あかり「ゆるゆりこどもの日スペシャル、はっじまーるよー」 (34)

こんにちは、船見まりです。
今日はこどもの日ということで、結衣お姉ちゃんの家に遊びにきています。
まりを産んで以降、すっかり府抜けてしまった両親に飽き飽きしたまりは、まだ狂気が消えていない結衣お姉ちゃんの家に行きたいと両親にお願いしてきました。
家はクソつまらないので、退屈しない結衣お姉ちゃんの家のほうが好きだからです。
近々まりはあの家を捨てようと思ってます。

ピンポーン

ガチャ

結衣「やぁ、まりちゃん久しぶり」

二日前にラブホテルですれ違ったことを忘れているのでしょうか。
ドアを開けてくれたお姉ちゃんは久しぶりという言葉を使ってきました。
あのとき結衣お姉ちゃんは白目を剥いてたから、ひょっとしたら悪魔に取り憑かれていたのかもしれません。

まり「こんにちは」

一応まりがお手本を見せてやります。
お姉ちゃん、挨拶はこうするんだよ?

結衣「はははっ、久しぶりに会ったら久しぶりって挨拶するんだよ。久しぶりって言葉はわかるかな?」

それはこっちのセリフです。

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結衣お姉ちゃんの部屋は相変わらず整理が行き届いてます。
狂人のくせに妙に整った部屋なのも異常性を際立たせる。

結衣「まりちゃん、コカコーラとファンタエクスタシーがあるけど、どっちがいい?」

まり「水道水」

結衣「まりちゃんは渋いなぁ」

この家にある飲み物はできれば口にしたくありません。
なにが入ってるかわかったもんじゃない。

結衣「はい、水道水だよ」

まり「いい。水道から直接飲む」

まりはお姉ちゃんが汲んできた水道水を地面に叩きつけてやりました。
なにに使ったコップなのかもわからないので口をつけたくなかったのです。

結衣「ひどいw」

ジュースを飲んだ結衣お姉ちゃんがまたわけもなく笑っています。
ほら、やっぱり断って正解だった。

結衣「まりちゃんはなにかしたいこととかある?」

まり「まりはお姉ちゃんを見てるだけでいいよ」

結衣「嬉しいこと言ってくれるね」

検討外れのぬか喜びをしています。
見世物小屋の猿扱いをされただけなのになにを勘違いしてるんだか。

結衣「それじゃあ、ゲームでもやろうかな」

まり「まりは隣で見てる」

お姉ちゃんはなにやらゲームをやるみたいです。
あのソフトは確か、この前お姉ちゃんが面白いって言ってた犬に女の子を襲わせて種付けするゲームだ。


結衣「なぁ、見てみなよまりちゃん」

結衣「こうするとお腹から猫がいっぱい産まれてくるんだ」

結衣お姉ちゃんはテレビを指さしながら言います。
でも、お姉ちゃんが見ているのは砂嵐が映ったテレビです。
お姉ちゃんにはなにが見えているんだろう。

結衣「はははっ!ざまぁみろ!」

結衣「ふむ、このゲームも飽きてきたな……」

結衣「よし、ブッ壊そう」ガシャン!

お姉ちゃんがwiiを金槌で叩いて壊しました。
どうしてソフトじゃなくて本体を叩くんだろう。
それにさっきまで使ってたのはファミコンだったのに。

結衣「ふぁ~あ……」

まり「お姉ちゃん、眠いの?」

結衣「ちょっとね……そんなときはこれだ」プスッ

お姉ちゃんは、眠くなると変なお薬を注射しはじめます。
お姉ちゃんみたいな人を薬中というらしいです。

結衣「あー」ポケー

「まりも、こんな人間になれたらなぁ」なんて思うわけもなく、極力刺激しないように静かに見守ることにしています。
結衣お姉ちゃんは狂気が強過ぎるので、こちらにも害が及ぶ可能性があるからです。


ピンポーン

結衣「あれ?お客さんかな」ピッ

京子『結衣っ、結衣っ♪』ペロペロチュッパ

結衣「うわぁ!?インターホンのモニターを舐め回すなよ!」

京子『早く入れろよぉおおおおぉ!!!!』ガンッ!ガンッ!

モニター相手にボクシングを繰り広げるのは、同じく狂気を纏った存在である京子お姉ちゃん。
早く名前を狂子に改名したほうがいいんじゃないかとまりはよく思います。
名は体を表すとよくいいますが、京子お姉ちゃんは自分の名前を狂子と勘違いして育ったようです。
きっとそのせいでこんな人間に成長したんだと思います。

京子「もう、居るならもっと早く入れてくれればよかったのにー」

結衣「お前がノータイムでいきなり殴りはじめたんだろうが」

結衣「まりちゃんもきてるんだから、あんま変なことはするなよな」

人のふり見て我がふり直せ。結衣お姉ちゃんに教えてあげたい言葉の一つです。
さっきまでの自分の行動は正常だとでも考えているのでしょうか。

京子「まりちゃん、こんにちはできるかな?」

京子お姉ちゃんはいつも会うたびにこれを言ってきます。
誰がお前なんかにこんにちはしてやるか。

まり「わからない」

京子「ははっ、まりちゃんはバカだなぁ」

これだからこんにちはしたくないのです。
さすがまりが死神のノートを手に入れたら真っ先に名前を書くリストのトップを飾った人間は伊達じゃない。

結衣「にしてもあかりたち遅いな、そろそろ約束の時間になるのに」

京子「えっ、あかりとちなつちゃんもここに来るの?」

結衣「あぁ、まりちゃんの相手をしてもらおうと思ってね」

京子「なんで私は呼ばなかったんだよ!!」

結衣「お前ならわざわざ呼ばなくても来てくれるとわかってたからだよ!!」

京子「結衣……///」

結衣「京子///」

ピチャピチャ

ほらほら、幼女であるまりを前にしても意に介さず致しはじめました。
さすが頭のネジが全て抜け落ちてるだけのことはある。

京子「激しいよぉ……///」

結衣「ふふっ、もっとかわいい声で鳴いてくれよ」クチュクチュ

キチガイ同士の交尾はまるで人体錬成を見ているかのようです。
持っていかれそうで困る。

まり「お姉ちゃんたちなにしてるの?」

仕方がないので行為を止めるために純粋な子供のふりをしてやりました。
まりの中で自己防衛本能が声を大にして叫びはじめたから。

結衣「まりちゃん、こうすると京子お姉ちゃんが喜んでくれるんだよ」

結衣「大好きな人同士でやるスキンシップみたいなもんさ」

結衣お姉ちゃんは、そんな純粋なまりの心を薄汚れた自分色に染めようとしてきました。
キチガイに常識を求めるのが間違いだった。

結衣「まりちゃんもやってみ?こうやってお股を擦ってあげると喜ぶんだよ」

まり「うにー」スリスリ

まりは諦めました。
ミラクるんとあかりお姉ちゃん早く来ないかなぁ……。

────

京子「」ビクンビクン

結衣「ふー、なかなかよかったよ。京子」

結局ことが終わるまでグリとグラは来てくれませんでした。
ドブネズミに期待したまりがバカだった。

ピンポーン

結衣「おや、誰かきたのかな」

今更きたってもう遅い。
まりの心は既に悪党共に陵辱されたあとです。
あの二人は絶対にヒーローにしちゃいけません。

あかり『結衣ちゃーん』

結衣「なんだあかりか、なにしに来たんだ?」

あかり『もー、結衣ちゃんがまりちゃんと遊んでほしいって言うからきたんだよぉ』

結衣「そんなこと言った覚えはないぞ」

結衣「嘘つきは帰れ!!!」ピッ

結衣お姉ちゃんは多分もうダメです。
脳みそが半分くらい溶けてます。
それともまた悪魔に取り憑かれてるのかな。

あかり「おじゃましまーす」

結衣「やぁあかり、よくきてくれたね」

あかり「鍵が開いてたから勝手に入らせてもらったよ」

結衣「そりゃいい」

なにがいいんだか。
遠くない将来、結衣お姉ちゃんに恨みを持った人間が侵入してきてお姉ちゃんは殺されてしまいそうです。
そしてやっぱり頭がおかしい。

あかり「まりちゃん、こんにちは♪」

まり「」ペッ

こんにちははもう飽き飽きです。
この言葉を聞くだけで反吐が出る。

あかり「あれれ、まりちゃんご機嫌斜めかな?」

結衣「さぁ?なにか嫌なことでもあったんじゃないのか?」

正解です。
ついでに原因はお前だよ、お姉ちゃん。

あかり「あっ、京子ちゃんもきてたんだ。言ってくれればよかったのに」

京子「アヘ……」ピクピクッ

結衣「こいつさっきからこの調子なんだよなぁ」

あかり「どうして京子ちゃんは痙攣してるの?」

結衣「まりちゃんが無理やり気持ちよくしてやったからだよ。なっ?」

「なっ?」じゃない。
なぜまりが主犯のように扱われなくてはいけないのか。
法律とかいろいろあるだろうけど、今のまりは全てを投げ打ってでもこいつを殺したいです。

あかり「へー、まりちゃんは大人だねぇ。偉い偉い♪」ナデナデ

大人は普通強姦なんてしないし偉くもない。
あかりお姉ちゃんはなにか大きな勘違いをしているようです。

まり「えへへ♪」

まりはそんな違和感をスルーして喜んでるフリをしてやりました。
あかりお姉ちゃんはそのまま間違った道を進むといい。

京子「戻ってきたよ。輪廻の果てからね」

あかり「あっ、京子ちゃん目が覚めたんだ」

京子「いやー、まりちゃんのテクはすごかったねぇ。私いろいろ巡ってきちゃったよ」

京子「思い出しただけで噴き出そう」ピュッ

実際に噴いてるよ。
京子お姉ちゃんの前世はきっとクジラだったんだろうね。


京子「それにしてもちなつちゃん全然こないな」

あかり「どうしたんだろう。ずいぶん遅いねぇ」

結衣「電話してみるか」ピッ

チナツチャン、あーいーしーてるぅー♪チナツチャン、あーいーしーてるぅー♪

あかり「あれ?」

京子「どこからかちなつちゃんの携帯の着信音が聴こえる」

結衣お姉ちゃんの歌にヘタクソな編集がされています。
あいつはこんなのを着信音に設定してるのか。

結衣「ここか?」スー

マンコのー中身をー、みーせーてーよ♪


ちなつ「あっ」

吉川の姉貴はクローゼットの下着コーナーにいました。
こいつは案外本物の魔女っ子かもしれません。

結衣「ちなつちゃん、私の下着を握り締めてなにをしてたの?」

ちなつ「いえ、懐に入れて温めておこうと思いまして」

はいどうぞ、と差し出された下着は確かにヌルヌルしてて温かそうでした。
懐ってどこを指した言葉なんだろう、まりは子供だからよくわからないよぉ。

結衣「いいよ、その下着はあげる」

結衣「今日は子供の日だからね。プレゼントだよ」

ちなつ「ありがとうございます!」ヌュポッ

あかり「だったらあかりにもなにかちょうだい」

結衣「あかりにはまりちゃんが朝割ったコップの欠片をやるよ」ポイッ

あかり「わぁ~い♪」

京子「私には?」

結衣「お前は子供じゃないだろ」

京子「あかりたちにはあげてたじゃん!」

結衣「あかりたちは私より一つ下だから子供の日を適用したんだよ」

結衣「お前は私と同い年だろ」

京子「えー」

なぜ京子お姉ちゃんは不服そうなのでしょうか。
先程のプレゼントはどっちもゴミみたいな物だったのに、欲する理由がどこにある。

あかり「子供といえば、まりちゃんにはなにもあげないの?」

結衣「あっ、そうだ。まりちゃんにもなにかあげなきゃな」

まずいです。
本来ならば喜ぶべきところなのでしょうが、ここにいるのは全員善という概念を持たない人間のなり損ないです。
注目されるのは避けたい、なにされるかわかったもんじゃないから。

ちなつ「うーん……まりちゃんが喜びそうなもの……」

京子「むむむ……」

狂った脳みそを持った四人が必死で考えています。
バグった頭を絞ってもどうせロクなものは出てこないのに。

結衣「そうだ!まりちゃんには楽しい思い出をプレゼントしてあげよう!」

ほら、やっぱりまともに機能してない頭じゃこの程度の知恵しか出てきません。
最初から期待なんてしてなかったけど。

ちなつ「思い出とは?」

結衣「なにも考えてなかった」

結衣「とりあえず一発いっとく?」

結衣お姉ちゃんが注射器を構えながら言います。
そして「最高に楽しい思い出になるよ」とわけのわからないことを言い迫ってきました。
それだけはやめてください。

あかり「そうだ、人が死ぬところとか見たらまりちゃん喜ぶんじゃないかな?」

唐突にあかりお姉ちゃんがおかしなことを言い始めました。
まりはそんな中世の貴族みたいな人間じゃないよ。

ちなつ「それいいかも、昔まりちゃんみたいなお金持ちが人が殺し合ってるのを見て大爆笑してたし」

京子「私も見たなぁ、そのお金持ちって中二で黒髪の女の子だった気がするけど」

結衣「そんなことはどうだっていいんだよ」

結衣「まりちゃんはそれでいいかな?」

まり「うん、いいよ」

まりのこの体が薬漬けにされるよりずっとマシです。
誰が死のうとまりがどうこうなるでもないし。

あかり「わぁ~い♪」

あかり「じゃあ今すぐ誰か死んでよ。ここで、今すぐ」

京子「言い出しっぺのあかりが死ねばいいじゃん」

あかり「あかりも見て楽しみたいもん」

結衣「はぁ、まりちゃんの笑顔のために死んでくれる優しい人いないかなぁ……」

まりは人が死んだからって笑顔にはならないよ。
結衣お姉ちゃんみたいな異常者と一緒にしないで。

ちなつ「じゃあ私が死にますね!」

ちなつ「ちなつ、死っにま~す!」ピョンッ

あかり「やったぁ♪」キャッキャッ

京子「すげぇ!!」

結衣「ははっ、愉快愉快」

まり「ぷっw」

でもやっぱり笑っちゃいました。
どうやらまりも向こう側の人間だったようです。


結衣「な、なぁ」

結衣「わ、私もちなつちゃんみたいに飛び降りたらもっと楽しくなれるかな?」

京子「うん!きっと楽しくなるよ!」

あかり「飛び降りる時のちなつちゃんの顔、すごく幸せそうだったもんね」

結衣「それじゃあ私も逝くよ」ピョンッ

京子「あははははははwwwwwwwww」ゲラゲラ

あかり「面白ーい♪」

まり「ん……くふっ……w」

駄目だ……まだ笑うな……こらえるんだ……し、しかし……んふっw

京子「いやー、笑った笑った」

あかり「まりちゃんも喜んでくれてるみたいだし、よかったねぇ」

まり「うにー!」

自分を偽るのはやめよう。
ありのままのまりでいいじゃないか。
まりは少しだけ素直になってみることにしました。

まり「あかりお姉ちゃんと京子お姉ちゃんは死なないの?」

あかり「えっ」

京子「ほ、ほら……私たちは結衣やちなつちゃんより徳を積んでるからさ」

まり「死んでくれないの……?」ウルッ

こうなったらこの二人にも死んでもらいましょう。
幼子であるまりが泣き落としにかかればまともな神経をした人間なんてきっとイチコロです。
さぁ、こいつらはどうでる?

あかり「う、う~ん……」


あかり「わかった!あかり死ぬよ!」

京子「あかり!?」

あかり「えーいっ」ピョンッ

まり「うにー!!!」

京子「仕方ねぇ、あかりにばかりいい格好はさせられないぜ!」ピョンッ

アー

まり「う、うに、わ、わはははははははははははははは!!!!!!!」

まり「あっはっはっはっはっ!!!!!!」

まり「フハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

どうしましょう。
笑いが止まりません。



まり「ふー、楽しかった」

まり「まり、今日結衣お姉ちゃんの家に来てよかった!」

まり「お姉ちゃんたち、ありがとー」

お空『どういたしまして』

まり「」ペッ

死んだ癖にカスの声が聞こえてきます。
つい空に向けて唾を吐きつけてしまいました。



ありがとうとは言ってやりましたが、ハッキリ言ってみんな大嫌いです。
もっと言えば同じ世界に存在していたことすら不快に感じています。
同じ時間を過ごしてる間は苦痛でしかありませんでした。
この今日という時間は、まりの人生の汚点としてまりの記憶に刻まれることでしょう。


えっ、ではなぜわざわざこんなところに来たかって?


「狂気の沙汰ほど面白い」偉い人の言葉に感銘を受けたからです。
まりは、このクズ共を反面教師にしてまともな大人になろうと思います。
お姉ちゃん、まりの踏み台になってくれてありがとう。
まりは公務員になって安定した生活を目指すからね。


~こどもの日スペシャル まりちゃん編~ 完

花子だし。
名前のことをお母さんに訊いたら、マジでテキトーに決めたって言われたし。悲しかったし。


花子は今学校にいるし。
花子は小学生だから、この時間は毎日この学校のこの椅子に座ってる。
毎日めんどくさいけど、義務として国から課せられたものだから仕方ないし。

でも、だからってなんの抵抗もなくこの運命を受け入れるつもりもない。
いつかこの国に復讐してやる。


未来「花子様~!」タッタッ

隣の席に座ってた未来が走ってきた。
この短距離でどうやって走ったし。

花子「どうしたの?」

未来「次の国語の時間は自分の
名前の意味について発表しなきゃいけないんだって」

未来「花子様の名前にはどんな意味が」

花子「えいっ」プスッ

未来「ぎゃぁあああああ!!!??」

目をチョキで突いてやった。
鉄拳制裁だし。

未来「うぅ……花子様、どうしてこんな酷いことするの……?」

花子「未来は悪くないし、悪いのは全部この国なんだから」

花子「法律とかいう抵抗する隙を見せるのが悪いんだし」


そう、この国の法律という取り決めを犯すこと。
それが花子からのささやかな復讐。

未来「そっか、よくわからないけど花子様は戦ってるんだね」

花子「そうだし」ペッ

未来「やった!唾だ!」ペチョペチョ

たまに顔に唾を吐きつけたら喜ぶこういう人間がいる、こいつらは本当どうしようもないし。


こころ「二人ともなにやってるのー?」

未来「あっ、こころ」

ずっと花子の前の席に座っていたこころが尋ねてきた。
こっち向いてた癖になぜ状況を把握してない。

未来「次の国語の時間のことについて話してたんだよ」

未来「自分の名前の意味について発表があるから、みんなはどんな意味があるのかなーって」

こころ「なるほど」

未来「ちなみに花子様の名前の意味はチョキなんだってさ!」

こころ「は?」

スポンジ頭のアクロバティックな解釈には頭が痛くなる。
こころも大概頭おかしいけど、未来の頭のほうが終わってるし。

未来「こころの名前にはどんな意味があるの?」

こころ「それを知ってなんの意味があるの?」

未来「美味しい!」

こころ「えっ」

未来「だから教えて!」

こころ「あっ、うん」

相変わらず一方的な言葉の遠投しかできてない。
これで人間をやれてることが不思議だし。

未来「ほら、早くしないと私泣いちゃうよ?」

未来「さぁ、意味をどうぞ」

こころ「うん」

どうせ訊くだけ無駄だし。
意味なんて無いに決まってる。
花子の名前に意味がないのに、こんな雑魚の名前に意味なんてあるわけないし。

こころ「こころの名前には心豊かな人に成長しますように、って意味がこめられてるんだってー」

こころ「前お母さんが言ってたよ」


浅っ。
花子がコンクリートを歩いた時にできるへこみより浅いし。
一応あるにはあるけど、
まぁ、こころ程度の人間ならあってもこの程度か。
花子のほうが上だし。

未来「わぁ~、素敵な名前だねー!」

未来「ねっ、花子様」

花子「あ、うん」

底が浅い人間は浅い理由で感動できるみたいで羨ましいし。
いちいち同意を求めるな。

こころ「それで、花子様──未来の名前にはどんな意味が」

花子「えいっ」プスッ

こころ「いたい!?」

国家反逆しなきゃ。
今花子に質問しようとしたのに、なにを悟ったのか未来に対象を移したこととはなにも関係ないし。

未来「ねっ、チョキでしょ?」

こころ「うん……こころが訊きたいのは未来の名前の意味だったんだけどね……」

未来「えっ、私に?」

訊くだけ無駄だし。
こんな最低最悪ゴミクズ人間の名前に意味があるわけない。
どうせ国語辞典でダーツでもやって決めたに決まってるし。


未来「私の名前はね、素敵な未来が訪れますように、って意味なんだって!」

未来「昨日お母さんに聞いてきたの!」

そのまんまだし。
なんの捻りもないつまらない名前。
これなら意味無しの花子のほうがずっとマシだし。

こころ「へぇ、わかりやすくていいね。いいと思うよ」

こころ「ねっ、花子様」

花子「うんそうだ死」

こいつらにはクソなものをクソって言っちゃいけないルールがあるらしいし。
こんなものどう考えてもゴミ以外の感想が出てくるわけないのに。

「ふん!その程度で喜んでるようじゃまだまだね!」


未来「むっ、この声は」

みさき「みさきの名前のほうがもっとすごい意味があるわ!」

さっきから花子たちの周りをコソコソ嗅ぎ回ってたみさきちがここだと言わんばかりに絡んできた。
ずっとタイミングを窺いながら、いつ話に参加しようかと構えてたのなんてバレバレなのに。

未来「むぅ、そんなに言うならみさきちの名前の意味も教えてよ!」

こころ「こころは別に興味ない」

花子「花子も」

みさき「ふふん!いいわ、そこまで言うのなら教えてあげる」

当ててやるし。
どうせ親の浮気相手の名前とかそんな理由だし。

みさき「みさきの名前は、みさきが産まれた日に庭のお花が三つ咲いたからみさきって決まったのよ!」ムフー

花子「」ズプッ!

みさき「きぃゃああああああ!!!??!」

高崎の目を人差し指と中指で強めに突いてやった。
花子の堪忍袋もついに緒がブチ切れたし。

未来「どうだ参ったか!花子様の名前にはチョキって意味があるんだぞ!」

花子「違う」プスッ

未来「いたいよ!?」

花子の名前はそんななんの脈絡もない理由で決められたんじゃない。
殺されなかっただけありがたく思えし。

みさき「なにするのよ!!」


みさき「あ、あれ??」

こころ「どうしたの」

みさき「ちょ、ちょっと!?花子に目を突かれてから世界が割れて見えるんだけど!?」

強めにいったからみさきちのビー玉に亀裂が入ったらしいし。
今日の国への挑発行為はこれでノルマ達成だし。

未来「それで、チョキじゃないなら花子様の名前にはどんな意味が込められてるの?」

こころ「確かに、それはこころも気になる」

みさき「ねぇ、花子の顔が真っ二つに裂けて見えるんだけど」

花子「あぁ」

さっきまでの発言で気付いたし。
こいつらは名前に理由が付いてればどんな理由でも感動する生き物なんだ。
意味無しじゃなければなんでもいいみたいだし、花子もテキトーに理由付けてそれを言ってやろう。

花子「花子の名前は、お花みたいに可愛い子に育って欲しいって意味をこめて名付けられたって教えられたし」


未来「ふーん、あっさいね」

こころ「正直センスないと思うなー」

みさき「クソダサネームね」

花子「…………」

キーンコーンカーンコーン

未来「あっ、授業始まっちゃう」

未来「名前の由来、あれ発表しないほうがいいよ。聞けたもんじゃないから」

こころ「嘘でもいいからもっと別のマシな理由考えたらいいと思うよ」

みさき「せめて耳に入れられる程度のものにしなさいよね」

花子「……」


未来「あっ、みさきちそこ窓だよ!」

みさき「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!???見えなかったあぁぁぁぁぁぁ!!!??」ヒュー

こころ「みさきちが窓から落ちちゃった」

こころ「あれ?花子様がいない」

なにもかもどうでもよくなった花子は家に帰ったし。
家に帰ったらこどもの日とかで撫子お姉ちゃんからプレゼントを貰った。
でもどう見ても雑草だったから捨てた。


~こどもの日スペシャル 花子様編~ 完

楓は楓なの。
それだけ。


楓は今お墓に居ます。
お墓と言えば墓参りでしょうが、楓は別に誰かの墓参りとかそういうことをしに来た訳では一切ありません。
ただお供え物を食べに来ただけです。

楓「このおまんじゅう美味しい」モグモグ

最近育ち盛りの楓は、家で出される料理だけじゃ満足できない体になってしまいました。
これ以上家計を圧迫するのは嫌なので、仕方なく屍共の残飯を漁っています。
美味しい。

楓「正直死んだらなにも食べられないし、腐らせるだけだから無駄だよね」モグモグ

そう、本音を言うならお供え物なんてただ捨ててるだけじゃないかと思ってます。
幽霊が食べるでもないし、ゴミ箱に叩き込むのとなにが違うのか。
たまにいるお墓に向かって話しかけてる人とかを見ると、馬鹿かお前と怒鳴りつけたくなって仕方ありません。
食べ物を粗末にする訳にはいけないので仕方なく楓が食べてやってます。

楓「ふー……」

この墓地にある食べ物はあらかた食べ終わりました。
最初は死体が物を食べると勘違いしたキチガイ共に見つかって追いかけ回されることも多かったのですが、最近ではこいつらの目をすり抜けるのにも慣れたものです。

楓「ちょろいよね」ゲフッ

ということで次の狩場に行こう。

「あー、なんだよ!今日もなにも置いてないじゃん!」

楓「ん?」

櫻子「せっかく来てやったのに!」ガンッ!

そう怒鳴りながらお墓を蹴るのは櫻子お姉ちゃん。
どうやら櫻子お姉ちゃんもお供え物を食べに来たみたいです。
卑しい生き物だなぁ。


おばちゃん「あっ、コラ!!」

櫻子「ゲッ、見られた!?」

大変です。
櫻子お姉ちゃんが墓参りに来たおばさんに見つかってしまいました。
楓は関係ないからどうでもいいけど。

おばちゃん「お墓を蹴るなんて罰当たりな!」

おばちゃん「私がお供えした饅頭食べたのもあんただね!?」

櫻子「知らないよ!私が来た時にはもうなにも置いてなかったんだから!」

おばちゃん「うるさい!このこそ泥!」


あーあ、櫻子お姉ちゃんが連れていかれた。
楓はそんな櫻子お姉ちゃんを尻目に普通に家に帰りました。

ガラッ

楓「ただいまー」

向日葵「あら、おかえりなさい」

向日葵「今日の晩御飯はパセリのポン酢和えですわよ」

楓「わーい」

またこれです。
最近お姉ちゃんはダイエットとかでロクな料理を作ってくれません。
昨日はきゅうりの踊り食いでした。


向日葵「そういえば楓も聞きました?」

向日葵「最近この付近のお墓にお供え物を盗んでいく変質者が現れるようですわよ」

向日葵「楓も気を付けたほうがいいですわ」

楓「うん!わかった!」

その変質者は楓なんだけどね。
捕まらないように気を付けるよ。

楓「あっ、さっきお墓の前を通った時見たんだけど」

楓「櫻子お姉ちゃんがおばちゃんに怒られてたよ」

楓「なんかこそ泥とか言われてた」

向日葵「まさか……あの子……」

楓「楓また出かけてくるね」


今度はスーパーの試食コーナー巡りの時間です。
この時間は客が多いので、店員から無言の圧力を受けないで済みます。
ゴールデンタイムです。


楓「メロン美味しい」モグモグ

ちょうど試食コーナーにメロンが置かれたばかりでした。
こうやってなにも買わない幼女に全て食べられてるのを知ったら、試食を用意した人はどんな気持ちになるんだろう。
美味しい。


「うーん……どっちのプリンにしようかしら」

楓「あれは……」

綾乃「迷っちゃうわ……」

うわぁ、あのもみあげたかだか100円程度の違いで迷ってる。
先ほどから両手に持ったプリンを交互に見比べてます。

綾乃「こっちのプリンは量が多いし……」ブツブツ

楓「(どっちも買えばいいのに。ああいう人間にはなりたくないなぁ……)」モグモグ

綾乃「ん?あら?」

まずい、もみきゅんソードと目が合った。
今更目を逸らしても後の祭り、
なにを思ったのかもみあげがこちらに歩いてきます。


綾乃「古谷さん?」

なぜこいつは楓の苗字を知っているのか。
楓はこんなもみあげ知らないのに。

楓「そうだけど」

綾乃「やっぱり!縮んじゃってるけど古谷さんなのね!」

綾乃「黒づくめの女に薬でも飲まされたの!?」

あぁ、お姉ちゃんと勘違いしてるのか。
道理で記憶にないわけだ。
楓の知り合いにこんな低俗な人間がいるわけない。

楓「そうだよ」

でも、面白そうなのでお姉ちゃんのフリをしてやることにしました。
さて、この白痴はいつになったら気付くかな?

綾乃「まぁ、そんなこともあるわよね」

綾乃「それで、ここでなにしてたの?」

スルー。
まさか一言で終わらされるなんて。
本当は最初からお姉ちゃんじゃないってわかってたんじゃないでしょうか。

楓「試食を食べに来たの」

綾乃「ぷぷっ、古谷さんホームレスみたいね」

綾乃「あっ、だからあの気色悪い口調やめたの?」


叩き殺してやろうか。
お金がないからじゃなくて、お姉ちゃんが狂ったから試食を食べにきただけだからな?

楓「楓は向日葵お姉ちゃんの妹の古谷楓だよ」

これ以上話していても不快な想いをするだけだと判断しました。
壊死した組織を排除するように、とっとと切り離してやろうと思います。

綾乃「ぷっ、またそんな嘘ついて」

綾乃「試食コーナーにしがみ付いて必死で試食を口にかっこんでるところを見られたのがそんなに恥ずかしかったの?」

綾乃「大丈夫よ。このことはしっかりみんなにメールで拡散して生徒会新聞に載せて全校放送で言い触らしてあげるからwwwwwwwwwwwww」

綾乃「ぷぷぷぷぷwwwwwwwwwwwww」ゴロゴロゴロゴロ

一目見たときからカス野郎だとは思っていたけど、こんなに醜い生き物だったとは。

楓「えぇ、楽しみにしてますわ」

でも、お姉ちゃんが苦しむのは面白いのでこのままでいいと思います。
こういうクズはどうせ勝手に自分で身を滅ぼすだろうし。

楓「それでは私はこれで失礼しますので、もみあげさんもお元気で」

綾乃「ふ、古谷さんの学園生活がついに終わりを迎えるのね……wんふふっwww」

あぁ、お姉ちゃんの不幸を想像して笑い転げてるせいで聞いてない。
通行人に写真を撮られたりしてるけど、そのまま放置して店を出ました。
こんな礼儀知らずの貧乏人に構ってあげてやる程楓は暇じゃないのです。


スーパーを出た楓は、今度は公園にやって来ました。
試食を食べてきた後は、いつも腹ごなしにこの公園を散歩して帰ってます。
たまにホームレスが中学生に襲撃されているので、この公園は大好きです。

楓「んー、今日はホームレスがいない」キョロキョロ

どうやらホームレスは空き缶拾いに出掛けてるようです。
死ねと書かれたダンボールハウスだけが置いてあります。

楓「仕方ないから普通に散歩しよう」

楓「なにか楽しいことないかなぁ~……あっ」

白い毛が上部に張り付けてある眼鏡を見つけました。
あれはなんだろう。
少し近付いてみよう。


千鶴「ん?あぁ、楓ちゃんこんにちは」

なんだ、白髪が生えた眼鏡が座ってると思ったらただの千鶴お姉ちゃんでした。
またいつものようにベンチでナメクジ写真集を眺めています、気色悪い。

千鶴「ちょうどよかった、楓ちゃんにお礼を言いたかったんだ」

楓「楓に?」

千鶴「うん、楓ちゃんの言った通りナメクジの写真集を学校で読んでたら友達ができたんだ。ありがとう」


あぁ、この気持ち悪い本楓が読むように言ったんだっけ。
千鶴お姉ちゃんが学校で馬鹿にされればいいと思ってやったのにこんな効果が現れるなんて。
お姉ちゃんといい櫻子お姉ちゃんといいさっきのもみあげといい、あの学校にはまともな人間はいないのか。

楓「えへへ、千鶴お姉ちゃんが喜んでくれてるみたいで楓も嬉しいの」

千鶴「ふふっ、楓ちゃんは本当にいい子だね」ナデナデ

千鶴お姉ちゃんが楓の頭を撫でてくれました。
汚い手で触るな。


千鶴「それで、楓ちゃんに相談なんだけどさ」

千鶴「どうすればもっとみんなと仲良くなれるかな」

中学生が幼稚園児に友達との付き合い方を相談するなんて恥ずかしくないのでしょうか。
まぁ仕方ない、千鶴お姉ちゃんのためにアイデアを提供してあげよう。

楓「逆立ちしながらうんちして、落ちてきたうんちを食べるといいよ」

千鶴「えぇ……そんなことして大丈夫かな」

楓「うん!コアラさんだってお母さんのうんち食べるんだから、コアラさんの真似だって言えばみんな食いついてくれるよ!」

千鶴「なるほど」

千鶴「確かにみんなコアラは大好きだもんね」

やっぱりこの人馬鹿だなぁ。
今度こそみんなから嫌われていじめられますように。

千鶴お姉ちゃんに一通り逆立ちうんちの練習をさせたあと、楓は散歩に戻りました。
あれからずっとホームレスを探して歩いてるけど、そろそろ足が限界に近いです。
もう結構時間も経ったし、家に戻ろうかな。
ホームレスはいなかったけど、馬鹿も見れたし。

楓「でも、やっぱりホームレス見たかったなぁ……」


神様『右を見てごらん』


楓「えっ」

ふと空から声が降ってきました。
どうやら日頃いい子にしている楓への神様からのプレゼントのようです。
神様の言葉を信じて右に目をやると……


結衣のクラスメイト「死ね!没落貴族が!」ヒュンッ

京子のクラスメイト「金のないお前なんてもう怖くもなんともないんだよォ!」バキッ

結衣「ひぃ~!やめてくれぇ~!」

結衣「私がなにしたって言うんだよぉ~!」

あっ、いた。ホームレスだ。
今日も今日とて相変わらず迫害されています。

綾乃のクラスメイト「被害者面するなクズが!!」バキッ

千歳「今まで散々金の力でうちに嫌がらせしよって!」ビュンッ


楓「石投げられてる~♪」キャッキャッ

最後にホームレスの迫害が見られて楓は満足です。
とても気分が良くなりました。
だから走って帰ろう。
今日は走って帰ろう。

────

空がもうすっかり青さを忘れた頃、ようやく楓は家に戻ります。

ガラッ

楓「ただいまー」

向日葵「あら、おかえりなさい。また出掛けてましたのね」

お姉ちゃんの言葉に楓は「うん」と返事をしました。
お外は楓の好きなものがそこら中に散りばめられていて、まるで宝物みたいなので、何度でも何時間でもついついお出かけしてしまうのです。

向日葵「あまり遅くまで遊んでては駄目よ?」

楓「うん、わかった」

このやり取りをするのももう何回目でしょう。
いつも同じことをお姉ちゃんから注意されています。
でも、そんな楓にお姉ちゃんは怒るでもなく、優しく微笑んでお出迎えしてくれます。
優しい自慢のお姉ちゃんです。

向日葵「もう晩御飯できてますわよ、はい楓の分」

楓「わぁい」

目の前に差し出されたのはパセリのポン酢和え。

家ではこんなゴミみたいな料理しか提供されない楓ですけど、毎日元気です。
だって、世界は楽しいことで溢れているんだから。


~こどもの日スペシャル 楓編~ 完

おしまい

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