P「貴音と月見酒」 (25)



P「――――――は…いいんだけど……」


貴音「どうなさいました、あなた様?」

P「いや、せっかくのオフをこんな何もない、俺の田舎で…しかも俺と二人で月なんて見てて、貴音としてはどうなんだと……」

貴音「また、その様な事を……私が望んでご一緒させて頂いているのですから、あなた様にその様な事を言われますと、私が申し訳ない気持ちになってしまいます」

P「いや済まん。そんな心算はないんだが…まぁ確かにあの時―――――」





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あの時。


P「―――――あー分ったから!今度の週末に休みが取れたから、その時に帰るから――――」

ピッ


貴音「どうなさいました。あなた様?」

P「ん?ああ…貴音か。いや、今実家から電話が来て、たまには実家に帰って来いって言われてさ……」

P「確かに…しばらく帰ってなかったし、ちょうど今度の週末に休みが取れたから、たまには帰ろうかなって思って」

貴音「そうですか」

貴音「……………………………」コクン…


P「ん?どうしたんだ貴音?いきなり押し黙って……」

貴音「あの…あなた様……」

P「何だい?」



貴音「私もあなた様と御一緒させては頂けないでしょうか?」



 



P「えっ!?今なんて?」

貴音「ですから。次の週末は私もお休みですから、あなた様のご実家にご一緒させて頂きたいと、伺っているのです」

P「ほう…それは俺としても嬉しい――――じゃなくて!ソレ…本気で言ってるのか?」

貴音「はい。私があまり冗談を言わないのは、あなた様も知っておられるではないですか?」

P「確かにそうだけど……それなら尚更、お前の言っている事が分からない」

貴音「そんなに分り難い事を言った覚えはないのですが?」

P「そうじゃなくてだな…せっかく、久し振りに取れたオフを、そんな事の為に使うなんてな……」

貴音「そうですか?」

P「ああ。はっきり言って俺の田舎は本当の田舎で、はっきり言って自慢じゃないが、気持ちいい程に何にもない」きっぱり

貴音「そうなのですか?」

P「ああ。だからそんな酔狂な事を言ってないで…そうだな…お前の好きなラーメン屋巡りでもしたらどうだ?」


 



貴音「らぁめん屋さんですか……それはそれで、大変有意義ではあると思いますが……」

貴音「ですが…らぁめん屋巡りはいつでも出来ますが、あなた様のご実家にお伺いする機会は、中々ありませんから……」

P「まぁ…確かに……」

貴音「ですから。お願い申し上げます。私をあなた様のご実家にご一緒させて下さいませ」ぺこり

P「……うーん。だがなぁ……」

貴音「あなた様!」

P「はいっ!?」

貴音「私にここまで言わせて、それでもこの願いを叶えてはくれませぬと?」

P「うっ…そ…それは……わ…分ったよ。ただしホントに何もないからな?ついて来て後悔しても知らないぞ?」

貴音「!!ありがとうございます。あなた様」にこ


 



――――――。


P「――――まったく…どうしてこんなところに来たがったのか、いまだに分らないが……」

P「もしアイドルが自身のプロデューサーと一緒に、そいつの実家にご同伴なんて事がバレたら、大変な事になっていたからな」

貴音「ふふ…それでしたら…こうやって―――――」

ふわっ…

貴音「髪を束ねて、眼鏡を掛ければ、案外と分らないものですし、実際に私だって気付かれなかったではありませんか」

P「確かに。結構、外見は変わるものだが……でも…これはこれで、また違った貴音の魅力に気付かされるな」

貴音「!!///////」


P「それに…その浴衣もよく似合ってる。普段のアイドルの衣装もいいけど、やっぱり貴音は和服が似合うなあ……」

貴音「そうですか?でしたら…アイドルから演歌歌手に転向した方が、いいのかもしれませんね?」

P「それはまだ勘弁してくれ、将来的にならともかく、今はアイドルの四条 貴音として売り出してるんだから。現状での路線変更は流石に色々と問
題が……」

貴音「ふふ…もう本気にされて…冗談ですよ」

P「まったく脅かさないでくれ。貴音が言うと冗談に聞こえないんだよ…それくらいしっくりしてたから……」

P「まぁ確かに…将来的にはいいのかもしれないけどな。わりと本気で……」

貴音「ふふふ…考えておきます」


  



―――――


貴音「あなた様……」

P「ん?どうした?」

貴音「さっきからあなた様は、ここをこんな処って仰ってますけど、私は嫌いではないですよ。静かで和で風情があって…心が落ち着く感じがして……」

P「そうかな?俺は何にもなくて、静かすぎて逆に落ち着かないっていうか……寧ろ一年の半分は虫の声で五月蠅いくらいなんだが……」

貴音「…それも風情ではありませんか?あなた様」

P「風情ねぇ…物は言いようだな」

P「それに―――――」

貴音「それに…何ですか?」

P「この辺りはお前の好きなラーメン屋すらないんだぞ?」

貴音「――――そ…それは少々困りましたわね……」

P「ははは…」

P「まぁ…別にここに住むわけじゃないんだから、そんなマジな困り顔なんてしなくてもいいじゃないか?」

貴音「…………そうですわね……」


貴音「――――――――――――――――でも将来的には…あなた様と……」ぼそ…


P「ん?何か言ったか?」

貴音「いっいえっ何でもありませんわっ//////////」ふりふりっ



  



―――――――。


くいっ…

P「ふー。でも…東京よりも月がよく見えて、月見酒が旨い処は田舎のいいところかもしれないな……」

貴音「そうですわね。本当にキレイ……」

P(……………………………)ほー

貴音「どうされましたあなた様?人の顔をじっと見て…少々恥ずかしいですわ////////」

P「いや…スマン。でもこうして見ると…貴音は本当に月が似合うなぁ……」

貴音「そうですか?」

P「ああ。月のお姫様……いや…寧ろ月が人の形をとった姿というか……何か月の化身って感じかなぁ……」

貴音「月の化身…ですか?」

P「ああ。まぁ上手く表現は出来ないんだが…そんな感じがするんだ」

貴音「そうですか…では私が月だとしたら、太陽は何方になるのでしょうか?」

P「太陽か…そうだな……やっぱり響あたりかなぁ」

貴音「響ですか?」

P「ああ。まぁアイツは太陽そのものと言うよりも、太陽の光に育てられた、太陽の子どもって感じだけどな」

貴音「ふふ…確かにそうですわね」クス…


P「まぁ…俺は月の方が好きなんだけどな……」ぼそ…


 



貴音「えっ!?」どきっ

貴音「あっあなた様…今なんと仰られました?」どきどき

P「いやっ何でもない!ただの何でもない独り言だよ!//////」ははは…

貴音「そうですか……」


P「……………………」じ…

P(…………あの夜空に映える月と同じという事は、お前もそれだけ俺の目にはキレイに映ってるって事だよ……・……貴音)


P(そう…そんなお前を俺は――――――――)


P(でも貴音は正真正銘のアイドル…色んな意味で触れる事すら適わない、赦されない。俺には正にタカネの華なんだよな……)ふっ…


貴音「?」

貴音(どうされたのかしら?物憂げに人を顔を見詰めて……?)


 



―――――


貴音「…………あの、あなた様。もう一献いかがですか?」すっ

P「ん?ああ。ありがとう。頂くよ」すっ

P(あんまり感傷的になるのもよくないよな……よし―――――)


とくとく

P「んっ――――――」くいっ

P「ぷはー。やっぱり貴音がお酌してくれた酒は最高だな」ははは…

貴音「ふふ…もう。あなた様ったら」

P「いやぁたまには…こうやって田舎の家の縁側で、月を愛でながら飲む酒もいいもんだな―――――」はっ


P「おっそうだ。貴音も一杯どうだ?」すっ

貴音「いいのですか?」

P「ああ。まぁこういう時ぐらいいいだろ。酒は一人で飲むのもいいが、誰かと酌み交すのもまたいいもんだしな」

貴音「…………そうですか。では…少しだけ」すっ



 



――――――。


貴音「////////少しだけって言っておきながら、少々飲み過ぎてしまったみたいですわ////////」ふぅ…

P「大丈夫か?貴音」

貴音「ええ。でも…ちょっとカラダが火照って…しまった様ですわ……///////」ほぅ…

P「!?」

P(うっ…貴音の白い肌が、ほんのり朱に染まって……)ゴクリ…


貴音「ふぅ…でも少しだけ酔ってしまったみたい……」ふらり…

ぴと…


P「!?」

P(うっ貴音が顔を俺の胸にぴとって寄りかかって……)どきどき


貴音「ごめんなさいあなた様…少しだけこうさせて頂いてもも宜しいでしょうか?///////」じ…


P「あ…ああ」

P(じょ…上気した顔の貴音がさらに上目使いで……//////)


P(なっなんて魅惑的で蠱惑的なんだ――――――)ゴクリ…


  



貴音「あら…あなた様…大丈夫ですか?少し心の鼓動が早くなってる気が……」

P「だっ大丈夫だ!心配ない!」どぎまぎっ

貴音「なら…よいのですが……」

P(貴音にこんな事されて、ドキドキしない方がおかしいよ……)どきどき

貴音「ふふ…あなた様……実は私も少々胸の鼓動が早くなっていますの……」どきどき

P「そ…そうなのか?」

貴音「はい…何でしたら確かめてみます?――――――直接」すっ

P(うっ…きっ着物の襟を開いて―――――)

P「いっいいから!そんな事しなくてもいいから!!」

貴音「そうですか……」


 



P「まったく酔ってるからって…すこし開放的になり過ぎてるぞ?ただでさえ、家のモンにはそう思われてるってのに」

貴音「そう思われているって?何をです?」

P「ほら…今日、実家(ここ)にお前を連れて来た時、俺の家族が俺が嫁を連れて来たーーー!!!って大騒ぎになったじゃないか?」

貴音「ええ…確かに……」

P「そりゃ…久し振りに息子が帰って来て、しかもその傍らに見ず知らずの女の人が一緒にいたら。そりゃ勘違いしても、仕方ないとは思うけどさ……」

貴音「…………………」

P「まったく…説明して理解してくれるまで大変だったよ。貴音も何も言わなかったけど、俺の嫁さん扱いされて、迷惑だっただろうし」

貴音「そっそんな事……」

P「いいんだよ。俺に気なんか使わなくても、現役バリバリアイドルで、しかも雅な雰囲気の美人と俺なんかじゃ、全く釣り合い様がないなんて事くらい十分承知してるから」

貴音「ですから…そんな事ありまs――――――」

P「はは…うちの親だって、そんな事くらい一目見れば判るだろうに……舞い上がっちゃったんだな」

貴音「あなた様……ですから――――――」


P「まったく…そんな事は絶対にないのにな」はは…

貴音「!!――――――そうですか……」むす…


 
 




貴音「たとえそう思われたとしても…私は全然構いませんのに……」ぼそ…


P「ん?どうしたんだ貴音?そんな顔して…それに今、何か言ったか?」


貴音「――――――まったく…あなた様はいけずです」ぷい

P「?」


貴音「あの…一つお聞きします。では…どうしてあなた様は、私をここに連れて来たのですか?」

P「えっ?どうしてって…それはお前が連れてって欲しいって……」


貴音「あなた様は好きでもない婦女子を、ご実家にまで連れて来られるのですか?」


P「それは…………ああそうだよ。好きでもない女の子を頼まれたとはいえ、実家にまで連れて来る男なんていないよ」

貴音「!!」


貴音「……あなた様……それはどういう…………」どきどき…

P「どういうって…人を好き嫌いで分けるなら好きって事で……べ…別にそんな深い意味はっ――――――あせあせっ

貴音「そうですか……」はぁ



貴音(でも…そう思って頂いていただけでも…私は――――――)ぎゅっ…



 


 



P「そういう貴音はどうなんだ?好きっていうのも色々あるだろうけど…まさか全く好きでもない男の家に―――――」

貴音「あなた様―――――」


すっ

ぴと…

貴音「―――――――それは秘密です」


P「……全くお前は、やっぱりちょっとミステリアスなところがあるよな?」はぁ

P(まぁそんなところも、貴音の魅力の一つではあるんだけどな……)


貴音「あら。そうですの」

P「そうだよ。今みたいに肝心なところをはぐらかす辺りとか?」


貴音「!」ぷっ…


貴音「ふふふ…」


P「あはは…」



貴音・P「「あははははは」」



 



―――――。


P「ほらこうやって……」すっ

P「酒を注いだ御猪口を上手く傾けると――――」

貴音「!!」

P「酒の水面に月が収まるだろう?」

貴音「本当……」

P「それをクイってやると……」くいっ


P「また酒が格別に美味しくなる気がするんだ」

貴音「そうですか?あなた様はどんな飲み方をされても、美味しそうに飲まれますけど?」

P「はは…確かにな。どんな飲みかをしても旨いもんは旨い」

貴音「やっぱり」ふふ…


 



P「でも…今日は流石に格別かな……俺はさ…月って見ると、心が落ち着いてくるから好きなんだよ。ほっと出来るっていうか」

貴音「…………………」

P「それに今日はこんな近くに貴音もいる。それも二人っきりで―――――」

貴音「!!」

P「田舎のこの澄み切った夜空にほんのり輝く月を見ながら、貴音みたいな月の化身の様な人と、一緒に月見酒が飲める……俺にとってこんなに格別な事はないよ」にこ


貴音「あなた様……」




貴音(私は――――私はやはり…あなた様の事を―――――――――――)



 



貴音「あなた様―――――」

P「ん?」


貴音「本当に…本当に……私は今。改めて心の底から想った事があるのです……」

P「思ったって何を?」




貴音「ねぇ…あなた様――――――」







貴音「月が綺麗ですね」にこ






おしまい。



 

これでおしまいです
ありがとうございました。

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