骸骨剣士【……この街は俺が守る】 (61)


それはとても昔の御話。


世界は魔王の存在に怯え……剣と魔法の時代が渦巻き、魔物が彷徨い歩いていました。

そんな世界の中心に位置する、とある王国の端。

そこには1つだけ、それなりに大きな街がありました。

大きな街ではこの時代を生き抜く力と知恵、そして多くのお金が動いています。


しかし……街を襲ったのが、魔王の影響を受けた魔物達。


冒険者ギルドという組織が以前から存在していたにも関わらず、被害はどうしても出てしまいます。

そんな中、その街に現れたのが『彼』でした。



『私』を助けてくれた魔物。





──────── 骸骨剣士。







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< チリンチリンッ…


受付「……ん、おはようさん骸骨剣士」

骸骨剣士【……】ギシッ…ギシッ…

受付「昼までは酒が無いが、何か飲んでくか」

骸骨剣士【……いや…】

骸骨剣士【依頼をくれ、金が欲しい】

受付「討伐と捕獲の二種類がある」

骸骨剣士【……】


骸骨剣士【殺す方が……朝の運動には丁度良い】


受付「討伐依頼の受注了解したよ、ギルドプレートを発行するから外で待ってな」

骸骨剣士【……】ギシッ…ギシッ…


受付嬢「例のスカルナイト、来たの?」

受付「だな」カチャカチャ

受付嬢「毎日ご苦労様よねぇ、魔物のくせにその辺の冒険者より貢献してるわ」

受付「いんじゃねーの、最近は王都もドタバタしてて騎士を派遣してくれないしよ」

受付嬢「……街の人は少し柄の悪い冒険者の方がマシって思ってるわよ、魔物だしあいつ」

受付「つってもこんな街の冒険者では数の少ない『シルバーランク』の実力はあるしなぁ…?」

受付「あんな骸骨でも、味方をしてくれている間は頼りになるよって話だ」


受付「柔軟に行こうや受付嬢」


受付嬢「……はーい」


骸骨剣士【……】

骸骨剣士(ローブが少し擦り切れてきたな……)

骸骨剣士(後で依頼を片付けたら新調するのも考えるか、いや…構わないな)

骸骨剣士【ム……?】


神父「やぁ、おはよう骸骨剣士」

骸骨剣士【神父……か、よく分かったな俺が今来てることが】

神父「まぁね」

神父「プレート待ちかい? また討伐に行くようなら僕も行こう」

骸骨剣士【ついてくる、だけ…か?】

神父「ああ勿論だとも」

骸骨剣士【…………好きにしろ】


神父「『あの子』は元気かい、最近は街で見かけないが」


骸骨剣士【……】

骸骨剣士【具合が悪い】


神父「うん? 何処か調子を崩したのかい」

骸骨剣士【体が重いと言っていた……が、顔も随分赤くなっていた】

神父「風邪だね」

骸骨剣士【……今から行く依頼を片付けたら、直ぐに報酬で薬を買う】

神父「ふむ、それが良いね」

骸骨剣士【……】

神父「……」




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆・・・・・



< タンッ……!

【キィッ……!】


骸骨剣士【……】ヒュンッ

< ザシュッッ


骸骨剣士(……多いな)

骸骨剣士(今の一角兎で五匹目、よく怪我人も出なかったものだ…)


神父「物騒だね、こんな街中で発生した魔物にしては好戦的だったようだけど」

骸骨剣士【街を囲む壁の聖域魔法が薄くなっている……俺の体まで軽いのだからな】

神父「はは、君の場合は骨だからじゃないかい?」

骸骨剣士【…魔素の集合体の俺は、人骨とは違う……それに、軽いというのは重さではない……】

神父「分かってるさ、魔物の君が調子良いのは確かに不穏だ」

神父「後日、聖堂教会に僕から伝えておこう」

骸骨剣士【……】コクン



< 「おい、あの黒いローブ……もしかして」ザワザワ…

< 「噂のスカルナイトだよ、魔物としての名前は確か『スケルトン』だっけか」ザワザワ…

< 「おいおい大丈夫かよ……ギルドの冒険者呼んだ方が良いんじゃ…っ」ザワザワ…

< 「あの骸骨、まだこの街に居たのか……」ザワザワ…



骸骨剣士【……】ギシッ…ギシッ…

神父「熱烈な視線を浴びているね」

骸骨剣士【気に…するな、もう慣れた……】

神父「ふむ、まぁ既にこの街に来てから1ヶ月だしね」

神父「依頼を完了したんだし、一角兎の角を五本持って酒場に戻ろうか」


骸骨剣士【ああ……】

< ヒクッ

骸骨剣士【………】

骸骨剣士【街の北西……距離としては近いな】

神父「魔物が現れたのか、行くの?」

骸骨剣士【……そのつもりだ】

神父「ならついていこう」



『北通り・商店街』



道具店主「ひ、ひぃいっ!!」ドサッ

【グルルルル……ッ】

道具店主「なんでこんな所にサーベルウルフが……誰か、誰か手を貸してくれぇ!!」


< 「うわぁああ! 早くそっちに行け!! ヤバいぞぉ!!」

< 「誰か来てぇぇっ!!」

< 「ぐぁああぁあァッ……!!!」


道具店主「ひぃ……ひぃっ…」

道具店主(駄目だ、他の所にもいるのかコイツ……あぁこんなことなら酒場の受付嬢に食事に誘えば……)


【ヴゥ……ッ、ウォンッッ!!】ダッ

骸骨剣士【待て】ガッシッ!!

【ッ!?】



道具店主「お、お前……」

骸骨剣士【後で薬剤が欲しい、報酬が払われたら買いに来る】ブンッ


< 【キャインッ!!】ドザァッ…

骸骨剣士【西通りの方でブロンズの冒険者パーティーがいた、そいつらも戦っている】

骸骨剣士【行け……】スラ…チャキッ


道具店主「お、恩に着るよ…っ! 後で安くしときますよスカルさん!」ダダッ



【グルルルル……ゥゥウッ……】


骸骨剣士(……サーベル・ウルフ、大きいな……自然発生ではないのか)

骸骨剣士(街の外壁を登ったか……或いは地中を自慢の『爪』で掘って入り込んだか……)

骸骨剣士(いずれにせよ、殲滅するしかない……数が多いのだから)



◇◆◇◆◇◆◇◆・・・・・



受付「朝から御苦労だった、北通りに出没した狼どもの緊急討伐に感謝する」

受付「………まー、あれだ」

受付「ブロンズランクの冒険者の奴らに聞かれるのを配慮したのか、もしかして」


骸骨剣士【…何の事だ】

受付「いや、別に良いけどな? ただお前が報酬を少し多く貰うので腹を立てる奴なんか無視しとけよ?」

骸骨剣士【……】

骸骨剣士【だが俺は魔物だ……妬みもするだろう、面倒は避けたい】

受付「難儀だなぁ……いつもの事とはいえ」


< ジャラッ……

受付「サーベル・ウルフを四体の討伐、そして民間の依頼の一角兎を五体討伐」

受付「報酬は金が欲しいって言うから、合計300GILだ」


骸骨剣士【……】コクン

< ジャララッ…


受付「じゃあな骸骨の剣士、また来るんなら来いよー」

骸骨剣士【……】スタスタ



< チリンチリンッ

骸骨剣士【……】スタスタ

骸骨剣士【!】


少女「お疲れ様、骸骨のおじさん!」


骸骨剣士【……少女、来ていたのか】

神父「やぁやぁお疲れ骸骨剣士、少女も来ていたみたいだから待ってたよ」

少女「えへへー、お姉ちゃんの代わりに来たんだよー!」

骸骨剣士【……】スタスタ

骸骨剣士【薬を買いに行く】


少女「うん! お姉ちゃん治さないとだもんね」トトトッ



◇◇【北通り・道具店】◇◇


< チリンチリンッ

道具店主「いらっしゃい、本日はどのような……」

骸骨剣士【……今朝方ぶりだが、薬剤が欲しい】ギシッ…ギシッ…

道具店主「!」

道具店主「今朝は本当にありがとうございました、スカルさん……あの時は本当に駄目かと思いましたよ」

骸骨剣士【……】

少女「おーくーすーりー!」バンバンッ

道具店主「アイエッ! そう言えば薬剤が欲しいとの事でしたね」


道具店主「一応、仕入れてある物と基本的な解毒剤や風邪薬なんかがありますが……?」


神父「風邪薬だったかい?」

少女「多分ー、お姉ちゃん喉と頭が痛くて、ケホケホしてたから」

道具店主「ああ、ならこちらの風邪薬ですな」カタンッ…ゴソゴソ


骸骨剣士【……】ジャラッ

骸骨剣士【幾らだ、その薬の中で一番高いのは】

道具店主「一番高い物ですか? あー……こっちの風邪薬、というよりはほぼ万能薬なのがありまして」

神父(ああ、霊薬かな? あれは確かに解毒と病気を治す効果があったけど)

道具店主「……こちらの霊薬、一本70GILになります」

骸骨剣士【……四本、頂こうか】

道具店主「宜しいので?」

骸骨剣士【有って損はない……20GILあれば三日は食わせてやれる……】


少女「お薬買えたの?」

骸骨剣士【ああ】

少女「やったね! 早く帰ってお姉ちゃんにあげよう!」トトトッ


道具店主「……」


< チリンチリンッ…チリンチリンッ…


骸骨剣士【……】ジャラッ

骸骨剣士【また……利用させて貰おう、感謝する……】ギシッ…ギシッ…


道具店主「スカルさん」


骸骨剣士【……?】ピタッ

道具店主「貴方がこの街に来て、もう一ヶ月近い」

道具店主「最初来た時ほどではないですが、まだまだ街の住人はスカルさんを恐れてると思います」

骸骨剣士【……】

道具店主「でも……あの『町外れの姉妹』を貴方が守っている事に、皆は少しだけ安心してもいるんです」

骸骨剣士【そうか】

道具店主「ええ、今朝の貴方に助けられて僕も分かりましたよ」

道具店主「貴方はきっと、特別な魔物で、皆の味方なんだとね」


骸骨剣士【……そうか】ギシッ…ギシッ…

< チリンチリンッ


道具店主「またのお越しをお待ちしています、スカルナイト様」ペコリ



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆・・・


『南東側・外壁近辺の家』



< ガチャッ!!

少女「お姉ちゃーん! お薬買ってきたよー!」

   「少女…? 駄目だよ、お外に行くならちゃんと私に一言……」

少女「だってお姉ちゃん、辛そうだから可哀想」

   「もう、仕方ないなぁ……」

< ギシッ…モゾモゾ……



花娘「おかえりなさい、骸骨さん」



骸骨剣士【……】

骸骨剣士【あぁ】



◇◆◆◇


花娘「……少し苦いかも」

< コトッ…

神父「良薬は苦いと言うからね」

少女「お姉ちゃん元気になったの?」

神父「霊薬は高価だけどそれに見合った効力は持ってるよ、今すぐには治らなくとも数分で落ち着くさ」


花娘「ふぅ……ありがとう骸骨さん、今日はこの後もギルドに?」


骸骨剣士【……そのつもりだ】

花娘「怪我はしないでね」

骸骨剣士【魔物はそう簡単に怪我はしない】

花娘「そんな魔物を毎日倒してるのに?」

骸骨剣士【…………】


神父「骸骨剣士の負けだね、今日は気をつけて戦わないとかな?」

骸骨剣士【……】コクン


花娘「あ、そういえば」

骸骨剣士【?】

花娘「少しお昼の用意をしてから私は出るから……あの、いいですか?」

骸骨剣士【……ああ、お前の働いている花屋か】

花娘「うん、遅くなっちゃいそうだから」

骸骨剣士【伝えておこう】ギシッ…


神父「おや、もう行くのかい?」

少女「おじさん、もう少しゆっくりしていったらー?」

骸骨剣士【……】


骸骨剣士【花娘が調子を取り戻して来たなら、それで充分だ……】ギシッ…ギシッ…


花娘「いってらっしゃい、骸骨剣士さん」クスクス


『南通り・警備兵宿舎近く』


骸骨剣士【……というわけだ】


花屋店主「へぇ、あの子が風邪だなんて珍しいわね!」

花屋店主「まぁここ一ヶ月、随分忙しかったものねぇ……あんな事もあったのだし」

骸骨剣士【……】

花屋店主「あー! 伝えに来てくれてあんがとねぇスカルナイト、もう行っていいわよ?」

骸骨剣士【……】コクン


花屋店主「それにしても神父さん、あんた今日も男前だねぇ……おばちゃんヨダレでちまうよ」

神父「あはは……ご勘弁を、マダム」

花屋店主「じょーだんよ、ギルドいくんでしょー? いってらっしゃい、イケメン君」

神父「はい……はは」


骸骨剣士【……フ】

神父(あ、笑われた)

誰も突っ込んでないようだからあえて突っ込む
骸骨さんどうやって会話しとるん?


< チリンチリンッ


骸骨剣士【……?】

神父「どうかしたのかい」

骸骨剣士【先客のようだ……初めて見る若い冒険者だな】

神父「へぇ?」




◇◆◆◇




新米戦士「このクエストをクリアすれば、晴れて俺達も冒険者になれるんだな!」

受付「まぁな、駆け出しとしてギルドも暫くは簡単な依頼を回すしな」

新米戦士「よし! 早速行こうぜ!」ダッ

新米歌姫「ちょ、待って下さいって!」

新米戦士「早く東の森にある遺跡行こうぜ! やっと冒険者として名を名乗れるんだしよ!」

新米歌姫「でもでも、一応遺跡の地図とか買ってきたほうが……!」

新米戦士「イヤッホーォオオオオオオ!!!」ダッ

新米歌姫「ああっ! 待ってー!!」ダッ



受付「やかましいのが冒険者になったなぁ」

受付嬢「この酒場にいる冒険者なんてみんな似たもんでしょ」

受付「……はぁ、荒くれ者の酒場じゃねえんだけどなぁ」

>>47
呪詛のように低い声を常に微量の魔力を消費しながら出してる
口(骨?)は動かしてはいない、常に物静かな骸骨にしか見えない


神父「今のは新米さんかな?」

受付「おう、あんたらか」

受付嬢「さっき出てった二人は隣町にあるギルドに紹介されて来たみたい」

神父「ん……ということは推薦状付きの冒険者かい? 思ったより期待できそうだね」

受付「そのとーり、初っぱなから赤のLv5扱いだからな」


骸骨剣士【……】


神父「あ……ごめん、君は分からないか」

骸骨剣士【……いや、そうではない】

神父「え?」

骸骨剣士【今日は気候が少し悪い、東の森にある遺跡の周囲だと霧が出ている筈だ……】

神父「そうなのだとしたら、少し難しいクエストになりそうだね」

受付「んー……」


受付「現地のギルド員に確認して、念の為にあの辺の討伐依頼をやってる冒険者に注意を呼び掛けるか」

受付嬢「了解しました、二階の職員に伝えときますねー」

受付「さて、若き冒険者に健闘を祈るとして……骸骨剣士は当座に何をお求めかなぁ?」


骸骨剣士【……街の内部、周辺にいる魔物の討伐だ】

神父「僕は同行するだけでいいよ」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆・・・・


『街の外壁・正門近辺』



警備隊長「ふむ、やはりスカルナイトが来てくれたか」

骸骨剣士【…?】

警備隊長「少々手こずっててな、丁度シルバーランクの冒険者が欲しいと思っていたのだ」

神父「隊長も一応はブロンズの上位の筈ですが、そんなにも?」


警備隊長「だが一般兵の部下達はそうではないからな、何より『数』が相手では私も苦戦する」


骸骨剣士【……なるほど】シャッッ!!

< ズバァッ!


【ギィァ……!!】ドザァッ


神父「メイジキメラ……!」

警備隊長「上を見ろ、まだまだ十はいるぞ」

骸骨剣士【スターキメラ……も、恐らく奴をリーダーとした群れだな……】

骸骨剣士【…外壁の上にある聖域魔法の要石を破壊して街に入ろうとしている……と、見た方が良い……】



       キィィィィンッッ!!



警備隊長「来たぞ、全員散開! 盾は構えとけよ!!」バッ

骸骨剣士【……】ギシッ…ギシッ…


神父「さて、僕は階段のところで隠れてますね」

警備兵「我々が防ぎます! 回復を願いたい!」

神父「大丈夫ですよ、彼なら上手く対処出来るでしょう」

警備兵B「はい?」


< ズバァッ!


骸骨剣士【……翼は落とした、後は任せたぞ】

警備兵C「え……? ぁ、いや! 了解!!」ダッ

警備隊長(メイジキメラの突進に合わせてカウンター……それも、上手く翼のみを切り落としている)

警備隊長(思っていたよりやるじゃあないか、骸骨剣士)


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