モバP「トップギア?」 (50)

♪TOPGEARのテーマ

チャララチャッチャーチャーチャーチャーチャラララー

ジェレミー「トゥナーイト!」

ジェレミー「リチャードが女の子に挨拶し――」

ジェレミー「ジェームズが女の子に囲まれ――」

ジェレミー「私が女の子にCDをプレゼントします」

デーンデーンデーンデーンデーンデーンデーンデーデー





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1415024705


ジェレミー「ハーイ!ハーイエブリワーン!センキュー!」

ジェレミー「さて!」

ジェレミー「日本車といえば皆さんどういったイメージをお持ちでしょう?」

ジェレミー「退屈? 無個性?そつなくこなす優等生といった所でしょうか。例えばレクサスの史上類を見ない無味乾燥さなどはその典型です」

ジェレミー「間違ってもランボルギーニ・アヴェンタドールやマクラーレン・P1のような情熱を期待してはいけません」

ジェレミー「ですが一方、私の愛して止まないマツダ・MX5、プレイステーション・モンスターのニッサン・GT-Rのような車を生み出したのもまた日本に他なりません」

ジェレミー「私は常々疑問に思っていました。かの国の二面性はどこからくるのかと」

ジェレミー「国を知るにはまず文化を知る必要があります。例えばメキシコが勤労意欲旺盛な労働者と素晴らしいゲロ文化……失礼、食文化で知られるように」

ハモンド「メキシコ大使館の人、怒らないよね?……さて、そういうわけで番組のプロデューサーから『日本の大衆車を現地で調達し、日本の大衆文化を知るべし』との使命が下されました」

リチャード「日本は極めて多様で高度な文化を持ちます。アキラ・クロサワ、スーパー・マリオ、モザイクのかかった触手に襲われる女の子。我々はその中でも最も多様性に富んだものにスポットライトを当てました。即ち――」

ジェレミー「アイドルです」


ハモンド「というわけで、ここはTOPGEARの日本支部」

ハモンド「誰にも知られてはいけない、極めて秘匿性の高い、とても秘密の、トウキョーからトーメイハン・ハイウェイのスズカ・インターチェンジを降りて二十分、大きな観覧車が目印の秘密基地だ。中にボーリング場と温泉があって
とても便利。ホテルは部屋数が少ないから特にF1期間中は要予約……秘密だけど」

ハモンド「さて、我々に与えられた予算は30万円。英国の通貨に換算すると500億ポンドくらいだけど、物価の高いこの国じゃコーヒー一杯も買えない」

ハモンド「そういうわけで選択肢が限られる中、僕が選んだのはこれ。スバル インプレッサSTI WRX」

ハモンド「97年式だがまだまだ走る。四気筒ボクサーエンジンで4WD。スバルがWRCから撤退してしまって随分たつけど、この車が作られた頃はまさしく全盛期。ジェームズが乗ったって勝てるくらい強かった。我ながら素晴らしい選択だね」



ハモンド(ナレーション)「僕がインプレッサの素晴らしさについて語っていると、ジェレミーが到着しました……彼にぴったりの車に乗って」


ハモンド「RX-8! あのコンパクトな車によく奴の腹が入ったな」

ジェレミー「君は私がMX-5に乗ってくると思ったかもしれないが、おあいにく様。今回のテーマは大衆車だ。それなら4ドアは必須だろう」

ハモンド「4ドア? 後ろのはドアじゃなくて隙間だよ。製造ミスに違いない、きっとブリティッシュ・レイランド製だ」

ジェレミー「馬鹿いうな、見ろ。これなら戦艦プリンス・オブ・ウェールズだって入る。名誉教授と君しか乗らないようなダサい車よりよっぽどマシだ。それに少なくともポルシェみたく突然発火はしない」

ハモンド「うるさいよ!」



ジェレミー(ナレーション)「私がハムスターをRX-8の後席に押し込もうとしていると、ジェームズ・キャプテン・スロウ・メイの到着です」

ジェレミー「ラビッシュ! あれは史上最悪の車だ」

ハモンド「まったくだ」



ジェームズ「見ろ! スズキ・アルトワークス!」

ジェレミー「なんだこれは。まるでHOゲージだ」

ジェームズ「馬鹿にするなよ。日本じゃこの車は軽自動車という特殊な分類がされ、税率が軽減される。まさしく大衆車と呼ぶに相応しい」

ジェレミー「こんな車に乗るくらいなら私はピアース・モーガンとキスするほうを選ぶ」

ジェームズ「そう言ってられるのも今のうちだぞ。驚け――なんと、この車のエンジンはケータハム・セブン160と同じだ!」

ハモンド「じゃあいっそフロントガラスも外せばいいんじゃないか?」



ジェレミー(ナレーション)「我々の議論は暫く続きましたが、プロデューサーからの指令で中断させられました」



ジェレミー「『皆さんにはそれぞれの車を使ってテストをしてもらいます。我々の用意した障害を一番上手く切り抜けられた車が優勝です――』」

ジェームズ「またこのパターンか」

ハモンド「いい加減マンネリだよね」

ジェレミー「まて、二人とも……今回は一つ、喜ぶべき違いがある」

ジェームズ「なんだ? リチャード・ハモンドに死んだ魚を生のまま食べさせるとかか?」

ハモンド「そんな事になるなら僕は今すぐ回れ右してナリタに戻るぞ」

ジェレミー「それも興味深いが今回は違う。……喜べ、助手席に女の子を乗せる!」

ジェームズ「マジで?」

ハモンド「ジェザ、この国の女性は長生きらしいから念押ししておくけど、皺だらけの顔でアメリカ人と戦争した経験のある妙齢の女性は女の子に含まれないからな?」

ジェレミー「もちろん。正真正銘のヤングアイドルだ。百聞は一見にしかずと言う。四の五の言わず本人達に登場してもらおう」

ジェレミー「皆さん、拍手でお迎えください――シンデレラガールズです!」



凛「えっと、こんにちは」

加蓮「こんにちはー」

奈緒「こ、こんにちは……おいマジか、本当に外人ばっかじゃん」

きらり「おにゃーしゃー☆」

菜々「キャハっ!アイドル安部菜々、17歳です! よろしくお願いしますね!」

ありす「……どうも、よろしくお願いします」

楓「宜しくお願いします」



ジェームズ「Oh, Cute!」

ハモンド「Excelent!」

ジェレミー「(満面の笑みで)ハッハッハァ!」


凛「ねえ、今ヤング・アイドルって言ってたけど……」

菜々「な、なんでナナを見るんですか!? 大丈夫ですよ、日本人は若く見えるって言いますし!」

きらり「うきゃー☆ 外国の人、いっぱーい!」

ありす「TOPGEARは1977年から続いているイギリスのBBCの人気自動車番組です。日本でもBSフジが放映していますね」

奈緒「なあ加蓮どうすんだよ外人だよ英語しゃべってるよ」

加蓮「ちょっと奈緒、くっつかないで。大丈夫だよ、スタッフさんが進行してくれるから」

楓「いつもと感じが違いますね。漢字がないからかしら……フフッ」

ジェレミー「彼女達は日本のトップ・アイドルだ。今回のテストに協力してもらう」

ハモンド「TOPGEARもたまにはいい事するじゃないか。あー、コニチハ!」

凛「こ、こんにちは……」

ハモンド「最高に可愛いね、名前はなんていうの? これから暇かい? もしよかったらツキジのスシ・バーまでドライブに行こう。いい店を知ってるんだ」

凛「……?」

奈緒「おい凛! なんか話しかけられてるぞ!英語で! 何て言ってんだ!?」

凛「わ、わかんない。なんかお寿司? とか言ってるけど」

加蓮「おなかへってるのかな」

楓「英語はわかりませんね」

きらり「にょわー……」

ありす「だ、大丈夫です! ヤフー翻訳があれば!」


ジェームズ「……ジェレミー、彼女達は英語がしゃべれないみたいだぞ」

ジェレミー「そのようだ。あー、だが大丈夫。これも予定通り。まったく問題ない!」

ハモンド「その通り! 些細なことだ!」

ジェレミー「では予定通り企画を進めようか!……(小声で)おいどうする、大問題だ」

ハモンド「(小声で)誰かテレパシーで意思疎通できないか?」

ジェームズ「(小声で)いざとなったらハモンドに鯨の惨殺死体を食べさせて場を繋げよう」

ジェレミー「(小声で)まて、こんなときのために日本語会話帳を持ってきたんだ。ええと……『ワタシ、アナタノ、オッパイ、モミタイ』。多分違うな」

ハモンド「(カメラ目線で)ああ、ちょっとした相談だよ!予定通りの!」




奈緒「加蓮、これも進行どおりなんだよな! な!?」

加蓮「……えっと、多分?」

ジェレミー(ナレーション)「さて、我々は『予定通り』通訳を手配する事に成功しました」



ケイト「TOPGEARに出られるナンテ、とっても嬉しいですネ!」

メアリー「パパがBBCアメリカで見てたから知ってるワ!有名な番組なのよね!」

留美「秘書時代に覚えた英会話がこんなところで役に立つなんてね」

(以下、三人による同時通訳)




ジェレミー「『第一のチャレンジです。パートナーの女の子を選んで助手席に乗せ、ドライブしながら車のインスピレーションを語ってください。女の子がその車をほしいと思えるか、点数で評価をつけてもらいます』」

ハモンド「これば僕の勝ちね。ボーダーシャツのホモ、腹の出たオラウータン、ハンサムな伊達男。勝負にならない」

ジェームズ「ハモンド、なにを勘違いしているのか知らないが、これはインプレッション勝負だ。私の示唆に富んだ奥深いコメントに対抗出来るとでも?」

ジェレミー「大口を叩いている馬鹿どもは無視しよう。まずは女の子選びを……ハモンド!君のパートナーは決まりだな?」

ハモンド「(無視して)あー、アリス。是非君のキュートなお尻を僕の車の助手席に」

ジェームズ「違うだろう、ハモンド。君の助手席は彼女しかいない」

きらり「にょわ?」

ハモンド「……ああ、わかってるよ。わかってるさ」

きらり「うっぴょー!はもんどちゃん、ちっちゃくってかーわいいー☆ きゅんきゅんしちゃーう!」

ハモンド「やあキラリ、よろしくね。早速だけど一つ英国のテレビのしきたりを教えておくと、女性は常に男性の五歩後ろに立つ必要があるんだ。だからキラリも……」

きらり「むぇーなんでー? きらり、はもんどちゃんとはぐはぐしたーい☆ ていうかはぐはぐすゆー!」

ハモンド「ちょ、ちょっとまってキラリ! ストップ! キラリ!」

凛「すごい身長差」

加蓮「親子みたい」

奈緒「足浮てるぞ」

ジェレミー「(爆笑)」

ジェームズ「(爆笑)」



ジェレミー「さて、私のパートナーは……そうだな、カエデ。君に頼めるかい?」

楓「あ、はい。よろしくお願いします」

ジェームズ「私が最後か」

ジェレミー「アイドルのみんな、一つ重要な事を教えよう。実はこの男、女性に興味が無い。その証拠に彼の下着は虹色だ」

ジェレミー「エマ・ワトソンとマーガレット・サッチャーの区別すらつけられない男の為に、パートナーは私が選んであげよう……ナオ、お願いできるかな?」

奈緒「え、え、あたし!? いや無理無理無理無理!無理だって!知らない外人と二人きりとかホント無理!」

ジェームズ「おいジェレミー、日本にまで変な噂を広めるな。ナオ、誤解しないでくれ。僕の尻は出す専用だ、入れたことは一度たりとも無いぞ。パンツだって普通の白。見てみるかい?」

奈緒「しっ尻とか言い出したぞこのおっさんちょっとホント意味わかんねぇよ泣くぞ!?」

凛「もう、奈緒ってば……あの、クラークソンさん」

ジェレミー「ああリン、君と私との仲じゃないか。愛と親しみを込めてジェレミーと呼んでくれないか?」

凛「……えと、クラークソンさん。あの、三人で乗ってもいいですか? 私と加蓮と奈緒で」

ジェレミー「おっと、それはルール違反だ。秩序と公平を第一に重んじる英国人として、いくらキュートなリンの頼みとはいえ」

ハモンド「(小声で)いやまてジェレミー」

ジェレミー「(小声で)なんだハモンド」

ハモンド「(小声で)考えて見ろ。三人のキュートな女の子に囲まれたジェームズがどんな醜態を晒すか見てみたくないか?とびきり楽しいぞ」

ジェレミー「(小声で)なるほど、それもそうだ……オーケー、リン。今回だけは君の美しさに免じて特別に四人でのドライブを許可しよう!」

凛「ありがとうございます……ほら、よかったね奈緒」

加蓮「もう、奈緒ったら蚤の心臓なんだから」

奈緒「だ、だってよぉー……」



ジェームズ「…………」

ハモンド「見ろ、ジェームズのやつ身動き取れなくなってるぞ(ニヤニヤしながら)」

ジェレミー「ティフ・ニーデル並みに不自然な笑顔だ。相当参ってるな(ニヤニヤしながら)」

ジェームズ「…………」


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(一旦スタジオ)

ジェレミー「……ジェームズの為に男性アイドルも呼んだたほうがよかったかな。さて、続きが気になりますがここで一旦中断。ニュースの時間です」

ジェームズ「And――Good news!!」

ジェレミー「なんだって!?(棒)」

ジェームズ「ダチアの輸入代理店が日本にあるらしい!」

ジェレミー「素晴らしい!(棒) では次のニュース……」


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(再びVTR)


ジェレミー(ナレーション)「さて、ジェームズが女性の半径五メートル以内に入れるようになるまでまだ暫く時間がかかりそうですので、まずは私からスタートです」



ジェレミー「じゃあいこうか、カエデ」

楓「はい。あの、でも。あんまり車とかは詳しくないので……」

ジェレミー「ああ、全く問題ない! 私が手取り足取り教えてあげよう。さて、そもそもこのRX-8という車はマツダが誇るロータリーエンジンを搭載しているんだけど、ところでカエデは今晩暇かい?」

楓「え?……えっと、あの、お仕事が入ってますけど……それが?」

ジェレミー「そうか、それは残念。話を戻すと、そもそもこのロータリーエンジンと言うのは極めて特殊な機構をしているんだけど、ちなみにカエデ、電話番号を教えてくれないかな?」

楓「ご、ごめんなさい。プロデューサーから個人情報は伝えないようにって言われてるんです」

ジェレミー「そうか、なら仕方ない。さて、かつては未来のエンジンといわれていたこのロータリーエンジンだが、現在のところまともに市販しているメーカーは無い。それはなぜか? 答えあわせをするまえにカエデ、率直に言って君に恋人はいるのかい? もしいないのなら素晴らしい候補がいるんだ。ちょうど君の隣で車を運転している」

楓「……えっと、クラークソンさん。車のお話は……」

ジェレミー「え? ああ、そうだった。つまりロータリー最高! 以上。さてカエデ、君は恋愛は国境を超えられると思う? 私の答えは勿論イエス。それを確かめるために週末私と出かけるのはどうだろう。もしくはホテルの部屋番号を教えておくからいつでも来てくれていい。日英の外交関係について一晩中語り明かそう。おなかがすいても大丈夫。私のソーセージをたっぷり食べさせてあげるから」

楓「……はぁ(……ソーセージ、好物なのかしら)」




ジェームズ(ナレーション)「残念ながら彼女達のプロデューサーからストップが出てしまい、ここで歩く18禁のチャレンジは強制終了となりました。続いては私の番です」

ジェームズ「それじゃあ始めようか」

凛「おねがいします」

加蓮「おねがいしまーす」

奈緒「お、おねがいします……」

凛「緊張しないで、奈緒。大丈夫だよ。メイさんすごくいい人そうだし」

加蓮「っていうか無害な感じ?」

凛「こら、加蓮」

奈緒「おまえらは気楽でいいよな、後ろに座ってりゃいいんだから。あたしは助手席で緊張しっぱなしだよ……はぁ」

ジェームズ「さて、ナオ。そもそも君はどれくらい車の知識を持っているのかな?」

奈緒「へ!? あ、いや、全然ですまったく知らないです!」

ジェームズ「そうか、では簡単に基本を説明してあげよう。現在世界の自動車メーカー業界はいくつかのブロックに分かれていて……」

奈緒「あ、ありがとうございます……」

奈緒「(……よかった。普通だ)」

凛「(ほら、やっぱりいい人だったでしょ)」

加蓮「(まったく世話が焼けるんだから)」

奈緒「(ま、あとは適当に頷いてりゃいいか。案外楽勝だな)」




外で見守るジェレミー「……なあハモンド。賭けをしよう。あの男が空気を読まずにしゃべり続けて女の子達をうんざりさせるほうに今晩のテリヤキ・チキンを」

外で見守るハモンド「ダメだよ、それじゃ賭けにならない」






――FIVE HOURS LATER――





ジェームズ「……つまり、まさにカール・ベンツという男の発明から自動車の歴史は始まったわけだ。ところで話は変わるけど、ベンツといえばやはりW140までの『最高か無か』というコンセプトについて語らないわけにはいかない。僕個人としては……」

加蓮「(……ねえ、この話いつ終わるの?)」

凛「(そんな事言ったら失礼だよ……まあ、確かに、ちょっとだけ長いけど……)」

奈緒「(なあ、いったん席変わってくれないか? 結構きついぜこれ……)」

ジェームズ「……というわけなんだ。わかったかい?」

奈緒「あ、はい!そうですね!さすがメイさん、物知りだなぁ~!」

凛(よかった、終わりそう)

加蓮(お尻痛くなっちゃった)

ジェームズ「それはよかった。さて、ここまでが導入部分。次はもう少し突っ込んだ話をしていこう」

三人「「「 」」」





ハモンド(ナレーション)「十二時間後、ジェレミーに引き続いてジェームズも彼女達のプロデューサーに強制ストップをかけられました。やっと僕の番です」


ハモンド「さてキラリ。君がいま乗っているこのインプレッサWRXなんだけど、基を正せばレガシィの下位モデルとして開発されたんだ」

きらり「……じーっ☆」

ハモンド「はっきり言って、僕はスバル・インプレッサこそWRC史上最高の車だと思ってる。水平対抗エンジンのノイズ、4WDのトルク。どこをとっても申し分ない」

きらり「じーっ☆」

ハモンド「……特にこのWRXモデルはラリークロス仕様の代名詞。まさしく世界中の未舗装道路を征服するために存在する訳で」

きらり「じーっ☆」

ハモンド「つまり、その……なんだかとても視線を感じるんだけど、気にしちゃいけないんだよね」

きらり「……うきゃー☆!やっぱりはもんどちゃん、かーわゆーい! ハムスターみたーい! はぐはぐすゆー☆」

ハモンド「Oh, Oh, Stop! Stop Kirari!! Please!!!」


ジェレミー(ナレーション)「残念ながら一発目は全員失格となりました。だが英国のプライドをかけて、次のチャレンジは成功させなければなりません」




ジェレミー「……『可愛い女の子達とまともなコミュニケーションが取れないだろうおじさんたちの為に用意したチャレンジです。助手席のアイドルにナビをしてもらい、指定の場所まで移動してください』……余計なお世話だね」

ハモンド「まったくだ。視聴者の皆さんはわかってると思うけど、僕達とアイドルの間には最早切っても切れない絆が芽生えているのにね」

(胡散臭そうな目で三人組を眺めるアイドル達)






ジェレミー「さて、席替えだ」

ジェームズ「次のパートナーは……ナナ、君にお願いしたい」

ありす「……菜々さん、おきてください。出番ですよ」

菜々「……ぅえ!? あ、ナナですか!? ええっと、あのっ、そうだ一応中型乗れます!分類変わる前に免許取ったんで!」

ジェレミー「よし、じゃあ僕はアリス。君にお願いしよう」

ありす「わかりました」

ハモンド「僕はカエデがいいな。宜しく頼むよ」

楓「あ、はい。よろしくお願いします(……ハモンドさん、よく見ると歯がすごく白い)」

ジェレミー「では各自乗り込んでスタートだ……あ、カエデ、ちょっと待ってくれ」

楓「はい?」

ジェレミー「君にこのCDを渡しておこう。あのスモウ・レスラーに押し潰されて縦方向に縮んだ哀れなハムスターとの会話に困ったら使ってくれ。白髪染めが剥げるくらい喜ぶはずだ」

楓「えっと、ありがとうござい、ます?」

ジェレミー(ナレーション)「右ハンドルという共通の価値観に基づいた我らが日英同盟は、心を深く通わせながら進んでゆきます――」




ジェレミー「アリス。実は私にも娘がいるんだ。君とおなじくらい可愛い娘が」

ありす「ありすじゃなくて橘と呼んでください。次の横断歩道、左です」

ジェレミー「君はとてもしっかりしてるね、アリス。その点ではうちの娘よりよほど優れている」

ありす「そこ右です。それとありすじゃなくて橘です」

ジェレミー「我が娘ながらまったくとんでもないお転婆に育ってしまったものだよ。親の顔が見てみたい。なあアリス?」

ありす「暫くまっすぐです。あと橘です」

ジェレミー「アリス、頼むから君は昼寝をしている父親の頭に氷水をぶっかけるような親不孝者にならないでくれよ」

ありす「橘です」

ジェレミー「…………」

ありす「…………」

ジェレミー「…………アリ「橘です」」

ジェームズ「なるほど、まさかナリタ空港の近くにそんな歴史のある神社があるとは知らなかった」

菜々「外国の人も結構多いですよ。特にここ最近増えてるみたいです。私が学生の頃はまだそんなでもなかったんですけど――」

ジェームズ「……ナナ? 君はまだ学生だろう」

菜々「……あっ!そっ、そうです!ナナはピッチピチの十七歳です! 歌って踊れる声優アイドル目指して、ウサミン星からやってきたんですよぉっ!」

ジェームズ「ウサミン星? さっきチバ・プリフェクチャーの出身だと」

菜々「違います! ウサミン星です!ほらメイさんも一緒にっ☆ せーのっ、ウーサミンっ♪」

ジェームズ「…………」

菜々「…………」

ジェームズ「…………あー」

菜々「……何も言わないでください」

楓「(……歯、気になる)」

ハモンド「この勝負、今度こそ勝ったね。ありすはまだまだ子供だし、ナナも十七歳だって言うじゃないか。二人ともナビは不慣れに違いない。その点、カエデは最高に美人な上に大人の女性。道案内だってお手の物だろ? ねえカエデ」

楓「そうですね(……漂泊したのかな。歯)」

ハモンド「少しハンデをつけなきゃいけないな。どうだいカエデ、途中でお茶でも飲んでこうか。愛について語り合いながらさ」

楓「そうですね(……やっぱり歯、白い)」

ハモンド「ジェレミーとジェームズにはお子様がお似合いさ。僕達はゆっくり大人の時間を過ごそうよ。勝利を祝いながらさハハハハハァ!!」
     



ジェレミー(ナレーション)「しかし、実際はハモンドの予想と正反対でした――」

ありす「このまま進んで二つ目の交差点を右に進んでください。そうすれば国道に出ますので」

ジェレミー「流石だアリス。エイミーより余程役に立つ」

ありす「グーグルマップがあれば余裕です。あと橘です……エイミー?」






菜々「あ、そこ右です。ところでメイさん、休憩大丈夫ですか? 少し行くとコンビニがありますけど」

ジェームズ「大丈夫だ、ありがとう。随分慣れてるね」

菜々「任せてください! こう見えても免許取りたての頃はお父さんの車借りてあちこちドライブしてたんですよ!もちろん今でも無事故無違反のゴールド免許!」

ジェームズ「……あー、菜々。さっきから気になっていたんだが、君は本当に十七歳なのか?」

菜々「なっなななななに言ってるんですかウサミンはナウいJKですよ当たり前じゃないですか! ほら、ハートウェーブピリピリ―ンっ♪」

ジェームズ「…………」

菜々「…………」

ジェームズ「…………あー」

菜々「……言わないで!お願いだから!」






ハモンド「…………」

楓「…………」

ハモンド「……あの、カエデ? 次はどこで曲がればいいのかな」

楓「ハモンドさん、一つ聞いてもいいですか」

ハモンド「聞きたいこと? いいよ、じゃあ道案内は質疑応答が終わってからにしよう。で、なにかなカエデ」

楓「さっきから凄く気になっていたんですけれど……その歯、漂白してるんですか?」

ハモンド「…………カエデ。君との会話はとても楽しい。でも今はもっと集中するべきことがあると思うんだ。例えば道を案内するとか地図を用いて目的地を指し示すとかドライバーを助手席から適切に誘導するとか」

楓「あ、すいません。そうですよね」

ハモンド「うん、宜しく頼むよ……」

楓「…………」

ハモンド「…………」

楓「……あの、オーディオかけてもいいですか?」

ハモンド「え? ああもちろん。カーステレオは好きに使って構わないよ。カエデの手が触れるならインプレッサも喜ぶ。ついでに道案内をしてくれるならもっと喜ぶ」

楓「ありがとうございます。じゃあこれ。クラークソンさんにお借りしたんですけど」

"Genesis - I Know What I Like"

ハモンド「……ああ、カエデ。君は最高に美人だし助手席に座ってもらって光栄だが、そのチョイスにだけは断固として異議を唱えたい。他にもっとふさわしい曲が」

楓(スイッチオン)

~It's one o'clock and time for lunch, dum dee dummmm dee dum.When the sun beats down and I lie on the bench I can always hear them talk...

ハモンド「...Oh,cook」

楓「ハモンドさんには問答無用ですよ。ハモンドだけに。ハモンドさんに はもんど うむよう……フフッ」

~la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la la...

ハモンド「HELP!!」

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(一旦スタジオ)

ジェレミー(スタジオ)「カエデは私からのプレゼントを実に有効に活用してくれたようです。これでいつあの小人に襲われても安心ですね……さて、それでは有名人レースの時間です」

ジェレミー「私は常々思っていました。世の人間は得てして、他人からの評価に比べ自己評価が高すぎる……皆が私のように謙虚であればいいのですが」

ジェレミー「しかしご安心ください、今日のゲストに限ってはその心配もいりません」

ジェレミー「なにせ彼女は自他共に認める世界レベルです。拍手でお迎えください! ミズ・ヘレン!……」



------

(再びVTR)




ジェレミー「さて、楽しい時間もあっというまに終わりです」

ジェームズ「まったくだね。ところで彼はなぜあんなに不機嫌なんだ?」

ハモンド「…………」

ジェームズ「きっとカエデが美人過ぎて言葉を失ってしまったのでしょう。では最後のチャレンジです……『アイドルを助手席に乗せ、トップギア・ジャパニーズ・テスト・トラックを一周してください。もっとも速いラップタイムを出した人間が勝利です。但し、基準タイムを下回ったら即失格』……基準タイム?」

ハモンド「ああ、もう何が出てくるか分かったよ」

ジェレミー「というわけでご紹介しましょう。噂では、彼は毎日ジャパニーズ・サケの風呂に入っているとか――そしてそれを風呂上りに飲み干すとか」

ジェレミー「謎だらけの男です、スティグの日本のいとこ!」

スティグ(ちょんまげ付き)「…………」

ハモンド「驚いた。日本のスティグは頭にチ○コを生やしてる」

ジェームズ「それなら英国には頭にチ○毛を生やした人気番組の司会がいるぞ」




ジェレミー(ナレーション)「いつもの通り無口な男がコースを一周。中々のタイムが出たようです」




ジェレミー「さて、ではレースだ。当然最初は君だな、キャプテン・スロウ」

ジェームズ「まってくれ、僕のアルトワークスはとても非力だ。ハンデをつけるべきじゃないか?」

ジェレミー「ならありすを乗せよう。多少なりとも軽くなる。それともハモンドのほうがいいか? 多分アリスの五倍は軽い」

ジェームズ「いや、アリスにしておこう。よろしく、アリス」

ありす「はい。あの、橘です。それと……あんまり速いのは、その、危険ですので。やめたほうがいいと思いますよ。一般論ですけれど」

きらり「あるぇー? ありすちゃん、恐くてぶるぶる?」

ありす「違います。単なる一般論だと言ったでしょう。恐いだなんて、そんなわけありませんよ。いきましょうメイさん」

ジェームズ「まてアリス。そっちは運転席だ。助手席は逆」

ありす「……わ、わかってます! あと橘です!」

ジェレミー(ナレーション)「幸いな事に、ありすの忠告をメイは忠実に守りました」




ありす「……あの」

ジェームズ「なんだい」

ありす「……ジェームズさんは、車番組の司会なんですよね」

ジェームズ「その通りだ」

ありす「……遅くないですか?」

ジェームズ「英国ではこれが普通なんだ」

ありす「……はあ」




ジェームズ(ナレーション)「私の安全運転が終わり、次はハモンドです」

ハモンド「よろしく頼むよ、カレン」

加蓮「よろしくお願いします。あの、ハモンドさんもお手柔らかにお願いしますね」

ハモンド「もちろんだよカレン。君の肩を抱くみたいに繊細なドライビングをするつもりさ」

加蓮「あ、そういうのはいいです」

加蓮(……まあ、メイさんの運転みたいな感じなら大丈夫かな)

ありす「……あの、加蓮さん」

加蓮「ん? なに、ありす」

ありす「ウィキペディアで調べたんですけど……ハモンドさん、大事故で生死の境をさまよったことがあるそうで」

加蓮「……え」

ありす「なんでも時速464キロでの大クラッシュだったらしいです。まあ、参考までに」

加蓮「え、ちょっとありす。なにそれ」

ハモンド「さてリン、そろそろ行くよ!」

加蓮「いやっえっ、ちょっと待って」

ハモンド「インプレッサ、お前に命を吹き込んでやる!」

加蓮「意味がわからない!?」

ハモンド「ゴー!」

加蓮「待って!ストップ!まだ心の準備がああああいやあああああああぁぁぁぁぁぁ……」

ハモンド(ナレーション)「僕のドライビングにカレンはメロメロ。さて、最後は我らがジェレミー・クラークソンです」



加蓮「もう二度と車乗らないぃぃぃぃ……」

凛「おーよしよし、恐かったね」

奈緒「ほら、背中さすってやるから」



菜々「……あの、安全運転でお願いしますね? 別にネタ振りとかじゃないですからね?」

ジェレミー「もちろんだよナナ。君のおっぱいを触るみたいに繊細なドライビングをするつもりさ」

菜々「……////」

ジェレミー「さあナナ、準備はいいかい?」

菜々「えっ、もう!? あのちょっとまだ」

ジェレミー「Let's ROLL!!」

菜々「うわあああああああああちょっとクラークソンさああああん!?」

ジェレミー「COOM'OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!!!!!」

菜々「うひゃああああああああああああああああ!?」

ジェレミー「POOOOOOOOOOOOOOWEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEERRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!」

菜々「こわいこわいこわいいぃぃぃぃぃぃ!!!」




凛「うわあ」

奈緒「すっげぇ」

加蓮「うぇっぷ」

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(スタジオ)


ハモンド「……ジェレミー。君は加減と言うものを知るべきだな」

ジェレミー「なぜ!? ナナは私のドライビングテクニックを十分に堪能したぞ! あまりの感動に撮影の後暫く立ち上がれなかったくらいだ……お陰でホテルに連れ込む算段が狂ってしまったが」

ジェームズ「君はいつもやりすぎなんだ。僕みたいに加減することを学ぶがいい」

ジェレミー「去勢されたゲイみたいなドライビングを私にしろと?」

ハモンド「あー、それより二人とも。忘れてないかい? 今回の企画の最終結果だ」

ジェレミー「そうだ、当然私が一位だろうな? なにせアイドル達に私の力強い姿をこれ以上ないくらい見せ付けたんだから」

ジェームズ「馬鹿言え。彼女達は紳士的且つ知性に富んだ私の魅力に惹かれたんだ。一位は私さ」

ハモンド「君達に残念なお知らせがある……今回は無効試合だ」

ジェレミー「なんだって?」

ハモンド「撮影の後で彼女達のプロデューサーから手紙が来た。読むぞ。『親愛なるTOPGEAR様へ……二度と来るな!』」

ハモンド「というわけで、見事僕達はCGプロから出禁を食らった。彼女達からのポイントもすべてゼロ。従って順位なし」

ジェレミー「なんてこった、TOPGEARはメキシコ・インドに続いて日本とも外交問題を引き起こしてしまったようです。またキャメロンに怒られるな……」

ジェレミー「……さて、今日はこのあたりでお別れです。また来週お会いしましょう。サンキューベリーマッチ・フォー・ウォッチング、アンド・テイク・ケア。グッナイ!!」




♪TOPGEARのテーマ

チャララチャッチャーチャーチャーチャーチャラララー……

以上です。お目汚し失礼いたしました。
魔改造のテーマとかも入れたかったんですが無理でした。
あとダチアの輸入代理店はマジであるみたいです。

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