【咲-Saki-】憩「宮永照はヒトじゃない」-A (35)


憩「うちは、ヒトじゃないって言われてきた」

憩「うちに勝てる人なんて、上級生でも誰もおらんかった」

憩「同じようなこと言われて来て、うちに負けて懐いてくれた人も居る。彼女たちのことは、楽しく麻雀を打てる仲間だと思ってる」

憩「けど、うちに勝てる人は結局だれもおらんかった。そして、無敗の実績を掲げて飛び込んだインターハイ…決勝に、あの人は居た」

憩「うちに勝てる人…初めて会った、ヒトじゃない人」

憩「宮永、照…」


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荒川憩は宮永照を「ヒトじゃない」と評することが多い。
公の場では本人の気分を害するため口にしないが、彼女の口からその言葉を聞いた人間は両手の指では到底数えきれない。

しかし、彼女は宮永照に対して、欠片ほどの悪意も持ってはいない。

『ヒトじゃない』

それは、彼女自身が、心無い人から言われ続けて来た言葉。
こと麻雀において、彼女は人外の怪物だった。

その彼女が「ヒトじゃない」と評するのは、自分と同類として親しみを感じている証なのだった。

また、宮永照から人を遠ざけるためでもある。

荒川憩は、自分と麻雀を打って恐怖や絶望を覚えた人間に対して、必ずこの評価を伝える。
荒川憩に対してすら恐怖を抱くのだ、その荒川憩が「ヒトじゃない」と評する宮永照には、近づこうとすら思わなくなるだろう。


【インターハイ個人戦会場】


照「荒川さん、久しぶり」

憩「憩でええっていつも言うてますやん。水臭いですわ」

照「そうだった。久しぶり、憩」

憩「お久しぶりです、照さん」

照「また、憩と打てるね」

憩「ええ、また打てますわ」


『宮永照と五分に打てる打ち手が同年代に居る』

これには、他の誰より宮永照自身が一番驚いた。

彼女は高校生から公式戦に出始めた。
理由は一つ、彼女の相手になる人間がいないからだ。
本気で打てば、将来自分と卓を囲みうる有望な打ち手を潰してしまうかもしれない。

それが、彼女が中学まで公式戦に一切出場しなかった理由である。
余談だが、大星淡、天江衣、神代小蒔なども、自分の意志か周りの大人の意志かの違いはあるものの、同じ理由で公式戦に出なかった人間である。

高校生から試合に出始めた宮永照だったが、彼女に伍する打ち手は、当然居なかった、居ないはずだった。
少なくとも、彼女が高校一年生だった時、彼女の相手が務まる高校生は一人もいなかった。
同年代の人間は、彼女と打っても潰れない程度に精神的に成長してはいたものの、卓を囲む実力はなかったのである。

しかし、二年目。
彼女と同じように、『周りを潰してしまうから』表に出なかった選手たちが次々と姿を現した。

龍門淵高校の天江衣。
永水女子の神代小蒔。

そして、目の前に居る荒川憩である。


照「一回戦、隣の卓だね」

憩「そうですね、競争でもしますか?」

照「終わらせる速さ?点数?」

憩「連荘数とかどうですか?」

照「乗った」


菫「乗るな、真面目にやれ」スパーン

照「イタッ…大丈夫、真面目にやっても連荘は伸びる。むしろ私に分がいい勝負」

菫「相手を尊重しろと言ってるんだ。相手からすれば、競争のネタにされるなんて屈辱以外のなにものでもない」

憩「あー…それもそうですね、すみません」

菫「分かってくれればいい。…お前たちクラスになると、私たちのような凡人の相手は退屈だろうしな。気持ちは分からんが、理解はできるよ」

照「そんなことは…」

菫「ないと言えるか?淡が来てから生き生きしていただろう?流石に気付くさ、お前を退屈させていたんだとな」

照「…」

菫「まあ、それはお前を満足させられない私に非がある。私の言葉にお前が耳を貸してくれるだけでもうれしいよ」

憩「いやいや、菫さんが照さんを満足させてもうたら、うちのこと見てくれなくなりますから」

照「そんなことはない、淡や天江さんが居ても憩は憩で特別」

憩「あはは、嬉しいな。その『特別』が麻雀以外やともっと嬉しいんやけど」

照「?」

憩「じゃ、行きましょうか」

照「うん」


ところで、人外の闘牌をする打ち手はこの二人だけではない。
そう言った打ち手の多くは、敗北を知らずに生きてきて、初めての敗戦の相手を親鳥に懐く雛鳥のごとく慕うことになる。

そして、荒川憩は数人の理外の打ち手を従えている。

当然、宮永照にも、彼女を慕う理外の闘牌をする打ち手が居るのだった。


咲「…あれはどういうことかな淡ちゃん?」

淡「それは見たまんまじゃないかな?」

玄「…練習試合の時に気付いていれば手を打ったのに」

怜「それは言うても仕方ないなあ…そもそも、玄ちゃんが照さんに惚れたの準決勝やろ?」

煌「しかし、恋敵が増えるのはすばらくないですよ…」

咲「見たところ、お姉ちゃんの好感度も高そう」

淡「ついでに、独占欲も強そうだよ。私たちみたいに協定を組むのも無理っぽい」

怜「そして、問題なことに、あいつが相手となると私らでも麻雀で確実に勝つのは無理やんな」

煌「私と玄さんはともかく、お三方でも厳しいですか?」

玄「さらっと私については納得されたのが癪だけど、あの人は相当な化け物だよ?」

咲「打ってみないことには断言はできないけど、お姉ちゃんが認めるぐらいなんだから相当だよね」

淡「むー…麻雀で凹ませてテル幻滅作戦は難しいか」

咲「玄さんあたりにボコボコにされてくれないとね。私とか淡ちゃんじゃ別に負けても幻滅までしないし」

怜「んじゃ、真面目に作戦練ろか…」


真佑子「…淡ちゃん、最近あの清澄の子とやけに仲が良いよね」グスン

和「咲さん…花田先輩は間違いを犯さないでしょうし、玄さんはおもちにしか興味がないからまだしも、あの小娘とオカルト女はなんなんですか!」

竜華「最近怜が冷たい…」

宥「玄ちゃん…どこー?」


「「「「ん?」」」」


真佑子「…長野の原村さん?」

和「…東京の多治比さんですね。一昨年のインターミドルではお世話になりました」

竜華「あ、阿知賀の…」

宥「あ、千里山の…」

和「む?そちらは、確か穏乃達と一緒に居ましたね」

宥「あ、玄ちゃんの姉の松実宥です、よろしく」

和「あ、ご丁寧にどうも。ご存知かもしれませんが、玄さんの友人の原村和です」ペコリ

竜華「あ、多治比さん、お久しぶり」

真佑子「清水谷さんもお元気そうで。今年は昨年のようにはいきませんよ」

竜華「みたいやね。牌譜見たよー。また一段と強くなったなー」


真佑子「…で、皆さん、もしかして…」

和「…多治比さん、ストーカー行為については咎める資格がないので不問にしますが、宮永さんはダメですよ?」ゴゴゴ

宥「…清水谷さん、玄ちゃんのこと気に入ってたみたいですけど?」ゴゴゴ

真佑子「安心して、淡ちゃん以外には興味ないから」

竜華「うちも怜一筋や、安心してや」


和「整理しますと、私は咲さん、多治比さんは大星さん、清水谷さんは園城寺さん、宥さんは玄さんがそれぞれお目当てということでよろしいですか?」

宥「そうみたいだね」

真佑子「では、目的は同じですね」

竜華「…ここはひとつ、共闘といこか」

和「ええ、策を巡らせるなら一人より二人、二人より四人の方が効果的です」

真佑子「異議なし」

宥「えへへ、みんな仲間だね、あったかーい」


照「ツモ、6000オールは6500オール。トビで終了だね」

先ほどは弘世菫の手前ああ言ったものの、やはり勝負は意識する。
宮永照は、この対局で五本場まで連荘を重ねた。

憩「ロン、2000は4400。次あたり誰かトンでしまうかな?」

当然、荒川憩も勝負は意識している。
そして、荒川憩が本気で連荘を伸ばそうとすれば、それを止められる人間はいない。

止められるとすれば、彼女と同様にヒトじゃないと称される一部の者たち。
牌に愛された子などと呼ばれる限られた打ち手が全力で立ち向かった場合や、一歩及ばないもののそれに対抗しうる稀有な打ち手が捨て身の覚悟で挑んだ場合だけである。
それは、一回戦の相手には居なかった。

連荘数での勝負、それは明らかに荒川憩に分の良い勝負であった。

連荘とあるいは連続和了と言えば宮永照の代名詞である。
それでも、荒川憩は連荘数で宮永照に対抗しうる。

宮永照には、連続和了に伴う打点上昇の制約がある。
他家が25000点しか持っていない以上、手が満貫や跳満に伸びてしまえば、遠からずトビ終了になる。

対して、荒川憩には制約がない。
だから、安手で連荘数を引き延ばせる。

勝負を持ちかけ、宮永照が受けた時点で、勝敗は決していたようなものだった。


照「私が…負けた?」

憩「ふふ、読み違えましたね照さん。うちだってその気になれば相手に点棒がある限り永遠に連荘出来る生き物なんですよーぅ」

照「ぐぬぬ…くやしい…勝てると思ったのに」

憩「うちが負ける勝負を自分から仕掛けるわけないでしょー」

照「次は直接打って決める!順位が上な方!」

憩「ええよー、うちと当るまでに負けんといてな?」

照「…私を誰だと思ってるの?」

憩「そうでした、ほな、決勝で」

照「うん」


咲「…で、どうするの?」

淡「情報班、報告を」

怜「私の集めた情報によると、荒川憩は宮永照に負けるまで負けたことがなかったそうや」

玄「…とんでもない化け物ですね」

咲「そう?私もプラマイゼロを負けに含めなければ負けたのはルールを覚えたばかりの頃だけだよ。ブランク明けでかつ丼さんに負けたけど、今やったら二度と牌持てないぐらいボコれるし」

淡「私もテル以外には負けたことなかったかな、穏乃は二人目」

咲「で、私が三人目」

淡「いつかリベンジするから。って言うか今回の個人戦で勝つから」

煌「荒川憩は、敗北の甘美な味を知って宮永照の虜になったと思われます、ということは…」

咲「私たちの誰かが荒川さんに勝てば良いんだね?」

怜「その通り。荒川憩を私たちの誰かに惚れさせて、照さんから引き離すんや」

玄「…お任せしました」

咲「そこは『お任せあれ』でしょ?」

玄「インハイの前に練習試合でボッコボコにやられたから私は無理。そもそもわたしは個人戦に出てないし」

煌「対局経験はありませんが、私も無理ですね。それ以前に福岡予選で落ちましたし」

怜「あー…ぶっちゃけると私も地区予選で荒川には3万差ぐらいつけられたわ。てゆうか個人でもアレにやられて四位やってん」

咲「だらしない先輩方ですね」

怜「いやいや、今なら基礎雀力も上がったしダブルもトリプルもあるし、いい勝負にはなると思うで」

淡「いい勝負ってすでに負け前提だよね。先輩方は引っ込んでてくださーい」

怜「ま、頼れる後輩たちに任せるか」

咲淡「「お任せあれ!」」


竜華「…荒川って単語が頻繁に聞こえるな…」

宥「うん…ということは、玄ちゃん達は荒川さんを追いかけてる?」

真佑子「荒川さんは、藤原さんや霜崎さんなどの実力派雀士たちによるファンクラブがあります。追っかけをしても不思議ではありません」

和「しかし、荒川憩に対して抱く想いが恋愛感情なのかファン心理的なものなのかによって結論が変わります」

宥「えっと…どういうこと?」

和「恋愛感情なら、荒川憩を排除すればいいだけです。しかし、ファン心理だった場合、あの五人が行動を共にするのは、強い仲間意識によるものです」

竜華「…となると…チーム以上の絆によって、うちらの『もっとも仲のいいチームメイト』という地位が脅かされる?」

和「私と咲さんの仲も、チームという絆から始まりました。チームとして苦難を乗り越えることで絆は深まります」

真佑子「…その中でも、学年が同じ宮永さんと淡ちゃんが接近する可能性は高い…」

宥「園城寺さん、病弱で手がかかるあたり私と似てるし、年上だし…いざというとき頼りになるし…まずいかも…」

竜華「怜は大丈夫や、怜は大丈夫や、怜は大丈夫や…」

和「負けが込んで辛い時でもいつも笑顔、準決勝での献身的なサポート、病弱な園城寺さんが支えてもらうなら花田先輩の方が良いかもしれませんね」

竜華「そんなぁ…怜いいいいいいい!!!」

和「というわけで、どうあっても見過ごせません。作戦を練ります」


憩「おや、利仙さん」

利仙「ふふ、こんなに早くあなたと当たるとは思いませんでした」

憩「お手柔らかに」

利仙「出来ない相談ですね。あなた相手に手加減など出来るはずがありません」

憩「ええやんちょっとぐらい」

利仙「神代小蒔には勝利するつもりでいますが、あなたには私が全力でぶつかっても勝てない壁であっていただきたく思います」

憩「小蒔ちゃんも、ずっと寝てたらうちよりヤバいと思いますけど?」

利仙「…それでも、わたくしにはあなたが神代小蒔に負ける姿が想像できません」

憩「買いかぶりやって。ま、よろしく」

利仙「ええ、よろしくお願いします」


照「…小走さん、久しぶり」

やえ「よう、チャンピオン。玉座を引き渡す準備はしてきたか?」

照「小走さんには無理だと思うよ」

やえ「ま、そうだろうな。だが、こっちにも意地と立場があって簡単に負けてやるわけにもいかない。となれば、勝てない相手にも自分を奮い立たせて挑まなきゃならない」

照「奈良の王者も大変だね」

やえ「おいおい、他人事みたいに言ってるが、お前は来年には私たちの頂点という看板を背負ってプロに挑むんだぞ?簡単に負けてくれるなよ」

照「…善処する」

やえ「公式戦は10度目か?」

照「うん、そのはず」

やえ「毎度毎度、よくもまあ私と当たるまで生き残るものだ」

照「私は毎回優勝するんだから当然。そっちこそ」

やえ「それは私だから当然だろう、さて、始めるか」

照「うん、期待してる。小走さんなら、楽しめる」


この大会は、一・二着を勝利、三・四着を敗北としてスイス式トーナメント形式で組み合わせが決まる。
最終戦はそこまでの勝敗や素点を参考に暫定1~4位、5~8位、9~12位といった具合に振り分けられる。

この時点で各卓に振り分けられた暫定順位は確定している。
仮に最終戦で4位が大敗、5位が大勝して予選までの素点や勝敗数が逆転しても、4位と5位の順位が逆転することはない。

また、最終戦以前の結果は考慮されず、最終戦の半荘の順位を各卓の暫定順位に割り当てて最終的な順位が確定する。

スイス式トーナメントでは、勝ち続ければ勝ち続けたもの同士で、負け続ければ負け続けた者同士で当たる。
必然、圧倒的強者と目される四人の組み合わせも、最終局を待たずにいつか起こる。


やえ「おいおい、組み合わせの都合で全勝グループと一敗グループが当たることはあるが…これは一敗組が放り込まれていい卓じゃないだろう?悪意を感じるな」

淡「咲、しくじらないでよ」

咲「淡ちゃんこそ、足引っ張らないでよ?五シャンテン縛り、本当に邪魔なんだから」

憩「小走さんと照さんの妹と照さんの後継者か…随分照さんに縁のある組み合わせやな」

やえ「私と宮永はそれほど縁はないぞ。まあ、全国大会の個人戦では必ず奴と当る妙な縁はあるが」

憩「十分ですよーぅ、公式戦だけならうちより多く照さんと当たっとるんやから」


宥「これがさっきの咲ちゃんと淡ちゃんと荒川さん、ついでに小走さんの試合だよ」

竜華「編集ありがとな、うちらは試合やから見れんから、助かるわ」

宥「ううん、気にしないで、私、あんまり頭良くないからこういうとこでしか役に立てないし…」

真佑子「うそ…そんな…」ガタッ

和「どうしました、多治比先輩?」

真佑子「淡ちゃんの絶対安全圏が…宮永さんにだけ効いてない…」

和「さすが咲さん…と、言いたいところですが、そこまで私の脳みそはおめでたくありません。手を組んでいると考えるのが妥当ですね」

竜華「そして、荒川には普通に効いとる…」

和「恋愛感情があるなら、こうはならないでしょう。意識的に効果を外せるのなら、無意識に手加減をしてしまうこともある。恋慕の情を抱く相手なら無意識に手加減をしてしまうものです」

宥「ってことは…玄ちゃんたちは…」

和「荒川憩ファンクラブですね。彼女たちは荒川さんの強さに惹かれているそうですから、全力で挑みもするでしょう」

竜華「怜、地区予選で結構な差つけられとったからな…」

宥「玄ちゃん、練習試合で手も足も出なかったから…」

真佑子「宮永さんと淡ちゃんの接点が不明ですが?」

和「何でも、ある程度の力があると、すれ違うだけでも相手の力を感じ取ることがあるそうです」

竜華「それや!てことは、荒川はあの二人以上の化け物ってことか?」

真佑子「少なくとも同格でしょうね。インターミドルから何度か打ってますけど、本気のあの子は淡ちゃん並みの化け物です」

和「とにかく、これで現状は確定しました。悪い方の予測が当たったわけです」

宥「対策は…二つだっけ?」

真佑子「一つは私たちも荒川憩ファンクラブに入ってあの五人の中に入る、穏当だけど、長期戦になるし、荒川憩に好感を持っているわけでもない私たちとしてはリスクが大きい」

竜華「なら、もう一つの策…荒川憩を徹底的に叩き潰して幻滅させる方を選択するしかあらへん」

和「…幸い、次はお義姉様と荒川憩の卓に私が入ります。お義姉様を使って荒川憩を徹底的に削れば大丈夫でしょう」

竜華「任せたで、リーダー!」

和「お任せあれ!」


怜「何やっとんねんお前ら!?」


咲「淡ちゃんに負けるのが嫌だったので、差し込みを見送りました」

淡「咲に負けるぐらいならテルを寝取られる方がましなのでトップの咲に直撃食らわせました」


玄「この二人を組ませたのが失敗だったね…」

煌「結果、牌に愛された子二人を抑えての大トップ。荒川株はストップ高です」

咲「私は悪くない。淡ちゃんが私のサポートするどころか足を引っ張るから…」

淡「私は悪くない。咲が私を出し抜いてトップに立とうとするから…」

怜「もうええわ!さて、これどうする?」

玄「うーん…打つ手なしかな?」

煌「すばらくないですが、こちらの切り札は切ってしまいましたしね」

咲「まだだよ…まだ、チャンスはある…」

淡「そう、私は三位だったからちょっと遠のいたけど、咲は二位だったからまだいける」

怜「そうか…そうやったな、まだ、確実に一回はチャンスがある。今度はしくじらんようにな」

咲「お任せあれ!」


和「」チーン

竜華「ど、ドンマイ…」

宥「照ちゃんの上家で荒川さんの下家だから最適な位置だったけど、サポートするたびに照ちゃんの機嫌が悪くなってたね」

真佑子「サポートされて怒るというのも良くわかりませんが、最後のギギギギ言ってるあれは見ているだけで震えるほどに恐ろしかったです」

和「オカルトにも限度があるでしょう…何ですかアレは…」

竜華「それはほら、チャンピオンやし」

和「私だってインターミドルチャンピオンですよ!ああもう、咲さんの姉とはいえ人外にもほどがあります!」

真佑子「さて、私は淡ちゃんと一緒に5位卓に入れたけど…」

和「さっきの負けで私は13位卓落ちです…そもそも一敗であの卓というのも間違ってる気がしますが」

竜華「全勝って誰やったっけ?」

宥「照ちゃん、憩ちゃん、咲ちゃんだけだね」

竜華「ということは…」

宥「一敗で素点トップの竜華ちゃんが1位卓に滑り込みだよ」

真佑子「さすが、平均素点関西一位」

竜華「てことは、うちが荒川へこまさなアカンのか…無理やろ?」

和「咲さんたち姉妹のサポートをすれば勝手に削れると思いますが…」

竜華「あんなの暴れさせたら荒川が削れる前にこっちがトブわ!」

宥「…だったら、優勝を目指せばいいんじゃないかな?」

和「は?何を言ってるんですか!?荒川憩をへこまさなければ私たちの想い人が寝取られるかもしれないんですよ!?」


真佑子「…いえ、それが正しいのかもしれません」

和「多治比先輩まで!?」

竜華「どういうことや?」

真佑子「…簡単なことです。私がもっと魅力的になって淡ちゃんを振り向かせればいいんですよ」

和「ぐっ…それはそうですが…」

宥「麻雀と同じだよ。本筋を外れても和了れることはあるし、本筋を外さなきゃ和了れないこともあるけど、本筋が一番いいんだ」

和「…それは、麻雀に関しては私自身の思想でもありますが」

竜華「せやな、あんな小娘に取られることなんかあり得んぐらい魅力的になって、怜をインハイチャンプの彼女にしたるんや!」

和「…残念ながら、インハイチャンプの彼女になるのは私です。咲さんが勝ちますから。私は、インハイチャンプのパートナーとして相応しい成績を残すとしましょう」

真佑子「淡ちゃんは麻雀が強い人が好きみたいだし、直接やって勝ってみせればOKですね」

宥「ふふ、みんなあったかーい」


怜「悪いけど、こうなってもうたら、うちは竜華の応援するわ」

淡「ま、流石にそうだよね」

咲「仕方ないですよ。私も、ここまで来たら優勝したいですし。あと、直接お姉ちゃんに勝って振り向かせる方が楽ですし」

煌「抜け駆けは感心しませんが、インターハイの決勝ですからね。私事に捕われず優勝を目指す心がけ、すばらです」

玄「私はおねーちゃんと観戦してます」

淡「せめてテルーに近い順位で終わらないといけないから、私も全力でやって来るよー」

怜「てなわけで、今日は…インハイではこれで解散やな。みんな、次の大会も全国まで上がって来るんやでー」

煌「個人では厳しいものがあるのですが、善処しましょう」

玄「次は個人でも出ます、またお会いしましょう!」

咲「次はチャンピオンとしてみんなに会いたいね。じゃあ、また」

淡「大会が東京なら地元だから、負けてても私は来るよー。ま、勝ってるとは思うけど。みんなちゃんと来てねー」

怜「千里山のエース舐めんなや!オータムでは北大阪一位で通過したるわ。ほな、またな!」


【秋季大会】

咲「みんな、久しぶり!って…なんか面子が…」


怜「いやな、竜華が放してくれへんねん」

竜華「当たり前や、あんた病弱なのに無茶ばっかするんやから、ずっとうちがついてないと…」


淡「ん~…これはなんというか…いや、もちろん私はテル一筋なんだけど…」

真佑子「インハイの時、賭けを持ちかけて、負けたら言うこと一つ聞くって言ったじゃないですか。淡ちゃんは何位で私は何位でしたっけ?」

淡「真佑子が5位で私が6位です…でもでも!まさか付き合ってくれとか言われると思わなかったし!」

真佑子「今回私に勝てたら言うこと一つ聞いてあげますよー?それ使って別れればいいんじゃないですかー?」

淡「ぐぬぬ…他家が私を警戒して三対一になりやすいのを利用して勝っただけのくせに…」

真佑子「照さんなら三人まとめて叩き潰しますよね?どうして淡ちゃんはできないのかなー?」

淡「うっさい!真佑子がいなければ大抵の相手には出来るの!」

真佑子「地区予選で勝った時の分のお願い一つ保留してあるから、今回負けてもそれ使ってまた付き合えばいいんですよねー」

淡「うー!スミレとかテルとか他人ばっか使って!直撃一回も取ってないくせにー!」

真佑子「勝ちは勝ちですから」

淡「うがー!絶対勝ってやるー!!!」


玄「…お姉ちゃんが放してくれないのです」

宥「だ、だって…秋になって寒いし…くっつくとあったかいし…」ブルブル

玄「はいはい、あっためてあげるからね」ギュー

宥「玄ちゃんあったかーい」


煌「おやおや、これはライバルが減りましたか?」

咲「…かなあ?」

怜「ないない、竜華は親友、照さんは想い人、これは鉄板や」

淡「真佑子に勝ち越したら別れてテルを追っかけるんだから!」

玄「お姉ちゃんはお姉ちゃんであって恋人ではないからノーカン!」


真佑子「おやおや、それはなおさら負けられませんね?どうですかみなさん、ライバルを減らすために私と共闘しませんか?」

咲「足を引っ張らないならいいけど…」


竜華「怜、約束通り、うちがこの大会で優勝したら付き合ってな?」

怜「ないない、むしろ私が直対でその儚い夢を潰したるわ」


和「咲さん!また勝手に行動して!すぐ迷子になるんだからおとなしくして…って、みなさん、お久しぶりです」

真佑子「いないと思ったら、和ったらはぐれてたんですか?」

咲「うっ…撒いたと思ったのに」

和「運動音痴の咲さんが私を振り切ろうなどとは、百年早いです」

咲「言っとくけど、付き合うって言うのなしだからね!麻雀勝負って聞いたから受けたのに!」

和「ネット麻雀はれっきとした麻雀でしょう?負けたんだからお姉さんを諦めて私と結ばれて下さい」


宥「玄ちゃーん…寒いよぉ…」

玄「はいはい、今あっためてあげるからね」


煌「…これはこれは、独り身は私だけですか。ライバルが減ったとはいえ、仲間がいなくては…私だけでは照さんを追いかけるのには力不足ですね」


照「憩、インハイ決勝の賭けだけど…」

憩「ああ、うちが勝ったら照さんの言うこと一つ聞く、照さんが勝ったらうちの言うこと一つ聞く、でしたっけ?横の卓で多治比さんが淡ちゃんに持ちかけてた奴をうちらもやろうって言って始めたアレ」

照「うん、保留にしてたあれを、今行使したい」

憩「ええけど、『大会でわざと負けて』とか言わんといてな?」

照「そんなことしなくても私は勝つ」

憩「ふふ、それでこそ照さんや」

照「で、命令だけど…」

憩「はい、なんでしょー?」



照「…照って呼んで」

憩「…はい?」

照「さん付けしないで、照って呼んで。憩と、もっと仲良くなりたい」

憩「…それはダメですわ」

照「なっ!?け、憩は、私のこと嫌い?」

憩「いやいや、そういうわけじゃないんやけど…そのお願いにあの約束は使わせられんわ」

照「えっと…?」

憩「別に、そんなん使わなくてもOKするもんな。照と仲よくなりたいのはこっちもおなじやし」

照「あ…」

憩「で、他にお願いはないんか?約束使わないと断られそうなやつ」

照「あ、あるけど…それは…」

憩「じゃ、もうしばらく保留やな。今回は何賭ける?」

照「…前回と同じで」

憩「よっしゃ、今度は勝ちますよーぅ」

照「残念だけど、今回も私が勝つ」

憩「いやいや、照は今回で引退やろ?引導渡したるから安心して後を任せてくれてええで?」

照「有終の美を飾らせてもらう」

憩「じゃ、勝負やな、決勝までちゃんと来てなー」

照「そっちこそ」


宮永照はヒトじゃない。

けど、荒川憩もヒトじゃない。

ヒトじゃない二人は、互いを照らし、互いの憩いとなる。

全てを照らす光は、荒川憩に向けられる。

全てを癒す憩いは、宮永照のために訪れる。

互いに対等である唯一の存在。

ヒトじゃない少女たちの物語は、続いていく―――





同タイトルのネタがもう一本あるのですが、全く関連ないので別スレで
…と思ったらスレッド立てすぎって言われたので後で立てます

乙。

アンチ照だと思ったら百合系だった。
まぁよく考えれば当然だね。
憩は早く本編でその実力見たいよねぇ。

>>1
速報では咲SSは全て京太郎主人公だけと決まったんだ
百合SSはVIPでやることになってる
あんまりみんなの怒りを買うようなことはしない方がいいと思うよ

>>31
ワハハ、そんなこと起こるわけないぞー

おつー
良いカンジの拗れっぷりだた

【咲-Saki-】憩「宮永照はヒトじゃない」-B - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417519219/)

お読みいただきありがとうございます。
これは闘牌入れたかったんですけど、憩さんの能力がわからないから闘牌書けないんですよね。
前書いたやつから能力引っ張ってくるのも微妙ですし、かといって毎回新しいの設定して能力説明するのも手間ですし。

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