魔法少女「自称勇者が営む便利屋です」 (23)

城下町 広場

老執事「あそこにおられる方が例の……」

勇者「そうか」

老執事「本当によろしいのですか?」

勇者「アイツしかいない」

老執事「……畏まりました」

勇者「行ってくる」

老執事「はい」

「はぁ……やっぱりダメだったなぁ……。諦めてお花屋さんでも……」

勇者「お嬢さん、お困りのようですね」

「え? え、ええ、まぁ……」

勇者「実は私も困っているんですよ。新しい事業を始めようと思ったのですが、人手不足で」

「あ、あの、貴方は?」

勇者「これは失礼。私は、勇者です」

「ゆ、ゆうしゃって、なんですか?」

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数週間後 便利屋

魔法少女「ただいま戻りました!!」

老執事「お帰りなさいませ」

魔法少女「すっかり寒くなってきましたね」

老執事「そうですねぇ。体調には気をつけてください」

魔法少女「はい。私がいないとこのお店、潰れそうですもんね」

勇者「戻ったか」

魔法少女「はい! 依頼は完了です!」

勇者「どんな依頼だったっけ?」

魔法少女「えー、忘れたんですか? 近所の人に夕食の買出しを頼まれたので材料を買いにいったんです」

勇者「ああ。そうだったな。そんなことを言って3時間ほど前に飛び出していったな」

魔法少女「そして、バッチリお料理も手伝ってきました。すっごく喜んでくれて嬉しかったですぅ」

勇者「そうかそうか。それは良い事をしたな。依頼料は?」

魔法少女「ここにありますよ。余った食材をいただきましたっ」

勇者「なるほど、なるほど。うんうん。やはり君はとても優しくて素敵だな」

魔法少女「えへへへ」

勇者「――とでもいうと思ったかぁ!!! この無能がぁ!!!」

魔法少女「ひっ!」ビクッ

勇者「お前が下らない依頼を引き受け小銭を稼ぐのは勝手だが!!! きちんと依頼料を取ってこいといつもいつも、言っているだろう!?」

勇者「お前の脳みそには何が詰まっているんだ!? 愛と勇気と希望とお花畑かぁん!? えぇ!?」

魔法少女「だ、だって、1人暮らしの男性で、お料理も苦手だっていうので……」

勇者「はぁぁ!? 独身の男の家で手料理を振舞ったのか!? それなら尚更ウン十万と毟り取ってこいよ!!!」

魔法少女「そんな!! 可哀相じゃないですか!!」

勇者「可哀相なのはお前の頭と胸と才能のなさだ!!!」

魔法少女「なんですかそれー!!」

勇者「なんですかだと? そのまな板に使えそうな胸に手を当てて考えてみろ」

魔法少女「胸はこれからですぅ!!」

勇者「ふん。魔法少女の分際でこれからも糞もないだろうが」

魔法少女「その魔法少女って呼ぶのいい加減やめてもらえませんか!?」

勇者「はぁぁぁん? 使える魔法が少ない女って呼ぶのはメンドクサイし、略して魔法少女でいいだろ。分かりやすいし呼びやすい。サイコーだな。はっはー」

魔法少女「ぐぅぅ……!!」

勇者「おら、悔しいなら使える魔法を増やしてみろ。ほら、ほらほらぁ」

魔法少女「今、勉強中ですから!!」

勇者「とっとと勉強してこい。てめぇは仮にも勇者様の仲間なんだぜ」

魔法少女「貴方のことを勇者って呼んでる人は1人もいないですけどね!!」

勇者「まぁ、俺は未来に生きる男だからなぁ。未来の勇者様ってことだよ」

魔法少女「そんな未来、絶対に来ません」

勇者「俺はお前みたいな無能とは違うんだ。残念なことに神は人間に優劣をつける。俺は選ばれし者だが、お前は――」

老執事「もう自室に戻られたようですが」

勇者「なんだよ。最近、生意気になってきたんじゃないか、あいつ」

老執事「慣れてきたといったほうがよろしいかもしれませんね」

勇者「ふん。で、新しい依頼は来ているか?」

老執事「先ほど届いたものはこちらでございます」

勇者「ありがとう。もう休んでいいぞ」

老執事「はい。では、失礼いたします」

魔法少女の部屋

魔法少女「何よ! 何よ! 私ががんばって宣伝してるのに!! なんであんな言われ方しなきゃいけないの!!」

魔法少女「くそぉ……!!!」ガリガリガリガリ

老執事『あの、よろしいでしょうか?』

魔法少女「あいてまぁす!!」

老執事「おやおや。精が出ますね」

魔法少女「何かご用ですかぁ!?」ガリガリガリ

老執事「勉学に勤しむ貴方の強い味方になると思い、コーヒーと甘いお菓子を持ってまいりました」

魔法少女「わぁ、ありがとうございますぅ」

老執事「がんばってください」

魔法少女「勿論です!! あの自称勇者の鼻を明かしてやるのが今の目標ですからぁ」

老執事「はっはっはっは。研鑽を積む若人というのはいつ見ても気持ちがいいものです」

魔法少女「そうですか? はむっ」

老執事「ええ。羨ましい限りです」

魔法少女「これ美味しい! ありがとうございます!!」

老執事「今の生活には慣れましたか?」

魔法少女「え? 慣れはしませんよ。毎日のように魔法少女だの無能だの言われてるんですから」

老執事「そうですね」

魔法少女「向こうから私のこと誘っておいて酷いですよねぇ」

老執事「ですが、貴方もここを出ようとはされていないご様子ですが」

魔法少女「だって、帰るところないですから」

老執事「そのようなことはないのでは? 少なくとも故郷に戻るという選択肢が……」

魔法少女「いいんです。ここで勉強して立派な魔術師になれば、出て行きますから」

老執事「そうですか」

魔法少女「次の試験で合格できれば即出て行きます」

老執事「私としましては、貴方に末永くここで働いて欲しいのですが」

魔法少女「ごめんなさい。あんな人の下でずっと働いてると精神がおかしくなりそうで」

老執事「いやはや……。申し訳ありません」

魔法少女「いえ!! 貴方が謝ることはこれっぽっちもないですから!!」

老執事「そうですか?」

魔法少女「私が地道に宣伝している苦労も知らずにあの人は言いたい放題じゃないですか。ちょっと言ってやってくださいよぉ」

老執事「私も雇われの身ですから。意見を言える立場ではございません」

魔法少女「はぁ……そうですね……」

老執事「ですが経営者からすればやはり資金は重要になってきますから。店の名前を出しながら無償でなにかするのは後々問題になるかと」

魔法少女「貴方まで……」

老執事「いえいえ、困っている人を助けることは立派なことです。私は貴方の行動に尊敬の念を抱いているぐらいです」

魔法少女「だったら」

老執事「しかし、貴方は一度無償で助けた相手に対して次から料金を支払えと言えますか?」

魔法少女「う……」

老執事「言い難いと思います。ですので、老婆心ながら申し上げますと、程々にされたほうがよろしいのではないでしょうか」

魔法少女「……はい。気をつけます」

老執事「申し訳ありません。歳を取ると、こうして口うるさくなるのは嫌ですな」

魔法少女「そんなことないですよぉ。私が悪いんですから」

老執事「貴方はやはりとても優しくて素敵なかたです」

魔法少女「えー? そうですかぁ? いやぁ、そんなことはないですよぉ。えへへ……」

執務室

勇者「ちぃ……。無いか」

勇者「まぁ、まだ立ち上げてから1ヶ月弱……依頼が来るほうがおかしい、か……」

老執事『私です』

勇者「おう。入れ」

老執事「失礼致します」

勇者「何か言ってたか?」

老執事「もう少し労って欲しいと」

勇者「そりゃ無理だな。仕事を無償で引き受けるようなポンコツを労うなんて」

老執事「褒めてあげるのも信頼関係を築く上では必要なことだと思いますが」

勇者「信頼ねぇ……もっと使える魔法が増えたら考えてもいいんだが……」ペラッ

老執事「はぁ……。ところで依頼のほうは?」

勇者「どれもこれもダメだな。アイツがおかしな宣伝をしてくれた所為で買い物やら子守りの依頼が多いんだ。これなんて飼い猫の捜索依頼だぜ。ふざけんなっつーの」

老執事「地道に努力されるのが良いかと」

勇者「あーあ、国から直接依頼がこねーかなぁ。そしたら俺も一躍ヒーローなのによぉ」

翌日

魔法少女「おはようございます」

老執事「おはようございます。朝食の準備はできておいます」

魔法少女「いつもありがとうございます」

勇者「たまにはお前が作ったらどうだ?」

魔法少女「5万で引き受けます」

勇者「雇い主から料金取るってか!?」

魔法少女「無償で仕事を引き受けないことにしたんです」

勇者「ほう。そりゃ、殊勝な心がけだな、魔法少女」

魔法少女「その呼び方はやめてください!!」

老執事「はっはっは。仲がよろしいですな」

勇者「おやおや、遂に脳細胞の活動が停止したか?」

魔法少女「やめてください!!」

老執事「これは失礼いたしました。お水をどうぞ」

魔法少女「はい! では、いただきまーす!!」

勇者「今日はこの依頼をこなすぞ。いいな」ペラッ

魔法少女「これは……」

勇者「簡単な力仕事だが、金がいい」

魔法少女「わ、私がやるんですか?」

勇者「お前も、やるんだ」

魔法少女「なんだぁ、二人でやるんですね」

勇者「行くぞ」

魔法少女「あぁ、待ってください」

老執事「行ってらっしゃいませ」

魔法少女「はーい。行ってきまぁーす」

勇者「留守な任せた」

老執事「はい。お任せください」

勇者「急げよ、貧乳女」

魔法少女「やめて!! それならまだ魔法少女のほうがいいですぅ!!」

老執事「さて、お掃除から始めましょうか」



魔法少女「わぁ……大きい船ぇ……」

勇者「この荷物を街の武器屋まで運べばいいのですか?」

船員「おう。でも、大丈夫か? お前はまだしも、あのお嬢ちゃんは……」

魔法少女「こんな船で世界一周できたらなぁ」

勇者「気にしないでください。バカなので」

船員「お、おう」

勇者「おい。早くこい」

魔法少女「はぁーい」テテテッ

勇者「これを持て」

魔法少女「わかりましたぁ……!!!」グググッ

勇者「大丈夫か?」

魔法少女「な、なんとかなりまふ……!! でも、なにか……こう……馬車かなにか……あれば……」ヨロヨロ

勇者「バカヤロー。武器屋までは遠くない。手で運べ」

魔法少女「ぐぐぐ……これぐらい……武器屋の人が……取りにきたら……いいのにぃ……」



魔法少女「ふぅー……ふぅー……!!」

勇者「えーと……。こっちだ」

魔法少女「あ、あにょ……!!」

勇者「どうした?」

魔法少女「これ……おもい……んですが……なにが……はいって……」

勇者「銃と弾が大量に入ってる」

魔法少女「お……ひぃ……」

勇者「小さな鉛玉も積もれば重いだろうな」

魔法少女「くひぃ……!!」プルプル

勇者「お。ここだ」

魔法少女「もう……げん、かい……」

勇者「すみませーん。荷物のほう、お届けにあがりましたぁ」

娘「あぁ、静かにお願いします」

勇者「はい?」

>>13
勇者「すみませーん。荷物のほう、お届けにあがりましたぁ」

勇者「すみませーん。荷物のお届けにあがりましたぁ」

娘「ここまで運んでくれてくれてありがとうございます。これがお代です」

勇者「どうも。奥まで運ばなくてもよろしいのですか?」

娘「はい。ここで結構です」

勇者「そうですか」

魔法少女「はぁ……はぁ……」

勇者「にしても、銃を売る店って感じはしませんね。昔ながらの武器屋って感じですけど」

娘「あ、は、はい。新商品で入荷して……」

勇者「なるほど。私個人としては寂しいですね。最近はめっきり減りましたから、こういう剣に拘ってるお店」

娘「あ、あの、そろそろ」

勇者「あぁ、すみません。では、ご利用ありがとうございました。またよろしくお願いします」

娘「はい」

勇者「ほら、立て。帰るぞ」

魔法少女「も、もうすこし、休憩……」

勇者「次の依頼だ」ペラッ

魔法少女「ま、また荷物運びですかぁ!?」

夕方

勇者「これで間違いないですか?」

「ああ、ありがとよ。何でも運んでくれるっていうなら、これからも利用させてもらうぜ」

勇者「必ず引き受けるわけではないことをご了承いただければありがたいです」

「そうか。ま、次の機会があれば頼む」

勇者「はい。ご利用ありがとうございました」

魔法少女「ましたぁ……はぁ……ひぃ……」

勇者「よし。これで今日の仕事は終わりだ」

魔法少女「また明日も荷物運び……するんですか……?」

勇者「余程金がよくないと引き受けない。今回はゴミみたいな依頼を処理しただけだ」

魔法少女「依頼料の交渉とか……いつするんですか……?」

勇者「それは俺の仕事じゃない。ジジイの役目だ」

魔法少女「あぁ……そうだったんですか……」

勇者「帰るぞ」

魔法少女「うぅ……歩くのも……きついぃ……」

便利屋

勇者「おい。遅いぞ」

魔法少女「そんなこといってもぉ……」

勇者「筋力強化の魔法でも使えば余裕だったのになぁ」

魔法少女「使えないこと分かっててそんなこと……!!!」

「お、おねがい!!」

勇者「ん? 客が来てるのか?」

魔法少女「なんでしょうか」

女の子「私の大切な友達なの!! 探して!!」

老執事「しかしですね……」

勇者「どうした?」

老執事「お帰りなさいませ」

女の子「誰も……さがしてくれないの……お願い……一緒にさがして……」

勇者「この子は?」

老執事「それが猫を探してほしいということなのです。いなくなってしまったのが1ヶ月ほど前らしく、もうご両親や友人知人が捜索に協力してくれないと仰っていて」

勇者「ああ。あの飼い猫を探して欲しいって依頼か」

老執事「どうされますか?」

勇者「……ちょっといいかな?」

女の子「な、なに?」

勇者「俺たちもお仕事でやってるんだ。猫を探すにはお金がいる。君は払えるかな?」

女の子「あ、えっと……その……貯金箱にあるから……それで……」

勇者「10万」

女の子「え……」

勇者「君に払えるか?」

女の子「え……えっと……」

魔法少女「ちょっと!! こんな小さな女の子にそんな大金を払えるわけないじゃないですか!!」

勇者「なにいってんだよ。慈善事業じゃないんだぜ。貰うものはきちんと貰う」

魔法少女「勇者って呼ばれたいんじゃないんですか!!」

勇者「ああ、呼ばれたいね。だから、こんな小さな依頼を引き受ける暇があれば、もっと大きな仕事を取ってくる。名を売るためにな」

魔法少女「むぅ……」

女の子「だ、だめなの……? ここのお姉ちゃんなら……きっと……てつだってくれるって……いってたのにぃ……」

魔法少女「え……」

勇者「なるほど。お前が買い物とか子守とか気安く請け負うからこういう勘違いした子どもが来ちゃったわけか」

魔法少女「……よし」

勇者「無償で仕事を引き受けないことにしたんだろ?」

魔法少女「今日の業務は終わりですよね」

勇者「ああ」

魔法少女「さ、行こう」

女の子「あの、でも……お金……」

魔法少女「そんなの要らないよ。探してあげる!」

女の子「ホントぉ!?」

魔法少女「私に任せて!!」

勇者「今から探すのか?」

魔法少女「ええ。そうです」

勇者「……勝手にしろ。言っておくが一切手は貸さないからな」

魔法少女「いいですぅ。私の魔法で猫を捕らえますから」

勇者「ああ、いいんじゃないか」

魔法少女「よーし!! 猫探しにしゅっぱーつ!!」

女の子「わーい!!」

勇者「バカばっかりだな」

老執事「あの、よろしいですか?」

魔法少女「はい? なんですか?」

老執事「上着を羽織ってください。夜は冷えますから」

魔法少女「ありがとうございます」

老執事「それと、小さなお子さんを夜に連れまわすのも関心しません」

魔法少女「あ、そっか……」

老執事「猫を探す前に家まで送り届けてあげたほうがいいかと」

魔法少女「そうですね!! そうします!!」

老執事「お気をつけて」

魔法少女「はい!! がんばります!!」

執務室

老執事「飲み物をお持ちしました」

勇者「ありがとう。今日はもう終わりだ。お疲れさま」

老執事「手伝いに行かれないのですか?」

勇者「なんのことだ」

老執事「お嬢様だけでは難しいと思います。もう夜ですから捜索も困難を極めるかと」

勇者「タダ働きな上に知名度の向上にも繋がらない。俺が手伝う理由はない」

老執事「そうですか」

勇者「あいつを雇ったのは失敗だったかもな」

老執事「私はそうは思いません。貴方の目利きは素晴らしいものだと信じております」

勇者「あいつが宣伝して増えた依頼は貴方だって知っているだろう。部屋の掃除してほしい。料理つくってほしい、一緒に買い物してほしい。……これだと別の店にしたほうが儲かりそうだ」

老執事「それだけ魅力的なのですよ」

勇者「はっ。あんな女の武器をまるで所持してない色気ゼロが? ああいうのが好みだっていう奴の気持ちがわからん」

老執事「外見ではないということではないですか?」

勇者「……いや、全然わからん」

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