モバP「Pは考える葦である。」 (33)

書き溜めなし

地の文あり

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P「皆さんは日常をどう捕らえているだろうか。」

P「少なくとも私は仕事をしている毎日のことだと考える。」

P「そこでここには、私の日常を綴っていこうと思う。」

P「こうして日常を記録していく事は自分達の生きた証明であり、しるしだからだ。」

P「そして私のアイドルの記録となる。」

P「ひいては事務所や芸能界全体の記録になるかもしれない。」

P「いつかここで私の綴った話が皆さんの日用の糧になることを願い。」

P「時たまこんなことがあったな、と日常を振り返る大切さに気付いてほしい。」

P「時間が味を帰る前に日常を噛み締めてほしい。」

P「時間は味を変えず、帰らせくるものであるから。」

私はアイドルの事務所でプロデューサーをしている。
何の変哲もないごく普通のプロデューサーだ。

P「コーヒーでも淹れるかな。」

凛「なら私が淹れてこようか?」

P「すまないな、頼むよ。」

凛「今日は見る?見ない?」

P「見るほうで行こうかな。」

P「凛がどのくらいうまくなったか見たい。」

凛「私だって少しは練習してるんだよ。」

P「それは楽しみだな。」

事務所の給湯室に移動しコップとドリッパーを用意する。

凛「んっしょ。」

可愛らしい掛け声とともにシンクに上り体制を整える。

凛「準備できたよ。」

P「ありがとう。」

私はフィルターと豆を取り出し、ドリッパーにセットする。
今日は少し奮発した高い豆だ。

凛「それじゃあいくよ。」

凛はスカートの裾をたくし上げ惜しげもなく花を覗かせる。

P「履いてないんだな。」

凛「今日は来ると思ったから。」

少し聞くのは野暮だったのかもしれない。
凛の行為を唯の瞬間ではなく思い出として受け止めるため注視する。

凛「ん、んん。」

ふわりと脳をなでるアンモニア臭。
重い花をもたげた茎のような曲線に目が行き、脳を焼く。
黄が茶になり、黒になる。
その瞬間が愛おしく狂おしい。

凛「どうしたの?」

どうやら凛に心配をかけてしまったらしい。
これではプロデューサー失格である。

P「いや、なんでもない。」

P「ただ、あまりにも凛が美しすぎて。」

凛「そう言ってくれると嬉しいな。」

会話によって途切れた集中は私を我に帰らせた。
神経は目から鼓膜に移り水音を反響させている。

P「いい音だ。」

P「流石はアイドルだ。」

五感が塗られてゆく。

凛「あっ。」

凛の声とともに彗星のように軌道を変える線。

P「終わったな。」

凛「そう・・・だね。」

この沈黙はいやな沈黙ではない。
互いに通じ合っている。
そんな気がした。

凛「結構溜めてたんだけどね。」

凛「片付けるよ。」

P「そこはやらせてくれ。」

凛「え、でも。」

ここは男として譲れないものがある。

P「凛は先にパンツを履いてくるといい。」

P「その格好じゃ仕事にいけない。」

凛「うん、わかった。」

凛「着替えたらすぐに来るから感想、聞かせてね。」

P「任せろ。」

さて、凛が去ったところで本題だ。

P「暖かい。」

さっきまで凛の聖水の入った器を触る。
触覚が毟られる。

P「これが、凛の・・・温度。」

叫ばないでいるので限界である。

P「約束、したもんな。」

なんの約束か覚えていないが精神が保てるおまじないだと聞き、愛用している。

P「ふぅ。」

そこからは手早く片付けを終える。
これ以上やると脳が焼ききれる恐れがあったからだ。

P「仕事をしなければ。」

コーヒーの臭いが現実へと引き戻す。
脳が少し焼ききれていた様だ。

P「さて。」

コーヒーを一口啜る。

P「ほぅ。」

感嘆、それのみが毀れる。

P「また、味が少し変わったな。」

一口、たった一口であるがそれで十分だった。
味、匂い、舌触り、温度における情報全てが流し込まれる。

P「奮発した甲斐はあった。」

凛が尿を我慢していることは一目でわかった。

P「これにして正解だった。」

P「飲むのがもったいないな。」

楽しい時間はもったいない。
だから思い出にするのだ。

P「感想か・・・」

凛に感想を言う。
約束を思い出し改めておまじないに感謝する。

P「まだ足りない。」

有名な科学者アインシュタインはこう残している。

「たとえば、恋人といる楽しい「一時間」は、あっという間に過ぎ去って短く感じるものです。」

「嫌なことをしているつまらない「一時間」は、なかなか過ぎ去らずに長く感じるものです。」

相対性理論をわかりやすく言い換えた言葉である。

P「三口目。」

耽美という言葉が陳腐なものに感じてしまう。

それほどまでに凛には魅力があった。

P「そろそろか。」

凛の帰ってくる足音がした。

凛「ただいま。」

P「おかえり。」

凛「どうだったかな?」

P「なにがだい?」

凛「もう・・・意地悪・・・」

P「凛があまりにも可愛くてつい、な。」

心は虚しくもすっきりとしていた。
戦争の虚しさをも感じ取れる気がした。

凛「ほら早く、感想。」

P「感想か・・・」

答えははじめから決まっていたのかもしれない。

P「おいしかったよ。」

凛「ふふ、よかった。」

一瞬だけ、太陽が昇った。

P「それよりも仕事、大丈夫なのか?」

凛「え・・・あ、うん」

慌てる凛もとても可愛い。

凛「そろそろでないと不味いかな。」

P「送っていこうか?」

凛「大丈夫だよ。」

凛「Pさんは早くそれ飲んで。」

P「そうだな。」

凛は手短に荷物を整える。
凛の艶やかな髪がカバンを撫で、いじらしく舞う。

凛「あ、それとね。」

凛が突然耳元まで近寄ってくる。

凛「愛情たっぷりだよ。」ボソッ

空いている右手で少し寄りかかった状態の凛の髪を撫でる。

P「ああ、十分伝わったよ。」

凛は少し戸惑いながら。

凛「ふーん・・・まぁ、悪くないかな。」

そう言ってのけた。

P「仕事しますか。」

仕事に取り組んでいるときは社会人らしい気がする。

まゆ「おはようございます。」

まゆ「顔を赤らめてる凛ちゃんを見たんですけど。」

まゆ「Pさんなにか知りません?」

人間は死の危険を感じると過去を振り返る。
楽しかった思い出、辛かった思い出。
どれもかけがえのない日々である。

P「まゆ、弁解させてくれ。」

まゆ「うふ・・・いいんですよ。」

まゆ「Pさんがまゆ以外の子のを飲んでも。」

まゆ「でも、これからは一言言ってくださいね。」

P「ああ、そうだな。」

命は繋がった。

まゆ「でもそうですねぇ。」

まゆの様子が少しおかしい。

まゆ「まゆ、良いこと思いついちゃいました。」

Bボタンでキャンセルできるなら早くしたい。

まゆ「お茶請け、ほしくありません?」

本当にまゆは良い子だ。

P「頼むよ。」

まゆ「その前に。」

まゆ「コーヒー少し苦くありません?」

P「そう、だな。」

凛の濃さに合わせる為、苦めの豆をチョイスしていた。

まゆ「砂糖お幾ついります?」

P「一つ頼むよ。」

まゆ「はい。」

まゆは給湯室に向かいプリンを持ってきた。

P「まゆ、砂糖は?」

まゆ「ここにありますよぅ。」

まゆ「ほら、こうして。」

まゆはコップを手繰り寄せ口元に近づける。
蜜が零れた。

P「まゆ、何をしているんだ。」

まゆ「お砂糖をいれてるんですよ。」

P「それじゃあ砂糖じゃなくて蜂蜜じゃないか。」

まゆ「そうですね。」

まゆは渾身のジョークにめいっぱいの笑顔で応えた。

まゆ「どうぞ、召し上がれ。」

給湯室に行く道中で溜めたのだろうか。
水溜りに写る雲のように蜜が揺れている。

P「ふむ。」

一口。

P「ありがとう。」

心からの言葉であった。

P「おいしいよ。」

まゆ「ありがとうございます。」

社交辞令のように終る。

P「本当に甘いな。」

まゆ「それはPさんのためを思って淹れたからですよ。」

確かに愛は育まれつつあった。

まゆ「お茶請け、どうです?」

P「ああ・・・もらおう。」

本当はもう少し余韻に浸っていたかった。
だが、二口目を飲んだとき生き残っていられるとは限らない。
それほどにまゆの蜜には美があった。

P「ミルクプリンか。」

これこの前駅前で一つ300円で購入したものである。
アイドルはプリンが好きな子が多く差し入れには無難である。

まゆ「はい、あーん。」

P「それはちょっと恥ずかしいな。」

まゆ「ふふ・・・事務所にはまゆ達以外誰もいませんよ。」

P「いや、それでも。」

まゆ「大丈夫ですよ。」

まゆ「はい、あーん。」

P「あ・・・ん。」

しかしプリンは口には入らなかった。

まゆ「おいしいです。」

プリンを乗せたスプーンはまゆの口に入り。
プリンはまゆの口の中である。

P「まゆがそんな悪戯するとはな。」

まゆ「・・・♪」

P「・・・」

おかしい、明らかに咀嚼が長い。

次の瞬間、まつげ同士が触れるほどに顔が近くなる。
キスをされている、と感じるのに時間はいらなかった。

まゆ「・・・ふんぅ。」

吐息とともにドロドロとしたものが流し込まれる。

P「・・・ぅ。」

甘い、プリンは全てを押し流した。

P「はぁはぁ・・・」

何とか引き剥がし一息つく。

P「まゆ、どうしてこんなこと。」

まゆ「・・・♪」

すでに次弾を装填していた。

P「なっ。」

口に流し込まれたプリンは思考を鈍らせた。

鈍った思考よりも早くまゆは動き、唇を重ねる。

P「・・・んふ。」

蜜が雪崩れ込み。

まゆ「あっ、ん。」

マグマのように更地に変え。

まゆ「・・・ブふ。」

歯の隙間に舌が入り込み。

P「・・・チュル。」

絡ませる。

一つ一つの肯定は一瞬である。
しかし、まゆの行為は一瞬を一劫に変える。

互いの息遣いが乱れ、少し服にしわを付ける。

P「甘いな。」

まゆ「このプリン、おいしいですからね。」

月が綺麗だった。

P「まゆももうレッスンに行けよ。」

まゆ「バレちゃいましたか。」

P「アイドルのスケジュールはばっちり頭に入ってるからな。」

まゆ「流石はPさんです。」

まゆ「それでは。」

ネクタイをつかんで弱い力で求める。
まゆの体温を少し感じ。

まゆ「次はいつにしましょうか。」

P「スケジュールが空いたらな。」

まゆ「うふ・・・わかりました。」

まゆ「楽しみに待ってますね。」

そう言うとまゆは素早く離れ、少し駆け足で事務所を出て行った。

P「ネクタイ少し解けたな。」

これが今、自分にできる最大限のポーズである。
スケジュール帳を確認する。

口の中が甘い。
まゆの光悦とした表情を思いだす。

P「仕事進めないとな・・・」

まゆの希望を少しでも叶える。
それもプロデューサーの大事な仕事の一つだ。

P「まゆはわざとなのか・・・」

この事務所にはセキュリティのため監視カメラが設置してある。
もちろん事務所全体が録画されており。
まゆとの行為も納められている。

P「挑発しているようにしか見えんな・・・」

誰もいない、とはそういうことなのか。
他の子を焚きつけてまゆは何がしたいのか。
その真意も追々わかってくるだろう。

今はこの普通の日常を残しておくのが先決だ。
脳が焼ききれる前に。
時間が味を変える前に。

コーヒーはやはりおいしかった。

おしっこでコーヒーを淹れたいと思うことは誰にでも一度は通る道である。
葦のように弱い創造でも寄り集まれば川の流れを変えることだって出来る。
世論とは多数の共通意思であり、多数の共通意思は常識となる。
もし、うら若き乙女の尿を日常として残す。
そんな多数が生まれることを信じて筆を執りました。

コーヒーに限らず、アイドルに限らず、各々が自身の創造を膨らませそれぞれの内面を吐き出せる、
日用の糧となれば幸いです。
ちなみに僕の好きな動物は白熊です。

最後に、見てくださった方ありがとうございました。

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