綾波「んっ、司令官の……あったかいです」 (43)

――



提督「温度はちょうど良さそうだな」


綾波「はい、とっても美味しいです」


提督「そうか、それはなにより」


綾波「綾波が淹れるお茶よりも、心が癒されます」


提督「いやいや、まだ綾波のお茶には敵ないよ」


綾波「いえいえ、そんなことないです」


提督「いやいや」


綾波「いえいえ」













提督「……」ズズッ

綾波「……」コクッ













綾波「……夜風が気持ち良いですねぇ」ハフゥ

提督「……だなぁ」ホゥ



――

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――



提督「なぁ綾波」


綾波「はい、何でしょう?」


提督「……」


綾波「……」













提督「……?」

綾波「……?」













綾波「あっ、今日のお昼の献立は綾波特製肉じゃが定食ですよ」

提督「ごめん、何言おうか忘れただけなんだ」



――

――



提督「なあ綾波」


綾波「はい」


提督「俺達はこんな夜更けに、縁側で海を眺めながらお茶を飲んでいても良いのかな」


綾波「遠征隊が帰って来るまでの間ですから、良いのではないでしょうか」


提督「でもさぁ……」


綾波「……司令官は綾波とお茶をするのはお嫌ですか?」


提督「いやいや。このひとときのために生きていると言っても過言じゃない」













提督「……」ズズッ

綾波「……」コクッ













綾波「……そこまで言われてしまうと綾波、少し恥ずかしいです」ハフゥ

提督「俺も恥ずかしいよ」ホゥ



――

――



提督「綾波の司令官の発音って"しれーかん"に近いよな」

綾波「そうでしょうか?」



提督「試しに言ってみ?」

綾波「しれーかん」



提督「司令官」

綾波「しれーかん」



提督「し・れ・い・か・ん」

綾波「し・れ・い・か・ん」



提督「司令官」

綾波「しれーかん」



提督「……」

綾波「……?」


















提督「……まぁ可愛いからいいか」

綾波「しれーかん、しれー……んぅ?」



――

――



提督「あーやなみー」


綾波「なーんでーすかー」


提督「よーんだーだけー」













綾波「……」

提督「……」













綾波「ふふっ」

提督「ははっ」



――

――



提督「話は戻るけど」


綾波「はい」


提督「本当にこのままお茶を飲んでいても良いのかな」


綾波「……綾波はいいと思います」


提督「皆が危険に晒されているかもしれない状況なのに?」


綾波「……」


提督「時折、無力な自分がもどかしくてたまらなくなるんだ。ここぞという時に何もしてやれない自分がさ」


綾波「……」


提督「そう考えたらさ、こんな所で本当にお茶を飲んでいてもいいのか、本当は俺なんて必要ないんじゃないかってさ」


綾波「……司令官は司令官、適材適所ですから」


提督「そう、かな」



――

――



綾波「そうです」


提督「そうかなあ」


綾波「そうなんですっ」


提督「綾波は変な所で強情だな」


綾波「綾波にだって譲れないものくらいあります」


提督「だろうけど」


















綾波「……」

提督「……」


















綾波「……司令官は自己評価が低すぎます」

提督「んー?」



――

――



綾波「司令官は知っていますか?」


綾波「"ただいま"と言える人がいる安心さを」


綾波「"おかえり"と迎えてくれる人がいる温かさを」


綾波「"お疲れ様"と笑顔で労ってくれる人がいる嬉しさを」



――

――



綾波「綾波は知っています」


綾波「いつも綾波たちを一番に迎えて下さるのが誰なのか」


綾波「いつも全員が帰還し、就寝するまで必ず起きて待っているのが……誰、なのか」


綾波「少ない資材と資金を叩いて、綾波たちのために最善の設備と装備を……グスッ、揃えて、下さっているのがっ……誰っ、なのかっ」ポロポロ


提督「……」



――

――



綾波「司令官はっ、綾波たちの大切な司令官です!!」


提督「っ!」ビクッ


綾波「だから、だから必要ないだなんてっ……言わないで、くださいっ」ポロポロ


提督「……ん、ハンカチ」スッ


綾波「ありがとっ……グスッ……ございます」ゴシゴシ



――

――



提督「ごめんな、そんなつもりで言ったんじゃないんだ」


綾波「……なら……グスッ、もう言わないでください」グシグシ 


提督「ごめん」


綾波「謝るのも禁止です」


提督「すま――」


綾波「次謝ったら怒りますっ」















綾波「……」

提督「……」















提督「……お茶、冷めちゃったな」

綾波「次は綾波がお淹れしましょう」



――

――


提督「はぁ、トップの俺が弱気になっちゃダメだよなぁ。挙句、部下に弱音吐いて泣かせる始末」


綾波「そんな、綾波は嬉しいです」コポコポ


提督「そうか?」


綾波「はい、司令官はもっと誰かに甘えてもいいと思います」


提督「そっか」
















綾波「……あっ、訂正してもよろしいでしょうか?」コトッ

提督「んー?」スッ
















綾波「司令官はもっと、綾波に甘えてもいいと思います」

提督「……」



――

――



提督「これでも目一杯甘えてるつもりなんだけどな、みんなに」


綾波「もっとです、もっと」


提督「ふーむ、例えば?」


綾波「……金剛さんや酒匂さんが司令官にするみたいに」

提督「……」
















提督「……」

綾波「……」
















提督「そいつはキツイな、色々と」

綾波「綾波は、可愛いと思いますよ」コクッ



――

――



提督「あの二人の言動には困ることばかりだからな……」


綾波「そんなふうに言わなくても」


提督「好意持たれるのは嬉しい。が、処構わず抱きつかれたりすると驚くし、周りの目も気になる」


綾波「……」


提督「その二人意外にも鈴谷とか如月とか……な。俺だって上司である前に、一人の男なわけだからあんまりさ」


綾波「……」





ススッ





キュッ






提督「……突然袖を摘まれたらお茶こぼしちゃうだろー」

綾波「……」キュゥ



――

――



提督「なぁ綾波」


綾波「はい」


提督「綾波が出撃しなくなってどのくらい経つかな」


綾波「前回の大作戦以来ですから……2ヶ月ほどでしょうか」


提督「そっかぁ」


綾波「はい」


提督「……」


綾波「……」
















提督「すまな――」

綾波「えいっ」ペチッ



――

――



綾波「謝ったら怒るって言ったじゃないですか」


提督「怒っている綾波も見てみたくて」


綾波「もう」


提督「……」


綾波「……」


















提督「……綾波はさ」


綾波「はい」


提督「海に出られなくて退屈じゃなかったか?」


綾波「? 特には」



――

――



提督「意外な回答だ」


綾波「そうでしょうか」


提督「ああ、前の綾波からは想像もつかないな。意外と好戦的だったし」


綾波「む、昔の話はいいじゃないですか」


提督「これ以上の練度向上は軍規違反になるし、仕方ないと言えば仕方ないんだが」


綾波「そんなことより」


提督「……そんなことすか」


綾波「綾波は、こうして司令官と二人の時間を独り占めできるんです」


提督「……」


綾波「こんな素敵な指輪までいただきました」


提督「……」


綾波「……これ以上を望んでは、バチがあたってしまいます」


提督「そうか……」


綾波「はい」


















提督「今日からまた、頼むな」

綾波「はい」



――

――


綾波「頼むだなんて、そんな他人行儀じゃなくても……」


提督「危険な処へ送り出すんだから、頼むであってるんだよ」


綾波「心配してくださるんですか」


提督「当たり前じゃないか」


綾波「司令官……」


提督「何となく娘を嫁に出す父親の気持ちが理解できたよ」


綾波「……」ムッ


















提督「あと、そろそろ掴んでいる袖を放してくれないかな」

綾波「……絶対にいやです」



――

――



綾波「……」キュゥ


提督「あー、綾波」


綾波「いやです」


提督「まだ何も言ってないよ……」


綾波「司令官には……綾波の隣にいて欲しいです」


提督「大丈夫、ここに居るから」


綾波「……」


提督「大丈夫だから、な? お茶がこぼれちゃうって」


















綾波「……司令官は意地悪です」

提督「ごめ――いたっ」ペチッ



――

――



綾波「……そんなに綾波と一緒は嫌ですか?」


提督「そんな訳ないだろ」


綾波「……」


提督「でも、いつもの綾波の距離感とは違うからさ、こっちも困惑してるんだよ」


綾波「……金剛さんたちには許してるくせに」


提督「許可を出した記憶はないんだけどな」


















綾波「……なら綾波も勝手にします」キュゥ

提督「……まぁ、いいか」ポンポン



――

――



提督「なぁ」


綾波「?」


提督「……何か、あったのか?」


綾波「……どうしてそう思うのです?」


提督「んー、様子がおかしいから、かな」


綾波「……」


提督「俺のせい?」


綾波「いえ……」


提督「まぁ、話したくないなら聞かないけど」


綾波「……」


提督「頼りにならないかも知れんが、俺で良ければ……な?」


綾波「……」


















綾波「……昔の事を思い出してしまっていたんです」

提督「昔の事?」



――

――



綾波「司令官と出会う前の、もっともっと昔のこと」


提督「……」


綾波「まだ綾波が"今の綾波"ではない頃の記憶です」


提督「……」


綾波「……」


















提督「……そうか、今日はもう11月14日か」

綾波「……はい」



――

――



提督「時々思い出すのか?」


綾波「……夜の海を見ると、ちょっとだけ」


提督「なら、これからはお茶は昼間にしようか」


綾波「……いえ、今はもう平気です」


提督「そうか」


綾波「はい、司令官がそばに居てくださいますから」


提督「そうか」


















提督「……不甲斐なくてごめんな」

綾波「やっ」ペチッ



――

――



提督「そろそろ、おでこを叩くのやめて欲しい」


綾波「司令官が悪いんです」


提督「あー、ちょっと赤くなってきたな」


綾波「……」


提督「何だかヒリヒリするなぁ、あんなに叩かれたもんなぁ」ヒリヒリ


綾波「……ご、ごめんなさ――いたっ」ペチッ


提督「ははっ、ひっかかった」


綾波「もうっ」



――

――



綾波「あっ」


提督「ん、そろそろか」


綾波「はい、遠征隊の帰投予定時刻です」


提督「んじゃ、ちょっくら迎えに行ってくるよ」スクッ


綾波「綾波もお伴します」スクッ


提督「今日は風強いし、一段と寒いからここで待ってていいぞ」


綾波「……」


















綾波「……」キュッ

提督「……裾を掴まれると行けないなぁ」



――

――



綾波「……」


提督「……」


綾波「……暗い夜に」


綾波「……独りになるのは」


綾波「……もういや、です」フルフル


提督「……」


綾波「……綾波を置いて行かないでください」フルフル


提督「……」


綾波「……」フルフル


















提督「ん、これ羽織な」スッ

綾波「……ごめんなさ――あうっ」ペチッ

提督「謝るのは禁止なんだろ」



――

――



ザザーン



提督「おう長良、おかえり」


綾波「……」キュッ


提督「ん、初雪と白雪もお疲れ様」


綾波「……」


提督「報告は明けたらでいい。今日はもう風呂に入ってゆっくり休んでくれ」


綾波「……」


提督「……ん? ああ、大丈夫。誰だって心細くなる事くらいあるさ」


綾波「……」


提督「ほれほれ、心配しなくて平気だから、五月雨も電も早く戻ってお休み」


綾波「……」



――

――



提督「よしよし、全員いるし問題はなさそうだな」


綾波「……」フルフル


提督「……」チラッ


綾波「……」フルフル



















提督「そうでもない……か」

綾波「……」キュッ



――

――



提督「綾波、みんなも部屋に返したし俺たちも戻ろう」


綾波「……」フルフル


提督「……」


綾波「……」


提督「……あー、もう少しここに居るか?」


綾波「……」コクリ


提督「それじゃお茶持ってくる」


綾波「……」キュッ


提督「……」



















提督「ん、一緒に取りに行こう」

綾波「……」コクリ



――

――



ザザーン



提督「……」ズズッ

綾波「……」コクッ





提督「……」ホゥ

綾波「……」ハフゥ





提督「あのさ、綾波」

綾波「……?」







提督「呼んでみただけだ」

綾波「……そうですか」







提督「……」

綾波「……」



――

――



綾波「……しれーかん」


提督「んー?」


綾波「ふふっ、呼んでみただけです」


提督「はは、そうか」


















綾波「……」

提督「……」


















綾波「……何だか、安心します」

提督「そうか」



――

――



綾波「……っ」ブルッ


提督「ほれ、言わんこっちゃない。寒いなら戻ろう」


綾波「へっちゃらですよ」


提督「震えながら言われても説得力ないな」


綾波「まだ、こうしていたい気分なんです」


提督「でも……」


綾波「……でしたら」


提督「?」







ツツツ







ピトッ







綾波「こうして司令官にくっついていれば、寒くないです」スリ

提督「……そうかそうか」ポンポン



――

――



提督「なぁ綾波」ポンポン


綾波「また呼んだだけ、ですか?」チラッ


提督「違うよ」


綾波「?」


提督「また、綾波が不安になることがあったらさ」


綾波「はい」


提督「こうして海辺まで来て、夜空でも眺めながらお茶飲もうな」ナデナデ


綾波「……はい」キュッ



――

――



提督「日に日に寒さが増してきてるな」


綾波「そうですね」


提督「次に備えて、もっとしっかりした防寒具を明石に用意させようかな」


綾波「……綾波には必要ないです」


提督「そうか?」


綾波「はい。だって――」



――

――






綾波「司令官の隣は、こんなにもあったかいですから」






――

――


おわり


――

高レベル単艦放置の妄想。
そして綾波の時報やら放置ボイスが素敵んぐだったのでつい。反省はしてる、ごめん。
史実的には今晩なんだけど、どうしても外せない用事があるんだ、ごめん。

依頼出してきます。

あ、イベントお互いに頑張りましょう。

紛らわしくてごめん。
ただ、何となくタイトルに【艦これSS】って入れたくなかったんだ。ごめん。

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