幼馴染「あんた、いい加減にしなさいよ?」 男の娘「え?」(98)

幼「え?じゃないわよ、マジで!」

男「幼、何怒ってるの?」

幼「その髪、どうしたの?」

男「あ、これ?昨日切ったんだー」

男「夏休み最終日にイメチェン!と思って…」

男「どう?似合ってるかな?」

幼「に…」

男「に?」

幼(似合ってるわよーーーー!)

幼(似合いすぎでしょ!)

幼(これ、どこからどう見ても、女の子でしょ!)

幼「に、似合ってない…」

男「そ、そっか…似合ってないか…」

男「お姉ちゃんに連れられて、初めて行った美容室だったんだけど…」

男「そっか…美容師さん、お世辞言ってたのかぁ…」

幼(あぁ…しょんぼりしてる…)

幼(ざ、罪悪感が半端無い)

幼「…ところで、そのヘアピンは何なの?」

男「あぁ、これ?美容師さんがくれたんだー」

男「前髪はこれで留めた方が絶対良いからーって」

男「でも、似合ってないんじゃ、しょうがないよね」

男「取っちゃおう」

幼「そ…」

男「そ?」

幼「それは、そのままで良い…」

男「そう?じゃ、そのままにしておくね」

幼「だけどその美容室にはもう行かない方が良い」

男「え?どうして?」

幼「ぜ…」

男「ぜ?」

幼(絶対女の子と勘違いされてるからだよ!)

幼(言いたい!めっちゃ言いたい!)

幼(でも、男は女の子に見られてる事に…)

幼(全く気付いてないもんなぁ)

幼(なのに、何でその髪型かなぁ…)

幼(髪留めも、おかしいって気付かないかなぁ…)

男「幼?どうしたの?」

幼「な、何でもない…」

男「僕が髪切っちゃったの、そんなに嫌?」

幼「う…」

幼(ぎゃぁぁぁぁ!目を潤ませながらこっち見んな!)

幼(私が悪い事してるみたいじゃない!)

幼「い、嫌じゃないし!」

幼「髪型も…その、本当は似合ってるわよ!」

男「え?ホントに?」

幼「本当だから!ほら、学校行くよ!」

男「えへへ、良かったー。イメチェン成功って事だよねっ?」

幼「確かにイメージは変わったわね」

幼(より女の子らしくなったって意味でね!)

男「そうっ?えへへーありがとっ!」

幼(17歳男子の顔じゃないわよね、それ!)

幼(ハムスターか!)

幼(庇護欲満載の小動物か!)

幼「と、とにかく!学校行くわよ!」

生徒a「あ、あのー」

男「はい?」

生徒a「と、突然すいませんっ」

生徒a「僕、一年のaと言います」

男「は、はい」

生徒a「あの…一目惚れしました!」

生徒a「ぼ、僕とお付き合いして下さい!」

幼「…」

男「あの…すみません」

男「僕、好きな人が居るんで…ごめんなさい」

生徒a「そ、そうですか…突然すいませんでした…」

幼「…」

幼「良かったの?」

男「え?」

男「まぁ、僕は同性愛も、個人の自由だと思うよ?」

幼「あんた自身はどうなのよ?」

幼「男の子が好きなの?」

男「まさか!普通に女の子が好きだよ」

幼「さっき言ってた好きな人って誰の事?」

男「…言いたくない」

幼「良いでしょ!教えなさいよ!」

男「えへへー。ひみつっ!」

幼(その笑顔と、動作が、どれだけ女の子らしいかを…)

幼(いい加減、解りなさいよっ!)

男「さ、幼。学校行こ?」

幼「…そうね」



男「あれ?下駄箱に手紙が…」

幼「えっ!?」

男「差出人は…書いてないね」

幼「ど、どうするの?」

男「なんの手紙かわかんないけど」

男「後でちゃんと読んでみるよ」



幼「…」

幼(さっきの手紙、読んでる…)

男「…」

幼(難しい顔してる…そんな顔も可愛いけど)

男「…」
ガサガサ
ガタッ

幼「男、どこ行くの?」

男「ちょっとね。朝の手紙の事でね」

幼「ラブレターだった?」

男「うん、ラブレターではあったんだけどね」

男「どうやら入れる靴箱を間違えてたみたいで」

幼「…」



男「そんな訳で、これ、お返しします」

生徒b「そ、そうですか…」

生徒b「すみませんでした…」

男「ちゃんと良いお返事貰えると良いですね!」

生徒b「は、はい…そうですね…」

生徒b「それじゃ、僕はこれで…」
しょぼん


幼(やっぱりあの人も、間違えたんじゃなくて…)



男「え?今日、ウチに?」

幼「そ。お姉ちゃん、居るんでしょ?」

男「うん、大学の夏休みってちょっと長いらしくて」

幼「ちょーっと話しがあるから」

男「うん、解った。お姉ちゃんにメールしておくね」

幼「それじゃ今から…」

女生徒a「あ、あの、お話し中、すみません!」

幼「え?」

女生徒a「ち、ちょっと…あの…」

女生徒b「ほら、a!頑張って!」

女生徒a「い、今、ちょっと、お時間よろしいですか?」

男・幼「…」

女生徒a「あ、あの…?」

幼「え?私?」

女生徒a「そ、そうです!」

幼「な、何かな?えっと…一年生?」

女生徒a「はい!一年のaと言います!」

女生徒a「先輩、ちょっとこっち来てもらえますか?」

幼「こ、ここじゃ駄目なのかな?」

女生徒a「は、はい。他の人には聞かれたくない話しです!」

男「幼、ちゃんと聞いてあげなよ」

男「僕は先に行くね?」

幼「う、うん」

女生徒b「頑張って!a!」

女生徒a「う、うん!」



幼「で?何かな?」

女生徒a「あ、あの…私っ、先輩の事っ」

女生徒a「学校で先生のお手伝いしている姿を見かけて」

女生徒a「何か、良いなぁって…」

幼「…」

女生徒a「もしお付き合いしてる人が居ないなら」

女生徒a「私とお付き合いして貰えないでしょうか?」

幼「あ、あのね…えーっと…」

女生徒a「あの、aって呼んで下さい!」

幼「それじゃ、aちゃん」

女生徒a「は、はい!」

幼「基本的な事を聞くけどさ」

女生徒a「はい」

幼「aちゃんには、私の事、どう見えてる?」

女生徒a「え?どうって…」

女生徒a「凛々しくて、カッコ良い先輩だと思ってます」

幼「凛々しい…カッコ良い…」

女生徒a「私の理想の男子像そのものですっ!」

幼「…あの…ごめんね、aちゃん」

幼「お付き合いするのは無理」

女生徒a「や、やっぱり、さっき一緒に居た人が彼女さんなんですか?」

幼「色々、違うけど…」

女生徒a「それじゃ、どうして?」

幼「あの…私、こう見えても女なんだよね」

女生徒a「えっ!?」

幼「嘘だと思う?」

女生徒a「だ、だって…スカート…」

幼「ウチの高校、女子もスラックス登校オッケーって知ってた?」

女生徒a「そ、それは知ってます…けど!」

幼「じゃ、ちょっと」
スッ
ピトッ

女生徒a「あっ!」

幼「解ってもらえた?小さけど、一応胸あるでしょ?」

女生徒a「ご、ごめん…なさい…」

女生徒a「私…その…」

幼「いいよ。こっちこそ…ごめんね?」

女生徒a「私こそ…すみません」

幼「aちゃん、可愛いから、きっと良い人が見つかるよ」

女生徒a「ありがとうございます。それじゃ、し、失礼します…」
しょぼん

幼「…はぁ」



ピンポーン
ガチャ

男「幼、いらっしゃい」

幼「や。お姉ちゃん居る?」

男「うん。自分の部屋に居るよー」

男「さ、どうぞどうぞー」

幼「お邪魔しまーす」

コンコン
男の姉「あーい?」

幼「お姉ちゃん、ちょっとお邪魔しまーす」

姉「幼ちゃん、いらっしゃーい。待ってたよー」

幼「お姉ちゃんに聞きたい事があります!」

姉「何?さっき男からもちょっと言われたけど」

姉「何か用事?何の用事?」

幼「男を美容室に連れて行ったんですよね?」

姉「連れてったよー。私の行きつけの店なんだー」

姉「あ、幼ちゃんも行く?割引券あるよ?」

幼「あの…わざとですよね?アレ」

姉「へぇ?何が?何の事?」

幼「男の事を女子に見えるようにしてる事です!」

姉「髪を切ったのは私じゃないよ?」

幼「でもあれ、どう見ても女の子ですよね?」

姉「いやぁ。性別の事は特に言わなかったけど」

姉「美容師さんに『似合う髪型にして下さい』って言っただけだよー」

幼「男には普通の床屋さんで充分ですよ!」

幼「お姉ちゃん、わざとですよね?」

幼「何も言わなかったから、あんな…可愛い女の子みたいに…」

姉「似合ってるよねぇ、ふふふ」

幼「笑い事じゃないですよ!」

幼「今日も二人に告られてましたよ!」

姉「へぇー、あいつモテるじゃん」

幼「…男子にですよ?」

姉「へぇー、あいつモテるじゃん?」

幼「ニヤニヤしないで下さい!」

幼「男が、その…同性愛に目覚めたらどうするんですか?」

姉「その時は姉として、家族として、どーんと認めて上げるしか!」

幼「こんな時だけ、理解ある姉みたいな感じにならないで下さい!」

幼「男も男で、無自覚だから質悪いです!」

姉「いいじゃん、可愛いものが似合う人に、可愛い格好させる」

姉「別に悪くないじゃん?」

幼「いやいやいや。悪いでしょう!」

幼「男にはもっと男らしい格好をさせるべきですよ!」

姉「そんな事言ってもさー」

姉「凛々しい幼ちゃんと、可愛らしい男」

姉「お似合いじゃない?」

幼「…それ、褒めてるんですか?小馬鹿にしてるんですか?」

姉「ははは。どっちもに決まってるじゃん」

姉「可愛い妹分と、可愛い弟の事なんだからさ」

姉「もう告白とかした?あ、キスとかした?」

幼「何でちょっと言い直したんですか!」

幼「どっちもまだです!」

姉「でも幼ちゃん、男の事が好きなんでしょ?」

幼「ま、まぁ…そうですけど…」

姉「幼ちゃんさぁ、逆に髪伸ばしてみれば?」

幼「気にはしてるんですけど…」

幼「首筋に髪がかかるのが、気になっちゃって」

姉「スラックスも止めて、スカートにしなよ」

幼「…」

姉「今のままだと、ずっと男の子に見えるよ?」

幼「実は今日、下級生に告白されました…」

姉「…相手は男子?」

幼「いいえ…」

姉「だよねぇ。幼ちゃん、凛々しいもんねぇ」

姉「私がプロデュースしてあげようか?」

幼「い、いいえ…私は…」

姉「素材は良いんだからさー」

幼「私はこのままで良いです…」

姉「ま、気が向いたら相談に乗るからさ」

幼「その時は…お願いします」

幼「て、言うか!忘れる所だった!」

幼「これ以上、男の女子力を高めないで下さい!」

姉「あはは。それはあいつ次第だよー」



演劇部部長「幼ちゃん!ちょっとお話しがあるんだけど」

幼「何ですか、部長。久しぶりですね?」

演劇部部長「文化祭にね、演劇部はもちろん演劇をやるんだけども」

幼「そうでしょうね」

演劇部部長「幼ちゃんにお願いがあるのよ」

幼「何ですか?出来る事なら手伝いますよ?」

演劇部部長「良かった!幼ちゃんにしか出来ない事なのよ」

幼「はぁ…」



幼「部長、マジですか、これ?」

演劇部部長「マジよ!衣装ピッタリね!」

幼「…あの、やっぱり無理そうなんですけど」

演劇部部長「あなたなら出来る!て言うか、あなたしか居ない!」

幼「私、部員でもないのに、主役なんて…」

演劇部部長「あと一ヶ月ある!演劇部が全力でバックアップする!」

演劇部部長「だからお願いっ!」

幼「…はい」



演劇部部長「そうすれば、わたくしもこの場限りで」

演劇部部長「キャピュレットの名を捨ててみせますわ」

幼「…黙って、もっと聞いていようか、それとも声を掛けたものか?」

演劇部部長「わたくしにとって敵なのは、あなたの名前だけ」

演劇部部長「たとえモンタギュー家の人でいらっしゃらなくても、あなたはあなたのままよ」

幼「…」



幼「あの…部長」

演劇部部長「幼ちゃん、お疲れー。やっぱり私の目に狂いは無かった!」

演劇部部長「これなら、絶対本番に間に合うよ!」

幼「いや、あの…」

幼「これ、配役逆じゃ駄目ですか?」

演劇部部長「え?何言ってるの?」

幼「私、やるならジュリエットが良いんですけど…」

幼「何故ロミオ?」

演劇部部長「幼ちゃん。あなたが紛れもない女性だって事は」

演劇部部長「重々承知してるわよ?」

演劇部部長「でもね…」

演劇部部長「凛々しいロミオ役にぴったりなのは、幼ちゃんしか居ない!」

演劇部部長「演劇部で投票を行った結果なのよ」

幼「…でも」

演劇部部長「大丈夫!あなたなら出来る!」

幼「…解りました、頑張ります…」

幼(何で私が男役なのよ…)

幼(演劇部、男子部員も沢山居るのに!)



幼「ごめん、男。今日も一緒に帰れないんだ」

男「そうなんだ…」

男「実は僕も文化祭の準備で、ちょっと残るんだ」

幼「そ。じゃ、お互い頑張りましょう」

男「そうだね。それじゃ、幼、頑張ってね!」



幼「君を…一人で死神の所へ行かせはしない!」

幼「この身が朽ち果てるとも、二度と君を離しはしない!」

幼「…」

演劇部部長「オッケー!バッチリよ、幼ちゃん!」

幼「はぁ…台詞は何とか覚えましたけど…」

幼「通し稽古、してませんよね?大丈夫なんですか?」

演劇部部長「大丈夫!あなたの事、信じてるから!」

幼(明日本番なのに…大丈夫なのかな…)



文化祭当日

幼友「幼、頑張ってね!ちゃんと見てるからね!」

幼「あ、あはは…頑張ってくるよ…」

幼「クラスの出し物、ほとんど手伝えなくてゴメンね」

幼友「全然気にしなくて良いよ」

幼友「こっちの喫茶店は…何て言うか、テキトーだからさ」

幼「あはは…そう言えば、男は?」

幼「ウェイトレスの格好でもさせられてるかと思ったけど…」

幼友「あ、男君も他の部活の出し物にスカウトされたらしいよ」

幼友「幼、聞いてないの?」

幼「え?マジで?全然聞いてないけど…」

幼「ここ2週間くらいは会話も無かったような気がする…」

幼友「まぁ、幼は劇の稽古忙しかったもんね」

幼友「でも別に喧嘩した訳じゃないんでしょ?」

幼「う、うん」

幼友「教室に来たら、ロミオとジュリエット観に行くように伝えておくよ」

幼「ありがと、幼友。それじゃ私そろそろ行くね!」

幼友「頑張ってー!」



幼「あれ?部長、着替えないんですか?」

演劇部部長「あ、あぁ…大丈夫大丈夫」

幼「でも、もう本番始まりますよ?」

演劇部部長「幼ちゃん、最後に一つだけ、アドバイス」

幼「はぁ…」

演劇部部長「もし本番中、頭が真っ白になったら」

演劇部部長「客席の最前列、右側を見なさい!」

幼「はぁ…」

演劇部部長「さぁ!皆、本番行くよ!」

演劇部員「おー!」

幼「お、おー!」

幼(あれ?ジュリエットは?)



幼「ジュリエット!君を…一人で死神の所へ行かせはしない!」

幼「この身が朽ち果てるとも、二度と君を離しはしない!」
ゴクッ
バタッ
幼「…」

男「あぁ、ロミオ…何故私の分の毒を残しておいてくれなかったの…」

男「待っていて…この剣が私をあなたの元へ連れて行ってくれる…」
サッ
バタッ
男「…」





演劇部部長「いやぁ、私の見立てに間違いは無かったね!」

演劇部a「本当に!二人とも最高だったよ!」

演劇部b「スタンディングオベーションだったもんね!」

幼「あー。これは皆さんの頑張りがあったからだと…」

演劇部c「謙遜しなくても良いんだよ、幼?」

幼「あー、そうは言っても…」

演劇部部長「いいや!これは主演の二人の魅力による物だよ!」

演劇部部長「また来年もお願いしたいくらいだよ!」

演劇部部長「本当にありがとう、二人とも」

幼「部長…ちょっと聞きたいんですけど」

幼「何で、相手がこいつだって黙ってたんですか?」

演劇部部長「ナイスサプライズだったでしょ?」

男「いやあ、まさか幼がロミオ役だったとはねー」

男「びっくりして、一瞬台詞が全部飛んじゃったよ。えへへ」

幼「奇遇ね。私もよ」

男「でも、部長さんの粋な計らいで、ちゃんとカンペもあったし」

男「上手くいって良かったよねっ?」

幼(またそんな…満面の笑顔を…)

演劇部部長「さ、演劇部員は撤収作業!」

演劇部部長「二人は部室で着替えてきて」

演劇部部長「着替えたら、そのまま自分のクラスに戻って良いよ」

演劇部部長「すぐ後夜祭始まっちゃうだろうし」

演劇部部長「打ち上げは、後日盛大にやるからね!」

男・幼「はい」



幼「あんたさぁ、どこで練習してたの?」

男「僕は部員の人たちと、3年の教室で練習してたんだけど」

男「幼は?」

幼「私は演劇部の部室よ」

男「そうだったんだー」

幼「あんたはその格好に抵抗とか無いの?」

男「ん?」

幼(くっ…ムカつくくらい可愛いわねっ)

男「最初はびっくりしたけど…」

男「お世話になってる部長さんの頼みだからね」

男「断れなかったよ。えへへ」

ザワザワ

幼「な、何か視線を感じるわね…」

男「ぼ、僕たち見られてる…よね?」

幼「ちょっと急ぎましょうか」

男「幼、転ばないようにね」

幼「そっちこそね」

男「大丈夫だいじょ…」
グイッ
バタン

幼「ちょ、ちょっと!大丈夫?」
スッ

男「あいててて…だ、大丈夫…」

「何、あれ?どこの出し物?」

「あの二人、さっきまで体育館でロミオとジュリエットやってた…」

「私も見たー。超良かったよねー」

「あのロミオ役の人、超凛々しい…」

「ジュリエット、超可愛い」

「ロミオがジュリエットを抱き起こしてるの、絵になるねー」
カシャッ

「何何?こんな所で、芝居?宣伝?」
カシャッ

幼「男、早く立って!」

男「ちょ、ちょっと待って…足が…」

幼「ええい!もうっ!」
ガバッ

「きゃー!お姫様抱っこ!」
カシャッ

「あのロミオ役の人、演劇部の人かな?」

「超カッコ良い!」
カシャッ

「ジュリエットの人も、お姫様みたい…可愛い!」

幼「しっかり掴まってなさいよ!」

男「えっ?」
ダダダダダッ



幼「ふぅ…」

男「ご、ごめんね、幼」

男「抱っこなんかさせちゃって」

幼「気にしないでよ」

幼「あのまま、あそこに居たら、どうなってたか…」

幼「それにしてもあんた軽いわね…」

幼「体重どれくらいなの?」

男「今は…42キロくらい?」

幼「…」

男「ん?」

幼「なんでもない!今の話しはもう終わり!」

幼「着替えて、クラスに戻ろう!」

男「あ、うん。じゃ、僕こっちで着替えるね」
シャッ

男「何か注目されちゃったね」

幼「そうね…悪い目立ち方しちゃったね」

男「僕の事、女の子だと思ってる人も居たみたいねー」

幼「…」

幼「ねえ、男」

男「なぁに?」

幼「あんた鏡で自分の顔、見た?」

男「え?メイクしてもらってからは見てないけど…」

幼「ちょっとそこの姿見の前に立ちなさいよ」

男「え?何で?」

幼「良いから!」

スッ

男「わぁ…メイクの力って凄いねぇ」

幼「…」

男「男の僕が、まるで女の子みたいに見えるんだもん」

男「特殊メイクってやつ?ふふっ」

幼「…」

男「幼もカッコ良いよね」

幼「あんたのメイクって、時間かかったの?」

男「時間は大してかからなかったよ」

男「さすが演劇部だよね。パッパっと済んじゃったよ」

幼「…」

男「な、何?」

幼(それはほとんどメイクしてないからでしょうよ)

幼「…こうして鏡で見ると、よく解るわよね」

幼「私は身長が高くて、男子っぽい顔立ち」

幼「あんたは、身長低くて、女子っぽい顔立ち」

幼「そう思わない?」

男「僕は女の子っぽくないよ?」

男「これはメイクのお陰で…」
バシッ
男「痛っ。何で叩くの?」

幼「…そう思ってるのはあんただけよ」

男「全校生徒が、素のあんたの事、可愛いと思ってるわよ!」

男「そ、それは無いよー」

男「それに、幼の方が可愛いよ?」

幼「私は凛々しい男子生徒に見られてるわよ!」

男「そんな事無いと思うけどなぁ」
バシッ
男「い、痛いよ、幼」

幼「もういい加減認めなさいよ」

幼「自分が可愛いって事」

男「…」

幼「私も認めるからさ」

男「んー…そうかなぁ」

幼「あのさ、男」

男「んー?」

幼「私、今から大事な事言うからね?」

男「え?な、何?」

幼「私ね、男の事が好きなの」

男「え?」

幼「もうね…」

幼「好きな男の子が、周囲に女の子として見られるのを」

幼「傍で見てるの、嫌なの!」

幼「いつか、男が同性愛に目覚めて」

幼「本当にどこか遠い所に行っちゃうんじゃないかって」

男「幼…」

幼「男は…その…私の事、どう思ってるの?」

男「僕も…僕も幼の事、好きだよ」

男「他の人にどう見えようが、関係無くて…」

男「幼の事、女の子として、好きだよ」

幼「本当に?」

男「僕だって、健全な男子高校生として」

男「彼女欲しいなぁって思ってて」

男「それが幼だったら、凄く嬉しいなぁって」

男「ずっと思ってたよ」

男「お姉ちゃんが僕の事をからかって」

男「女の子っぽい格好させたがってるのは解ってるんだけどね」

男「僕、別に嫌じゃないんだ」

男「自分が可愛いとは思わないけど」

男「可愛い洋服は好きだしね」

男「だからジュリエットの役も引き受けたんだー」

男「でも、幼が嫌だって言うなら、もう止めるよ」

幼「男…」

男「でも、良いの?こんなちんちくりんな男で」

男「幼なら、他にもっとカッコ良い男の人と」

男「お付き合い出来るんじゃない?」

幼「あのね、男」

幼「…私が何年あんたの幼馴染やってると思ってるの?」

幼「外見や仕草だけじゃない」

幼「私は…優しい男の事が好きなのよ!」

男「僕も幼の事、大好きだよっ」

幼「男…嬉しいよ…」

男・幼「…」

幼「ね、キス…しようか?」

男「…う、うん」

男・幼「…」



ガラッ

演劇部部長「あ、良かったー!」

演劇部部長「二人とも、着替える前で!」

演劇部部長「…ん?どうしたの二人とも」

演劇部部長「なんでそんな目で私を見るの?」

演劇部部長「あ、それは良いや」

演劇部部長「二人とも、そのまま!衣装もメイクもそのままで!」

演劇部部長「…だから、何でそんな目で見るの?」



後夜祭

司会「それでは、今回の文化祭のベストカップルを!」

司会「盛大な拍手で迎えて下さいっ!」

パチパチパチパチ

男・幼「…」

司会「えー、今回の来場者アンケートでぶっちぎりの一位」

司会「演劇部のロミオとジュリエットで主役を務めた、この二人!」

司会「全校生徒の投票でも、ダントツ一位でした!」

司会「それではお二人から、一言ずつ頂きたいと思います!」

男「あ、あの…選んで貰って光栄です!あ、ありがとうございます!」
パチパチパチ

司会「可愛いですねっ!ジュリエット!」

司会「次にロミオさん、一言どうぞ!」

幼「…」

司会「あの…ロミオさん?」

幼「あー。丁度良い機会だから、ここでぶっちゃけちゃいますよー」
ザワザワザワ

司会「え?何をですか?」

幼「みなさーん!私は女子で、こっちの男は男子です!」
ザワザワザワ

幼「で!つい先ほど、私たち付き合う事になりました!」

ガシッ

男「ふえっ?」

幼「男っ!覚悟は出来てるよね?返事は待たないよっ!」



チュッ



姉「…で?全校生徒の前でキスしたって?」

幼「そうです」

姉「幼ちゃんさぁ」

幼「何ですか?」

姉「そう言う所、男前だねぇ」

幼「ニヤニヤしないで下さい!」

姉「で?頼みたい事って何?」

幼「前に言ってたじゃないですか」

姉「私何言ったっけ?」

幼「その…女の子らしい格好をプロデュースしてくれるって」

姉「んー?言ったっけ?」

幼「…言いましたよ」

姉「思い出せないけど、ま、良いや」

姉「でも、何で突然そんな事を?」

幼「今度の日曜、男とデートする事にしたんですけど…」

幼「いつものジーンズじゃなくて…」

幼「女の子らしい格好で、行きたいなぁと思って…」

姉「フフフ。幼ちゃん、乙女の顔になってるね~」

幼「私、その…どう言う格好して良いのか解んなくて…」

姉「よし!解った!引き受けた!」

幼「あ、ありがとう、お姉ちゃん!」

姉「引き受ける代わりに条件が一つ!」

幼「な、何?」

姉「今回のデート…全て私にプロデュースさせて!」

幼「え?全て?」

姉「あんたらの服装から、行き先まで全部!」

幼「う…それは…」

姉「どうせ、あんたら、デートもノープランなんでしょ?」

幼「まぁ…そう言う事、経験無いもんで…」

姉「じゃあ、経験豊富な、私に全部任せなさい!」

幼「若干不安なんですけど…」

姉「男には私から話しておくからさ」

姉「この私に、全てお任せあれ!」



幼「あんた、いい加減にしなさいよ?」

男「え?」

幼「その格好の説明を求めたいんだけど、どう?」

男「幼がお姉ちゃんに頼んだんでしょ?」

男「今日のこの格好、幼の了承済みって言われたんだけど…」

男「お、幼、スカート似合ってるね」

幼「そ、そう?お姉ちゃんから借りたんだけど…」

男・幼「…」

「あそこの二人、すげー可愛いな」

「お前、声かけてこいよ」

「長身の方、モデルか何かかな?」

「小さい方もモデルじゃねーの?」

「すげー良いな!」

「だな!」

幼「違う!何か違う!」

男「た、確かに…これはちょっと違うかな?」

幼「私がスカート履くのは解る!」

幼「でも、何で男までスカート履いてるの?」

男「僕だって解んないよ…」

男「ミニスカートって初めてだし…」

男「スパッツも初めて履いたし…」

幼「…」

幼「丸出しじゃないか!」

男「え?な、何が?僕、何か見えてる?」

幼「これじゃ、私が男子に見えないだけで…」

幼「姉妹感、丸出しじゃないか!」

幼「スール的な意味で!」

幼「しかも、なんなのよ、このデートプラン!」

幼「何で初デートで下着買いに行かなきゃなんないのよ!」

男「え?幼がお姉ちゃんと相談して決めたんでしょ?」

幼「相談なんてしてないわよ!」

幼「100パーセント、お姉ちゃんプロデュースよ!」

男「そ、そうなんだ?僕はてっきり…」

幼「もうっ!取り敢えず近くの服屋に入るわよ!」

男「え?」

幼「まずは男を男の子らしい格好にする所から!」

幼「行くよっ!男っ!」

男「う、うん!」




姉「フフフ…全て計画通り…さて、次の一手は…」




おわり

これで終わりです
誰か読んでくれたら嬉しいです

次スレは
男「観測史上最強だって」 幼馴染「マジで?」
ってタイトルで立てると思います
では。


タイトル見た時の期待通りだった


これからも期待してる


面白かったです

面白かった乙!

おつです


男前な幼馴染かわええ

最高だった!

えがった

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