穂乃果父(今日は勤労感謝の日か……) (12)

今日は11月の23日、勤労感謝の日だ。
今年の勤労感謝の日は日曜日だから月曜日に代休がある……らしい。
自営業にはあまり関係のない話だ。

関係があるといえば、休みで多少客が増えるくらい。
と言っても、うちは社会人が休みだから、
と来るような店でもないのでそこまで大変になるわけではない。

それでも去年までは穂乃果と雪穂が手伝ってくれていた。
穂乃果は

「勤労感謝の日なのに働くなんておかしい!」

なんて言ったりしていたが、その度に雪穂が

「そもそもお姉ちゃん働いてないでしょ」

と突っ込みを入れるのだった。

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しかし今年雪穂は受験生なので手伝わせるわけにはいかない。
音ノ木坂の廃校が穂乃果達によって阻止されたとはいえ、それは一時的なものだ。
いつ、また廃校が決まってもおかしくはない。

一応UTX学園も受けさせておきたい、というのが親心だ。
伝統や歴史、地元を尊んでくれることは親としても、
また、職人としても嬉しいことではあるが……娘の将来を考えればUTXも悪くはない。

もちろんそれは雪穂が決めることだが、
選ぼうと思った時には片方しか道がなかった、
などということにはならないようにしっかりと勉強をしてほしい。

まぁ、穂乃果を反面教師にして勉強はちゃんとしていることだろう……

そしてその穂乃果はスクールアイドルの練習があるらしい。

始めたばかりの頃こそ鼻で笑い飛ばしていたが、実績を上げ、本当に廃校を阻止してしまった。

娘がこの地域を救った……そう思うと親として誇らしい気持ち、
地元民として感謝の念……それと同時に、娘がどこか遠くへ行ってしまったような寂しさも覚えた。

前までは元気だけが取り柄の、でも、特に何をするでもなく……
店の手伝いはしていたが、とかく遊んでいるだけの普通の女の子だった。

将来は穂むらを継ぐつもりであったようだし、俺もそれで良いと思っていた。

しかし、スクールアイドルを始めてからというもの、
あの遊んでばかりだった穂乃果が別人のように練習に励んでいた。
それも、とても楽しいそうに。

穂乃果は、自分の進むべき道を見つけた、穂むらを継ぐことはない。
そう感じていた。

「ねぇ、おとーさん」

ん、なんだ?

「今日、本当に手伝わなくて良いの?毎年手伝ってたのに。雪穂も居ないんだよ?」

ちょっと心配したような表情で聞いてくる。

お前たちが生まれた頃から母さんと二人でやってたんだぞ?大丈夫だよ。

「でも……」

俯いてしまった。結構信用がないらしい。
小さい頃から手伝わせていたからだろうか。

はっはっはっ。さては穂乃果、お前自分が一人前だとでも思ってるんじゃないか?

「えっ?」

言っておくがな、俺は何もお前達に助けて欲しくて手伝わせてたわけじゃないぞ?

「どういうこと?」

何を言ってるのかわからない、という顔。

お前達が将来、この穂むらを継ぐ時の為に手伝わせてたんだ。
言わば修行の一環ってやつだな。

「そ、そうだったの!?」

「ああ、そうとも。だから本当はお前達が居なくても大丈夫なのさ」

「そ、そう……なんだ……」

また少し、俯いてしまった。

……ま、もちろんお前達が居て助かってるけどな。

「ほ、ほんとに?」

顔を上げる。いつもの穂乃果の元気な顔だ。

だから、安心して行ってこい。次の大会に向けて練習しなきゃいけないんだろう?

「……うん。ありがとう、お父さん。じゃあ、行ってきます!」

おう!行ってこい!




……感謝するのはこっちの方だよ。
いつも手伝ってくれてありがとう。穂乃果、雪穂。

×「ああ、そうとも。だから本当は、お前達が居なくても大丈夫なのさ」
○ああ、そうとも。だから本当は、お前達が居なくても大丈夫なのさ

おしまい

新たな穂乃果父表現の可能性を学んで来ました
師に感謝を

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