クロエ・ルメール「タケシー!ニッポンの夕焼けキレイですネ?」 (37)

下駄箱
俺(帰るかー…)
俺「ん」

クロエ・ルメール「???」

俺(ルメール…あいつ一人で何やってんだ?)

クロエ「あ!タケシ!」

俺「よう」

クロエ「ヨウ!」

俺「一人でなにやってんの?」

クロエ(ニコッ)
クロエ「なにもしてないデス!」

俺「そうか」

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クロエ「タケシは、こんな遅くまてナニしてたデスカ?」

俺「補習」

クロエ「ホシュー?なにソレ?」

俺「……」
俺「…放課後に、特別に選ばれた生徒だけが受けられる授業のこと」

クロエ「オー!ホシュー!タケシ、ソレ、選ばれた?」

俺「うむ」

クロエ「ソレ、スゴイこと?」

俺「うむ。すごいことだぞ」

クロエ「スゴイ!タケシ、スゴイ!」

俺「ざっつらいと」

俺「あれ…」
俺「ルメールって部活とかやってたっけ?」

クロエ「やってないデスヨ~?」

俺「えっ。じゃあ、授業終わってからずっとここにいたの?」

クロエ「そのとーり!デス!」

俺(二時間も昇降口に座ってたのか…)
俺(変わってるなぁ)

俺「………」

クロエ「………」

俺(微妙な沈黙がちょっとつらい)
俺(………帰るか)

クロエ「………」
クロエ「タケシ、タケシ」

俺「ん…なんだ」

クロエ「タケシ、部活は?」

俺「帰宅部です」

クロエ「……ソカ。タケシこれから部活で忙しいカー……」

俺「え?あー」
俺「帰宅部っていうのはだな」

クロエ「?」

俺「あれだ。えーっと…」
俺「部活には入ってないんだ、俺」

クロエ「そう……ナノ?」

俺「うん」

クロエ「ソカ」

俺「うん」

クロエ「………」

俺「………」

クロエ「………」

俺「………」(なんだこの沈黙は…っ)
俺「じゃ、じゃあ俺は帰るね」

クロエ「え?」
クロエ「あっ、ハイ!」

俺「また明日」

クロエ「マタマタ明日デス!」

俺「おうおう」





クロエ「………」
クロエ「行っちゃった、デス」

俺(さっきのルメール、様子が少しおかしかったな)
俺(妙にモジモジしてたような……)

俺「ハッ!!」

俺(もしかして…おしっこを我慢してたのでは?!)
俺(きっとそうに違いない!!)
俺(妙に喋らなかったのはそのせいだったか…!!)


俺「うーん。悪いことしちゃったかなぁ…」

俺(俺がグダグダ喋ったせいで行きづらくなっちゃったんだな…)

俺(すぐに会話を切り上げるべきだったか…)

俺「次からは気をつけよう…」

次の日
俺(ふわぁ…今日も眠いぜ…)

扉(ガラガラ)

俺「おはよう」

クロエ「あ!タケシ!!おはようデス!」

俺「あれ?君だれ?転校生?」

クロエ「違いマス!私はクロエ・ルメールですよォ!」

俺「知ってる知ってる」

クロエ「もー!」
クロエ「昨日も、昨日の昨日もこのやりとりやってマシタ!
タケシ、いい加減飽きるベキデス!」

俺「ゴメンゴメン」

クロエ「むー」

俺「おはよう、ルメール」

クロエ「!」
クロエ「おはようデス!タケシ!」

俺(一限目は…英語か)
俺「あ、やべぇ」

クロエ「ドシタカ?」

俺「宿題わすれた」

クロエ「タケシ、アホアホ~」

俺「アホじゃないし!」

クロエ「クロエの宿題、見ル?」

俺「いや…ルメールのならいらない…」

クロエ「なっ?!」
クロエ「クロエのならいらない、ってドユコトですカ!」

俺「いやだってさぁ」

クロエ「見テ見テ!
クロエのノート見テくだサーイ!」

俺「痛い痛い!顔にノート押し付けないでっ」

クロエ「むむ……」

俺「だってクロエの英語の答え、間違いだらけなんだもん」

クロエ「むっ」

俺「……外人のくせに、俺より英語の成績悪いし」

クロエ「むむむっ!」
クロエ「クロエは、フランス人!英語できない仕方ナイ!」

俺「でも俺よりは英語に触れる機会は多いはず」

クロエ「フランス人、ほとんどみんなフランス語!」

クロエ「タケシだって日本人のくせに日本語使えてナイ」

俺「使えてますー水金地火木土天海冥~」

クロエ「タケシこの前の国語のテスト、クロエより悪カタヨ?」

俺「いやいや…クロエよりは流石に…」

クロエ「何点ダタ?」

俺「………」
カキカキ…←筆談する音

クロエ「………」
カキカキ←筆談する音

俺「っ!!!!」

クロエ「フッ」
クロエ「タケシ、アホの子デス」

俺「ぐっ…ちょ、まて!なら前々回のテストを…」

クロエ「望むところデス」

扉(ガラガラ!)

先生「席つけー授業始めるぞー」

俺「あっ…宿題…」

お昼休み

俺(なんやかんやでお昼休み…)
俺(ルメールと喧嘩しちゃったな…)

俺(…まだ怒ってるのかな)

クロエ「タケシ、タケシー」

チョン、チョン←背中ツンツンする音

俺「んひょっっ」

クロエ「?ドシタカ?」

俺「な、なんでもない」

クロエ「お昼休めダヨ?」

俺「知ってる」

クロエ「一緒に、お昼、食べヨ?」

俺「………」
俺「よし。食べようか」

クロエ「うん!」

俺(朝のことはもういいのか)

クロエ「オヒル~オヒル~♫」

俺(ルメールはいつも楽しそうだなぁ)

クロエ「タケシ、今日のお昼どうスル?」

俺「いつも通り購買部でパン買う」

クロエ「……フッフッフッ!」

俺「ど、どうした急に」

クロエ「タケシ!今日購買部行く必要ナイ!」

俺「何故に」

クロエ「クロエ今日、お弁当ふたつ作ってキタカラ!!」

俺「おぉぉぉ!!」
俺「…おぉ?」

クロエ「タケシ、クロエのお弁当ひとつアゲマスネ」

俺「い、いいのか?」

クロエ「イイヨー」

俺「あ、ありがとう」

クロエ「えへへー」

In 中庭
クロエ「ジャーン!」

俺「おー」

クロエ「キャラ弁、つくてみマシタ!」

俺「おー」

クロエ「ドウドウ?クロエのキャラ弁ドウデスカ??」

俺「すごく美味しそうだ。ルメールは器用だなー」

クロエ「えへへ」

俺「………」
俺「あ、あの。ところでこれ、何のキャラ弁なの?」

クロエ「チョンマゲデース!」

俺「そうか」
俺(なんだそのチョイス)

クロエ「?ドシタカ?タケシ?」

俺「ううん。どうもしないよ。食べていい?」

クロエ「どうゾどうゾ」

俺「いただきます」

クロエ「いただかれマース」

モグモグ、モグモグ

クロエ(ドキドキ…)

俺「………うっ」
俺「うまっ!メチャうまあああいいい!!」

クロエ「ホ、ホントですカ!?」

俺「おいしい!味のIT革命や!」

クロエ「ソ、ソレどゆ意味??」

俺「食べ物に対する究極の褒め言葉だ」

クロエ「ホ、ホントに?ホントにホントにおいしい?」

俺「おいしい!味のIT革命や!」

クロエ「よ、よかっター…どんどん食べて食べテ!」

俺「おう!では遠慮なくいただくぜ!」
俺「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ!」

クロエ「カ、カリョク…?」

俺「これもまた、食べ物に対する至高の褒め言葉だ」

クロエ「よ、よくわかんないケド…
タケシ、喜んでくれて、クロエうれしいデス!」

……


俺「ごちそうさまでした」

クロエ「おそ松くんデシタ」

俺「それを言うならお粗末…って俺の言うことじゃないなコレ」

クロエ「?」

俺「クロエありがとな。すごく美味しかったよ」

クロエ「そ、そう何度も言われると少し照れマスヨ」

俺「クロエはお世辞抜きで料理上手だね」

クロエ「そ、そんなコトないデスッ」

俺「いやいや、あのだし巻き卵は
そんじょそこらの主婦には出せない味わいだったぜ」

クロエ「そ、そデスカ」

俺「ルメールはきっと良いお嫁さんになるなー」

クロエ「!!なれマスカ!?」

俺「えっ。うん」

クロエ「ホントに!?ホントにホントになれル!?」

俺「う、うん。なれるんじゃないかな」

クロエ「ワタシ…いいお嫁サン…タケシの…お嫁サン…」
クロエ「う、うぅ……///」

俺「いやーそれにしても美味かったなぁ
クロエには何かお礼しなきゃだなー」

クロエ「え?オレイ?」

俺「うん。しなきゃ、というか是非お礼したい。させてくれ」

クロエ「お礼…」

俺「おう。今ならなんでも言うこときくぜ」

クロエ「なんでも?ホントになんでも聞いてくれるデスカ??」

俺「おうおう」

クロエ「なんでも……いいんデスネ?
後悔しても知りマセンカラネ??」

俺「お、おう」

クロエ「な、なんでも…なんでもなんでもなんでも……」

俺「が、学生の俺にできる範囲でお願いします」

俺「ほれほれ。なんでも言うてみ」

クロエ「けっ…」

俺「うん」

クロエ「………け、け、けっ…」

俺「け?けけけ?」

クロエ「……」
クロエ「………」
クロエ「うぅ……////」

俺「お、おい。顔真っ赤だぞ?だいじょぶか??」

クロエ「ちょ、ちょっとタンマ!タンマお願いシマス!」

俺「お、おう」

クロエ「けっ!」

俺「け?」

クロエ「………っ」
クロエ「や、やっぱナシ!」

俺「えっ」

クロエ「さっきのはナシ!べつのお願いにシマス!シマスカラ!」

俺「わ、わかった。わかったから一旦落ち着け」

クロエ「ハ、ハイ!」
クロエ「スー…ハー…スゥ…はぁー…」(深呼吸)

俺(ル、ルメールがなんか変だ)

クロエ「ふぅー……」

俺(昨日からどうも様子がおかしい。何かあったんだろうか)

俺「………」 じーっ

クロエ「………」
クロエ「……」
クロエ「…うぅ////」

俺「……?ど、どうした?」

クロエ「無言で見つめられると照れてしまいマース……」

俺「……じゃあ見ないように俯いてるから」

クロエ「ゴメンナサイ…お願いしマース」

クロエ「………」

俺「………」(なんだこの緊張感はっ)

クロエ「キョ…」
クロエ「キョキョキョキョキョキョキョ……」

俺(鳴き声…?)

クロエ「………」
クロエ「きょうワタシと一緒に、帰ってくれマセンカ…?」

俺「………」
俺「えっ」

………
……

放課後
クロエ「学校オワタデスー!」

俺「おわたー」

クロエ「タケシ!タケシ!」

俺「おう」

クロエ「イェーイ!」

俺「いえーい」

パチンッ!←二人で手を合わせる音

クロエ「オー!これがニポンの古き良き文化、カシワデ!デスネ!」

俺「違う」

クロエ「アララー?」

俺「………」
俺(いつものルメール、だよな)

クロエ「むむむ…やぱり、ニポン語難しいデスね」

俺(お昼のルメールはなんだったんだろうか…)
俺(やたら顔赤かったけど…風邪か?風邪なのか?)
俺(うむ。風邪だな。風邪に違いない。相違あるまい)

クロエ「?タケシ、どした?」

俺「なんでもない」

クロエ「あ。タケシ、タケシ」

俺「おう」

クロエ「今日、帰宅部、アル日デスカ?」

俺「今日は無い日だから大丈夫」

クロエ「ソカ。良かタデス」

俺「うん」

クロエ「ハイ」

俺「えーっと」
俺「じゃあ、帰ろうか」

クロエ「ハイ!」

………
……

俺「下校なう」

クロエ「ナウ?」

俺「なう」

クロエ「ナウ!」
クロエ「ナウ~♫ナウ~ナウ~♫」

俺「………」
俺(ルメールやたら上機嫌だな)

クロエ「ナウナウ~♫ナナナウ~♫」(演歌風)

俺(不自然に上機嫌すぎる気も…?)

クロエ「ナウナウ~ナウ~♫」

俺(…いや、いつもこんなんだな)

クロエ「タケシ」

俺「おう。なんだ」

クロエ「ナウ、ってどゆ意味?」

俺「ナウマン象の略称だ」

クロエ「ナウマンゾー!」

俺「ナウマンぞー」

俺(うーん…しかし昨日と今日の昼の様子がどうにも気になるな…)

クロエ「あ!タケシタケシ!」

俺「ん?」

クロエ「夕暮れ!夕暮れ!」

俺「あー、キレイだなー」

クロエ「キレイダナー」

俺「うむ」

クロエ「あの夕暮れ!味のIT革命ヤ!」

俺「それはちょっと違うかな」

クロエ「ソデスカー」

俺(まぁ…どうでもいいか。今はそんなこと)

クロエ「?ドシマシタ??」

俺「なんでもないよー」

クロエ「ヨー?」

俺「夕暮れ…綺麗だなぁ」

クロエ「デスね~」

俺「いつもは流して見てたから全然気づかなかったよ」

クロエ「ニッポンの夕焼け!とてもキレイ!」

俺「そうだったんだな。教えてくれてありがとな、ルメール」

クロエ「フッフッフー。
タケシ日本人のくせにニッポンのこと全然知らないデスネ!」

俺「ほんとだなぁ」

クロエ「フフ」

クロエ「……ワタシ、外国人。
外の国のヒトだからこそ、気づけること、たくさんありマス」

クロエ「もし、タケシがフランス行ったら、
私の知らないフランスのヨイとこ、いっぱい見つけるハズデス」

俺「そうかな」

クロエ「そうデスヨ」

クロエ「そしたら、フランスのヨイとこ、
ワタシにもヨイとこ教えて欲しいデース!」

俺「…フランスかー…」

クロエ「ハイ!」

俺「フランス…遠くね?」

クロエ「12ジカンで行けますヨ?」

俺「そうか」
俺「……そうだな」

クロエ「ハイ!」

クロエ「フフ」
クロエ「今日はヨイことたくさんありマシタ」

俺「よかったな」

クロエ「ハイ!
早起きして、オベントー作ったカイありマシタデス!」

俺「………」

クロエ「タケシ、今日はありがとうデス」

俺「………」
俺「…なぁ」

クロエ「?どしマシタ?」

俺「お礼、ほんとにこれだけでいいのか?」
俺「一緒に帰るだけでいいのか?
言ってくれれば高級パフェでもなんでも奢るぞ?」

クロエ「んー。十分ですヨー」

俺「そうか…」

クロエ「……タケシはワタシに、命令されタイデスカ?」

俺「命令?…まぁ、そうだな。

今のままじゃ、俺のサンクスフルなソウルが
申し訳なさのあまり暴発しちまいそうだ」

クロエ「……?タケシの言葉たまによくわかランデス」

俺「すみません」

クロエ「………」
クロエ「わかりマシタ。タケシに命令しマス」

俺「おぉ!ヨシこい!なんでもするぜ」

クロエ「えーっと、まず一つ目はデスね…」

俺(一つ目!?二つ目もあるの!?)

クロエ「一つ目のお願いは…」

俺(ゴクリ…っ)

クロエ「……これからは毎日ワタシと一緒に帰りマショウ」

俺「……毎日?」

クロエ「毎日デス」

俺「おっけー了解了解」

クロエ「な、なんだか随分とアッサリしてマスね」

俺「一緒に帰るだけだろ?それくらい別に普通じゃん」

クロエ「むむむっ…」

俺「?どうした」

クロエ「いえ、ソノ…昨日のワタシが急に滑稽に見えて来てデスネ…」

俺「?」

クロエ「ま、まぁそれはヨイのです!次のお願いはー」

俺(二つ目…ッ)

クロエ「………」

俺「はよ」

クロエ「二つ目は、デスね」
クロエ「………」

クロエ「や、やっぱりいいデス!」

俺「えっ。今更?」

クロエ「お願いは一つ目だけでオッケーデス!」

俺「ちょ、おい」

クロエ「それじゃ!私はコッチなんで!タケシまた明日デス!!」

俺「まてまて!なんかあるんだろ?お願いしたいことが!」

クロエ「そ、それはぁ……」

俺「言えって。今言わないなら明日もしつこく聞くぞ俺は」

クロエ「うぅ…」

俺「さぁさぁ!さぁさぁ!」

クロエ「ワ、ワタシのこと…」

俺「おう」

クロエ「………」
クロエ「ワタシのこと、ちゃんと、名前で呼んで欲しいデス」

俺「………」
俺「Uh-huh?」

クロエ「ワ、ワタシのこと!クロエって名前で呼んで欲しいデース!」

俺「名前…名前かー…」

クロエ「ハイ。ワタシ、クロエ・ルメール。
クロエって名前で呼んで欲シイ」

俺「で、でも今まではずっとルメールだったわけだし…別にこのままでも…」

クロエ「いやデス!タケシには名前で呼んでもらいたいのデス!」

俺「hmmm...」

クロエ「ルメールて呼ばれるの、ちょっぴりさみしい。
キョリ感じてさみしいデス」

俺「………」

俺「外国では日本みたいに名前と姓の使い分けなんて無いって聞いたぞ?」
俺「そんなにこだわることじゃあ…」

クロエ「タケシには名前で呼んでもらいたいのです!」

俺「いきなり名前で呼ぶのは、ふ、ふつうに照れるんだが」

クロエ「うぅ…クロエって呼んでもらいたいのデース…デース…デース…」

俺「………」

クロエ「ダメ……デス、か?」

俺「………はぁ。わかったよ」

クロエ「!」

俺「ク、ク、クロエっ」

クロエ「!」

俺「ほら!これでいいんだろ!」

クロエ「ハイ!……ハイッ!オッケーデス!
アリガト!タケシ!」

俺「まったく…」

クロエ「それデハ、私も対等にタケシのこと名前で呼ばせていただきマスネ!」

俺「えっ」

クロエ「サトウ!これからもよろしくデス!サトウ!」

俺「いやタケシの方が名前だからっ!サトウは苗字だから!」

クロエ「?」

俺「日本の人名は姓、名前の順で並ぶんだよ」

クロエ「???ニポン語難しいデースネー」


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