憧「鏡の国のアコス」(90)

全国大会終了後 阿知賀女子麻雀部部室

憧「あっという間に過ぎた全国大会…。私たちは決勝戦で和のいる清澄に敗れた」

憧「悔しかったけど、全力は出しきった…。和とはその後、また絶対戦おうって誓い合って別れた」

憧「今日からまた、新しい気持ちで部活が始まる…。来年のリベンジへ向けて!」

憧「気合十分!やってやるわよ!」

憧「…そう思って部室に来たら、今日は珍しく一番乗り」

憧「誰もいない部室ってのも久しぶりね…」

憧「……あれ?」

憧「なにこの鏡…? 随分でっかい姿見だけど…」

憧「こんなの部室にあったっけ…? 誰かが持ってきたのかな…?」スッ


バチッ

憧「ひっ!?」

憧「痛ったー…。何よあれ…静電気……?」

憧「変なもの置いとかないでよ……。って、あれ…?」

憧「…………」キョロキョロ

憧「なんだろ、何か違和感が…。この部室こんな感じだっけ…?」

バタン

玄「あら、先客ですわね」

憧「!」

玄「あら、貴女は……?」

憧「えっ…? 玄……?」

玄「……清澄の片岡さん? わざわざ阿知賀まで、どうなさったの?」

憧「いや、何言ってんの! 誰と間違えてんのよ!」

玄「違う……? 失礼、どちら様でしたでしょうか?」

憧「憧よ!新子憧!! なにボケちゃってるの!」

玄「新子さん…? これはこれは、随分印象が変わりましたわね」

憧「あたらし…さん…?」

玄「髪を伸ばして、とても女性っぽくなった感じ…。イメチェンかしら?」

憧「いや…あんたこそどうしちゃったのよ…」

玄「?」

憧「なんかやけにキリッとしちゃって…目つきもキツイ感じ…」

憧「それに…なによそのザマスメガネは…」

玄「このメガネが何か?いつもと一緒ですわよ?」クイッ

憧「です…わよ…?」

憧「ちょっと…、本当に何の冗談なの?やめてよ玄!」

玄「…………ハァーッ」

憧「?」

玄「いいですか新子さん」

憧「??」

玄「子供のころからの付き合いですから、あまりとやかく言いたくはありませんが…」

憧「はい?」

玄「年上に対しては敬語をお使いなさい。私相手ならともかく、外に出てそれでは貴女が恥ずかしいですよ」

玄「イメージチェンジはかまいませんが、節度は守っていただかないと。やれやれですね」

憧(えっ、何、説教されてる? 呆れた溜息つかれたの!?)

憧(何なのよもう… 全然話が噛み合わないわ…)

カッカッカッカッ

憧「あ、足音…」

玄「ああ、姉さんですわね」

憧(宥姉…!よかった、話のわかる人が!)

バタン

宥「かぁーっ!!今日も暑っちーなー!!」

憧「」

宥「服なんか着てらんねーよ!」

ヌギヌギ

憧「ちょっ、何してんのよ宥姉!そんな薄着絶対ダメでしょアンタ!!」

宥「はぁ?いつもの事だろーよー」

憧「いやいや…おかしいって宥姉まで…」

宥「ていうかお前、憧?どうしたんだよそんなオサレしちゃってさー!髪伸ばした?」

憧「」

宥「ヒャッホー!」

ヌギヌギ

憧「ちょっと!どこまで脱いでんの宥姉!全裸にならないでよ!!」

宥「いいじゃんよー、外では自重してんだから部室でくらいやらせろよー」

玄「まったく毎度毎度…。いい加減にしてください姉さん」

宥「相変わらず固ってーなー。ほーら、昔は好きだったろー?生おもちだぞー玄ちゃーん」

玄「記憶にありませんね」

宥「うりうりっ」モニュムニュ

玄「そのキモイ脂肪の塊を押し付けないでください、暑苦しい」

憧「なん……だと……」

憧(あの玄が… おもちのことをキモイ脂肪とか…)

憧(ドッキリかとも思ったけど、そんなんじゃない…!絶っっ対おかしい…!!)

憧(これは、もっと深刻な何かだ…!)

憧(…………)

憧(落ち着け…、落ち着け憧。かしこい憧ちゃんはうろたえない…!)

憧(…………)

憧(いつからって言ったら、決まってる…!あの鏡を触った時からだ…!)

憧(私の知ってる玄や宥姉と正反対…。そう、まるで鏡に映したみたいに…)

憧(最初に感じた違和感は…、部室のレイアウトも左右反転してるんだわ、よく見たら…)

憧(なにもかも正反対の鏡の世界… どんなオカルトよそれ…)

憧(!…そうよ、そしたらシズは!?)

バタン

玄「あら、来ましたわね高鴨さん」

憧「!!」クルッ

穏乃「あ…、お、おはようございますみなさん…」モジモジ

憧(……誰この清楚美少女)鼻血ブバッ

憧(あのシズがジャージじゃない、ちゃんと阿知賀の制服着て…)

憧(しかもスカートが膝下まで長い…)

憧(うわ…かわいい… ヤバイこれ…)鼻血ボタボタ

穏乃「た、大変!鼻血が出てます!」

憧「あ、ああ、大丈夫よシズ、気にしないで」ボタボタ

穏乃「しず……?」

穏乃「私をそう呼ぶのは…あなたは…」

穏乃「憧ちゃん…?ですか…?」

憧(うわぁー…私をちゃん付けとか…)

穏乃「どうしたの…? 凄く雰囲気変わっちゃって…」

憧「いや…そのね…」

憧(近い!顔が近いわよ!!)ボタボタ

穏乃「?」

憧(とりあえず…鼻血を止めないと…)

憧「…あの、大丈夫だから。ちょっと離れてシズ」

穏乃「??」

憧(アンタが近いと止まる鼻血も止まらないのよ!)

憧「…………」ガサゴソ

憧「……ふう」(両鼻ティッシュ詰め)

憧(いけないわ、この世界は心臓に悪い…。早く戻らないと……)

憧(たぶんアレよね、もう一回この鏡に触ればすぐ元に…)スッ

コツン

憧「……あれ?」

コツン コツン

憧(ビリッとこない…周りも変わってないし…)

穏乃「?」

憧(やだ、うそ…)

玄「?」

憧(戻れない……?)

カツン! カツン!

憧(ヤバイ!ヤバイこれ!)

カツン!カツン!カツン!カツン!

憧(どうしよう!どうしよう!)アタフタ

穏乃「何してるの…? 鏡を一生懸命つっついて…?」

玄「新子さん?貴女やっぱり今日はおかしいですわよ…?」

宥「イメチェンしすぎてワケわかんなくなったかー?」

憧「いや…、えっと、違うのよ…」

ドダダダダッ

憧「な、何!?」

玄「…ああ、部長ですわ」

憧(灼さん…! お願い、あなたくらいマトモでいて……!)

バタンッ

あらた「うごくなー!ノンストップ!!」

憧「」

あらた「とあー!!」ビシュビシュビシュビシュ

憧「うわっ、冷たっ!なによこれ、水鉄砲!?」

穏乃「うふふっ、あらたさん今日も元気だね」

玄「ごきげんよう、今日もお変わりありませんね部長」

あらた「おー、しずー!くろー!」

宥「おう、冷てーな!いいぞもっと来い!」

あらた「あははー!ゆうはきょうもすっぽんぽんだー!」

憧(……今日「も」かよ……)

憧(あいったぁー… そりゃ、寡黙じゃないのは正反対だけどさ…)

憧(これ完全にただの5歳児じゃないの…。背もちっちゃくなってるし…)

憧(…よく考えたら、私の知ってるあの人はマトモなんだから、こっちがマトモなわけないか…)

あらた「おー?あこはふいんきかわったかー?」

憧「ふんいき、ね」

あらた「わけわかんねー!あはははは!!」

憧「……わけわかんねーのはこっちよ……」

玄「ところで部長、先生はご一緒?」

あらた「おー!はるえもうすぐくるぞー!」

憧(……こんなんでもこの子が部長なんだ……)

ガチャッ

憧(! ハルエ!もう助けてよ!)


………どよーん………


憧(えっ…何…?)ゾクッ


…… il||li orz il||li ……


憧(何?……このどんより重い空気は……)

晴絵「うぅ……みんなぁ……」グスッ

憧(なんで泣きながら入ってくるのよ…)

晴絵「みんな…ごめんなさい…」シクシク

憧「?」

晴絵「インターハイ…優勝できなくてごめんなさい…」グスグス

憧(…いや、何言ってるのよ)

晴絵「みんなが勝てなかった原因は…たったひとつ…」

憧「?」

晴絵「このチームに…"阿知賀の黒歴史"(わたし)がいたからだよね…」

憧(うっわぁ… わっずらわしい…)

あらた「なー、はるえー」

晴絵「?」

あらた「なんかなー、あこがすげーふいんきかわったー」

晴絵「えっ?…………、!!」

憧「……えっと、どうも」

晴絵「あ…新子さん…?」

憧「……そういうあなたはハルエ、よね?」

晴絵「!!」

晴絵「あ…ああ……」

憧「?」

晴絵「新子さん…そんな…」

憧(えっ、いきなりしくじった?)

晴絵「そんな急に女の子らしくなっちゃって… 私を呼び捨てに…」

憧「いや、その」

晴絵「私が不甲斐ないから…ダメダメだから…」

憧「いやいやいやいや」

晴絵「私に愛想を尽かして……不良になっちゃったの……?」

憧「だー!そんなんじゃないってば!」

晴絵「新子さんが……私のせいで……」

晴絵「夏休みデビュー…監督責任…無能指導者…」

晴絵「部内暴力非行DV内部告発晒し特定炎上転落人生」

憧「もう!違うって言ってるでしょうが!」

晴絵「ヒィッ」

晴絵「どな…怒鳴られた……教え子に……」

憧(げっ)

晴絵「うわぁぁぁん!!やっぱり私なんて!私なんて!!」

憧「ちょっ、落ち着いてよハルエ!」

晴絵「私なんて小鍛治さんにボコボコにされたまんま立ち直れなくて!」

晴絵「実業団でも監督やってもダメダメのダメダメダメ太郎なんだぁあぁぁぁ!!」

ガシッ

憧「あっ、ちょっとそれ!鏡!!」

晴絵「うわぁぁぁぁん!!」バッ

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄」
――――――――――――――‐┬┘

                          |
       ____.____      |
     |        |        |     |
     |        | ∧_∧ |     |
     |        |( ´;ω;`)つ ミ |
     |        |/ ⊃  ノ |     |
        ̄ ̄ ̄ ̄' ̄ ̄ ̄ ̄      |    ミ□








                 ミ□














                 ガッシャーン!!














憧「なにしてくれてんのよーーー!!!」







全員正座させて憧ちゃん説明中

憧「……だから!私はあなたたちの知ってる憧じゃないの!」

穏乃「鏡の向こうの正反対の世界…?」

宥「クールな話だとは思うけどなー」

玄「にわかに信じ難いですわね…」

憧「私だって信じられないわよ…。でも、それしか考えられないの!」

あらた「なー、あししびれたー」

晴絵「あっ、あらた!そんな新子さんに失礼なこと…」ビクビク

憧「……ああ、あなたは足くずしていいわよ」

晴絵「…………」ホッ

憧「ハルエ、あんたはダメ」

晴絵「ヒッ」

穏乃「じゃあ、鏡を触れば元に戻るの…?」

憧「うーん、そうだと思ったんだけど…さっきはダメで…」

憧「何かが足りないなら探さないといけないんだけど…」

憧「手がかりもないのに、まさかハルエが鏡を壊しちゃうとは…」

晴絵「ごめんなさい…ごめんなさい…」シクシク

憧「どうしたらいいのよ…」

宥「私らに言われてもなー」

憧「誰か…この手のオカルトに詳しい人いないかしら…」ブツブツ

玄「オカルトでしたら、心当たりはありますが」

憧「!? だれ!?」

玄「ご存知でしょう、清澄の原村さんですよ」

憧「なん……だと……」

同じ頃 清澄高校麻雀部室

優希「なんなんだじょ…これは…」

咲「そうだね優希ちゃん!プロテインだね!!」

和「オカルトオカルトオカルトオカルト」ブツブツ

優希「咲ちゃんは一心不乱に腕立てしてて…文学少女の欠片もない…」

咲「筋トレって楽しいよね!一緒に鍛えようよ!」

優希「文学系と真逆の体育会系っていうか……筋肉系?」

咲「本格美少女腹筋物語、はじまるよ!」

優希「のどちゃんは……」

和「場の流れ… 属性と相性… ジンクスと精神力で運気を支配…」ブツブツ

優希「これ、話しかけていいもんかだじぇ…」

優希「あの…、咲ちゃん?のどちゃん?」

和「あらゆーき、イメチェンですか? 凄くかわいらしくなりましたね」

優希「じょ?」

和「昔みたいに髪短くしてこどもっぽい感じになって…。うふふっ、憧みたいですよ」

優希「あこ?」

和「インターハイで会いましたよね? 私の奈良にいた頃の友達、阿知賀女子の新子憧です」

優希「えっ」

優希(何を言ってんだじょのどちゃんは…)

優希(チェンジしちゃったのはそっちの方だじぇ…)

優希(二人とも、全国大会終わっておかしくなっちゃったのか…?)

優希「あの、のどちゃ…」

久「ゆーうきちゃんっ」ポフッ

優希「!?」

優希「う、後ろから急に抱きついて…。その声は、部長だじょ!?」

久「もうぶちょーじゃなーいよー」ウフフ

優希「は、離すじょ!」

久「いめちぇんしたんだねー。かーわいいー」なでなで

優希「ぶちょ…やめ…離し…」

久「えへへへー」ぎゅー

優希「ふにゃっ、そんな、ぎゅーっとされたら…」

久「にははー」ぎゅむー

優希「はうぅ…」

優希「い、いかんじょ… 脱出…しなきゃ…」

久「にへへー」なでなで

優希「くっ…むむっ…」ジタバタ

久「うふふー」すりすり

優希「ふぬっ…ぐっ…くぎゅっ…」ジタバタジタバタ

久「あははー」モフモフ

優希「ふぬぬぬっ…、ぬあっ!」ガバッ

久「あれー?だっこおしまいー?」

優希「…危ないとこだったじょ…」

まこ「やられとったのう」

優希「染谷先輩…」

まこ「隙を見せるからじゃ、らしくない格好しよってからに」

優希「あんなの…あんなのおかしいじょ……」

まこ「あんなのて、いつものポンコツ久じゃろが…。それに」

優希「じょ?」

まこ「あれでも、たまーにキリッとするんじゃよ?」

優希「?」

まこ「アンタも見たじゃろ、インハイで急に変な脳汁出てしもうてキレッキレにかっこよくなった部長」

優希「……何を言ってんだじょ……」

優希(一体何の冗談だじょこれは…?ドッキリなのか…?)

優希(私の知ってるみんなとまるで正反対だじぇ……)

優希「あ、そういえばもう一人…京太郎は…」

和「ゆ・う・き?」ギロッ

優希「ヒッ、な、なんだじょ怖い顔して!?」

和「あのセクハラ大王のことは…もう忘れようって言ったはずですよ…」

優希「!?」

優希「京太郎…何やらかしたんだじょ…?」

和「思い出したくもないですが…。覗き、衣類泥棒、ボディタッチ、その他諸々。知っての通りです」

優希「な…私ののどちゃんになんてことするじぇ!」

和「誰が私のですか」

優希「するなら私に…、じゃなくて、ぶっ飛ばしてやるじぇ! 今日はまだ来てないのか?」

和「何を言ってるんです、今はとっくに塀の中じゃないですか」

優希「えっ」

和「県予選会場に合同合宿…公の場でやらかされる可能性もありましたから」

和「最悪私達の大会出場辞退もありえたんですし…、その前に済んでよかった話です」

和「というか、真っ先に通報して解決したのはあなたでしょう、ゆーき」

優希「わ、私がそんなこと?」

和「彼と一番いがみ合ってたのはゆーきじゃないですか」

優希「えっ」

和「お互いにあいつだけは許さないって。毎日大喧嘩してましたよね」

優希「お互いに?」

優希(……あれ? それの正反対って……?)

和「…さ、メンツは揃いましたし、打ちましょうか」

優希「え、今からか?」

和「今日からまた部活です。全国優勝したからって、浮かれてる暇はありませんよ」

まこ「来年に向けて気を引き締め直さんとのう。これからは追われる側じゃ」

久「がんばってねー。おーえんしてるよー」

咲「そうだね!日々のトレーニングが(筋肉には)大事だもんね!」

優希(うーん、そんな場合じゃないんだけど…)

優希(なんか全然わっかんないじぇ! 現実逃避して落ち着くじょ!)

まこ「ほれ、サイコロ回さんかい」

優希「あ、はい…。ぽちっとな」ポチッ

和「ゆーき!!」ガタッ

優希「!?」ビクッ

和「いつもあれだけ言ってるのに!まったくあなたは!!」

優希「じょ!?」

和「今日は左手でサイコロを回す日でしょう!?」

優希「な、なんだじょそれ!?」

和「日付が素数の日は右手、それ以外の日は絶対左手です!運気が逃げますよ!」

優希(えぇー…)

東一局 親:優希

優希(変な感じだけど…、勝負は勝負でいくじぇ!)

タンッ

優希「ツモ!4000オールだじぇ!」

咲「!」

優希「よっし!今日も起家でタコスがうまい!連荘だじぇ!!」

久「わぁーすごーい」

まこ「…おお…こいつは…」

和「…はい、驚きですね」

優希「じょ?」

咲「うん、すごいね優希ちゃん!起家で和了るなんて!」

優希「べ、別にいつもやってるじょ!?」

和「南場しかダメだったゆーきが…東場の、しかも起家であっさり…」

優希「…いやいや、私は東場で和了ってこそだじぇ!」

久「全国大会で成長したんだよねー。がんばりやさんだねー」

まこ「たまに東場で和了りゃあ練習の成果じゃっとは言うとったが…起家で和了るんは初めて見たのう…」

和「禁止と言っていた右手サイコロが流れを変えたのでしょうか…これは新たな研究材料ですね…」ブツブツ

優希「いやいやいやいや」

優希(私は南場しか、って…。打ち方まで反対なのか……?)

……

久「ツモ!」コトッ

優希(部長…弾いたり叩きつけたりしないで、普通に牌置いたじぇ…)

久「メンタンピンにイーペーついたよー」

優希(捨て牌も待ちもセオリーどおり…普通の多面張…)

……

優希(のどちゃんは……)

和「ロン。出ましたね、地獄単騎です」ドヤァ

優希「なにィ」

……

優希(んで、咲ちゃんは……)

咲「さぁこい…さぁこい…」ブツブツ

優希(咲ちゃんの感じが……)

咲「いったれ…見したれ…」ブツブツ

和(……来ますか)

咲(……さあこいっ!!)

タンッ

咲「はぁっ!!」

優希「!」

カァン

咲「第一の槓(ダブルバイセップス)!」ムキッ

優希「じょ!?ボディビル!?」

咲「さぁこい!もいっこぉ!」

タンッ

咲「第二の槓(サイドチェスト)!」ムキムキッ

優希「いや…ちょっ…」

タンッ

咲「イエス!ワンモアセッ!!」

咲「第三の槓(アブドミナルアンドサイ)!!」ジャーン

パタパタッ

咲「ツモ! 筋肉開花,三角筋ですっ!」シャラン

和「ハイ、嶺上開花,三槓子ですね」

優希「これはひどい」

対局終了後

優希(終わったとたん…、咲ちゃんはまた腕立てと腹筋を始め)

咲「フッ! ハッ!」

優希(のどちゃんはでっかいオカルトの本を開いて一人でブツブツ)

和「ジュゲムジュゲムゴコーノスリキレ…チンチンチナパイポナシャリコシャリコ…」

優希(部長は…ベッドでかわいいぬいぐるみと一緒にゴロゴロ…)

久「らんらんるー」

優希「なんって、まとまりのない部だじょ…」

まこ「今更何を言うちょるんじゃ」

優希「?」

まこ「まとめとったんはアンタじゃろが」

優希「えっ」

まこ「フゥーッ…、これはこれはじゃな」

優希「?」

まこ「…どうやら、本気で別人のようじゃのう…」

優希「じょ!?」

まこ「わしらの知っちょる優希とアンタは…なんもかも違いすぎるわ」

優希「染谷先輩、私がわかるのか!?」

まこ「あの打ち筋を見ちょったら…、単なるイメチェンじゃなさげなことくらいわかるわい」

まこ「南場しか調子が出ん、なんてーもんが数日で真逆になるなんぞありえん…外見じゃって変わりすぎじゃ」

まこ「なんぞ妙なことでもあったと思う方が自然じゃろ」

優希「先輩…!」

まこ「話してみんしゃい、何があったんじゃ」

優希「今朝いちばんで部室に来て…とりあえずタコス買いに行って…」

まこ「うん」

優希「戻ってきたら二人がこうなってたんだじぇ…」

まこ「こうなってたぁ言われてもな、わしにはいつもの二人にしか見えんが」

優希「私の知ってる二人と全然違うんだじょ!……部長や京太郎も……」

まこ「わしから見りゃ、違うんはアンタだけじゃが…。具体的にどう違うんじゃ」

優希「私の知ってる咲ちゃんは文学少女だし、のどちゃんはオカルト大っ嫌いだし…。まるで正反対だじょ」

まこ「正反対のう…。まるで鏡の世界じゃな」

優希「あ!そう、鏡!」

まこ「?」

優希「そこのそれ! 今朝その鏡を触ったんだじぇ!」

まこ「鏡のう…これか」

優希「その鏡触ったらビリッときて…。そういえば、なんか変な感じになったのそれからだじぇ…」

まこ「いつからあったかのう、こがーなもん…」

優希「わかんないじょ…来たらあったんだじょ…」

まこ「ほいじゃあまあ、間違いなくこれが原因じゃろうのう…。よいしょっと」ガタッ

優希「だ、大丈夫かじょ…?」

まこ「うーん、見たとこ何の変哲もなさげじゃが…」チョイチョイ

優希「あれ?染谷先輩が触ってもなんともないじぇ…?」

まこ「ふむ、なんぞやり方でもあるんかのう?」

優希「わかんないじょ…」

まこ「まあ、ゆっくり調べたらええじゃろ。原因の物は確保しとるんじゃけ」

優希「うん、なくなってなくてよかったじぇ!」

まこ「ほうじゃのう、この鏡がなくなってたら、アンタはずっとこのままじゃったわけじゃ」

優希「うん!染谷先輩が話のわかる人でよかったじぇ!」

まこ「なんのなんの、かわいい後輩のためじゃ」

優希「じゃ、その鏡こっちにくれだじょ!」

まこ「うんうん」

優希「うん!」

まこ「だが断る」

優希「じょ?」

まこ「…クックック…」

優希「…染谷先輩…?」

まこ「だ~れがこんなチャンスを逃すかい…」

優希「!?」

まこ「元の世界なんぞ帰らすか!ずっとそのままでおれやこのポンコツが!!」

優希「な、なんてこと言うじょ!?」

まこ「もう久は引退じゃ!わしが新部長権限でこれから清澄を仕切る!!」

まこ「うるさいアンタと久の手前おとなしくしちょったが、もう終いじゃ!!」

まこ「アンタが優等生でのうなったんなら、これで怖いもんは無いわ!!」

優希「何言ってんだじょ!?」

まこ(このオモシロ鏡を高う売りゃあ…今月の店の赤字が返せる…!)

まこ(おまけにこいつはずっとこのまま!わしの時代じゃ!)ニヤリ

まこ「あっ!窓の向こうに空飛ぶタコスが!!」

優希「なにィ!?」クルッ

まこ「ウソじゃ!バーカめ!!」ダダッ

優希「あっ、どこ行くじょ!?その鏡ー!!」

ダダダダッ

優希「待てー!待つんだじょー!!」タッタッタッ

まこ「待てと言われて待つアホがおるかい!とりゃっ!」ガッ

ドンガラガッシャン

優希「うわっ!?危なっ!!」

生徒「キャー!!ゴミ箱ひっくり返したー!!」

生徒「何するのよー!!」

まこ「ハッハァ!さらばじゃ!」」ダダダダッ

優希「な…逃げられた…」

優希「……なんだじょあのゲス野郎は……」

優希「…はっ!?捕まえないと!!」

優希「ちょっと!染谷先輩が逃げたじょ!咲ちゃん、のどちゃん!!」

咲「ごめん今腹筋で忙しいの!」

和「私もこれから麻雀神様へのお祈りが…」

久「るるらららー」

優希(…バラッバラだじょ…)

優希(こんなのをまとめてたこっちの私って…)

優希「お願いだじょ、二人とも!! 私の未来がかかってるんだじぇ!」

和「やれやれですね、ではいきましょうか咲さん」スッ

咲「そうだね和ちゃん!プロテインだよね!!」

優希「なんでそんな余裕なんだじょ!?」

和「大丈夫ですよゆーき、あの人は所詮考えの足りない小悪党です」

優希「えっ」

和「あんな重いものを抱えたまま、そう遠くへは行けないはずです…。まだ時間的にも」

優希「でも見失っちゃったじぇ!」

和「大丈夫ですよ、これがあればすぐ見つかります」スッ

優希「それは!」

和「ええ、ダウジングです」

優希「そんなオカルトありえないじょ!」

…………

……

和「はい、わかりました」

優希「どこ!?」

和「この方向はRoof-top…、染谷先輩のご自宅に向かってますね」

Roof-top

まこ「もしもし、藤田プロかいの? ええ儲け話があるんじゃが…」

まこ「はい、ちょいと高う売れそうなオモシロアイテムがありまして…」

まこ「もちろん、効果は保障つきじゃで…。はい、ウチの優希を見に来りゃあわかります」

まこ「……はい、いつものアレ用意して待ってますんで」

まこ「アンタぁ本当に好きじゃのう…。はい、豚肉の上に白飯のフライを乗せた丼、大盛りで」

バタン

優希「見つけたじょ!染谷先輩!」

まこ「!」

優希「返してくれだじょ!その鏡!」

まこ「しつこいやつらじゃのう、やなこった!!」

ドダダダダッ

優希「あっ!また逃げたじょ!!」

和「咲さん!」

咲「うん!任せて!」

スウッ

咲「カン(物理)!」シュッ

ドボッ

まこ「ごべらっしゅ!!」

ドサッ

優希「でっかい麻雀牌をぶち当てた! ティッシュ箱サイズの固いの4つ!」

咲「特注のダンベルだよ!筋トレってすばらしいよね!」

まこ「…………」(気絶)

和「さ、今のうちです」

優希「そんなんでいいのかじょ…?」

和「大体こんな感じですよ、いつも」

優希「……よくわかんないけど、取り返せてよかったじぇ……」

プルルル プルルル

和「あ、電話ですね」ピッ

和「もしもし。……お久しぶりです、玄さん」

和「鏡?……ええ、わかります……やっぱり……。」

和「はい、大体見当もつきます……。はい、いますよ…」チラッ

優希「じょ?」

和「…はい、憧みたいな姿の優希です……。はい…」

和「……分かりました。では明日」

ピッ

和「阿知賀女子の皆さんが、明日こちらに来ると」

優希「?」

和「お昼過ぎには着くでしょう…。心配ないですよ、それで解決です」

優希「??」

ピッ

玄「話がつきましたわ。明日清澄へ行きましょう」

憧「えっ?」

玄「原村さんの所にもうひとつ鏡があるそうです。他に必要なものも見当がつくと」

憧「そうなの!?それなら今から!」

玄「今からでは夜になってしまいますよ、あせらないで明日にしましょう」

宥「一晩くらいゆっくりしてけよー」

憧「そんな場合じゃ…」

玄「急いては事を仕損じると言います。…それに、もう少し貴女の話も伺ってみたいですわ」

宥「そうだな、せっかくだから麻雀打たねーか?」

憧「でも……」

穏乃「私も…憧ちゃんと打ってみたいな…」

あらた「まーじゃんうったらなー、たのしいんだぞー?」

憧「……わかったわよ……」

……

「「「「よろしくお願いします」」」」


東一局 ドラ:七索

憧(うわー…。玄と打ってるのにドラが来てるわ…)

憧(七索ふたつに赤五萬か…。まあいいわ、せっかくだし高め狙っちゃおっかな!)

チャッ

ツモ(七索)

憧(…よし!ドラ暗刻!)

チャッ

ツモ(赤五筒)

憧(…あれ)

チャッ

ツモ(赤五索)

憧(おいおい)

チャッ

ツモ(七索)

憧(ちょっ……)

憧(いや…来すぎでしょ…)

玄「カン」

憧(! …玄からカンするなんて…)

玄「…………」パタッ(カンドラめくり)

カンドラ:二萬

憧(うっ…一枚持ってる…やな感じ…)

チャッ

ツモ(二萬)

憧(……!!)ゾクッ

憧(ゾッとした…なによこれ…)

憧(……まさか……これが……)

憧(玄にドラが来てないだけじゃない……これは……)

憧(すべてのドラは…玄以外の一人に集まる…?)

憧(…………)

憧(そういえば…、局が始まるとき、ちょっと玄に睨まれた気がした…)

憧(白糸台のあの人が狙いを定めるみたいに…)

憧(そういうことなの…?)

数巡後

憧(うう、手ができない…ドラ切ってかないと……)

憧(…………)

憧(…………でも)

憧(いいわよ、別に大丈夫よ)

憧(玄じゃあるまいし…。いらないドラなら、切ったらいいのよ!)

憧(仮にそれでドラが来なくなったとしたって…、"いつもの"玄と打つときと一緒だわ)

憧(私が何かしてるんじゃない、勝手にドラが来てるだけだもん!別に後ろめたい事なんかないわ!)

憧(……ドラ切り!)タンッ

玄「ロン」

憧「!!……なっ……」

玄「タンヤオドラ1です」

憧(偶然…? いや、そんなわけ…)

玄「?」

憧「まさか、狙ってた…?」

玄「私のいつもの打ち方ですが…。やはりこれも、ご存じなかったですか?」

憧「……もう少し違うのなら存じてたわ……」

憧(まいったわね、打ち方も違ってるかもとは思ったけど…、読めないわ…)

憧(他の皆はどうなんだろ…?)

……

宥「ツモ!東に索子の混一色だ!」パタパタッ

憧(ああ…こっちはまあ予想通り…)

憧(あったかい牌がいっこも無いわ…)

……

憧(…で、シズは…)

穏乃「ダブリーです!」タンッ

憧「なにィ!?」

穏乃「ツモ!3000・6000です!」

憧(シズが…ダブリー…)

穏乃「?」

憧「……ごめん、アンタそんな打ち方だった…?」

穏乃「えっと、やっぱり思ってたのと違ったかな…?」

憧「…ええ…。私の知ってるシズはもっと終盤戦ていうか…山の奥の方とかが得意だったかしらね…」

穏乃「私ができるのは最初だけだよ…。あんまり山奥行くと、わたし迷子になっちゃうから」エヘヘ

憧(……これでよく白糸台の大星を抑えられたわね……)

対局終了後

憧(ふう…やっと少し落ち着いてきた)

憧(でも、最初はどんな地獄絵図よと思ったけど…。冷静になって見てみれば…)

憧(……正反対じゃない部分もちゃんとある)

宥「暑っちーよぉー、くろちゃぁー…。汗だくで死んじゃうよー」グスグス

玄「はいはい、お水と塩飴ですよ。いま汗も拭きますから」フキフキ

憧(…なんだかんだで、仲良し姉妹だし)

あらた「げんきだせーはるえー」なでなで

晴絵「……えへへ、ありがとあらた」

憧(…この二人もまあ、お互いべったりなとこは同じよね)

憧(甘えてる方向が逆だってのは、ものすっごく気にはなるけど…)

憧(こっちはこっちで…これでいいのかな)

憧(予想外の事態に追い詰められて、ピリピリしすぎてたかもしれないわね)

憧(全員正座とかさせちゃって…、きつく怒鳴りすぎちゃったかな…)

憧(……ちょっと反省。でも安心したわ)


憧(あ、でも…それじゃあシズは…)

憧(こっちのシズは…。私のこと、どう思ってるのかな…)

憧(嫌いとか言われたらどうしよう…いやいや正反対だから…でも……)

憧(……、あれ?そういえばシズいない?どこ行ったの?)キョロキョロ

部室前の廊下

穏乃(憧ちゃんの…ジャージ…)モフモフスーハー

憧「しーずー?どこ行ったのー?」

穏乃「ひゃぁっ!?」ビビクン

憧「あ、いた…。何してんのよそんなとこで」

穏乃「なっ、なんでもないよ!」コソッ

憧「何を後ろに隠してるのよ……ジャージ?」

穏乃「ひうっ!」ドキッ

憧「それ、あんたのいつも着てる…?」

穏乃「わ、私は着てないよ!憧ちゃんのジャージだよ!!」

憧「えっ」

穏乃「あっ」

憧(今、私のジャージって言ったわよね…)

憧(……しかも、それを思いっきりモフモフしてたように見えたけど……)

憧(えぇー…そこが逆なの……ってコラッ!逆って私は別にないわよ!あのとき1回だけよ!!)

穏乃「……憧ちゃん?」

憧「…………」

穏乃「…………」

憧「えっと、私のジャージを……持ってるんだ……」

穏乃「う、うん……」ドキドキ

憧「もしかして、全国大会のとき服交換したりしたっけ…?」

穏乃「あ、ち、違うんだよ!ちゃんと洗って返そうと思ってたんだけど…」

憧「……けど?」

穏乃「た、たまたま!たまたま洗うの忘れちゃって…返しそびれちゃってて…」

憧「…………」

穏乃「へ、変なことには使ってないよ!ほんとだよ!」

憧「そ、そうよね!私じゃあるまいし!ってコラッ!」

穏乃「?」

憧(わざわざ「変なことに使ってない」なんて言葉出ないわよね…なんにもないなら…)

穏乃(ごまかせたかな…?)

憧(なんかいろいろ心にくるものがあるわ…。やっぱ早く帰りたい…)

そして翌日

憧「着いた!清澄高校!」

あらた「おー!」

宥「龍門渕さんとこより近かったな?」

玄「ええ、少し手前で高速降りましたね」

穏乃「そうだ、龍門渕さんたち元気かな…? 大会終わったから、また改めてお礼に行かないとね」

あらた「あー、あのびんぼーにんたちなー」

晴絵「あ、あらた…。ダメだよそんなこと言っちゃ…」

ワイワイガヤガヤ

全員集合

あらた「おー、あこじゃねーあこだー」

優希「……人違いだじょ」

玄「失礼、貴女本当に新子さんじゃありませんの?」

優希「だから違うって言ってるじぇ!」

玄「…ちなみに、ここにいる中で貴女が決勝戦で打った相手はどなた?」

優希「私が打ったのはあんただじょ…そんなザマスな人じゃなかったけど…」

穏乃「不思議な感じです…」

宥「あるもんだなーこんなことってなー」

優希「じょ!?このおねーさんマフラーの下全裸だじぇ!?」

久「あー、いめちぇん前のゆーきちゃんだー」ギュッ

憧「ひっ!?清澄の部長!?」

久「やっぱりこっちもかーわいー」なでなで

憧「えっ、なっ…ちょ、やめて……」

久「えへへー」むにむに

憧「ちょ…のど…か… たすけて……」

和「…本当に憧なんですか…? 興味深いオカルトです…」ジロジロ

憧「いや…見てないで…」

久「うふふー」ぎゅむー

咲「筋トレって楽しいよね!一緒に鍛えようよ!」

一通り挨拶が終わり

憧「じゃあ落ち着いたところで…、本題だけど」

和「ええ、鏡はこちらに」

憧「うん、そうなんだけど…」チラッ

優希「むっ」ピクッ

憧「…………」

優希「…………」

憧優希(……こいつか……)

憧「あんたは…私の知ってるあんたよね…?」

優希「そっちこそだじぇ…」

憧「…………」

優希「…………」

憧「……まったく!アンタみたいなのと間違えられるなんて、すっごく心外なんだけど!」

優希「なにおう!?こっちこそ大迷惑だったじぇ!!」

和「似た者同士で喧嘩しないでください」

憧「ちょっと!誰が似た者よ!一緒にしないで!」

優希「そうだじぇ!」

和「いいから落ち着いてください、二人が気持ちを合わせなければ元に戻れませんよ」

憧「いやよ!なんでこんなのと!」

優希「お断りだじぇ!」

和「この鏡、二人で同時に触れば戻るはずですから」

優希「どうしてわかるじょ?」

和「おそらく昨日、ゆーきと同じタイミングで憧も鏡を触ったはずです」

憧「…うん、触ったけど…」

和「この現象は根源的に波長が近しい二人の同時に取った行動がシンクロで共鳴しダークマターの…」

優希「アッハイやりますから難しい説明はいいですじょ」

憧「そうね、さっさと終わらせましょ」

和「……では、二人で触ってください」

憧「…………」

優希「…………」

憧「……しかたないわね、和が言うからよ」

優希「……あたりまえだじぇ」

憧優希「せーのっ」


バチッ


優希「…じょ!? 誰もいなくなったじぇ!?」

憧「ここにいたみんなが…消えた…」

優希「……てことは……」

憧「元の世界に戻ったのかしら…?」

……

憧「もしもし宥姉?つかぬ事聞くけど、アンタ暑いのと寒いのとどっちが苦手だっけ?」

憧「……いやただの確認よ……そうよね、寒い方よね……」

憧「…うん、うん…。ゴメン、変な事聞いて……」

……

優希「もしもしのどちゃんか? のどちゃんってオカルト好き?」

優希「……違うじょ!からかったりしてないじょ!!」

……

優希「みんなに片っ端から電話かけてみた結果」

憧「ええ、元に戻ってるみたいね…」

優希「うん…」

憧「…………」

優希「…………」

憧優希「……はぁーぁっ」ドサッ

憧「……なんか文句言いたいとこだけど……もう怒る気力も無いわ……」

優希「……運が良かったな、ちょうどタコスぢからが切れたとこだじぇ……」

憧(体力もそうだけど…精神的に凄く疲れたわ…)

優希(京太郎のタコスが恋しいじぇ…安らぎがほしいじょ…)

憧優希(…………)

憧優希(……でも……)

憧「…………」チラッ

優希「…………」チラッ

憧(こいつくらいゆるい感じの方が…、あっちの皆には良かったのかな……)

優希(こいつくらいしっかりしてたら…、もっとテキパキ解決したのかもだじょ……)

憧優希(…………)

憧優希(ちょっと何かが違ってたら… 私もこんな感じになってたのかな…)

憧「…………」

優希「…………」

憧「……何よ、こっち見て……」

優希「……そっちこそ、何だじょ……」

憧「…………」

優希「…………」


…………


憧優希「フンッ!だ!!」


………

ガバッ

憧「……はっ!?」

憧「…………」

憧「夢…」

憧「夢……か……」

憧「…そうよね、ありえないわ鏡の世界なんて…」

憧「どんな夢よまったく…」

憧「ほんとにもう…冗談じゃないじぇ…」

憧「…………」

憧「じぇ!?」


カン

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