【咲ーSaki-】優希「ここに山を築く」 (27)

漫「は?」

智葉(ほう…その意気や良し)

成香(なに言ってるんでしょうこのひと…怖いです)


優希「今度こそ、誰にも賽は振らせない!」シャキーン


漫「待て、今なに出した?シャキーンって」

優希「ん?スコップだじぇ」

智葉(ふむ…やはり本気か。一年にも多少手ごわいのはいる…気を抜けんな)

成香(え?なんでスコップを出すんですか?意味が分かりません、怖いです)


優希「えっほ、えっほ」ザクザク


漫「おい、床掘るな!なにしとんや!?」

優希「山を築くためには土が必要だろ?私は本気だじぇ!」

智葉(ふっ…なかなか見どころのある一年だ…全力で相手をしてやろう)

成香(臨海の人、この異常な状況にも全く動じてません、なんなんでしょう?)

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久「始まったわね…」

まこ「ああ」

和「予想通り、臨海は動きませんでした。これなら計画通りに事が進むでしょう」

咲「…観戦しているはずの阿知賀の動きが読めない。まだ油断はできないよ」

和「…私は、穏乃達を信じています」


洋榎「なにしとんねんあのタコス!?」ブフー

恭子「主将、モニターに飲み物ひっかけないでください」

絹恵「…やっぱり、この準決勝で動いてきましたね」

由子「いやいやいや!?なんで恭子と絹ちゃんは落ち着いてるのー!?前代未聞の珍事なのよー!」

郁乃「残念ながら~、予想通りなんよ~」

洋榎「なんでこんなもん予想しとんねん!?頭のネジ巻き直したろか!?」

恭子「二回戦での片岡の言動とあのマントの意味を考えれば、答えは一つしかありません」

絹恵「『この半荘に東二局は来ない』…あれは物理的に対局続行を不可能にして、あの時点で一位だった清澄が勝つようにしようとしていた」

洋榎「絹!戻ってこい!この頭おかしい集団に毒されたらアカン!」

恭子「マントの用途はスコップを隠すため以外にありえない…そしたら、結論はもう出たも同然」

由子「スコップを隠す以外にマントの使い道はいくらでもあるはずなのよ~」

郁乃「漫ちゃん頑張って~、漫ちゃんなら大丈夫やで~」


爽「ほう…始まったか」

揺杏「マジで爽の言うとおりだったか~」

由暉子「これはどういうことですか?」

爽「見たとおりだ。清澄は山を築いて先鋒で勝負を終わらせようとしている」

由暉子「それは大変ですね。私は止めればよいのでしょうか?」

誓子「まだ動くべきじゃないかも」

爽「ああ、そうだ、ユキ用の衣装は出来ているか?」

揺杏「出来てるけど、そんな場合か?まあ、いざとなったら爽がどうにかするか」

爽「ああ。と言うわけでモノを見せてくれ」


怜「…これは…」

竜華「怜、見たらアカン、頭おかしくなるで」

セーラ「清澄、これは予想以上やな。こいつらと打ってみたかったなー」

浩子「二回戦の時点で予想は出来ましたが、あの場に居た小瀬川と神代相手には分が悪いと判断したようです」

泉「いや、なに普通に解説っぽいことしてるんですか!?」

怜「上重さんは眼中にない、本内さんはどうにでもなる…実質的に辻垣内さん一人相手なら何とかなる、か」

竜華「と、怜?なに言って…」

セーラ「どのぐらいの山を築くつもりなんやろな?」

怜「そんなん決まっとるやん」

浩子「そうですよ。山を築く以上、その高さは…」


「「「誰かが飛べる高さ」」」


セーラ「…やな」


泉「清水谷先輩…」

竜華「怜…怜がうちの知らん世界にいってもうた…セーラとフナQまで…」シクシク


パタン

雅恵「お前ら、決勝見てるか?予想通り清澄が山を築き始めた。しっかり目に焼き付けるんやで」


優希「えっほ、えっほ」

『これはどういうことでしょう?清澄高校片岡選手、いきなり対局場の床を掘りはじめました』

『築山!』


優希「えっほ、えっほ」


『山を築くために、床を掘って土を集めているということでしょうか?他校はどう動きますか?』

『静観、爆発、困惑!』


優希「えっほ、えっほ」


『これは前代未聞の展開になりました。先が全く読めません』

『清澄有利!』



透華「…もう、対局が出来るギリギリまで山が盛り上がって来ましたわね」

衣「ああ、このままなら清澄の勝利は確実だろう」

一「…ごめん、ついて行けないんだけど?」

衣「そう言えば、去年我々が戦った時、臨海は全員外つ国人ではなかったか?」

智紀「ルールが変わった。先鋒には日本人しか置けない」

純「いや話を聞けよ、ついて行けてない俺たちに解説してくれよ」

透華「そうでなくとも、辻垣内智葉は日本三位の打ち手ですわ」

衣「全国三位…相手にとって不足はなしか。それはそれは…」



衣「ユーキもさぞ楽しかろう」


漫(いやいやいや、なんやこれ?何やこれ!?)

成香(このままじゃ卓が埋まっちゃいます、まずいです)

優希(部長から「準決勝からは麻雀より築山重視ね」っていわれてるんだじぇ)




優希「変換する!地面を山岳に!」



智葉(無名校の一年と言って侮ったりはしない…全力で捻り潰す!)


智葉「ふん!」ガッ


優希「なっ!?山に埋まった卓を引き抜いた!?」



智葉「姫松、有珠山、貴様らの代わりにやってやったんだ。点棒を寄こせ」

成香「は、払わないと何されるかわかりません、怖いです…」チャラ

漫「い、いや、おかしいやろ!?なんで払わな…」

智葉「…」ガッ

漫「無言で点棒持ってくなや!?審判、審判は何しとるんや!?」


優希「えっほ、えっほ」


智葉(まだやめない…柔らかい地層を待っているのか、それとも意地、か?)


智葉(まだ少し、侮る気持ちが残っていたようだ)


『清澄高校片岡選手、まだ山を築くのをやめません』

『正解!』

『審判も全く動きませんね』

『正々堂々!』

『確かに、ルールには山を築いてはいけないとはないですね。ルールに則った行為です』

『参謀!入れ知恵!』


智葉(…こいつの掘り方、まだ素人だ。つまり、普段から山を築いているわけではないはず。おそらく、これはこいつだけの意志ではない)

智葉(決勝へ向けての調整、か?おそらく、こいつに入れ知恵した奴がいる。そして、そいつはどうやらーーーー)


優希「えっほ、えっほ」


智葉(ーー優勝するつもりでいるらしい)


漫「いや麻雀させろや」


優希(東場の私が埋めた卓を素で引っこ抜けるのか…流石個人戦三位…南場のことを考える気が滅入るじぇ…)

成香「えっほ、えっほ」

優希「ありがとだじぇ、もう台詞終わったから代わるじぇ」

成香「は、はい」パス

優希「えっほ、えっほ」ザックザック


漫「なんで手伝っとんねん!?」

成香「だ、だってやらないと何されるか分かりませんし、怖いです…」

漫「…せやな」


智葉(ふん、見どころのある一年だ。監督が欲しがりそうだな)

智葉「…おい、また卓が埋まった時に何とかしてほしかったら、私に払うものがあるよな貴様ら?」

漫「くっ…足元見おってからに…」チャラ

成香「うう…怖いです…」チャラ


智葉「おい、築山を手伝ったくせに同じ料金のはずはないよな、有珠山?」

成香「…そ、そんな…」チャラ



優希「えっほ、なんなら、えっほ、卓の上から、えっほ、土をかぶせても、えっほ、いいんだじぇ?」


漫「そんなことされたら卓が…くっ」チャラ

成香「これでどうでしょう…」チャラ

優希「えっほ、えっほ」ザクザク


『試合は南場に…なんで麻雀打ってないのに南場に進んでるんですか?』

『点の移動!』

『なるほど、点数の支払いを和了りによるものとみなすわけですか』

『そう!』




『…姫松!』

『はい?』


洋榎「おかしいやろ!麻雀せえや!?」


恭子「…きたな、導火線に火ぃついたで」

洋榎「それ、原作のうちのセリフやん!お前が言うなや!?」

絹恵「漫ちゃんの爆発なら…」

恭子「ああ、上手くいけばやけど、あの山を吹っ飛ばしてくれるはずや」


由子「洋榎、私のほっぺをつねってほしいのよー…」

洋榎「無駄や、うちも何回もやったけど、これ現実らしいで…」


優希「えっほ、えっほ」

智葉(まだ山を築くのをやめない、か。なら、完成するまで相手をしようか)


ジジジ…


智葉(む?)


ドカーン!


漫「うぎゃあああああああ!!!?」

智葉(…自爆?)

成香(姫松の人までおかしくなりました。すてきです)


優希「えっほ、えっほ」


智葉「おい、本内。姫松のデコを押してくれ。卓から離れてな」

成香「は、はいっ!」ポチッ


ドカーン!


漫「うぐあああああああ!?」

成香「きゃああああああ!?」


優希「えっほ、えっほ…」


智葉「邪魔者が消えたところで点棒もらっておくか」チャラ

優希「えっほ、えっほ」


智葉「おい、一年。お前の取り分だ」チャラ

優希「ありがと、えっほ、だじぇ、えっほ」


智葉「よし、こんなところか。おつかれさん」チャラ

優希「えっほ、お疲れ、えっほ、だじぇ」



智葉「…」ポイ



智葉はおもむろに山に埋まりつつある卓に手を伸ばすと、その上にあった一枚の牌を手に取った。
1筒、良くも悪くも、今年の団体戦において勝負の明暗を分ける重要な局面で、決め手の一打になってきた牌。
えっほ、えっほ、えっほ…片岡はまだ山を築き続けている。愚直に山を築く好敵手に対して、自分は山が完成するまで付き合うつもりでいる。

なら、邪魔ものには止めを差しておくべきだろう。
そのつもりで手に取った牌がたまたま1筒だったのは偶然か、運命か?

辻垣内智葉は、手に取った牌を、倒れている上重漫の額に向かって投じた。
投じられた1筒は放物線を描いて、綺麗に上重漫の額に乗った。


ドカーン!



智葉「なかなか消えない炎だ」



三度の爆発。もう、起き上がることはないだろう。


えっほ、えっほ、えっほ、えっほ…


辻垣内智葉は、片岡優希の姿を見つめている

対局室には、山を築く片岡の声が響いていたーーーー


乙ありがとうございます。

一回マジキチというのを書いてみたかった。思った以上にたのしい。

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