰原「......あ、それと」

灰原「もう1つ、お願いがあるの」

歩美「......?」

灰原「......そう、それは」

「××××××」

歩美「......!!」






歩美「......」

......哀ちゃんの最後のメッセージを聞いた後、私はしばらく立ち尽くしていた。

映像の最後の方は、考えが追い付かなかった。

思考する暇も余裕も無くしつつ、哀ちゃんのメッセージに聞き入っていた。

歩美「真実はわかったよ・・・」

だけど・・・それは

光彦「ふふ」

それでも、完全に理解できなくても伝わった。

哀ちゃんの気持ちが。

その重みが。

阿笠「終わったかね?」

歩美「博士……」

私がボーッとするのから立ち戻るとほぼ同時に博士が声を掛けてきた。

様子を伺っていた訳じゃないと思うけど、あまりのタイミングの良さに少し戸惑った。

声を掛けてくれと言っていたのにここに来たのはカメラで私を監視して居たんじゃないかと少し疑ってしまう。

けど、そんな些細な疑問をかき消すように博士が尋ねる。

阿笠「……真実を知れたかね?君の望む」

歩美「うん……。まだ全部じゃないけど」

阿笠「そうか。なら」

歩美「うん。私はコナン君と話をしなきゃ」

阿笠「うむ......。分かった。なら、明日彼を呼び出そう」

歩美「明日?」

阿笠「うむ。流石に今日はこの時間じゃ。もう彼も寝ているかも知れんからの」

博士の言葉で時計に目をやると、もうかなり遅い時間になっていた。

歩美「も、もうこんな時間......?どうしよう?」

阿笠「安心しなさい。ご両親には連絡済みじゃよ。今日は泊まっていきなさい。哀君の使っておった部屋を使うと良い。掃除はしてあるから寝心地は悪くないじゃろう」

歩美「うん。ありがとう」

博士の気遣いに少し肩の力が抜ける。でも......。

歩美「あの、博士」

阿笠「ん?」

歩美「その......。博士はやっぱり」

本当は聞くべきじゃない。でも、どうしても聞きたくなってしまう。

歩美「博士は、哀ちゃんの事......」

阿笠「......ああ。知っておった。哀君の亡骸も確認したよ」

そう話した博士の悲しそうな顔は多分一生忘れる事が出来ないと思う。

当然だけど、それくらい博士にも重たい出来事なんだ。

哀ちゃんが......。いなくなった事。そして、もう2度と会えない事は。

歩美「何故そうなったか......。博士は聞いたの?」

阿笠「......いや、実は知らんのじゃよ」

か細い声で博士が答える。

その顔は隠し事をしている様には見えない。

阿笠「......あの日、病院から連絡を貰ったワシはすぐさま病院に駆け付けた」

阿笠「そこで眼にしたのは、冷たくなった哀君。そして、ズタボロに傷付きながらも哀君の亡骸から離れようとしない彼の姿じゃった」

阿笠「彼はずっと呟いておった。ごめんな、ごめんな、俺のせいだ、と」

歩美「......」

博士が話す度、実感が増してくる。

哀ちゃんの死が、現実である事。そして、コナン君の苦しみの大きさが、どれ程大きなモノかが。

阿笠「......彼自身も死に傷と言って良いレベルのケガじゃった。しかし彼はあの場を動こうとしなかった。鎮静剤を打って無理矢理手術に連れて行った。しかし、傷は治っても彼の心は死んでおった。以来、あのザマじゃよ。最近は少し明るくなったと思っておったが......。やはり心の傷は深かったみたいじゃ」

今日このスレに気が付いたんだけど、はじめてまともなコナンスレを読んだ気がする。
マジキチが多すぎるからってのもあるけど。

続き期待してもいいですか?

>>187
ありがとうございます、色々あって長引いてますが、落とさず書きますのでお時間があれば宜しく願いします

歩美「私が哀ちゃんを思い出させたから......」

阿笠「歩美君のせいではない。彼の心が解き放たれない限り、またいつかあの様に死んだ眼に戻るだけ。こうして歩美君が決心をした事で、彼が救われるチャンスが来たのじゃよ」

歩美「コナン君が救われるチャンス......」

阿笠「そうじゃ。君が彼にとっての唯一の救いの希望なんじゃ。君の真心が、彼にとっての最後の救いになるハズじゃ」

歩美「私は......」

救いだとか、そんな大それた事は出来ない。

ただ......。私は......。

歩美「私はただ、もう1度コナン君に笑って欲しい」

阿笠「そうじゃな......。それが1番じゃな」

そう言うと、博士は微笑んだ。今日初めて見たかも知れない、とても穏やかな笑顔で。

阿笠「さて、年寄りが話すと長くなる。今日はもう休むとするかの。歩美君は哀君の部屋を使っておくれ」

歩美「哀ちゃんのお部屋を?」

阿笠「うむ。掃除はしてあるから、寝心地は悪くないハズじゃ。哀君の元の身体の着替えもあるハズじゃ。用意してくるから待っていなさい」

歩美「ありがとう、博士」

阿笠「何......。お礼を言うのはこちらじゃ」

歩美「え?」

阿笠「いや、何でもない。出来たら呼ぶからの」

歩美「う、うん」

阿笠「......ワシも君の様に純粋な、単純な気持ちで新一に向き合っていれば。あんな死んだ眼をさせる事は無かったかも知れないのう」

阿笠「新一をどうか、宜しく頼む。歩美君......」

博士が呟いた独り言は、私の耳には届かなかった。

ただ、音の響く感じだけは伝わって来た。

絞り出す様な、願いの重みが......。





しばらくして準備の出来た博士に呼ばれ、私は哀ちゃんの部屋に通された。

阿笠「では、部屋は好きに使ってくれ。何かあれば、ワシはリビングで寝ておるから」

歩美「ありがとう、博士」

阿笠「うむ。ではお休み。また明日の」

歩美「うん、また明日......」

バタン......

挨拶をしてドアを閉め、振り返るとそこには。

歩美「懐かしいなあ、昔のまま......」

およそ女の子には似つかわしく無いような、良く分からない機械やフラスコの山。

今考えると、これは全部さっき見た薬を作る為にあったんだろうなあ。

ホコリが被っていないのは、前から博士がきっと掃除してたんだろうな。

私達と同じ様に生活をしながら薬を作っていた哀ちゃんは、どんな気持ちでこの部屋にいたんだろう。

落ち着いて考えると、胸が痛くなる。

歩美「......とりあえず、着替えようかな。哀ちゃんの服。借りて良いんだよ、ね?」

>>33訂正

今日はもう無かった→今はもう無かった

そう呟いてふと机を見ると、博士のメモがあった。

【スマン、女の子の下着の入った場所をいじるのはやはり気がひける。申し訳無いが、必ずあるハズじゃからタンスなどを調べてみてもらえるかの。阿笠】

歩美「なるほど。そうだよね」

布団はともかく、下着まで博士に用意させるのはやっぱり良くないものね。

それを探す事で、哀ちゃんを思い出して辛くなるかも知れないし......。

とにかく、探して見なくちゃ。

歩美「えーっと、タンス。タンス......」

独り言を言いながら何段か開けて調べて見るも、中にあるのは子供服ばかり。

大人サイズの服は見当たらない。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月25日 (木) 19:37:33   ID: rqE4rIK2

毛利蘭死ねよ

2 :  SS好きの774さん   2014年12月31日 (水) 07:52:34   ID: EjBXeqge

ブサイク毛利蘭死ね 新蘭 理性 毛利蘭首吊って死ね

3 :  SS好きの774さん   2015年01月26日 (月) 12:18:34   ID: 2O-AfJ-Q

え、これで完結扱いなん・・・?

4 :  SS好きの774さん   2015年02月25日 (水) 20:46:00   ID: mql-pcdV

めちゃくちゃ面白い(^ω^)

5 :  SS好きの774さん   2015年03月17日 (火) 05:57:32   ID: LKAWEj2v

続きが気になるぅ

6 :  SS好きの774さん   2015年03月28日 (土) 10:22:27   ID: hRCASdrV

完結させろや

7 :  SS好きの774さん   2015年03月28日 (土) 16:12:38   ID: wFx72yU3

さっさと書け無能。そして毛利蘭きえろ

8 :  SS好きの774さん   2015年03月28日 (土) 16:13:48   ID: wFx72yU3

毛利蘭くさい

9 :  SS好きの774さん   2015年08月19日 (水) 21:40:27   ID: qbxXjHXk

続きに期待(^ω^)

10 :  SS好きの774さん   2015年10月24日 (土) 09:17:20   ID: wx4JAdeQ

続き楽しみ!
むっちゃ気になる
続きはよ!

11 :  SS好きの774さん   2015年11月24日 (火) 23:34:44   ID: T-DcrrMt

うわぁぁぁ
めっちゃいいトコなのに……完結扱いになってる……
残念。

12 :  SS好きの774さん   2016年09月03日 (土) 23:03:49   ID: O-s_fOVc

続きないの?

13 :  SS好きの774さん   2017年02月22日 (水) 22:11:07   ID: TNyKqzR2

責任持って最後まで書いてください

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