ミカサ「訓練兵になる前に」 (72)

進撃のSSです。

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ミカサ「あくび」

アルミン「あっごめん。だって眠くてさ」

アルミン「エレン遅いね」

ミカサ「うん。遅い。私も一緒に行くべきだった」

ミカサ「エレンだけで冒険はまだ早かった」

アルミン「隣村に買出しにいっただけだよ」

ミカサ「ひどい目にあっているかも」

アルミン「なんで」

ミカサ「エレンだから」

アルミン「わからないよ」

ミカサ「わかるっていう」

アルミン「えー」

ミカサ「・・・」

アルミン「わかったよ」

ミカサ「うん。とにかく心配」

アルミン「急に話さなくなるのやめてよ。怖いから」

ミカサ「・・・」

アルミン「やめてって」

ポツポツ・・・

アルミン「雨が降ってきたんだね」

ミカサ「大変。風邪を引いてしまう」

アルミン「合羽持っていってねって言ったから大丈夫だよ」

ミカサ「本当?」

ミカサ「ありがとうアルミン。勲章ものだと思う」

アルミン「その勲章いらないかも」

ミカサ「ごはんが少し豪華になる権利があるのに」

アルミン「えっどんな風に?」

ミカサ「摘んできた花を食器に添える」

アルミン「わーそれは綺麗だね

ミカサ「そう」

アルミン「それで?」

ミカサ「それで?とは?」

アルミン「終わり?」

ミカサ「終わり」

アルミン「量が少し増えたり例えばあと1品おかずがあったりとか」

ミカサ「するわけない」

アルミン「やっぱり?」

ミカサ「やっぱり」

アルミン「仕方ないけどね」

ミカサ「私達は生産はするけど中央に出してしまうからこの村には」

アルミン「残らない。僕らもっとお腹いっぱい食べれたらいいのにね」

ミカサ「世間は厳しい」

アルミン「そうだね。でも僕らまだいいのかも。ここの開拓地の生活もそんなに悪く思わないよ」

アルミン(二人がいるから)

アルミン「もう何年になるよね」

ミカサ「そう何年も経つのだけれど二人はもっと成長しなくては駄目」

アルミン「そうかなぁ」

ミカサ「アルミンあなたはもっと強く、エレンはもっと大人になって欲しい」

アルミン「そうかなぁ」

ミカサ「このままではお母さんとても心配」

アルミン(エレン早く帰ってこないかなぁ)

ミカサ「聞いている?」

アルミン「えっあーこのままって言っても訓練兵になったら変わると思うよ」

ミカサ「訓練兵・・・」

アルミン「そう苛烈な訓練をするっていう噂だから」

アルミン「僕らもいつか行くんだね。そう考えると少し怖くなるね」

ミカサ「怖がらなくていい。だってまだ行くのは先だから」

アルミン「そんなに先じゃないよね?むしろもう行ってもいい年頃だけど」

ミカサ「まだ募集来ていないでしょ?」

アルミン「うんきてない」

ミカサ「ならいい」

アルミン「どういう意味?」

ミカサ「・・・エレンの音だ」

アルミン「帰ってきたの?解るの?すごい」

ミカサ「玄関で待っていよう」

アルミン「ここでもいいでしょ」

ミカサ「・・・」

アルミン「わかったよ。もうっミカサのほうこそ」

ミカサ「えっ?」

アルミン「いいよ待とうよ」

ミカサ「うん」

アルミン「こないね」

ミカサ「くる」

アルミン「ふと思ったんだけど。こうして二人で扉の前に立っているとさ」

アルミン「帰ってきたエレンびっくりすると思うよ」

ミカサ「なぜ?」

アルミン「それはいきなり目の前に人が立っていたら驚くと思う」

ミカサ「それはそう」

バシャバシャ

アルミン「あっエレンだ!」

ミカサ「じゃあ天井に」

アルミン「駄目だよ!怖いって。なに天井って?」

ミカサ「貼り付く」

アルミン「怖い」

ミカサ「じゃあ」

エレン「あーまいったぜ。途中から雨がすごくてさ」ガチャ

アルミン「お帰りエレン」

エレン「アルミン。遅くなって悪い」

アルミン「うんいいよ」

エレン「ミカサは?どっかいったのか?」

ミカサ「お帰りエレン」ヌッ

エレン「うわっ!」

ミカサ「そんなに驚くのは酷いと思う」

エレン「扉の後ろから出てきたらびっくりするだろ!」

ミカサ「これでも譲歩した」

エレン「はぁ?」

アルミン「いいからごはんにしようよ」

エレン「おう」

ミカサ「エレンから雨の匂いがする」

エレン「ああちょっと濡れたかもな」

ミカサ「ちゃんと体を拭いてきて」

エレン「めしは」

ミカサ「早く」

エレン「わかったよ。ったく」

ミカサ「そうだエレンちゃんとパン買ってきた?」

エレン「うるせーな買ってきたよ」

アルミン「ミカサは心配しすぎだよ」

ミカサ「心配なんてしてない」

エレン「パンは大丈夫だぞ?」

アルミン「あーそうだね。良かったね」

エレン「じゃ食うか」

ミカサ「ちゃんと体拭いた?寒くない?」

エレン「大丈夫だって」

アルミン「明日も早いから早く食べて寝よう」

エレン「はぁ・・・」

ミカサ「アルミンはもう眠いの。許してエレン」

エレン「違うって。いや昨日も今日も明日も毎日畑を耕しているってどうだろうな」

エレン「俺達ずっとこんなことやっていいのかって最近思うんだよ」

アルミン「・・・」パクパク

ミカサ「・・・」パクパク

ミカサ「アルミンそのお皿とって」

アルミン「はい」

エレン「早く訓練兵になりてえよ」

アルミン「おいしいパンだね。いつもと違うとこで買ったの?」

エレン「ああそうだ。って聞いてるか?」

アルミン「毎日ね」

ミカサ「エレンご飯のときは静かに食べる」

エレン「でもさぁ」

ミカサ「エレン」

ミカサ「エレン仕方ないでしょ?この世界では野菜を作らなくてはいけない」

ミカサ「違わないアルミン?」

アルミン「野菜おいしいよね」

エレン「違うって俺が言いたいのは早くここを出て訓練してさ」

エレン「調査兵団に入って外の世界に行きたいってことなんだよ」

エレン「アルミンお前もそうだよな?」

アルミン「そうだね。海は見てみたいなぁ」

ミカサ「・・・アルミン。あなたはさっき野菜を作っていたいって言っていた」

アルミン「えっ?」

エレン「調査兵団に入って巨人を倒したいって言ってたよな?」

アルミン「どっちも言った覚えは」

エレン「アルミン正直になれよ。外の世界にいきたいよな?」

アルミン「えっと」

ミカサ「そうアルミンはお父さんとお母さんどっちの言う事が正しいと思うの?」

アルミン「なに言ってるの」

エレン「俺だよな」

ミカサ「私」

アルミン「僕は・・・」

アルミン「僕は二人と一緒ならそれでいいよ」

ミカサ「エレン。アルミンは良い子に育った」

エレン「ああほんとだな」

アルミン「いや育てられてないし」

ミカサ「なら私のご飯少し」

アルミン「えっいいの?ありがとう」

エレン「あっ」

ミカサ「えっ?」

アルミン「そうだねエレンには僕から」

エレン「いいのか?」

アルミン「うん」

ミカサ「・・・」

エレン「・・・わかったよ」

エレン「ほらっやるよ」

ミカサ「うん」

アルミン(僕は今日のことを覚えていられたらなぁって思うよ)

ミカサ「おいしい」

エレン「それはそうだろ」

ミカサ「ふう」

ミカサ(夕方に今日の作業が終って祈る)

ミカサ(他の開拓村の人がやっていたから真似てみたけど)

ミカサ(どんな意味なのかは知らない)

ミカサ(それより腕が太くなってきたのは気のせい?)

ミカサ(明らかにアルミンよりは太い・・・と思う)

ミカサ(それにしても二人はどこ?作業は終ったのに)

エレン「あれ取れるかな?」

アルミン「あんな高いところの実なんてとれないよ」

エレン「えいっ」

アルミン「ジャンプしても駄目」

エレン「石でも当ててみるか?」

アルミン「実に当たっちゃうよ。僕らが大人だったら採れたかもしれないね」

エレン「俺もアルミンも背は高いほうじゃないからな」

アルミン「家に帰ろう?ミカサも待ってるし」

エレン「うーんいやちょっと待てアルミン」

アルミン「なあに?」

エレン「肩車だ!俺がアルミンを担いでやるからそのまま採ればいいんだ」

アルミン「えー」

ミカサ「なにを二人でしているの?」

アルミン「あっミカサ。あの木の実を取りたいんだって」

ミカサ「あんな高いところにあるのに?」

エレン「採ってやるからまあ見てろよ。さあ来いアルミン」

アルミン「高いのやだなあ」

ミカサ「なにするの?」

エレン「いいか?」

アルミン「うん」

エレン「よいしょ」

アルミン「うわっ」

エレン「どうだ?」

アルミン「重くないエレン?」

エレン「全然大丈夫」

アルミン(プルプルしてるけど)

ミカサ(大丈夫?)

アルミン「うん。ちゃんと掴んでいてね」

アルミン「えいっ」

エレン「採れそうか?」

アルミン「駄目みたい。まだ高さが足りないよ」

エレン「くっそーじゃあ肩の上に立ってジャンプだ!」

アルミン「簡単に言うけど無理!」

ミカサ「私が上に」

アルミン「えっ?」

エレン「いいよ。だってお前」

アルミン「ミッミカサは女の子だからね。あんまり危ないことはしないほうがいいよ」

ミカサ「そう」

アルミン「ねっエレン」

エレン「重 アルミン「エレン!」

ミカサ「おも?」

アルミン「えっと思いのほか危ないから」

エレン「ん?」

アルミン「エレンもう諦めようよ」

エレン「うーん。なんか梯子とかないか?」

ミカサ「ない」

エレン「ないかぁ。立体機動装置でもあればなぁ」

アルミン「あったとしてもそんなのに使っちゃ駄目だよ」

エレン「わかってるよ」

アルミン「でも飛べたら楽しいだろうね」

エレン「だろ?あー早く訓練兵になりてーな」

ミカサ「まだ早い」

エレン「早くないだろ。俺達もう訓練兵になれる年だろ」

エレン「なあ案内とか来てないのか?」

ミカサ「きてない!」

エレン「うわっそんな大きな声だすなよ」

ミカサ「ごめんなさい・・・そうだ私が下でエレンを肩車をする」

ミカサ「それが最善なはず。背のバランス的に」

エレン「じゃあやってみるか」

エレン「よいしょっと」

ミカサ「ゆっくり」

エレン「お前こそしっかりしてろよな」

ミカサ「うん。エレン立ち上がるから」

エレン「おう」

ミカサ(とても軽い!)

アルミン「・・・」

エレン「どうしたアルミン?」

アルミン「すごい(安定感だ)ね」

エレン「そうか」

ミカサ「どう?」

エレン「うーん。まだ届かないなぁ」

エレン「そらっ」

ミカサ「あんまり上で暴れない」

ミカサ(でもエレンとこんな風に遊ぶのは久しぶりかもしれない)

エレン「やっぱ無理か」

アルミン「残念だったね」

ミカサ(終ってしまう。もう少し遊んでいたい)

ミカサ「・・・」

エレン「ミカサ?」

ミカサ「あっ。エレンエレンちょっと降りて」

エレン「重かったか?」

ミカサ「そうじゃない」

ミカサ「ちょっと思いついたの」

ミカサ「立体機動装置無し立体機動」

エレン「はっ?」

アルミン「なにそれ?」

ミカサ「まずエレンを抱える」

エレン「なにやんだ?」

ミカサ「エレンこっち向いて」

エレン「ああ」ジッ

ミカサ「あんまり見過ぎない」

エレン「なんだよ?」

ミカサ「ちゃんと受け止めるから頑張って」

エレン「頑張るぜ」

アルミン(エレン何するかわかって言ってるのかな?)

アルミン(ミカサがエレンを正面で抱きかかえているけど)

ミカサ「ふん」

アルミン(投げた!)

ミカサ「エレン採って!」

エレン「オッケー!」パシッ

ミカサ「エレンすごい」

アルミン「すごいなー(エレンをあそこまで投げれるミカサが)」

エレン「やったぜアルミン、ミカサ。後で食おうぜ」

ミカサ(やったエレンもアルミンも喜んでる)

アルミン「エレン、ミカサまだ残ってるところあるよ」

ミカサ「またやる?」

エレン「・・・仕方ねーな。結構大変なんだぞ」

アルミン(あれから僕達の間ではブームになって)

アルミン(ミカサの腕は少しムキムキになった)

アルミン(僕は口に出したことはないけど)

アルミン(エレンは自分からはやろうって言わない)

アルミン(ミカサからやろうって言ったときだけ)

アルミン(いいけどさ)

アルミン(これも口に出しては言えない)

アルミン(これってよく見たらたかいたかいだよね)

アルミン(親が子供をあやすときの)

アルミン(別にいいよね)

アルミン(僕はこれも口に出したことはないな)

アルミン(夕暮れに飲み込まれるように遊ぶときに)

アルミン(残酷な過去があったなって)

アルミン(残酷な未来があるだろうなって)

アルミン(僕は同時に思うことがある)

アルミン(どう言えばいいんだろう)

アルミン(ミカサとエレンはどう思っているのだろう?)

ミカサ(何かを祈ってそれが誰かのためなら)

ミカサ(ここからどこに行けば家族を助けたり、守ったり)

ミカサ(それができないかも)

ミカサ(少なくとも私は昔できなかった)

アルミン「もう寒くなる季節だよね」

エレン「こんなときも農作業かよ」

ミカサ「冬には冬の作業があるの」

エレン「もうすっかり慣れたみたいなこと言ってさ」

アルミン「でもさ冬に育つ野菜ってあるんだね。知らなかったよ」

ミカサ「すごいでしょ」

エレン「何でお前が得意気なんだよ」

ミカサ「エレンは文句が多い」

アルミン「昔からそうじゃない?」

エレン「多くねーよ。ああ寒くてやってらんねーな」

アルミン「ほらまた」

ミカサ「また」

エレン「わかったよ。やるって」

ミカサ「エレンはもっと野菜のことを考えたほうがいい」

エレン「そんなに考えたくはねーけど」

ミカサ「アルミンもそう思うでしょ?」

アルミン「えっ?今日はこの種を植えるからね」

エレン「なんの種だ?」

ミカサ「エレン知らないの?」

エレン「お前知ってるのかよ」

ミカサ「それは些細なことだと思う」

アルミン「ねえ聞いて」

アルミン「この畑に今植えるこの種って実は中央に出荷するものじゃないんだ」

エレン「ってことは?」

アルミン「僕たちのものさ」

アルミン「他の人たちには秘密だよ。村の人は知っているけど」

ミカサ「いつごろ食べられるの?

アルミン「春だね」

ミカサ「春」

エレン「春かぁ。早く暖かくなってほしいぜ」

ミカサ「・・・」

エレン「何やってんだ?」

ミカサ「祈ってる」

ミカサ(ちゃんと育ちますようにと)

エレン「ふーん。じゃあ俺も」

アルミン「僕も」

ミカサ(とても静か。私は目を閉じる二人を見ている)

ミカサ(どうかこのまま続いて欲しいのだけど)

エレン「ちゃんと育つといいな」

アルミン「そうだね」

アルミン「じゃあ残りやっちゃおうか」

エレン「そうだな」

アルミン(さっきは静かだった)

アルミン(世界中に僕らだけって感じで)

エレン「アルミン。手が止まってるぞぉ」

アルミン「ごめん。ねえエレン。エレンはさ、今の暮らしってどう思う?」

エレン「静かだなって思ったな。さっきみたいに」

アルミン「僕もそう思ったよ。ずっと続くかなって思ったもん」

アルミン「それでエレンはどうして壁の外に行きたいの?」

エレン「んっ?なんでだ?」

アルミン「前もその前も聞いたかも知れないけど」

アルミン「なんか最近また聞いてみたくなったんだ」

エレン「理由なんて昔から変わらないよ」

アルミン「昔と変わらずに?」

エレン「そうだな。変わらずに」

アルミン「そう」

エレン「そうだ。関係ないけどこの前さ」

エレン「俺は虹をこの前の急に降り出した雨の時に見たんだ」

アルミン「虹?」

エレン「そう俺は見たんだ」

エレン「虹は壁を越えるんだ。あのでかいアーチが」

エレン「すげえよな」

アルミン「へえ。僕も見たかったなあ」

アルミン「ねえミカサ?」

ミカサ「だからあのとき帰ってくるのが遅かった?」

ミカサ「エレンは私達といたくないの?」

エレン「はあっ?そんな訳ねーだろ。どうしたんだよお前」

ミカサ「・・・ごめんなさい」

エレン「なんだよ」

アルミン「まあまあ」

ミカサ「はぁ」

アルミン「ミカサこの前はどうしたの?」

ミカサ「エレンは?」

アルミン「もう寝たよ」

ミカサ「早い」

アルミン「いつもと変わらないよエレンは」

ミカサ「私はいつもそれで困ってしまう」

アルミン「ふふっ」

ミカサ「私は真面目に」

アルミン「あっごめんね」

アルミン「・・・もし海の上で生まれた子供がいたら壁を見たいって思うかな?」

ミカサ「海?」

アルミン「壁の遥か向こうにあるところ」

アルミン「僕はなんていったらいいのかな」

アルミン「僕らにとってはそこにあるっていう。ただあるってほんとにそうだね」

アルミン「それがどんな影響があるのかなんて知らないままに」

アルミン「ある壁がその存在を知っている知らない人がいたら」

アルミン「どうだろう。僕やエレンが思う海のように思えるかなぁ」

アルミン「そんな風なことを最近ちょっと思ったんだ」

ミカサ「私にはよくわからない」

アルミン「実は僕もよくわからない」

ミカサ「・・・アルミン」

アルミン「なに?」

ミカサ「えい」ポカッ

アルミン「いたっ」

ミカサ「ふざけない」

アルミン「ふざけてないよー」

アルミン「でもね。僕じゃなくてエレンだったらさ。なんか分かる気がする」

ミカサ「見たいっていうと思う」

アルミン「でしょ?」

アルミン「自分達のことじゃないのに不思議だね」

アルミン「もしかしたら自分以外のほうが自分の気持ちがわかるのかも」

アルミン「いや違うかな。ずっといるからエレンもミカサも」

アルミン「もう慣れたものだね」

アルミン「ミカサがなにかに悩んでいるのも」

ミカサ「気持ちがわかるだけで何かできたらいいけど」

ミカサ「そうでない場合は」

アルミン「例えば訓練兵の案内のこととか?」

ミカサ「・・・そう。いつから?」

アルミン「なんとなくね」

アルミン「それが来たことが僕らじゃないかエレンに言えないのは」

ミカサ「アルミンにだってそう」

ミカサ「だって」

ミカサ「だって兵団に行かせたくない。このまま一緒に暮らしたい」

ミカサ「このままここにいてほしい」

ミカサ「貧しいかもしれないけど」

ミカサ「ごはんもある」

ミカサ「寒いかもしれないけど」

ミカサ「どうして・・・」

アルミン「僕も同じ風に思うことあるよ」

アルミン「エレンともっと話してみたら。まだ時間はあるよ」

ミカサ「エレンと?・・・そう!」ガタッ

ミカサ「もっとここの生活の素晴らしさがわかればいい」

アルミン「えっ?」

アルミン「僕が言いたいのはね」

ミカサ「ありがとうアルミン」

アルミン「えっどういたしまして」

ミカサ「がんばる」

ミカサ「また明日」

アルミン「あぁ・・・なんか間違った」

次の日

エレン「あー今日もさみーな」

ミカサ(きっとここの生活が寒いから嫌なのかもしれない)

ミカサ(なので前から作っていた手袋をあげよう)

ミカサ「エレン寒くない?」ペシペシ

エレン「大丈夫だよ・・・叩くな」

ミカサ「寒くない?寒くない?」ペシペシペシペシ

エレン「・・・」

ミカサ「さむ・・・くない?」

エレン「なんだよ!」

ミカサ「わっ」ビクッ

ミカサ(怒られた)シュン

ミカサ「エレン・・・手が・・・寒いから」

エレン「お前手が寒いのか?」

ミカサ「あのっ」

エレン「手を出してみろよ」

ミカサ「えっ」

エレン「先に作業やってた俺の手のほうが暖かいぞ」ギュ

ミカサ「・・・すごくすごく暖かい」

エレン「そうだろ」

ミカサ「うん」

ミカサ「アルミン!」

アルミン「なーに」

ミカサ「やった!」

アルミン「やってないよ多分やってないよ」

ミカサ「手が暖かかった。良かった」フンフン

アルミン「手袋はあげれたの?」

ミカサ「そうだアルミンにもあげよう。あげる」

アルミン「ありがとう。エレンには?」

ミカサ「そうだ!エレン手袋!」

アルミン(あんなにテンションの高いミカサ初めてみるかなー)

エレン「手袋?持ってんならなんでつけなかったんだ?」

ミカサ「私はもう大丈夫」

エレン「なんで?」

ミカサ「うん」

エレン「いいよお前つけろよ」

ミカサ「大丈夫暖かい。暖かいのいつでも」

ミカサ「アルミンちょっと来て」

アルミン「?うん」

ミカサ「エレン大丈夫」

ミカサ「私はアルミンのふさふさの髪に手を入れる。暖かい」

アルミン「なんで?」

エレン「俺も」

アルミン「いやなんでよ?」

ミカサ「冬でも暖かい」

エレン「ふかふかしてる」

アルミン「よーし訳が分からない」

ミカサ(やはりここの暮らしは素晴らしい)

ミカサ(・・・と思う)

ミカサ「エレンはここの暮らしはどう?」

エレン「悪くないな。みんないるし」

ミカサ「うん」

アルミン「手を頭からどけてくれない?」

ミカサ「もしできるなら」

ミカサ(できたなら)

アルミン「無視?」

ミカサ「・・・」ポンポン

ミカサ「ずっと暮らせるなら」

ミカサ「・・・」ポンポンポンポン

アルミン「頭ポンポンしないで」

ミカサ「エレンはどう思う?」

エレン「そうだな。ずっとかぁ」ポンポン

アルミン「エレンも?」

ミカサ「嫌?」ギュ

アルミン「頭ギュってしないで」

エレン「そんなことねーけどさ」ギュ

アルミン「もういいよ」

ミカサ「そんなことないなら」ナデナデ

アルミン「・・・」

エレン「楽じゃないけど楽しいけどな」ナデナデ

アルミン「・・・」

エレン「飯だって少ないけどあるし」ヨシヨシ

ミカサ「寒いのは?」ヨシヨシ

アルミン(うーん)

エレン「寒くても寒くねーよ」

アルミン(終わり?)

エレン「なあもう作業に戻ろうぜ」

ミカサ「あっ」

ミカサ(もう戻らないような気がして)

ミカサ「エレン」

ミカサ「話を続けてほしい」

ミカサ(未来のことを話すと泣きたくなって)

ミカサ(過去のことだってそう、同じくらいに)

ミカサ「(だから)今、話を」

ミカサ「できたなら」

ミカサ「・・・嬉しい」

エレン「いつも話しているだろ?」

ミカサ「・・・うん」

アルミン(がんばって)

ミカサ「エレン答えを・・・聞かせて」

エレン「俺は訓練兵になるよ」

ミカサ(わかっていた。ずっと前からわかっていた。聞くまでもなかった)

ミカサ(聞くしかなかった)

アルミン「ここのほうがずっと安全かもしれないのに?」

エレン「ここだっていつまでも安全じゃないしな」

アルミン「そうだよね。そうなんだ」

エレン「その前にやってやる」

アルミン「つらいかもしれないよ」

エレン「そうかもなー」

エレン「でも大丈夫だろ。乗り越えてやるさ」

アルミン(楽しい時間で止まっているわけじゃあないんだ)

アルミン「エレンありがとう」

アルミン(それでもこの時間が重要なんだって思うようになるよね)

ミカサ「・・・」

エレン「なんでそんなに落ち込んでんだ?」

ミカサ「一緒にいられなくなってしまうかもしれない」

ミカサ「死んでしまったら」

エレン「一緒にいられないって」

エレン「なんだよ」

エレン「そんなの」

エレン「全然問題ないだろ」

ミカサ「なぜ?」

アルミン「なんで?」

エレン「・・・そんなのさ」

エレン「ずっと一緒にいればいいだろ」ボソッ

アルミン「えっ?」

ミカサ「えっ?もう一回言って」

エレン「さっ作業やるぞ」

ミカサ「聞こえなかった。もう一回」

アルミン「もう一回」

エレン「ああなんだよ」

ミカサ「はやくはやく」

アルミン「はやく言ってよ」

エレン「はぁ・・・よくわかんねー」

エレン「でもいいか」

エレン「いつまでも一緒にいよう」

ミカサ「やった」

アルミン「やったあ」ワーイ

エレン「はやく作業するぞ」

ミカサ「顔が真っ赤」

アルミン「ほんとだ」

エレン「お前らと違って仕事してんだよ」

エレン「だから」

ミカサ「エレン」

エレン「もういいだろ」

ミカサ「違うエレンごめんなさい。ありがとう。それで」

ミカサ「今度エレンがご飯作って」

ミカサ「作らなきゃ駄目」

ミカサ「そうしたらいい物をあげるから」

エレン「いい物?」

ミカサ「そう」

ミカサ「覚えていてね」

アルミン「エレンできたー?」

エレン「まだだ」

ミカサ「まだ?」

エレン「見てろよ」

アルミン「ねえそれ味見した?」

エレン「まだ待てよ。すぐできるから」

アルミン「違うよ。なんか個性的な色してるから」

エレン「?したよ」

ミカサ「どんな味なの?」

エレン「わかんね」

ミカサ「エレンが作ったのに!?」

アルミン「わからないの?」

エレン「あー大人の味なんだよ。複雑なんだ」

アルミン「はいっ」

ミカサ「なんだねアルミン訓練兵?」

アルミン「はいミカサ教官。エレンの発言は言い訳だと思います」

クルッ

ミカサ「エレン訓練兵本当かね?」

エレン「その芝居なんだ?」

ミカサ「本当?」

エレン「いいよ。できたから食えば」

ミカサ「よろしい」

ミカサ「ではアルミン訓練兵と私は給仕をしよう」

エレン「教官なのにな」

ミカサ「教官なのにね」

アルミン「おいしい」

ミカサ「おばさんみたい」

エレン「おばさん?」

ミカサ「カルラおばさん」

エレン「ああうん」

ミカサ(あたりを見渡すと見える)

ミカサ(目を閉じてもみることができる)

ミカサ「・・・エレン訓練兵大変良くやった」

エレン「まだ続いてたのかよ」

エレン「もういいだろ」

ミカサ「エレン訓練兵」

アルミン「エレンさ」

エレン「はぁ・・・はい教官!」

ミカサ「はい」ビクッ

エレン「なにうろたえてんだよ」

ミカサ「うろたえてない」

エレン「びっくりしてたよなアルミン?」

アルミン「いいじゃない」

ミカサ「おっきい声をだすから」

アルミン「エレンちゃんと聞きなよ」

ミカサ「ちゃんと聞く」

アルミン「じゃエレン訓練兵前に」

エレン「はい」

ミカサ「エレンこれは解散式」

エレン「解散式?」

アルミン「解散式っていうのは訓練兵がそれぞれの兵団に所属する前に行う会のことで」

アルミン「訓練兵団にいる最後の時にするんだ」

エレン「そんなのは知ってるって」

アルミン「うん。だからこれは僕達のだね」

アルミン「三人だけの」

ミカサ「エレン訓練兵あなたは病める時も健やかなる時も」

エレン「なんか違わねーか」

アルミン「ミカサごめんちょっと違うと思う」

ミカサ「えっ?え?」

エレン「いいよもう続けろよ」

ミカサ「うん・・・あなたはこの開拓村で優秀な成績を収めたので」

ミカサ「これを授与する」

エレン「はいっ。ありがとうございます」

エレン「?手を離せよ。そもそもなんだよこれは」

アルミン「訓練兵募集の通知」

エレン「ほんとか?見せてくれよ」

ミカサ「駄目」

エレン「駄目?」

ミカサ「その前に誓う。誓わせて」

ミカサ(何もない日々が好きだった)

ミカサ(もう一緒に祈ることができないのが悲しい)

ミカサ(遊んだり、もっと一緒に)

ミカサ(でもこの前言ってくれた)

ミカサ(言ってくれたから)

ミカサ「私があなた達を命に代えても守る」

ミカサ「そう誓う。そう誓おう」

エレン「ミカサ」

ミカサ「エレンこれ」

ミカサ「エレンがんばってね」

ミカサ「がんばろう」

ミカサ「がんばろうね」

ミカサ(ずっと一緒にって)

エレン「おうがんばろうな」

ミカサ(言えなかった)

エレン「俺も誓うぞ」

ミカサ「えっ?」

エレン「俺はずっとミカサと一緒にいるって」

ミカサ「本当?」

エレン「なんで嘘なんか」

ミカサ「本当に本当?」

エレン「ほんとだよ」

エレン「アルミンもな」

アルミン「僕も?」

エレン「俺は病める時も健やかなる時もアルミンと一緒にいるぞぉって」

エレン「これって何の言葉だっけな。まあいいや」

エレン「それにしてもミカサ、そんなに訓練兵になるの不安なのか?」

エレン「さっきまでそんな不安そうな顔してさ」

エレン「大丈夫だろお前なら。いまはまだ俺より強いし」

エレン「訓練兵になったら見てろよお前よりずっと強くなってやるんだ」

エレン「筋肉だってあるし、体重だって俺らよりあるんじゃないか?」

エレン「だからやってけるよ。なあアルミン?」

アルミン「はは・・・」

ミカサ「エレン返して」

ミカサ「返して」バッ

エレン「あっ返せよ」

ミカサ「これはまだエレン訓練兵には早かった」

エレン「早くねえよ」

アルミン「ははっ実際行くのは春になってからだから」

ミカサ「早くご飯食べちゃって」

エレン「なんだよ俺が作ったんだぞ」

ミカサ(止まったような時間がもっとも早かった気がする)

ミカサ(これからもっと早くなるのだろうかわからない)

ミカサ(植えた種もすぐに芽吹いて)

ミカサ(空を見上げると灰色で)

ミカサ(なんて寒々とした空で)

ミカサ(でも)

エレン「あー今日も作業かー」

ミカサ「エレン待って」

エレン「うん?」

ミカサ「寒くない?」

エレン「おう」

ミカサ「良かった」

エレン「お前は?」

ミカサ「私も」

ミカサ「寒くない!」

これで終わりです。ありがとうございました。

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