ほむら「転校初日にすでに巴マミがマミってた」(277)

ほむら「何を言ってるかわからないと思うかもしれないけれどわたしにも何が起こったのかわからなかった」

ほむら「転校してくるのが遅かったとかもう何も恐くないとかそんなチャチなもんじゃ断じてないわ!」

ほむら「もっと恐ろしいモノの片鱗を垣間見たわ……」

ほむら「冗談はこのくらいにして……」

まどか「ほむらちゃん、マミさんと知り合いだったんだ……?」

ほむら「え、えぇ、一応ね。同じ魔法少女として、顔見知り程度ではあったわ」

さやか「マミさん……グスッ……」

ほむら(それにしても、何故この魔女がこんな早くに現れた……?)

シャル「グアアアアアア……」

ほむら「しぶといわね、これでトドメよ」カチッ

ポイポイポイッ カチッ

ドガドガドガァァァァン!!

ズドォォォォ……ン ドチャッ

ほむら「とりあえず、倒すには倒したけれど……」

qb「キミは一体……?」

ほむら「………」

さやか「て、転校生……マミさん、は……?」

ほむら「あなたも、まどかも、見ていたんでしょう?巴マミが首から上を食い千切られ、絶命する瞬間を」

さやか「っ……」

ほむら「来るのが遅かったわたしにも責はある……責めるなら責めてくれても構わない。それで美樹さんの気が済むのならね」

まどか「わたし……わたしが悪いんだっ……」

ほむら「まどか、自分を責めるのはやめなさい。今回の件は、誰も悪くない。強いて言うとすれば、来るのが遅かったわたしも、タイミングも、巴マミとこの魔女との相性が悪かった」

まどか「わたしっ……マミさんと約束してっ……この魔女を倒したら、わたしも魔法少女になってマミさんと一緒に戦うって……それで、それでマミさん、一気にトドメを差すって……!!」

ほむら「まどか、聞きなさい」

まどか「い、いやああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」ダッ

ほむら「あっ、まどか!!」

さやか「ヒック……マミさん……」

ほむら「っ……」(まどかを放っておくわけには……でも、美樹さやかの事も放っておけない。どうしたらっ……!!)

qb「暁美ほむら」

ほむら「っ!」

qb「美樹さやかの事は僕に任せるんだ。キミはとにかく、鹿目まどかを追うといい」

ほむら「キュゥべえ……?」

qb「放っておけないんだろう?」

ほむら(何をたくらんで……っ、いえ、考えている暇はない!!)

ほむら「美樹さんのこと、頼むわよキュゥべえ!」ダッ

qb「………」

気が向いた時にちょくちょく書いていく
一応おりキリ成分ありにする予定だからそれだけ注意
胸糞も……もしかしたら入るかも

期待wktk

さやか「ねぇ、キュゥべえ……マミさんは、どうなるの……?」

qb「………残念だけれど、魔女の結界の中で死んだ者は、結界が崩れれば一緒に消えてしまう。巴マミも、例外ではないよ」

さやか「そんな……それじゃ、マミさんの死は誰も知らないってことじゃん……」

qb「そういうこと、だね」

さやか「そんなの……あんまりじゃない……」

qb「魔法少女とは、そういうものだよさやか。願いを叶える代わりに、命がけの戦いを強いられる。マミも、それは納得していたはずだよ」

さやか「それでも……あまりにもあんまりだよ……」

qb「そういえば、今ここに現れた魔女。どうにも、妙だね」

さやか「妙って……どういう事……?」

qb「使い魔から成長したモノでも、呪いから生まれたモノでもなく、裸のグリーフシードから生まれたじゃないか。それはキミも見ていただろう?」

さやか「そ、そういえば……グリーフシードから生まれたってことは、どういうことになるの?」

qb「あまり考えたくはない事だけれど……誰かが、意図的にここにグリーフシードを設置したか、もしくは使用したグリーフシードをそのまま使い捨てたか」

さやか「つ、つまり?」

qb「いずれにしても、自然的に発生した魔女とは、考えにくいね」

さやか「誰かが……この魔女を、産まれさせたって、こと?」

qb「そう考えるのが一番自然なんじゃないかな」

さやか「でも、この街には他に魔法少女は……」

qb「………最近、契約した人がいるんだよ、さやか」

さやか「!」

qb「それも、二人。教えておくよ、さやか。彼女達の名前は―――」

ほむら「まどかっ!!」ガシッ

まどか「は、離してよほむらちゃんっ!!わた、わたし、わたしは、わたしがマミさんをっ……!!」

ほむら「あなたは悪くないの、悪くないのよっ!!」グイッ

まどか「っ!」

ジタバタとあばれるまどかを力任せに引き寄せ、その体を優しく、しかし強く、抱きしめた。

ほむら「大丈夫、大丈夫だからっ……!!」

まどか「う、うぅ……マミさん、マミさん……ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ほむらの胸に顔をうずめ、まどかは周囲の目もはばからず、大きな声を出して泣きだした。

ほむら「………落ち着いた、まどか?」

まどか「グスッ……うん」

ほむら「巴マミの事は……本当に、あなたが気に病む事はないの。不幸な偶然が、重なり合っただけだから」

まどか「わたし……怖いよ……ほむらちゃん」

ほむら「………」

まどか「あんなに強くって、カッコよくって、町のみんなの為に頑張ってたマミさんが、あんなにあっさりと死んじゃうなんて……」

ほむら「魔法少女って、そういうものよ。常に命がけの戦いと隣り合わせ。憧れてなるようなものじゃ、決してないわ」

まどか「ほむらちゃんは……どうして、そんなに淡泊なの……?」

ほむら「それは……」

まどか「人が一人、死んじゃったんだよ……?それなのに、ほむらちゃんは悲しくないの……?」

ほむら「悲しいに……決まってるわ」

まどか「っ……」

ほむら「でもね、まどか。わたしは、長い間魔法少女として生きて来たから。今日の巴マミのように、あっさりと魔女に殺された魔法少女だって、たくさん見て来た」

まどか「ほむらちゃんの中では……マミさんも、そのたくさんの中の一人に過ぎないんだね……」

ほむら「………………えぇ、そうね」

まどか「わたしは……そんな風に淡泊になることは、出来ないよ……」

ほむら「もしあなたが魔法少女になるような事があったら、そんなんじゃ生き抜く事なんて不可能よ?まどか」

まどか「………うん……」

ほむら「もう一度、聞かせてもらうわ、まどか。あなたは、家族や友人の事、大切だと思ってる?」

まどか「………」

ほむら「今の生活が、大事だと……思う?」

まどか「大事に、決まってるよ……わたし、家族も友達も、とっても大好きだもん……」

ほむら「……なら」

まどか「もちろん、マミさんも、ほむらちゃんも」

ほむら「っ!」

まどか「みんなみんな……すごく、大好きだもん……」

ほむら「まどか……」

まどか「………ごめん、ほむらちゃん。わたし、帰るね……」

ほむら「ま、待って!」

まどか「一緒にいてくれて、ありがとう、ほむらちゃん。少しだけ、落ち着いたよ」

ほむら「それはっ……」

まどか「心配しなくっても……魔法少女の契約は、もう少し慎重に考えるよ。今日のマミさんを見て……怖く、なっちゃったから……」

ほむら「…………っ」

まどか「とにかく、今は一人になりたいんだ。………ごめんね、ほむらちゃん」

ベンチから立ちあがり、力無くまどかは歩いて行く。

そんなまどかの後ろ姿を、ほむらは何故か引きとめる事が出来なかった。



―――翌日から、美樹さやかが行方不明となった

おやすみなさい

まどほむがあるかどうか
重要なのはそこだけだ



>>19
退廃的なまどほむなら入れようと思えば入れれる
続き書いてく

ほむら(美樹さやか……どこへ行ったの)

ほむら(あなたはまどかの親友なのでしょう?なら、まどかと一緒にいてあげて欲しいのに)

ほむら(それに、佐倉杏子がこの街に来ないのも気にかかる)

ほむら(いつもなら、巴マミが死んだ事を知ったらすぐにでもこの街へ来ていたというのに……)


ショッピングモール・地下―――

ほむら「……お菓子の魔女以外は、いつも通りの出現ね」

ゲルト「―――」

ほむら「悪いけれど、あなたに無駄な時間を掛けている暇はないの」カチッ ポイポイポイ

カチッ ドガドガドガアァァァン!!

ゲルト「―――……」ボロボロ ドチャッ

まどか「………あ、ほむらちゃん……」

ほむら「こんな夜遅くに出歩いて、どうしたの、まどか?」

まどか「さやかちゃん、あの日から行方不明で……わたし、さやかちゃんを探さないと……」

ほむら「それはいいけれど、もう夜も遅いわ。今日はもう家へ帰りなさい。ご両親も、心配しているんじゃないの?」

まどか「でも、さやかちゃんが……」

ほむら「美樹さんの事なら、わたしも探すから。だから、まどかは家へ帰りなさい」

まどか「……ほむらちゃん。さやかちゃんの事、見つけたらすぐにわたしに教えてね?」

ほむら「ええ、わかっているわ」

ほむら(とは言っても、美樹さやかの居所はわたしにも見当がつかない)

ほむら(あの日、キュゥべえに任せたのはやはり失敗だったかしら……)

ほむら(そのキュゥべえもあの日以来見掛けていないし)

ほむら(………ん?)

「ああ、ない、ない、ない……どこに行ったんだぁー!」

ほむら(………彼女は……)

「あれがなくちゃわたしは生きていけない!さよならわたし!」

ほむら「………呉キリカ」

キリカ「!」ぐるんっ

キリカ「………………誰?」

ほむら「これ……」

ヒュパァァン

キリカ「あああああ、よかった、よかった!もう離さない!」

ほむら「相変わらずみたいね」

キリカ「なんだかよくわからないけど、ありがとう!キミはわたしの恩人だ!」

ほむら「わたしにとってあなたは憎むべき敵だけれどね」

キリカ「? なんの……」

ほむら「これを見せればわかるでしょう?」

キリカ「ああ、そういうこと。なら」

ズアアアァァァァァァ………

キリカ「恩人だろうと、容赦しない」

ほむら「この時間軸でも、あなたたちは行動していたのね」

キリカ「何の事を言ってるのかわからないね。………達、だって?」

ほむら「ええ。あなたと、美国織莉子。よく知っているわ」

キリカ「へぇ……織莉子のことも知ってるんだね。なら、尚更容赦するわけにはいかないね!」ブンッ

ほむら「とりあえず、ここでまずはあなたを始末させてもらうわ」ジャコッ

「あははははははははは!見つけた、見つけたわよ!”黒い魔法少女”!!」

ほむら・キリカ「っ!?」

ダダダァン!

ほむら「くっ!?」タッ

キリカ「ふん」ギキィィンッ

「暁美さん!あなたは下がっていなさい!」スタン

ほむら「……!?あ、あなたは……」

マミ「この子は、わたしの得物よ」ダダダダン

キリカ「あれ、キミは確か……」

マミ「あら、覚えてくれていたみたいで何よりよ」ドドンッ

キリカ「へぇ!あの魔女はキミとは相性最悪だって聞いていたけど、よく生きてたね!?」ギキィン

マミ「お生憎様、わたしは一度死んでいるわ」シュルルルル

キリカ「……なんだって?」ズバズバッ

マミ「わたしはね、あなた達に復讐する為に死後の世界から舞い戻って来たの」チャキッ

ほむら(マスケット銃の他に、剣も!?ど、どういうことなの……あの時、巴マミは確かにお菓子の魔女に殺されたはずなのに!?)

キリカ「それはそれは、恐ろしい話だね。死人は死人らしく、そこらで倒れてなよ!」ヒュヒュン

まさかカズミのあの人ように……

上条ちゃんの腕は犠牲になったのだ…

まどか残してもどうせ恐怖で契約しないってのはほむほむ知らないから
さやかにqb任せてまどか選ぶのも仕方ないね




上条以外に願い使ったのか

マミ「へぇ、早いわねあなた」ガシャコ

キリカ「褒め言葉と受け取っておくよ」

マミ「いいわよ、トップスピードでわたしの方へ寄ってきなさい」

マミ「力の差を……教えてあげる」

キリカ「……」カチン

キリカ「教えてもらおうじゃないか……」

ほむら(っ……いけない!)「巴マミ!油断しないで!彼女の固有魔法は……」

キリカ「終わりだ、さあ散ね」

マミ「大丈夫よ、暁美さん」ジャコッ

マミ「今までのわたしとは、違うのだから」

ドドドドドドドドドドドドドン!!!

キリカ「っ!!?」

キリカ(く、避けるので精いっぱい……!?)サッ ヒュッ ヒラリ

マミ「まだまだ行くわよ!!」ズラララァァァ!

ほむら(単発式の銃のはずなのに、一丁の銃から何発も撃っている……それに、剣まで相手に投擲しているから、彼女の魔法を以てしても回避が精いっぱい……)

キリカ「ちっ、分が、悪そうだね!」ギキィィン ヒュヒュ ズザザァ

マミ「あら?そこに着地してよかったのかしら?」

ブワァァァァァ グルグルグル!

キリカ「なっ……!?」ドサァ

マミ「拘束完了……っと」

マミ「さて、あなたには聞きたい事があるわ。たくさん、たくさん、ね」ジャコッ

キリカ「……答える気はないね」

マミ「…………」ギロッ

ほむら「っ……」ゾクッ

ほむら(違う……彼女は巴マミなんかじゃない。少なくともわたしの知ってる巴マミは……巴さんは、あんな冷たい目をするはずがない)

キリカ「そんな目をしても無駄だよ。殺すなんて脅しもわたしには通用しない」

マミ「そうね……あなたには通用しないかもしれない。でも、あなたを大事に思う人はどうかしら?」

キリカ「? 何を……」

マミ「ふん」タンッ

ほむら「っ!」タンッ

ドドドドン!! モクモク……

マミ「来たわね……”白い魔法少女”」

ほむら「……美国織莉子」

織莉子「わたしの事、ご存じのようですね」

マミ「元々わたしはあなたに用があったの」

織莉子「ですが、わたしは貴女方とお話をする気はありません」

キリカ「………」

織莉子「キリカの命が掛かっているので」キッ

マミ「わたしの命はあっさりと捨て去るのに、その子の命は大事なのね?滑稽な破綻だわ」

織莉子「なんとでも言いなさい。いずれまた、会うでしょう」スタスタスタ

織莉子「時を彷徨う少女に、呪いの契約を結んだ少女」

ほむら(……呪いの契約を……)

マミ「………」

ほむら「どういうことなの、巴マミ」

マミ「………」

ほむら「あなた、彼女達に復讐しに来たと言っていたけれど……」

マミ「わたしが死んだ時の事、あなたも知っていたわね」

ほむら「……お菓子の魔女に、頭を食い千切られて……」

マミ「そうだったわね。あの時、あなたがもっと早くに来てくれていれば………」

ほむら「……っ!?」ゾクッ

マミ「いえ、それはただの逆恨みね。ごめんなさい」

ほむら(異質なまでの威圧感……)

マミ「話を戻すわ。あの魔女、美樹さんから聞いた話だけれど……グリーフシードから生まれたらしいのよ」

ほむら「そ、そうなの?」

マミ「そう。使い魔から育ったものでも、呪いから生まれたのでもなく、裸のグリーフシードから」

ほむら(………初耳ね)

マミ「キュゥべえから聞いた話だと、誰かが意図的に設置したか、もしくは使用したグリーフシードを使い捨てたか」

ほむら「確かに、そう考えるのが自然ね」

マミ「それで、先程”黒い魔法少女”が言っていたでしょう?あの魔女とわたしは、相性が最悪だと」

ほむら「ええ、それはわたしも知っているわ」

マミ「それが、ほとんど答えになっているようなものよ。つまり、わたしを……『巴マミ』を殺す為に、彼女達があのグリーフシードを設置した」

ほむら「……あの魔女は、あの二人の差し金だったと言う事?」

マミ「少なくともわたしはそう睨むわね」

ほむら「………それはそうと、いつまで魔法少女の姿のままでいるつもり?」

マミ「………」

ほむら「もう、彼女達は立ち去ったのよ。変身を解いたらどうかしら?」

マミ「ごめんなさい、それは出来ない。わたしがわたしであり続ける為に……」

ほむら「………」

マミ「彼女達は、あたしが必ず息の根を止める……邪魔立てすると言うのなら、例えあなたでも容赦しないわよ」

ほむら「心配しなくても、邪魔するつもりはない。彼女達の目的は、わたしにとっても忌むべきものだから」

マミ「そう、ならいいわ。また、どこかで会いましょう」タンッ

ほむら(………行方不明になった美樹さやかに、突如復活した巴マミ……)

ほむら(一体、何が起こっているの……?)

dグレクロスという可能性が思い浮かんだ



病ミさんこえー

うーん戦闘描写はやっぱり地の分いれなきゃ書いてる方も読んでる方もわかりづらいな
今後は適度に地の分入れてみる

それから数日の間は、平穏な日々―――と言えばいいのだろうか。

美国織莉子や呉キリカも姿を見せず、突如復活した巴マミも行動を起こしてはいないようだった。

ほむら(でも、このままでいるわけにはいかない……どう気楽に過ごそうが、一ヵ月後にはワルプルギスの夜が現れるのだから)

戦力を、確保しなければならないのだ。

今一番頼りに出来る戦力と言えば……やはり、佐倉杏子か。

美国織莉子や呉キリカが行動しているとなると、もしかしたら千歳ゆまも彼女達の策略にはまり契約しているかもしれない。

ほむら(そうだったなら、彼女も少しは丸くなっているかもしれない)

まあ、千歳ゆまに関してオトシマエを付ける為に美国織莉子の事を探している事はほぼ間違いないだろう。

この見滝原に、今、彼女はいるのだろうか。

いるとしたら………。

ほむら「……やはり、ここにいたのね」

商店街のゲームセンター、ダンスゲームの筺体に入れこんでいる佐倉杏子の姿があった。

その筺体の側では、やはり千歳ゆまが眼をキラキラさせながら軽やかに踊る佐倉杏子の事を眺めていた。

杏子「よっ……と!どうよ!」

筺体から流れる歌が止むと同時、杏子は得意げに千歳ゆまの方へ視線を移す。

ゆま「すごい!ぱーふぇくとだよ、キョーコ!」

杏子「ま、こんくらいはな」

ほむら「さすが、上手ね佐倉杏子」パチパチ

杏子「! ……誰だ、アンタ?」

ほむら「巴マミの知り合い……と言えばいいのかしらね」

杏子「マミの知り合い……?」

ほむら「彼女のこと、知っているかしら?」

杏子「あ、あぁ……」

ほむら「………魔女にやられた事、も?」

杏子「…………」

無言の肯定。

ゆま「巴マミさん?って誰、キョーコ?」

杏子「昔の……あたしの、師匠だよ」

ゆま「そ、そうだったんだ……」

ほむら「あなたの名前は、知らないわね。名前、教えて?」

ゆま「う、うん。ゆまは、千歳ゆまだよ」

ほむら「自己紹介が遅れたわね。わたしの名前は暁美ほむらよ。よろしく、二人とも」

ゆま「うん、よろしくほむらお姉ちゃん!」

ほむら「それで、佐倉さん……その様子じゃ、変わり果てた巴マミの事までは、知らないようね?」

杏子「変わり果てた?どういうことだ? ………っと、いや、なんでもねぇ」

ほむら「聞きたく、ないの?」

杏子「………あたしは、もうあいつとは関係ないからな」

千歳ゆまとの触れ合いで、少しは丸くなっているかもと期待したが……どうやら、当てが外れたようだ。

でも、彼女も知る権利はあるだろう」

ほむら「いいわ、あなたが聞きたくなくてもわたしがあなたに教えたいから」

杏子「………」

ほむら「と言っても、わたしにも何が何だかよくわかっていないというのが率直な所だけれどね」

そう前置いて、わたしが知り得ている事を話し始める。

ほむら「―――以上が、わたしが知り得ている事」

杏子「……美国織莉子………ゆまだけじゃ飽き足らず、マミの事まで………っ」

ゆま「き、キョーコっ?ゆまは、違うよ。ゆま、キョーコに死んでほしくなかったから、だから、だからっ……!」

杏子「いや、悪いゆま。お前は何も悪くないんだ、ごめんな」

ゆま「っ……」

不安から来る体の震えを抑えきれないというような表情で、ゆまは俯いていた。

そんなゆまの頭を、杏子は優しく撫でていた。

杏子「それで、なんで魔女にやられたはずのマミが生きて、行動を起こしているのか。それは、知らないんだったな」

ほむら「ええ。ただ、気になる事があると言えばある」

杏子「なんだ?頼む、教えてくれほむら」

ほむら「美樹さやか……学校の、わたしのクラスメートなのだけれど………その子が、マミが死亡したその次の日から行方不明となっているの」

杏子「……………」

ほむら「その子にも、魔法少女の素質があった」

杏子「………まぁ、単純に考えるならそいつがマミを生き返らせてくれー、とかそんな感じの願いをしたって所か?」

ほむら「それなら、まだわかると言えばわかるのだけれど……なら、なぜ行方をくらます必要がある?」

杏子「って、言われてもなぁ……」

ゆま「うーん……ゆまもよくわかんない」

やはり、見当が付かなかった。

美樹さやかが何かしたのは、間違いないと思うのだけれど………。

ほむら「そう言えば……キュゥべえも、ここ最近姿を見ないわね」

杏子「キュゥべえの野郎か……そういや、あたしも見てないな」

ほむら「…………」

私の存在が空気…

                   '"  ̄ ̄ ̄  '   、
          /⌒\ /              \/ ̄ ̄|
           |: .  ノ                  ‘:, . : |
         /|: : . /     | |    |         ∨ : /\
         // ∨:..| ,       | |    | |         ', 〈   \
       ⌒7  :/. : :| |    |  | 八    | | \  |     |: :゚, 〈⌒
.       ′ | : : :| |  __|_|_ノ \  |v\__|_  | |  |   '
       ;   |__;| |    |\|     \|    \|:. | | |_|    i
        | |  /:八| \ |;;::  ィ●ァ  ィ●ァ :::;;||  | |ノ∧     |
        | | :〈__人|   ゝ;;::          ::;;|| 八  人|   |
        |ノ|   | /゚ |   |;::     c{ っ   ::;||/ ムイ⌒|   八
.          八  /∨ :八  |;;::    __   ::;;;|  /  vヘ.| /
.            ∨     \|ヽ;;::   ー   ::;;/|/     ∨
                  \;;::    ::;;/

                     |;;::  ::;;|
                     |;;::  ::;;|
               / ̄ ̄ ̄      ̄ ̄ ̄\
               |;;::              ::;;|


杏子「そいつの事、気になんのか?」

ほむら「ええ……もう一人、魔法少女の素質を持った子がいるのだけれど……鹿目まどかと言う子だけれど。美樹さんは、まどかの親友だったから」

杏子「ふぅん……悪いけど、その、さやかって奴の捜索に協力は出来ねぇ。あたしは、美国織莉子を探さなきゃいけないからな」

ゆま「………」

ほむら「いえ、いいのよ。あなたには、知る権利があると思ったから話しただけ。それに、美国織莉子はわたしから見ても敵だから。もし、彼女と相対する事があったら、その時はよろしくね」

杏子「ああ、わかった。んじゃ、行くぞゆま」

ゆま「う、うんっ!」

杏子とゆまは二人並んで、ゲームセンターを後にする。

その後ろ姿を見送った後、わたしも引き続き美樹さやかの捜索を続けることにした。

まどかは今家に引き籠ってるよ
マミさん死んだ上に、さやかちゃんが行方不明だからね
更に病みマミさんのことも知らないから

>>53
またご飯が美味しいとか言ってるのか(語弊

―――まどかの自室

まどか「……………」

まどかは暗い部屋で一人、足を抱えてベッドの上に座り込んでいた。

まどか「マミさん……さやかちゃん………」

マミの死亡も、さやかの失踪も、まどかは自分のせいだと自身を責めていた。

まどか「わたし……怖いよっ……さやかちゃんっ……」

この場にいない、親友の名前を呟くまどか。

ほむらは自分を悪くないと言ってくれた。気休めで言ってくれたのか、本心からの言葉なのか、まどかには判別が付けられるはずもない。

こうして落ち込んでいる時、いつもは親友である美樹さやかが側にいてくれることがほとんどだった。

その親友も、マミの死と共に行方をくらましてしまった。

涙が浮かんできたのを感じたまどかは、膝に顔を埋める。

あの日から、一体どれだけの涙を流しただろうか。

冗談抜きで枯れてもおかしくないと思えるだけの量は、流れていったと思う。

まどか「………ほむらちゃん、今もさやかちゃんの事を探してくれてるのかな……」

ふと、ほむらの顔が脳裏をかすめた。

さやかが行方をくらましたばかりの頃は、まどかもさやかの姿を求めて街を練り歩いていた。

しかし今は、そんな気力もわいては来なかった。

元より、まどかは何の力も無い、ただの少女だったのだ。

心が折れてもおかしくないほどの負荷が、この短期間で圧し掛かってきた。

だから、折れた。それだけのことだ。

まどかの自室の窓が、コンコンと叩かれる。

まどか「………?」

その場から動く気の起きなかったまどかは、カーテンで仕切られた窓の方へ視線だけを移した。

月明かりに照らされて、窓を叩いた存在のシルエットがほのかに浮かび上がっていた。

まどか「……―――!!」

それを確認したまどかは、すぐさま窓へ飛びかかりカーテンを思い切り開けた。

尚も、コンコンと窓を叩くその姿。

見間違えるはずもない。まどかの親友、その人だった。

まどか「さやかちゃんっ!!」

鍵を開け、がらりと窓を開けながらまどかは親友の名を叫んだ。

さやか「あっはは、やっほまどか。………久しぶり」

まどか「どこに行ってたの!?わたしも、クラスのみんなも、さやかちゃんのお父さんお母さんも、心配してたんだよ!!」

さやか「ごめん、ごめん。ちょっと、ね。やらなきゃいけない事が出来たんだ」

まどか「や、やらなきゃいけないこと……?」

さやか「うん。とりあえずさ、そのやらなきゃいけない事が出来たばっかりの時にはもうそれしか考えられなかったけど、少し頭を冷やしたの」

まどか「………」

さやか「それで、あーそういやあたしの一番の親友になんも伝えてなかったなって気付いて。それで、こうして会いに来たってわけ」

まどか「やらなきゃいけない事って……なんなの?」

さやか「ごめんね、それは言えない。あたしの目的は、誰にも知られちゃいけない物だから。でも、まどかにはその事を伝えたかった」

まどか「さやかちゃん……それじゃ、そのやらなきゃいけない事が終わるまでは、帰ってこないってことなの……?」

さやか「まぁ、そういうことになるかな。あたしがいなくなって、まどかは寂しい思いをするかもしんないけど、さ。出来たら、応援していて欲しいかな」

まどか「当然だよっ!わたし、さやかちゃんの事、応援してる!!」

さやか「ん、ありがとまどか。あたしはいい親友を持ったもんだねぇ」

ある日突然火の能力に目覚めたい その能力で好き勝手やってたら悪の秘密組織にスカ ウトされたい そんで頑張って組織の幹部になって世界征服の作戦 を実行しようとした時に 突如魔法少女が現れて部下を倒されたい そして何度も失敗を繰り返してボスの信用もガタガ タになって最後には俺が戦う事になりたい でも結局負けたんだけど何故か俺にトドメをささな いので「貴様何故トドメをささない!」と聞きたい そしたら魔法少女が「だって悪そうな人に見えない から」とか言われて助かったけど 組織にも戻れずブラブラしてたら偶然魔法少女と次 の幹部の戦いに遭遇したい その戦いを見てたら魔法少女がやられそうになった のを見て つい体が勝手に動いて魔法少女を助けてしまいたい そしてその幹部に「この裏切り者め!」とか言われ てその場はなんとかなったんだけど強がりで 「これで借りは返したからな!」とか言いたい だけど魔法少女が「ほら、悪い人じゃなかった」と 笑顔で言ってきて続けて 「あの…一緒に戦いませんか…?」って言われたい というわけでお互いに助け合いながら最終決戦に挑 むが敵のナンバー2の強さに手も足も出せずにいたい そして敵の剣が魔法少女に刺さろうとしたのを俺が 庇って剣が俺の腹を貫いたけど 「この距離なら逃がさないぜ…喰らえ!ブラスト バーニングファイヤー!」とか言って敵を倒したい でも傷が深くて魔法少女が必死に回復魔法使ってる んだけど治らなくて 「今まで…ありがとう…」とか言って死にたい でも魔法少女の涙が俺の頬にかかったとき俺の体が 光って奇跡が起きて生き返りたい そして二人の力を一つにしてボスを倒し魔法少女と 結婚したい

さやか「とりあえずさ、見て欲しいモノがあるの」

まどか「何?」

さやか「ホラ、これ」

ポケットに手を突っ込み、中からある物を取り出してそれを手のひらにのっけるさやか。

そこにあったのは、青いソウルジェムだった。

まどか「そ、ソウルジェム……」

さやか「そ。あの日、契約したんだよね。それで手に入れた力で、あたしはやらないといけないことがあるの」

まどか「き、危険な事じゃないよね?」

さやか「あ、ええっと、それは……」

まどか「危険な事なら、一人で背負い込まないで……さやかちゃんまで死んじゃったら、わたし、もう立ち直れないよ……」

さやか「……ごめん、まどか。危険な事ではあるけど。大丈夫、あたしは死なないから。全部終わったら、帰ってくるから」

まどか「約束だよ、さやかちゃん……?」

さやか「ん、約束!」

さやか「それじゃね、まどか!行って来る!」

まどか「き、気をつけてねさやかちゃん!」

さやか「わかってるっ!さやかちゃんは不滅なのだー!」

まどかの家の屋根を思い切り蹴り抜き、さやかは夜の空へ飛んでいく。

その姿が見えなくなるまで、まどかは見守っていた。

―――工事中の建物

魔女結界の中に入り、魔女と戦っている魔法少女がいた。

影の魔女。その名の通り影のような姿をした魔女と相対しているのは、右手にマスケット銃と、左手に剣を構えた巴マミだった。

マミ「はっ!!」

剣先を魔女に突きつけると、そこから毒々しい模様の入ったリボンが二本出現する。

それは離れた場所で祈るような姿をしている魔女の元へ、一直線に伸びていく。

魔女の元へ辿りつく前に、複数の使い魔が地面から姿を現しそのリボンを蹴散らしていた。

マミ「まだまだっ!!」

今度は右手のマスケット銃の銃口を魔女の方へ向け、その引き金を引く。

単発式だったはずのマスケット銃は、以前と同様に一丁の銃からいくつもの魔弾を撃ち放っていた。

魔弾を受けた使い魔は、体がぼろぼろと崩れていく。

4円

全ての使い魔を片付けた事を確認したマミは、タンと地を蹴り大きく跳躍した。

左手に握った剣を空中で何かを描くように動かす。

と、魔法陣が姿を現した。その魔法陣の中から、ひと際大きな銃が姿を現す。

その銃を抱え、下方で佇んでいる魔女へ銃口を向けた。

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

レーザー砲のような攻撃が、魔女目掛けて飛んでいく。

魔女の背中から、太い樹が姿を現した。それはメキメキと成長し、マミの放った攻撃を真正面から受け止め、霧散する。

マミ「はぁぁっ!!」

クルンと空中で身を翻し、魔法陣で足場を形成すると、それを蹴り抜いて魔女へ急接近する。

太い樹が霧散したばかりで、魔女本体は無防備も同然であった。

左手に握った剣の射程距離まで近づくと、横一線に薙いだ。

魔女の体が、真っ二つに切り飛ばされた。

マミ「トドメよ!!」

更には、マミの後方に無数のマスケット銃が姿を現した。

マスケット銃のひとつひとつから高火力の魔弾がいくつも発射され、真っ二つになった魔女の体を粉々になるまで撃ち抜いた。

魔女が力尽き、魔女結界が崩れていく。

マミ「……ふん」

コロコロと足元に転がってきたグリーフシードを、無造作に拾い上げる。

「…………まさか、美国織莉子に会う前にあんたと会うとはな」

マミ「?」

ふと背後から声がしたマミは、振り返る。

そこにいたのは、佐倉杏子と千歳ゆまだった。

杏子「久しぶりじゃん、マミ」

ゆま「キョーコ。この人が、巴マミお姉ちゃん?」

杏子「ああ、そうだよ」

マミ「……………」

杏子「なんだよ、マミ。人の顔をジロジロと見て?」

マミ「……………いえ、ああ、そうだ。思い出したわ」

杏子「あぁ?」

マミ「わたしを見捨てて、隣町に逃げた魔法少女ね。今更、わたしに何の用?」

杏子「っ……言ってくれるじゃん」

ゆま「き、キョーコ……」

杏子「別にあんたにゃ用はねーよ。あたしは美国織莉子の事を探してるだけだ」

マミ「……美国、織莉子……」

杏子「そいつも魔法少女らしいし、魔女の気配がするところに来りゃ会えるかなと思って来ただけだ。自惚れんなよ」

マミ「そう。わたしに用がないのなら消えてくれない?不愉快よ」

杏子「………ほむらから話は聞いてるけどよ。ずいぶんと変わっちまったな、あんた」

マミ「あら、暁美さんからわたしの話を聞いているの?彼女がわたしの一体何を知っていると言うのかしら?」

杏子「………っ……一体何があったんだよ……マミさん……」

マミ「………」

杏子「あんたは、そんな人じゃなかったじゃないか……変わり果てたマミさんの事、見たくなかったよ……」

マミ「ワガママな人ね。あなただって、わたしの事なんて何も知らないくせに」

杏子「ああ、そうだよ!!なんも知らねぇさ!!知るまえに、あんたとは別れちまったからな!!」

マミ「うるさいわね。わたしの事を……『巴マミ』の事を見捨てた人になんて、理解されたくもないわ」

杏子「こ、この野郎っ……!!」

いらいらも我慢の限界に達した杏子が、マミに食ってかかろうとする。

ゆま「キョーコっ!ダメ、ダメェ!」

そんな杏子を、ゆまは叫びながら留める。

杏子「っ……ゆま……。……ごめんな、落ち着いたよ」

マミ「『巴マミ』を見捨てて何をやっているのかと思えば、今度は子供の面倒を見ているの?本当に呆れるわね」

杏子「うるせぇ……こいつは、ゆまはそこらのガキとは違うんだ。あたしが面倒を見てやらないと……ダメなんだよ」

ゆま「………」

マミ「美国織莉子を探している、と言ったわね」

杏子「………あぁ」

マミ「わたしの目的も、美国織莉子の殺害なのよね」

杏子「なぁ、マミ」

マミ「……」

杏子「ほむらから、聞いたぞ。あんた、魔女にやられたんじゃなかったのかよ?」

マミ「ええ、やられたわよ?」

杏子「なのに、なんで生きてるんだ?」

マミ「答える義務は無いわね」

杏子「……やっぱり……美樹さやかって奴が、関係してんのか?」

マミ「っ……」

僅かに怯んだマミの様子を、杏子は見逃さなかった。

杏子「そうなんだなっ?」

マミ「……こ、答える義務は、無いと言ったはずよ」

杏子「………」

マミ「これ以上、あなたと話す事はないわね。あたしは行くわよ」

杏子「……っ……」

何も喋らない杏子を一瞥したマミは、手に入れたグリーフシードを片手にその場を後にする。

杏子は、そんなマミを止める事が出来なかった。

今更ながら言っておくけど、>>40>>69でマミさんの一人称が「あたし」に変わってるのは誤字でなく仕様
まぁ、気付いてる人が大半だと思うけど、わからない人がいるかもしれないから何も言わず見守ってくれるとありがたい

―――美国の家

織莉子「……………」

幾許かの未来予知を終えた美国織莉子は、静かに目を開いた。

そして、一人の少女の名を呟く。

織莉子「………鹿目まどか」

彼女の魔法、未来予知で視えた、『世界を滅ぼす魔女』。

その正体を、ようやく突き止めた瞬間だった。

キリカ「そいつが、わたしたちの最終ターゲットなんだね」

巴マミとの戦いによって受けた傷を庇いながら、キリカは織莉子に問いかける。

織莉子「ええ。魔法少女狩りはとりあえず今日でお終い。明日……鹿目まどかの帰り道の途中で、ターゲットを強襲しましょう、キリカ」

キリカ「ああ、了解だ。わたしの方の準備も、ほぼ完了しているしね」

言いながら、キリカは自身のソウルジェムに視線を落とす。

どす黒く染まったそれは、今にも魔女を産み出しそうな状態だった。

真相に気付いてる人は多いけど元ネタに気付いてる人は少ないかもしれない

織莉子「………本当にいいの、キリカ?」

キリカ「はは、これで何度目かな、その質問は」

織莉子「だって、グリーフシードがここにあるのよ?あなたがそんな手段を使わなくっても……」

キリカ「織莉子だって知ってるじゃないか。わたしは、巴マミ一人にすら勝てなかった」

織莉子「……でも……っ」

キリカ「安心してよ、織莉子。約束しただろう?どんな姿になっても織莉子に尽くし、護るって」

織莉子「キリカ………っ」

キリカ「大丈夫。約束は、絶対に守るから」

織莉子「………」

キリカ「そんな、悲しい顔をしないでよ織莉子。織莉子がそんな悲しい顔をしてたら、わたしまで悲しくなる」

織莉子「絶対……絶対に、目的を果たすから……あなたのその想い、約束は、無駄にはしないから……」

キリカ「うん、そうしてくれるとわたしも嬉しいよ、織莉子」

翌日―――

約一週間ぶりに、まどかが登校して来ていた。

ほむら「まどか……もう、大丈夫なの?」

まどか「あ、ほむらちゃん。うん、もう大丈夫。ごめんね、心配掛けちゃって」

ほむら「いえ、それはいいのだけど……」

マミやさやかのことでふさぎ込んでいたまどかの事は、ほむらも知ってはいた。

掛ける言葉が見つからなかった為、一度だけ様子を確認した後は距離を置いていた。

そのまどかが、登校して来たのだ。喜ぶべきことのはずだ。

ほむら「まどか、今日は一緒に帰りましょうか」

まどか「うん、いいよ!」

不安要素がいくつかあったほむらは、心から喜ぶ事が出来なかった。

いつ、どこで美国織莉子が襲撃してくるかがわからない。

用心するに越した事は、ないはずだ。

そうして、放課後がやって来た。

まどか「ほむらちゃん、帰ろう!」

ほむら「ええ」

まどかの顔には、笑顔が戻っていた。

ほむらが、一番好きなまどかの顔。

ほむら(ずいぶんと久しぶりに、見た気がするわ……)

理由は分からないが、まどかに笑顔が戻った事はほむらにとっては素直に嬉しかった。

この笑顔を、守ろう。そう、改めて心に誓う。

学校を出て、校門へ向かう。

そこには佐倉杏子と、千歳ゆまの姿があった。

杏子「よう、ほむら。久しぶりだな」

ゆま「久しぶり、ほむらお姉ちゃん!」

ほむら「杏子に、ゆま……なぜ、ここに?」

杏子「アンタと、話したい事があってな。とりあえず……」

そこで杏子は、まどかの方に視線を移した。

杏子「こいつの事、紹介してくれよ」

まどか「え、あ、えっと……」

ほむら「ええ、いいわ。まどかにも紹介しておくわね。彼女は佐倉杏子。杏子の隣にいる小さい子は、千歳ゆま。彼女達も、魔法少女よ」

まどか「よ、よろしく、杏子ちゃん、ゆまちゃん」

ほむら「彼女は、鹿目まどか。クラスメートで、わたしの友達」

杏子「まどか、な。よろしく」

ゆま「よろしく、まどかお姉ちゃん!」

マスケットって片手だけじゃうてなくね

それはアニメ本編の時点で察して

杏子「魔法少女の事は、知ってるんだな」

まどか「う、うん。知ってるよ」

杏子『おい、ほむら』

ほむら「!」

まどかには聞こえないよう、杏子はテレパシーでほむらに話しかける。

杏子『あんたが一緒に行動してるっつーことは、こいつにも魔法少女の素質が?』

ほむら『……ええ、一応はね。でも、まどかは契約させないつもりよ』

杏子『ああ、それが一番いい。魔法少女なんて、ならなくて済むならそれに越したことはねーからな』

ほむら『………そう、ね』

杏子とゆまが合流し、四人での帰り道の途中。

魔法少女である三人は、魔女の気配を敏感に察知した。

杏子「!」

ほむら「……」

ゆま「こ、この気配って……やっぱり、そう、だよね?」

まどか「?」

三人は、歩いている道の先を見る。

住宅街の一角にある、空き地。

そこに、魔女結界が展開されたようだった。

ほむら「……まどか。魔女の気配がするわ」

まどか「ま、魔女……っ」

ほむら「危険だから、あなたは先に帰りなさい」

まどか「ま、待って三人とも!」

魔女の元へ向かおうとする三人を、まどかは呼びとめる。

まどか「わたしも、一緒に……!」

思わず握ったほむらの手に力を込めながら、まどかはそう言う。

ほむら「………っ……マミの事、忘れたの、まどか?」

まどか「っ!」

ほむら「あなたは一般人なのよ。魔女とは、関わり合いにはならない方がいい。それについて来たところで、足手まといにしかならない」

まどか「で、でも……でも……っ」

杏子「まぁまぁ、そうカリカリすんなよほむら。まどか、ほむらの言ってる事は間違っちゃいないぞ?」

まどか「………」

ゆま「だいじょーぶだよ、まどかお姉ちゃん!三人もいるんだもん、負けるわけないから!」

まどか「ゆまちゃん……」

ほむら「わかって、くれたかしら?」

まどか「……うん、わかった。先に帰ってるね……気をつけてねっ?」

ほむら「ええ、わかっている」

杏子「あたしらを舐めんなっての」

ゆま「行こう、キョーコ、ほむらお姉ちゃん!」

まどかをその場に置き、三人は魔女結界に向けて足を進めた。








織莉子「………」

その様子を。電柱の陰に隠れた美国織莉子が、静かに眺めていた。

魔女結界の中へ姿を消した三人を見送ったまどかは、空き地を通り過ぎて家へと向かう。

まどか「……………」

約一週間ぶりの登校だった。

さやかのこと、マミのこと、ほむらのこと。

様々な思いが、まどかの胸中に渦巻いていた。

「ごきげんよう……鹿目まどか」

ふと、後ろから声を掛けられた。

まどか「……?」

振り返った先にいたのは、まどかには見覚えのない人物。

それも、魔法少女のようだった。

まどか「……?えっと、誰……ですか?」

織莉子「わたしの事、ご存じないのですね」

言いながら、織莉子は一歩、また一歩とまどかへ向けて歩みを進める。

妙な威圧感を覚えたまどかは、それに呼応する形で後ずさりしていた。

織莉子「時を彷徨う少女と共に行動しているようでしたから、もしかしたら彼女の口から語られているかもと思っていたのですが……」

織莉子の周囲に、無数の水晶玉が姿を現した。

ふわふわと浮かぶそれと、織莉子自身が纏う独特の雰囲気も相まって、まどかの目には幻想的な姿に移る。

織莉子「随分と不用心なお方……」

閉じていた目を見開き、怯えた表情のまどかを正面から見据える。

そして右手を、まどかの方へかざす。その動きに従う形で、彼女の周囲に浮かんでいた水晶がまどかへ向けて撃ちだされた。

まどか「……え?」

高速で撃ちだされた水晶を眺めながら、まどかはここでようやく気が付いた。

今、自身の目の前にいる魔法少女に、明らかな殺意を向けられているということに。

そして撃ちだされた複数の水晶は、ひとつひとつが人一人の命を奪うには十分すぎる威力を備えたもの。

時間が、非常にゆっくりに感じられた。

自分の命を奪わんとする水晶が少しずつ向かってきている事も、頭の中ではしっかりと理解していた。

回避が敵わないと言うことも、同時に。

それを撃ちだした張本人の顔へ視線を移す。

温度の感じさせない、冷酷すぎる目。

その深奥に哀しみが宿っている事にまどかが気付く前に、無慈悲にも撃ちだされた水晶はまどかの元へ辿りついていた―――

魔女結界の中―――

ほむら(………見た事のない結界だわ)

結界の装飾を見まわしながら、ほむらはそう思った。

今まで幾度となく時間を巻き戻し、様々な魔女を見て来たが。

ほむらの記憶の中に、この結界と同じような結界を形成する魔女はいなかった。

杏子「どうした、ほむら?不思議そうな顔して」

ゆま「どこか痛いの?ゆま、治そうか?」

ほむら「いえ、ごめんなさい。なんでもないわ」

不審に思われたら、後々面倒だった。

結界の中枢を目指しながら、尚もほむらは周囲を見渡す。

どこかの宮殿のような建物の中のような結界だった。

宙には無作為に砕けた柱のようなモノがうかんでおり、滅びた城の中という表現が一番しっくりくるような結界。

似たような結界を、以前にも見た事があるかを思い出そうとする。

しかし、やはり思い当たる節は無かった。

結界の中枢へ辿りつく。

そこにいたのは、魔女でも使い魔でもなかった。

キリカ「遅いお出ましだね?」

ほむら「……呉……キリカ……!?」

力尽きた魔女の残骸が周囲に散りばめられていた。

その瓦礫の頂点、そこに呉キリカは両の手に鉤爪を携えて待ちかまえていた。

杏子「何モンだ、あんた?」

ゆま「……」

キリカ「自己紹介が遅れた。わたしの名は呉キリカ。見ての通り、魔法少女だ」

ほむら「………っ?」

おかしい、とほむらは異変に気付いた。

呉キリカは、美国織莉子と行動を共にしていたはずだ。

下校時のまどかを狙うのなら、二人がかりで確実な方法を取って来るはず。

しかし、この場にいるのは呉キリカ一人のみだ。

嫌な予感が、ほむらの胸中をよぎる。

キリカ「どうかしたかい、暁美ほむら?」

ほむら「……美国織莉子はどこ?呉キリカ」

杏子「!」

ゆま「……織莉子……?」

キリカ「さあ?ここにいるのはわたし一人だけだよ」

杏子「おい、キリカとか言ったな、あんた!美国織莉子の事、知ってんのか!?」

ゆま「っ……」

キリカ「さて?どうだろうね。知りたかったら、力ずくで聞いてみなよ」

杏子「上等だ……!行くぞ、ゆま、ほむら!!」

ゆま「うんっ!!」

ほむら「っ……ごめんなさい、二人とも!」

杏子「っ!?」

ゆま「ほ、ほむらお姉ちゃん?」

ほむらは杏子とゆまにひと言謝ると、時間停止の魔法を発動させようとする。

キリカ「っ!!」

その仕草を見てとったキリカは時間遅延の魔法の出力を最大にし、ほむらに急接近する。

キリカがほむらの腕に触れるのと、ほむらが時間停止の魔法を発動させたタイミングは、ほぼ同時だった。

ほむら「っ……!呉キリカ……!!」

キリカ「離さないよ、暁美ほむら」

右手でほむらの左腕を掴みながら、左手の鉤爪をほむら目掛けて横に薙ぎ払う。

ほむら「くそっ!!」

攻撃をギリギリのところで回避すると同時、時間停止の魔法を解除した。

杏子「っ!?あの野郎、どこに……!?」

ゆま「キョーコ!ほむらお姉ちゃんのところに!!」

杏子「い、いつの間に……って、ンな事言ってる場合じゃねぇ!!」

ゆま「ほむらお姉ちゃんを離せぇぇ!!」

キリカの背に向けて、ゆまは手に握ったハンマーを振りかざした。

キリカ「遅いっ!!」

それが振り抜かれるよりも早く、キリカはゆまの体を思い切り蹴飛ばした。

ゆま「うぐぅぅっ!!?」

年相応の重量であるゆまは、成す術も無く吹き飛ばされた。

杏子「ゆまっ!!大丈夫か!?」

杏子が、蹴り飛ばされたゆまの元へ駆けよる。

ゆま「ぐ……かはっ、げほ、げほっ!!」

大きくせき込み、口から少量の血が吐き出される。

杏子「ゆま……っ!」

ゆま「だ、だいじょ、ぶ……っ、げほ、ちょっと、口の中を切っただけ、だから……っ」

よろよろと立ちあがろうとするが、思うように体に力が入らなかったのだろう。

そのまま、前のめりに倒れ込む。

杏子「くそっ……てめえ!!」

とりあえずのゆまの無事を確認した杏子は、怒り心頭と言った様子で立ちあがる。

そして、ほむらの腕を掴みながら戦っているキリカの方へ向き直った。

キリカ「ふん、時間停止っていう強力な魔法も、こうして腕を掴んでやれば無力だね!!」

左腕の鉤爪を振るいながら、キリカは嘲る。

ほむらの体にも、決して浅くはない切り傷が無数に出来ていた。

ほむら「っ……これならどうっ!?」

右腕の盾の中から手榴弾を取り出し、そのピンを引き抜くとポイと投げ出した。

ほむら(さあ、離せ呉キリカ……!離した瞬間に、わたしは時間停止の魔法を発動させる!!)

キリカ「……」

しかし、キリカはほむらの腕を離す素振りを見せなかった。

ほむら「……っ!!!」

ほむらとキリカを中心にして、手榴弾が爆発する。

爆発によって巻き起こされた砂塵によって、二人の姿が掻き消された。

杏子「ほ、ほむらっ!!?」

砂塵が、少しずつ引いていく。

その場に立っていたのは、爆発によってボロボロとなったキリカ一人だけだった。

杏子「ど、どこに行った、ほむらの奴……!?」

キリカ「…………ちっ、逃げられた、か」

爆発で気が逸らされた一瞬の隙をついて、ほむらはキリカの右腕を力ずくで引き剥がした。

そして、キリカ同様ボロボロとなった自身の体の事は気に留めずに、時間停止の魔法を発動させてその場を後にしたのだった。




まどか状況的に詰んでる気がするけど大丈夫なのだろうか

市街地の一角―――

織莉子「………」

まどかへ向けて発射した無数の水晶玉が炸裂し、まどかの姿を砂煙で覆い隠した。

全弾命中。織莉子はそう確信していた。

織莉子「キリカ……」

目の前の標的から、魔女結界の中にいるであろう呉キリカに意識を向ける。

と、次の瞬間、織莉子は大きく背後に跳び退いた。

それと同時、織莉子が今の今まで立っていた地面に、三本の剣が降り注ぐ。

織莉子「っ……!」

剣の着弾から少しの間を置いて、その場に一人の魔法少女が姿を現した。

織莉子「ひと足、遅かったですね」

砂煙が辺りに散漫している為、その姿を明確に捉える事は出来なかったが。

織莉子はその場に降り立った魔法少女が誰なのか、すぐに理解していた。

「遅かった?何のことかしら」

周囲にリボンが現れ、砂煙を吹き飛ばして行く。

その場に姿を現したのは、巴マミだった。

織莉子「鹿目まどかなら、たった今わたしが息の根を止めたところです」

マミ「………あなたの目は、節穴かしら?」

織莉子「……何……?」

マミの挑発するような言葉を受けて、織莉子はマミの後方へ意識を向けた。

砂煙が引いて行く。

マミの後方。そこにいたのは、無数のリボンが絡まり合ってまどかを守っている光景だった。

まどか「あ、あれ……わ、わたし、生きてるの……?」

織莉子「っ……!!」

マミ「ひと足遅かった、はね、美国織莉子さん。わたしのセリフよ?」

にこりと挑発的な笑みを浮かべ、マスケット銃の銃口を織莉子へ向ける。

まどか「……ま、マミ、さん……っ!?」

まどかが、信じられないというような声を発する。

それもそのはずだった。

今、まどかの目の前にいる魔法少女は。

あの日、魔女に頭を食い千切られ、絶命したと思っていた巴マミその人だったから。

マミ「久しぶりね、鹿目さん。元気だった?」

肩越しにまどかの顔を見て、マミは優しい笑顔を見せた。

マミ「わたしが来たからにはもう大丈夫。あなたは、死なせないわ」

織莉子「っ……してやられた……」

目的を達したと、そう思っていた。

織莉子の邪魔をする魔法少女は、三人ともすぐそこの魔女結界の中へ誘導させて。

更には、呉キリカという大きな犠牲を払った上での目的達成。

巴マミさえいなければ、間違いなく果たせていたはずだったのに。

マミ「悔しそうね、美国さん?」

織莉子「どこまでも、わたしの邪魔をするんですね……巴マミ!!」

再度複数の水晶を召喚し、マミへ向けて放つ。

その全てを、マミは手に持った一丁のマスケット銃で撃ち落としていた。

マミ「邪魔をする、ね。当然でしょう?」

織莉子「………っ!!」

マミ「『巴マミ』を始末したと思い込んでいたあなたの、慢心が産んだ結果よ、これは」

マミ「それにわたしだけじゃ飽き足らず、鹿目さんの命まで狙うなんてね。邪魔されないとでも思っていたのかしら?」

織莉子「……わたしは元々、あなたの命を奪うつもりは無かった。ただ、あなたの後ろに居る少女さえ始末出来れば……」

織莉子のその言葉を聞いたマミのこめかみが、ぴくりと動く。

織莉子「識っている?今貴女が守っているその少女はね。世界を滅ぼす魔女と成るのよ」

まどか「……え……?」

織莉子「全世界の命と、たった一人の少女。どちらが重いか、わからない貴女では無いでしょう?」

マミ「………」

織莉子「理解出来たのなら道を開けなさい、呪いの契約を結んだ少女。わたしは、貴女には用は無い」

マミ「あなたがわたしに用が無くてもね……」

開いている左手に、剣を出現させる。

マミ「あたしは、あんたに用があるのよ」

マミ「わたしの後輩となってくれると約束した子の命を狙うというのが、どれほどまでに罪深いものか。教えてあげるわ!!」

ダァン、と大きな音を立て、マミは地を蹴った。

その反動で、織莉子へ接近する。

織莉子「道を開けろと言った!!」

対する織莉子は、更に水晶を召喚し、それを操ってマミに攻撃を仕掛ける。

無数の水晶は不規則な動きを見せ、マミを撹乱する。

マミ「甘いっ!!」

その動きを冷静に見極め、自身の体へぶつかってこようとする水晶をマスケット銃と剣で地に叩き落として行く。

その間も足を止めることは無く、徐々に織莉子とマミの距離が縮まって行く。

織莉子「くぅっ!!」

攻撃が当たらない事を理解した織莉子は、その場からの撤退を心に決める。

その為には、魔女結界の中で今も戦っているキリカを連れて来る必要があった。

肩越しに、魔女結界の様子を確認する。その中から、一人の魔法少女が出てきていた。

ほむら「まどかっ!!」

織莉子「っ……そ、そんな……!?」



このスレの事、本気で忘れてた
明日の夜にまた書くから許して

おk

まどか「ほ、ほむらちゃんっ!!」

ほむら「やはり、美国織莉子……!!」

織莉子「くっ……」

織莉子を挟む形で、ほむらとマミが立ちはだかる。

マミ「逃げ場はないわよ、美国さん?」

ほむら「………」

織莉子「まだ、わたしは……っ!!」

不意に織莉子は、ほむらの方へ向けて駆けだす。

ほむら「っ!!」

織莉子の動きを見たほむらが、盾の中から拳銃を取り出した。

そして銃口を向かって来る織莉子の胸元、ソウルジェムへ向け……

ほむら「うぐっ!?」

拳銃を、地に落とした。

キリカ「織莉子っ!!」

織莉子「キリカ!!」

スロウ魔法で魔女結界の崩壊を食い止めていたキリカが、その魔法を解除したのだろう。

力尽きた魔女が形成していた結界は容易く崩壊し、その場にはキリカ、杏子、ゆまが姿を現していた。

ほむらの向こうに織莉子の姿を確認したキリカは、ほむらの左手に握られていた拳銃を叩き落としつつ織莉子の元へ駆けよっていた。

ほむら「っ……呉、キリカぁ………っ!!」

ボタボタと血が流れる左腕を右腕で抑えながら、ほむらは忌々しげに自身に攻撃を繰り出した少女の名を呟く。

ゆま「ほむらお姉ちゃん、大丈夫っ……?」

先程キリカに蹴られた腹を押さえながら、ゆっくりとゆまはほむらの元へ歩み寄る。

杏子「これで、舞台は整ったってわけだな……」

ブンブンと二、三、手に持った槍を振り回した後、その切っ先を織莉子とキリカへ向ける杏子。

織莉子とキリカの更に向こうには、マミが立ちはだかっている。

そして、ほむらとゆまは戦闘続行が厳しい状況。

マミ「………あなたと、こうしてまた一緒に戦う日が来るなんてね」

杏子「うるせぇ。別に望んでこういう状況になったわけじゃないだろ」

キリカ「………織莉子」

織莉子「何、キリカ……?」

キリカ「そろそろ、終わりが近いよ」

織莉子「……!」

不意に、その場に新たな魔女結界が形成された。

その場にいた全員が、魔女結界へと取り込まれる。

まどか「なっ、なに!?」

ほむら「この、結界……は……っ!」

ゆま「え、え……?」

杏子「…………」

マミ「…………」

キリカ「覚悟は、いいかい?」

三本の鉤爪を五本に増やしたキリカが、その手を杏子へ向ける。

杏子「あたしの相手はあんたってわけか。やってやろうじゃん」

低い体勢を維持しながら、杏子は自信たっぷりにそう言い放つ。

織莉子「………」

マミ「ということは、わたしの相手はあなたと言うことね、美国さん?」

マスケット銃の銃口を織莉子へ向けながら、マミは冷静にそう告げた。

ほむら「っ……気をつけて、二人とも!彼女達は手ごわいわよ!!」

杏子「わかってる!!行くぞ、呉キリカ!!」

キリカ「上等!!」

織莉子「………ごめんなさい、キリカ!!」

キリカ「―――え?」

その場に形成された魔女結界が、静かに消え去って行く。

キリカの背についたソウルジェム。

そこに、織莉子は手持ちのグリーフシードを当てていた。

キリカ「お、織莉子……?」

織莉子「………この場は、退きましょう!!」

何が起きたのかわからないキリカを抱き上げると、織莉子は地を蹴り跳び上がった。

杏子「あ、おいっ!?」

その動きは予測していなかった杏子が、跳び上がった織莉子の事を見上げていた。

そして、マミは。

マミ「逃がすと思うの?」

織莉子の動きを完全に読み切り、同じように跳び上がり織莉子のことを追い掛けていた。

マミ「はぁっ!!」

左手で持っていた剣を織莉子の首をはねる太刀筋で薙ぐ。

キリカ「っ、そうは!!」

織莉子の命が危ない事を直感で感じ取ったキリカが、その剣を鉤爪で受け止める。

織莉子「このっ……!!」

二つの水晶を召喚し、左右からマミを挟撃しようとする。

マミ「効かないわよ!!」

その水晶を両方とも地へ向けて叩き落とした。

その隙をついて。

キリカ「そこだっ!!」

右下から左上への軌道を描くようにして鉤爪を繰り出した。

マミ「っ、しま……!!」

キリカの攻撃を紙一重で回避したマミではあったが、完全回避はならず。

頭の髪止めとなっていたソウルジェムが、弾き飛ばされた。


ソウルジェム弾き飛ばされたって事は……

はよ

訳あってしばらく書けなくなった
深夜って何ヶ月でスレ落ちるんだろうか
即興でこっちでダラダラ書こうと思ってたけど、書き溜めて速報の方に改めてスレ立てるかも

1ヶ月以上は持つけどどこまで持つかは知らない

良い所で…

はよ

おお、残ってた
またちまちま更新しようと思う、遅くなってすまんな
速報よりも深夜の方がスレは長生きなんだな

ガタッ

マミ「………っ!!!」

髪留めが弾き飛ばされ、魔法少女の変身が解ける瞬間。

彼女は地にいくつかの魔弾を放ち、辺りに砂煙をまき散らした。

杏子「っ、けほ、けほっ!?」

ほむら「………っ!!」

その砂煙の中に飛び込み、弾き飛ばされたソウルジェムを回収する。

そうして、彼女は自身の姿を目撃されまいとその場からの撤退を決め込んだ。

まどか「ま、マミさんっ!」

「っ……ごめん……」

まどか「……え……?」

それだけ言い残すと、彼女は織莉子やキリカが飛んでいった方向とは別方向へ向かって行った。

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

ほむら「………」

砂煙の隙間から、ほむらはかすかに彼女の姿を見て取れた。

ほむら(よく見えなかったけれど……見間違うはずが、ない)

突如復活した巴マミ、その正体。

それを、ほむらは理解した。

杏子「ちっ、逃がしたか……」

ゆま「キョーコ、大丈夫……?」

杏子「ん、ああ。あたしなら大丈夫だ。先にほむらの腕、治してやってくれ」

ゆま「う、うん」

自身の傷を癒したゆまが、とてとてとほむらの元へ駆けよる。

ゆま「ほむらお姉ちゃん。左腕、出して」

ほむら「……えぇ」

ゆまに促されるまま、ほむらは左腕をゆまに預ける。

まどか「ほ、ほむらちゃん……どうして、マミさんが……?」

ほむら「……それ、は……」

杏子「なんだ、お前は知らなかったのか。まあ、そう言うあたしもなんだかよくわかってねえってのが正直なところなんだけどな」

まどか「どういうことなの?」

杏子「あんたが一番知ってる奴が、マミの為に祈りを捧げたんじゃねーのかってのがあたし達の見解だ」

まどか「わたしが一番知ってる……って……もしかして、さやかちゃん?」

ほむら「………ええ、そうよ、まどか」

ゆま「はい、ほむらお姉ちゃん。腕、治ったよ」

ほむら「ありがとう、ゆまちゃん」

左腕を持ち上げ、ゆまの頭をなでてやる。

ゆま「えへへ……」

まどか「さやかちゃんが、マミさんを生き返らせる為に……?」

ほむら「………」

杏子「そうじゃないか、って思ってるだけだ。その、さやかっつったか?そいつの行方は相変わらずわかんねえし、確かめる方法はマミをとっ捕まえて問いただすしかないと思うけどな」

まどか「さやかちゃん……」

ほむら「彼女の事、心配?」

まどか「うん……さやかちゃん、やる事があるからって……」

ほむら「? まどか、あなたあの日以降さやかと会った事があるの?」

まどか「昨日の夜なんだけど……さやかちゃん、わたしの家に来たの。それで、その時に色々話をしてくれて……」

ほむら「彼女、何て言っていたの?」

まどか「さやかちゃん、魔法少女になっちゃってるの。それで、その力でやる事があるって……」

ほむら(……美樹さやかのやること……ね)

杏子「なんだかよくわかんねぇけど……そいつにやることがあるってんなら、今は放っておいてやった方がいいんじゃねーの?」

まどか「わたしも、そのつもりなんだけど……マミさんと関係あるのはほぼ間違いないんだよね?」

ほむら「そう、ね。わたしも詳しくはわからないけれど、それは間違いないと思うわ」

杏子「なんだってんだか……」

ゆま「ねえ、キョーコ。ゆまは、織莉子は悪い人じゃないと思うの」

杏子「ゆま?」

ゆま「だって、織莉子は、キョーコが危ないって事をゆまに教えてくれたの。そうしてくれてなかったら、ゆまはキョーコを助けることは出来なかったんだよ?」

杏子「……それはわかってるつもりだ。けどな、現にあいつら、あたしと戦う気マンマンだったんだぞ?」

ゆま「き、きっと何かジジョーがあるんだよ!ね?戦いだけで解決するのは、ダメだよ……」

杏子「あたしは、何も織莉子の息の根を止めるつもりはないんだよ。ただ、お前を唆した真意を問いただしたいだけだ。でも、あいつらの方には話し合うつもりがない。わかるだろ、ゆま?」

ゆま「ゆま、織莉子とちゃんと話してみる……きっと、キョーコが納得する理由があったはずだよ」

杏子「……あいつにその気があれば、な」

ゆまの頭に手を置き、ナデナデと撫でてやる。

ほむら(彼女達の目的……巴マミの正体……)

いくつか、心を落ち着かせて考えたかった。

杏子「とりあえず、あたし達は帰る。あいつらも逃げちまったし、マミもどっかに行っちまったしな」

ほむら「ええ……ごめんなさい、佐倉さん」

杏子「どうしてお前が謝るんだよ?」

ほむら「………っ……」

杏子「……話しにくいことだってんなら、聞かないけどさ。ゆま、帰るぞ。あいつら……織莉子とキリカとは、またはち合わせる事もあるだろ」

ゆま「うん、キョーコ」

ほむら「気をつけてね、佐倉さん。もしかしたら、またあなたの所に姿を現すことがあるかもしれないから」

杏子「わかってる。んじゃな、ほむら」

軽く挨拶を交わすと、杏子はゆまと共に歩き去っていく。

支援支援支援支援支援支援支援支援


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まどか「ほむらちゃん、大丈夫?」

ほむら「心配には及ばないわ、まどか」

すっかり傷の癒えた左腕を何度か開いては握りを繰り返し、立ち上がる。

まどか「マミさんとさやかちゃん、どうしてわたし達の前に出てこないのかな……」

ほむら「………」

先程、砂煙の隙間から見えた、現在の巴マミの正体。

それを知ってしまったほむらは、閉口するしかなかった。

乙~!


前回、なんとなく予想してた内容で確定したようで。

やっぱし、生~~~って願い事は容易じゃないって事ですな。

―――美国の家

キリカ「どういうこと、織莉子?」

織莉子「………ごめんなさい」

先程から、何度同じ問答が繰り返されただろうか。

あの場で決着をつけるつもりだと、キリカは思っていた。

その為の用意―――キリカのソウルジェムの限界も、済んでいたのに。

織莉子は突然キリカのソウルジェムに手持ちのグリーフシードを使用し、キリカの魔女化を回避したのだった。

キリカ「あのまま、あそこで戦っていたら……負けていた?そのビジョンが視えたのかい?」

織莉子「………」

キリカの問い掛けに、織莉子はひとつも答えない。

ただ俯き、叱責されている子供のようにしおらしくしているだけだった。

キリカ「黙っていちゃ、何もわからないよ織莉子」

織莉子「………っ」

キリカ「何も、わたしは怒っているわけじゃないんだ。ただ、あの場での戦闘を回避した真意を聞きたいだけ」

織莉子「わかってるわ……本当に、ごめんなさい」

何度目かの謝罪の言葉を口にする。

キリカ「これで、またしばらくは襲撃を掛けられなくなっちゃったね」

手の中のソウルジェムに視線を落とし、何の感慨もなくキリカはそう告げる。

織莉子「わたしは……あなたがいなくなっちゃったら、わたしはどうしたらいいの?」

キリカ「……それは……」

織莉子「あなたのソウルジェムが結界を形成した時、そんな疑問が心に広がって……怖くなってしまって」

キリカ「織莉子」

織莉子「っ……」

真面目な顔を織莉子に向け、キリカは神妙な口調で話し始める。

キリカ「わたし達には、成さなきゃならないことがある。そうだよね?」

織莉子「ええ……」

キリカ「そして、それを成す為には今のわたしでは力不足。織莉子はどう思っているのかはわからないけれど、少なくともわたしはそうだと思う」

織莉子「………」

キリカ「なら、わたしが織莉子が成すことに力を貸そうと思ったら、残された手段はひとつしかないと思うんだ」

織莉子「でもっ、それじゃあなたはっ……!」

キリカ「そうだね。もう、織莉子とこうしてお茶を飲むことは出来なくなっちゃうね」

テーブルに置かれたカップを手に取り、紅茶をひと口、口に含む。

織莉子「キリカ……今のわたしには、もうあなたしかいないの。あなたがわたしの側にいない生活なんて、考えられない」

キリカ「それは、わたしも同じだよ織莉子。わたしには織莉子さえいてくれれば、他には何もいらない。絶望だろうと、虚無だろうと、受け入れて見せるよ」

織莉子「違うの、そうじゃないのよ」

キリカ「……?」

織莉子「あなたを犠牲にして、救世を成し遂げて、それからわたしは一体なにをすればいい?」

キリカ「………」

織莉子「わたしがしたいことは……あなたと一緒に、救世を成し終えた世界を見届けること。それが唯一であり、総てなの」

キリカ「……織莉子がそれを求めるのなら、わたしはそれに力を貸すだけだね」

織莉子「……我がままで、自分勝手で、ごめんね……キリカ」

キリカ「そんなこと、思ってなんていないよ。織莉子がそう思ってくれて、嬉しい」

椅子から立ち上がり、キリカは織莉子の側へ歩み寄る。

キリカ「もう一度、作戦を考えよう、織莉子?絶対にうまく行くようにさ」

織莉子「ありがとう……ありがとう、キリカっ……」

差し伸べられた右手を両手で包み込むように取り、そこに顔を埋める。

―――廃工場

さやか「はぁっ……はぁっ……!!」

乱れた呼吸を必死に整えようとしながら、手持ちのグリーフシードのいくつかを自身のソウルジェムに当てるさやか。

計三つのグリーフシードを使用し終えた所で、ようやくソウルジェムの穢れは全て取り除くことが出来た。

qb「苦しそうだね、美樹さやか?」

さやか「キュゥ、べえ……っ!」

相変わらず荒い息遣いをしながら、さやかはキュゥべえをギロリと睨みつける。

qb「どうやら、仕留め損ねたみたいだね?彼女達を」

さやか「うるさいっ……嫌みでも言いに来たのっ?」

qb「嫌みとは心外だなぁ。僕はキミの様子が気になって見に来ただけなのに」

さやか「用がないなら、消えなさいっ……!」

そう言いながらも、限界を迎えた三つのグリーフシードをキュゥべえへ向けて放り投げる。

qb「やれやれ、そうさせてもらうよ。まだもう一人、契約したい少女がいるからね」

実を翻し、放り投げられたグリーフシードを背の中へ納める。

さやか「契約したい少女……?」

qb「キミもよく知っている人物だよ」

さやか「まさか、まどか……?」

qb「そうだよ。まどかとさえ契約することが」

キュゥべえの言葉が、途中で途切れる。

さやかのソウルジェムから飛び出した剣先が、キュゥべえの頭を貫いて後ろの箱に突き刺さる。

さやか「………」

qb「酷いじゃないかさやか」

さやかのもたれかかっている壁の頭上、窓から、新たなキュゥべえが姿を現した。

qb「予備はいくらでもあるけれどね、意味もなく潰されちゃ困るんだよ。もったいないじゃないか」

さやか「うるさい……まどかと契約なんて、絶対にさせないよ」

qb「今、まどかの側に離れているキミが言うことではないね、それは」

さやか「っ……」

qb「まぁ、とにかく僕はこの場を去るとしよう。これ以上体を潰されちゃたまらないからね」

さやか「……さっさと行け」

qb「キミも、魔女を捜索しに行った方がいいんじゃないかな?残りのグリーフシードも、心許ないんだろう?」

さやか「………」

もう一度ソウルジェムから剣を取り出し、剣先をキュゥべえに突きつける。

キュゥべえはそれだけ見届けると、そこから立ち去るのだった。

さやか「言われなくっても……わかってるわよ………」

そう言いながら、さやかは天上を見上げながら目を瞑る。

さやか(マミさん……あたしは……)

それから更に数日の時が流れた

織莉子は、まどか抹殺の為に何をすべきか、家に引きこもり予知を繰り返しては頭を悩ませる日々を。

キリカは、そんな織莉子を支える為に魔女捜索の範囲を見滝原の外まで広げていた。グリーフシードはいくつあってもありすぎると言うことはない。

マミは相変わらず神出鬼没で、魔女を見つけてはその圧倒的なまでの火力で粉砕しては織莉子とキリカを探し続けていた。

杏子とゆまも、織莉子の事を探していた。ゆまが言っていたように、戦いではなく対話をする為に。

ほむらは、織莉子の件については傍観の立場になりつつあった。

まどかはさやかの事を心配しながらも、何も出来ない、出来る力があっても怖くて一歩を踏み出すことが出来ずにいた。

キリカ「よっ………っと」

星空のような結界の中に住んでいた魔女を倒したキリカは、その場に着地する。

結界がボロボロと崩れて行くのを見届け、グリーフシードを落としたかどうかを確認する。

キリカ「うん、順調だね」

その場に姿を現したグリーフシードを拾い上げ、満足そうに頷く。

杏子「………なんでこの街にいるのかは、聞かないでおくよ」

キリカ「!」

ふと、キリカの背後から声がした。

キリカ「……えっと、佐倉と、ゆまだったかな」

振り返り、その場に立っていた二人の顔を見て思い出すようにキリカは二人の名前を呟いた。

それと同時に、臨戦態勢を取る。

ゆま「ま、待ってキリカ!」

棒立ちの杏子と臨戦態勢のキリカの間に、ゆまが割って入る。

キリカ「………」

杏子「とりあえず、あたし達は積極的にあんたらと敵対するつもりはないんだ」

キリカ「へぇ、信用すると思うかい?」

杏子「信用してくれ、なんて言うつもりはない。けど、臨戦態勢を取ってるあんたに対して迎撃態勢を取らないあたしを見て、その証ってことにしてくれ」

キリカ「………まぁ、いいだろう」

杏子の言うことにも一理あると思ったキリカは、臨戦態勢を崩して魔法少女の変身も解く。

キリカ「で?何の用かな?わたし、忙しいのだけれど」

ゆま「お、織莉子!ゆま、織莉子に会いたいの!」

キリカ「織莉子に?会わせると思うのかい?」

杏子「あんたらの目的、真意を聞きたいんだ。何故ゆまを唆したのか。何故……マミを殺すような真似をしたのか」

キリカ「? 巴を殺すような真似?」

杏子の言葉に疑問を抱いたキリカは、そう呟く。

杏子「マミを殺した魔女のグリーフシード。あんたらが設置したんだろ?ほむらから話は聞いてるぞ」

キリカ「……何か、誤解しているみたいだね」

杏子「は……?」

キリカ「いいよ、あんたは話がわかりそうだ。が、わたし達の本拠に案内するのは悪いけれど出来ない。だから、わたしの方から一度織莉子に話をしておこう」

ゆま「織莉子と、お話出来るの?」

キリカ「織莉子がその気があるのなら、ね。もっとも、わたし達も余裕がないのが現状だ。だから、期待はしないでくれとしか言えないね」

杏子「……ま、わかったよ」

キリカ「悪いけれど、わたしはこれで失礼するよ。一所に留まっていたら、またいつ巴マミが襲って来るかわかったものじゃないからね」

杏子「あいつがこっちまで来るとは考えにくいけどな……」

杏子の呟きを最後にして、キリカはその場から飛び去った。

おやすみなさい

(・ω・`)乙  これは乙じゃなくてポニーテールなんだからね!


キリカが立ち去るのと入れ替わりに、巴マミがその場に降り立った。

マミ「杏子!今、ここに”黒い魔法少女”がいたように見えたけれど、どこへ行ったの!?」

杏子「……マミ……?」

マミ「答えなさい!!」

どこか余裕のなさそうなマミの様子に、杏子は少しの違和感を覚える。

杏子(マミの奴、あたしの事は確か名字にさん付けしてたはずだよな……)

マミ「答えられないの?あなたも、彼女達に手を貸しているということかしら?」

左手に剣を出現させ、その剣先を杏子に突きつける。

杏子「……なぁ、マミ」

マミ「何?答えられない?」






杏子「お前……誰だ?」

マミ「っ……何を言ってるのかしら?わたしは、巴マミよ。あなただって、よく知っているはずでしょう?」

杏子「………」

マミ「あたしの事なんて、どうでもいいの。”黒い魔法少女”がどこへ行ったのか、いいから早く答えなさい」

杏子「……あいつなら、本拠に帰ったよ」

マミ「その本拠はどこ?」

杏子「さあな。別にあたしはあいつらに肩入れしてるわけじゃねえ。ただ、聞きたいことがあるってだけだよ」

マミ「くっ……逃げ足だけは一丁前なんだから……」

聞きたい事を聞いたマミは、軽く舌打ちをして悪態を付く。

杏子「そんなことより、あたしの質問に答えろよ」

マミ「わたしが誰か、という質問だったかしら?それなら既に答えたはずよ。わたしは巴マミ。この見滝原の街を守る、魔法少女よ」

ゆま「ま、マミお姉ちゃん……?」

苛立ちをあらわにしたマミに怯えながら、ゆまはマミに話しかける。

マミ「何かしら?小さな女の子」

ほんの少しだけ表情を和らげながら、マミはゆまの方を一瞥する。

ゆま「ゆ、ゆまはね、織莉子は、悪い人じゃないって、そう思うの。キリカだって、言ってた。何か、誤解があるんだよ」

マミ「誤解、ね。彼女達が『巴マミ』を殺したというのにも、誤解があるとでも言うつもり?」

ゆま「詳しい話は、まだゆまも聞いてないけど……キリカが、誤解してるみたいだ、って」

杏子「そういうことだよ。あんたも、少し頭を冷やした方がいいんじゃないのか?どっかの誰かさん」

マミ「……あくまでも、わたしを『巴マミ』とは認めないのね?」

杏子「さてな。あたしも少しだけ冷静になってあんたを見たら、とてもじゃないけどあんたがマミだとは思えない。正体を現したらどうだ?」

マミ「いいわ、わたしもあなた達にはもう用はないから。じゃあね、身勝手な魔法少女さん」

杏子を一方的に睨みつけると、マミはその場を飛び立つ。

杏子「………ほむらの奴なら、何か知ってるかな」

下校時の校門前で、杏子はほむらの事を待ち続ける。

待ち人は、それほど待たずに姿を現した。

ほむら「佐倉さん?」

まどか「あっ……杏子ちゃん……」

杏子「よ、また会ったな、お二人さん」

ゆま「こんにちは!」

ほむら「どうかしたの?また何か、話したいことが?」

杏子「ん……ああ。ちょっと、マミの事で、な」

まどか「マミさん……」

杏子「悪い、まどかは席外してくれるか?ゆまも」

ゆま「えっ?」

まどか「わたしがいたら……都合が悪いの?」

杏子「……まだ、確実なことじゃないから、あんたに余計な心配を掛けたくないんだ。全部わかったら話すからさ、今はそれで納得してくれないか?」

まどか「う、うん……?」

杏子「それと、悪いんだけどゆまの面倒も見ていてほしいんだ。勝手なことを言ってるってのは承知だけど、頼めないかな?」

まどか「それは、うん、大丈夫だよ」

ゆま「キョーコ?ゆま、キョーコを怒らせるような事した?」

杏子「そんなんじゃない。ほむらと二人で、話がしたいだけだ。大丈夫、ほむらとの話が終わったら戻って来るから。いい子にしてろよ、ゆま?」

ゆま「うん、わかった……」

まどか「それじゃゆまちゃん、わたしの家で待ってようか?」

ゆま「うん、まどかお姉ちゃん」

肩を落としたゆまの手を引いて、まどかは歩いて行く。

その後ろ姿を見送った後、杏子はほむらの方に向き直る。

杏子「……で、マミの事なんだけどさ」

ほむら「………立ち話もなんだし、わたしの家へ行きましょうか」

杏子「あ、ああ」

戸惑いながら、杏子はほむらの後をついて行く。

ほむらの家―――

ほむら「何も出せないけれど、座って。……何を話したいのか、なんとなく察しはついているから」

杏子「………」

無言で、杏子はほむらの正面のソファに腰掛ける。

ほむら「それで?話を聞かせて、佐倉さん」

杏子「今日、風見野の方でキリカと接触出来たんだ」

ほむら「呉キリカと……?」

杏子「ああ。それで、マミの事をキリカに聞いてみたんだ。そしたら、何か誤解してるみたいだ、なんて事を言ってて、な……」

ほむら「誤解が?でも、巴さんを殺した魔女のグリーフシードは、美国織莉子と呉キリカが設置したんじゃ……?」

杏子「それは前にあんた自身が言ってた事だな。あんたは、それを誰から聞いたんだ?」

ほむら「……今の、巴さんから」

杏子「……なるほどな。あいつが、早とちりしちまった、って所か」

ほむら「………どういうこと?」

(・ω・`)乙  これは乙じゃなくてポニーテールなんだからね!


すごい今更だけど、ここまでシリアスになるとは思ってなかったせいで即興書きだと捗らない
書き溜めで一度にそこそこの量を投下する形に変えようと思う
ワガママでごめんね

本来なら、シリアス半分とギャグ半分で進行する予定だったのかな?
私は待つよー

杏子「あいつは……マミじゃねえ。少なくとも、あたしの知ってるマミじゃ、な」

ほむら「………」

杏子「お前はどうなんだ?あいつが、本当に昔のマミのままだと思うか?」

ほむら「いえ……」

ほむらは、今のマミの正体をあの時に見てしまっていた。

しかしそれ故に、杏子にその事を話してしまっていいものかと悩む。

杏子「察し、ついてるんじゃなかったのか?あいつの正体」

ほむら「…………ええ。今の彼女は……」






ほむら「美樹さやか……彼女がなりすましている」

杏子「……やっぱり、な」

ほむら「あなたに言うべきか、ずっと悩んでいたのだけれど……」

杏子「あたしの事、気にしてくれてたのか」

ほむら「……」

もちろん、杏子に話していいか悩んだ一番の理由は杏子とマミの関係が一番の理由だった。

いつかの時間軸で、聞いたことがあった。

杏子とマミは昔、コンビを組んでいた時期があったと。

別れた理由については、深く聞いたことはなかったのだが。

そしてその理由の他に、もうひとつあった。

それは、さやかと杏子の関係についてだった。

これまた別の時間軸での話になるが、心の荒んださやかに救いの手を差し伸べることが出来たのは杏子だったのだ。

そして、逆もまた然り。

そんな似た者同士の二人が、この時間軸では奇妙な形で交わってしまっている。

ほむら(因果な話ね……)

杏子「ま、今のマミについてはそれで納得行ったよ。大方、目の前でやられたマミの事を思うあまりにあいつらへの復讐心が増大したって所だろ」

ほむら「よくわかるわね?」

杏子「自分で言うのもなんだが、マミの事はあたしが一番よくわかってると思ってるからな。まだ魔法少女の契約をしてないあいつらを連れて魔女の所にでも行って、油断して魔女にでもやられたんだろうよ」

呆れたように、少しだけ悲しげな顔をしながら、杏子は的確にマミの行動を言い当てる。

ほむら「……でも、もしそうだとしたら……彼女、話を聞く耳を持ってくれるかしら?」

杏子「さて、どうだろうな。でも、話をしなきゃどうにもなんないだろ」

ほむら「それは、まぁ、そうだとは思うけれど……」

杏子「マミだけじゃない。織莉子やキリカとも、な」

杏子「……そういや、あんたの目的を聞いてなかったな」

ほむら「ええ……そうだったわね」

話すなら、今がその時ではないだろうか。

少しの逡巡の後、ほむらは杏子にひと通りの事を話すことに決めた。

ほむらが知り得ている、織莉子とキリカの目的。

今より二週間後、ワルプルギスの夜が訪れること。

ほむら自身の目的、自身が何者なのか。

目的の対象―――まどかの事だけは、伏せて。

杏子「……そういうこと、か。通りで、あたしとマミの事、あいつらの事も知ってるわけだ」

ほむら「今まで黙っていてごめんなさい。とにかく、どう足掻いてもワルプルギスの夜が訪れることは確定なの。わたしは、そいつの撃破……或いは撃退したい」

杏子「ワルプルギスの夜……な。この街に来たら、あたしの縄張りである風見野にも被害が及びそうだ。放っておくわけには、いかないな」

ほむら「それじゃ、わたしに力を貸してくれる?」

杏子「あんたの素姓も、まぁ大体は知れた」

杏子「が、まだ隠してる事があるだろ?」

ほむら「っ……」

杏子「その事は、あいつら……織莉子とキリカも知ってるのか?」

ほむら「彼女の魔法は、わたしの記憶に違いがなければ未来予知の魔法の筈……知らないとは思えない」

杏子「そいつらの行動理由も、イマイチよくわかんねーな」

ほむら「……それは……」

杏子「ここまで来たら、一蓮托生だ。あんたの目的って奴にも、あたしは協力してやるよ。その代わり、隠し事は無しだ」

ほむら「………後悔、しないわね?」

杏子「後悔なら、もう嫌と言う程してきたさ。今更だ」

ほむら「……わかった。なら……魔法少女の真実まで、教えてあげる」

杏子「……魔法少女の……真実……?」

杏子に確認を取り、ほむらは今度こそ全てを話し始める。

魔法少女の魂の在り処や、魔女の正体。

織莉子とキリカが、なぜまどかの命を狙っているのか。

ほむらが織莉子と敵対する事となった理由。

ほむらの目的の対象―――鹿目まどかの事。

その、全てを。

杏子「っ……そう言うこと、かよ」

ほむら「………信じて、くれるの?」

杏子「今の話を加味して考えたら……全てに納得出来ちまうからな。世界を滅ぼす魔女ってのがどれほどのもんなのかはわかんねえけど……織莉子の考え付いた結論は、間違っちゃいない」

ほむら「っ……そ、それは……」

確かに、否定は出来ない。

世界を滅ぼす魔女が生まれる要因が満たされる前に、その出所を潰す。

至極単純な道理だった。

杏子「ああ、心配すんな。別にあんたの祈りを否定してるわけじゃない。ありがちな言葉だけどよ、お互いに『正しい、よかれと思って』やってることだ」

ほむら「………そう、ね。わたしも、間違った事をしているつもりはないもの」

まどかを契約させずに、守る。

それが、ほむらの目的だ。

織莉子とは、相容れない立ち場となって当然だった。

さやかちゃん…

杏子「問題は、それをマミ……いや、美樹さやかがどう思うかって所だな」

ほむら「……まず、落ち着いて話が出来るようにすることが第一よね」

杏子「だよな……どこにいるのかもわかんねえしな」

二人顔を突き合わせ、どうしたものかと考えこむ。

杏子「なぁ、ほむら。お前、今も―――」

杏子の言葉を遮る形で、家のブザーが鳴らされる。

ほむら「ごめんなさい、誰か来たみたい。出て来るから、ちょっと待っていて」

杏子「あ、ああ」

言葉を遮られ、ばつが悪そうな顔をしながら杏子は頷く。

ほむら「はい……」

ドアに向かって返事をしながら、チェーンの掛けられたドアを開く。

ゆま「あ、ほむらお姉ちゃん!」

ほむら「……ゆまちゃん?」

来訪者は、千歳ゆまだった。

しかも、それだけではなかった。

扉の影となっていて姿は見えないが、他にもいるようだった。

ほむら「どうかしたの?」

ゆま「う、うん!き、キリカお姉ちゃん、まどかお姉ちゃんもいるんだけど……」

ほむら「っ!!」

キリカとまどかが行動を共にしていると聞いたほむらは、脊髄反射的に扉を力づくで開け放つ。

キリカ「おっと!」

まどか「わっ!?」

ほむら「まどか、大丈夫!?」

壊れたチェーンの事など気にせずに、ほむらはまどかとキリカの間に割って入る。

キリカ「……随分と御挨拶だね、暁美ほむら」

ほむら「………わたしの家に、何の用かしら?」

まどかと共にじりじりと後退しながら、ほむらはキリカにそんな問いをぶつける。

杏子「おい、ほむら!どうかしたか!?」

居間の方から、杏子も駆けつける。

ゆま「キョーコ!」

杏子「ゆま!?それに、まどか、キリカまで……!?」

キリカ「やれやれ。すっかり嫌われ者だね」

渋い顔をしながら、キリカはポリポリと頭を掻く。

キリカ「朗報を持ってきたっていうのに」

ほむら「朗報ですって……?」

キリカ「織莉子の許可が下りた。と言っても、やはり本拠に案内する事は出来ないからね。今夜9時に、町外れの廃屋まで来て欲しいそうだ。そこで、話をすると」

杏子「……罠、か?」

キリカ「さて、ね?とにかく、わたしから伝えることは伝えた。来るかどうかは、キミ達次第だよ。暁美ほむら、佐倉杏子、千歳ゆま。それに……鹿目まどか」

まどか「っ……」

キリカ「じゃあね」

狼狽するまどかを一瞥し、キリカはその場から飛び去る。

ほむら「……十中八九、罠でしょうね」

キリカが立ち去った後、四人はほむらの家の中で話をしていた。

杏子「だろうな。だが、そこに行けばあいつらも何かしらのアクションを起こすのは間違いないだろ。あたしは行くぞ」

ゆま「ゆまも、キョーコについてく!」

まどか「わ、わたしは……」

ほむら「あなたは来ない方がいいわ、まどか。奴らの狙い、あなたも理解しているでしょう?」

まどか「……やっぱり、わたしが狙われてるんだね……」

杏子「そういうこった。お前は一般人だ。あまり、魔法少女の事には関わらない方がいい」

まどか「で、でも……さやかちゃんの事だって気になるし、マミさんの事だって……」

ほむら「全てが終わった時、あなたにも話すから。それがわたしの口からになるか、巴さんの口からになるかはわからないけれど」

まどか「……グスッ……」

ほむら「前にも言ったわよね、まどか?あなたが気に病む必要はない、って……」

まどか「うん……でも、さやかちゃんもわたしの知らない所で頑張ってるのに、わたし、結局何も出来てない……」

ほむら「………」

まどか「わたしにだって、何か出来ることはあったんじゃないかって……そう考えたら、もう止まらなくなっちゃって……」

ほむら(本当に……契約していないまどかは、昔のわたしと同じ、ね)

声には出さず、ほむらはそう思う。

まどか「わたしだって、もう無関係じゃないから……迷惑になるのはわかってる。でも、お願い。わたしも、連れて行って」

ほむら「……それは……」

まどかのお願いを聞き、ほむらは戸惑ってしまった。



その戸惑いを断ちきるように、

杏子「ダメだ」

杏子の短い言葉が、部屋の中に響き渡った。

まどか「杏子……ちゃん……」

杏子「はっきりと言ってやろうか、まどか?魔法少女でもないお前が来ても、邪魔にしかならない。いいから、大人しく待ってろ」

ゆま「き、キョーコ……」

ほむら「………」

まどか「………………わかった……」

しょんぼりとうなだれたまま、まどかは小さな声でそれだけ呟いた。

ほむら(ごめんなさい、まどか……)

すっかり落ち込んだまどかは、居たたまれなくなり、一人寂しく家へと帰って行く。

杏子「まどかについてなくて、大丈夫なのか?」

ほむら「今のまどかには、わたしよりも頼りになる人がついているでしょうからね」

杏子「……そうか」

ほむら「ゆまちゃん、あなたにはお礼を言っておくわ。まどかを守ってくれていたのでしょう?」

ゆま「え……?」

ほむら「ありがとう。あなたはまどかの命の恩人ね」

ゆま「ち、ちがうよ?キリカ、わたしとまどかお姉ちゃんの所に現れても、敵対するような素振りはなかったし」

ほむら「……そうなの?」

ゆま「う、うん……」

杏子「何かを企んでることは、ほぼ間違いないってわけか……」

ほむら「そうでしょうね……でも、行くしかないわね」

―――美国の家

キリカ「ただいま、織莉子」

織莉子「お帰りなさい、キリカ」

気だるそうに庭に設けられたテラスの椅子に腰かけるキリカ。

織莉子「首尾は、どうだった?」

キリカ「ああ。織莉子の言っていた通り、鹿目とゆまが歩いていた所に接触した。もう一度聞くけれど、鹿目に手は出さなくてよかったのかい?」

織莉子「ええ、いいの。また無理をして、あなたを失うことにもなりかねないから。それに、千歳ゆまが側にいたのでしょう?
     あなたが千歳ゆまに負けるとは思わないけれど、それで手間取った後に巴マミが乱入しないとも限らないからね」

キリカ「巴マミ……ねえ。結局、今の巴マミの正体は教えてくれないのかい?」

織莉子「今日の夜に、恐らく全てが終わる……その後に、話すわ」

キリカ「……あいつには一度、辛酸を舐めさせられてるんだ。出来るなら、もう一度あいつと対峙したいところだね」

織莉子「………」

今日のところはここまで

おつおつ
期待に胸が高まる

(゚д゚ )乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんたらかんたら


これは面白い設定だ。

保守あげ
マダカァ

長い産業

すまぬものっそい遅くなった
投下するよー

pm9:00・町外れの廃屋―――

杏子「来てやったぞ、織莉子、キリカ!」

廃屋のドアを蹴破り、杏子が威勢よく二人の名を呼ぶ。

織莉子「……お待ちしてました」

暗がりの中から、白い魔法少女―――美国織莉子が、姿を現した。

彼女の傍らには、呉キリカも佇んでいる。

ゆま「織莉子……キリカ……」

ほむら「……………」

織莉子「時を彷徨う少女……貴女も、来たのですね?」

ほむら「杏子の付き添いで、ね。あなた達の真意……わたしにも聞く権利はあるでしょう?」

織莉子「ふふ……怖い顔。貴女は識っているくせに」

挑発的な笑みを浮かべ、織莉子はほむらの顔を見る。

織莉子「さて、わたしに話があるのはあなただったかしら、千歳ゆま?」

ゆま「織莉子の……目的を、ききたいの」

織莉子「わたしの目的……ね。果たして、あなたのような小さな子に理解出来るかしらね?」

そう前置いて、織莉子は話し始める。

数週間後、この街に世界を滅ぼす魔女が姿を現すということ。

それを阻止する為に、どうしたらいいのか、織莉子なりの考え。

その素体の正体を突き止めた事。

素体を契約させるわけにはいかなかった為、キュゥべえの目を逸らす為に千歳ゆまに目をつけたこと。

織莉子「………これが、今までわたしがして来た事。まあ、わたしの努力も虚しくキュゥべえは素体と接触してしまっているみたいだけれど」

杏子「それだけじゃねえだろ?」

織莉子「……わかっているわ。巴マミ……彼女についてでしょう?貴女が聞きたいのは」

杏子「どうなんだ?キリカは、あの魔女はマミと相性が悪いって言ってたみたいだが。その相性の悪い魔女をぶつけることで、マミの命を奪ったんじゃないのか?」

織莉子「………誤解、とまでは言わないわ。事実、やられるとわかっていてわたしはそれを見過ごした」

ほむら「あのグリーフシードの出所は、あなたたちではないのね?」

確認を取るように、ほむらは質問をぶつける。

織莉子「ええ、そう。あのグリーフシードについては、わたし達はほぼノータッチよ」

杏子「……じゃあ、マミはやっぱり?」

織莉子「そうね。勇んであの魔女に相対した巴マミの、過失であると言えるわね」

織莉子はそこまで言うと、その場から二、三歩後ずさる。

窓ガラスが、破砕された。

そして、そこから巴マミが侵入してくる。

杏子「マミ!?」

ほむら「っ……!」

ゆま「ま、マミお姉ちゃん……っ?」

キリカ「……」

動揺する三人を尻目に、キリカは織莉子を庇うようにして前に歩み出る。

マミ「……どういうこと?詳しく話を聞かせて」

右手のマスケット銃の銃口をキリカと織莉子の方へ向けたまま、震える声でそれだけ絞り出した。

織莉子「巴マミ……」

マミ「っ……わたしの命を奪ったのは、あなたたちではなかったと?」

キリカ「今、織莉子が言っていた通りだよ、巴」

織莉子「………」

ゆま「ま、マミお姉ちゃん!織莉子とキリカは、やっぱり悪い人じゃないよ!」

マミ「……あなた達は黙っていて。あたしは、織莉子さんに問いかけているの」

織莉子「…………頃合い、ね」

キリカ「織莉子?」

庇うようにして出された手を制し、織莉子はマミの方へ歩み寄る。

杏子「おい、織莉子……マミ……?」

ほむら「………」

織莉子「今のわたしの話を事実と受け取るかどうかは、貴女の自由よ。巴マミ―――いえ」







織莉子「―――美樹さやか」

マミ「っ!!?」

自身の正体を突きつけられた巴マミ―――美樹さやかは、激しく狼狽する。

織莉子が、さやかの方へ向けて一歩を踏み出す。

それに呼応するように、さやかは一歩後ずさった。

マスケット銃を握っている右手は微かに震えている。

織莉子「さあ、どう?あなたの答えを聞かせてもらおうかしら?」

「………あたしは」

構えていたマスケット銃を降ろし、彼女は不意に魔法少女の変身を解く。

そこに姿を現したのは、巴マミではなく―――美樹さやかだった。

さやか「………」

織莉子「―――初めまして、美樹さやか」

杏子「っ……」

ほむら「美樹さやか……」

さやかの眼は、相変わらず織莉子を睨みつけていた。

さやか「……全てを信じる気はない。でも、これについてはあんたが嘘を言ってるようにも、思えない」

ほむら「美樹さん、あなたは……」

さやか「……ごめんね、転校生。今まで、嘘吐いてた」

杏子「おい、あんた……さやかっつったか?お前の話も、聞かせてもらおうか」

さやか「……うん、わかってる」

―――――
―――


さやか「―――これが、今までの事の顛末」

織莉子「わたしの話を統合すると、総てに理解が行き届くわね?」

杏子「………やっぱ、マミは……死んだのか」

ほむら「………」

ゆま「キョーコ……」

さやか「ごめん……あたしが、うじうじ悩んでたから……」

織莉子「さて、これでわたしの思い描いていた舞台が整ったわね」

ほむら「あなたの思い描いていた舞台?」

織莉子「そう。ズバリ言わせてもらうけれどね」

織莉子「わたしに、力を貸して欲しい」


織莉子のひと言が、廃屋の闇に吸い込まれていく。

杏子「……力を貸してほしい、だと?どういうことだよ?」

織莉子「時を彷徨う少女……―――いえ、暁美ほむら。貴女は識っているでしょう?ワルプルギスの夜の事を……」

ほむら「っ!」

織莉子「わたしは、其れの撃退を考えている。その為に、力を貸して欲しいの」

さやか「それは―――嘘、だ」

織莉子「!」

さやかの鋭い視線が、織莉子の眼を射抜いていた。

さやか「いや、嘘とはちょっと違う。他にも、何かを企んでる眼をしてるよ……美国織莉子」

織莉子「………」

キリカ「話の腰を折るな、美樹」

さやか「……うるさい。悪いけど、やっぱりあんたの話は信用ならないね」

さやか「あたしは悪いけど、パス。転校生や杏子、ゆまちゃんはともかく。織莉子とキリカは、信用出来ない」

それだけ言うと、さやかは魔法少女姿へと変身する。

今度の姿は巴マミではなく、ほむらが見慣れた、今までの時間軸での美樹さやかの魔法少女姿だった。

そして、先程入って来た窓へと向かう。

さやか「じゃあね、美国織莉子、呉キリカ。いつか、あんた達とも……決着を付けてやるから」

ほむら「待ちなさい、美樹さん!」

さやか「待たない。一応言っておくけど、まどかには何も言わないでよ?」

ほむら「まどかにはって……!!」

さやか「ふん」

言葉を探していたほむらを待たず、さやかは廃屋から出て行ってしまう。

織莉子「……彼女の不和は、予定の内。あなた達はどう?暁美ほむら、佐倉杏子、千歳ゆま」

杏子「あたしは……ほむらに任せるさ。一応、今のあたしはほむらに力を貸す約束をしてるからな」

ゆま「ゆまは、キョーコと同じ答えだよ」

ほむら「……わたしは」

織莉子「未だ、わたしの事、信用出来ない?」

ほむら「………」

ほむらは眼を瞑り、思考を巡らせる。

かつての、イレギュラーだった時間軸。

敵対していた魔法少女、美国織莉子と呉キリカ。

非常にやっかいな存在ではあったが、この二人が力を貸してくれるというのはほむらにとっては魅力的ではあった。

ほむら(巴マミは……死んでしまっているけれど)

この二人の力を借りれば。

自分と、杏子と、ゆまと、織莉子と、キリカと。

それに―――さやかと。

これだけの魔法少女がいれば、ワルプルギスの夜を撃破する事が、出来るのではないだろうか。

まどかの抹殺を企てていたのも、元を正せばこの世界を守る為だと言う。

それならば、しっかりと話し合いをして、まどかの契約阻止の事を言えば。

この二人なら、わかってくれるのではないだろうか?

ほむら「………」

ゆっくりと、ほむらは眼を開いた。

ほむら「……わたしも、美樹さんと同意見。全てを信用は、まだ出来ないけれど」

織莉子の眼を真っ直ぐ見据え、そして。

その右手を、差し出す。

ほむら「ワルプルギスの夜との戦いに関しては……共闘、出来そうね?」

織莉子「ふふ……貴女ならそう言ってくれると思っていたわ」

含みを持った笑みを浮かべ、織莉子はほむらの手を取る。

キリカ「紆余曲折はあったけど、とりあえずこれで、円満解決……と言っていいのかな?」

ここで、今の今まで沈黙を保っていたキリカが口を開く。

織莉子「ええ。鹿目まどかに関しては―――暁美ほむらと、一度しっかりと話し合いをする席を設けましょう。それでいいわね?」

ほむら「そうね。あと、心残りがあるとしたら……美樹さやかの事だけれど」

織莉子「っ……彼女の事は、わたしも誤算ではあった。彼女に関しては、今後も対話を続けることにしましょう」

杏子「ったく、どこまで行ってもめんどくせえ奴だな、マミは……本人だけじゃなく、成り済ましの偽者までめんどくせえと来た」

ゆま「でもキョーコ、なんだか嬉しそうだよ」

杏子「はぁ!?バカ言うな、誰が!」

ゆま「あはは!」

織莉子「……ふふ」

ほむら(……ワルプルギスの夜が来るまで、あと二週間―――)

さやか「はぁ、はぁっ……!!」

さやか「っ……はぁ、今に見てろ……美国織莉子っ……!!」

さやか「こうなったら、引っ掻きまわしまくってやるんだからっ……!!」

今回はここまで
速報で投下するのと同じ感じでやっちゃってるけど、これでいいのかな?
深夜で書くの初めてだからどうも自信がない

(゚д゚ )乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんたらかんたら

さやかちゃんが、どんどん暗黒面に…

それから、一週間が流れた。

今までは魔女や使い魔を発見しては無差別に葬っていた巴マミ―――美樹さやかが、急にその活動を停止していた。

どこにいるのかも、今何をしているのかも、ほむら達には知る術はなかった。

最初の頃は戸惑っていたほむら達も、少しずつそれに慣れていっていた。

結局のところ、魔法少女である以上は魔女と戦わなくてはならないのだから。

魔女や使い魔の気配を感じ取ることが出来れば、気付いた人がすぐさま駆けつける。

そして美樹さやかと接触する事が出来た場合には、説得に回ろうという心持ちで。

そんなサイクルが出来つつあった、ある日の夕方。

まどか「………」

まどかが、魔女に魅入られていた。

目をつけたのはハコの魔女。

ハコの魔女自身が引き籠り体質なのも相まって、まどかが魅入られたのはある意味で必然だったのだろう。

仁美「あらぁ、鹿目さん。鹿目さんも、わたくしと同じですのね?」

まどか「うん、志筑ちゃん。一緒に行こう?とっても、素晴らしい世界に」

仁美「もちろんですわぁ。さあ、早く行きましょう?」

まどか「待っててね、マミさん……今、わたしが行きますから」

正気を失ったその眼にかつての魔法少女の姿を移し、まどかは歩いて行く。

着いた先は、町外れの廃工場。

バケツたっぷりに洗剤を入れ、そこに別の洗剤を入れようとするまどか。

容器を傾け、入れようとした瞬間。

バケツが何かに引っ張られ、窓を割り外へと放り投げられる。

仁美「あらぁ?何が起こったんですのぉ?」

まどか「………?」

そのバケツの取っ手には、毒々しい模様の入ったリボンが巻きついていた。

それが、バケツを引っ張ったモノの正体だった。

まどかの視線の先。

そこには、どこか苦々しい表情をした巴マミがいた。

マミ「鹿目さん……志筑さん……」

その場に集まっている複数の人たちを一瞥すると、マミは魔女の気配がする個室へ向かう。

ドアを閉め、鍵を掛けておく。

マミ「……―――よくも、まどかと仁美を」

右手を魔女結界にかざし、入り口を切り開く。

その中へ、マミは飛び込んだ。

襲い来る使い魔をマスケット銃と剣で悉く蹴散らし、足場のない結界内をマミは突き進んでいく。

やがて、魔女が姿を現した。

マミ「はあああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

両手を大きく広げ、背後に無数のマスケット銃と剣を召喚する。

マミ「食らえええええぇぇぇぇぇっ!!!」

大きく広げた両手を前方へ突き出すと、マスケット銃は魔弾を放ち、剣はそのひとつひとつが魔女へ向かって飛んでいく。

その容赦のない攻撃は、魔女とその周囲の使い魔を襲い続ける。

使い魔は魔女を守ろうと動きまわり、攻撃は魔女本体にまでは届いてはいなかった。

マミの両サイドに、モニターを抱えた使い魔が接近する。

マミ「っ、この!!」

宙に浮かせていた剣のひとつを手に取ると、マミはその使い魔をモニターごと切り裂いた。

左方から接近していた使い魔はその攻撃で蹴散らされるが、右方から接近していた魔女への攻撃は数瞬遅れる。

その隙を突き、使い魔はマミへ攻撃を仕掛ける。

マミ「……っっ!?なっ……!!!?」

それは、彼女が一番見たくない光景を映し出していた。

ザ……ザザザ……

「おかしいよ、それ……なんで、―――――は――――を……」

「僕にはわからないよ。それに、彼女達の仕業と決まったわけでもない。僕はただ、参考までに名前を教えてあげただけだ」

「……――――は、今までずっと街を守って来たんじゃないの……?なのに、なんでそんな……」

「繰り返すようだけれど、僕にはわからない」

「………許さない。――――をこんな目に合わせたそいつらを、あたしは絶対に許さない!!」

「なら、どうするんだい?」

「……契約しよう、キュゥべえ」

「魔女と戦う運命を、受け入れると言う事かい?」

「そんな事は、二の次だ……―――――と――――に接触するには、魔法少女になってた方が都合がいいってだけ……」

「そうかい。でも、魔法少女の本来の運命は魔女と戦う事だよ。僕と契約することで得た力を何に使おうとそれはキミの自由だけれど、それだけは忘れないでほしいね」

「そんな話は、どうだっていい……早く契約してよ」

「それじゃあ、願いを」

「……―――――と――――に引導を渡すのは、あたしの役目じゃ、ない」

「………だよね、マミさん?」

「……………」

「キュゥべえ、あたしを……わたしを!」

「マミさんにして!!」

「キミの願いはエントロピーを凌駕した!さあ、受け入れるといい」

「それが美樹さやか……いや」

「巴マミ!キミの運命だ!!」

「あっはははははははははははは!!いいよ、この力、最っ高!!爽快!!」

「ねえ、キュゥべえ。そいつら、白い魔法少女と黒い魔法少女だって!?」

「ああ、そうだよ。生きる意味を知りたいって祈りで契約したのさ」

「へぇ……正義の魔法少女の命を奪っておいて、生きる意味だなんて笑わせる!!絶対、絶対に殺してやる!!!」

「待っててね、マミさん。仇は絶対に取るから」

ザザ……ザザザ……ザ……

マミ「………―――」

マミは無言で、ひと際大きな大砲を召喚する。

そしてそれを、やはり無言で撃ち抜いた。

一発では収まらず、二発、三発と。

使い魔を蹴散らし、魔女の体を砕き、散り散りになったにも関わらず、マミは砲撃の手を緩めない。

やがて、結界の崩壊が始まる。

完全に結界が崩壊したのを確認したマミは、ようやく砲撃の手を止めた。

個室から出ると、そこには魔女に魅入られていた人々が気を失って倒れていた。

その中からまどかだけを抱き上げると、マミは廃工場を後にする。

廃工場を出たマミは、複数の魔力がここへ向かってきているのに気付いた。

顔を僅かに歪ませ、笑みを浮かべる。

マミ「うふ……うふふふふふ……」

まどか「―――……うっ……」

マミに抱きかかえられていたまどかが、眼を覚ました。

マミ「あら、おはよう鹿目さん」

まどか「ま、マミ、さん……っ?」

抱き上げていたまどかをそっと降ろし、マミは穏やかな笑顔をまどかに向ける。

マミ「大丈夫だった?あなた、魔女の口付けを受けていたのよ」

まどか「わ、わたし、が……?」

マミ「魔女の方は、もう大丈夫。わたしが倒しておいたからね」

まどか「そ、その!ありがとうございます!」

マミ「気にする事はないわ。わたしの大事な、後輩ですものね?」

まどか「………あの、マミさん!」

ずっと疑問に思っていた事を聞こうと思い、まどかはマミの名を呼ぶ。

マミ「何かしら、鹿目さん?」

まどか「えと、その……なんて言ったらいいのか……マミさん、どうして……?」

マミ「………」

まどかの質問は、要領を得ていなかった。

しかし、何を聞きたいのかは理解出来ている。

何しろ、当事者の一人だったのだから。

マミ「………鹿目さん」

まどか「! は、はい!」

マミ「よく見ておきなさい。魔法少女の、成れの果てを」

髪留めのソウルジェムを手の上に乗せる。

それに、ピシリ、とヒビが入った。

まどか「………―――え」

今回はここまでー

(・ω・`)乙  これは乙じゃなくてポニーテールなんだからね!




これは……どうしてまどかを連れて行ったんだか……

またも遅くなってもうしわけない
今回が最後の投下になります




          ~oktavia von sechendorff~

オクタヴィア「オオオオ……ヴォオオオオオオオオオオ!!」

まどか「え……え……?ま、マミ、さん……!?」

突如現れたその魔女に、まどかが呼びかける。

何が起こったのかわからず、戸惑いを隠せないでいた。

使い魔「――――」

魔女の咆哮に合わせ、産まれ出た使い魔が弔砲を放つ。

それは、かつて魔女が憧れた者に弔意を示すもの。

まどか「な、なんで……?この魔女、一体、なんなの……!?」

その魔女のすぐ側に、巴マミ―――美樹さやかの遺体が落ちる。

まどか「……さ、さやか……ちゃん……?」

その遺体に向けて、複数の使い魔が弔砲を放つ。

当然のように抵抗出来ないさやかの遺体は、使い魔の一斉攻撃を受け続ける。

まどか「や、やめて!!やめてよぉっ!!」

反射的にさやかの元へ掛けようとするまどか。

その腕を、取る者がいた。

まどか「っ!」

ほむら「ダメよ、まどか!近づいたら危ないわっ!」

まどか「ほ、ほむらちゃんっ……!?」

振り返り、自身の腕を取った人物を見る。

腕を取った人物は、ほむらだった。

その後ろには、杏子、ゆま、織莉子、キリカの姿もあった。

杏子「っ……下がってろ、まどかっ!!」

ほむら「ゆまちゃん、織莉子、キリカ!!あなた達はまどかの側にいてあげて!!行きましょう、杏子!!」

杏子「っ、ああ!」

まどか「ま、待ってよ……どうしてっ……」

ゆま「まどかお姉ちゃん、ダメだよ!ほむらお姉ちゃんとキョーコに任せて!」

フラフラとしながらさやかの元へ向かおうとするまどかの手を取り、ゆまが落ち着かせようとする。

さやかの遺体は―――既に、見る影もない程にボロボロになっていた。

織莉子「―――…………」

キリカ「………」

織莉子「……もう少しよ、キリカ……」

キリカ「ああ、わかってる……」

織莉子の言葉に返事をしながら、キリカはジリジリとまどかとの距離を詰める。

キリカ「鹿目、こっちにおいで。あの魔女は危険だ」

キリカが、優しくまどかに手招きする。

その仕草にただならぬ雰囲気を覚えたまどかは、キリカと織莉子を真正面に見据えたままゆっくりと後退する。

背後に魔女がいる状態―――すなわち、魔女の座している方へ。

ゆま「ど、どうしたのっ……織莉子、キリカ……?」

嫌な予感がしたゆまは、まどかと織莉子、キリカの間に割って入る。

キリカ「ふん、邪魔だよ」

そのゆまを、キリカは容赦なく蹴り飛ばした。

ゆま「うぐっ!?」

その蹴りを、間一髪手に持ったハンマーでガードする。

ゆま「織莉子、キリカ!?」

離れた場所で魔女と戦っているほむらと杏子を置いて、織莉子とキリカは本懐を遂げる為行動を開始した。

織莉子「―――鹿目まどか。貴女の命をもらう!!」

キリカ「覚悟してもらおうか!!」

まどか「え、えっ?」

織莉子の操る水晶と、キリカがまどかに襲いかかる。

ゆま「や、やらせないっ!!」

体制を立て直したゆまが、まどかを庇ってキリカへと攻撃を仕掛ける。

キリカ「ふんっ、お前みたいなちっこい奴に遅れは取らないっ!!」

ゆま「なんで、なんでこうなるの!?織莉子、キリカ!なんで!?」

速度低下魔法を駆使して戦うキリカを食い止めるのに精いっぱいだったゆまは、まどかへ襲いかかる水晶にまで気が回らなかった。

まどか「っ!!」

まどかの左肩に、織莉子の水晶が衝突した。

その水晶は衝突すると同時に炸裂し、まどかの左肩を中心に裂傷を与える。

まどか「ぐ、うぅっ!?」

ゆま「ま、まどかお姉ちゃんっ!!」

まどか「い……痛いっ……よっ……!」

その場に膝を付き、左肩を抑えてまどかがうずくまる。

キリカ「くっ、このっ!!」

鉤爪をゆま目掛け振り下ろすキリカ。

その攻撃をガードしながら、ゆまはまどかの近くまで後退する。

ゆま「まどかお姉ちゃん、立てる!?ほむらお姉ちゃんとキョーコを、呼んできて欲しいの!」

まどか「ゆ、ゆま、ちゃんっ……?」

ゆま「お願い、まどかお姉ちゃんっ!!その間、この二人はゆまが食い止めるから!!」

まどか「っ……わ、わか、ったっ……!」

ヨロヨロとおぼつかない足で立ち上がり、まどかは魔女と戦っているほむらと杏子の方へ駆けて行く。

キリカ「行かせない!!」

地を蹴り、キリカはまどかとの距離を詰めようとする。

そのキリカに、ゆまは真横から攻撃を仕掛ける。

織莉子「させないっ!!」

キリカに攻撃しようとしたゆまの体に、織莉子の水晶が二つ衝突する。

ゆま「あぐっ!!」

反動で吹っ飛ばされながらも、ギリギリで態勢を立て直して地に着地する。

ゆま「っ……織莉子、キリカっ……!」

織莉子「―――邪魔はさせないわ。千歳ゆま」

酷く冷たい、感情を感じさせない眼で、織莉子はゆまを見据える。

キリカはキリカで、興味の無さそうな顔をするだけだった。

――――――――――

オクタヴィア「ヴォオオオオオオ……オオオオオオオオオオ!!!」

魔女が、両手で構えた大剣を思い切り振り下ろす。

その攻撃を、杏子とほむらは回避する。

振り下ろされた大剣は地を抉り、地面に大きなヒビを入れていた。

杏子「ちっ!!馬鹿力め!!」

ほむら「さやかっ……!」

魔女の大きな動作の隙を補うように、使い魔がその手に持った銃で攻撃を仕掛けて来る。

その銃は、かつて巴マミが使用していたマスケット銃に酷似していた。

それを見て動揺したのか、杏子の回避動作が数瞬遅れる。

杏子「ぐっ!?」

回避し損ねた杏子が、放たれた魔弾を槍で弾き飛ばす。

ほむら「ごめんなさいっ!」

盾の中から爆弾を取り出し、スイッチを押すと、魔女向けて放り投げる。

その爆弾にも、使い魔の魔弾が迫る。

攻撃が当たり、爆弾は魔女にダメージを与える前に炸裂してしまっていた。

オクタヴィア「オオオオオオ……」

杏子「このっ!!」

杏子は槍を地面に突き立てる。

辺りに地響きが轟き、魔女の足元を中心にして無数の巨大な槍が現れ魔女とその周囲にいる使い魔の体を貫く。

それでも、魔女はまだ力尽きてはいないようだった。

まどか「ほむらちゃん、杏子ちゃんっ……!」

ほむらと杏子の元に駆けつけたまどかが、二人を呼び掛ける。

ほむら「まどかっ!?そ、その傷は!?」

まどか「ゆまちゃんが!ゆまちゃんが危ないの!」

杏子「っ!!ゆまが!?」

まどかの話を聞いた杏子が、三人のいる方に視線を向けた。

そこには―――織莉子とキリカにやられたゆまが、地面に倒れ伏していた。

杏子「!! っ……織莉子、キリカああああああぁぁぁぁぁっっ!!!」

我を忘れた杏子が、織莉子とキリカに襲いかかる。

その後ろから。

使い魔「―――」

使い魔が、杏子目掛け―――或いはその向こうにいる織莉子とキリカに向けて―――銃を放つ。

まどかと魔女に気を取られていたほむらは、その攻撃に気付くことが出来なかった。

放たれた魔弾は―――杏子の背中に命中し、胸元のソウルジェムをも貫いていた。

杏子「あ……―――」

途端、全身から力が抜けてその場に杏子が倒れ伏した。

まどか「きょ、杏子ちゃんっ!!」

ほむら「えっ……―――!!」

今度はほむらも、魔女から後方へ顔を向ける。

そこには、織莉子の策略通りにやられた二人が倒れ伏している光景があった。

オクタヴィア「ヴォオオオオオオオ!!」

魔女が大きな咆哮を上げ、その手に持った剣を大きく振り上げる。

その後ろに、無数の車輪を召喚していた。

剣を振り下ろすと同時に、無数の車輪が一斉に四人へ向けて襲いかかる。

ほむら「くそっ!!」

キリカ「ふん」

織莉子「………」

襲いかかる車輪を、ほむらは拳銃で、キリカは鉤爪で、織莉子は水晶を操り蹴散らしていく。

織莉子「……キリカ、あの魔女を先に倒しましょう。もう、用済みよ」

キリカ「了解!」

ほむら「っ……!!」

速度低下の魔法を最高まで引き上げ、キリカは全速で魔女に襲いかかる。

ほむら「まどか、あなたは遠い所に逃げて!!」

織莉子「そうはさせない!!」

魔女と一緒に、まどかも攻撃対象に加えて織莉子は水晶を操る。

ほむらはまどかに向かっていく水晶を全て防ぎ、盾の中から手榴弾を複数取りだすとそれを魔女、キリカ、織莉子に向けて放り投げる。

キリカ「効かないよっ!」

織莉子「くっ!」

キリカと織莉子は、その手榴弾を弾き飛ばす。

唯一、魔女だけがその手榴弾を弾き飛ばさなかった。

使い魔は織莉子とキリカを狙っているようで、手榴弾には手を出さず。

魔女に手榴弾がぶつかり、爆発した。

オクタヴィア「ヴォ……オオオオオオ……」

右腕が吹き飛ばされ、剣を地に落とす。

先程の杏子の攻撃も相まって、魔女は限界を迎えていた。

魔女はまどかを一瞥する。

まどか「……え?」

―――――
―――


「どこにいる……白い魔法少女、黒い魔法少女」

「絶対、絶対に許さない……わたしは巴マミとして、あいつらの息の根を止めるんだ……」

「そうじゃなきゃ、あたしは前に進めない……それに、まどかだって」

「ごめん、まどか……マミさん……あたしが、もっと早くに決断出来ていたら……」

「それが、あたしのたったひとつの導だ……」

「それまで、わたしは自分を偽り続ける……」

「う……くっ、はぁ、はぁ……」

「燃費が悪いのかな、この魔法は……すぐに、ソウルジェムが濁る……」

「グリーフシードを……」

「あたしは、いいんだ……前に進めなくったって」

「あいつらの息の根を止められるんなら……あたしはどうなったって構わない」

「それから後の事は……今は考えない」


―――
―――――

まどか「―――………さやか……ちゃん……?」

オクタヴィア「ヴォオオオオ……―――」

   ―――結界が崩れて行く

   ―――………さやかちゃんが形成していた、結界が

   ―――結界の崩壊に、死んでしまったゆまちゃんと杏子ちゃんも、飲み込まれてしまった

   ―――もちろん、さやかちゃん自身も

   ―――さやかちゃん

   ―――さやかちゃん、さやかちゃん

   ―――わたしは

織莉子「……魔女の結界とは、便利なものですね」

キリカ「………」

ほむら「どういうつもりなの……織莉子、キリカ……」

怒りを必死に抑えながら、ほむらは二人に問いかける。

織莉子「どういうつもり?何を言っているのかしら?わたしの目的、識っているでしょう?」

ほむら「あの時の言葉は……っ!嘘だったとでも言うの!?」

織莉子「ええ、もちろん。いい演技だったでしょう?」

ほむら「そんな、何故……」

まどか「なんで?」

ほむら「っ!」

まどかの呟きが、三人の耳に届く。

まどか「なんでみんなを殺したの?さやかちゃんも、ゆまちゃんも、杏子ちゃんも」

織莉子「………この世界を守るために、必要な犠牲だったまで」

まどか「おかしいよね?あなたたちの狙いは、わたし一人なんでしょ?なら、他の人を巻き込むことなんてなかったよね」

負傷している肩を気にせずに、まどかは立ち上がる。

織莉子「それを邪魔する者がいるのも事実。現に、今だって貴女の護り手がまだ一人残っているでしょう?」

織莉子はほむらを一瞥する。

ギリリ、と歯ぎしりが聞こえるのでは思えるまでにほむらは歯を食いしばる。

まどか「さやかちゃんの苦しみは、少しも考えなかったの?マミさんの事は?ねえ、答えてよ織莉子さん」

キリカ「……織莉子。あの子、もう、ダメだ。壊れてしまってるよ」

織莉子「………ええ、そうね」

ほむら「まどか、あなたは逃げて!この二人は、わたしが何とかするから!」

まどか「………」

まどかは織莉子とキリカに背を見せ、その場からゆっくりと歩き去っていく。

織莉子「行かせない!!」

キリカ「鹿目、お前の時はここで止まるんだよ!!」

ほむら「させないわ!」

時間停止の魔法を発動させ、織莉子とキリカに拳銃を撃ち放つ。

時間停止を解除すると、その弾丸は二人目掛けて飛んでいく。

その弾丸は、織莉子の水晶によって防がれていた。

キリカ「ふんっ!!」

ほむらの懐に飛び込み、下から鉤爪を振りかざす。

ほむら「!」

再度時間停止を使い、その攻撃が届く前にほむらはキリカから距離を取る。

そして、再度銃撃して時間停止を解除。

時間停止を解除すると、弾丸はキリカに向かって飛んでいく。

その弾丸もやはり、織莉子に防がれていた。

ほむら(まどかは……!?)

まどかの歩き去って行った方向に視線を移す。

まどかは、もう姿が見えなくなっていた。

織莉子「っ、まずい!!」

ほむらを置いて、織莉子はまどかの後を追おうとする。

その織莉子に向かい、ほむらは手榴弾を放り投げる。

織莉子「っ!くっ!?」

再度水晶を操り、その手榴弾が届く前に爆発させた。

織莉子「どこまでも邪魔を……っ!」

ほむら「それはこちらのセリフ!!絶対に許さない!!」

――――――――――

まどか「キュゥべえ……いるよね?出てきて」

qb「………」

まどか「契約して、キュゥべえ」

qb「僕は構わないけれど、キミはそれでいいのかい?」

まどか「ゴチャゴチャうるさい。いいから早く」

qb「それじゃあ、願いを」

まどか「……織莉子さんとキリカさんを倒す力が、欲しい」

qb「了解だ。キミの願いはエントロピーを凌駕した」

まどか「………」

qb「さあ、受けとるといい。それがキミの運命だ」

まどか「待っててね、みんな……」

まどか「カタキは、打つから」

――――――――――

織莉子、キリカとほむらの戦いは、決着が付かずにいた。

ほむらが時間停止で攻撃を繰り出しても、織莉子の魔法のせいで先読みされ直撃させることは出来ず。

キリカや織莉子が攻撃をしようとしても、ほむらは逐一時間停止の魔法で回避、反撃。

それが、幾度となく繰り返されていた。

織莉子「くそっ、このままじゃ不味いっ……!」

キリカ「そこをどけろ、暁美!!」

ほむら「あなたたちこそ、引きなさい!!自分たちがしていることを、よく考えなさいっ!!」

織莉子「貴女の言葉など、聞く耳は持ち合わせていないっ……!!」

複数の水晶を操り、ほむらに攻撃を仕掛ける。

キリカは地を蹴り、跳躍してほむらに襲いかかる。

その二つの同時攻撃を回避し、手榴弾をばら撒く。

その手榴弾の全てを、織莉子が操る水晶が打ち砕いて行く。

戦闘も、話も、平行線を保っていた。

ほむら「この……っ!」

「ほむらちゃん」

ほむら「っ!」

織莉子「な……!?」

キリカ「……これは……」

背後から声を掛けられ、ほむらは振り返った。

そこにいたのは。

まどか「後は、わたしに任せて」

ほむら「ま、まどか……!?な、なんで、契約を……っ!?」

契約して、魔法少女の姿となった、鹿目まどかだった。

動揺するほむらを横目に、まどかは織莉子とキリカの正面に歩み出る。

織莉子「……あなたの責任よ、暁美ほむら」

ほむら「っ……!!」

織莉子「多少、予定とは違ってしまったけれど……キリカ、いいわね?」

キリカ「ん、もちろん」

織莉子「鹿目まどか、覚―――」

織莉子の言葉が、途中で途切れる。

まどかが放った光の一矢が、胸部中心にある織莉子のソウルジェムを的確に打ち砕いていた。

キリカ「!!」

まどか「さやかちゃんやマミさんが受けた苦しみを、あなた達も……とは言わないよ。一瞬で楽にしてあげる」

キリカ「お前っ……おま―――」

織莉子からまどかへ視線を移そうとしたところで、背についていたキリカのソウルジェムを撃ち抜く。

まどか「ふふ……あはははははははははっ!!やった、やったよさやかちゃん!!マミさん!!殺しちゃったああぁぁ……あっはははははっ!!!」

ほむら(………まどか……)

その光景は、ほむらには正視出来るモノでは無かった。

壊れてしまっている。

キリカのその指摘は、間違ってはいなかった。

そして、一週間後。

ワルプルギスの夜を相手にしたまどかが、やはり一撃でワルプルギスの夜を下し、その後すぐに魔女化した。

ほむら(……美国織莉子、呉キリカ。彼女達の言葉は、もう二度と信用しない)

ほむら(甘言を用いて、人の心を惑わす……)

ほむら(奴らとは、二度と肩を並べて立てるとは思わない方がいい)

ほむら(とにかく、時を巻き戻しましょう)

―――新しい時間軸

織莉子「……あら?あなたは……」

ほむら「………」

織莉子「あの、ええっと……?」

ほむら「こんにちは、美国織莉子」

織莉子「こ、こんにちは……?」

ほむら「……そして、さようなら」




パァァン―――














end

これにて投下了
補足説明しておくと、織莉子がまどかの攻撃を予知出来ずにやられたのは、まどかの願いが「織莉子とキリカを倒す力が欲しい」だったから
その願いで、織莉子の未来予知でも視えないような攻撃が出来たってことです
キリカの速度低下に関しても、不意打ち出来ずにやられたってのが同じ感じで

話のモチーフは、外伝のかずみ☆マギカの飛鳥ユウリと杏里あいりの話

オクタヴィアの魔女設定は、速報にある魔法少女魔女化スレpart1の>>516を使わせてもらいました
この場を借りてお礼を言わせてもらいます。ありがとうございました

では、またどこかのssスレにて会いましょう



まどかさん……



アチャーこういうオチか……
しかし>>1からは想像できないようなシリアスバッドになったなw




織莉子さん真っ黒や…


救いなんて無かったよ・・・

乙でした

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