ゾマリ・ルルー「『PSYREN』ですか」2 (242)

続きです
長い間空けてしまい申し訳ありません
日曜の夜から再開します

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1414205830



シャイナ「あなた、何者です」


シャイナ「見たところ、この辺りの『塔』を壊して回っているのはあなたのようですが……」

シャイナ「あまり好き勝手されてしまうとこちらとしても困るんですよねえ」


「そう言う貴様は何者だ?」

「仮面のないところをみると『虚』じゃアないな」


「いや、そもそも『虚』ならばこの儂の存在を知らぬなどと言うことはないか」


シャイナ(『ホロウ』……?)


シャイナ「…………」


シャイナ「僕は『W.I.S.E“第三星将”』のシャイナと申します」

シャイナ「あなたは?」


「我こそは“大帝”バラガン・ルイゼンバーン」


「『虚圏』の『神』だ」



シャイナ(『ウェコムンド』……)

シャイナ(聞いたことのない言葉ですね、どこかの地名か何かでしょうか)


バラガン「さて」

バラガン「貴様は今『ワイズ』という語を発したが、それが貴様等の“組織”の名か?」


シャイナ「…………」


シャイナ(そういえば、以前にも似たような質問を受けたような……)


シャイナ(そう、確か、あの時ドルキさんと戦ったノイトラ・ジルガと名乗る男……)

シャイナ(彼もまた、僕たち『W.I.S.E』について尋ねてきた……)



シャイナ(薄々想定はしていましたが……)

シャイナ(恐らく、この人も)


バラガン「儂の問いが聞こえんかったか?」


シャイナ「おっと、すみませんね」

シャイナ「あなたの仰るとおり、『W.I.S.E』は僕たちの“組織”の総称です」


シャイナ「ついでと言っては何ですが、今度は僕からも質問させてもらいましょうか」


シャイナ「あなた、ノイトラ・ジルガという方をご存知ですか?」



バラガン「ほう、あの小僧を知っておるのか」


シャイナ「……!」


シャイナ(以外ですね……)


シャイナ(今の問いを肯定するということは、自身が『エスパーダ』に関わりのある者だと明かすようなもの)

シャイナ(素性に直結する問いですし、もう少し返答を渋るものだと思っていましたが……)


シャイナ「随分とあっさり答えましたね」

シャイナ「やはり、あなたも『エスパーダ』の関係者と見て間違いないようだ」


バラガン「……『刃(エスパーダ)』、いや『十刃』か」


バラガン「下らんな」



シャイナ「下らないとはどういうことです?」

シャイナ「『エスパーダ』はあなたの属する“組織”でしょう、それを……」


バラガン「貴様のその問答そのものが下らんと言っているのだ」

バラガン「大方、儂が何者であるのかを探っておるのだろう」


シャイナ「!」


バラガン「小さき者らしい浅知恵じゃな」


シャイナ「…………」


バラガン「まあよい、元より貴様のような蟻に用はない」

バラガン「貴様等の“頭”の居所を吐いてとっとと失せい」



シャイナ「失せる?」

シャイナ「残念ですけど、あなたが『エスパーダ』の関係者であるとわかった以上、僕も黙って帰るわけにはいかないんですよ」


シャイナ「本当はあなたを連れて帰って『エスパーダ』に関する情報を吐かせたいところですけど……」

シャイナ「大人しく僕について来てくれるようには見えませんしね」


シャイナ「まあ、あなたを生きて帰すつもりはありませんので精々覚悟してください」



バラガン「ほう」

バラガン「この儂に向かって大層な口の訊きようじゃな」


バラガン「みすみす儂に誘き出された蟻が、儂を“生きて帰さぬ”とは……」


バラガン「滑稽滑稽……!」


シャイナ「……なに?」


バラガン「解せぬと言いた気じゃな」


バラガン「儂が態々この近辺の『塔』を破壊して歩いたその理由……貴様はそれを理解しておるのか?」


シャイナ「…………」



バラガン「この場所に立ち並ぶ『塔』、意味もなく此処に建てている訳でもあるまい」


バラガン「事象の全てには必ずや理由がある、この『塔』も例外にあらず……」


バラガン「この『塔』は、貴様等にとって何かしらの意味を持つものじゃろうて」


バラガン「ならば、この『塔』を破壊し続ければどうなる」


バラガン「放っておく訳にもいくまい……結果、いずれは言葉も知らぬ雑兵とは違う、位の高い者が現れる」


バラガン「まあ、貴様のような三流を寄越されたのは些か見当違いじゃったがのオ」


シャイナ「…………」イラッ



シャイナ「あなた、自分の置かれている立場が分かっているんですか?」

シャイナ「僕がその気になればあなた程度の者、いつでも殺すことができる」


バラガン「フハハ……」


バラガン「貴様こそ理解しておらんようじゃな、儂と貴様の間には天と地ほどの力の隔たりが存在しておる」

バラガン「いや、そもそも『神』である儂と小さき者である貴様を力の物差しで測ろうなどと……儂としたことが少々滑稽な物言いだったか」


シャイナ「…………」



シャイナ「……無駄口の減らないお爺さんですね」

シャイナ「本来なら、今すぐにでもあなたを殺すところですが……特別に一つチャンスを与えましょう」


シャイナ「あなたが『エスパーダ』について知っていること全て、僕に話してもらえませんか?」

シャイナ「そうすれば、この場だけは見逃して差し上げます」


シャイナ「先程も言いましたが、あなた程度の者が僕と戦いになるとは思わないほうがいいですよ」

シャイナ「あなたたち『エスパーダ』がどれほどの規模を誇る組織かは知りませんが、既にその構成員の一部は我々が捕縛済みです」


シャイナ「この提案に乗らなければ、あなたはあなたのお仲間さんと同じく僕たち『W.I.S.E』に殺されることになります」

シャイナ「諦めて全てを話したほうが利口だと思いますよ」



バラガン「クク……!」


バラガン「フハハハハハハハ!!!」


シャイナ「……なにを笑っているんです?」


バラガン「愚問じゃな」


バラガン「この儂がそのような下らん誘いに乗るとでも思っていたのか?」


シャイナ「…………」



バラガン「だが、ようやく貴様にも少し興味が沸いた」

バラガン「貴様等の“誰が”『十刃』の“誰を”捕えたのかは知らんが……貴様も蟻なりに少しは腕が立つと見ていいのか?」


シャイナ「どうでしょうか、その目で確かめてみたらいいんじゃないですか?」


バラガン「貴様には『この得体の知れん場所』について問おうと思っておったところじゃが……」

バラガン「まあ、貴様でなくとも代わりはいくらでもおるじゃろう」スッ


バキバキッ……バキッ……!


シャイナ(……戦斧)


シャイナ「随分と物騒な武器ですけど、あなたの威勢同様見かけ倒しではないことを祈りますよ」


バラガン「フン」


バラガン「貴様こそ、精々この儂を失望させてくれるなよ?」



――――――――――
―――――



ギィィ… パタン


リリネット「…………」


07号『どうした まだ何か用か』

07号『続きは明日にしてくれ』


リリネット「あのさ……」

リリネット「さっきは叩いてごめん……ついカッとなっちゃって……」


07号『…………』

07号『わざわざ私に謝りに来たのか』


07号『律儀なものだな』



コンコン


リリネット「……!」


ギィィ…


ゾマリ「…………」


07号『お前も来たのか』

07号『早いうちにそこの小娘をつれて出ていってくれ』


ゾマリ「…………」


ゾマリ「お断りさせていただきます」



07号『――なに?』

07号『用があるなら明日にでも聞くと言っているだろう』


ゾマリ「私が今思案している貴女への“問い”は、可能な限りハリベル殿とヤミー殿には聞かれたくないのです」


リリネット「……!」


ゾマリ「どうかご理解を」


07号『…………』


07号『“夢喰島”での借りだ 言ってみろ』



ゾマリ「……では」


リリネット「…………」


ゾマリ「私たちは今、『現世』の崩壊を阻止するために動いています」

ゾマリ「仮に私たちが『現世』の“アマギミロク”の計画を止め、世界の崩壊を阻止するといった目的を成し遂げ、『現世』の崩壊が既成の事実ではなくなった場合……」


ゾマリ「『現世』が崩壊した後の未来である『この世界』は……」

ゾマリ「『現世』の崩壊により生まれるはずだった『この世界』は……」


ゾマリ「“根”の人々は、ハリベル殿やヤミー殿は……そして未だ『この世界』に存在する他の『十刃』はどうなるのです?」


リリネット「……!」


リリネット(そういえば……)


リリネット(今『この世界』があるのは、『現世』が壊されちゃったのが原因で……)

リリネット(もしあたしたちが『現世』で“アマギミロク”を止めることができたなら……)

リリネット(“アマギミロク”に滅ぼされるはずだった『この世界』はどうなっちゃうんだろう……?)



07号『…………』


07号『時の流れの破壊と断絶 そして新生』

07号『恐らく新たな時間軸が生まれ 『この世界』にいる者は本来の時間の流れから切り離されることになる』


07号『お前たちが過去に戻り 未然に世界崩壊を食い止めたのなら』

07号『文字通りここは『本来の世界』の時間軸とは別の時間軸に位置する『平行世界』となるだろう』


ゾマリ「…………」



07号『『カード』を所持していない『十刃』も同じだ』

07号『そいつらもこの切り離された時間軸で生きていくことになる』


ゾマリ「…………」


07号『まあ 今この場所にいるあの二人に限っては――』

07号『今ここで『カード』を発行し 『現代』との時間軸が切り離される前にお前たちと共に『現代』へ送り込んでやることも出来る』


リリネット「!」


07号『あの二人が承諾すればの話だがな』


ゾマリ「…………」



07号『今言った通り あの二人を『現代』へと送ることは可能だ』

07号『だがあの大男のほうに限っては 奴にとって少し面倒なことになるだろう』


リリネット「……どういうこと?」

リリネット「大男って、ヤミーのことだよね」


07号『同一の時間軸に同じ人間が存在することはできない』

07号『それは人間に限らず『虚』であるお前たちも同じだ』


07号『奴を『現代』へと転送すれば 本来『過去』に存在しているはずである奴の存在は消失する』

07号『『現代』の人間が持つ 奴に関する記憶と共にな』


07号『そして『現代』の人間から奴に関しての記憶が抜け落ちる以上 『現代』への転送と同時に『この世界』の人間の記憶からも奴の存在は消えることとなる』


ゾマリ「……成程」


ゾマリ「つまりヤミー殿が『この世界』から『現世』へと送られた時点で『この世界』の人々の記憶の中から……」

ゾマリ「“根”の人々の記憶から、カイル殿やフレデリカ殿の記憶から、ヤミー殿の存在は消滅してしまうと」


リリネット「……!」


07号『ああ』



リリネット「…………」


リリネット「……どうしよう」

リリネット「この事、ハリベルとヤミーにも話したほうがいいのかな?」


ゾマリ「いえ、今は止めておきましょう」


ゾマリ「ヤミー殿とハリベル殿……特にヤミー殿と“根”の人々との間にはより大きな“愛”が存在している」

ゾマリ「この話を今明かせば、ヤミー殿のみならず“根”の人々の不安を煽ることにもなりかねません」


ゾマリ「それにハリベル殿も、“根”の人々を残して『現世』へ赴くなどといった提案を承諾しはしないでしょう」


リリネット「……そうだね」

リリネット「ここのみんなとの『約束』もあるし、今話すのはやめとこっか……」

投下終了、少し中途半端ですがここまで




シャイナ「はぁ……はぁ……!」ズキズキ


シャイナ(まいったな……)


シャイナ(僕としたことが……甘く見た……)


シャイナ(この男……)


シャイナ(強い……!)


バラガン「どうした、儂に一撃を与えることすら出来んのか」



シャイナ「…………」


ヒュン!


バラガン「フン」

バラガン「またも懲りずに『空間転移』か」


バラガン「忌々しい能力じゃのォ」


シャイナ(背後を……)


シャイナ(とった!)ブンッ


ユラッ…


シャイナ「!」


シャイナ(く……)

シャイナ(まただ……この男に触れようとすると、僕の動きが急速に遅くなる……!)



バラガン「無駄だと言った」ギロッ


シャイナ「……!」


バラガン「どうやら、右腕を潰しただけでは足りんようじゃな」


バラガン「そら」スッ


トンッ


バラガン「こうして貴様の胸部に触れれば」


ズズッ…


シャイナ「!?」


シャイナ「かはっ……!? げほっ……!!」ボタボタ…


バラガン「貴様の臓器だけを“老い”に沈めることもできる」


シャイナ「ぐ……」

シャイナ(肺を……!)


ヒュン!


バラガン「隠れたか」



シャイナ「ハァッ……! ごほっ……!!」ボタボタ…


シャイナ(……くそっ)


シャイナ(攻撃、防御共に『ライズ』が全く通用しないなんて……)

シャイナ(この男の能力はいったい……)


シャイナ(まさか、人体に直接作用する『テレキネシス』……?)


シャイナ(いや……そんなものが存在するわけがない……)

シャイナ(グラナさんですらそんな『テレキネシス』が使えるなんて話、聞いたことがないんですから……)


シャイナ「うっ……!」

シャイナ「くっ……がはっ……!!」ビチャッ…!


シャイナ「ぜぇ……はぁ……!」


シャイナ(『イルミナ』のおかげか、呼吸機能はまだ生きている……)

シャイナ(でも、肺を一つと右腕を潰されたダメージは思った以上だ……)



シャイナ(一度『アストラル・ナーヴァ』に戻って対策を……)


シャイナ(…………)


シャイナ(駄目だ……この男をここで逃がしたら必ずや僕たち『W.I.S.E』の脅威になる)


シャイナ(でもどうすればいい……あの謎の『テレキネシス』がある限り迂闊に近づくのは……)


シャイナ(…………)


シャイナ(……!)


シャイナ(そうだ、何をしているんだ僕は)


シャイナ(何もあの男を直接攻撃する必要なんてない)


シャイナ(僕の能力は『瞬間移動(テレポーテーション)』……敵の戦い方にわざわざ付き合うことなんてなかった)



ヒュン!


シャイナ「…………」


バラガン「ようやく出てきおったな」


バラガン「何をしていた」

バラガン「儂に対しての“時間稼ぎ”か?」


シャイナ「……“時間稼ぎ”」

シャイナ「確かにそうですね」


シャイナ「ですが、おかげであなたを倒す算段がつきました」



バラガン「ほう」


バラガン「面白い、やってみろ」


シャイナ「では遠慮なく」スッ


ヒュン!


シャイナ「あなたに『神経制御塔』を一本プレゼントいたしましょう」

シャイナ「押し潰されて死んでください」



バラガン「何かと思えば、こんなものか」

バラガン「儂の頭上に『塔』を転送し、その落下の衝撃で儂を潰すとでも言った目論見か……」


バラガン「滑稽滑稽……!」スッ



キィィィィ……!!



バラガン「……!!」


バラガン「なんだ……これは……!」



シャイナ「『六方転晶系(ヘキサゴナル・トランスファー・システム)』」


シャイナ「すみませんね、頭上の『塔』はこの本命に意識を向けさせないための囮です」


シャイナ「まあ、今から死ぬ人にわざわざ能力の説明をするのも面倒なので省かせてもらいますね」

シャイナ「それに、あなたに潰された肺のダメージも決して軽いものではありませんので」


バラガン「貴様……!」


シャイナ「さようなら」

シャイナ「残り少ない人生ですが、せめて最期に優雅な空の旅をお楽しみください」スッ


ヒュン!



――――――――――
―――――



07号『それで あいつらの『カード』の発行はどうするんだ』


ゾマリ「ありがたい提案ですが、お断りさせていただきます」


07号『そうか』


リリネット「またいつかお願いするよ」


07号『…………』


07号『――そうだな』


07号『“またいつか”――か』



ドンッ…


リリネット「……?」


リリネット(なんだろ、今の音)


リリネット(…………)


リリネット(気のせいかな……)





ハリベル「……音を立てるなと言ったはずだが」


ヤミー「おう、すまねえすまねえ」

ヤミー「つい手が滑っちまった」


ヤミー「しっかしよお、あいつら俺らの居ねえトコでなに勝手に話進めてやがんだ」

ヤミー「聞いた限りじゃ、今の話はあいつらじゃなくて俺らに関係してることだろうがよ」


ハリベル「これはあの二人なりの厚意の賜物だ」

ハリベル「私たちに余計な負担をかけさせまいとしている……それはお前も聞いていて分かっただろう」


ヤミー「ちっ、そりゃ確かにそうだけどよ……」



ハリベル「……心残りがあるか?」


ヤミー「あいつらがあのクソ女の提案を断ったことにか?」


ヤミー「あの女の話は小難しくてよく分からねえモンだったが……」

ヤミー「要はここの連中を置いて俺らだけノコノコ『現世』に行くってワケだろ」


ヤミー「んな馬鹿なこと出来るかってんだ」


ハリベル「……」


ハリベル「……変わったな、お前も」


ヤミー「ああ?」



ヤミー「で、どうすんだ」

ヤミー「ここで盗み聞きみてえな真似してんのもあれだしよ、俺らも部屋ん中に入るか?」


ハリベル「いや、やめておこう」

ハリベル「あの二人の折角の厚意を無碍にしたくはない」


ハリベル「それに、もうこれ以上詮索する必要もないだろう」

ハリベル「先程ゾマリが言った通り、私たちは各自先んじて休息をとることにしよう」


ヤミー「そうかい」


ヤミー「ったくホントに揃いも揃ってお人好しな野郎だぜ、お前もあいつらもよ」




07号『…………』


07号『聞きたい事は今ので最後か?』

07号『日を跨ぐのも面倒になった まだ何か聞きたい事があるならばさっさと話せ』


リリネット「!」


リリネット「あのさ」

リリネット「あなた、“ムクロジマ”に居た“禁人種”について何か知らない?」


リリネット「あの“禁人種”、なんだかあなたを守ってるように見えて……」

リリネット「でも、あなたの仲間……ってワケでもなさそうだったし……」



07号『そうだな』

07号『あの二人が何者だったのかは 私にもわからない』


07号『私が気がついた時には既に奴らはあの島にいた』

07号『お前の言う通り まるで私を守るようにな』


07号『何の根拠もない憶測だが――』

07号『案外あの二人もお前たちと同じく 本来『この世界』に存在すべき者ではなかったのかもしれんな』


リリネット「…………」


07号『だが――』

07号『何故だろうな』


07号『初めてあの二人を見た時――』

07号『私には縁もゆかりも無い連中のはずだというのに どこか――懐かしさを覚えた』



リリネット「懐かしさ……」


07号『ああ』


07号『言葉では言い表せない――』

07号『何か“大きな繋がり”が存在していたかのような――』


07号『だが私にそんな繋がりなどあるはずもない』

07号『大方 あの懐かしさは数少ない私の記憶から生み出されたまがい物の感情だったのだろう』


07号『幸せと繋がりを望んでいた 幼い頃の私の記憶が創りだした――な』


ゾマリ「…………」


07号『…………』


07号『何を言っているのだろうな 私は』

07号『妄言だった 今の話は忘れてくれ』


来てたか
大体いつぐらいに完結するか、目処って立ってるの?


――――――――――
―――――



シャイナ「『六方転晶系』の転送による高度4000mからの死のダイブ」


シャイナ「まあ、助かりはしないでしょう」



バラガン「そうか」


シャイナ「!?」ピクッ


バラガン「どうやら、泳がせてもこれ以上のものは出そうにないのう」


シャイナ(何故……!?)


バラガン「興も冷めたわ、死ねい」ブンッ


ズバンッ!


シャイナ「が……!」ブシャッ!


シャイナ(馬鹿な……!?)


シャイナ(何故、この男がまだここにいる……!)

シャイナ(確かに、『六方転晶系』ではるか上空に転送したはず……!)


シャイナ(なん……で……)



ドサッ…



バラガン「蟻が、あのようなつまらん曲芸で儂を仕留められるとでも思っておったのか?」


シャイナ「けほっ……!」ボタボタ…

シャイナ「そんな……『六方転晶系』から……抜け出すなんて……出来るはずがない……」


シャイナ「……!」


シャイナ「まさか……あなたも『瞬間移動』を……」


バラガン「フン」

バラガン「“今の”儂の動きすら捉えられんとはな」


シャイナ「……!」


シャイナ(動き……?)

シャイナ(まさかこの男……『六方転晶系』を見てから避けたとでも……!?)



シャイナ「あなた……いったい……」


バラガン「忘れたか」


バラガン「儂は『神』」


バラガン「貴様が誰だろうが、どんな力を持っていようが些細な事」

バラガン「儂の“力”の前ではあらゆるものは等しく平等……」


シャイナ「……っ」


シャイナ「うぐっ……! げほっ……!!」ボタボタ…


バラガン「虫の息じゃな」


バラガン「なに、今楽にしてやろう」スッ


シャイナ「…………!」ピクッ


シャイナ(身体に力が入らない……)


シャイナ(避けないと……!)


シャイナ(動け……)


シャイナ(動け……!)







ズバンッ!!!!










バラガン「…………」






バラガン「逃げ失せたか」


バラガン「少しは期待しておったのじゃが、所詮は小さき者……」


バラガン「拍子抜けじゃな」


投下終了

>>53
まだはっきりと決まってはいませんがなるべく早く完結させるつもりです
あと、話の構成は一応最後までできているのでエタることはないと思います
どうしても止むを得ない事情で長引きそうな場合はおおまかな展開だけ書いて落とします





シャイナ(ここは……)


シャイナ(…………)


シャイナ(ああ、そうか……)


シャイナ(あの一撃を避けるつもりで『塔』まで移動したのか、僕は……)


シャイナ「っ……」ググッ…


シャイナ(駄目だなあ……もう起き上がる力も残ってない……)


シャイナ(…………)



「……けた!」


「こっちだバーリィ! 早く来い!」


シャイナ(……?)


ネッカ「シャイナ様!」


シャイナ(確か……この人はジュナスさんの部下の一人……)


ネッカ「……!」

ネッカ「そのお怪我は……」


シャイナ「……気にしなくていいよ」


ネッカ「しかし……!」


シャイナ「っ……! げほっ……!」ボタボタ…



ネッカ「……!」


ネッカ「くそっ……」


バーリィ「……どうしたものかネェ」

バーリィ「医療班を呼ぼうにも、ここからじゃあ『テレパス』も届くまい」


ネッカ「!」


ネッカ「あたしが呼んでくる」

ネッカ「戻って来るまでシャイナ様を頼んだよ」


ダッ!


バーリィ「…………」



シャイナ「……あなたたち、どうしてここが」


バーリィ「シャイナ様のご帰還があまりにも遅かったもので……最悪の状況も見越して捜索に当たっていたところ……」


シャイナ「……僕を見つけたと」


バーリィ「ええ」


シャイナ「この捜索は、ジュナスさんの命令で……?」


バーリィ「いえ、私たちの独断です」


シャイナ「……そうですか」


シャイナ「……!」

シャイナ「っ……ぐ……!」ズキズキ


バーリィ「…………」



バーリィ(コレハ、マタト無イ好機ダネ……)


バーリィ(ここで“星将”の身体を手に入れておけば、今後の『W.I.S.E』内の捜索はかなり楽なものになるはずだ……)

バーリィ(“この男”の身体のままだと、内情を探ろうにも限界があるしな……)


バーリィ(デモ、此処デコイツノ身体ヲ手ニ入レタラ、モウ後戻リハデキナイ……)

バーリィ(ソレコソ、僕ガ『十刃』デアルト知ラレレバ……死ハ免レナイダロウ)


バーリィ(…………)


バーリィ(待て……)


バーリィ(そもそも、俺は何のためにこんなことをしているんだ……?)

バーリィ(他の『十刃』の手掛かりを得るためか……? ウルキオラを助けるためか……?)


バーリィ(…………)


バーリィ(僕タチハ『虚』……互イガ互イヲ喰ライアウ存在……)

バーリィ(ナノニ、ソノ『虚』デアル僕ガ……『虚』ニ会ウ為ダケニ……『虚』ヲ助ケル為ダケニ……コンナコトヲスル必要ガアルノカ……?)



バーリィ(俺は、何がしたいんだ……?)

バーリィ(何かがおかしいんだ……あの時『死神』の身体を遣ってから……ルピのヤツと戦ってから……)


バーリィ(“心”ヲ預カル……ナンデアノ時僕ハアンナコトヲ言ッタンダ……?)

バーリィ(ワカラナイ……)


バーリィ(解らねえ……)

バーリィ(何なんだこれは……何なんだ、この感覚は……)


バーリィ(ワカラナイ……)

バーリィ(ワカラナイ……)


バーリィ(解らねえ……)

バーリィ(解らねえよ……)



シャイナ「ごほっ……!」ボタボタ…


バーリィ「!」ハッ


バーリィ(…………)


バーリィ(ソウダネ……)

バーリィ(考エテモ、ワカラナイモノハワカラナイ……)


バーリィ(それなら、俺のやりたいようにやればいい……)

バーリィ(俺はただ、他の『十刃』の奴らの情報を集めてあいつらと合流する、それに加えてウルキオラも助ける、ついでにこの『W.I.S.E』とか言う組織の内情も暴く……)


バーリィ(ソレガ僕ノ最終目標)

バーリィ(何ヲ迷ウコトガアル……僕ノ好キナヨウニヤレバイインダ……)


バーリィ(そうだ……迷いなんて知ったことじゃねえ……)


バーリィ(俺は……俺の“心”の赴くままに動くさ……!)



バーリィ「……シャイナ様」

バーリィ「やはり、そのお怪我は“反抗勢力”との戦闘によるもの……」


シャイナ「……」


シャイナ「……気にしなくていいって言ったの、聞こえなかったかな」


バーリィ「失礼は承知の上でお訊きしています」


バーリィ「ジュナス様、ドルキ様に続き、今回はとうとうシャイナ様までもが手酷く傷を負おいになられた……」

バーリィ「私も『W.I.S.E』の一員として、“星将”の部下の一人として、シャイナ様が交戦なされた敵の実態を知っておくべきであると思いまして……」


シャイナ「…………」



シャイナ「……僕が戦ったのは、恐らくは『エスパーダ』の一人」

シャイナ「バラガン・ルイゼンバーンと名乗る男……」


バーリィ「!!」


シャイナ「……だけど、あれは“戦い”なんて呼べる代物じゃなかった」

シャイナ「僕はあの男に傷一つ付けられなかった挙句……このザマだ……」


シャイナ「……っ」

シャイナ「はぁ……げほっ……!」


バーリィ「…………」

バーリィ「強かっただろう、あの爺さんは」


シャイナ「……!」



バーリィ「お前じゃどう足掻こうが勝てる相手じゃないさ」

バーリィ「なにせ、あの爺さんは元『虚圏の王』だったんだからな」


シャイナ「何を……言ってる……?」


バーリィ「鈍いヤツだな……」スッ


ユラッ…


シャイナ「!!」


アーロニーロ「俺も、アンタらが血眼になって探してる『十刃』の一人ってことだよ」


シャイナ「な……!」


アーロニーロ「そらよ」スッ


ドスッ!


シャイナ「うぐっ!!」ブシャッ!



アーロニーロ「中々いい切れ味だろ? つってもこれは俺の刀じゃあないんだけどよ」


シャイナ「……――」カクッ


アーロニーロ「気絶しちまったか」

アーロニーロ「ま、そっちのほうが都合はいいが……」


ズズッ…


アーロニーロ「貰うぜ、お前の身体」


アーロニーロ「『喰い尽くせ』……」



「悪いが、そこまでにしてもらえるか」



アーロニーロ「!!」



「“スカージ”に鼠が一匹紛れ込んでるなんつう報告、嘘であって欲しかったがな」

「まさかホントになっちまうたァ思わなかったぜ」


アーロニーロ「…………」


アーロニーロ(……くそ)


アーロニーロ(十分に気を配っていたはずだ、何があろうと“コイツ”にだけは遭遇しないようにと……)


アーロニーロ(『W.I.S.E 第一星将』)


アーロニーロ(“天修羅”のグラナ……)


アーロニーロ(よりにもよって、この男に見つかるとは……!)


投下終了、短いですがここまで



グラナ「さて、と」スッ


アーロニーロ「!」ザッ


グラナ「ん?」


グラナ「おいおい、そんなに距離取らなくてもいいぜ」

グラナ「まだなにもしねえからよ」



グラナ「おい、生きてるかシャイナ」ペチッ


シャイナ「……っ……グラナ……さん……?」


グラナ「おー、それだけ喋れるならまだ大丈夫そうだな」


ザッ…


デルボロ「“スカージ”デルボロ、ただいま到着いたしました」スッ


グラナ「ん、来たか」


グラナ「早速で悪いが、コイツを医療班のところまで運んでやってくれ」


デルボロ「はっ」


アーロニーロ「……」



アーロニーロ(俺のことを密告しやがったのはアイツだな……)

アーロニーロ(誤魔化しきれてなかったのか……)


グラナ「あー……」

グラナ「とりあえず、名前を聞かせてもらおうか」


アーロニーロ「名前か……」

アーロニーロ「“この姿の俺”はどう名乗るべきなんだろうな」


アーロニーロ「『第9十刃』、アーロニーロ・アルルエリか……」

アーロニーロ「それとも『十三番隊副隊長』、志波海燕か……」



アーロニーロ「だがまあ……」

アーロニーロ「そんなものはどっちだっていいか……!」


アーロニーロ「いくぜ……!」スッ


グラナ「!」


アーロニーロ「『縛道の四』! 『這縄(はいなわ)』!」


シュルッ…


グラナ「む……」ググッ


アーロニーロ「『破道の三十一』……『赤火砲(しゃっかほう)』!」


ボッ!!



グラナ「『テレキネシス』と『パイロキネシス』の応用か……」


グラナ「なかなか面白い技だ」


グラナ「だが、少し錬度が低いな」ブチブチッ…


アーロニーロ「……よ ……の仮面 ……象 ……羽搏き ……の名を冠す者よ」ブツブツ


グラナ「ん……?」


アーロニーロ「真理と節制 罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ」


アーロニーロ「『破道の三十三』、『蒼火墜(そうかつい)』!!」



ボウッッ!!!




ダッ…!


アーロニーロ(……練度が低かろうが結構)

アーロニーロ(俺の力じゃこの男とやりあってもとっとと殺されるのがオチだ)


アーロニーロ(『死神』の力だろうが『虚』の力だろうが、もうなり振り構っちゃいられねえ)


アーロニーロ(今はとにかく逃げることだけを考えろ……)

アーロニーロ(今ので少しは時間が稼げるはずだ……今のうちに距離を……)


グラナ「なんだァ、逃げるのか?」


アーロニーロ「!!」ザッ…


アーロニーロ(回り込まれた……!? いつの間に……)



アーロニーロ(くそ……)

アーロニーロ(今ので足止めにもならないとすると……)


アーロニーロ(どうする……)

アーロニーロ(恐らく、『鬼道』による奇襲はもう通じねえ……)


アーロニーロ(どうすればいい……)

アーロニーロ(どうやって逃げればいい……)


グラナ「来ないならこっちからいくぜ」


アーロニーロ「!」


アーロニーロ(ちっ……)



アーロニーロ「『破道の三十一』……」


グラナ「やめとけって、そりゃ俺には効かねえぞ」


アーロニーロ「『赤火砲』!」


ボッ!!


ドガァン!!


グラナ「!」


ダッ!


アーロニーロ(悪いが、逃げに徹させてもらう)

アーロニーロ(『塔』の外にさえ出れば、コイツを撒く機会も増えるはずだ……)





グラナ「『塔』の壁を壊して外に逃げたか……」


グラナ「ったく、俺ァ鬼ごっこをしに来たワケじゃあないんだがな……」





アーロニーロ「……」ハァハァ


アーロニーロ(『アストラル・ナーヴァ』からも抜けた、ここまで逃げればアイツももう追っては来ないだろう)

アーロニーロ(しかし、これからどうするか……)



ドォン!



アーロニーロ「!」


グラナ「っと、追いかけっこはお終いか?」


アーロニーロ「……」


アーロニーロ「……しつこいヤツだ」


グラナ「悪いな」

グラナ「ちっと前までなら俺も“反抗勢力”相手にここまで徹底はしなかったと思うが、今回は別だ」

グラナ「お前ら『エスパーダ』にはなかなか手痛くやられてる手前、ほっとくワケにもいかなくてなァ……」



グラナ「それに『W.I.S.E』の為ってのもある」


グラナ「まァ、ここで死んでくれ」


アーロニーロ「……」


アーロニーロ「……」


アーロニーロ「……」


アーロニーロ(もうこれ以上、コイツから逃げきれると考えるのは止した方がいいだろうな……)


アーロニーロ(…………)


アーロニーロ(勝ち目の無い戦いでも……)


アーロニーロ(やらなきゃならねえ時もある……か)




アーロニーロ「……いくぜ“第一星将”」






アーロニーロ「『下級大虚』をなめるなよ……!」スッ





アーロニーロ「『喰い尽くせ』」






アーロニーロ「『喰虚』……!」


投下終了、明日か明後日の夜にまた来ます



グラナ「大した“PSI”反応だ」


グラナ(“禁人種”みてえなナリしてやがるが……)

グラナ(これがジュナスの言ってた“力を急激に上昇させる形態変化”ってヤツか?)


アーロニーロ「…………」


アーロニーロ(……コイツ相手じゃあ生半可な戦い方は通用しないだろう)

アーロニーロ(なら、俺の“経験”と“記憶”を限界まで駆使して……せめて一太刀浴びせてやる……)スッ…



アーロニーロ「『虚閃』!!」


バシュッッ!!


グラナ「おっと」

グラナ「そいつを見るのはこれで三度目だな」スッ


ヴン…


パシュッ……



アーロニーロ(ルピの“記憶”にあった“PSI”障壁による防御か……)


アーロニーロ(まあ、これくらいは当然防がれるだろうよ……)


アーロニーロ(だが……)スッ


アーロニーロ「『縛道の六十一』……『六杖光牢(りくじょうこうろう)』!」



ギギッ…



グラナ「ぬ、さっきの紐みてえなヤツよりは頑丈だが……」ググッ…


グラナ「ほっ」バキン!


アーロニーロ(……!)


アーロニーロ「『縊れ』……」


アーロニーロ「『蔦嬢』!!」ブンッ!



グラナ「っと危ねぇ」ヒョイ



ドスゥゥン!!!



アーロニーロ(躱されたか……)


アーロニーロ(それなら……!)サッ


アーロニーロ「『王虚の閃光』!!!」



ズギャアアアアアアアアン!!!!!



グラナ「!」



ドォォォォン!!!




パラパラ…



アーロニーロ「……」



ザッ…



グラナ「今のはなかなかいい攻撃だったぜ」


アーロニーロ(……)


アーロニーロ(俺じゃあコイツに勝つのは難しい……そりゃあわかってたがな……)


アーロニーロ(だが……)


アーロニーロ(これでも無傷か……)


アーロニーロ(少しは、効いてる素振りを見せてくれ……)



アーロニーロ「…………」


アーロニーロ(今のが駄目なら……)

アーロニーロ(もう、通用しそうな技はこれしか残ってないな……)


アーロニーロ(この技はこの『死神』の“経験”にはない技……)

アーロニーロ(だが、“俺”の“記憶”には残っている……)


アーロニーロ(成功する保証はないが……)


アーロニーロ(あの『死神』の女でさえやってのけたことだ)


アーロニーロ(俺に出来ないはずがねえ……)



アーロニーロ「ふう……」


グラナ「来るか」


アーロニーロ「君臨者よ 血肉の仮面 万象 羽搏き ヒトの名を冠す者よ」


アーロニーロ「雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此を六に別つ」


アーロニーロ「蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ……!」


アーロニーロ「『縛道の六十一』……」



アーロニーロ「『六杖光牢』!!!」



ギギギッ…!



グラナ「なんだァ、またコレか」ググッ…


グラナ「同じ技ばかりじゃ芸がないぜ」ミシッ…


アーロニーロ「これで終わりだと思ったか……?」スッ


アーロニーロ「『破道の七十三』……『双蓮蒼火墜(そうれんそうかつい)』!!」



ボォォォォウ!!!!!



アーロニーロ(よし……)

アーロニーロ(なんとか上手くいったか……)


アーロニーロ(今のは『完全詠唱』かつ『二重詠唱』の二連撃……)

アーロニーロ(少しは動きも止まるだろう……)


アーロニーロ(さっきは躱されたが……今度は直撃を喰らってみろ……!)


アーロニーロ「『蔦嬢』!!」ブンッ!



ガシッ!



アーロニーロ「!」


グラナ「面白ぇ」ググッ…

グラナ「ここまで多彩な技を持つ『サイキッカー』ってのは初めて見たぜ」


アーロニーロ「……」


アーロニーロ「……そいつを“一本”受け止めたくらいでいい気になるなよ」



アーロニーロ「本来、『蔦嬢』の触手の数はその八倍……」ユラッ…


アーロニーロ「それに加えて……」


ジャキッ!


グラナ「!」


アーロニーロ「この形が『蔦嬢』において最も殺傷能力が高い形態……」


アーロニーロ「八方向からの刺突で串刺しになりやがれ……!!」ブォンッ!!



ドスゥン!!!



アーロニーロ「まだだ……」


アーロニーロ「喰らえ……!」スッ


アーロニーロ「『黒虚閃』!!!」



ズギャアアアアアアアン!!!!!!




アーロニーロ(どうだ……)

アーロニーロ(流石に堪えたろ……!)



パァン!!



アーロニーロ「!!」


アーロニーロ(何だ……『蔦嬢』が弾け飛んだ……!?)


ザッ…


グラナ「やるなァ」


グラナ「そのトゲのついたデカい鞭みたいなヤツで俺の動きを止めて、そこにさっきの黒い『バースト』を叩きこむ」

グラナ「いい戦い方だと思うぜ」


グラナ「だが、俺の『ライズ』を貫くにはちーと足りねえな」


アーロニーロ「……!」



グラナ「ボチボチこっちも反撃させてもらうとするか……」グッ…


グラナ「よっ」ブンッ



ドォン!!!!!!!



アーロニーロ「がっ……!!?」メキメキ…


アーロニーロ(なんだ……これは……!!)


アーロニーロ(ただの拳圧で……)


アーロニーロ(“帰刃”形態の俺の『鋼皮』を……!)


アーロニーロ(く……そっ……!!)



ドガァァァン!!!!!!




アーロニーロ「がっ……あ……!」ズキズキ


バシュッ…!


アーロニーロ「!」


アーロニーロ(“帰刃”が……)


アーロニーロ「っぐ……!」ヨロッ


アーロニーロ「はぁ……」


アーロニーロ「まだだ……」


アーロニーロ「まだ……!」


グラナ「……」



グラナ「残念だ」


アーロニーロ「あ……?」フラッ


グラナ「ここ最近闘ったヤツらの中じゃ、多分お前が一番強いだろうからなァ」

グラナ「この闘いが終わっちまうのが残念でならねえ」


アーロニーロ「なめるなよ……」


アーロニーロ「オレはまだ……」


グラナ「やめとけ」

グラナ「俺の見立てじゃ、今の“形態変化”がお前の切り札ってトコだろう」


アーロニーロ「……!」


グラナ「それが無くなっちまった今、もうお前に勝ち目はない」


アーロニーロ「……」


グラナ「お前の敗けだ」



グラナ「つっても、万策尽きようが向かって来ようとするその気概は大したモンだ」


グラナ「お前が何者かは知らねえが……」


グラナ「嫌いじゃァないぜ、お前みたいなヤツはよ」


アーロニーロ「……」


グラナ「名残惜しいが……」


グラナ「あばよ」スゥッ…










ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!









アーロニーロ「……!」


アーロニーロ(なんだ……)


アーロニーロ(空を覆う“膜”が……裂けていく……)


アーロニーロ(……!)


アーロニーロ(マズい……)


アーロニーロ(太陽の……光が……!)


カッ!


アーロニーロ「!」


アーロニーロ(能力が……剥がれる……!)


アーロニーロ「うっ……!」


アーロニーロ「「ぐ……おおおおおおおおおおああああああああああッ!!!!!」」




アーロニーロ「「く……」」


シュゥゥ…!!


アーロニーロ(……!?)フラッ…


アーロニーロ(っぐ……!)


アーロニーロ(能力ガ剥ガレタダケジャアナイ……)

アーロニーロ(僕ノ、コレマデニ喰ッタ『珠』ノチカラモ消エテイク……!)


アーロニーロ(…………)


アーロニーロ(…………)


アーロニーロ(…………!)



アーロニーロ(そうか……)

アーロニーロ(そういうことかよ……)


アーロニーロ(皮肉ナモノダ……)

アーロニーロ(恐ラク、コノ『珠』ノ弱点ハ……)


アーロニーロ(……!!)ガクン


アーロニーロ(……っ)


アーロニーロ(…………)


アーロニーロ(限界……か……)



ドサッ…







グラナ「『日輪……』」ユラッ…










アーロニーロ(はっ……)


アーロニーロ(気のせいか、空が暗く感じるな……)










グラナ「“天墜”」












カッ!!!!








アーロニーロ(……オレも、ここまでか)

アーロニーロ(結局、何もできずに終わっちまった)


アーロニーロ(情ケナイモノダネ……)

アーロニーロ(『十刃』ガ、『破面』ガ、タカガ人間如キニ手モ足モ出ナイナンテ……)


アーロニーロ(悪いな、ウルキオラ)

アーロニーロ(俺じゃあもうお前を助けてやれねえ)


アーロニーロ(悪イネ、ルピ)

アーロニーロ(君カラ預カッタ“心”モ、ドウヤラ無駄ニナッテシマイソウダ)


アーロニーロ(…………)


アーロニーロ(…………)


アーロニーロ(…………)


アーロニーロ(くそっ……)




アーロニーロ(無念……だ……)










ドギャアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!










グラナ「……いい戦いだったぜ、『エスパーダ』」




グラナ「さーて、早いとこ『アストラル・ナーヴァ』に……」


ピタッ…


グラナ(あー……)

グラナ(念のためだ、今のヤツの生存確認だけはやっとくか……)


グラナ「……」ポゥ…


グラナ(“PSI”反応は……)


グラナ(…………)スッ


グラナ(完全に消えたな)


グラナ(しっかし空を開いたことは後々シャイナ辺りにうるさく言われそうだなァ……)

グラナ(何かしら言い訳を考えとかねえと……)


投下終了





エルモア「そうか……」

エルモア「やはり、お前さんたち二人は元の世界へ帰ることに決めたんじゃな?」


ゾマリ「はい」


エルモア「フム……うまく言えんが、ワシもそれがいいと思う」


カイル「寂しくなるなー……」

カイル「でもありがとな、兄ちゃんたちが抱えてること俺たちに話してくれて」


シャオ「今の話、ここにいない人たちには僕が後で伝えておきます」


リリネット「…………」



リリネット(……そう、あたしたちは07号との話が終わった後、“根”の人たちに全てを話すことにした)


リリネット(あたしたちの身に今まで起こったこと、『サイレン』のことを……)


リリネット(“ゲーム”のルールを破ることになっちゃうからホントは話しちゃダメなんだけど……)


リリネット(07号が、“根”にいる人たちにだけはあたしたちのことを話してもいいって言ってくれた)


リリネット(……でも、結局“あたしたちが過去を変えたら『この世界』はどうなるのか”ってことだけはどうしても言い出せなかった)


リリネット(それに、ハリベルとヤミーには“あのこと”も……)


リリネット(…………)



ペチッ!


リリネット「いたっ!」


フレデリカ「なーに辛気くさいカオしてんのよ」

フレデリカ「アンタらしくないわ、もうちょっとシャキッとしなさいシャキッと!」


リリネット「むむ……」


カイル「ははは」



ハリベル「お前たちの“ゲーム”が進めば、再びここへ訪れることになるのだろう」

ハリベル「また会える日を楽しみにしている」


ヤミー「お前らに限ってねえとは思うが、ヘマこいてくたばるんじゃあねえぞ?」


ゾマリ「ええ」


ヤミー「ま、お前はいいとして……」

ヤミー「心配なのはそっちのクソガキだな」チラッ


リリネット「だーかーらークソガキ言うな!」


ヤミー「へーへー」ホジホジ


リリネット「聞けっての!」



リリネット「とにかく、あたしたちは『現世』に戻って『ワイズ』のこととかいろいろ調べてくるから!」

リリネット「期待して待っててよね」


ハリベル「ああ」

ハリベル「無茶をするなとは言わないが、くれぐれもお前たち自身の命を粗末にすることがないようにな」


リリネット「うん」

リリネット「あたしたちは、あたしたちで出来る限りのことをするよ」


ゾマリ「……」


ゾマリ「さて、そろそろ行くとしましょうか」



エルモア「ふむ」

エルモア「いずれまた、力を合わせ闘える日が来ると良いな」


カイル「俺たちももっと修行して『ワイズ』の“星将”ってヤツらと真正面から闘えるくらいの力をつけるよ」


フレデリカ「とりあえず、私たちはせめてヤミーよりは強くならないと話にならないわね」


ヤミー「おい、そりゃどういう意味だ」


フレデリカ「フフン、言葉のとおりの意味よ」



カイル「よっし!」

カイル「じゃあまずは外に出て兄ちゃんたちが元の世界に戻る為の“公衆電話”を探さないとな」


マリー「わ、私も行きます!」

マリー「空から探したほうが見つけやすいと思いますし……」


シャオ「それでしたら、僕もついていきます」

シャオ「敵に見つかると厄介ですからね、周囲を索敵しながら進みましょう」


フレデリカ「じゃ、じゃあ私も……」


「ちょっと待ったーーーーー!!!!」



カイル「あっ」


ヴァン「なに勝手に話進めてるんですか!」

ヴァン「まーたボクだけこんな扱いにするつもりですか! 勝手ですな勝手ですな!」プンスカ


マリー「ご、ごめんヴァン君」

マリー「ヴァン君一回寝たらなかなか起きないから……」


ヴァン「もう! 声かけてくれれば起きましたよ! 多分ですけど!」


フレデリカ「さっきどれだけ揺すっても起きなかったくせによく言うわ……」


ヴァン「でもこんなに大事な時なんですよ! ひっぱたいてでも起こしてほしかったです!」


フレデリカ「そんな勝手なこと私に言われても困るわよ」


ギャーギャー!



カラカラ…


ゾマリ「!」


07号『……』


07号『前回の“スタート地点”から北北東へ数km進んだビル群の内部』

07号『“ゴール”はそこにある』


リリネット「……!」


07号『教えるのは今回だけだ』


ゾマリ「……お心遣いありがとうございます」ペコリ


07号『……』



07号『――リリネット』ボソッ


リリネット「……!」


07号『お前は――』


07号『……』


07号『お前は 孤独が怖いか?』


リリネット「え……?」


07号『……』



07号『お前は どこか私に似ている』


07号『……』


07号『お前たちを巻き込んだ私の言えたことではないが』


07号『お前も“繋がり”は大事にしろよ』


リリネット「!」


07号『“人”というものは――』


07号『誰しも“繋がって”いたいのだ』


リリネット「……」


07号『そうやって』


07号『“世界は繋がって”いくのだ』



――――――――
―――――


ザッ…


カイル「お、あったあった」


フレデリカ「あれが“ゴール”の公衆電話ね」


ゾマリ「お手数おかけして申し訳ありません」


シャオ「はは、このくらい喜んで」


マリー「わ、私たちが好きでやってるんですし、そんな頭を下げないでください」アセアセ


リリネット「みんな、元気でね」


ヴァン「はい、ゾマリさんもリリネットさんもお元気で!」







リリネット「……ねえ、ゾマリ」


ゾマリ「どうしました?」


リリネット「あたしたち、みんな揃って『虚圏』に帰れるといいね」


ゾマリ「……ええ」


ゾマリ「ハリベル殿も、ヤミー殿も、ウルキオラ殿も、ノイトラ殿も、そしてスターク殿も」


ゾマリ「全てが終われば、今一度皆が共に『虚圏』へ帰ることの出来る日が必ずや訪れることでしょう」


リリネット「!」

リリネット「自信、ありげだね」



ゾマリ「しかし、そのためには……」


リリネット「あたしたちが頑張らなきゃダメ!」


ゾマリ「……!」


リリネット「だよねっ」ニッ


ゾマリ「ふふ……」


ゾマリ「その通りです」








ゾマリ・ルルー カード残数『38』
リリネット・ジンジャーバック カード残数『44』





投下終了、今回はほぼ繋ぎ回なので短くて申し訳ありません



チョロチョロ…


カポーン…



三好「よく来たな、トラ」

三好「しかし珍しいモンだ、お前から俺に話ってのは」


影虎「……」


三好「で、何の用だい」


影虎「……」


三好「……どうした?」


影虎「オヤジさん……最近、何か俺に隠してることがありゃあしませんか」


三好「……!」



影虎「ここ数日、どうも組内の様子が妙でして……」


三好「……」


影虎「組全体に焦燥感……いや、殺気が漂ってると言った方がいいですかね」


三好「……そりゃあ、お前の気のせいだろう」


影虎「……オヤジさん」


三好「……」



影虎「……何があったんです」


三好「……」


影虎「俺にも言えねえことですか」


三好「……」


影虎「……」


影虎「……」ザッ


三好「!」


三好「お、おいトラ……!」

三好「なに頭なんか下げてるんだ……!」


影虎「……お願いします」


三好「わ、わかった、顔を上げてくれ」



三好「……言い辛いが」


三好「トラ……お前は今、命を狙われてる」


影虎「!!」


影虎「……どこの輩です」


三好「……『濁業會(だくごうかい)』」


影虎「『濁業會』……? あの組は姐さんの手によって完全に壊滅したはずでしょう……」


三好「そうだ……確かにお前とあのべっぴんピアニストの手によって組としての形は無くなった……」


三好「……はずだった」



三好「だが、つい先日この関東衆英会に一通の文が届いた」

三好「差出人は『濁業會』……“雹堂影虎を引き渡せ”とな」


影虎「……俺を引き渡せ、ですか」

影虎「しかし、わざわざ身元明かして送って来るってのは……」


三好「挑発の意図もあるとは思うが……」

三好「何があろうと、ケツ捲って逃げる気なんざさらさらねえって意思表示だろう」


影虎「オヤジさん……この件、どうして今まで黙ってたんです」


三好「……」


影虎「水臭ぇじゃないですか、俺にひとこと言ってくれれば……」


三好「……」


三好「お前には……例の金庫の金を奪われた件といい、ここいらは特に危険な橋を渡らせてばかりだ」

三好「これ以上、俺の勝手でお前に負担をかけさせたくは無かった……」



影虎「……これまでに何人やられたんです」

影虎「組内の様子から察しても、被害は一人や二人じゃあないでしょう……」


三好「……八人だ」

三好「いずれも闇討ち……しかし幸いにもまだ一人の死人もでちゃいねえ……」

三好「だが恐らく……」


影虎「これは奴らからの警告……」


三好「……」


影虎「……これ以上組に被害が及ばねえうちに俺が直接奴らを叩きます」


三好「駄目だ!!」


三好「奴らの目的はお前だ、タマ狙われてる奴がノコノコ出ていっちゃあそれこそ格好の餌食じゃねえか!」



影虎「だからこそ、俺が行かなけりゃならないんです」


三好「……!」


影虎「奴らの狙いは俺一人、なら尚のこと俺一人のために組に迷惑かけるわけにはいきやせん」

影虎「お願いします、この件は俺に預けちゃくれませんか……」


三好「……」


影虎「奴ら、どこにいるんです」

影虎「大方の目星はついてるんでしょう?」


三好「……今、外の動き見張らせてる連中によりゃあ、町はずれの廃工場が奴らのアジトでほぼ間違いないそうだ」


影虎「わかりました」



三好「トラ……」

三好「すまねえ……」


影虎「謝らんでくださいオヤジさん」

影虎「オヤジさんには今まで何度も世話になってきました、そのオヤジさんに謝られたら俺ァ何も言えなくなっちまう」


三好「……」


三好「何人か……つけたほうがいいか?」


影虎「いえ、俺一人で十分です」

影虎「俺をご所望ってこたぁ、連中も“普通の人間”じゃあないでしょう」


三好「……」

三好「……無事に、戻って来いよ」


影虎「かしこまりやした」



――――――――――
―――――



祭「はっはっは! そうか、私は死ぬのか」


祭「それに影虎とイアンも……」

祭「ったく、あの二人は本当にバカだな」


リリネット「もう、笑いごとじゃないってば!」


イアン「俺が死ぬだのなんだのと、物騒な言葉が聞こえるが何事だ?」ヌッ


リリネット「うわっ!」

リリネット「いつの間に……」


イアン「そんなに驚くほどのことでもないだろう」



イアン「お前たちに会うのは二度目だな」

イアン「やはり、見れば見るほど珍妙なナリをしている」


祭「……イアン」


イアン「わかってるさ、君が、君たちが何と闘ってるかは聞かない約束だ」

イアン「それに、アンタたち二人の素性に関してもな」


ゾマリ・リリネット「……」


イアン「ここは席を外させてもらうよ」


祭「すまない……お前にもいずれ話せる時が来る」


イアン「期待しておこう」ザッ


ギィィ… バタン



祭「しかし、凄まじい旅だったな二人とも」

祭「だが、色々なことが分かってきた……」


祭「謎の巨大隕石“ウロボロス”の衝突に、天戯弥勒と『ネメシスQ』の主を生み出した“グリゴリ”という組織……」

祭「そして……」


ゾマリ「“アマギミロク”への足掛かりとなるであろう『はるかぜ学園』……」


祭「ああ」

祭「そこから“グリゴリ”を辿れば、何か分かることがあるかもしれん」



ゾマリ「早速ですが、私たちはこれからその例の学園へ赴こうと考えています」


祭「ん、そうか」

祭「だが『はるかぜ学園』には私が行く、お前たち二人は少し休め」


リリネット「でも……」


祭「お前たちばかりに無理はさせられん」

祭「時には休息も必要だぞ」


リリネット「う……」


ゾマリ「……」



ゾマリ「マツリ殿」


祭「ん?」


ゾマリ「“宣戦の儀”が記録されている例の円盤は今何処に?」


祭「ああ、あのDVDか」

祭「確か、いつでも観ることが出来るようにとプレイヤーに入れっぱなしだったな……」


祭「新しい発見があるかもしれん、もう一度観ておくか」




ピッ!


ザザ…


ゾマリ「……」


リリネット「……」


祭「……」


祭「映らないな……故障ってわけじゃないと思うが……」

祭「一度プレイヤーから出してみるか……」ピッ


サー


祭「……!」ピタッ


リリネット「どうしたの?」



祭「消えている……」


リリネット「消えてる?」


祭「ああ、ディスクの表面に書かれていた『12/2 W.I.S.E』の文字がキレイさっぱり消えている」


ゾマリ「…………」


ゾマリ「……そういうことですか」


リリネット「え?」


ゾマリ「恐らく、消えているのは文字のみではなく映像もまた同じ……」

ゾマリ「先程映像が映らなかった理由も、十中八九、円盤内の記録が消失してしまったためでしょう」


リリネット「消えた……? どうして……?」


ゾマリ「単純に推測すれば……私たちが『あの世界』から帰還したことにより、“本来あるべき未来が今一度書き換えられた”と考えるのが妥当でしょう」


祭「だろうな」



祭「DVDの映像が消えているのも、未来が変わったと考えれば合点がいく」


リリネット「未来が変わった……」

リリネット「でも、それなら“映像が消える”んじゃなくて“映像が新しいものに変わる”んじゃないの?」


祭「ああ、こればっかりは分からんが……」


祭「これは“宣戦の儀”で撮影者が死んだのか、ただ単に撮影者が“宣戦の儀”に行かなかっただけなのか」

祭「それとも“宣戦の儀”そのものが無くなったのか……」


リリネット「……」


祭「何にせよ、これで私たちに分かる未来はなくなった」


祭「未来は再び先の見えぬ闇……」



ゾマリ「しかし……」

ゾマリ「これは裏を返せば、本来あるべき“絶望的な未来”が“不確定な未来”へ変わりつつある確たる証拠とも言えるでしょう」


リリネット「!」


祭「“ウロボロス”の地球衝突まであと約一年半……」

祭「今日から“宣戦の儀”に至るまでのこの闇を先に走り抜け勝つのは、私たちかそれとも『W.I.S.E』か……」


リリネット「…………」


祭「とはいえ、焦りは禁物だ」

祭「一つ一つ手掛かりを探っていくとしよう」


ゾマリ「はい」





祭「それじゃあ、私は外に出てくる」

祭「お前たちはゆっくり休むんだぞ」


リリネット「うん」


祭「ああ、もしかしたら何か急用でお前たちに連絡を入れることがあるかもしれん」

祭「一応、二人とも電話にはいつでも出られるようにしておいてくれ」


ゾマリ「わかりました」


祭「あと、何かあったらすぐに私に連絡をよこすようにな」


リリネット「気をつけてね」


祭「おう」


キィィ… バタン



祭「……さてと」ピッピッ


プルルルルルル…


祭「……」


ピッ


祭「!」


影虎『お久しぶりです姐さん! どうしました!?』



祭「おー、久しぶりだな影虎」

祭「電話越しで悪いが、少しお前に頼みがあるんだ」


影虎『え……? 姐さんが俺に頼み事……!?』


祭「ああ、お前の力を借りたい」


影虎『もちろん喜 ダダダダダダダ!! ガシャアン!!!』


祭「……?」


影虎『おっとすいやせん、どうやら電波が悪 ガシャァン!! パリィン!!』


祭「……影虎、お前今何やってるんだ?」


影虎『殴り込……あ、いや、く、草むしりってトコですかね』


影虎『っと ダダダダダダダダ!! ダァン! ブンッ!! パリィン!!』



祭「……後でかけ直したほうがいいか?」


影虎『いえ、一段落ついたので要件をどうぞ姐さん』


祭「数年前、『はるかぜ学園』という孤児院から消えた子どもの記録を調べてくれ」

祭「私もお前と一緒に行けたらいいんだが、別の場所に用事があってな……」


影虎『わかりました、「はるかぜ学園」ですね』

影虎『こっちの用事が済み次第すぐに向かいます』


祭「頼りにしてるぞ、影虎」


影虎『!!!』


影虎『姐さんのこの頼み、雹堂影虎……命に代えても必ず……!』


祭「あーわかったわかった、もう切るぞ」


影虎『へい!!』


ピッ



―――――――――
―――――


影虎「ふーっ……」

影虎「雑魚はあらかた片づけたが、肝心の頭がいねえとなると……」



ヒュッ



影虎「!」


影虎(風切り音……飛び道具か)タンッ


ドォン!!



「さすがは雹堂影虎……死角からの“指弾(フインガー・ボム)”を躱すとはね……」


影虎「今の攻撃、『サイキッカー』だな」

影虎「何者だお前は」


「悲しいねえ、ワタクシを忘れたのかい?」

「こっちはこれほどまでにあなたに会えるのを心待ちにしていたというのに……」


影虎「なに……?」


ザッ…


「ごきげんよう、雹堂サン」スッ


影虎「……!」


影虎「『濁業會』の名を聞いて少し頭にチラついてはいたが……」

影虎「やはりお前だったか、黒滝」


黒滝「フフ、どうやらちゃんと覚えていてくれたみたいですねえ」



影虎「なぜお前がこんなところにいる」

影虎「お前の稼業柄、あれだけの失態を犯して無事にいられるとは考えにくいが……」


黒滝「その通り」

黒滝「あなたと八雲祭のおかげでワタクシの『サイキッカー』としての信用は地に落ちた」


黒滝「大変だったさ、裏の世界じゃもうワタクシに仕事なんて回ってこない」

黒滝「おまけにワタクシの失態を追って胴元の“組織”まで動く始末……」


黒滝「追手を全員消して何とか逃れたのはいいものの、いざ表の世界で生きていこうとすれば再び“組織”に感づかれてしまう……」


黒滝「わかるかい……」


黒滝「あんたらのせいでこっちは散々だったんだよ!!!!!」


影虎「……」



黒滝「とはいえ、事実あなたたちに敗北するという失態を犯したのはワタクシ自身……」

黒滝「よって、あなたたちを責めるのはお門違いというもの……」


黒滝「そのように言いたげですね」


影虎「……」


黒滝「でも、そんなもの知ったことじゃありませんわ」


黒滝「ワタクシはね……」


黒滝「ずっと、ずっと、ずっと……!!」


黒滝「お前を殺したくて堪らなかった……!!!」


黒滝「お前だけじゃない! ここでお前を殺したら次はあの女、八雲祭を殺す!!!!」



黒滝「……」ハァハァ


黒滝「……フフ」

黒滝「ワタクシとしたことが、少し取り乱してしまいました……」


影虎「……意気込んでるところ悪いが、あの時のことを忘れたわけじゃねえだろう」

影虎「おまえのその“フインガーボム”とかいう『バースト』じゃ俺は倒せねえ」


黒滝「あら、まさかワタクシの“指弾”があの時のままとでもお思い?」


影虎「……」


黒滝「それに、あなたを殺すのが何もワタクシだとは言ってませんわ」


影虎「なに……?」



黒滝「さすがに、ワタクシ一人と少々の兵隊だけであなたとあの女を相手にするのは難しいものがある……」


影虎「……別の『サイキッカー』を雇ったのか」


黒滝「フン、いまさら人を、それも『サイキッカー』を雇う資金なんてあるもんかい」

黒滝「今回の計画に同行させることができたのも、元『濁業會』の残党だけ……」


影虎「……」


黒滝「た・だ・し」

黒滝「それとは別に、いい“拾い物”をしましてねえ……」


影虎「……“拾い物”だと?」



黒滝「ええ、少々傷モノなのが残念ですが……」


黒滝「この“拾い物”はワタクシが今まで見てきた中でも最高クラスの『サイキッカー』……」

黒滝「それこそ、こと戦闘能力においてはあなたや八雲祭より上かもしれませんよ」


影虎「…………」


影虎「俺はともかく、姐さん以上の『サイキッカー』なんざそうそういねえとは思うが」

影虎「てめえのハッタリってワケでもなさそうだな」


黒滝「フフフ……」


黒滝「ワタクシの言葉を聞くより、その身を持って味わったほうが早いでしょうね……」





黒滝「さあ、出てきな!」




黒滝「お前の出番だよ……!」










黒滝「グリムジョー……!!」













ザッ…









グリムジョー「ちっ……」


グリムジョー「いちいち上から指図するんじゃあねえよ……」ボソッ


投下終了




祭「おーっす! 帰ったぞー」


リリネット「おかえり、マツリ」


ゾマリ「どうです、「はるかぜ学園」には何か目ぼしい情報はありましたか?」


祭「あー、「はるかぜ学園」の調査は影虎に任せたんだ。だから今は連絡待ちってトコだな」


リリネット「あれ? じゃあマツリは今までどこに行って……?」


祭「例の“ウロボロス”についての情報を仕入れに行っていた。航空宇宙科学研究を専門にしてる『NASL』って施設にな」


リリネット「!」


祭「ま、色々聞くことができたよ。今から『NASL』で得た情報を簡潔に話すから聞いてくれ」



祭「まずは“ウロボロス”の特徴とその由来についてだ」


祭「どうやらあの施設の研究者界隈では“ウロボロス”は“意思を持つ隕石”とされているらしいんだ」


ゾマリ「“意思を持つ隕石”、ですか」


祭「ああ、まるで自我を持っているようにしか思えない動きをしていて、さらにその軌道が蛇のように見えることから“ウロボロス”と名付けられたと聞いた」


祭「問題はここからだ、その“ウロボロス”の大きさは推定で直径120km以上。そいつが約一年と四ヶ月後に地球に衝突する可能性が出てきたそうだ」


リリネット「それって……!」


祭「そう、これはお前たちが未来で聞いてきた世界崩壊の時期と一致している」


ゾマリ「…………」



祭「そして“ウロボロス”にはこれ以外にも別の特徴がある」


祭「“ウロボロス”は時折それ自身が発光して強い点滅を起こす。早くなったり、遅くなったり、ピカピカとまるで何かの信号のようにな」


祭「あの研究者は“その点滅が誰かに宛てたメッセージだったら面白い”と言っていたが……」


ゾマリ「地球への衝突時期の一致から見ても、その可能性は十分にあるかと」


ゾマリ「『ワイズ』や“アマギミロク”に宛てた信号であるのか、はたまた全く別の“何か”に対する信号なのか、判別はつきませんが」


祭「何にせよ、分かってはいたことだが“ウロボロス”が世界の崩壊の直接的な原因であることはまず間違いない」



ゾマリ「しかし、相手方の人間もそのような重大な情報を我々に口外してもよろしかったのでしょうか」


祭「実はな、この情報は正規に仕入れたものじゃないんだ」


リリネット「えっ?」


祭「『NASL』の研究員の一人が施設の機械のデータベースに入りこんで機密情報を持ち出してきてくれたんだ。いけ好かないヤツだったがな……」


リリネット「へええ……。どんなヒトだったの?」


祭「痩身で色素の薄い髪色をした男だ、見た目からして多分外国の人間だろうな。やたら上から目線で話すわ事あるごとに嫌味を言って来るわで嫌な男だったよ」


祭「でも、あの男がいなければこの情報は手に入らなかっただろうからな。感謝しておかないとダメか」


リリネット「あ、そういえばマツリはその人とは初めて会ったんだよね?」


祭「ああ」


リリネット「それなのにそんなことまでしてくれるって、実はそのヒトっていいヤツなんじゃない?」


祭「そう思いたいが、どうだろうな……」



ピリリリリリリリ!


リリネット「!」


祭「っと電話か、影虎からだな」ピッ


祭「どうだ影虎」


祭「ああ、ああ、そうか」


祭「“濁業會”ってあの時の……。それで、今は」


祭「そうか、一段落着いたのか。あー、じゃあつまりその男がお前に協力してくれたってワケだな」


祭「なに? その男がゾマリとリリネットのことを知ってる?」


リリネット「……!」


ゾマリ(カゲトラ殿の他にも向こう側に私たちを知る誰かが居るようですね)


祭「どうする、ゾマリに代わるか?」


祭「ん、ああ、わかった。それじゃゾマリ達には私の方から伝えておく。「はるかぜ学園」の方も頼むぞ」


祭「じゃあな、頼りにしてるよ、影虎」ピッ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom