桃子「能力なんてららら~っすよ!」宥・姫子・一「は?」 (29)

とあるカラオケ店にて––––。

桃子「虹を目指して~アクセルふかす~はがねの機体~やしんをのせて~♪」

一「みんな、何か頼むかい?」

桃子「私はアイスティーだけでいいっす」

宥「私もアイスティーで充分かな」

姫子「うぅ…私も…」ぐすっ…

姫子「ぶちょ…ぶちょ…」

宥「大丈夫…?」


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桃子「かぜかあらしか~青いせんこう~♫」

桃子「はやてのように~♪」

姫子「くやしかよー!」うわーん

桃子「ざぶ…うわぁ!?」

姫子「あっ…ごめんなさい…」ぐすっ…

桃子「構わないっすよ。今日は鶴姫さんを励ます為のカラオケオフなんすから」

一「もしよければ、何で泣いているのかボクたちに話してくれるかい?」

宥「うん、私達でよければ力になるよ?」

桃子「そうっす!一人で悩んじゃ駄目っすよ」

姫子「みんな…ありがとう…それじゃあ話すとよ」

姫子「悩みって言うのは、ウチとぶちょーの能力のことなんやけどね」

宥「能力って、リザベーションのこと?」

姫子「そうばい…ウチとぶちょーとの強い絆の能力。最近、その能力も日に日に強力になっていって、その…シテる時、誰でシテるのかおぼろげやけど判るようになったとよ…//」

桃子「シテるってその…//」

姫子「ウチの事思ってシテる時は本当に嬉しいんばい。でも…最近、他の子を思ってシテる回数が多くなって…」

一「他の子?」

姫子「安河内先輩でやってる時が、今週に入って一番多いと…昨日も美子、美子、言ってやってたばい…」

宥「リザベーションで、そんなことまで判っちゃうんだ…私が菫ちゃんが他の子の事を思っているって知ったら…ぶるぶる…あったかくない…」

姫子「そういえば部活中もぶちょーは安河内先輩ばっかり構ってるばい…もう、ぶちょーはうちに愛想を尽かして…うわーん!」

一「そんな…あの白水さんに限って鶴田さんを見捨てるだなんてありえないよ」

桃子「でも判るっす。私もこのステルス能力のおかげで先輩との間に距離を感じるっすよ…」

姫子「桃子ちゃんも?」

桃子「私のこのステルスのせいで先輩も時々、私のことを見失うみたいで、この間のデートの時も、待ち合わせ場所へ行ったら先輩、誰も居ない場所に向かって延々と会話してたっすよ…」

一「うわぁ…」

桃子「私が目の前で大声を出すまで、全然気付かなかったっすよ…お陰で周りから変な人扱いっす」

宥「私も…あったかい牌が集まるのはいいんだけど、その寒がりの所為でいつも菫ちゃんに迷惑かけてばっかりだし…」

一「ボクも…やっぱりこの手品が過去の罪を思い出させるのか、手品を披露すると時々透華が悲しそうな表情を浮かべるよ…」

桃子「こんなことならいっそう能力なんて…」

ばたん…

霞「ふふん♪髪をなびかせて~心はためかせて~あなたは駆けてく~まだ見ぬ愛へ~♫」

霞「あらあら、遅れてごめんなさいね~♪」

桃子「鹿児島のカスミンさん」

霞「それと、先ほどの話少しだけ聞かせてもらったわ」

姫子「リザベーションの話?」

霞「そう、みんな能力の所為で思い人との関係に少し距離を感じるって話よね」

宥「うん…でも、能力なんて自分じゃどうにもできないし…」

一「ボクも、出来るだけ使わないように意識してもつい使っちゃうし…」

桃子「そもそも影の薄さなんて失くせるのなら、とっくの昔に失くしてるっすよ…」

霞「ふんふむ…私のは降ろす降ろさないだから、降ろさなければ良いだけだけど…」

宥「お医者さんにも診てもらったことがあるけど、私の寒がりはどうにもならないって…」

霞「そうだわ、小蒔ちゃんならどうにか出来るかも」

桃子「眠り姫さんにすっか?」

霞「そうよ♪小蒔ちゃんの降ろす神の中に、能力を制御出来る神様が居るかもしれないわ」

一「でも、神代さんは鹿児島に居るんじゃ」

霞「今からみんなで鹿児島にこればいいじゃない♫」

桃子「でも、そんなに急にお邪魔して迷惑じゃないっすか?」

霞「迷惑だなんてそんな、みんなあなた達が遊びに来る事を楽しみにしてるわ」

姫子「それじゃあ…その神代さんに頼めると?」

霞「ええもちろんよ。私達女の子に恋する義姉妹じゃない、困ったときはお互い様よ♫」

宥「ちょっとあったかーい♪」

桃子「それじゃあお邪魔させて貰うっすよ!さっそく鹿児島までの電車賃を卸して…」

霞「あらあら、電車なんかに乗らなくても私が送ってあげるわよ?」

一「えっ?石戸さん、もしかして車の免許が?」

霞「ええ、こないだ取ったばかりで、今日もここまで車で来たのよ。車はお父様から借りたものよ。型は古いけどしけには強いわ」

桃子「しけに強くてどうするんっすかね…」

霞「とにかく、みんなを乗せて鹿児島までなんてお茶の子さいさいよ」

宥「それじゃあ、お願い出来ますか?」

霞「いいわよ、みんな送って行ってあげるわ」

桃子「ありがとうございます。これでみんな鹿児島までいけるっすね」

一「うん、これも石戸さんのおかげだよ」

霞「それじゃあカラオケが終わったら出発するわよ」

それから数時間後、鹿児島へ。

キキー!!

キュー!!

どん!どかん!!

霞「快適なドライブだったわ」つやつや…

一「うぅ…気持ち悪いよ…」

宥「あったかくない…」ぐてー…

姫子「ぶちょー…ぶちょー…」くらくら…

桃子(蒲原部長の運転で慣れておいてよかったっす)

永水…

春「そこで私は清澄の部長さんにまとわりつく金髪片目ストーカーさんにこう言ってあげたの…」

初美「ふんふむ…」

春「『あんた久のなんなのさ』って…」にこっ

初美「それは凄いですねー」

初美(この話、もう十回目ですよ…)

巴「もうすぐ、霞さんが帰って来るそうですよ」

初美「そうですか、もう少し向こうで遊んで来ると思っていたんですけどね」

小蒔「はっ!?」

初美「どうしました?姫様?」

小蒔「あの気配がします」

初美「霞ちゃんでも帰って来たんじゃないですかね?」

小蒔「確かに霞ちゃんも居ますが、他にも強い気配が4人ほど…」

がらがら…

霞「ただいま♪」

初美「おかえりですよー」

春「お帰りなさい…」ぽりぽり…

霞「小蒔ちゃんにお客様を連れて来たわ」

桃子「御邪魔します」

一「どうも」

宥「神代さんを尋ねて来ました」

小蒔「私にですか?」

姫子「どうしても神代さんの力を借りたいとよ!」

巴「姫様の力を…」

初美「兎に角、話を訊いてみましょう」

四人は小蒔に各々の事情を説明した。

初美「なるほどー、能力の所為でね…」

巴「私は能力者じゃないですから判りませんが…」

姫子「このリザベーション能力の所為で、こんなに苦しい想いをするなら…早く消し去りたいばい…」

桃子「お願い出来ますかね?」

小蒔「解りました。私に出来る事なら、精一杯努力しましょう」

霞「それじゃあ卓の準備を始めなくちゃね」

桃子「まずは私と姫子さんと宥さんが入りましょう」

一「ボクはその後お邪魔するよ」

初美「はるるも巴ちゃんも居ますし、もし何かあったときのお祓いもできますね」

姫子「これで…リザベーションに苦しめられることもなか…」ごくりっ…

こうして、数局が経過。

桃子「もう、こんな時間っすね…」

一「ふぁ~あ…こんなに夜遅く…これじゃあ神代さんに悪いし今日はお開きで…」

姫子「仕方ないばい…」

小蒔「そんな…明日には皆さん帰ってしまうんでしょ?」

宥「うん、帰らないと学校に間に合わないからね」

霞「姫子ちゃんはまた今度の休日にでも挑戦すればいいけど…」

小蒔「駄目です。せっかく皆さん私を頼って此処までおいでになられたのに…手ぶらで帰すなんて…」

桃子「でも、神代さんの体の負担もあると思いますし…」

小蒔「いいえ!私なら大丈夫です。皆さんで能力の神様が出て来るまで頑張りましょう!」

霞「小蒔ちゃん…」

小蒔「ここからは全力以上で当たらせて頂きます!」ぼっ!





宥「うぅ…もうくらくらだよ…」

一「人生で一番、麻雀を打ったかも」

小蒔「イヒヒ…誰じゃ?この哀れな老婆を起すものは…」

桃子「!?」

姫子「もしかして能力の神様!?」

小蒔「ケケーッ…いかにもッ!わしが”能力”の神様じゃァ!」

一同、事情を小蒔に憑いた神様に話す。

小蒔「なるほどのう…能力を消し去りたいと…ちィーッと、勿体ない気もするがのう」

桃子「出来るっすか?」

小蒔「出来る?いや…出来て当然じゃッ!空気を吸って吐くように!HBの鉛筆をペキッ!とへし折るようにッ!能力を消すことくらい朝飯前じゃァ!」

その時、四人を眩い光が包み込む。

桃子・姫子・一・宥「うわぁ!!!?」

今日はここまでです。

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