魔王「勇者、好きっ!!」勇者「…今なんて?」(372)


本編a まおう「よくきたなゆうしゃっ」勇者「なにこれかわいい」
まおう「よくきたな、ゆうしゃっ」勇者「何これかわいい」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1353157883/)

過去編 賢者「毎日楽しけりゃそれでいいよね」
賢者「毎日楽しけりゃそれでいいよね」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1353218482/)

外伝 魔法使い「えへへ、頑張りますっ!!」
魔法使い「えへへ、頑張りますっ!!」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1353505955/)


上記の続編となります。
次から本編をはじめます。



魔王「いや、だから好きって」

勇者「いやいや、なんで好きなんだよ?」

勇者「俺、初めてここに来たんだが…」

魔王「うむ、そうだな初対面だろう」

勇者「それだけっ!?」

勇者「あ、あと俺、『勇者』だぞっ!!」

勇者「魔王なのに勇者が好きっておかしいだろっ!?」

魔王「誰であろうと好きになるには関係ない」

勇者「いやそれはそうなんだけどな…?」


勇者「だからと言ってこれは…」

魔王「じゃあ好きになった理由を話す」

勇者「お、おう…」

魔王「あれは勇者が勇者として選ばれた時からだ」

勇者「あぁ、なんかお告げあって俺が選ばれたんだよね」

魔王「そして我はずっと勇者の行動を監視し続けた」

魔王「魔王だし」

勇者「それはまぁ納得できる」


魔王「いつもいつも行動を見続けた」

魔王「起きてからの動きを見たり」

魔王「今日は何杯ご飯食べたとか」

魔王「どんな修行してたとか」

魔王「誰と話し込んだとか」

勇者「うん…うん?」

魔王「丘でどんな恥ずかしい歌歌ってたとか」

魔王「剣の修行の合間に女の子観察してたりとか」

魔王「お風呂でどこ先に洗うとか」キャッ

勇者「おい…ちょ、待て…」


魔王「あとエッチな本とやらも見てた」エロイッ

勇者「おいっ!!」

魔王「もーなによーまだあるんだから止めないでー」

勇者「もはや別人になっとるがなっ!?」

魔王「これがデフォなんだよ」

魔王「あんなしゃべり方は可愛くないと思うんだ」

勇者「そうか…納得は出来んが…」

勇者「じゃなくてっ!!それどう考えてもストー…」

魔王「まぁそうやって見続けてたら」

魔王「好きになっちゃったっ」テヘペロ

勇者「さっきのに好きになる要素ないんだけどっ!?」


魔王「勇者」キッ

勇者「んだよ?」

魔王「君が人を好きになるきっかけって何だと思う?」

勇者「それは…」

勇者「うーん…」

魔王「そうだよ」

魔王「意外とはっきりしてないものなんだよ」

魔王「好きになるってのはね」

勇者「…」

魔王「だからわたしが勇者を好きになったのはおかしいことじゃない」

魔王「アンダスタン?」

勇者「…これは言いくるめられているのか?」


魔王「と、いうわけで付き合ってっ!!」

勇者「だが断る」

魔王「なんでよーもー!!」ジタバタ

勇者「駄々っ子すんな、子供かっ」

勇者「俺はお前倒しに来たんだぞ」

勇者「じゃれ合いに来たわけじゃない」

勇者「憎むべき相手なんだよ」

魔王「じゃあ倒せばいいと思うよ」

勇者「なんでそんなあっさりと…」

魔王「好きな人に討たれるってかっこいいと思わない?」

勇者「そんな理由かよっ!?」

魔王「勇者って律儀にちゃんとツッコんでくれるよね?」

魔王「そういうところも好きっ」キャッ


勇者「くっ…俺は真面目に言ってるんだ!!ふざけるなっ!!」

魔王「わたしだって冗談で言ってるわけじゃない」

魔王「まだ魔族が許せないっていう風潮が出来てるなら」

魔王「許されるまで討たれるつもり」

勇者「なんだそれ…」

魔王「わたしは頭良くないんだ」

魔王「人間と共存できたらいいだけなんだ」

魔王「勇者が好きなのはそれとは無関係だけどね」ニコ

勇者「共存…だと?」

魔王「魔族側はもう人間と争うつもりはないんだよ」

魔王「先代から決められた事」

魔王「パパとママは立派だった」


勇者「…正直信じられん」

魔王「仕方ないよ」

魔王「最初から信じろなんて言わないよ」

魔王「でも、いつか信じてほしい」

勇者(真剣そのものの瞳…)

勇者(魔王を討伐するために来たのに)

勇者(こんな顔されては…)


バァン!!





魔法使い「勇者!!無事っ!?」

勇者「魔法使い?もう全部の部屋調べ終わったのか」

魔王「むっ」

魔法使い「これが…魔王…?」

魔王「わたしの勇者に変な虫がついてるぅっ!!」

魔法使い「…」

勇者「魔法使いに対しての一声がそれかよっ!?」

魔法使い「『わたしの勇者』…?」

勇者「できるなら説明したくないんだが…」

勇者「つーか監視してたんならこいつ知ってるだろ」

魔王「勇者しか見えなかったもんねっ!!」フフン

勇者「なんというドヤ顔」


魔法使い「えっと…魔王は勇者が好き…でいいの?」

勇者「そのようだな…」

魔王「勇者はわたしのだからねっ」グイッ

勇者「ちょ、引っ張るなっ!?」

魔法使い「別に私は勇者が好きとかじゃないんだけど」ポリポリ

魔王「そうなの?やったっ!!」ギュー

勇者「離せってのっ」

勇者(しかし、そこまではっきり言われたら傷つくわ)

勇者(ずっと一緒に冒険してたのにさ…)

勇者(少しぐらいはさ…はぁ)


魔法使い「それでこれからどうするの勇者?」

勇者(´・ω・`)

魔法使い「何その顔」

勇者「なんでもない…」

勇者「コイツともうちょっと真剣に話したいんだが…」

魔王「真剣に愛を語るって??」ドキドキ

勇者「んなこと言ってないわっ!!」

勇者「そういえばあとの二人はどうしたんだ?」

勇者「まさか来てないってことはないだろう」

魔法使い「あぁ、あの二人なら…」



 -食堂-


勇者「…」

勇者「あれ、俺おかしくなったのかな」

勇者「何かすっごくくつろいでる奴らが知ってる奴に見える」ゴシゴシ

魔法使い「知ってる人達そのものだと思うわ」

魔法使い「メイドさん?になんか案内されて」

魔法使い「すごく待遇が良かったから」

魔法使い「つい二人放置して私だけで勇者探しに行ったんだ」

勇者「この魔王城で放置してあそこまで来たお前もすごい…」


武闘家「何これっ!!やばいぐらいにおいしいっ!!」モグモグ

遊び人「うまー」

メイド「まだまだありますからゆっくり食べていってくださいね」

魔王「メイドー私もお腹すいたー」ポテポテ

メイド「あ、魔王様ちょっとお待ちくださいね」

勇者「もうやだなんだこれ」グッタリ

魔法使い「私もよく分からない…」ドサッ

メイド「はい、どうぞお茶ですよ」コトッ

魔法使い「あ、どうも」ズズー

勇者「ちょっと一人になってくる…」トボトボ

魔王「あ、勇者がぁ…」

メイド「疲れてるみたいだからそっとしておいてあげましょう」ニコニコ



 -廊下-


勇者「ふぅ」

勇者「ちょっと頭の中整理しよう」

勇者「魔王はさっき共存出来たらいいと言っていた」

勇者「これは本気なのかは分からない」

勇者「でも、顔が真剣そのものだった…」

勇者「…でもここに来るまでおかしな点はあったよな」

勇者「襲ってくる魔物もいればまったく手を出してこないのもいた」

勇者「それに魔王城で一度も魔物はおろか魔族すら見ていない」


勇者「せいぜい魔王とさっきのメイドぐらいか…?」

側近「もう一人いるんだけど」

勇者「あぁそうだったのかすまない」

側近「しょうがない子だなぁ」

勇者「で、この少数に何の意味があるのだろう…」

側近「そりゃ君たちを怖がらせないために決まってるよ」

勇者「そんな事ありえないだろうっ」

側近「でも本当のことなんだよね」

側近「人間であるあたしがここにいるのが証拠かな」

勇者「そうか…確かに普通の…」

勇者「…」


側近「後もうひとつ考えてる事あるんじゃない?」

勇者「あるけど…問題がひとつ増えた…」

側近「そりゃ大変だ、あたしでいいなら相談に乗ろうか?」

勇者「無理…」

勇者「あんたがその問題だからだよっ!!」

勇者「勝手に独り言に入ってくるなっ!!」

側近「昔よくやられてたからやってみたかったんだ」

勇者「んなこと知るか!!」


勇者「いなくなったと思ったらこんなところにいたのかっ!!」

勇者「元勇者だろお前っ!!」

ドスッ!!

勇者「ぐふっ」バタリ

側近「誰がお姉さん相手に『お前」なんて言えといったのかな?」

勇者「お姉さんじゃねぇ…げふっ…」ピクピク

側近「正確にはイトコのお姉さんだけどさ」

側近「今は魔王の側近してるよ」


勇者「どうしてそうなったのかはとりあえず置いておいて…」

勇者「昔から時々手紙くれてたよな?」

側近「まぁね」

勇者「勇者になったって手紙きて」

勇者「元気でやってるの分かってたけど」

勇者「あんたいなくなって約4年か」

勇者「手紙はこなくなり、あんたのいた国が消え」

勇者「俺に勇者のお告げきた時はどうしようかと思ったんだぞ…」

側近「あはは、ごめんねぇ」


側近「勇者としてとんでもないことやらかしちゃったし」

側近「放棄したってことになったのかな」

勇者「あの事件はやっぱりあんたが絡んでたのか…」

側近「主犯だったからねー」ケラケラ

勇者「まぁあれは俺が内容知らんから何も言えないが」

勇者「ここにいる事は説明してもらえるんだろうな?」

側近「ずいぶんとえらそうになっちゃったな、君」

勇者「今、俺は勇者なんだよ」

勇者「魔王が戦う気がない理由知ってるんだろ?」

側近「元はといえばあたしがまおちゃんに教えたんだけどね」

勇者「なにをだ?(まおちゃんって…)」

側近「もう戦う必要はないって」


勇者「何故そんなことを…」

側近「もう全部聞いたんじゃないの?」

側近「先代が共存を進めだした事とか」

勇者「それは本当なのか?」

側近「あの子に嘘を言うように教育してないよあたしは」

勇者「教育って…あんた何者なんだ…」

側近「魔王という名の少女の姉のようなもの…かな」

側近「ただあの子を守りたいだけなんだあたしは」

勇者「そうか…その話はもういい」

側近「理解だけしてくれたらいいよ」


側近「あたしはすべて知ったからここにいるんだ」

側近「別に協力しろとまでは言わないよ」

勇者「その件はもうちょっと考えさせてくれ…」

勇者「あともうひとつ聞きたい」

側近「まおちゃんの事かな?」

勇者「あぁ、出会ってすぐに告白されたんだが…」

側近「あたしも最初聞いたときは何事かと思ったけどねぇ」

勇者「報告済みかよ…」

側近「むしろ相談されたし」


側近「あたし、お姉ちゃんみたいなもんだから?」

勇者「ふーん…で、どう相談されたんだ?」

側近「オーブ見せながら」

側近『この人見てたらドキドキするんだけどどうしよー』」

側近「ってね」

勇者「…何か間違ってる気もしないでもない」

側近「何よぉ?思春期の少女を馬鹿にしてるの?」

勇者「いや、そういうわけじゃ…」

側近「あたしだって経験ないけど」

側近「あの子の言動見てたら分かったよ」

側近「勇者の事好きになっちゃったんだって」

勇者「でもあれストーカ 」ドスッ!!

勇者「げふぁ!?」


側近「可愛い子に見られてたんだからいいじゃん」

勇者「…」ピクピク

側近「正直に言うといいよ?まおちゃんどうだった?」

勇者「ど、どうって?」

側近「可愛くない?」

勇者「…黙れロリコン」

側近「…これでいいかなっ」スッ

勇者「ちょ…そんなので殴られたら頭が吹っ飛ぶ…」

勇者「悪かった…落ち着け…その鈍器のような物を下ろせ…」

側近「よっこいしょー」ドスーン!!


勇者「その細腕のどこにそんな力があるんだ…」

側近「勇者だったときの名残かな」

側近「魔法はほとんど使えなくなったけど」

側近「潜在能力とやらが残ってるんだって」

側近「その影響でちょっと身体のリミットが…」メキメキメキ

勇者「分かったもういい…」

勇者(もう怒らすまい…)


側近「それでまおちゃんどう?」

勇者「そりゃ髪がモフモフしてて顔もかわいらし…」

側近「ほうほうそこまで…」

勇者「はっ!?」

勇者「い、今のなしなっ!!」

側近「隠さなくてもいいじゃない」

勇者「でも相手は魔王…」

側近「相手が誰でも関係ない」

側近「その気持ちは誰でも持つものだよ」

勇者「…魔王の教育してたってのがよく分かったわ」

勇者「あんたらすごく似てるよ」

側近「ありがとね」ニッコリ


側近「あの子はあたしにとって癒しなんだ」

勇者「そうかい」

側近「でもほしいならあげるよっ」

勇者「いるとは言ってないぞ…」

勇者「ふぅ」

勇者「ここ危険ないんだろ?」

側近「まったくないよ」

勇者「だったらしばらくここに俺を住まわせてくれ」

側近「かまわないけど…」


勇者「共存…魔王…その辺を詳しく知ってみたいんだ」

勇者「結論はそれからでいいと思ったんだよ」

側近「さすが勇者、いい子だねぇ」ナデナデ

勇者「撫でるな!!昔と変わってないなあんたっ!!」

側近「もうそんな10年ぐらい前のこと忘れたー」

側近「そいえばあの頃はお互い仲良かったなぁ」

勇者「覚えてるじゃねぇか!!」

側近「気のせいだよー」

勇者「あんた嫌い…」




魔王「勇者遅いなー」モキュモキュ

メイド「多分側近さんとお話してるんですよ」

魔王「ゆう…側近とー?んぅ…」

メイド「心配しなくてもそういうことにはなりませんよ」

メイド「勇者様とイトコらしいですし」

遊び人「でも、イトコ同士結婚はできる」

魔王「!?」

遊び人「ふひひwwwさーせんwww」

魔王「探してくる!!」ガタッ



シュッ カカカッ!!


魔王「ひぃ!?」

メイド「お食事の途中で席を立ってはいけませんよ」ニッコリ

魔王「…すいませんでした」ガタガタ

魔法使い「えらい立場の弱い魔王ね…」

魔王「メイドと側近には逆らっちゃダメなんだ」ガクブル

メイド「うふふ…」


魔法使い「で、私達どうしたらいいのかな」

武闘家「魔王退治はー?」シュッシュッ

魔法使い「こんなところでシャドーボクシングしない」

武闘家「はーい」シュタッ

遊び人「ここに住んじゃえばいいと思うよっ」

魔法使い「あんたは何言ってるんだ」

魔法使い「何でいつもいらん時だけ発言するかな…」

遊び人「人生楽しくなきゃいけないから?」

魔法使い「聞くな」

魔法使い「そしてそれはあんただけだ」


武闘家「じゃあ魔王ちゃんに話を聞こう!!」

武闘家「まーおちゃんっ」クルッ

魔王「なーに?」モキュモキュ

武闘家「それおいしい?」

魔王「美味ですよ!!食べる??」

武闘家「いただきますっ!!」モキュモキュ

武闘家「うまー」

魔王「うまー」

魔法使い「話どうなった…」

メイド「武闘家さんはマイペースですね」ニコニコ


魔法使い「これもだけどね…」

遊び人「見て見て、舌で茎を結べたよ!!」ンベェ

メイド「あらテクニシャン、ちょうちょ結び」

魔法使い「もうやだこのパーティ…」

メイド「だったらなぜ脱退しなかったのですか?」

魔法使い「…楽しいから」

メイド「苦労はしてそうですけどね」

魔法使い「普段は勇者がツッコんでくれるし」

魔王「勇者…?」ギラリ

魔法使い「ここ居心地が悪いんですけど…」

メイド「魔王様は嫉妬深いみたいですね」クスクス


メイド「しばらくここにいてはいかがでしょう?」

メイド「きっと勇者様もそうするでしょうし」

魔法使い「え?」

メイド「まぁ理由が理由ですしね」

魔法使い「もうちょっとここの事詳しく話してもらえますか?」

メイド「かまいませんよ」

遊び人「トイレ~」ガチャ

武闘家「魔王ちゃん、デザートに手を出してもいいと思うんだ」ジュルッ

魔王「そろそろいっちゃう…?」ゴクリ

魔法使い「あんたら仲良くなりすぎだろ…」

遊び人「…ここは変わらないね」バタンッ

今日はここまでですよっと。

続きはまた夜に。

いちいちスレ乱立させてんじゃねーよカス

ここはてめーの落書き帳じゃねーんだよ


魔王「いや、だから好きって」

勇者「いやいや、なんで好きなんだよ?」

勇者「俺、初めてここに来たんだが…」

魔王「うむ、そうだな初対面だろう」

勇者「それだけっ!?」

勇者「あ、あと俺、『勇者』だぞっ!!」

勇者「魔王なのに勇者が好きっておかしいだろっ!?」

魔王「誰であろうと好きになるには関係ない」

勇者「いやそれはそうなんだけどな…?」


魔物「キイッ」シュバッ

魔法「いたっ」ザクッ

魔法「うぅ…あの、回復を…」

勇者「邪魔だ!!どけっ!!」ドンッ

魔法「うぁっ」ドサッ

魔法「仕方ないなぁ…」スリスリ←薬草すり込んでる

投下再開します。



 -2f ある一室-


勇者「ここ使っていいのか?」

側近「いいよ~」

側近「他のみんなの部屋もあとで案内しておくよ」

勇者「すまない」

遊び人「~♪」テクテク

勇者「遊び人?」

遊び人「あ、勇者だやっほー!!」パタパタ

勇者「もう遠慮なしだな、おい」

遊び人「だって怖い魔物もいないしねぇ」ヘラヘラ


側近「…なにやってんの?」ゴゴゴ

遊び人「ほわ~い?あれ…」

勇者「あぁ、こいつうちのメンバーなんだ」

側近「……なにやってんの?」ゴゴゴゴゴ

勇者「何でそんなオーラだしてんだ?」

遊び人「げっ」ビクッ

遊び人「じゃ…」パタタタタター

勇者「もしかして…知り合い?」

側近「今、一番説教したい人」

勇者「あんなダメ人間の知り合いいたんだな」

側近「あれでも昔はすごい人だったんだよ…」

側近「あとで会ったら側近室に来いって言っておいて」

勇者「了解した…」


側近「君は仲間を大切にしてる?」

勇者「当たり前だろ」

勇者「役に立たなくっても仲間は仲間だ」

側近「役立たずって明らかにあの人のことだね」

勇者「うちのは変わり者が多いしな」

側近「あたしの時も同じようなもんだったよ」

勇者「んじゃみんなのところに戻るかな」

側近「あたしはやることあるからあとでね」

勇者「そうか、じゃあな」


側近「勇者」

勇者「ん?」

側近「勇者にさせてしまってごめんね」

勇者「気にしてないさ」

勇者「おかげであいつらに会えたんだしさ」フッ

側近「よかったっ」ニッコリ

パタパタ

勇者「あの人は勇者時代どんな感じだったんだろうな…」

勇者(幼い頃にしか会ってないからその頃は分かんねーんだよな)



 -娯楽室-


魔法使い「ホントにかまわないんですか?」

メイド「えぇ、側近さんにも了解を得ましたし」

勇者「聞いたの俺だけどな」

魔法使い「ここに留まる理由は確かにありますけど」

魔法使い「本当に私達が…」

魔王「かまわないって!!」バンバン

魔王「今まで人がいなくてちょっと寂しかったしさっ」ニコー

メイド「ここのおえらい様もこう言っておりますし」ニッコリ

魔法使い「分かりました、お世話になります」ペコリ

魔王「まほまほは真面目だなぁ」

魔法使い「まほまほ…」


武闘家「『真面目なママ』ってのがうちらでの通り名だもんねー」

魔法使い「誰がママだっ!!」

魔法使い「あんたなんか『突撃ボケ子』だろうっ」

メイド「あらあら通り名って誰にもあるんですね」

勇者「勝手にこいつらがつけてるだけだよ」

遊び人「あんたなんか童て…」

勇者「お前側近室に呼ばれてるぜ、一緒に行こうか?」

遊び人「…『イケメン過ぎ勇者』さまぁ」スリスリ

勇者「どこすり寄せてんだっ!!変態っ!!」

遊び人「変態…それは我々には褒め言葉でありますっ」ケイレーイ


メイド「さすがですね…変態……様?」

遊び人「…メイドだけは本気で戦う必要がありそうねぇ」ゴゴゴ

メイド「一度貴方とやってみたかったのですよ」ゴゴゴ

勇者「こいつらも知り合いかよ…」

勇者「もう知らん、放っておこう」ズズー

勇者「お茶がうめぇ」プハァ

魔法使い「何でそんな冷静なのさ?」

勇者「こういうのは下手にツッコむと疲れるって学習した」

魔法使い「さすがに結構付き合い長くなってきたしね」


魔王「勇者と…仲良く…」ギリギリギリ~

魔法使い「またぁ?もう勘弁してよ…」

勇者「どうしたんだ?」

武闘家「嫉妬の睨みというスキルで~」

魔法使い「変な解説しようとすんな」ポコッ

武闘家「暴力はやめてっママぁ!!」ドタドタ

魔法使い「まだいうか!?私はまだ未婚の17歳だ!!」バタバタ

勇者「魔法使いはそんなもんだったのか」

武闘家「そういえば年齢って言ってなかったねっ」

武闘家「うち、14さーい」

勇者「お前は大体そんなもんだと思った」

武闘家「にゃにおー」


魔王「勇者は?」

勇者「16」

魔法使い「私達ってわりと平均年齢低いのね」

メイド「そうでもないですよ?」

勇者「遊び人はどうした?」

メイド「あちらでぐったりしております」

遊び人「メイド…やばい…むり…」ピクピク

勇者「何があってそうなったかは聞くまい…」

メイド「それで遊び人さんの年ってご存知ですか?」

魔法使い「私達と同じか少し上ぐらいかと思ってたけど」

勇者「俺もだ」


武闘家「実はあらフォーとか??」

勇者「そうだったら俺は全力で逃げる」

魔法使い「何も逃げなくてもいいじゃない…」

魔法使い「でも見た目では24、5ぐらいじゃない?」

メイド「実はアレで二十…あっ」ステーン

遊び人「誰だ人のこと暴露しようとしてるのはぁ…」

遊び人「…掴んだはずのメイドがいない?」

勇者「転んだ瞬間消えた…」

魔法使い「実はここ、メイドさん最強なんじゃない?」

魔王「側近でもかなわないよぉ」

勇者「あの人ですら、かよ…」


メイド「おしおきですね」ニコ

遊び人「いつの間にそこにっ!?」

遊び人「ちょ…」ズリズリ

バタンッ



遊び人『その持ってるの何っ!?ねぇっ!?』

メイド『貴方はこういうのに弱いって聞きまして』

メイド『いっぱいご用意しました、うふふふふ…』

遊び人『いやぁぁぁぁぁぁぁ…』






勇者「…」

魔法使い「…」

魔王「…勇者~ちゅー」ンー

勇者「この空気でしかけてくるか普通っ!?」サッ

魔王「…チッ」

勇者「舌打ち聞こえたぞっ!?こえぇよっ!!」

武闘家「ラブラブだねぇ」

魔法使い「…なーにやってんだか」ハァ

魔王「らぶみぃぷりぃぃぃぃぃずっ!!」チュー

勇者「寄るな!!口をラッパみたいに尖らすな!!」グイグイ

魔法使い「…」


メイド「ふぅ…任務完了です」ガチャ

遊び人「…」

魔法使い「あの遊び人がおとなしくなった…」

勇者「見た目が変わっただけなんだが…」

武闘家「何でそんなフリフリな服着てるの?」

遊び人「…しょんな目でこっち見にゃいで…」ズーン

メイド「うっふっふ…」

魔法使い「何か頭痛くなってきた…」トントン



 -深夜 勇者の部屋-


勇者「はぁ」ゴソゴソ

勇者「これからどうなるんだろうな…」

勇者「共存かぁ…」

勇者「ホントにできるのだろうか」

勇者「俺だって出来たら戦いたくないよ」

勇者「はぁ…」

ガチャ バタン


勇者「?」

ポテポテ

勇者(何か部屋に入ってきた?)

スルスル ギュー

勇者(それどころか布団の中に進入された!?)

勇者(そして、人の腕にしがみついて動かなくなった…)

??「既成事実既成事実…」

勇者「!?!?」ガバッ

勇者「なななな何を言ってるんだお前は!?!?」

魔王「あ…起きちゃった」

勇者「正確にはずっと起きてたがな!!」


勇者「じゃなくて何のつもりだっ!?」

魔王「ある人に教えてもらったの」

魔王「既成事実作っちゃえば大丈夫って」

勇者「こえぇぇぇぇっ!!マジこえぇぇぇぇぇぇっ!!」

魔王「ところで既成事実って何?」

勇者「…」

勇者「知らんと使ってたんかいっ!!」

魔王「うんっ!!」

勇者「それが何するかも知らんってんじゃ…」

魔王「裸で抱き合うとか言ってた」

勇者「どこのバカだ吹き込んだの!?とりあえず出ろっ!!」バサッ

勇者「…」

魔王「?」

パサリ ←再び布団をかぶせた


勇者「えっと…自分の部屋に帰りなさい」

勇者(俺は何も見てない)

勇者(ちらっと見えたけど見てない…)

魔王「既成事実まだだよ?」

勇者「いやもうやめて…それやばいから…」

魔王「やばいことなの?」

勇者「下手したら『できちゃう』から…」

勇者(むしろそれが目的なんだけどな、既成事実って…)ボソリ

魔王「ダメならやめとくー」

勇者「そうしなさい…」

魔王「でも一緒に寝るっ」ギュ

勇者「くぁwせdrftgyふじこlp;」


勇者「たのむ!!帰ってくれ!!」

魔王「やだー好きだもーん」

勇者「誰か助けて…」

側近「…」

勇者「…」

側近「…」

勇者「ごめん、吊ってくるわ…」トボトボ

ガシッ

側近「逝かなくていいから、夜遅いし寝ようか」パサッ

魔王「あ、側近どうしたの…あれ…」ズルズル

側近「まおちゃんちょっとお話して寝ようね」ニコ

魔王「え、何か怖い」ズルズル

側近「誰がそんな事教えたのかじっくり聞かせてもらうよ」ゴゴゴゴゴ


バタンッ

勇者「助かったけど後味わりぃ…」

勇者(普通勘違いされると思ったんだが)

勇者(だってあいつまっぱだったもん…)

勇者(あの人でよかったのかもしれない)

勇者「ねよっ」ゴロン

武闘家「スースー」

勇者「…」

勇者「もう…何も見なかった…」

武闘家「スースー」



 -2日目 朝 廊下-


魔法使い「ここで合ってたっけ?」コンコン

魔法使い「勇者起きてる?」

魔法使い「返事がない…」

ガチャ

魔法使い「あ、おは…」

武闘家「まほまほおはよー」

魔法使い「あれ?」

武闘家「なぁにぃ?」

魔法使い「ここ武闘家の部屋?」

武闘家「勇者の部屋~」

魔法使い「どういうこと?」ガシッ

武闘家「え、なに?いたいいたいっ」ギリギリ


勇者「…」ジー

勇者「だから嫌だったんだ…」ガックリ

魔法使い「勇者…どういうことか説明を…」

勇者「俺はもう知らん…吊ってくる…」トボトボ

魔法使い「説明しろおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

勇者「何も分からないんですっ!!すいませんすいませんっ!!」


側近「どうしたの騒がしいけど」テクテク

魔法使い「かくかくしかじか」

側近「ほうほう」

側近「だったら勘違いだね」

側近「昨日、まおちゃんが勇者の部屋に突撃してた時見たけど」

魔法使い「そんな事まであったの…」

側近「もうすでにベッドにいて寝てたよぶとちゃん」

魔法使い「…」ゴゴゴ…

勇者「それフォローにも何もなってない気が…」ガクガク

側近「あるぇー?」


武闘家「何でこんなに騒いでるのぉ?」

勇者「お前のせいだよ…楽になりたい…」ドヨーン

魔法使い「武闘家、勇者の部屋で寝てたのは事実ね?」

武闘家「うん」

魔法使い「なんで?何かヤッたの?」

側近「ストレートだねまーちゃん」

武闘家「暖かいからくっついて寝たよ」

魔法使い「…どういうこと?」

側近「つまり人のぬくもりがほしいから」

側近「つい勇者の部屋で寝ちゃったと」

側近「そういうことだね」

武闘家「そーそー」


魔法使い「他には何も?」

武闘家「寝てただけだよー」

勇者「…だから俺は何も知らないと」

魔法使い「いや…吊るのは私だったようね…」トボトボ

勇者「まてまて」ガシッ

勇者「面倒起こる前に対処しなかった俺が悪い」

勇者「余計な心配させてすまなかった」

魔法使い「べ、別にかまわないよ…」プイッ

側近「ふぅん…これはこれは…」

側近(まおちゃん、頑張らないととられちゃうかもよ?)

今日はここまでです。



 -食堂-


武闘家「今日も美味でありますっ!!」モックモック

魔法使い「…」ズズー

遊び人「うまー」モグモグ

魔王「あれ?」

メイド「魔王様?」シャキィッ

魔王「わぁ!!もう席立たないからっ!?」

魔王「勇者はどこ行ったの?」

メイド「そういえば今日はまだ見てませんね」

魔法使い「何かやることあるから先食べてろって言ってたけど」

魔法使い「毎日の食事は大事だとかよく言うくせに珍しいわね」

メイド「そうですか」


魔王「むーん」カチョンカチョン

メイド「お食事はちゃんと皿の上にありますよ」ギラリ

魔王「わわわ分かってるよぉ…」モグモグ

魔王「うぇ…なんか変なの食べた…にが…」ペッ

武闘家「それ装飾用の葉っぱだよー」ケラケラ

魔王「失敗失敗…」モグモグ

武闘家「メイドさーんこの魔王ちゃんお持ち帰りしていい?」

武闘家「面白いからおうちで飼いたい~」

魔王「ぶふっ!!」

メイド「あらあらダメですよ、うちの癒しですから」ニコッ

武闘家「しょぼーん」

魔王「お持ち帰りされるところだったぁ…」ダラダラ


遊び人「癒しかぁ…」

魔法使い「あんたはしゃべるな」

遊び人「まだ変な事言ってないよっ!?」

魔法使い「しゃべると卑猥な事か変質的台詞しか吐かないでしょ」

遊び人「まともな事だってちゃんと言うよぉ」ヘラヘラ

武闘家「たま~にすごく良い事言う時あるよねぇ」

遊び人「ねー?ほらほらぁ」

魔王「じー」

遊び人「お、なんだい?」

魔王「…なにやってんの?」

遊び人「ビクッ!!」

遊び人「…撤退っ!!」ババッ

ガチャ バタンッ


魔法使い「今の何?」

メイド「うふふ…あの人も弱点増えてますねぇ…」

魔法使い「何のこと?」

魔王「うふふ~」

武闘家「お持ち帰りぃ~」フラフラ

魔王「ひゃあっ!!」

カカカッ!!

武闘家「わひぃ!?」

メイド「ダメと言ったでしょう?」ニッコリ


魔王「ちょっとこの子怖い~」

武闘家「うちはメイドさんが怖い~」

魔法使い「…」ズズー

魔法使い「お茶がおいし…」

魔法使い(下手にツッコまないか…確かに必要ね…)



 -図書室-


勇者「なんだこの量の多さ…」

勇者「全部見るのに数十年かかりそうだな…」

勇者「まぁいっか調べよう」ゴソゴソ

勇者「それっぽいのだけ見てりゃなんとかなるだろう」ペラッ

勇者「…」ペラッペラッ



 -30分後-


勇者「ここには何もないな…」ドサッ

勇者「悪魔召喚書とか怪しいのしかないぞ」ゴソゴソ

勇者「あとこの一角だけか」

遊び人「…」

勇者「…」

遊び人「やふー」

勇者「…えっと大辞典はっと」ゴトゴト

遊び人「無視すんなよー」

勇者「無視はしてないさ」

勇者「ただその棚から首だけのおバカさんに効く武器探してるだけ」


勇者「あった」ズルリ

遊び人「1万ページあるやつだよねそれ…はは…」

勇者「よく知ってるな?」スーッ

遊び人「やめてっ!!そんなので殴られたら中身出ちゃうっ!?」

勇者「はぁ」ドスーン

勇者「こんなところで何やってんだ?」

遊び人「読書以外することないでしょ」スッ

勇者(あっさり抜けれるじゃねぇか…)

勇者(じゃあさっきのはノリ??)


遊び人「昔からの癖みたいなもんかな」ポンッ

勇者「読書が?」

遊び人「そっ」パラッ

勇者「遊び人が読書好きとは意外だな」

遊び人「知識は人にとって必要なものよ」パラッ

勇者「つーか時々別人のようになるよな、あんたは」

遊び人「ずっと同じ性格は疲れるのよ」パラッ

勇者「普通変わるほうがおかしいと思うんだが…」

遊び人「昔はこうして生きてきたしねぇ~」パラッ

遊び人「ちょっと真面目すぎて疲れてたのよ」

遊び人「だから今はこんなになってるわけ」


勇者「ふぅん」

勇者(軽口叩いてるが、目は真剣に本を見ているな)

勇者「あ」

勇者「側近何してんのそんな大百科持って」

遊び人「はっはっは、嘘なんてつくもんじゃないよ」

勇者「いやすまん、マジでここにいるんだが」

遊び人「っ!?」ガタッ

側近「何してるって?今から掃除…かな」

勇者「そうか…大変そうだから俺…出るわ」トコトコ

側近「空気呼んでくれてありがとね」


遊び人「あ、待って私も連れて行ってっ」

側近「あなたはゴミでしょ掃除されなさいっ!!」スッ

バタン

勇者「図書室で暴れていいのか…?」

勇者「あいつ、ここ(魔王城)来てからいいことないな」



ゴキンッッッッッッッ!!!!


「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!」



勇者「そういえば…」

勇者「ここ知ってたくせに何も言わなかったのかあいつって…」

勇者「ホント何考えてるかわかんねぇ」テクテク



 ー食堂ー


勇者「…」

メイド「…」ニコニコ

勇者「あの…」

メイド「…」ニコニコ

勇者「いや…なんでもないです…」トボトボ

勇者(あの顔は怒ってる)

勇者(さすがに今からは飯作ってくれそうにないな…)

勇者(我慢するか)

メイド「お部屋でお待ちになっててください」トコトコ

勇者「え、あぁ」

勇者(この人も何考えてるか分からん…)



 -勇者の部屋-


勇者「そして待てと言われて10分」

勇者「なんだったんだろう…」

コンコン

勇者「ん?どうぞ」

ガチャ

魔王「勇者ぁ!!持ってきたよっ!!」

勇者「なんだなんだ?」

魔王「いや、ご飯をっ」コトッ

勇者「あれ、なんで飯を?」

魔王「朝、食べてないよね?」

勇者「え、あぁ」

魔王「だから持ってきたっ」


勇者「えっと…ありがとう」

魔王「役に立てたっ」グッ

勇者「それぐらいで喜ぶもんか?」

魔王「そりゃ好きな人に喜んでもらえたら」

魔王「うはwwwおkwww」

魔王「ですよっ!!」

勇者「一瞬、誰かの香りがした…」

魔王「何言ってるの?さぁおたべ~」ババッ

勇者「食べるけど…」


勇者「これ、どこから?」

魔王「メイドが持っていってあげてって」

魔王「あとメイドが勇者に言っておいてって」

魔王「『今度からちゃんと理由話してからにしてください』だって」

勇者「あぁそれで怒ってたのか」

勇者「あとで謝っておこう…いただきます」カチャ

魔王「そんなに怒ってはなかったけどね」

勇者「まぁそういうのはちゃんと言うのが大事だ」モグモグ


魔王「…」ジー

勇者「…」モグモグ

魔王「…」ジー

勇者「すごく食べにくいんだが」カチャ

魔王「んぅ?」ジー

勇者「いや、そんなに見つめられると…」

魔王「気にしないでいいよ~」ジー

勇者「そう言われてもだな…」

勇者(相変わらず敵意はまったくないな)


勇者(魔力はすごいあるみたいだが…)ジロジロ

魔王「わ、わ、わっ」

勇者「どうした?」

魔王「やっぱりずっと見るのやめるっ」プイッ

勇者「そうか」モグモグ

魔王(見られるのって恥ずかしいっ///)

勇者「ごっそさん」カチャン

勇者「なぁ」

魔王「うん?」

勇者「こう何度も聞くのは悪いけど」

勇者「ホントに俺の事好きなのか?」

魔王「もちろんだよっ!!」ガタッ

勇者「うおっ!!」


魔王「今までただ見てただけだけど」

魔王「こうやって触れて、話してたらもっと好きになったっ」ギュー

勇者「あ…」

勇者(魔王の手、小さくて暖かいな…)

勇者(いや、何考えてるんだ俺)

魔王「勇者はまだわたしを悪い奴だって思ってる?」

勇者「気にしてたのか?」

魔王「だってずっと遠慮がちだし…」

勇者「いきなりお前みたいになれたほうが怖いわっ」

魔王「えー?」


勇者「まぁ悪い奴ではないってのは分かったよ」

勇者「かといってすべて信用したわけじゃないけど」

魔王「それでもいいよ」

魔王「でもいつかみんなで手を取り合えるようになればいいだけだよ」

勇者「…思ったが」

魔王「うん?」

勇者「だったら何故今でもお前は魔王なんだ?」

魔王「ここだって国なんだよ」

魔王「一番上の…おえらいさん?がいないと国ってダメになるんだ」

勇者「あぁ、そういうことか」

勇者「人間側と同じか」

勇者「国を治めている王がいないと纏まらない」

勇者「そう考えたらここに王は必要なのか…」

魔王「そうだよっ」


勇者「まぁ分かった」

勇者「ついでにお前が本当に頭悪いのも分かった」

魔王「あ、ひっどーいっ!!」

勇者「だってよ、会って2,3会話してすぐに」

勇者「告白したバカだろう」

魔王「バカじゃないもんっ!!本気だったもんっ!!」

勇者「別に俺じゃなくてもよかっただろう」

魔王「そんなことないっ!!」バッ

勇者「うおっ!?」

魔王「勇者だけだもん!!好きになれるのはっ!!」ジワ…

勇者「お、おい…」

魔王「勇者だけだもぉん…」ポロポロ


勇者「うーん…泣かれると困るんだが…」

バァンッ!!

側近「まおちゃん!!」

勇者「なんだぁ?」

魔王「側近~」ガバッ

側近「もう大丈夫だからね?泣かなくていいよ」ギュー

勇者「なんだこれ…」

側近「ちょっとおいで」ガシッ

勇者「俺かよっ!?」ズルズル

魔王「うぅ…」

側近「すぐ戻ってくるから」ガチャ バタン



 -側近の部屋-


側近「そこに座る」

勇者「そこって…床なんだが」

側近「座りなさいっ!!」

勇者「は、はいっ!!」チョコン

側近「何故呼ばれたか分かるよね…?」

勇者「え、さっぱりなんだが…」

側近「…」テクテク カシッ

スラッ

勇者「剣!?」


側近「あたしはね?まおちゃん泣かせるような人は嫌いなんだよ」シュッ

勇者「それでかよ…」プルプル

勇者「つーかどうやって中の事情知ったんだよあんた!?」

側近「一部の部屋以外監視できるようになっててね」

勇者「盗撮!?プライバシー0なの!?ここっ!?」

側近「まおちゃん守るためだよ」

勇者「俺達勇者すら信用されてないのかよ…」

側近「信用してたはずの人に裏切られた事あるからね」

側近「完全に信用するまでは監視するよ、ごめんね」


勇者「…そうか」

勇者「なら俺はやっちまったって事か」

勇者「アイツ泣かせたのは事実だ…」

勇者「好きなようにやってくれ」ドサッ

勇者「抵抗はしない」

側近「…」スッ



ズブッ!!



 -雑談室-


魔法使い「…なんかすごい力を感じた」ピクッ

武闘家「力?」

メイド「…なんかえらい事やらかしちゃったようですねぇ」

魔法使い「何があったか分かるんですか?」

メイド「一言で言うと…側近さんが剣を抜きました」

魔法使い「ど、どういうことですか…?」

メイド「力は失われてても身体の内部に力がまだ残ってますからねぇ」

武闘家「意味がわかんなーい」

メイド「あの人元勇者ですから」

魔法使い「え?」


武闘家「あのおねぇちゃん勇者だったんだぁ」

メイド「何かに襲われたわけじゃないとしたら」

メイド「誰かがあの人を怒らせのでしょうね」ニッコリ

魔法使い「そこで笑顔の意味が分からなくて怖いんですけど」

武闘家「大丈夫なのぉ?」

メイド「えぇ、あの人の傍にもっとすごい人いますから」



 -再び側近の部屋-


勇者「…あれ、死んで…ない?」

側近「あ…」

遊び人「ちょっと側近さぁ…」ズブズブ゙ズブ

側近「あ…あぁ…」ガクガク

遊び人「強い力の気配したと思えば…」ズッ

遊び人「あんたさ…やりすぎっ」ズブッ カランッ

ボタボタ

勇者「お、おい!!大丈夫かっ!!」

遊び人「肩ぐらいどうってことないわ」ボタボタ

勇者「んなわけないだろ!!深く食い込んでたのにっ!!」

遊び人「まぁまぁ…」グッ


遊び人「あの子が大事なのは分かるけど」ボタ…

遊び人「ここまですることないでしょ」ボタ…

側近「ご、ごめんなさい…」ポロポロ

遊び人「私に謝っても仕方ないと思うな」

遊び人「あんただから意味分かるね?」

勇者(なんとなく分かる)

勇者(遊び人はすごく怒っている)

勇者(話し方は冷静そのものだけど)

側近「…」


遊び人「まぁこれ以上は何も言わないわ」

遊び人「わたしゃそれどころじゃないし…」フラッ

勇者「ちっ…回復魔法(大)」パアッ!!

遊び人「うん…治らないね…」ボタボタ

勇者「何故だっ!?」

遊び人「その子の斬撃は回復すら無効にしてしまう力があるんだよ」

勇者「じゃあお前…」

遊び人「この程度で死んだりはしないよ…」


遊び人「あぁ、痛い…」ボタボタ

勇者「せめてメイドのところに行こうぜ…」グイッ

遊び人「あの人苦手なんだけどなぁ」

勇者「側近…あの子呼んでくるわ」

勇者「あんたにとって最高の癒しなんだろ?」

側近「…」

勇者「んじゃ行くか」ズルズル

遊び人「痛い痛い…」



 -再び雑談室-


ガチャ

勇者「やっとついたか」

遊び人「痛いよぉ…」ボタボタ

魔法使い「勇者…ってどうしたのその人!?」

武闘家「うわー…これひどいねぇ」

勇者「俺をかばってこうなった」

メイド「隠す気なしですか」

勇者「嘘だけはついたことないんだよ俺は」ドサッ

勇者「彼女、なんとかできないか?側近に斬られたんだが」

メイド「『無再生の斬撃』…ですか」スッ

パアッ!!


遊び人「あぁ、血が止まった」ボー

勇者「メイド…あんた何者なんだよ…」

メイド「相変わらず身体を張る人ですね」

遊び人「瞬間的に止める方法が浮かばなかっただけさ」フラー

メイド「とりあえず部屋に連れて行きます」グイッ

勇者「手伝おうか?」

メイド「いえ、かまいませんよ」ニコ

ガチャ バタンッ

魔法使い「えっと…」

勇者「少しだけ出てくる、すぐ戻るわ」

魔法使い「え、えぇ…」



 -勇者の部屋-


ガチャ

勇者「ちゃんといたのか」

魔王「うん」

勇者「すまんが側近のところに行ってやってくれ」

魔王「え?」

勇者「すごく落ち込んでいる」

勇者「慰め…癒してやってきてくれ」

魔王「何があったの?」

勇者「本人から聞いてくれよ」


勇者「俺は怒らせちまったからちょっとな…」

魔王「え?え?」

勇者「頼む」

魔王「わ、分かった…」パタパタ

勇者「どんだけ本気なんだよあの人は…」

勇者「それだけ魔王が大事って事か」

勇者「だったら俺が魔王と…あれな関係になったら」

勇者「やっぱり殺されるんじゃ…」ゾクゾクゾク

勇者「…戻ろう」



勇者「と、いう事だ」

魔法使い「と、とんでもない人だね…」

武闘家「遊び人いなかったら今頃勇者の首が胴体とさよならだねぇ」ケラケラ

勇者「笑いどころかっ…シャレにならんかったんだぞ…」

メイド「昔、大切な人守るために人を潰したとかなんとか」

勇者「これ以上怖い事言うのやめろっ!!」

メイド「あの人は大切なものを守るためには何でもするのは本当です」

勇者「さっきの件でよーく分かったよ…」

魔法使い「でもそうだからこそ勇者できてたんじゃないかな」

魔法使い「それだけの決意あったからこそ…」

勇者「あの人は俺より向いてたんだろうな勇者に」


メイド「あら、勇者様はそこまでできないのですか?」

勇者「大切なもの守るってのは負ける気しないけど」

勇者「あそこまでする勇気ないわ」

魔法使い「いつかあんたにも出来ると思うけどね」

勇者「え、そうか?」

魔法使い「ず、ずっといたからそう思ったのよ」プイッ

武闘家「うちもできると思うぞー」

勇者「あ、ありがとう」

勇者「それで遊び人の容態はどうだ?」

メイド「傷自体は治しましたので休んいでたら大丈夫でしょう」

勇者「そうか…」


武闘家「メイドさんって遊び人のこと知ってるんでしょぉ?」

メイド「えぇ、そこまで長い付き合いではないですけどね」

武闘家「じゃああの人の事教えてー?」

メイド「私が知ってる範囲でいいのでしたらかまいませんが」



??「ちょーっとまったーっ!!」



バァン!!



??「あの人の事ならあたしが話そうっ」

魔法使い「あ」

メイド「また監視オーブ覗いてましたね?」

??「うは、バレてるっ」


勇者「…側近」

勇者「もう大丈夫なのか?」

側近「…さっきはホントごめんね」

側近「あの子泣いてるの見ただけで何か吹っ飛んでた」

勇者「今すぐここから逃げたい…」ガクブル

側近「もうあんな事しないから大丈夫だよー」

側近「とりあえずみんなあの人の事知りたいんだってね?」

勇者「あぁ、本人は何も教えてくれないからな」

武闘家「仲間なのにねーぷんぷんっ」

魔法使い「悪い人ではないけど謎が多いのよね」


側近「あまり本当の自分知られたくないみたい」

側近「賢い人だったせいで何にも興味をなくしてたんだって」

側近「それで唯一見つけた楽しい事が」

側近「人を観察する事」

魔法使い「人?どういう事なんです?」

側近「人はそれぞれ違う考え、行動をもってるよね?」

側近「それを見るのが面白いんだって」

勇者「じゃああの変態発言とかは…」

側近「多分、相手の反応見て楽しんでるだけだと思うよ」

側近「でも相手で遊んでるだけじゃない」

側近「ちゃんと相手の事を見てくれているんだ」

側近「自分が気に入った人はちゃんと気にかけてくれる」


武闘家「じゃあうちらはどうなんだろうねぇ?」

勇者「ちゃんと見てくれているさ」

勇者(俺達に気づかないように『何か』してくれていたのは知ってる)

勇者(詳しくはさっぱりだけど普通じゃない人だった)

側近「さすが勇者は分かってくれているんだね」ニコリ

武闘家「勇者は見えないところも見てるのだぁ」

魔法使い「あんたは必要なものも見てないでしょ」

武闘家「にゃにおー」


側近「そっちのパーティも面白そうだね」

勇者「あんたの方はどうだったんだ?」

側近「あたしの?」

側近「面白い人ばっかりだったよ」

側近「変態とか毒吐きちゃんとかバケ乳さんとか」

勇者「まったく分かんねぇ…」

魔法使い「ふと思ったけどさ…」

勇者「なんだ?」

魔法使い「何故かうちらは回復役って勇者だけだったよね?」

勇者「……そうだな」ハァ

勇者「普通、回復って勇者の仕事じゃないんだけどなぁ…」

側近(ホントはもう1人いるんだけどね)


側近「こっちは回復二人いたから楽だったよ」

勇者「うらやましいな…」

側近「あたしと賢者…今は遊び人か」

武闘家「賢者?うっそだぁ~」

魔法使い「あの人、賢者だったの…」

勇者「…」

側近「あー言わないほうがよかったかな」

側近「みんなあんまり信じてないしなぁ…」

勇者(なんとなく、俺はすぐ納得してしまった)

勇者(あいつ、知識だけはとんでもなくあったしな)

勇者(図書室で真剣に本読んでたしな)


側近「ああ見えても寂しがり屋だから」

側近「時々でもいいから相手にしてあげてね」

メイド「貴方といる時はすごく楽しそうですけどね」

側近「あたしスキーな人なんだもん」

武闘家「そっち系の人?」

魔法使い「知らない世界ね」

メイド「どちらかというと姉妹の仲ですね」ニッコリ

勇者「見てたらそんな感じだったな」

側近「あんな変態お姉さんいらないよぉ」

魔法使い「さらりと否定されてるんですけど…」


メイド「話ぶった切っちゃうんですが」ジッ

側近「何?メイドさん」

メイド「さっきから落ち込んでますね」

側近「そりゃ悪い事したしね」

メイド「いいえ、どうも別件で落ち込んでるように見えます」

側近「あぅ…バレてる…」

勇者「もうあまり巻き込まれたくないけど」

勇者「魔王とケンカしたりでもしたか?」

側近「ケンカというか一方的に怒られちゃった」

側近「大好きな人殺そうとしちゃったしね」


勇者「…」

勇者「俺なんか変な役目ばかりだ…」ガタッ

勇者「ちょっと話してくる」

側近「もう泣かしちゃダメだよ」

勇者「死にたくないからしねぇよ」

側近「そしたら今度は絶交されるんだろうなぁ…」ショボーン

武闘家「側近さん大変だねー」ナデナデ

側近「あー撫でられるの久しぶりー」ホクホク

側近「それに君も可愛いねぇ」スリスリ

武闘家「うひゃぁ!!」

勇者「魔王だけじゃないのかよ…」

メイド「ロリコンですからね、その人は」ニッコリ

勇者「…じゃ」

バタンッ

魔法使い「…」←年齢と見た目的に射程外の人



 -魔王の部屋-


勇者「ここまで来たのはいいが…」

勇者(魔王といえど女の子の部屋に)

勇者(単身突撃していいものか…)

遊び人「話するなら早く入るといいよ」

ドンッ!!

勇者「えっ!?」

遊び人「そんじゃねぇ~」パタパタ

ドスン!!

勇者「ぶっ」

魔王「ゆ、勇者…」

勇者「よ、よぉ…」ムクリ

勇者(何故遊び人がもう歩き回ってんだ…)

勇者(不死身かあいつ…)


魔王「うひょ~勇者だ勇者だぁ」ギュー

勇者「ちょ」ムギュ

魔王「遊びに来てくれたの?ね?ね?」

勇者「何か機嫌悪くなってるって聞いたので来てみたんだが」

魔王「なんの事かな?」

勇者「まぁいいけどな」

魔王「と、いうことでちゅーしよちゅー」チュッチュ

勇者「なんでやねん!!」グイッ

魔王「いけず~」

勇者「いけずで結構」

魔王「でも離さないもん」ギュッ

勇者「なんでだよもぉ…」


勇者「じゃあこれだけ」

魔王「?」

勇者「側近は許してやってくれ」

魔王「んぅ…落ち込んでた?」

勇者「見た目以上に落ち込んでたようだ」

魔王「ちょっと怒りすぎたかな」ショボン

勇者「まぁ俺も無事だったしもう許してやれ」

魔王「うん」

魔王「あ、そうだ」

魔王「あのね勇者…」



 -昼 魔王城外の森の中ー


勇者「どうしてこうなった」

魔王「んふふ~」ニギニギ

魔王「デートっデートっ♪」

勇者「…」

勇者(こうなるのはかまわないんだが)

勇者(ずっと見られてるわけで…)

側近『じー』

魔法使い『さすがにまずいんじゃない、これ』

武闘家『大丈夫~許可は得てるから~』

魔王「~♪」←許可を得た本人

勇者「こんな監視つきのデート聞いたことがない」

魔王「別に隠してもしょうがないもんっ」

勇者「あーもうどうにでもなれ…」


魔王「勇者、キノコ見つけたっ」ブチッ

勇者「捨てろ…それ毒キノコだ」

勇者「死んだりはしないが幻覚作用がある」

魔王「わ、見ただけで分かるの?」

勇者「伊達に長いこと旅してきてないからな」

側近『あの子、そんな長い間旅してたの?』

魔法使い『私達と会うまでの数年間』

魔法使い『ずっと一人で強くなるため旅してたみたいで…』

側近『そうなんだ』

側近『あの子の強さならさっきの剣止められたはずなんだよね』

側近『さすが勇者ってところかな』

武闘家『悪いと思ったらちゃんと謝ってくれるよ~』

側近『優しいのはさっきので分かったよ』ニコ


魔王「このクルクルしてるのは食べられるの?」

勇者「あぁ、それは生は毒だが熱すれば食べられる」

魔王「これは?」グイッ クパァ

勇者「ひぃっ!?」

勇者「それは無理だっ!!食べれても食いたくないっ!!」

魔王「えー?おいしそうなんだけどなぁ」クパァ

勇者「むしろ食われるから捨てろぉぉぉぉっ!!」

魔王「あ」パクリ

勇者「ちょ…」キンッ

シュバッ!!

魔王「あードロドロぉ」

勇者「大丈夫か?」キン

魔王「失敗失敗、ありがとー」

勇者「これで顔拭いておけ」スッ

魔王「うわ、勇者って紳士だ!!好きっ!!」ガバッ


側近『あたしの出番なかったね』チャキ

魔法使い『この距離から斬る気満々だった貴方が怖いです…』

武闘家『さすが勇者だねっ』

魔王「えへへ~」ギュウ

勇者「くっつくな…まぁいいか」

勇者(下手に抵抗して泣かせたら今度こそ斬られるし)ガタガタ

魔王「夢が叶っちゃった」

勇者「ん?」

魔王「勇者とこうして二人で歩くことー」

勇者「…そうか」

魔王「そこですかさずちゅー」ムー

勇者「だからしてくるタイミングおかしいっちゅーのっ」グイッ

魔王「ちゅーだけに『ちゅーのっ』?」

勇者「やかましいわっ」


魔王「む~これはなかなか叶いそうにないなぁ」

勇者「叶えさせてたまるかっ」

魔王「そんなぁ…」ウルウル

側近『…』キラッ

勇者「はっ!?」

勇者「そ、そう簡単にすることじゃないし?」

勇者「し、仕方ないんだよ、なっ?」

魔王「そっかぁ…じゃあもうちょっと我慢する」ショボン

勇者「はぁ…」

武闘家『勇者が疲れてるぅ』

側近『…残念っ♪』チンッ


魔法使い『えっと側近さん』

側近『なにかな?』

魔法使い『ホントは勇者のこと反対じゃないんですか?』

側近『いや、別にそういうわけじゃないんだ』

側近『あの子を本当に幸せにしてくれるならかまわないよ』

側近『傷つけるようなら許せないだけさっ』

魔法使い『そうなんですか…』

魔法使い『…』



 -とある部屋での会話-


「いたいいたいもうちょっと優しくして」

 「少しは我慢してください」

「二人になると随分と態度が違うねあんた」

 「貴方には遠慮は要らないようなので」

「ひどいわっ」

 「今回の件はどういうつもりで?」

「何のことだい?」

 「質問を質問で返すとか誰に教育を受けたのやら」

「私の事は私から教わるっ!!…って、いたいいたいっ!!」

 「はいはい、そうですか」

「ごめん、真面目に話す」

 「はい」


「あの子ら連れてきた件でしょ?」

「勇者っていうのもあったけど」

「実際に見て知ってほしかったんだよ」

「私達がやっている事が本当だってことをね」

「まだこの事知られてない地域から来たようだったし」

 「きちんと活動してくださっていたのですね?」

「遊んでるように見えてもやる事やってるわよ」

 「だからといってこれはやりすぎじゃないですか?」ガシガシ

「いだああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 「無駄な仕事は増やさないでほしいですね」ニコ



 -中庭-


魔法使い「綺麗な花壇…」

魔法使い「ここが魔王城だなんて信じられないな…」

魔法使い「ホント何しにここに来たのか分からなくなるわ」

モニモニ

魔法使い「ひっ!?」ズザーッ

遊び人「あはは~いい反応だねぇ」

遊び人「しかも結構サイズあるな」ワキワキ

魔法使い「あんたっ!!」キッ

遊び人「綺麗な所だろう?」

魔法使い「急に態度変えて…ふぅ」

魔法使い「そうね、人間界でもこういう所はそうないわ」


遊び人「これ側近と魔王がやったんだってさ」

魔法使い「そうなの?」

遊び人「こちらがもうちょっと明るく見えるようにって」

遊び人「側近が苗持ってきて育てはじめたんだよ」

遊び人「それ見てた魔王が手伝いだしたってわけ」

魔法使い「ふぅん」

魔法使い「あの人たちは本気で共存目指してるの?」

遊び人「話聞いたんじゃないのかい?」

魔法使い「聞いたけど未だに信じられなくて…」

遊び人「まぁそうだろうね」


遊び人「私は裏で色々手伝っていたけど」

遊び人「ほとんどあの子たちの功績でいくつかの国は協力してくれてる」

魔法使い「え!?そうなの?」

遊び人「…あんたら大都市何故か避けてたからね」

魔法使い「私含めてみんなああいうところ苦手だったのよ」

遊び人「まるで手配犯じゃないの」

魔法使い「別に何か犯罪犯したわけじゃないけど…」

遊び人「あんたは…そうだねぇ…」

遊び人「自分の外見見られる、触られるが嫌いか」

魔法使い「っ!?」

魔法使い「なんでそれを…」


遊び人「もう知られてるみたいだから隠さないけど」

遊び人「私は人間観察が大好きなのさ」

遊び人「仲間になってしばらく見てたら分かってくるの」

魔法使い「…」

遊び人「詳しくは知らないけど」

遊び人「勇者や武闘家いる時は大丈夫みたいだから」

遊び人「そこまで気にはしてなかったよ」

魔法使い「…何故か分からないけど私って変なのに襲われやすいの」

遊び人「ふーん」

魔法使い「そのせいで人前に出るのが怖くなった」

魔法使い「だから人のいない薄暗い場所にしか居場所はなかった」


遊び人「そこから出したのが勇者ってわけか」

魔法使い「…」コクリ

遊び人「どこまでイケメンなんだ勇者は」

遊び人「早めに食っておくべきだったかっ」ペロリ

魔法使い「変態、自重しろ」

魔法使い「今の私でいられるのはホント感謝してる」

遊び人「ホントは感謝だけに留まってないんじゃない?」

魔法使い「…これ以上は何も求めない事にしてるの」

遊び人「悲しいこというねぇ…それぃ」ムニッ

魔法使い「ちょ…あ…やめ…」

遊び人「言いたい事は言うべきだと思うよわたしゃ」ボソリ

魔法使い「え?」


遊び人「まほ子にモフモフというかモミモミしたから休んでこよっと」

魔法使い「この変態女!!」

遊び人「ふひひ」

魔法使い「ありがと」ボソッ

遊び人「はてさてなんのことやら」パタタタ

魔法使い「何でもお見通しなんだねあの人には…」

武闘家「あーまほまほみっけたー」

武闘家「さっきの遊び人だよね?」

魔法使い「そうよ」

武闘家「もう身体大丈夫だったのかなぁ?」

魔法使い「…変態だから痛みに鈍感なんじゃない?」

武闘家「そんなもん?」

魔法使い「そんなもん」



遊び人「いつになっても世話の焼ける子多いねぇ」

ペタリ

遊び人「超痛いんですけど…」ズキズキ

メイド「わざと100%治してあげなかったですからね」

遊び人「ひぃぃ!?でたぁぁぁ!!」

メイド「人をお化けのように…まったく」グリグリ

遊び人「~~~~~っ!?」ズキズキズキ

メイド「まだ部屋で休んでいてください」

遊び人「鬼かあんた…」


遊び人「何だか放っておけない子がいっぱいいてね」

遊び人「つい自分の事そっちのけで相手しちゃうんだわ」

メイド「気持ちは分かりますが今は自分を大事にしてください」

遊び人「まだ相手しないといけない子いるから勘弁してくんない?」

メイド「ダメです」ガシガシ

遊び人「いたぁぁぁぁっ!!何でいつも傷のところ掴むのっ!?」



 -夜 浴場-


勇者「やっと落ち着ける…」ザバー

勇者「もう今日は誰も相手にしない」

勇者「決めた…」ボー




魔王「あれ?勇者は?」

魔法使い「お風呂」

魔王「なんですと?」キラーン

魔王「これは背中を洗ってこなくてはっ」パタパタ

魔王「…あれ前に進まない」プラーン

メイド「足が地面についてないですからね」グイー


魔王「メイド、離してっ!!」

メイド「もう今日は勇者様はそっとしてあげてください」

魔王「なんでなんでっ!?」

メイド「何度かのイベントでお疲れのようですから」

魔法使い「今さらっとイベントとか言った…」

側近「聞き流したほうがいいよー」

側近「疲れさせた原因としてはあたしも賛成ー」

魔王「えー側近までー?」


武闘家「ふーんふーん♪」テコテコ

魔法使い「どこ行くの?」

武闘家「お風呂!!」

魔法使い「…ふぅん」ゴゴゴゴ

武闘家「なんかすっごいもの出してる…」

魔法使い「あんたも勇者おちょくるならやめときなよ」

魔法使い「冗談抜きで休ませてあげなさい」

武闘家「ちぇーはぁい」スゴスゴ

魔法使い「…」テクテク

武闘家「何でついてくるの?」

魔法使い「部屋に戻るだけよ」

武闘家「何もしないってー」

魔法使い「そっちはお風呂ある方なんだけど?」

メイド「お二人様、もうすぐお食事できますので…」キラリ

二人「はい、座って待ってます」ビクビク


魔王「ゆーしゃぁー」ヨヨヨ…

武闘家「突撃は諦めるかなぁ」

武闘家「まーおちゃんっ」

魔王「何ぃ?」

武闘家「あとでお風呂一緒にはいろぉ?」ポフポフ

魔法使い「まーた今度は何企んでるやら…」

武闘家「失礼なっ!!親睦を深めるだけだよっ!!」

武闘家「まほまほも一緒に入るんだよ!!」

魔法使い「はぁ!?」

メイド「いいではないですか、お風呂は大きいですから問題ないですよ」

魔法使い「そういう問題じゃ…う…」

魔王「みんなで入ったら楽しそうだなぁ」

魔王「分かった!!一緒に入ろう!!」

魔法使い(どうしよう…)



 -廊下-


キャッキャウフフ

勇者「何か楽しそうだな」テクテク

勇者「飯の時間まで本でも読もうかな」テクテク

遊び人「…」テクテク

勇者(もう誰にも会いたくなかったのに…)

勇者「おい」ガシッ

遊び人「うひっ」ビクン

勇者「怪我してんのに出歩くんじゃねぇよ」

遊び人「暇なんだもん~」

勇者「メイドに捕まっても知らんぞ」

勇者「さっきも引きずられて戻されてただろう」


遊び人「せめて図書室に避難させて…」ブルブル

勇者「俺の責任にしないならかまわん」

遊び人「やたー」

側近「…」ゴゴゴゴ

勇者「…あんたって呪われてるんじゃねぇ?」

遊び人「かもしれないわぁ…はは…」

側近「…」ガシッ

勇者「じゃあな」テクテク


遊び人「ちょ…離して…ねぇ…」

側近「色々聞きたい事あったんだよ」ニッコリ

側近「自由に動けないうちに聞いておこうかと思って」

遊び人「エッチなことは教えられないよ…って」ズリズリ

遊び人「また傷のところ掴まれたいだあああああああああああい!!」

勇者「…さすがに不憫になってきたな」

勇者「関わらないけどな…」テクテク




 -浴場-


魔王「ひゃっほーい」ヌギヌギ

魔法使い「結局入ることになってしまった…」

武闘家「むっ、まほまほも早く脱ぐっ」

魔王「そうだよ~早くぬくぬくお風呂入ろうよ~」

武闘家「ほら早く脱ぐー!!」グイグイ

魔法使い「ちょ、いや…やめ…」

魔王「脱げっ話はそれからだー!!」グイグイ



魔法使い「や…やめてよぉぉぉぉっ!!!!」



ドンッ!!




武闘家「!?」ドサッ

魔王「あぅっ…まほまほ…?」

魔法使い「…」ガタガタ

武闘家「どうしたの…?」

魔王「えっと…」

魔法使い「っ!!びっくりさせてごめんね…」

魔法使い「二人でお風呂は入って…私はやっぱりダメだ…」トボトボ…

武闘家「ごめんなさぁい…ふぁぁ…」ポロポロ

魔王「ぶどちゃん…」ナデ

魔王「んぅっ!!」

魔王「まほまほっ!!」

魔法使い「!!…なに?」

魔王「何が怖いの…?」

魔法使い「え…」


魔王「何か怖がってるよね?何がそんなに怖いの?」

魔王「わたし?」

魔王「だったら謝るっ!!ごめんっ!!」

魔法使い「魔王…ちゃん…」

魔法使い「何も怖がってなんか…」

魔王「うそっ!!」

魔法使い「…」

魔王「やっぱりわたしなのかな?」

魔法使い「魔王ちゃんは怖くないよ…」

魔王「わたしバカだから答え見つけられないけど」

魔王「まほまほが怖がってるのは分かるっ!!」

魔王「これでも魔王って呼ばれてるんだっ!!」


魔王「でも人間と仲良くなりたいから頑張ってる」

魔王「だからその…んぅ」

魔法使い「…」

魔王「手伝いたいんだっ!!」

魔王「怖いものがあるならそれを怖くないようにしたい!!」

魔王「だからぁ…」ポロポロ

魔法使い「私は…」

魔法使い「二人とも聞いて?」

武闘家「うぇぇ?」グスグス

魔王「んぅ」ゴシゴシ

魔法使い「私ね…人に自分の身体見せるのと触れられるのが怖いんだ」


魔法使い「いつもローブで隠してるけど」

魔法使い「それでも怖い時がある」

魔法使い「昔、ちょっとひどい事あってね」

魔法使い「みんなが私を傷つけてきそうで怖かった…」

武闘家「ぐすっ…でもうちらも結構まほまほに触ってたよ?」

魔法使い「ある程度慣れた人ならちょっとは大丈夫なんだよ」

魔法使い「でもずっとは…」

魔王「それで脱がそうとしたらあんなに怖がったんだね」

魔法使い「どうしてもああいうのはダメなんだよ…」

魔王「でもここに何かしてくる人いないよ」

魔王「わたしはまだ信用されてないかもだけど」

武闘家「うちは魔王ちゃん信用してるよ!!」

魔王「うん、ありがと」

魔王「まほまほ、怖かったら無理しなくてもいいんだ」

魔法使い「…」


魔王「でも、わたしは頑張ってほしいかな」

魔王「だって・・・」

魔王「それだと好きな人に抱きつけないじゃない」ニッコリ

魔法使い「魔王ちゃん…」

魔王「じゃあ私はお風呂にはいろーっと」

武闘家「うちもはいるーっくしゅん!!」

魔王「早くしないと風邪引いちゃうぞぉ」ポテポテ

武闘家「ひゃっはー!!」パタパタ


ピシャン!!




魔法使い「頑張ってほしい…かぁ…」

魔法使い「好きな人抱けないって魔王ちゃんじゃあるまいし」フフッ

魔法使い「…」プルプル

魔法使い「でも私だって…」グッ

魔王使い「言いたい事もやりたい事もできるようにしないとねっ」グイッ


パサ…



魔王「ほーらお湯かけちゃうぞ~」バシャー

武闘家「にょわー泡が流されていくぅぅぅ!!」

魔王「これはすごい量だぁぁぁぁ!!」

魔法使い「…お湯流しただけでどんだけ騒いでるのよ」ガラガラッ

魔王「まほまほ…」

魔法使い「ほらまだ魔王ちゃんは洗ってないんでしょ」グッ

武闘家「ま、まだなのだー」

魔法使い「あんたは湯船につかってなさい」プルプル

武闘家「もう大丈夫?」ザパーン

魔法使い「その遠慮なく聞いてくるあたりあんたらしいね」

魔法使い「一回思い切ったら思ったより怖くなかったわ」

武闘家「そっかーひゃっはー!!」バシャーン

魔法使い「飛び込むなっ!!」プル…


魔王「ま…」

魔法使い「…ほら後ろ向くっ」グイッ

魔王(本当はまだ怖いんだと思う)

魔王(でも頑張ろうとしてる)

魔王「まほまほ…早く早くぅ!!」ジタバタ

魔法使い「暴れるなっ!!」

魔王(だからわたしはそれに気づかないようにするだけ)



 -バルコニー-


魔王「ふぅー」

魔王「お腹いっぱいだぁ」ポンポン

魔王「勇者、もう寝ちゃったのかな」

魔王「疲れてるって言ってたよね」

魔王「わたしのせいかな…」

魔王「引っ張りまわしちゃったし」

魔王「むーん」

ズル…ズル…

魔王「うん?」キョロキョロ

魔王(音がしたんだけど)


魔王「何だろう?上?」キョロキョロ

??「バカめっ!!下からだっ!!」ガバッ

魔王「うひゃあああ!!」


ドタドタドタッ!!


??「げっ!?来るっ!!」

??「自身透過魔法×2っ」スウッ

側近「なにっ!?」バッ

??『しゃべっちゃだめだ』ボソリ

魔王『…』コクコク

側近「あれ?誰もいない…」

側近「ここじゃなかったのかな」テクテク…

??「ギリギリ時間切れ~」スウッ


魔王「何してんの?」

遊び人「ごめんごめん、びっくりさせてさ」

魔王「でもなんで下から来たの?」

遊び人「鬼軍曹から逃げるにはこうするしかなかったんだ…」

魔王「またメイドから逃げてるのー?」

魔王「大人しくしてたら何もされないのにぃ」

遊び人「暇だとついやっちゃうんだ☆」

魔王「『けんじゃ』は昔から変わってないね」

遊び人「このほうが楽しいんだよ」

魔王「ふーん」


遊び人「それより勇者はまだオトせないのかね?」

魔王「全然興味持ってくれないもん」プクー

遊び人「まぁまだ出会ってすぐだしねぇ」

遊び人「そう簡単にはいかないか」

魔王「言われたのいくつかは試したよ」

遊び人「まおたんは人の話聞いてえらいねぇ」ナデナデ

魔王「へへぇ」

遊び人「そのうち勇者だって本当に好きになってくれるさ」

魔王「本当に?」

遊び人「その純粋さを忘れてはいけない」


側近「ほー」

側近「人の言う事も聞かず汚れきってる人はどうすればいいと思う?」ガシッ

遊び人「えーっと…」ダラダラダラ

側近「またまおちゃんに変な事吹き込んでるのかあんたはっ!!」

遊び人「すっかり『ゆうしゃ』はお姉ちゃんだなぁ」

側近「だったらあなたも尊敬できるお姉ちゃんになってっ!!」

遊び人「わたしゃ反面教師で十分さっ」ダッ

側近「あっ!!どうやってすり抜けたのっ!!」ダダッ

遊び人「まおたん!!自分に正直に勇者と接するといいよっ!!」ダダダッ

側近「まちなさーいっ!!」ドドドッ

魔王「自分に正直に…」

魔王「ありがとう『けんじゃ』お姉ちゃん」



 ー3日目 朝 食堂ー


勇者「おはようさん…」ガチャ

武闘家「おっはよー」

魔法使い「…おはよ」

魔王「おはよぉ」

勇者「あれ?」

メイド「どうなさいました?」

勇者「いや…なんでもない」

勇者(魔王がえらい大人しい気がする)


魔王「勇者」

勇者「うほぁっ!!…なんだ?」

武闘家「すっごい声だした今」プークスクス

魔法使い「スルーしてあげなさい…」

魔王「えっとね…あとで来てほしいところがあるの」

勇者「いいけど、どこだ?」

魔王「ご飯終わったら案内するよ」

勇者「分かった」

勇者(やっぱり何か大人しいぞ)

メイド「はーいできましたよー」カチャカチャ

武闘家「ご飯だご飯っ!!」

魔王「ご飯だご飯っ!!」

勇者(気のせい…かな)

魔法使い「…」



 -廊下-


魔王「こっち」ポテポテ

勇者「おう」トコトコ

遊び人「…」ジー

勇者「…(またか)」トコトコ

遊び人「ナニモシナイヨ-」ジー

勇者「…」トコトコ

勇者(放っておこう)


魔王「…」

勇者「…」

勇者(一体何があるって言うんだ?)

勇者(段々使われてない部屋の通りまで来たけど)

魔王「ついた」カチャカチャ

勇者「ここか」

魔王「開いた、入って」キィッ

勇者「…」

勇者(いたって普通の一室だ)

勇者(二人っきりのところ襲われるんじゃないかと思ったが…)


勇者「何の用事でここに来たんだ?」

魔王「…ん~」ゴソゴソ

勇者「本棚?」

魔王「あったっ」

魔王「これ見てほしくって」スッ

勇者「何かの資料か?」ペラッ

魔王「過去に先代がやってたことが記録されてるんだって」

勇者「…」

勇者「先代って確か魔王の両親だったよな?」ペラペラ

魔王「うん」


勇者「これには共存に向けての思考や活動記録画書かれてあるが」

勇者「先代はどこ行ったんだ?」

勇者「ざっと見たところこれも途中で終わっているんだが」ペラ…

魔王「もういないよ」

勇者「いない?」

魔王「殺されたんだ」

勇者「…そりゃ聞いちゃいけない事だったか」

魔王「大丈夫だよ、詳しく話したほうがいい?」

勇者「出来るなら聞きたい」


魔王「パパとママは人間に殺されちゃったんだ」

勇者「それって勇者にか?」

勇者「前の…側近とかその前の勇者とか」

魔王「ううん、人間の国王に」

勇者「ちょ…待てっ!?なんだって?!」

魔王「共存のために話し合いしにいったんだ」

魔王「わたしはちょうどお城で留守番してた」

魔王「それで話し合いにすらならずにその場で…」

勇者「…」

魔王「亡骸すら残すのを許されなかった」

勇者「それ…」

勇者(まさか、あの事件の関係じゃないか?)


魔王「わたしは何も知らずに帰りを待ってたんだよ」

魔王「その時ちょうどゆうしゃ…側近が来たんだよ」

勇者「そこからはなんとなく分かる…」

勇者「あの人が国王暗殺したんだろ?」

魔王「うん」

勇者(やっぱりな…)

魔王「わたしの両親の仇と…」

魔王「自分の両親の仇を討った」

勇者「おい…自分のって?!」


魔王「お城の中の人しか知らなかったんだって」

魔王「幼すぎるゆうしゃのためにもうちょっと旅は待ってくれって」

魔王「それを聞いてくれず、抵抗した罪で殺されたんだって」

勇者「なんだそれ…ひどすぎる…」プルプル

勇者(そんな事一言も言わなかったぞ、あの人…)

勇者(笑顔の裏にそんなひどい過去あったのか)

魔王「やっぱり勇者は優しいね」

魔王「だからこそ好きになったわけだし」ニコ


勇者「こんなことした人間と未だに共存しようとするのは何故だ」

魔王「ゆうしゃ言ってたんだ」

魔王「『世界にはあんな人間ばかりじゃない』」

魔王「『あたしと同じ様な事考えてる人だっている』」

魔王「『だからその人たちと力を合わせて共存したい』

魔王「って」

勇者「やっぱ俺よりすげぇわあの人…」

魔王「ろりこんだけどねー」

勇者「その一言は今は言ってほしくなかった…」


魔王「これが私たちが今やってる事なんだよ」ポンポン

勇者「…」

魔王「勇者にもっとその事知ってほしくてここに連れてきたんだ」

勇者「…最初のお前のあれががなきゃもうちょっとシリアスだったんだろうな」

魔王「しりがる?」

勇者「おい!!さらに空気ぶち壊すなっ!!」

魔王「ふへへ~」

勇者「ったく…」

魔王「勇者はどうする?」

勇者「ん?」


魔王「わたしたちがやってる事を止める?協力する?」

勇者「何だその二択?」

勇者「選択の余地なんてないよ」

勇者「止める理由なんかない」

勇者「でも協力するのはちょっとだけ待ってほしい」

魔王「ちゃんといい結果待ってるよっ」

勇者「あぁ」

勇者「ところで、言うべきか迷ったが」

魔王「うん?」

勇者「お前、今日やけに大人しくね?」

魔王「?」


勇者「昨日までだったら確実に」

勇者「『勇者~ちゅーしよ~♪』」

勇者「とかいって俺に突撃してくるのに」

魔王「…す」

勇者「す?」

魔王「すごい!!私に似てる、さっきの声!!」

勇者「なんでそこに興味持つかなぁ!?」

魔王「いやぁ見た目がちょっと可愛いから」

魔王「声変えたやばいんだろうなと思ったけど」

魔王「パーフェクト!!」グッ

勇者「お前は何言ってるんだ」


勇者「どうもないならもういいわ…」テクテク

勇者「戻る」ガチャ

魔王「あんまりしつこくしちゃうと嫌われるから」

魔王「昨日疲れさせちゃったのわたしのせいでもあるんでしょ?」

勇者「…」ピタ

魔王「だからちょっとだけ我慢する事にしたの」シュン

勇者「お前…」クルッ

勇者(ちょっとドキッとしてしまった)

勇者(何だこの可愛い生き物は…)

勇者「いつも通りやってくれたほうがいい」

勇者「急にしおらしくなられても逆に困る」

魔王「勇者…」


勇者「んじゃ戻るぞ」

魔王「えいっ」ピョーン

勇者「うお!?」ズシッ

魔王「このままもどろっ?」

勇者「重…くはないが…首絞まってるから…」グググ…

魔王「ごめんごめんっ」スルスル

勇者「…ふぅ」

魔王「はやくはやくぅ~」ペコペコ

勇者「子供かっ!!動くから頭を叩くなっ!!」




遊び人「おーおー仲良くなってんじゃないか」

遊び人「あの二人は今のところもう問題はないかな」

遊び人「あとは…」

側近「あなただと思う」

遊び人「おっほぅ、やっぱり?」

側近「ほら戻るよ」グイグイ

遊び人「あら、今日は優しいのね」テクテク

側近「別にあなたが嫌いなわけじゃないし」プーン


遊び人「た~っち」ポニッ

側近「ひゃあぁぁぁぁっ」

遊び人「む、前より少し大きくなっておるっ」

遊び人「誰に揉まれて大きくなったっ!?」

側近「何もしてないよっ!!」ガスッ

側近「と、いうかなんで触っただけで大きさ分かるのっ!!」ガスガスッ

遊び人「おふっ」


側近「怪我人は大人しくしてるっ」

遊び人「もうだいぶ治ったんだけどなぁ」

側近「…ふっ!!」グリッ

遊び人「うびゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」

側近「うそつき…無理ばっかりして」

遊び人「あんた昔よりしっかりしてきたね」

遊び人「お姉さんうれしいわぁ…」ガクッ

側近「あれ、やりすぎた?」キョトン



 -雑談室-


魔法使い「え?人間界に戻る?」

勇者「ちょっと確かめたい事があってな」

魔法使い「そっか…ついていこうか?」

勇者「いや、一人でいいよ」

武闘家「ストーカーしよっか?」

勇者「…こいつは遊び人の部屋にでも放り込んでおいてくれ」

武闘家「なにがあるのー?」

勇者「一緒に側近に折檻されるといい」

勇者「あと、遊び人に何かを奪われるおまけもつくぞ」

武闘家「ひぎぃ」


側近「人を何だと思ってるんだよ…」

勇者「いたのか…」

側近「そりゃあたしは一人でいるの嫌いだからね」

勇者「なんじゃそりゃ」

側近「それに可愛い子いじめちゃダメだよ」ナデナデ

武闘家「怖かったよー」ギュッ

側近「この子、部屋に連れて行っていい?」

武闘家「その台詞うちもまおちゃんに言ったー」

勇者「ここはやっぱりこんなんばっかか…」

魔法使い「すぐ戻ってくるの?」

勇者「ちょっとした確認だけだから2、3日かな」

魔法使い「分かった」


側近「人を何だと思ってるんだよ…」

勇者「いたのか…」

側近「そりゃあたしは一人でいるの嫌いだからね」

勇者「なんじゃそりゃ」

側近「それに可愛い子いじめちゃダメだよ」ナデナデ

武闘家「怖かったよー」ギュッ

側近「この子、部屋に連れて行っていい?」

武闘家「その台詞うちもまおちゃんに言ったー」

勇者「ここはやっぱりこんなんばっかか…」

魔法使い「すぐ戻ってくるの?」

勇者「ちょっとした確認だけだから2、3日かな」

魔法使い「分かった」


勇者「時々、誰かさんみたいな怪しい発言をする」

勇者「簡単に言うと変態」

側近「そ、そうだよ…あの変態が入れ知恵してるっぽいんだよね…」

魔法使い「もうこの会話だけで特定できるからとんだ変態よね」

武闘家「さすが変態!!」

魔王「?」



 -一方 その変態はというと…-


変態「…どうしよう」

変態「調子に乗って外の裏道使ってたら」

変態「変な鳥に囲まれた」

鳥?「ギャーギャー」ツンツンッ

変態「あひぃ!?傷を突くなぁっ!?」

変態「誰か助けれーっ!!」



勇者「まぁ変態はどうでもいいや」

勇者「そういうことだからちょっと留守にするわ」

側近「はーい」

魔王「ゆぅ~しゃぁ~」ポロポロ

勇者「オーバーすぎるだろ…」

勇者「別に永遠の別れじゃない」

勇者「すぐ戻るさ」ポン

魔王「う、うん」

魔王(勇者に頭触られた!!)

魔王(嬉しすぎて怪しい踊り踊りそう!!)クネクネ


勇者「だからと言ってっ…あんたはっ…いい加減にしとけよっ…!!」プルプル

側近「あれ、いつの間に」ギリギリッ

勇者「これ、うれし涙とかでも殺されるんじゃね?」

魔法使い「ありえそうね…」

メイド「なら私が『教育』しておきましょう」ガシッ

側近「え、ちょ…なにするのっ!?ねぇっ!?」ズルズル

バタンッ

勇者「俺が戻るまでにはよろしく…」


勇者「じゃあ行って来るわ」

魔王「勇者っ!!」ギュッ

勇者「な、なんだ…」ドキドキ

魔王「よしおっけー!!いってらっしゃい!!」

勇者「あ、あぁ…」ガチャ パタン

魔法使い「…」

武闘家「さっきのは勇者のぬくもりをしばらく堪能できないのでぇ…」

魔王「か、解説しないでいいよぉ」ワタワタ

メイド「しかし、しばらく静かになりそうですね」バタン

武闘家「あれ?側近さんはぁ?」

メイド「『教育』の結果こうなりました」

側近「あひぃ…助けて…メイドさんが…」ガタガタガタ

魔王「目の焦点が合ってないよ?」

魔法使い「やっぱりここの最強はメイドさんのようね…」


魔王「勇者いなくなったしどうしようかな」

メイド「お暇でしたら森にでもお出かけしたらどうですか?」

魔王「あの開発してるところ?」

メイド「えぇ、ほぼ完成しておりますよ」

魔王「じゃあそうしよっかな!!」

魔法使い「あの…森って昨日のところとは違うんですか?」

メイド「あそことは別ですよ」

メイド「簡潔に言うと中庭を見られたのでしょう?」

魔法使い「えぇ、とても綺麗でした」

メイド「あれの大規模な感じにしているところですね」

魔法使い「へぇ」


魔王「よっし、じゃあメイド、お昼ご飯作ってっ!!持って行くっ!!」

メイド「はいはい」トコトコ

魔王「ぶとちゃん!!まほまほ!!行く準備するよっ!!」

武闘家「おっけーぇ!!」

魔法使い「何か私もメンバーに入れられてるし…」

メイド「この辺りは危険もありませんし」

メイド「あの二人の保護者としてでもお出かけになったらどうです?」

魔法使い「保護者って…」

メイド「ママだったんじゃないですか?」

魔法使い「あれはあの子が勝手に言ってるだけですっ!!」

メイド「あらあら」ウフフ


メイド「でもこの中で一番お姉さんだからお願いできますか?」

魔法使い「う…分かりました」

メイド「言う事聞かなかったらひき肉にしてもよろしいので」ニコニコ

魔法使い「メイドさん…貴方がそういう事言うと怖すぎるよ…」

魔王「メイドまだー?」

武闘家「まだー?」

メイド「はいはいしばらくお話でもして待っててくださいね」

魔法使い「…じゃないとひき肉にされるかもよ?」

魔王「ジャアナニカオハナシシテマショウカ」カタカタ

武闘家「ソウデスネナニヲハナシマショウ」カタカタ

メイド「まほまほ様は意外と意地悪ですね」

魔法使い「この子達の扱いに慣れてきただけですよ」


魔法使い「こほっ…」

魔法使い「ちょっとお手洗いに行ってくる」

魔王「いってら~」

側近「…」

魔法使い「すぐ戻る」ガチャ バタン



魔法使い「ごほっ…ごほっ…」

魔法使い「あんなところで…するわけには…」

魔法使い「ごほっ!!ごほぉっ!!」ビチャ

魔法使い「もうちょっとだけ…もってほしいな…」

魔法使い「せめて、言うべき事言うまでは…ごほぉっ!!」ビチャビチャ

側近「…」

魔法使い「はぁはぁ…もうそこにいるの分かってますよ」

側近「あちゃーバレてたかぁ」ヒョコッ


魔法使い「隠れるの苦手なんですね」

側近「あれ、本気で分からないと思ったんだけど…」

魔法使い「あれで本気…ごほっごほっ!!」

側近「それより『それ』はいつから?」

魔法使い「はぁ…もうだいぶ前からですね」

側近「誰も知らないの?」

魔法使い「遊び人は知ってるかも…」

側近「あの人はそういうの敏感だからねぇ」

魔法使い「正直もうあまりもたないかもしれないんです」


側近「隠すなとは言わないけど」

側近「優しい子ばかりだから隠してると余計に怒られちゃうよ?」

魔法使い「それは困りますね…ごほぉっ!!」ビチャ

側近「…どうにもならないの?」サスサス

魔法使い「ふぅふぅ…もうできる事やりましたし」

魔法使い「多分、終わりを待つだけですね」

側近「君はそれでいいの?」


魔法使い「いいわけないじゃないですか…」

魔法使い「まだやりたい事も残ってますし…」

魔法使い「もうちょっと頑張れたらいいんですけどね…」スッ

側近「メイドさんにだけでも話しておいたほうがいいと思う」

側近「こういう事は遊び人よりすごい人だから」

魔法使い「ありがとうございます…」フラフラ

側近「あのままだとやばそうだね…」

側近「またあとで話聞こうかな」



 -七色の花畑(改造された草原)-


魔王「ついたよっ」

武闘家「わぁ!!すごいすごいっ!!」

魔法使い「へぇ…」

魔王「すごいでしょ!!」クルクル

魔法使い「よくこんな所にこんなものできたわね」

魔王「人間と魔族が協力してできたんだよこれ」

魔法使い「え…」

魔王「人間のお花調べてる人と魔族の地面作ってる人がね」

魔王「力合わせてここをこんなにしてくれたんだぁ」


魔法使い「これが手を取り合った結果なのね…」

魔王「他にももっとやろうとしてることあるんだけど」

魔王「もっと他の国が協力してくれないとダメなんだ」

魔法使い「そっか」

武闘家「こんな所もっといっぱいあればいいのにねー」

魔王「だよねー?だからわたしも側近も頑張ってるんだよっ!!」

魔法使い(正直ここまでやっているとは思わなかった)

魔法使い(本当に最終的に共存できるんじゃないかって気になる)

魔王「この先の森がまたすごいんだよっ!!」ポテポテ

武闘家「わくわく」トテテテ

魔法使い「ちょ…待って…っ」ドサッ ズキズキ

魔法使い(ちょっとさっきから弱ってしまったかしら)


メイド「まほまほ様」シュンッ

魔法使い「!?メ、メイドさんっ…」

メイド「これを渡しに来ました」スッ

魔法使い「薬…?」

メイド「飲めばしばらくは大丈夫になるかと」

魔法使い「もしかして…側近さんが…」

メイド「はい、なるべく早くに処置してあげてと」

魔法使い「ありがとうございます」

魔法使い「側近さんにもお礼を…お願いします」

メイド「分かりました」

メイド「なるべく無茶はしないように…では」シュンッ


魔法使い「…」

魔法使い「あの人すごい高度な魔法使えたんだね…」カサカサ

魔法使い(空間転移魔法だっけ?)

魔法使い「…ん」ゴクリ

魔法使い「さて、追いかけるかな」テクテク



魔王「あれ?」

魔王「ぶとちゃんいなくなった…」

魔王「ぶとちゃーんっ!!どこーっ!!」

魔法使い「どうしたの?」テクテク

魔王「あ、まほまほ」

魔王「ぶとちゃんいなくなっちゃった」

魔法使い「いなくなったって…」

魔法使い「これだけ広いなら大声出せば聞こえるんじゃない?」

魔王「ぶーとーちゃーんっ!!!」

魔法使い「ぶとうかーっ!!いるなら返事しなさーいっ!!」

シーン


魔王「…」

魔法使い「…これは困ったわね」

魔法使い「この辺に音を遮られる場所とかないの?」

魔法使い「洞窟とか」

魔王「ここにあった洞窟とかはほとんど埋めちゃったはずなんだけど」

魔王「もしかしたら裏手にまだ残ってるところあったかも」

魔法使い「行ってみましょうか」

魔王「うんっ」



 -洞窟内部-


武闘家「適当に歩いてたらへんなところに来ちゃったっ」

武闘家「どうやって戻るんだろぉ?」

武闘家「…ぅぁ」

武闘家「大丈夫っ!!まだいける!!」トテテテテ

武闘家「魔王ちゃーん!!」

武闘家「まほまほーっ!!」

武闘家「…ぅぇ」

武闘家「大丈夫大丈夫っ!!」ブルブル


ピチョ-ン ピチョ-ン

武闘家「みんなぁぁぁぁぁ!!」

武闘家「うちはここにいるよぉぉぉぉぉ!!!!」

武闘家「はぁはぁ…」

武闘家「ゃだ…」カクカク

武闘家「誰もいないことない…」カクカク

武闘家「みんなすぐ傍にいるんだ…」ガク…ガク

ピチョーン ピチョーン

武闘家「どこにもいかないでっ!?いやだいやだっ!?」ガクガクガク



魔王「あったっ」ズザー

魔法使い「こんな所に…入るわよっ」

魔王「ちょっと待って」

魔王「えっと…反響魔法っ」キュイーン

魔法使い「…」

魔王(ここにいたら人の声と同じ音がするんだけど)

魔王(…)

─っ!! ─っ!!

魔王「いるっ!!いこっ!!」ポタタッ

魔法使い「さっきの魔法は…?」タタタッ

魔王「いろんな音見つけられるんだ」

魔王「それでぶとちゃんの声と同じ音が聞こえたんだ」

魔法使い「さすが魔王はすごい魔法持ってるわね…」

魔王「へへっ」


魔法使い「あっ、あれじゃないっ?」

武闘家「…っ」ガタガタガタ

魔王「みーつけたっ」

魔法使い「どうしたの?そんなに震えて」

魔王「怖かったのかな?かな?」

武闘家「…ぁ…ひ…」ガタガタガタ

魔法使い「ちょ…これおかしいわよ…」

魔法使い「武闘家!!しっかりしなさいっ!!」ユサユサ

武闘家「ぅ…ぁ…」ガタガタガタ

魔王「どうしたのっしっかりしてっ!!」ポンポン


魔法使い「場所が悪いのかも、外に出るよっ!!」グイッ

魔王「まほまほ、おぶっていくの?」

魔法使い「動かないんだから仕方ないじゃないっ!!」グググッ

武闘家「…ぅ」ガタガタガタ

魔王「ごめん、何も出来なくて…」キョロキョロ

魔法使い「いいわよっ!!」タタタッ

魔王「…」キョロキョロ

魔王(この洞窟自体変な事何もないね…)

魔王(魔法とか呪いとかでもないなら…)

魔王(ひとつしかない…)



魔法使い「武闘家っ」パシンパシンッ

武闘家「ぃ…ぁ…」ガタガタガタ

魔法使い「一体何があったって言うのよっ!!」

魔王「…まほまほ」

魔法使い「な、なに?」

魔王「しばらくぎゅってしてあげて」

魔法使い「え?」

魔王「こうやって」ギュッ

魔法使い「よく分かんないけど…」ギュッ

武闘家「…ぁ…ん…ぅ…」カタ…カタ…ギュッ



武闘家「…」スゥスゥ

魔法使い「ホントに落ち着いたね…」ナデ

魔王「適当に言った事がうまくいったぁ」

魔法使い「…あんた今なんて?」

魔王「ごめんっ!!わたしの考えだけでやっちゃったっ」

魔法使い「まぁ、この子落ち着いたわけだから怒りはしないけど」

魔法使い「何でこんな結論に至ったの?」

魔王「あのね」

魔王「あの洞窟には何も変なところなかったの」

魔法使い「そこまで見てたの…」


魔王「だからぶとちゃん自体に問題あるのかなって」

魔王「1人きりだったからそれで怖がってたかも」

魔王「そう思って人のぬくもりを…」

魔法使い「すごいじゃない」

魔王「え?」

魔法使い「ホント魔王ちゃんはちゃんと人の事考えてるね」

魔法使い「私はパニックになってたわ」

魔王「だからわたしも適当だってー」

魔法使い「でもあれはなんだったのかしらね…」

魔王「さすがにそれは分かんないっ」


武闘家「…ちゃん」ギュッ

魔法使い「ん?」ナデナデ

魔王「あーいいなぁ!!わたしもー」ゴロン

魔法使い「ちょ、さすがに二人膝枕は重いって!!」

魔王「んふふ~」スリスリ

魔法使い「すりすりすんなっ」

魔王「いい尻してますなぁ」スリ

魔法使い「ひゃっ!!」ビクッ

魔王「あ、ごめん」

魔法使い「ん?」

魔王「だってまほまほ…まだ…」

魔法使い「もうだいぶ慣れてきたよ」ニコ


魔王「ホント?」

魔法使い「じゃなかったらこうしてこの子に膝枕してないって」ナデナデ

魔王「そっか…にしし」ニギニギ

魔法使い「だからといってそのいやらしい手つきはやめなさい」

魔王「ふひひwwwさーせんwww」

魔法使い「あの変態の真似もやめなさい…」

武闘家「おねぇ…ちゃん…」スゥスゥ ギュッ

魔法使い「…」

魔法使い「…私の事じゃないよね?」

魔法使い「普段まほまほ言ってるしなぁ」

魔王「どうだろうね…」


魔王「1人になるのが怖いのかな?」

魔法使い「それならしょっちゅう1人になってるんだけどね」

魔法使い「でも、私達いる時は大体誰かの近くにいたっけ…」

魔王「うーん」

魔王「1人で静かな所だとダメとか?」

魔法使い「間違ってはなさそうだけどね」

魔法使い「かといって聞くのはちょっとこの子に悪い気もするわ」

魔王「いつか話してくれるの待つしかないっ」

魔法使い「…そうね」

魔法使い(私に『時間』があればね…)



 -人間界 とある村の酒場-


カラーン

勇者「…」

マスタ-「らっしゃーい」

勇者「あまりきつくないのを」ドサッ

マスター「はいよ」カチャカチャ

マスター「あんた旅の者かい?」

勇者「まぁ…そんな感じですね」

マスター「ふーん」

勇者「ちょっと聞きたいのですが」

マスター「何でも聞いちゃってちょーだい」トンッ

勇者「この辺って人間と魔族は共存しているのですか?」

マスター「随分とストレートな事言うねぇ」


勇者「…」ゴクッ

マスター「あそこで飲んでるダンナは魔族の人だよ」

勇者「っ!?」

マスター「なんだい、その事について調べてるのかい?」

勇者「えぇ、まぁ…」

勇者「ホントにもう共存できている所もあるのか…」

マスター「誰に聞いて来たかは知らないけど」

マスター「ここはもう数年前からそうやってみんな生きてきているんだ」

マスター「アタシもそうさ」

マスター「こうやってみんな一緒になってさ、思うんだ」

マスター「何で今までずっとこうしてこなかったんだろうなってね」

勇者「そうですか…」


マスター「あんたは反対なのか?」

勇者「いえ…」

勇者「俺はちょっとそれを確かめるために来ているんですよ」

マスター「今は悩んでもいいさ」

マスター「でもいつかあんたも協力できたらしてやんな」

勇者「そうですね…」



 ー魔王城 ??部屋ー


魔法使い「どうしてこうなった」ズルズル…

魔王「こんな部屋あったんだねぇ」

武闘家「まほまほが吸い込まれていくぅ~」

魔法使い「隠し部屋見つけて入ってみたら」

魔法使い「謎のベトベトしたアリ地獄があったわけだ…」ズルズル…

魔王「解説してる間に埋もれてるよぉ!!」グイー

武闘家「うちにまかせてっ!!ぬぅぅぅん!!」グッグッ

魔法使い「…何故引っ張らずに押すの?」ズルズルズル…

武闘家「底に落とそうかと?」

魔法使い「それは助けてない!!むしろ死に追いやってるでしょっ!!」


魔法使い「もういいわ…離れてて」ピカッ

魔王「分かった」ポテポテ

魔法使い「高熱魔法!!」

ジュアァァァァァッ!!

魔法使い「あ…」ヒューン

武闘家「おぉっ!!液体が蒸発したっ!!」

魔王「…まほまほ落ちちゃったけどね」

武闘家「ドジっこ?」

魔王「かもしれないねぇ…」

魔王「とりあえず下に降りよう」ポテポテ

武闘家「りょーかいっ」トテトテ



 -隠し部屋の底-


魔法使い「…ったぁ」スリスリ

魔法使い「何やってるんだろう私」カァァ

魔法使い「後先考えてなかったなんて」ガックリ

魔法使い「でも何かしらここ…」キョロキョロ

魔法使い「牢獄?」カシャカシャ

コツコツコツ…

魔法使い「…何かこっちに来てる」


魔法使い「…」ブルブル

魔法使い(また身体が…怖がっちゃダメだ…)

魔法使い(大丈夫…ひどい目に合わせるのはここにはいない…)

メイド「…」

魔法使い「…」

メイド「…」ワキワキ 

魔法使い「…」ポカーン

メイド「…お前を食べちゃうぞぉ」ガオーン

魔法使い「あんたは何言ってるんだ」


メイド「なぜまほまほ様がこんな所にいらっしゃるのですか?」

魔法使い「探検といってなんか隠し部屋見つけて…」

魔王「やっと降りれたぁ…まほまほ大丈夫ー?」

武闘家「アホの子はいねぇがぁ」

魔法使い「帰れ、ナマハゲ」

メイド「魔王様…?」ゴゴゴゴゴ

魔王「あれ、メイドが何でこんな所に?」

メイド「地下は勝手に入るなと教えませんでしたっけ?」ゴゴゴゴゴ

魔王「あ…」


メイド「これはお仕置きが必要ですねぇ…」ガシッ

魔王「ひっ!?」

メイド「お二人はついてきてくださいね」ニコ

メイド「ここ上がればすぐ地上です」ズリズリ

魔王「たすけ…ひぃ…」ガクガク ズルズル

武闘家「ここ来るのいけなかったんだねぇ」

魔法使い「まぁ暇つぶしにはよかったけどね」



 -とある小さな教会前-


キャー マッテヨォ ナニシヨッカー

勇者「子供が遊んでるな…平和な所だ」テクテク

女性「…平和が一番…ですよ」

勇者「うおっ!?いつの間に…」

勇者「あなたは?」

女性「…ここの管理者?」

勇者「聞いてどうする…」

勇者「あの子たちは孤児か?」

女性「…そうです、ここに捨てられた子達です」

女性「…でもみんなそれを気にしないかのように生きています」

勇者「それはすごいな」


勇者「幼い子ばかりなのにな…」

女性「…それに魔族の子も何人かいますよ」

勇者「あ…確かにいるな」

勇者(耳とか角とか特徴的な部分で分かる)

女性「…人間も魔族も同じ生き物なんです」

女性「…生きようとする力は誰もが持っている」

女性「…例え、あのような幼子達でも…です」

勇者「そうだな…」

子供「せんせーまだー?」

女性「…はいはいもうすぐ始めるからみんな集めてね」

勇者「先生?」


女性「…私はここであの子達に色々と教えています」

勇者「それで先生か…納得」

女性「…あの子たちはいいですよ、癒されます」

勇者「あの無邪気な笑顔見てたら俺もそう思う」

女性「…それに時々いい反応を見せてくれて…いい」ニヤリ

勇者「あんた、今すごく邪悪な顔してるのだが…」

女性「…あなたにも癒される存在がいるといいですね」

勇者「癒しか」


勇者「いなくもないかな」

女性「…だったらその人を大切にするといいです」ニコ

勇者「そうだな、じゃあ俺はこれで」

女性「…頑張ってください」

勇者(頑張れって…何をだ…?)テクテク

女性「…みんな集まったね?」

ワーワー キャッキャッ

女性「…今日はどんな苦しくて辛い時でも癒してくれる人の話を…」



 -魔法使いの部屋-


魔法使い「ふぅ…」ドサッ

魔法使い「まったくあの子たちは元気すぎて困るわね」

魔法使い「また一日中相手しちゃったわ…」

魔法使い「勇者…まだ戻らないのかな…」

魔法使い「あまり時間ないから…」

魔法使い「言いたい事あるのにな…」

魔法使い「たった一言の言葉…」

魔法使い「言えればそれでいいんだ…」

魔法使い「もう終わっちゃうしなぁ…」


魔法使い「ごほっごほっ」

魔法使い「…さすがにもう…耐えられないかも」

魔法使い「薬も…きかないし、もう…」

魔法使い「うぅ!?」ズキズキ

魔法使い「うぐぅっ…!?」ズキンズキン!!

魔法使い「ごはぁっ!!ごほぉっ!!」ビチャビチャ

魔法使い「はぁはぁはぁはぁ…」ズルズル

ドサッ!!

魔法使い「ゆ…しゃ…くる…し…よ」ズル…ズル…

魔法使い「し…にた…ない…よぉ…」ズル…

魔法使い「…」ズ…ドシャッ



 -深夜 談話室-


メイド「…」

魔王「どうだったのっ?」

メイド「随分と無理なさってたようで」

メイド「ギリギリ処置が間に合ったので今は落ち着いていますが…」

武闘家「まほまほぉ…」

側近「もう長くはもたないんでしょ?」

メイド「…はい」

メイド「もって3日…」

メイド「病がすでに末期の状態で手の施しようがありません」

側近「メイドさんは頑張ってくれたほうだよ」


魔王「…ねぇ」

メイド「なんでしょう?」

魔王「まほまほの所行っちゃ…ダメ?」

メイド「いいえ、かまいませんよ」

メイド「あまり長い間はダメですけどね」ニコ

魔王「それでかまわないよっ」ポテポテ

武闘家「あ、うちも行くっ」

魔王「ぶとちゃんはちょっと待ってて」

武闘家「なんでぇ?」

魔王「ちょっと大事なお話あるんだよ」

武闘家「分かったぁ…」

魔王「すぐ呼ぶから」ニコ




魔王「まほまほ?入るよ」ギィ~

ポテポテ

魔法使い「…その音は魔王ちゃんか」

魔王「寝てた?」

魔法使い「目、瞑ってただけ」パッ

魔王「そっか」

魔法使い「もう私の病気の事知っちゃったんだね?」

魔王「うん…」

魔法使い「旅の途中からなんだけどね」

魔法使い「何もしてないのに疲れたり、フラフラしたり」

魔法使い「おかしいなって思ってるうちに」

魔法使い「ひどい事になってた」


魔法使い「途中でみんなに言うわけにもいかなかったし」

魔法使い「そのままにしてたのが悪かったんだね」

魔王「そうだったんだ…」

魔法使い「それであなたは何しに私の所に来たの?」

魔王「えっとね」

魔王「まほまほ…魔法使いは…」

魔王「勇者が…好き?」

魔法使い「…」

魔法使い「出会った時言わなかったっけ?」

魔法使い「私は勇者の事は…」

魔王「嘘だよ」


魔法使い「魔王ちゃん?」

魔王「ずっと見てて分かった」

魔王「勇者といる時はとっても優しそうな顔してた」

魔法使い「…」

魔王「勇者出て行ってから時々ぼんやりしてた」

魔王「勇者の事考えてたんだよね?」

魔法使い「…」

魔王「わたしも勇者は好き」

魔王「誰にも取られたくない」

魔王「この気持ちになるのは自由なんだよ」

魔王「好きって言うのも自由」

魔王「抱きつくのだって自由」

魔王「やりすぎると怒られちゃうけどね」ヘヘッ

魔王「人を好きになるのは自由なんだよ、魔法使い」

魔法使い「…」


魔王「何も言わないままで終わっちゃうの?」

魔法使い「そうだね…」

魔法使い「終わってもいいのかもしれない」

魔王「っ!?」

魔法使い「分かってる?もう私はいなくなるんだよ」

魔法使い「でもそれ伝えてさ…」

魔法使い「それを枷にはしたくないのよ…」

魔王「…」

魔法使い「ずっと苦しまれても困る」

魔法使い「なら知らないままのほうがいい…」

魔法使い「あの人が幸せでいられるならそれで…」

魔王「それでいいと思ってる?」

魔王「幸せでいられると思ってる?」

魔法使い「…」


魔王「思ってるならわたしはここであなたを…」ズズズ…

魔王「消してあげるよ?」ズズズズ…

魔法使い「っ!!」

魔王「最後まで生きた証を残さないのは」シュッ

魔王「悲しいんだよ」ポロポロ

魔法使い「なんで…」

魔法使い「なんであなたが泣いているの…?」

魔王「悲しいこと…言うんだもん」ポロポロ

魔王「わたしがあれだけ好き好き言ってるのに」

魔王「一回も言えないでいなくなるなんて」

魔王「わたしだって悲しくなるんだよ」ポロポロ

魔法使い「魔王ちゃん…」


魔王「好きなら好きって言おうよっ!!」

魔王「好きなら抱きしめちゃおうよっ!!」

魔法使い「…ふぅ」ボスッ

魔王「まほまほ…?」

魔法使い「名前戻ってるじゃない…」

魔法使い「出て行って」

魔王「っ!!」


魔法使い「疲れちゃった」

魔王「ごめん…」

魔法使い「あなたが謝る事じゃないよ」

魔王「うん…出るね」ポテポテ

魔法使い「…今日からライバルだから」

魔王「えっ?」

魔法使い「私にとられないように頑張りなさいよ」

魔王「…うんっ!!」



 ー側近室ー


側近「…」

勇者「どういうことだ…?」

勇者「魔法使いがそんなに弱ってるなんて聞いてないぞっ」

側近「そりゃ教えてなかったようだし」

勇者「会ってくる」ガタッ

勇者「…どいてくれないか?」

遊び人「ダメ~」

勇者「…何でだ?」

遊び人「なら教えておくれよ」

遊び人「会ってどうするんだい?」

勇者「そりゃ仲間が弱ってるのに見舞うのは当たり前だろ」


遊び人「それでもダメだね」

勇者「なんだと…っ!?」グッ

遊び人「あの子は今あんたには会わせられない」

勇者「だからどうしてなんだよっ!?」

遊び人「寝てるから」

勇者「………は?」

遊び人「病気で寝てる子の所行って無理に起こすのかね?」

勇者「…そりゃしないわ」

遊び人「だからダメ~」

勇者「分かったよ…」ガタッ

勇者「自分の部屋戻ってるわ」テクテク



バタンッ


遊び人「まったくあの子は~」

側近「何で隠したの?」

遊び人「言ってどうなるさ?」

遊び人「あの子はもう死んじゃうから~」

遊び人「って言うのかい?」

遊び人「何の準備も何もなしでそれは残酷じゃないかい」

側近「でもっ!!」

遊び人「約束しちゃったんだよ」

側近「え?」

遊び人「まほ子が言ったんだ」

遊び人「自分の終わりが来るまであの人といつも通りに過ごさせてくれって」




遊び人「ほっ!!私、参上」

魔法使い「…どこから入ったの?」

遊び人「ひ・み・ちゅ」パチンッ

魔法使い「非常にウザいわね…」

遊び人「すごく機嫌が悪そうだねあんたは」

魔法使い「機嫌じゃなくて気分だけどね」

遊び人「私だってあんたで遊ぶためにきたわけじゃないよ」

魔法使い「どうだか」

遊び人「ふひっ、さすがに鋭いね」


魔法使い「今誰とも話したくない気分なんだけど」

遊び人「まぁさすがに今はふざける気はないよ」

遊び人「…あんた、このままどうする気?」

魔法使い「どうするって?」

遊び人「自分の覚悟はしてるみたいだけど」

遊び人「まだ言えてないみたいだからさ」

魔法使い「…」

遊び人「あれかい?タイミングがつかめないってやつか?」

魔法使い「そうじゃないけど…」

魔法使い「言うのが怖いんだよ」

魔法使い「言ってしまってそれで何て言われるか…」

遊び人「つまらない悩みだね」

魔法使い「っ!?」


遊び人「あんたは何を求めてるわけ?」

遊び人「自分の事悟ってるんじゃなかったのかい?」

遊び人「だったら何があったってあんたが悩むことじゃないんだよ」

魔法使い「…」

遊び人「言ったその先はアイツが考える事だ」

魔法使い「そうだったわね…ごめんなさい」

遊び人「また説教しちゃったか」

遊び人「これだから真面目ぶるのは嫌いなんだよ…」ブツブツ

魔法使い「ホント、あなたって変わってるね」

遊び人「変態だしね」


魔法使い「じゃあ変態さん」

魔法使い「こんな事言うと怒られるかもしれないけど」

魔法使い「私の人生の最後の約束をしてほしい」

遊び人「それまた重い約束になりそうだねぇ」

魔法使い「私がいなくなるまでに果たしてくれたらいいから」

遊び人「いいよ、聞いたげる」

魔法使い「あのね─」




側近「まーちゃんはそのやる事だっけ?」

側近「それをどうする気なの?」

遊び人「最後まであの子を見守ってると分かるさ」

遊び人「ホント、誰も彼も私より強い子ばかりだわ…」

側近「あたしもそう思うな」

側近「強い子ばかり」


遊び人「私の言ったのにはあんたも含まれてるんだがね」

側近「い、今言う事じゃないでしょっ///」カァッ

遊び人「その顔が見たかっただけ~」

側近「もぉっ///」

遊び人「冗談抜きで見守る事しかできないよ私達はね…」

側近「うん…」



 -勇者の部屋-


勇者「魔法使い…」

勇者「そんなに体調悪くなってたんだな」

勇者「くそっ…なんで気づいてやれなかったんだろう」

勇者「…」

コンコン

勇者「?…開いてるよ」

ガチャ

魔法使い「…」

勇者「魔法使い…もう大丈夫なのか?」

魔法使い「あんまり大丈夫じゃないけどね」フラフラ

勇者「無理するんじゃねぇよ…ほら、座れよ」ポンポン

魔法使い「ありがと」ポフッ


勇者「…」

魔法使い「…」

勇者「…」

魔法使い「もうやる事は終わったの?」

勇者「あぁ、信じられなかったけどな」

勇者「一部の共存してる地域を見てきた」

魔法使い「うん」

勇者「なんというか…輝いていた」

勇者「不思議なもんだな」

勇者「あんなに憎み合ってたのに」

勇者「ああやってひとつになれるんだな…」


魔法使い「じゃあ勇者も共存の道に?」

勇者「あぁ」

勇者「出来る限りやっていこうと思う」

魔法使い「さすが勇者だね」

魔法使い「私がついてきただけのことはあるわ」

魔法使い「頑張りなさいよ」トン

勇者「…ありがとう」

勇者「そしてすまない…」

魔法使い「え?」

勇者「お前ずっと病気だったんだってな」

魔法使い「まぁね」

勇者「何か言ってくれたら良かったのに」


魔法使い「あのさ」

魔法使い「私って人に見られたり触れられたりするのが怖かったんだ」

勇者「もしかして最初に会った時の…」

魔法使い「うん、あれよりもうちょっと前からだけど」

魔法使い「人が怖くてたまらなかった」

魔法使い「でも最近克服できたんだ」

勇者「え?」

魔法使い「克服してくれたのは魔王ちゃんだった」

勇者「そうなのか?」

魔法使い「うん、自分が悪いんだったら謝るって」

勇者「…」

魔法使い「必死になって私が怖がらないように」

魔法使い「克服するの手伝うって言ってくれた」

勇者「あいつが…」


魔法使い「私に背中を押してくれたんだ」

魔法使い「あんな良い子はどこにもいないよ」

魔法使い「私、あの子好きになっちゃったわ」フフッ

勇者「へ?」

魔法使い「へ、変な意味じゃなくてその…」

勇者「いや、分かるさ」

勇者「俺達が思ってたような魔王じゃなかったんだよな」ニッ

魔法使い「うん」


魔法使い「…」

魔法使い「勇者って魔王の事…」

勇者「ん?」

魔法使い「なんでもない…戻って休むね」スクッ

勇者「あぁ…無茶はするなよ」

魔法使い「ありがと、そりゃじゃおやすみ」

勇者「おやすみ」

バタンッ

勇者「あいつ何か隠して…」

勇者「…」



 -次の日 魔法使いの部屋-


魔法使い「ちょ、あんたら何してるんだっ」

遊び人「いやぁ、まほ子の私服が気になってね」ゴソゴソ

武闘家「下着がえっちぃのないか検査ですっ!!」ゴソゴソ

魔王「こういうのが人間にはいいものなのかぁ」ゴソゴソ

勇者「…」

勇者(見なかった事にしよう…)

魔法使い「あ・ん・た・ら・いい加減に…」フラッ

勇者「っと、あぶねぇな」ガシッ

魔法使い「あ…」


魔王「こらぁぁぁぁぁぁ!!」ムキー

魔法使い「あ、ありがと…」プイッ

勇者「あ、あぁ…ってうわぁっ!?」ガシッ

魔王「わたしだって抱きつくもんっ」ギュー

勇者「さっきの抱きついたわけじゃないだろ!!」

遊び人「見てごらん、これが背伸びをした女の子のブツだ」キラリーン

武闘家「ほぅほぅこれが噂の『しょうぶぱんつ』ですかぁ」ウムウム

魔法使い「まだやってたのかあんたらっ///」



 -さらに次の日 中庭-


魔王「お外で食べるご飯って美味しいねぇっ!!」モキュモキュ

側近「その食べてるの見ながら食べるご飯も美味しい!!」ハミハミ

魔王「うひゃぁぁぁぁぁ!?」

勇者「人の性癖については何も言わんが…」

勇者「見ているととても気分が沈む…」ズーン

魔法使い「どうみてもロリコンよね側近さん」

勇者「せっかく言わなかったのに言っちゃったよっ!?」

遊び人「あの子は昔からああだよ」モグモグ

魔王「もぅ、ご飯食べれないじゃないのよぉ」

側近「お腹いっぱい食べてる途中ですが何か?」ハミハミ

魔王「うひぃ…」


メイド「いつの間にかここでは日常と化しました」ニコニコ

勇者「それはそれで嫌だな…」

武闘家「うちは年上のお姉さんがいいっ!!」ダキッ

遊び人「うほっ」ギュッ

勇者「じゃあこの人はどうなんだろう?」

魔法使い「側近さんが好きらしいけど…」

遊び人「私はノンケだって食っちまう女なんだぜ?」

勇者「あぁ…ただの変態だった…」

魔法使い「側近さんがロリコンなのは絶対この人のせいよね?」

魔王「た~す~け~て~」

側近「逃がしやしないよまおちゃんっ」ギュー

魔法使い「でも飽きないねここは…」ニコ



 -側近の部屋-


側近「はいどうぞっ」コトッ

魔法使い「ありがとうございます」

側近「この二人で話すのはあの時だけだったかな?」

魔法使い「そうでしたね」

魔法使い「側近さんはここにいて楽しいですか?」

側近「そりゃ楽しいよっ」

側近「可愛いまおちゃんいるし可愛いまおちゃん」

魔法使い「何故二度言ったんですか…」

側近「大切な事だから」キリッ

魔法使い「なんというドヤ顔」


魔法使い「側近さんもやっぱり遊び人…賢者でしたっけ」

魔法使い「あの人に色々教わってきたのですか?」

側近「うん」

側近「生き方を教わったよ」

魔法使い「生き方…」

側近「あの人にはどうやっても適わないんだ」

魔法使い「確かにそうですね…」

側近「普段あんなだけど本気出すとすごいんだよね」

魔法使い「でもあの変質行為はどうにかしてほしいですけどね」ニコ

側近「あれは何やったって止められないってっ」



 -魔法使いの部屋-


魔法使い「ごほぉっ」ビチャ

武闘家「まほまほ…大丈夫?」サスサス

魔法使い「うん、なんとかね…」

魔法使い「勇者は?」

武闘家「魔王ちゃんがここに来ないようにしてる」

魔法使い「あんたらにまで頼んじゃって悪いね、ごほぉっ」ビチャビチャ

武闘家「ううん、いいんだよ」サスサス

武闘家「うちも今までまほまほに迷惑かけたときあるもん」

武闘家「お返しだよっ!!」


魔法使い「あんたにはもうちょっと優しくするべきだったかな」

武闘家「別に良いよぉ」

武闘家「騒がしくて落ち着きのない子だったし、うち」

魔法使い「でもずっといてあんたは妹みたいだった」ポン

武闘家「…あのさっ、まほまほ」

魔法使い「ん?」

武闘家「お姉ちゃんって呼んでもいい?」

武闘家「実はずっと呼びたかったんだっ!!」


魔法使い「突然すぎて気持ち悪いのがなくなった…」

魔法使い「別にかまわないよ」

魔法使い(あの時聞いたのは間違いじゃなかったんだね)

武闘家「まほお姉ちゃんっ」ギュッ

魔法使い「はいはい…」ギュッ

魔法使い「甘えんぼだったっけ、あんた」ポンポン

武闘家「…お姉ちゃーん」ギュウ

魔法使い「聞いちゃいない…」

魔法使い「ま、いいけどね」ナデナデ



 -深夜未明 廊下ー


側近「…もう限界?」

メイド「そうですね、よくもったほうです」

遊び人「あんたの魔法でも病気は治せなかったのか」

メイド「内部の傷や汚れを完全に再生・浄化はできますが」

メイド「病は別なんです」

遊び人「そうかい」

側近「…こんなのってないよぉ」ポロポロ

遊び人「泣くの早いよ」ナデナデ

遊び人「最後まで見守ってあげよう?」ガチャ



 -魔法使いの部屋-


魔法使い「はぁはぁはぁ…」

武闘家「まほお姉ちゃん…」

魔法使い「武闘家…」

魔法使い「あんたのような…妹がいて…楽しかったよ」

武闘家「うちねっ!!いつかお姉ちゃんのようになるからっ!!」

魔法使い「私…みたいに…?」

武闘家「うんっ!!うちみたいな子のお世話するんだ!!」

魔法使い「私は…ふふっ…そんなつもりじゃ…なかったんだけど」

武闘家「頑張るからぁっ…!!」ポロポロ

魔法使い「うん…がんばれ…」ナデ…


メイド「何も出来なくて申し訳ありませんでした」

魔法使い「私達を…優しく…出迎えてくれただけで」

魔法使い「それだけで…嬉しかった…ですし」

魔法使い「色々…お世話に…なりました…」

メイド「はい、あなたがいて楽しかったですよ」ニッコリ


魔王「まほまほ…」

魔法使い「魔王ちゃん…あんたになら…」

魔王「なぁに?」

魔法使い「きっと…あんたらになら…共存…」

魔法使い「望んだ…世界が…できるよ…」

魔王「頑張るね」ニコ

魔法使い「あと…勇者の…こと…」

魔法使い「意外と…弱い所もある…から」

魔王「分かった、ちゃんと支えてく」


魔法使い「あんたは…泣かないのか…」

魔王「えへへ…すごく我慢してるんだ」グス

魔法使い「強くなくたって…良いんだよ」

魔法使い「弱い所は…誰かさんにまかせる…といいよ」

魔王「分かった、ありがとうまほまほ」

魔法使い「側近さん…じゃないけど…可愛かったよあんた…」

魔王「えへへ……あぁぁぁぁぁんっ…」ポロポロポロ


遊び人「ここまでよく頑張ったね」

魔法使い「色々…ありが…とう…」

遊び人「大切な仲間のためだからね」

遊び人「あとはまかせなさい、真面目にやるからさ」

遊び人「ゆっくりおやすみ」ナデナデ


魔法使い「まかせましたよ…『賢者』…さん」


側近「あまりお話できなかったね」

魔法使い「でもすごく…優しい人…だってのは分かり…ました」

魔法使い「いつまでも…そのままのあなたで…」

側近「そっか…ありがとね」ポロポロ


勇者「…魔法使い」

魔法使い「勇者…」

魔法使い「今まで…隠してて…ごめんね」

勇者「いや、かまわない」

勇者(なんとなく予感はしてたんだ)

勇者(こいつの意思ならもう何も言う必要はないと思ってた)

勇者(だからあえていつも通り過ごした)


魔法使い「こうギリギリにならないと…決心がつかなくて…さ」

勇者「決心?」

魔法使い「あなたに…伝えたい事が…あります」

勇者「あぁ」




   「ずっと…好きでした…」




勇者「…」

魔法使い「初めて…助けてくれた時から」

魔法使い「ずっと…見てきました…」


魔法使い「私…素直じゃないから…」

魔法使い「すぐ…誤魔化してたんだ…」

魔法使い「でも…この気持ちは…止まらなかった…」

魔法使い「伝えたい…でも…無理だった…」

魔法使い「最後の最後に…やっと言えた…」ニコ

勇者「魔法使い…俺は…」

魔法使い「…」フルフル

魔法使い「もう何も…言わなくて…いいの」

魔法使い「ただひとつだけ…わがまま…聞いて…」

勇者「なんだ?」

魔法使い「ぎゅって…抱きしめて…ほしいな…」



ギュウッ


勇者「これでいいか?すまんな、慣れてなくて」

魔法使い「ううん…うれ…し…い…」ポロポロ

魔法使い「忘れない…よ…この…ぬくもり…」ポロポロ

勇者「俺だって忘れないさ」ニコ

魔法使い「すき…だい…すきっ…」ギュ

勇者「…」ギュ





魔法使い「──」プラ…





武闘家「おねえちゃぁん…」ポロポロ

側近「…っ」ポロポロ

魔王「まほまほぉ…あぁぁぁぁぁぁんっ…」ポロポロ

遊び人「…」グスッ

メイド「あなたのことは忘れませんよ…」グッ

勇者「まほう…つかい…」ギュッ

遊び人「無理せず泣いてやりな」トン

遊び人「この子もそれを望んでる」

遊び人「大切な存在だったなら…ね…」

勇者「うぐっ…まほぉつかいぃぃぃぃぃぃ!!」ポロポロ

勇者「遅いんだよお前はぁぁぁぁぁっ…」ポロポロポロ

勇者「絶対…ぐっ…忘れないからなぁぁぁっ」ポロポロポロ

勇者「俺を好きになった奴がいたって事をっ!!」ギュゥゥゥゥゥッ



 魔法使いの最後の顔は…。


 とても嬉しそうに…。


 これ以上ないくらいに…幸せそうな顔をしていた。






 -数日後 中庭-


勇者「ここは人間界と同じ風吹いてるな…」

メイド「そうですよ」

メイド「ここに眠らせてあげてよかったのですか?」

勇者「あぁ」

勇者「なんとなくだけど…」

勇者「ここだと寂しくないって思ったんだ」

メイド「貴方はすごい人ですね」

メイド「実を言うと、ここにはもう1人眠っているのですよ」

勇者「えっ」


メイド「私の大切な友達が眠っています」

メイド「そこにボロボロの布がかけてあるでしょう?」

メイド「それがあの子がいるっていう証」

勇者「それは…」

メイド「人間であり勇者でもある子でした」

勇者「じゃあ俺の血族だったのか」

メイド「でしょうね」

メイド「魔族を共存の道に進めさせたのもその子でした」

勇者「…」

メイド「きっと…」

メイド「向こうであの子と仲良くしてくれますよ」

勇者「そうだといいな…」


勇者「俺…あいつに何かしてやれたのかな」

メイド「…」

メイド「最後はすごく幸せそうな笑顔でした」

メイド「あの笑顔で満足してないはずがないでしょう」

勇者「そっか…」スッ

勇者「もういなくなってしまったけど…」

勇者「まだぬくもりが残ってる気がする」ギュッ

メイド「あなたの中であの人は生きているからでしょうね」

勇者「そうだな…」ギュッ

勇者(お前と一緒に生き続けるよ…)




 勇者『…お前、本当にずっとここにいたのか』


  魔法使い『…』カタカタ


 勇者『外…行こうぜ』


  魔法使い『!!』ビクッ


 勇者『変な奴が来ても俺が追い払ってやるから』


  魔法使い「でも…」ブルブル



 勇者『俺はお前を絶対に裏切らない』


 勇者『約束する』スッ


  魔法使い『絶対…だからね?』ギュ





          『絶対、離さないで…』






 -魔王の部屋-


魔王「…」ペラッ…ペラッ

魔王「望んだ世界ができる…かぁ」

魔王「手段がないわけじゃないんだ…」

魔王「これをしなくても出来るって思ってたんだ…」

魔王「でも…」

魔王「ホントはこれが最善だったのかな…」

魔王「どうすればいいのかな…まほまほ…」



 ー娯楽室ー


勇者「帰る?」

武闘家「うんっ」

武闘家「やる事見つけちゃったんだぁ」

勇者「あの時言ってたやつか」

武闘家「まほお姉ちゃんみたいになるんだっ」

勇者「…いいんじゃないか?」

勇者「止めやしないさ」

武闘家「勇者?」

勇者「ん?」

武闘家「こんなうちを拾ってくれてありがとうっ」ペコッ


勇者「お前だったから誘ったんだよ」

武闘家「その言葉すっごく嬉しいよぉ」ギュッ

勇者「うおっ!?お前は誰にでも抱きつくなぁ…」

武闘家「人のぬくもりないとうち怖くなっちゃうんだ」

側近「あぁ、それで洞窟で1人の時震えてたんだね」ナデナデ

武闘家「そうそう…あれ?」

側近「?」

武闘家「なんで知ってるのぉ?」

側近「え…えーっと…」

勇者「つーかいつの間にいたんだよ、あんた…」

メイド「また覗いてましたか」ニッコリ ガシッッッ

側近「っひっ!?」

メイド「今後はもう使えないようにしましょう」グイグイ

側近「ごめんなさぁぁぁぁぁぁい…」ズルズル


勇者「…相変わらずだな」

武闘家「そうだねぇ」

武闘家「ここで過ごせて楽しかったよっ」ニコッ

武闘家「すごく…」ギュッ

勇者「そうか」

武闘家「大切なものが出来ちゃった」

勇者「良い事じゃないか」

武闘家「最後だからうちも言っておこっと」

勇者「えっ?」




武闘家「勇者っ!!大好きだったよっ!!」





勇者「ちょ…」

魔王「なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」ドドドドドド


バァンッ!!


勇者「そりゃ来るわな…」

武闘家「でももういいんだ」

魔王「ほへ?」

武闘家「うちじゃ勝てないもん」

武闘家「ねっ?」

勇者「…」

魔王「えっと…」

武闘家「魔王ちゃんにあげるっ!!」

勇者「俺は物じゃないんだが…」


魔王「でもぶとちゃん…」

武闘家「ずっと好きだったんでしょ?」

武闘家「最初からずっと見てたって言ってたし」

武闘家「だから勝てないって思ったのっ」

武闘家「それに友達だから…幸せになってほしい…」

武闘家「だから…引かせてくださいぃっ…」ポロポロ

魔王「ごめんね…ありがとう…っ!!」ギュー

勇者(今頃になって…)

勇者(みんな好意を持ってたってことか…)

勇者(張本人の俺が言えるあれじゃないけどな)

勇者(武闘家…好きになってくれてありがとう…)



武闘家「じゃあお世話になりましたっ!!」

メイド「いえいえ」

側近「まおちゃんが二人いた気分で楽しかったよ」

魔王「絶対また遊びに来てねっ!!」

武闘家「うんっ!!」グッ

勇者「それじゃ行くぞ、転送魔法」ブゥン

武闘家「またね~」ブンブン

シュンッ!!



 -人間界 ある教会前-


シュンッ!!

武闘家「勇者、ありがとぉ」

勇者「あぁ」

勇者「でもホントに大丈夫なのか?」

武闘家「街とかにいるなら問題ないよぉ」

勇者「話聞いたところじゃ1人になるとやばいらしかったし」

勇者「気にしてたんだ」

武闘家「やっぱり勇者好きっ!!」ガバッ

勇者「うわっ!?」


武闘家「なーんちゃって」ピタ

武闘家「もう1人になることないようにするし」

武闘家「大丈夫っ」

勇者「分かった」

勇者「何かあるならまた呼んでくれ」

勇者「いつでも手助けには来る」

武闘家「うんっ、ありがとぉ」

武闘家「じゃあねぇ~」トテテテ

勇者「元気でな…」シュンッ



 勇者『そんなに元気なら俺達と旅にでるか?』


  武闘家『え、いいのっ?』


 勇者『お前さえよければだけど…なぁ?』


  魔法使い『えぇ、私も別にかまわないわよ』


 勇者『一緒に楽しく旅しようぜ』


  武闘家『うんっ!!』





         『これからずっと仲良くしてくださいっ』



今日はここで終わり。
最近ここまでっての書いてなかったけどないほうがいいのかな?



 -???-


シュンッ


勇者「はぁっ!?!?」

勇者「俺、確か魔王城に転送したはずなんだが…」

勇者「なぜこんな所に…」

??「知ってるかい?」

??「転送魔法陣ってしばらく情報が残っててね」

??「その間に手を加える事でさっきと違う状態に出来るのさ」

勇者「誰…って…」

賢者「じゃーん、賢者さん登場」

勇者「あんた何やってんだ…」

賢者「賢者」


勇者「ちげーよ!!何だその格好は!!」

賢者「元に戻っただけなんだけどね」

勇者「遊び人のほうがよかったんじゃないか?」

賢者「それは嫌味かな?かな?」

勇者「当たり前だ」

賢者「んもぅ、相変わらず口が悪いんだからっ」ツネツネ

勇者「いてぇよばかっ!!」

賢者「冗談はさておき」

賢者「ごめんね、用事あってこっちに誘っちゃった」

勇者「でも、転送先の書き換えとかすごいな」

勇者「つーかずっと後ろについてきてたのか…」ゾクゾク

賢者「ふひ」


賢者「これでも実用まで半年かかったけどね」

勇者「…見かけによらず努力家だったのか」

賢者「そういうとこあまり人に見せないんだよ」

賢者「ついてきて」

勇者「あぁ」



 -無人の城 王の間-


賢者「ここ知ってる?」

勇者「過去に国王が暗殺されたところだろ」

賢者「表向きは病気で亡くなったことになってるけどね」

勇者「国王だったし事件じゃないかって疑われてたけどな」

賢者「最終的には暴君だった国王が何者かに殺されたという事になった」

勇者「それで側近は捕まらなかったんだろ?」

賢者「よく分かってるね、その通りさ」

賢者「魔族より非道な人間だったわけ」

賢者「そんなヤツ、誰もかばいやしないよ」


勇者「皮肉なもんだな…人間のほうが悪いなんてな」

賢者「だからこれから変えなきゃいけないわけよ」

勇者「何かいい方法はないもんかな…」

賢者「あんた知らない間に協力するようになったんだね」

勇者「あんたらの事は全部知ったしな」

賢者「そりゃありがたいねぇ」

賢者「戦力が増えて嬉しいことよっ」ポンポン

勇者「それで呼び出した理由は?」

賢者「そんなの決まってんじゃん」モジモジ

勇者「え…まさか…」


賢者「す…」

勇者「す?」

賢者「すき……だらけだぞっ!!」カッ

勇者「へっ?うおっ!?」ピカーン

賢者「まったくダメだな…もっと改良しなくては…」カリカリ

勇者「おいっ、俺に何をしたっ!!」

賢者「新魔法の実験」

勇者「さっきのは失敗?」

賢者「一応成功らしいけどダメだった」

賢者「効果が現れなかったわ」

勇者「失敗したらどうなんの?」

賢者「死ぬんじゃない?」

勇者「…」


勇者「転送魔法」ブゥン

賢者「はい、魔法ブレイカー」ピッ


パァン!!


勇者「魔法陣が消えた…」

賢者「悪いようにはしないから手伝ってよ」

勇者「どう考えても強制なんだが…」

賢者「じゃあ帰ってもらってかまわないよ」

賢者「次は何もしないからさ」カリカリ

勇者「…」ブゥン

シュン!!



賢者「嫌われちゃったかね」パタンッ

賢者「真面目にやろうとしたらいつもダメだ…」

賢者「言っちゃったんだよね…」

賢者「真面目にするって…」

賢者「…」ギュッ

シュンッ

勇者「…」

賢者「…なんで戻ってきたんだい?」

勇者「ほら」スッ

賢者「バスケット?」

勇者「メイドに食べ物詰めてきてもらった」

賢者「そりゃまたなんでさ?」

勇者「あんた、朝から魔王城に戻ってないだろう」


勇者「おそらくずっと休まず実験とやらやってたんだろ?」

勇者「手伝うからそれ食ってからにしようぜ」

賢者「あんた…」

勇者「それも共存関係なんだろ?」

賢者「いや違うよ」


ガシャァァァァァァァァァァン!!


賢者「あら豪快にずっこけた」

勇者「何のために俺ここまでしたんだ…」


勇者「吊ってこよう…」トボトボ

賢者「まぁいいじゃないか」グイッ

勇者「っ」

賢者「ありがとね」ギュッ

勇者「…どいつもこいつもいい加減抱きつくの好きだな」

賢者「可愛い子には平等で抱きしめちゃうのさっ」

勇者「俺は可愛くない」

賢者「ふぅん…まぁ今度でいいか」

勇者「あんたの事は嫌いじゃないし信用している」

賢者「あんなに遊びまわってやったのにねぇ」フフッ

勇者「冒険途中、裏で俺らのできない仕事をこなしてたろ?」

賢者「バレてたのかい」

賢者「人に自分が頑張ってるの見せるの苦手なんだよ」

賢者「なかなか報われないけどね」

勇者「…」


賢者「とりあえず腹ごしらえしますかー」ゴソゴソ

勇者「あぁ食ってくれ」

賢者「もぐもぐ…うまー」

勇者「最近思ったんだが…」

賢者「むぐ?」

勇者「あんたは良い人っていないのか?」

賢者「ぶほっ!!」

勇者「うわ、きたねっ!?」

賢者「何を言い出すかと思えば…」

勇者「自分がこう好き好き言われてると」

勇者「周りの奴はどうなんだと気になってな…」ポリポリ

賢者「そうかい」モグモグ


賢者「昔、一度だけあの子らには言ったんだがね…」モグ…

勇者「?」

賢者「故郷に幼馴染がいるんだ」

勇者「あぁ」

賢者「ただ好きかどうかは未だに分かっていない」

勇者「いい奴なのか?」

賢者「うん」

勇者「ずっと会ってないとか?」

賢者「かれこれ10年以上は会ってないね」

賢者「手紙ぐらいは出してるけどね」

勇者「場所は?」

賢者「聞いてどうするんだい?」

勇者「別に」

賢者「そうかい…場所はね─」



 ー小さな村ー


シュンッ

勇者「ここか…」

勇者「どこだ…っと!!」フラッ

勇者「あのバカ、容赦なさすぎなんだよ」

勇者「魔力かき消す実験ってどんなだよ…」

勇者「ほとんど吸い取られてるからきついな…」フラフラ

男「おっと大丈夫かい?」ガシッ

勇者「あ、すいません…」

男「えらい顔色悪いな、うちに来るといいっ」グイ

勇者「え、ちょ…」ズルズル



勇者「マジでつれて来られてしまった」

男「ほら、これでも飲みな」スッ

勇者「どうも…」ズズッ

勇者「甘苦い…」

男「はっはっは…そりゃボクが調合した薬だしねぇ」

男「ちょっと味が変なのは許してくれよ?」

勇者「そりゃかまわないですけど」

男「でもこんな所に何か用事だったのかい?」

勇者「あぁ。探してる人が…」チラッ

勇者「…」

勇者(そこに描いてある絵の人物…)


男「?どうかしたかい?」

勇者「賢者は元気にしています」

男「…彼女と知り合いなのか?」

勇者「旅仲間でした」

男「相変わらず真面目で面白くない奴だろう?」

勇者「いえ、いたずら好きのとんでもない変態です」

男「…」

勇者「あの…」

男「あっはっはっ…、ちゃんと変われてるじゃないかっ」

勇者「?」


男「あの子は昔からおどおどしててぱっとしない子だった」

勇者「…」

男「そんなあの子が初めて強い口調で言ったんだよ」



 『いつか別人なぐらいに変わってみせる』



男「ってね」

男「しかし変わりすぎだろう変態って、はっはっはっ…」

勇者「あなたはあの人の事どう思っていましたか?」

男「んー」


男「どうしようもなく弱くてこんなので生きていけるかって奴だった」

男「でも頭の回転が良くて、自分の信じるものを曲げない」

男「なんか放っておけない奴だった…かな」

勇者「そんな彼女からの伝言です」

男「うん」

勇者「『今やってる事が終わったらここに戻ってくる』」

勇者「『あの頃と変わった自分を見てほしい』」

勇者「だそうです」

男「ふむ…」

男「君はメッセンジャーだったのか、彼女の」

勇者「あなたが声かけてくれたのは偶然でしたけどね」

男「はっはっは、じゃあボクからも返事頼むよ」



シュンッ

勇者「戻ったぞ…?」

賢者「…」グッタリ

勇者「おい…?どうしたんだ?」

賢者「ちょっと…無茶しすぎて」

賢者「力…なくなっちゃってね…」プルプル

勇者「なにやってんだよっ!!城に戻るか…?」

賢者「いや…これ着てくれない…?」スッ

賢者「元気に…なるから…」

勇者「わ、分かった…」スッ

勇者「…え?」パサッ


賢者「まだ…?」

勇者「いや…これはちょっと…」

賢者「まぁだ?」

勇者「いやだから…」

賢者「脱げ、話はそれからだっ」グイッ

勇者「おま…何を…」グググ…

勇者「つーか、元気じゃねぇかっ!!」

ガツンッ!!

賢者「あいたっ!!」

賢者「ちぇっ、騙されなかったか」

勇者「こんな事にあそこまでするんじゃねぇよ!!」

勇者「危うくフリフリドレス着せられるところだったわっ!!」


賢者「でも力がなくなったのは本当だもーん」クネクネ

勇者「どこがだ!!ボケッ!!」

賢者「萌えパワーが足りない」

勇者「それを俺に求めるんじゃねぇよっ!?」

賢者「男だけど可愛い要素隠れてるのにぃ」プリプリ

勇者「もう疲れた…帰る」ブォン

賢者「もえぇぇぇぇぇぇ!?」

勇者「うるさい!!あとで持ってきてやるっ!!」

賢者「持って…?」


勇者「あと伝言だ」

勇者「『ボクはずっと『1人』で君を待っている』」

勇者「だそうだ」

賢者「…」

勇者「俺が言うのもあれだが」

勇者「あんた想ってくれてる奴いるじゃねぇか」

シュンッ

賢者「あいつが…」

賢者「気づいてなかったの私だけだったんだね…」

シュンッ

側近「…」

賢者「恥ずかしい…///」


側近「あー」

賢者「…え?」

側近「なんか勇者に呼ばれて来てみたんだけど」

側近「あたしの知らない人がいる」

側近「『恥ずかしい…///』」

賢者「あ…あぁ…」カタカタ

側近「これは可愛いっ」プークスクス

賢者「あのやらぁぁぁぁぁぁ!!」

賢者「戻ったら実験と見せかけて殺してやるぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 -勇者の部屋-


魔王「勇者ー?」ガチャ

勇者「…」ピクピク

魔王「遊びに来たら死んでるしっ!!」

勇者「賢者に…やられた…」

魔王「あれ?遊び人じゃなくなってる…」

勇者「戻ったん…だとさ…」

魔王「ふーん」パァッ

勇者「お?動くようになった」

勇者「さんきゅー」ギュ

魔王「あ…」

勇者「げっ!?何してんだ俺っ」

魔王「…///」

勇者「抱きつく奴多かったから癖が移っちまったか…」


魔王「もっと」

勇者「え?」

魔王「もっとーっ!!」ギュウウウウウ

勇者「うわっ!?」

勇者(結構発育された部分が!!)

魔王「ほくほく」ギュウウウウ

勇者「…」

魔王「勇者」

勇者「ん?」

魔王「わたし、気づいてしまったんだ」

勇者「なにを?」

魔王「共存を本格的に出来る方法」

勇者「え…」






勇者「お前…」

魔王「オーブ使って全世界にその光景を移すんだ」

魔王「もちろんわたしは無抵抗」

魔王「それ見れば全世界の人達が分かってくれるはず」

勇者「それは無茶苦茶すぎるだろう!!」

勇者「そんな事したって昔のお前の親と同じになるかもしれないぞっ!!」

勇者「受け入れられずに…」

魔王「だからみんなに見せるんじゃないっ」

魔王「勇者がちゃんと魔王討ってるのを」

勇者「でも…!!」

307と308の間に本当はこれが入ります。すいません。



魔王「結局、人間って恐れてるのは魔王なんだよ」

魔王「正確には魔王の力…かな」

魔王「それでも協力してくれる人はいたけど」

魔王「みんな怖がっちゃうんだよね」

魔王「根本からどうにかしないとダメだったんだ」

勇者「でもそれはお前が…」

魔王「分かってるよ…」

魔王「でもそうしないといけなかったんだ」

魔王「だから…」

勇者「待て…まお…」





  「わたしを討ってください、勇者」


魔王「これが最善の方法なんだよ」

勇者「俺は絶対やらねぇからなっ!!」

魔王「それは困るなぁ…」

魔王「じゃないとこれ以上の進展できないと思うんだよね」

勇者「なんでだよ…」

勇者「何で自分が犠牲になるのにそんなあっさりしてるんだよ…」

魔王「だってそれで望む世界になるなら…」

勇者「俺にはならねぇ」

魔王「え?」


勇者「お前がいない世界なら俺はいらない」

魔王「勇者…」

勇者「お前だってホントはそうなんだろ?」

勇者「大好きな俺といられなくなるのに」

勇者「そんな事してかまわないってのか?」

魔王「…」

勇者「もう一度考え直せ」

勇者「お前が悩んだ末決めたことなら俺はもう何も言わない」

勇者「迷いがあるうちに結論を出すな」ガチャ バタンッ




魔王「…分かってるよ」

魔王「だからこそ大好きな勇者の手で最後を見届けてほしかったのに…」ポロ

魔王「やっぱり間違えてるのかな…」ポロポロ

魔王「別れるのはやだよぉ…」ポロポロポロ

魔王「やなんだよぉぉぉぉ」ポロポロポロ



 -廊下-


『やなんだよぉぉぉぉ』


勇者「…くそっ」

勇者「俺だって分かってるんだよ…」テクテク

勇者「あれしかとる方法がないなんて…」

勇者「でも魔王が報われなすぎるんだよ…」

勇者「いつの間にか分からねぇけど」

勇者「あいつの笑顔だけは守りたくなったんだよ…」グッ



 -中庭-


ヒュゥゥゥゥゥ

勇者「…俺、どうすればいいと思う?」

勇者「こんな女々しくて悪いんだけどな」

勇者「俺にはもう何もかも分からねぇんだよっ」

勇者「魔法使いっ…」ズズッ


カッ!!


勇者「!?」




 『あんたねぇ…』



勇者「…っ」

勇者(声が出ねぇ…)


 『死んだ人間に力を貸せってどういう事よ?』


 『こんなところであっさりつまずいてんじゃないわよ』


 『まったくこれで本当に最後よ』


勇者(魔法使い…)



 『あなたは勇者』


 『魔王を倒す役割なの、これは分かるわね?』


 『だったら何故『あなたが倒すことになった』か』


 『それ考えれば結論は出るんじゃないかしら』


 『もう私に頼らないで自分で頑張りなさいよ』


 『私の好きになった勇者さんっ』


勇者(待ってくれ…!!)




カッ!!


勇者「ま…」

勇者「戻った…」

勇者「でも…ありがとう…魔法使い」

勇者「やるべき事が見つかったよ」

勇者「ゆっくり休んでくれ」ブォン

シュンッ!!



 -???-


勇者「ここか」

勇者「女神が降り立ったという土地」

勇者「…」

勇者「見ての通り本物の勇者が来たぜ」ボウッ

勇者「出て来い…見てるんだろう?」メラメラ…

勇者「女神様よぉっ!!」メラメラメラ…



 『言ったはずだけどね?』

 『あの最初の一回しか話せないって』




勇者「マジで答えてくれたのか」

勇者「あんたに文句を言いに来た」

勇者「ただそれだけだ」


 『なんか知らないけど本気らしいね』

 『分かったわ、話を聞こうじゃない』


フワッ スタッ


勇者「!?」

女神「こんなものかしら」ニギニギ

勇者「どう見ても人間じゃないか…」

女神「こっちじゃ実体ないからね」

女神「適当に生成してみたわ」


女神「本気で話し合うみたいだから直接聞こうかと」

勇者「じゃあ俺が今なんでここ来たか分かってるのか?」

女神「いいえ?」

勇者「ずっと監視してたんじゃないのか」

女神「神とはいえ、そこまではしないわ」

女神「まぁある程度は見てるけどね」

勇者「じゃあ今の俺と魔王の事は」

女神「もちろん知ってる」

勇者「なら話は早い」

勇者「勇者が魔王を倒すっていう『決まり』をなくせ」

女神「とんでもない事言うわね」

勇者「こいつがあるせいで俺達は先へ進めない」


女神「貴方、分かってないわね」

勇者「え?」

女神「私が何で神と呼ばれているか分かってる?」

女神「私はこの星全体の味方よ」

勇者「…」

女神「確かにそういう決まりは作ったかもしれないけど」

女神「最終的にはそんなものに囚われる必要ない」

勇者「ど、どういうことだよ…」

女神「好きにすればって意味」

勇者「え」


女神「あの決まり自体に意味はあるんだけどね」

女神「神の私の意思関係なしですごい事してる人間見つけちゃってね」

女神「もうその人間にすべてまかせちゃったわ」

女神「あなたはもう深く考えなくてもいいんだよ」

勇者「言ってることが何一つ分からないんだが…」

女神「じゃあちょっとだけ説明するわ」

女神「あなた…勇者を生み出したのは」

女神「魔王自体じゃない何かを討つためなの」

勇者「あるものってなんだ?」

女神「そこでさっき言ったすごい人間が出てくるの」

女神「神が作り出したもの以上のものを作ろうとしてるのがいるの」

勇者「それできたらどうなるんだ」

女神「あなた達の望んだ世界とやらが見られるかもしれない」

勇者「え…」


女神「あと勘違いしてるようだけど」

女神「私はただの監視する者」

女神「神と呼ばれるだけで何もしてないのよ」

女神「人間の運命は人間に任せている」

勇者「じゃあ…魔族はどうなるんだよ」

女神「また同じ事言わせるの?」

勇者「え?」

女神「私はこの星全体の味方」

女神「魔族だろうと運命はすべて任せてるわけ」

女神「ありえない事態などに対応するだけかな」

勇者「…」


勇者「暴言吐いて申し訳なかった」

女神「いや、久しぶりに人間と話せただけで楽しかったから」

勇者「ならあとは俺達次第ってことだよな?」

女神「そう」

女神「これからの未来はあなたたちが好きに創るといいよ」

女神「それじゃ私は戻りますか」フワッ

勇者「わざわざありがとう」

女神「かまわないよ」

女神「出来ればまた呼ぶ事のないようにね」ニッコリ

勇者「分かった」

女神「貴方達に明るい未来が訪れますように…」スッ


シュゥン


勇者「悩むこと自体バカだったってわけか…」

勇者「俺達の望む未来を持ってるのは…」

勇者「行こう」

勇者「すべて終わらせようか」



ザッ

側近「…あたしと同じ結論に至ってたんだね」

側近「でももう何も問題ないかな」

側近「まおちゃんの事頼んだよ…勇者」

側近「君になら任せられるから」ニコ



 -魔王城 魔王の間-


ギィィィィィィ

勇者「すごい久しぶりな気がするなここも」

魔王「わたしもそう思うよ」

魔王「そんなに長い時間じゃなかったけど」

魔王「勇者たち来たのがすごい昔な気がするよ」

勇者「で、何でお前はそこに座っているんだ」

魔王「魔王だから…かな」

魔王「勇者をここで迎えるのは当たり前だよ」

勇者「そうだったな」ニッ

魔王「…」ニコ


勇者「結局、決意は曲げなかったのか?」

魔王「うん…やっぱりこれしかなかったよ」スクッ

勇者「そうか、分かった」スッ

魔王「もう反対しないんだ?」ポテポテ

勇者「お前が正しいのは分かった」

魔王「そっか」

勇者「…何か言い残すことはあるか?」

魔王「んー」チョン

勇者「無駄に考え方が可愛いな」

魔王「ふぇっ!?」

勇者「俺も最初と随分変わっちまったな」ヘヘッ

魔王「い、生きてたら変わっていくものだよ」ポッポッ

勇者「そうだな」


魔王「えっと…一言だけ言いたい事あるかな」

勇者「言ってみな」

魔王「じゃあ…」




魔王「勇者、大好きっ!!付き合ってくださいっ!!」




勇者「いいよ、付き合おう」




魔王「!?」

勇者「何だその顔」

魔王「だって…今までずっと…」


勇者「今までは関係ないだろ」

勇者「今はお前の事が好きなんだ」

魔王「っ!!!!」

魔王「あ…う…」ポロポロ

勇者「お、おい…」スッ

勇者「…っ」グッ

魔王「うれ…しいよぉ…」ポロポロポロ

勇者「魔王っ」ギュッ

魔王「勇者ぁ…」ギュッ

魔王「ずっと…ずっと好きだったんだっ!!」ポロポロ

勇者「うん…最初に言ってたな」

魔王「ふわぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

勇者「よしよし」ナデナデ




魔王「ふぅ…」

勇者「やっと落ち着いたか?」

魔王「うん、もう大丈夫」スッ ブォン!!

勇者「それが全世界に届けられるオーブか」

魔王「そうだよ、今からここの映像がもう流れてる」

勇者「そうか、じゃあこれで本当に最後だな」スラッ

魔王「あ、もうひとつ忘れてた」

勇者「ん?」

魔王「ちゅーして」

勇者「…分かった」

魔王「…」

勇者「…」

チュッ


勇者「こんなもんか…?」

魔王「すごく暖かかった」

勇者「そ、そうか…」

魔王「よしっ、これで満足だっ!!」バッ

魔王「勇者…わたしを討って争いのない世界を…お願い…」

勇者「あぁ…」シャキッ

魔王「ここでの生活楽しかったなぁ」

勇者「…」


魔王「ゆうしゃがいて、けんじゃがいて」

魔王「メイドがいて、勇者たちがやってきて」

魔王「わたし幸せだった」ニコ

魔王「こんなに楽しく生きてこれてすごく幸せだったっ!!」ポロポロ

勇者「好きな人と両想いになれたしな」グッ

魔王「ひとつ夢が叶っちゃった…えへへ」ポロポロ

勇者「魔王…じゃあな」ダッ

魔王「さよなら…大好きな人…」ポロポロポロ





ドシュッ!!




今日はここまでです。
残りはエピローグで終わりとなります。

今日中に終わらせれなかったよちくしょう…。



 -エピローグ ある小さな村の親子-


チビ「きゃっきゃ」ポテポテ

母「こーら、おうちで走らないのっ」

チビ「でもおでかけできるもん!!うれしいもんっ!!」

母「うれしいのは分かるけどねぇ」

父「お、チビは今日も元気だな」

チビ「えへへぇ」

母「もうあなたはチビに甘すぎだよ」

父「しょうがないだろ、可愛いもん、なぁ?」

チビ「なー?」


母「まったく…ほら行こう」

チビ「ママーおててつないでー」スッ

母「はいはい」ギュ

チビ「パパもー」スッ

父「はいはい」ギュ

チビ「じゃあしゅっぱーつっ」ポテポテ

父「握らせておいて一人で行くのかよっ!?」

母「今までないボケ方だねぇ」

父「まぁ行こうか」

母「わたし達の過ごしたあの場所へ」



 -エピローグ 城に住む優しい人々-


女性「ふぅ…やっと終わった」チョロチョロ

少年「おかーさーん」テコテコ

女性「そっち終わった?」

少年「終わったよー水やり」

女性「ご苦労様~そこのお菓子食べていいよー」

少年「はーい」テコテコ

女性「すっかりこの辺も花だらけになったなぁ…」

女性「自分で育ててきたし、嬉しいものだねぇ」

女性「あ、お墓の周りの手入れもしとかなきゃ」

女性「もうあれから10年近く経つのかぁ…」

女性「ずっと守り続けてきた甲斐はあったかな」


少年「そういえばおかーさん?」

女性「ん?」

少年「最近お風呂入ってたら何かに見られてる気がするんだけど…」

女性「へ?」

少年「どこからかじーっとボクのほう見てるんだ」

女性「…あの変態か」

少年「?」

女性「あとで原因排除しておくから安心しようね」ナデナデ

少年「う、うん」

女性「あたしはあたしらしく生きていくっ」ダダッ



 -エピローグ 城に住む賢き者達-


女「…」ペラッ…ペラッ

メイド「…」

女「うひゃぁっ!?」

女「いつの間にここにいたんだあんたはっ!?」

メイド「さっきから呼んでたのですが」

メイド「返事がないものですから」

メイド「気づくまで居座ってやろうかと」ニヤニヤ

女「いつになっても意地悪だねあんたは…」

メイド「貴方だっていつまでも本ばっかり読んでるじゃないですか」

女「別にいいだろ、知識はいつまでも人間にとって必要なんだ」ペラッ

メイド「まだ知識を得るつもりですか」


メイド「あの時、新魔法完成させたくせに」

女「まぁあれは神に挑戦するつもりで作ったんだけどね」

メイド「神?」

女「人を傷つけず中にある魔力だけ破壊するっていう」

女「魔法の合成術だからね」

女「しかも古代魔法とやらを混ぜたのが人外なのさ」

女「あれ自体女神様が造ったらしいしね」

メイド「ホントあなたは変質的な事しかしないですね」

女「変わり者なのは認めるよ」



 =あの日 魔王の間から離れた一室=


賢者「まだ実験終わってないっていうのに」

賢者「慌てる子達だねぇ…」

賢者「でも、まぁ」バチバチバチ

賢者「ここまで完成すりゃあの子の魔力消し飛ぶくらいはあるっしょ」バチバチバチ

賢者「下手すりゃ私が死ぬかもしれないなこりゃ」ズキズキズキ

賢者「でも私の大切な者たちのためさ」ズキズキズキ

賢者「少し傷ついたってかまわない」


 『ボクはずっと1人で君を待っている』


賢者「死ぬわけにはいかないんだっ」バチバチ ズキズキ

賢者「いくよっ!!」グググッ



シュゥゥゥゥゥゥゥ!!



ドシュッ!!


勇者「…」

魔王「あれ…」

勇者「魔王…?」

魔王「剣が刺さってるんだけど…痛くない」

勇者「なに…?」

魔王「剣、抜いてくれないかな?」

勇者「あ、あぁ…」

ズッ

魔王「光ってる…」コォォォォ

勇者「なんだこれ…」


シュウン

魔王「あ…」

魔王「わたしの魔力が全部なくなった…」サスサス

勇者「魔力だと…お前…何かしたのか…?」

魔王「わたしは何も…」

勇者「だったらこいつは…」


ギィィィィィ


賢者「代々受け継がれてた魔王の魔力を剣で潰したんだ」フラフラ…

賢者「あの時の実験の成果さ」

勇者「賢者、やっぱりあんたがやったのか…」

魔王「わたしどうなっちゃうの?」

賢者「どうもならないさ」ドサッ


賢者「自分で言ってたんじゃないか」

賢者「自分の中の魔力が悪いって」

賢者「あの禍々しいものなくしたら」

賢者「みんな怖いものはもうなくなるんだよ」

賢者「人間とまではいかないけど」

賢者「あんたは魔力もない普通の女の子になれたんだ」

賢者「死なずにね」

勇者「あんたなら何かやってくれると思ってたよ…」カランッ

賢者「あんたが信じてくれてたからね」ニッ

賢者「でもつかれたー」グター


賢者「もうあんたらに障害はない」

賢者「消し去ってやったさ」

賢者「喜びなっ」

魔王「あ…」ポロポロ

勇者「よかったなっ」ギュッ

魔王「うんっ」ギュッ

賢者「でもあんたらキスシーン」

賢者「全世界に見られてるんだがいいのかい?」ニヤニヤ

勇者「げっ!?」

魔王「全然問題ないっ!!」

勇者「どこがだ、アホっ!!」グイーン

魔王「いひゃいいひゃいっ」ビローン

勇者「知っててやりやがったなっ!!」

魔王「ごめんなひゃ~い」ヘラヘラ



賢者「やれやれこれでこの茶番劇の幕を下ろせるな」

賢者「見てるかい、全世界の人間と魔族のみなさんっ」

賢者「これで魔王が魔力もなくなりただの女の子になった」

賢者「それに見たとおり勇者と魔王が恋仲になった」

賢者「こんな誰もありえないと思った事をやったんだこの子らはね」

賢者「もはやこの世界に脅威はない」

賢者「人間も魔族も手を取り合って」

賢者「争いのない世界を目指したい私達に」

賢者「手を貸してくれる者達が名乗り出てくれるのを待ってるよ」

賢者「手放しで歓迎するからね、よろしく~」



プツッ






メイド「結局、一番目立ったのは貴方でしたね」

女「おっかしいな裏方のつもりだったのになぁ」ポリポリ

メイド「しかし貴方はいつまでも同じ姿形ですよね」

女「24~5歳ぐらいの姿で止まっちまってるからね」

女「あんたらと同じだわこれじゃ」

女「でも救いは身体の中身はちゃんと年食ってる事かな」

女「見た目が若いままで人と同じように死ねる」

メイド「古代魔法の反動がこんなとは思いませんでしたけどね」

メイド「その容姿からすると随分と前からやっていたようですね」

女「別の魔法だけど色々作ってたわー」


メイド「まぁそれはいいのですが・・・」

メイド「あの時、勇者様と魔王様の部屋覗いてたでしょう?」

メイド「魔王様の力の事は聞かないと分からないはずですから」

女「はてさて?」

メイド「久しぶりに『教育』が必要なようですね」ズズズズズ・・・

女「ちょ・・・待ってっ!?」

女「それ言ったらその事知ってるあんたも覗いてたって事よねっ!!」

少女「いたいたっ」テコテコ

メイド「あら」


女「ん?珍しいねここに来るなんて」

少女「あなたの事好きじゃないけど…」

女「相変わらず嫌われてるね、わたしゃ」

メイド「変態ですし、本の虫ですからねぇ」

少女「でも相談できる人がいないから…」

メイド「じゃあ相談に乗ってもらうといいですよ」テクテク

メイド「どんな事があっても血がつながった人ですし」

メイド「それぐらいの年の子供がいる容姿じゃないですけどね」ニコ

メイド「私はこれで」ガチャ パタン

女「相変わらずねあの人も…」

少女「それで…相談…」

女「あぁかまわないよ」ポン

女「変態ママでよければ話を聞こうか」


少女「好きな人が出来ちゃった」

女「ちょ…まさかの…」

少女「どうすればいいか分かんないから」

少女「こっそり何してるのか見たりしてた」

女「ふ、ふーん」

少女「ついお風呂入ってるところまで見ちゃった」キャッ

女「親が親なら子も子か…」

女「これは…来るねっ」


バァンッ!!


女「ほらね」ニッコリ

少女「?」



 -エピローグ とある教会-


子供「ほーらこっちだよー」パタパタ

村娘「こらぁぁまちなさいぃ」トテテテ

司祭「…またやってるんですか」

村娘「あ、司祭さん」

村娘「まったく元気な子供達ばかりで困りますよぉ」

司祭「…元気でいいじゃないですか」

村娘「どうしたら大人しくしてくれるんだろうねぇ」

司祭「…こっちおいでー」

子供「あ、司祭さまだ~」パタパタ


司祭「…お姉ちゃんの言う事はちゃんと聞きなさい」

司祭「…じゃないと」ボソボソ

子供「うぇーん!!ごめんなさいぃぃぃ!!」

子供「いうこときくからたべないで~」

村娘「…何を言ったんですかぁ?」

司祭「…秘密」ウッフッフ

司祭「…もう少し強めにいけばいいんですよ」

村娘「そうですかぁ…」

村娘「お姉ちゃん…のように…かぁ」

司祭「…お姉ちゃん?」

村娘「あー、昔うちにとって大切な人の事で…」



 -エピローグ 永遠に続く光の道-


コツコツコツ…


魔法使い「ったく、いつまで続くのよこれ…」

魔法使い「死後の世界でこんな何もないところ歩けって」

魔法使い「ある意味拷問じゃないかしら?」

魔法使い「と、いうかここでも意思ってあるものなのね…」



ピカッ



魔法使い「っ!?なに…」



『──』


魔法使い「え?誰?私に話しかけてるの」


『──』


魔法使い「聞こえないよ…なに?」


『肉体を失った優しき魂よ──』


『廻り廻って自分の望む場所へ還りなさい──』


魔法使い「私の望む場所…」

魔法使い「私の行きたい場所は…




 「あうっ」ドシャ

 「ここどこだろ…」キョロキョロ

 「迷子になっちゃった」

 「お花がいっぱいで綺麗だなぁ…」

 「遠くに誰かいるっ」

 「気づいてっ!!」ブンブンッ



 -エピローグ 岐路-


チビ「ほらぁ、はやくぅ~」

父「そんなに急がなくったって時間あるだろうに…」

母「いいじゃない」

母「それにしてもここ来るとあの頃思い出すなぁ」

父「あの頃?」

母「友達と3人でここ来てたんだよ」

父「…そっか」

父「あいつもここ来てたんだな」

母「わたしいなかったらあの子と一緒になってた?」

父「分からない」

父「でも、最後にはお前になってたと思うよ」

父「あいつには悪いがな」


母「えへへ~」ピト

父「相変わらず抱きつくのだけはやめないんだな…」

チビ「あれ、だれだろう?」

父「チビ、どうした?」

チビ「あっちにだれかいるの」

母「迷子だろうね」

母「普段は誰もあまり来ないから迷いやすいんだよ」

チビ「ほぇ~そうなんだぁ」

父「街までが遠いからなぁ」

父「でも、時期によって花畑を見に来る人いるみたいだ」

母「やっとここにも人が来てくれるようになったんだね」

父「そうだな…ってあの子どうする?」

チビ「お話してくる!!」ポテポテポテ

父「あ、おいっ!!」


母「本当に元気だねあの子は」

父「あの無鉄砲さはお前ゆずりだな」

母「そうかな?」

父「元気に突っ込んできてたし」

母「じゃあ飛びつくから抱きしめてっ」キャッ

父「だが断る」

母「なんでよーもー!!」

父「何か昔に同じようなやり取りあったような…」

母「あったかもしれないね」ニッコリ

父「それじゃ行こうか」グイッ

母「うんっ」ピト




チビ「おーい」ブンブン

幼女「あ…うぅ…」ポロポロ

チビ「えぇっ!?なんでなくのぉ?」

幼女「だって…だれもいないとおもったから…」

チビ「そっかぁ」

チビ「でもねっ!!ここにいるよ」ギュッ

幼女「ぁ…」

チビ「パパとママのところにいこっ」

チビ「まいごなんでしょ?」

幼女「うん…」

幼女「まいごだからしかたなく…ついていくの…」

チビ「?」

チビ「いこっ」スッ

幼女「しかたなく…だよ…」ギュ




チビ「ここなんだろう?」

チビ「たんけんしてたらへんなところにでちゃった」

メイド「あら?」

チビ「メイドだー」ポテポテ

メイド「こんな所に来てどうしましたか?」

チビ「たんけんしてたのー」

メイド「あらあら」

メイド「広くて珍しいものいっぱいですもんね」ニッコリ

チビ「うんっ!!」ニコー


メイド「…」

チビ「メイド?」

メイド「あ…どうなさいましたか?」

チビ「ぼーっとしてた」

メイド「大丈夫ですよ、何でもありません」ニコ

チビ「そっかー」

チビ「あ、そだ」

チビ「これあげるー」コロ…

メイド「これは?」

チビ「きれいないしー」

チビ「もってるとおねがいがかなうんだって~」


チビ「ひとつあげるね」

メイド「綺麗な透明のガラス玉ですね…」

メイド「ありがとうございます」

メイド「チビちゃんはお願いしてるんですか?」

チビ「うんっ!!」

チビ「ずっとすきなひとといれますよーにっ」

チビ「っておねがいしたー」

メイド「そうですか」ニコ

メイド「じゃあ私もお願いしてみましょうか」

チビ「うんーそうしてー」

チビ「じゃあほかのところいってくるー」パタパタ

メイド「いってらっしゃい」フリフリ



チビ「あのこといっしょにあそびたいなぁ」テコテコ

??「突然だけど、可愛いおチビさんに質問よ」ピッ

チビ「わっ…だれ??」

??「貴方はさっきの子と一緒に遊びますか?」

??「それともこのまま1人で遊びますか?」

??「こんな簡単な選択ひとつでコレからが大きく変わるので」

??「心して選んでちょうだい」

チビ「んー」チョコン

チビ「あのことあそぶっ!!」


??「そう」

??「貴方がそれが正しいと思ったならかまわないわ」

??「これからの人生をお楽しみなさい」

チビ「よくわからないけど…うんっ!!」

??「いい子ね」

??「さぁお行きなさい」

??「あの子が待っているよ」ニッコリ

チビ「じゃあまたねおねぇさんっ!!」フリフリ パタパタ

??「これからも貴方達が歩んでいく世界を見ているわ」

??「貴方達に明るい未来が訪れますように…」スッ



 -エピローグ・終 丘の上-



メイド「…ふぅ」

メイド「何十年たってもここは相変わらず賑やかですね」

メイド「…見えていますか?」

メイド「貴方の望んだ世界…」

メイド「『あたし』と一緒に共有した夢が」

メイド「今ここに広がっているよ」

メイド「想いはちゃんと伝わってあの子が果たしてくれたよ」

メイド「これが見たかったんだ…」

メイド「みんな笑って暮らせるこんな世界」

メイド「貴方は笑ってくれる?」

メイド「最後まで見届けたあたしに笑ってくれるかな?」




 『もちろんだよエルフさん』



メイド「っ!?」キョロキョロ

ポトッ コロコロコロ…

メイド「あ…あの笑顔…」



 『ずっとだいすきなひとといられますよーにっ』



メイド「は…ははは」ポロ…

メイド「そっか…ずっと一緒…だったね」ポロポロ

メイド「結局、想いは今でも受け継がれてるんだ…」

メイド「傍にいてくれているんだね…」

メイド「ずっと見ていこうね…」

メイド「あたしたちの夢の世界を…」スッ




 あたしは手を伸ばす。


 先には青々とした空があるだけ。


 でも…その指先に


 微かにぬくもりが感じられた。


 あの子のぬくもり。


 一緒に見に行こうか


 この夢の世界の続きを…。



丘に誰もいない。

ただそこに残っていたのは

二輪の花。

まるですべてを見守るかのように

それらは優しく揺れ続けていた。



    終わり

これでこのシリーズは完結となります。

よく分からないところなどは適当に脳内補完してください…。
ちょっとぐらいなら質問は答えるけど。

全体を通して見てくれたすべて人に最大級の感謝を。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom