俺「これで悪魔が呼べるの?」(16)

某年某月某日深夜…

秋葉原のネカフェで始発電車が来るまで待ってた俺は

ネットで奇妙なサイトを目にする

『退屈な日常を刺激的な非日常にしてみませんか?』

俺は何かのゲームの事だと思いクリックする…と

ブツッ…!

店内が突然の停電に襲われた

…いや、店内どころか町中の灯りが消えていく

「クソッ…良いとこだったのに!」

俺の右隣にある壁を隔てた向こう側の個室からデカイ独り言をぼやくdqnが壁ドンをしてきた

声を聞く限りでは俺より若いようで持っていた携帯のライトでそいつを照らした

「…あ?誰だテメェ」ギロッ

ライトで照らされているからか俺の顔を見れないらしくドスを効かせた声で威嚇しているがやっぱり俺より一回り年下なようだ

俺は「お前が壁ドンした側の個室で寝てたんだよ」とわざとドスを効かせて説明してやった

「ヒッ…す、スンマセン…」ガタブル

そんな会話をしていると奥の休憩室から店長が仲裁にやって来た

dqn「な、なんで停電になったんスかね?」

店長「さぁ?私共にも解りません…」

店には店長とdqnと俺を含む3人しか居なかったため俺は状況整理に外に出る事にした

~深夜・秋葉原~

店を出る時も携帯のライトを付けっぱなしにしてないと黒一色だったが外に出るとライトの意味が無くなるぐらいの暗闇だった

田舎でいうところの余計な街灯が無ければ空一面に光る星や月光も都会の高層ビル街がそれを遮るためか光は殆んど入らない

俺「まいったな…」

携帯で時間を見るが始発はおろか朝日が登るまで4時間といったところだ

俺「…ん?メールだ」カチカチ

いつの間にかメールが届いていた

俺「…ん?誰だこりゃ」

届いたメールは知り合いカテゴリーに分けられていたがアドレスは登録されておらず本文にも名前が無い

俺「だれだか、わからん、なまえを、いれて、もういちど、よこせ…と」カチカチ

再送信の催促のメールを作成し名無しのアドレスに送信…した筈だった

俺「…ん?指定のアドレスに送信できません?」

なんだこりゃ?と思ったがふと携帯画面で気付いた事があった

俺「…ありゃ?圏外だと?」

どうやら頭がまだ半分寝ているらしい停電してるんだから圏外になって当然…じゃない!

圏外になる事はおかしい非常事態だからと通話を制限するらしいと聞いた事があるがそれがつまり圏外になるという訳ではない

俺「どうなってる?…!他の奴は?」

さっきのネカフェに戻り店長とdqnに携帯の事を聞いてみる

店長「私の携帯は…圏外ですね」

dqn「俺の…あれ?圏外だ」

店長「おかしいですね…いわゆる携帯の電波発信塔が不具合でも起こさない限りこんな事はあり得ないんですが」

しばらくして階下から声がした

「たっ助けてくれぇ!」

何事かと俺たち3人は階下のcdショップに駆け込む

すると一人の男性が何かに襲われているようだ

「ヒィッ!ヒィッ!助けてくれぇ~!」

辺りには水でもぶちまけたのか男性が動く度にビチャビチャと音がする

「ギィャァァアアア!!…」

男性が絶叫したかと思えば一変して静かになった

俺「…どうなったんだ?暗くて何も見えんし」

一歩店内に踏み込むとどこからか風が入り口へと抜けていき3人の鼻を掠めた

俺「…!」
店長「!」
dqn「!」

この匂いは誰でも知っている生物には皆流れる体液

…血だ

cdショップ店内は恐らく血塗れになっている

さっきの男性は何かに襲われて今俺の足元で息絶えているのだ

俺の身体から血の気が引く音がした

店長はへたれこみdqnは悲鳴をあげながら店外へと逃げ出した

店内にはまだ何かがいるかもしれない

逃げなければ…しかし足がすくんで動けない…

ピリリリ…ピリリリ…

俺の携帯がメールを着信した

藁にもすがる気持ちで携帯を開く助けを呼ぼうとした…しかし圏外のままだ

俺「どうして!?なんでだよ!メールは来たのに!」

助けを呼べない

もう終わりだ…

頭が真っ白になる

何もかもが闇に消えていく

誰かがささやいた気がした

『このまま諦めますか?』

諦め…

…たくない…!


その瞬間、携帯から蒼白い光が溢れる

『***という逆境を乗り越えるチカラを…貴方に…』

蒼白い光の欠片が俺と店長を包んだ

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