【艦これ】「君と聞きたいライトミュージック」【安価】 (55)


< スレの主旨 >


安価で頂いた艦娘と提督のショートショートを、作業中に聞いている音楽のイメージで書いていきます。
お時間ある方はお付き合いくださいな。 
のんびり投下予定により、お茶でも片手にまったりと見ていただけると有り難い。


一人目の艦娘

>>3

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1415173859



>>3



明るい声が聞こえる。
無邪気を纏う子どもの声が。

朗らかな声が聞こえる。
陽だまりを想起する声が。

優しい声が聞こえる。
とうの昔に忘れた母のような、赦しで包み込む穏やかな声が。


「……ーい、ねぇ。 司令官、司令官ってば!」

自分の横を見ると、何やら不安げな表情を浮かべる雷の姿があった。
どうやら何度も私を呼んでいたようだが、返事が無いので困っていたとの事だ。

少し考え事をしていた旨を告げると、彼女の唇は三日月を描き、うっすらと八重歯を覗かせる。

「何を悩んでいるかは分からないけれど、大丈夫。 安心して貴方は成すべき事を成せばいいのよ!」

見た目はまだ学徒隊にすら届かないであろう、年端もいかない少女の言葉に励ましを受けた。
しかもそれが存外頼もしくて、滑稽さを覚えた胸が私の表情につい現れたようだ。

「なによー、そんな顔して」

不服そうな雷を見るあたり、苦笑でもしていたのか。
なんでもないと声をかけ、彼女の柔らかい髪をくしゃりと軽く撫でてみる。
手の平の下にある顔は見えないが、あまり嫌な顔はされていないと思いたい。

手を離してみると、キラキラした目でえへんと胸を張るような仕草をしている雷が見えた。

「よかった。 ようやく笑ったわね」

冷血。鉄面皮。
そう言われてきた私の表情を、どうしてこの子は分かるのだろうか。


「大丈夫よ、司令官」

明るい声でそう告げる。

「貴方の全ては大丈夫。 だって……」

朗らかな声で語りかける。


「私がいるじゃない」

優しい声で伝えてくれる。


君がいれば大丈夫。そう信じてもいいかも知れない。

そう思い、明日死ぬ私はそっと彼女を抱きしめた。



BGM: 骨 / 天野月子  http://www.youtube.com/watch?v=JPzKegoFgXc

二人目の艦娘

>>7

赤城さん


>>7


資料作成や調書整理などの事務業をしていると、人は二つのパターンに分かれる。
作業の片手間に口を動かして気晴らしを図る者と、黙々滔々と目の前の業務に取り組むもの。

どうやら私と赤城は前者のようで、執務室の机一面に広がる紙束の土壌に他愛も無い話という花が咲いた。

訓練など真面目に勤しむ姿を普段から目にしている分、今の赤城には妙なギャップがある。
曰く、最近の焼き芋の質の良さ。
曰く、加賀を着飾ってみたいが体良く断られ続けている。
曰く、好きな歌が少し古臭いことを指摘されて地味に傷ついた。
普通の話をする際の赤城は、普通に笑うのだ。

私は事務業など好きではないが、常に纏う硬い表情が崩れる赤城を見れるという一点においては雑務に感謝をしている。


「それでですね、提督。 この前の休みの日に行ったカフェなんですが……って、提督?」

はて、と赤城が首をかしげる。どうにも相槌を打ちそびれていたようだ。
聞いている聞いている、と慌てて返答をする。

「全く、書類に目も通してなかったですね。 一体何を見ていたんですか?」


君の笑顔だよ。


「……え?」


思わず口が滑った。


質問に対して答えを返した。それだけの至ってシンプルな内容だ。
別段誤解されるようなことは何一つないだろう。

しかして、赤城は違った。

私が発した言葉を彼女の耳が感知した瞬間、それはもう耳まで真っ赤になっていた。
そしてゆっくりと目線を資料に向け、彼女は静かに業務を再開した。

まずった。これは非常によろしくない。
言葉を選ぶというのは日常生活において無意識に行なっている筈なのに、何故こういう時だけ上手くいかないものか。
だが今更どうこうなるわけでもなく、これこそ後の祭りだろう。

対面の机に目を伏せているため俯いている赤城は、垂れた前髪で表情が見えない。
ただ、耳が朱色に染まって肩がプルプルと震えているのは確認できた。

楽しかったお喋り空間が、いつの間にやらカリカリと物を書く音に包まれている。
このままでは妙に気まずいまま業務を終えることになってしまう。誘爆を防がなくては。
私はとりあえず元の空気に戻すため、何かしらの話題提供を投げかけてみる事にした。


「なぁ、赤城。 お前は今好きな人とかいるのか?」



ぶふぉっっっ、と対面に座る彼女が盛大に咳き込む姿を見て確信する。

この話題は失敗だったと。


「知りません」

俯きながら声を押し殺すように呟いた彼女はなんだか妙に可愛かった。

これ以上墓穴を掘ると、加賀から制裁を受ける危険もあるだろう。
不承不承、この話題を取りやめることにした。


執務室にカリカリと響くペンの音。
随分と長く資料を片付けている気がして時計を見ると、まだ二十分も経っていない。
先ほどの明るい話題はどこへやら。
静か過ぎると逆に集中できない身としては、やはり赤城と喋りながらの方が効率が良いのだ。
そう思い、机から目を離して対面の彼女を見てみると。

「えっ、あっ、その……」

赤城と目が合った。しかも向こうの方が先に顔をあげていた。
あたふたしながら慌てて彼女は目線を下げる。一航戦の誇りはどこへやら。

……もしかして、ずっと私を見ていたのか?


そのままじっと赤城を見つめてみた。
肩がプルプルしたかと思えば忙しなく手が動いて、チラリとこちらを前髪の隙間から覗いてはまた目を伏せる。
なんだこいつかわいいな、などと思っていたら。

「て、提督! そういえばですね!」

急に声を張ってきて驚いた。

「今日のA定食ってデザート何ですかね!?」

思わず肩の力が抜ける。と、同時にここが一番の落し所と気付いた。


「甘栗と柿を選べるらしいぞ」

「え!? 本当ですか!?」

「ちなみにお前はどうするんだ?」

「そうですね…私は甘栗、いや、柿も捨てがたい……。 提督はどっちにします?」

「私は栗にしようかと考えている」

「じゃあ私は柿にしようかな。 半分こ、しませんか?」

「お前は食い意地はっているからな。 半分とかいいながら全部食うつもりか?」

「そんなこと多分しませんよ!」

「多分!?」


ようやく部屋に談笑が戻ってきそうだ。ナイス赤城。


正規空母の華、一航戦。 戦場では凛とした佇まいで敵に挑むその姿は、絢爛の言葉が相応しい。

だがこうして喋るその姿は、平凡そのもの。

私だけが知っている艦娘の愛しい日常。

今こうして向けられた笑顔を守るため、私は私で戦うよ。


「なんですか、提督。 急に微笑んで」


朗らかな笑顔の君につられたのさ。


今度は口を滑らせず、心の隅でそう呟いた。




BGM: Movin On / Elliot Yamin     http://www.youtube.com/watch?v=c_19q2MkCQU


三人目の艦娘

>>18

飛鷹


>>18


飛鷹は実に真っ直ぐな艦娘だ。素晴らしい。
全ての事柄を真摯に受け止めるのは私的に非常に好感が高いのだが、いかんせんそこが問題でもある。
もし万が一他の艦隊にコンバートされることになって、そこの鎮守府を牛耳る提督がジョーク好きだと仮定しよう。
ジョークすら気付かない艦娘は解体だ、などという事があるやも知れない。

考えすぎなのは重々承知。だが、石橋を叩いて壊して鉄橋にして渡ることこそ提督業に就く身の基本だ。
決して僕が過ごす日々の免罪符としての考えではないのを補足しておこう。
そう、全ては飛鷹のため。 そうなのだ。


「おはよう、飛鷹。 昨晩はよく眠れた?」

艶やかな黒髪をなびかせる彼女に朝の挨拶を交わした。
昨日寝る前に怖い話をしてみたら、思いのほか効いたようだ。目の下に薄いクマが出来ている。
彼女は僕をジト目で見つめると、はぁと軽く溜息。

「おはよう、提督。 どこかの誰かさんのおかげで、とってもよく眠れたわ」

彼女なりの精一杯の皮肉さえ可愛い。
だがあえて反応せず、するりと流してみた。

「それは良かった。 だって昨日の話は充分な睡眠が除霊の条件だからね」

「えっ」

いきなり真顔になったかと思えば、途端に顔から血の気が引いているのが分かる。
ここは一つたたみかけてみよう。

「言ってなかったっけ? むしろちゃんと眠らないと背中にずっと憑いてくるって?」

「言ってない! 言ってないわよ!!」

あわあわしている彼女を抱きしめたくなる衝動を堪え、僕は言葉を続ける。

「でも飛鷹、さっきはよく眠れたっていってたし、まぁ大丈夫だよね」

「……ぬぐっ!」

飛鷹は痛いところを突かれたと言わんばかりに眉間にシワを寄せ、言葉に詰まる。 可愛い。


「ち、ちなみに提督。 もし万が一眠れない人がいたらどうなるの?」

「それは万が一にならないと分からないなぁ。僕がこの話をした人の半分くらいはちゃんと眠れているし」

「ちょ、ちょっと! もう半分はどうなったの!?」

「……」

「なんで肝心な所は黙るの!?」


何故にこうも全てにおいて良いリアクションを返すのか。
それはきっと彼女の純真さと真っ直ぐさが理由なのだろう。

あんまりからかうと罰が悪くなりそうなので、泣き出す前にネタバラシをしてみた。


「もう、そんなことだろうと思ったわ。 お姉さんをからかいすぎちゃダメって言ってるでしょ?」

そう言う飛鷹は心底ホッとした顔を隠しきれていないので、危うく吹きそうになってしまう。
笑いを堪えている顔は流石に分かるのか、ムッとした顔で僕を見ると、そのまま歩みを食堂に進めていく。

「飛鷹、どこ行くの?」

「朝食をとってきます。 また執務室で会った際はしっかり絞りますからね、提督」

「うん、また後でね」


約一時間後にお説教があるという事を告げ、飛鷹は僕に背中を向ける。
その背中に向けて、僕はいつもの如くこう伝える。


「飛鷹、好きだよ」


「なんなの、もう……冗談はやめてって、もう……」


怒っているのか、照れているのか。後ろ姿の彼女の表情は分からない。

普段は冗談しか言わない僕の唯一の本気を、いつもの冗談だと捉えている彼女との進展は、なかなかどうにも難しい。



BGM: fiction escape / KEYTALK    http://www.youtube.com/watch?v=LW51qdUKDbs


四人目の艦娘

>>30

熊野


>>30


昼下がり、提督不在の鎮守府執務室にて。
膨れたお腹もこなれてきて、眠気との戦いが各所でおこる気だるい時間帯を、更に弛緩させるような溜息が一つ。

「はぁ~~~ぁ……。 ふぅ……」

その溜息は、神戸生まれのお洒落な重巡から零れていた。
提督が普段座る椅子に体育座りで腰掛け、両膝の隙間に顔をうずめる。

「はぁ……ぬふんぅ……」

秋新作のリップを塗った瑞々しくも潤いのある唇からは、色気の無い吐息が零れるばかり。
それもその筈。彼女は悩んでいた。悩みがあるから故に漏れる息も自然と重くなるのだ。
そんな彼女にとっての悩みは一つ。

「恋、してみたいですわぁ……」


初恋すら未経験の、自分の恋愛偏差値の低さである。


それは以前、鈴谷と映画を見ていた際の事。
タイトルは忘れたが、泣ける恋愛モノとしてかなり有名なものだった。

「お゛ぅっ……ごべん熊野、ディッシュどっで……」

「ディッシュ? 構わないけれど、お皿を何に使うのかしら?」

「鼻チーンするや゛つどってぇ……」

そう言われてティッシュを箱ごと鈴谷に渡すと、彼女は勢いよく鼻を噛んで、噛み切れなかった分の鼻水を啜り上げた。
そのまま丸めた紙くずをゴミ箱に入れると、また何事もなかったかのように映画に目を向ける。

「ちょっと鈴谷、はしたないですわ。レディたるもの、映画を観るときも優雅にするべきですわ」

「えー、だってこれ凄い泣けるから仕方ないよ。熊野はこういう経験ないの?」

「何を言うかと思えば…恋愛はレディの嗜みの一つでもありますわ。当然……」

「当然?」

「あ、い、いえ、何でもありませんわ」


ふと振り返ってみて、気付いた。
同じ仲間や友人などをそう呼ぶことはあれど、一人の異性としては。

“好きな人”という括りに、自分は当てはめるべき人物がいないということに。


またしても溜息一つ。恋する乙女とは縁遠いものを霧散させる。
そんな熊野にも、異性といえば一人だけ思い浮かぶ人がいた。
自分の所属する艦隊を指揮する、提督そのひと。

だが、しかし。

「あの方は無愛想すぎますわ……男も女も愛嬌の良い方が好きになると決まってますの……」

どうやら面食いの気がある事に本人は気付いておらず、それがまた恋愛初心者に拍車をかける。
提督の座椅子でくるくる回りながらも熊野は考えた。
思考回路は提督のことだ。一番身近で手頃な異性、それが現状の熊野の認識である。

「提督ももう少し愛想が良ければ……」

良ければ? 良ければ一体何だというのか。

「何かしら、変に落ち着きませんわ……」


「そもそも私が提督に気を馳せる事などありえませんわ」

手で自分の顔を軽く仰ぎながら、言い聞かせるように呟く。
恋愛ごとに疎いという弱点を発見したときから、何故かちらつく彼の顔。
雑念を払うかのように頭(かぶり)を振って、気を取り直す。

「我ながら贔屓目に見らずとも、外見は悪くないはず……」

エステに通い、間食を控え、野菜多めの食事を取り、鍛錬も怠らない。
体系維持に関しては間違いなくレディそのものの意識の高さ。
なのに思い返してみれば、今まで一度も異性から告白されたことなどなかった。
むしろ同姓からは両手の指で足りないほどには告白されてきている。

「私はひょっとして、レズになるべき運命でも背負わされているのかしら?」

首を軽く捻りながら、とんでもない事をひとりごちる熊野だった。



ふと視界を来客用の席に向けると、一冊のファッション誌が置いてあった。
巻頭ページに書かれていた特集は、“艦娘にモテるイケメン俳優一覧”。

「…ちょっと読んでみましょう」

ぱらりとページを捲ると、確かに目鼻立ちの整ったイケメンが所狭しと並んでいた。
格好良いですわ……、と呟きながらゆっくり読み進める。

「あ、この俳優は笑顔がいいですわ。えくぼが可愛いのは提督と逆ベクトルですわね」

さらに一ページ。

「あ、この人素敵ですわ。 うちの提督では出しえぬ渋みがまた素敵」

さらにページを捲る。

「まぁ、上半身裸で写るのはハレンチですわ! で、でも細すぎる提督と違って、筋肉がガッチリしてますわね…」


ことあるごとに、提督を何故か引き合いに出す熊野。
きっと彼女は気付いていない。


読み耽っていると、扉が軽く二度ノックされる。
来客かと思って腰をあげると、そこには白い軍服を纏った見慣れた姿の人がいた。

「何やってんだ、熊野?」

きょとんとした顔の提督を迎える熊野。彼を見ると何故だか少し意地悪をしたくなるのは、彼女の心の不思議である。


「あら? おかえりなさい、提督。 今頃ご出勤?のろまなのね?」

「他所の偵察に行ってただけだ。 何も変わった事はなかったか?」

「この熊野を秘書艦にしている以上、万事問題なしですわ」

「む、そうか」

そう言いながら、軍服の上着を脱いでワイシャツの格好になる提督。
その脱ぎ様をつい目線で追いかける自分に気付いて、何故だか少し頬が赤くなる。
そんな彼女を知ってか知らずか、無骨な提督はにべもなく熊野へ言葉を投げる。

「熊野」

「なにかしら?」

「ただいま」


胸の内側が早鐘を鳴らして止まない。
きっとタービン周りの故障だろう、熊野はそう思った。
少しだけ唇を緩めた彼の顔が、何故だか今は見つめられないのだ。


「提督」

「なんだ?」

「ちょっとエステ(入渠)に行ってきますわ」

「お前どこも壊れてなくないか!?」



神戸生まれのお洒落な重巡、熊野。

恋心の自覚には縁遠く、溜息の真意を知るのは未だ先の模様。



BGM: reason / fonogenico   http://www.youtube.com/watch?v=nxufjEoquqw


五人目の艦娘

>>45

朝潮

朝潮把握。 後日またひっそりと書いておきます。
のんびり書いているので投下遅くて申し訳ない。
今回はこの辺りで失礼をば。

皆のお薦め曲でもレスして頂けたら反映できるよう善処しますので、お気軽に書き込んでくださいな。
とりあえずの感想や、地文ではなく台本形式の方が良いなどの一言ご意見もお待ちしております。

乙です。
アニソン薦めるってのありかな?

>>47
書いている人自体が何でも聞くので、アニソンでもクラシックでもジャズでもレゲェでも何でも有りです。

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