「私と”麻雀”がしたいのですか?」(13)

赤土晴江は、小鍛冶健夜に負けたトラウマから牌が持てなくなった…とされている。

もちろんこの事実は正しいが、健夜から跳萬を上がった後に発動した健夜の能力によって
連続放銃させられ、次第に放銃する事を快感と感じるようになっていた。

健夜自身も気付かない、自身と麻雀をするという苦痛を和らげるために行う

        ―― ”卓上の愛” によって ――

咲 -saki- のssです。

多くの者がそうであるように、赤土自身もまた大学で数人の男と付き合い
体を交わらせた。しかし、本人の気付かない心の穴を埋める事は出来ず、
付き合った男が赤土の内にある穴の存在にそれとなく気付き、次第に離れて
いき長続きする事は無かった。

誰かが流布したわけではなかったが、男と付き合ってもすぐ別れる彼女の
周りには、数人の人間しか居なかった。

奇しくもその数人をつなぎ止めていた物は、離れていく原因を作った
    ―”麻雀”―  であった。

プロになる資質も多分にあったが、再び小鍛冶健夜と麻雀をする事によって
娘が廃人になってしまう事を恐れた両親により、一般の企業へ進む事を
考えていた。

彼女自身、無名校を全国にまで登らせた張本人であるため、卒業後に熊倉によって
勧められた企業での麻雀で振り込む事など数えるほどしか無かった。

数年勤めた企業が倒産した後、赤土を次の職に結びつけたのもまた
    ―”麻雀”―   であった。

地元の高校の麻雀部を指導するようになり、そこで彼女の心の穴に
気付いた少女が 鷺森 灼 である。

灼は赤土の心の穴を埋めるべく努力し、それに答えようとする赤土の
その二人の姿はまるでカップルそのものであった。

また後で続きをかきにきます

本人達は恥ずかしさから否定したが、10年以上も空いた
心の中を埋めるというのは、愛以外何物でもなかった。

しかし、一方は伝説と言われ小鍛冶健夜の記憶に残る程の雀士
もう一方は全国大会にやっと出場しようとしている、多少麻雀
強いだけの少女である。

遊びで打ったとしても、赤土が振り込むはずもない。

さらに、"振り込むことに快感を憶える"など、理解出来るはずもない。

教え子からの精一杯の愛を喜びながらも、自分の求めている愛の形を
理解できず、2人の間の溝に薄々と気付き始めていた。

それは灼とて同じことであり、全国大会の前日に些か女子高生には
重過ぎる不安を胸に抱えたまま、赤土の家を訪れた。

しかし、赤土の家からはお互い唇を貪る以外の音は無く、
嬌声が聞こえることは無かった。

そして全国大会の会場で、小鍛冶健夜を見つけ気付けば

「小鍛冶さん、私と"麻雀"を打ってください」

そう口走っていた。赤土を知るものなら、こんな事はあり得ない
と言うであろう。

健夜は一瞬驚いたが、すぐに静かに微笑み了承の旨を伝え、
日時と場所を指定した。

健夜が去った後には
渡されたメモを持ちながら、嬉しさに震える者と
10年分の想い強さ実感して、悲しみに震える者との
2人だけが取り残された。

赤土は、その晩部員に出掛ける事を告げ、小鍛冶の元へ向かった。
灼は、一切の反応を見せずただひたすらに耐えていた。

赤土が指定された部屋に入ると、聖母のような女性が卓についていた。

何も言わず、対面に座り麻雀を始めた。

ーロン 1500です

ーロン 2000は2300です

ーロン 11600は12200です

もちろん赤土に勝てるはずなど無かった。

しかし赤土晴江の本能が、小鍛冶健夜という人間と
麻雀をさせたのである。

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