凛「ふーん、アンタが私のプロデューサー?」 (14)


モバマスの二次創作。
渋谷凛がアイドルになるお話です。

ご意見、ご感想お願いいたします。

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目を開けると、街の雑踏の中にいた。

凛「あれ...ここは原宿だよね?」

何を調べるでもなく私は理解した。

私は、渋谷凛。15歳。
趣味は犬の散歩。
そして、ここで『誰か』を待っている。

凛「(でも、誰を待っているんだろう)」
ボンヤリ考えながら通行の邪魔にならないよう、通りの端に立つ。
通りの向こう側にある本屋では、サイン会が催されているようだ。
名も知らないアイドルのサイン会。
私は、目が離せなかった。
世界はそこしか存在しないかのように私の目は、そこをボンヤリと見つめていた。

何度夜が過ぎただろうか。一回も過ぎていないかもしれない。
相変わらず待ち人はこない。
目の前を巡回中の警察官が通ったが、私など見えないように去っていく。

凛「(どう見ても制服姿なんだけどなぁ...でも、私はここで待ってないと)」
謎の使命感が私にそうさせる。

待ちぼうけが過ぎたのか、時間の感覚が無くなっていた。
太陽は何度のぼり、何度沈んだのだろう。
もしかすると、太陽は一度も昇っていないし、一度も沈んでいないのかもしれない。

ふと、隣を見ると、そこには『私』が立っていた。
私と同じように道の端に立ち、通りの向こうを。本屋のサイン会を眺めている。
すると、『私』もこちらに目を向けてきた。

言葉を交わすことなく、私と『私』は隣同士で立つことにした。
4つの瞳は、本屋のサイン会を見つめている。
雑踏が止むことは無く、本屋のサイン会も続けられている。
多くのお客さんはいないようだが、少なくもないようだ。

4つの瞳は、一人の男を見つけた。
いや。男が2人を見つけたのかもしれない。
男は、人通りなど存在しないかのように2人の前に立つ。

凛「(この人が、私が待っている人なのかな)」

そう考えていると『私』が口を開いた。
そうして、『私』はその男についていった。
4つの瞳は2つになった。
サイン会は今日も終わらない。

1人になってから幾日か一瞬か経ったある日。
私の目の前にも、スーツを着た男が現れた。
メーカーは分からないが、小奇麗なスーツ。
香水でも使っているのか、彼の匂いを感じる。

凛「(この人だ。私はこの人をずっと待っていた!)」
いわゆる、ティンと来たというヤツなのだろう。
私は『私』と同じように男に言った。

凛「ふーん、アンタが私のプロデューサー?……まあ、悪くないかな…。私は渋谷凛。今日からよろしくね。」

私は、『アイドル』になった。

早速、その日にレッスンを行うことになった。
レッスン上には、私の他に10人のアイドルがいた。
髪の長い人。短い人。
メガネをしている人。していない人。
年上の人。年下の人。

凛「色んな人がいるね。プロデューサー。……私、もっと頑張るから。」
身体の底からやる気が湧きあがるのを感じる。

レッスンが始まる。
音楽が流れる。
メロディに合わせ、歌う。
身体が楽器のように高鳴り、自然と踊りだす。

凛「(楽しい…アイドルってこんなに楽しいんだ!レッスンじゃなくて、大きい会場で多くの人に見てもらいたい。多くの人を笑顔にしてあげたい!)」
自然とそんなことを思った。

P「…んっ。凛。」

凛「え。プロデューサー?」

気が付くと、音楽は止み、プロデューサーと私だけがレッスン場にいた。
他の皆は先に帰ったのだろうか。
終了の合図にも気づかないくらい集中していたようだった。

P「今日のレッスンはここまでだ。寮でゆっくり休め。」

凛「プロデューサー、休んでる暇はないよ?私、まだ出来る。」

P「これ以上やっても上手くならないし、休むことも大事な仕事だ。寮に行け。」

凛「わかった。今日は、ゆっくり休むよ。」

そうプロデューサーに言う。
ちゃんと言えたはず。
確信が持てないのは、気が付いたら寮の部屋の前にいたからだ。
どうレッスン場からここまで来たのだろう。
だが、そんなことはどうでもいい。
プロデューサーが休めと指示をくれた。
私は従うだけ。

ドアには鍵がかかってなかった。鍵穴すらない。
銀色のノブを回して部屋に入る。
白い部屋に小さい窓。そして、ベッドがひとつ置かれていた。

いつ見たのかわからない。知らないのかもしれない。
だが私は、その部屋をドラマで見た「独房」のようだと感じた。

凛「なにもない…か。よいしょ。」
行儀悪く掛け声を出しながらベッドに腰掛ける。
この部屋には自分しかいないのだから、多少は良いだろう。
ベッドは、柔らかく私のお尻を受け止めてくれる。
レッスンの疲労感が心地よい。
次は、どんな仕事だろうか。
次も、またレッスンだろうか。

そう思いを巡らせていると、ドアが急に開けられた。

凛「きゃっ…もうプロデューサー。ノックくらいしなよ。女の子の部屋だよ。」

P「ん?ああ。すまん。気を付ける。…さて次の仕事だ。仕事というかレッスンだ。レッスン場に来い。」

返事をする暇もなく、私はレッスン場にいた。
しっかりレッスン着にも着替えている。

凛「(まただ、変なの。でも、あの快感を味わえるなら…)」

先ほどのレッスンの疲労感は、いつのまにか無くなっていた。

レッスン場には、また私を含め11人のアイドルがいた。
そのなかに『私』がいた。
『私』はフリルをあしらった和服のような衣装を着ていた。

凛「かっこいい…青っていうより蒼だね。私もいつかあんなふうになりたい。」

新たに決意を固め、レッスンに臨む。

音楽が流れ、歌う。
でも、先のレッスンのように集中ができない。
私は、私の歌が歌いたい。

でも、『私』の歌がすべてを覆い隠し、消していく。

『私』の歌に耳が奪われた。
『私』のダンスに目が惹かれていく。

私は『私』を無視できない。
『私』の歌はどこまでも華麗で、ダンスはどこまでも綺麗だった。

身体が軽くなる。まるで、『私』の歌に吸い込まれるようだ。

凛「(ずっと聞いていたい。ずっと見ていたい)」

アイドルとして有るまじきことを考えてしまう。

凛「(ダメ!私はアイドル!魅せられるんじゃなくて、魅せていかないと!)」

気が付くと、私は空に浮かんでいた。
空に浮かぶとしか、表現が出来ない。
空から、プロデューサーと『私』を見下ろしている。

レッスン場には、プロデューサーと『私』だけしか存在していない。

私は、『アイドル』じゃ無くなった。


意識が朦朧とする。
まるで夢の中にいるように。
ぬるま湯に浮かぶようにふわふわしている。

凛「(ここは、どこだろう?)」

白い世界をどこまでも、ゆっくりと沈んでいく。
底に身体があたり、優しく跳ねる。

目を開けると、街の雑踏の中にいた。

凛「あれ...ここは原宿だよね?」

何を調べるでもなく私は理解した。

私は、渋谷凛。15歳。
趣味は犬の散歩。


私は、ここで『誰か』を待っている。


-了-

乱文失礼いたしました。

HTML依頼だしてきます。

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