モバP「月と屋台と銀の草」(32)




―ガード下・おでん屋台にて―



 ゴトンゴトン…



早苗「カンパ~イ♪」カチン

楓「かんぱい♪」カチン

早苗「サシで飲むの初めてよね?いつもは夏美ちゃんとか瑞樹がいるし」グビッ

楓「そうですね。今日は連れて来て戴いてありがとうございます」ニコ





片桐早苗(28)
http://i.imgur.com/TaxW6tW.jpg

高垣楓(25)
http://i.imgur.com/iE9RXqN.jpg





早苗「こんな所でよかったらいくらでも紹介してあげるわよ。警察時代は周りが全員
   おっさんだったから、よくこういう屋台で飲んでたしね」グビッ

楓「雰囲気があっていいですね。まるでドラマの1シーンみたいです」

早苗「寒くなると行きたくなるのよね。刑事といえば張り込みはあんぱんと牛乳!
   屋台にはおでんと熱燗でしょ!取り調べでカツ丼もやってみたかったけど、
   あたしがいた署はケチだったからやらなかったのよね」

楓「おまわりさんも経費削減ですね。ところでドラマで思い出したんですけど、
  早苗さんははぐれ刑事派ですか?それともはみだし刑事派ですか?」

早苗「お?それ聞いちゃう?警察官が集まるとよく出る話題トップ5に入ってるわよ。
   でも今だったら相棒とかじゃないの?」




楓「相棒は右京さんの相棒が変わるごとにどんどん……」

早苗「あー、イロイロ言われてるわね。イタミンもすっかり丸くなっちゃって」パク

楓「早くも4代目相棒の話が出ていますし、今後どうなるか心配です」モグモグ

早苗「あ、ちなみにあたしははみだし刑事の方が好きだったわ。楓ちゃんは?」

楓「はぐれ刑事でしたね。人情ものが好きなので」




早苗「最近は人情もの減ったわよねえ。刑事ドラマは多いけど。おっちゃん、大根と
   もちきん追加ね。楓ちゃんは?」

楓「じゃあ私も大根と、それからがんもを」

店主「はいよ」ヒョイヒョイ

早苗「ん?ちょっとおっちゃん、楓ちゃんの大根の方がダシ滲みてない?あたしの
   まだ白いんだけど」ジロリ

店主「気のせいだ。ったく、お前は警官の頃から全然変わってねえな」




早苗「いや絶対白いって!あるでしょなべ底大根、大人しく出しなさい!」グイッ

店主「あ!こらバカおたま返せ!乱暴に混ぜたら潰れちまうだろうが!」グイッ


 ギャーギャー バタバタ


楓「ふふ、いいなあこういうの……」クスクス





―――



 ヒュオオオオオ… カランカラン…



早苗「大丈夫楓ちゃん、寒くない?」

楓「へっちゃらですよ。おでんであったまってます♪」ニコッ

早苗「しっかしまさかウチのアイドルとここに来るとは思わなかったわ。みんなほら、
   こんな小汚くて寒々しい所で飲むような人じゃないでしょ?」グビッ

店主「小汚い所で悪かったな」フン





楓「お仕事がお仕事ですし、どうしても周りの人の目を気にしちゃうみたいですね。
  こんなに素敵で美味しいのにもったいないです」コクコク

店主「嬉しいこと言ってくれるな姉ちゃん。はんぺんおまけしてやるよ」ヒョイ

楓「わーい♪」

早苗「あたしは?ねえ、あたしにはないの?」ワクワク

店主「ほい、しらたき1本」チョコン

早苗「ねえ、さっきからひどくない?あたし警官時代から通ってる常連よ?」イラッ




楓「ふふ、早苗さん達を見ていると昔を思い出します」クス

早苗「そういえば楓ちゃんってモデルさんだったのよね。その頃の話?」

楓「いえ、もっと前です。和歌山ではんぺーん…じゃなくてキャンペーンガールを
  していた頃ですね」

早苗「キャンペーンガールって『ミス・○○』とかってやつ?県の観光PRとかで
   スーツ着て、タスキかけてニコニコ手を振ってるような」

楓「それは観光大使とか自治体のお仕事なので真面目なやつですね。そういうのも
  やりましたけど主に梅酒の宣伝とか、温泉の紹介とかしていました。一時期は
  和歌山のキャンギャルの半分以上を私がやってたんですよ」エッヘン

早苗「へえ、そりゃすごいわねえ。でもあたしとおっちゃんのどこに、楓ちゃんの
   キャンギャル時代を思い出す要素があるの?」




楓「イベントが終わった後に、おじさん達とよくこんな風に飲んでいたんですよ。
  梅農家さんとか、温泉の番頭さんとか、商工会の人達と立場やお仕事とかを
  気にせずに、公民館や旅館の大広間でわいわい騒いでました」

早苗「楓ちゃんが妙におっさんくさい理由がわかった気がするわ。ウチの署の飲み会も
   そんな感じだったし。そういう飲み会の方が肩肘張らずに楽だけどね」

楓「その後東京のモデル事務所にスカウトされてモデルになったんですけど、モデルに
  なってからは、こんな風に飲んだり出来ませんでした。みんなピリピリしていて、
  本音で話せない人ばかりでしたから……」

早苗「相手によってはそうなっちゃうわよね。でも社長とか嫌な上司ならともかく、
   モデル仲間同士でもそういう感じなのはちょっと寂しいわね」




楓「誘っても誰も付き合ってくれないし、いつもひとりで寂しく飲んでました。そんな
  時に、たまたま入ったお高めのワインバーで志乃さんに会ったんです。志乃さんも
  ひとりで飲んでましたけど、私と違って楽しそうでした」

早苗「あの人はそうよね。グラスとかくるくる回してさ」クルクル

楓「ふふ、その時の志乃さんもそうやってくるくるしていましたよ。それを見て私、
  すごくうらやましくなったんです。同じようにひとりで飲んでいるのに、私と
  あの人の違いはなんだろうと思って、志乃さんをじっと見てました」

楓「そうしたら私の視線に気付いた志乃さんがゆっくりこっちに歩いて来て、私の
  隣に座って優しくこう言ってくれたんです」




~~~


志乃『うふふ…あなた、お酒はそんな顔をして飲むものじゃないわよ……』

志乃『ちょうどいいわ…。私もひとりだから、今夜はゆっくりつきあってあげる……
   可愛らしい寂しがり屋さんに、お酒の愉しみ方を教えてあげるわ』フフ…


~~~




柊志乃(31)
http://i.imgur.com/A6rBrI6.jpg





楓「それで気がつけば、志乃さんについて行ってアイドルになってました」パク

早苗「そっかぁ、楓ちゃんはどうしてモデルを辞めてアイドルに転向したのかなって
   思ってたんだけど、そういう経緯があったのね」グビッ

楓「今はこうしてまた、ざっくばらんに皆さんとお酒を飲めるようになりました。
  それだけで私、アイドルになって良かったと思います」ニコッ

早苗「楓ちゃんらしいわね。でもそんな良い笑顔で言ったらP君が泣いちゃうわよ?
   『アイドルは楽しくないんですか!? 』とか叫んだりして」アハハ




楓「もちろんアイドルも楽しいですよ。歌を歌うのもダンスをするのも好きですし、
  ロケやLIVEであちこちに行けるのも魅力的です。出来れば温泉地のお仕事で、
  お仕事が終わったら旅館でお酒を飲んで……うふふ♪」

早苗「結局お酒に戻っちゃってるじゃないの。まぁ、気持ちはよくわかるけどさ。
   あたしも温泉の仕事とかしてみたいなあ」グビッ

楓「早苗さんにもそのうち回ってきますよ。お仕事の話はこれくらいにして、今夜は
  ここでゆっくりお酒を楽しみましょう」




早苗「そうね。味気ないガード下の屋台でも、空を見上げれば綺麗なお月様があるわ!
   そして線路脇には月に照らされて銀色に輝くススキが……」ビシッ!!






のあ「……」チョキチョキ



早苗「……ん?」





高峯のあ(24)
http://i.imgur.com/hzEab8W.jpg






のあ「……」チョキチョキ



楓「……のあちゃん?」



のあ「 っ!? 」ハッ






***



 カンカンカンカン… プァーン…



のあ「貴女達が居るとは思わなかったわ……」

早苗「それはこっちのセリフよ。のあちゃんはススキを収穫してたの?」

のあ「部屋に飾ろうと思って…… 好きなのよ、芒」

楓「漢字が読めません。ひらがなでしゃべって下さい」ムス

のあ「…………好きなのよ、芒(すすき)」

楓「よく出来ました。ご褒美にちくわぶをあげましょう♪」ヒョイ

早苗「いや、今のどうやったの?」





店主「おい早苗、またとんでもねえ美人連れて来たな。お前いつもこんな姉ちゃん達と
   一緒に仕事してんのか?」

早苗「ん?そうだけど。なになに?もしかしてうらやましいの?」ニヤニヤ

店主「いや、まあそのだな、お前も一応女だし、ちょっとくらいは可愛い所があるから
   めげずに頑張れよ。俺も応援してるからな」ポン

早苗「どういう意味よ!? 」グワッ!!




楓「のあちゃんはお仕事の帰りだったんですか?」

のあ「散歩をしていたのよ。今宵は月が美しいから……」

早苗「ひとりでうろついてたら危ないわよ。瑞樹達はつかまらなかったの?」

のあ「皆、次の仕事のミーティングよ…… 仕方ないわ……」ショボン

楓「よしよし、のあちゃんも一緒に飲みましょう♪ 美味しいおでんもお出ん迎えして
  くれますよ。おじさん、熱燗ひとつください」

店主「はいよ。それとさつま揚げサービスだ」ヒョイ

早苗「こんのエロオヤジ……」




のあ「ふふ…… 貴女達は何処でも其の儘ね……」

早苗「褒め言葉として受け取っておくわ。あたしには裏も表もないから!」フンス!!

楓「美味しいお酒が楽しく飲めるなら、私はいくらでも頑張れます。のあちゃんも
  そうでしょう?」フフ

のあ「私は只、此処に在るだけよ…… この芒のように場所を選ばず、月光を浴びて
   輝き続ける事が出来れば…… 何処でも私で居られるわ……」

早苗「のあちゃんもう酔っちゃったの?」キョトン

楓「あいぁむごぉ~ずちゃ~ぃるどこ~の~ふ~はいし~た♪ 」

のあ「…………何でもないわ。忘れて」グビッ





 ココロカゼニ トザサレテク~♪



早苗「ん?楓ちゃん携帯鳴ってない?」

楓「あ、ほんとだ。誰でしょう」サッ

楓「えっ……」

楓「…………」

早苗「ど、どうしたの楓ちゃん?急に黙っちゃって……」

のあ「 ? 」





楓「大変です早苗さん…… 私達の知らない間に、プロデューサーが瞳子さんと一緒に
  湯布院温泉に行こうとしています……」ワナワナ…

早苗「え!? 湯布院温泉ってあの大分の!? 」ガタッ!!

楓「大分の温泉協会の人からのメールだったんですけど、今月末にプロデューサーと
  瞳子さんが観光PRの仕事で大分に来るそうです。温泉好きの私達に何の相談も
  なく、既に決まってるとか……」

早苗「あたし散々温泉行きたいって言ってるのに!P君に文句言ってやるわ!」ムキー!!




楓「あ、ちょっと待ってください。瞳子さんの他にウチからもう3人出すそうです。
  そのメンバーはまだ決まってないみたいですよ」

早苗「あ、そうなの。じゃあその3人の中に入ればいいのね♪」コロリ

のあ「……いえ、暢気に構えていると入れないかもしれないわよ」

早苗「え?ど、どういうこと?」




のあ「確か今日のミーティング…… メンバーは瑞樹と留美と美優、そして瞳子だった
   筈よ。今月末という日程も考慮すると、内容はこの仕事で間違いないでしょう。
   そうなると、瞳子以外の3人は瑞樹達に決まる可能性が高いわ……」

早苗「なにぃ!? それは大変だわ!すぐにあたしも立候補しないと!」

楓「私も立候補します。のあちゃんも一緒に行きましょう」




のあ「温泉に興味はないわ…… でも…… ざびえるは食べてみたいわね」ボソッ

早苗「何それ?」

楓「大分のお菓子ですよ。前に食べた事がありますけど、とても美味しいですよ」ニコ

早苗「よし!じゃあのあちゃんも行きましょう!ザビエルだかマイケルだか知らない
   けど、絶対に湯布院行くわよー!」オー!!


おわり




 ここまで。屋台でお酒を飲むお姉さんを書いてみたかったので、屋台が似合いそうな
2人に登場してもらいました。のあさんも外で月見酒とかしてるかも。ススキは英語で
Silver grassと呼ぶらしいので、のあさんはきっと好きに違いない(願望)。
 それから楓さんは相変わらず難しいなあ……小粋なダジャレがスラスラ言える大人に
なりたいものです。では


モバP全く絡んでないんだから
タイトルは早苗「 とか 楓「 の方が良かったんでない?

お姉さんたちほんとすこ

>>29
こういう誰がメインじゃない複数で喋らせるSSって、どう表記すればいいんでしょうね。
Pをもっと登場させて絡ませれば問題ないのですが、どうもPを話しに絡ませるのに不慣れでw
とりあえず申し訳程度に話題には出しましたが、考えさせてもらいます。

>>30
こっちも見て戴いてありがとうございました。作者の体力とアイデアがあれば、また連作に
挑戦してみたいと思います。

志乃さんに年下扱いされる楓さんいいゾ~これ

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