P「テニスがしたい」 (25)

小鳥「どうしたんですか、突然」

P「いや……ほら、もうすぐ全仏オープンじゃないですか」

小鳥「そうなんですか?」

P「それで、誰が優勝するんだろう、とか考えてるうちに」

小鳥「テニスがやりたくなった、と」

P「そうなんですけど、難しいかな……仕事が忙しいし……」

小鳥「そうですよね……」



P「…………仕事、か」


小鳥「?」


————

——


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P「——という訳で、フランスでの仕事が決定した」

響「どういう訳なんだ……?」

美希「ミキ、フランス初めてなの!おフランスなの!」

貴音「海外での仕事ですか……まこと、緊張しますね」

P「……さらに、ロケの次の日は一日オフだ」

美希「それって……」

P「お前たちも最近頑張ってるし、フランス観光でリフレッシュしてくれ」

響「おぉー!」



P(俺は全仏を見に行くけどな!)

貴音「それで、具体的にはどのような事をするのでしょうか?」

P「あぁ、簡単に言うと食レポだ」

美希「食……おにぎり食べられるかな?」

響「フランスでおにぎりは無理だと思うぞ」

P「……いや、食べられるかもしれない」

響「えっ?」

P「今回は『フランスにある日本料理店』がテーマなんだ」

美希「じゃあ、おにぎり食べられるの!?」

貴音「ふらんすで日本料理とは……面妖な……」

P「まぁ、フランス料理ならオフの日に食べればいいさ」

響「フランス料理……フランスパンとか?」

美希「それはいつでも食べられるって思うな」

響「おにぎりだってそうじゃないかー!」

貴音「あなた様、ふらんすに行ったことは?」

P「いや、実は俺も初めてだ」

P(ちゃんとパスポート用意しとかないとな……)

—————


P「…………」

P「……ふっ!」パコーン

P「はっ!ふっ!ほっ!」パカーン スコーン カキーン

P「………っらぁ!!」ズドン

P「ふぅ……」


P「見てないで出てこいよ、響」

響「えっ!?……あ、バレてたのか?」

P「バレバレだ」

響「うっ……」

響「その、プロデューサーって……テニス、上手いんだな」

P「……別に、大したことないさ」

響「昔やってた……とか?」

P「高校でちょっとな。今でも、ときどきやるんだけど」

響「ときどき、って」

響(現役の頃はどんだけすごかったんだ……)


P「……響、ごめんな」

響「えっ?」

P「俺が、全仏を見たい……それだけの理由で、フランスの仕事を取ってきてしまった」

響「プロデューサー……」

響「自分は大丈夫さー!フランスのロケ、楽しみだし!」

響「それに、趣味を大事にするっていいことだぞ!」

P「響……」

響「時間があったらさ、自分にもテニス教えてよ、プロデューサー」

P「……あぁ、そうだな」


P「そんなことより、早く帰らないとダメだぞ?明日はフランスなんだからな」

響「うぎゃー!そうだったー!まだ準備できてないぞ……」


—————

キーーーーン


P「やっと……着いたぞ……ッ!」

美希「長かったのー……あふぅ」

響「外国人がいっぱいだー!」

貴音「響、ここではわたくしたちが外国人ですよ」

響「あ、そっか」


P「……じゃ、さっさと済ませちゃうか、日本料理!」

美希「おー!なの!」

P(……とはいえ)

P(経費削減のため、同行するスタッフはいない。俺がカメラを回すだけ……通訳もいないのだ)


P「まぁ、平気だろ……多分」

貴音「あなた様」

P「ん、どうした?」

貴音「休んでいる暇はありません……行きましょう、一刻も早く」

響「自分も、ちょっとお腹空いたぞ……」

P「そうだな、行こうか」

店主「HEY、お待ちッ!」ドン

P「どうも」


美希「……」

響「……」

貴音「これは……」ゴクリ



美希「……ラーメン?」

P「あぁ、そうだ」

響「うぎゃー!なんでフランスまで来てラーメンなんだー!」

P「いや、いつもの味っていうのは大事なんだ」

P「日本人がフランスに長期滞在してたら……そのうち、いつものラーメンが恋しくなると思わないか?」

響「な、なるほど……」

貴音「そうですよ響、らぁめんを侮辱するものではありません」ズズー

美希「美味しければなんでもいいって思うな」ズズー

響「……って、普通に食べちゃってるし!食レポは?食レポはいいのか!?」



美希「そういえば、ラーメンって中華料理じゃないの?」

貴音「わたくしたちが呼ぶ、いわゆる『らぁめん』とは、中華そばのことです。れっきとした日本料理なのですよ」

美希「へぇー」


P(……まぁ、これはこれでいいか)

フランスには良い思い出がないだけに期待。

美希「お腹いっぱいなのー!」

貴音「まさか、この店で替え玉ができるとは思いませんでしたね」

響「まさか、貴音があんなに替え玉するとは思わなかったぞ」


P(全仏は、と)カチカチ

P(もう今日の試合は終わってるみたいだ……明日行くか)


P「みんな、今日はお疲れ!移動で疲れただろうし、そこのホテルで休もう」

美希「あ、もしかしてハニーとお泊まり?」

P「俺は隣の部屋だ」

美希「ぶー、けちー」

P「……ここだ」


響「おぉ……!」

美希「ベッドなのー!」ボフッ

貴音「これは……素晴らしき景観ですね」

美希「フカフカなの……ムニャ……」


P「明日は一日自由だけど、ずっと寝てるって訳にもいかない」

P「変に夜更かしとかするなよ?」


貴音「承知致しました」

響「それぐらい平気さー!自分、完璧だからな!」

美希「すー……すー……」


響「……しっかし、ホントいいホテルだよね、ここ……」

貴音「朝食はばいきんぐだそうですよ」

響「ホント食べるの好きだよね、貴音……」

貴音「いえ、それを差し置いても、ここが素晴らしい旅館であるのは事実です」

響「えっ?」

貴音「水泳場やじむ、庭球のこぉともあるようですよ?」

響「す……すごいな……」

貴音「凄いと言えば、先ほどのらぁめんですが」

響「あぁ、すごい美味しかったもんね」

貴音「わたくしは、日本に帰ってもあの味を忘れることはないでしょう」

美希「確かに、すっごく美味しかったの!」ガバッ

響「あっ、復活した」

美希「……でも、不満もあるの」

貴音「不満……ですか?」

美希「うん」


美希「おにぎりが無かったの!あの店には!」


響「……お、おにぎり?」

美希「ラーメンと言えばおにぎり!おにぎりと言えばラーメンなの!」

響「そんなの初めて聞いたぞ……」

美希「ミキ的にはそうなのー!」

貴音「面妖な……」


響「……あれ?でも……」

美希「?」

響「確か、あのお店……ラーメンライスセットもあったような……」

美希「………………えっ」

ナダルかジョコビッチがとるだろーな。 一応フェデラーもホルダーだけどちょっと勝てる気がしないしマレーや爆発力のあるデルポも欠場するらしいし。
女子は正直なところ全くわかんない

—————


P「……………」


P「……はっ!」スパーン

P「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」ズドドドドド

P「…………はぁーっ………はーっ……」



P「……いつからそこに?」

貴音「あなた様が、らけっとを握って目を閉じたところからです」

P「ほぼ最初からじゃないか」

貴音「このこぉとは……このような時間でも使用できるのですね」

P「あぁ、そうだ……というより、そういうコートがあるホテルを選んだからだ」

貴音「……!」

P「……あんまり、人に見せられる練習法じゃないしな」

貴音「凄まじい迫力でしたよ」

P「ありがとう」



貴音「……あなた様」

P「ん?」

貴音「ふらんすでも、月は見えるのですね」

P「……そうだな」

貴音「明日……いえ、本日は……全仏おぉぷんを見に行くのですか?」

P「その予定だ」

貴音「ならば……何ゆえ、あなた様自身が庭球の練習を?」

P「……」

貴音「……」


P「……なんで、だろうな」

貴音「……」

P「きっと……はしゃいでるんだ。初めてのフランスだから」

貴音「……そうですね」


—————

響「美希ーっ!早く起きないと、置いてくぞー!」

美希「むにゃ……もうちょっと……」

響「つべこべ言わない!」ガシッ

美希「うー……」


P「おはよう。よく眠れたか?」

貴音「ええ、とっても」

P「そうか」

貴音「あなた様は?」

P「……快眠だ」

貴音「そうですか」

P「今日は、自由行動だ」

P「18時にもう一回ここに集合するから、遅れないようにな」

響「あれ、全員でどっか行くんじゃないのか?」

P「……ごめん、俺に個人的な用事があってさ」

響「ふーん……」


貴音「あなた様、あなた様」

P「どうした?」

貴音「………あれを」

ザッ ザッ ザッ ザッ


冬馬「……」

北斗「……」

翔太「……」


P「あれは…………ジュピター?!」

響「なんでフランスにいるんだ……?」


??「誰かと思えば……三流プロダクションの方々じゃあないか」

貴音「あなたは……」


黒井「まぁ、海外にやっと出てこれる程度には足掻いているようだな」

P「黒井社長……何の用です?」

黒井「クク、そう勘ぐるな……ただの海外ロケだ」

P「じゃあ、なぜあなたもわざわざフランスまで……」

冬馬「そりゃ、今は全仏とカンヌが」

黒井「余計なことを喋るな、冬馬」

冬馬「……」


黒井「そっちの三人を、貴様がプロデュースしているのか?」

P「ええ」

黒井「………いやなに、彼女たちも知らない仲ではないのでな」

P「……」

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