戒斗「戦場のヴァルキュリアか」 (60)

諸注意
・仮面ライダー鎧武と戦場のヴァルキュリア3のクロスSSです。
・鎧武側は戒斗のみ、46話~最終話の間。
・戦ヴァル3はPXZ経験済み、最終章のジグを倒した直後辺り。
・独自解釈や設定があるので苦手な方は注意願います。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1413198270

~最終決戦後~

紘汰「泣いていいんだ……」

紘汰「それが俺の弱さだとしても……拒まない」

紘汰「俺は……泣きながら進むッ」

戒斗「お前は……本当に強い」ガクッ

……

…………

戒斗「……」

戒斗「……う」

戒斗「俺は一体……」

戒斗「……いや、そういう事か」

戒斗「ならば俺は……」

戒斗「……ん、この気配は……」

戒斗「ふん。まだ一つ、やり残したことがあったか」

   断章
~異世界の訪問者~


~帝国領内・廃村~

戒斗「……さて、幾つか街や村を回ってみたが」

戒斗「やはり、ここもヘルヘイムに侵されているようだな」

戒斗(今の俺に、オーバーロードの力はほとんど残っていない)

戒斗(面倒だが、一つ一つ潰すしかないな)

戒斗「……ふん」ズシャッ

戒斗「ん?」

ガサガサ

インベス「ギイィィィィィ!!!」

戒斗「チッ……向こうから迷い込んできたか? あるいはこの世界の動物の変異体か」

戒斗(オーバーロードの力が使えない今、こいつらを操る事はできん)

インベス「ガアアァァァ!!」

戒斗「ふん。喚いたところで俺のやる事は変わらん」スチャッ

戒斗「……変身」

バナーナ!

ロックオーン

パーパララパパパパッパラララー♪
カモーンバナナアームズ!

ナイトオブスーピアー♪

バロン「ハァァッ!!」ズバッ

インベス「ギィィアアアアア!!?」ズシャッ

バロン「……」

インベス「「グルルルル」」ゾロゾロ

バロン「まだいたか。ならば、相手になってやる」

…………

~同時刻・廃村近辺~

クルト「ここまでは順調だな」

リエラ「そうだね。何とか国境も突破できたし」

クルト「あぁ。出来ればこのまま行きたいところだが」

カリサ「物資には限りがありますからね~。無駄な戦いは避けてほしいです」

クルト「分かってる。だが、この先には廃村があるらしい」

リエラ「もしかして、カラミティ・レーヴェンの待ち伏せが……?」

クルト「残存戦力から考えて、その可能性は低いと思うが絶対じゃない」

ジュリオ「アルフォンスが偵察に出てるんだろ? そろそろ連絡があるんじゃないか」

クルト「そうだな」

アルフォンス『隊長、聴こえるか?』

リエラ「あ、噂をすれば……」

クルト「アルフォンス、先の様子はどうだ?」

アルフォンス『それなんだが……』

クルト「何かあったのか?」

アルフォンス『その、どう言ったらいいものか分からないんだ』

ジュリオ「珍しいな。アルフォンスが言い淀むなんて」

クルト「ともかく、見た事をそのまま伝えてくれ。こっちで判断する」

アルフォンス『あ、あぁ。まず村の様子なんだが、見たこともない植物が村中に溢れている』

クルト「植物?」

アルフォンス『それで、その周りに化け物が徘徊しているんだ』

リエラ「ば、化け物!?」

クルト「アルフォンス、それは熊か何かの比喩か?」

リエラ「まさか、ヴァルキュリア!?」

イムカ「……ッ」

アルフォンス『どっちも違う。そのままの意味だよ。とても動物には見えない。化け物だ』

ジュリオ「化け物ねぇ。疲れてるんじゃないのか?」

クルト「……アルフォンス、それが説明を躊躇した理由か?」

アルフォンス『いや、それもあるが……』

リエラ「まだあるの?」

アルフォンス『その村に一人の男がいたんだ』

クルト「男? カラミティ・レーヴェンの関係者か?」

アルフォンス『いや、見慣れない服装だった。連中の関係者とは思えないな』

ジュリオ「植物を研究しにきた学者か何かかな?」

アルフォンス『断定はできないが、そんな雰囲気ではなかったな。で、その人間が化け物を見て……』

リエラ「化け物を見て?」

アルフォンス『何かポーズを取ったと思ったら、空から巨大なバナナが降ってきて』

ジュリオ「は?」

アルフォンス『そのバナナが甲冑みたいになって、今、戦ってるんだ』

リエラ「……えっと」

クルト「……すまない。アルフォンス、君が何を言っているのかが分からない」

アルフォンス『俺が見たそのままを口にしただけだよ』

イムカ「幻覚を見ているとしか思えない」

アルフォンス『奇遇だね。俺も自分の目を疑っているところさ……どうしたらいいかな?』

クルト「……よく分からないが、直接見たほうが良さそうだ」

リエラ「そ、そうだね」

クルト「アルフォンス、俺達がそちらに着くまで引き続き監視を頼む」

アルフォンス『あぁ、分かった』

クルト(しかし、化け物か。まさか……)

リエラ「あ! ねぇ、クルト。もしかして」

イムカ「ん……その考え、きっと間違いじゃない」

クルト「そうだな。それを確かめるためにも、急ごう!」

…………

クルト「アルフォンス、状況はどうだ?」

アルフォンス「化け物の数はかなり減っている。ただ、バナナの甲冑の動きが段々鈍ってきているな」

クルト「ふむ。こうして近くで見ると、確かにバナナのように見えなくもないが……」

リエラ「……ここから見る限りだとあの化け物、アラガミや降魔じゃなさそうだね」

イムカ「あんな敵は見た事がない」

クルト「ゾンビや魔界の住人でもなさそうだな。全く未知の敵……か」

アルフォンス「?? みんなは何を言っているんだ?」

クルト「詳しくは後で話す。今はあの化け物の情報が欲しい」

ジュリオ「じゃぁ、あの正体不明の甲冑を援護するのか?」

カリサ「この先を考えると、弾丸に余裕があるわけじゃないんですけど」

クルト「分かっている。だから、戦うのは俺とリエラ、イムカの三人だ」

リエラ「私たちだけで……うん、分かった」

イムカ「ああいう敵との戦いは慣れている。何も問題はない」

クルト「そう言ってくれると助かる。他の者は村の周囲で待機、化け物が村の外へ逃げようとした場合に備えてくれ」

ジュリオ「逃げ道を塞げばいいんだな」

クルト「そうだ。敵の情報が少なすぎる現状、無茶はするな。身の安全を第一に考えてくれ」

アルフォンス「了解だ」

カリサ「しょうがないですねぇ」

クルト「よし。早速行動に移る。みんな、いくぞ!」

…………

バロン「くっ、下級とはいえ数が多い……だがッ!」ズババッ

インベス「ギイイィィィ!!?」ドサッ

バロン「ハァ……ハァ……」ガクッ

バロン(チッ……脚が……思った以上にダメージが深刻という事か)

インベス「ガァァァァアアッ!!」

バロン(後ろから!? しまっ――――)

ズドドドドドド

インベス「!?」バッ

クルト「大丈夫か!?」ズガガガガガ

バロン「何!?」

インベス「グウウゥゥゥゥ!?」ガキンガキン

リエラ「効いてない!?」バン! バン!

クルト「いや、確かに装甲は硬いようだが……これでッ!」ズガガガガ!!

インベス「ギイイイ!?」ズバシャァッ

リエラ「やった! 倒れた!」

イムカ「クルトに続く!」ズドオオォン!!

インベス「グギャアアアァァ!!?」ボシュン

クルト「ふぅ……間に合ったようだな」

バロン「何のつもり……いや、今はここを切り抜ける!」カシャカシャカシャ

バナナスパーキーング!!

バロン「ハァァッ!!」

ドガガガガガッ!!

クルト「なっ!? 残った敵を一瞬で!?」

リエラ「凄い! まるでイムカの武装開放みたい」

イムカ「む……全然似てない」

リエラ「そうかな?」

バロン「……ともかく、終わったようだな」カシャン

戒斗「……」

リエラ「わっ。鎧が消えた!」

戒斗「それで、お前たちは何者だ? 服装はガリア軍のようだが」

クルト「それはこっちの台詞なんだが……ガリアを知っているのか?」

戒斗「どういう意味だ?」

クルト「いや、あの化け物と戦っている事といい、その鎧といい……君は異世界から来た者と思ったんだが」

戒斗「……分かるのか?」

リエラ「えーっと、やっぱり異世界から来たんだ?」

クルト「俺たちは以前、異世界に飛ばされた事がある。それで、多少なり推測ができたんだ」

戒斗「なるほど、そういう事か。確かに俺はこの世界の人間ではない」

戒斗「ただ、この世界は多少なり散策した。だから帝国とガリアの一般常識程度は認知している」

クルト「……そちらの事情は理解した。しかし、あと二つほど確認させてほしい」

戒斗「なんだ?」

クルト「君の目的……そしてあの化け物たちについてだ」

戒斗「俺も聞きたい事がある。戦争が終結に向かっている今、何故ガリア軍が帝国領内にいるのか……な」

クルト「俺たちはガリア軍ではない。事情を話すと長くなるが……」

戒斗「ならば、先に俺の用事を済ませてから聞こう」

クルト「用事?」

戒斗「この村に巣食ったヘルヘイムの植物を殲滅する事だ」

リエラ「ヘルヘイム……って、この美味しそうな実をつけてる植物?」スッ

イムカ「待て! それは食べてはいけない!」

クルト「イムカ……?」

戒斗「勘がいいな。インベス……さっきの化け物になりたくなければ食べない事だ」

リエラ「えっ?」

クルト「……それはつまり、その実を食べると化け物になるという事か」

戒斗「あぁ。それと、念のため聞くが今の戦闘でケガはしていないな?」

イムカ「問題ない」

リエラ「私も大丈夫だよ」

クルト「俺もだ……が、そう聞くという事は、あの化け物自体にも毒か何かがあるという事か?」

戒斗「似たようなものだ」

リエラ「クルト……」

クルト「あまり目立った行動は取りたくないが……この状況では致し方ない、か」

イムカ「……」

クルト「君……えぇと」

戒斗「戒斗。駆紋戒斗だ」

クルト「戒斗、そのヘルヘイムへの対処はどうすればいい? 普通に焼却すればいいのか?」

戒斗「あぁ。それでいい」

クルト「そうか。幸い……といっては何だが、燃やす事に関してはこちらに専門家がいる。任せてほしい」

リエラ「あ、あはは……専門家って言っていいのかな」

クルト「ともかく、ヘルヘイムやインベスについて詳しい話を聞きたい」

戒斗「いいだろう。さっきも言ったが、こっちも聞きたいことがあるからな」

クルト「ありがとう。遅くなったが、俺はクルト・アーヴィングだ」

リエラ「リエラ・マルセリスです」

イムカ「イムカだ」

クルト「よし! それでは早急に焼却班を編成、ヘルヘイム植物を殲滅するぞ!」

……

…………

……

~ネームレス・陣地~

戒斗「懲罰部隊ネームレス……それにカラミティ・レーヴェン……か」

クルト「進化を促すヘルヘイム……黄金の果実……」

リエラ「それにインベスに傷つけられても侵食されちゃうなんて」

クルト「戒斗。改めて確認するが、君の目的はそのヘルヘイムを止める事……なのか?」

戒斗「そうだ」

クルト「では今後の進路については? この地図でいうと……」スッ

戒斗「東方面の……ここだ。ここがこの世界での最後の侵食地だ」

クルト「分かるのか?」

戒斗「まぁな」

リエラ「……私たちの進路と一致してるね」

イムカ「このルートだと回避はできそうにない」

クルト「何となく予想はしていたが……」

リエラ「クルト、どうする?」

クルト「このまま見過ごす事はできないな」

戒斗「インベスと戦うつもりか?」

クルト「戒斗、俺たちはガリアを……いや、この世界を守る義務がある」

戒斗「……好きにしろ。俺はもう行く」

クルト「待ってくれ!」

戒斗「なんだ。お互い、必要な情報は知り得たはずだが」

クルト「先ほどの戦いを見る限り、大分疲労が溜まっているんじゃないのか」

戒斗「……」

クルト「ここなら、多少は休息できる。それに俺達の目的地は一緒だ」

戒斗「俺にネームレスに入れと?」

クルト「そこまでは言わない。ただ、俺はより良い選択を考えただけだ」

リエラ「歓迎するよ、戒斗さん!」

イムカ「安心していい。ここの居心地は悪くない」

戒斗「……いいだろう。ならば、しばらくは俺はNo.8だ」

リエラ「へっ?」

戒斗「お前たちはナンバーで呼ばれるんだろう?」

リエラ「そうだけど……」

クルト「むぅ……No.17やNo.99やNo.765もそうだったが、そんなにいいものか?」

リエラ「異世界の人にはカッコよく見えるのかな……?」

イムカ「その感覚は理解できない」

戒斗「……」

クルト「あー、リエラ。戒斗を案内してあげてくれ」

リエラ「あ、うん。それじゃ戒斗さん」

戒斗「俺の事は呼び捨てで構わん」

リエラ「えーっと……それじゃ、戒斗。案内するね。ついてきて」スタスタ

戒斗「……」スタスタ

イムカ「……」

クルト「……イムカ?」

イムカ「……別に、何でもない」

…………

戒斗「ここは調理場か」

ジュリオ「ん? あんたは?」

戒斗「No.8の戒斗だ」

ジュリオ「は?」

リエラ「あ、あはは……えぇと、さっき説明した……」

ジュリオ「あぁ、あんたがあの化け物と戦ってたって言う……」

戒斗「そうだ」

ジュリオ「な、なんだか無愛想なヤツだな。俺はNo.32、ジュリオ・ロッソだ」

戒斗「料理をしていたのか」

ジュリオ「おう。これでもコックでな。いい食材が手に入ったから、夕食は期待してくれていいぞ」

リエラ「いい食材って……まさか」

ジュリオ「ん? あ、いや誤解しないでくれ! あの変な実の事じゃない!」

リエラ「だ、だよね」

ジュリオ「いくら俺でも、食ったら化け物になるなんて物騒な物使わないって!」

リエラ「それじゃ、またこっそりその辺をうろついてたのね」

ジュリオ「言い方に棘があるような……ちょっと近くの湖まで魚釣りに行っただけだよ」

リエラ「そうやってみんなに心配かけさせないの!」

ジュリオ「うぐっ……悪かったよ。今度から気をつけるって」

リエラ「もう。そういえば、戒斗はこの世界を一人で旅してたんだよね。料理はするの?」

戒斗「あぁ」

ジュリオ「へぇ。見た目的には生の食材に齧り付いてそうなのにな」

戒斗「言ってくれるな……ならば俺も一つ、振る舞わせて貰おうか」

ジュリオ「自信ありげだな。なら、勝負するか?」

戒斗「勝負か……いいだろう」

ジュリオ「おっ、乗り気だねぇ。そういうの、嫌いじゃないぜ」

戒斗「ではどんな食材があるか見せてもらおうか」

ジュリオ「期待していいぞ。どうせガリアを離れるならって、色々無茶して詰め込んできたからな」

リエラ「そんな事してたんだ……」

戒斗「フルーツがたくさんあるな。なら、俺はデザートを作ろう」

ジュリオ「甘いものか。予想外のチョイスだな」

リエラ「確かに……ちょっと意外かも」

戒斗「見くびるなよ。この俺が最高にフレッシュなスイーツを提供してやろう」

リエラ「な、なんか凄い気合……」

ジュリオ「それくらいでないと面白くない。よし、俺も気合を入れ直すか!」

…………

フェリクス「またジュリオが料理対決を始めたって?」

グロリア「やれやれ。相変わらず料理に関しては忙しない男さね」

アニカ「美味しいご飯が食べられるなら何でもオッケーです!」

ヴァレリー「相手はクルトなの?」

アルフォンス「いや、戒斗という……例のインベス絡みの男だ」

フェリクス「あいつか。そういえば、驚いたよな。クルトたちが以前に異世界に行っていたなんて」

ヴァレリー「半日ほど姿が見えなかった時があったけど、そんな事になっていたなんてね」

アニカ「水臭いですよね。私たちに内緒にするなんて」

グロリア「たった半日の留守だったんだ。こんな事でもなければ信じなかっただろうよ」

フェリクス「それもそうか」

リエラ「みんなー、料理ができたみたいよー」

アニカ「待ってました!」

ジュリオ「渾身の作だ。よく味わってくれ」

エイミー「今日はお魚の料理なんですね」モグモグ

ダイト「……味付けも濃すぎず、悪くないな」

フェリクス「相変わらずの腕前だな。けど、もう一人……戒斗だっけ、そいつの料理はまだなのか?」

ジュリオ「あぁ。戒斗が作っているのは食後のデザートだからな」

アニカ「なるほどー……って、全然違う料理で勝負になるんですか?」

ジュリオ「え?」

ヴァレリー「ほら、クルトと勝負した時は同じ料理で戦って決着がつかなかったわけでしょ」

エイミー「そうですね。全く違う料理で勝負したら、ますます決着がつきにくくなるんじゃ……」

ジュリオ「いや、同じ料理でダメだったから、お互い自信作で勝負した方がいいんじゃないか」

フェリクス「ふぅん。まぁ、美味いメシが食えるなら何でもいいけどな」

アニカ「そうですね! うーん、デザートも楽しみです!」

リエラ「そろそろだと思うけど……」

戒斗「待たせたな。これが俺の入魂の一品、その名も『ミルクレープ~アーマードライダー風~』だ!」

フェリクス「こ、これは!?」

エイミー「綺麗……」

アニカ「凄いです! 色んなフルーツがふんだんに盛り付けられてて……」

グロリア「また随分と甘そうなものが出てきたね」

アルフォンス「これは……かなりの出来栄えだね」

戒斗「見た目だけで判断してもらっては困る。切り分けるから、思う存分味わうがいい」

リエラ「それじゃ、頂きます! ほら、イムカも」パクッ

イムカ「あ、あぁ……ん、悪くない」モグモグ

アニカ「これ凄く美味しいですよ!」

エイミー「なんだか、優しい味ですね」

ダイト「……あぁ」

ジュリオ「戒斗のデザート、中々に好評みたいだな」

戒斗「当然だ。だが、それはお前の料理も同じだろう」

ジュリオ「そりゃまぁ、俺はこれが本職だからな」

戒斗「後は結果を待つだけか」

フェリクス「あー、その時間か……やっぱ決めないとダメか?」

アニカ「うーん、どっちも凄く美味しくて……決めるのなんて無理です!」

アルフォンス「確かに甲乙つけがたいね」

ヴァレリー「後は好みの問題になってしまうけど、それだと二人が納得いかないでしょう?」

グロリア「結局こういう流れになっちまったね」

ジュリオ「むぅ……予想はしていたが、明確な答えは出ないか」

リエラ「ごめんなさい。でも、どっちの料理も本当に美味しかったから」

ジュリオ「はぁ。もう諦めたよ。戒斗、そういうわけで決着は保留って事でいいか?」

戒斗「……」

ジュリオ「あー、やっぱり納得いかないか?」

戒斗「いや……良い勝負だった」

ジュリオ「ん、そうか。すまんな。そうだ、後でレシピを教えてくれないか」

戒斗「いいだろう」

……

…………

~深夜・外~

クルト「……」

戒斗「こんなところにいたのか」

クルト「戒斗……休まなくていいのか?」

戒斗「それはこちらの台詞だ。お前はダハウとの決戦もあるのだろう」

クルト「ダハウ大尉……か」

戒斗「……リエラたちからダハウという男について聞いてきた」

戒斗「ダハウは迫害されてきたダルクス人の独立を目指しているとな」

クルト「あぁ」

戒斗「そして、その為に武力による強硬手段を取ろうとしている……」

クルト「ダハウ大尉の事で、何か気になる事でも?」

戒斗「元の世界で、俺はどちらかといえばダハウに近い人間だった」

クルト「そうなのか」

戒斗「……なんとも思わないのか?」

クルト「どういう意味だ?」

戒斗「敵対する者と思想を近しくする男に協力しようとしているんだぞ」

クルト「別に問題があるとは思っていない」

戒斗「何……?」

クルト「前にも言ったが、この世界を守るのは俺たちの責務だ。それに……」

戒斗「……」

クルト「……戒斗、俺にはグスルグという友がいたんだ」

クルト「グスルグのお陰で俺はネームレスのみんなに認めてもらえたし、幾つもの困難を乗り越えられた」

クルト「そのグスルグが、ダハウ大尉の理想を信じてネームレスを離れた」

戒斗「裏切ったという事か」

クルト「最初に裏切ったのはグスルグではなく……いや、そういう話ではないな」

クルト「ともかく、グスルグが信じるほどに輝く理想がダハウ大尉にはあったんだ」

戒斗「だからお前はダハウの思想を認めていると?」

クルト「その全てが間違いだとは思っていないという事だ」

クルト「ただ、そのやり方だけは看過できない」

クルト「ガリアの、世界の危機を見過ごす事は出来ないからな」

戒斗「だから戦うのか」

クルト「そういう事になるな」

戒斗「その為に自らを犠牲にしてでもか」

クルト「犠牲……か」

戒斗「お前も、ネームレスの皆も国を捨てる事になったんだろう」

クルト「そうだな。みんなには感謝しかない」

クルト「その上で、俺は後悔していないと断言できる。みんなの気持ちまで代弁することはできないが」

戒斗「そう言い切れる理由は何だ」

クルト「これは先ほどの……戒斗、君を受け入れられる理由とも重なる部分がある話になるが」

クルト「最高の結果を求めて、辿り着いた答えがこれだからだ」

戒斗「最高の結果……」

戒斗「なるほど、それが……」

クルト「戒斗はどうなんだ? 最高の結果を求めようとは思わないか?」

戒斗「……その問いは既に意味を成さないな。俺の運命は決まっている」

クルト「え……」

戒斗「冷えてきたな。もう休ませてもらう」

クルト「戒斗、君は……」

……

…………

……

~翌日・廃村付近~

アルフォンス「いるいる。昨日よりインベスの数が多いな」

ジュリオ「あれを全滅させるのか。骨が折れそうだな」

イムカ「しかも無傷で勝たねばならない」

戒斗「もう一つ気をつけることがある。村のどこかにクラックがあるはずだ」

クルト「クラック……ヘルヘイムと繋がっているという空間の亀裂か」

アルフォンス「ここからだとそれらしいものは見当たらないな」

リエラ「もしかして、建物の中にあるとか?」

ジュリオ「破壊してみるか? 上手くいけばそのまま瓦礫で埋められそうだけど」

クルト「いや、カラミティ・レーヴェンとの決戦を考えると無駄な消耗は避けたい」

戒斗「クラックは俺が閉じる。お前たちはインベスとヘルヘイム植物の焼却を考えればいい」

クルト「分かった。では、作戦を説明する。まず三方から村を包囲し、インベスの退路を塞ぐ」

クルト「具体的には東・西・北側だ。ここに大半の戦力を配置する。そして南側から少数精鋭で攻め入る」

アルフォンス「傷を負うわけにはいかないから、攻撃は消極的にならざるを得ないわけか」

クルト「それもある。が、戒斗たちに大立ち回りをしてもらうには少人数の方がいいんだ」

戒斗「では、南側の担当は……」

クルト「俺と戒斗、リエラとイムカの四名だ。二人とも、いいか?」

リエラ「私なら大丈夫だよ」

イムカ「問題あるわけがない」

アルフォンス「何かあったら連絡する。それじゃ、配置につくぜ」

ジュリオ「……そうだ。もしかしたらこれが戒斗と話す最後の機会になるかもしれないんだよな」

戒斗「この作戦が終わったら、俺は元の世界に戻るだろうからな」

ジュリオ「じゃあ、これだけは言わせてくれ」

ジュリオ「決着がつかなかったのは残念だが、あんたとの勝負は本当に楽しかった。ありがとな!」

戒斗「ふっ。もし、再び出会う事があれば……」

ジュリオ「その時はもう一度勝負だ!」

クルト「……むぅ」

イムカ「どうした、クルト」

クルト「実は昨日の戦闘でいいレシピが思いついていたんだ」

リエラ「参戦したかったんだ……」

戒斗「俺のレシピはジュリオに渡した。後で比べてみるがいい」

クルト「そうしよう……すまない。話が逸れたな」

クルト「よし、各員の配置が整い次第、作戦を開始する!」

…………

クルト「……そろそろだな。みんな、準備はいいか」

リエラ「うん。私は大丈夫だよ」

イムカ「いつでも構わない」

クルト「戒斗はどうだ」

戒斗「今終わらせる……そこで見ておけ」スチャッ

戒斗「変身ッ!」

バナーナ!

ロックオーン

リエラ「わわっ!? ほんとにバナナが!?」

クルト「これは……アルフォンスの言っていた通りだな」

イムカ「バナナが鎧に……有り得ない」

パーパララパパパパッパラララー♪
カモーンバナナアームズ!

ナイトオブスーピアー♪

バロン「クルト……」

クルト「あぁ……では作戦開始だ。これよりインベスを殲滅する!」

バロン「行くぞっ!」ダダダッ

インベス「!?」

インベス「「ギイイィィィィ!!!」」

イムカ「それ以上、近づけさせない!」ドォン!

リエラ「クルト、私は……」ドン! ドン!

クルト「まだその時じゃない。タイミングを見誤るな」バババババ

リエラ「うん!」ズドンッ!

バロン「ハアアアァァァ!!」ズバババッ

インベス「ガアアァァァ!?!?」

インベス「「ギイイィィィィ……」」ゾロゾロ

リエラ「わわっ、どんどんこっちに来てるよ!?」

バロン「チッ、やはり数が多いな」ズバッ

イムカ「ならば一気に叩く! 敵にペースは乱させない!」ギュイイィィン

ドーン バゴォンッッ

バロン「やるな。ならばそれに続く!」カシャカシャカシャ

バナナスパーキーング!!

ズドドドドドッ!!

リエラ「正面が開いたわ!」

クルト「よし、このまま攻め入るぞ! 周囲の警戒を怠るな!」ダダダッ

……

…………

……

クルト「インベスの数は減ってきたようだが……」

イムカ「だが、イヤな気配がする。油断はできない」

リエラ「一体何処から……」

バロン「……」

ズドガァァァン!!

バロン「ぐぅっ!? 壁を突き破って――!?」

セイリュウインベス「グルルルル」

カミキリインベス「キィィィィィ」

ビャッコインベス「ガァァァァァ」

クルト「なっ!? なんだこのインベスは……!?」

イムカ「姿が違う……?」

リエラ「戒斗、このインベスは……」

バロン「気をつけろ! そいつらは上級インベス、その辺の雑魚とは違う!」

バロン(くっ、本調子ならいざしらず、今の俺とこの戦力ではきついか……?)

バロン(だが、どんな状況、どんな相手だろうと俺は……)

セイリュウインベス「グガアアアッ!!」ブオンッ

クルト「くぅ……ッ!」サッ

カミキリインベス「キイイィィァァァ!!」シュババッ

イムカ「早いッ!?」ガッ

ビャッコインベス「グオオオォォッ!!」ドドドド

リエラ「くっ!?」ダッ

ドガアアアンッ!

リエラ「か、壁が粉々に!?」

バロン「ハアッ!」ヒュッ

カミキリインベス「ギイィィ!?」ババッ

セイリュウインベス「グウウウゥゥゥ」ガキンッ

バロン「チッ……味方を守ったか」

リエラ「クルト……ッ」

イムカ「このままでは埒が明かない」

クルト「……戒斗、一対一なら上級インベスを倒せるか?」

バロン「なに? ……いや、俺の方は問題ない」

バロン「部隊の隊長はお前だからな。考えがあるのだな?」

クルト「あぁ」

バロン「ならばそれを信じる……では、先に行くぞ!」

バロン「ハアアァァァッ!!」ドガガッ

セイリュウインベス「グウゥゥゥ!?」ズザザッ

クルト「戒斗が敵を遠ざけた……リエラッ!」

リエラ「うん、任せて」

クルト「よし。イムカは俺と共にもう一体のインベスを!」ズドドドド

イムカ「分かった。誰も傷つけさせはしない!」ドォォン!

リエラ「…………」スゥッ

バロン「……ん? なんだ、リエラの髪が……?」

クルト「戒斗はヴァルキュリアという言葉を聞いたことはないか?」

バロン「超人的な強さを誇り、青く輝く槍と盾を駆使する伝説の民族……」

バロン「そうか。リエラが……」

リエラ「この力はみんなを守るための力……だから私はこの力を恐れたりしない!」

リエラ「いっっけぇぇぇぇッッ!!」ギュイイィィン

バシュゥンッッ 

カミキリインベス「ギャアアアアァァァ!!!?」ボンッ

クルト「やったッ!」

セイリュウインベス「グオオオオッ!!」ブォンッ

リエラ「!?」

ガキィンッ

バロン「貴様の相手はこの俺だッ」スチャッ

マンゴー!

パーパララパパパパッパラララー♪
カモーンマンゴーアームズ!

ファイトオブハーンマー♪

リエラ「姿が変わった……」

バロン「ハアアァァァッ」カシャカシャ

マンゴーオーレ!!

バロン「タァッ!!」ブオォォンッ!!

セイリュウインベス「ウヴァアアァァァ!?!?」ドガァァン

クルト「後は俺達だけだ! イムカ、急所を確実に狙え!!」

イムカ「言われるまでもない。狙いは……外さないッ!!」ドオオォン!

クルト「うおおぉぉぉぉっ!!」ズガガガガガガ

ビャッコインベス「グアアアアアッ!?」

……

…………

バロン「……」カシャッ

戒斗「……終わったか」

リエラ「後はヘルヘイム植物を焼却して……」

クルト「この……クラックを閉じればいいわけか」

イムカ「不思議だ……亀裂の先に別の世界が見える」

クルト「戒斗、どうするつもりだ?」

戒斗「俺が向こう側へ行き、直接閉じる。それでヘルヘイムの侵食は止まるだろう」

リエラ「この先って、ヘルヘイムの本拠地みたいなものなんでしょ。大丈夫なの?」

戒斗「あぁ」

クルト「既に焼却の用意は始めている。こちら側の心配はない。ここで……お別れだな」

戒斗「そうなるな。短い間だったが世話になった」

リエラ「こちらこそ。ケーキ、とっても美味しかったよ」

イムカ「お前の事は忘れない」

クルト「戒斗……」

戒斗「クルト、お前たちは間違いなく強者だ」

クルト「……そうか」

戒斗「ふ……さらばだ」スタスタ

ジィィ……

リエラ「あ、クラックが……」

クルト「完全に閉じたか」

リエラ「……ねぇ、クルト。さっき戒斗に何か言おうとしていなかった?」

イムカ「リエラの言うとおりだ。私たちは誤魔化せない」

クルト「それは……いや、もういいんだ」

クルト(戒斗、君は自分の運命が決まっていると言った。その意味はもしや……)

リエラ「クルト?」

クルト「……すまない。大丈夫だ」

クルト「俺たちにはまだ最後の戦いが残っている。焼却処理が終わり次第、出発するぞ!」

……

…………

……

戒斗(僅かに残った力で、何とかクラックを閉じる事はできたか)

戒斗(だが、これで……)

戒斗「……」

戒斗(ダハウ……直接相対する事はなかったが、俺たちは似ている部分があったようだな)

戒斗(だが、俺が世界を破壊して理想を成就しようとしたように……)

戒斗(貴様の理想への道筋も大きな矛盾を孕んでいる)

戒斗(そして、本当の強者とは最高の結果を求め続ける者をいうのかもしれない……)

戒斗(なればこそ、俺達の結末は変わらないのだろう……)

戒斗「……いや、違うな」

戒斗「その結末を決めるのも、導くのも俺ではない。あいつらか」

…………

サガラ「よう、戒斗」

戒斗「……サガラか」

サガラ「全く……俺の後をつけてきたかと思えば」

サガラ「よくもまぁ、その身体で暴れたもんだ」

戒斗「そんな事を言いにきたのか?」

サガラ「……何であの世界への干渉を止めさせた?」

サガラ「俺に一泡吹かせようとでも思ったか」

戒斗「……勘違いするな。あの世界は貴様らの介入などなくても変わる……貴様らは不要だというだけだ」

サガラ「ほう……そいつを俺に示すって事は、一泡吹かせるって意味じゃないのか?」

戒斗「……」

サガラ「お前はヘルヘイムに否定的じゃないと思っていたんだが」

サガラ「まさか、今更葛葉紘汰の真似事でもしようって思ったか?」

戒斗「もう一度言うぞ。勘違いするな。やつの真似をしたつもりもない」

サガラ「ならば何故だ?」

戒斗「俺の運命は決まった。この後、何をすべきか……答えは一つだ」

サガラ「……なるほどな。葛葉紘汰ではなく、俺の真似をしようってわけか」

サガラ「その上で、葛葉紘汰の意志を汲んで人間への介入を阻止したと」

戒斗「……」

サガラ「ま、あの世界は偶然見つけた……言わばついでのようなものだ」

サガラ「だからお前さんの意思を尊重しようじゃないか」

戒斗「ふん」

サガラ「それじゃ、俺はもう行くぜ。じゃあな」フッ

戒斗「……行ったか」

戒斗「これで、俺の寄り道も終わりだな」

戒斗「葛葉……お前の答え、見せてもらうぞ」



終わり

読んでくれた方、ありがとうございます。

全体的にスケールが小さめなのは断章だからという事で。

鎧武最終回にて、ご神木が生えた場所が最終決戦の場と違う事から、
「戒斗さんご神木(の精霊)になる時にあそこまで移動したのか?」と思い至り、
そこまで移動した経緯を妄想した結果、こうなりました。
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。

それと宣伝ですが良ければ前作・前々作の
戒斗「アラガミアームズだと?」
戒斗「スペースチャンネル5だと?」
も合わせてどうぞ。続けて読むと時系列がおかしいですが、時空の歪みです。

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