マリオ「また、か……」(31)

ルイージ「兄さん! 兄さん!」

マリオ「あぁ、起きてるよ。どうした弟よ」

ルイージ「ピーチ城から手紙が……」

マリオ「ピーチ城から……パーティか?」ペラッ

マリオ「……」

ルイージ「兄さん?」

マリオ「ハッ、案の定パーティさ」

マリオ「会場はクッパ城の、な」


ルイージ「それって……」

マリオ「ま、そういうこった」

ルイージ「じゃ、遅れないように準備、だね」

マリオ「……」

ルイージ「兄さん?」

マリオ「いや、やめだ」

ルイージ「!?」


ルイージ「でも、ピーチ姫が待ってるんだよ?」

マリオ「……なぁ、弟よ」

ルイージ「?」

マリオ「こんな事もうやめようじゃないか」

ルイージ「……見捨てるのかい?」

マリオ「このイタチごっこを繰り返したって何も得ないさ」

マリオ「案がある。とっておきのな。支度を急げ」

ルイージ「……信じていいんだね」

マリオ「ああ。望む結果になるかは天のみが知るさ」

マリオ「そして天を握るのは俺だ」

ルイージ「……」ゾクッ


─キノピオの里

ルイージ「こんな田舎に……何を?」

マリオ「弟」

マリオ「今からする事はピーチ姫への反逆になるかもしれない」

ルイージ「……」

マリオ「このままの国ではこの負のスパイラルは断ち切れない」

マリオ「この国を変えない限り……な」

マリオ「お前はまだ引き返せる。ただし、引いた先には何も無い。何も……」

ルイージ「……兄さん」

ルイージ「僕はこれでも弟だ。兄さんを一番近くで見て育ってきた。兄さんと共に」

ルイージ「兄さんの事はクッパよりも、ピーチ姫よりも知ってると自負してる」

ルイージ「だから兄さんが今から何をするのかも大体はわかる。それを支えれるのは僕だけって事も」

ルイージ「引くもんかよ、兄さん。兄弟じゃないか」

マリオ「弟……ハハ、流石に同じ血が流れてるだけあるな」

マリオ「よし、じゃあ創ろうじゃないか。新たな国を、二人で」

─キノピオの里・広場

ザワザワ……

キノピオ「なぁ、マリオさんがなんかするってホントか?」

キノピオ「らしいぜ。ピーチ姫が拐われたんだし、奪還宣言でもするんじゃないか?」

キノピオ「にしたってなんでこんな田舎で……」

キノピオ「さぁな。お、始まるみたいだぞ」

キノピオ「ほ、ホントにマリオさんだ……」

ワー!ワー!

マリオ「……」


マリオ「コホン……偉大なる王国の民達よ」

マリオ「我々は古来より、この地を拓き、耕し、繁栄してきた」

マリオ「我々の誇りと、歴史が詰まった王国は、諸君の誇りでもあることだと思う」

マリオ「しかし、最近はどうだ?」

マリオ「クッパ率いるモンスター相手に、国の姫を幾度となく奪われてきたではないか」

マリオ「城の兵は毎回、何をしているのか? ……そして何故、自分達は助けに行かないのか?」

マリオ「国の姫が、自分達の主が拐われたと言うのに、私に丸投げする始末……」


マリオ「そして私は幾度となく救ってきた。姫を、国を、世界を!」

マリオ「そんな私は今どうだ? 城は、国は私に恩賞を与えたか?」

ザワザワ……

マリオ「そして、諸君は幸せか?」

マリオ「有事にも何もしない腐った貴族どもや、腑抜けた兵士に護られている今が、幸せなのか?」

マリオ「厳しい環境下でこの地を切り拓いた、あの誇り高きキノピオは何処にいった?」

マリオ「諸君、今一度考えて欲しい。この国はこのままでいいのかを」

マリオ「そして取り戻してほしい。誇りを! 自由を!」

マリオ「……以上だ。ありがとう」

ザワザワ……


キノピオ「な、なぁ……今の話……」

キノピオ「あぁ。革命を起こそうとしてるんだな、マリオさんは」

キノピオ「革命……」

キノピオ「俺は支援するぜ? 俺も嫌気が差してたんだよ、この国に」

キノピオ「俺は……よくわかんねぇよ。いきなり過ぎて……」


ルイージ「成功しそうかい?」

マリオ「掴みはいいだろうな。まぁ、まだ行く所はあるんだ。貴族のいない、田舎にな」

ルイージ「なるほどね。確かに貴族はこの現状を崩されたくない訳だからね」

マリオ「あぁ、そしてもう一つ理由がある」

ルイージ「理由?」

マリオ「恐らく、貴族の一部はクッパ城と繋がりを持っている」

ルイージ「!」

マリオ「いくら腑抜けの集まりといえど一国の姫をそう何度も奪うのは容易じゃない」

マリオ「と、なるとコチラ側に協力者がいる事になる」

マリオ「金に飢えた豚どもは姫をビジネスの道具として使ってやがるのさ」

ルイージ「……なるほどねぇ」

マリオ「さ、無駄口はここまでだ。後六箇所で演説を行うんだからな」


しばらくして、マリオ家

マリオ「反応はどうだ?」

ルイージ「結構いい感じだよ。小規模ながらデモが起きはじめた」

マリオ「そろそろだな」

ルイージ「あぁ、うん」

マリオ「行こうか」


─キノピオの街・中央広場

キノピオ達「この国に自由と誇りを!」ワーワー!

マスコミピオ「ご覧ください、キノピオ達が各地で反政府デモを行なっています。軍は対応に追われ、キノじぃは会見で……」

マスコミピオ「あぁ! マリオです! マリオが現れました!」

マリオ「マスコミも来ている……完璧だな」

ルイージ「だね。もっと広める必要があるからね」

マリオ「今の所は貴族も保身に忙しいだろうからな。アクションは起こさないだろうよ」

マリオ「さて、マスコミの前でも演説だな」

ルイージ「頑張ってね、兄さん」


───……

マリオ「誇り高きキノピオ達よ! 今こそ立ち上がれ!」

マリオ「右手に武器を、左手に自由を、胸に誇りを!」

キノピオ達「ワアァー!」


テレビ『右手に武器を、左手に自由を、胸に誇りを!』

キノピオ「……誇りか」

キノピオ「……」グッ


─ピーチ城

貴族ピオ「どういうことだ!」バンッ!

貴族ピオ2「まさかマリオが反政府デモの首謀者だとはな……」

庶民ピオ「ふん、当たり前だろうな」

貴族ピオ「なんだと!?」

キノじぃ「静粛に! まずは庶民党の方々の意見を聞きましょうぞ」

貴族ピオ「ぐぅ……」

庶民ピオ「まず、我々は姫様を救ってくれたマリオにお礼らしいお礼をしていない」

庶民ピオ「しかも、兵士はただ城にいただけ。貴族も援助は一切なし」

庶民ピオ2「そのくせ貴族や兵士は偉そうに金や権力を振り回して庶民を苦しめている。反乱は当然ですね」

キノじぃ「次に、貴族院の方々の意見を」

貴族ピオ「ふん、敵地のド真ん中にいる奴になにを、どう送れというのだ!」

貴族ピオ2「それにだからといって反乱を起こしていいわけじゃないだろう。軍は早急に鎮圧すべきだ」

将軍ピオ「ちょっと、いいですかな」

貴族ピオ「ぬ、将軍ピオ殿か。貴方からもガツンと言ってやって下され」

将軍ピオ「ふむ、ではガツンと言いますかな」

将軍ピオ「はっきり申して、軍は鎮圧には動かしません」

貴族ピオ「な、なにぃ!?」

貴族ピオ2「ボケたか将軍?」

将軍ピオ「ふむ、では問いますが……鎮圧するとマリオ殿は国家反逆罪に問われますな」

将軍ピオ「そうなると最悪死刑、良くても一生牢獄でしょう」

将軍ピオ「では、誰か姫様を救いになるのかな? 貴方達か?」


貴族ピオ「ハッ、それこそ軍が行くべきであろうが!」

将軍ピオ「お言葉ですがな、貴族ピオ殿。貴族院の方々は何故か軍縮を進めてきたのですよ」

将軍ピオ「軍は必要とわかっていながら、貴族院の方々は軍縮を進めている。矛盾ですなぁ」

貴族ピオ「……なにが言いたい」

将軍ピオ「わかりませんかな? では、ガツンと」

将軍ピオ「我々王国軍は裏切り者達には従わないのですよ」

貴族ピオ「……!」

将軍ピオ「では、これで」

マスコミピオ「あっ! 軍がでて来ました!」

マスコミピオ「いよいよ衝突……!?」

マスコミピオ「しません! なにやらマリオと……将軍ピオが話しています!」


マリオ「おや、予想よりも早いね 」

将軍ピオ「ハハ、見抜いておられましたか」

マリオ「知らない仲でもないだろう。……しかし、予想以上についてきたな」

将軍ピオ「私の自慢の部隊100人、貴方に託しましょうぞ」


マリオ「いや、指揮は将軍ピオ、任せた」

将軍ピオ「そうですか。して、これからどうするつもりで?」

マリオ「ここを拠点に、貴族街を攻め落とす」

将軍ピオ「ふむ、貴族達を捕えると」

マリオ「あぁ」

将軍ピオ「では、我々は我々で準備をしますかな」

マリオ「出来るだけ早く行動にうつさないとな。相手に準備期間を与えたら駄目だ」

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