('A`)は変化するようです (85)

  (  ) ジブンヲ
  (  )
  | |

 ヽ('A`)ノ トキハナツ!
  (  )
  ノω|

 __[警]
  (  ) ('A`)
  (  )Vノ )
   | |  | |


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――――カラオケ:店内


('A`)「危険なわがぁーがマツー」

('A`)「信じる!奴が!ジャスティン!」

('A`)「スィンじつの 王者!」

('A`)「夢を見続ける事がー」

('A`)「おでぇーのファンタズィー(低音)」

('A`)「いきーることーが スキサン!」

('A`)「蒼く!浮かぶ!宇宙ォー」

('A`)「時を!こえーろ、空を!かけーろ」

('A`)「このほースィのタムェー(低音)」

('A`)「熱く!もーやせ、涙!ながーせ」

('A`)「明日と!いう日にー」

('A`)「カムェーンラーイダー ブラァ!!(エコー)」

('A`)「カムェーンラーイダー バァ"ァ"ァ!!!(エコー)」



从 ;゚∀从「なんでそんなエコーが掛かる様に歌うんだよ」

( ^ω^)「あれは――!」

从 ゚∀从「知っているのかブーン!」

( ^ω^)「ああ、少し前にようつべで見た事があるお……」

( ^ω^)「奴は!奴は――『てつお』になる気だお!」

从 ゚∀从「(ようつべ……?)てつお……?」

('A`)「ゆ"る"さ"ん"!!」

从; ゚∀从「いきなり大声出すんじゃねーよ……」

('A`)「『てつお』っていうのは聞いての通り今俺が歌った……か、歌手(?)の事だ、

    その歌い方の特徴から『上手い』『下手』の次に『てつお』というジャンル分けがされるようになった」

从 ;゚∀从「ほ、ほう……声ガラガラだなお前……」

('∀`)「まあもっとも、一般に浸透してる訳もないしお前が恥じる事柄でもない」

从 ;゚∀从「恥じてねーよ、一般人が知らない事知ってるお前が恥じれ」



( ^ω^)「つまり『てつお』として歌う事によってライダーファンは自身を鼓舞し――」

(;'A`)「つってもこの歌い方じゃカラオケ80数点が関の山なんだけどな」

从 ゚∀从「ん?そりゃなんでだ?」

( ^ω^)「フューチャーを手にするッ!」

(;'A`)「収録されてる歌い方が全然違うから、『てつお』で歌うだけで『てつお』じゃないからだな」

从 ゚∀从「そら御苦労なこった……ブーン、ちょっとうるせえ」

( ^ω^)「ウソダドンドコドーン!」



――現実に仮面ライダーは存在しない。

創作物であるから、それは格好良いのだ――と、

ドクオはそれなりに達観して考えている。

('A`)(……もちろん現実に居れば、それ以上に格好良いんだろうがな)

創作物でなければいけないと考えた事は無いが、

しかし現時点を持ってして、現実にヒーローは存在できない。

悪と戦えないのだから、そこにヒーローが存在する理由は無いのだ。



('A`)(国家と戦うのは正義漢だけで十分だ……)

正義漢は、ヒーローではない。
警察官だとか、消防士だとか、

広い定義で考えるのなら、それは間違いなくヒーローなのだろうけれど、
しかしドクオの考える『仮面ライダー』とは一線を引く存在だった。

('A`)「……なんか、子供みてぇ」

从 ゚∀从「ん?子供がどうした?」

('A`)「ハインリッヒは短気で子供」

从 ゚∀从「うるせぇぞキモオタ」

 そう――
彼は子供の様に、憧れていた。
恋焦がれていたのだ。

『仮面ライダー』に。
正義のヒーローに。




そんな存在、何処にもいるわけがないと知って。

この世界に『仮面ライダー』は、存在しない。


 

プロローグ終了、続きは気分で書く

てつをじゃないのか?

>>11
本作品ではその辺のどーたらこーたらを少々ぼかして……
すいません、素で間違えました

       │
       │
       │
       │
       ↓
 ≡ Σ('('('('A` ) 当たりました
≡ ~( ( ( ( ~)
 ≡  ノノノノ ノ  ガッ



 ――――路地裏:雨
少女は走っていた。
全身を覆う、下手をすれば裾を踏みかねない程の長い丈、
明らかに少女のものではない暗黒色のコートを身に纏い、走る。
特段、コートが大きかったわけでは無い。

 成人女性の持つそれと同じ位の丈であり、
それは少女がたった一人の姉から押し付けられた物だった。
(どうしてこうなったんだろう――)
決して、悪い事をしてきたわけでは無かった、
しかし、現に少女――否、少女の姉は狙われている。
狙われて、少女の姉は盾となり、まだ幼い少女を逃がす事に成功した。

 成功――
と、言うには、まだ気が早い。
何故なら、少女は今も尚追われているのだから。



ノパ⊿゚)「――はぁ……はっ、……うぅ」

ノパ⊿゚)(姉は――無事だろうか)

 そう考えて、振り払う。
逃がされた。
護られてしまった。
その事実が一体どれだけ『これ』に姉が全てを賭けていたのかを、
姉が命を賭けて護ろうとした物なのかという事を、
良く理解して――振り払う。

 振り払わなければ、足が止まる。
足が止まれば、捕まってしまう。



ノハ;⊿;)「――ぁっ……う、うぅ…」

ノハ;⊿;)(弱い……なんて、なんてあたしは弱いんだろう……)

 そこに少女が罪悪感を感じる要因は一欠けらも無い、
しかし姉を守る事が出来なかった、
――姉と一緒に逃げ去るという、発想すら思い付かなかった。

 その事実が、少女を罪悪感で押し潰さんとしている。
後悔が留めなく溢れ、少女の内面を穢していく。



ノハ;⊿;)「にげ、なきゃ……」
 
 走らなければ。
そう考えるも、少女の無意識の内に歩くスピードは緩やかになり、
少女が気が付いた時には、既にその足は歩く事を止めていた。

ノハ;⊿;)「動けよぉ……逃げなきゃ、動いて……」

 何処かで挫いたのか、それとも少女の精神的な要因なのか、
どうしても、少女の足は動く事を良しとしない。

ノハ;⊿;)「クー姉……助けて」

 普段なら吐こうとすらしない弱音を少女は言う。
遂には泣き出してしまった少女は、大事そうに『それ』を細い両腕で抱き留める。
灰色を基調とした一つのベルトを。

 大事そうに、抱きしめる。


 ――――ファミレス:店内

('A`)「めんどくせえ」

('A`)「何故に俺がファミレスでお前らに金を払わねばならんのだ」

从 ゚∀从「お前がレポートしてねぇからだよ」

( ^ω^)「それはハインも同じだお、ドクオ、癖出てる」

('A`)「ん、わりぃ……悪くないだろ別に」

从 ゚∀从「……、んじゃあカラオケで最低点数叩き出したから」

('A`)「だってぇ~お前ら95以上とかおかすぃ~のだもの~」

从 ゚∀从「ドクオぶらぁとか言ってなかったら良かったんじゃないの?」

('A`)「全然似てねえ」

( ^ω^)「ちょっと録音するからもっかいお願いしますお」

从*゚-从「うっせ」

从 ゚∀从「ん……雨降って来たな」

('A`)「Heyブーン!今日の降水確率!」

( ^ω^)「10%!」

('A`)「Fuckin!!」



('A`)「喉痛い時に言うもんじゃねえわ、あ"あ"あ"ぁ」

从 ゚∀从「きたねぇぞ」

( ^ω^)「流石に、お……女の子の前でする行為じゃないお」

从 ゚∀从「ブーンお前一瞬オレの事女の子扱いするかどうか迷ったろ」

( ^ω^)「HAHAHA」

从#゚∀从つ)ω゚;) 「いだだだだあ"ぁそこ!そういう所!あ"あ"ゴメンナサイもう言いません!もう言いません!」




( ^ω(#メ)「死ぬかと思ったお」

('∀`)「あっはっは、そんな所があるから野蛮――」



从#゚∀从つ)A`;)「ウ"ァ"ア"ア"マジすんませんっす!ハインさんマジ可憐な一輪の高嶺華っす!」


从*゚-从「分かればいいんだ分かれば」



(メ)A`)「んで、どうすんよ」

从 ゚∀从「あん?オレ普通に折り畳み傘あるけど」

(メ)A`)「挿れてちょんまげ」

( ^ω^)「仕方ないしぼくはそこでビニール傘でも買って帰るお」

(メ)A(#)「えー?俺一人で濡れて帰らなきゃなのー?」

(;^ω^)(大分酷い顔だお……元からだっけかお?)

(;^ω^)「コンビニで傘買ったらどうかお?」

(メ)A(#)「俺の好きな事の一つはッ!偉そうに踏ん反り返ってる男の店員に思い切りNO!と言ってやることだッ!」

从 ;゚∀从「お、おう」



 ――――アパート:103室毒男玄関

('A`)(結構降って来てたな、もうちょいでイケない世界に目覚めそうだった)

('A`)「あの薄情者共、俺を置いてささっと逃げ帰りやがって……

    お蔭で金は全部俺持ちだぞ……」

('A`)「……、……私ドクオは金持ちでも何でもないただの一大学生である、

    天狗に遠く憧れて、何時かひょいとこの魂が天に昇ればと思っている、まる」

('A`)(ちなみに人間を真似るのも大好きのキョロ充(笑)でもある)

('A`)「勿論そんな一大学生が金を持っている筈も無く、化け術で金を創れもしない」

('A`)「では、この打ち破られた無残な窓硝子をどうやって直そうか、答えは居座ってる不審人物を起こしてからだ」


(#'A`)「てめえぇぇ!!人の家に不法侵入しておいて何堂々と部屋中央真ん中に陣とって寝てんだオラァァ!!」

(#'A`)「お前は滝さんか!本郷さんと一文字さんのサイン貰って来い!」



 ドクオは暗闇の中で小さく真っ黒な塊に思い切り下段蹴りを放つ。
間を置かずに「うおおお!」とハイトーンの甲高い声が狭い室内に反響する。

ノパ⊿゚)「何をするだァーー!!」

('A`)「うるせえ!狭いんだから叫ぶな!レオパレスじゃあねえがそれでもご近所迷惑だろうが!」

ノパ⊿゚)「ごめんなさい!!!」

(;'A`)「もうやめて、うるさいから、ホントうるさいから反響指数酷いから」

(;'A`)(ていうか女の子かよ……あのハインですら窓硝子は割った事無いぞ)



 黒尽くめのコートが一つの塊であるかのように全身を覆っていたので全く気付く事が無かったが、
謎の物体Xは少女――しかも年端も行かない、
中学生と表記してしまっても全く違和感の無い、幼さ。

 それだけでドクオの罪悪感は募ってしまった。
――と、言うより、どちらかといえば恐怖感がどっと増してしまう。

 窓を破って侵入して来ている――ということは、
それなりの凶器を持って来ている。

(;'A`)(なるだけ刺激しないように、なんだこれ、立て籠もり犯か何かか?)

 そして現状を整理すると、間違い無く不利なのは自分の方である。
幼い少女、割れた窓硝子、冴えないキモオタの室内で繰り広げられるものとは?


(;'A`)(どう考えても良い方向に進まねえ!)



 そして黒色で判別が効かなかったが、電灯の付いた今なら目視するだけで少女の状態が分かる。
外は雨が降り頻り、当然暗黒色のコートには眼に見えるほどの大きな水滴が満遍なく、
加えて少女の体だけではなくその周囲にまで被害が及んでいる。

('A`)「お前……濡れたまんまで人ん家に上がり込んでんじゃねえよ」

ノパ⊿゚)「しからば御免!」

('A`)「甲賀忍者風に言って許されると思うなよ、後それ使い方ちょっと間違えてるから」

 待ってろ、と言い残して、
軽く右手で埃を払うように足を二度叩く。

('A`)(何故かついやってしまうな……)



 台所から隣接したバスルーム(無論見栄)から青のタオルを取って少女物体Xに投げる。
どうしてか器用に背面キャッチして、丁寧にコートの上から水滴を吸い取っていく。

ノパ⊿゚)「…………」

('A`)「…………」

(;'A`)(気まずっ!)

ノパ⊿゚)「ふむ、独特の匂いだ」

(;'A`)「ん?」

 コートが仕上がって、足、ショートカットの赤髪を拭き始めた辺りで、
ふと少女はそんな事を言った。

(;'A`)「そんな臭うか?豚位には清潔を保っているつもりだったが……」

ノパ⊿゚)「いや、そうではない、良い香りをしていると言ったつもりだ」

('A`)「……そりゃどうも」



 どうしてだか、話がおかしな方向へと向かっている。
気まずいと感じていたドクオは一先ずといった風に、
少女の不明瞭な部分を問い質す事にした。

('A`)「……取り合えず、名前聞くけどいいか?」

ノパ⊿゚)「構わん、素直ヒートと云う者だ」

('A`)(なんでこんな威圧的なんだこの子)

('A`)「ヒートさんね、俺は毒男ですたい。んで何故ここに居るんだ?」

ノハ^⊿^)「……話すに話せない事情、という奴だな!」

 明るく取り繕ってはいるが、
その表情から何か重苦しいモノが潜んでいる。
明るく取り繕うとする努力が見透かせるからこそ、
対照的にヒートの内面から溢れ出んとするそれは、酷く凄惨なものに思えてしまった。


('A`)「……嘘じゃねえけどお前嘘下手だな」



('A`)(正直に言って、頭の悪い盗人か何かかと思ってたが……)

 どうにも、その線は消した方がいいらしい。

ノハ-⊿-)「うぅむ……」

 遂には腕組を始めて悩みだしてしまった。
そんなヒートの姿を見て、『話すに話せない事情』の正体に更に靄が掛かる。

('A`)(増々分からん、とりまハインの奴でも呼ぶか、奴は何だかんだと女子力が高い)

 ドクオはハインという人間が荒っぽく、短気であるという事を知っているが、
それ以上に面倒見の良く、頼りになる女性だと言う事を良く知っている。

('A`)(それに、これ以上は俺の方が限界来そうだしなぁ……)

ノハ-⊿-)「ムムッ!」

('A`)(何で川平なんだ)

 ジーパンのポケットから希少種ガラパコス携帯を取り出し、
電話帳から数少ない番号を探して通知を掛ける。

('A`)(恐れ戦け、この間僅か五秒にも満たないのである、最近のライダー変身シーンよりも速いのだ)



从 ゚∀从『もしもしー』

('A`)「私だ」

从 ;゚∀从『誰だよお前は、いやドクオだってのは知ってるけど』

('A`)「少しばかり不法侵入者を預かって欲しい」

从 ;゚∀从『…………は?なんつった?』

('A`)「Please keep my illegal intruder」

从 ゚∀从『グーグル先生頼ってんじゃねえぞ』

('A`)「あいむそーりぃー」

从 ゚∀从『何か分からんけどオレがそっち行った方がいいんだよな』

('A`)「娘の事を頼む」

从 ゚∀从『えっ?おぃ――』



会話の途中で畳んだのには二つの要因がある。
一つは素直ヒートの存在をハインに悟られないため、

('A`)(あのハインならイキナリ通報とかはないだろうが、念には念を入れる)

そしてもう一つは――

(;'A`)「こいつらが一体何処から湧いて出たかって事――!」

ノハ;゚⊿゚)「うわあああああぁ!!」

異形。
その一言が全てを物語っていた。
明らかに一目で人間ではない――
いや、『それ』は既に生来の生物としてすら外れている。

(;'A`)(何だよこいつ……泥男か何かか?こっちは哲学してる場合じゃねえよ)

泥――と、云うと、少しばかり語弊があるだろう。

それは土だった。
土としか表現出来なかった。


土が積り形を成しているだけであって、
そこに生命は、恐らく無い。



(;'A`)「新耳袋に帰れ!!劇場版な!」

 虚勢を張りながらも脳内で考えを張り巡らせる。

(;'A`)(完全に土だ、でも動いてる、外は大雨だってのに崩れもしない……)

 水滴一つ、崩れかかっている部分一つとして見て取れない。
幾つか、大きく分けて三つほど、何となしにドクオには予想が付く。


 それは土――若しくはそれに類似した何かが高密度に圧縮されているか、
それとも『それ』から高速で自動生成されているのか、
『それ』自身が大きな熱量を纏っているのか。

(;'A`)(――熱量の線は無いか、大きく見ても五メートルも離れて無い、

    普通に考えてこの距離なら酸欠か軽く火傷でも貰ってる筈だし、体が崩れるかもしれん)



 しかし――一体何故、この怪物はここに居る?
一番不明瞭な処と言えばそれだった。
全くと言って良い程に、理解できない。

(;'A`)「クウガなら昇格目的、っていうか基本的に無差別だよなぁ怪人共」

 面倒臭そうに吐き捨てると、ふと視界にヒートが映る。

('A`)「――……ヒート、いやまさか、そのまさかとは思うがよ……アイツ知ってんの?」

ノパ⊿゚)「イグザァクトリー!!」

(;'A`)「何てもんを持ち込んで来てんだお前!」

 今直ぐにでも拳を握りしめたい気分だったがしかしそんな間も無く、
怪物がゆっくりと移動を開始する。
距離が縮められていく。



(;'A`)「ぐぅ……拙いぞ、おいヒート、俺に一つ良い案がある!」

ノパ⊿゚)「私の盾になるのか!?」

(;'A`)「誰がなるか!――つまりだなぁ!!」

(;'∀`)「逃げる!!戦略的撤退!尚その後の戦闘続行は無しとする!!!」

ノパ⊿゚)「二部は好きか?」

(;'A`)「それなりにな!」



 そういっている間にも、怪物は距離を詰めていき、
アパートの壁にぶつかり――

(;'A`)「嘘だろアイツ、壁思いっきり吸収してんぞ」

 吸収、同化。
言うなれば白蟻に食い散らかされた木造建築物のように、
言うなればあたかもその部分だけ老廃したかのように、
怪物の歩く部分だけが、腐食し、消えていった。

(;'A`)(あんなもんがもしも体に触れちまったなら――!)

 そう考えて、背筋に悪寒が走る。
ヒートを一瞥すると気丈に振る舞おうとしているのか、怪物を睨み付けているだけだ。
そんなヒートの手首辺りを少し乱暴に掴む。

ノパ⊿゚)「――うっあ」

('A`)「いいからささっと逃げるぞ!!」



 ――――商店街:雨

(;'A`)「……あぁ!全然キャラじゃねえ!!」

 モテなくて冴えない、ちょこんと居るだけの友人と馬鹿をして、
あーだこーだとつまらなくもそれなりに面白い一日を送る。

 少しだけ『ヒーロー』が好きで、
少しだけ『ヒーロー』に憧れて、
少し前に『ヒーロー』を挫折して、
うだうだと悩んでは、友達と遊んで考えを放棄している。

 そんな毎日が。


(;'A`)(そんな毎日が!なんで今!どうして今なんだよ!)



 憤りを一体何処に押し付ければいいのか、全くと言って良い程分からない。
ヒートにぶつけようとも、その幼さが阻害する。
どれだけ腐ったとしても、不貞腐れていようとも、
少女だけは、どうやってもその対象にはならない。
対象にならないが故に、憤りは増すばかりだ。


 その時。
 未だ手を引っ張った状態で、走っているヒートがその場で倒れる。
それと同時に腕を引っ張った状態のドクオもまた、慣性の法則が悪い方向に働いて、
不恰好に雨で滑る。



('A`)「うおお!――ッつぁ!」

 大きな雨音を立てて、水溜りを跳ねた様に崩れ落ちてしまう。

( ゚A゚)「――!」

 苛立ちが怒髪天に達そうとする中で振り返ると、
素直ヒートがずぶ濡れの雨の中で、息を荒く倒れこんでいる姿が視界に這入る。

ノハ;-⊿-)「あ、……っは――ぅあ、はっ」

( ゚A゚)「…………」

('A`)(なに……何やってんだよ、俺……)


 ――情けねえ。
急激に高ぶった感情が虚実になったかのように消えていく。



('A`)「……おい、大丈夫か?立てるか?」

ノハ;゚⊿゚)「……大丈夫だああぁぁぁ!!!」

 それもまた見え見えの嘘で、
虚勢だと、はっきりと分かるハイトーンで叫ぶ。

('A`)「……強いなぁ、お前」

 ドクオの正直な感想だった。
しかし、ヒートはその言葉を受けて動きをぴたりと止めたかと思うと、
止めてから、項垂れてその場から崩れてしまう。

(;'A`)「お、おい!」

 ヒートに駆け寄ると、その目線は明後日の方向を向いており、
その表情には絶望と驚愕を織り交ぜにしたような、
どちらとも取れる、恐怖を纏わせていた。



(;'A`)「……追いつかれた」

 その視線の先には、怪物がいた。
恐怖の権化、とでも言わんばかりに、ゆらりと蠢く。

(;'A`)「おい、素直ヒート、立てるのか?」

ノハ;゚⊿゚)「逃げても……無駄、だろう」

(;'A`)「なら――」

ノハ;゚⊿゚)「――代わりに、迎え討て」

 ドクオの台詞を遮るように、ヒートは力強く言った。
シャツの襟を掴み取って引き寄せる。


ノハ;゚⊿゚)「あたしじゃあ、無理だ――今、お前しかやれない」


(;'A`)「――――!」


 ――灰色を基調とした、ベルト。
歪な形をしているが、それはまさしく。

 憧れて、
恋焦がれて、
どうしようにも、できなかった。


  『仮面ライダー』の、ベルトだった。

Aパート終了

現在このスレではドクオの変化後のスーツアイデアを募集しております、
我が余の春が来たという方はどうぞ御一報下さい


       _____
      l オンステージ l
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


       _('A`)_  < ここからは俺のステージだっ!
       l (  )  l 
       ヽノω|..ノ 
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄






 __[警]

  (  ) ('A`;)  < ミツザネェ!!
  (  )Vノ )
   | |  | |



(;'A`)「……何だよこの特撮ヒーロー特有の場面は……CMはちゃんと終わったか?」

ノハ;゚⊿゚)「何を言ってるんだ?」

('A`)「いや……バカ言えるくらいに余裕持たねえとやってらんね」

('A`)「で、だが、こいつをどうするつもりだ?まさか本当に『変身』でもしろってか……?」

(;'A`)「結構固く出来てるし、直接……あ、もしかしてお前これで窓割って――」

ノパ⊿゚)「そのまさかだ」

(;'A`)「弁償を求めるッ!」

ノパ⊿゚)「『変換』しろ」

('A`)「あら、無視」



(;'A`)「このまま逃げ切るって事は……出来ない訳ね」

ノパ⊿゚)「周りに被害を被っても構わんと言うのなら、それもまた出来るかもな」

('A`)「前科は持ちたくねえ――いいよ 『俺が変身する』」

 降りしきる雨の中、雨音だけを残してその場は静寂に包まれる。
がしゃん、と如何にもな機械音を立ててベルトはドクオの下腹部に装着され、

('A`)「…………」


 右腕を腹部に添える様に、左手を右腕に垂直に頭上にまで上げ、徐々に下げていく。
左手が眼前に来ると、その状態を維持し、

一言。

 力強く、今まで自身でも発した事の無い類の、熱気迫る声を出す。


('A`)「ヘン…………シンッ!」

('A`)「…………」



( A )「……オープンアップ」


セルフだった。

哀しかった。

悔しかった。



(;'A`)「うおおお!危ない!危ないニーサン!」

 土の塊もニーサンと呼ばれたくはないだろうが、
そもそも対話が出来る相手ではない。

(;'A`)「チクショー!辞めてやる!使い方の分からないベルトなんて最近じゃ流行らないぞ!」

ノハ;゚⊿゚)「落ち着けェ!!今辞めたらアタシも危ない!!」

 どちらもそれなりに鬼気迫る声音だったが、やはり生死に関わるヒートの方が勝っていた、
この場合両方にも生死は係っているのだが。


(;'A`)「どおすりゃいいんだ!どうすれば……!」

('A`)「――チカラガホシイカ」



ノハ;゚⊿゚)(結構余裕あるなこいつ……)

 



ノハ;゚⊿゚)「ベルトの右後ろに何か付いてる筈だぁ!それを正面の物と交換しろ!」

 言われてドクオは必死に腰の辺りを弄ってその何かを見つけ出す。
唯一取り外せた固形物のような、金属類の類。
無理をすれば獣の何かに見えなくもないと言った抽象的なパーツ。

('A`)(これを――コレで、俺は変身する)

('A`)(変身――しちまう、ん、だな……)


 奇妙な違和感と抵抗感を覚えながらも、右手に掴み、
正面の無機質なパーツを左手に取り、交換する。



『Conversion』


ノパ⊿゚)「――――!」

ノハ ⊿ )「…………」

 低いハスキーボイス寄りの女性の声音が聞こえ、
身体が悠々と『変身』していく。


('A`)(包まれてる感覚ってこんななのか?スーツアクターさんご苦労様です)



 意外にも視界はそのまま安定していて、むしろ広くなったようにも錯覚する。
軽く右手を振ると、



( 0л从「……なんじゃこのウルフオルフェノクはァ!!」

(;0л从「えー……いや、いや、嫌いじゃないけどさぁ……えー……」




 どちらかといえば、その感想は少しだけ違っていた。
むしろ体毛が張り詰められたようになっていて、
全体的に毛むくじゃらのネコ科のようにも思える。
色合い的に、恐らく虎だとかの獰猛性はあるようだが。
暗黒色と黄金、黄橡が彩る体毛が輝かしい。
一言でいうならばまさにそれは獰猛なライオンの様であって、
自身とのギャップのようなものがドクオを困惑させているようだった。

(;0л从「か、考えてる暇もねぇな、おいヒート、武装はどうした!?」

ノハ^⊿゚)「そんなものはない」

( 0л从「昭和よろしく徒手空拳って訳かよ」

カッコイイよね、字面的に。

ノハ;^⊿゚)「イャス☆」

(;0л从「ハハッバロン――」

从л0;)「ぐぉおお、おぉ!!」




 ふざけ合う中でも、きちんとその時間軸は動き続けている。
雨音に掻き消され聞こえなかったのか、
何時の間にか間を詰められていたドクオは、
ボディブローをその筋肉器官のような装甲に受け、仰け反ってしまう。
すかさず次に放たれる攻撃を見越して、距離を取り、冷静に状況を判別した。

(;0л从(いてぇ)

( 0л从(だけど、致命的って訳でも無さそうだな……あの『壁』みたいに腐敗する訳でも無い)

( 0л从(つまり俺がアタフタして殴った所で俺に損害が有る訳じゃない訳で……)

( 0л从(まぁ、俺の拳があのドロドロを捉えられるか、拳の方がイカレるかのどちらかが無ければ。戦える)

( 0л从(果たして――戦った方が良いのか、って所に疑問は覚えるがな……)


 いくら考えても埒が明かない。

いっその事これが使命と正義感を持った改造人間の運命だとするならば、
いっその事これが笑顔と優しき心を持つただの人間の選択だとするならば、
幾らかは、楽になるのだろうけれど。

 しかしそんな心を、そんな運命を持たなかったドクオにとって、
これは如何しようにも無く、難しい課題だった。



( 0л从(……そんな苦手科目の宿題みたいな)

 あるとすれば―― 一つ。


ノハ;゚⊿゚)「……」

( 0л从(……)


 自らの後方に座り込む、少女の姿。

('A`)(柄じゃねえ)

('A`)(柄じゃねぇが、俺は人を捨ててもいねえ)


人である事を捨ててはいない。


(;0л从「……現状戦う理由なんてそんなもんですかいな」


 そんな風に、半ば自分を叱咤し、半ば強制的に自身を鼓舞し、
軽く右手で太ももを二度払い、
ヘドロのような土の塊に――怪人に立ち向かう。



 一先ずは、一撃。
拳を浴びせる算段だった。

イッタンCMハイリマース

('A`)「かめんらいだーぐみぃ?」

('A`)「どーせただのぐみなんでsy」










( )「オェェォッボオ゙ヴェ! ゴオォ! オ゙ォオ゙ォ!!」


( )「なっ、何だこの喉に絡まる猫の毛玉みてぇな触感!鼻にツーンとくる山葵と比にもならねえ痛み!」

(;;'A`)「ちょっとこれは流石に商品化無理でしょ!あっ!監督子役じゃなくて俺採用したのってそういうこと!?」

(;'A`)「ちょ、カメラやめて、お茶の間凍り付くから、イカンですよ、Deathよホント!」

(;'A`)「あっっ、え?……」


('∀`)b「もちろん発売未定!」


エ、ナニコレ?コンナンデイイノ?……ウレネェッテ、ガチデ。

あれ?ID変わってら、
続きは気分で書く

ごめん、まさか既に一ヶ月経っているとは思わなんだ……
さっさと一話終わらせるからもう少し待ってくれ



( 0л从「――お、ぅおお!」

 走る――
こちらが腐敗しないと解った分だけ、先程よりも足取りは重くは無い。

( 0л从(正直、こーいう時本家さんのCMコンボが羨ましいが……)

 CMの合間にどっか空き地でも拓けた場所にでも場面転換とかないだろうか?
無いんだろうなぁ……。

 そうは思いつつも現実は非情であり、そして非常事態である。
土の何処かを掴みこの体の力の限り投げ飛ばす。
感触に芯は無く、投げ飛ばす際にも質量は感じたが、手応えは全くなかった。
何分、ドクオの人生経験として人間を放り投げるという荒技を披露した事が無い故に、
その確かな手応えが分からなかったという可能性もあるが、

 しかし本当に今の不気味な感覚が確かな手応えだというのなら、如何にも奇妙な感覚だった。
がっしりと怪人を掴んだ手が腐るという事態は無かったが、
現実は現実通り、その場で戦うしかない。

( 0л从「……一応、引き離す事にゃ成功したっぽいか」

 離れたとはいえ、それでもこの怪人の腐敗能力の範囲がどれほどのものか、
それには理解が出来ない。
大きめに見て、十メートルは離れた方が得策というものだろうか。



( 0л从「さあ、おめーの重罪を数えて貰おうか、一つ目は俺の部屋をぶち壊した事だぜ畜生めん」

 何処かのハーフボイルドのように左手をスナップさせ、
反応を待たずに殴りかかる。
右拳を何時かに見たボクサーの如く、
そして毎週日曜の朝頃に見るライダーの如くに、ストレートで殴りつける。
殴りつけ――手応えの無さ。

(;0л从「――!!」

 不気味なまでの感触の悪さ、何というか、
底無し沼に自ら腕を突っ込んだような、丁度、口の空いた生物か何かに拳を投げそのまま内臓を殴ったような、
表現のし難い、絶妙な気色の悪さ。

(;0л从「このっ!」

 突き抜けた拳を引き戻し、怪人の背中――辺りにぶつけるも、
ダメージが無い。
弾力性の強い、そして吸収力の強い物質を殴っているようだった。


( 0л从「クズヤミーかそれともトライアルか何かかもしれない」

( 0л从「トライアルならモチーフなんだよ……ドライブのネタバレだったら恨むぞ……」

 



 身体を仰向けに倒しローキックで足を捉え、
ずるりとそのまま本当に仰向けに倒れる。
やはり――慣れない。

 戦闘に置いて完全に素人であるドクオにとっての脳内イメージは現実味を帯びてはいない、
眼の前で起こっている事の方が、余程現実とは言えないだろうが。
丸く、最早どの部位が機能を果たしているのか分からない程ぐちゃぐちゃになりつつ、
融解したと言って差し支えない程の液体となった怪人はぐにゃりと、
自身が粘土であるかのようにカタチを変え、直していく。

( 0л从「…………」

(;0л从(あれ?これやばくね?)

 攻撃が通じない。
現実的な側面に考え、現状が不毛処か敗色が濃くなってきている。

 固唾を飲み込み、雨音が獣の体を包む。
一体何時、この身体は元に戻るのだろうか?
もう一度同じように変身できるのか?
その時、この怪人とまた対面するのか?
俄然とした恐怖、勝てるかどうかも分からない戦い。



(;0л从「あああ!!」


 身体を起こし左拳を振り上げる。
直後に腕を叩き付け――地面を抉る。
自身の腕力が怪人を通し、文字通りにコンクリートを抉り、
小さく、しかし日常では作り出せもしないクレーターを作った

(;0л从「――!!」

 それが逆にドクオに動揺を齎す。
それ程の破壊力がノーダメージなのだから。

(;0л从「お前チートライダーかよ!!」

 しかも常時ゲル状である。



 左上からフック、振り戻し裏拳を繰り出し、
正拳突きの要領で拳を突き出す。

( 0л从「オラァ!ライダーキックだぁ!!」

 回し蹴り、そのまま回転し逆足で蹴り付ける。
一撃一撃がその場をクレーターにする程の威力。
しかしその攻撃は怪人に届かない。

( 0л从「戦いはなァ!テンションたけー方が勝つんだよォ!!」

「…………」

 そして画面右に居る奴が勝つ!!
言って、更に殴りつけるが、体力の限界が近づく。
元々、ドクオには何十分も戦う力は無い。
肉体面がどれほど強靭なものになっていようと、
そのメンタルは人間の状態から強化されてはいない。
肉体的な疲労は無くとも、精神の消耗が激しいのだ。






( 0л从(……やばい、勝利フラグが少なくなってきた)

( 0л从「おばあちゃんが言っていた…………。しつこい男は嫌われるってな」


 人差し指を天に翳し、言う。
その土の怪人が男かどうかはともかく。
そして言うのなら先程からしつこく攻撃しているのはドクオの方なのだが。




――――。


( 0л从(……何か、違う?)

 変わっている……?
色合いが――濃ゆく、変色している……
土が、水気を帯び、固まって行っていき、
諺通りに、『雨降って地固まる』。


( 0л从「まさか、か、固まって――」

 言い終わる前に、怪人は拳を放ち、
鳩尾から外れて、左の肋骨を掠り、削る様に通り過ぎる。

 想像を絶する痛みのシグナルに襲われ、ドクオの景色がじりじりと白黒に反転し、声すら出ない。
口なのかどうかも分からない部位がギリギリと鈍く低い音を出し、
動悸が激しく、呼吸が儘為らない、痛みの感覚は同時にメンタルにも及び、
敗北――つまり、死ぬヴィジョンが明確に脳裏に浮かび上がる。



(;0л从「掠っただけなのに……!」


 まるで鋭利な刃物で切られたように血が獣の体に滲み、溢れだす。
左手で押さえ付けながら、少しずつドクオの身体は後退していく。
その逆、今まで動きもしなかった怪人はゆっくりと伸ばした拳を戻し、赤く染まっていく。

(;0л从「!――血!?血を吸ってんのか!?」

 自身の腹部、手から漏れ出す鮮血と交互に視線を送り、判断する。

 驚愕、そして畏怖の感情がさらに後進に拍車を掛け、距離が空く。
一定以上離れた所で赤に染まりつつある怪人は何かを判断し、ぴたりと停止して、
一瞬の静寂が過ぎ、またも鞭のように体の一部を伸ばし叩き付ける。
横一文字の薙ぎ払いを倒れ込む形で回避して、やり過ごす。



(;0л从「固まってるのか……なら――」


 ならば、こちらからもダメージが与えられるかもしれない?
それを誰が保証してくれる?

 無駄骨を折るかもしれないのに?
――無駄骨、処か、命を絶つのとそれは同義かも知れないのだ。

大雨の影響では無く、膝が笑い、戦う事を脳が拒否する。



『逃げてしまえ』
警告音が鳴り響く。
逃げたら――どうなる?
明らかに人知を超えた力。

('A`)(国家警察や自衛隊でどうにかしてくれるだろう――)

 それよりも、自分の身が惜しい。

('A`)(そう、警察が何とかしてくれる)

 何事も、何時だってそうだった。

 所詮、自分のやっている事はただのお遊戯の様なモノ、その延長でしかないのだ。
けれど。



(;'A`)(もし)

(;0л从「もし――違ったら……?」



 考える事が怖い――
けれど思考してしまった物はどうしようもなく進んでいく。
例えば、友人達。
思えば、随分と昔のように感じるが、ハインに救助を頼んでいた。
恐らくだが、もう既に近くまで来ているだろう。

 もし、今のような状況で、この化物の攻撃を喰らったら――?
グロテスクな光景が瞼の裏に一刹那這入りこみ、拒否する。
内臓がぐりぐりと引っ繰り返る感覚に陥り、意識がすぅ、と飛び上がり、
そして直ぐさま現実に引き戻された。
痛みによって。



(;0л从「ぐ、う、うぅ!ああ!!」


 鋭き鞭手で幾度も、先程のお返しだと言わんばかりに叩き――斬り付けられ、
意識を手放す事を許されない。

(;0л从(これだ――!この痛みが)


 考えうる限りの最悪の威力を誇っているのなら、
例えどんな人間が相手であったとしても――
例えば、自衛官。
例えば、商店街に住む人々。
例えば――後ろの少女。

(;0л从「……そーだったな、そういや、居たなお前」

さも今思い出したと言わんばかりに言い放つ。


( 0л从「ああ、そうだった、忘れてた忘れてた」


 曲がりなりにも、今の自分は化け物なのだ。
ヘンテコパワーでも超技術でも、ともあれ、戦える力を持つ者である。

( 0л从「何となく、五代雄介の言いたい事が分かった気がする……」

( 0л从「確かにこれは、綺麗事じゃ済まねえわ……」



 全体から鮮血が流れ、白群と金茶で彩る体毛に茜色が混じりつつある身体を、起こす。
体が震え、膝が笑い、腕から力が抜け、幾度か体勢を立て直しながら、立ち上がる。


「…………」

( 0л从「待たせたな……課題はクリアしたぜ」

 震える口調で指を指し、拳をもう一度握りしめる。
その拳に手を充てて、もっと強く握りしめた。
怪人は何も言わず、一切の音を上げず冷静に、
立ち上がる化物の姿を見据えて、その腕を振るう。

(#0л从「うお、ぉおお!っぅああ!」

 振り下ろし――体を逸らして避け、
薙ぎ払い――前転の要領で身を低くし躱す、
搦め手、先程降ろした腕で足を掬われ、もう片方で嬲られる。
不意に体が宙に浮き、急激に叩き付けられ、世界が一転した。

平衡感覚が一転して狂い、衝撃が走るも一体何処からの衝撃か分からない。
ぼやける物体が分裂を繰り返す瞳の中で、鮮血によって染まりきった物体を見つけ、ただ只管に走る。
肋骨にもう一度攻撃されるも、最早痛みという感覚そのものに鈍くなったのか、
無言で耐え、逆に鞭手を掴み振り回す。


(#0л从「ウ、ォェエィ!」

ブチブチと何かが千切れ、とんでもない程の重量が襲いつつ、先程されたことを返す様に、
ウルトラマンの回転宜しく、マリオのクッパ回し宜しく無我夢中に振り回す。
何かに当たり、何かが崩れ、それでもまだ回す。
回して、遠心力が強くなり、また何処かに当たり、自分――化け物――に出せる力を持って、殺す。

(#0л从「――ぐ!!ま、だ」

視線が落ち、身体が落ちて、我慢の聞かなくなった腕が怪人を離すとそこでようやく、
雨に足を捕られたのだと気付く。



( л从「まだ見える……まだ見える」

 飛んでいった方向を見据えると、鮮明にその血は映える。
しんと冷えた頭は失われた平衡感覚の設定は何処へやら、真っ直ぐに立ち上がり、
力強い足取りで茜色に近付いていく。

( л从「ダ、だ、戦える……殺せ、まだ」

 回復しきっていない怪人は立ち上がらずに手足を伸ばして脱走を図るが――



( 0л从「――――」

 跳躍。
それは正しく虎の脚力。
何十メートルはあろう距離を刹那の時間で詰め、高い跳躍から踵を振り落し、
地面に固定するように蹴る。

 マウントポジションを取り、まず一番最初に行った事。
――それは敵の武器を奪う事だった。


 奪う――略奪。
そうは言った所で、明らかに敵の鞭は体と同一であり、身体と同化していた。

( 0л从「――――!」

 それを強奪する程の武装は無い。
しかし――獣の身体を再現するに当たって、意図したものか否かは分からずとも、
最も原始的であり、野性的で、本能に任せている状態のドクオはまず持って、武器を奪うためのオプションとして。


――自身の爪を選んだ。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も



 何度も――
爪で抉り、刺しては抜き、刺しては抜き、爪が物体に落ち、自らの手にダメージを与え、爪が剥がれようとも幾度も抉る。最終的に両腕を圧縮し圧迫し、どうしようもなく物理的に、ヒキチギル。
嫌な音が雨音に紛れて消えていく。

( 0л从「……………」

 作業の様に手順を終わらせた次に、拳を握る。
握り、振り下ろす。
一撃ではダメージは吸収され、握った拳が黒くなった。
二撃三撃と続けた所でそれは全く同じ事。
しかし殴り続ける事を止めない。
幾度も殴り続けるその姿は、学習をしない、本能そのもので、
幾度でも殴り続けた。

( 0л从「……」

 ぐちゅり、とトマトをつぶしたような音が耳に届き、殴る事を止める。
赤いのだか青いのだか紫なのだか黒いのか。
最早その色の表現をするには幾重にも絵具を塗り重ねなければ出来もしないであろう色になった所で、
漸くとも、まだとも表現し難く、彼は拳を振るうのを止めた。








ぐちゃ、ちゅ、ぶじゅる、ちゃ、ぐち、ぐち、べちゃり。
ばちゃばちゃ。




雨音に紛れ、音が鳴る。





 

体毛の色間違えてた
正しくは『暗黒色と黄金、黄橡が彩る体毛が輝かしい。』が正解、白群と金茶は間違い

続きは気分で書く

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