【ミリオンライブ】二階堂千鶴誕生祭【SS祭り】 (222)

今日は二階堂千鶴の誕生日。ということでこの日の為に書き貯めたSSを公開していきます。
数は今のところ8かな? 書きかけのものもあるので増えると思います。
誕生日という括りではなく各アイドルで書きかった話になります。あと設定などは妄想や今まで書いたものの続きだったりします。
千鶴誕生日おめでとう。これからもよろしく。
それではSS祭りスタートしていきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1413817929

「えっ!? 両親がいない!?」

「ちょ、違うよ千鶴さん! いないんじゃなくて今日はお仕事の都合で帰ってこないだけ!」

 予想外の勘違いにこっちが驚いた。慌てて訂正する。

「それでも家にいないんでしょう? 帰ったらご飯とかどうしますの?」

「え? ご飯は冷凍食品があるし……別に困ることなんてないけど?」

「冷凍食品!? 桃子はまだ小学生なのにそんな……」

「これぐらい普通でしょ……千鶴さん驚きすぎ」

 いまどき親がいないなんて普通のことだ。こういうの世間では鍵っ子って言うんだよね。
 桃子は昔から外食が多かったし、親が料理を作らないなんていつものことだ。

「そんなのダメですわ! 子供にとってご飯は命! 帰りながら今日の夕飯はなにかなー
なんて考えて期待に胸を膨らませるのが普通ですわ! それがカレーだった日にはもう……」

 キラキラした目で語る千鶴さん。なんだか百合子さんみたいだ。そうだ、カレーで思い出した。

「家にレトルトのカレーがあったっけ。今日はそれにしようかな」

「まっ! レトルトなんてありえませんわ!?」

 ぐわっと頭を抱えてのけぞる千鶴さん。いつもよりオーバーリアクションだけどそんなに驚くことかなぁ……
 
 桃子にはいつものことだじよく分からないや。それとも桃子が普通じゃない?
 まぁ……芸能界で売れていた時期も、売れなくなってからの生活も、普通じゃない……か。


「そうですわ! 桃子!」

 千鶴さんはしゃがんで桃子と同じぐらいの目線になった。それから急に手を握られた。
 真っ直ぐ桃子を見つめる目はギラギラと燃えているみたいだった。

「今日はわたくしの家に泊まりなさい!!」

 思わず目をむいてしまった。何気なく呟いた言葉を千鶴さんに聞かれてしまってから私は驚かされっぱなしだ。
 反対しようと口を開く前に、千鶴さんはどこかに電話をかけてしまった。

「もしもしお母さん? 今日桃子が泊まりに行くから用意しておいて! あとご飯はカレーで!」

 それじゃ、と切ってしまった。あまりの早さに付いていけない。もしかして泊まることは決定してるの?

「ちょ、ちょっと千鶴さん……桃子はまだ行くって決めたわけじゃ……」


「遠慮することはありませんわ。桃子がどうしたいかだけでいいんですわ」

 桃子がどうしたいか? それは……桃子だってあの家で一人でいたいなんて思わないし……。
 だったら千鶴さんの家に行っても……。千鶴さんは遠慮しなくていいって言ってた。甘えても、いいのかな。

「えっと……泊まりたい……」

「はい! 決まりですわね!」

「か、勘違いしないでね! 桃子が行かないとせっかく用意してくれてるカレーが無駄になっちゃうからだからね! 寂しいとかそんなんじゃないから!」

「わかってますわ。それじゃ、行きますわよ」

 立ち上がった千鶴さんは桃子の手を引いて歩き出す。桃子も慌てて歩き出した。
 すっごく強引だけど、不思議と嫌な気分ではなかった。

千鶴さん誕生日おめでとう
支援だよ

>>4
二階堂千鶴(21) Vi
http://i.imgur.com/nWvUzuv.jpg
http://i.imgur.com/ZFL38Nx.jpg

周防桃子(11) Vi
http://i.imgur.com/lnj5z8A.jpg
http://i.imgur.com/P8INy0g.jpg


 まずは桃子の家に泊まるために必要な物を取りに行った。マンションに入って部屋の前へ。
 鞄から鍵を取り出して中に入る。千鶴さんは外で待っててもらった。
 
 あんまり家の中を見せたくなかった。察してくれたのか、千鶴さんは何も言わずに待っててくれた。
 必要そうなものを詰め込んで、家の明かりを消す。誰もいない暗闇はとても寂しくて、この中に私はいたんだと実感した。

 私にとって……これが普通だったんだ。

 それから千鶴さんと一緒に駅まで行った。電車に揺られ、目的の駅を降りて少し歩いたところで商店街に入った。
 その中を千鶴さんは真っ直ぐ進む。途中何人もの人に声をかけられていた。もしかして千鶴さんの家はこの近くなのかな。
 
 千鶴さんをセレブなんて思ったことはないけど、商店街に住んでるなんて思わなかった。
 これは育には教えられない。でも……千鶴さんは家のことを隠してたよね。桃子には見せてもいいのかな。


「ここですわ!」

 商店街の真ん中ぐらいで足を止めた。目の前のお店には二階堂精肉店の文字。

「ここが千鶴さんの家?」

「そうですわ。さっ、中に入りましょう」

 お店の脇道を進む。裏まで回ると玄関があった。

「ただいま!」

「えっと……お邪魔します……」

 中に入る。靴を脱ぎながら、カレーの良い匂いに気付いた。本当にカレーにしてくれたんだ……。


「おかえり千鶴。ちょうど出来たところだよ」

 引き戸が開いてカレーの匂いと一緒に女の人が出てきた。40歳ぐらいの優しそうなおばさんだ。

「ただいまお母さん! 紹介しますわ! 周防桃子ちゃんですわ!」

「あっ、はじめまして。周防桃子です」

「はじめまして、千鶴の母です。桃子ちゃんは何歳?」

「11歳です」

「そうなの。遊びに来てくれてありがとうね。千鶴が誰かを連れてくるなんて中学校の時以来だから」


「お、お母さん! その話はいいから! こんなところで話さないで中で話しましょう!」

「あら、そうね。狭いところだけど自分の家だと思ってゆっくりしてね」

「はい、ありがとうございます」

 中に入る。畳なんて久しぶりだ。それにテーブルの上にはおいしそうなカレーが置いてある。

「うちは辛いのはダメだから、桃子ちゃんでも食べられるはずよ」

「特にお父さんがダメですの。ふふっ、辛口をちょっと食べただけで真っ赤になるんですわ」

 ちょこんと座る。借りてきた猫って今の桃子みたいな人を言うのかな。
 でもいきなり人の家に来たんだからしょうがないよね。育やお兄ちゃんには見せたくないけど。


「それじゃ、いただきます」

「いただきますですわ!」

「……いただきます」

 いただきます、なんて久しぶりに言った。桃子用にと渡してくれた小さめのスプーンを持つ。
 カレーは桃子が普段食べるよりも多いぐらい。とりあえず、一口。

「……おいしい。……すっごくおいしい!」

「そう? 頑張った甲斐があるよ。まだまだあるから、たくさん食べてね」

「二階堂家特製カレーですからね! そこいらのカレーとは一味も二味も違いますわ!」

「うん! 今まで食べたどのカレーよりもおいしいかも!」


 ゴロゴロとしたジャガイモやニンジン、お肉もとってもおいしい。レトルトなんて目じゃない。
 お店のカレーよりもずっとずっとおいしい。特別運動したわけでもないのに、スプーンが止まらない。

 さっきまで食べきれないかもなんて思っていたカレーは見る見るうちに無くなった。
 
 それでも物足りないのでおかわりを頼む。おばさんはニコニコとお皿を受け取ってくれた。
 待っている間、千鶴さんにカレーのおいしさを伝える。それを聞いている千鶴さんもニコニコしていた。

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまですわ! やっぱりお母さんのカレーは最高ですわね!」

「ごちそうさまでした! すっごくおいしかったです!」

「あらあら、ありがとうね」


 お腹いっぱいだ。お水を飲みながら足を伸ばして休む。普段こんなに食べないのに。
 千鶴さんの家のカレーは本当においしかった。他の人にも食べてもらいたいぐらい。

「桃子、ちょっと休んだらお風呂にしましょうか。なんなら一緒に入ります?」

「えっ!? 桃子一人で大丈夫だよ!」

「まぁまぁ! 遠慮しないで一緒に入りますわよ!」

 桃子に断る権利はないらしい。今日の千鶴さんはすごく強引だ。
 まぁ、嫌ってわけじゃないけど。


「よし、お風呂に行きますわよ!」

「う、うん」

 二人でお風呂に行く。中は桃子の家のお風呂より少し小さい。
 二人で入るのは窮屈そうだったけど出来ないほどではなかった。

「それじゃ洗いますわよ」

「はーい」

 抵抗しても無駄だって分かったし、千鶴さんに言われるがままに洗われる。
 千鶴さんは鼻歌交じり、桃子は気持ちいいなぁなんて思いながら身を任せた。

「はいお湯をかけますわよー」

 泡を流す。うん、すっきりした。


「桃子は先にお風呂に入っててくださいな。わたくしも洗っちゃいますから」

 お風呂に入る。桃子の家より熱めのお湯に少しびっくりして千鶴さんに笑われた。
 お返しに背中にお湯をかけてあげると千鶴さんも同じように驚いて声を上げた。その様子がおかしくて、桃子はケラケラと笑う。
 
 桃子を洗っているときも思ったけど千鶴さんの洗い方はすごく丁寧だ。
 あれだけの髪の長さだ。当然と言えば当然で、あのふわふわとした綺麗な髪を保つ秘訣なんだと素直に感心した。
 
 ただし問題があった。このままだと、桃子のぼせちゃう。

「千鶴さーん先あがっちゃうよー」

「ちょ、ちょっと待ってください! もう少しで終わりますから!」

 お風呂に入らないように器用にまとめて、千鶴さんもお風呂に入った。二人も入るとさすがに狭い。


「ふふっ、やりたかったことが一つ叶いましたわ」

「桃子と一緒にお風呂入りたかったの?」

「ええ、やっぱり裸のお付き合いというものも必要ですわ」

「そうだね。それじゃ桃子はあがるね」

「もうですの!?」

「のぼせちゃうよ」

 わかりましたわ、と引き下がる。桃子はポカポカする体を動かして外に出る。
 桃子が上がったことに気付いたのか、おばさんがドア越しに声をかけてきた。


「桃子ちゃん自分で体拭ける?」

「うん、大丈夫だよ」

「タオルは右に置いてあるのを使ってね。着替えは左のほうに置いてあるから」

「うん、ありがとうございます」

 いそいそと拭いてパジャマに着替える。熱い体がようやく冷めてきた。
 出るとおばさんがドライヤーを持って手招きしてた。おばさんの前に座ると、ドライヤーの風とおばさんの優しい手が髪を撫でる。
 
 手持無沙汰で足をパタパタ、おばさんも何も言わずにやってくれるのでドライヤーの音以外は何もない。

 だけどこの無言の空間が、なんだかとっても心地いい。


「はい終わり。リンゴ切ってあるんだけど食べる?」

「リンゴ? 食べる食べる!」

 小皿にリンゴを載せて持ってきてくれた。口に入れるとリンゴの甘さと冷たさが体に沁みこむ。

「ねぇおばさん」

「なに?」

「今さらだけど、桃子がいて迷惑じゃない?」

「迷惑なわけないよ。娘が増えたみたいで嬉しいぐらい」

「そっか……」

 シャリシャリとリンゴを食べる音だけが響く。ふいに千鶴さんの鼻歌が聞こえてきた。
 おばさんと顔を見合わせて笑う。ほんと、千鶴さんは能天気なんだから。


「千鶴さんって家でもあの口調なんだね」

「そうねぇ……お父さんに似て頑固だから。家でもなりきるんだーって言ってね。
 まぁ、今ではあれじゃないと落ち着かないぐらいになっちゃったけどね」

「なんだかおかしいね」

「それでも、千鶴がやりたいって言いだした事だからねぇ。親として応援しないわけにはいかないよ」

 そっか。千鶴さんは応援してくれてる人がいるんだね。それはきっとおばさんだけじゃなくて、商店街の人全員からなんだろうな。


「そういえば千鶴さんのお父さんは?」

「お父さんは商店街の集まりに行ってるのよ。たぶんもうすぐ帰ってくると思うけど」

 そんな話をしていると玄関の開く音がした。男の人の帰ったぞーという声が聞こえてきておばさんが立ち上がる。
 待ってるわけにもいかないし、桃子も一緒に付いていくことにした。

「お父さんお帰り。あら、またお酒飲んできたの?」

「おう、ってあれ? 千鶴が小さくなってるぞ?」

「この子は桃子ちゃんよ。千鶴と同じ事務所のアイドルさん。今日は泊まりに来てるのよ」

「おお! そうかそうか!」


 千鶴さんより大きいおじさんだった。顔を赤らめ声も大きい。
 なんだか無性に怖くなっておばさんにしがみつく。その姿にお父さんの顔が重なってしまう。

 声を荒げ、いつも喧嘩ばかりするお父さん。夜遅くに帰ってくるときは決まって顔が赤く
 酔っ払っているんだとすぐにわかった。昔の優しい顔も思い出せないぐらい、そんな顔しか見てこなかった。

「桃子ちゃんって言うのか。小さいねぇ……こんな子もがんばってるんだねぇ……」

 おじさんが手を上げた。殴られると思ってしまい体を強張らせるが、おじさんは優しく頭を撫でてくれた。
 
 そのことに気付いて、桃子は初めておじさんの目を真っ直ぐ見つめた。

「千鶴はあんなだけど昔から頑張り屋で、人一倍寂しがり屋なんだ。
 桃子ちゃん、千鶴のことをよろしく頼むよ。今日は来てくれてありがとうな」

 優しくて、力強い。それはお兄ちゃんと千鶴さんの目にそっくりだった。


「うん、桃子がんばるよ。千鶴さんは桃子がしっかり見てあげるから」

「ありがとう桃子ちゃん。千鶴は良い仲間を持ったじゃないか」

「ふふっ、そうですね。お父さん」

 二人とも笑顔で、桃子も笑顔だった。そうだよね。これが普通だよね。

「あーっ!? お父さん帰ってきましたの!? 桃子に変なこと言ってませんわよね!」

「おう! 千鶴は昔から泣き虫だって教えてやったぞ!」

「な、何をバカなこと言ってるんですか! さっさと水飲んでお風呂入って歯を磨いて寝なさい!」

「桃子ちゃ~ん千鶴が怒ってるよ~」

「千鶴さん! お父さんなんだから怒っちゃだめだよ!」

「も、桃子まで何を言ってますの!?」


 笑いが起こる。それはとっても普通な光景で、桃子にとっては特別な光景だった。

 それから千鶴さんの昔話を聞いたりしていっそう賑やかだった。
 おじさんはとってもおもしろい人で、おばさんはとっても優しい。千鶴さんがあんな性格なのも納得できる。

 しばらく話していたらだんだんと眠くなってきた。だけどもう少し話していたくて……だけどとっても眠くて……。

 あっ、歯も磨かないと……。


 体が揺れている。誰かの体温を感じる。懐かしい感覚だ。

 ずっとずっと昔、同じようなことがあった気がする。

 だけどうまく思い出せない。それからふわりと柔らかい感触が体を包んだ。

「おやすみなさい。桃子」

 そっと囁く女の人の声が聞こえた気がした。


 懐かしい夢を見た気がする。目を擦ると涙の跡、あのころの夢を見ていたのかな。

 起き上がって、ようやく桃子が千鶴さんの部屋にいることに気が付いた。
 桃子の隣には千鶴さんが幸せそうに眠っていた。なんとなくじっと見つめる。

「ありがとう、千鶴さん」

 大切なことを思い出させてくれて、諦めかけてた夢を思い出させてくれて。
 
 それだけ言うと桃子は布団をたたんで部屋を出た。
 ここは二階だったみたいで、下からお味噌汁の匂いが漂ってくる。料理するような音も聞こえるし、きっとおばさんだろう。


「おはようございます。おばさん」

「あら。おはよう桃子ちゃん。よく眠れた」

「うん。ぐっすり眠れたよ」

「もうすぐ朝ごはん出来るからゆっくりしててね」

 とりあえず顔を洗いに洗面所へ。桃子の歯ブラシが置いてあったから昨日の夜もしっかりと歯磨きをしていたらしい。
 習慣って大切だと思いながら朝の歯磨きも終了。何か手伝いたいし、おばさんのところへ向かう。

「桃子も何か手伝う?」

「そう? それじゃあ……千鶴のことを起こしてきてもらおうかしら」

「千鶴さん? 任せて!」


 階段を上る。部屋に入るとさっきよりもだらしない姿の千鶴さんがいた。
 さっきはありがとうなんて言ったけど、今の桃子は容赦しないよ?

「起きろー! 千鶴さーん! 朝だよー!」

「ひゃあっ!? はい!? なんですの!?」

「千鶴さん、朝だよ。朝ごはん出来るちゃうよ」

「い、今行きますわ……ふわぁ……」

 よし、さすが桃子だね。一発で起こしちゃうんだもん。
 千鶴さんと一緒に下に行く。テーブルにはご飯が用意されていた。昨日と同じように座る。


「いただきます」

「いただきますですわ……」

「いただきます!」

 ホカホカのご飯にお味噌汁、焼き魚に漬物とよくある朝ごはんって感じだ。うん、どれもおいしい。

「桃子ちゃんは今日お仕事?」

「うん、ダンスレッスンなんだ」

「そうなの。いっぱい食べて元気を蓄えないとね」

「桃子いっぱい食べるよ! おばさんの料理おいしいし!」

「まぁまぁ、ありがとうね桃子ちゃん」


「わたくしもダンスレッスンですわ! お母さんおかわり!」

「はいはい。落ち着いて食べなさいよ」

「わかってますわ!」

 今日のことを話しつつご飯を食べる。おじさんも起きてきて四人で一緒に朝ごはんだ。

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでしたわ!」

「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさん!」

 食器を片づけて、それから家を出る準備。桃子はすぐに終わったけど千鶴さんはやっぱり時間がかかる。


「お待たせしましたわ! それじゃあ桃子、行きましょうか!」

「うん。おじさん、おばさん。泊めてくれてありがとう!」

「ふふっ、またいつでも来ていいからね?」

「そうだな! うちはいつでも歓迎だ!」

「本当? また来てもいいの!?」

「もちろん! 桃子ちゃんももう娘みたいなもんだからな! あっはっはっは!」

「桃子ー行きますわよー!」

「はーい! 絶対また来るからね! 約束だよ!」

 指切りをして玄関へ向かう。外に出て振り返るとおじさんとおばさんが手を振ってくれていた。
 また来てもいいって言ってくれた。それだけで、桃子は幸せだ。


「いってらっしゃい。車に気を付けてね」

「がんばってこいよー!」

「いってきますわ!」

「いってきまーす!」

 千鶴さんと手を繋いで歩き始める。来た時と状況は同じでも心の中は晴れやかな気持ちでいっぱいだ。

「うちはどうでした?」

「暖かくって、おじさんもおばさんも優しくしてくれて、とっても楽しかったよ! 泊まってよかった!」

「良かったですわ! 泊まりたくなったらいつでも言っていいですわよ!」


「それなんだけどね。桃子、なるべく言わないようにするよ」

「えっ? どうしてですの?」

 つい握っている手に力が入る。桃子にとって、すっごく勇気が必要だから。

「桃子ね。お父さんとお母さんの笑ってる顔が見たい。それを出来るのは、たぶん桃子だけだから……」

 だけど向き合わなきゃ。桃子のためにも。

「だから桃子は桃子の家でがんばることにする」


「そう……それが桃子の決めたことですのね」

「でもね……もし辛くなって、逃げ出したくなったら。また甘えちゃってもいい……かな……?」

「もちろんですわ。その時は、またわたくしが桃子の手を引っ張ってあげますわ!」

 きっと難しいことだと思う。今までずっと諦めずにやってきて、それでも変わらなくて、桃子も諦めかけてたことだから。
 だけど千鶴さんの家に来て、あのころを思い出して……もう一度見たいって思ったから。

 桃子……がんばるよ!

「えへへっ! よろしくね、千鶴さん!」

おわり

桃子「千鶴さんの家」 でした。

こんな感じになります。タイトルは最初に言うべきだったのに忘れてました。
いきなり重い?話で良かったんですかね。なるべく同じような雰囲気の話は続かないようにします。

少しだけ休憩したら次のSSにいきます。

昴「キャッチボール」


 ボールを投げる。ボスっとグローブでキャッチした音が鳴る。
 セミの大合唱は既に懐かしく感じるようになった秋の午後、涼しい空気がなんとも気持ちいい。スポーツの秋とはよく言ったものだ。

「昴ー投げますわよー」

「あっごめん千鶴ーいつでもいいぞー」

 ついよそ見をしていた。危ない危ない。千鶴が投げたボールはふんわりと山なりの球筋を描いてグローブに収まる。
 オレも同じようにふんわりとしたボールを投げる。千鶴は問題なくキャッチ。


「千鶴ーそろそろマジで投げていいー? もうボールには慣れたでしょー?」

「えっ、もうですの!?」

「大丈夫だってー千鶴はキャッチャーやってたんだしー」

「そ、そうですわね。よーしバッチコーイですわ!」

 千鶴からボールを返され、いつものフォーム。体を使って投げるとスパーンと気持ちいい音が響いた。
 うんうん、たまにはちゃんと投げないとなまっちゃうからな。

「す、昴! 速すぎですわ! 絶対危ないですわこれ!」

「大丈夫だってボールも柔らかいやつだし。もう一球いくぞー!」

「こ、こうなったら気の済むまで投げればいいですわ! 全部捕ってあげますから!」


 ボールが何度も往復する。実は最初のほうは軽い準備運動だからそこまで本気で投げてない。
 だんだんと本気に近づけているんだけど、千鶴はバッチリと捕ってくれる。

 千鶴がキャッチャーだと安心できるんだ。野球イベントの時だって、千鶴は初めてのキャッチャーなのにすごいと思った。
 絶対にボールを捕ろうと一生懸命だったし、他の人に声をかけあったりしてたし。

「千鶴ーそろそろ変化球投げていいー?」

「変化球はダメですわ! あんなの捕れる気がしませんわ!」

「ちぇー早く捕れるようになってくれよなー」

「我が儘言わないでほしいですわ!」


 何事にも真剣に取り組む。そんな千鶴がオレは好きだ。
 セレブなんて言ってるけど本当かどうか知らない。だけど、そんなもの関係ないと思う。

 キャッチボールしようぜなんて言っても真とか歩ぐらいしか乗ってこなかった。
 ロコなんかは最初誘っても嫌としか言わなかったけど、最近は少し付き合ってくれるようになったな。

 それで、誘えるような人が誰もいなかった日、たまたま近くにいた千鶴に声をかけた。


「千鶴、キャッチボールしない?」

「キャッチボール? いいですけど」

「ほ、本当か!? 嘘じゃないよな!?」

「ええ! これでもわたくしは近所の子どもたちに付き合って遊んだりしてますからね! おーっほっほっほゴホッゴホッ!」

「そうなのか! さすがセレブだな! それじゃ早く行こうぜ!」

「ちょっ、わかりましたから手を引っ張らないでくださいな!」


 それから俺は千鶴を誘うようになった。夏の滅入るような暑い日もなんだかんだ言いながら付き合ってくれた。
 まぁ体力が持たないってすぐに退散したけど楽しかった。あの後食べたアイスはめちゃくちゃおいしかったっけ。


「よーしフォーク投げるぞー下に落ちるからよく見て捕れよー」

「ほんとに投げますの!?」

 フォークを投げる。なるべく捕りやすいように投げたおかげか、千鶴がすごいのか、ボールは見事グローブの中に収まっていた。

「や、やったー! 捕れましたわー!」

「すごいじゃないか! もう一回投げていいか?」

「もちろんですわ! この二階堂千鶴に捕れない球はありませんわ!」

>>40
永吉昴(15) Da
http://i.imgur.com/wDY90Qf.jpg
http://i.imgur.com/QnauCyc.jpg


 それから何度も投げる。投げるのも楽しいし、キャッチした時の千鶴の嬉しそうな顔を見るのも楽しい。
 それなりに長い時間やってたけどもうすぐレッスンの時間だからと切り上げることにした。

 すっかり夕焼けに染まった空、オレたちは劇場へと歩き出した。

「いやぁ楽しかったな! いつもありがとな、千鶴!」

「わたくしも良い運動になりましたわ! 時間があるときならまた呼んでくれてもいいですわよ!」

「そうか? それじゃ今度は真たちと一緒になにかやるか!」

「そ、それはかなりハードになりそうですわね」

 確かに千鶴は体力ないからな。真たちもいたらすぐに疲れちゃいそうだ。


「でも絶対楽しいぜ! そん時はよろしくな千鶴!」

「ええ! 今日は楽しかったですわ!」

 手を上げてハイタッチ。最初にキャッチボールをしたときにやってからお決まりの挨拶になっていた。

「そうだ。オレばっかり千鶴に頼むのもなんだし、千鶴がしたいことがあったら言っていいよ」

「わたくしが? そうですねぇ……それじゃあ買い物にでも行きましょうか。昴も少しは女の子らしくするべきですわ」

 良いことを思いついたと言わんばかりの顔だ。これはオレをオモチャにしようと考えてるな。
 以前恵美や翼なんかと買い物に行ったときも着せ替え人形にされたし。

 まぁ、おかげでかわいい服装もわかったし感謝してるけどさ。


「買い物ね。オッケー! 今度のオフに一緒に行こうぜ!」

「そうですわね! プロデューサーにも言っておかないと。それにどこ行くかも考えないとですわね」

 千鶴があれやこれやと考え始める。こうして歩いていると、まるで姉妹のようだと思った。
 千鶴がお姉ちゃんか。うるさそうだけど、きっと楽しいだろうな。

「ん? なんですの? わたくしの顔に何か付いてます?」

「別に! なんでもないよ!」

 次に遊ぶ日が待ち遠しい。夕焼けに照らされた千鶴の顔を見ながら、そう思った。

おしまい

昴「キャッチボール」 でした。
千鶴が野球イベでキャッチャーをやっていたことを思い出したのでこんな話に。


可奈「歌が好き、アイドルが好き」

「良い子のみんなー! 集まれー!」

 私の掛け声で子どもたちが集まる。皆とってもかわいいなぁ! 自然と私も笑顔になってしまう。

 今日は子ども番組に出演している。私、矢吹可奈は前にも着た狐の衣装だ。
 子どもたちも動物の衣装で、犬や猫、ウサギにコアラなどなど。皆が一生懸命作った自分だけの衣装だ。

「はいはーい! それじゃあスマイル体操始めますわよー!」

 隣の千鶴さんが呼びかけ音楽が流れる。千鶴さんはライオンの衣装。
 
 最初は「わたくしが子ども番組に!?」なんて言ってたけど、私はとっても似合ってると思うんだけどなぁ。
 今だって子どもたちの様子にすっごい気を配ってるし。


「絶対ハッピー!! 全体ハッピー!!」

 子どもたちの合いの手も体操もバッチリだ。本番までいっぱい練習したからね。

「世界中笑顔になれ♪ アッハッハッハ」

 この曲はとっても楽しい。初めて聞いたとき、私も思わず動きたくなるぐらいだった。
 チラリと千鶴さんのほうを見ると、やっぱり千鶴さんも笑顔だった。

「まったねー!!!」

 曲が終わり手を振る。それからは子どもたちと遊ぶ時間だ。折り紙をしたり、みんなでできるゲームをしたり。
 みんな元気いっぱいで大変だ。泣きそうになる子がいたりしたけど、千鶴さんがすぐにフォローしてくれてとっても助かった。

 少し不安になっていると「わたくしに全部任せて、可奈は全力で楽しむんですわ」と小声で言ってくれた。

 ありがとうございますとお礼を言って、私はまた笑顔に戻る。そうだよね。
 子どもたちがこれだけ楽しんでるんだから、私も楽しまないと!
 
 それからは全力で楽しんだ。私もできる範囲で子どもたちのフォローをしつつ、千鶴さんと協力して進めた。
 スタッフさんからオーケーと言われるたびに千鶴さんとはしゃいだ。

「次はお歌の時間です! みんなも歌ってねー!」

 童謡を全員で歌う。歌っているとなんだかとっても懐かしい気分に。私も昔、テレビを見ながら一緒に歌ったっけ。
 だとすると、この中の誰かが私みたいにアイドルになるんじゃないか、そう思った。

 それはとっても素敵なことじゃないかな。


「みんな歌ってくれてありがとう! それじゃ次はお姉さんの番だね!」

 マイクを渡され、千鶴さんに連れられて子どもたちは下がる。
 このちっちゃなステージで、私の歌『オリジナル声になって』を歌う。

 子どものころから変わらない、歌が大好きな気持ちを込めて。

 歌い終わったあと小さな拍手が起きた。拍手してくれたのは小さな女の子だった。
 つられるように拍手が広がった。みんなが私の歌を聞いてくれて、良かったよと言ってくれているようだった。

 私は歌い終わった後のこの瞬間が、たまらなく好きだ。

 それから子どもたちと一緒になってカメラに手を振ってお別れ。みんな素敵な笑顔。


 これで私たちの出番は終わり。時間は短かったけど楽しかったから全然オッケーだ。
 スタッフさんのサインで、私たちは手を振るのをやめて子どもたちの前に出る。

「みんな今日はありがとうね! とっても楽しかったよ!」

「短い時間だったけど……グスッ……ありがとうございましたわ……」

 あはは、千鶴さん泣いちゃってます。やっぱり千鶴さんはこのお仕事にぴったりだ。

「それじゃあみんな、スタッフの人たちにお礼を言おっか!」

 私たちも横に戻って整列、元気なありがとうございましたの声がスタジオ内に響き渡った。
 スタッフさんもまた来てねと笑顔で返す。一緒に見ていた親御さんたちも笑顔で手を振ってる。

 なんだか凄く素敵な空間だ。みんなが笑顔で、幸せそう。スマイル体操の歌詞の世界みたいに。


「可奈お姉ちゃん! 千鶴お姉ちゃん!」

 この中で一番大きな男の子が私たちを呼んだ。なんだろうと思う。
 男の子は私たちに向かって横一列に整列するよう子どもたちに指示しはじめる。
 その意図を察して、私と千鶴さんも横に並ぶ。

「せーのっ、あーりーがーとーうーごーざーいーまーしーた!」

「うん! みんなありがとう!」

「グスッ……ありがとうですわ!」

 子どもたちが寄ってくる。私は撫でてあげたり手を握ったり、千鶴さんなんかは思いっきり抱きしめてる。
 真似して私も抱きしめる。この子たちが忘れないでいてくれると、嬉しいな。


「はいっ! 名残惜しいけどお別れです! みんなバイバーイ!」

「バイバイですわー! またいつか会いましょう!」

 手を振りながら離れる。スタッフさんや親御さんたちからもありがとうと言われ、私たちもありがとうございましたと返す。
 楽屋までの移動中、私はずっとニコニコしていた。千鶴さんはやっぱり涙目。

「千鶴さん! 今日はとっても楽しかったですね!」

「そうですわね。とっても楽しかったですわ! プロデューサーにお願いしてまたお仕事を取ってきてもらおうかしら」

「その時は私も一緒にお仕事したいです! 世界中~笑顔になれ~!」

「ええ、また一緒にやりましょう!」


 楽屋に戻り、着替える。しばらく休憩しているとノックの音、開けるとプロデューサーさんがそこにいた。

「お疲れ、二人とも。大成功だったな。色んな人からお礼を言われちゃったよ」

「わたくしのほうがお礼を言いたいぐらいですわ」

「千鶴さんはすっかり気に入ったみたいですね。やってよかったでしょう?」

「そうですわね! またやりたいですわ!」

「わかりました。今度交渉してみますよ。可奈はどうだった?」

「はい! さいっこうでした!」

「そうかそうか。可奈も楽しめたようでなによりだよ。それじゃそろそろ帰るか!」


 荷物を持って楽屋を出る。今日のお仕事は終わったし、プロデューサーさんは送ってくれると言ってくれた。
 私は家までお願いしたけど千鶴さんはこの近くの駅までで大丈夫と言った。

「いいんですか? 千鶴さんの家もそんなに遠くないはずでしたけど」

「だ、大丈夫ですわ。さぁ行きましょう!」

 駅に着くまでの間、車の中で千鶴さんと一緒に今日のことを振り返る。
 あの子がかわいかった、あの子は元気だった、子どもたちとの思い出は尽きない。

「可奈の歌も素晴らしかったですわ。みんなも聞き入ってましたわよ」


「本当ですか? 嬉しいなぁ」

「ふふっ、可奈の歌への思いが伝わったんですわね」

「……歌ってる間、小さいころを思い出したんです。私、テレビの前で、歌のお姉さんと一緒に歌ってました」

 小さい私は歌が大好きで、それは今でも変わらない。

「それが今、私は歌のお姉さんになってて。もしかしたら……テレビの前で私みたいに歌ってくれる子がいるんじゃないかって」

 それで私に憧れて、なんて。ちょっと思ったり。

「素敵ですわね……きっと歌ってますわ……」

「えへへ、そうだと嬉しいです!」


「千鶴さん、そろそろ着きますよ」

「送ってくれてありがとうですわ。プロデューサー」

「ええ~もう帰っちゃうんですか!?」

「また明日話しましょう?」

 名残惜しい。でも明日も会えるんだし、その時にまた話せばいいよね!

「また明日ですわ。可奈、プロデューサー」

 車が止まった。ドアを開けて外に出る千鶴さんを見て、あることを聞きたいと思った。
 思ってしまったんだから仕方ない。私はドアを開けて千鶴さんを追いかけた。


「千鶴さん! 一つ聞いても良いですか!」

「可奈? 聞きたいことって何ですの?」

「あの、私は歌が大好きで、アイドルが大好きだったから……アイドルになりました。千鶴さんはどうしてアイドルになったんですか?」

 自分の話をして、千鶴さんはどうしてアイドルになったのかなってふと思った。
 あのころの私みたいな時期が、千鶴さんにもあったのかなって。

「うーん、そうですわねぇ……」


 少し悩んで、千鶴さんは答えてくれた。

「可奈と同じ。アイドルが大好きだったから……私もアイドルになったの」

「え……?」

 答えるとき、千鶴さんの雰囲気が少し変わった気がした。
 でもそれは一瞬のことで、気付いたらそこにいたのは、いつもと変わらない千鶴さんだった。


「ほらほら、プロデューサーが待ちくたびれてますわよ?」

「ああっ! すみませんプロデューサーさん! 千鶴さんありがとうございました! それでは!」

 慌てて戻る。車の中から千鶴さんを見ると手を振っていた。私も同じように手を振る。
 千鶴さんが駅の方に歩き出すのを見て、車が動き出した。

 それからプロデューサーさんとたくさん話しているうちに、いつの間にか家に着いてしまった。

「送ってくれてありがとうございました! プロデューサーさん!」

「おう! また明日な!」

「はい!」

 車から降りて玄関に向かう。


「そうだ可奈。あの時千鶴さんと何を話してたんだ?」

「えーっと……内緒です!」

「そうか? まっいいか。それじゃあな!」

 手を振って見送る。なんとなく内緒にしちゃったけど、言わない方がいいかなって思った。

 それに言う必要もないよね。私も千鶴さんも、アイドルが大好きってことなんだから!


おしまい

>>52
矢吹可奈(14) Vo
http://i.imgur.com/pDfzm9t.jpg
http://i.imgur.com/Y1OWwVh.jpg

『オリジナル声になって』
http://www.youtube.com/watch?v=XGCS8UBJe8I

以上、可奈「歌が好き、アイドルが好き」 でした。
可奈との話を考えていたらなぜか子供番組に出演する話に。でも二人とも似合うと思います。

最後がやりたかっただけでもあったり。


美也と将棋

 午後三時。レッスンもなく仕事も夜から、欠伸が出るほど平和な時間を破ったのは美也のこんな一言だ。

「千鶴さ~ん、ちょっと勝負してみませんか~?」

 突然の提案、思わず雑誌を落としてしまう。決して読みながら眠っていたわけではない。
 それにしても勝負とはなんでしょう。まさか美也の口からそんな言葉が出るなんて思わなかった。
 雑誌を拾って美也に視線を移すと、その手に将棋盤を持っていた。

「それって……もしかして将棋ですの?」

「そうですよ~」

 こんなふわふわした口調だけど、その目は今すぐ遊びたいとキラキラ輝いている。
 そんな目で見られたらさすがに断れない。まぁ断る理由もありませんけど。


「いいですけど……そもそもどうしてわたくしに?」

「それはですね。事務所に私たちしかいないからですよ~」

 ぐるりと見回す。プロデューサーも他の皆もいない。小鳥さんもいないというのは珍しい。

「千鶴さん将棋のやり方はご存知ですか~? 教えますけど~」

「ふふん! その心配は無用ですわ。これでも昔は将棋界のセレブと呼ばれてましたのよ!」

 といっても子供のころの話だ。親に誘われて遊んでいるうちに学校では敵なしと恐れられた。
 美也がどれほどの腕前なのかは知らないけど、良い勝負にするぐらいはできるはず。


「それじゃあハンデも無しで。セレブって凄いんですね~」

「当然ですわ! おーっほっほっほっほ!」

 美也に駒を並べてもらう間にわたくしはお茶やお菓子の準備、紅茶もいいけどここは緑茶にしよう。

「はいお待たせ、それでは始めましょうか」

「よろしくお願いします~」

 向かい合う。先行は美也から。パチリと小気味良い音が二人だけの事務所に響く。
 わたくしも先の展開をあれこれ考えながら、最初の一手をパチリ。


 それから断続的にパチリパチリと無言のまま時が進む。時々お茶を飲むぐらいで会話も何もない。
 そんなことをしている余裕もないぐらい、美也は強かった。

 徐々に考えている時間の方が長くなり、気付いたときには王手をかけられていた。
 なんとか逃げようとしても美也は許してくれない。完全に……詰んでしまった。

「……参りましたわ……」

「ありがとうございました~」

 すっかり冷めたお茶を一気飲みして煎餅をバリバリ食べる。美也もさっきの真剣な表情から一転、幸せそうに大福を食べている。
 負けるだろうとは思ってたけどここまでなんて……。


「美也は強いですわね……悔しいですわ……昔はもう少しできたはずなのに」

「いえいえ~千鶴さんもお強かったですよ~? 何度も驚いちゃいました~」

「そうですの? 全然そうは見えなかったですわ」

「よくおじいちゃんたちからも表情が変わるって言われますね~」

「普段のニコニコしている美也とは明らかに変わってましたわ。こう……キリッとした」

「こう、ですか?」

 美也なりに真剣な表情を作ろうとしてるんだろうけど、なんだかおかしな顔になってる。思わず吹き出してしまった。


「くふふ、美也。おもしろすぎますわその表情」

「あ~! 笑いましたね~千鶴さん!」

 その表情のままで言われても、怒ってるんだか笑わせようとしているのかわからない。

「ご、ごめんなさいですわ。だからその顔を早く、くふふ……!」

「あっ……! ……プロデューサーさんのモノマネで~す!」

 変装用のメガネをかけたかと思えば腕を組んで満足そうに頷く美也。
 それはレッスンを覗きに来たプロデューサーに結構似ていた。

 わたくしはというと、変にツボに入ってしまったらしく、さっきから笑いが止まらない。


「やっ、やめっ、ふふっ、やめるんですわ美也っ」

「ウケました~あとで皆にも見せてあげましょう~」

 ようやく呼吸も落ち着いてきた。腹筋が痛い。

「それじゃあリラックスもできたということで~もう一回やりますか~?」

「まったく……望むところですわ! 次こそは……!」

 挑み、負けて、少し教わって、挑んで、また負ける。三回やったが結果は全敗。
 美也も堪能したのか満足そうにしている。わたくしも負けてばかりだけど楽しかった。

 最後に、と雑談しながらパチリ。さすがに話しながらできるぐらいの余裕は生まれてきた。

>>69
宮尾美也(17) Vi
http://i.imgur.com/Pv3wKUs.jpg
http://i.imgur.com/EUPWttR.jpg


「千鶴さんはセレブなんですよね~」

「うぐっ……まぁ、そうですわ」

「お金があると美味しい物がたくさん食べられますね~」

「そうですわね……お金があれば好きなものが買えますから。やっぱりお金はあったほうがいいですわ」

「でも~お金があっても買えないものはありますよ~?」

「ありますわね。美也にとっては……例えばどんなものですの?」

「う~ん、千鶴さんと一緒にいられるのはお金じゃ買えないぐらい大切ですよ~」

 手が止まる。チラリと美也を見ると、目が合った。楽しそうに、嬉しそうに笑う美也。
 恥ずかしい言葉を平然と言ってしまえる美也が、少し羨ましい。 


「……またやりましょうね」

「はい~」

 美也が王手をかける。打つ手はなく、またしても負けだ。
 今は勝てそうもない。それでも、わたくしたちには次がある。

「ふぅ、次は勝ちますわ」

「私だって次も負けませんよ~?」

 二人で笑い合う。美也と今まで以上に仲良くなれた気がする。
 それにしても、このいつも幸せそうで、だけど勝負事では意外と負けず嫌いな美也に勝てるのは、いつになることやら。


おしまい

以上、美也と将棋 でした。
美也はかわいい。将棋中の美也はカッコいい。そんな美也もありだと思います。

千鶴は将棋もできそうなんて妄想から。おじいちゃんとかに教えられてそう。


『コロッケと商店街』


○月×日
 私はよく近くの本屋にゲーム関連の本を買いに行く。
 その本屋は商店街の中にあって、その商店街に行ったとき、私はいつも出来立てホカホカのコロッケを買って帰る。

 本当は家に着いてから食べるべきなんだけど、時々自転車に乗りながらつまみ食いする。
 とてもおいしく、なんだか懐かしい。そんな味だ。
 今日も本を買った後、いつものようにお店の前に来た。そこで私は千鶴さんに会った。

 会った、と言っても向こうはたぶん気付いていない。なぜなら千鶴さんは忙しなく働いていた。
 エプロンに三角巾、お客さんに笑顔を振りまきながらお買い得品をアピールしつつ注文に対応していた。

 私も最初は気付かなかったけどよく聞く声と見覚えのある笑顔でビビッときた。
 どうして千鶴さんがという疑問よりも、千鶴さんがいつも持ってくるコロッケ。
 あれがこの店と同じ味だと今さら気が付いたことに驚いた。


 まぁ……冷静になって考えることが出来るようになったのは帰り道の途中。
 驚いた私は脱兎のごとく逃げ出していたのだ。

 だから千鶴さんは気付いていない。私だけが知っている千鶴さんの秘密。
 今の気分は、まるで探偵にでもなったよう。

 あるいは……好きな人の知られざる一面を知ったときのよう?


○月△日
 次の日、私は千鶴さんの様子を観察してみた。
 うん、いつも通り。セレブであろうと空回りしてるところもコロッケを持ってきてくれたことも。
 一口食べて昨日のことが確信に変わる。

 千鶴さんはレッスンが終わると早々に帰ってしまった。そういえばあの日も早く帰っていたはず。
 私は百合子さんに別れを告げて家に帰った。

 服装を変えて、念のため変装用のメガネをかけて、私は意気揚々と商店街へ向かう。


 お店の近くに来ると千鶴さんの声が聞こえた。
 宣伝に混じって誰かの名前を呼ぶ声、反応したのは八百屋のおじさんだったり買い物に来たおばさんだったり。
 逆に千鶴ちゃんと呼ぶ声も聞こえてき、て千鶴さんは名前を呼びながら返事をする。

 つまり千鶴さんは商店街の人気者で、会ったことのある人は名前までちゃんと憶えているってことだ。
 確か千鶴さんはスタッフさんの名前まで憶えているんだっけ。
 きっと昔から商店街の人気者だったんだろうな。それで自然と身についたんだ。すごいな……。


 尊敬と共にほんの少しの期待が芽生えた。
 人混みに紛れてお店の前へ、千鶴さんとの距離が一メートルもない位置で、私はコロッケを一つと注文した。

 千鶴さんはパッと私の方に向き、コロッケ一つですねと笑顔と一緒にコロッケを渡してくれた。
 なるべく顔を伏せてるし変装もしてるからか、千鶴さんは気付いていないようだ。
 しめしめと思いながらお金を渡し足早に離れる。

 ありがとうございましたと言う声を聞きながら、私はドキドキする心臓と緩みそうになる頬を必死に抑えた。


○月○日
 この日も千鶴さんは早めに帰宅した。後を追うように私も劇場を出る。
 それまで話していたロコには悪いけど今はこっちが優先。あの時と同じように変装して商店街へ向かった。

 相変わらず大盛況、もしかして千鶴さんが手伝っているから?
 たぶんそうだ。商店街の入り口で千鶴さんが来ているよと話している人がいたし。
 やっぱりこの商店街でも千鶴さんはアイドルなんだ。


 お店の近くに行くと千鶴さんと一緒に、たぶんお母さんだと思われるおばさんが働いていた。
 息の合った二人の客捌きは見事と言うほかなく、飛ぶように売れていた。

 ……なんてぼんやりしてる場合じゃないと急いで並ぶ。
 なんでも今日は特売日らしく、私の番になったときコロッケは無くなってしまった。

 まさかの事態にパニックとなった私。千鶴さんに「注文は?」と聞かれ、私は「コロッケ……」と子供のような言葉しか出なかった。
 千鶴さんは「お父さん! コロッケ!」と大声で店の奥に向かって言うと、大量のコロッケをお盆に載せたお父さんが出てきた。


千鶴さんはそれの一つをさっと袋に詰めて私に渡す。その距離は以前よりずっと近かった。
 別の意味でパニック。

「お待たせしましたわ! コロッケ一つでよろしいですわよね?」と言われ、我に返った私はお金を出して脱兎のごとく逃げ出した。
 ありがとうございましたの声は喧騒の絶えないこの場所で、確かに私の耳に届いた。

 そして後になって気付いた。私はコロッケと言っただけで、一つなんて言っていないことに。


○月◇日
 この日は雨の日だった。仕事もほとんどなくレッスンが終わったら皆まっすぐ帰宅した。
 これじゃ千鶴さんがお店にいるのかわからない。家に帰った私はしばらく悩んだ後、変装をして外に出た。

 商店街の中は屋根がある。傘を閉じて見回すとさすがに人の量は少ない。
 雨の日に買い物をしようなんて思わない、ましてやコロッケ一つを買うなんて怪しまれるかな?

 カモフラージュの必要が……なんて考えていたらたい焼き屋のおじさんが声をかけてきた。
 雨の日だし安くするよなんて言われてしまった。そう言えばこの商店街で買うのはコロッケぐらいで、他の物は食べてない。
 せっかくだし、私はあんこのたい焼きを一つ買った。試しに一口……うん、おいしい。


 食べながら歩いているとまた声をかけられた。団子屋のおばさんが「お一つどうだい? お代はいらないよ」と聞いてきた。
 みたらし団子……せっかくだからと貰う。

 それを隣のパン屋のおじさんに見られた。メロンパンも食べてみなと渡される。
 団子屋さんもそうだけど、お客さんがいないからってただで渡すのはどうなんだろう?

 それから八百屋さんでりんご、洋菓子屋さんでクッキー、その以外にも色んな店からあれやこれやと渡されてしまった。
 たい焼き屋さんの人がクリーム味を持って走ってきたときは驚いた。他の人の話を聞いて負けてられないと思ったらしい。

 結局千鶴さんのお店に着くまでにたくさん貰ってしまった。


 安心していいのかわからないけど、千鶴さんはいつものようにそこにいた。
 この持ち物で人も少ないし、こそこそしても仕方ないと真っ直ぐ向かった。

 私を見るとちょっとだけ笑って、すぐに優しい笑顔で「ご注文は?」と聞いてくる。私は前と同じく「コロッケください」と言った。

 「はいコロッケですわ。お代はもちろん大丈夫ですわよ?」

 そう言いながらウィンク。私は恥ずかしくて、今すぐ帰ろうと背を向けて……すぐに千鶴さんの方へ向き直した。

 「ありがとう、ございます……」

 それだけ伝えて、逃げ出すように早歩き。ちょっと離れたところで「ありがとうございましたわ!」と聞こえてきた。

 今度は私からお礼を言えた。
 今まで言えなかった言葉、商店街の皆がただで貰っている私にまで言ってくれた言葉、千鶴さんが言ってくれていた言葉。

 それを少しは返せた気がした。


△月○日
 それから私は千鶴さんのいないような日でも商店街に行くようになった。
 たい焼きはすっかりお気に入り。それに、商店街の人に挨拶すると返してくれることが嬉しかった。
 声をかけてくれることが嬉しかった。

 だけど誰も私の名前は呼ばない。当然だけど、私が名前を言わないからだ。
 それだけが少しだけ心残りでもあった。

 そんな時、プロデューサーさんから商店街のイベントでライブの依頼をされたという話を聞いた。
 それは千鶴さんのアイドル姿を見たいという理由なんだろう。プロデューサーもギリギリまで千鶴さんには内緒にすると言っていたし。

 それを聞いたとき、私は悩んだ。それから意を決して、プロデューサーさんにお願いした。
 私もステージに立ちたいと。


×月○日
 本番当日、私は商店街に来ていた。千鶴さんのライブをいつもの変装した姿で見ていた。

 千鶴さんが知ったときの表情は今でも忘れられない。
 それを素知らぬ顔で受け流すプロデューサーさんと顔を真っ赤にしながら何も言い返せない千鶴さん。
 自分の家族とも言える人たちの前でライブをするんだから恥ずかしいのは当然だ。

 だけど今の千鶴さんはいつも通りだった。セレブを名乗る二階堂千鶴ではなく、商店街の人気者である二階堂千鶴。
 私にとっては優しいコロッケのお姉さん。とても自然で、素敵な笑顔。
 歌い切った瞬間、その表情は感謝で溢れているようだった。


 拍手と声援に包まれながら千鶴さんは袖に引っ込む。よし……ここからは私の出番だ。
 司会の人のスペシャルゲストという言葉に首を傾げる人がたくさんいた。
 ほとんどの人は千鶴さんが来ることしか知らない。それは千鶴さんも同様で、誰のことかとプロデューサーさんに問いかけていた。

 私は……勇気を振り絞って袖に入った。この距離でこの状況だ。きっと私が誰か気付くだろう。
 怒られるかも、嫌われるかも、そう思った。それでも感謝の気持ちを伝えたいと思ったのだ。

 それは、私はこの商店街が大好きになっていたから。
 千鶴さんに、お店の人たちに、お客さんたちに……私は色々なものを貰ったから。


「やっぱりあなたでしたのね」

 名前を言おうとしたら、千鶴さんはそう言った。
 どうやら千鶴さんは気付いていたみたいだ。
 それでも誰にも言っていないみたいだったし、なによりすごく嬉しそうだったから言わなくてもいいと思っていたらしい。

「あなたならきっと皆も受け入れてくれますわ。だから胸を張っていきなさい」

「そうかな……そうだと、いいな……」

「ふふっ、帰ったらおいしいコロッケを用意しておきますわ!」

「うん。コロッケ……楽しみにしてるね……?」


 ゆっくりと、私はステージの真ん中に立った。
 ざわざわとした音の中に「あれって、あの子じゃないか?」と聞こえた気がした。

 私はゆっくりと深呼吸して、マイクを通して話し始めた。

「あの……ここのたい焼き屋さんのたい焼きはとってもおいしい……です」

 何が起きてるかわからないって感じだったけど、たい焼き屋のおじさんが俺の店だ、と力強く言ってくれた。
 少し笑いが起きる。私の緊張も少し無くなった。



「団子屋さんは、みたらしも、ずんだもおいしいです」

 安くしとくよー、とおばさんの声。なんだかいつも言ってる気がする。

「八百屋さんの野菜はいつも新鮮です。今はナスが……食べごろ?」

 この後買っていってねとおじさんが言う。
 私がお店を一つ一つ言っていき、そのたびに笑いが起きたり、お客さんの相談する声が聞こえてきた。


「そして……二階堂精肉店さん。私の一番のオススメはここのコロッケ……です」

「わたくしのお店ですわ! ぜひ来てくださいね!」

 千鶴さんが袖から顔を出して言ってくれた。目が合うと、がんばってと口パクで言ってくれた。

「……この商店街が大好きです。優しくて、暖かくて……だからお礼がしたいなって思いました」

 しんと静かになる。私の言葉を聞いてくれているのだと思うと胸が暖かくなった。

「それで……出来ることをやろうと思いました。アイドルらしく……歌で、この想いを届けます……!」


 変装を解く。私のことを知ってる人が声を上げた。

 ずっとずっと隠してきた、それでも優しくしてくれた人たちに感謝を込めて……名前を口にする。


「望月杏奈……です! 曲名は『Happy Darling』!!」

>>101
望月杏奈(14) Vo
http://i.imgur.com/uVfaN0V.jpg
http://i.imgur.com/6u1voJt.jpg

『Happy Darling』
http://www.youtube.com/watch?v=hdwEwY3D9Zs


×月△日
 今日も私は商店街に来ています。杏奈ちゃんと呼ぶ声に返事をしながら、私は受け入れられた幸せで胸がいっぱい。

 商店街は私と千鶴さんの出没する商店街として話題になり、以前よりも活気あふれています。
 迷惑じゃないかなと思ったりしたけど商店街の皆は全然変わっていません。むしろ客が増えて嬉しいらしいです。

 変な人がいたら怖いおじさんたちが助けてくれるからね、なんてお店の方を指さしておばさんが言ってました。
 それにおう、と返事をするおじさんたち。
 家族がいっぱい増えたみたいでちょっと不思議な気分です。


 今日の目的はもちろんコロッケ。千鶴さんの店も繁盛しちゃってすごいそうです。
 猫の手も借りたいなんて言ってたし、お手伝いしてみようかなと考えてたり。

 そんなことを考えてたらお店に着きました。

「あら杏奈いらっしゃい! 今日もいつもの?」

「いつもので、お願いします……!」

 帰り道で食べるコロッケは、今までより何十倍も、おいしいです。

以上、『コロッケと商店街』 でした
杏奈は自転車でコロッケを買いに行くそうです。それが千鶴の商店街だったら、なんて話。
日記形式のようにしたのはなんとなくです。わりとお気に入り。

そろそろ眠ろうかと思います。お昼か、夜には再開できるはず。
それでは。

一旦乙です、おやすみ~



もしかして以前、千鶴さんと伊織ちゃんが出てくる小説形式のSS書かれました?

>>106
伊織と千鶴というタイトルならそうですよー

読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
まだまだ続く誕生祭、少しだけ投下します。

まさか眠れないで、結局終わっていないものを完結させることになるとは思わなかった……


奈緒「765プロ料理対決第一弾!」貴音「料理対決と聞いて」


奈緒「さあ始まるでぇ! 765プロ料理対決! ほんまにおいしい料理を作れるのは誰かー!」

貴音「審査員は私、四条貴音と」

奈緒「横山奈緒でお送りします! 早速やけど選手入場や!」

奈緒「赤コーナー! 残した伝説数知れず! プロデューサー泣かせの超大盛り! 佐竹美奈子選手!!」

美奈子「わっほ~い! 佐竹美奈子でーす! 今日はよろしくお願いします!」

貴音「彼女の料理で注目するべきはなんといってもその量。あの二十郎にも劣らないですね」

奈緒「美奈子は佐竹飯店という店の娘さんなんやで。安い、多い、うまいと三拍子揃った人気店なんですわ」

貴音「彼女の料理は、既にお店に出す料理と遜色ないです。765ぷろ一の料理人と言っていいかもしれません」

奈緒「ああ……早く食べたいわぁ……」

貴音「ええ……お腹が空いてきました……」


千鶴「ちょっと! わたくしの紹介がまだですわよ!」

奈緒「ああっ! すんません千鶴さん! 今から紹介しますんで!」

奈緒「おほん! 続きまして赤コーナー!」

貴音「せれぶではないと噂され、庶民の味方ともてはやされる。節約料理でやよいと共に大活躍。二階堂千鶴嬢です」

千鶴「おーっほっほっほゴホッゴホ!! に、二階堂千鶴ですわ!」

奈緒「よっ! ニセレブ!」

千鶴「誰がニセレブですか!!」

貴音「千鶴嬢はやよいと共に料理番組をしており、その腕はかなりのものです」

奈緒「私もよく見てるで。簡単でおいしく作れるから大助かりや」


貴音「今日は節約ではなく純粋に味の勝負ですが、自信のほどはいかがでしょう?」

千鶴「ふふん! 自信満々ですわ! 節約料理以外だけではないと教えてあげますわ!」

奈緒「これでまだセレブって主張できる根性はさすがやね」

千鶴「わ、わたくしはセレブですわ!」

奈緒「わかってますって。二人ともキッチンのほうにお願いします」

美奈子「千鶴さん! 今日は負けませんよ!」

千鶴「望むところですわ!」

奈緒「はじめますよー! レディー、ゴー!」


貴音「さぁ、料理対決が始まりました。美奈子、千鶴嬢ともに物凄い勢いです」

奈緒「美奈子の中華鍋の中で食材が踊ってるみたいやわ」

美奈子「超特急で作りますから楽しみにしててくださいねー!」

奈緒「待ってるでー! ああ忘れてましたわ。今回の料理対決、時間制限はあるんやけど数は指定してません」

貴音「私と横山奈緒ならどれだけ出されても完食する自信がありますからね」

奈緒「なんでぎょうさん料理作っておいしい思わせた回数が勝利の秘訣なんや」

貴音「料理描写は基本的にかっとします。そうでないと時間が足りませんから」

奈緒「あの二人なら10品ぐらい作ってきそうやな。魔法でも使ってるんか?」

貴音「厨房がどんな状況なのかはご想像にお任せします」


千鶴「出来ましたわ! はいカツ丼お待ち!」

奈緒「おっとー! 意外にも最初に持ってきたのは千鶴選手!」

貴音「基本を抑えた見事なカツ丼ですね。早速いただきましょう」

奈緒「どれどれ~? ハグ……う~ん! うまかった!」

貴音「千鶴嬢、おかわりをお願いします」

千鶴「わたくしは二人の食べる早さが怖いですわ……」

奈緒「これぐらい関西じゃ普通ですわ。なぁ貴音?」

貴音「そうですね。それよりもおかわりを……」

千鶴「次は別の料理ですわ! それじゃ戻りますわよ!」


貴音「千鶴嬢はいけずですね……」

美奈子「貴音ちゃーん! 奈緒ちゃーん! はい! まずは炒飯!」

奈緒「おお! 続いて美奈子選手! 特盛炒飯を持って登場!」

貴音「千鶴嬢よりも量が多いですね。これは食べ応えがあります」

奈緒貴音「……ごちそうさまでした!」

美奈子「二人の食べっぷりはいつ見ても凄いね! 私も嬉しいよ! それじゃ戻るね!」

奈緒「おいしかったわ~塩コショウが絶妙やったね」

貴音「さすがは佐竹飯店、今度食べに行きましょう」


奈緒「うーん、今のところ量では美奈子選手が上やけど、質で言ったら千鶴選手かもしれへんな」

貴音「千鶴嬢は肉に関してはプロに並ぶと言われていますからね」

奈緒「さすがは二階堂●●●の娘さんってことやね」

千鶴「ちょっと奈緒!? 名前を出さないでほしいですわ!?」

貴音「ここからはだいじぇすとになります。さて、勝つのはどちらになるでしょう」


美奈子「わっほーい! 回鍋肉お待ちー!」

貴音「なんとも美味な……」

千鶴「生姜焼きですわ!」

奈緒「なんやこれ!? こんなうまい生姜焼き食べたことないで!?」

美奈子「チンジャオロースですよー!」

奈緒「うまっ! これうっま!」

千鶴「ハンバーグですわ!」

貴音「この肉汁……! なんて贅沢な……!」

美奈子「エビチリ!」

千鶴「牛丼!」

美奈子「担々麺!」

千鶴「肉じゃが!」

…………


奈緒「ふぅ~食べた食べた!」

貴音「時間的にあと一品といったところでしょうか」

奈緒「こうして積みあがったお皿を見るのなんか楽しいな。回転寿司みたいやわ」

貴音「ふふっ、そうですね」

美奈子「お待たせー!」

千鶴「完成ですわ!」

奈緒「おっと同時に持ってきましたね。何を作ってきたん?」

美奈子「私は……じゃーん! 北京ダックでーす!」

千鶴「わたくしは、ステーキですわ! お肉対決というわけですわね!」

貴音「これは……どちらも完璧です」

奈緒「見てるだけで涎が出てきますわ……早速食べましょ!」


貴音奈緒「いただきます!」

貴音「まずは北京だっくを……これは!? なんと面妖な!?」

美奈子「自信作ですから! 味わって食べてくださいね!」

奈緒「私はステーキを……な、なんやこれ!? うますぎやろ!?」

千鶴「最高級の肉を使用していますわ! これに勝るものなどありませんわ! おーっほっほっほっほ!」

貴音奈緒「……ごちそうさまでした!」

奈緒「時間は残り一分! さすがにこの時間じゃ作れないですね」

貴音「それでは本日はここまでですか。もう少し食べていたかったですね」


千鶴「ふっふっふ……おーっほっほっほゴホッゲホッ! ま、まだ終わっていませんわ!」


奈緒「な、なんやて!?」

千鶴「実は最初の段階でこっそり用意していたものがありますの。はい! 特製アイスですわ!」

美奈子「デザート!? ううぅ、料理に夢中でそこまで考えてなかったよ……」

貴音「これは……時間もないですし早速いただきましょう」

奈緒「はむ……くぅ~! 冷たくて甘い! 最後にぴったりやわ!」

貴音「これがばにらあいす……いいものですね」

千鶴「子どものころからよく作ってましたから味もそれなりですわ!」

奈緒「ごちそうさん! さあここでタイムアップ!」


貴音「美奈子は10品、千鶴嬢はあいすも入れて11品ですね」

奈緒「それでは審査に入りましょう! 勝ったのはー!」

じゃかじゃかじゃかじゃか……じゃん!


奈緒「二階堂千鶴選手です! おめでとー!」

千鶴「ほ、本当ですか!? やりましたわー!!!」

貴音「千鶴嬢、おめでとうございます。美奈子もよくがんばりましたね」

美奈子「悔しいけど、今回は私の負けですね。次は絶対に負けませんから!」

千鶴「いつでも挑戦を待っていますわ!」


奈緒「それでは本日はここまで! この番組は横山奈緒と!」

貴音「四条貴音と」

美奈子「佐竹美奈子と!」

千鶴「二階堂千鶴でお送りしましたわ! おーっほっほっほっほ!」

四人「それではまた来週~!」

美奈子「あっ! 佐竹飯店をよろしくお願いしまーす!」

千鶴「それならわたくしも! 二階堂●●●をよろしくですわ!」

奈緒「ちょ、千鶴さん言っていいんか!?」

千鶴「そ、そうでしたわ!? 編集しておいてくださいと頼まないと! プロデューサー!」

貴音「次回もまた、お会いしましょう。それでは」


おわり

以上、奈緒「765プロ料理対決第一弾!」貴音「料理対決と聞いて」 でした。
今までの形式とは変わって台本書きです。

一度料理対決をさせたかった。千鶴は肉料理なら完璧そうですよね。
残念ながら自分の料理スキルがないため詳しく書けないのですが……。

>112
横山奈緒(17) Da
http://i.imgur.com/BUTFrPL.jpg
http://i.imgur.com/c09yVGC.jpg

四条貴音(18) Vo
http://i.imgur.com/HT9zG6B.jpg
http://i.imgur.com/R2v6Pkk.jpg

佐竹美奈子(18) Da
http://i.imgur.com/49Fe45N.jpg
http://i.imgur.com/Qf8B4LF.jpg

生放送を見つつ再開していきます。


 ある日のことです。私、真壁瑞希は二階堂さんと一緒にレッスンの準備をしていました。

「あのぅ瑞希さん、千鶴さん」

 箱崎さんが私と二階堂さんを呼びました。なんだか申し訳ないような表情です。

「どうしましたか?」

「何か相談ですの?」

「あの……一緒に遊園地に行ってほしいんです!」

 チケットを出す箱崎さん。これは俗に言う告白というものなのでしょうか。
 なんて冗談を思いついてしまうぐらい顔を赤くして渡す姿は微笑ましいです。
 チケットは三枚、ということは私と二階堂さんを誘っているということでしょう。


「遊園地……ですの? 星梨花と瑞希とわたくしで?」

「はい……実は……」

 箱崎さんの話では、この前のお礼にとお父さんからチケットを受け取ったそうです。
 私も二階堂さんもお礼らしき物を受け取ったはずでしたが、まだお礼はあったようです。

「なるほど……この遊園地もめちゃくちゃ人気なのに、さすが星梨花パパですわね」

「しかも優先して案内してもらえるフリーパスです。乗り放題」

「あの、一緒に行ってもらえますか?」

 二階堂さんと目を合わせる。答えは既に決まっています。

「もちろん、行きますわよ!」

「三人でお出かけです」

「わぁ……! ありがとうございます!」


 三人でオフの日を合わせて、準備や当日の予定を組んで。
 ついに遊園地に行く日が来たのです。今日は、楽しむぞ。

「あっ! おはようございます! 瑞希さん!」

「おはようございます、箱崎さん」

「おーい! 二人ともお待たせですわー!」

「千鶴さん! おはようございます!」

「おはようございます、二階堂さん」

「ふぅ、ちょっと準備に手間取ってしまいましたわ。それじゃあ行きましょう!」

 三人で電車に乗り込む。目的の駅までは三十分ぐらい。


「私、今日初めて行くので楽しみです!」

「三ヶ月前にオープンしたそうです。最初のころはチケットの予約が一か月先だったとか」

「凄いですわね。今日は休日ですから人がいっぱいでしょうし、はぐれないように気を付けないとですわね」

「そうですね。私は背も小さいから気を付けます!」

 確かに、私は160cmで二階堂さんは165cm、箱崎さんは146cmです。

「これは……人混みでは手を繋いだ方がいいかもしれませんわね」

「そうですね。手を繋げば、はぐれることも無くなります」

「すみません……お願いします」

 私たちは箱崎さんの保護者でもあります。ここは年上として、しっかりしっかり。


「最初はコーヒーカップ、メリーゴーランド、バイキング、それからジェットコースター巡りですわね」

「途中にお化け屋敷やミラーハウスもあるそうです。お化け屋敷……」

「なんだか怖いって評判みたいですね」

「た、楽しみですわね?」

「千鶴さん? なんだか声が」

「そ、そんなことより! そろそろ着きますわよ!」

 話しているとあっという間です。私たちは電車を降りて駅から出ました。少し歩けば遊園地です。
 入場口は既に人でいっぱいでした。物凄い人の量にクラクラします。


「ここにいる全員が入るんですね。なんだか凄いです」

「わたくしたちもその一人ですわ。それにしても……これは圧巻ですわね」

「なんだか緊張してきました。ドキドキ」

 待っている間も人はどんどん増えていきます。そして、開園の時間となりました。

「出発しますわ! 星梨花、念のため手を繋ぎますわよ。最初の動きが肝心ですわ!」

「はい! 出発進行~!」

「おー」

 軽快な音楽が心を弾ませます。私たちは人混みに流されながらも、なんとか予定通りコーヒーカップへ。


「ふふっ、久しぶりですわ。こんな風に遊ぶのも」

「千鶴さんはあまり来ないんですか?」

「ええ、大人になってからは全然ですわ。それに……お金も……」

「それでは、今日は遊びつくさないと、ですね」

「ええ、思いっきりはしゃぎますわよ!」

 私たちはカップに乗り込む。真ん中にはカップを回すハンドル、二階堂さんはそれをガシッと掴みます。

「だから、今日は手加減なしで行きますわよ! 付いてきなさい!」


 音楽が鳴り、景色が回転を始めます。それも猛スピードで。
 ぐるんぐるんと勢いよく回るカップ、二階堂さんの高笑いに箱崎さんのはしゃぐ声が聞こえます。

 私はというと、二階堂さんと一緒にカップを回すお手伝い。回せ回せ。
 どれくらい回っていたのかわかりませんが、カップがゆっくりになっていきます。もう終わりですか。

「楽しかったですね! ぐるぐる回ってなんだかフラフラします!」

「目が回っています。これが千鳥足……」

「あれ? 千鶴さんは?」

 振り返ると私たちよりもフラフラな二階堂さんがいました。

「ちょ、ちょっと待って……少し休憩を……」

「た、大変です! そこで休みましょう!」

 近くのベンチに座ります。しばらく休憩すると二階堂さんの呼吸も落ち着いてきました。よかった……。


「この程度でフラフラになるなんて……昔はどれだけ速く回せるか競争してましたのに……」

「大丈夫ですか……?」

「もう大丈夫ですわ。時間は有限ですし、次に行きますわよ!」

 グッと立ち上がるも少しふらつく二階堂さんを慌てて支えます。
 次のメリーゴーランドは私と箱崎さんだけで乗ることに。二階堂さんは外から写真を撮ってもらいます。

「私はこの白馬さんにします! とっても優しそうな顔をしてますし!」

「そうですね。では私はその隣にいる凛々しい顔つきの白馬さんに。カッコいいぞ」

 早速乗ります。少し景色も高くなりました。これが馬に乗ったときの高さですか。
 隣の箱崎さんが白馬に乗る姿はよく似合っています。まるで絵本のお姫様みたいです。


「あっ、動き出しました!」

 ゆっくりと動き出します。流れる風が心地いい。

 外を見ると子供を撮る親御さんたちの中に二階堂さんを発見しました。手を振ると二階堂さんはカメラをビシッと構えます。
 あのカメラ、箱崎さんが持ってきたものです。これで写真でもとお父さんから渡されたそうです。

「なんだか夢の国に来ちゃったみたいですね」

「はい。箱崎さんはお姫様みたいです。私は王子様でしょうか」

「瑞希さんはアイドルシンフォニーで着てたスーツも良く似合ってましたし、王子様の衣装も似合うと思います!」

「そうですか? 王子役、プロデューサーにお願いしてみましょう」

 話しているうちに動きが遅くなってきました。もうお終いの時間みたいです。
 白馬さん、いえここは名前を……そう、レオナルドさん。またいつかお会いしましょう。


「また乗りに来ますね」

「え? 瑞希さん何か言いましたか?」

「はい。レオナルドさんにお別れを」

「えっと……レオナルド?」

「白馬さんの名前です」

「あぁ! 白馬さんの名前だったんですね! じゃあ私の乗っていたあなたは、フランセスです! バイバイ、フランセス!」

 完全に止まってしまいました。私たちはお別れをして二階堂さんのところへ行きます。


「お帰りですわ。二人の写真はバッチリ撮れましたわよ!」

「ただいまです! フランセスに乗れてすっごく楽しかったです!」

「私もレオナルドとのひと時は忘れません」

「え? フランセス? レオナルド? それって誰のことですの?」

 何も知らない二階堂さんは不思議そうに私たちを見る。せっかくだし、これは二人だけの秘密にします。

 よくよく考えたらとても恥ずかしいことをした気がします。箱崎さんと一緒だとメルヘンな考えになってしまうのでしょうか。不思議です。


「それよりも次はバイキングです」

「あそこに見える大きな船ですよね。早く乗ってみたいです!」

「次はわたくしも乗りますわよ!」

 早速私たちは特別列に並びます。一般列はかなり並んでいましたがフリーパスのおかげであっという間です。

「ベルトをしめて、と。さぁ! かかってこいですわ!」

「なんだかドキドキしてきました!」

「船に乗るとアイドルパイレーツを思い出します。ヨーソロー」


 大きな船が前に後ろにと動き出します。ブランコのように、高く昇ったぶんだけ勢いよく落ちます。
 このまま一回転するんじゃないか、そう思ってしまうぐらいです。

「ひゃっほー! 楽しいですわー!」

「あはは! 楽しいですね!」

「いえーい」

 バイキングも堪能し、次はジェットコースターへ。最初は子供向けの短いやつに。
 席は二人ずつみたいなので二階堂さんと箱崎さんに私ということに。しかもなんと、私が最前列です。


「子供向けでも迫力ありますわね」

「うぅ……ドキドキです」

「この緊張感」

 コースターが昇り始めます。このゆっくりと上がっていくのが醍醐味です。
 そして頂点に到着、一気に下り始めます。

「「きゃああああああああああ!!」」

「おー」

 景色が流れていきます。このスピード、子供向けにしては速い気がします。最前だからでしょうか?
 後ろで二人の叫び声が聞こえます。箱崎さんは楽しそうですが二階堂さんは本気で叫んでいるような。

 コースターから降りて二人を見ると箱崎さんは満面の笑み、二階堂さんは少々げっそりしていました。


「な、なかなか楽しかったですわね。まぁ、わたくしには物足りないものでしたが」

「さすが二階堂さんです。では、次はあそこに行きましょう」

「え? もしかしてあのめちゃくちゃ怖そうなあれですの? 瑞希? あなた笑ってません? 瑞希!?」

「気のせいです。箱崎さんはどうですか?」

「乗ってみたいです! なんだか私、ジェットコースターが好きみたいです!」

「ちょっと? わたくしあちらの回るやつのほうが」

「さぁ箱崎さん、行きましょう」

「千鶴さんも早く行きましょう!」

「瑞希? こっちを向きなさい? 瑞希いいいいいいいい!!!」

 最近二階堂さんのいじり方がわかってきました。


「いやあああああああああああ!!!!!!」

「わああああああああああああ!!!!!!」

「とーくーいのーポーカーフェイス―♪」

 ぐるんぐるん、さっきの倍ぐらい速いです。しかもまた最前列です。すごいです。
 ホクホク顔で降りる私と箱崎さん、千鶴さんは恐怖でなんだかすごい顔してます。

「瑞希……恨みますわよ……」

「すみません。こうしたほうがオイシイと思いましたので」

「こんな時までテレビ的な発想はいりませんわ!」

「次はあれなんてどうですか?」

「星梨花? そろそろお昼にしましょう? ねっ?」

「あっ、そっか。もうお昼なんですよね」

「そうそう! あっちにおいしそうなイタリアンレストランがありましたわ! そちらに行きましょう!」

「行きましょう。ペコペコです」


 レストランの中に入ります。お昼ということで人も多いです。なんとか空いている席を見つけました。

「わたくしと瑞希で頼んできますわ。星梨花は何が食べたい?」

「うーん……このミートソースでお願いします」

「了解ですわ。それじゃ行きますわよ瑞希」

「はい。箱崎さん、行ってきます」

 箱崎さんのミートソースに二階堂さんはペスカトーレ、私はジェノベーゼ。料理を受け取って席に戻ります。

「お帰りなさいです。お水取ってきますね」

「お願いしますわ。ふぅ、やっと休憩できますわね」

「乗っているとき以外は立っているか、歩いていますからね。午後も動きますし、ここで体力回復です」


「午後はまずお化け屋敷にでも行きましょうか。さすがに食べてすぐジェットコースターはきついですわ」

「ほ、本当に行くんですか? 私は、あまりオススメしません」

「あれ? 瑞希は怖いものが苦手なんでしたっけ?」

「はい。すごく苦手です。あの、二階堂さん。どうしてそんなに嬉しそうなんですか?」

「どうしてって、瑞希の泣き叫ぶ顔が見れるからですわよ?」

 あう、お返しされてしまいました。これは覚悟を決めないといけないようです。がんばれ、私。

「お待たせしました!」

 箱崎さんからお水を受け取り、全員揃いました。では早速、いただきます。


「おいしいです。もぐもぐ」

「とってもおいしいですね!」

「これは、なかなかですわ」

 お腹も空いていましたし、三人ともすぐに食べきってしまいました。満腹です。
 お水を飲みながら今日の予定をもう一度確認。お化け屋敷、ジェットコースターでちょうどパレードの時間になります。
 それから何個か乗れていないものを乗って、観覧車へ。

「よし! 元気回復! 気を取り直して、行きますわよ!」

「「おー!」」


 私たちは早速お化け屋敷へとやってきました。廃病院から脱出するという設定のようです。
 なんだかこの前までやっていた肝だめしを思い出します。北上さんのあの衣装はすごかったな。

「うう……凄い雰囲気ですね。私たちのものより本格って感じです」

「怖くない、怖くない……」

「そ、そうですわね。ま、まぁ本物の幽霊なんているわけないですが!」

「この扉を開けるといよいよスタートですね……」

「ごくり。それでは、開けますよ……」

 中に薄暗く、懐中電灯の光も心もとないです。怖くない。


 病院の待合室から始まり、まずは受付にある鍵を取るそうです。怖くない。

「鍵……あれですわね」

 キラリと光る鍵を発見。二階堂さんが恐る恐る取ると、カウンターのガラスに人影が映りました。
 慌てて逃げる二階堂さん、私は二階堂さんにぴったり張り付きます。怖くない。

「箱崎さん、誰かいましたか?」

「えっと、誰もいないみたいです。受付の幽霊さんでしょうか」

「と、とにかく鍵は取れましたし扉のほうに行きましょう!」

 三人で手を繋ぎながら廊下への扉へ。鍵を使って扉を開ける。

『……置いてかないで……』

 後ろから女の人の囁くような声、バッと振り返っても誰もいません。
 私たちは逃げるように廊下を進んでいきます。怖い。


「病室がたくさんあります……また何か出てくるんでしょうか……」

「非常口があります。脱出してもいいはずです」

「ちょっと瑞希! それはさすがに早過ぎますわ!」

 足がガクガクします。二人に連れられてなんとか奥へ。ここは診察室のようです。
 そこに人がいました。白衣を着たお医者さんのようです。

「あ、あの……」

『新しい患者さんですか? それではここに寝てくださいね』

「ちょ、これはやばそうですわ」

『逃げる? 診察はまだ……終わっていないぞ!』

 こちらに向かってくる。慌てて元来た道を戻ります。
 しかし先ほどまで何もなかった病室からは血みどろの手や恐怖に歪む顔が、顔が……。


「やばいですわ! 入り口にも幽霊が待ち構えてますわ!」

「あそこに進めそうな道があります!」

「怖くない怖くない怖くない怖くない……」

 幽霊を避けるように進んで階段へ。二階のようです。私は涙が出そうです。

「なんとか一階に下りませんと……ここは二つの病棟に分かれていたはずですわ。隣の入り口からなら出られるかも」

「瑞希さん、大丈夫ですか?」

「ギブアップしたいところです……」

「瑞希がここまで怖いものが苦手なんて思いませんでしたわ。さっきからわたくしにくっついてますし」


「二階堂さんも箱崎さんも平気そうで凄いです」

「私も実は怖いです……」

「わたくしもですわ。でも瑞希がこんな調子だと怖がる暇もありませんわ」

「……すみません」

「お化け屋敷に行こうと言ったのはわたくしですわ。ほら、さっさと脱出しますわよ!」

 それから私たちが脱出するまで多くのことがありました。
 といっても私は二階堂さんに張り付いていたのでよく見えてはいなかったのですが。

 渡り廊下で動くベッドに追いかけられたり、車椅子の少女からヒントを貰ったり、最初に出会ったお医者さんと遭遇したり。
 最後に車椅子の少女が幽霊で、お別れするときは三人で泣いたり……。

 こうして、無事に病院から脱出できました。本当に怖かったけど、とても楽しかったです。
 二階堂さんと箱崎さんがいてくれたからでしょうか。


「おもしろかったですわね! なんだか映画の世界みたいでしたわ!」

「はい! あの子と別れるときなんて私泣いちゃいました!」

「私は、何もできなかったです。がくり」

「瑞希は怖がりという役ってことですわ。そういう役も必要ですわよ」

「そうですよ! きっとお化けの人も怖がってくれて嬉しかったと思いますよ!」

「そう、でしょうか。なら少し行ってよかったって思えます。ほんの少しですが」

「それじゃあ次に行きましょうか! お次は水に突っ込む有名なやつですわよ!」


 このジェットコースターのために使い捨てのカッパも買っておいた。これで水に濡れても安心。

「さっき降りた人を見ましたけど、カッパを着ていない人はずぶ濡れでしたわね」

「でも気持ちよさそうですよね」

「確かに。カッパを外して挑戦してもいいかもです」

「瑞希、やめときなさい」

 止められてしまいました。少し残念です。
 気を取り直してコースターに乗り込みます。ここは三人でも座れるので三人並んで。

「ちょっと瑞希? どうしてわたくしたちは最前列ですの?」

「さぁ、偶然ではないでしょうか」

「そんなことあるわけないでしょう! まだ根に持ってますわね!」

「千鶴さん、瑞希さん! 動き出しますよ!」


 ガコンと動き出します。二階堂さんもさっきの私のように怖くないと言い聞かせています。むふふ。
 頂点から勢いよく下り始めます。最初は普通のジェットコースターのように何度も上り下り。
 お楽しみは最後にあります。今、最後に向けてゆっくりと上っています。

「これを上りきったら、いよいよです。わくわく」

「ドキドキしてきました!」

「嫌ですわ! もう降ろしてくださいですわ!」

 二階堂さん、後には引けません。私たちは進むしか道はないのです。
 そして、ゴールへ向けて私たちは急降下。おお、本当に水に突っ込むみたいです。

「ぎゃあああああああああああ!!!」

「きゃあああああああああああ!!!」

「真壁瑞希、いきます」

 ザブーン。カッパを着ていて良かったです。これが最前列、ぬれぬれです。


 降りた私たちはさっきのことを熱く語りながらパレードへ。既にかなりの人が集まっていて前のほうには行けません。

「ずいぶん後ろのほうになってしまいましたわね」

「でも、私も見える場所があって良かったですね!」

「うまく人が少ない場所を見つけられました。ここでもパレードは十分見えるはずです」

 時間になり、スピーカーからキャラクターの声。歌と共にキャラクターたちのパレードがやってきます。

「わぁ、みんなかわいいです!」

「こういうのもいいですわねぇ」

「あのキャラクター、かわいいです。あとで人形を買いましょう」

 こちらに手を振ってくれました。三人で手を振り返します。
 そんな風に思う存分堪能して、パレードは終了。歌も踊りもさすがで楽しかったな。


「さて、パレードも終わりましたし。あとはアトラクション制覇を目指しますわ!」

「「おー」」

 乗っていないものをどんどん乗っていきます。
 子供向けのあっさりしたものやゲームコーナー、ゴーカートなんかも試しに乗ってみたり。三人ならどんなものも楽しいです。

 そうして夕日も沈みはじめ、青と赤の入り混じった空に変わるごろ。
 最後の締めくくり、観覧車へとやってきました。


「今日は楽しかったですわね」

「はい! 千鶴さんと瑞希さんと一緒だと、とっても楽しいです!」

「ありがとうございます。私も楽しかったです」

「ふふっ、最初に星梨花がチケットを持ってきたときはびっくりしましたけど、得しましたわね」

「そうですね。パパにもお礼を言わなくちゃ」

「箱崎さん、私たちのぶんも伝えてください」

「はい! もちろんです!」

「星梨花パパのおかげですわね。星梨花の写真もいっぱい撮れましたし、きっと喜ぶと思いますわ」

「カメラもパパに渡しておきますね。今度現像した写真を持ってきます」


「お願いしますわ。それにしても、綺麗ですわね」

「はい。やっぱり高いところは気持ちがいいです」

「ジェットコースターはあんなに怖いのは速いからですわね」

「二階堂さんの叫び声はすごかったです」

「あら瑞希、そんなことを言う子はお化け屋敷に置いて帰りますわよ?」

「そ、それだけは……」

「えへへ! 今日は来てよかったです! また三人でどこか行きたいですね!」


「そうですね。二階堂さんは置いていってもいいかもしれませんが」

「瑞希を置いていきますわ。そうね、次は水族館なんてどうです?」

「あ、水族館といえばオープンしたばかりの場所があるそうです」

「水族館! 行きたいです!」

「そうと決まればまたオフを合わせないとですわね! 三人で水族館ですわ!」

「はい! 今からとっても楽しみです」

「私も、楽しみ」

 次の約束をして、今日のお話はおしまいです。遊園地の次は水族館、どんな一日になるでしょう。
 たぶん、今日よりもっと、楽しい一日になるはずです。


「千鶴さん、瑞希さん! 駅まで手を繋いで帰りませんか?」

「星梨花がそう言うなら、そうしましょうか。星梨花が真ん中でいいですわよね」

「それでは私は箱崎さんの左手を、ぎゅ」

「わたくしは右手ですわね」

「ありがとうございます! 瑞希さん、千鶴さん!」

「よーし、駅までれっつごー」

 私たち三人なら、きっと。

以上、瑞希「楽しい楽しい遊園地」 でした。
前作、 瑞希「不幸で始まり、笑顔で終わります」の続きです。
この三人組がなぜか大好きです。水族館編は書きたくなったら書きます。

あと少しで今日が終わると思うと寂しい……残り二作品となります。

>>130
箱崎星梨花(13) Vo
http://i.imgur.com/KKbzQEZ.jpg
http://i.imgur.com/vy8PPgF.jpg

真壁瑞希(17) Da
http://i.imgur.com/exUJV5P.jpg
http://i.imgur.com/88chXiA.jpg

『伊織と千鶴』誕生日編


 私、水瀬伊織は悩んでいた。
 それは最近の仕事がバラエティに偏っていることでも、ツッコミキャラだと思われはじめていることでもなく。
 いやそれも問題ではあるんだけど。

 問題は、件のパートナーがもうすぐ誕生日だということだ。

「伊織、そろそろ帰りますわよ」

「私もう少し見てるから、千鶴は先行っててちょうだい」

「そう? それじゃあ入り口のカフェで待ってますわよ」

 今日はショッピングモールへ買い物に来ていた。千鶴が離れたことを確認して私はアクセサリーショップに向かう。
 一つ一つ眺めて千鶴に似合いそうなものを探すが、これというものは見つからない。


「あんまり高い物は贈れないわよね…あいつのことだから、こんな高級品受け取れませんわ!? とか言いそうだし」

 だとすると高そうな物はパス、だけど子どもっぽい物があいつに似合うとは思えない。
 バランスが難しいわね。アクセサリーはやめたほうが無難かしら。

「そもそも、この水瀬伊織が安っぽい物なんて選びたくないわよ」

 高価そうな物はだめなら他に何があるだろう。

「千鶴の好きなもの……好きなもの……」

 買うよりも手作りのほうが喜ぶかもしれない。そろそろ寒くなるし手袋とかいいんじゃないかしら。


「手袋作ったことなんてないわね……ちょっと調べてみようかしら」

 店を出て本屋に向かう。編み物のコーナーで何冊か捲ってみる。
 手袋のほかに帽子やマフラーなど、冬に使えそうな物の作り方を一通り眺める。どれも大変そう。
 その中から初心者向けの本を選んでレジに向かおうとして、雑誌コーナーの表紙にある見出しが目に入った。

『手作りのプレゼントは重い!? 相手の喜ぶプレゼント!!』

 自分の買おうとした本を見る。いやいやこんな雑誌を信じるなんてね。でもまぁ買っておいても損はないわよね損は。

『家族への贈り物、料理なんていかがですか?』

 手に取ろうとして、隣の料理コーナーにある広告を見つけてしまった。

 ……もう! なにが正解なのよ!


「……ありがとうございましたー」

 結局全部買ってしまった。店員さんの微笑ましいものを見るような目から逃げるように、千鶴のいるカフェへと足早に向かう。
 本は見つからないように鞄にしまっておこう。

「えーと、ここよね」

 中を覗くとコーヒーを飲んでいる千鶴を発見。

「おまたせ」

「おかえりですわ。ずいぶん遅かったですわね」

「ちょっと、ね」

「……? まぁいいですわ。行きましょうか」


 お会計を済ませて千鶴と共に外へ出る。夏の気配はすっかり消えて、すっかり秋の空気に変わってしまった。
 少し肌寒いのは、来たときと違って日が沈んでしまっているからだろう。

「ちょっと寒いですわね」

「そうね」

「少し前までは暑い暑い言ってたのに、今ではあの暑さが懐かしいですわ」

「まあね」

「……さっきから気の抜けた返事ばかりですわね。お目当ての物が買えませんでしたの?」

「……そんなところよ」

「伊織が買い物で悩むなんて珍しいですわね。いつもなら好きなだけ買ってるのに」


「私だって悩むときぐらいあるわよ。それを言うなら千鶴は値段で考えすぎ」

「なっ!? わたくしだって買えることなら好きなだけ買いますわ!」

「あんた……お金を持ったらすぐ使い切りそうね」

「そんなことないですわ。貯金に生活費にあれにこれに……」

 千鶴の長々とした大金の使い道を聞き流しながら誕生日のことを考える。
 今ここで聞いてもいいかもしれないけど、下手に聞くと感づかれてしまいそうだ。

「やっぱし宝くじの使い道と言ったら……伊織?」

「……あんたに聞きたいことがあるんだけど」

「わたくしにですか?」

 千鶴は不思議そうに首を傾げる。私は頭の中で言葉を組み立てながら千鶴に聞いてみることにした。


「えっとね。私の……家族にちょっとプレゼントを贈ろうと思ってるんだけど、良いのが思いつかないのよ」

「プレゼント? 誕生日かなにかありますの?」

「そうね。誕生日プレゼントよ」

「ふーん、伊織もそういうことで悩みますのね」

 意外そうに言う。

「なによそれ。私をなんだと思ってるわけ?」

「セレブですわね。伊織のことだからプレゼントも高級品とか色々渡すんじゃないかと思いましたわ」

「普段ならそれでもいいんだけど今回は気にするのよ。それで? なにか良い案ない?」


「そうですわねぇ……その人ってお父さん? それともお母さん?」

「そうね……姉みたいな人よ」

「姉……女性ですわね。うーん……そろそろ寒くなりそうだしマフラーとかは?」

「そんなの作ったこともないのにできるわけないでしょ。それに手作りとか迷惑に思われるかもじゃない」

「そんなことはないと思いますけど……」

「あんたは嬉しいの?」

 ここで聞いても自然だろうと千鶴に直接聞いてみる。

「そうですわね。伊織から貰えるならなんだって嬉しいと思いますわ」

「……あっそ……」

 あんたならそう言うでしょうね。まったく、そっち向けないじゃない。


「そうだ! 料理なんてどうです? わたくしも昔お母さんの誕生日に料理作りましたわ!」

「料理? あんたはいつもやってそうだけど?」

 千鶴の料理なんて私にとっては珍しくもないけど。

「伊織ぐらいの歳だったからまだお手伝い程度でしたわ。その時はわたくし一人で作りましたの」

「ふぅん、喜んでもらえたの?」

「見事に失敗しましたけどね。お母さんはおいしい、って言ってくれましたわ。嬉しかったなぁ……」

「料理ねぇ……」

 形に残るものである必要はないのかもしれないわね。料理みたいに心に残るもののほうが嬉しいのかも。

 しばらく話して、駅に着いたところで千鶴と別れた。私は新堂が待つ場所に向かいながらあれこれと考える。
 新堂に迎えられ車で移動する間も、ベッドで横になってからもずっと考えた。

 それから何日かして、私は千鶴に料理を作ってあげることにした。


「料理に決めたのはいいけど、どうやって渡そう」

 お弁当? それはなんだかな……お菓子にする? 誕生日だしケーキとか。

「違うわね。ただ渡すだけじゃダメなのよ」

 家族のように、一緒にご飯を食べたい。千鶴がお母さんに作ったように。
 あの話を聞いてから千鶴が私の作ったものを食べる姿を想像するようになった。
 おいしいと微笑む千鶴を想像するたびに、私はこれしかないと考えるようになった。

「とすると夕食に招待するってのがいいかしらね。お昼は仕事に事務所でパーティーもあるし」

 そうだ。私の家に招待すればいい。一度中に入りたいとか言ってたし、そのまま泊まってもらえばいい。


「私の家は決定として、何を作ろう」

 あまり凝ったものは作れないし、千鶴も食べたことがあるようなものがいいだろう。
 私が作れるレベルで千鶴に馴染みのある料理か。何があったかな。調べないと。

 それからはどの料理を作るかをレシピを見たりやよいに相談したりして、肉じゃがを作ることにした。
 これならたぶん私でも作れるし、千鶴も食べたことがある。そうと決まれば特訓だ。

「……最近伊織が冷たい気がしますわ」

「えっ!? そ、そんなことないわよ?」

「なんだかわたくしを避けている気がしますわ。最近真っ直ぐ帰ることも多いし」

>>167
水瀬伊織(15) Vo
http://i.imgur.com/wjkjmXP.jpg
http://i.imgur.com/sBEBsfc.jpg


「気のせいよ気のせい! ほら、ちゃっちゃと仕事に行くわよ!」

 不満そうに千鶴は私を見る。ここで言うわけにもいかず、私は目をそらすことしかできない。

 お仕事が終われば真っ直ぐ帰って料理の練習。
 新堂にも協力してもらって、なんとか食べられるものになってきた。そのせいで最近は毎日肉じゃが尽くしで辟易してるけど。

 そんな日々が何日も過ぎて、ついに千鶴の誕生日がやってきた。


『誕生日おめでとー!!』

 事務所のパーティーはお昼にしてもらった。お昼にしてとプロデューサーに頼んだときの追及っぷりは今でも思い出したくはない。
 結局全部話すことにな、りあの日はまともに千鶴の顔が見れなかった。
 まぁ、きっちりと仕返しはしてやったけど。荷物持ちには当分困らないでしょうね、にひひ。

「……よし、そろそろ頃合いね。千鶴、行くわよ」

 時刻は5時、これぐらいに移動すれば夕食時には出来上がるだろう。

「へっ? 行くってどこにですの? せっかくのパーティーですのに」

「これから私の家に行くの。千鶴も一緒に付いてくる。いい?」

「え、えええ!? そ、そんないきなり!?」

 千鶴が思った以上に大声で叫ぶから皆が一斉に私たちを見る。
 事情を知っている皆はニヤニヤと生暖かい目で私たちを見て、事情を知らない千鶴はどうしてと騒ぎ立てる。


「いいから! 他のやつにはもう言ってあるから! さっさと行くわよ! 拒否権はないからね!」

 恥ずかしさが限界に達し、私は一足先に外へ出た。

「ちょ、ちょっと待っててください! みんな今日はありがとうございましたわ! それじゃ!」

『楽しんできてくださいねー!!』

 遅れて千鶴が外に出る。外まで聞こえるぐらい喧しい声にうんざりしながら千鶴のほうに向きなおる。

「……いきなりだったけど、来てくれるわよね」

「それはもちろんいいですけど、どうして家に?」

「察しが悪いわね! 私と千鶴でパーティーしようって言ってるのよ!」

 私も真っ赤、千鶴も気付いた瞬間真っ赤に。
 お互いリンゴのように顔を赤くしながら無言で迎えの車へと向かう。


「新堂、家までお願いね」

「はい、畏まりました」

 ゆっくりと車が動き出す。車内には無言のまま喋らない私たちと、ニコニコと車を運転する新堂しかいない。
 結局、私の家に到着するまで私たちは無言のままだった。

「それじゃ、行くわよ」

「え、ええ」

 車を降りて歩きはじめる。私は家へ向かう道の途中で左に曲がる。

「あれ? お屋敷はこっちですけど?」

「あっちじゃないわ。私たちがこれから行くのは離れのほうよ」


 庭を抜けると純和風の家が現れる。どうしてこっちに来たのか理由は色々あるけど、和室がここにしかないことが一つ。
 たぶん千鶴はこっちのほうがいいだろう。それに、あっちだとなにかと不便だ。
 玄関を開けて靴を脱ぐ。千鶴はキョロキョロと見回している。

「なにしてんのよ。早く入りなさいよ」

「お、お邪魔しますわ……」

 襖を開ける。畳にテーブル、隅にはテレビが置いてある庶民的な普通の部屋だ。

 そう、普通の部屋。だけど、そこにいるはずのない人がいた。
 いかにも高級そうな着物を着て、優雅にお茶を啜るその人を見て、私は言葉が出てこなかった。

「あら? こちらのかたは……?」


「……パ……パ……?」

「えっ?」

「パパ……!? なんでここに……!?」

「……伊織が客人を連れてくると聞いてな」

 パパはゆっくりとこちらを見た。私を見て、次に千鶴を見て、何事もなかったようにお茶を啜る。

「ああ! 伊織のお父さんでしたのね! ってお父さん!?」

「ばっか! あんたパパがどんな人か分かってんの!? 水瀬グループの社長よ社長!」

 パパに聞こえないように千鶴に言う。予想外の事態に私も千鶴も混乱していた。


「そ、そうでしたわ!? そんな人がどうして!?」

「知らないわよ!?」

「旦那様、到着しておりましたか」

「新堂か。茶を持ってきてくれないか」

「畏まりました」

「ちょっと新堂! どうしてパパがここにいるの!」

「お嬢様が千鶴様を招待するとお話ししたところ、旦那様も一目見ておきたいと」

「な、なによそれ!」

 文句でも言いに来たの!? ユニット活動をやめろとか!? そんなの許さないわよ!!


「パパ!」

「伊織、そろそろ準備をしないといけないんじゃないか? お前にはやるべきことがあるだろう」

 言葉を遮られる。私のやるべきことは千鶴に料理を作ること、それをやれっていうの?

「何を心配しているかは見当がつく。だが、私はそんなことを言いに来たわけではないよ」

「……あの、伊織? 私がお邪魔でしたら……」

「そんなことはない。あなたは伊織の大事な客人。どうぞ座って、ゆっくりしていきなさい」

「そ、そうですか? それでは失礼して……」

「……わかりました。だけど! 千鶴に何か言ったら私は許さないですから!」

 パパの考えていることはわからない。だけど少なくとも、千鶴を否定したいわけではないと思った。

 台所に向かい、私は調理を始める。気持ちを切り替えて、精一杯千鶴のために作るんだ。


「ずいぶんと嫌われてしまっているみたいだ。お見苦しいところを見せてしまいましたな」

「そんなこと、伊織さんとはいつもこんな風に?」

「私は家にいることのほうが稀でしてね。あれほど……声を荒げるあの子を見るのは久しぶりだ」

「そうなんですか……」

「それより、お名前を聞いても?」

「あっ、まだ名乗ってませんでしたね。二階堂千鶴です。伊織さんとは共にユニットとして活動しています」


「二階堂さん、話は新堂のほうから聞いています。あの子を支えてくれているそうで、親としてお礼を言わせてほしい。ありがとう」

「そんな、私のほうこそ伊織さんには助けてもらってばかりで」

「ところで、二階堂さんは自分をお金持ちのセレブと言っているとか」

「そ、それは演技と言いますか……キャラクター作りなんです……」

「ほう。それなら私に対して演技しないのはどうしてですかな」

「……伊織さんの父親である人と会っているときに、自分を偽るなんてことはできませんから」


「そうですか。失礼ですが、演技をしている理由を聞いてもよろしいかね?」

「……それは、私の夢のためです。アイドルになるという夢のために」

「……わかりました……やはり、あなたにならあの子のことを任せても良いかもしれない」

「その、嬉しいですけどいいんですか? 私は伊織さんと違って取り柄もないし、家柄も良くありません」

「確かに、あなたには何もないかもしれない。……ですが、あなたには誠実で気高い心がある。それが何よりも大切なんですよ」

「そんな……私はそんな大した人間では」

「でなければあの子はあなたの傍にいないでしょう。あの子が信頼している、それで十分です」


「そう……でしょうか……」

「ええ。おっと、そろそろ来るようですな。今の話はなるべく内密に。私もまだあの子に嫌われたくありませんから」


「お待たせ、できたわよ」

「お、お帰りなさい」

 新堂に手伝ってもらいながら料理を運ぶ。味見もしたし、我ながらよくできた。
 テーブルの上にご飯やらを乗せて、最後に私が千鶴の前にプレゼントを置く。

「はい、肉じゃが。これがあんたへの誕生日プレゼントよ」

 お皿に盛りつけられたホカホカの肉じゃが、千鶴はそれと私を交互に見る。

「これが、誕生日プレゼント? もしかして伊織が作りましたの!?」

「そ、そうよ! 変なプレゼントで悪かったわね!」

 千鶴はブンブンと首を振る。

「そんなことありませんわ。あっ! もしかしてわたくしの話を覚えてましたの?」

「その通りよ! もう! そんなことはいいからさっさと食べなさい!」

「え、ええ! いただきます!」


 箸を取り、ゆっくりと口に入れた。私はそれを横からじっと見つめる。
 口の中の物を飲み込み、私のほうを向いた千鶴は優しく笑っていた。

「……おいしいですわ。最高のプレゼントですわよ」

「……そう。それなら……よかったわ……」

 暖かいもので満たされていく。おいしいの一言がこんなにも嬉しいものだなんて私は今まで知らなかった。

「ほら! 伊織も食べましょう!」

「も、もちろんよ! いただきます!」

 座り直し、私も一口。うん、おいしい。おいしすぎて、涙が出そうなぐらい。


「さて。それでは、私はもう出る時間だ」

 そうだ。パパがいることを忘れていた。箸を置いてパパを見ると、さっき見たときより穏やかな顔で私を見ていた。

「伊織、二階堂さんにあまり迷惑をかけないように。二階堂さん、伊織のことをこれからもよろしくお願いします」

「パパ……」

「安心してくださいな! 伊織のことはわたくしが面倒を……あっ!?」

「はっはっは! それが二階堂さんの普段の話し方ですか。むしろこちらのほうが自然に思えるぐらいですな」

「つい出てしまいましたわ……」

「いいんじゃない? その話し方も、もうあんたの一部ってことよ」


「それではまた、お会いできる日を楽しみにしていますよ。新堂、よろしく頼む」

「はい、旦那様」

 廊下へ出ていくパパを見送る。本当に私の様子が知りたくて来ただけだったんだ。
 もう少し、話せばよかったかな。

「……伊織、この肉じゃが。お父さんにも食べてもらうべきですわ」

「えっ!? これを!?」

「そうですわ! せっかく伊織が一生懸命作ったものですもの! お父さんも食べてみたいと思うはずですわ」

 少し迷った後、私は台所まで走った。それから小皿に肉じゃがを入れて、外へ飛び出す。
 パパは今まさに車に乗ろうとしているところだった。


「ま、待って!! パパ!!」

 新堂が私に気付いてパパを止めた。私はこぼさないように走る。

「どうした伊織、何か私に用が?」

「あの、こ、これ。パパも食べてみて」

「これは二階堂さんのために伊織が作ったものでは?」

「それでも、パパに食べてほしいの」

 パパは小皿を受け取るとゆっくりと肉じゃがを口へ流し込んだ。
 それからゆっくりと味わい、食べ終わったと思ったら私の頭にポンと手を置いた。

「おいしいよ。ありがとう、伊織」

「おいしい?」

「ああ、次はもう少しゆっくりできる時に食べたい。お願いできるか?」

「う、うん! 次はもっとおいしい料理食べさせてあげるから!」


 車が走り去る。見えなくなるまで手を振って、それから千鶴の元へ戻った。
 戻ってからはご飯を食べて、もちろんおいしいってまた言ってもらえて、お皿洗いは二人でやった。

 それからお風呂に入って、明日のことを話しながら布団の上でずっと話して。今日はどうだったかも話して。次は千鶴の家に行くことも決まって。
 そうして、千鶴の誕生日は終わった。

 その日は久しぶりに家族の夢を見た。子供のころ、家族全員で旅行に行った日の夢を。
 そこにはなぜか、誰よりもはしゃぐ千鶴がいた。


 私は水瀬伊織、アイドルだ。
 今はユニット『ジュエリースパーク』として活動している。

 私にとってユニットの相方でもあり、親友でもあり、ライバルでもあり……家族でもある。
 彼女の名前は、二階堂千鶴だ。

おしまい

以上、『伊織と千鶴』誕生日編 でした。
伊織と千鶴は私が初めて本気で書いたSSです。それもあってか、この二人が一番好きです。

さて、次が最後です。もしかしたら今日を過ぎてしまうかもですが、最後までお付き合いください。


『オレンジの宝石』


「よう、残ってもらっちゃって悪かったな」

「構いませんわ。……それで? 誕生日にお話ってことは期待していいんですわよね?」

「ははっ、パーティーであれだけ貰ったのに、まだ貰い足りないのか?」

「なっ!? そんなこと言う人のプレゼントは受け取りませんわ」

「冗談だよ。ごめんごめん」

「まったく……その冗談もすっかり慣れてしまいましたわ」

「そうなのか?」

「ええ。最初会ったときなんかわたくしが話しているのに目をそらすし」

「そんなこともあったなぁ」


「セレブなお仕事をというのにアフリカでキリンと記念撮影だし」

「あの時はおもしろかったな。追いかけられてて」

「笑いごとではありませんわ。それからは、まぁわたくしに相応しいお仕事も多かったですけど」

「人魚姫に花嫁、あの衣装は良かったなぁ。思わず見惚れちゃったよ」

「そ、そうでしたの?」

「ああ、その後泣いてる千鶴を見て笑ったけどな」

「あれは! なんだか本当に結婚したみたいでしたし」

「まぁ千鶴はなりきるタイプだからな」


「それだけでは……ありませんけど……」

「何か言ったか?」

「なんでもないですわ!」

「あとは……水着にヨーロッパ、あのときの千鶴のはしゃぎようったら」

「初めての海外旅行だったんですから! しょうがないでしょう!」

「隠そうともしないであっちに行きたいこっちに行きたいって大変だったよ」

「うう……あのときはありがとうですわ。だいぶ我が儘言いましたのに」

「いいさ。俺も楽しかったしな」

「なら、良かったですわ」


「それからゲームフェスだろ? ハロウィン、スキー、おみくじ、バレンタイン」

「ゲームフェスではコンパニオンの仕事をバッチリこなしてましたわよね」

「逆にハロウィンだと星梨花たちと一緒にお菓子を貰ってておもしろかったけどな」

「あれもお仕事です!」

「スキーは意外だったな。滑れるかと思ってたんだけど」

「スキーは行ったことありませんでしたから……」

「今度一緒に滑りに行くか。教えてやるよ」

「本当ですの!? それじゃ……お願いしますわ」


「それでおみくじか。あのときの千鶴は完璧に商売人だったな」

「ええ……あんまり思い出したくないですが」

「なんでだ? 売り上げも良かったし似合ってたけど」

「セレブのイメージから離れ過ぎですわ」

「もう皆わかってたころだしなぁ」

「それでも! わたくしなりの拘りなんです」

「そんなもんか。今でも隠そうとしてるし」

「そういうものですわ」


「その後はバレンタインか。あのときのチョコうまかったぞ」

「そ、そんなものも渡しましたわね」

「恥ずかしがることないだろう……」

「う、うるさいですわ!」

「それからアイドルシンフォニーだな。あのサックスは良かったよ」

「そうですか? まぁわたくしも良くできたと思ってますけど」

「おう、今度千鶴にソロで演奏してもらおうかなって話もあるぞ」

「えっ!?」


「用意しとけよ。それからそれから? ライブか。ジャケットの撮影で大学に行ったんだっけ」

「ええ。わたくしもミス・キャンパスに挑戦しましたわ」

「結果は?」

「雪歩が……」

「そうか……。気を取り直して、次は商店街でのライブだな」

「あのときは驚きましたわよ。まさかあそこでライブだなんて」

「言ってなかったからな」

「言ってくれないと困りますわ!」

「いいじゃないか。皆も大盛り上がりだったんだし、感謝も伝えられたんだろう?」

「ええ……まぁそうですわね」


「ならオッケー、解決ってことで。次は鯉のぼりだな。あの金ぴか衣装」

「あれは中々楽しかったですわよ!」

「千鶴以外にあれは似合わないだろうな」

「ちょっと、どういう意味ですの?」

「なんでもないよ。次は、と。おっ! レイニーファッションショー! これ良かったよな!」

「ええ! 雨に濡れた時はどうなることかと思いましたが、わたくしの晴れ舞台で本当に晴れるなんて」

「あのときの千鶴は良かったなぁ……」

「ちょっ、なんだか恥ずかしいから早く次に行きますわよ!」


「ええええ……いいじゃないか。えっと次は……HHPか」

「わたくしたちだけの単独ライブ、ですわね」

「ようやく来たって感じだったよな」

「ええ。最高のステージになりましたわ」

「次はあれを超えないといけないんだよな。できるか?」

「当然ですわ。わたくしは二階堂千鶴ですわよ?」

「そうだったな」

「それに……あなたも手伝ってくれんでしょう?」

「もちろんだ。俺はお前のプロデューサーだからな」

「ふふっ、頼りにしてますわよ。プロデューサー」


「おっといけない。思い出話で遅くなっちまった」

「そうでしたわね。今日は誕生日でしたわ」

「よし、千鶴にプレゼントだ。受け取ってくれ」

「ありがとうですわ。これは……ネックレスですの?」

「ああ、ファイアーオパールって宝石なんだ」

「いいんですの? 高いものじゃ……」

「気にすんな。どうせなら出世払いでもいいぞ?」

「どうして貰ったわたくしがお金を払うんですの!」

「あはは。そんなことより付けてみてくれないか?」


「まったく……どうですか? 似合ってます?」

「ああ、最高に綺麗だ。宝石がな」

「一言余計ではなくて?」

「さて、なんのことやら」

「それにしても綺麗なオレンジですわね。もしかしてわたくしの色に合わせてこれを?」

「そうだ。それに千鶴の誕生石でもある。10月はオパールってな」

「へぇ……知りませんでしたわ」


「それに石言葉ってやつも千鶴にぴったりなんだ」

「石言葉? 花言葉みたいなものですの?」

「ああ、ファイアーオパールは社交性、人間関係が石言葉なんだ。似合うだろう?」

「ふふっ、そうですわね。わたくしにぴったりの宝石ですわ」

「誕生日おめでとう、千鶴。……喜んでもらえたか?」

「……ええ、当り前ですわ」


「それじゃ、これからもよろしく頼む」

「わたくしからも、よろしくお願いしますわ」

「目指す先は」

「トップアイドル、ですわよね! プロデューサー!」

つづく

以上、『オレンジの宝石』 でした。
読んでいる人を置いていっているような気もしますが、私はこれで最後を締めくくりたかった。

プロデューサーと千鶴のお話です。そして私と千鶴の話でもあります。
皆さんにもそれぞれアイドルとの物語があると思います。それを大切にしてください。

今日は長々とお付き合いくださりありがとうございました。千鶴の話をたくさんできて満足です。
それでは来年またお会いしましょう。それでは。

画像先輩もたくさんの画像を貼ってくれてありがとうございました。
このスレだけでも東条アイドルはかなりの量なのに全員を貼ってくれるとは…

あともちろん読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
何度もすみません。本当にこの企画をやって良かったって思います。

最後にタイトルのレス番を書いて目次みたいなものを。これから読む人の参考にでもなれば。

>>4  桃子「千鶴さんの家」

>>38  昴「キャッチボール」
>>51  可奈「歌が好き、アイドルが好き」
>>69 美也と将棋

>>81   『コロッケと商店街』
>>111 奈緒「765プロ料理対決第一弾!」貴音「料理対決と聞いて」
>>130 瑞希「楽しい楽しい遊園地」
>>166  『伊織と千鶴』誕生日編
>>201  『オレンジの宝石』

以上の9つでした。本当はもっとある予定だったんですが書けなかったりボツにしたりでこの数に。
それでも、これだけ書くことができたことが嬉しいです。
本当にありがとうございました。それでは。

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