女先輩「チャラララララー♪」男「国旗をしまってください」(45)


女先輩「チャラララララーララー♪」

男「先輩、あの。ここ大学とかじゃないです。ファミレスですよ」

女先輩「知ってるよ?」

男「『オリーブの首飾り』歌うのやめてください」

女先輩「あ、この歌 オリーブの首飾りっていうの?」

男「知らないで歌ってたんですか…?」

女先輩「いやほら。よくさ、マジシャンの人がコレBGMに流してるから」

男「ああ… まあ代表的なかんじですよね」

女先輩「というわけで チャララララ ラーララー ララー ララー」シュルシュルシュル…

男「やめてください。国旗をしまってください」


女先輩「えー? だって、これくらいしか手品って出来ないし」

男「手品になってませんよ! 普通にショルダーバッグから出しちゃってるじゃないですか!」

女先輩「だめ?」

男「主に、他のお客さんやお店の雰囲気的に迷惑なんで、ダメですね」

女先輩「うう… 失敗」

男「まったく…。ああ、僕、トイレにいってきます。ちゃんと国旗、しまっておくんですよ」

女先輩「これ、たたむのすごく面倒くさいんだよね」

男「そうなんですか?」

女先輩「うん。きれいに引っ張り出すために、こう、一枚づつ裏表に折り返してくの」

男「なんでそんな面倒なもの持ってきたんですか…」

女先輩「なんでって、手品のためだよ?」

男「・・・・・・トイレ、いってきます・・・」はぁ


カタ、ギ・・・
テクテクテク・・・・

女先輩「うーん・・・ あんまりウケなかったかー・・・」


数分後

男「戻りました。すみません、一人にしてしまって」

女先輩「だいじょーぶだよー」

男「あ、料理 もう来てたんですね… って」

女先輩「ふふふ・・・ どう?」

男「・・・・・・どう、と言われましても・・・」


男「どうして頼んでおいたプロシュートに、ネックレスが乗ってるんです」

女先輩「ふふふ! さすが! すぐに気がついたようだね!!」

男「あたりまえです」

女先輩「では さっそく…」

男「?」

女先輩「エキストラバージンオリーブオイルー! パパパパーン パンパン パッパパーン!!」スッ 

男「ねこ型ロボットの真似なんでしょうが、それはファイファンの戦闘勝利時の効果音です」

女先輩「ぐっ。ま、まあいいの! 雰囲気さえでれば!」

男「アイテム出しただけで勝利するようなゲーム…、ちょっと気になるかもしれません」クス

女先輩「そ、そう? えへへ… あ、それで。 ええと、これを…」トロ…

男「ストップ」ガシッ


女先輩「ひゃっ! …び、びっくり。急に腕を掴まないでよ、男くん。ボトル落としそうになっ…」

男「掛ける気ですか?」ジッ

女先輩「え、えっと… う、うん」

男「食べ物を粗末にしてはいけません」

女先輩「あ。・・・え、えっと これはその・・・」タジタジ

男「……ああ」

女先輩「な なに?」

男「もしかして・・・ ネックレスにオリーブオイルかけて、『オリーブの首飾り!』とかやるつもりでした?」

女先輩「ぎっくん」

男「やめてください」

女先輩「はい・・・ ごめんなさい」シュン…


男「まったく・・・ 何がしたいんです」

女先輩「それは・・・」

男「せっかくのプロシュートも食べれなくなりますし。ネックレスだって、オイルで使い物にならなくなりますよ」

女先輩「ネ、ネックレスは大丈夫! 露天で買った安物だし!!」

男「……」

女先輩「う。・・・・・・反省、します」

男「じゃあ、もう腕は放します。絶対しないでください」スッ

女先輩「あ…」

男「? あ。すみません、もしかして 腕・・・痛かったですか?」

女先輩「え!? いや、そうじゃないよ! 大丈夫!」

男「焦って掴んだんで、少し強かったかもしれません・・・ 少し、赤くなってしまってますね。すみません、先輩」


女先輩「う、ううん… 私が悪かったよ。ごはんは無駄にしちゃだめだよね」

男「そうです。プロシュート、おいしいですよ。はい、先輩も食べましょう」

女先輩「うん・・・・・・」


女先輩「!!」

男「どうしました?」

女先輩「すごい! なにこれ! おいしい!!」

男「あれ? もしかして、食べたことなかったんですか?」

女先輩「無かったー! だって、たかがハムの癖に高いんだよ! コレ!!」モグモグ

男「たかがハムって」クスクス

女先輩「しかも生だよ!? 焼くって工程無くしておいて高いって! おかしいもん!」パクッ! モグモグ


男「先輩の中で、ハムと生ハムのつくられ方が それぞれ間違ってるのがわかります」アハハ

女先輩「え? なんか違うの?」

男「さて。僕もそんなに詳しくは知りません」

女先輩「生ハムのプロに聞かないとわかんないよねー。企業秘密かな」

男「企業秘密、世界中に漏洩してますよ」クスクスクス

女先輩「」パクパク モグモグ

男「プロシュート、おいしいですか?」

女先輩「すっごい、おいしい!!」

男「僕の分も食べていいですよ」

女先輩「え? 悪いよ。 いいよ、男くんが食べて」

男「足りなければ追加します。ここ、安いし」

女先輩「確かに、ここ安いよね! やっぱ大学生イタリアンって感じ!」


男「あー…… いつかちゃんとしたお店、連れて行きます」

女先輩「え? なんで?」キョトン

男「……なんでというか…」

女先輩「んー… まいっか。うん、じゃあ 来月の3連休でいこっか!」

男「日程が近いですよ! もうちょっと日数ください!」

女先輩「いや。でも。軽井沢あたりとか、探せば近場でありそうじゃない? 生ハム専門店!」

男「え」

女先輩「探してみよーよ。おいしい生ハム」

男「生ハム…」

女先輩「生ハム…の、話だよね? プロシュートって生ハムだよね?」

男「…………… あ、はい。生ハムです」


女先輩「なに。その微妙な間」

男「帰ったらすぐにでも、がんばって美味しい生ハム屋さがします」グッ

女先輩「なんで急にやる気に… 日数くれとか言ってたクセにー」

男「先輩が食べるくらいの生ハムだったら なんとかなるんで」

女先輩「なんとかならないほどの生ハムがあるの? レアハム?」

男「先輩、もう黙ってて」クスクス

女先輩「!?」

うちの接続の調子がおかしいから時間改めます・・・


***

帰路

女先輩「ふぁー。おなかいっぱいだー」

男「結構たべましたね」

女先輩「うん! 生ハムあったら、ごはん3杯くらい食べれそう」

男「気に入りました?」

女先輩「すっごく!!」

男「ちなみに、その生ハム オリーブオイルとネックレスで無駄にしようとしたのも覚えてます?」

女先輩「ぐっ」

男「覚えてるようで、何よりです」


女先輩「空のお皿にネックレスいれて、オリーブオイルかけとけばよかった…」

男「そういう問題じゃないです」

女先輩「生ハムさんに申し訳が無くて…」

男「オリーブオイルとネックレスには?」

女先輩「お、オリーブオイルも美味しいよね! ネックレスはまあいいや」

男「…そのネックレス 似合ってると思いますよ」

女先輩「そう? 安物だよ?」

男「先の、飾りのところが小さくて。でもよく見ると 結構、細工が細かいですよね。好みです」

女先輩「地味じゃない?」

男「派手ではないですね。 …派手じゃなくて、小さくて、でもよく見ると綺麗で…先輩らしいっていうか」

女先輩「むー」

男「そういうのが、好きなんで」フイ


女先輩「そうなの? …っていうか、なんで怒ってるの?」

男「怒ってないです」スタスタ

女先輩「いやいや… そっぽ向いて、いきなり早足って。ちょ、ちょっとまってよ!」タタタタ

男「……」スタスタ

女先輩「ねえー どうしたのー!」タタタタタタ!

男「……あれですね」

女先輩「なに?」

男「歩幅の差を実感します」

女先輩「急に馬鹿にされた!?」

男「小さいのはいいことです」

女先輩「男くんも、小さいほうだよねー」

男「」グサ

女先輩「?」


男「……はぁ」テク…テク…

女先輩「あ。ゆっくりにもどったー よかったー」

男「……あれ?」ピタ

女先輩「わっ」ドスッ


女先輩「急に止まるとか…」

男「何かあったんでしょうか、あれ」

女先輩「え? あー… 女の子だね」

男「疲れて座り込んでる…って感じじゃ なさそうですね」

女先輩「・・・ピコン!」

男「何の音です、それ」

女先輩「ふふふ・・・明智くん」

男「僕の名前は『男』です」

女先輩「謎は全て解けた!」

男「むしろ先輩の謎が深まるばかりです」


女先輩「まあいいや。いってあげよー」

男「ただの待ち合わせとかかもしれませんよ? 誰も他に声かけてないですし」

女先輩「んー。でもタブン、あれ 具合わるいんだと思う」

男「え」

女先輩「オンナノコの問題―! ここでまってて!!」スタタタ!

男「あ・・・」


女先輩 <だいじょうぶ? もしかして、お腹いたい?
女性 <あ… すみません… ちょっと、立ちくらんじゃって…
女先輩 <あー ソレかなーって思ったー 私も結構ヒドい方だし
女性 <なんか、すみません…
女先輩 <一人じゃ不審がられるよ。男の人に声かけられても困るしねー
女性 <そうなんですよ… トイレとか病院とか言われても…
女先輩 <わかるー。収まるまで知人のフリしといてあげるよ
女性<いえ、そんな。悪いです


女先輩<あ、そういや私 痛み止めあるよ。いる?
女性 <う… それ、すごくありがたいです… でも、いいんですか?
女先輩 <いいよいいよー
女性<10分もすれば、ちょっと波がおさまるかなーって思うんですけど…
女先輩<あ。そういえば、駅のトコちょっといったとこに 満喫あったよ
女性<満喫?
女先輩<畳の部屋で、グっと伸びて寝れる
女性<すごい誘惑 アハハ
女先輩<だよねー アハハ


男(いや、状況はわかったけど…)

男(こんなの、僕はどうしたらいいんですか。先輩)ハァ


***

女先輩「やー…ご、ごめんね、男くん! 怒ってるかな?」

男「いえ、ほんの二時間ほど合図しても無視されて突っ立っていただけですので、怒るほどでも」ジロリ

女先輩「う、腕組みで仁王立ちされると少し怖いかなー?」

男「そうですか?」ジロー

女先輩「うん。あ、でも少し珍しいよね」

男「? 何がです」

女先輩「男くんがそうやって、なんか“男の人”っぽいことしてるの。ちょっとりりしい感じしてかっこいいかもしんないね!」ニパッ

男「っ」ドキ

女先輩「え? やめちゃうの?」

男「……」ハァ

男「怒る気がうせました」


女先輩「もうちょっと見ててもよかったかもしれないのにー」

男「もういいです… それで彼女はもう?」

女先輩「うん、大丈夫だよー。まっててくれてありがとうね!」

男「……まあ、置いて行くわけにいきませんから」

女先輩「ん、なんかいい匂い…。 …あっ! 移動販売のメロンパン屋さんだ!? ちょ、ちょっといってくる! 待ってて!」スタタッ

男「ほう…。こんな話をしているそばから、先輩は平気で僕を置いていくんですね」

男「……ほんとに。すぐに置いていかれて」

男「いつも、僕ばかり追いかけて。 そろそろ、キツイですよ。先輩」


***

テクテクテク…

男「あ、いた」

女先輩「男くん! ごめんね! 行列ができてたのと、丁度完売で 次の焼き上がりまでまだあと20分…」

男「まだ20分待たせるつもりだったんですか?」

女先輩「う」

男「……」

女先輩「ごめんね…でもね」

男「はい、なんでしょう先輩」

女先輩「この移動販売、駅のほうには週に1回くるんだけどね。すっごーく美味しいんだよ」

男「へえ、そうなんですか」


女先輩「男くんが生ハムおしえてくれたから、今度は私がおいしいものオススメしてあげたくって」

男「え。それで、わざわざ並んでるんですか?」

女先輩「この移動販売屋さん、うちのすぐ近所に店があるんだけどね。ほんとにそれくらいオススメなんだよ! 絶対おいしいよ!」

男「近所…」

女先輩「私は週4で食べてるよ!」ムンッ

男「食べすぎです」クス

女先輩「絶対おいしいから! だから男くんも食べてみてほしいの!」

男「そうでしたか、ありがとうございます。週4で食べてるくせに、走って追いかけるほどのオススメじゃあ 食べないわけに行きませんね」

女先輩「! 向こうに公園あったよね! 買ったら、ベンチで食べようっ!」

男「はい、先輩」


***

カリッ…フワッ
パクン…

男「うわ… ほんとに、美味しい」

女先輩「!」パァァァ!

男「これ、ちょっとすごいですね。あ、しかも中にメロンカスタードはいってる」

女先輩「でしょう!? プレーンと夕張の2種類あるんだよ!」

男「メロンパンが本当にメロン味ってのも驚きますね」

女先輩「えへへ・・・」

男「うん、これは美味しい。もうすこし多めに買ってもよかったですね」

女先輩「よ、喜んでくれた!?」

男「はい、すごく。これを知らずにいたら損です」

女先輩「そ、そんなにかぁ…」エヘヘ


男「」モグモグモグ

女先輩「気に入った?」ワクワク

男「」モグモグモグ

女先輩「おおー 男くんが返事をしない程、くびったけになってる!」


女先輩「…じゃあ、トリックはもういいかなあ・・・」ポツリ

男「トリック?」

女先輩「ひゃっ! 聞いてたの?! な、なんでもないよ!」

男「トリックって、なんのことです? まさかまた手品でも・・・」

女先輩「ち、違うよ! 『とりっくおあとりーとー』の話だよっ! って、ああ! バラシちゃった!!」

男「えっと・・・。バラすもなにも、ハロウィンならもう一週間ほども過ぎましたが…」

女先輩「ハロウィン?」


男「ハロウィンの遊戯ですよね、Trick or treatって」

女先輩「トリック・お後・REITじゃないの?」

男「!? なんです、その無茶苦茶な言語分解」

女先輩「え、だから うまいこと騙してリートさせようって話じゃないの?」

男「まったく意味がわからないので、解説してもらえますか先輩。まず、リートって何ですか?」

女先輩「えー、そこ? 男くん、FPとか金融とか ちゃんと授業受けてる?」

男「まさかの経済用語なんですか!?」

女先輩「リートって、不動産投資信託だよ」

女先輩「Real Estate Investment Trust、略してREIT(リート)」

女先輩「投資家から集めた資金で不動産を購入し、賃貸収益や売却益などを投資家に分配する投資商品」


男「ああ・・・そういえばなんか聞き覚えがあるような気もしますね…」

女先輩「Trickって、騙すってことでしょ?」

男「この場合、本来は『いたづらする』だったんですがね」

女先輩「え!? そうなの!?」

男「はい。『お菓子をくれなきゃいたづらするぞ』っていいながら、お菓子をねだる子供の遊びですよ」

女先輩「……みんなが とりっくあおとりーとって こないだからよく言ってるから…」

男「先輩、ハロウィンしらなかったんですか?」

女先輩「うーん…? 小さい頃から思い出しても、ハロウィンってやった記憶ないんだけどな。…なんか新しいイベント事なの?」

男「いえ、昔からあります。クリスマスと同じくらいメジャーと思っていただけると…」

女先輩「嘘だッ!」

男「なんで急にヒグラシでたんですか。それ、ちょっと怖いですよ」

女先輩「聞いた覚えないよ!」

男「あ。そういえば、僕も特別にイベントらしいことをした記憶はありませんね」

女先輩「うー… 今年はみんなして、とりっくおあとりーとって言うから。なんだろうなって考えてて・・・。友達にほんとっぽく話されて騙されたよう」

男「それはそれは、非常に先輩だけが騙されそうな『ほんとっぽい話』ですね」クス


男「…というかですね、先輩。もし“騙した後でリート”だとしても、それ悪質な詐欺なんですが何がしたかったんです?」

女先輩「え!? そ、それはっ」

男「悪いことをするつもりだったなら許しませんよ」

女先輩「わ、悪いことなんか…」

男「ほう。では教えてください」

女先輩「~~~い、いえない!」

男「・・・・・・」

女先輩「・・・・・・言わない・・・」

男「」ハァ

女先輩「お、男くん?」


男「先輩は、よくわからない行動をするけれど 馬鹿正直で素直なんで」

女先輩「?」

男「だから、安心して追いかけていられましたが。・・・隠し事をして、しかも何か悪いことを隠すようでは自信をなくしますね」

女先輩「えーっと・・・ 男くん」

男「すみません、先輩。僕、帰ります」

女先輩「え、ちょ… ちょっとまって! 怒ったの?」

男「いえ、怒った訳ではありません。ですが、諦めるかもしれません」

女先輩「諦める?」

男「…先輩のことを」

女先輩「え」

男「少し、一人で考えてみたいので。申し訳ないですが、失礼します」クルッ

女先輩「あ」


男「……」テクテクテク…

女先輩「ま…」

男「……」テクテクテク

女先輩「まってよ! 男くん!」

男「……」テクテク

女先輩「うー…」

男「……」テクテクテクテク

女先輩「まってって… いってるでしょーーーーーー!!!!」


ズダダダダダダダダダダダ

男「!?」


女先輩「うおりゃー!」ズダダダ・・・

男「・・・・・・全力で走ってる割に、ほんの150mを走るのが遅すぎる・・・!?」ビックリ

女先輩「言うにことかいてひどいよ! 男くん!」ダダダッ

ボスッ

男「っと」

女先輩「追いついた! 捕まえた!」ニヒヒ

男「っ」ドクンッ


女先輩「説明しよう!」

男「こ、今度はヤッターマンですか。ジャンル広いですねっ」

女先輩「トリックを仕掛けて、巧妙な罠で男くんを騙そうとしたのは謝るよ!」

男「え? 僕を?」


女先輩「うまく狙って喜ばせて有頂天にさせる作戦だったんだけど、失敗ばっかりだったよ!」

男「……?」

女先輩「相手をその気にさせて盛り上げて購入させるのは、マルチでも常套手段だからね!」

男「何か僕に買わせるつもりだったんですか?」

女先輩「うん、だからREIT」

男「……不動産購入するほどの資金!? 一流レストランですら連れて行けないのに!?」

女先輩「一流レストラン? 何の話?」

男「い、いえ。 それはいいんですが」

女先輩「だから…つまりね」

女先輩「男くんのことを喜ばせて…私のこと、こいついいなー、スキだなーって勘違いしてもらって」

男「は?」

女先輩「それでその… ちょっと信託してくれないかなーって」

男「で、デート商法…!」

女先輩「ち、ちがうよっ」


男「どう聞いてもデート商法ですよ、それ!?」

女先輩「~~~だ、だから! 私のこと、買ってくれないかなって!」

男「へ」

女先輩「不動産… ん? あれ」

女先輩「人って例えるなら不動産かな。感覚的に、老いと共に年々減価償却していくところとか不動産っぽいとおもったけど 動産・・・ いや、むしろ消耗品・・・?」

男「いえ、論点がおかしいです先輩」

女先輩「だからその… 私のこと買ってもらえれば、ちゃんと損失ださせないようにうまく運用して利益配分もしてみせるよってことで!」

男「すみませんが、これは何の講義でしょうか?」

女先輩「れ、恋愛の講義かなっ?」

男「・・・・・・で、ですよね? それにしては単語が・・・」


女先輩「・・・・・・とりっくおあとりーとって そういう話だとおもったんだもん・・・」

男「どうしたらそんな勘違いが生まれるのか解説して欲しいですね」

女先輩「説明しよう!」

男「ヤッターマンはもういいです」

女先輩「みんながね、とりっくおあとりーとってやったあとに、その・・・」

男「?」

女先輩「か、彼氏できたーとか、その・・・うまいことイチャコラしたーとかいうからっ」

男「イチャコラって古いですね」プッ

女先輩「そこはどうでもいいの!」

女先輩「だから、その。その気にさせて、うまいこと 男くんGETだぜ!っていう作戦で・・・」

男「………」


女先輩「いひひ・・・ツッコんでも貰えなくなっちゃった」

女先輩「やっぱり、駄目だったよね! やり方が汚いって言うか・・・一時的にでも振り向かせて隙をつくような真似…!」

男「・・・・・・・・・」ギュー

女先輩「お、おおう? 男くん?」

男「いえ、ちょっと嬉しくて」

女先輩「えっと・・・ その、あの」

男「先輩って、本当に頭はいいけどバカですよね」

女先輩「ひどいね?! 期待させておいてひどい言いようだよ、男くんっ!」

男「騙されました」

女先輩「え? 本当に? どの作戦が成功してたのか、今後の参考までに聞かせてもらっても…」

男「いえ、先輩の作戦は全て全滅ですね。むしろ逆効果のものが多かったように思います」

女先輩「」


男「でも、見事に騙されました」

女先輩「…なにに?」

男「脈がないのかと、思わされてました」

女先輩「…えーっと。頚動脈も大動脈も静脈も動脈もちゃんとあるよ?」

男「さすがに無理がありますよ、先輩。もしかして照れてますか?」

女先輩「うう。だって、脈がないハズないじゃん… なかったら」

男「なかったら?」

女先輩「貴重な勉強時間を交遊なんかのために使わないよ」キッパリ

男「人間関係が意外とシビアですね、先輩」


女先輩「・・・脈、あるよ。おおありだよ」

男「本当に、すっかり騙されるところでした」

女先輩「私の身体の中、無いところがないくらい・・・ 脈、あるよ」

男「相手が先輩でなければこんな無粋なこと聞きませんが、その脈というのは血管ではなくて、恋愛として成功の脈があるという話でいいですか?」

女先輩「本当に無粋だね! いくら私でもそこまで誤魔化し続けないよ!」


男「購入します」

女先輩「え」


男「先輩に、僕を信託します」

女先輩「男くん…」


男「ハァ…。本当に、なんて色気のない告白なんでしょう」

男「流石にもうちょっとくらい色気づいてくれると嬉しいですよ、先輩」

女先輩「ご、ごめんね?」

男「反省してくれるのでしたらいいです。おいおいの利益配分とやらに期待しましょう」

女先輩「ふふ。間違ってたけど、トリックお後REIT、成功だねっ!」

男「いえ。決め手になってないので、それは失敗ですね」

女先輩「決め手?」

男「あ」

女先輩「・・・・・・? 決め手になるようなことがなんかあったの?」

男「実を言うと」

女先輩「実を言うと?」

男「僕ばかり追いかけているような気がして、疲れてもいたんです」

女先輩「そんなことっ」

男「せめて一度でも追いかけてきてくれたら、と」


男「追いかけてきてくれて。僕のことを捕まえてくれるようだったら・・・一生捕まったままでもいいなと思ってました」

女先輩「・・・そ、それってもしかして?」

男「丁度、そう思いながら感傷にひたりそうになっていたら、ものすごい鈍足で実行してくれたので。喜びも感傷も吹き飛ぶほど驚きました」

女先輩「鈍足は余計だよ!」

男「あまりに鈍足なので、これならもし逃げられてもあっという間に追いつけるなあって、自信につながりましたよ」

女先輩「え、えっとね。あの… それって、これって、結局…つまり?」

男「説明しよう」

女先輩「男くんがヤッターマンに!?」

男「はい。ヤッターマンです」

男「ほんとに。ヤッターヤッターって、両手挙げて大喜びしたいほどです」


女先輩「いひひ… してもいいよ!」

男「しません」

女先輩「相変わらずクールだね! そんなんだから男くんはわかりにくいんだよ! 私のこと好きなんだったらそういってくれたらよかったのに!」

男「それはこちらも同じセリフですよ、先輩」

女先輩「トリック考えるのだってすっごい大変だったんだから!」

男「考えた結果が手品もどきとか、本当にばかですよね」

女先輩「そだね! 無駄だったみたいだしね!」

男「でも、そこまでして僕を追いかけて振り向かそうとしていてくれたなんて。本当に嬉しいです」

女先輩「~~むぅ。ヤッターヤッターって、やってみて!」

男「やりません」


女先輩「嬉しいんだったらやってみろー!」

男「やりません」

女先輩「嬉しくないの?!」

男「いえ。すごく嬉しいですが」


男「今は、この手を離したくありません」ギュー


女先輩「・・・・・・えへへ。しょ、しょうがないから許してあげ…」

男「先輩。好きです」

女先輩「ふぇっ」

男「好きです。先輩はどうですか?」

女先輩「…うん。私も好きです。付き合ってください」

男「こちらこそ、お願いします」

女先輩「ふふふ」

女先輩「やったー、やったー、やったーわーんっ」バンザーイ

男「そこはヤッターワンなんだ」クス


女先輩「な、なんかあれだね! 嬉しいね!」

男「はい。すごく嬉しいです」

女先輩「そうだ! こういうときこそ、いいものがあるんだった!!」 

男「なんですか?」

女先輩「本当はね、これ 手品用品じゃなくてパーティー用品なんだ! お部屋に飾るお祭り用の商品なの!」

男「…まさか」

女先輩「じゃあ改めて! 今度はめでたい感じで、やっるよー!」



女先輩「チャラララララーン♪」シュルシュルシュル

男「やめて、歌わないでください!」

*****

おしまい

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