一夏「隣人部?」(433)

今度の一夏は人としてまともな一夏。
前回書いたのに比べて。

is×はがない。で

俺は父親の都合で昔の実家に引っ越してきた。
今日から聖クロニカ学園という父の友人が理事長を務める学校に通う。

先生「今日は転校生を紹介します」

一夏「織斑一夏といいます。九州の方から引っ越してきました」

一夏「よろしくお願いします」

一夏(面白い事とか、言わなくてもいいよな。多分)

夜空「……!」

夜空(一夏…)

え、箒さんで無いん?

先生「それでは窓側の前から4列目の席に座ってください」

一夏「ハイ」

一夏(みんな大人しそうな人ばっかだな)

---休憩時間

生徒a「織斑君、どこに住んでるの?」
生徒b「彼女、いるのー?」
生徒c「好きな食べ物はー?」

一夏(みんな結構積極的だな。これなら仲良くやっていけそうかな)

>>3 ヘタレ小鷹の変わりにヘタレ一夏を投入

---昼休み

一夏「確か売店があるんだったよな」

一夏「ん?あの顔、…もしかして」

一夏「ソラ?」

一夏「ひょっとしてお前、ソラじゃないか?」

夜空「え…?」

夜空(私に気づいた?)

夜空(い、いや、子供の頃は帽子をかぶっていたし、女だと教えてなかったから、一夏が気づくはずない)

【夜空・早足で教室から出て行く】

一夏「違った、のか?」

生徒d「どーした?三日月の事、知ってるのか?」

一夏「三日月?」

生徒d「三日月夜空。クラスでもあんまり目立たない子だけど」

一夏「いや、俺の気のせいだった」

一夏(まぁ、昔あんな別れ方をしたら怒るのも無理ないか)

一夏(また、時期を見て話しかけてみるか)

---織斑家

一夏「ただいまー」

小鳩「あんちゃん、おかえりー!!」

千冬「一夏、戻ってきたか」グビッ

一夏「千冬姉、また昼間っからビール飲んで…」

千冬「違うぞ、一夏。今は夕方だ!!」

小鳩「あんちゃん、ねえちゃんが酒臭いばい」

千冬「一夏。まずは飯を作るのだ、おつまみでも可」

小鳩「そ、そうだった、もう腹が減って死にそうばい…。ククク…我に生贄を捧げよ」

一夏「レイシスモードのタイミング、遅くないか?」

【一夏・料理中】

一夏「そういや、千冬姉。今日、学校でソラに会った」

千冬「ソラ?」

一夏「ああ。こっちに住んでた頃の昔の友達」

千冬「…そうか」

千冬姉が黙り込んだ。
元々住んでたこの街から引っ越す事になったのは千冬姉の仕事の都合。
当時は学校にそれほど仲のいい友達がいなかったけど、ソラと別れるのはやはり寂しかった。
千冬姉が幼い俺達の面倒を見てくれてたから、引越しには文句を言うつもりはない。
文句を言うとすれば世界中をフラフラしてる親父の方だ。
ちなみに千冬姉はなんとか学園って学校で教師として働いている。
千冬姉は自分(生活面以外)にも他人にも厳しい人だから、生徒は大変だと思う。
とにかく申し訳なさそうな顔する必要はないんだぜ、千冬姉。

一夏「今日はミートスパと鳥のから揚げ、シーフードサラダな」

小鳩「じゅるり…うまそうじゃ」

千冬「おい、小鳩。冷蔵庫の処女の生き血貰うからな」

小鳩「ククク…我が血族よ。私の分も用意するがよい」

千冬「コップに八分ぐらいか?」

小鳩「そんなもんでいいばい」

千冬「一夏は?」

一夏「ああ、俺はお茶でいいよ」

千冬「ん」

【一夏&千冬&小鳩・食事中】

小鳩「……」

【小鳩・玉葱選別中】

一夏「小鳩、好き嫌いせずに食べろよ」

小鳩「う、ぅぅ…玉葱は苦いから…」

千冬「小鳩」

小鳩「食べる!!食べるから!!」

一夏「次はもうちょっと細かく切ってやるよ」

千冬「一夏は小鳩を甘やかさなくていいぞ」

【千冬・マッシュルーム選別中】

一夏「千冬姉」

千冬「ど、どうした、一夏?」

一夏「なんで目を逸らす」

千冬「マッシュルームは食感が…」

一夏「千冬姉」

千冬「食べるからビールは取り上げないで!!」

一夏「次からマッシュルームも細かく切ってやるよ」

千冬「…頼む」

【一夏&千冬&小鳩・食事終了】

一夏「風呂沸かしとくか」

千冬「じゃあ、私が最初な」

小鳩「ウチも一番がいいんじゃ」

千冬「黙れ。私は仕事をして疲れているのだ。今日に限り絶対最初に入る」

小鳩「ぐぬぬ…」

一夏「小鳩。たまには千冬姉に譲ってやれって」

一夏「千冬姉は俺達のために頑張って働いてくれてんだからさ」

小鳩「ククク…仕方あるまい。我が眷属のいう事だから…今回は血族の貴様に譲ろう」

一夏「お前の中の俺と千冬姉の扱いの差に泣けてきそうだ」

小鳩「?」

【小鳩・テレビ鑑賞中】
【一夏・食器洗い中】

千冬「うひゃあああっ!!一夏ぁぁぁっ!!」

【千冬・全裸で部屋に突入】

一夏「ちちちちち、千冬姉!?」

千冬「風呂が…風呂が、水になってる!!」

一夏「本当かって…とりあえずバスタオルだけでも巻いてくれ!!千冬姉」

千冬「冷たいんだ!!凍えるんだ!!」

一夏「と、とりあえず見てくるから」

【一夏・風呂の水温を確認】

一夏「うわっ、ホントに冷て。給湯器の故障か?」

一夏「とにかく、ガス会社に連絡入れとくか」

千冬「一夏ぁ…」

一夏「ちょ、だから服を着ろって、千冬姉!!」

千冬「風呂はどうなったんだ!?」

一夏「給湯器の故障だと思う。直してもらうよう連絡入れるから、今日は銭湯に行こう」

千冬「…うぅ、寒い…」

小鳩「風呂が壊れたんか…最悪じゃあ」

---数日後、聖クロニカ学園

一夏「ふぁーぁぁあふっ」

一夏「眠いなぁ」

生徒a「織斑君、おはよー」

一夏「おはよーっす」

生徒b「おはよー」

一夏「よーっす」

生徒c「今日も眠そうだねー」

一夏「春だからなー。ホント眠い時期だからなー」

生徒d「織斑、うーっす」

一夏「うーっす」

夜空「……」

夜空(一夏はクラスにすぐに馴染んだか…)

夜空(私とは違うのだな、一夏は)

---放課後

一夏「あ、いけね、体操服忘れた」

一夏「教室に戻るか」

【一夏・教室の前まで移動】

???「じゃじゃ、からかうなよー、そんな事ないってー」

一夏「結構遅い時間なのに誰か残ってるのか?」

???「あははっ、だから違うっていってるだろう?あの先生って-」

【一夏・教室の扉を開ける】

夜空「そういえばあの時、トモちゃんが言っ…」

一夏「三日月…夜空?」

夜空「……」//// カァッ

一夏「そういう声してたんだな」

夜空「…転校生」

一夏「転校生、か。確かにまだそれほど日にちも経ってないから、そう言われるのもわかるけどさ」

一夏「織斑、一夏。できればそう呼んでくれれば」

夜空「…わかった。一夏」

一夏「ん、久しぶりソラ」

夜空「なぁ…!!」////

一夏「夜空だから、ソラか」

夜空「わ、私はちが…!!」

一夏「言っとくけど、俺は昔から人の顔を覚えるのは結構得意な方だ」

一夏「それに昔の親友を忘れるわけないだろ」

夜空「…お、お前という奴は」////

一夏「ところでさっきは誰と話してたんだ?」

夜空「…うぐっ」

夜空「…………だ」

一夏「え?」

夜空「…友達と話していただけだ!!」

一夏「電話か?」

夜空「エア友達のトモちゃんと話していただけだ!!」

一夏「エア…友達?」

夜空「エアギターというのがあるだろう。それの…友達版だ」

一夏「てことはそこに友達がいると仮定して喋ってたのか?」

夜空「違う!!トモちゃんは本当にいる!!」

夜空「可愛くて頭も良くて運動神経も良くて話し上手で聞き上手で…そして、絶対に裏切らないのだ」

一夏「……」

一夏「ごめん」

一夏「でも、ソラの声を今日初めて聞いたけど、可愛い声してるな」

夜空「ななな、何を言っている、一夏!?」

一夏「でもさ、何回か声をかけてたけど、俺の事ずっと無視してたよな?」

夜空「…恥ずかしかったのだ」

一夏「恥ずかしい?」

夜空「私は友達がいないからな。…久しぶりに友達だった奴と出会って、…どう話したらいいかわからなくて…言葉が出なかった」

一夏「そっか。じゃあ、俺はずっと待ってるよ。ソラの方から俺に話しかけてくれるのを」

一夏「あとさ、最初の一歩の勇気があれば、大体の事は上手く行くもんだぜ」

夜空「最初の一歩の勇気か…。そうだな、頑張ってみるかな」

続きを投下します。

確認したら >>20>>21 の間が抜けてました。

とりあえず間の分を投下して、再度 >>21 を投下して、続きを投下します。

なので、 >> 21はなかったことに。

夜空「それ以来、裏切られるのが怖くてな。今は高校で親しくしている友達はいない」

夜空「あと、一夏が謝る事じゃない。大事な話があるといった日にあの公園にいけなかったのは私の方だからな」

一夏「引越しするって決まってからずっと言えなくて、悪かった」

一夏「もっと早く言う決心がついてたら、ちゃんと伝えられたのにな…」

夜空「そんな事はない!!私だって…あの日、公園には行ったんだ!!だけど…」

夜空「お前に姿を見せる勇気がなかった」

一夏「そういえばあの日大事な話があるって言ってたな」

夜空「一夏に…自分は女の子だと伝えたかった。スカートまで穿いていったのにな、お前に変な目で見られるかもしれないと思ったら足が竦んで動けなくなった」

一夏「そっか。ゴメン、気づかなくて」

夜空「いや…いい」

一夏「でも、ソラの声を初めて聞いたけど、可愛い声してるな」

夜空「ななな、何を言っている、一夏!?」

一夏「でもさ、何回か声をかけてたけど、俺の事ずっと無視してたよな?」

夜空「…恥ずかしかったのだ」

一夏「恥ずかしい?」

夜空「私は友達がいないからな。…久しぶりに友達だった奴と出会って、…どう話したらいいかわからなくて…言葉が出なかった」

一夏「そっか。じゃあ、俺はずっと待ってるよ。ソラの方から俺に話しかけてくれるのを」

一夏「あとさ、最初の一歩の勇気があれば、大体の事は上手く行くもんだぜ」

夜空「最初の一歩の勇気か…。そうだな、頑張ってみるかな」

夜空「……」

夜空「あとな、一夏…」

一夏「なんだ、ソラ」

夜空「ソラと呼ぶのはやめてくれないか?昔を思い出してしまう」

一夏「そっか。…三日月、いや、夜空がそう言うなら今度から夜空って呼ぶよ」

夜空「一夏」

一夏「どうした、夜空?」

夜空「一夏を見て思いついた私の最初の一歩の勇気。手伝って欲しい」

一夏「ああ。俺に出来る事があるなら何でも言ってくれ」

---翌日、昼休み

一夏(夜空は教室では今までどおりと言ってたから暫くは様子を見るか)

一夏「昼飯でも食うか」

夜空「一夏、ちょっと来い」

夜空は教室で見せるいつもの不機嫌そうな声で俺に話しかけてくる。
俺が知る夜空ではない学校での夜空の声。
不思議な違和感を覚えつつも、夜空についていく。
教室が少しざわついた。

人と関わろうとしない夜空が俺に話しかけたことなのか、
夜空と接点のないように見られている俺が素直についていった事の
どちらの事でざわついたかは俺が知るはずもなかった。

【夜空&一夏・人気の少ない階段へ移動】

夜空「とりあえず創部の手続きは終わった」

一夏「創部?ああ、部活か」

夜空「この中途半端な時期に既存の部活に入って実力もないのに対人関係の和を乱すくらいなら新しく作った方がいいと考えてな」

一夏「で、その部活はなんて部活なんだ?」

夜空「隣人部だ」

一夏「隣人部?」

夜空「キリスト教の精神に則り、同じ学校に通う仲間の善き隣人となり友誼を深めるべく、誠心誠意、臨機応変に切磋琢磨する部活動だ」

一夏「なんか、聞くだけだと胡散臭いな」

夜空「まぁ、アレだ。キリスト教とかイエス様の教えとかそれっぽい事を言ってれば意味がわからなくても大体はオーケーだ」

夜空「宗教はチョロいな」

一夏「まぁ、その発言はどうかと思うけど、なんつーか、うん、それはいいんだが…その隣人部は何をする部なんだ?」

夜空「友達作りだ」

一夏「その発想は正直なかった」

夜空「あと、一夏。お前も部員にしておいてやったぞ」

一夏「そっか。じゃあ、これからヨロシクな」

---放課後、談話室4

夜空「ここが我々の部室だ」

一夏「談話室4、か。よく、意味不明な怪しげな部活動にこんな部室をくれたな」

夜空「顧問が使っていいといったのだ。ありがたく使わせてもらうぞ」

一夏「ふぅん。で、この隣人部は主にどんな活動するんだ?」

夜空「基本は友達作りのためになるような事をやっていく。あとは入部者を募り、形上の友達を増やしていく」

一夏「形上って…」

夜空「真の友達なんて簡単には出来ないぞ」

一夏「俺は、夜空の真の友達と違うのか?」

夜空「お前は…友達…く、こ…びと、で……しぃ」ゴニョゴニョ

一夏「どうした?」

夜空「う、五月蝿い!黙れ!」////

夜空「とにかく、このポスターを掲示板に貼って部員を募る!」

一夏「わかった…って、なんだ、このポスターは?」

夜空「部員募集のポスターだ」

一夏「酷い…絵だな」

夜空「そうか?」

一夏「あと、この文章じゃ何の部活かわからないぞ」

夜空「あまいな、一夏。その文章を左上から斜めに読んでみろ」

一夏「斜め?…と、…も、…だ、…ち、…募、…集」

一夏「わかりづらいネタだな」

夜空「ネタって言うな」

夜空「とにかく部員募集のポスターを掲示板に貼りに行くぞ」

一夏「ああ」

【夜空&一夏・職員室の掲示板に移動】

夜空「よし、ポスターを張るスペースが開いてるぞ」

一夏「ああ」

??「君!!」

夜空「?」

一夏「?」

日向「クハハ、君が織斑一夏君だな」

夜空「チッ」

一夏「…あなたは?」

日向「私は日高日向(ひだかひなた)。この学校の生徒会長を務めさせてもらっている」

一夏(この学校の生徒会長って女性なのか)

一夏「で、俺に何か用ですか?」

日向「君、部活はまだ入っていないようだが、何故入らない?」

一夏「いや、今日、じゃなくて昨日か、部活には入りましたよ」

日向「おや?剣道部の部長から君に声をかけておいて欲しいと、今日言われたのだがもしかして入れ違いになったのか?」

一夏「いや、俺が入部したのは剣道部じゃなくて隣人部です」

日向「そんな部あったか?」

一夏「昨日、申請したばっかりなんで聞き馴染みはないかもしれないですけど」

日向「そうか。まぁ、部活に入っていたのなら、それはそれで構わんよ」

日向「だが、剣道部の部長に聞いたところ、君は剣道で全国大会優勝の常連らしいな」

夜空「!?」

一夏「常連って言っても優勝したのは小学校から数えてもたったの3回。あとは準優勝か準決勝止まりなんで」

日向「剣道はもうやめてしまうのか?」

一夏「剣道はいつでも出来るんで。俺は、今やりたい事をやるだけです」

日向「クハハ。そうか、ならばそのように剣道部の部長に伝えておこう」

一夏「すいません、ご期待に沿えず」

日向「クハハ、気にするな」

【日向・その場から移動】

夜空「…一夏、お前…」

一夏「じゃ、残りのポスターも貼っていこう」

夜空「待て、一夏!!」

一夏「どうしたんだよ、夜空?」

夜空「お前が剣道やってたなんて聞いてないぞ」

一夏「言ってなかったか?」

夜空「それに全国大会にいける実力があるなら何故剣道部に入らない!?」

一夏「別にこの学校には剣道の推薦で入ったわけじゃないしな」

夜空「私が、…私の勝手でお前のやりたい事をやめさせてしまってるんじゃないのか!?」

一夏「そんな事ないって」

夜空「私が一夏の剣道の邪魔を…私のせいで…」

一夏「夜空!!」

夜空「!?」

【一夏・夜空の肩を両腕で掴む】

一夏「今、俺が一番やりたいのはお前と一緒にいることだ」

一夏「それをお前が邪魔しようとするなよ」

夜空「一夏…」

一夏「それに言っただろ。剣道はいつでも出来るって」

一夏「急がなくていい。ゆっくりやってこうぜ、一緒にさ」

夜空「…ああ」

---翌日、放課後、談話室4

一夏「今日の活動は何をするんだ?」

夜空「ふむ。ポスターを貼ってしまえばしばらくはやる事がないのだが、そうだな…友達作りや友達と遊ぶ時に役立つ事を考えるとするか」

一夏「そういうのって考えてするものなのか?あと、あのポスターで人が集まるとは到底思えないんだが…」

夜空「いやいや、本当に友達を欲してる奴はあのポスターの真意に必ず気付くはずだ」

一夏「その自信はどこから来てるんだ?」

【???・談話室4の扉をノック】
【一夏&夜空・顔を見合わせる】

一夏「マジか!?」

夜空「フフン。どうだ、一夏、さっそく新入部員のようだぞ」

【夜空・談話室4の扉を開ける】

星奈「ここが隣人部ね」

夜空「違う!」

【夜空・談話室4の扉を閉めて、施錠】

一夏「ちょ、夜空!?」

夜空「さぁ、新入部員来ないかな~」

一夏「さっきの奴、どう見ても新入部員ぽかったけど…」

【星奈・扉の向こうでガンガン扉を叩く】

一夏「とりあえず開けるぞ」

夜空「…うっ」

【一夏・談話室4の扉を開錠し、開ける】

星奈「ここ、隣人部でしょ!!」

一夏「あ、ああ」

夜空「…チッ」

【一夏&夜空&星奈・ソファーに座る】

星奈「私、隣人部に入りたいんだけど」

夜空「断る」

一夏「夜空!?」

星奈「なんで?入部届けならあるわよ」

夜空「ここは貴様のような人間が来るところではない」

星奈「はぁ?何言ってんの、あんた」

一夏(なんかすごく険悪な雰囲気だな)

夜空「この部はある崇高な活動を目的としている。貴様はその条件にそぐわない。今すぐ帰れ」

星奈「帰らない!!私だって、…私だって友達欲しいのよ!!」

夜空「!!」

一夏(マジか!?あのポスターの真意を読み取っただと…)

一夏(俺の感覚の方がおかしいのか!?俺は鈍いのか!?)

夜空「貴様は友達がたくさんいるだろう。いつも引き連れている男どもが」

星奈「アレは友達じゃないわ。下僕よ下僕」

一夏「あのさ、夜空。当たり前のように話してるところ悪いんだけど、この子とは知り合いか?」

夜空「名前は知っている。こいつは学校の理事長の娘だ」

星奈「あんた、私の事知らないの!?」

一夏「転校してきて間もないからな」

星奈「ふーん。じゃ、特別に自己紹介してあげる。感謝しなさい」

星奈「私の名前は柏崎星奈(かしわざきせな)」

星奈「2年3組。頭脳明晰スポーツ万能、そして見ての通り美少女。神がオーダーメイドして造ったとしか思えない造形美じゃない?」

一夏「自分で言うんだ…」

夜空「お嬢様気取りで男どもにちやほやされているいけ好かない女だ」

星奈「あら、庶民が何か言ってるわね」

夜空「下品な乳牛が」

星奈「あら、貧乳が何か言ってるわ」

夜空「私は小さくない。普通だ」

星奈「中途半端な大きさの胸なんてないのと同じじゃない?」

夜空「貴様の胸は気持ち悪い。貴様が従えてる男と同じくらいにな」

夜空「私の胸は普通だ。あぁ、よかった普通でデカいだけの気持ち悪い胸じゃなくて」

星奈「あァっ?」

夜空「なンだァ?」

一夏「怖いからやめてくれ、二人とも」

一夏「そっか。この子が理事長の娘か」

夜空「…一夏?まさか、お前もキモ乳軍団に下るつもりなのか!?」

星奈「キモ乳軍団って何よ!?」

夜空「男は巨乳を見ればすぐデレデレか!?」

一夏「違う違う。俺の親父が理事長の知り合いで、娘がいるって聞いた事あって」

星奈「ふーん。それ、本当の話?」

一夏「ま、そうじゃないか?」

星奈「とにかく、入部届けも持ってきてるし、隣人部に入ってあげるわ」

夜空「お断りだ。出てけ、あ、違った、死ね」

星奈「あんたが死になさいよ」

夜空「ここは私の部活だ。貴様などいらん」

星奈「はぁ?あんたこそいらないわよ?そうだ、あんたがやめればいいのよ。さすがあたし、ナイスアイディア」

夜空「お前がやめろ。主に人生を。生きてる価値の見出せないクソ虫が」

星奈「あ、あんたねぇ…ホント口が悪いわねぇ…」ギリギリッ

一夏(柏崎が半泣きだ。つーか、夜空容赦ないな)

星奈「あんたなんかパパに頼んで退学にしてもらうわよ!!」

夜空「パパ?いい年してパパとかママとか、酷い甘えん坊だな。牛乳ちゃんは甘えん坊でちゅねー」

星奈「ガッ…あんた、ホント、性格悪いわねぇ」

一夏「夜空」

夜空「どうした、一夏」

一夏「もうやめとけって」

夜空「……」

一夏「柏崎だっけ?とりあえず部員は今の所、俺達二人だけど本当に入部するのか?」

星奈「私は一度決めたことを撤回するのって嫌いなの。こんな性悪女がいるとは思わなかったけど」

一夏「そっか。じゃあ入部届けは受け取っておくし、部活に来るならいつでも来ていいから」

夜空「一夏!!」

一夏「ほぼ初対面でなんでこんなに仲が悪いのか知らないけど、この隣人部はアレだろ。善き隣人となって誠心誠意、臨機応変に切磋琢磨していく部活だからさ」

一夏「とりあえずは歩み寄る事からはじめていこうぜ」

夜空「…仕方ない。一夏がそういうなら」

一夏「柏崎もそれでいいか?」

星奈「…星奈」

一夏「ん?」

星奈「キツネ女が下の名前で、私が名字だとあんたの中で私の優先順位が低いみたいだから、特別に私の事を下の名前で呼ぶのを許可するわ」

一夏「わかった、星奈」

それから隣人部である夜空、星奈、一夏の三人は
ゲームで友達を増加させる作戦としてmh3gをプレイしてみたり、
対人関係強化のために恋愛シュミレーションゲームのときメモをプレイしたり、
あまりためになるような事はなかったが、友達同士がするような事をやって放課後を過ごしていた。

---放課後、廊下

【一夏・談話室4に移動中】

一夏「ん?」

一夏(誰かにつけられてる?)

夜空「どうした、一夏」

【一夏・夜空に顔を近づけそっと耳打ち】

一夏「誰かがつけてるみたいだ。ここ最近、ずっと感じていた視線だ」ボソッ

夜空「……」チラッ

【???・遠くで物陰に隠れる】

夜空「確かに何かついてきてるな。一夏、お前が何かをやらかしたのか?」ボソッ

一夏「何にもやってないと思うぞ。多分」ボソッ

夜空「どうするのだ?」ボソッ

一夏「次の角で逆に待ち構えて捕まえる」ボソッ

夜空「わかった」ボソッ

【一夏&夜空・角を曲がる】
【???・見失わないように角の手前まで移動】
【一夏・飛び出して、???を捕獲】

一夏「…誰?」

幸村「……つかまってしまいました」

夜空「一夏、知り合いか?」

一夏「いや」

幸村「あのう、どういうことでしょう?」

一夏「それはこっちの台詞だ。なんで、俺をつけてきた?」

幸村「わたくし、実はいじめを受けているのです」

夜空「!?」

一夏「!?」

夜空「なら聞かれたらまずい話もあるだろう。詳しい話は隣人部の部室で聞こう」

【一夏&夜空&幸村・談話室4へ移動】

星奈「あら?誰、そいつ」

夜空「一夏をつけまわしていた奴だ。外では聞かれたくない話があったから連れてきた」

一夏「えっと、お前の名前は?」

幸村「わたくし、楠幸村と申します。1年1組です」

夜空「男みたいな名前だな」

幸村「はい、わたくしは日本男児ですが」

一夏「男!?女じゃないのか!?」

星奈「女顔だけど一応男子の制服着てるもんね。でも、男子っぽくないわね」

一夏「そうか、後輩か。で、イジメを受けてるって話だったが…」

星奈「イジメ!?」

幸村「はい。いじめを受けないために、織斑先輩のような強くてかっこいい男になれるかを、学ぼうと思ったのです」

星奈「一夏が強くてかっこいい?」

幸村「はい。織斑先輩は武士の嗜みである剣道で全国の猛者を斬り捨て、屍を積み上げ頂点に立つほどのお方。まさに男の中の男です」

一夏「斬り捨ててないし、屍も積んでない」

幸村「剣道部の懇願にも耳を貸さず、己の行きたい様に生きるそのお姿は豪放にして磊落、意に沿わぬものは力を持って排除し、美女を侍らせ酒池肉林の限りをつくす」

幸村「そんな織斑先輩のようにわたくしはなりたい」

一夏「チョット待て。なんか色々とおかしい」

一夏「力で排除した事も、美女を侍らせたこともないぞ、俺は」

幸村「またまた、ご謙遜を」

一夏「ご謙遜じゃない!!」

幸村「わたくし、あの日の事を鮮明に覚えております」

幸村「織斑先輩がそちらの先輩と一緒にいたときに、生徒会長から剣道部への軍門に降るよう命令を受けたにもかかわらず自分の欲望を優先し、我が道を行くお姿」

幸村「決して権力には屈せず己の武力のみで道を切り開く」

幸村「そんな織斑先輩に真の男の姿を見ました」

幸村「と、いうわけで、織斑先輩から真の男の何たるやを学ぼうと考えたのです」

一夏「まぁ、色々間違ってるから、お前」

一夏「とにかく何を参考にするとかそれ以前にどんなイジメにあってるんだ?それによっては教師に相談とか、場合によっては俺も力になってやる」

幸村「はい。具体的にはくらすの男子がわたくしを仲間はずれにするのです」

幸村「体育の時間の前にはわたくしが着替え始めると人が遠ざかり」

幸村「くらすめいとと一緒に遊んでいて汗をかいたのでシャツを脱ごうとしたら急に皆いなくなったり」

幸村「どっじぼーるでは無視されて、狙われなかったり」

幸村「といれに入ったら顔を真っ赤にして怒鳴られたりします」

一夏「……」

夜空「……」

星奈「……」

一夏「それはいじめじゃないぞ、多分」

幸村「どういうことでしょう?」

一夏「言いにくいんだが、お前ってさ、自分が女みたいな顔してるのは…わかるか?」

幸村「…話が難しくてよくわかりません」

一夏「今の話に難しい要素はどこにもない」

一夏「とにかくだ。お前が女っぽく見えるのがクラスメイトが接し辛い原因だと思うんだよ」

幸村「はぁ」

一夏「だから、カッコだけでも男っぽくしたらいいんじゃないか?」

幸村「どのようにすれば織斑先輩のようになれるのでしょうか?」

一夏「…どうやったらって、別に俺は特別な事は何もしてないし…」

夜空「ふむ。なら、隣人部に入ってみるか?」

幸村「隣人部?」

夜空「お前の尊敬する織斑一夏も我が隣人部に所属している。お前が一夏のようになりたいのなら一夏をま近くで見られる隣人部に所属すればいい」

幸村「それは名案です」

夜空「まぁ、話を聞いた上では友達もいなさそうだし、隣人部の所属資格は満たしているからな」

星奈「ちょ、ちょっと、私の時はあんだけ反対したのに、なんでコイツはスルーなのよ!!」

夜空「黙れ、肉。人と牛の価値が同等と思い込むなど呆れてモノが言えんぞ」

星奈「何ですって、この馬鹿ギツネ!!」

夜空「五月蝿い、死ね、狂牛病検査で廃棄処分されろ」

幸村「ところで織斑先輩」

一夏「どうした、楠」

幸村「あにきとお呼びしてもよろしいでしょうか?あと、わたくしの事も下の名前で呼んでいただければ嬉しく思います」

一夏「…まぁ、…わかった。幸村」

---翌日、昼休み、2年2組教室

教室が少しざわついた。
見ると教室の入り口に幸村が立っていた。幸村は俺の姿を見つけるとトテトテと近づいてきた。

一夏「って、幸村!?」

幸村「あにき、お食事です」

一夏「え?」

幸村「焼きそばころっけろーるとかれーぱん、こーひー牛乳です」

一夏「幸村。俺のために何かしようという心遣いは嬉しいけど、俺は自分で昼飯を買ってきてるし、いらないからな」

幸村「わたくしはあにきにとって不要な存在、いえ、邪魔な存在という事でしょうか?」

一夏「……。あのな、そうじゃないぞ」

幸村「わたくしはあにきの舎弟なので、あにきに仕え、ご奉仕できるのが至上の喜び」

一夏「そうか。でもな、幸村。俺も夜空もこんな事をさせるためにお前に隣人部に入ってもらったわけじゃないからな」

幸村「あにきに見捨てられたら私はこれからどうすればいいのでしょう?」

一夏「見捨ててないからな」

一夏「まぁ、昼休みとかさ、クラスに友達がいないならここに来て俺と一緒に飯を食うとかなら全然いいんだぜ」

生徒d「どーした、織斑。そいつは?」

一夏「あー、部活の後輩だ」

生徒e「今日の昼飯は珍しくコテコテのパンじゃねーか?」

一夏「まぁ、そういう日もあるさ」

幸村「あにきの食事の好みを確認せず、買ってきてしまい大変申し訳ありませんでした」

一夏「気にするなって。ホラ、空いてる席に座って一緒に食うぞ」

幸村「はい、あにき」

一夏「パンは一つずつ分けて食えばいいけど、コーヒー牛乳は一本だけだから、これは幸村が飲んでくれ」

幸村「そんなわけにはまいりません。あにきのために買ってきたのですから、あにきが飲むべきです」

一夏「じゃあ、半分ずつ飲むか?」

幸村「よいのですか?」

一夏「ああ、別に」

幸村「あにきの唇が触れたすとろーに…わたくしの唇が…」////

一夏「え、何?その反応」

---織斑家

一夏「…ってなことがあってさ、そいつは少し変わった奴なんだけどいい奴でさ」

一夏「とりあえずイジメられてるって勘違いしてるのを何とかできれば、幸村のクラスでの溝もなくなると思うんだ」

小鳩「さいきんのあんちゃんは部活の事ばっかじゃ…」

一夏「そういや、小鳩は学校の方はどうなんだ?クラスの連中と仲良くやれてるのか?」

小鳩「ククク…あんな有象無象な俗物どもは我は係わりを持たぬのだ。ククク」

一夏(こいつもクラスで友達とかいないのかな?)

千冬「ただいまー」

一夏「おかえりー、千冬姉ー」

小鳩「ククク…よく舞い戻った我が血族よ」

一夏「今日は遅くなるって言ってたけど、予想以上に7時って予想以上に早いんだが…」

千冬「それは、あれだ。少しでも早く家に戻りたかったから、色々と頑張ったのだ」

一夏「そっか、お疲れさん」

千冬「ああ」

一夏「それじゃあ、さっそく御飯の用意をするよ。あと、風呂も直ったし、千冬姉が風呂からあがったらマッサージでもしようか?」

千冬「それはありがたいな。ここ最近は小娘どもの相手で精神的に疲れているからな」

千冬「一夏のマッサージは身体だけでなく心もほぐれる気がする」

小鳩「ずるい、あんちゃん!!うちもマッサージしてほしいんじゃ」

一夏「わかったわかった。順番でな」

一夏「それじゃあ、夕飯の準備をすぐにするから」

千冬「ああ。その間に着替えてくるとしよう」

---翌日、放課後

一夏「うーっす」

【星奈・ヘッドフォンをして、ノートpcを見つめ、マウスをクリック中】

夜空「肉め、この私を無視するとはいい度胸だ」

一夏「いや、あれはどう見ても聞こえてないだけだろ」

【夜空・ヘッドフォンのコードをpcから引き抜く】

『ら、らめぇぇぇぇっ!!そんなに激しくしたら私のおま●こ避けちゃうぅぅ、あ、あ、気持ちいいのおお!!ルーカスのおち●ちんとってもきもちいいのおおおっ!!!』

【ノートpc・大音量で女性のいやらしい絶叫】
【星奈・ようやく気づき引きつった顔で一夏たちを見る】
【夜空・顔を真っ赤にしながら星奈を睨みつける】
【一夏・絶句】

『私の子宮の奥まで届いてしゅごいのおっ!!しゅごいのきちゃう、きちゃいますううぅぅっ!!』

【星奈・慌ててノートpcのボリュームをおとす】

一夏(既に手遅れ感が満載だが…)

星奈「なな、何すんのよ、バカッ!!」

夜空「そ、それはこっちの台詞だ!!」

夜空「し、神聖な部室でなんという破廉恥なものを…」

【一夏・ノートpcのモニターを確認】

一夏「エロゲーかよ」

星奈「ちょ、見ないでよ!!」

星奈「か、勘違いしないでよね!!」

一夏「勘違いも何もないだろ、この状況は」

夜空「全くだ、この変態肉め」

星奈「このゲームはアニメ化も決定してる今一番話題になってる美少女ゲーム『聖剣のブラックスター』っていって、愛と感動の大冒険ファンタジーなんだから!!」

星奈「それにこのシーンは数多くの苦難を乗り越えたルーカスとメインヒロインのセシリアが愛を確かめ合ってるシーンで、決してあんた達が思ってるようないかがわしいシーンじゃないのよ」

一夏「よりにもよって名前がセシリアって…」

夜空「どうした、一夏」

一夏「いや、今回は関係ない」

夜空「?」

一夏「それでも部室でエロゲーはさすがに駄目だろ」

星奈「知らなかったのよ!『ときメモ』が終わって、色々似たようなゲーム探して、ネットで聞いたら、これが一番面白いって言ってたから…」

一夏「それにしてもよく買えたな。女子高生がエロゲー購入ってどれだけの難易度なんだよ」

星奈「ううん。下僕の男子に持ってないか聞いたら持ってたから貢がせたの。ご褒美にそいつは休み時間に足置きにしてあげたんだけどね」

星奈「それで昨日家でずっとやってたんだけど、続きが気になって…」

一夏「今に至ると?」

星奈「そういう事よ」

is学園て九州にあったんか…

夜空「このド変態が」

星奈「ちょ、あんた、さっきの話聞いてなかったの!?」

夜空「黙れ痴女、色情狂、露出狂、ビッチ、あばずれ、生まれながらの売春婦、歩く公衆便所、リアルダッチワイフ、動く猥褻物、淫乱カレイドスコープ、寄るな触るな子供が出来る」

星奈「なんでゲームやってただけでそこまで言われんのよ、バカァッ!!」

星奈「確かにこのゲームには過激な表現が含まれてるわ。でも、それはこのゲームの一部でしかないのよ」

星奈「これは重厚なテーマを持った、そこらの文学なんか目じゃないくらい奥深い物語なの!!いわば芸術作品なの!!」

星奈「この作品をやりもせずに印象だけで悪く言うのは『ヴィーナスの誕生』や『裸のマハ』を見て低俗な絵だと馬鹿にするのと同じようなことよ!!」

夜空「だからどうした?そのゲームが芸術作品だったとしても、如何わしいシーンを食い入るように見ていた貴様が正当性を主張したところでそれは皆無に等しい」

夜空「私はそのゲームを侮辱しているのではなく、部室でエロゲーをやる肉と言う名の一人の変態を罵倒しているのだ」

夜空「作品のもつ芸術性で貴様の変態性を正当化できると思うな」

星奈「うぐぐっ」

>>67 is学園は聖クロニカと近いところに。
九州にいた時は千冬姉は別のお仕事。

夜空「ほら、言って楽になれ。自分は変態ですと。作品の内容などどうでもいいエロいシーンを見て興奮していた痴女なのです、と告白しろ」

星奈「ち、違う!あたしはセシリアと仲良くなりたかっただけ!!このシーンだって決していかがわしいものじゃないもん!!」

夜空「そ、そんなもの見せるな、この変態!!肉便器!!」

星奈「あたしは変態じゃない!!芸術的な物語を彩る芸術的な絵を見ていかがわしいって思うなんて、あんたの方こそ変態じゃない?」

夜空「だ、だったら、肉。そのシーンを声に出して読んでみろ」

星奈「え?」

夜空「芸術的な物語なのだろう?ならばその文章を読むのも何の問題もないだろう。それともその作品は卑猥なだけのいかがわしいものなのか?」

星奈「そ、そんな事ない!!で、でも、人前で朗読するのが恥ずかしいだけで、この作品は卑猥なんかじゃない!!」

夜空「そうか。なら、私も朗読してやろう」

星奈「は?」

夜空「私も朗読するといったのだ。自分一人で朗読するわけではないから恥ずかしくもないだろう」

星奈「それは…そうかもしれないけど」

夜空「ここまで譲歩しても朗読は嫌か?それともやはりその作品は芸術でもなんでもないただのエロゲーで、セシリアも定価1万円程度のダッチワイフなのか?フン、貴様はやはりただの淫乱な肉だったという事か」

星奈「セシリアの事を悪く言わないでよ!!セシリアはどれだけ辛くても信念を貫く、あたしから見ても尊敬に値する女の子なんだから!!」

星奈「いいわ、やってやるわよ!!朗読でもなんでもしてやるんだから」

夜空「そうか。なら貴様はそのゲームのアレげなシーンを朗読するがいい。私はそうだな、国語の教科書に乗っている中原中也の詩でも朗読するとしよう。あー恥ずかしい恥ずかしい」

星奈「!?な、何言ってんのよ、あんた!!」

夜空「同じ芸術作品の朗読だ。条件は同じで何の問題もあるまい。」

夜空「さぁ、朗読するがいい、肉よ」

星奈「あぅ、あぅ…」

一夏(ノリノリだな、夜空は。まるで仲のいい友達とじゃれあってるようにも見えるな)

一夏(でも、もう少し優しくしてやってもいいと思うけどな)

夜空「どうした?」

星奈「よ、読むわよ」

夜空「…あ、ああ」

星奈(セシリア)「…る、ルーカス、…早く…私の、濡れそぼった…いけない、ヴァルニバルを…」

夜空「もっと大きな声で!!」

星奈(セシリア)「…あ、あなたの、大きくて…太くて、硬くて…黒光りしている……聖剣で、…つ、貫いて…っ!」

星奈(ルーカス)「ゆ、…指だけで、こんなにビチョビチョに、なるなんて…セシリアは…本当にい、いやらしい、……め、雌豚…だな」

星奈(セシリア)「い、…意地悪な事は言わないで、ルーカス」

星奈(ルーカス)「ふん、も、物欲しそうな顔しやがって、この…い、淫売め。ほうら、雌豚、こいつが…欲しければもっと丁寧におねだりしてみろ」ゥウウッ

星奈(セシリア)「お、お願いします、…ご主人様。…あなたの聖剣を、い…いやらしい、私の、ぐ、ぐしょぐしょになった…ココに、…そ、…挿入、してください」

星奈(ルーカス)「ふふふ…、聖剣ではない、正式名称を、言ってみろ。ど、どこに、何を……入れて…欲しいんだ?…ん?…」ウゥッ ヒック

夜空「ふふっ。早く言ってみろ、セシリアはどこに何を入れてほしいんだ?」ニヤァッ

一夏(どんだけ罰ゲームなんだ、この状況は)

星奈(セシリア)「る、ルー…カスの、お、…お、おち、…おちん…………を…わ、私の…お、…お、…おま、……おまん…」

一夏(ちょ、マジか?言う気か?)

星奈「言えるかバカアアアアアッ!!!」

【星奈・立ち上がり部室から逃亡】

星奈「夜空のバカアホカス死ねーーッ!!」

夜空「むぅ、少しやり過ぎたか」

一夏「少しどころじゃない気がするけどな」

一夏「とりあえずだいぶ興奮してるだろうから、ちょっと行って宥めてくるよ」

夜空「だ、だったら、私も一緒に…」

一夏「あれだけ煽ってたんだから夜空が行くと逆効果だろ」

一夏「まぁ、読書でもしながら待っててくれたらいいさ」

夜空「…ああ、わかった」

【一夏・星奈を捜索中】
【一夏・星奈を中庭で発見】

一夏(背中を丸めてメッチャ落ち込んでるな)

一夏「星奈」

星奈「…!!」ビクゥッ

星奈「い、…一夏?」

一夏「悪かったな、朗読するの止めなくて」

星奈「…ううん、あの馬鹿狐の挑発に乗った私も悪いから…」

一夏「そこでスポーツドリンク買ってきたけど、飲むか?」

星奈「…あ、…うん」

一夏「とりあえずさ、元気出せよ。落ち込んでるのは星奈らしくないぞ」

星奈「それは、そうかもしれないけど…」

一夏「夜空はさ、この学校に俺が転向してくるまで一人も友達がいなくてさ」

一夏「この隣人部を作って初めて同性の友達が出来たんだ」

一夏「何も気兼ね無しに自分の言葉をぶつけられる友達が」

星奈「……」

一夏「だからさ、テンションが上がって、少しはしゃいで、楽しくなりたいって思って」

一夏「まぁ、今回のアレは多少の悪気はあったかもしれないけど」

星奈「…うぅっ」

一夏「星奈だってそうだろ?」

星奈「そ、そんな事はないわ!!あいつはバカ狐で、貧乳で、口も頭も性格も悪い…最悪な女よ!!」

一夏「そっか。でもさ、クラスではアイツの事をだれもそんな風に思わない」

星奈「……」

一夏「俺だって、夜空があんな風に喋ったり、あんな風に考えたり、あんな風に笑ったりするのを隣人部で初めて知ったんだ。星奈が来てくれたお蔭で」

星奈「……!!」

一夏「星奈も夜空もお互いに友達じゃないと思ってるかもしれないけど、俺から見たら立派な友達同士だぜ、二人とも」

星奈「一夏…」

一夏「ん?」

星奈「…あいつはバカで性格も悪い狐女で大ッ嫌いだけど…一夏に免じて今回の件は許してあげるわ」

一夏「そっか、ありがとな」

一夏「でもさ、部室でエロゲーはないよ、やっぱり」

星奈「それは…反省してる」

一夏「じゃ、部室に戻るとするか?」

星奈「そうね。今度はあたしが夜空を罠にはめてやるんだから!!」

一夏「ははっ、せめて俺に被害が飛ばないようにだけ頼むよ」

星奈「ふふん。それはどうかしらね」

【一夏&星奈・部室へ移動中】

葵「あれは、柏崎星奈!!あと、一緒にいるのはいつもの取り巻き軍団じゃない?」

葵「あんな楽しそうに笑う柏崎星奈は初めて見る気がします」

葵「まさか、アレは柏崎星奈の彼氏?」

葵「とりあえずアレが誰なのかわからないので写メを撮っておくとするのです」

【一夏&星奈・部室に到着】

一夏「ただいま」

星奈「…ただいま」

幸村「お勤めご苦労様です、あにき」

夜空「お、お帰り」

幸村「お茶をお入れしましょうか?あにき」

一夏「いや、今日はいいや。途中で買ったスポーツドリンクがあるし」

幸村「さようですか」

星奈「あ、あれ?」

一夏「どうした?星奈」

星奈「あんたに渡したあたしのドリンクってどっちだっけ?」

一夏「残りの量でわかるだろ?」

星奈「どっちも似たような量なんだけど…」

一夏「言われてみれば、二つとも半分くらい残ってるな」

一夏「まぁ、量が同じならどっち飲んでも一緒だろ?」

【一夏・片方のドリンクの蓋を開ける】

夜空・星奈「ちょっと待ったァァァッ!!」

星奈「それ、本当にあんたの?大丈夫、あたしのじゃないって言い切れる?」

一夏「いや、言い切れはしないけど…」

夜空「肉が飲んだかもしれないジュースをお前が飲むな!!それだと間接…キスに…」ゴニョゴニョ

一夏「でも、捨てるのは勿体無いだろ」

夜空「駄目だ、駄目だ!!お前が飲むくらいなら私が飲む!!」

一夏「はぁっ?」

夜空「肉が口をつけたかもしれないものをお前が飲むのは駄目だ!!そ、そう、肉の菌が一夏を苦しめるかもしれないからな!!」

一夏「何言ってるんだ、夜空は」

星奈「ちょっと待ちなさいよ!!一夏のジュースをなんであんたが飲むのよ!!」

夜空「貴様は貴様のジュースを見抜いて飲めばいい。それなら何の問題もないはずだ」

一夏「だったら、残りは確実に俺のジュースじゃないのか?」

夜空「黙れ、一夏!!念には念をという言葉があるように、隣人部の部長である私には部員である貴様が、肉の菌に犯されるのを黙ってみているわけにはいかんのだ」

星奈「肉の菌って何よ!!大体、あんたは関係ないじゃない!!」

一夏「まぁ、落ち着けって。ホラ、星奈もジュースでも飲んで」

星奈「あ、うん」ゴクゴク

夜空「」

一夏「それじゃあ、もう片方は俺が飲むか」ゴクゴク

夜空「」

幸村「どうされました?夜空のあねご」

夜空「…い、いや、なんでもない。もう、終わってしまったから、なんでもないんだ」

星奈「今日は…色々あったからなんか疲れちゃった」

【星奈・ノートpcの蓋を閉める】

星奈「悪いけど、先に帰るわ」

一夏「ああ、お疲れ」

星奈「ん。じゃあね」

【星奈・部室を退室】

星奈「……」

星奈「……」

星奈「…か、間接キスか…」ドキドキ

一夏「なあ幸村。色々と突っ込みたい事があるんだが、いいか?」

幸村「なんでしょう、あにき」

一夏「お前のその格好は一体なんだ?」

幸村「めいど、という格好ですが」

一夏「じゃあ、なんでメイドの格好をしてるんだ?」

幸村「男らしくなる修行、その1です」

一夏「ああ、意味がわからない。アレか?俺がおかしいのか?これが修行に見えない、俺がおかしいのか?」

一夏「……」

夜空「……」

一夏「…夜空。なんで目を逸らす」

夜空「…気のせいだ」

一夏「ちょっとこっち向いてくれ。夜空」

夜空「断る」

【一夏・夜空の顔を両手ではさみ、顔を自分の方へ向けさせる】

夜空「……!!」////

一夏「夜空」

夜空「…すまん。一夏が出て行って、あまりにも暇だったので、部活に来た幸村に男らしくなるにはまず内面から、と言ったのだ」ボソボソ

一夏「ほう?それが何故メイド服に繋がる?」ボソボソ

夜空「一夏がメイド服を着ても似合わないだろう。その域をお前も目指すのだ、ついそう言ってしまった」ボソボソ

一夏「なるほど。修正しないといけないのは幸村の常識とお前のムチャ振りだという事がよぉくわかった」ボソボソ

夜空「だが、よく見るのだ、一夏。幸村の格好は似合っているとは思わんか?」ボソボソ

一夏「似合ってるから駄目なんだろうが。何故、それがわからん」ボソボソ

一夏「あんな格好を何かの拍子に幸村のクラスメイトに見られたら、余計に幸村とそのクラスメイトの溝が大きくなるだろ」ボソボソ

夜空「す、すまない」ボソボソ

一夏「とりあえず幸村には普通にするように言っとくから、今日は夜空、お前も帰れ」ボソボソ

夜空「あ、ああ」ボソボソ

夜空「じゃ、じゃあ、あとはよろしく頼むな、一夏」

一夏「ああ。ちゃんと説明しておく」

夜空「それじゃあ、また明日な」

幸村「はい。お疲れ様でした」

【夜空・部室から退出】

一夏「はぁ。全く、最近の夜空は悪ノリが過ぎるな」

一夏「おい、幸村」

幸村「はい、なんでしょう、あにき」

一夏「明日から普通の格好でいいから。あと、そのメイド服も脱いで制服に着替えてくれ」

幸村「あにき、これは男らしくなるための心を鍛える修行であって、たった一日でやめるなど出来ません。男として情けなさ過ぎます」

一夏(こいつ、結構頑固だな)

一夏「じゃあ、こうしよう、幸村」

幸村「なんでしょう、あにき」

一夏「俺が直々に男らしくなる方法を教えるから、明日からいつもどおりにしてくれ」

幸村「あにきから、直接ですか。てとりあしとりですね」ポッ

一夏「そこで何で頬を染める」

一夏「とにかくメイド服は脱ぐんだ。俺の幸村強化計画にメイド服は必要ない」

幸村「わかりました。わたくしはあにきに従います」

幸村「ん…、あにき、すみませんがメイド服を脱ぎたいので手伝っていただけますか?」

一夏「ああ。何を手伝えばいい?」

幸村「背中のファスナーを腰まで降ろしていただけますか?」

一夏「ん、わかった」

一夏(男とはいえ、女性の服を脱がすのは少し興奮するな。なんか、背徳的な感じだ)

幸村「……」ファサッ

一夏「幸村。お前、腰細いな」

幸村「はい。みっともないのでわたくしは自分の身体が好きではありません」

幸村「制服はこっちに…」クルッ

一夏「幸村って、少し胸が膨らんでるんだな。細い割に少しちぐはぐな体型だな」

一夏「言ったら悪いけど確かに女みたいに見える」

幸村「あにき…あまりジロジロ見ないでください。こんな情けない体を見られるのはわたくしでも恥ずかしいのです」

一夏「あ、悪い悪い。鍛えれば身体は引き締まっていくよ。まぁ、ゆっくり男らしくなっていけばいいと思うぞ」

幸村「はい、あにきのご指導のもと精進いたします」

4人となった隣人部は友達作りに必要なのは演技力だと夜空のわりと最悪な発言で、しばらく演劇なんかをする事になった。

桃太郎、浦島太郎、シンデレラ、白雪姫などポピュラーなものを大幅修正(主に夜空が)して、演技してみた。

一番最初にやった桃太郎が特に酷く、主役の桃太郎(星奈)、おばあさん(幸村)、鬼(夜空)、木(俺)という、意味のわからない登場人物と配役だった。え?木は必要?
おじいさんとは離婚済みで、犬、猿、雉は死体で登場、桃太郎と鬼のガチンコ対決。
マジで、酷かった。

浦島太郎は主役の浦島太郎(星奈)、亀をいじめる子供(幸村)、亀(俺)、竜宮城の人魚(夜空)と登場人物はさほど削られておらず、それなりの感じで進むかと思ったが、これも酷かった。特に星奈。
子供は亀をいじめるのに断りを入れるし、俺の背中に乗った星奈はなんと鞭を取り出して俺をバシバシ叩いた。これはさすがに俺も色んな意味で泣いた。
そして、浦島太郎と人魚の睨み合いと罵りあい。これ、芝居じゃないよね?

次のシンデレラはシンデレラ(星奈)、継母(俺)、魔女(幸村)、王子(夜空)で登場人物は結構削られたが、最初の脚本では大した問題もなかった。
一番の問題は王子がシンデレラのガラスの靴(小道具)を捨てて、シンデレラを罵り、継母をさらって、プロポーズしたことだった。シンデレラってこんな話だったか?

最後の白雪姫は白雪姫(星奈)、小人(幸村)、魔女(俺)、王子(夜空)となり、登場人物は小人の人数以外は普通だった。
これは最後の方まではそれなりに上手くいったが、最後の最後、王子が白雪姫にキスするシーンで王子が白雪姫の顔面を踏みつけ、白雪姫と王子は大暴れ。

何気に全ての芝居で星奈が主人公をやってるけど、これは星奈が勝手に決めたのではなく、その都度にクジを引いて決めていた。どれだけ幸運?の持ち主なんだ、星奈は。

そして、その後は既存の物語に問題があったと、そんなとんでもないことを言い出した夜空が、新規の脚本を書こうという事になった。
前回はほぼ夜空任せだったが、それだとろくなものにならないと判断した星奈が、全員で一つの脚本を作ろうと提案。
メインに書くのは夜空で、俺や星奈、幸村がアイディアを出すというもの。

結果だけを言えば、これも最悪だった。
全員の考える方向性がバラバラなので仕方ないが、主なアイディアとしては

●isに乗れる主人公。超能力が使える侍キャラ。名前は肉ざえもん。
●肉ざえもんの趣味はレイプ。
●isの試験会場で巨乳試験官(学校の先生)をレイプ。
●出会ったその日にファースト幼馴染み(ヒロイン1)をレイプ。
●喧嘩を吹っ掛けてきたイギリスのエリート美少女(ヒロイン2)をレイプ。
●転校してきたセカンド幼馴染み(ヒロイン3)をレイプ。
●男として転入してきたルームメイト(ヒロイン4)をレイプ。
●主人公を敵視しているドイツの少佐(ヒロイン5)をレイプ。
●血の繋がった姉(学校の先生)をレイプ。
●主人公の男友達とその妹も兄妹丼としてレイプ。
●黒幕はピンクの髪したウサミミ巨乳で、天才とパーの紙一重。口癖は『コアならあるわ』。

戦闘がメインだったはずなのに、何故こうなった?ジャンルが全くわからない。r18なのは確かだが。
まぁ、夜空が事あるごとにレイプレイプ言ってるから、こうなったんだが。

夜空はこれをまとめようと一旦家に持ち帰ったが、これはどう考えてもないな、という結果にいたり脚本になることはなかった。

---数日後、放課後、談話室4

一夏「おーっす」

星奈「あ、一夏。今日は性悪女狐は?」

一夏「今日は欲しい本があるって言ってたからもう帰ったよ」

星奈「ふぅん。だったら今日は落ち着いてゲームが出来るわね」

一夏「今日は普通のコンシューマーのゲームか」

星奈「…あ、あれは、忘れて」

一夏「ははっ」

【一夏・珈琲をコップに注ぐ】

星奈「あ、あたしの分もお願い」

一夏「ああ」

【一夏・星奈のカップに珈琲を注ぐ】

星奈「…ねぇ、一夏」

一夏「ん?」

星奈「一夏はさぁ…泳げる?」

一夏「ああ、人並み程度にはな」

星奈「じゃあ、…教えてよ」

一夏「何を?」

星奈「泳ぎ方を、よ!!」

一夏「え?なんで?」

星奈「泳げないからに決まってるでしょ!!」

一夏「星奈、泳げないのか?」

一夏「この学校、結構立派なプールがあるじゃないか。なんで運動神経抜群な星奈が泳げないんだよ」

星奈「去年完成したのよ、あのプール」

星奈「だから、去年は体育の授業でも水泳はなかったし、小学校からずっとプール自体がなかったのよ!」

一夏「なるほど。今年は水泳の授業あるのかな?」

星奈「さあ?そんな事はどうでもいいけどね」

一夏「え?授業でプールがあるかもしれないから教えろって事じゃないのか?」

星奈「そんなのはどうでもいいの。私が泳げるようになりたいのは夏美と遊びに行く事になって、私が泳げなかったらカッコ悪いじゃない?だから、泳ぎ方を覚えたいの」

【一夏・ゲーム画面を見る】

夏美『星奈君って泳ぐの結構早いんだね~!私結構自信あったのに~!』

一夏(夏美と遊ぶって…)

星奈「とにかくあんたはあたしに泳ぎを教えればいいのよ」

一夏「わかったよ」

星奈「じゃあ、今週の日曜日に竜宮ランドね」

一夏「ああ」

星奈「あと、あの夜空のバカには私が泳げないって事は絶対に内緒よ!!」

一夏「ああ、内緒にしとく」

---土曜日の夕方、織斑家

千冬「一夏。明日なんだが私は一日予定が空いていてな…」

一夏「悪い、千冬姉。明日は友達と約束してるんだ」

小鳩「あんちゃん、最近全然相手にしてくれんばい」

一夏「悪い、小鳩。来週は空けとくから、一緒に遊ぼうな」

小鳩「ん」

千冬「一夏。私も一夏と遊びたいぞ」

一夏「いや、千冬姉はもう弟と遊ぶ歳でもないだろ。そろそろ結婚とか考えてみたら…」

千冬「それは断る。私は一夏とずっと一緒にいたいからな。そして来週は私も一緒に遊ぶからな」

一夏「わかったよ。それじゃあ、三人でどこか遊びに行くか」

千冬「ああ」

小鳩「ククク…楽しみにしているぞ、我が眷属よ。我を楽しませるように全身全霊を賭けるのだぞ」

【一夏・明日の準備をして就寝】

千冬「……」コソコソ

小鳩「……」コソコソ

【千冬&小鳩・一夏の部屋に侵入】

小鳩「あんちゃん、もう寝ちょるばい」

千冬「……」ガサゴソ

小鳩「ねえちゃん、何しとるん?」

千冬「ああ、明日、一夏がどこへ遊びに行くのか少し気になってな。持ち物チェックだ」ガサゴソ

千冬「むっ、…海パンだと?」

小鳩「あんちゃんは明日プールに行くんか?」

千冬「それもどうやら相手は女のようだな」

小鳩「ねえちゃん、なんでわかるんじゃ?」

千冬「今はまだ5月だ。こんな時期にプールの用意をしてるとすれば、温水プール、多分竜宮ランドだ」

千冬「そんな所にわざわざ男同士でプールに行くなど考えられん。よって相手は女だ」

小鳩「そんなん駄目じゃ!あんちゃんはうちのあんちゃんなんじゃ!!」

千冬「ああ、わたしの一夏だからな。どこぞの馬の骨ともしれん小娘に誑かされるのを指をくわえて見てるわけにもいかん」

小鳩「どないしよう、ねえちゃん。うちはあんちゃんをとられたくない」

千冬「フン。明日は竜宮ランドへ真偽を確かめにいくぞ」

小鳩「わかった!!じゃあ、うちも水着の用意をする!!」

千冬「さて、私も明日の準備を進めておくとしよう」

---日曜の午前10時30分頃、竜宮ランド

一夏「へぇ、結構でかいなこの竜宮ランド」

星奈「それじゃあ、プールの前で待ち合わせね」

一夏「ああ」

【一夏・更衣室で着替え中】

一夏「温水プールか。プールは普通のしか行った事なかったから変な感じだな」

星奈「一夏」

一夏「ようやく来たか」

【星奈・水着はブルーのビキニ】

星奈「あんたみたいな海パン1枚と違うんだからしょうがないでしょ」

一夏「じゃ、準備運動してプールに入るか」

【千冬・髪型をポニーテールに変えてサングラスを装備、水着は黒のビキニ】
【小鳩・黒のウィッグを装備し、カラコンは外している、水着はピンクのローライズビキニ】
【千冬&小鳩・一夏の背後に回りこみ聞き耳を立ててる】

千冬「やはり女だっかた」コソコソ

小鳩「あんちゃん…」コソコソ

星奈「……」

一夏「おいっちに、さんし、」

星奈「ちょっと、一夏」

一夏「どうした、星奈?」

星奈「私の水着姿を初めて見るんだから、何か観想を言いなさいよ。神々しいとか、美しすぎるとか、似合いすぎて理性がもたないとか」

一夏「ああ、似合ってるぞ」

一夏「にいに、さんし、」

星奈「え?それだけ?」

一夏「確かに似合ってるよ。女物の水着なんてよくわからないけど」

星奈「……」

星奈「…はぁ。もう、いいわ。行きましょ」

千冬「さすがだ、一夏。誰に対してもその愚鈍な態度は呆れを通り越して関心すら覚えるぞ」コソコソ

小鳩「うちもあんちゃんに水着褒めてもらいたいんじゃ」コソコソ

【一夏・星奈に水泳レッスン中】

一夏「上手いもんだな。本当に泳げなかったのか?」

星奈「初めて泳ぐわけだからね。でも、泳いでみたら意外に簡単だったわ」

一夏「さすがスポーツ万能だな」

星奈「じゃあ、次は背泳ぎを教えなさい」

一夏「ああ」

【一夏・星奈に水泳レッスン中】

星奈「あはっ、泳ぐのって楽しいわね」

一夏「そろそろ昼になってるし、一旦休憩しないか?」

星奈「だらしないわね。ま、いいわ。それじゃあ、プールの端まで競争ね」

一夏「ああ、わかった」

千冬「イチャついた雰囲気が全くないところを見ると泳ぎ方を教えているだけか?」コソコソ

小鳩「ガラガラだから泳ぎたい放題じゃ」バシャバシャ

【一夏&星奈・プールの端に向かって水泳勝負】

一夏「ふう」

星奈「やるわね、一夏。やっぱり泳ぎ始めの素人では勝てないってことなのかしら?」

一夏「俺が泳ぐのが上手いだけだから気にするなよ。星奈の力なら高校生でも上位に入るよ」

星奈「それって、暗に一夏は上位だって言いたいわけ?」

一夏「まぁ、それなりだな」

【一夏&星奈・プール前の売店で食事を購入、付近のテーブルで食事中】

一夏「ふむ。あまり美味くなかったな」

星奈「プールのお店の食事なんてそんなもんでしょ」

千冬「一夏の作る焼きそばの方が美味いな」ズルズル

小鳩「なんで玉葱が入っとるんじゃ」センベツセンベツ

一夏「やはり弁当を作って持ってくればよかったか」

星奈「あんた、料理なんて出来るの?」

一夏「うちは姉さんが家事が全然駄目だからな。自然と俺がやるようになった」

一夏「うちの食事は8割俺が作ってる」

星奈「残りの2割は?」

一夏「出前か外食かインスタント。今日の昼は家には姉さんと妹しかいないからその2割になってる」

星奈「あんたの姉さんが作るって考えられない?」

一夏「ありえないな」

千冬「断言するな。私だってその気になれば…」コソコソ

小鳩「でも、うちはねえちゃんが料理作ったの見たことないんじゃ」

一夏「そういや、理事長に一回くらいは挨拶にいった方がいと思うけど、都合にいい日とかってわかるか?」

星奈「へ?……え?…はぁ!?ちょ、何言ってんのよ、あんた!?」

星奈「なんであんたがパパに挨拶すんのよ!?もしかして、あ、あたしと付き合ってるとか思ってるの!?こ、これがデートとか思ってんの!?」////

一夏「前に言っただろ。俺の父親と星奈の父親が友達だって」

星奈「は…あれ?…言ってたっけ?」

一夏「ああ。それで俺と妹の学校転入の際に色々と便宜を図ってもらったんだよ」

一夏「色々とお世話になってるわけだし、行かないわけにはいかないだろ」

星奈「あ…、うん、…そうね」

千冬「という事はあの金髪の娘が柏崎星奈か」コソコソ

小鳩「あの学校は勉強が難しいから好きにならんばい」コソコソ

千冬「中学の勉強なんてどこも似たようなものだろう」コソコソ

一夏「…うぉっと」ブルッ

一夏「悪い。俺、ちょっとトイレに行ってくる」

星奈「わかったわ。あたしはプールの方に向かっておくから」

一夏「おう」

【一夏・トイレに向かう】

千冬「さすがにトイレまでついていくのはよくないな」

小鳩「ねえちゃん、うち泳いで来てええか?」

千冬「ああ。あまり深いところ行くなよ」

小鳩「ククク…このレイシス・ヴィ・フェリシティ・煌。水をも克服した偉大なる真祖なるぞ」

千冬「今の状態はどう見てもただの幼女だけどな」

小鳩「ねえちゃんのアホッ!」タタタタ、バシャーン

千冬「まったく」

千冬「…ん?」

チャラ男a「ってめ、あんま調子こくなよ」

星奈「はぁ?何言ってんの、このブサキモ生ゴミ野郎は。あんた達みたいなモブキャラ風情がこのあたしと対等に口聞いていいと思ってんの?」

星奈「目障りだからさっさと消えて頂戴。半径10キロメートルは離れてよね?三流菌臭いから」

チャラ男a「この女、…」

チャラ男b「テメェ…」

チャラ男c「このアマ…」

星奈「ていうかなんなの?さっきから誰でも知ってるような単語ばかりしか口に出さないで。ボキャブラリーが貧困なのね、あ、ボキャブラリーってわかる?ごめん、あんた達の猿みたいな低脳じゃ人様の言葉はわからないわね」

千冬「一夏と一緒にいたあの女が絡まれているみたいだな」

千冬「まぁ、あの程度の連中なら一夏でも潰せるだろうし、とりあえずは様子を見よう」

チャラ男a「ざっけんなよ、コイツ!!」

チャラ男b「ん、…オイ、見ろよ、この女。足が震えてんじゃね?」

チャラ男c「うわっ、マジだ。マジ、震えてるぜ。マジビビリだな」

星奈「は、ハァ?な、何言ってんのよ、頭も腐ってたら目まで腐ってんの?」ブルブル

チャラ男a「涙目になってるよ」

チャラ男b「おいおい、泣かせちゃったよ」

チャラ男c「う、わーっ、急に可愛く見えてきたわ、コイツ」

星奈「…だ、誰が泣いてるのよ!!脳みそ全部サナダムシに食われて、眼球が頭蓋骨に落ちちゃったんじゃないの?ホント、コイツラ、何ふざけた事言ってんのよ!!ぶち殺すわよ!!」ポロポロ

チャラ男a「はいはい、ぶち殺してみろって」ヘラヘラ

チャラ男b「いやー身体が震えて、デケーオッパイもブルブル震えて、誘ってんですかー?」ニヤニヤ

チャラ男c「じゃあ、殺してもらうためにもちょっと俺らといいトコいかね?優しくしてやっからよ」グイッ

星奈「ちょ、放しなさいよ!気持ち悪い!!」

星奈(やだっ!?振りほどけない、手首が痛い…)

千冬「一夏はまだトイレから戻ってこんか。仕方あるまい」

【千冬・星奈とチャラ男達に近づく】

千冬「おい、お前ら」

チャラ男a「おっ、美人なお姉さんから逆ナン?」

星奈「…ぅぅっ」

千冬「その少女を解放してやれ」

チャラ男b「ハァ?何言ってんの、オネーさん」

チャラ男c「俺らのナンパを邪魔するってならいくら女でも許さないぜぇ」

チャラ男a「それともオネーさんが俺らの相手をしてくれんのかよ」カベ、ドン!

星奈「ひっ!?」ビクッ

チャラ男b「俺らは女の数が増える分には大歓迎だけどなぁ」

チャラ男c「あんたもこっちに来いよ」

千冬「下衆が」

【千冬・チャラ男aの鳩尾に懇親のアッパーカットが炸裂】

チャラ男a「ぐべあっ!?」ギュルルルルズベシャーッ

チャラ男b「」

チャラ男c「」

千冬「フン、相手をしてくれるんじゃなかったのか?」

チャラ男b「て、てめぇ」ブンッ

【千冬・チャラ男bのパンチをかわし、カウンターで顔面に拳を叩き込む】

チャラ男b「どびぎゃっ!?」オクバガボロロロローッ

チャラ男c「ひぃっ、なんだよこの女」

千冬「このブリュンヒルデから逃れられると思うなよ!」

【千冬・チャラ男cの前に回り込んだ、チャラ男cは逃げられない】
【千冬・チャラ男cの顎をつかみ、壁に叩きつける】

チャラ男c「ぱぎらっ!?」ギャギャギャグバシャーッ

面白いけど良く考えたら小鳩似て無さ過ぎるなww

千冬「大丈夫か?」

【千冬・尻餅をついた星奈に手を差し伸べてゆっくりと立ち上がらせる】

星奈「は、はい!!」////

星奈(まるで『聖剣のブラックスター』の女騎士セシリアみたいにカッコいい!!)

一夏「星奈、待たせて悪かった…って千冬姉!?」

千冬「!?」ビクッ

千冬「ち、違うぞ、私はそんな人知りません。君の姉さんなんかじゃないぞ、人違いじゃないか?」キョドキョド

星奈「千冬…姉?」

小鳩「あーっ!!ねえちゃんだけあんちゃんと内緒話して、ズルイばい!!」

一夏「小鳩!?お前は何で黒髪なんだよ!?つーか、なんで二人ともここにいるんだよ!?」

小鳩「あうあう…」

千冬「あうあう…」

>>109 自分の小鳩のイメージは厨二、ブラコン、九州弁、人見知りくらい。
似てないのはただの技量不足。

>>111 そうじゃなくて織斑姉弟に似て無さ過ぎると思っただけでキャラに違和感は無いよ

一夏「…ていうか、この惨状は一体?」

千冬「ああ、女を性欲の捌け口程度でしか見れないクズどもの末路だ」

星奈「あの、千冬さん!!助けてもらってありがとうございました」

千冬「気にするな。たまたま通りかかっただけだ」

一夏「小鳩と二人でこんな時期にわざわざ温水プールで通りかかるのか?俺が初めてここに来た日に」

千冬「あ、ああ、凄い偶然だな。赤い糸でも繋がってるんじゃないのか?おもに私と」

一夏「何言ってんだか」

一夏「…でも、星奈を助けてくれたみたいで感謝するよ」

一夏「ありがとう、千冬姉」

千冬「た、たまたまだ!!」////

>>112 そうなんですか。自分の勘違いですか。申し訳ないです。
原作では千冬も小鳩もキャラが強いから、姉妹設定にすると似ないんですかね?同じブラコンなのに。
クロス系のssは難しいですね。

星奈「今日は変な連中に絡まれたり、ちょっと疲れちゃった。一夏、ゴメン、あたし、帰るわ」

一夏「そっか」

千冬「なら私の来るまで家まで送ろう」

星奈「いいんですか、千冬さん!!」

一夏(なんか千冬姉に対してテンションが違うんだが…)

小鳩「あんちゃん、うち泳ぎ疲れたばい。おんぶしてほしい」

一夏「しょうがないな。ホラ、更衣室の前までだからな」

小鳩「ん~~」ゴロゴロ

千冬「ぅあっ、ず、ずるい、小鳩だけ。…私もおんぶ…」

一夏「小鳩がつぶれるって」

【一夏&星奈&千冬&小鳩・車で帰宅中】

小鳩「zzz」ムニャムニャ

星奈「それにしてもホント最悪だったわ、さっきの奴ら!!」

一夏「まぁ、そう怒るなって。ナンパ目的の連中なんていくらでもいるんだから」

星奈「それに一夏も一夏よ!!肝心な時にいなくて!!あたしがどんな思いしたか知ってんの!?」

星奈「千冬さんがいなかったらあたしどんな目に遭ってたか、想像しただけでも気持ち悪いわ!!」

千冬「だが、お前の態度も良くないぞ。あんな連中に挑発的な態度をとってもいい事など全くない」

千冬「監視員のところに移動したり、男と一緒に来ているから無理だとやんわり伝えるだけで自分に対しての危険度はかなり下がる」

星奈「でも、あいつら、本当にキモかったし…」

千冬「おまえ自身に何かあったらどうするつもりだ?一緒に来ていた一夏はお前を助けられなかった事で罪悪感を背負うだろうし、何よりお前が一番傷つくのだ」

千冬「自分自身の身を守れると思っていても、それ以上の力で押しつぶされる事もある」

一夏「!!…」

千冬「お前が傷つく事で家族や友人も傷つく。そういう事があることを覚えておけ」

星奈「うぐっ、…はい。…千冬さん」

これは、夢。今でもたまに思い出す。

昔の千冬姉や小鳩の顔、そして客観的に映る中学2年の頃の自分。

当時の俺は剣道全国クラスという肩書きに慢心していた。
千冬姉の言う事を聞かずに自分のやりたいようにやっていた。

そして、is世界大会第2回モンドグロッソ。
第1回の優勝者である千冬姉はこの大会でも優勝候補。順当に決勝戦まで駒を進めた。

だが、俺は亡国機業に誘拐され、千冬姉に助けられた。
第2回モンドグロッソの決勝戦の当日に。決勝戦棄権という形で。

一緒にいてほしいという千冬姉の言葉を俺が無視した結果がこれだ。

俺の自分勝手な行動が俺の首を絞め、千冬姉の名誉を傷つけた。

俺を助け出した時の千冬姉の優しい笑顔を思い出すたびに、俺は心がギュッと締め付けられる。

自分のせいで誰かを悲しませたくないし、誰かのせいで自分が悲しい思いもしたくない。
だから、自分の守れる範囲で俺は強くなりたいと、思った。
千冬姉も、小鳩も、夜空も、星奈も、幸村も。

一夏「……ん?」

夜空「起きたか、一夏」

一夏「ん、あ…。もう、夕方か」

一夏「星奈と幸村は?」

夜空「先に帰った。私は本を読んでいる途中だったので残った」

一夏「そっか。悪かったな、眠ってて」

夜空「気にするな。それよりよく眠っていたが、どれだけ疲れていたのだ?疲れるような事でもしていたのか?」

一夏「…どうなんだろう。ただ、少し昔の事を思い出してた」

夜空「私といた頃か?」

一夏「いや、もう少し後だ」

夜空「…むっ」ムスッ

一夏「そんな顔するなよ」

夜空「一夏は…昔の、私といた頃は思い出さないのか?」

一夏「今はあまり思い出さないな」

夜空「……」

夜空(そうか。一夏との思い出を大切にしているのは私だけ、という事か)

一夏「思い出そうと思わなくても、今は夜空が目の前にいるから、なんていうかわかるんだ」

一夏「子供の頃の活発なソラと、今の綺麗になった夜空が俺の心に刻まれて、繋がってるのが」

夜空「…!!」////

一夏「さ、今日は帰るとするか」

夜空「じゃ、じゃあ、途中まで一緒に帰ろう」

【夜空・部室に鍵をかけ、一夏の方に振り返る】

夜空「一夏」

【夜空・一夏に左手を差し出す】

一夏「ん」

【一夏・右手で握り返す】

一夏「帰るか」



第1部 完

第1部は以上で終了です。

ありがとうございました。

第2部は後日投下します。

今まで出てる登場人物について

織斑一夏 小鷹の代わりに登場。昔から剣道を続けていて、聖クロニカに転校してくるまでは続けていた。クラスに男友達も女友達もいて、イケメンなリア充。隣人部に存在してるのは夜空の希望で。はがないの伝家の宝刀「え!?なんだって!?」は使わない。

三日月夜空 ソラとすでに発覚。一夏を盲目的に信頼している節があり、恋心も発動中。隣人部では絶対的な権限を持っているが、一夏に対して弱く、折れる事も多い。前回では完全なヒロインポジション。

柏崎星奈 一夏とは小さなフラグが経った程度。大きなフラグは千冬に経っている。

楠幸村 昼食は一夏とそのクラスメイトと一緒にとっている。現在の部活の服装はおもに制服。メイド服から着替える時に一夏に上半身裸を見られているが、その時の一夏の感想は「腰が細くて、胸が少し膨らんでいて、女みたい」。

織斑小鳩 一夏が大好き。本来の見せ場を千冬に取られている。

織斑千冬 一夏が大好き。なんとか学園の教師を勤めている。第1回モンドグロッソの優勝者。星奈とフラグが経っている。

日高日向 生徒会長。剣道部からの依頼で一夏に剣道部を勧めるが断られる。生徒達からの信頼は厚い。

遊佐葵 生徒会会計。柏崎星奈に嫉妬する星奈のクラスメイト。遠目で目撃した一夏と星奈を恋人だと勘違い中。

友達d・e 一夏のクラスの友達。昼食は一夏、幸村ととっている。

セシリア 『聖剣のブラックスター』のヒロインで女騎士。某イギリス代表候補生ではない。

とりあえずこんなところです。

今日の隣人部は剣道場に来てる。
剣道場には俺は幸村と二人で行くといったが、夜空と星奈が二人きりで部室に残るのがいやだと言い出したので、仕方なく全員で来る事になった。

俺と幸村は剣道場に何をしにきているか?
幸村の真の男になるための修行のためである。

隣人部の活動と重ならないように朝早くからやろうかとも一瞬考えたが、学校にも幸村にも迷惑をかけるのでやめた。
建前上はそうなのだが、一番の理由は俺がそこまで早く起きたくないというだけなんだけど。

それはともかく、今日は俺と幸村はそれぞれ体操服に着替え、夜空と星奈は制服のまま剣道部が用意してくれたパイプ椅子に座ってる。

剣道部は女子部員はいるもののマネージャーがおらず、男子と女子で練習場を男女別に分けて練習している。
女子部員なんて10人もいないのに練習場を男女別にする理由はあまりわからないが。

そして華やかさの少ないほぼ男だけの剣道場に無口なクール美少女の夜空と、金髪お嬢様系巨乳美少女の星奈がいるので、剣道部員のテンションも普段とは全く違ってるみたいで、かなり練習に気合が入ってるように見える。
女子部員が男子部員を若干白い目で見ている。
夜空と星奈は俺や幸村、剣道部員の練習を見ながら少し退屈そうにしていたので、それなら部室にいればいいのにと言ったら、何故か怒られた。

俺と幸村は剣道部部長に使っていいスペースを確認して、そこで軽い準備運動、そして上下素振りを200本をする。
他にも足を使った前後正面素振りとかあるけど、幸村に教えてるのは剣道ではなく、真の男への修行なので、剣道のイロハとかはどうでもいい。

素振り終了後、俺と幸村は床へ座り、何気なしに剣道部の練習を眺める。

幸村「あにき…腕がぱんぱんです」

一夏「まぁ、最初はそんなもんか」プニュプニュ

幸村「あにき…、ぁあっ」

一夏「腕を揉んだくらいでそんな声を上げないでほしいんだけど…」プニュプニュ

幸村「…はい。んあっ、…ふぅうっ…」

一夏「こうやって触ってみると全然筋肉ないよな、幸村って」

幸村「申し訳ありません、あにき」

一夏「いや、謝らなくてもいいけど」

一夏「少し筋肉痛になるかもしれないけど、明日、様子を見てマッサージでもするか」

幸村「わたくしのためにあにきの手を煩わせてしまい、申し訳ありません」

一夏「気にするなって。マッサージは昔から姉さんにもやってたから、慣れてるし」

幸村「あにきの手で気持ちよくしていただけるのは光栄の極みです」

一夏「じゃあ、後はグラウンドで5キロほど走るか」

幸村「わかりました」

夜空「なあ、一夏」

一夏「どうした、夜空?」

夜空「一夏の決めた事だから、文句を言うつもりはないが、これは真の男になるための修行になってるのか?」

星奈「確かに普通に運動してるようにしか見えないわね」

一夏「それはそうかもな。でも、何かに一生懸命打ち込むのは真の男っぽくないか?」

夜空「週一だけどな」

一夏「まあ、継続は力なりとも言うし、こんな些細な事でも続けていけば幸村のためになると思うぞ」

星奈「そんなものかしら?」

幸村「わたくしはあにきを信じていますので、いつかあにきに相応しい舎弟となって見せます」

一夏「ああ。それじゃあ、軽く休憩もしたしランニングにいくか」

幸村「はいっ」

---翌日、談話室4

一夏「…この状況は?」

【星奈・禿ヅラ装着】
【夜空・金髪のウィッグ装着】

星奈「どう、一夏?」

一夏「質問の意図がわからないんだが」

星奈「察しが悪いわねぇ。面白いでしょ、コレ」

一夏「?」

星奈「遠慮なく爆笑していいのよ、ウフフッ」

一夏「…ああ、昨日の」

一夏(ランニングが終わった後で、全員で帰る途中に友達作りに必要なのは笑いだ、という事になって、笑わせるための何かを考えて来いと言われたんだった)

一夏(すまない。マジで忘れてた)

一夏(何も用意してないって、言ったら怒るよな。きっと)

星奈「どうしたの?面白いでしょ」

一夏「面白いか?」

星奈「え?面白くない?これ、煽りのところに『バカ受け大爆笑間違いなし』って書いてあるんだけど」

一夏「信用するなよ、そんなの」

夜空「まぁ、仕方ないだろう、一夏。肉はバカなのだ、許してやれ」

一夏「で、夜空のそれは?」

夜空「わからないか?」

一夏「ああ。髪の毛がもっさりしてるくらいで何がやりたいのかはわからない」

【夜空・鏡を見る】

夜空「今のままでは確かにわかりにくいな。だったらこれならどうだ?」

【夜空・マジックを取り出し俯いて何かを書き始める】キュキュ

一夏「?」

夜空「これでどうだ」ニクッ

【夜空・変顔を披露】

一夏「ぶほあっ!!」

星奈「額に『肉』って…あたしの事かーっ!!」

夜空「ふふん、この滑稽で愚かな存在を存分に笑うがいい!!」

一夏「ひーっ、ひーっ」カコキュウデ シニソウダ

星奈「こら、一夏、笑いすぎよ、あんたは!!」

一夏「…はぁ、はぁ、す、すまん。夜空の変顔が面白すぎて、マジツボに入っちまった」アー、クルシィ

夜空「そんなに面白かったか?」フフン

【夜空・鏡を見る、変顔をやってみる】

夜空「……」グヌヌ

【夜空・ウィッグを投げ捨て、額の落書きを消し始める】

星奈「……」ハッ?

【星奈・鏡を見る、禿ヅラをゴミ箱に叩き込む】

夜空「で、一夏は何を用意してきた?」

一夏「え?」

星奈「一夏の事だからさぞ、面白いものを用意したわよね?」

一夏(逃げ場はない。なにかをやらなければきっと酷い目に合わされる空気だ)

一夏「じゃあ、ギャグでも…」

【一夏・ギャグ披露中】

一夏「……と、いう感じだが。どうだ?」

一夏(自分なりには手応えを感じたが…)

夜空「愛想もよく、クラスでも友達がいて、女子にもそこそこ人気もあり、運動も得意なお前にも、そこまで残念なものがあったか」

一夏「え?」

星奈「体感温度が10度は下がった気がするわ。寒すぎるわ、あんたのギャグ」

一夏「へ?」

夜空「一夏。もういいんだ、おまえはよくやった。暖かい珈琲を入れてやるからな」

星奈「夜空、あたしも珈琲」

夜空「そうだな。みんなでこの氷河期を乗り切ろう」

一夏「……」

一夏(泣きそう…)

---翌日、談話室4

一夏「おーっす…って誰もいない?」

一夏「鍵は開いてたのになんでだ?」

一夏「あれ?ソファーに…誰だ、この子は」

一夏「シスターにしては若すぎるし、シスターコスプレの小学生、なのか?」

一夏「なんでこんな所で寝てるんだ?」

一夏「まぁ、起こすのも悪いし暫く放っておくか」

【一夏・向かい側のソファーで読書】

幸村「失礼します」

一夏「よう、幸村」

幸村「はうっ、あにきを待たせてしまうなど舎弟の風上にも置けぬ所存。この場は切腹してあにきへの非礼を詫びたいと思います」

一夏「切腹するなって」

幸村「しかし…」

一夏「教室の掃除や教師からのお願い事、クラスでのイベントとかあったら絶対に俺より早く来るなんて出来ないだろ」

幸村「それはそうですが」

一夏「それとも幸村がこの部室に来るまで俺はどこかで時間を潰すようにした方がいいのか?」

幸村「そんな真似をあにきにしていただくわけには…」

一夏「そうだろ?だったら、誰が最初で、誰が遅れたら駄目とか、そういうのは無しだ。な?」

幸村「はい」

一夏「ああ、素直な幸村は大好きだぞ」

幸村「…あにき」////

幸村「……?」

幸村「あにき、この方は?」

一夏「ああ、俺もわからないんだが、俺が来た時にはすでに寝てた」

幸村「一応、聖くろにか学園のしすたーの服装みたいですが、わたくしも見た事ない人物ですね」

一夏「そっか」

夜空「遅くなった」

星奈「一夏」

一夏「ああ、夜空と星奈は一緒に来たのか」

夜空「残念ながらな。私が歩いていたら後ろから肉がストーカーのように着いてきて、気味が悪かった」

星奈「誰がストーカーよ、このバカ夜空!!」

夜空「貴様だ、屑肉」

マリア「…ん、…ううん」

一夏「お、目が覚めたか」

マリア「何者だ、オマエは!?」

夜空「ほう、マリア。久しぶりじゃないか」

マリア「ぎゃっ、オマエは三日月夜空!!」

一夏「夜空、この子と知り合いか?」

夜空「前に言わなかったか?こいつは高山マリア。隣人部の顧問だ」

一夏「聞いた覚えはないが、この子が顧問!?」

星奈「まあ、うちの学校はシスターでも部活の顧問になれるからね」

一夏「それにしてもこんな小さな子が顧問って…」

マリア「小さいって言うな!!ワタシはれっきとした先生なんだぞ!!」

一夏「先生?ひょっとして凄く若く見えるとか?歳はいくつですか?」

マリア「10歳だ」

一夏「見た目通りか」

マリア「10歳でも天才なので先生になれたのだ!!オマエらとは頭の出来が違うのだ、このクズどもが!」

一夏「口の悪い子供だな」

夜空「で、マリアよ。貴様はここへ何しに来たのだ?」

マリア「ここは元々ワタシのお昼寝部屋だったのだ!!オマエに騙し取られるまでは!!」

一夏「騙し取るって…?」

夜空「人聞きの悪い事を言うな。ちゃんとお前から許可を貰っただろう?」

マリア「この女はワタシからこの部屋を奪い取ったのだ!!」

マリア「ワタシの所にやってきて部屋をよこせと言ってきた。ワタシが断ったらコイツはワタシの右頬をぶったのだ!!」

一夏「……」

マリア「それで『主は仰った。右の頬をぶたれたら左の頬を出しなさい、だから左の頬をぶつ』と言って、左の頬をぶったのだ!!まだ差し出してなかったのに!!」ジワッ

一夏「……」

マリア「それから『左の頬をぶたれたら、次は部屋を差し出しなさい、創部手続きの書類にサインをして判子を押しなさい』…」ジワジワッ

一夏「……」

マリア「わ、ワタシは神に仕える身だから主の言葉は絶対で、仕方なく顧問になって、部屋まで差し出して…」ポロポロ

一夏「……」

マリア「抵抗したらまたぶたれると思って、怖かったのだ…」エグエグ

一夏「……」

夜空「マリア、主は仰った。『騙されるほうが悪い』と」ヤレヤレ

一夏「……」

一夏「マリア、だっけ?ごめんな、夜空が酷い事してしまって」

一夏「部屋は返すし、顧問もやめてもらっていいから」

夜空「…一夏?」エ?

一夏「隣人部は今日で部活動を中止だ」

星奈「一夏…」

幸村「あにき…」

夜空「な、なぁ、一夏。どうした?何故、いきなりそんな事を言うんだ?」

夜空「私に力を貸してくれるって言ったじゃないか?なんで?なんでそんな事を言うんだ!?」

一夏「わからないか、夜空」

夜空「だって!!私は友達が欲しくて…、いや、一夏と一緒にいたくて…、この部を作ったんだ!!お前さえいれば…」

一夏「だったら!!」

一夏「放課後の教室でもいいじゃないか!!屋上とか中庭、空いてるベンチでもいいじゃないか!!」

一夏「なんでだ!!なんで人を傷つけて平気な顔をしてられるんだよ!!」

一夏「こんなのが、お前が故意に人を傷つけてまでやりたかった事なのかよ!!」

夜空「そうだ!!私は…お前といたいのだ!!誰が傷ついてもお前と一緒にいられれば…」

一夏「俺が傷ついてもか?俺や夜空自身が傷ついても同じ台詞が言えるのか!?」

夜空「!!」

一夏「夜空自身がボロボロになっても、俺が酷く傷ついても本当に昨日みたいに楽しく出来るのか?」

一夏「…そんな事ないだろう。クソッ」

星奈「……」

星奈(一夏が…すごく怒ってる)

幸村「……」

幸村(わたくしはこういう時にあにきになんと声をかけたらいいのでしょう)

一夏「マリア。本当にごめん」

マリア「お、お前に謝ってもらう必要はないのだ」

マリア「わ、ワタシはババアの所に行ってくるのだ。…鍵は閉めておけ」

一夏「そっか。じゃあ、俺達もすぐにここから出るよ」

マリア「…あ、ああ」

【マリア・談話室4から退室】

星奈「一夏…」

幸村「あにき…」

夜空「……」

【一夏&夜空&星奈&幸村・談話室4から退室】

一夏「じゃあ、悪いけど星奈と幸村、明日から部活はないから」

星奈「ね、ねぇ、一夏」

星奈「部活はなくなったけど、私は今までみたいに気軽に話しかけてきていいから。私も一夏に話しかけていいかな?」

一夏「ああ、構わないから」

幸村「わたくしもあにきのクラスに昼食をしに行ってかまわないでしょうか?」

一夏「いつでも来てくれ」

一夏「でも、今日は悪いけど二人とも帰ってくれないか」

星奈「うん…」

幸村「では、しつれいします…」

一夏「じゃあな」

夜空「……」

【星奈&幸村・談話室4から帰宅】

夜空「…一夏」

一夏「どうした?」

夜空「私は…どうしたらいいのだ?」

夜空「私は自分の勝手でマリアを酷く傷つけてしまった。マリアの心も身体も…」

夜空「情けない事に一夏に言われるまで、全く気づかなかった」

夜空「なぁ、私はどうしたらいいんだ!?」

一夏「一緒に…謝りに行こう」

一夏「許されなくてもいい。悪い事をしたんだから」

一夏「だから、反省している事を知ってもらうんだ。二度と同じ過ちは繰り返さないように」

一夏「マリアに申し訳ないと思うなら、本心から謝りに行こう」

一夏「隣人部がなくなっても、夜空が本当の勇気で一歩踏み出すために俺が隣にいてやる」

夜空「一夏…一夏ぁ…、本当に、ごめん……一夏ぁ、うぅぅっ」ポロポロ

一夏「行こう。お前の心からの言葉を聞いてもらいに」

【一夏&夜空・礼拝堂へ移動】

一夏「シスターって言えばここにいるイメージしかないんだが…」

一夏「奥の建物はアパートみたいにも見えるけど…」

ケイト「おや、このあたりではあまり見ない顔だねぇ」

一夏「そうですね。あまりこの辺りはあるかないので」

マリア「!?」ビクッ

一夏「マリア!!」

マリア「な、何しに来たのだ、お前ら!!ワタシは顧問なんて辞めるからな!!あの部屋も渡さない!!」

一夏「それはいいんだ。当然の事なんだから」

一夏「マリア。少しでいいから夜空の話を聞いてやってくれ」

マリア「嫌だ!!三日月夜空はワタシの敵だ!!」

一夏「じゃあ、少しの間でいいからそこにいてくれ」

マリア「嫌だといったら嫌なのだ!!ワタシは逃げる」

ケイト「まぁ、ちょっと待ってやれ、マリア」

マリア「は、放せ、放すのだウンコババア!!」

ケイト「少しくらいは聞いてやんなよ。シスターたるもの迷える子羊ちゃんの話くらいは聞くもんだぜ」

マリア「…わ、わかったのだ」

ケイト「あと、よく聞こえなかったがウンコババアとは誰の事だ?」

マリア「ウンコババアはウンコババアなのだ」

ケイト「まぁ、その辺の追求は後でやるにしても、とりあえず少年たちの話を聞いてやりな」

マリア「…じゃ、じゃあ、話すのだ、三日月夜空」

一夏「夜空」

夜空「…マリア。今まで済まなかった」

夜空「私は自分の事だけを考えて、お前を殴ってしまった」

夜空「本当に酷い事をしたと思っている。私はただ…お前に謝りたかった」

夜空「許されなくていいから…謝らせてくれ。本当にすまなかった」

マリア「…三日月夜空」

ケイト「……」

一夏「悪かったな、マリア。夜空も反省してるし、お前にあんなことは二度としないし、させないと誓うよ」

マリア「……」

ケイト「まぁ、何があったかは知らないし、興味本位で聞こうとは思わないけど、一つだけいいか、マリア」

マリア「…な、なんなのだ?」

ケイト「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ、って」

マリア「あなたの隣人を…あなた自身のように愛せよ…」

ケイト「私達はシスターだから、神の教えをそれなりに守っていけばいいんじゃないか?」

一夏「じゃあ、俺達は帰ります。行こう、夜空」

夜空「……」ペコッ

マリア「……」

マリア「…ぅうっ」

マリア「…おい、三日月夜空!!」

夜空「…!?」ピクッ

マリア「私はシスターで心が広いから今までの事は許してやるのだ!!」

夜空「…うぅっ…」ポロポロ

マリア「それに私は大人だからすぐに物事を放り出さないでやる」

マリア「あそこはワタシのお昼寝場所だが、放課後は特別に使わせてやる!!ありがたく思え、この腐ったミカンども!!」

夜空「ごめんなさい…本当にごめんなさい…うあああぁあん…」ポロポロ

一夏「夜空。そこは謝るんじゃなくて、」

一夏「ありがとう。それでいいと思う」

ケイト「フフッ、なかなか青春してるじゃないか、君達は」

一夏「…すいませんでした。マリアを殴ってしまって…」

マリア「おい、うんこババア、お腹が空いたのだ。お菓子が食べたいのだ!!」

ケイト「おい、うんこマリア。まだ5時にもなってないぞ。夕飯時まであと1時間以上あるから私の仕事を手伝うんだな」

マリア「断るのだ!!」ダダダッ

ケイト「悪いと思ってるなら、それでいいさ。それにマリアが許したのなら、私も許すしかないしね」

一夏「それじゃあ、俺達はここで失礼します」

ケイト「ああ。あと、悩み事が出来たら、ぜひワタシのところに来ればいい。話し相手くらいにはなってやれるよ」

ケイト「それに私と君たちはシスターと学校の生徒なんだ、縁があればまた会うかもしれないしね」

---翌日、朝、校門前

幸村「あにき」

一夏「おはよう、幸村」

幸村「誰かを待っているように見えましたが、どなたを待っているのですか?」

一夏「幸村と星奈を待ってたんだ」

一夏「夜空も待つって言ってたけど、とりあえず俺一人の方がいいと思って、夜空は教室に行かせたんだ」

幸村「あにき、…もしかして」

一夏「ああ。マリアが許してくれた。隣人部は活動再開だ」

幸村「これでわたくし、またあにきのお傍にいられるのですね」

一夏「今日からまたヨロシクな」

幸村「あにき、うれしいので抱きついてよろしいですか?」

一夏「それはさすがに断る。さすがにこの衆人観衆にさらされて、男同士でハグする勇気は俺にはない」

幸村「それはまことに残念です。では、また部室で」

一夏「ああ」

星奈「はぁ。今日から、ホント憂鬱」

星奈(なんだかんだいって隣人部は居心地も良かったし、楽しかったなぁ)

親衛隊a「ど、どうしました、星奈様?」

親衛隊b「具合が悪いんですか?頭痛薬持ってきましょうか?」

親衛隊c「椅子になりましょうか星奈様!?」

親衛隊d「何か必要なものがあれば自分に言ってください、星奈様」

親衛隊e~j「「「「「「星奈様~」」」」」」

星奈(も~~っ!!全部、夜空のバカが悪いのよ!!あんな事、するから)

星奈「はぁ~~っ」

葵(あれは柏崎星奈。朝から嫌なものを見てしまった…ん?)

一夏「星奈」

星奈「一夏!?」パァッ

親衛隊a~j「「「「「「「「「「星奈様!?」」」」」」」」」」

一夏「ちょっと話があるんだけど、いいか?」

星奈「あ、うん、何々?」

一夏「あーっ、その…また後でいいか?」

星奈「へ?何で?」

一夏「いや、…この空気で話す度胸はないから」

親衛隊a~j「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」ダレダコイツ、セナサマヲヨビステ?、コロスコロスコロス

星奈「あんた達」

親衛隊a~j「「「「「「「「「「はいっ!星奈様」」」」」」」」」」

星奈「先にクラスに行ってなさい。あたしは用事があるの」

親衛隊a~j「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」チョ、ソレッテイッタイ?

星奈「いいからさっさと行きなさい。あたしの言う事が聞けないの」

親衛隊a~j「「「「「「「「「「はい、星奈様ぁ」」」」」」」」」」ナンダヨアイツ、バカナノ?シヌノ?

星奈「行ったわね。で、一夏、話って?」

葵(う~、ここからじゃよく聞こえないです。でも、男の方をイチカと呼んでいましたね。イチカ、最近、この名前をどこかで聞いたような気がするんですが。…思い出せません)

日向「くはは、こんな所でデバガメとは感心できた趣味じゃないな、葵」

葵「日向さん!?え、えっとですね、これは…」

日向「ほう、あそこにいるのは織斑一夏と柏崎星奈じゃないか。2年の万能コンビだな」

葵「…織斑一夏君、ですか?日向さんはしっているのですか」

日向「うむ。剣道部が喉から手が出るほどの逸材だ。スポーツ全般に優れ、転入試験の筆記試験でもそこそこ優秀な成績だったとの事だ」

葵「そ、そうなんですか。織斑一夏君と柏崎星奈は一体何を話してるんでしょうねぇ」

日向「くはは、何でもかまわないんじゃないか?とにかく、我々が聞く話でもないだろう。行くぞ、葵」

【日向・葵を引っ張って校舎に向かう】

葵「あう~~」

一夏「昨日、あれからマリアに会ってさ、夜空を許してもらったんだ」

星奈「あ、…ああ、そう…なんだ」

星奈「あ!じゃあ?」

一夏「ああ、隣人部は活動を再開する」

星奈「じゃあ、今日も行っていいのね」

一夏「ああ、待ってるからな」

星奈「うん!」

---放課後、談話室4

【一夏&夜空・談話室4の扉の前】

一夏「じゃ、入るぞ、夜空」

夜空「あ、ああ」ガチャッ

幸村「お勤めご苦労様です、あにき、夜空のあねご」

星奈「まったく、あんたはほんとバカ狐ね」

夜空「すまない、二人とも」ペコッ

星奈「あんたが素直に謝ると気持ち悪いわね」

夜空「なんだと、肉」ムッ

一夏「二人とも悪かったな、来るなとか来いとかコロコロ意見を変えて」

幸村「いえ。わたくしはあにきに従うだけです」

星奈「別に私もいいわよ。気にしてないし」

星奈「ほら、あんたも」

一夏「?」

【マリア・ソファーの陰から顔を出す】

マリア「ま、まぁ、放課後はこの部屋で好きに使わせてやる。私は心が広いからな!!」

一夏「ああ、ありがとうな、マリア」

夜空「ありがとう、マリア」

マリア「き、気持ち悪いな、そんな風にお礼を言われると…」

一夏「それじゃあ、今日も活動するか」

マリア「ところでこの部活は何をする部活なのだ?」

一夏「…夜空」

夜空「…と、友達作りと、それに役立つ何かをする部活、…だ」

マリア「そうか。ワタシも友達はいないから、何かお前らと何かやってみるのだ!!」

---織斑家

一夏「ただいまー」

小鳩「ククク…よく戻った、我が半身よ。悠久の時を待ちわびたぞ…」

一夏「はー、今日は疲れたよ。まぁ、部活も元に戻ったし、よしとしとくか」

一夏「それにしても、マリアが本当に勉強できたのは驚いたな。さすが10歳で教師のシスターさんだ」

小鳩「……」

一夏「どうした、小鳩?」

小鳩「なんでもなか!!」

一夏「それならいいんだけどさ。もし悩みや心配事があるならちゃんと教えてくれよな、俺はお前のあんちゃんなんだから」

小鳩「…わかっとるばい」

小鳩「…しかし聖職者、シスター、協会の手先は…我らの宿敵。忌まわしき存在だ」

小鳩「ククク…我が半身よ。我ら闇の一族がそのような者と係わり合いになるのはあまり感心できんな」

一夏「そうわ言われてもカトリック系の学校だからなぁ」

一夏(そうか。今日の俺は半身か。千冬姉は何になったんだろ?)

---翌日

三時間目の休み時間、俺はll教室から自分の教室に戻るため、廊下を歩いていた。

幸村の男修行のためだが、剣道部に顔を出させてほしいと言ったら、剣道部顧問の先生に異常なまでに喜ばれ、色々な話を聞かされ、授業にまで遅れる始末。
さらに間の悪いことに授業の場所がll教室から自分のクラスに変更になった事の連絡を貰えなかったため、俺は授業が始まって5分も経っているのに廊下を歩く破目になっていた。
そして、クラスに戻ったときにどう教室に入ればいいかを悩みながら歩いていると、突然右方向から爆発音が鳴り響いた。
見ると、音が鳴ったのは『理科室』のようで、扉の隙間から白い煙が濛々と立ち上がっていた。
何があったのかと、扉を開け、中を見ると、白い煙が充満していた。

一夏「なんだ!?」キョロキョロ

一夏「誰か倒れてる!!」

一夏「白衣の女の子?」

一夏「大丈夫か!?くそっ、意識はないか」

一夏「とりあえず窓を開けて換気して、あと白い煙の発生源は…ビーカーか」

一夏「なら、火災の発生はないみたいだし、このままこの子を保健室に連れていくか」

【一夏・昏倒してる少女を担いで保健室に移動】
【一夏・『理科室』で起きた出来事を保険医に説明】
【一夏・自分のクラスに戻る】

一夏「もう、30分も時間が過ぎてるじゃないか。くそっ、なんでこんな事に…」

一夏「すいません。遅れました…ってなんだ、自習か」

生徒d「おいおい、織斑。堂々とサボりか?」

一夏「いや、違うんだけど。聞くも涙、語るも涙の物語があったんだよ」

生徒e「なんだ?そりゃ」

一夏「でも残り時間で自習のプリントは絶対出来ないな」

生徒a「じゃあ織斑君、私のを写す?」

生徒b「私も大体は終わってるよ」

一夏「いや、別にいいよ。自習プリントだから半分以上空欄で提出しても」

生徒c「織斑君ってまじめだよねー」

生徒d「いやいや、真面目なやつは30分も授業サボらないって。なぁ、織斑」

一夏「いやいや、俺、けっこう真面目だって」

---昼休み、2年2組

【理科・教室内を確認し、一夏の方へ近づく】

一夏「ん?」

理科「黒髪で中肉中背の優男風で人当たりが良さそうな感じのイケメンな人。この教室の中で聞いた特徴と一致するのは、あなたですね」

一夏「?」

生徒d「どうせ、俺らはフツメンだよ!!」

理科「あなたが織斑先輩ですか?」

一夏「え?ああ、俺が織斑だけど。あ、さっきの白衣の子か」

理科「はい。先ほどは理科を危ない所を助けていただきありがとうございました」

生徒e「え?何、このギャグゲ的展開は」

一夏「ほら、3時間目、俺遅れてきただろ?そん時の聞くも涙、語るも涙の時の子だよ」

理科「はい。先輩は命の恩人です」

生徒d「そんな凄いことしたのかよ!?」

一夏「どうなんだろ?えっと、…」

理科「私の名前は志熊理科(しぐまりか)です。こころざしに、くま、理科社会の理科で志熊理科。1年生です」

一夏「それで志熊さん、それじゃ、あのビーカーの薬品は相当危険なものだったのか?」

理科「別にそういうわけでは。即効性の睡眠薬みたいなもので、どちらかといえば安全性は高いものです」

一夏「だったら、命の恩人って程でもないんじゃないか?」

生徒e「というか、聞くも涙、語るも涙じゃないじゃん!!」

一夏「それは信用するなよ。ちょっとしたジョークだし」

理科「確かに命の危険はなかったかもしれませんが、他の危険はあったと思います」

一夏「他の危険?」

理科「織斑先輩が理科を保健室に運んでくれなかったら、理科はあの場でずっと眠り続けていたかもしれません。するとどういう事になるか?」

理科「そう、陵辱です」

理科「たまたま通りかかった飢えた野獣のような男が理科を発見し、理科が起きないのをいい事に理科の衣服を剥ぎ取り、滾る性欲のままに欲望をぶちまけていたでしょう」

一夏「」

生徒d「」

生徒e「」

理科「そして、男達は増え続け、理科の身体を玩具のように扱い、華奢な身体は男たちの欲望にまみれ、そして…」

一夏「ちょっと待て、一年生」

理科「なんでしょう」

一夏「妄想が飛躍しすぎだ。落ち着け」

理科「とにかく、恩人である織斑先輩に何かお礼が出来ないかと考え、ここまで来たんですが」

一夏「別にいいよ。助けたのもただの偶然なんだから。そんな気にする必要はないよ」

理科「そうですか。では、お礼だけでもさせていただけないでしょうか?」

一夏「まぁ、いいけど」

理科「では、間接的に貞操を救っていただいたので、等価交換の原則に当てはめ、理科の貞操を差し上げるのが妥当かと」

一夏「ぶほあっ!?」

生徒d「ちょ、なんだよ、ギャルゲじゃなくてエロゲかよ!!」

生徒e「くそっ、なんで俺はその時、そこにいなかったんだよ!?」

一夏「お前、何言ってるんだ!?大して好きでもない相手にそんな事言うのは間違ってるだろ」

理科「そんな事は今は関係ありません。とりあえず保健室に行きましょう。理科は初めてなので優しくしてくださいね」

一夏「冗談でもそういう事を言うのはよくないだろ。勘違いされるのは俺もお前も困るだろうし」

生徒d「ぐあああっ、憎い、織斑が憎すぎる!!」

生徒e「憎しみと嫉妬で人が殺せるなら、織斑は3回殺せてるはずなんだ!!」

一夏「まわりもちょっとおかしいし、今日は一旦帰ってくれ。また、今度話を聞くから」

理科「わかりました。そうまで言うならまた今度にしましょう。勝負パンツを穿いて来ます」

一夏「今度もいらないだろ。先輩をからかうのもほどほどにしてくれよ」

理科「全く相手にされていないと思うと、正直へこみますが、先輩の意思を尊重したいと思います」

一夏「じゃあ、また今度な」

【理科・教室内のざわめきを意に介さず退室】

一夏「しかし、かわった一年生だったな」

幸村「ですが、あにきならいつものようにあの女生徒の身体をいただいてしまってもよろしかったのでは?」

一夏「幸村!?おまえ、いつの間に!?あと、いつものようにってなんだ」

生徒d「殺してぇ、超殺して~~」

生徒e「織斑みたいな奴がいるから俺に彼女が出来ないんだよ、チックショーー!!」

幸村「わたくしが来たのは先ほどの女生徒があにきに話しかけた頃です」

一夏「ほぼ、最初じゃないか」

幸村「あにきの話の邪魔をしてはいけないと思いずっと控えておりました」

一夏「まぁ、お前が入ってくると余計にややこしくなりそうな気もするから、それはそれで正解だ」

幸村「では、あにき。一緒にお食事させていただいてよろしいでしょうか」

一夏「ん、ああ」

生徒d「そういや、俺、織斑が柏崎さんと話してるの見た事あるわ。それもソロで」

生徒e「織斑なんか親衛隊に殺されてしまえ」

一夏「物騒なこと言うなよ」

---理科室

理科「あの先輩は中々の好青年でしたが、理科的には何の興味を持てませんでした」

理科「体裁を気にして、何もしない、何も出来ない。よくいる人間の男のタイプの一つですね」

理科「まあ、数日もしないうちに忘れるでしょうが、覚えてる間に缶詰の詰め合わせでもあの先輩に持っていきましょう」

理科「……」

理科「そういえば織斑という名前を何か聞いた事があると思ったら、あのis世界大会の第1回優勝者織斑千冬の血縁者でしたか」

理科「織斑一夏に関する情報?」

理科「なんでしょう、これは何故あの先輩の情報にこれほど強力なセキュリティーロックがかかっているのか?」カタカタ

理科「ふむ。理科は少し興味が出てきました」カタカタ

理科「……これは?この情報は…」カタカタ

理科「篠ノ之束博士も関わっているのなら、どうやらこの情報は信憑性が高いですね」カタカタ

理科「男性で始めてisを動かした織斑一夏。本人の強い意向で世間には隠匿されている情報」

理科「フフッ。理科は織斑先輩にすごく興味が出てきました」

理科「理科は生まれて初めてです。哺乳類に興味を持ったのは」ニコッ

理科「織斑先輩を色々調べてみたいです」

理科「では、まずは織斑先輩の学園内での情報を収集するとしましょう」

---放課後、談話室4

一夏「それにちょっと変わった子だったよ」

星奈「ああ、その子ね」

一夏「星奈は知ってるのか、志熊理科の事を」

星奈「ええ。パパが授業を一切受けなくていいっていう条件で入学してもらった特待生ね」

一夏「授業を一切受けなくていいって、大丈夫なのか。そんなの」

星奈「なんか電子機器、プログラム、薬品関係ではかなり有名な子らしくて、小さい頃から『天才発明少女』とかで企業とかにも協力してるみたいよ」

一夏「なんか束さんみたいな奴なんだな、あいつって」

星奈「学園としては知名度アップを狙ってるから、その子と問題起こしたら、一夏は間違いなく退学ね」

一夏「なんか理不尽だな」

夜空「昼にそんな事があったのか。教室内がピリピリしてた理由がよくわかったよ」

幸村「男子の羨望の眼差しと女子の嫉妬の眼差しがあにきにずっと向けられておりましたゆえ」

一夏「お前は目がおかしい」

【理科・談話室4の扉を開けて、入室】

理科「失礼します」

夜空「…何の用だ?」

理科「あ、やっぱりいましたね。織斑一夏先輩」

一夏「お礼の件なら断るつもりなんだが」

理科「まぁ、それもあるのですが、今回こちらに来たのは一夏先輩が『隣人部』に所属していると聞いたので理科も入部しようと思いまして」

夜空「な…!?」

星奈「入部!?」

理科「入部届けも持ってきていますし、条件も満たしてると思います」

一夏「条件って…」

理科「ポスターを見ましたが、『ともだち募集』という文面から察すると、この『隣人部』は友達を作る部活ですよね」

理科「理科も友達はいませんからすぐにわかりました」

夜空「……!!」

一夏「また、あんなポスターの真意が汲み取れる人間がここに…!!」

一夏「なんか俺の常識が覆されていく感じがする…」

夜空「どうやら入部条件は満たしているようだな」

夜空「わかった、志熊理科。お前の入部を認めよう」

理科「きゃっほう!これで一夏先輩と放課後もずっと逢えますね。いっぱい色んな事をしましょう、そしていっぱいイチャイチャしましょう、一夏先輩」

一夏「イチャイチャはしないぞ」

理科「ついでにみなさんもよろしくお願いしますね。理科と一夏先輩の邪魔にならない程度に」

幸村「何故でしょう。なぜか胸がちくちくします」

夜空「くそっ、肉といい、こいつといい、何故あんなゴミみたいなポスターで…」ボソボソ

星奈「なんかムカつくわね。…なんで一夏にこんな懐いてんのよ…」

一夏「はぁ、あんまりくっつくなよ。お前、胸が当たってるんだぞ」

理科「当ててるので問題ないです。興奮しましたか?やりたくなってきましたか?」

一夏「くそっ、…なんでこんな事に…はぁ」

理科「あと、理科の事は理科と下の名前で呼んでください。ハニーや雌豚でも可ですが」

一夏「わかったよ、理科」

理科が隣人部に加入した翌日から理科は隣人部に大量の漫画を持ち込んできた。
漫画といっても普通に市販されている週刊誌や月刊誌、単行本などではなく、同人誌というやつだった。
世の中には色々なジャンルの同人誌が存在するが、理科の一押しはメカメカものというやつで、ロボットとロボットがイチャイチャするものだった。
正直ついていけなかった。理科の後ろで見ていた俺も星奈も幸村も。

そして、理科の趣向の半分くらいを占めてるのがbl同人誌。ボーイズラブというやつだ。
一夏×幸村とか、幸村×一夏とかそんな事を言いながら興奮している変態だった。
この時点で『天才発明少女』という面影は残っていない。
もう、高いレベルの変態だった。

挙句の果てには理科×一夏の同人誌が欲しいとか言い出した。俺は何を突っ込まれるんだ!?
夜空が理科を変態だと罵ったが、理科はちゃんと自覚しているせいで全くダメージを受けていない。
本当に末恐ろしい奴だ。

そして、マリアが図書館から漫画版の三国志を持ってきて、好きな武将トークになったり、どのイベントが好きかとか、そういうまともな話になった。

漫画三国志では他にもいくつか作品があって、それぞれ特徴があり、ピックアップされてる武将も違うので、機会があったら読んでみるように勧めたりした。

幸村は日本の歴史は詳しいがそれ以外の歴史はさっぱりで、三国志の話ではほぼ蚊帳の外だった。
夜空や星奈は知ってはいるものの、興味を示さず、適当な相槌を打つだけだった。
そして当然のように理科は武将のカップリングがどうとか言う話でただ一人盛り上がり、興奮する。

ちなみに図書室にない他の三国志漫画をおねだりに行ったマリアは礼拝堂内の反省室前で正座させられていた。
マリアの首には『お仕事をさぼりました。ごめんなさい』という手書きのプレートがかけられていたので、見なかった事にしてその日は帰った。
とりあえず済まなかった、マリア。

---織斑家

一夏「それにしてもマリアが三国志好きだったのは意外だったな」

小鳩「我は三国志は好かぬ。漢字が多く難しいゆえに」

一夏「マリアもおねだりに失敗したみたいだし、何か読んでも問題なさそうな漫画でも持ってってやるか」

小鳩「そんな瑣末な事を考える暇があるのなら、我らの供物についてもっとよく考えよ」ムスッ

千冬「そう言われれば、ここ最近は結構食事の種類のサイクルが短くなってる気がするな」

一夏「あー、そうかもな」

一夏「とりあえず色々と考えてみるよ、悪かったな小鳩」

事の発端は星奈だった。

隣人部はいつものように各々が好き勝手に趣味の時間を過ごしていたが、星奈が『ゲームの中に入れたらいいのに』とか、言い出した。
それはもう、色んな意味で駄目だろ。

それを聞いた理科が擬似世界なら入れると、持って来たのが『ロマンシング佐賀』というテスト版のゲームだった。

バーチャルシステムがどうのとか、色々専門用語で説明されたが、いまいち理解出来てないのでそこは割愛。

頭の上半分を覆うゴーグル付きヘルメットみたいなのをかぶってプレイするゲームだ。
見た目よりは軽くてそれほど頭も疲れない気がするが、小学生くらいとかだとまた感覚が違ってくるかもしれない。

『ロマンシング佐賀』をやったのだが、職業が多すぎて、意味のわからない職業も多数入ってた。
『魔法使い』を選んだ俺は『都市伝説の魔法使い』になってしまい、なんの魔法も使えない役立たずだった。
夜空の選んだ『薔薇少女』も意味がわからないが、それなりの高スペックキャラだった。
星奈は『鍛冶屋』、幸村は『侍』で、完全な前衛タイプ。
理科は『ガンナー』で後衛タイプだった。
戦えないのは俺だけかよ。

このゲームを作ったスタッフが悪ノリ好きだと理科は言ってたが、悪ノリというより頭がおかしいと、俺は言いたい。

佐賀県が舞台でヴァルハラ城って。いや、いいんだけど。

他にも突っ込みどころが満載なこのゲームにおいて、佐賀県ヴァルハラ城は突っ込みどころではない。

敵のグラフィックは良くできていたが、それもいただけなかった。
このゲームに限り。

ワラスボという実在の魚を擬人化したようなモンスターで、初見だと夢に出てきて悪夢に魘されるレベル。
リアルすぎて怖い。

俺は前に住んでた所でワラスボを食べる機会があり、まあそれなりに美味かったのを覚えてる。
食事に出したら小鳩は本気で嫌がったのも覚えてる。

そして、擬人化モンスターワラスボは攻撃手段を設定されていない上に体力だけは高く、テスト版としては最悪な出来だった。

ワラスボ兵士、ワラスボ騎士、ワラスボ魔道士とザコ敵が存在するが、当然全てがワラスボで攻撃してこないので体力に違いがあるだけという状態。

これをテスト版と言い張るスタッフは駄目だろう。こんなのがテスト版として通用するから、バグの多いゲームとか普通に売ってるんだろうな。

ちゃんとテストプレイやってるのか?5、6人くらいに20時間程度とか、ピンポイントで数箇所とかそんなテストプレイしかしてないんじゃないか?あの怪物狩人の最新作は。

話が逸れてしまった。すまない、取り乱した。

最後に出てきたワラスボ魔王は一応、攻撃手段が設定されていたが、難易度が高すぎてパーティーが全滅して終わってしまった。
まあ、夜空と星奈は仲間割れで死んでるんだけど。

こうして、幸村と理科を加えた隣人部第2回ゲーム大会は幕を閉じた。

このゲーム大会でも夜空と星奈はずっと喧嘩をしていた。本当に懲りないな、この二人は。

---翌日、昼休み、談話室4

一夏「部室に体操服を忘れるとは…」

一夏「ん?マリアじゃないか」

一夏「なにしてんだ、こんな所で」

マリア「ポテチを食っているのだ。見てわからんのか?」

一夏「見たらわかるよ。ゴロゴロしながらポテチ食ってるのは」

マリア「うん。ポテチは美味いからな」

マリア「それより織斑はどうしたのだ?授業でもサボりにきたのか?はははっ、やはり腐ったみかんか、お前は」

一夏「忘れ物を取りにきただけだよ」

一夏「それにしてもそんなにポテチばっか食べてたら、昼飯とか食えなくなるんじゃないか?」

マリア「昼飯もポテチだから問題ない」

一夏「それは駄目だろう」

一夏「というか、ひょっとしてマリアって毎日そんな食生活か?」

マリア「ごはんは不味いからポテチでいいのだ。ポテチは美味いんだぞ!!」

一夏「この学校、学食は結構美味しいと思うんだが…。あと、購買で普通の弁当やパンなんかもあるし」

マリア「シスターは買い食い禁止なのだ。礼拝堂の台所でつくる飯は不味いのだーっ」

一夏「まあ、なんとなく気持ちはわかるが、御飯を食べずにお菓子ばっかり食べるのは身体によくないだろ」

マリア「いいのだ!!色々役に立つ事をすれば夜空がポテチをくれるのだ!!ポテチがあれば私は生きていけるのだ!!ずっとずっとポテチでいいのだ!!」

一夏「夜空の奴、今度は餌付け作戦か。まあ、そのくらいなら全然いいんだけど…問題は量だな」

一夏「……。なあ、マリア」

マリア「なんなのだ?」

一夏「昼飯が美味かったら、ポテチじゃなくて昼飯を食べるか?」

マリア「んー、いいぞ。でも昼飯がポテチより美味いなんてまずありえんけどな!!」

一夏「そっか」

一夏「そういやマリアはいつもここにいるのか?」

マリア「ああ。ババアが仕事をしろと五月蝿いので大体はここに身を潜めている」

一夏「なるほど、わかった」

---翌朝、織斑家

小鳩「クククふぁぁぁ……生贄の血と悲鳴に彩られた香ばしい匂いがする…」

一夏「早いな、小鳩。もしかして起こしちゃったか?」

小鳩「ふぁあぁっ、…ククク、我が半身の覚醒に伴い、我も永きにわたる眠りから覚めてしまったようだ…ふあぁっ」

千冬「…昨日は飲みすぎた。頭が痛い。今日も仕事なのに…」

千冬「……ん、今日はえらく豪勢な朝飯だな」

小鳩「ふむ…今日の朝の供物は中々凝った趣向じゃないか…じゅるっ」

千冬「リンゴウサギ食べていいか?」

一夏「駄目です。ちなみにこれは全部朝食じゃないからな、弁当用だし」

千冬・小鳩「「お弁当!?」」

小鳩「ククク…どうしたのだ我があんちゃ…、半身よ。ようやく真祖たる我の偉大さを思い知り敬うようになったという事か…」

千冬「夢にまで見た一夏の愛妻弁当かぁ。今日はお昼が楽しみだなァ」

一夏「二人に喜んでもらえて何よりだ」

小鳩「あんちゃん…」////

千冬「一夏…」////

千冬「だが、どうして急に弁当を?いや、私は嬉しいんだがな」

一夏「昨日話したマリアって子がちゃんと飯食ってないみたいだからな」

一夏「美味い昼飯なら食うって言ってたし、前に千冬姉や小鳩も弁当食べたいって言ってたしさ」

小鳩「我への供物はそのマリアという奴のついでか…」

千冬「なんで私の弁当が他所の子の弁当の余りなんだ?」

一夏「ついでとかあまりじゃないって。ほら、ちゃんと一緒に作ってるだろ」

小鳩「あんちゃんのあほっ!!」

千冬「これだから一夏は…」

一夏(何で二人ともそんな不機嫌なんだよ。全く…)

---2時限目の昼休み、談話室4

一夏「お、ちゃんといたな」

マリア「お、どうした?織斑」

一夏「ポテチ食ってばっかりだったから、弁当を作ってきてやった」

マリア「弁当だと!?美味いのか!?」

一夏「まあ、美味いと思うぞ。栄養バランスをメインに考えてるから、少し味気ないかもしれないが、アスパラのベーコン巻きとかは少し濃い目の味付けにはしてるし」

マリア「な、中を見ても、いいですか?」

一夏「ああ」

一夏(なんで敬語に変わる?)

マリア「おおお~~~~~っ」

マリア「お、美味しそうだ。ハンバーグがはいっとるぞ!!たこさんウインナーも、リンゴのウサギさんも!!」

マリア「これは織斑が作ったのか?」

一夏「ああ」

マリア「織斑はこれを私にくれるというのか?」

一夏「ああ」

マリア「な、何が望みだ!?地位か?名誉か?」

一夏「いや、別にそういうのはいいから」

マリア「た、ただでくれるのですか?こんないいものを!!何の見返りもなく…お前はメシアか!?」

一夏「大げさ過ぎだ」

マリア「た、たこさん…」ゴクッ

マリア「え、えっと、たこさんを食べてもいいですか?」

一夏「まあ、少しくらいなら構わないけど、あくまで昼飯用だからな。それは」

マリア「うん!!」パク

マリア「美味しい!!」

マリア「もっと食べたいけど我慢するぞ。たこさんはあと三匹あるので、あと三日は持つ!!」

一夏「いや、今日中に食べてくれよな。明日の昼もまた持ってきてやるから」

マリア「本当か!?本当ですか!?織斑はいい奴なのだな」

一夏「褒めてくれてありがとな」

マリア「でも、織斑はなんでそんなに優しいのだ?」

一夏「うちは妹がいるからな。マリアを見てると小さい頃の妹を見てる感じなんだよ」

マリア「そうか。織斑はお兄ちゃんなのか。道理でお兄ちゃんっぽいなーと思ってたのだ」

一夏「お兄ちゃんぽいか?ま、いいんだけど」

一夏「それじゃあ、俺は教室に戻るからな。あと、ポテチはあんまり食べるなよ」

マリア「わかったのだ、お兄ちゃん!!」

一夏(お兄ちゃん?)

---放課後、談話室4付近

一夏「そういう事だからマリアにポテチあげすぎるなよ」

夜空「あ、ああ。わかってはいるが、あんなに嬉しそうに貰っていくんだからあげないわけにもいかんだろ」

一夏「たまにならいいけど、昨日、昼見た時は4袋くらい開いてたんだぞ。いくらなんでも身体に良くなさ過ぎる」

夜空「す、すまん。気をつける」

理科「理科はあんまりジャンクフードは食べたことないんですが、なんで駄目なんですか?」

一夏「味が濃すぎるんだよ。栄養バランスが悪いのはともかく、味が濃いせいで薄味な食べ物のうまみがわからなくなるっていうか、味覚が麻痺してくるんだ」

一夏「だから、適度ならいいんだが、マリアのあれはどう見ても食べすぎだ」

理科「ふふっ、なんか家族を心配する心配性のお父さんみたいですね、一夏先輩は」

一夏「お父さん?そんな風に見えるか?」

理科「はい。なので、私がお母さん役で新婚夫婦ごっこをしましょう。まずは夜の営みから…」

一夏「やらないって」

理科「一夏先輩の意地悪。そんなサディスティックな意地悪もドmの私にはちょっとしたご褒美です」

夜空「……」

星奈「あら、あんたたち」タタタタッ

一夏「ああ、星奈」

夜空「肉か」

理科「じゃあ、星奈先輩に一夏先輩の愛人をやってもらいますか?」

星奈「愛人!?一夏の!?」

一夏「星奈、気にしなくていい。理科のいつもの妄想だから」

星奈「あ、ああ、そう、いつものね…うん、わかったわ」

【一夏&夜空&星奈&理科・談話室4に入室】

幸村「お勤めご苦労様です、あにき」

一夏「ん、ああ」

幸村「あにき。あにきにお客がおみえになっております」

一夏「客?」

一夏(いきなり脈絡もなく来る奴にはいやな予感しかしないんだが)

幸村「無礼にもあにきのあるじなどと申しております。斬りますか?」

一夏「いや、斬るなよ」

夜空「一夏の主?」

星奈「なに、バイトでもしてるのあんた」

理科「主から体罰を受けて喘ぐ一夏先輩というのもありだと思います」

一夏「それはない」

小鳩「ククク…待っていたぞ、我がしもべよ」

一夏「小鳩!?」

一夏「なんでお前がここに!?」

小鳩「ククク…別に中等部の人間が高等部に来てはいけないという規則はないゆえ、……もっともヒトの定めし規則など我にとって何の意味も持たぬがな」

一夏「まぁ、問題はないけど、なんで部室に来てるんだよ」

星奈「ねぇ、一夏。何、このアイリスそっくりの可愛い子は。一夏の知り合い?」

一夏「アイリスって誰だよ」

星奈「『真紅の精霊使い』のアイリスに決まってるじゃない!!」

一夏「そんなこと言われても」

小鳩「…『真紅の精霊使い』じゃと…!?あんな『鉄の死霊術師』のパクリアニメのキャラと一緒にされるとは屈辱の極み」

小鳩「我が名はレイシス・ヴィ・フェリシティ・煌…一万年の時を生きる夜の血族。この名を魂に刻み込むといい…」

星奈「やだ、この子イタ!!『僕姉』の闇猫ちゃんみたいにイタ可愛い!!」

小鳩「…ふ、ふん…所詮俗人の瞳では我の本質を見抜くことはできんか…」

夜空「で、一夏。結局、コレはなんなのだ?」

一夏「ああ、俺の妹の織斑小鳩だ」

星奈「あんたの妹!?髪の色も瞳の色も全然違うじゃない!!」

一夏「お前、先週の日曜日に会ってんだろ。なんで忘れてるんだよ」

星奈「へ?…会ったっけ?」

一夏「千冬姉と一緒にいただろ、小鳩が」

星奈「ふあっ、思い出した!!あの時は水着で髪が黒かったし、あんまり印象になかったけど、確かにいたわ!!」

一夏「だろ?」

星奈「そっかぁ。本当は金髪だったのねぇ。ゴスロリも似合ってるし、もう、可愛いわ~」

理科「という事は本当に一夏先輩の妹さんなんですか!?織斑家の遺伝子はどうなってるんですか!?」

一夏「うちは父さんが日本人で、母さんが外国の人でさ。俺と姉さんは父さんの遺伝子を色濃く受け継いだけど、小鳩は逆に母さんの遺伝子を色濃く受け継いだんだよ」

理科「理科は色々調べたいのでこの子を持ち帰ってもいいですか!?あ、先輩でもいいですよ。一番いいのは両方なんですが」

一夏「とりあえず駄目だと言っておこう」

夜空「一夏!!」

一夏「うおっ、どうした?急に大声を上げて」

夜空「ど、どういう事なんだ?なんで、お前の妹と肉が会ってるんだ?」

一夏「ああ。それは先週の日曜日に」

星奈「ちょっと待ちなさい、あんたぁっ!!」

一夏「星奈もどうしたんだ?大声上げて」

星奈「プールに行ったのは内緒の話でしょ!!」ボソボソ

一夏(そういえばそうだったか。だが、それを隠して、星奈が小鳩に会った話をするのはかなり無理があるんだが…ええっと…)

一夏「あー…、日曜日に俺と小鳩、あと姉さんで竜宮ランドに遊びに行ったら、偶然星奈と出会って…話したっていうか」

星奈「そう!!私は別の用事で竜宮ランドに行ってて…うん、偶然ね」

夜空「……」

夜空「そうか」

一夏(なんとか、誤魔化せたのか?)

夜空「……」

一夏「それで、小鳩は結局何しに来たんだ?」

夜空「ん?」

小鳩(違う)

星奈「小鳩ちゅわ~ん」

小鳩(違う違う)

幸村「?」

小鳩(こいつやない)

理科「はぁはぁ」

小鳩(!?…こいつでもない)

小鳩「…いない…」

一夏「どうした?」

一夏「…なんでもない。…我が眷属である貴様が、最近我への奉仕を疎かにしてくだらぬ人間共と戯れているゆえに、一度警告しに来たのだ」

理科「なるほど。一夏先輩が自分よりも部活を優先しているのが気になって、様子を見に来たという事ですね」

小鳩「ちゃ、ちゃうもん!!」

小鳩「ハッ!?……ま、まったく…下等な生物はすぐに俗な言葉で事象を語りたがる。…貴様らに我が深遠なる胸の内などは理解出来ようもないか…」

星奈「やだ、この子、ブラコンってやつ?『もふ?モフ!』の立夏ちゃんみたいに可愛い」ハァハァ

夜空「なんでもエロゲーのキャラに例えるな、気持ち悪い」

星奈「馬鹿ね、夜空。『もふ?モフ!』はpsの全年齢向けギャルゲーよ!!」フフン

夜空「…だからどうした?」イラッ

一夏「帰りが遅くなるのは悪いと思ってるよ。だから、その分、夜飯とかのクオリティが上がるように頑張るし、弁当だって毎日作るからさ」

小鳩「弁当…」ムスッ

一夏「どうした?」

【マリア・談話室4の扉を思い切り開け、入ってくる】

マリア「お兄ちゃん!!」ダキッ

小鳩「…!!」

一夏「ああ、マリア」

マリア「お兄ちゃんの作ってくれたお弁当超美味しかったのだ」

一夏「よかったな。俺も作った甲斐があったよ」

星奈「ね、ねえ、一夏。ちょっとどういう事よ?」

一夏「どういう事って?ああ、弁当の事か?」

一夏「マリアがポテチばっか食ってて昼飯とか食わないみたいだから、作ってきただけだが?」

星奈「違うわよ。そ、そうじゃなくて、…お兄ちゃんって…」

理科「ふむ。幼女にお兄ちゃんと呼ばせているなんて、一夏先輩は妹萌えの人でしたか。じゃあ、理科もお兄ちゃんと呼びましょうか?」

一夏「実の妹の前で何を言い出してるんだ、お前は。それに俺が呼ばせてるわけじゃないから」

マリア「お兄ちゃんは実はお兄ちゃんなのでワタシもお兄ちゃんと呼ぶのだ!!」

夜空「意味がわからん」

小鳩「あほーーーーーーっ!!」

マリア「!?」ビクッ

小鳩「あほー!あほー!あほー!あほあほあほあほあほあほーーーーっ!!」

マリア「アホとはなんだ!アホって言う方がアホなんだぞ!!」

夜空「じゃあ、うんこを連呼しているマリアはさしずめうんこマリアか?」

マリア「ち、違うのだ、夜空。て、天使、天使夜空だ!!だから、私は天使マリアなのだ」

小鳩「うるさい、あほー!!」

マリア「な、なんなのだ、お前は」ムッ

一夏「ああ、こいつは小鳩。俺の妹だ」

マリア「そうか!お前がお兄ちゃんの妹なのか!」

小鳩「う~~~っまたお兄ちゃんってゆった~~っ」

小鳩「……」

小鳩「…わ、我は…妹などではない…」

マリア「妹じゃないのか!?」

一夏「いや、妹だけどな」

マリア「妹だって言ってるぞ!?」

小鳩「我は一万年の時を生きる偉大なる夜の血族…。貴様ら教会の犬どもと長きに渡り争いを続けてきた、人間どもには吸血鬼として恐れられてきた存在だ…」

マリア「吸血鬼!?」

マリア「吸血鬼って知ってるぞ!!あの、怖い奴だ!!」

小鳩「ククク…その通り。忌まわしき教会の手先め……我に恐怖せよ」

マリア「き、吸血鬼など怖くないのだ!!ワタシにはコレがあるのだ!!」

【マリア・銀の十字架を握り、小鳩に見せる】

マリア「私は賢いから知っているのだ!!吸血鬼は十字架に弱い事を!!神の神聖なパワーでくたばれクソが!!」

小鳩「ククク…我は並の吸血鬼のはるかに超えし力を持つ真祖。十字架などとっくの昔に克服したわ…」

【小鳩・悪そうな笑みを浮かべながらマリアに近づく】

マリア「え!?そんなのズルい!!てやっ!てやっ!てやっ!!」アセアセ

【マリア・握った十字架を滅茶苦茶に振るう】ガッ

小鳩「…いっ!!」

一夏「大丈夫か!?小鳩!!」

【一夏・小鳩とマリアの間に割って入る】

小鳩「く、……ククク…問題ない…効かないといっておろう…」

一夏「あー、少し痣になったか」

マリア「お兄ちゃん、どくのだ!!吸血鬼をぶっ殺すのだ!!」

一夏「なあ、マリア。ちょっと待て」

マリア「なんなのだ?」

一夏「とりあえずお前はシスターだから暴力は良くないぞ」

マリア「だけど、お兄ちゃん!!吸血鬼は敵なのだ!!」

一夏「でも、マリアだって殴られたら痛いのはわかるだろ?」

夜空「うっ…」

マリア「でも…」

一夏「俺の妹だって殴られたら痛いわけだし、知ってる奴同士の殴り合いなんて俺は見たくないんだよ」

マリア「わ、わかったのだ」

一夏「小鳩もマリアのこと許してやってくれよ。ほら、お前の方がお姉さんなんだから」

小鳩「お姉さん…フ、フン、小娘相手に少々大人気なかったか」

夜空「お姉さん?どう見てもマリアと同じくらいにしか見えないが?」

理科「え?小学生じゃないんですか?」

マリア「うちは中学二年生じゃ!!」

星奈「そうなんですか。あたしはてっきり小学5年生くらいかと…」

マリア「ち、中学生か。ワタシよりちょっぴりお姉さんだな…だが、精神的にはワタシの方が大人だ!!大人の知識もいっぱい知っているぞ!!」

星奈「大人の知識って?」

マリア「せっくすっ!!」ニコッ

一夏「ま、マリア!?」

マリア「他のシスター達が話しているのを聞いたのだ!!せっくすを知っているのが大人なのだと!!」

星奈「あ、あんた、それ意味知ってんの!?」

マリア「もちろん知ってるぞ!お布団の中でするのだろう?」

星奈「別に布団の中とは限らないけど…ってそれはどうでもいいんだけど…」

小鳩「そそそ、それくらい、わ、我だって知っておるわ。…ど、どうせ、知っておるだけで経験はないのだろう?」

一夏(マリアに経験があったら色んな意味で問題だらけだぞ、小鳩)

マリア「むっ、たしかに実際にやった事はないけど、別にせっくすくらいいつでもやってやるのだ!」

一夏「問題発言だぞ、マリア」

マリア「お兄ちゃんとならいますぐやってもいいのだ!」

一夏「さらなる問題発言だ」

夜空「だ、駄目に決まってるだろう!!」

一夏「当たり前だ!!わかってる!!」

星奈「ちょ、一夏、あんた、見損なったわよ!!」

一夏「なんで俺が責められるんだ!?」

幸村「あにき…」

一夏「縋るような目で見ないでくれ」

理科「さすがの理科もその歳でそこまでのチャレンジ精神はないですね」

一夏「感心するな!!」

小鳩「あんたなんかにあんちゃんはわたさへん!!そんなんやったらうちが…」

一夏「待つんだ!!小鳩!!それ以上の発言は俺を社会的に抹殺する効力がある!!」

マリア「ふふん。せっくすとは好きな男と一緒に布団に入って天井の染みを数えればいいのだろう?」

マリア「お兄ちゃんと一緒ならせっくすはいつでもオーケーなのだ!」

理科「ああ、なんだ。そういう事ですか」

理科「マリアさん、ちょっと」

マリア「ん?」

【理科・マリアにセックスの説明中】

マリア「おちんちんとはなんだ!?」

一夏(どんな説明をしてるんだ?)

【理科・引き続きマリアにセックスの説明中】

マリア「うっそだーっ。お兄ちゃんにそんなの生えてるわけないし」

理科「嘘じゃないです。なんなら見ますか?」

理科「一夏先輩。マリアさんのためにぜひおちんちんを見せてあげてください。ここで」

一夏「見せるか!!」

理科「残念です」

理科「では理科のノートパソコンで…」

【理科・さらに引き続きマリアにセックスの説明中】

マリア「ひいいいいっ!!せっくす、怖い~っ」

夜空「……」////

星奈「……」////

幸村「……」ポー

小鳩「……」////

一夏「そこまできっちり教え込まなくても」

理科「なんなら一夏先輩にも教えましょうか?手取り、足取り、アレ取り」

一夏「丁重に辞退させてもらう」

理科「またまた残念です」

マリア「お兄ちゃん、こわいよ~」

一夏「まあ、…忘れろ」ナデナデ

小鳩「…また人のあんちゃ、…眷属にそんな馴れ馴れしく…」

一夏「まあ、小鳩の方がお姉さんなんだから大目に見てやってくれ。な?」ナデナデ

小鳩「…お姉さん……」

小鳩「ふん。小娘相手に我も大人気なかったわ。……興が冷めた。…今宵の所は退散するとしよう」

---織斑家

小鳩「あんちゃん!」ギュッ

一夏「どうした、小鳩?」

小鳩「あんちゃんはうちのあんちゃんなんじゃ…」ギューッ

小鳩「あんちゃん、頭を撫でてほしい」

一夏「ああ、こうか?」ナデナデ

千冬「小鳩は甘え中か。じゃあ、私も甘えて、一夏ニウムでも補充するかな」

小鳩「ねえちゃんは駄目じゃ!!」ギュュ

千冬「なんで!?」

小鳩「ねえちゃんは年上やから小鳩より姉ちゃんやから我慢すればええ」ギューッ

千冬「ちょ、意味がわからん」

一夏「ああ、…そういう事か」ナデナデ

一夏「えーっと、千冬姉の方がお姉さんなんだから大目に見てやってくれ」ナデナデ

千冬「そんな、酷いぞ、一夏。私だって甘えたいのだ」

一夏「また、今度な」

千冬「ぅぅぅっ、もういい。今日は寝る」

一夏「そうだな。今日はもう遅い、小鳩も早く寝ような」ナデナデ

小鳩「ん」

---翌日、放課後、談話室4

小鳩「ククク…待っていたぞ、我が半身よ」

一夏「今日はどうしたんだ、小鳩」

小鳩「ククク…我が血を分けし半身が神の手先に毒されぬよう、我が直々に監視してやろうと思ったのだ。そこで戯れとして、我も部活に入部してやろうと思ったのだ…」

一夏「入部するって、お前、中等部じゃないか」

星奈「中等部の生徒は入部してはいけませんって規定はなかったわよ。大会とかに出るわけでもないし」

星奈「小鳩ちゃんの入部は私個人的には大賛成だしね」

一夏「そうは言っても中等部の生徒は中等部の部活に、高等部の生徒は高等部の部活に入るのが普通だろう」

小鳩「あんちゃんはうちがいると迷惑なんか」グス

一夏「いや、そういうわけじゃなくてな、普通に考えてだな…」

夜空「いいではないか、一夏」

夜空「隣人部は中等部にはないのだ。普通では入る事が出来ない部活なのだからな」

一夏「…まあ、それはそうなんだが」

夜空「放課後にすぐに高等部の敷地に来れるという事は友達もいないのだろう」

小鳩「ククク…夜の闇だけが我が唯一の友だ」

一夏(小鳩は日本人離れした外見で厨二病だからな。友達、やっぱりいないのかなぁ)

星奈「可愛いなぁ。小鳩ちゅあん」

夜空「本気で気持ち悪いな、星奈は」

【マリア・談話室4の扉を豪快に開け、一夏に飛びつく】

マリア「お兄ちゃん!!」

小鳩「むっ」

マリア「あのな、あのな、今日のお弁当も超美味かったぞ!!特にあの甘くて辛いお肉の、骨付きの奴!!」

一夏「ああ、手羽先か」

マリア「あれは手羽先っていうのか!!あの手羽先超美味しかったです!!また、食べたいです!!」

一夏「ああ、またそのうちお弁当に入れてやるよ」

マリア「ひゃっほー!!お兄ちゃん大好き!!」

小鳩「あほーっ!!」

マリア「おわっ!?なんでまた吸血鬼がここにおるんじゃ!?」

小鳩「我が眷属が貴様に誑かされぬよう見張るためだ…」

マリア「なにをーっ!お兄ちゃんはワタシと神の道を進むのだ!!お兄ちゃんは正しい心を持ってる神の使途なのだ!!」

小鳩「ククク…我と同じ血が流れているのだ。我が眷属にとっても神は敵で、我と共に闇の世界を生きるのだ…」

マリア「お兄ちゃんはそんなことはないのだ!!」ギャーギャー

小鳩「あんちゃんは神なんか信じとらんわ!!」ギャーギャー

一夏「全く…」

星奈「で、一夏は神の使途と吸血鬼、どっちにするの?」

一夏「どっちもしないよ」

---数日後、放課後、談話室4

一夏「えっと、みんないいかな?」

夜空「どうした、一夏?そんなにあらたまって」

【夜空・本に栞をはさみ、一夏の方に向き直る】

星奈「ゲームの途中なんだけど」

【星奈・ゲームのコントローラーを置いて、一夏の方に振り向く】

幸村「なんでしょう、あにき?」

【幸村・一夏の左隣に座る幸村は首を傾げて、一夏の顔を見上げる】

理科「告白ですか?相手は理科ですか?理科はバッチ来いですよ」

【理科・同人誌を机の上に置いて、爛々と瞳を輝かせ、一夏を見る】

小鳩「ククク…どうしたのだ、我が眷属よ」

【小鳩・読んでいた漫画を開いていたページの所で机の上に伏せる】

一夏「えっと、とりあえず隣人部なんだから、それらしい活動をしないか?」

夜空「してるじゃないか」

一夏「各々が好き勝手に自由時間を過ごしてるようにしか見えないんだけどな…」

星奈「じゃあ、一夏は何かアイディアがあるの?隣人部の活動っぽいアイディアが」

一夏「うーん」

一夏「じゃあさ、ファミレスでも行くか?」

夜空「ファミレス?」

幸村「わたしはふぁみれすには行った事ありません」

理科「私もないですねぇ。ああいう所に一人で入る勇気はないので」

一夏「俺や小鳩も行った事ないけどな」

小鳩「……」コクッ

星奈「私も行った事ないわね。あんなのギャハハって笑ってる馬鹿女たちが行くような場所だし」

一夏「でも、最近はバーガーショップ並みに友達同士で気軽に行ける場所って感じだけどな。俺の友達も結構行ってるみたいだし」

理科「そうなんですか。じゃあ、行ってみるのもいいかもしれませんね」

一夏「そういえば夜空はファミレスとかは行くのか?」

夜空「…たまにな」

一夏「誰と?」

夜空「…トモちゃんとだ」

一夏「一人でかよ」

夜空「トモちゃんとだ!!」

一夏「あ、ああ、そうか…」

星奈「でも、ファミレスなんか行ってどうすんの?」

一夏「そうだな。友達同士でするような他愛のない会話をするんだよ。日常の事や昨日の事、面白かった事やビックリした事とか」

星奈「ふぅん。まあ、いいわ。すぐにセーブできるし、ファミレスに行っても」

夜空「まあ、一夏がどうしてもと言うなら一緒に行ってやろう」

一夏「どうしてもだ。夜空を一人で残す理由は無いし、俺としては一緒に来てほしいな」

夜空「あ、ああ、一緒に行くぞ」

一夏「そういえば俺はこの辺りの情報は詳しくないんだが、ファミレスって近くにあるのか?」

夜空「計画性のない奴だな、一夏は」

一夏「正直、それはすまん」

幸村「そういえば最寄駅の近くにふぁみれすがあったのを覚えています」

一夏「ああ、そう言われれば確かあったよな」

理科「では、そこに行きましょうか?」

一夏「ああ」

---ファミレス

店員「いらっしゃいませー、何名様でしょうかー?」

一夏「6名で」

店員(こいつ、女5人も連れてどんだけリア充なんだよ!!)※

店員「かしこまりました。では、こちら奥のテーブル席へどうぞー」

夜空「う、うむ」

星奈「ファミレスってこんな感じなんだ。ふーん」

幸村「意外に天井が高いですね」

理科「テーブルは6人掛けの横長のテーブルですね。席決めで揉めそうな感じもしますが」

小鳩「ククク…我が眷属は常に我の隣に座るのだ」

店員「では、ご注文が決まりましたら、こちらのボタンでお呼び下さい」

一夏「わかりました」


※幸村は制服を着ていてもデフォで女性に見えるため

一夏「とりあえず適当に座って…」

夜空「駄目だ。一夏は奥の椅子の真ん中に座れ」

一夏「え?、ああ…」

小鳩「ククク…ならば我が半身の右隣は我が座ろう」

夜空「ま、まあ、妹だから仕方ないな。そして、一夏の左隣には私が…」

理科「夜空先輩。私も一夏先輩の隣がいいんですけど」

星奈「わたしは小鳩ちゃんの隣がいいから、一夏、奥につめてよ」

小鳩「や!」

星奈「あぁん!!可愛いは小鳩ちゃん!!その拒絶の仕草も可愛すぎるぅぅっ!!」ハァハァ

夜空「気持ち悪いな、肉」

一夏「ああ。今の星奈は俺から見ても気持ち悪い」

席決め

【小鳩】【一夏】【理科】
【   テーブル   】
【幸村】【夜空】【星奈】


一夏「なんで席を決めるのにもこんなに時間が掛かるんだか」

夜空「うるさい。私だって肉の隣は嫌なのだ」

幸村「あにき…」

星奈「小鳩ちゃん…」トオイヨー

小鳩「ぅぅっ…」

一夏「じゃあ、注文するけどいいか?」

星奈「はぁ!?まだ、何を頼むかとか決めてないんだけど」

夜空「確かにまだ私もメニューには目を通していないぞ、一夏」

一夏「いや、普通にドリンクバー6個頼むだけだから」

星奈「ドリンク…バー?」

一夏「ああ、ジュースや珈琲飲み放題のシステムな」

一夏「友達同士でファミレスにきたら、これと、あとはポテトやから揚げくらいだろ?」

夜空「そんな事聞かれても、こんなにたくさんの人間と来た事ないから、私は…」

一夏「そうだったな」

一夏(トモちゃんと二人だったら、ポテトとかから揚げは頼まないよな。多分)

理科「じゃあ、その辺りは一夏先輩にお任せします」

【一夏・ドリンクバーを6個注文】
【店員・グラスを6個持ってくる】

一夏「じゃあ、行くか」

星奈「え?立ち上がってどこに行くの」

一夏「いや、グラス用意されたし、ドリンク入れに行くんだけど」

星奈「あ、ああ、そうなのね。うん、わかってたわよ」

【各自・ドリンクを注いで自分の席へ】

夜空「で、何の話をすればいいのだ?」

一夏「じゃあ、昨日見たテレビの事でも話してみるか?」

小鳩「ククク…我はそのような俗物的なものは見ない」

一夏「昨日はずっとゲームやってただろ、小鳩は」

一夏「まぁ、そのせいで俺もテレビ番組は見てないんだが」

星奈「私もテレビは見てないわ。ゲームやってたし」

夜空「昨日はずっと読書していた。第一テレビなんか10割やらせで見る価値もない」

一夏「いや、さすがに10割やらせはないから」

幸村「わたくしはずっとあにきの事を考えておりました」

理科「理科も昨日は同人誌をずっと読んでいましたね」

理科「深夜アニメは取り貯めておいて、一気に見るのでまだ見てませんね」

一夏「というか、誰もテレビ見てないのかよ」

一夏「じゃあ、今日の出来事で面白かった事でも話すか」

一夏「今日の休憩時間中に生徒dが派手にこけたんだけど、足元に誰かの捨てたバナナの皮があって、コントかよ!とか思ってさ」

一夏「教室で見てた奴は大爆笑だったぞ。なぁ、夜空?」

夜空「休憩時間はずっと寝ていたからな。五月蝿いと思っていたがそれはそういう事だったのか」

一夏「…う。そういやいつも寝てるな、夜空は」

星奈「休憩時間中ずっと寝てるって、いくら友達いないからって情けないわね」

夜空「貴様には関係ない。肉め、が」

理科「そういう星奈先輩は何をしているんですか?」

星奈「別に?」

星奈「下僕に団扇で扇がせたり、何か買ってこさせたりしてるくらいかしら?」

星奈「前は下僕の色んな話とか聞いてたけど、最近は話を聞いても面白くないから、黙らせてるわ」

理科「凄いですね。人に命令できる事を当たり前としている星奈先輩マジ凄いです」

夜空「ケッ。金持ちのいけ好かない女め」

星奈「あの下僕は私が金持ちだからの下僕じゃないの。私がパーフェクトに美しいから下僕なの」

一夏「でも、それだと女の友達が出来ても近寄りづらくないか?」

星奈「え?なんで」

一夏「いや、前、星奈が登校してきた時に10人くらいの男友達に囲まれてるのを見た時は俺、話しかけるの躊躇したし」

星奈「周りに配置する下僕の数を減らした方がいいって事?」

一夏「そうじゃなくて、星奈の言う下僕ってのは女性から見て、あんまりいいものじゃないと、思うぞ」

星奈「そんなものなの?」

一夏「多分な」

一夏「で、幸村や理科は何か面白い事あったか?」

幸村「わたくしはあにきの事をずっと考えておりましたゆえ」

理科「理科は授業に出てないんで、休み時間とかの概念がないんですよ」

一夏「…そ、そうか」

一夏「こ、小鳩はどうだ?」

小鳩「ククク…我に俗人どもと戯れる趣味はない」

一夏「……」

一夏「じゃ、じゃあ、みんな休日なんかはどう過ごしてるんだ?」

夜空「家で本を読んでる」

星奈「家でゲームをやってるわ」

幸村「家であにきのことを考えております」

理科「家で何かを作ったり、同人誌を読んだりしてますね」

小鳩「ククク…きたるべき時に備えて魔力を充電していたり、闇の中で深き眠りについておるわ」

一夏「……」

一夏(…酷いな)

一夏「みんな外に出かけたりしないのか?」

夜空「出なくても生きていけるしな」

星奈「出ても別にすることないし」

幸村「あにきが出ろと仰るのでしたら出ますが」

理科「特に外出する必要性を感じていませんが」

小鳩「ククク…太陽の光は我から力を奪い取る。…今は活動の時ではない…」

一夏「……」

一夏(…やっぱり酷いな)

一夏「なんていうか会話が続かないな」

夜空「一夏の話題のチョイスが悪いせいだ」

一夏「俺のせい?」

夜空「そうだ。だから、今回は私が案を出してやろう」

夜空「とりあえず、みんなで肉の悪い所を言い合おう。一日では言い尽くせないかもしれないが」

星奈「なんでよ!!そもそもあたしに悪いところなんて、一つもないんだから!!」

夜空「いい所の方が少ない、いや、全くないか」

理科「全くないなら全部悪いでいいんじゃないですか?」

夜空「おお!さすがだな、理科。確かにその通りだ」

星奈「ねえ、一夏!!あたしは悪い所なんてないわよね!!」

一夏「え?あ、いや、その…」

星奈「なんで口ごもるのよ!!バカ!!」

一夏「あっ、と、…勉強が出来る!!いい事だぞ」

星奈「それだけ!?」ガビーン

一夏「それにモデルみたいなスタイルで凄い可愛いじゃないか」

星奈「はぅ」////

夜空「…あ?」イラッ

理科「…チッ」イラッ

小鳩「あんちゃん…」ムスッ

幸村「……」ムッ

星奈「ま、まあ、他にも色々いい所あるけど今回は大目に見てあげるわよ」ニヘラッ

一夏「え?」

理科「じゃ、じゃあ、一夏先輩!!理科のいい所を言ってください!!」

夜空(そうきたか!!)

一夏「理科のいい所か。まあ、凄い発明品とか作れるくらいだから相当賢いのはわかる」

理科「他には!?」

一夏「少し素朴な感じだけど普通に美少女だよな、理科って」

夜空・幸村・小鳩「「「!!」」」

理科「そ、それは理科を性的な目で見てくれていると解釈していいんでしょうか!?一夏先輩!!」ニマニマ

一夏「性的な目では見てないからな」

理科「まあ、見てたとしても言えないでしょうから、理科の中の一夏先輩はすでに全裸で腰を振って理科を襲ってます」

一夏「それは、やめてください」

理科「じゃあ、理科を幸村君にチェンジしてやおい穴にぶち込みましょう」

幸村「あにきが望まれるのなら、わたくしは何をされても構いません」

理科「ユニヴァーーーースッ!!!」

一夏「叫ぶな。そして、想像しないでくれ」

小鳩「ククク…俗人どもでそこまで褒めるのであれば、半身たるこの我の事も当然理解しているのだろう?」

一夏「これって、みんなのいい所を上げていかないと駄目な流れになってるのか?」

小鳩「あんちゃん!!うちの事もたくさん言うんじゃ」

一夏「小鳩のいい所か……」

一夏「……」

小鳩「ふぇ?…な、なんで黙るんじゃ?」

夜空「…一夏」

星奈「ちょっと、一夏!!」

理科「…あにき」

理科「…一夏先輩。小鳩さんが可哀想ですよ」

小鳩「あんちゃん、うちええとこないんか?」ウルウル

一夏「い、いや、そんな事は無いぞ!!思いやりはあるし、頑張り屋だし」

一夏「それに兄の俺から見ても、凄く可愛いと思うぞ」

小鳩「ホンマか!!」パァッ

夜空「シスコンだな」

星奈「ロリコンね」

幸村「…さすがはあにき。いもうとぎみであろうと容赦なく戴いてしまうのですね」

理科「一夏先輩の変態度も理科と似たようなものでしたか」

一夏「え?なに、このトラップ」

夜空「じゃあ次は…」

理科「理科としては一夏先輩の幸村君への評価も気になるところですが、実際はどうでしょう?」

夜空「……」ムッ

一夏「幸村は思い込みは激しいけど、素直で真面目で気配り上手だよな」

幸村「あにき…」ポッ

一夏「幸村なら本当の弟でもよかったと思うな」

理科「あの、理科が聞きたいのはそういう事ではなくて」

一夏「どういう事だ?」

理科「幸村君を可愛いかって思ってるのかなって?」

一夏「そりゃ、かわいいこ…」

理科「うっしゃーーーーーっ!!bl来た、これ!!一夏先輩×幸村君?幸村君×一夏先輩?あ~~興奮してきた」

理科「あ…鼻血が…」

幸村「あにきにならこの身を捧げてもかまいません。不束者ですがどうぞよろしくお願いします」

理科「はぁはぁはぁはぁ、漲ってきた!!」

理科「ちなみに今、理科の中では一夏先輩は幸村君は覆いかぶさり、絡み合ってます。当然、二人とも全裸でエントリープラグ擦りあってます」

一夏「やめてくれ」

一夏「幸村はかわいい後輩だからな。女の子みたいに可愛いと言ったわけじゃないからな!!」

理科「では、幸村君の顔は可愛くないと?理科から見ても中々の美少女に見えますよ」

理科「まあ、男の子ですけど」

一夏「そりゃ、顔は可愛らしく見えるけど」

夜空「ホモが…」イラッ

星奈「キモっ」イラッ

幸村「…あにき」ポッ

小鳩「あんちゃんはこれ以上兄弟増やしたらあかんのじゃ、バカタレェ」ムスッ

理科「うひひひっ」ニヤニヤ

一夏「どんどん酷くなってくな。これ以上は俺の心に傷を負いかねない」

一夏「もう、誰かのいい所言うのは無しだからな!!」

夜空(わ、私の分は!?)

星奈「でも、まあ、確かにファミレスでこうやって話すのは楽しいかもね」

一夏「最終的に俺一人がボロボロになっただけだけどな」

理科「そうですね。なんとなくリア充っぽい感じはしました」

小鳩「あんちゃんも楽しかったか?」

一夏「…まー、そうだな。いじられまくったけど、こうやって普段と少し違うことをするのは楽しいかもな」

星奈「じゃあ、日も沈んだし、帰ろっか」

夜空「…ああ」

夜空(一夏は…私の事をどう思ってるんだろう)

一夏「それじゃあ、また明日な」

---数日後、放課後、談話室4

一夏「カラオケ?」

【ゲーム画面・マイクを持って歌う少女】

星奈「うん。あんたたち、カラオケに行ったことある?」

一夏(また、ゲームキャラでの思いつきか)

一夏「俺はあんまり行った事ないな」

夜空「私は結構行った事あるぞ」

一夏「夜空が?あんまりカラオケに行きそうなイメージはないのにな」

夜空「人が多いところは苦手だが、カラオケルームは入る人数が限られているしな。それほど苦痛ではない」

一夏「それにしても凄いな。ヒトカラなんて」

夜空「おい、一夏。何故、一人だと決め付ける」

一夏「違うのか?じゃあ、家族とか」

一夏「そういや引越し前は俺も小鳩や千冬姉とカラオケに行ったなぁ」

夜空「違うと言っている」

一夏「もしかして、友達と?」

夜空「当たり前だ」

星奈「あんた、友達いないじゃん」

夜空「黙れ」

一夏「ひょっとして、俺の知ってる奴とか?」

夜空「ああ」

一夏「クラスの奴か?」

夜空「違う」

一夏「じゃあ、誰だ?俺が知ってて、クラスの奴じゃないって…」

夜空「トモちゃんといつも行ってる」

一夏「…あ、ああ」

夜空「何故、目を逸らす?一夏」

夜空「トモちゃんは凄いぞ。歌が上手くて、聞き上手で盛り上げ上手で、一緒にいるといつもあっという間に時間が過ぎてしまう」

一夏「…そ、そうか」

夜空「一夏。何故そんな哀れむような表情をするのだ?」

一夏「い、いや…」

星奈「一夏や夜空でさえカラオケに行った事あるなんて…」

一夏「星奈はカラオケに行った事ないのか?」

星奈「ないわよ!!悪い!?」

星奈「高貴なあたしがカラオケなんて低俗な庶民のお遊びなんてやったことあるわけないでしょ!!」グオー

星奈「ぜんっぜん!!興味もないわ、あんなの!!」ウガー

星奈「中学の時のムカつくクラスの女子に『これからみんなでカラオケ行こうよー。あ、柏崎さんは男子と遊んでた方が楽しいのよねギャハハッ』なんて言われた時も全然悲しくなかったんだから!!」ムキー

星奈「自分も行きたいなんてこれっぽっちも思わなかったんだからね!!」フンッ!

一夏「あ、ああ、わかったから。とりあえず落ち着け、星奈」

星奈「あー、今思い出してもムカつくわ」フーッフーッ

理科「一夏先輩。理科もカラオケは行った事ないです」

一夏「へぇ」

理科「前から興味はあったのですが、ああいう賑やかな場所に一人で入るのは苦手なもので」

一夏「確かに一人でカラオケに入るのは俺も勇気が必要だ」

夜空「そこで何故私を見るのだ、一夏」

理科「というわけで、今度カラオケをご一緒していただけませんか?一夏先輩」

一夏「ああ。じゃあ、今度一緒に行くか、カラオケ」

理科「ありがとうございます、一夏先輩」ニコッ

夜空「ま、待て、一夏」ゴホンゴホン

一夏「ん?どうした、夜空」

夜空「カラオケの事なら私に任せろ。いい店を知っている」

夜空「市内のカラオケは全て制覇しているからな」

一夏「それは凄いな。俺はあんまり詳しくないからぜひ頼むよ」

夜空「ああ、任せろ」ホッ

理科「……」チッ

幸村「あにき。わたくしもからおけ屋には行った事がありません」

一夏「じゃあ、幸村も一緒に行くか?」

幸村「はい」ニコッ

一夏「じゃあ、いつにする?明日は土曜日で休校日だけど」

夜空「私は明日だと午後からなら空いている」

理科「理科はいつでも構いません」

幸村「わたくしも問題ありません」

一夏「星奈はどうする?予定はあいてるのか?」

星奈「え?あたし!!」

星奈(そうよね、ここであたしだけ仲間はずれって事はないわよね)

夜空「ん?なんだ、肉。もしかして、カラオケに行きたいとか言い出すのか?」

星奈「私はその…」

夜空「私達は今、高貴なお肉様がぜんっぜん!興味がなくて、これっぽっちも行きたいと思っていない、カラオケという低俗な庶民のお遊び!の予定について話し合っているのだが?」

星奈「うっ…」

一夏「そうだったのか。興味がないなら誘っても仕方ないよな。悪かったな、星奈」

星奈「ええっ!?」

理科(夜空先輩は意地悪ですね。どう見ても星奈先輩はカラオケに誘って欲しそうなのに)

理科(まあ、さっきの星奈先輩、カラオケを完全否定してましたからね)

理科(どう見ても誘ってくれないのが悔しかっただけなのはバレバレですが…)

理科(それにしても一夏先輩は星奈先輩の事、天然で気付いてないんでしょうね、きっと)

夜空「それじゃあ、カラオケは明日にするぞ。私の行きつけの店は遠夜西駅から徒歩10分くらいの所だが、待ち合わせ場所はどこにする?」

一夏「それなら西駅の改札前で待ち合わせしよう」

夜空「わかった」

理科「了解です」

幸村「わかりました」

星奈「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

夜空「まだ、何かあるのか?私達は貴様には関係のない明日の予定を話しているのだが」

星奈「あ、あたしは、その…」

夜空「その店はフリータイムが1時からなので、集合時間は1時でいいな?あと、昼食は済ませておくこと。それから…」

星奈「無視しないでよ!!」

夜空「なんだ肉。関係のない貴様は一人でゲームでもやっていればいいだろう」

夜空「それとも貴様は低俗な庶民のお遊びであるカラオケに行きたいというのか?」

一夏「なんだ、行きたかったのか?じゃあ…」

星奈「い、行きたくなんてないわよ!」

星奈「でも、ほら、あたしってこの学園の理事長の娘だから!」

星奈「学園に通う生徒どもが休日にどんなお店に行くのとか、パパに報告するように頼まれているのよね!し、仕事よ、仕事」

夜空「なら、私が貴様の仕事に役立つ情報を教えてやろう」

夜空「この学園の生徒はだいたいが柳河通りにあるカラオケボックス『エコー・エコー』にいく」

夜空「学園から近く建物も綺麗で料金も安い。周囲に飲食店や服飾店も多く、生徒たちには人気の店だ」

夜空「しかし、私達が明日いくカラオケボックス『深淵からの呼び声』は立地条件も悪く、高校生の客はあまりいないから貴様の仕事の参考にはならないだろう」

夜空「よって貴様は『エコー・エコー』に行くがよい」

夜空「一人でな!!」

星奈「え?あ、…でも…」

夜空「私も学園の一生徒として貴様の役に立てた事を嬉しく思う。貴様は学園のために頑張ってくるがいい」

夜空「一人でな!!」

星奈「うぅっ…」

一夏「星奈。本当に一緒に行きたくないのか?」

星奈(行きたいわよ!!もっと強引に誘ってよ!!)

星奈「…わ、私は…仕事だから、別に一緒じゃなくても…」

一夏「そうか。悪かったな、無理に誘おうとして」

星奈(ちょ、諦めないでよ!!)

星奈「あ、…」

一夏「星奈。頑張ってこいよ」

星奈(…ぐっ)

星奈「う、…五月蝿いわね!!あんたには関係ないわよ!!馬鹿!!」ダダダダッ

【星奈・扉を勢いよく開けて部屋を飛び出す】

一夏「……。あいつ、怒ってたな」

一夏「ひょっとして俺が怒らせたのか?」

理科「まあ、経緯はどうあれ、一夏先輩の最後の一言が切欠じゃないですか?多分」

一夏「そっか。悪い、俺、星奈を探してくる」ダダダッ

夜空「いち…」

【一夏・部屋を飛び出す】

夜空(くそっ、一夏はずっと肉を気にかけてる。一夏と肉の距離がいつの間にかずっと縮まっているし…)

夜空(第一、家に篭りきりでずっとゲームをやってるような女がプールでたまたま一夏と会うわけがない!!一夏か、肉か、どちらかが誘ったに違いないんだ)

夜空(……)

夜空(デート…してたんだろうな)

夜空(私と一夏は昔からただの友達で、今も私の友達作りのために付き合ってくれてるだけにすぎない)

夜空(私と一夏は友達という関係のままなのだ。今も、昔も)

夜空「…はぁ」

一夏「星奈の奴、いったいどこに行ったんだ?」キョロキョロ

ケイト「おやー?君はこの前、三日月さんと一緒にいた彼氏君じゃないか」

一夏「あなたは確かマリアと一緒にいたシスターさん…」

ケイト「何をそんなに慌ててるんだい?何か懺悔や話したい事があるなら私が聴いてあげようじゃないか」

一夏「えっと、星奈…柏崎星奈って子を見かけませんでした?こっちの方に走ってきたと思うんですけど」

ケイト「ふむ。星奈さんねぇ…」

ケイト「君は星奈さんの取り巻きの子の一人かい?」

一夏「いや、俺はそういうんじゃなくて」

ケイト「いや、わかっててきいたんだけどね。星奈さんの取り巻きの一人だったら別の女の子と一緒にはいないだろうし」

ケイト「でも、星奈さんの事は知らないなぁ」

一夏「すいません、俺は星奈を見つけないといけないんで、もう行きます」

ケイト「ごめんね~、力になれなくて」

一夏「それじゃあ、失礼します!!」ペコッ、ダダダダッ

ケイト「それじゃ、私も教会に戻るとしようか」

ケイト「……」ギイ

星奈「……」

ケイト「星奈さん」

ケイト「男の子が一人、あなたを探しに来てたよ」

星奈「…一夏が?」

ケイト「へえ、星奈さんが身内以外で男の人の名前を覚えるなんて珍しいね」

星奈「……!!」////

ケイト「彼は一夏君というのか」

ケイト「この前も三日月さんと一緒にマリアの所に来て、真剣に謝ってくれててさ」

ケイト「中々の好青年っぽかったけど、星奈さんを虐めるんじゃわたしの見込み違いだったのかねぇ」

星奈「…虐められてない」ボソッ

ケイト「ん?何か言ったかい」

星奈「……」

ケイト「気のせいかな」

星奈「……」

ケイト「まあ、それじゃあ、ゆっくりしていけばいいよ。彼は校舎の方に星奈さんを探しに行ったし、暫くは見つかることもないと思うよ」スタスタ

星奈「……」

星奈「一夏…」

星奈「……」

星奈「…はぁ」

星奈「……」

星奈「鞄をとりに戻らなきゃ…」

星奈「明日はみんなでカラオケ、かぁ」

星奈「……」

星奈「私は…誘われたけど、断っただけなんだから…」

星奈「……」

星奈「…羨ましくなんてないんだから…」

星奈「そうだ、鞄を…」ギイ

一夏「星奈!!」

星奈「!!」

星奈「…一…夏?」

一夏「お前、どこにいたんだよ!!心配したんだぞ」

星奈「…な、なんでここに?」

星奈「校舎の方に探しに行ったんじゃ…」

一夏「探したよ!!でも、途中で生徒会の人たちにあって、星奈は校舎に来てないって言うからこっちに戻ってきたんだ!!」

一夏「とにかく部室に戻るぞ」ギュッ

星奈「え?…ええっ!?」////

一夏「俺はみんなと一緒にカラオケに行きたい」

星奈「…わ、私は別に…」

一夏「仕事だからか?仕事は開いてる日にでもすればいいんじゃないか?」

一夏「もし、明日は絶対に仕事だって言うなら、カラオケに行くのは明後日でもいいんだぞ」

星奈「…その…」

一夏「本当に興味がないなら俺もこれ以上は言わない。でも、少しでも興味があるなら一緒にいかないか?」

星奈「…う、うん」

一夏「そっか。じゃあ、日曜日に」

星奈「あ、明日、行くわ!!」

一夏「いけるのか?」

星奈「だ、大丈夫よ。プライベートが忙しくて、スケジュールの調整が大変だけど、あんた達とカラオケに行ってあげるわ」

一夏「そっか。みんないけるなら明日が楽しみだな」

星奈「そうね。た、楽しみね」

---談話室4

幸村「おつかれさまです、あにき、星奈のあねご」

一夏「ただいま」

星奈「…た、ただいま」

理科「あれ?どうして二人で手を繋いでるんですか?まさか…」

夜空「!!」

星奈「ち、違うわよ、別に何もないんだからね!!ねぇ、一夏?」バッ

一夏「ああ。別に何もないけど」

星奈「……」ムスッ

夜空「…そ、そうだろうな」ホッ

一夏「とりあえず明日は星奈もカラオケに行きたいらしいから、一緒に行こうって話をしてた」

理科「そうですか。理科的には人数が増えた時点である程度はどうでもよくなったので全然構いませんが」

夜空「…一夏がそういうのであれば…私も別に」

一夏「じゃあ明日の12時50分に遠夜西駅の改札前で集合な」

夜空「…ああ」

---織斑家

一夏「ただいまー」

小鳩「お帰り、あんちゃん!!」

千冬「今日は遅かったな」

一夏「ちょっと帰りにスーパー寄ってたから。すぐに晩飯にするから」

一夏「あと、明日は俺、出かけてくるから晩御飯は作れないと思う。作れても多分今日より遅い時間になるだろうし」

千冬「ほう?どこへ出かけるつもりだ、一夏」

一夏「ああ、部活の友達とカラオケに行くんだよ」

小鳩「カラオケ?それなら、うちも行く!!」

一夏「小鳩も?まあ、別に構わないけど」

千冬「じゃ、じゃあ、私もカラオケに行くぞ!!」

一夏「千冬姉は駄目だろ」

千冬「なんでだ!?別にカラオケに年齢制限とかないだろう!!」

千冬「それとも家族を友達に紹介するのが恥ずかしいとか思っているのか!?」

一夏「そうじゃなくて、千冬姉は明日も仕事だろ」

千冬「休むからいい!!」

一夏「それはよくないだろ」

小鳩「あしたは久しぶりのあんちゃんとカラオケじゃ。すごく楽しみじゃ」

千冬「私も行きたい」

一夏「千冬姉はまた今度な」

千冬「最近、一夏が冷たい。こんな子に育てた覚えはないのに」オヨヨ

一夏「…嘘泣きするなよ」

千冬「私が汗水流して働いてるときに、一夏と小鳩は友達と遊びに行くのか」

一夏「……」

千冬「あまりの辛さに過労死しそうだ。あー、一夏に何かしてもらえれば多少は心の疲れも安らぐのだが」

一夏「…千冬姉はどうしてほしいんだよ?」

千冬「なあに、簡単なことだ。明日、私も一緒にカラオケに連れて行け」

一夏「それは駄目だ。仕事しろとは言わないけど、職場に迷惑をかけちゃ駄目だろ」

千冬「ククク…問題ない。我はブリュンヒルデゆえ学校での融通も多少は利くのだ」

一夏「ズル休みはよくないから」

千冬「あんな小娘達を指導するより、一夏とカラオケの方がいい!!」

一夏「だから駄目だって。とりあえず明日は首に縄つけてでも職場に連れて行ってやるからな」

千冬「酷い!!」

---翌朝

一夏「さ、千冬姉、仕事場に行こう」

千冬「いーやーだー、仕事を休むーーっ」

一夏「そっか。じゃあ、月曜から千冬姉だけ弁当作らないぞ」

千冬「ちょ、一夏!?」

一夏「今日は千冬姉のためだけに早起きして弁当を作ったんだが、仕方ない。小鳩にでも食べてもらうか」

千冬「え?」

一夏「せっかく今日は千冬姉の好物を多めに入れたんだけど、千冬姉が仕事場にいかないならこれは無しだな」

千冬「ま、待て、一夏」

一夏「ん?」

千冬「し、仕事に行くから、そんな意地悪はやめてくれないか?一夏」

一夏「それはよかった。ここで休まれたら千冬姉の教え子たちに迷惑がかかるもんな」

千冬「それじゃあ、行ってくる」ショボーン

一夏(見るからに肩を落としてるな、千冬姉)

千冬「……」テクテク

千冬「…はぁ。カラオケ…」テクテク

千冬「……」テクテク

一夏「…千冬姉」

千冬「なんだ?忘れ物は別にしてないぞ」

一夏「今日は朝だけ千冬姉の荷物持ちしてやるよ」

千冬「一夏?」

一夏「そんなあからさまに落胆されたら俺が悪いことをしたように思ってしまうしな」

一夏「カラオケはまた今度行こうな。家族で」

千冬「あ、ああ!!」

---千冬&一夏・移動中

一夏「さすがにこの時間帯は電車が空いてるな」

千冬「今日は土曜日だからな。平日はこの時間帯でも混んでいるぞ」

千冬「混んでいる時は痴漢も出没するしな」

一夏「千冬姉も被害にあったのか?」

千冬「私の場合は邪な気配だけで痴漢を察知できるからな。私の身体に触れる瞬間に手首を捻り上げ、場合によってはへし折る」

一夏「過剰防衛過ぎるだろ、それは!!」

千冬「冗談だ。さすがにへし折りはしない」

一夏「冗談に聞こえないから、本当に」

千冬「今の時代は良くも悪くも女尊男卑の時代だ。一旦、電車で痴漢扱いされればその場で確実に職を失ってしまう。冤罪だろうがなんだろうが」

一夏「いやな世の中だな」

千冬「一夏も気をつけるのだぞ。世の中には男を貶めて楽しむ女もいるのだからな」

一夏「ああ、肝に銘じとくよ」

千冬「やはり誰かと一緒に来ると時間が早く感じるな」

一夏「だったら、仕事場の学校に住み込めばいいのに。ここって住み込みオーケーなんだろ?」

千冬「住み込んでしまったら一夏に会えないではないか」

千冬「ドイツに一年間行ってたときでも気が狂いそうだったのに、これ以上一夏と離れ離れになるくらいなら仕事をやめるぞ、私は」

一夏「わかったから…ほら、鞄と弁当」

千冬「ああ。ありがとう」

一夏「それじゃあ、いってらっしゃい」

千冬「…一夏よ」

一夏「どうした?千冬姉」

千冬「行ってらっしゃいのちゅ、チューとかしてくれたら今日は俄然やる気が出て乗り切れるのだが…」

一夏「こんな公衆の面前でか!?」

千冬「安心しろ。ここはほぼis学園の敷地内だ。お前の知り合いに見られることはない」

一夏「いや、千冬姉の同僚に見られるだろ!!」

千冬「いいから、早くするのだ!!」

一夏「早くって…」オロオロ

千冬「一夏と小鳩は私を見捨てて遊びにいくのだろう。なら、孤独に仕事へ向かう私にも少しくらいご褒美があってもいいじゃないか!!」

一夏「ご褒美って…俺、恋人じゃなくて実の弟なんだけど」

千冬「気にするな。私がやれといっているのだからやればいい」

一夏「……」

一夏「……」

千冬「どうした?ホッペでもいいんだぞ」

一夏(ホッペ以外の選択肢が気になるんですけど…)

一夏「…千冬姉」

千冬「ん」

一夏「……」チュッ

千冬「……。はぅっ」////

一夏「い、行ってらっしゃい」////

千冬「あ、ああ、行ってくる」////

---

---12時50分、遠夜西駅・改札口

夜空「来たか、一夏」

【夜空・タンクトップ+ジーンズ、頭にキャスケット】

一夏「おっ、もう全員揃ってるのか」

【一夏・tシャツ+ジーンズ】

星奈「小鳩ちゅあ~~ん。今日もゴスロリがすっごい似合ってるわぁ~ん」

【星奈・キャミソール+ミニスカート】

小鳩「……」ギュ

【小鳩・ゴスロリ】

一夏「それにしても…」

理科「どうしました?一夏先輩」

【理科・制服の上から白衣】
【幸村・制服】

一夏「お前らは何でいつもと同じ格好なんだ?」

理科「変ですか?」

一夏「まあ、幸村の制服はともかく、理科の制服+白衣は変に決まってるだろ」

理科「な、なんですと?」

一夏「少なくとも学校以外でその格好は明らかに違和感がある」

理科「そ、そうですか」

一夏「とりあえず白衣だけでも脱いだらどうだ?制服だけの方が違和感がないし」

理科「一夏先輩の…えっち」

一夏「なんでだ!?」

幸村「あにき」

一夏「なんだよ」

幸村「あにきが脱げというのなら、わたくしも脱ぎますが」

一夏「幸村は脱がなくていい!!」

夜空「全員揃ったし、行くぞ」

一夏「…ああ」

夜空「一夏よ、何故、そんな疲れた顔をしている」

一夏「後輩二人が俺を疲れさせるんだよ」

夜空「そうか。では、か、肩を貸してやろうか?」

一夏「いや、それはさすがに情けないから」

夜空「べ、別に、私は気にしないぞ」

一夏「まあ、それでも、俺はいいよ」

夜空「そ、そうか…」ショボーン

---カラオケボックス・深淵からの呼び声

理科「こんな入り組んだ場所でそれも場所は目立たない」

一夏「確かに立地条件が悪そうだな」

星奈「看板だけは変に派手じゃない?」

夜空「だから客があまり来なくて、私的にはいい店なのだ。ほら、入るぞ」カラン

カラオケ店員「いらっしゃいませー」

理科「ほうほう、カラオケボックスの中はこういう風になっているんですね」

幸村「…これがからおけ屋ですか」

星奈「ふぅん。こんな感じなのね」

夜空「フリータイム、ドリンクバー。会員カードだ」

カラオケ店員「あ、はい…あの…」

夜空「ん?」

男性店員「6名様でよろしいでしょうか?」

夜空「え?」

夜空(そういえばいつもはトモちゃんと二人だったから…)

夜空「あ、ああ、6人だ」

カラオケ店員「フリータイムでドリンクバー付き6名様で会計の方が5400円となります」

一夏「ここは料金が前払いなのか。5400円って事は一人あたり900円か」

理科「先輩、これ理科の分です」1000エン

幸村「あにき。あにきといもうとぎみとわたくしの分です」3000エン

一夏「幸村、そういう変な気遣い入らないから」

星奈「小鳩ちゃんの分はお姉ちゃんが出してあげよっか?」

小鳩「や」ササッ

一夏「星奈。小鳩の分は俺が出すから」2000エン

星奈「そうなの?あたしは別に気にしないわよ。じゃあ、とりあえずあたしの分」1000エン

一夏「俺が気にするんだよ」

夜空「ちょっと待て。5400円だと?何故そんなに高いのだ」

星奈「どうしたの?」

カラオケ店員「フリータイム650円、ドリンクバー250円でお1人様合計900円。これが6名様で5400円となっているんですが…」オドオド

一夏「高いか?」

夜空「いや、料金がおかしい」

カラオケ店員「へっ?」オドオド

夜空「6人で1部屋なのに、部屋代(フリータイム)まで6人分とられるのはおかしい」

一夏「いや、別に普通じゃないか?」

夜空「普通じゃないだろう。そもそも肉よ、カラオケボックスとは何をするところだ?言ってみろ」

星奈「えっと、歌を歌うところ、でしょ?」

夜空「その通りだ」

夜空「一つの部屋で一つの機械を使い1人で30曲歌おうが、6人で5曲ずつ歌おうが、どちらも30曲。rasjacに入る金額は同じなのだ」

夜空「それなのに何故部屋代を6倍も払わなければならないのだ?」

星奈「それって…詐欺って事?」

夜空「ああ、詐欺だろうな。トモちゃんと二人できた時はこんな事はなかったのだが…」

カラオケ店員「……」

一夏「……」

一夏「あの、二人ともいいか?」

夜空「どうした?一夏」

一夏「カラオケの一般的な料金システムってこんなのだろ?」

夜空「この店が一般的な料金システムであろうとおかしいものはおかしい」

星奈「珍しく意見があったわね」

星奈「パパが言ってたわ。上に立つものは不自然なお金の動きを見逃してはいけないって」

一夏「……」

夜空「どうした、一夏。私は今、この不正に対してどう対処しようか頭を悩ませているところなのだ」

一夏「いや…その夜空の発想に対して俺はどうしようか頭が悩まされてるんだが」

星奈「そうだ。こういうのはどうかしら?」

星奈「全員で一斉に入るんじゃなくて、一人一人が別々に入れば、取られる料金は同じでも部屋は6部屋になるわ」

星奈「それならカラオケボックスの思惑通りにはならないはずよ」

夜空「それはいいアイディアだな。肉のくせに」

一夏「……」

カラオケ店員「……」

夜空「さっき6名といったのは取り消しだ。私はいつものように1人でフリータイムとドリンクバー。なので900円払おう」900エン

カラオケ店員「え、ええ!?」オドオド

夜空「後ろの連中は知り合いだが、連れではなくたまたま一緒に入ってしまっただけだ。さっさと会計を済ませてくれ」

カラオケ店員「は、はい」オドオド

理科「夜空先輩、中に入っていきましたね」

一夏「ああ…」

星奈「あたし、初めてなんだけど。フリータイムのドリンクバー付き、1人で」

カラオケ店員「え、えっと、初めての方は会員カードを作りますので、こちらにご記入いただけますか」オドオド

一夏「…はあ」

一夏(あの店員、今にも泣き出しそうだぞ)

星奈「じゃあ、これで」1000エン

カラオケ店員「はい…」100エン、オツリ

カラオケ店員「…何名様ですか?」オドオド

一夏「…はぁ」

一夏「じゃあ、4人でフリータイムのドリンクバー付きでお願いします」4000エン

幸村「わたくしはあにきと一緒で嬉しいです」

小鳩「ククク…この時に限り我が眷族への同衾を許してやろう」

理科「いい、いいんですか!?小鳩さん!!」ズズイッ

小鳩「ふぇっ!?」

一夏「いいわけないだろ。小鳩はもうちょっと言葉の意味知ろうな」

一夏「でないと大惨事になる可能性があるからな」

幸村「あにきが望まれるのならわたくしはいつでもお待ちしております」

理科「ユニヴァアアアアァァァス!!!」

カラオケ店員「ひっ」ビクゥッ

一夏「…記入終わったんで」

カラオケ店員「は、はひっ」400エン

一夏「理科、店員さんが脅えてるぞ」

理科「すいません。失礼しました」

理科「理科達は109号室ですね」

一夏「ああ。それじゃ行くか」

---109号室

理科「一夏先輩!!ガムダンの曲をデュエットしましょう!!」

一夏「ん、ああ。えっと、ガムダンucなら知ってるけど」

小鳩「ククク…では我も世界の終焉を讃える暗澹のレクイエムを奏でるとしよう…」

小鳩「むむ…どこだ?『ゆけゆけゲルニカちゃん』は…」

一夏「幸村も歌いたい曲があれば早く入れろよ」

幸村「はい、あにき」

---107号室

星奈「カラオケボックスってこんな風になってるんだ。ふぅん」

星奈「この機械で歌の番号を入れるみたいね」

星奈「……」

星奈「採点モード?」

星奈「これって…歌の上手さで得点が出るみたいね」

星奈「やってみよっと…」

星奈「今の上位は…night…これってまさか」

---105号室

夜空「ふふっ、今日も好調だな。1位、2位は私の名前が入ったしな」

ピコーン

夜空「ん?2位に95点にsena…だと?」

夜空「あの屑肉が…!!」

夜空「目障りな肉の名前を圏外に追いやらねば…」

---1時間経過、109号室

【一夏・熱唱中】

一夏「…ふぅ」

幸村「あにき、素晴らしい歌声です」

一夏「そうかな?自分じゃわからないけど褒められるのも悪くないな」

理科「一夏先輩、次はこれをデュエットしませんか?」

一夏「いや、ちょっと夜空と星奈の様子を見てくるから、俺の分は少し飛ばしといてくれ」

小鳩「ふぇ!?あんちゃん、どっかいくんか?」

一夏「少しあいつらの様子見てくるだけだから。大人しく歌って待ってろって」ナデナデ

小鳩「ん」

---107号室

星奈「ぐぐっ、夜空が99点出してるのに、私はどう歌っても98点が最高ってどういう事!?」

星奈「この機械壊れてるんじゃないの?」

ガチャッ

星奈「誰!?」ビクッ

一夏「よお、星奈」

星奈「な、なんだ、一夏じゃない。ビックリさせないでよ」

一夏「ああ、すまない」

星奈「で、どうしたの?」

一夏「みんなでカラオケボックス来たのに夜空や星奈の歌が聴けないのは残念だなって思ってさ。様子見ついでに星奈の歌を聴きに来た」

星奈「へ、へぇー、それで夜空の所には行ったの?」

一夏「いや、まだ行ってないけど」

星奈「そ、そう」

星奈「じゃあ、夜空の歌よりも私の歌の方を最初に聞きたかった、そういう事ね?」

一夏「いや、俺の部屋から近かっただけで」

星奈「……」

星奈「まあ、いいわ。それにして一夏は幸せ者よね。あたしの華麗で優雅でパーフェクトな歌を間近で聞けるんだから」

一夏「お、おう」

星奈「それじゃあ、歌うわね」ドキドキ

一夏「ああ」

【星奈・熱唱中】

一夏「……」

星奈「…ど、どうだった?」

一夏「……」

星奈「ちょ、ちょっと、黙ってないで何とか言いなさいよ」

一夏「いや、なんていうか、すげえよかったよ!!思わず鳥肌が立った」パチパチパチ

星奈「そ、そう?」

一夏「ああ。声も綺麗だし、歌も上手いし、歌手以外の人間の歌聞いて感動したのは生まれてはじめてかも」

星奈「ふふん。もっと褒めていいのよ」

【カラオケ機・採点中】

一夏「あ、これ、点数の出る奴か」

星奈「あ、うん…」

星奈(さっきまでずっと夜空より低い点数だったからあんまり自信がないんだけど…)

【カラオケ機・採点終了】100テン

星奈「!!」

一夏「凄いじゃないか、星奈!!カラオケの100点なんて初めて見たよ、俺」

星奈「と、当然よ!!私は全てに置いてパーフェクトなんだからね!!」ドキドキ

一夏「それにしても、星奈は一人で歌ってて寂しくなかったか?」

星奈「え?」

一夏「せっかくみんなで来たのにさ」

星奈「そうね。さっきまでは気にしてなかったけど、確かに誰かといた方が楽しいかもね」

一夏「だろ?みんなで来たんだから、歌う曲数とか気にせずにみんな同じ部屋にすればよかったと思うだろ」

星奈(みんなと一緒に、か)

星奈(でも、いま、よく考えると、一夏と二人きりなのよね)ドキドキ

星奈「一夏」

一夏「なんだ?」

星奈「カラオケに誘ってくれてありがとね」

一夏「そんな事か。別に気にするなよ」

一夏「大した事してないし、最後に決断したのは星奈なんだから」

星奈「そ、そう?そうよね、うん」

星奈(一夏って、ハッキリとものを言うし、意外に男らしいのよね)ドキドキ

星奈(それに私に優しいし、クラスの男子も優しいけど、一夏みたいな安心感は全然ないのよね)ドキドキ

星奈(一夏になら何を任せても安心できるって感じの…)

一夏「どうした?急に黙り込んで」

星奈「はっ!?」////

一夏「とにかく後でまた様子見に来るけど、一人で歌いっぱなしはよくないから、適当にドリンク注文して喉を休めたりしとけよ」

星奈「う、うん」

一夏「あと、俺の部屋は109号室だから、気分転換したくなったら来いよ」

星奈「え!?いいの」

一夏「そりゃ、別に構わないだろ。じゃ、また後でな」

【一夏・107号室を退室】

星奈「……」

星奈「…これって、一夏に誘われてるって事よね」

星奈「……」

星奈「どうせ今行っても一夏は夜空の所に行ってるから、そうね、一時間後くらいに見に行こうかしら…」

星奈「うん。カラオケだもんね、気分転換なら一夏が一人でいる部屋に行っても何の問題もないもんね」

---105号室

夜空「な…肉が100点、…だと…」

夜空「私でも100点は滅多に出ないというのに…堕肉の分際で…」

ガチャッ

夜空「!?」ビクッ

一夏「夜空。俺だ」

夜空「な、なんだ、一夏か。ビックリさせるな」

一夏「悪い、悪い」

一夏「けど、みんなで一緒に来てるんだから、俺が様子を見に来ることくらいは想定しといてくれよ」

夜空「そ、そうは言っても、普段はトモちゃんとしか来ないんだ。店員以外に部屋に誰かが来るなんて思わんだろう」

一夏「それはそうかもしれないけどさ」

夜空「……」

一夏「……」

夜空「そういえば他の連中の所にはいったのか?」

一夏「?」

夜空「妹や幸村、理科や肉の所には様子を見に行ったのかと聞いているのだ」

一夏「ああ。星奈の所にはさっき行った」

夜空「私より肉の方が先、だと?」

一夏「俺達の部屋が星奈の部屋に近かったからな」

夜空「俺…達?」

一夏「ああ。さすがに部員みんなで来て全員ヒトカラなんて寂しすぎるだろ」

一夏「それにカラオケ初心者の幸村と理科を放置するわけにもいかないし、俺達4人は同じ部屋だ」

夜空「…そうか」

夜空「まあ、それなら私は様子を見に行かなくてもいいか」

夜空「一夏が一人部屋でないなら行っても無駄だしな」ボソッ

一夏「ん?別に無駄じゃないだろ」

夜空「……」

夜空「そ、それより、せっかく来たのだ。私の歌を聴いていけ、な?」

一夏「当然じゃないか。夜空の歌も楽しみだったんだからな」

夜空「そ、そうか。う、上手く歌えるといいのだが…」

【夜空・熱唱中】

一夏「……」

夜空「……」

夜空(…失敗してしまった)

夜空(一夏に見られてると思うと緊張してしまった)

夜空「ふ、普段はもっと上手いんだぞ」

一夏「なんでいきなり言い訳?」

夜空「そ、それはあれだ…」

夜空「お、お前に見られて緊張したのだ」

一夏「そっか。確かに人に見られてると緊張するよな」

【カラオケ機・採点終了】79テン

夜空「ぐっ…」

一夏「でも、まあ、さっきまで好調だったし、たまにはこういう事もあるって」

夜空「それでも1位の座をあの屑肉に譲ってしまったのは悔しいがな…」

一夏「あと、夜空さ」

夜空「なんだ?」

一夏「せっかくみんなでカラオケに着たのに1人で歌うのは寂しくないか?」

夜空「安心しろ。2人だ」

一夏「いや、俺はさっき来たところじゃないか」

夜空「そうではない。いつもトモちゃんがいる」

一夏「またトモちゃんかよ」

夜空「トモちゃんはいつも一緒にいてくれるからな」

夜空「それに…私の事もよくわかってくれるんだ」

一夏「……」

【一夏・コントローラーで曲を入れる】

【一夏・空いてるマイクを掴む】

夜空「…一夏?」

一夏「一緒に歌うぞ。デュエットだ」

夜空「ええっ!?」

【一夏・夜空の隣に移動】

夜空「な、ななっ!?」

【曲名・super∞stream】

夜空「いや、確かに曲は知っているが…」

一夏「ほら、始まるぞ」

夜空「…むぅっ」

一夏「brushup!!ユウキ今日も、わたしのハートきらめく」♪

夜空「……」

一夏「nextfuture、はじまってるね!」♪

一夏「ほら、夜空!」

夜空「…っ」

夜空「…誰にも譲れないよ、それぞれのプライド」♪♪

一夏・夜空「認めあってるって、言わなくても」♪♪

一夏・夜空「まっすぐ前向きなの、…ワカル」♪♪

一夏・夜空「頑張ってるのって、うれしい、シンパシー」♪♪

【一夏&夜空・熱唱中】

一夏・夜空「nextfuture、見逃さないで!…」♪♪

一夏「夜空、上手いじゃないか」パチパチ

夜空「い、一夏もな」////

一夏「トモちゃんを否定するわけじゃないけど、こうやって一緒に歌ったりするのもいいだろ?」

夜空「…そうだな」

夜空「だが、一夏があの曲をチョイスするとは思わなかったがな」

一夏「まあ、知ってそうだったし…」

一夏「とにかく後でまた様子見に来るけど、一人で歌いっぱなしはよくないから、適当にドリンク注文して喉を休めたりしとけよ」

夜空「わかっている。今から注文しようと思っていたところだ」ガチャ

夜空「注文だ。アイスコーヒーを一つ」ガチャン

一夏「あと、俺の部屋は109号室だから、気分転換したくなったら来いよ」

夜空「別にいい」

一夏「そうか。まあ、また後でな」

夜空「ああ」

【一夏・105号室を退室】

夜空「まったく一夏の奴はお節介だな…」

夜空「だが…」

夜空「あいつは昔からそうだったな…」クスッ

夜空は昔の事を思い出していた。
一夏と初めて会ったその日の事を。

当時から通ってる小学校では無口で、友達がいなかった夜空は、誰も知り合いのいない他学区まで遊びに来ることが多かった。

最初は近くの公園によく行っていたが、自分から喋りかけることのない夜空は小学校で早くも孤立していた。

自分が三日月夜空であると知られると、誰も話しかけてくれない。
そんな思いから、自分の家を外出する時は帽子を目深く被り、近所に住むクラスメイトに気付かれないように外に出ていた。

ある日、他学区の公園で5人の少年に虐められている同じ歳くらいの少年を見つけ、夜空はそれを助けに入る。
夜空を敵と認識した5人の少年は一斉に夜空に殴りかかってくる。
小学校では男女の体格差があまりなく、殴り合いでも男子に引けを取らない夜空だったが、さすがに多勢に無勢。囲まれてあっという間に色々と殴られる。

気付けば夜空が助けた少年は、夜空が殴られてる間に逃げ出してしまっていた。
虐められていた少年を助けた事を少し後悔したが、今となってはもう遅い。

が、その時。

「やめろよ。みっともない奴らだな」

5人が一斉に声のした方に向く。
竹刀袋を担いだ同じ歳くらいの少年があきらかにイラついた風な表情を見せる。

「なんだよ、織斑。お前、こいつの味方かよ」

織斑と呼ばれた少年は面倒臭そうに口を開く。

「お前ら、イジメなんかやって、しょーもねーんだよ」

「お前には関係ないだろ。どっかいけよ」
「バーカバーカ」

「そいつから離れて、お前らがどっか行けよ」

「何だと!!」
「こいつ!!」

さっきまで夜空を殴っていた少年たちは一斉に織斑という少年をターゲットに変更した。
殴りかかろうとした少年達を織斑という少年は少し距離を開け、一番最初に飛び出したいじめっ子の顔面に拳を叩き込む。
殴られた少年は鼻血を出し、他の4人の少年はそれを見て怯んでしまうが、織斑という少年は攻撃の手を緩めない。

結果、5人の少年は全員鼻血を流し、公園から泣きながら走って逃げていった。

「大丈夫か?」

夜空「…ありがとう」

「それにしても無茶するなぁ、お前」

夜空「何がだよ」

「さっきいじめられてた奴、うちのクラスの奴でさ。お前、他学区の奴だろ?見ず知らずのやつ助けるなんてすげー勇気あるよ、お前」

夜空「…ふん」

「そういや怪我は大丈夫か?」

夜空「あんな奴らのパンチなんて効くもんか」

「そっか。でも、口の端とか切れてるし、ほら、ハンカチ使えよ」

夜空「あ、ああ」

少年の顔が急に近づいてきたせいで夜空は思わず顔を背けてしまう。

「どうした?」

夜空「な、なんでもない!!」

夜空「一夏。オレの母さんが前に言ってた」

一夏「ん?」

夜空「友達100人は出来なくてもいいから、100人分大切に出来る友達を作りなさい、って」

夜空「たった1人だけでもお互いの事を信じられる友達がいれば、人生は輝かしいものになるだろうって」

一夏「そっか。だったら俺はソラの事を100人分、いや、世界中が敵になっても俺はお前の友達でいるよ」

夜空「は、恥ずかしい事いってんじぇねえよ!!」////

一夏「恥ずかしくないだろ。友達なんだから」

夜空「ああ。そうだな。オレも一夏は大切な友達だ」

気付くと10分くらいはボーっとしていたのだろう。

目の前にアイスコーヒーが置かれている事に気づいた夜空はコップについた水滴をおしぼりで拭う。

夜空「あいつは今も昔も変わらない…」

夜空「強くて、真っ直ぐで、優しくて、…」

夜空「…私の大好きな…友達」

---109号室、5時間後

prrrr

幸村「はい」

店員『お時間5分前となります』

幸村「わかりました」

理科「もうそんな時間ですか」

一夏「やっぱり6時間は長いわ」

小鳩「あんちゃん、疲れた。おんぶしてほしいんじゃ」グテー

星奈「小鳩ちゃん、お姉ちゃんがおんぶしてあげよっか?」

小鳩「や」

幸村「あにき。よろしければわたくしがいもうとぎみの世話をいたしましょうか」

一夏「まあ、小鳩は俺が担ぐわ」

理科「それにしても結局109号室に全員集まってしまいましたね」

夜空「……」

一夏「いい事じゃないか。みんなで楽しめたんだし」

理科「そうですね。カラオケはみんなで楽しく歌うものですからね」

一夏「それじゃ、帰るか」

夜空「ああ」

※一夏、夜空のクラスが2組になっていますが原作で5組になっている事に気づきました。
このssでは2組ということでお願いします。

---7月20日、放課後、談話室4

夜空「隣人部の発足から約1ヶ月。そして今日で1学期も終わろうとしているわけだが…」

星奈「厳密には1学期終わってないわよ。うちの学校、二学期制だから」

夜空「そんな事はどうでもいい」

夜空「この隣人部の目的は友達作りだ」

夜空「この中で友達が出来た奴、または友達と一緒に充実した夏休みを過ごす予定のある奴はいるか?」

星奈「……」

幸村「……」

理科「……」

小鳩「……」

一夏(俺、夜空に喋るなって言われたけど、ここはどうしたらいいんだろう)

一夏「俺は…」

夜空「……」ジロッ

一夏「…現状維持かな」

星奈「あたしは最近、噂が多くなったわ」

一夏「噂?」

星奈「ちょっと前に『柏崎さんって、2組のイケメンと付き合ってるんだって、お金の力ってすごーい。ギャハハ』ってクラスの女子が言ってるのを立ち聞きしちゃったわ」

星奈「まだ付き合ってもないし、それに何がお金の力よ!!まったく」

一夏「なんか変な噂が立ってるみたいだな」

星奈「べ、別に一夏が謝ることじゃないわよ」アセアセ

幸村「わたくしは何故か女子に話しかけられる事が多くなりました」

一夏「それは悪い事じゃなさそうだな」

幸村「あにきについて根掘り葉掘り聞いてくるので、あにきの事を教えると、どちらが受けでどちらが攻めかと聞かれました」

理科「ふむふむ」

一夏「幸村。お前のクラスの女子の反応はおかしい」

幸村「?」

理科「それでどう答えたんですか、幸村君」

幸村「あにきは常に攻める人間で守りなど考えていないと答えました」

理科「ということはカプは一夏先輩×幸村君ですね」ツー

理科「はなひが出てきまひた」

一夏「全く…」

小鳩「ククク…我はもとより人間如きと馴れ合うつもりはない」

小鳩「闇だけを友とし、孤高なる夜の貴族…それが我だ」

一夏(小鳩も厨二病を卒業してくれれば、友達とか出来そうなんだけどなぁ)

星奈「はぁー。色々やったのにねー」

一夏「何かしたか?」

星奈「ゲームしたり…、ゲームしたり…、演劇の練習したり…、ゲームしたり…、ファミレス行ったり…、カラオケ行ったり…」

理科「基本的に遊んでるだけですよね」

マリア「お兄ちゃん!!」

一夏「どうした?マリア」

マリア「ワタシ、ファミレスにもカラオケにも行ってないぞ!?」

小鳩「ククク…ここはすでに我の支配下にある。ファミレスもカラオケも神の使途抜きになるのは必然の事だ」

マリア「の、のけ者にされたのか!?」

一夏「いや、違うからな。たまたまマリアがいなかっただけだから」

マリア「そ、そうなのか?」

一夏「まあ、カラオケもファミレスも今度行こうな」

マリア「うん!!」

小鳩「あんちゃんのあほ~」

夜空「ま、マリア」

マリア「どうしたのだ?夜空」

夜空「今日はコンソメ味を持ってきたぞ」

マリア「おおっ!!いつものうす塩ではなくコンソメか!!」

マリア「わーい!!」バリッ

一夏「夜空…」ジト

夜空「た、たまにはいいだろう」

一夏「まあ、たまにならな」

マリア「はっ!!ポテチの封を開けてしまった…」

一夏「どうした?マリア。適量ならポテチも全然食べていいんだぞ」

マリア「明日から夏休みだから、大切に取って置かなければいけなかったのに…」

マリア「コンソメ味に浮かれて思わず開けてしまったのだ」

一夏「ああ、そういう事か」

理科「そういえば夏休みに入ったら40日間も一夏先輩とイチャイチャできなくなっちゃうんですね」

一夏「そうだな。寂しいけど仕方ないよな」

理科「…!!」////

夜空・星奈・幸村・小鳩「!?」

理科「さ、寂しいですか?理科と会えなくなって本当に寂しいですか?」

一夏「そりゃ、いつも会ってる部活のメンバーと会えなくなるのは寂しいだろ?」

理科「あ、ああ、そういう意味ですか」

夜空・星奈・幸村・小鳩「……」ホッ

星奈「…せっかく考えないようにしてたのに」

幸村「あにき…」

一夏「そういや、幸村」

幸村「はい。あにき」

一夏「夏休みだけど毎週水曜日は真の男になるための修行続けてくからな」

幸村「はい!!」

一夏(あんまり意味はないけど、続けるって言った手前やっとかないとな)

星奈(一夏は毎週水曜日は学校に来るわけね。…よし)

星奈「あ、あたしも、水曜日はパパからの仕事で学生の部活を見に来るから、暇な時はあんた達を見に行ってあげてもいいわよ」

一夏「いや、別にいいだろ?俺と幸村は部活じゃないし」

星奈「ぐっ…」

夜空「お前らに言っておくが、夏休みも部活はやっていくぞ」

理科「へ?」

星奈「部活、やるの?夏休みも?」

夜空「当たり前だ。肉も言ったとおり、夏休みに部活をやってる連中もいるのだ」

夜空「うちだけが休む道理はない」

一夏「そうかもしれないが、そういうのは大会とか決まった活動がある部活だけだろ?」

夜空「甘いぞ、一夏。そんな事で我々の目的が果たせるものか」

マリア「な、なんだと!?夏休みも来るのか、お前ら」

マリア「クーラーの効いたこの部屋で一杯お昼寝できるかと思ってたのに!!」

夜空「そもそも夏はリア充どもが調子に乗る季節だろう」

夜空「将来、我々に友達が出来て、リア充どもの仲間入りを果たしても、今から訓練してリア充度を高めておかなければ危険だろう」

夜空「場合によっては死ぬかもしれん」

一夏「死ぬわけないだろ」

夜空「とにかくだ。明日から夏休みという事でここが一つの区切りでもある」

夜空「我々は夏休みまでに友達を作れなかった」

夜空「その原因を考え、これからの活動に活かす事にしようではないか」

星奈「はい」

【星奈・挙手】

夜空「なんだ?肉」

星奈「失敗した原因は夜空が無能過ぎるからだと思いまーす」

夜空「……」ピクッ

一夏(また始まった…)

夜空「…そうか。私にもいくつか致命的な原因に心当たりがある」

夜空「それは肉があまりにも馬鹿すぎて、肉があまりにもアホすぎて、肉があまりにもウザすぎて、肉があまりにも変態すぎて…」

夜空「肉があまりにも無能で存在自体が隣人部及び世界にとって無価値、いやマイナスにしかならない事だな」

星奈「そこまで言う!?」

一夏「夜空も星奈もそこまでにしとこうぜ」

一夏「このままエスカレートすると星奈が泣きながら部室を飛び出すビジョンが明確に見えるからさ」

星奈「うぐっ…」

理科「確かに見えますね」

幸村「さすがあにき。わたくしにも見えます」

夜空「そうだな。確かに言い過ぎだったな」

夜空「肉がどれだけ世界にとって有害な物質であるかを説明するのは百万言を尽くしても無駄なのにな」

夜空「肉に対しての罵詈雑言で酸素を消費するなんて地球に対して申し訳なく思う」

夜空「この世で最も罪深い酸素の使い方だったな。エィメン」

星奈「うぐぐぐぐぐっ…」

星奈「アホーっ!!夜空のアホーーーっ!!」

【星奈・談話室4から逃走】

一夏「全く。結局こうなるのか」

夜空「ふん」

一夏「でも、もうちょっと星奈に優しくしてやれよ。夜空も」

夜空「……」キッ

一夏「ど、どうした?」

夜空「…なんでもない」

幸村「今回あにきは星奈のあねごを追いかけないのですか?」

一夏「え?俺、そんなに星奈を追いかけてる印象があるのか?」

夜空「……」

理科「多分、そのせいで一夏先輩と星奈先輩が付き合ってるって勘違いされちゃうんじゃないですか?」

一夏「じゃあ、追いかけない方がいいのか?」

理科「しばらく様子を見てみるというのも一つの手かと思われますが?」

理科「星奈先輩はここでは夜空先輩に負けていますが、基本ハイスペックな人ですからね」

理科「鞄もあるし、しばらくしたら戻ってくるとは思いますよ」

一夏「じゃあ、そっとしておくか」

---

夜空(一夏はやっぱり肉の事が好きなんだろうか?)

夜空(わ、私の方が一夏に先にあってるし、肉よりもずっと一夏の事を好き…なんだ)

夜空(こいつは鈍感だから気付いてないかもしれないが…)

一夏「夜空」

夜空「わひゃいっ!?」

一夏「よ、夜空?」

夜空「な、…なんだ、一夏」

一夏「まあ、色々あったけど、この一ヶ月は楽しかったぞ」

夜空「……」////

【星奈・談話室4に戻ってくる】

星奈(今日は一夏の奴、なんで追いかけてこなかったのよ)

一夏「おかえり星奈」

星奈「…た、ただいま」

一夏「心配してたけど大丈夫そうだな」

星奈「……」ムスッ

星奈「あ」

一夏「どうした?」

星奈「一夏に言う事があったの、すっかり忘れてたわ」

一夏「なんだ?」

夜空「…!」ピクッ

星奈「前にあんた、うちのパパに挨拶するって言ってたじゃない?」

一夏「ああ」

星奈「前にパパに話したら、夏休みなら時間が取れるからうちに来なさいって」

星奈「パパも会いたがってたみたい」

一夏「そうか」

星奈「うん。だからうちに来る時はあたしに言ってね」

一夏「ああ。わかった」

幸村「……」

理科「……」

夜空「ちょ、ちょっと、待て!!」

夜空「な、何故、一夏が肉の家に行って、その、ち、父親に挨拶などするのだ!?」

星奈「ふぅん?」

一夏「ああ。俺た…」

星奈「一夏、それ秘密にしといて」

星奈「問題あるかもしれないし」ボソッ

一夏(父親が理事長と友人で、入学時に便宜を図ってもらったなんて事は確かに大っぴらにいう事じゃないか)

一夏「ああ。わかった」

夜空「秘密…だと?」

一夏「ん、ああ。悪いな、夜空」

星奈「別に夜空には関係のないことよ」フフン

夜空「むっ…」

星奈「別に一夏があたしの家に来ようが、パパに会って挨拶しようが、夜空には何の関係もないもんね」

星奈「これはあたしと一夏だけの話だから」

夜空「ぐ…ぅっ…」

星奈「じゃあ、そういう事だからよろしくね、一夏」

一夏「ああ」

夜空「……」

幸村「……」

理科「……」



こうして夏休み前の最後の隣人部の活動は妙な空気のまま終わってしまった。



第2部 完

第2部(第2巻相当)は少し長くなりましたが以上で終了です。

支援くれた方、ありがとうございました。

第3部は後日投下します。

今まで出てる登場人物について

織斑一夏【隣人部】
小鷹の代わりに登場。昔から剣道を続けていて、聖クロニカに転校してくるまでは続けていた。クラスに男友達も女友達もいて、イケメンなリア充。隣人部に存在してるのは夜空の希望で。はがないの伝家の宝刀「え!?なんだって!?」は使わない。最近、隣人部では弄られる傾向が強くなってきている。

三日月夜空【隣人部・部長】
ソラとすでに発覚。一夏を盲目的に信頼している節があり、恋心も発動中。隣人部では絶対的な権限を持っているが、一夏に対して弱く、折れる事も多い。前回ではマリアへの暴力が発覚し、株が失墜気味。一夏に言われ、マリアへ酷い事をしたと自覚した。現在はマリアに対して餌付けでコントロールしようと考えている。

柏崎星奈【隣人部】
夜空に対抗心を燃やしている。一夏とは小さなフラグがコツコツと立ち、異性として気になる相手となった。尊敬できる女性として千冬、可愛い妹のような子として小鳩の事が大好き。夏休み直前で夜空が一夏に好意を持っている事を知った。

楠幸村【隣人部】
昼食は一夏とそのクラスメイトと一緒にとっている。現在の部活の服装はおもに制服。メイド服から着替える時に一夏に上半身裸を見られているが、その時の一夏の感想は「腰が細くて、胸が少し膨らんでいて、女みたい」。週に1度、一夏指導の真の男になるための特訓を継続中。

志熊理科【隣人部】
一夏が世界でただ1人の男性is適合者と知り、興味を持つ。天才だが変態。学校に理科室という自身の部屋を持ち、授業を免除する事を条件に聖クロニカ学園に入学した。

織斑小鳩【隣人部】
一夏の妹。一夏が大好き。本来の見せ場を少し千冬に取られている。今回は出番も増えた。隣人部に所属し、星奈にアニメキャラのようだと言われ、気に入られる。一夏を『お兄ちゃん』と呼ぶマリアとの仲は険悪。

高山マリア【隣人部・顧問】
隣人部の顧問で幼女シスター。出会ってすぐに隣人部の顧問をやめると宣言。夜空の謝罪で隣人部顧問を継続する事に。夜空にお菓子で餌付けされ、一夏にお弁当で餌付けされる。一夏の事を『お兄ちゃん』と呼んでおり、小鳩との仲は険悪。

織斑千冬
一夏の姉。一夏が大好き。なんとか学園の教師を勤めている。第1回モンドグロッソの優勝者。星奈とフラグが立っている。ブラコンが酷い。

高山ケイト
マリアからうんこババアと呼ばれているが実の姉。一夏は面識はあるが、名前すら知らない。

日高日向【生徒会・会長】
剣道部からの依頼で一夏に剣道部を勧めるが断られる。生徒達からの信頼は厚い。

遊佐葵【生徒会・会計】
柏崎星奈に嫉妬する星奈のクラスメイト。遠目で目撃した一夏と星奈を恋人だと勘違いし、さらに朝に二人きりで話すところを目撃して、さらに勘違いを深める。

友達a・b・c【モブキャラ】
一夏のクラスの女友達。出番はあまりない。

友達d・e【モブキャラ】
一夏のクラスの男友達。昼食は一夏、幸村ととっている。モブの分際で意外と台詞と出番はある。

親衛隊a~j【モブキャラ】
星奈の親衛隊。普通っぽいのからオタクっぽいのまで十人十色。しかし、台詞はほぼ共通。

セシリア
『聖剣のブラックスター』のヒロインで女騎士。某イギリス代表候補生ではない。第2部では登場しない。

とりあえずこんなところです。

夏休みの1日目。
俺と小鳩は昼飯を食べた後、一緒に部活へ行く予定だったが、小鳩は日中の暑さに嫌気が差し、家にuターン。
結局、俺、1人で聖クロニカ学園の談話室4、隣人部の部室へ向かうことになった。

談話室4で待ち受けていたのは最初に俺に挨拶をした幸村。
読んでいた本の手を止め、俺を一瞥して不機嫌そうに挨拶を返してきた夜空。
テレビゲームをやって、軽い口調で挨拶をしてきた星奈。
そして、ソファに寝転がってポテチを食べていたマリアが俺を見て、起き上がり急に飛びついてくる。

一夏「おー、マリアは今日も元気だな」

マリア「お兄ちゃん!!今日は遅かったのだ!!」

一夏「え?遅いか?」

一夏「今は3時だし、いつもこんなもんじゃないか?」

夜空「夏休みにいつも通りにしてどうする。普通はもっと早く来るだろう」

一夏「そう言われれば、確かにそうだな」

一夏「それで、夜空達はいつ来たんだ?」

夜空「私は1時過ぎだ」

夜空「私が来た時にはすでに肉がゲームをやっていた」

幸村「星奈のあねごは夜空のあねごの少し前に来られました」

一夏「へぇ…」

一夏「それで、幸村はいつ来たんだ?」

幸村「わたくしは8時に来ました」

一夏「8時!!朝のか!?」

夜空「それはいくら何でも早過ぎだろう」

幸村「いえ。万一にも兄貴に遅れるような事あらば、切腹ものですゆえ」

一夏「いやいや、そう思ってくれるのは嬉しいけど、いくらなんでも8時は早過ぎるだろ」

一夏「そうだな。俺は夏休みは昼過ぎに来るから、幸村はその少し前に来たらいいから」

幸村「わかりました。では、午前中に来るようにいたします」

一夏(午前中って範囲が広いけど、本当にこいつわかってるんだろうな…)

マリア「お兄ちゃん!!それで今日のお弁当はなんなのだ?」

一夏「は?」

マリア「お兄ちゃんが遅かったから、ポテチで空腹を紛らわしていたけど、今日もお兄ちゃんのお弁当が楽しみなのだ!!」

一夏(ま、マリアの弁当の事、すっかり忘れてた…)

一夏(ど、どうしよう…)

夜空(一夏の奴、マリアの事をすっかり忘れていたみたいだな)

夜空(仕方あるまい。ここは私が助けてやるとするか)

夜空「一夏」

一夏「よ、夜空?」

夜空「私の鞄の中に弁当が入っている。それをマリアにでもくれてやれ」ボソッ

一夏「い、いいのか、夜空?」ボソッ

夜空「かまわん。たまには私を頼ってくれればいい」ボソッ

夜空(本当は一夏に食べてもらおうと思ったのだが、一夏は昼食を済ませてるみたいだし、捨てるのも勿体無いからな)

一夏「恩に着る、夜空」ボソッ

一夏(夜空の鞄はこれか。文庫本に携帯電話、一番下の弁当箱、これだな)

一夏(それにしても1時過ぎに来た夜空が何で弁当なんか持ってるんだ?)

一夏(まあ、いいか)

一夏「マリア。ほら、お弁当だぞ」

マリア「今日のお弁当のおかずは何なのだ?」

一夏「あー、…それは開けてのお楽しみだ」

マリア「そっか!!」

一夏(俺だって知らないけどな)

マリア「おおっ!!今日は弁当箱に焼き飯がビッシリ詰まってるぞ!!」

一夏「お、おう」

マリア「美味しそうなのだ!!」

一夏「そうだな」

夜空「……」////

マリア「いただきまーす!!」パクッモシャモシャ

一夏「……」

夜空(初めて作ったが、多分上手く作れていると思うのだが…)

マリア「?」パクッモシャモシャ

一夏「…ん?」

夜空(え?)

マリア「あ、味がしないのだ」

一夏「え?」

夜空(嘘!?)

一夏「マリア、スプーン借りるぞ?」

マリア「うん」

一夏「……」パクッモシャモシャ

夜空「……」

マリア「……」

一夏「味が…しないな」

マリア「…うん」ショボーン

夜空(し、失敗したのか!?私は!!)

一夏「す、すまない、マリア。ちょっと調味料の加減を間違えたみたいだ!!」

マリア「ま、まあ、仕方ないのだ。お兄ちゃんだって、失敗する事くらいあるもんな!!」

一夏「ああ。次からは気をつけるよ」

夜空「……」ショボーン

一夏「そういえば、夜空って携帯電話持ってたんだな」

夜空「ん?それくらいは持っているだろう」

夜空「携帯電話がないとカラオケボックスを探すのに不便だからな」

一夏「いや、使用用途が違うだろ」

理科「おはようございまーす!!一夏先輩は相変わらず制服姿ですね」

一夏「おはよう、理科。そういうお前もいつもと同じ制服と白衣じゃないか」

理科「ふふっ。本当にそう思いますか?」

一夏「な、なんだよ、その意味あり気な顔は」

理科「実はこの服、水分を含むと溶ける紙で出来ていまして、理科が汗をかくと理科の裸体が露になるという優れものでして」

一夏「何も優れてないだろ、それ」

理科「えー?一夏先輩は理科の裸、見たくありませんかぁ?」

一夏「そ、そんなの答えられるわけないだろ」

理科「一夏先輩は理科の裸を見たいけど、我慢しているという事でよろしいですか?」

一夏「理科。我慢してないし、あとエロトークはやめてくれ」

一夏「大体、ここにいる連中は俺以外、全員女子なのに、なんでお前はそんな話を平気でするかな?」

理科「女の子はみんなhが大好きですよ」

一夏「いきなり凄い発言が飛び出してきたな」

夜空「き、貴様、何を言っている!?そんなわけあるか!!」

理科「あれ?夜空先輩、hは嫌いですか?」

夜空「ななな、何を聞いている!!」

理科「そういえば理科、隣人部の活動にピッタリな事を思いついたんですが」

一夏「…一応、聞くけど」

理科「あれ?なんか、あまり乗り気じゃないですね」

一夏「まあ、理科の発言は9割がエロトークだからな」

理科「信用が無いみたいですが、理科の案を聞けば一夏先輩もきっと理科の事を見直します!!」

一夏「そこまで言うなら聞かせてくれよ」

理科「はい。一夏先輩、理科とセッ○スしましょう」

一夏「な…」ブハッ

夜空「はぁ!?」

星奈「え!?」

幸村「!!」

マリア「?」

理科「隣人部の活動は友達作り。なので、理科と一夏先輩はセッ○スしたら友達になれますよ」

一夏「す、するわけないだろ!!なんでそうなるんだ!?」////

理科「世の中には色々な友達がいますが、セッ○スフレンドというのもいますから」

理科「理科は一夏先輩とそういう友達になるのもありかと思いまして」

夜空「ふざけるな!!そんなものは断じてない!!」////

理科「おや?意外と純情なんですね、夜空先輩」

マリア「なーなー、お兄ちゃんセッ○スフレンドってなんなのだー?」

一夏「…それは」

理科「それはですね、マリアさん」ボソボソ

マリア「ぎゃああああっ!!そんな友達はクソなのだ!!うんこなのだ!!」

星奈「でも、セッ○スフレンドはお互いにただの遊びって感じで、友達って感じがしないんだけど?」

理科「そう言われればそうですね」

夜空「くそっ!!この変態どもめ」

星奈「あ、あたしは変態じゃないわよ!!ゲームでそういうのがあったから知ってるだけで…」

夜空「黙れ!!ド変態淫乱便器肉が!!」

星奈「なんでそこまで言われなきゃなんないのよ!!馬鹿夜空!!」

幸村「あにきが望むのであればわたくしはあにきにこの身を捧げてもかまいません」

一夏「何、言ってるんだ、お前は!?」

理科「ユニヴァース!!!」

マリア「お兄ちゃん、セッ○スフレンド怖い~」

一夏「と、とりあえずみんな落ち着け。な?」

夜空「と、とにかくそういうのは駄目だ!!そのセッ…、とかいう不純な友達など私は認めない!!」

理科「でも、夜空先輩。雄と雌の間に普通の友情は存在しないかと」

夜空「そんな事は無い!!」バァン!

理科「うっ」ビクッ

星奈「ひゃっ!!」ビクッ

幸村「…!?」ビクッ

マリア「な、なんなのだ!?」ビクッ

一夏「……」

星奈「ど、どうしたのよ、夜空」

夜空「…なんでもない」

理科「ど、どうやら理科は地雷を踏んでしまったようですね」

夜空「……」

一夏「まあ、あれだ。俺も夜空と一緒で、男と女の間に普通の友情はあると思うぞ」

夜空「……」////

一夏「ところでさ、小鳩以外の全員揃ってる今のうちに決めときたい事があるんだけど」

夜空「な、なんだ?」

一夏「夏休みの間だけでも隣人部の出欠や部室に来る時間はあらかじめわかってたほうがいいと思うんだ」

星奈「それはそうかもしれないけど、どうやって確認するの?」

一夏「携帯電話でいいだろ?俺も夜空も持ってるし、誰でも持ってるだろ」

一夏「理科は持ってるだろうし、幸村はどうだ?」スッ

幸村「わたくしも持っております」スッ

理科「まあ、最近の学生なら普通に持ってますよね。携帯くらい」スッ

マリア「みんな大人だなぁ。マリアは携帯を持ってないのだ」

一夏「まあ、マリアも大きくなったらそのうち持てるよ」

マリア「ほんとか!?」

一夏「多分な」

マリア「楽しみだなぁ」

星奈「……」

一夏「じゃあ、とりあえずみんなでアドレス交換するか」

星奈「……」

夜空「そうだな。それじゃあ、一夏。アドレスを教えてくれ」

一夏「ん?夜空の携帯って赤外線ついてないやつか?」

夜空「せ、赤外線?」

一夏「ん?」

一夏「幸村や理科は赤外線の操作はわかるか?」

幸村「はい」

理科「当たり前じゃないですか」

一夏「だったら、夜空。携帯見せてもらっていいか?」

夜空「あ、ああ」スッ

一夏「えっと…ああ、赤外線はついてるな」

一夏「夜空、見せながら説明するから、隣に座るぞ」

夜空「え!?あ、ああ、いいぞ!!」

一夏「まず、ここの設定を…ここで変えて、で、相手とのデータの送受信はここから…こうやって、こうだ」

夜空(一夏が隣に…こんなに近くに…)////

一夏「わかったか?」

夜空「へ?」

一夏「なんだよ、聞いてなかったのか?しょうがないな」

一夏「もう一度説明するぞ」

【一夏・再度、夜空に携帯電話の操作を説明中】

幸村「むぅ…あにき…」

理科「理科も操作を出来ないって言えばよかった…」

星奈「…くぅっ」

マリア「マリアも携帯を持って、お兄ちゃんに説明してもらうのだ!!」

一夏「そうだな。携帯を持ったら、教えてくれ。アドレス交換もしような、マリア」

マリア「うん!!」

一夏「…で、こうする。と」

夜空「なんだ。簡単じゃないか」

一夏「だったら最初の説明で覚えてくれよ」

夜空「…うっ」////

一夏「それじゃあ、夜空。アドレス交換をするか」ピッ

夜空「う、うむ」ピッ

一夏「これが夜空のアドレスか(みかづき、よぞら、っと…)」ピッピッピッ

一夏「家族以外で女子のメールアドレスが登録されるとちょっと嬉しいものだな」

夜空「そ、そうか!!家族以外は私が初めてか」

夜空「わ、私も、携帯電話にアドレスが登録されるのは一夏が初めてだぞ!!」

一夏「そ、そうか」

理科「なるほど夜空先輩は一夏先輩が初めてですか」

理科「理科も一夏先輩に初めての人になってほしかったのですが、理科の(アドレス帳)は色々な(会社の)男性によって、(アドレスが)いっぱい入れられてます」

理科「こんな理科(のアドレス)でも一夏先輩は理科(のメアド)を貰ってくれますか?」

一夏「なんかピンポイントで台詞がおかしい事になってるからな、理科」ピッ

理科「そうですか?てへぺろ」ピッ

幸村「あにき…。わたくしも夜空のあねごを見習い、携帯の登録されている全あどれすを消去しました」

幸村「これでわたくしの携帯も正真正銘、あにきが1人目です」

一夏「おいおい!!携帯のアドレスを全消去って…いいのかよ!?」

幸村「問題ありません。あにきのあどれすを一番最初に登録することの方が重要です」

一夏「いや、それは重要じゃないだろ。ま、まあでも、消したものは仕方ないか…」ピッ

幸村「どうぞ、あにき」ピッ

一夏「あとは星奈だな。そういえば星奈、携帯電話は?」

星奈「……ない」

一夏「ん?」

星奈「持ってないわよ携帯電話なんて!!」

一夏「そ、そうだったのか」

星奈「言っとくけど別に羨ましくなんてないわよ!?」

星奈「携帯電話なんて無くても困らないし、あってもいい事なんてなんにも無いし!!」

星奈「あんなのはクラスでギャハハって笑ってるバカ女の持ち物なのよ!!」

星奈「あたしみたいな高貴な人間には必要ないのよ!!」

一夏「そ、そっか。まあ、携帯電話が必要ないって奴も世の中には結構多いしな」

星奈「そうよ!その通りよ!」

星奈「携帯電話どころか電話すら必要ないわ!!愚民どもは何をしていても、どこにいても、神であるあたしの天の声を受け取るべきなのよ」

一夏「それは無理だろ。でも、星奈が携帯電話を持ってないのは予想外だったな」

一夏「そういえば星奈はパソコン持ってたよな」

星奈「持ってるけど何よ」

一夏「ネットは繋がってるか?」

星奈「繋がってるけど、だから何よ!!」

一夏「ん、ああ」カキカキ

一夏「これ、俺のメアドと携帯電話の番号。あと、家の番号も書いといたから」

星奈「あ。…う、うん」ギュッ

一夏「pcからメール送ってくれればすぐに返すし、星奈もたまにチェックしてくれ」

星奈「…うん」////

一夏「とりあえず1回目のメールはタイトルに『星奈⇒一夏』っていれてくれ。変なタイトルだとスパムメールと勘違いするかもしれないし」

星奈「わ、わかったわよ」

夜空「…むっ」

一夏「少し不便かもしれないけど、暫くはこれで連絡を取り合うか…」

【一夏・右手の携帯電話が鳴り出す】prrrr

一夏「ん?」ピッ

夜空「『私だ』」

一夏「あ、ああ」

夜空「『赤外線でちゃんとデータが交換できたかの確認だが、問題ないようだな』」

一夏「まあ、滅多な事じゃ失敗しないし、失敗してもちゃんとエラーが出るから大丈夫だろう」

夜空「『せっかく電話を掛けたのだ。少し電話で話そう』」

一夏「まあ、いいけどさ」

一夏(目の前にいるのに電話で話す意味はわからないが…)

夜空「『では、昨日の夕飯の話でもするか。一夏は昨日、何を食べたのだ?』」

一夏「え?ああ、夜飯はミートソースのスパゲティと野菜スープ、あとは…」

星奈「あ、あんた達ねぇ!!昨日の晩御飯の話なんて、どうでもいいでしょうが!!」

星奈「なんでわざわざ今、電話でそんな事話してんのよ!!」

夜空「五月蝿いぞ、肉」

夜空「貴様は人が電話中に静かにしている事も出来ないのか?全く非常識な肉だな」

星奈「くううう~~っ!!」イライラ

夜空「『しかし便利だな、携帯電話というやつは。離れていても会話が出来る』」

星奈「だったら離れた所で電話しなさいよ!!」

夜空「『部活に出かける時は携帯に連絡を入れる。活動内容もメールでやりとりするか』」

夜空「『携帯があれば、パソコンと違って、どこでもメールのやり取りが出来るしな』」

一夏「あ、ああ」

星奈「ぐぐぐぐぐっ…」

夜空「ところで私の夕飯だが昨日は店で『肉』を食べたぞ。正確には鶏『肉』の入ったカレーだが鶏『肉』がやわらかくて凄く美味しかったぞ」ボソッ

夜空「その店の『肉』は鶏『肉』だけでなく豚『肉』や牛『肉』も国産にこだわっているのだが、値段をギリギリまで安くしてくれてるのが心『憎』い」

一夏(よくもまあ、丁寧に『にく』の部分だけ強調して言えるよな…。ある意味、感心するよ)

星奈「がーっ!!肉肉うるさーい!!」

【星奈・一夏の携帯を引っ手繰る】
【星奈・一夏の携帯に向きなおる】

星奈「バーカバーカアホーーーッ!!」

夜空「ぐっ!?」

星奈「死ね!!」ダダダダッ

【星奈・談話室4から走って飛び出す】

一夏「まったく夜空はピンポイントで星奈の嫌がる事が得意だな」

夜空「くっ…無駄に大声を出して、あの肉め」

一夏「それじゃあ、ちょっと星奈を捕まえてくるから、夜空たちだけでアドレス交換やっといてくれ」タタタタッ

夜空「あっ!!いち…」

夜空「……」

夜空「……」ハァ

理科「一夏先輩は基本誰にでも優しいから、結局、星奈先輩を追っかけてしまうんですよね」

幸村「あにきは弱きを助け強気を挫く立派なお方ですので」

夜空(た、確かに。私が肉を疎んで追い出しても、一夏がそれをよしとしないのは今までのやり取りでわかってたのに、なぜ私は同じ事を繰り返すんだ…)

夜空(次は肉に強く当たらないようにするか…)

今日はここまでです。

続きはそのうち投下します。

―――

一夏「星奈」

星奈「…い、一夏!?」

一夏「やっぱり教会にいたか」

星奈「な、なんで、あたしのいる場所がわかったのよ」

一夏「ん?ああ、前回もここだったからもしかしたら今回もここかなって思ってな」

【一夏・星奈の真横に近づく】

星奈「…一夏?」

一夏「星奈」

【一夏・ゆっくりと星奈の方に手を伸ばす】

星奈(え?え?)

一夏「とりあえず俺の携帯、返してくれるか?」

星奈「あ?ああ、うん」スッ

一夏「ま、まあ、あれだ。夜空のいたずら電話?は忘れろ」

星奈「べ、別に、気にしてないわよ」ムスッ

一夏「そ、そっか」

一夏(その割には機嫌は悪そうだけどな)

星奈「……」

一夏「……」

一夏「そろそろ戻るか?」

星奈「……」

星奈「あと1時間」

一夏「あと1時間って、1時間は長すぎるだろ。せめて10分くらいにしてくれよ」

星奈「いやなら部室に戻りなさいよ」

一夏「……」

一夏「…しょうがないな」

星奈「……」

【一夏・星奈の隣に座る】

星奈「…あ」

一夏「ん?」

星奈「な、なんでもないわよ」アセアセ

一夏「……」

一夏「…そういえば」

星奈「なによ?」

一夏「星奈が携帯を持ってないのって、親から持つなって言われてるからか?」

星奈「そういうわけじゃないけど…」

一夏「じゃあ、親から携帯を持っていいって、許可が出たら買いに行かないか?」

星奈「え?」

一夏「まあ、持ちたくないって言うなら無理にとは言わないけど、やっぱり携帯電話はないと不便だろ?」

星奈「そ、それって、一緒に買いに行くって事?」

一夏「ん?俺も行った方がいいならついていくけど、携帯くらい星奈1人で買えるだろ?」

星奈「……」

星奈「…つ、ついてきてよ」

星奈「前のプールみたいに変な奴らに絡まれたら嫌だし」

一夏「そっか。じゃあ、隣人部全員で行くか?」

星奈「そ、それはいや!!」

星奈「夜空とかが何かしそうだし…」

一夏「いくら夜空でも携帯を買う邪魔はしないだろ」

星奈「でも、大人数で行くのは嫌!!」

一夏「まあ、確かに携帯なんかわざわざ大人数で買いに行くものでもないからな」

一夏「じゃあ、あんまり遅い時間は俺の都合がよくないから、今日は無理だけど、明日の午前中くらいにどこかで待ち合わせるか?」

星奈(それって…まさかデート!?)

一夏「?」

星奈(…じゃないわね)

星奈「それじゃあ、明日の朝11時に学校の校門前でいいわね」

星奈「遅刻したら殺すからね」

一夏「ああ。殺されないように気をつけるよ」

星奈「……」

一夏「……」

星奈「……」

一夏「……」

星奈「…ねえ、一夏」

一夏「ん?」

星奈「何か、話しなさいよ」

一夏「何かって言われてもなぁ」

一夏「1時間も潰せるような話のネタなんか持ってないしな」

星奈「……」

一夏「星奈は何かないのか?」

星奈「……」

星奈「そうねぇ…、この前クリアしたゲームなんだけどね…」

一夏「ちょっと待ってくれ」

星奈「なに?」

一夏「やってないゲームのネタバレされても困るんだが…」

星奈「むっ」

星奈「このあたしがあんただけに話してあげるんだから、ちゃんと聞きなさいよ」

一夏「ま、また、今度にしてくれ」

星奈「……」

一夏「……」

一夏「そういや、俺、モン狩はたまにやってるんだけど、星奈はどうだ?」

星奈「あんなクソゲーやるわけないじゃない」

一夏「そ、そうか…。俺は面白いんだけどな…」

星奈「一夏ってまだあのクソゲーやってたのね」

一夏「ま、まあ、クラスの連中でも何人かやってる奴がいて、そいつらとパーティ組んでやってるよ」

星奈「ふうん…」

一夏「ああ、そういえば幸村もやってるな」

星奈「幸村も!?」

一夏「あいつ、昼休みはうちのクラスに来るんだけど、俺やクラスの連中がモン狩やってるのを暫くは見てただけだったんだけどな」

一夏「そのうちpspを持ってくるようになってさ、今はパーティを組んでやってる」

星奈「…い、いつの間に…」

星奈「……」

一夏「……」

星奈「一夏ってさぁ…、何気に幸村と仲がいいわよね」

一夏「まあ、俺以外で隣人部唯一の男子部員だしな」

一夏「本当は一年のクラスで仲のいい友達ができればいいんだけどな…」

一夏「未だに女子っぽい雰囲気から、男子には敬遠されがちっぽいんだよな」

一夏「うちのクラスじゃ溶け込んでるのになぁ…」

星奈「そうなんだ…」

星奈「でも、一夏のクラスに入り浸ってたら、余計に幸村のクラスの男子とは仲良くなれないんじゃないの?」

一夏「そうなんだよな。幸村には言ってるんだが、中々頑固でさ、あいつ」ハァ

星奈「フフッ」

一夏「ん?どうした?」

星奈「一夏って、年下の子には弱いんだなって、思ってさ」

星奈「幸村といい、マリアといい」

一夏「そうかもな。小鳩が、妹がいるから、年下には甘いのかもな」

星奈「そういえば!!」

一夏「どうした?」

星奈「何で小鳩ちゃんは来ないのよ!!」

一夏「何でって、暑いから外に出たくないって言ってたけどな」

星奈「私が部活に来てるのに!?」

一夏「星奈が部活に来てるから、小鳩が部活に来たい理由にはならないだろ」

星奈「あたし、小鳩ちゃんのお姉ちゃんなのに!!」

一夏「違うだろ」

星奈「明日は小鳩ちゃんを連れてきなさいよね!!」

一夏「暫くは無理だろ。小鳩のゴスロリは相当暑そうだから絶対に外に出たがらないよ」

星奈「むぅ~」

星奈「一夏ってホント役立たずね」

一夏「小鳩を連れてこないだけでえらい言われようだな。まったく」

一夏「……」

星奈「……」

星奈「あ…」

一夏「どうした?」

星奈「1時間、過ぎてる…」

一夏「もう、そんなに時間が経ってたのか」

一夏「それじゃあ、戻るか?」

星奈「うん!!」

一夏(いつの間にか機嫌も直ってるみたいだな)

俺と星奈が戻ると、マリアは俺のいない間に仕事に戻っていて、夜空達は何故か機嫌が悪くなっていた。
俺達のいない間に何かあったのか、と聞くと、夜空が苛立った声で何もないと怒鳴り返してきた。
幸村と理科も何故か妙に不機嫌だった。
それとは対照的に上機嫌な星奈は小声で明日の念押しだけして、一人でさっさと帰っていった。
取り残された俺も険悪な雰囲気に耐え兼ねて、今日は帰ることにした。

今日はここまでです。

続きは来週投下します。

長らく放置してすいませんでした。

時間がとれなくなって全然書けなくなってしまいました。
とりあえず暫くは時間がとれないままなので、あまりペースはあがりませんが、完結は目指します。

―――夜、織斑家

一夏「小鳩ー」

小鳩「我が名はレイシス・ヴィ・フェリシティ・煌。小鳩とは仮の名にすぎぬ」

一夏「今日、部活で星奈とマリア以外のみんなとメアドの交換をしたんだが、小鳩の携帯にもアドレスを登録しとくか?」

小鳩「ククク…他人の事などどうでもいい。我にそんなものは必要ない」

一夏「まあ、小鳩から連絡を取りそうな相手はいないし、何かあっても俺から連絡すればいいか」

千冬「おい、一夏」

一夏「なに?千冬姉」

千冬「ちょっと携帯を見せてみろ」

一夏「いいけど…」スッ

千冬「……」ピッ

千冬「……」ピッ

千冬「……」ピッ

千冬「女のアドレスが多いな」

一夏「まあ、部活は俺と幸村って後輩以外は全員女子だからな」

千冬「…なん…だと!?」

一夏「いや、そんなに驚くような事でもないだろう?女子部員っていっても小鳩含めて4人しかいないし」

一夏「あとはクラスの女子とかも一応は入ってるけど。男子のアドレスの方が多いだろ」

prrrr

千冬「……」ピッ

一夏「あ…俺の電話」

千冬「…織斑だが」

星奈『も、もしゅもしゅっ!』

千冬「…ん?」イラッ

一夏「この声…」

星奈「……」

星奈『…ぁぅぁぅ…』

ガチャッ、ツーツ-ツー

千冬「いたずら電話か」ピッ

一夏「いや。さっきの電話、多分、俺の知ってる奴だ」

千冬「お前は知り合いからいたずら電話をされるようないじめられっ子なのか?」

一夏「そうじゃないって。とりあえずもう一度かかってくるかもしれないし、電話を返してくれよ」

千冬「断る」

一夏「なんで!?」

千冬「さっきの声を聞く限り相手は女子に違いないだろう」

一夏「あ、ああ」

千冬「こんな時間に小娘が一夏に何の電話をかけてくるのか、保護者として、姉として気になるじゃないか」

一夏「いや、でも、俺宛の電話なわけだし…」

千冬「……」

千冬「そうまで必死になって取り返そうとするのは…まさか、私に内緒で電話の女と…え、えっちな事をしようとしているのか!?」

一夏「なんで!?」

小鳩「あ、あんちゃん!?」

一夏「いやいや!!違うって!!」

千冬「電話の相手もどうせ金髪巨乳の頭の悪そうな女だろ!!」

一夏「いや、大体はあってるけど…」

千冬「ああっ!!私の一夏が穢されたぁっ!!」

小鳩「うちのあんちゃんがぁっ!!」

一夏「だからそうじゃなくて!!」

prrrr

一夏「あ」

千冬「……」ピッ

千冬「…もしもし」ギリギリ

星奈『ひっ!!』

一夏「……」

千冬「…もしもし」イライラ

星奈『あ、あのっ!!』

千冬「…あん?」ガギギギ

一夏「…で、電話」

星奈『わ、ワタクシは柏崎星奈ですけど、いい、一夏、ええと、織斑一夏くんは、い、いますか?』

千冬「柏崎?…ああ、ひょっとして聖クロニカの理事長の娘か」

星奈『あ、あれ?ひょっとして…千冬さんですか?』

千冬「ああ。そうだ」

千冬「さて、こんな時間に一体何のようだ、柏崎星奈」

星奈『あ、あの、…い、一夏くんは?』

一夏「千冬姉。電話、かわってくれよ」

千冬「一夏は…」

千冬(小鳩!!一夏を遠ざけろ)チラッ

小鳩「!!」ラジャッ

小鳩「あんちゃん!!」

一夏「どうした、小鳩。俺は電話を…」

小鳩「えーっと、…そ、そうじゃ!!うちの部屋の扇風機の調子が悪いんじゃ!!」

一夏「そうなのか?じゃあ、あとでみてやるよ」

小鳩「い、今のうちにみてほしいんじゃ!!あんまり夜遅いと、暑くて寝られへんから困るんじゃ!!」グイグイ

一夏「わかった、わかった。わかったから、腕を引っ張るなって」

千冬「…今、手が離せなくてな。用件なら私が伝えておこう」

星奈『そ、そうなんですか…』

星奈『え、えっとですね、今日の件でパパが許可をくれたから、明日、待ち合わせは予定通りで、と、い、一夏くんに伝えておいてもらえますか?』

千冬「明日?待ち合わせ?」

星奈『そ、それじゃあ、おやすみなさい、千冬さん』

ガチャ、ツーツーツー

千冬「ま、まさか、一夏の奴、で、デートなのか!?」

千冬「最近の学生は貞操を軽んじている風潮があるから、きっと一夏の奴も…」

千冬「がああああっ!!!」ダンダンダン

千冬「くっ!!許さん、許さんぞ、柏崎星奈」

千冬「と、とにかくだ。二人きりにするのはよくないな」

千冬「一夏は鈍感だが、女子に迫られたら断りきれる奴じゃないしな」

千冬「ど、どうする!?」

千冬「明日は私も学校に出勤しなければいけない。サボったらまた一夏に怒られてしまう…」

千冬「じゃあ私のかわりに小鳩に見張らせるか?」

千冬「いや、無理だろうな。小鳩は暑さのせいか、夏休みに入ってから一歩も外に出てないからな」

千冬「私だって我慢して黒のスーツで出勤してるんだから、小鳩もゴスロリで外に出るくらいはやってくれてもいいのに…」

一夏「だったら千冬姉も夏くらい明るい色のスーツでいいんじゃないか?」

千冬「いいい、一夏!?」

千冬「い、一体、いつからそこに!?」

一夏「ん?今さっきだけど…」

一夏「小鳩の扇風機が動くようになったから、とりあえず戻ってきたんだけど…」

千冬「そ、そうか…」

一夏「それで、星奈はなんて言ってたんだ?」

千冬「あ、ああ。父親から許可が出たから明日の待ち合わせは予定通りでいいと言っていた」

一夏「そっか」

千冬「……」

千冬「そ、それで、明日はやはり(デートに)行くのか?」

一夏「まあ、こっちから約束したわけだし、(星奈の携帯を買いに)行かないわけにはいかないだろ」

千冬「そ、そうか。一夏から(デートに)誘ったのか」ショボーン

一夏「ああ」

千冬「女が出来ると姉や家族はこうやって蔑ろにされるんだな」ハァァ

一夏「千冬姉が何言ってるのか、よくわからないんだが…」

千冬「…もういい。明日も仕事だから寝る」

一夏「あ、ああ」

今日はここまでです。

続きは近いうちに投下します。

―――翌日・朝6時

一夏「あれ?千冬姉、もう家を出たのか」

一夏「いつもより少し早いな」

一夏「……」

一夏「せっかくマリアの分込みで弁当を作ろうと思ったんだが…」

一夏「仕方ない。朝飯と小鳩の昼飯、俺とマリアの弁当だけ作っとくか」

【一夏・料理中】

一夏「そういえば昨日でトマトジュースが切れてたな」

一夏「あとで近くのコンビニに買いに行くか」

【一夏・料理&弁当作成終了】

一夏「さて、小鳩の起きる気配もないし、さっさと行ってさっさと買ってくるか」

【一夏・コンビニへ向かう】

一夏「…このまま暫く行けば、むかし通ってた剣道場があったな」

一夏「そういや箒のやつ、中三の全国大会の会場で会ったけど、俺と目を合わせてくれなかったな」

一夏「あいつ、今も元気でやってんのかな」

一夏「…この近くだと鈴も住んでたな、確か」

一夏「久しぶりに鈴の親父さんの酢豚も食べてみたいな」チラッ

一夏「…朝8時か」

一夏「小鳩はまだ起きないだろうし、コンビニ後回しにして、ちょっと歩くか」

【一夏・移動中】

一夏「……」

一夏「おっ。見えてきたな篠ノ之神社」

一夏「……」

一夏「…これは」

神主「おやおや。いらっしゃい」

一夏(箒の親父…は、いないか)

一夏(そういえば小学四年の時に重要人物保護プログラムで箒と一緒にどこかに連れてかれたんだっけ)

一夏「……」

一夏「今…ここで剣道は教えてるんですか?」

神主「剣道?ああ、篠ノ之さんがいた頃は教えてたけど、私は剣道が出来ないんで、ここじゃ教えてませんねぇ」

一夏「…そうですか」

一夏(そういや、箒が転校してからは、俺も剣道は部活でしかやらなくなってたっけ)

一夏「ありがとうございました」

神主「いえいえ」

一夏(ここで箒と、公園で夜空と遊んでたのが5、6年経つんだな)

一夏(そういや、箒はあの頃から剣道一筋だったから、あいつに友達らしい友達はあんまりいなかったっけ?)

一夏(箒が聖クロニカに通ってれば、一緒に剣道の話や昔話とかで盛り上がれたかもな)

一夏「……」

一夏「次は鈴の家にでも行ってみるか」

【一夏・移動中】

一夏「確か、この辺りに…」

一夏「……」

一夏「…あれ?コンビニ…」

一夏「道、間違えてないよな?」

一夏「確か、この角の所に鈴の親父さんの店があったと思ったんだが…」

弾「…一夏?」

一夏「え?」

一夏「…そのバンダナ…、もしかして弾か?」

弾「久しぶりじゃないか!!お前、いつこっちに戻ってきたんだよ」

一夏「1ヶ月前だよ。今年の6月にこっちに戻ってきたんだ」

弾「マジかよ。そうだ、暇なら今日でもうちに来いよ。蘭にも一夏と会わせてやりてぇし」

一夏「妹の蘭ちゃんだっけ?懐かしいなぁ」

一夏「でも、悪い。今日は11時までに学校にいかないと駄目だから、また今度な」


※このssでは五反田弾とは小学校の時の付き合いという設定

弾「そういや、一夏。お前、学校はどこ行ってんだ?」

弾「俺は藍越学園な」

一夏「藍越か。俺も大学に行く気がないからそこに行きたかったんだが、実は聖クロニカ学園だ」

弾「聖クロニカって、キリスト教の学校じゃねぇかよ。一夏って、キリスト教徒だったか?」

一夏「いや。聖クロニカが親父の知り合いが理事長やってる学校だからさ、親父の一存でそこに決まったんだよ」

弾「ふぅん」

一夏「そういや、鈴はどうしたんだ?確かこの辺に鈴の親父さんの店があったよな?」

弾「…ああ」

一夏「…?」

弾「鈴なら中学二年の時に中国に戻った」

一夏「そうだったのか。じゃあ、このコンビニがやっぱり…」

弾「ああ。元々、鈴の親父さんの店が建ってた」

一夏「久々に鈴の親父さんの酢豚、食いたかったなぁ」

弾「…そうだな」

一夏「…でも、中国かぁ。中国は遠いなぁ」

弾「そうだな」

一夏「そういえば俺、コンビニにトマトジュースを買いに来たんだった」

弾「そっか。まあ、俺も夏休みは暇だし、一夏が暇な時に連絡くれよ」

一夏「ああ。いつも午前中は空いてるし、日によったら午後も空くと思うから」

弾「じゃあな、一夏」

一夏「ああ。またな、弾」

【弾・帰宅】

一夏「箒や鈴と会えなかったのは残念だけど、弾に会えたのは収穫だな」

一夏「やっぱり懐かしい奴に会うと地元に帰ってきたなって、実感が湧くな」

【一夏・コンビニでトマトジュースを購入】

一夏「さて、買うもの買ったし一旦帰るか」チラッ

一夏「9時か…。家に戻って、朝飯食ったら、学校に行くちょうどいい時間になりそうだな」

少ないですが今日はここまでです。

続きは近いうちに投下します。

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