吹雪青葉古鷹「「「……邪魔」」」提督「っ!?」 (536)

・このSSは三人の艦娘による平凡な出し抜き合いを書いたモノです、過度な期待はしないで下さい

・登場する艦娘はお手持ちの艦娘と多少性格や口調が違う場合がございます、ご了承下さい

・エロ、グロ、轟沈、鬱展開はございません、撃つ展開のみです

・様々な設定は過去建てたスレよりそのまま使い回しています(読んでなくても説明入れるので問題ないです)

・地の文あります、苦手な方はごめんなさい

・更新はのんびり

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1415103633

 ――その鎮守府には、秘書艦が三人居た。

 何時も明るく元気一杯、初期艦の吹雪。

 艦隊のムードメーカーであり、日々面白い記事を書くことに余念の無い青葉。

 この鎮守府における初の重巡であり、常に気配りを忘れない古鷹。





 ――と、いう設定に表向きはなっている。

 執務室に、四つのペンの音だけが響く。他に聞こえるのは、紙を捲る音か椅子が軋む音ぐらいのものだ。
 この空間を何かに例えるならば、締め切り前の漫画家の部屋、というのが一番しっくりくるかもしれない。

(……息が詰まる。何で三人とも一言も話さないんだ? 普通年頃の女の子が三人も居たら会話に花咲かせるものだろ。三人が艦娘だからか? いやいや、姉妹艦と楽しそうに話しているのは良く見かける。ということは、俺が居るから話さない……?)

 行き着いた結論に、提督の胃がキリリと痛む。
 “艦娘とは、艦であると同時に女性として扱うべき存在だ”。そう教えられてきたが故に、彼はセクハラにならないよう、細心の注意を払って彼女達と接してきた。
 しかし、現状を鑑みるに彼は何か失敗しているのだ。そうでなければ、かれこれ一時間近く会話が発生しないなどということはあり得ない。

(待てよ、彼女達が不仲だということも……いや、昼食や夕食も一緒に食べている姿を何度も見ているし、その可能性は低い。過去には色々あったようだが、そこについてはもう和解済みだとも言っていた。ならばやはり俺が原因ということに……)

 今の季節は秋、気温は過ごしやすくちょうどいい。しかし、提督の全身には嫌な汗がジットリと浮かんでいた。
 彼の頭に浮かぶのは“憲兵”の二文字。もし、ここに居る三人が口裏を合わせてセクハラを受けたと言えば、その時点で全てが終わる。
 中には艦娘を快く思わない軍幹部も居るが、そんな相手との繋がりは彼に無い。

(どうするどうする提督になれて艦娘とはいえ見目麗しい子達と共に世界平和の為に尽力出来る最高の環境だと思っていたのにこれじゃ針の筵じゃないか戦果は十分挙げてるし中佐まで登り詰めたのにこんなところで俺は終わるのか!?)

 規則的に響き続けるペンの音が、余計に彼の心を不安で埋めていく。
 今、彼女達から一言でも言葉を投げ掛けられたなら、彼は提督としての立場など忘れて反射的に土下座してしまうだろう。




 ――しかし、これはあくまで提督の視点から見た話である。

 ――駆逐艦Hさんの場合。

「司令官は私が色々慣れてなくて失敗しても、一緒に成長していこうって秘書艦から外さず居てくれたんです」

「少し髪型を変えただけなのに、気付いてくれたりするのも嬉しいです。それってちゃんと私のことを見てくれてるってことですよね?」

「小破未満の傷でも見逃さず、入渠するよう言ってくれるところなんかも素敵だと思いませんか?」

「――ただ、最近はAさんとHさんが秘書艦の増員で執務室に居るので、二人で居られる時間が無くなっちゃって……」




「はっきり言って、あの二人邪魔です」

 ――重巡洋艦Aさんの場合。

「司令官の事ならA葉、何だって知ってます」

「生年月日、出身地、母校、小学生の頃の夢、所属していたクラブ、女性と付き合った回数、エッチな本の趣味等々。A葉、全部調べちゃいました」

「だって、司令官が好きに取材していいって言ったんですよ? “ずっと一緒にこれから頑張っていく仲間に、隠す事なんて何も無い”って」

「A葉、それ聞いて嬉しかったんです。司令官とならきっとどんなに辛い時も頑張って乗り越えられるって、柄にもなく思っちゃいました」

「――でも、A葉は司令官だけをずっと取材してたいのに、ファインダーを覗くと必ず写り込むお邪魔虫が居るんです」




「A葉の取材に、二人は邪魔だなぁ」

 ――重巡洋艦Hさんの場合。

「私、実はこの目が少しコンプレックスなんです。でも、提督は“綺麗だ”って言ってくれたの」

「重巡洋艦の良いところや有用性を話した時も最後まで真剣に聞いてくれたし、私達に真摯に向き合ってくれてるのが伝わって来るんです」

「妹の加古にも優しいし、提督としても人間としても素敵な人だと思います」

「秘書艦増員で私が選ばれた時は、思わずやったって言っちゃった」

「――だけど、秘書艦は一人だけにしてくれた方が嬉しいかな」




「提督の良いところは、私だけが知ってればいいよね?」






「「「背中は、絶対に見せない」」」




~主要登場キャラ説明~

・提督→階級は中佐。外面が大変良く、艦隊指揮能力も高い為、所属する艦娘からの評価は高い。但し、それは根が臆病故に細心の注意を払っているからであり、常に彼の胃はキリキリと痛みを発している。

「憲兵恐い憲兵恐い憲兵恐い……」


・吹雪→初期艦。練度はこの鎮守府ではトップ。秘書艦として過ごしてきた期間が一番長く、“こんなことも知らないの?”と他の二人を暗に挑発する時がある。提督にもらった髪留めを常に頭に着けている。

「誤射は無罪ですよね?」


・青葉→表向きは鎮守府内の出来事等を記事にしているが、その実、“コレを青葉は知っています”という脅しが密かに込められている。提督に関する情報をまとめたノートは、ちょうど三十冊。愛用しているペンは提督の贈り物。

「味方(てき)はまだこちらに気付いてないよ」


・古鷹→普段は帽子を目深に被って目を隠しており、取るのは提督の前と出撃の時だけ。寝ている加古に提督との未来設計を延々と語ったり、加古に提督をお兄ちゃんと呼ばせようとしたりしている。帽子は提督からのプレゼント。


「暗くても良く見えるよ。はっきり、ね」

~設定~

・艦娘は艦の魂が資源によって生成された肉体に定着した存在

・解体=魂を鎮め、肉体を資源に戻す儀式

・戸籍は無く、民法及び刑法上は人ではないが、軍法によって基本的権利は保証されている

・艦娘への暴行、セクハラ、パワハラは処罰対象となる

・ジュウコンカッコカリは認められているが、ケッコンカッコカリ艦同士の間で起こる一切の問題を、軍は関知しない

最初の投下終了

初っぱなからやらかしましたその通りですイニシャル両方ともFでした…

ご指摘ありがとうございます

 行動を起こさずして、何かを得ることは出来ない。奇しくもその場に居る四人は同じことを考えていた。
 一人は、身の安全を確保する為。他の三人は、気が利くところを意中の男性にアピールする為。
 ――そして、示し合わせたかのように一斉に彼等は動き出す。

「「「「あの」」」」

 それぞれから発せられた一言だけを残して、再び静寂が場を包み込む。

(やっちまったあぁぁぁぁっ!? もう少し待てば向こうから話しかけてきてくれたんじゃないか何やってんだ俺どうすんだ俺さっきより気まずいじゃないか!)

(司令官、私に何の用だろう? お茶淹れますねって言おうとしたんだけど)

(青葉に何のお願いだろ? 今日は“青葉の用意した”紅茶とスコーンで休憩しよって言おうとしたのに)

(私に何の用かな? ハーブティーを作って持ってきたし、提督に飲んで欲しいな)

 緊張のあまり喉がカラカラになっている提督には、三人が今から言おうとしていることは嬉しい提案だ。




「司令官」
「司令官」
「提督」




 ――但し、誰か一人に提案された場合に限ってのことである。

今日はこれだけ

次から姉妹艦は出ます

「ねぇ初雪、酷いと思わない?」

「うん、そだね」

「そうだよね、青葉さんと古鷹さんは私より後に来たのに図々しすぎるよね」

「うん、そだね」

「司令官は私が淹れたお茶を何時も美味しいって飲んでくれてたし、きっと二人に遠慮して喉が乾いてないって嘘吐いたんだよ」

「うん、そだね」

「明日は絶対司令官にお茶淹れてあげなきゃ」

「うん、そだね」

「――初雪、初雪は私の味方だよね」

「……うん」




 協力者は、大事だ。一人では何も出来ない。
 協力者は、大事だ。後ろに目は付けられない。




 協力者は、とても、大事だ。

「衣笠、このスコーン食べちゃってください」

「いいの? いただきまーす」

「もういりませんから、また作ってもらえば済む話ですし」

「また金剛さん?」

「――そのスコーンを作ったのは、青葉ですよ?」

「……そう、だったね」

「良い人ですよねー金剛さん。他鎮守府で解体される予定だった比叡さんをうちで受け入れる話を青葉が進めたら、色々協力してくれるようになっちゃいました」

「二人、何時も一緒に居るよ」

「とっても幸せそうで、青葉も功労者として鼻高々です」

「……うん」




 味方は、多い方が良い。出来ることが増えるから。
 味方は、多い方が良い。人から受ける印象を操作しやすいから。




 味方は、なるべく、多い方が良い。

「加古、起きて」

「んー……?」

「今日ね、提督にハーブティーを持って行ったんだけど、飲んでもらえず仕舞いになっちゃったの」

「ふーん……」

「加古も飲む? 落ち着くよ」

「あたしはいいや、あんまりハーブティー好きじゃないし」

「そっか、じゃあ加古にはココア作るね」

「ねぇ古鷹、ていと――」

「お兄ちゃん、でしょ?」

(……寝たい)




 妹は、大事にしなければならない。何時も一緒に居る相手だから。
 妹は、大事にしなければならない。将来設計にも関係するから。



 妹は、絶対に、大事にしなければならない。

やっぱりほのぼのは書きやすい

本日の投下は以上です

 この鎮守府には幾つかの、派閥とでも言うべきものがある。主なものは、以下の四つだ。

 駆逐艦三名と軽巡三名、戦艦二名を擁する吹雪派閥。

 重巡一名と戦艦二名、軽空母一名、駆逐艦二名を擁する青葉派閥。

 重巡五名と空母二名、駆逐艦二名を擁する古鷹派閥。

 駆逐艦四名、雷巡二名、軽巡三名、航空戦艦二名、空母二名から成る不干渉派閥。

 こういった派閥があることを、勿論提督は知らない。
 “派閥”、と言い表しはしたものの、各派閥同士の関係が険悪ということはなく、寧ろ良好といって差し支えはない。
 当然である。そうでなければ、提督が中佐という地位に辿り着ける環境が整うはずもない。




 ――では、何故派閥というものが生まれたのか。それは、自衛の為に他ならない。

「明石さん、何時もの……」

「はい、一ヶ月分です。ちゃんと食後に飲まなきゃダメですよ」

「どもです……」

「明石さーん、私にも同じのちょうだい」

「衣笠さん、肌荒れも気にしてましたよね? コレ、試してみて下さい」

「うわー助かる。明石さん、ありがとね。今度何か奢っちゃう」

「いえいえ、私はコレぐらいしか出来ませんから」

「明石さん、前のよりキツメの睡眠薬くれない……?」

「不眠症、全然良くなりませんか?」

「うん、ぜんっぜんダメ……」

「でしたら一度、身体の緊張をほぐすタイプのお薬にしてみますね。あまりキツすぎるのは副作用の心配もありますから」

「分かった、試してみる」




「――衣笠さん、加古さん、だいじょぶ?」

「初雪こそ大丈夫? 顔色悪いよ?」

「ん、何とか、だいじょぶです」

「衣笠さん、盗聴機とか仕掛けられてないよね?」

「いくら青葉でもそこまではしないって、執務室には仕掛けてるかもしれないけど……」

「だって鈴谷と三隈なんてあっさり秘密バレてたし、どうやってあんなに情報集めてんのさ」

「とにかく情報に対する嗅覚が凄いの。比叡さんの一件だって、偶々提督が電話でそういう話をしているのを聞いて、自分で調べたみたい」

「でも、比叡さん助けたのは事実、です」

「金剛さんと比叡さんも感謝してるっぽいよね」

「でなきゃ青葉の為にスコーン焼いたり茶葉用意したりしないって。金剛さんも提督狙ってる一人だったんだし」

「上手く味方に引き込んだもんだよ、全くさ」

「色んな艦娘の秘密や弱味握ってるけど、提督絡まない限りは変に悪用したりはしてないし、情報活かしてプレゼントの相談とか乗っちゃってるもん。ホント、提督絡まなきゃ良い姉なんだけど……」

「吹雪も、普段は、優しい」

「古鷹は……まぁ、うん、お兄ちゃんって呼ばせようとするのだけやめてくれりゃいいや」




「「「……はぁ」」」

よし、ちゃんとほのぼのとギスギスした

とりあえずここまで

予告、ネタ振りされたので艦娘達がバレーボールをする話を夜に書きます

 穏やかな昼下がりに時折聞こえてくる、楽しそうな声。あまり自由があるわけではない彼女達の数少ない娯楽が、その声を生んでいた。

「吹雪、はいっ」

「磯波、行くよっ!」

「え、えっと――あぅっ……」

「磯波ちゃん、ドンマイだよ!」

「川内姉さん、ボールお願いします」

「任せて」

 和気藹々とバレーボールをする吹雪達。メンバーは白雪、磯波、川内、神通、那珂に吹雪を含めた六名だ。一応初雪も一緒に居るのだが、立ち眩みで参加をパスしている。
 ここに戦艦二名を加えたのが、吹雪派閥の艦娘達だ。そして、今ここに居るのは初期建造組であり必然的に付き合いも長く、一緒に行動することも多い。
 まとめ役の吹雪。落ち着いた雰囲気の白雪、少しオドオドしている磯波、撃つのは得意でも投げるのは苦手な初雪、吹雪と妹達を見守る川内、喧嘩仲裁役の神通、常にハイテンションな那珂。
 海域攻略においてもこの七人は要であり、必ず誰かが出撃しているのは周知の事実だ。
 ――そこへ、にこやかな笑顔を浮かべて混ざろうとする者が一人。

「――はいコレ、ボールです」

「ありが……」





「楽しそうですねー青葉も混ぜて下さい」

咳が止まらないのでちょっと今日はこれだけで

ほのぼの成分が足りないせいか…

 円陣パス。バレーボールの授業などで良く行われる、チームワークと判断力、ボールを狙った位置に飛ばす力を養う為の練習だ。
 鎮守府での遊びとしても優秀で、ボールと広い場所さえあれば出来るという手軽さがある。
 誰かの名前が呼ばれない、失敗したら責められる、わざと遠くに飛ばす、そういった事も基本的には起こりはしない。

 ――基本的には、だ。

「ふぶ、きっ!!」

「あぁぁぁおぉぉぉばぁぁぁぁさんっ!!」

「吹雪っ!」

「青葉さんっ!」

 明後日の方向へ下から上に振り抜くようなアンダー、叩き付けるようなスパイク、顔面へ跳ね返すレシーブ、弾き返すようなオーバー。普通ならば続けられない、続けようとも思わない応酬が繰り広げられる。
 一緒に遊んでいた艦娘達は手慣れたもので、既に安全な場所へと避難していた。

「磯波、司令官は?」

「今、仮眠してるみたい」

「昨日、夜遅くまで書類片づけてたって、吹雪言ってた」

「じゃあパターンCでいっかな」

「那珂、お願いね」

「那珂ちゃんにお任せだよ。――あー! 古鷹さんだー! 仮眠室に向かってるー!」

「「っ!?」」

「……青葉さん、一時休戦しませんか?」

「異論無しです、司令官の寝顔を見ていいのは青葉だけです」

「真昼間から寝ぼけてるなんて、自室で仮眠した方がいいですよ」

「それは大変ですねーなら青葉も仮眠室で仮眠しちゃいます」

「「……チッ」」




「――行ったみたいですね」

「司令官、大丈夫でしょうか……?」

「だいじょぶ、今日の見張り、日向さんと加賀さん」

「それなら何かあっても止められそうだね、私達は続きやろっか」

「ボール、ありました」

「那珂ちゃんもさっきのアクロバットバレーにチャレンジしたい!」

「ひぅっ……」

「磯波が怯えてるので普通にお願いします」

「えーつまんなーい」




 ――仲良きことは、美しきかな。

艦娘が全員出揃うまではほのぼのが続きます、ギスギスするのはもう少々お待ちください

ほの‐ぼの【×仄×仄】

[副](スル)
1 かすかに明るくなるさま。「東の空が―としてくる」
2 ほんのり心の暖かさなどが感じられるさま。「―(と)した母子の情愛」
3 わずかに聞いたり知ったりするさま。
「かく、ささめき嘆き給ふと、―あやしがる」〈源・夕顔〉

ほんのり心の暖かさなどが感じられるさま←
うん……うん?

このスレもしかして
これ灼熱の愛憎じゃ
あれ誰か来た

 秘密、弱味、弱点、誰にでも一つや二つはあるものだ。それを知られるということは、あまり気分の良いものではない。
 食堂で作っていた梅酒を一瓶内緒で飲み干した者、内緒で犬を飼っていた者、食堂のみそ汁に味付けとしてタバスコを入れた者。深刻な問題行動ではないにせよ、誰かに知られては不味い事柄ばかりだ。

「青葉、また良い酒手に入ったって聞いたから貰いに来たぜー」

「相変わらずお酒には目が無いですねぇ隼鷹さん。また保管庫に忍び込んで飲んじゃダメですよ?」

「分かってるって、こうして上物が定期的に貰えるんならヤバい橋渡る必要も無いしね、ふふーん」

「じゃあまた良いのが手に入ったらお知らせしちゃいます」

「おぅ、またなー」

「……ねぇ青葉、隼鷹さんには何を見返りに貰ってるの?」

「やだなー人聞きの悪いこと言わないで下さいよ。隼鷹さんはただお酒の席で皆がポロッと溢した愚痴や本音なんかを青葉に善意で教えてくれてるだけです」

「へ、へぇーそうなんだー」

「夕立は立ち聞きした内緒話を教えてくれますし、磯風は艦隊の皆の動きで悪いところを教えてくれます」

「艦隊の皆の動きって?」

「こういう時に動きが鈍くなるとか、回避する時の癖とかです。衣笠は敵を沈めた後に隙が出来ているって言われちゃってましたよ?」

「うっ……た、確かにこの前撃沈した直後に被弾しちゃったかも……」

「今後、気を付けて下さいね?」

「あ、青葉だってそういうのあるんじゃないの?」

「記者たる者、常に万全の体勢でシャッターチャンス――いえ、敵の攻撃に備えてます」

「何かその理由で納得出来ちゃうのが悔しいわ……」




(――吹雪と古鷹の隙、早く見付かりませんかねー)

秘密をネタに脅さない青葉は良い子です

古鷹派閥と不干渉派閥も書け次第投下します

※この世界においては運さえ良ければ初風や早霜も建造出来ます

ついでに言うと、深海棲艦を倒してのドロップ艦娘(魂の解放&肉体の再構成)や自然の資源から勝手に出現する野良艦娘も居ます

 古鷹は優しい。そこに偽りはない。
 古鷹は怖い。そこにも偽りはない

 ――古鷹は、どんな時でも笑みを崩さないから。

「今日はケーキを焼いてみたの、食べる?」

「うっわマジで美味しそう」

「いただきますわ」

「ぼくも食べるよ」

「三隈もお言葉に甘えさせていただきますね」

「もらっちゃって、いいの?」

「あたし、ケーキだーいすきー」

「翔鶴さんと飛龍さんもどうですか?」

「それじゃあ頂こうかしら」

「うん、もらおうかな」

「紅茶にジュース、コーヒー、好きなのを言ってね。淹れてくるから」

「鈴谷と熊野は紅茶だよー」

「もがみんと三隈も紅茶をお願いします」

「オレンジジュースがいい、です」

「アップルジュースー」

「私も紅茶を」

「じゃあコーヒーで」

「加古はいつものでいい?」

「うん」




「――そういえば、艦娘に毒って効くのかな?」




 素朴な疑問を投げかける彼女の顔は、とても良い笑顔だった。

「曙、次の遠征アンタにご指名よ」

「分かった。他の子と旗艦は誰か聞いてる?」

「旗艦は木曾、他は満潮と望月ね」

「霞は? 出撃?」

「吹雪と古鷹と青葉と出撃。ホント、やりにくいったらないわ」

「それはご愁傷様」

「加賀も赤城も出撃するのが救いね、空は気にしなくていいから」

「クソ提督は練度的に一番安定する艦隊編成にしたんでしょうね」

「編成的には正解だけど、安定性は皆無よ。いつ味方を狙って誤射するか分かったもんじゃないわ」

「“意識をあれだけ他に向けながら戦えるなら、集中すれば更に戦果を挙げそうだよね”って、伊勢さんが苦笑混じりに言ってたわよ」

「お互いの位置を確実に意識してるから、連携は取れてるの……ホント、皮肉よね」

 ――それは球磨のだクマ、返すクマ。

 ――早い者勝ちにゃ。

 ――北上さん、はいどうぞ。

 ――じゃあ私は木曾にあーん。

 ――絡むな姉貴、今から遠征で忙しい。

「……あんな風に我関せずを貫き通せたら、楽でいいわね」

「出撃から帰ったら明石に頭痛薬貰うわ……」

吹雪派閥→吹雪、白雪、初雪、磯波、川内、神通、那珂、長門、陸奥

青葉派閥→青葉、衣笠、夕立、磯風、隼鷹、金剛、比叡

古鷹派閥→古鷹、加古、最上、三隅、鈴谷、熊野、翔鶴、飛龍、弥生、文月

不干渉派閥→曙、霞、満潮、望月、加賀、赤城、伊勢、日向、球磨、多摩、北上、大井、木曾

ちゃう、三隈や…変換ぇ

満潮から一言




「覚悟しなさい、ここから先は地獄よ」

 提督の朝は、三つのノックから始まる。だが、眠りが深いとそれに気付かないこともある。
 そういう時は秘書艦娘達が部屋に入り、優しく起こすのだ。

「司令官、朝ですよ」

「司令官は寝坊助さんですねー」

「提督、起きて下さい」

「……ん?――っ!?」

「どうしたんですか司令官、そんなにビックリした顔して」

「写真、撮っちゃいますよ?」

「お水、飲みますか?」

「お前達、何で中に……それに、艤装……」

「不用心ですよ司令官。鍵、閉め忘れてました」

「青葉もたまにやっちゃうんですよねー」

「何事かと心配しちゃいますから、気を付けて下さいね」

「あ……あぁ……すまん」




 爽やかな朝に、可愛らしい笑顔、寝覚めは最高だ。これ以上無いというぐらいに、彼の意識は覚醒した。

今日はここまで

幸せ者な提督ですね

 欲しいものがある時、人は我慢したり、欲の赴くままに手にしたり、誰かから奪おうとする。勿論奪えば罪となるが、他人の物を心の中で欲することは、何ら罪ではない。

 ――例えそれが誰の物であっても、だ。

「初雪、今少し時間いいか?」

「だいじょぶ、です」

「そうか、ならコレを受け取って欲しい」

「――低反発枕と、アロマキャンドル……?」

「見たところ、最近特に疲れが溜まっているように見える。疲労は思わぬ事態を招きかねないから、良ければ使ってみてくれ」

「ありがと、です……」

「用件は以上だ。明日からまたしっかり頼むぞ」

(枕……昼寝、しよ)




「――初雪」

「っ!?」

「司令官に、何、貰ったの?」

「ま、枕……」

「ふーん、そっか。良かったね」

「……うん」




「――吹雪、その枕どうしたの?」

「初雪が交換してくれたの。新しい枕より前の枕の方が寝やすいからって、ね?」

「……うん」




 欲しいと心の中で念じることは、何ら、罪ではない。

 深海棲艦との戦いは、常に命の危険が付きまとう。一瞬の油断が、簡単にその身を海へと還す。

 ――だからこそ、彼女達は誰よりも出撃を繰り返すことを望む。




 二つの砲撃が、目標から少し離れた地点で着弾した。黄色く光るイ級は、その身を正確に捉えた砲弾により力を失い、海中へと消えていく。
 そちらに一切視線を向けず、青葉と古鷹は向かい合って連装砲を構えたまま、笑う。


「(ワ・レ・ア・オ・バ)」

「(ふふ、挑発してるのかな?)」




「器用よね」

「アレじゃ誤射と言い張れないと思うクマ」

「満潮、球磨、貴女達も無駄口を叩いている暇があったら、残りを叩いて下さい」

「あらあら、加賀まで怖い顔しちゃダメよ?」

「戦いの最中に、あの様に笑え、と?」

「それはもっと怖いからやめてちょうだい」




 出撃すれば、三人は必ず戦果を挙げる。ただ、彼女達が満足のいく戦果を挙げられたことは、まだ、一度も無い。

今日はここまで

轟沈なんてしませんよ

 ――駆逐艦Sの証言。

「派閥とは何か、ですか? 一番交友が深い者を応援すると同時に、危険な行動を起こさないように見張る為のもの、でしょうか」

「確かに、“派閥”と呼ぶのは少し仰々しいかもしれないですね。でも、そう呼んだ方が私達が応援していると認識してもらいやすいですから」

「司令官に対する想いが強すぎて、多少行き過ぎた行動を取ることもあります。ですが、日々命を懸けた戦いをしている中で心の拠り所を見付けたら、誰だってそれを奪われまいと必死になると思いませんか?」




「――私の心の拠り所、ですか? 秘密です」

私はただ全員がどういう考えで動いているかを度々こうやってお伝えしようと思ったまでです

誰の腹の中を皆さんは探りたいんでしょうかね

「ツモ! イーペーコータンヤオドラドラ!」

「まぁ、そうなるな」

「ハコテン……ねぇ、長門? 少し分け――」

「断る。勝負は勝負だ、諦めろ」

「あら、冷たいのね」

「どうしたのさ日向、今日は調子悪いじゃん」

「こういう日もある」

「戦艦が揃いも揃ってプリッツ点棒にして麻雀とか、情けないと思わないの?」

「時には息抜きをするのも大事だ。ずっと気を張り詰めていれば、このビッグセブン長門といえど疲れはするさ」

「霞も今日は出撃無いんでしょ? あっちで遊んできたらどう?」

「お断りよ、アレに混ざるとか冗談じゃないわ」

「……アレ、トランプしてるのよね?」

「トランプで殺気か、相変わらず穏やかではないな」

「あそこに混じって平気なのは夕立くらいよ。たかだか明日の昼食で誰が隣に座るかを決めるぐらいで、ホンット下らないわ」




 金銭の絡まない健全な賭けに、問題は無い。

今日はここまで

明日は更新出来ないかもしれません

後、次にインタビューする艦娘を直下で決めようかなと思います

既に書いた四人は除外します

重巡洋艦K了解です

 ――重巡洋艦Kの証言。

「はーいお待たせ、きぬが――え? 名前言っちゃダメなの? 匿名って体でやるんだ……」

「うん、青葉は秘密をいっぱい知ってるし、それを使って色々やってるみたい」

「えっ? 直接脅したりはしてないよ。脅した時点で吹雪と古鷹に弱味を握られちゃうもん」

「記事にも嘘とか他人を貶す様な文章は書かないし、そこはちゃんとしてるの」

「確かに物陰から青葉がこっち見てると背筋がゾクッとしちゃうけど、提督見付けたら髪整えて深呼吸して走っていくのは可愛くない?」




「――青葉、可愛いよね?」

 艦隊の士気を保つのも、提督の重大な責務の一つである。甘味、贈り物、労いの言葉、時には叱責することも大事だ。
 但し、贔屓や下心あり、好意ありと認識される可能性も考慮しなければならない。

 ――既に手遅れの場合は、その身尽き果てるまで奮励努力せよとお悔やみ申し上げる。




「髪留めって、女の子として意識してなきゃくれないと思いませんか?」

「このペンは記者としての青葉も応援してるから頑張れってメッセージに決まってます」

「帽子をくれたのは、自分だけに見せて欲しいって意思表示みたいなものだと思うな」

「都合の良い解釈って行き過ぎると滑稽ですね」

「まだまだお子ちゃまな吹雪には分からなくても仕方無いですねー」

「……綺麗って言われたことも無い癖に、何を言ってるんだろ」

「「「――ごちそうさま」」」




「よくあの三人で昼食を食べているけど、どうしてなのかしら?」

「しやすいからじゃねーの?」

「望月、何をしやすいの?」

「監視」

「あぁ……お団子、いる?」

「ん、もらう」

(さてと、加賀さんと赤城さんを探さないと)




 恋は、盲目。

「磯風磯風、コレ分かる?」

「なぞなぞ、というヤツか?」

『問題、人が三人居て、リンゴが一つだけあります。ナイフを二回だけ使って文句の出ないように分けてください』

「リンゴが何グラムあるかは書いていないのか……難しいな」

「昨日からずっと考えてるけど全然分からないっぽい……」

「他の者の知恵も借りてみよう」

「じゃあ青葉さん探すっぽい!」





「――なぞなぞですか? どれどれ……」

「半分に切ってもう一回半分にしても、四つになってちゃんと分けられないっぽい」

「どのように切っても三の倍数にはならない。三人で分けるのはどう考えても不可能だ」

「なるほどなるほど、青葉にはすぐに分かっちゃいました」

「ホント!? 青葉さんすごいっぽい!」

「何か特殊な切り方が存在するのか?」

「それは――」




 答えを聞いた二人は、しばらく物を分け合うという行為に恐怖を感じるようになった。

アで始まってルで終わるから仕方ないですね

吹雪と青葉と古鷹以外にもすぐに分かる子が居るのも仕方ないですね

次のインタビュー艦娘を直下でお願いします(既にした艦娘以外で)

元ネタを知りたい方はIQエンジンという番組を調べてみて下さい

SS用に数と答えを変えていますが、基本的な考え方は一緒です

 ――重巡洋艦Kの証言。

「…………何? 起きてるよ、目瞑ってるだけ」

「何時も寝てるのに何で眠そうなのかって? だってアレ、狸寝入りだし」

「寝てるフリすれば相槌打たなくていいし、何より古鷹の――やっぱ何でもない」

「古鷹には幸せになってもらいたいけど、提督を“お兄ちゃん”は無理」

「……薬、効かないな……」

「夢の中だとさ、皆普通に仲良いんだよ。吹雪と青葉と古鷹も普通に笑い合っててさ」




「――こっちが夢だったり、しない?」

「じゃあ青葉さん、斬って下さい」

「え、やですよ。切った時手元狂うかもしれないし選べない分絶対損じゃないですか」

「なら古鷹さん」

「私もパスかな、だって斬ったら中からーー」

 この三人には無理でした。

 元々は三人で2つのリンゴをナイフ一回で分けるというものでした。



 appleとadmiral

 恋は、盲目だ。意中の相手以外見えなくなる。
 それは同時に、意中の相手以外に恋愛感情を持たないということでもある。
 ただ、この鎮守府には男性が一人しか居ない。必然的に、争奪戦は発生してしまう。

 ――“男性”が対象であれば、の話だが。




「ねぇ熊野ーお風呂行こ」

「私はもう少し後で入りますわ、先に入ってらっしゃいな」

「えー? じゃあ鈴谷も後にする」

「わざわざ待たなくてもよろしくってよ?」

「お風呂で全身隅々までマッサージしてあげるから」

「結構ですわ」

「――熊野は、鈴谷のこと嫌い?」

「ちょっと、何でそうなりますの?」

「だって、お風呂一緒に入るの拒否るじゃん」

「別に嫌だから断ってるわけではありませんのよ?」

「じゃあ何で?」

「私は小破で、鈴谷と他の方達が大破しているからに決まってますわ」

「熊野と入れるなら痛いけど待つよ」

「私と一緒に入る為に血だらけで待つとか、あり得ませんわ……」

「えへへー熊野ー」

「ちょっと鈴谷!? 今抱き着かれると――はぁ……着替えた意味が無くなってしまったじゃありませんの」




 愛する者と一緒に居られるなら、多少の痛みは我慢出来る。
 全身血塗れで片目が開かず、腕があらぬ方向に折れているぐらい、何てことはない。

姉妹愛にも溢れた鎮守府です

次に話を聞く艦娘を直下で決めます(既に聞いた子は除外)

次は当りか、大当たりか、どっちでしょうね

 ――戦艦Hの証言。

「ここはとっても良い鎮守府ですよ。青葉さんも皆さんも親切にしてくれますし、何より金剛お姉様が居ます!」

「解体されかけた理由? 居眠りしてて起きたら目の前に司令の顔があって、殴ったのが原因ですね」

「全治三週間だったそうで、軍指令部から解体処分を言い渡されました」

「私も申し訳無い気持ちがありましたし、上官を殴ったとあっては処分されても仕方ありません」

「でも、司令が病院から色々根回ししてくれたみたいで、青葉さんとこちらの司令が保護観察処分という名目で私を助けてくれたんです」

「だから、以前よりも更に気合いを入れて戦って、お世話になった皆さんに恩返しをしたいと思ってます」




「金剛お姉様も、ずっと必ず傍で見守ってくれてますから。――ほら、今もアナタの後ろに」

 鎮守府とは、一種の共同体だ。一つ一つの歯車が噛み合わなければ、機能しなくなってしまう。
 では、歪な歯車がある場合はどうすれば良いかと問われれば、三つの解を返そう。
 一つ、その歯車を排除する。
 二つ、その歯車を矯正する。
 三つ、その歯車に周囲が適応して形を変える。

 ――この鎮守府の選択は、もうお分かり頂けているはずだ。


「今回の出撃では吹雪が至近弾により中破、青葉と古鷹も至近弾により小破……最近お前達の損傷率が増している気がするが、体調でも優れないのか?」

「私は元気です。お二人はどうか分かりませんけど」

「疲労は見えないところで現れますからねぇ、吹雪も中破しちゃうのは隠れ疲労が溜まってるんじゃありませんか?」

「吹雪、少し秘書艦休んだらどうかな?」

「お気遣いありがとうございます。でも、問題ないですから」

「何にせよ、あまり無茶をしないようにしてくれ。とりあえず、今日はもう休め。秘書艦はこの鎮守府の艦娘達の規範となるべき存在だ。休養も必要な行為だと改めて認識するように」

「「「了解」」」




 秘書艦娘は、艦隊の、規範である。

深海棲艦の砲撃は全て回避してますし、優秀な秘書艦娘達ですからお手本になりますね

『〇月×日、司令官が青葉にお菓子をくれました。とっても甘くて美味しかったです』

『〇月△日、司令官に吹雪がよろけたフリをして抱き着いてました。司令官は優しいから許してたけど、青葉は許さないよ』

『〇月○日、古鷹を■り損ねちゃいました。ヘ級が邪魔しなければ絶好の機会だったのに、残念残念』

『△月×日、司令官の部屋の合鍵を吹雪と古鷹も持ってるみたい。青葉が司令官を守らなきゃ』

『×月×日、火力が、火力がちょこっと足りないのかしら?』

『×月〇日、三隈が新しい連装砲を古鷹にあげてたのを見ちゃいました。青葉も衣笠にお願いしてみよっと』




『×月△日、やっぱり駆逐艦は速いですねぇ、また■り損ねちゃいました。明日からまた頑張るから待っててね、司令官』

 艦娘は“人”であり、“兵器”だ。自分で考え、自分で行動し、泣き、笑い、怒り、喜ぶ、兵器だ。
 だが、彼女達は誰よりも秩序と平和を望む存在でもある。深海棲艦との戦いに終わりを迎えられたならば、速やかに兵器としての役割を彼女達は放棄するだろう。

 ――最も、既に“兵器”としてではなく、“人”としての生にのみ価値を見出だした者も、少なくはない。




「古鷹、何見てんの?」

「コレ? 結婚式場のパンフレットだよ」

(やっば、地雷踏んだ……)

「加古は結婚式、どういうのが良いと思う?」

「あ、あたしはそういうの興味ないから分かんないや」

「加古だって女の子なんだよ、少しはそういうのに興味持たなきゃ」

「いいよあたしは、戦いが終わったら日がな一日寝て過ごせれば満足だし」

「ダメだよ、加古。加古にはちゃんと子守りしてもらうからね」

「……子守り?」

「うん、私と提督の子」

(……艦娘に子供は出来ないって、古鷹も知ってるはず……“重巡洋艦の良いところ”、口にしなくなったの何時からだっけ……)

「早く戦いを終わらせるために頑張ろうね、加古」

「……うん、頑張るよ」




 全てが終われば昔の姉に戻ると信じて、虚ろな瞳をした艦娘は、今日も深海棲艦を屠り続ける。

さてと、そろそろ提督のことが気になったり、ギスギスが足りんぞまだまだほのぼのしてるじゃないかというお叱りの声もありそうなので、次のステップに行きましょう

今回は二回、お付き合い下さい

まず、直下で1~8の中から一つ数字をお選び下さい

二回目はそれを確認してからとなります

ありがとうございます

それでは次もまた直下で1~11の中で好きな数字を1つお選び下さい

ご協力ありがとうございました

幸福な新規着任艦娘は利根に決定しました

彼女もきっとこの鎮守府を気に入ってくれることでしょう

 艦娘は、提督を選べない。

 提督は、艦娘を選べない。

 その出会いがもたらすのが何なのかは、蓋を開けてみなければ分からない。




「吾輩が利根である。吾輩が艦隊に加わる以上、もう索敵の心配は――お主、何をしておるのだ?」

「『この部屋は盗聴されている可能性がある。適当に話を合わせながら筆談させてくれ』」

(と、盗聴じゃと!?)

「利根、良く来てくれた。俺達の鎮守府はお前を歓迎する」

「『少し前から秘書艦娘の三人の様子が明らかにおかしいんだ。その理由をお前には密かに調べて欲しい』」

「う、うむ、もう吾輩が来たからには心配はいらんぞ」

「『調べろと言われても、吾輩も来たばかりで右も左も分からんぞ? それに、共に戦う仲間を疑うような真似はしたくないんじゃが』」

「重巡洋艦は最上型、青葉型、古鷹型がうちには居る。まずはそこと顔合わせしてみるといい」

「『朝起きたら、俺が知らないうちに作られた合鍵で三人に私室に入られてた。他の奴等はそれとなく話を振っても、口を開こうとしない。もう頼れるのは新しく来た利根しか居ないんだ。頼む、俺を助けてくれ』」

「……そうじゃな、まずは同じ重巡洋艦達と会ってくるとしよう」

「『承知した、吾輩に任せておけ。その様な不安を抱えたまま艦隊指揮をされては困るからな、提督ならばもっと堂々としておれ』」

「……あぁ、そうしてくれ」

「『努力はしよう』」

「うむ、ではまた後でな」




(――ど、ど、どうすれば良いのじゃ!? 吾輩とんでもない鎮守府に着任してしまったのではないか!? 大見得切った手前、何もせんという訳にもいかん……それとなく協力してくれそうな者が居ると良いんじゃが……はっ!? もしやコレは吾輩を試しているのやもしれん。むむむ、どうすれば良いのだ吾輩は……)




 類は、友を呼ぶ。

 誰かに頼るのは、悪いことではない。共倒れという可能性も考えられるが、人知れず潰れてしまうのも問題だ。
 それが、提督という立場にある人間なら尚更である。

 ――しかし、頼られた方は堪ったものではない。




(……迷った、ここはどこなのだ?)

「――アンタ、誰?」

「っ!? わ、吾輩は利根である。今日からこの鎮守府で世話になることになった」

「へー、あたしは加古ってんだ、よろしくな」

「うむ、よろしく頼む。――そうじゃ、加古は秘書艦娘の三人とは仲が良いのか?……というか、この鎮守府の秘書艦娘とは誰なのだ?」

「提督からそんなことも聞いてないの? 秘書艦娘は吹雪と青葉と古鷹の三人だよ」

「古鷹ということは、お主の姉だな。ちょうど良い、少し話を――」

「あの三人について知りたきゃ、フタマルマルマルに明石さんのところへ来なよ。知らない方が幸せかもしんないけどね」

「……聞いたらその瞬間に背中から撃たれたりせんじゃろうな?」

「さぁてね、どうだろ?」




 一方通行の地獄への下り道に、Uターンは存在しない。

 後戻りの出来ない道を進んでいる時、精一杯の抵抗として出来ることは、立ち止まってみることだ。

 ――きっと、徐々に傾斜がついて転がり落ちることになるだろう。




「――吾輩は今すぐ異動する! こんな鎮守府には居れぬ!」

「無理、最低でも一ヶ月はここ」

「別に邪魔さえしなきゃ、青葉も他の二人も何もしないし」

「触らぬ神に祟り無し、ってね」

「お主達は平気なのか?」

「貧血、立ち眩み、目眩、胃痛」

「ちょっと過食症気味かも」

「不眠症」

「うむ、やはり異動一択じゃな」

「したいなら止めない。けど、どうなっても知らない」

「異動したいなら理由、必須だよ?」

「よっぽどの事が無いとその申請通んないって、前に古鷹に聞いた」

「――つまり、吾輩はここに居るしか無いというわけか?」

「「「正解」」」

(何じゃこの鎮守府は命の危険に晒されておったのは提督ではなく吾輩の方ではないか索敵に失敗するしない以前に味方を警戒しなければならぬなどまともな神経の持ち主ならばすぐに発狂してしまうぞ筑摩はどこだ吾輩も妹に会いたいぞそうだ提督に建造してもらえばよいのだ今すぐ執務室に行かねば!)




 重巡洋艦は九隻、艦娘の建造は運任せ、現実は非常である。

「利根さん、良かったらコレ食べて下さい」

「う、うむ、有り難く頂くのじゃ」

「青葉もコレあげちゃいます」

「う、うむ?」

「一緒にお茶でも飲みませんか?」

「いや、吾輩は――」

「ね?」

「……うむ」




「『どうだった?』」

「『吾輩は何の力にもなれそうにない、すまぬ』」

「『何かされたのか?』」

「……お主、難儀な男じゃな」

「それはどういう意味だ」

「吾輩にはあの者達の趣味は理解出来そうもない。失礼するぞ」

「――俺は、一体何をしたんだ……?」




 シュレッダーは、万能ではない。

「司令官が私を疑ってるなんて何かの間違いだよねきっとそうだよだって司令官は私のことを好きなんだもん一番最初に司令官に会ったのも私最初の秘書艦娘も私一番信頼されてるのも私私私私何で邪魔するんだろあの二人司令官が相手にするわけ無いのに無駄なのに司令官は私の司令官なのに隣に立つのは私なのに恋に障害は多いって何かで読んだけど本当なんだ障害ならやっぱり排除しないと頭が一番確実だけど的が小さいし狙うなら心臓かお腹かな演習でもっと精度を上げなきゃ待ってて司令官私が貴方を苦しめる存在を消すからだから全部終わったら頭を撫でて優しく抱き締めて離さないで――あっ、磯波ポッキー食べる?」




 上司を気遣える部下の存在は、貴重である。

 提督は知らない、自分を狙うのは鉛の弾ではなく金の矢だということを。
 彼女達は信じない、提督から向けられているのは愛情ではなく恐怖だということを。
 他の者達は目を背けている、既に仮初めの平和は崩れ始めているということから。

 ――狂気は、溢れ始めれば洪水のように全てを呑み込んでいく。




「曙、次の作戦のことについて話が――」

「それ以上近寄らないでよクソ提督、話ならそこで出来るでしょ」

「そう、だな……次の作戦は駆逐艦のみで行う。その作戦においての艦隊旗艦を曙、お前に任せたい」

「何で私な訳? 駆逐艦メインなら吹雪を旗艦にするのが普通でしょ」

「最近、吹雪を含めた数人の様子が明らかにおかしい。出来れば俺も吹雪に任せたかったが、今の彼女に任せるのは危うい気がしてな」

「ふーん……私はやってもいいけど、まずは吹雪に許可を得てからにして。秘書艦娘を差し置いて大事な作戦の旗艦とか、余計な軋轢生みそうだし」

「分かった、話をしておく。また後で詳しい内容については口頭で伝えるからそのつもりで居てくれ」

「分かったからさっさと行きなさいよ」




「――司令官、私じゃなくて曙がいいの?」

「吹雪、次の作戦について話が――」

「私が旗艦で出撃します」

「いや、今回は曙に任せようと思う」

「司令官、曙も優秀な駆逐艦なのは私も知ってます。でも、戦艦や空母の方々の助力を得られない状況下で艦隊旗艦を務めた経験が、彼女には無いんです。今回の作戦に一番適しているのは、私です」

「……すまない、俺が間違っていたようだ。吹雪、お前に次作戦の艦隊旗艦を任せる。頼んだぞ」

「ありがとうございます!」

(俺の悪い癖だ、何時も悪い方向に物事を考えてしまう。こんなに頼りになる秘書艦をどうして俺は疑っていたんだろうな……)

(やっぱり司令官は私を選んでくれる。司令官は私を必要としてくれてる。頑張らなきゃ、頑張って他の誰よりも司令官の期待に応えなきゃ、渡さない、誰にも司令官は渡さない)




「司令官」

「何だ? 作戦の詳しい内容は既に――」




「好きです」

 戦果を挙げよう。そうすれば、目標にまた一歩近付く。
 戦果を挙げよう。身体は修復材が癒してくれる。
 戦果を挙げよう。心は何時も高揚している。
 戦果を挙げよう、戦果を挙げよう、戦果を挙げよう。




「ちょっと吹雪! 旗艦が突出してどうすんのよ!」

「……す……せる」

「吹雪、私達はどうしたら、いい?」

「……す……せる」

「ふぶ――」

「全部倒す、戦いを終わらせる、司令官が待っててくれる」

「……うん、分かった」

(――もう、私達のこと見えてないんだね、吹雪)




 戦果を挙げよう、戦果を挙げよう、戦果を挙げよう。
 二人の未来の為に、戦果を挙げよう。
 “今”聞けない答えを聞くために、戦果を挙げよう。
 分かっている答えをただ聞くために、戦果を挙げよう。
 戦果を挙げよう。戦果を挙げよう。戦果を挙げよう。




 ――“戦いが終わるまでは、そういう関係をお前達の誰とも築くつもりはない”

提督としては優秀ですよ、女心の機微に疎かっただけで

「司令官司令官、戦いが終わるまでは誰ともお付き合いとかしないって聞いたけど、ホント?」

「あぁ」

「じゃあ待ってて下さいね? 青葉、頑張っちゃいます」

「そうか……何?」

「吹雪なんかより、青葉は司令官のこと大好きです」

「やっぱりお前も、なのか……?」

「やだなー司令官、青葉はずっとずーっと司令官のこと見てたじゃないですか。気付かなかったとは言わせませんよ?」

「いや、俺は――」

「じゃあ青葉、今から衣笠達と演習してきますね。もっと強くなって、あっという間に深海棲艦を一匹残らず駆逐しちゃいます」

「……あぁ、頼んだ」




 例え、先送りにして解決することではないと分かっていても、そうせざるを得ないこともある。

愛情は直ぐに憎悪に変わったりしますよね

女性の集団と生活している以上、ワンミスで地位も名誉も吹き飛びます

自分に対して誰がどういう感情を抱いてるのかなんて目に見えませんし

そして私はリアルが絶賛修羅場なので今日明日更新は厳しそうですごめんなさい

申し訳ありませんが、修羅場立会人から修羅場当事者に昇格したので暫く更新は不定期になると思われます

エタらせる気は一切無いので、問題が解決出来次第、更新速度戻します

楽しみにしていただいている方々、本当にすいません

 ドア越しに、彼女は聞いていた。
 帽子越しに、彼女は見ていた。
 焦らなかった。疑いもしなかった。

 ――ただ、笑うだけだった。




「アレ? 古鷹、帽子は?」

「帽子なら部屋にちゃんと大事に置いてあるよ」

「何で急に被るのやめたのさ」

「この眼が、証拠だから」

「証拠?」

「うん、提督が私を愛してくれてる証拠。この眼を綺麗って言ってくれた提督の気持ちは、絶対に嘘じゃないもん」

「――古鷹は、好きって言わなくていいの?」

「言葉にしなくったって、提督に私の気持ちは届いてるから大丈夫だよ、加古」

「……そっか」




 綺麗なモノを見ることに抵抗を感じる者は、少ないはずだ。
 彼女から提督へ贈られたそれは、彼の私室の壁に飾られた。



 執務室が彼の寝室も兼ねるようになったのは、その直後のことだ。

一週間更新出来ず申し訳ありませんでした

誰かの視線を感じると寝れない人っていますよね

古鷹改二の艤装、殴るのに適していそうです

 疑心暗鬼の最大の問題は、疑う対象が無尽蔵に増えていくことだ。
 好意の裏を読み、誰かの視線に常に怯え、心は徐々に摩耗していく。
 悪意は目には見えないが、善意もまた、目には見えない。

 ――憔悴した彼がすがったのは、一度は手を振り払った相手だった。




「――利根」

「む? 何じゃ、吾輩に何か用か?」

「お前の目から見て、俺はどう映っている?」

「ふむ、酷い顔色をしておるな、まともに寝ておらぬのか?」

「そういうのを聞いたんじゃない。そうじゃ、ないんだ……」

「……お主は、提督には向いておらん」

「……そうか」

「じゃがな、向いておらんでも今のお主は提督なのだ。お主がそのような顔をしておると、艦娘全体の士気に関わる。吾輩も、そう肝が据わっておる訳ではない。あまり不安にさせんでくれ」

「……あぁ」

「そうじゃ、モノは相談なのだが、吹雪と青葉と古鷹と艦隊を組むのは、ちと息苦しい。なるべく吾輩をあの三人とは別に組んではもらえぬか?」

「善処はする」

「絶対じゃぞ!?」




「――善処する代わりに、部屋で茶を淹れてくれないか?」

部屋で茶を飲むぐらい普通です、何を怯えるのでしょう

あぁ、青葉が部屋の前を通り過ぎたのは偶然です

「――司令官」

「っ……青葉か、何だ?」

「利根三回加賀一回赤城一回望月二回夕立一回陸奥一回伊勢一回神通二回那珂一回文月一回、青葉のところにはお茶飲みに来てくれないんですか?」

「お前達とは四六時中顔を合わせている。作戦を立てるためには、全艦娘の状態把握も大事だ。ただ茶を飲んで談笑している訳じゃない、勘違いするな」

「青葉のことなら手にとるように分かるから必要無いってことですね。流石司令官、青葉ちょっと照れちゃいます。――でも、あんまり他の子と親しくしないで下さいよ? 青葉、ヤキモチ妬いちゃいます」

「……分かった、今度紅茶を飲みに行く。それでいいか?」

「はい! 朝でも昼でも夜でもいつでもいいですから待ってます! ではでは司令官、青葉、出撃してきます!」

「あぁ、良い戦果報告を期待している」




(――衣笠と、今日は話そう……)

色々なゲームに例えた現状解説のコーナー

1、善行死ねの彼女が好感度マックスで三人徘徊中

2、爆弾マークが常時三人に付いていて、爆発したらゲームオーバー(タイトルはヤンデレメモリアル)

3、特製カミソリティーを淹れてくれるゆかちゃんが三人

4、次のステップは君望緑髪眼鏡ルート




というのは冗談です、この一歩手前ですから愛されててモテモテで羨ましい限りですね

 初雪は、頻繁に体調を崩すようになった。

 磯波は、過呼吸を起こすようになった。

 白雪は、笑わなくなった。

 川内は、吹雪を避けるようになった。

 神通は、何かを振り払うように敵を葬っていた。

 那珂は、笑みがぎこちなくなっていた。

 長門は、なるべく吹雪と出撃するようになった。

 陸奥は、初雪達と過ごす時間を増やした。

 吹雪は、何かにとり憑かれた様に出撃し続けていた。

 衣笠は、食べたものを吐くようになった。

 隼鷹は、酒を飲むのを控えるようになった。

 夕立は、考えられないような誤射をするようになった。

 磯風は、作戦中に仲間を視界に入れることに怯えるようになった。

 金剛は、比叡から片時も離れなくなった。

 比叡は、金剛の言う通りに一日を過ごすようになった。

 青葉は、現実と虚構の境が曖昧になっていた。

 加古は、現実と夢の境で日々を過ごすようになった。

 最上は、三隈のベッドで寝るようになった。

 三隈は、夜な夜な壁に頭を打ち付けるようになった。

 鈴谷は、熊野と全てをお揃いにするようになった。

 熊野は、掠り傷ですら即座に修復材を使用するようになった。

 文月は、敵を沈めることを楽しいと感じるようになった。

 弥生は、歪んだ笑みを覚えた。

 翔鶴は、加賀に依存するようになった。

 飛龍は、誰に対しても多聞丸と呼ぶようになった。

 古鷹は、朝に撮った自分の眼の写真を、毎日提督の部屋に飾るようになった。

すごいだろう……「そこにある空気」だけでこうなっちまうんだぜ……


今のところ「提督を殺して私も死にます」的なオチしか見えないがまあ小さな希望は持っておくとしよう

 まだ、誰も沈んでいない。

 まだ、誰も死んでいない。

 まだ、誰も殺していない。

 ――ただ、それだけでしかない。




「演習、及び合同作戦中に異常が見受けられた艦娘多数。調査の必要ありと判断します」

「仮に交戦することになった場合、鎮圧出来るのか?」

「はい、その点についてなのですが、出来れば力をお貸し頂けると……」

「武蔵と朧の二人で良ければ連れていけ、水陸共にこなせる者の方がいいだろう」

「ご配慮痛み入ります。明朝、マルロクサンマルの出発予定です」

「分かった、私から伝えておく。下がっていいぞ」

「失礼します」

(手遅れでなければ、良いのだがな……)




 救済(おわり)を告げる、鐘が鳴る。

 加賀は、自分を慕う翔鶴をどうにか正気に戻そうと努力していた。

 赤城は、既に狂気に侵され始めている加賀の背中を守り続けていた。

 伊勢は、日向に延々語りかけるようになった。

 日向は、空を見上げて何もしない時間が増えた。

 球磨は、妹に危険が及ばないように細心の注意を払っていた。

 多摩は、昼寝をしなくなった。

 北上は、全てを分かった上で何時も通りを貫いていた。

 大井は、北上に合わせて重い空気を少しでも軽くしようと努めていた。

 木曾は、もしもの事態に足手まといにならないよう演習に励んでいた。

 曙は、クソ提督と呼ぶことすらも止めた。

 満潮は、全てを既に諦めていた。

 霞は、作戦以外で一切口を開かなくなった。

 望月は、どこか寂しげに弥生と文月を見つめるようになった。

 利根は、ここには居ない妹が見えるようになった。

投下する順番間違えた、もう手遅れだしいいよね

もうすぐハッピーエンド

 何が、間違っていたのだろうか。

 何を、間違えたのだろうか。
 どうすれば、良かったのだろうか。

 ――問うたところで、既に意味は無い。




「本日は、どのような御用件でこちらに?」

「友軍艦隊への誤射や非協力的な態度、撤退合図後の突撃、艦娘の異常行動及び身体異常等、軍内部のみならず近隣住民からも、この鎮守府の艦娘に関する報告を多数受けている。何か、事実と違う点はあるか?」

「……あぁ、やっとか」

「やっと、だと? どういう意味だ」

「もう、疲れました。あの三人を解体するなり何なりして下さい。他の者も解体するならして下さい。軍法会議にかけて頂けるなら、即刻お願いしたい。出来れば、軍から離れるような形を望みます」

「待て、貴様何を言っている……?」

「提督になどならなければ良かった。あの時、教官の言葉に心が動かなければ、そもそも親に逆らって軍に入る道を選ばなければ、艦娘を“道具”として見れていればっ! こんな、ことには、ならなかった!」




 扉の向こうで、何かが落ちる音と、ナニカガコワレルオトガシタ。

悲報、少しの間ほのぼのします

 壊れたナニカ達が、扉を破り中へと飛び込む。

 ――コイツ等が来たからおかしくなった。コイツ等を消せば、きっとこの人は正気に戻る。

「司令官、大丈夫です。私がついてます」

「司令官を洗脳しましたね、青葉は騙されませんよ?」

「提督、今助けます」

「なるほど、コレは解体してやった方が幸せかもしれん」

「武蔵さん、感心してる場合じゃないと思う、多分」

「いい加減に気付けよっ! お前達が見ている俺はただの虚像だ! 全ての行為は嫌われない為のご機嫌取りだ! そこに、特別な感情なんて無いっ!」

「ごめんなさい司令官、私が最初からこんな人達をここに通さなければ良かったんです……」

「(武蔵さん、朧さん、鎮圧は可能ですか?)」

「(可能だが、ここでは少し狭すぎるな)」

「(一度退いた方がいい、絶対)」

「――お前達、そこの男を元に戻して欲しいか?」

「戻せ、早く、今すぐに」

「戻さないと、コロシマス」

「そうか、ならばこっちだ! お前達の愛する男はこの武蔵が預かる!」

「離せっ! もう俺は艦娘には関わりたくない!」

「少し黙っていろ、気が散る」

「ぐっ……」

「提督っ!?」

「朧さん抱えて跳ぶなら先に言って下さい!」

「黙ってて、着地で舌噛む」




 窓から飛び出した四人を追う三人。皮肉なことに、彼女達はこの時初めて協力して戦うことを選んだ。

 ――司令官を助けなきゃ。私が助けなきゃ。アレは敵だ。味方じゃない。

 ――司令官待っててね。青葉は司令官を信じてます。司令官、司令官司令官司令官シレイカン。

 ――提督に見て欲しい。私を見て欲しい。あんな嘘信じない。だって、提督は、いつだって私に優しかったもん。

 ――アレは、テキダ。殺セ、ころセ、コロセ。

 ――彼以外、もう何もいらない。




 ――ダイスキダヨ、アナタ。




 遅れて窓から飛び出してきたのは、“艦娘”でも、“少女”でも、“深海棲艦”でもない、愛に狂った化物達だった。

「司令官ヲ返して!」

「そこまで愛した男がコレとはな、同情を禁じえんよ」

「黙レ! 貴女達に司令官の何が分かるんでスカ!」

「分からないよ、知らないし」

「だったら、邪魔をシナイデくれます?」

「それは無理な相談だ。艦娘とは平和と秩序を守るべき存在であり、今のお前達のように脅かす存在であってはならない」

「ソンナのどうだってイイ。司令官、司令官をカエセ、カエセカエセカエセ!」

「……朧、なるべく一撃で眠らせてやるとしよう」

「……うん」




 何故、艦娘が強いのか、それは学ぶ兵器だからだ。

 何故、艦娘が強いのか、それは感情を持つからだ。

 何故、艦娘が深海棲艦と似ているのか、それは正と負の違いだからだ。

 もし、彼が彼女達に正面から向き合えていれば、彼等は多大な功績を残しただろう。

 もし、誰かが彼を助けていれば、こんな結果にはならなかっただろう。

 意識の無い彼の横で、全てが終わりを迎えようとしていた。




 ヒトマルマルマル、吹雪・青葉・古鷹の三名を拘束、解体決定。

 待ってはいけなかった。行動を起こさなければいけなかった。

 だが、頭の片隅に残っていた共に過ごし笑い合った記憶が、幾度となくその決心を鈍らせた。

 派閥など無かったあの日を、歓迎会で騒いだ夜を、彼女達は忘れられなかった。

 一人、また一人と心を蝕まれていく中、それでも願わずにはいられなかったのだ、過ぎ去りし日の“日常”が再び訪れるのを。




「――様子見をしていたお前達も、そろそろ出てきたらどうだ?」

「……吹雪、止めてくれて、ありがと」

「青葉の顔、ちゃんと見たの久しぶりかも」

「コレ、現実だよね?」

「現実だよ、多分」

「そこで多分を付けないで下さい、話がややこしくなります」

「他の者達はどこだ?」

「比較的正気保ってる人が、暴れそうな人、拘束してる」

「幸い、戦艦とか空母の皆は結構正気保ってたからね」

「でも、かなり抵抗されて皆ボロボロ」

「――いいの? 三人はコレで」

「……いい」

「また一緒にバカやりたかったけど、もう無理だもん」

「悪い夢はさ、ずっと見てたくないじゃん?」

「悪い夢、か。ならば覚ましてやるのが優しさというものだな」

「解体の儀始めるのに、どのぐらい時間かかるの?」

「……今からだと、一時間といったところです」

「なら、それまで見張ってないと。武蔵さん、この三人お願い。アタシは他を見てくる」

「あぁ、任せておけ」




 気絶している三人に、語りかける妹達。

 その言葉のどこにも恨みや怒りが無かったのは、彼女達もまた、姉を心の底から大事に思っていたからに他ならない。

「……流石にコレは、報告するのが大変そうですね」

「彼女達の希望だ、尊重してやるべきだろう」

「アタシも、そう思う」

「分かっています。――それでは、コレより解体の儀を執り行う」

「司令官……司令――」

 吹雪、艦娘という存在から逸脱した為、解体。

「ふぅ……疲れた」

 初雪、吹雪と共に解体されることを望んだ為、解体。

「また、きっと会えます」

 白雪、同上。

「解体、痛くなくて良かった……」

 磯波、同上。

「またバレーボール、やろうね」

 川内、同上。

「次もまた喧嘩したら、止めます」

 神通、同上。

「次は皆でアイドルとかやりたいなー」

 那珂、同上。

「最後まで付き合おう、それが私なりの責任の取り方だ」

 長門、同上。

「ホント、手間のかかる子達ね」

 陸奥、同上。

「青葉は……青葉はただ司令官に――」

 青葉、艦娘という存在から逸脱した為、解体。

「次は取材、いつだって付き合っちゃうから」

 衣笠、青葉と共に解体されることを望んだ為、解体。

「夕立は、夕立はもっと戦いたいっぽい!」

 夕立、敵味方の区別が付かなくなり、危険な為、解体。

「もう、これで何も見なくていい……」

 磯風、戦闘出来る状態ではなく、本人が強く解体を希望した為、解体。

「提督……私の眼、もっと見――」

 古鷹、艦娘という存在から逸脱した為、解体。

「古鷹、お休み。もう起こさなくていいかんね」

 加古、古鷹と共に解体されることを望んだ為、解体。

「加賀さん、加賀さんっ!」

 翔鶴、依存度が高く、加賀が自身の解体を望んでいる為、暴走を危惧して解体。

「翔鶴、ごめんなさいね」

 加賀、見て見ぬ振りをした結果の惨状に戦う意欲を失い、解体を希望した為、解体。

「沈みたいと願う私が、居てはいけないんです」

 赤城、解体される者達と共に消えることを望んだ為、解体。






 ――以上、十八名を解体処分とする。




「――お前達は、コレで良かったのか?」

「誰かがさ、酒でも飲みながら思い出してやんねぇと可哀想だろ?」

「多少伊勢が五月蝿いのと、最上達を正常に戻すのに時間はかかるだろうが……まぁ、何とかしてみせる」

「弥生姉も文月姉もあたしが責任持って面倒見る。めんどくさいけど、姉妹だしね」

「環境が最悪なのなんか慣れてるわ、また次の鎮守府で戦うだけよ」

「さて、次はどこに配属されるのかしら」

「提督がまともならどこだっていい」

「戦いさえ終われば、きっとこんなこともう起きないクマ」

「加古の使ってたタオルケット、貰って行くにゃ」

「まぁなんて言うの、すっごく今更だけどやれることをやってから消えたいじゃん?」

「私は、北上さんについていきます」

「消えるだけが、責任の取り方じゃねぇだろ」

「吾輩も、吾輩なりの責任を取らせてもらう。のぅ、筑摩」

「アタシ、朧」

 隼鷹、他鎮守府へ異動。終戦まで生き延びた後、十九個の盃を並べて解体を望み、解体。

 伊勢、徐々に正気を取り戻し、日向と共に大本営所属の戦艦となった。

 日向、伊勢と共に大本営所属の戦艦となった。最上型四隻のメンタルケアにも協力し、今は六人で生活している。

 最上、三隈と共依存状態に陥っていたが、過度のストレスから解放され徐々に正気を取り戻していった。現在は復帰し大本営所属。

 三隈、頭を打ち付けていた名残で、親しい者に頭を擦り付ける癖が残ったものの、精神状態は安定した。大本営所属。

 鈴谷、熊野への愛情は元からあったものであり、正気を取り戻した今もベッタリとくっついている。大本営所属。

 熊野、抵抗を諦めた。大本営所属。

 金剛、妹を守らなければならないという強すぎる思いから解放され、現在は別々の鎮守府で過ごしている。今度は榛名が姉の愛を一身に受けているようだ。

 比叡、金剛と離れることで次第に正気を取り戻し、現在は別の鎮守府に配属され元気にやっている。メールは一日百通、普通だ。

 望月、姉二人の面倒を見ながら大本営所属の艦娘として生活。めんどくさいと笑顔で言うようになった。

 弥生、無表情に戻った。望月と文月と居る時は時折笑うらしい。大本営所属。

 文月、自分のしていた行為を正しく認識したのと古鷹達が居なくなったことで暫く塞ぎ込んでいたが、次第に昔の明るさを取り戻していった。大本営所属。

 霞、他鎮守府へ異動。ケッコンカッコカリするまでに信頼した提督と死別。仇を討った後、海へと還った。

 満潮、転々と鎮守府を異動。最後に行き着いた鎮守府で幸せな毎日を送っている。

 曙、朧が連れて帰った。頭にクソと付ける呼び方は変わらなかったが、今の生活に不満はないらしい。

 球磨、妹四人と同じ鎮守府へと異動。やる気に満ち溢れているが空回りする提督の面倒で毎日忙しいらしい。

 多摩、加古のタオルケットで昼寝を再開、たまに涙を流しているのを四人は知っているが、誰もそれに触れることはしなかった。

 北上、球磨と共に提督の空回りを制御する日々。気だるそうな雰囲気はそのままに、頼もしさは増していた。

 大井、舌打ちの回数が日に日に増えている以外は、特に問題は無い日々を送っている。

 木曾、雷巡になった。勝手に演習を申し込んでは姉達に怒られている。だが、懲りる気は更々無いらしい。

 利根、筑摩の居る鎮守府に異動。妹に甘える姉の姿は、見る者の癒しとなっていた。






 提督、精神に異常を来しているため、入院。要望通り、軍から彼の名前は抹消された。




 これでこの話はおしまい、めでたしめでたし、完。




 ――そうは問屋が卸さない。

 ――髪留めと、ペンと、帽子を手に、窓から外を眺める。

 ――何度も、何度も、彼女達の声が自分を呼ぶ。

 ――彼女達の出会った頃の笑顔が、頭から離れない。

 ――彼女達が狂った原因は、自分だ。

 ――そうだ、俺だ。

 ――償わないと。

 ――でも、どうやって?




「司令官」
「司令官」
「提督」




「……あぁ、お帰り。今度は行こうか、一緒に」




 その日、病院から患者が一人消えた。




~ハ ッ ピ ー エ ン ド~

本編中は轟沈してない鬱は最初からだから展開してないほのぼのがやっぱり性に合ってる完!

後は質問感想ご意見等々あればどうぞ、明日にはHTML依頼出します

吹雪青葉古鷹以外の艦娘からの提督の評価は実際どんなものだったんでしょうか
>>8には「外面が大変良く、艦隊指揮能力も高い為、所属する艦娘からの評価は高い」とはあるけれど

乙です
この元ギス鎮にはまた新しい提督と艦娘が着任したのかな?

>>503
轟沈0、無理な作戦を強要しない、疲労は残らない様に配慮、セクハラパワハラ訴えられるの怖い

彼女達が狂わなければ、この鎮守府には何の問題も無かったということです

“提督”としての評価は高い

なお、提督に向いていないと一刀両断される程度の人間だった模様

>>510
近隣住民の目もあるので即着任しました

>>512
着任早々末期一歩手前でしたし、彼女には彼が優秀とは到底思えませんからね…

ここの曙って反抗期ガールの曙と同一人物?

>>518
そうです

霞は投稿スレに昔投下したのを使いました

【艦これ】大鳳「一度入ったら抜け出せない鎮守府?」

【艦これ】大鳳「一度入ったら抜け出せない鎮守府?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399761014/-20)

【艦これ】大鳳「出入り自由な鎮守府」

【艦これ】大鳳「出入り自由な鎮守府」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401844632/l20)

【艦これ】提督「鎮守府として色々不味いことになった」

【艦これ】提督「鎮守府として色々不味いことになった」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406746107/l20)

【艦これ】大鳳「浦風が可愛い鎮守府」提督「多分一応は鎮守府」

【艦これ】大鳳「浦風が可愛い鎮守府」提督「多分一応は鎮守府」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416478239/l20)

【艦これ】多摩「こんな鎮守府すぐに出ていくにゃ!」


>>519
読みたいんだけどどうすれば読めるかな

>>527
 ――深く、深く、海の底に沈んでいく。

 ――やり残したことは、何も無い。

 ――失ったモノは、戻らない。

 ――憎い仇を討っても、得たモノなどありはしない。

 ――あの人はもう、笑いかけてはくれない。

 ――この指輪を填めてくれた温かい手は、私に触れてくれない。

 ――優しく抱き締めてくれることも、頭を撫でてくれることも、二度とない。

 ――彼は、海の底で待っていてくれるだろうか?

 ――後を追う様に同じ海へと沈んだ私を、怒るだろうか?

 ――……あぁ、もうすぐ海の底だ。




「せっかちだな、お前さんは」

「アンタの方がせっかちじゃない、このクズ!」

「あぁあぁクズで結構。――さて、行くか」

「仕方無いわねぇ、ついて行ってあげるわ」




 ――だから、もう私を置いていくんじゃないわよ?

次スレは少し期間空けます、多分次は潜水艦でドタバタ系

酉は変えませんし、ご意見頂いたように過去スレを最初に貼るようにします

それではHTML依頼出してきます、お付き合い頂きありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  ジャイアン隊長   2019年08月27日 (火) 00:40:21   ID: WQny9Esr

まあいろいろな会社や軍隊には幹部のイケメン目当ての女が居ます。鎮守府の提督はなぜ大本営に頼らないんだよ。

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