男「待機児童?」(213)

さしすせそ:ちゃちちゅちぇちょ、しゃししゅしぇしょ
さじずぜぞ:じゃじじゅじぇじょ、ぢゃぢぢゅぢぇぢょ
たちつてと:たちちゅてと
だぢづでど:だぢぢゅでど

たぶん目が疲れると思うが許して
次から書く

男「おはよう」

母「おはよう。珍しく早起きね」

男「早起きって時間じゃないけどな。太陽高いし」

母「土日休みなんて昼過ぎまで寝てるんだから早起きでしょ? えーっと、あとこれも持っていこっかなー」

男「出かけるの?」

母「高校生の同級生だった知人に久々に会いに行くの。あ、男!」

男「なに? ご飯食べたいんだけど」

母「まだお母さんとお喋りの途中でしょ。ご飯なんか後でいいじゃない」

男「食べながらでも話せるじゃん」

母「お母さんとのお喋りがそんなに嫌?」

男「いや、好きとか嫌いとかじゃなくて腹がへ」

母「うるさい私の話を聞け」

男「はい」

母「で、お母さんはこれから出かけます」

男「それはもう聞いた。帰りは何時の予定?」

母「家に帰ってくるのは夕方くらいかなぁ」

男「自分で飯準備するの死ぬほど面倒くさいからなるだけ早く帰ってきてくれ」

母「夕飯はお母さんが作れるように頑張ってみるね。そうそう、男は知人さん覚えてる?」

男「覚えてるもなにも最近家に来たばかりじゃん」

母「話をするための一応の確認よ。その知人さんが仕事を始めたはいいんだけど託児所がどこも満杯らしくて子供が予約待ち状態らしいの」

男「待機児童ってやつ?」

母「そうそう、それそれ。それでお母さん、保母さんの経験もあるから迷惑でなければ~ってお願いされちゃったのよ」

男「へー、それ請けたの?」

母「男は成人したばかりだけど昔ほど手がかからなくなったのが嬉しいけど寂しくて。つい、一回子育てを楽しみたくて快諾しちゃった」

男「今でも十分手はかかるけどな。そんで俺にはまた事後承諾するつもりで安請け負いしてきたと」

母「そそ。でもそんな風に言いながら男もいつも楽しんでるわよね?」

男「……んなわけねーだろ」

母「男がお手伝いしてくれるからお母さんとっても助かってるわ。ありがとうね」

男「いきなりなんだよ。悪い気はしないけどさ」

母「と、いうことでそろそろ仲良し姉妹が来ることになってるから優しくしてあげてね」

男「は? 今日来るの?」

母「そうよ。これから」

男「なにそれ。え? 母さんは?」

母「だからお友達に会いに行くんだって」

男「なんでキャリーバッグ?」

母「よくぞ聞いてくれました!」

男「お、おう」

母「その知人さんが衣服の製作に携わるお仕事をしてて、子供の面倒を看る御礼に着こなしのセンスを見てもらえるの! だからこの中衣類がぎっしり!」

男「これ以上ファッションに熱が入ると単身赴任から返ってきた父さんが卒倒するぞ。じゃなくて、なんで依頼を俺に丸投げして先に蜜味わおうとしてんだよ」

母「羨ましいか! これが母親特権よ!」

男「気に食わねえ……」

母「よし! 準備完了! 近頃何かと物騒な事件が起こってるみたいだから、十分気を付けてね。特に最近は大きな事件があったみたいじゃない? 戸閉まりは忘れずにきちんとね」

男「はいはい。言われなくてもそれくらいは出来ますて」

母「人の子供を預かるんだから注意だけは万全に。怖がらせたら駄目よ」

男「どうせ毎度の如く姿見た瞬間ぐずり出すだろうな。勝手に泣かれても慰める責任は俺にあるし。まったくやってらんねっての」

母「うふふ、男なら大丈夫よ。じゃあいってきまーす!」

男「無責任にテキトーなことを。いってらっしゃい」

ガチャ…バタンッ

男「手間かからないやつらだといいな。はてさて、開けてびっくり鍋の蓋。今日はどんなゲテモノが詰め込まれているでしょうか?」

男「桜色の煮物と印象をカレーに似せた小麦色のシチューだな。聞こえを良く表現すれば」

男「唯一まともなわかめサラダを食ってから処分方法を検討するか。ん? ラップの上に紙切れが」

『男が起きる頃には冷めてると思うので、レンチン2分してから食べてね。あと、パパとママのお部屋にも書置きを準備してるので目を通してください。はぁと』

男「出かける前に口頭で全部教えろっての。メモでメモを確認させるなんて二度手間じゃん」

男「あとは庫内に眠ってる魚でも焼いて食うか。お釜の白米も合わせて一食分だな」



男「ほっけうめぇ」モシャモシャ

男「母親見送って早二十分。来ないな」

ドサドサッ

男「」ビクッ

男「二階に誰かいるのか?」

男「いやいや、母さんはもう出てるんだから家にいるのは俺だけなわけで……ってことは、屋根伝い不法侵入癖が治ってない女か。驚かせやがってあんちくしょうめ」

タッタッタッ ガチャリ

男「おい女! 窓はお前の玄関ではなく鮮度溢れる風様専用の……誰もいねえじゃん」

男「あー、面倒くさがって机に積んで放置してた本が崩れたのか。なんて紛らわしい」

男「飯食い終わったら久々に片付けでもするか」



男「食った洗った。さあどうしようか。部屋の整理なんざ楽しくないし……ん?」

?「――、……――っ」ヒソヒソ

男「なにやら玄関方向から話し声が。件の姉妹がようやく到着したか?」

男「住人らしく出迎えくらいしてやらんとな」

スタスタスタ ガチャ

女児「あ」

男「……何してんの?」

女児「たいきでちゅ」

男「待機?」

女児「たいき」

男「雪の中で?」

女児「ゆきのなかで」

男「迷彩服で?」

女児「めいちゃいふくで」

男「……」

女児「……」

男「そんなことしてないで中に入りなよ」

女児「ここからうごくにはねえねちゃまからのとちゅにゅうきょかがひちゅよう」

男「突入許可って……いいからほら」

女児「ひっ?! ちぇんりゃくてきてったいー!」ボスボスボス

男「えー」

女児「ひゃんっ!?」ズボシャッ

男「あ、転んだ」

女児「……ぐず」

男「立てるか?」

女児「うん」グスン

男「起こしてあげるから手出して」

女児「ありがと」

男「念の為に確認するけど、知人さんの娘さんで合ってる?」

女児「あってる。ひょうてきなのにやちゃちい」

男「標的ってなんだよ。雪の中よりも家の中が暖かいからおいで」

女児「うん。はっ! あたちちゅかまってちまった!!」

男「大声でそういうこと言うなよ。ご近所様に勘違いされるから」

女児「ほりょか? ひとじちか?」

男「どっちでもない。お前は客人だ」

女児「ひょうてきなのにいいやちゅだ!」

男「あのさ、その標的って――」

女児b「わー! おねえちゃんをはなしぇー!」ダキッ

男「増える迷彩女児っ?! どっから湧いて出てきた!」

女児「おっ、たちゅけがおちょい! ちゃばんなだったらあたちちんでた!」

男「ちょっと! 足に抱き着かれるとバランス取り辛いから!」

女児b「おねえちゃん! いまのうちににげてー!」

女児「むりでちゅ! てをちゅかまれてるでちゅ!」

女児b「しょんな!?」

男「めんどくっせえからこのまま帰るか」

女児「ひゃー! どれいにちゃれてちまうー!」ズリズリ

女児b「きゃー! おねーちゃーん!」ズリズリ




女児a「ゆきちゃえなければにげきれてたのに」

女児b「ちのりをうまくつかわれちゃったね」

女児a「なちゅちゅべなくちゅかまってちまったあたちたちに」

女児b「いったいどんなしうちがまちうけているのでしょうか」

男「はい、ホットココア」

女児a・b「わーい!」

男「お盆はまた使うからコップだけ取ってくれ。美味いか?」

女児a「ずずず……ほんにょりほっこり」

女児b「ずずず……ほんわか」

男「口に合ったみたいでなにより。インターホンに手が届かないなら扉たたくなりして俺を呼べば良いのに」

女児a「ちゃくちぇんではひょうてきがでてくるまでたいきめいれいがでてたのだ」

女児b「てったいめいれいはでてないから、とうしょうはおねえちゃんのどくだんでしゅ」

女児a「どうてんちていたとはいえうかちゅなこうどうだった」

女児b「ねえねしゃまになんてあやまりましゅか?」

女児a「ちにんにくちなち」

女児b「なにしょれ?」

女児a「ちんだにんげんはちゃべれにゃいのだ」

女児b「うわっ! つごうがわるいとしんじゃうくしぇがでました!」

女児a「あたちはちんでいるのだ。なにもかたりゅまい」ズズズ

女児b「じゃあわたしもしのう」ズズズ

男「……つまりごっこ遊びの最中だったと」

女児a「ちぇんちょうはあちょびじゃない!」ガタッ

女児b「いのちはしょんなにかるいものじゃないんでしゅ!」ガタッ

男「えええええ」

女児a「ちかちあたちたちはちんでいりゅ」ズズズ

女児b「しんじゃいました」ズズズ

男「二人にとっては戦場だったから迷彩柄の服を着てたと。姉妹揃ってけったいな事してんだな」

女児a「ここあなくなっちゃった」

男「おかわりいるか?」

女児b「ほしー」

女児a「あたちも」

男「了解。待ってて」

女児c「あ、わたしのここあをあげますよ。おにいさんはたいへんでしょうからすわっておまちください」コト

男「おお、ありがとう」

女児c「いえいえ。あとみっつもすぐにおつくりします」トテテテ

男「なんだ、ちゃんとお手伝いできる子もいるじゃないか」

女児a「ちゃちゅがねえねちゃま」

女児b「ほほえむだけでこころにはるがおとじゅれましゅ」

男「そうだな。心が荒んでるときにはあんなエプロン給仕の可憐な女の子を眺め……ん?」

女児c「おまたせいたしました」

コトリ コトッ

女児a「いただきまちゅ」

女児b「ありがとうごじゃいましゅ」

男「ちょっと待て」

女児b「まつ?」

女児a「またぬ!」

女児b「まてぬ!」

女児c「まて!」

女児a・b「くぅん」ションボリ

男「さも元から居ましたと言わんばかりに自然に紛れ込みやがったな」

女児c「きちゃった」

女児b「はっ! ねえねしゃま!」

女児a「ねえねちゃまっ?! いったいいちゅからっ?!」

男「お前ら気付いてて会話してたんじゃないの?!」

女児a「おにいちゃんにいわれるまできぢゅけなかったでちゅ。ねえねちゃま、おちょろちいこ……っ!」

女児b「おそるべしねえねしゃま。しょこにいるのがにちじょうといわんばかりのかんぺきしゃ……っ!」

男「神出鬼没じゃないと気が済まないのかお前らは!」

女児c「ひっ?!」ビクッ

女児c「ひっく……ぐすん」

男「やべ。やっちゃった」

女児c「あ、あの……わるぎ、なくって……えぐっ、ふええええん!」

女児a「ねえねちゃま!!」

女児b「ねえねしゃまをなかした!!」

男「あの……驚かせるつもりは一切なくてですね」

女児a「ちんでちゅぐなえ!」ガシッ

男「え?」フワリ

ドスンッ!

男「痛あぁっ?!」

女児b「みごとなしぇおいなげ! おこったおねえちゃんはなにものにもおとらない!」

女児d「……ゆるさないっ!!」ドスッ

男「ゴフッ?!」

女児a「ねねうえ! きてくれまちたか!」

女児b「ねねうえもいました!」

女児d「……このおなわでぐるぐる」スッ

女児a・b「「さーいえっさーっ!」」

男「お前ら何しやがる!! ってか、お前もどこから家に入っ」

女児a「ちにちゃらちぇ!」ゲシッ

女児d「……うるさい」ガスッ

男「ガハッ!!」

女児a「ぐるぐる」

女児b「ぐるぐるー」

女児d「……このてぬぐいでかおも」

女児a・b「「さーいえっさーっ!」」

女児d「……あくはしばりあげました」

女児c「わ、わたしがっわるっいんです……」グスン

女児b「ねえねしゃまがごしょうしんでしゅ」

女児a「あたちたちがふがいないばかりに」

女児d「……」オロオロ

女児c「おにいさんはっこれっぽちも、わるひっく……わるくないっです」スンスン

ドスンッガタッドタドタ

女児a「はっ! じょうそうぶであちおと!」

女児b「めすのかほり!」

女児d「……てきしゅう」

女児c「ふたごちゃんはかいだんしたでたいきを! じじょちゃんはかーてんうらでようすをみててください!」ケロリ

女児a・b「「さーいえっさーっ!」」

女児d「……ぎょい」

ドタドタドタ

女「おとこくーん! お部屋にいないってどーゆーこ――」

男「」コシューコシュー

女「どういうこと……」

女児c「いらっしゃいませ」ペコリ

女「え? はい、おじゃましてます……?」

女児a・b・d『……』ジー

男「」コシューコシュー

女「本当にどういうこと……」




女「そういう紆余曲折を経て縛られていましたと」

男「そういうことだ。結び目をガチガチに固めやがって。片手じゃ解ききれねえっての」

女「なんだ。とうとう男君が私好みのプレイに目覚めてくれたものだとてっきり」

男「心外すぎる思い違いをありがとう。お前がそんな趣味を持っていると思わなかったから一層距離を置かせてもらうな」

女「男君ひどい」

女児c「はい。ここあおまたせいたしました」

コト コトリ

女「改めて見るとこの給仕さん可愛いね!」ムギュッ

女児c「めぅっ?!」

男「借りモノだから乱暴に扱うなよ」

女児a「ねえねちゃまのききでちゅ!!」

女児b「ねえねしゃまー!!」

女児c「むにゅう」


男「おい」

女児d「……なに?」

男「姉妹としか聞いてないから二人だけだと思ってたんだが」

女児d「……よにんしまい」

男「クリソツなミニチュア軍人は双子か?」

女児「……ふたご」

男「厄介な奴らが揃いやがって。もう不意打ち掛けるやつはいないんだな?」

女児d「……いない」

女児d「……どっきりたりてない?」

男「三回も驚かされれば腹一杯だわ。子供に不法侵入を良しとさせる親がどんな教育受けてきたんだか」

女児a「おねえちゃんはおにいちゃんとどんなかんけいでちゅか?」

女児b「どうせい? あいさい?」

女児a「どうせいあい?」

女児a・b「「どーせーあい!」」

男「女が女らしくないのは認める」

女「ちょっと理由を聞かせてもらおうかな、男君」

男「それは冗談でただの隣人だよ」

女「えー、ただのってなによ。幼馴染って紹介してくれてもいいじゃない」

男「お前の奇抜な行動力のせいで馴染むどころかトラウマが生まれたぐらいだから断じて違う」

女「そんなことを言うか。私が縄解いてあげたのにひどいなー」

男「他人と呼ばれなかっただけ感謝してほしいくらいだ」

女「男君は素直になってくれないんだね。そういえば、この子たちはなんで男君の家にいるの?」

女児a「なんで?」

女児b「はんにちぱぱ?」

女児a・b「「ぱぱー!」」

男「うっせえ! 俺に何も訊かずして母さんが勝手に知り合いの子供の世話を引き受けたんだ。そのくせ本人は私情優先で出かけてやがるし」

女「そうなんだ。男君にとっては突然だったんだね」

男「せめて事前に連絡なり欲しかったわ。ただでさえ大きい子供の面倒で手を焼いてるってのに」

女「え? まだいるの?」

男「洗面所に行けば会えるぞ」

女「なんで洗面所?」

女児c「んっしょ。くるしかったです」

女「あっ逃げちゃだめー」

女児c「やー」パタパタ

女「男君はこの子たちの名前って聞いてる?」ギュー

女児c「きゃー」ジタバタ

男「何も聞いてない。自己紹介とか考える暇もなく巻き寿司にされたからな」

女「知らないんだ。ねーねー、お名前とか自己紹介しようよ」

女児b「じこしょーかいですか?」

女「うん」

女児a「いいでちゅよ」

男「するなら腕の中で窒息寸前にして息絶えそうなそいつも離してやれ」

女児c「」ビクンビクン

女「あ、忘れてた。はい」

女児c「はぁはぁ……たくさんのおはなさんときれいなおかわがみえました」

女児b「ねえねしゃま。じこしょうかいでしゅよ」

女児c「まだしてませんでしたっけ?」

女児a「でちゅ」

女児d「……わたしも」

女児c「では、わたしからします。おおきいものじゅんでしましょうね」

姉妹『さーいえっさーっ』

長女「わたしはよにんしまいのちょうじょです。ごめいわくをおかけするとおもいますが、なにとぞよろしくおねがいいたします」

次女「……じじょ」

三女「さんじょでちゅ! よんじょとはふたごでちゅ! ねえねちゃまへのあくぎょうはゆるちゃないでちゅから!」

四女「おねえちゃんとのふたごでよんじょでしゅ。やしゃしくしてくだしゃい」

男「簡素だけど案外まともな自己紹介だった」

次女「……しつれい」

女「そうだね。失礼だね。じゃあ、私の番ね」

男「女も自己紹介するの?」

女「するよ? 私の次は男君だからね」

男「俺もかよ」

女「とーぜん。えっとね、私は男君の隣のお家に住んでいる幼馴染の女です。よろしくね」

長女「よろしくおねがいします」ペコリ

姉妹『おねがいします』ペコリ

男「男」

女「……」

姉妹『……』

男「……」

女「え? まさかそれで終わり?」

男「これで十分だろ。他に何を言えと」

女「もっと住人らしさをアピールしたりとか、こう……」

男「やだだるい」

次女「……つまらない」

男「お前にだけは言われたくない」

次女「……むぅ」

長女「おにいさまたちをどのようにおよびすればよろしいでしょうか?」

女「好きに呼んじゃっていいと思うよ。私は女さんとか男ちゃんでも全然怒らないし」

男「俺はキレるぜ。変なあだ名付けたら即却下な」

三女「にぃにとねぇね」

四女「にぃに? ねぇね?」

次女「おにーちゃん、おねーちゃん」

長女「おにいさまとおねえさまでおねがいします」

女「男子のドリーム」

男「待てよ。こいつらが好きに呼ぶだけで俺の趣味は皆無だから」

女「それにしてもさ。姉妹ちゃんたちの服装はだいぶ凝ってるよね。どこで買ってきたんだろ?」

男「双子が迷彩服で次女が忍者衣装で長女が背中にばかでかいリボンをつけた給仕服。残念なくらいに日本文化してんな」

長女「わたしのはおかあさまがおたんじょうびにかってくださったんです。にあいますでしょうか?」クルリヒラリ

女「すっごく可愛いよ!」ムギュー

長女「めぅっ」ギュー

男「長女はある意味流行に乗れてるからいいとしても……お前らだよな」

三女「めいちゃいはちぇんとうのきほんでちゅよ!」

四女「せんじょうにとけこめないやつにはしのしぇいしゃい!」

男「それよりも俗世に溶け込めるように頑張ろうな。それ以上は何も望まないから」

次女「……とけこむならくろがいちばん」

男「どうした忍者。お前の意見は求めてないぞ」

三女「くろはおひるにめだちゅからだめだとあれほど」

四女「ねねうえのなかではくろやじぇろやきょむやあんのうんがしゃいきょうなんでしゅよね? えたーなるふぉーしゅぶりじゃーど!」

次女「……っ!」ピク

男「お前らの争いは冬を越してからじゃないと賛同のしようがない」

次女「……っ……ぉ」

男「なんて言った?」

三女「ねねうえがふるえてる」

四女「ずぼし?」

次女「……ふたごにけっとうをもうしこみます!」

三女「ほー。ほんきでちゅかねねうえ?」

四女「へー。しょうきでしゅかねねうえ?」

男「えー」




女「ふー。お外は寒いね」プルプル

長女「うー。かぜもくうきもつめたいです」プルプル

女「公園の木も頭にたくさん雪を乗せてるけど寒くないのかなあ」

長女「しょくぶつさんはじょうぶなからだでうらやましいですね」

女「それにしても雪合戦かあ。久々に私もしたいなあなんて……あ、準備できたみたいだよ」


三女「あたちたちがちょこにたてば!」

四女「どこであろうとしぇんじょうに!」

双子『いざっ! げこくじょー!』

次女「……ねんこーじょれつをおしえてあげる」

双子『わかさのじだい!』

次女「……っ」ギリッ

男「悔しがるほど歳は離れてないから」



『双子ちゃんがんばれー!』

『おにいさまたちもふぁいとです!』


男「実は知ってた。薄々ながら巻き込まれそうな気はしてた」

次女「……ようどうをおねがいします」

男「明らかに人選ミスだろ。俺なんかよりも女の方がよっぽど戦力になるだろうに」

次女「……いっぽんしょうぶ!」

四女「いっかいでもあてられたらたいじょうだよね?」

三女「ねねうえのなきがおはかわいいでちゅから、なきのおねがいならゆるちてあげまちゅよ」

次女「……ぐぅ」ギリッ

男「いちいち挑発に乗ってると頭に血が上って動きが鈍るぞ」

次女「……ふぅ……かいしのあいずはねーねさまのくしゃみ!」

三女「りょうかいでちゅ」

四女「はあく」

男「それを合図にすんのかよ。気が遠くなりそうだな」

次女「……ねーねさまはさむがり」

男「いくら寒がりでもそんな都合よく」

長女「ふぁ……ふわ……」

次女「……ねーねさまは」

長女「くちゅっ」

双子『うおおおお!』

次女「……つごーのいーおんな」

男「その言い方絶対本人にするなよ」

三女「ねねうえ! あちがとまってまちゅよ!」バシュッ

次女「……っ」サッ

四女「ねねうえ! あたまがとまってましゅよ!」ブンッ

次女「……くっ!」シュバッ

三女「ほらほら! にげるだけじゃっげりらちぇんぽうにもならないでちゅよ!」バシュッ

四女「えいやっ! きぶんはかりうど!」ブワンッ



女「握った球を上方に投げてストック、入れ替えで落ちてきた雪球を掴んで投げる。お手玉の要領で常に一球多く保持させた双子ちゃんの戦法は強いね」

長女「かたほうがにぎってるときは、もうかたほうがちゃんとなげてるので、すきもうまれないです」

女「次女ちゃんも上手に避けてるけど双子ちゃんの波状攻撃で雪に触れてないや」

長女「ふたごちゃんはいつでもいっしょですから、なにをしてもいきがあうんです」



男(圧倒的な球数なのは間違いない。なんせ機敏さが取り柄の次女が翻弄されているくらいだ。けど、それは――)

男「二対一だったらの話だがな!」ポイッ



女「おお! 男君が雪玉を握った!」

長女「びっくりです!」


三女「にぃにはじゃまでちゅ!!」バシュンッ

パァンッ!

男「いひっ?!」

四女「にぃにがみじゅしゃしゅ!!」ブオンッ

ビュオッ!

男「うっそお!?」ヒョイッ

ズパァンッ!! ドサドサドサドサッ


女「おおっ! 死角からの攻撃を寸分違わず三女ちゃんが迎撃、飛び散った雪粉を目隠しに四女ちゃんが追撃したよ。しかも着弾した木からは雪合戦で聞けそうにない破裂音が!」

長女「ふたごちゃんはしゃてきがだいすきなんですよ。どんなまとでもはずれなしです」


男「隠れるつもりのない迷彩なくせしてなんつー強さしてんだよ。……あれ? 次女は?」

三女「むむっ! ねねうえがいないでちゅ」キョロキョロ

四女「にゃにっ?! にぃにのせいでみうしなった」キョロキョロ

四女「おねえちゃん、どうしよう……」

三女「てきをちかいからにがちたときのきほんは……あちをとめない!」ダッ

四女「てをとめない!」ブオッ

男「ちょっ?! こっちくんな!」


女「次女ちゃんがいなくなったから必然的に男君が狙われちゃった」

長女「はんだんのはやさもふたりのちょうしょです」

女「位置を入れ替える様に公園の外淵ギリギリを走って逃げてるね」

長女「にげるじかんをふやすためのしんろですね」 しんろ→さくせん


三女「にいにもにげるだけでちゅか?!」ビュンッ

四女「やはりわかしゃがしゃいきょー!」ブウンッ

女「前後と足元が気になって雪を握ってる時間がなさそう」

長女「じじょちゃんのゆくえもきになってしかたないはずです」

女「あ」

長女「あらら」


三女「にいに、ちゃんとまえみてはちってた?」

四女「にぃに、うしろだけみてはしってた?」

男「あれ? 追い詰められた?」

三女「あちぇってにげるほうこうをあやまりまちたね」

男「この公園ちっさすぎんだよちくしょう」

三女「にげまわらずにじめんにふちぇて、おとなちくあたまのうちろにうでをまわちぇば、みのがちていたというのに」

四女「しぇんじょうをしらぬものにはやはりきびしいしぇかい。あまんじてしをうけいれましょう」スッ

男「あー、もうこれ決着付いたろ。この勝負」

男「俺らの勝ちだわ」

ボシャッ

三女「ふぇ?」

四女「うーたーれーたー」ドサ

三女「四女!? ど、どこから!!」

次女「……ふふふ」

三女「ねねうえ?! まちゃかきのうえにいたでちゅか?!」

男「確かに二対一になれば攻めと逃げの関係がはっきりする。俺と双子だけの容赦ない追いっかけっこだけだったら間違いなく負けていた。だがな」

男「お前らの言ってる戦場ってのは戦力にならない相手をわざわざ追い詰めるまで生き残らせる生温い世界なのか?」

三女「あ……」

次女「……それに――」ワシャ

次女「ゆきがあるのは――」モギュギュ

次女「ちじょうだけじゃない」モギュギュ

男「そういうことだ」

三女「あ……ああ……」

次女「えい」ポイ

ボシャッ

三女「まけ……た……」ドシャンッ



女「追い込まれたと思ってたけど誘導だったんだね。すごいや」

長女「びっくりです。あ、ゆき」

女「また雪降ってきたね。お家に戻ってみんなでココア飲もっか」

長女「はーい」

こんな口調とノリが続く予定。
時間遅いし寝ます。おやすみなさい。
何回も確認作業をしたうえで未発見のミスを投稿するとメンタル滅多打ち。

くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、男達のみんなへのメッセジをどぞ

三女&四女「みんな、みちぇくれてありがとう
ちょっとはらぐろなところもみえちゃったけど・・・きにちないでね!」

女「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

次女「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

男「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

長女「・・・ありがと」ファサ

では、

男、四姉妹、女、俺「皆さんありがとうございました!」



四姉妹、女、男「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

>>37のコピペを見るたびに青かった頃を思いだしてむず痒くなるな
続き書く

長女「いちにちありがとうございました」

姉妹『ありがとうございました』

男「明日からはちゃんと玄関から入ってきてくれよ」

次女「……びっくりさせてごめんなさい」

長女「みんなわるぎはなかったんです」

四女「なかったでしゅ」

男「一緒に遊んだんだから無邪気の塊ってのはよく分かってるさ」

三女「またくるでちゅよ」

男「しばらく時間空けてからな。じゃ、おやすみ」

姉妹『おやすみなさい。おねーちゃん』

女「……私もお泊りしていいんだからね?」

男「それだけはやめてください。精神が持ちません」

女「むぅ。なんで姉妹ちゃんたちはお泊りなのよ。半日パパじゃなかったの?」

男「パパになったつもりはない。……ないはずだったんだけどな」

男「さっき親の寝室で陰謀と策略を感じさせるメモ用紙とセットに姉妹の着替えがそれぞれ数日分見つかってな。これ」

女「男君のお母さん、完全に姉妹ちゃんを数泊させる気満々だね。どれどれ」

『知人さんと旅行に行ってくるから姉妹ちゃんと仲良くお留守番おねがいね。 p.s 女ちゃんがいるとわ・か・ふ・う・ふ はぁと』

男「文面に殺意しか湧かない」

女「やだぁーもーお義母様ったらー」

男「俺も嫌だから帰ってくれ。子供が五人もいるとさすがに手が回らない」

女「むっ、私も来春から男君と同じ大学に通えるけっこうな大人なんですけどお」

男「成人してから大人を主張しような。お前に何かがあったらお前の親父さんが怖いんだよ」

女「お父さんが怒るような大人なことを私にしてくれるの?」

三女「はるのにほい!」

四女「めすのかほり!」

男「どいつもこいつも脳内で来春しやがって! 泊まってもいいけど寝場所は俺と別室が絶対の必須条件だからな!」

女「男君ありがとう大好き!」

男「そうかい。ありがとうな……はぁ」




次女「……おふろ」

男「均等な人数で組み分けするぞ」

三女「あたちたちがちょこにたてば!」

四女「どこであろうとしぇんじょうに!」

男「じゃあ、お前らはバラす」

双子『やー!』

次女「……ねえねさま……その……」

長女「なあに?」

次女「ひ、ひひひひっちょにひゃっちゃきちゃちゃい!」

男「舌足らずな上に噛んでるせいで何一つ原型を留めてない」

長女「いいですよ」ナデナデ

次女「えへへ」デレデレ

男(次女は常にジト目だけど笑えば可愛いんだよなぁ……)

女「でもどうしよう男君」

男「なにが?」

女「長女ちゃん次女ちゃん。双子ちゃん。私と男君でグループ三つもできちゃった」

男「四人まとめて面倒見てやるからお前は家に帰れ。この人数で平等に分割つったら三人ずつに決まってんだろ阿呆が」

三女「おねえちゃんはあたちたちといっちょ?」

四女「それともおうち?」

女「帰りたくないから双子ちゃんと一緒に入るね」

双子『わーい!』

男「そうなると俺とお前らか」

長女「ふつつかものですがよろしくおねがいします」

次女「……おてやわらかに」

男「なんか引っかかる言い方」

女「男君」

男「なにか?」

女「もちろん無いとは思ってるけど、少しでもやましいことを考えたら」

男「お決まりの台詞かよ。通報や警察なんて――」

女「私と一緒のベッドで寝てもらうからね」

男「変な気を起こさないことを誓わさせていただきます」

女「私は着替えとお夕飯するから男君たち先に入ってていいよ」

男「風呂の準備しておくから着替え取ってこいよ。客人に料理作らせるなんて」

女「いいからいっから。だよね、双子ちゃん?」

双子『さーいえっさーっ!』

男「……じゃあ、任せるわ」

女「腕に寄りをかけるから期待して待ってねね!」




「……ねーねさま」

「なあにじじょちゃん?」

「……ここ、きもちーですか?」

「んっ、じじょちゃんのさわってるところはぜんぶきもちいいでしゅよ」

「……よかった」

「いつっ!」

「……だいじょーぶですか?!」

「えへへ、ちょっとはいっちゃった」

「……ふなれですみません」

「ううん、だいじょうぶだからつづけてください」

「……むずむずしないですか?」

「えっとね……も、もうちょっとしたが、んんっ」

「……ここですね」

「そこ……きもちいいです……」

「……あのね、ねーねさま」

「うん」

「……わたし、ねーねさまといっしょになれてよかった」

「わたしもですよ。わたしもじじょちゃんといっしょになれて――」

男「消え去れ煩悩!!」バシャーンッ

長女「ひっ?!」ビクッ

次女「?!」

男「はぁはぁ」

長女「お、おにいさま? どうなされましたか?」

男「姉妹の和気藹々としたシャンプー如きで理性を見失うところだった」

長女「?」

男「意識しないように目を閉じたのが逆に仇となったわ!」

次女「……どーゆーことですか?」

長女「わたしにもわからないです……」

男「理解できれば引かれるだろうけどその年齢で理解できたら俺も引く」

三女『ちぇっ』

四女『しゃんぷーでしたね』

男「?!」

長女「双子ちゃんですか?」

三女『ねえねちゃま、ねねうえ』

四女『おしょくじのじゅんびがととのいました』

次女「……あたたまったらすぐでる」

双子『りょーかいです!』タッタッタッ

男「あいつらは再教育が必要かもしれないな。一般的な意味での」

長女「おにいさま」

男「どうした?」

長女「おねえさまのごはんはおいしいですか?」

男「そんなに何回も食べた記憶はないけど、不味いと思ったことはないな」

次女「……おねーちゃんのてりょーり」

男「期待はしていいと思う。女の母親もそこらの料亭に退けを取らない腕前だし食事に関しては恵まれた家庭だし」

次女「……ほー」

長女「おにいさまはしあわせですね」

男「女の母親の話だから幸せ者は女だろ。我が家の絶品は鯖缶と乾燥わかめだ」

長女「ちがいます。おりょうをりつくってくださるおねえさまとなかがよくてです」

男「作ってもらうのなんて極々稀だぞ? そんなしょっちゅうお世話になってるわけじゃない」

長女「おねえさまのことすきですか?」

男「ませたことをストレートな訊き方しやがって」

次女「……きらい?」

男「嫌いではない。嫌いではないんが……ただ、俺がお前らくらいのときに色々あってな。それ以来一緒にいると時々息苦しくなる」

長女「息苦しくなる……ふかい……」

次女「……おとな」

男「ああもう! 恥ずかしいこと言わせんな! 温まったら上がるから早く湯船入れ!」

長女「はい」

次女「……はい」




女「……」

『おねえさまのことすきですか?』

女「……」ピクッ

『ストレートな訊き方しやがって』

『……きらい?』

女「……」ソワソワ

『嫌いではない』

女「……」ピク

『嫌いではないんが……ただ、俺がお前らくらいのときに色々あってな。それ以来一緒にいると時々息苦しくなる』

女「……」

女「…………」

三女「ねぇね? おふろはまだでちゅよ?」

女「っ」ビクッ

四女「ごはんよりしゃきにおふろ?」

女「男君たちが遅いから声かけようとね。もう上がるみたいだからむこうで待ってようか」

双子『さーいえっさーっ』

女「しー」

三女「しー」

四女「しー」




長女「おゆうはんおいしかったです」

女「お粗末さまでした」

三女「ねぇねおふろ」

四女「おふろー」

女「はいはい。でも洗い物終わってからね」

男「女はご飯作ってくれたんだし、俺が洗っとくよ」

女「いいよ。私がするから男君はゆっくりしてて」

男「皿洗いくらいは」

女「まぁまぁ、お任せください」

長女「おにいさまのおてつだいはおまかせください」

次女「……おなじく」

男「……だとよ」

女「でも長女ちゃんも次女ちゃんも身長届いてないよ?」

長女「じじょちゃん!」

次女「……はいっ」ノビ

長女「とぅっ……よいしょ」ヨジヨジ

次女「……かんぺき」

女「なんだかトーテムポール思い出すね」

男「長女の足を次女の肩に乗せて……確かに流し場に手は届いてるが重くないか?」

次女「……おはしよりもかるい」

男「そ、そうか」

長女「これならおさらだってあらえますよ。おうちではいつでもこれでやってます」

女「なんか不安だなあ……」

男「2人がやる気なんだからやらせてやればいいだろ。それに俺だって姉妹が来てから何もしてないんだから女は片付けを任せて風呂行けばいいんだよ」

三女「ねぇね。おふろはいりまちゅよ」

四女「ましゅよー」

男「ほら、双子も呼んでるぞ」

女「うーん。怪我しないように気を付けてね」

男「おう。行け行け」

女「そうだ。持ってきた着替えが二階の男くんの部屋にあるから、後で脱衣場に置いてくれると嬉しいなあなんて」

男「洗い終わったら籠の中に入れておくぞ」

女「お願いね。よし、姉妹ちゃんお風呂に行こう」

双子『おふろー!』




三女「ゆきがっちぇんのはんちぇいかいでちゅ!」バシャッ

四女「はんしぇいかい!」バシャンッ

女「こらこら。湯船の中で急に立ち上がらないの」ゴシゴシ

三女「……」チャプ

四女「……」トプ

女「……」

三女「はいいんをのべよ!」

四女「はいいんはねねうえからししぇんをはじゅしたことでしゅ!」

三女「ちょのとおり!」

四女「こんごのたいしゃくとしては――」

女「……はぁ」ゴシゴシ…

女(苦手意識かぁ……)

女(少しでも男君が楽できるようにお手伝いしてきたつもりだったんだけどなあ)

女(息苦しくなるってどっちの意味なんだろ……でも時々だからいい意味ではないんだろうなぁ……)

女(やだなあ……男君に嫌われたくないけど仕方ないのかなあ……)

「――っ――」

女(でも決めたんだから頑張らないと)

「――ねぇ――ね――」

女(最後まで男君に――)

「ねぇね!」

女「ひゃい?! ななななに?」

三女「だいじょうぶでちゅか?」

四女「ぼーっとしてたでしゅよ」

女「そ、そう? そんなにぼーっとしてた?」

三女「なんかいよんでもはんのうちなかったでちゅ」

四女「のぼしぇた?」

女「ううん。ちょっと考え事。心配してくてありがとうね」ゴシゴシ

三女「そうでちたか」

女「呼んでたのはご用事か何か?」

四女「でしゅでしゅ。ねぇねにしつもんいいでしゅか?」

女「質問? いいけど答えられる範囲でお願いね」

四女「これはしつもんしていいはんい?」

三女「たぶんゆるちゃれる」

四女「うん。あのね、ねぇね。ねぇねのしぇなかのきじゅあとはなんでしゅか?」

三女「ちいちゃなきぢゅもありまちゅ」

女「あー、これかー」

三女「ごくひじょうほう?」

四女「しゃいこうきみつ?」

女「うーん……教えてもいいんだけど誰にも言わないって約束してもらってもいい?」

四女「あんぽり!」

三女「へいわじょうやく!」

女「じゃあ教えてあげる。この傷は男君と守り守られした証なんだ」

三女「まもり?」

四女「まもられ?」

女「ようするに――」




長女「ろん」

次女「……むぅ」

長女「ばいまんです」

次女「……と、とんじゃう」

男「何してんのお前ら」

長女「のうないまーじゃん?」

次女「……ねーねさまにかてたことない」

長女「あいてがもっていそうなはいをすてるのがこつですよ」

男「それゲームとして成立しないだろ」

次女「……どらもかみあわない」

長女「どらにじゅうろくがいままでのさいこうです」

男「もうなんでもありだな。理不尽じゃない遊びがもっと他にもあるだろ」

長女「でもおにいさまのおへや」キョロキョロ

次女「……むずかしーほんばかり」キョロキョロ

男「まあな。読書はさほど苦にならないし」

長女「ごしゅみはどくしょですか?」

男「趣味とまではいかないかなあ。本を読んでいなければリビングでテレビを見るくらいで……無趣味だったのか俺は」

次女「……つまらない」

男「俺は満足してるからいいんだよ」

次女「……むぅ」

ドタドタドタッ

男「あがってきたか」

バァン!

三女「おふろあがり!」ピョン

四女「ゆでたて!」ダキッ

男「おわっ?!」

三女「おはだちゅやちゅやでちゅ」

四女「たまごはだ!」

長女「おかえりなさい」

次女「……ぷにぷに」

四女「うぬ。ねねうえはほっぺたがいいのでちゅね」

男「ついつまみたくなる気持ちは分かる。……あれ? そういや何か忘れてる気が」

女「あの……男くん……」

男「おう、女も風呂あがって、おまっ!? なんでちっこいタオルなんかで体隠してんだよ?! バスタオルあっただろ?!」

女「バスタオルは二枚しかなかったから双子ちゃんに譲ってあげたの。それよりも頼んでおいた着替えがどこにも見当たらなかったんだけど」

男「あー……すまん、失念してた」

女「もう。次からは気を付けてね」

三女「けいかくてきはんこう!」

四女「かんじぇんはんじゃい!」

男「お前らは黙ってろ」

女「私はそれでもいいんですけれどもね。男君の上着テキトーに借りるよ?」

男「持ってきたんじゃないのか?」

女「帰るときに荷物が多いと面倒だから下着だけにしたんだ。どこにある?」

男「その箪笥の下から二番目。好きなの選んで……どうした?」

女「女の子のお着替えに興味あるならそのまま見ててもいいけど」

男「ばっ?! んなわけないだろ!!」バッ

三女「はるのにほい!」

四女「めすのかほり!」

男「だから黙ってろ!」

女「ないのも問題な気がするけど……これにしよっと」ガサゴソ

女「んっしょ。ねぇねぇ男君。似合ってる?」

男「いいんじゃない? 悪くない」

女「……」

男「不満そうな顔してどうした? 俺の服が嫌ならお家に帰っていいぞ?」

女「べつに男モノだからいいんだけどね」ムス

男「なにが?」

女「なんでもないです! で、みんなの寝る場所どうしようか?」

男「姉妹の寝場所は親のベッドにしてもらう予定。二つ寄せれば四人並べても平気だろ」

女「姉妹ちゃんたちはそれでいいかもしれないけど、私の寝場所がないよ」

男「それは屋根を伝って自分の部屋で」

女「雪が降り積もってるのに躊躇わずに私の部屋を指差したね」

男「梅雨真っ只中でも屋根から飛び込んできたお前なら造作ないかと思って」

女「雪は足元が滑って危ないから無理です。どうする? お風呂と同じようにまた平等に組み分けるとか」

男「いや、それは無理だな」

女「無理なの?」

男「それ」

女「ん?」クル

姉妹『……』ギュー

女「……岩陰のだんごろ虫ってこんな風に集まってたよね」

男「四人揃って布団に入るのが姉妹の御希望らしい」

長女「よにんでねれますでしょうか?」

四女「おねえちゃんたちといっしょじゃないとやー」

男「お前らの要望は叶えるから安心しろ」

長女「ふわぁ……」

四女「ねえねしゃま、ねむいでしゅか?」

長女「ねむいです」クシクシ

女「姉妹ちゃんはもう寝る時間なのかな。準備だけでもしてあげる?」

男「そうだな。大人二人のベッドなら少し詰めれば女も混ざれるスペースも確保できるかもしれない」

女「見てみないことにはどうとも言えないけど、一人分がよっぽど狭くなければたぶん」

男「じゃ、ちょっくら寄せてくるから待ってろ」

女「私がしてくるよ」

男「それくらい俺一人でもできるっての。女は意識半分の姉妹がちゃんと寝付くまで相手してやってくれればいいから」

女「はいはい。私が寝かせますよーだ」

男「なんで不機嫌なんだよ」

女「べつにー」

男「意味が分からない……」




男「んん……」ゴロ


ガサガサ

『おんなちゃーん! まってよー!』

『おそいよー! そんなちんたらしてるとおいていっちゃうぞー!』

『おいていかないでよー! はっぱやえだがじゃまでぜんぜんすすめないんだよ!』

『わたしさきにいってるからね! がんばっておいついてね!』

『だめだって! まってよ!』

『いやですー! わたしよりおそかったらばつげーむだからね!』


男「うぅ……ん」


ガサガサ パキパキ

『むりだって!』

『おとこのこなのによわむしなんだから』

『おんなちゃん!』

『しかたないなー! じゃあ、すこしだけまってあげるよ!』

『おんなちゃん!』

『どうしたの? まってあげてるのになんでおとこくんもとまるのよ?』

パキパキ ボキン

『おんなちゃんこっちきて!』

『やーよ! せっかくここまできたんだからおとこくんがはやくきてよ』

『おんなちゃんうしろ!!』

『うしろ? うしろが――』

ボキリ

『くま……さん?』

『おんなちゃあああん!!』

ガスッ



――グチャ

男「っ!」ガバッ

男「はぁはぁっ……!」

男「……またあんときの夢かよ。もう飽きてんだよちくしょう」

男「同じネタばかりの天丼は流行らないってのに。忘れたころに見せやがって……」

男「明日も姉妹の面倒見なきゃいけないんだ。寝よう」

男「……」

男「…………」

男「………………」

男「」

男「無理だから。簡単には寝れないから。トラウマ見せられた直後に安眠できるやつなんかいるわけないだろ常識的に考えて」

コンコン

男「……」

コンコン

『男君、まだ起きてる?』

男「寝てる」

『よかった。夜這えるね』

男「その安堵の仕方はおかしいよな?」

ガチャ

女「やっぱり起きてた。一緒に寝てもいい?」

男「別室で寝るのを条件にしたんだが」

女「お風呂で変な気を起こした男君への罰です。えへへ、お邪魔しまーす」

男「……手は出すなよ」

女「それ男君が言う側なんだ。私は男君が手とかを出してくれるまで気長に待ってるつもりだもん」

男「とか?」

女「とか」

男「俺からはない。絶対にない。断じてない」

女「そこまで言わなくてもいいじゃない。私はいつでも準備出来てるよ」ムフスン

男「心構えは自由だけど俺は寝る」

女「据え膳食わぬは男の恥なのに? チャンスなのに?」

男「いいから女も寝ろ。明日も姉妹の相手するのに体力が持たないぞ」

女「男君、手を繋ぎたいです」

男「寝ればいいと思うよ」

女「反対側に行ってもいいでしょうか?」

男「寝ればいいと思うよ」

女「ありがとうございます」イソイソ

ボフン

女「男君の手はっけーん。ひゃー冷たい」ムギュ

女「お手てのサンドイッチ!」

男「指を絡ませるな。手を重ねるな」

女「ぬくいでしょ。さっきまで姉妹ちゃんに暖めてもらってたんだ」

男「あのさ」

女「なあに?」

男「逐一俺のすること為すことに手を出そうとするのやめてくれないか? 俺は這ってでしか歩けないガキとは違うんだ」

女「私は男君をそんな風に見たことは一度もないよ」

男「なら尚更だ。女にはもどかしいかもしれないが出来る範囲のことを自分の力でしたいんだから手出しはしないでくれ……なんて恥ずかしい頼みごとをさせないでくれ」

女「……ごめんなさい」

男「女が手伝ってくれるのは嬉しいさ。心の底から感謝し尽くしても足りないくらいの恩は女から受けていると思ってる」

男「ただ、度が過ぎてるときが……あるよな?」

女「お節介だったってこと?」

男「そう感じることも多々ある」

女「私は男君に」

男「女はどうして俺の家に来るんだ? お節介しに来てるのか?」

女「男君と一緒に居たいから」

男「だったら金輪際余計な手出しをしないって約束してくれ。できないなら」

女「約束します」

男「……破ったら二度と俺の家に来なくていいからな」

女「……はい」

男「それと姉妹が帰る日に俺の介錯役も辞めてくれていい」

女「それって」

男「寝る。寝ろ」

女「男君……」

男「明日は早いぞ」

女「……おやすみなさい」

男「ん」




『とんでもないことをきいてちまったでちゅ』

『うえにほうこくしゅる?』

『いや、これはあたちたちだけでかいけちゅちゅべきもんだいでちゅ』

『でも』

『あたちはちんようちゅるにあたいちないでちゅか?』

『……おねえちゃんをしんじましゅ』

『うむ。ではやかんえんちゅうをちゅぢゅける』

『さーいえっさーっ』

『しー』

『しー』

『おひちゃまがでるまでにかわまでをちゃんおうふくでちゅよ』

『ひえー』

『それまでにおふとんにもどれなかったらねえねちゃまからのおちぇっきょうでちゅ』

『ごほうびでしゅね』

『うむ、ありがたい』

『よろこばしい』

『ではしゅっぱちゅ』

『さーいえっさーっ』

『しー』

『しー』




『ふたごちゃんはいきましたか?』

『……やかんえんしゅうに』

『ふふ、そうですか。こまりものですね』

『……おいかけますか?』

『わたしたちはねちゃいましょう。てつやしたらおせっきょうです。がつんといいます』

『……ぎょい』

『こんかいはせいざさせちゃいますよ』

『……うらやましい』ボソ

『ん? なにかいいましたか?』

『……なんでもありません』




次女「……おはようございます」

男「おはよう」

女「次女ちゃんおはよう。眠れた?」

次女「……ねむれました」

女「姉妹ちゃんで寝たら誰かベッドから落とされるんじゃないかなって心配だったんだよ」

次女「……おねーちゃんたちのほうがせまそー」

女「確かに男君の布団だと大人二人は狭かったかも」

男「大人は俺しかいないだろ」

女「まだ言いますか。姉妹ちゃんからすれば私も立派な大人です。次女ちゃん、そうだよね?」

次女「……ぴらふおいしそー」

女「……」

男「良かったじゃん。美味そうだってよ」

女「嬉しいけど嬉しくない。でも嬉しかったから嬉しい!」ムギュー

次女「……めぅ」

男「起きたのは次女だけか?」

次女「……ねーねさまたちも」

女「なら降りてくればいいのに。ご飯冷めちゃうよ」

男「朝っぱらから何しでかしてんだ双子は……」

次女「……よんでくる?」

女「そうだね。温かくて美味しいうちに食べてもらいたいし」

男「呼んでくるぞ」

女「わた……男君お願いします」

男「行ってくる」

次女「……わたしも」

トテトテトテトテ

男「いたいた」

三女「あちが……おおぅ……」カクカク

四女「けっこうきましゅね……」プルプル

男「産まれたての小鹿かよ」

三女「あ、にぃに」カクカク

四女「おはようごじゃいましゅ」プルプル

男「足を微振動させる新しい遊びか?」

三女「ちびれてるだけで……おおぅ……」

四女「くしぇになりしょー」

男「えー」

次女「……ねーねさまは?」

三女「ねえねちゃまはもうちゅこちおふとんでぬくぬくちたいといっていまちた」

次女「……おこしてくる」

三女「おこちゅだけでちゅよ?」

四女「しょいねきんし」

次女「……むぅ」

男「長女は起きるまでそっとしておいてあげればいいさ。女のご飯がとっくに出来上がってるから早く朝飯を食っちまえよ」

四女「りょうかいでしゅ」

三女「ねねうえ、ちょっちにかいだんはないでちゅよ」ガシ

次女「うーむーうー」

男「今日は姉妹にも夕方の買い物に付き合ってもらう予定だから、よろしくな」

双子『さーいえっさーっ!』

次女「……むぅ」




男「いいか双子。これから行く場所は間違いなくお前らがたぎる構造をしてるが、絶対に騒ぐんじゃねえぞ」テクテク

長女「ほかのおきゃくさまにめいわくをかけたらおせっきょうですからね」トテトテ

双子『さーいえっさーっ!』

女「男君男君」チョンチョン

男「どうした? 他に買うものでも出てきたか?」

女「ううん。男君と手を繋ぎたいです」

長女「わ、わたしもおにいさまとおててつなぎたいです!」

男「不平等になるから繋ぐのは無しな」

女「じゃあ腕組む」

男「腕組んだら長女が歩きづらくなるだろ」

女「左手は長女ちゃんにあげるね」

長女「わたしもうでくみたいです」ピョンピョン

女「長女ちゃんにはまだ無理だよ。うえへへ、男君の右腕ー」ギュー

男「恥ずかしいから寄るな」

女「くっつかないと組めないんですもん。こんなことできるのあと少しだけなんだからいいでしょ」

男「よくはないけどな」

長女「おにいさまのおててひやっこいです。りょうてであっためちゃいます」

四女「にぃにもてもて」

男「からかうな」

三女「ねえどんなきもち?」

男「双子は家に帰ったら説教な」

三女「ひゃー」

四女「やー」


次女「ねーねさまのおててねーねさまのおててねーねさまの――」ギリリ




長女「ほわぁー……」

次女「……ひろい」

四女「こんなにひろいしゅーぱーはじめて」

女「ここはスーパーって言わないんだよ。さあ、なんでしょうか?」

四女「しゅーぱーよりしゅごいおみしぇ」

三女「うるとら!」

女「惜しい!」

男「微塵も惜しくねえから。デパートだよ。遊んでないでさっさと買い物済ませて帰るぞ」

姉妹『はーい』

女「もうちょっと遊び心があってもいいと思うんだけどなあ」トテトテ




次女「……わたぱち」

次女「……ねるね」

次女「……びすこ」

次女「……」ソワソワ

三女「なにちてるでちゅか?」

四女「ねねうえこんなところにいた」

次女「っ!?」ビクンッ

三女「うおっ」ビクッ

四女「うひゃっ! おー、びっくりしたねねうえにびっくり」

次女「……おどろかせないで」

三女「ねねうえがおかちにむちゅうになってたのがわるい」

四女「こえかけただけだもん」

次女「……ねーねさまといっしょじゃなかったの?」

四女「にぃにに『じじょといっしょにまってろ』って、いわれました」

次女「……そう」

三女「ほほう。ねねうえはかわいらちいでちゅね。このおかちがちゅきなんでちゅか?」

次女「……べ、べつにすきってわけじゃ」

四女「ねねうえにこれあげる」

次女「……ぺろぺろきゃんでぃー?」

三女「うくっ」プルプル

次女「……どうしたの?」

四女「ねねうえ。しゅごくにあってましゅ」

次女「……にあって」

三女「くくくっだめ! わらいが、あはははは!!」

次女「……そーゆーこと」ヒクッ

四女「ねねうえ、ふたごのいもうとになりましゅか? とてもよくしてあげましゅよ」

三女「ふぅー、ねねうえはあたちたちよりもかわいいでちゅからね。いまからでもおちゅくな――」

ガキンッ カランカラン

三女「あぶないあぶない。いきなりくないをなげるとはとんだおうぼうでちゅね」ニヤニヤ

四女「おみしぇのなかでしゃわぐとねえねしゃまにおこられちゃいましゅよ?」ニヤニヤ

次女「……かってあげます」

三女「ぺろぺろきゃんでぃーを?」ニヤニヤ

四女「にぃにからおかねをわたしゃれてるのでかってあげましょうか?」ニヤニヤ

次女「……」ピキ

三女「おみちぇでのあらちょいはねえねちゃまからきんちちゃれてるゆえ」

四女「てあらいまねはげんきんで」

次女「……よわむし」

三女「よわむ……ほう」ピク

次女「……ゆきがっせんでまけたのがそんなにくやしかった?」

三女「あれはておいのにぃにがいたからてかげんをちて」

次女「……じしょうそるじゃーがいいわけ」プクク

三女「いってくれまちゅね」ピキ

四女「お、おねえちゃん? からかうだけっておはなしだったよね?」

三女「ねねうえ。かってやりまちゅよ」

次女「……ぺろぺろきゃんでぃーを?」

三女「けんかをでちゅ」

次女「……ばつげーむ」

三女「まけたほうがぺろぺろきゃんでぃーをかう。いいでちゅね?」

次女「……いろんなし」

四女「あわわわわ」アセアセ

続きは、可能なら夜中で無理ならまた明日

静かなのは黙読派が多いだけだと信じてる

好きだよこういうの
幼馴染とちびっ子が同時にでてるのがいいね



姉妹の会話だらけのとこは読み難くてたまに飛ばすけど読んでるよ




三女「はぁはぁ……よんじょ、ねねうえはどこでちゅか?」

四女「ふぅふぅ……みうしないました。しゅっごくふりでしゅ」

三女「むぅ、これじゃゆきがっちぇんのにのまいで――」

四女「おねえちゃん! うえ!」

三女「なっ?!」

四女「しぇいやっ!!」

バシンッ ベチッ

四女「だいじょうぶでしゅか!?」

三女「たちゅかったでちゅ。おんにきるでちゅよ。なげてきたのはこんにゃくでちたか」

四女「ふってもたたいてもおれないくじょうねぎはしんらいしぇいがたかいでしゅ」

三女「『ぶきがなければげんちちょうたちゅ』は、ちゃばいばるのきほんでちゅ。あたちもなにかえものをみちゅけなければ」

四女「いまはへたにうごかないほうが。ねねうえがどこにいるかわからないでしゅ」

三女「でもこのままとどまればぼうちぇんいっぽうで、ねねうえにちゃれるがままでちゅよ」

四女「ゆうきだしゅ?」

三女「よんじょにこうほうをまかちぇるでちゅ。いっきにはちりぬけまちゅよ」

四女「りょうかい!」

三女「ちぇいや!」ダッ

四女「しゃーっ!」シュダッ

ベチンッ パチュッ トスッ ダシンッ バシュンッ ガチッ

三女「いったいいくちゅのぶきをもってるでちゅか!」

四女「あめあられ! ていっ! やっ! はあっ!!」

ベシッ ガツッ ボコォッ

四女「おねえちゃん! どこにむかってましゅか?!」

三女「なにもきめてないでちゅ! いいものをみちゅけるまであちはとめないでちゅよ!」

四女「りょーかい! ひっ?!」スザサッ

ダスッ

四女「つめかえおみしょ……っ!」ゴクリ

三女「ちかもだちいりのおみちょでちゅね。ねねうえもちょれだけほんきだということでちゅ」

四女「もしこれがあたっていたら……」

三女「かんがえるな、よんじょ。あたちたちがあたまをつかうべきはかていではなくかていでちゅ」

四女「かていじゃなくてかていでしゅか?」

三女「うぬ」

四女「……どのかてい?」

三女「かていはかていでちゅ」

四女「?」

三女「ちゃて、ここまでくればもうだいじょうぶでちゅね。ねねうえもてをやちゅめたみたいでちゅ」

四女「ここはしぇのたかいたながないでしゅね」

三女「うむ。おちゃかなうりばでちゅからね。うまくたちまわればねねうえのはいごにまわりこめるでちゅ」

四女「ものかげようちゅうい」

三女「つねにあたりのけいかいをおこたるでないでちゅよ」

四女「さーいえっさーっ!」




女「男君。長女ちゃんが壊れちゃった」

男「何しやがった」

女「私はね。何もしてないの。ただ道案内しただけだから悪くないの」

男「電源入れたらパソコンが動かなくなったとか言い訳するタチか?」

女「それはするけどそれとは違うよ。私、悪くないよ」

男「自分が悪いと思ってるやつは総じて身の潔白を主張するもんだ。大方お菓子に目が眩んで駄々でもこね始めたとかだろ」

女「それだと冤罪が量産されちゃうよ。そうじゃなくてね。こっち」

男「そっちってなにがあ」

長女「だーじりん! にるぎり! あっ、てぃんぶらのふらわりぶろーくんおれんじぺこふぁにんぐす! こっちにはぬわらえりやのふらわりーおれんじぺこが! ここからはおーたむなるですね! これはだすとですけど、みためからしてこうひんしつのかのうせいが! こんなりょうしつなはっぱをならべてくださるだなんてかんむりょうです!!」

女「ずっとこんな調子なの」

男「……呪文?」

女「私にもさっぱり。たぶん紅茶の名前だと思うけど……どうなんだろうね」

長女「こんなに! こおんなにすてきなはっぱがたくさんあるだなんて! しあわせです! てんごくです! ここがわたしのとうげんきょうなんですね!!!」

長女「おねえさま!」クルッ

女「はい」

長女「すてきなばしょにあんないしてくださりまして、ほんとうのほんとうにありがとうございます! わたくしちょうじょは、このごおんをいっしょうわすれません!!」キラキラ

女「男君、長女ちゃんが眩しいよ」

男「安易に要望に応えた女の責任だからな。帰るまでにちゃんと引き剥がせよ」

女「うーん……」

長女「はぁ~……ここにすみたいです……」ウットリ

女「自信無いや……」




四女「おね……ちゃん……」

三女「よんじょ! ちっかりちゅるでちゅ! めをとじちゃだめでちゅ!」

四女「はぁはぁ……わ、わた……がんばれ、かふっ!」

三女「がんばったでちゅよ! いままでにないくらいにがんばってたでちゅ!」

四女「えへへ、おねえちゃ……ほめられ……はじめっげほげほっ!」

三女「よんじょ! わかっかたから! もうちゃべらなくていいでちゅから!」

四女「しゃ……まで……ね」

三女「な、なんでちゅか?」ポロポロ

四女「しゃいごまで……まもれなくて……ごめ……しゃい」

三女「まもれたでちゅよ! よんじょはちゃんとあたちをまもったでちゅ! だから!」

四女「よかったぁ……」ニコ

三女「よんじょ……」

四女「はぁはぁ、ありが……ね。おね……ちゃ――」カク

三女「……よんじょ? よんじょ?」ユサユサ

四女「……」

三女「よんじょ! よんじょおお!!」

三女「えぐっ……よん、じょお……」

次女「ふっ」

三女「っ!」ブンッ

ガキンッ ガギギギ

三女「よくもよんじょを! ぢぇったいにゆるちゃない!」

次女「……いのちをすててまでみかたをたすけるだなんて……どーかしてる」

三女「おかちくない! からだをはってなかまをまもることはだれよりもゆうかんでなきゃできないことでちゅ! ほこりあるへいちがちゅることでちゅ!」

次女「……しょーし」

三女「ねねうえであろうともよんじょへのぶじょくはゆるちゃない!」

ガキッ ガチガチガチ

次女「……いつまでそのにもつにかたてをつかう?」

三女「よんじょはにもちゅじゃない! あたちのたいちぇちゅななかまだ!」

次女「……なかま……りかいふのー……」

三女「うおおおおおおっ!!」

グンッ

次女「なっ?!」ヨロ

三女「ちゅきありい!」ブゥンッ

ズパッ

次女「……ごぼうがっ!?」

三女「ちゃちゅがよんじょのえらんだくじょうねぎ。きれあじはほんものでちゅね」

次女「くっ」ギリッ

次女「……まだぶきはある!」シュシュシュッ

三女「ふぅっ」シュバッ

ズダダダダッ

三女「そんなこおったいかごときであたちをちとめようだなんて、なめないでもらいたいでちゅ」

次女「……くっ」

三女「たまぎれならばわたちのばんでちゅよ! はああああ!!」ダッ

次女「……おわり……ですね」

三女「うおおおおおっ!!」

次女「……ここまでわたしをおいつめるとは――」

ドスッ

次女「あっぱれさんじょ」

ガクッ

次女「……ですが」

三女「あ……が……」

次女「……つめのあまさはやはりふたご」

三女「……にん……じん?」ガクガク

次女「……ぶきがなければげんちちょうたつ」

次女「……もちもののすべてをなげてるとおもったら――」

三女「かふっ」ガク

次女「おおまちがいですよ?」

三女「もうてん……でちた……」

三女「ふたごでもかなわないとは、さすがは……ねねうえ……」フラッ

ドサッ

次女「……ふ、ふふ」

次女「ふふふはははははは!」

次女「はははははははははははは……ふぅ」

次女「……さんじょ、おかたづけ」ツンツン

三女「……」

次女「……おきて」ツンツン

次女「……さんじょ?」

三女「ちにんにくちなち」

四女「くちなしー」

次女「……」ヒクッ




男「ただいま」

長女「おかえりなさい」

女「おかえりー。時間かかりそうって言われたから先に帰ったけど、案外そうでもなかったね」

長女「ゆるしてもらえましたか?」

男「謝罪と散らかした品物を買わされただけで済んだ。汚い手法だけど『預かってる子なので』で、ゴリ押したら苦い顔しながら情けかけてくれたわ」

長女「預かってるのは事実だけど全面的に悪いのは目を離した私たちなわけで……優しい店長さんだったんだね」

男「運がよかった。はぁ……家出る前にだって散々に注意したのにな、な?」

次・三・四「「「ごめんなさい」」」ビクビク

女「委縮しちゃうまでこってり絞られちゃったか。あれ? 三女ちゃんが何か持ってる」

男「厳重注意喰らった後にレジに渦巻の飴を持っていってな。どうしても買いたかったらしい」

女「そんなに食べたかったんだ。三女ちゃんにぴったりだね。持ってる姿可愛いよ」ナデナデ

三女「くちゅ……じょく……」プルプル

次女「…………」

次女「……きゃんでぃーかして」

三女「ねねうえもなめたくなったでちゅか? はい」

次女「……ありがと」

次女「……ねーねさま」

長女「はい。なんでしょうか?」クルリ

次女「……かわいい?」

長女「かわいいですよ」ニコッ

次女「…………かわいいですか?」

長女「きゃんでぃーをもってるじじょちゃんはかわいいです」

次女「…………」シュン

長女「どうしました? げんきたりてないですよ? げんきになーれ」ナデナデ

次女「えへへ」デレデレ

女「はいはーい。お夕飯できましたよー」ゴトッ

男「鍋か」

女「寒い冬にはぴったりでしょ? お野菜もたっぷりだからカロテンビタミン豊富で風邪知らず」

長女「とりざらおまたせいたしました」

女「ありがとー!」ムギュー

長女「めうっ?!」

男「冷えた体を暖めさせてもらうか」

三女「よんじょよ。なべをかこっているときは」

四女「わかってましゅ。おねえちゃんでもようしゃしましぇん」

女「おっにくにくー」        長女「じじょちゃんはどれにします?」   四女「おねえちゃん! おしゃらかして」

男「食い意地はるなよ」      次女「……おやさいが」           三女「きがきいてまちゅね。はい」

女「そんなことしません」     長女「おっやさいは~はっくさいと~」   四女「おにくがいーい?」

男「毎度誰よりも先に肉を」   次女「……ながねぎも」           三女「うむ」

女「男君取り皿貸して!」     長女「ながねぎと、あっ」          四女「えい!」ドチャッ

男「俺のは俺でするから」    次女「……む」                三女「ちょれはこんぶでちゅよ……」

女「四女ちゃんそれお肉違う」  長女「よんじょちゃん。それだめです」  四女「あー、まちがえたー」

男「双子、雪の水煮食わすぞ」  次女「……ふたごはまってて」       三女「あたちまきぢょえでちゅかっ?!」

女「男君それただのお湯だよ」  長女「ふたごちゃんのもとりますよ」    四女「……ぷぅ」ムスッ

男「女は双子の皿やってくれ」  次女「……わたしはねえねさまのを」   三女「あたちのはじぶんでちまちゅ」

女「だってさ」            長女「とりっこにしますか?」        四女「じゃあ、わたしもー!」

男「また昆布引き抜かれるぞ」  次女「……ねえねさまどれがおすき?」 三女「ここいったいのおにくは!」

女「そのときはそのと、あ!」   長女「わたしはおにくが、ああっ?!」  四女「われらのりょーど! てーい!」ドチャッ

男・女『双子(ちゃん)!』      長・次『ふたごちゃん!』          双子『きゃー』





次女「……おふろ」

男「均等な人数で組み分けする」

三女「あたちたちがちょこにたてば」

四女「どこであろうと――」

男「冬の川は心身が引き締まって気持ちいいかもな。特に夜は」

双子『やー!』

女「昨日と同じペアで入る?」

男「それは姉妹に決めさせていいだろ」


三女「あたちはよんじょとにぃにといっちょがいいでちゅ」

四女「おなじく!」

長女「わたしはいいですけど、じじょちゃんもそれでいいですか?」

次女「……ねーねさまがいーのなら」

長女「きまりですね」

男「すんなり決定したな。昨日は先に俺が入ったから女が先でいいぞ」

女「お言葉に甘えて一番風呂いただきます。長女ちゃん次女ちゃんお風呂に行こう!」



「……どーですか?」

「んんっ、じょうずになりましたね」

「……ねーねさまのために」

「うれしいです。ありがとうじじょちゃ、ひゃっ?!」

「……てがすべりました」

「じじょちゃんったら」

「……ねーねさまのこことかがぬるぬるしてるせい」

「じじょちゃんがやさしくこするからで」

「……ものたりない?」

「もうちょっとだけつよく、んっ」

「……こう?」

「も……い」

「……なんでしょーか?」


「もうちょっとだけ……ちからいれてください」

「……ねーねさまあかくなって」

「じじょちゃんがいっしょうけんめいしてくれるのがうれしくてですよ」

「……わたしできもちよくなってくださいね」

「がんばってくれたら、わたしもあとでじじょちゃんのことをきもちよく――」

女「すとぉーっぷ!」

長女「ひっ?!」ビクッ

次女「?」

女「なんで?! なんでそうなるの?!」

長女「な、なにがですか?」

女「背中の洗いっこでなんでそんな会話になっちゃうの?!」


長女「なんでって……」

次女「……おかしかったですか?」

長女「わからないです……」

女「うう……わざとじゃないならいいんだけどね。なんか私だけ変なことかんがえてたみたいでゴニョゴニョ」ブクブク

三女『ちぇっ』

四女『しぇなかでしたね』

女「?!」

次女「……ふたご?」

三女『にぃににいわれてふくをとどけにきまちた』

四女『しぇんたっきのうえにおいておきましゅ』

女「ありがとうね。双子ちゃん」

四女『ごゆっくりー』タッタッタッ

女「お風呂揚がったら双子ちゃんとじっくりお話ししないと。今後の為に」

長女「そこくすぐったいですよ」キャッキャッ

次女「……ちゃんとうであげてください」ワシャワシャ


女(無邪気っていいなあ。男君と仲良くお風呂に入ったのはいつだっけ……)

長女「おねえさま。どうなされましたか?」

女「二人を見てて楽しそうだなって思ってね」

次女「……ねーねさまはたのしーい?」

長女「じじょちゃんがたのしいならたのしいですよ」

次女「……わたしはたのしーです」

長女「ならたのしいです」ニコニコ

次女「えへへ」デレデレ

女「双子ちゃんたちとはいつもお風呂には別々で入ってるの?」

長女「おうちのおふろですか? いつもよにんでいっしょにはいってますよ」

女「そうなんだ。姉妹ちゃんが全員入ると寿司詰めの押しくら饅頭になって大変でしょ。ぎゅうぎゅう詰めで」

次女「……ぱぱとままがはいっても」

長女「まだよゆうはありますよね」

女「あぁー……随分広いお風呂なんだね……」

長女「おねえさまのおふろはひろいですか?」


女「私のお家もちょうどこれくらい。男君と並んでお湯に浸かるとぎゅうぎゅうになるかな」

次女「……おにーちゃんとははいる?」

女「ううん。入らないよ。分かり易い例えで説明をしてあげようと」

長・次「「あー……」」

女「深い意味はないからね!」

長女「あのー、しつもんしてもおこりませんでしょうか?」

女「その質問にもよるなあ。『男君のどこが好きですか?』なら季節が変わるまで語れる自信あるけど」


長女「おにいさまのおうでがかたほうだけないのはなんでですか?」


次女「……それはままからきいたらだめって」

長女「じじょちゃんはきにならないのですね?」

次女「……なりますけど」

女「男君の腕か……」

長女「おにいさまのことなので、どうしてもしりたいんです」

女「私から聞いたことを誰にも言わないで秘密にできる?」


長女「できます」

女「私の背中の怪我を訊かないってことは、その話はたぶん双子ちゃんから教えてもらったってことだよね?」

長女「きいちゃいました」

女「どんな風に伝わったか分からないから念の為に説明してあげる。私の背中の傷は森のくまさんに引っかかれた傷。男君の右腕の肘から先がないのは乱暴な熊さんに食べられたから」

次女「……じこではなくて?」

女「一種の事故のような気もするけどね。でも、相手は車や人じゃなくて熊さん。がおー」

長女「がおー」

女「可愛いっ!」ムギュー

長女「めぅっ?!」

次女「……あわついた」

女「ほんとだ。流さないと」

長女「んっしょ。どこでくまさんにおそわれたんですか?」

女「男君のお祖父ちゃん家の近くにある山だったかな。危ないから子供だけで立ち入っちゃいけないって決まりを破った途端にばったりとだったよ」

次女「……どーしておねーちゃんはとめなかったの?」


女「言う事を聞かなかったのは男君じゃなくて私の方。危ないことすると男君が私だけを見てくれるのが楽しくて嬉しくて」

女「それが癖になって、構ってもらいたくなる度にいつも危険なことしてた」

次女「……こえをかけていっしょにあそべば」

女「男君は人気者だからそこに住んでる子たちとすぐに仲良くなって、いつも私のこと放ったらかすんだもん。馴染めなかった私は遠くからただ見てるだけですっごく寂しいの」

長女「じじょちゃん。おねえさまもくまさんにおそわれるとしっていればむちゃしませんでしたよ。たぶん」

次女「……そうなの?」

女「うん。山に踏み入れば十中八九違わずもれなく襲われるって決まっていれば、そんな無謀な冒険はしなかったと思う。ただ気を引きたいだけだったから、もっと安全な危険に手を出してたかな」

長女「おにいさまがおねえさまにつめたいのはそのせいでしょうか?」

女「そうかもしれないね。不幸に突き落とした疫病神に付き纏われれば誰だっていい気分にはならないもん」

次女「……やくびょーがみ?」

女「私が忠告に素直に従っていれば怪我しなくて済んだんだもの。それに男君は腕がないことでもっと辛い思いをしてきたし。私は……立派な疫病神だよ」


長女「そうですか……」

次女「…………」

女「ごめんね。楽しいお風呂の時間なのになんかしんみりさせちゃったね。泡流して温まったら双子ちゃんと交代だよ」

長女「おねえさまはいまもおにいさまのことがすきですか?」

女「それはもちろん」


女「大好きだよ」




女「男君。姉妹ちゃんをもう寝させないと」

男「でもなんか取り込んでるみたいだし。いいだろ」

女「だめだよ。お世話を任されてるのは私たちなんだから」

男「じゃあ、あの姉妹の間に入って声かけてこいよ」


『ふたごちゃん。わたしはいますごくおこってます』

『はい』

『ほんきです。すごくほんきです。すごいです』

『わかりまちゅ』

『どうしておこっているかも……わかりますよね?』

『ごめんなしゃい』


男「どうせ布団に放り込んだところであの説教は続きそうだが?」

女「私たちがお風呂に入ってる間、男君がちゃんと双子ちゃんを見てなかったからだよ」ムス


男「問題視されるべきは俺の管理能力じゃなくて双子の行動力。俺は悪くない」

女「同罪です。はぁ……」



長女「できごころでもしていいこととわるいことがあります。けがをしなければなんでもゆるされる。そんなことをおしえてきたつもりはありません」

三女「はい。ねえねちゃまのおっちゃるとうりでちゅ」

長女「まず、よんじょちゃん。よんじょちゃんはなにをしたからおこられていますか?」

四女「ねえねしゃまのおぱんつかぶってました」

長女「それはただしいことでしゅか? おかしいことでしゅか」

四女「おかしいことでしゅ」

『頭がな』

『男君!』

長女「おかしいことまちがっていることをしてしまったときには、そのきもちをこめていうべきことばがあります」

四女「ほんとうにしゅみましぇんでした」

長女「はんせいしてますか?」

四女「してましゅ」


長女「もうにどとだれかのおぱんつかぶりませんか?」

四女「かぶりません」

長女「よんじょちゃんのおぱんつをかぶるのもだめですよ」

四女「ちかいましゅ」

長女「……はぁ。よんじょちゃんはゆるします。せいざを『して』いいです」

四女「ありがとうございましゅ」スッ

『おかしいね』

『頭がな』

長女「つぎ、さんじょちゃん」

三女「はい」

長女「さすがにわたしにもおこってゆるせるげんかいがきました」

三女「ちゅみまちぇんでちた」

長女「なにをしていましたか?」

三女「ねえねちゃまのおぱんちゅにかおりをちゅけてまちた」

長女「ぐたいてきにいってください」


三女「おぱんちゅにこんでまちた」

長女「なにとですか?」

三女「こうちゃでちゅ」

長女「それはだれのなんのこうちゃですか?」

三女「ねえねちゃまがかってもらったこうちゃでちゅ」

長女「りょうは?」

三女「ぢぇんぶ」

長女「さんじょちゃんはいっかげつかんせいざきんし。おせっきょうもおあずけにします」

三女「ちょんな!!」

四女「うわぁ……」

『うわぁ……』

『うわぁ……』

次女「……ねえねさま」

長女「なんでしゅか?」

次女「……それはあまりにもあんまりかと」

長女「わたしはおぱんつをおなべでぐつぐつにこまれて、それにおたのしみのこうちゃもだいなしにされたんですよ。これでもたりないくらいです」プイッ

次女「……だいなしにはしません」

長女「どういうことでしゅか?」

次女「……わたしがの」

長女「じじょちゃんもいっかげつかんせいざとおせっきょうをきんしします」

次女「?!」

『うわぁ……』

『うわぁ……』

次女「……わたしはまだなにもっ!」

長女「もんどうむようです」

次女「……うぅ」シュン

長女「でも、わたしもこわいおにさんではありません。ここまでされてもまだおほとけさまでがんばれそうなわたしがいます」

三女「!」ピクッ

次女「……ど、どうすれば?」

長女「ふたごちゃんはいつもおたがいをおもいやってうごいていますよね?」

四女「してましゅ! おねえちゃんもわたしもいつもして」

三女「よんじょ! いうなでちゅ!」

四女「へ?」

長女「いいことばですよね。なんてことばでしたっけ?」

四女「え? れんたいせきにんでしゅ?」

三女「あぁ……」

長女「よんじょちゃんもおねちゃんたちとおなじことをおなじだけがまんしますといえば、おねえちゃんたちへのばつもかるくしてあげます」

四女「そん……な……」

次女「……おにです」

三女「おにでちゅ……ぢゅうぶんにおにでちゅ……」

長女「そうですね……いっしゅうかんにへらしてあげましょう」

四女「おねえちゃん……」

三女「……よんじょがきめることでちゅ」

四女「ねねうえぇ……」

次女「……とわれているのはよんじょ」

四女「うぅ……えぅっ」ポロポロ

『かわいそう……』

『頭がな』

四女「わ、わたしは……」

四女「わたしはねえねしゃまにおこられなくなるのはいやでしゅ」グス

三女「……」

次女「……っ」

長女「わかりました。では」

四女「でも」

長女「でも?」

四女「おねえちゃんのおりょうりをとめなかったわたしが、わるくないはじゅがありましぇん。なにもしていないねねうえがおあじゅけしゃれていいはじゅがありましぇん」プルプルポロポロ

三女「よんじょ……」

四女「ばつはへらしゃなくていいでしゅ! わたしもおねえちゃんたちとおなじだけがまんしましゅ!」


三女「くっ」

次女「……はぁ」

四女「えぐっ……えうぅ……」ポロポロ

長女「よんじょちゃん」ギュ

四女「ひっ」ビクッ

長女「よんじょちゃんはとてもいいこですね」

四女「……ふぇ?」

長女「おねえちゃんはうれしいです」

四女「ねえねしゃま?」

長女「わたしはよんじょちゃんのやさしさとおもいやりをためしました。そしてよんじょちゃんはわたしがもとめるいじょうのこたえをかえしてくれました」

長女「よんじょちゃんとさんじょちゃんとじじょちゃんのばつはなしにします」

四女「!!」

長女「にげないでちゃんとじぶんのしたことにむきあえましたね。そのきもち、ゆうき、わすれちゃだめですよ。さんじょちゃんもおなじです。じじょちゃんも」

四女「……はい!」


三女「ねえねちゃま! ありがとうございまちゅ!」

次女「……ありがとーございます」

長女「ふふ、もうじかんもおそいですね。おうちならままにおこられてます。すぐにおふとんにはいりましょう」

姉妹『はい!』

トテトテトテトテ

……

タッタッタッタッ

ヨジヨジ

チャポッ

チャプッ

ゴクゴク

次女「……おいしい」

シュタッ

タッタッタッタッ


男「明日ちゃんと怒っておくか」

女「そうだね……」

とりあえず今日はここまでで寝る
読んでくれてる人がいたらありがとうおやすみ

見てますよ





『おんなちゃーん! あーそーぼー!』

『わたし、いまはおとこくんとあそんでるから』

『おんなちゃんはまたあのばけものとあそんでるんだって』

『えー。うでたべられちゃうのに?』

『くすくす』

『っ!! おとこくんはばけものじゃないよ!! うでだってわたしをたすけて――』

『おんなちゃん、いいよ。あそんできなよ』

『でも』

『おんなちゃんはぼくたちよりもばけもののほうがいいのか』

『おんなちゃんもばけものだったりして』

『わたしたちもおうでたべられちゃうの? こわーい』

『たべちゃうぞー!』

『あはははは』


『……ちがうもん』

『あそんできなよ。おんなちゃんもなかまはずれにされちゃうよ』

『わたしは』

『おんなちゃんはまだ『にんげん』なんだから。ほら』

『わかった。いってくる』

『……』


女「…………」

女「男君」

男「なんだ?」

女「ごめんね」

男「なにが?」

女「私のせいでこんなになって」

男「一人用のベッドにまたしても無理矢理潜り込んで俺の寝場所を減らしてることか?」

女「ううん。違う」


男「むしろそれを謝ってもらいたい」

女「それはべつにいいの……」

男「よくねえよ。俺が気にしてんだからさらりと流すんじゃねえ」

女「男君の右腕のこと。今までのこと」

男「それこそもうどうでもいいだろ。いくら謝ったところで俺の中ではとっくの昔に片付いてんだって言ってんじゃん。女はいつまで引き摺ってんだよ」

女「そうだよね。もう怒ってないんだよね」

男「っていうか一度も怒ったことないから」

女「姉妹ちゃんが帰るまであとどれくらい?」

男「知らない。そこまで紙に書いてなかったし」

女「そっか……分からないんだ……」

男「そのときが来たら便りなり電話なり何かしら事前に連絡が入るだろ。そのときは」

女「私はお役御免になるんだよね」

男「無給のアルバイトも終わりだ」

女「アルバイトやボランティアじゃないもん。……仕事じゃないもん」

男「そこらへんの感覚は女が好きに考えてくれていいが、ただ、その日で終わりだからな。全部」


女「……うん」

男「嘘はきらいだぞ」

女「約束するよ」

男「そ。じゃ、おやすみ」

女「おやすみなさい……」




三女「よいちょ。よいちょ」ゴロゴロ

四女「えいしゃ。ほいしゃ」ペタペタ

三女「よいちょ。よいちょ……ふぅ。けっこうかたちになってきまちたね」

四女「しゃしゅがおねえちゃん。おおきなゆきだまでしゅね」

三女「うむ。こんやはこれでできたゆきだるまをねねうえにみたててとっくんでちゅ」

四女「ちょうたいしゃくになりしょうでこわしゅのがもったいないでしゅ」

三女「ふふふ。じちんちゃくでちゅ。くんれんはなににおいてもいいものをちゅかわなければ、いいちからがちゅかないでちゅからね」

四女「できたあ!」

三女「よんじょはなにをちゅくって――」クルリ

四女「ちゅうとんち!」

三女「か、かまくらでちゅか……いいものをちゅくりまちたね……」

四女「じしんしゃく!」

三女「ひっちにちゅくったゆきだるまがはいりちょうなごうていで……ふふ、ふふふ」


四女「おかおこわいでしゅよ? だいじょうぶ?」

三女「たまたまちゅくるものがちがっただけでちゅからあたちもちょっとほんきをだちぇばあんなかまくらよりもちゅごいものちゅぐにちゅくれ」ブツブツ

四女「おねえちゃん?」

三女「なんでもないでちゅよ! ゆきだるまができたらちゅぐにくんれんをはじめまちゅ!」

四女「さーいえっさーっ!」

三女「ちゃて、ゆきだるまちゃんに」

四女「ゆきだるまちゃん?」

三女「ゆきだるまちゃん」

四女「ゆきだるましゃん?」

三女「ゆきだるまちゃん」

四女「?」

三女「ゆきだるまちゃんにあたまをのちぇて……」ズシ

四女「おおー!」

三女「かんちぇいでちゅ」

四女「あと、かみもはらないと」

三女「ちょうでちたね。はるでちゅよ、よんじょ」

四女「はい」ペタ

三女「これでかんちぇいでちゅね」

四女「みごとなねねうえになりました」

三女「『ねねうえ』と、かいたかみをはってるだけでちゅけどね」

四女「ねねうえでしゅ」

三女「ちかいにいれてなければけはいをかんじちゃちぇない。まちゃにねねうえでちゅ」

四女「つまりちょくしできない」

三女「じ、じちんちゃくだもん……」シュン

四女「あ、ゆきふってきた」

三女「あくてんこうにめぐまれまちたか。ちかいふりょうでよりじっちぇんてきなくんれんができちょうでちゅ」

四女「しゃいしょはどうしゅるの?」

三女「ねねうえがめのまえにいるとちまちゅ。ゆきだるまのまえにたって」

四女「たちました!」

三女「どうちまちゅか?」


四女「びょうしゃつしゃれましゅ」

三女「……まちがいないでちゅね。ちぇっていがわるかった。かえまちゅ」

四女「はい」

三女「ねねうえにはいごにまわられたときをちょうていちまちゅ」

四女「じしぇいのくがまにあわないでしゅ」

三女「……」

四女「……」

三女「ねねうえにくみふちぇられ」

四女「しょのじてんでしゅでにしんじょうになにかしゃしゃってましゅね」

三女「なにもできないじゃないでちゅか!!」

四女「おどろきでしゅ!」

三女「くんれんちゅらまともにちゃちぇてくれないなんてあんまりでちゅよ! ねねうえ!」

四女「ねねうえ……おしょろしいこ……」

三女「おくのてでちゅ。ねねうえのはいごにまわれたとちまちゅ」

四女「おおお! うしろをとった!」


三女「とりまちた。よんじょはどうちまちゅか?」

四女「じしぇいのくを」

三女「ちがいまちゅ! いまゆうりなんでちゅ!」

四女「しょうだった! かってるんだった!」

三女「ちゅがたをみたらあきらめたくなるのはわかりまちゅけど、もうちょっとがんばってくだちゃい」

四女「えっとね。うしろからだきついてうつぶしぇにおしたおしましゅ」

三女「うんうん」

四女「しょのときにねねうえはうらてでくないをにぎっていましゅので」

三女「ほうほう」

四女「しんじょうをえぐられてましゅ」

三女「……」

四女「おわり」

三女「おわった?! まけたんでちゅか?!」

四女「あといっぽでした」

三女「なにもできない……っ!! やりなおちまちゅ!」


四女「はい!」

三女「またゆきだるまのうちろにたってくだちゃい!」

四女「たちました!」

三女「ねねうえはくないをもっていないとちまちゅ!」

四女「はい!」

三女「だきちゅいて!」

四女「だきつきました!」

三女「ちょちて?!」

四女「うしろでにうでをくびにまわしゃれて」

三女「ちゅとっぷ。わかりまちた」

四女「なにが?」

三女「よんじょじゃかてないのがでちゅ」

四女「しょんな!?」

三女「あたちがおてほんみちぇまちゅからみててくだちゃい」

四女「さーいえっさーっ!」


三女「うちろからだきちゅきまちゅ」

四女「だきつきました!」

三女「……」

四女「……」

三女「…………」

四女「どうしました?」

三女「このねねうえ……ひととちてのあたたかみをかんじないでちゅ……」

四女「まあ、ゆきだるまでしゅから」

三女「ちょうだった! けはいがちょっくりだったから!!」

四女「しゃっかくしましゅよね」

三女「これはかてるきがちないでちゅ……」

四女「おねえちゃんもきづきましたか」

三女「いったいいちはあまりにもふりでちゅ。あたちたちはふたごなんでちゅから、くんれんもやっぱりにたいいちじゃないと」

四女「しょうでしゅね。ねねうえはかくうえでしゅ」

三女「どうちまちょうか」


四女「はしゃみうち? おとり?」

三女「ねねうえにちょんなこちょくなちゅだんはちゅうようちまちぇん。きゅうじょくんれんにちまちょう」

四女「きゅうじょ?」

三女「あたちがねねうえにおちたおちゃれてるとちまちゅ。そい!」ボシャ

三女「うひゃぅっ! ちゅめたい!」ピクピクン

四女「じゃあ、だるまたおしましゅね」

三女「たおち、え?」

四女「えい」ドン

三女「べうっ?!」ドシャッ

四女「おねえちゃんがねねうえにおしたおしゃれてましゅ! いまたしゅけましゅよ!!」

三女「なんでもいいでちゅからはやくたちゅけてくだちゃい! ちんじゃう! にちぇもののねねうえにころちゃれちゃう!!」ガクガクガタガタブルブル

四女「おねえちゃんのかおいろがきょうふでまっしゃおに!」

三女「ちゃむいんでちゅ! ゆきがふくのなかにっ! ちゃむいっ!!」

四女「おねえちゃん! ぶきのつららうけとって!」ブオンッ


ズドンッ

三女「ぃひっ?!」

四女「おお……もうしゅこしでおねえちゃんにしゃしゃるところでした……」

三女「よ、よんじょ! くんれんはおわりでちゅ! ここからあたちをたちゅけて!」ガクガクガタガタブルブル

四女「おねえちゃんのかおいろがしゃむしゃでまっしゃおに!」

三女「このふるえはきょうふでちゅよ?!」

四女「どっち?」

三女「もういいでちゅ! あたちをここからひきぬいてくだちゃい! こごえちにちょうでちゅ!!」

四女「おててかして」

三女「はい」

四女「よいしょ」ズポ

三女「たちゅかりまちた。もうほんきでちぬかと」

四女「あ、おねえちゃん」

三女「どうちまちた?」


四女「おしょら」

三女「あー……あかるくなってきまちたね」

四女「おこってもらえるかな?」

三女「ちょれはわからないでちゅ」

四女「しょっかぁ」ショボン

三女「けど……たぶんまたねないでまってくれていちょうでちゅね。ねえねちゃま」

四女「うん」




長女「ふわぁ~……んー」ノビー

長女「……ふぅ」

長女「……だれもいないですね」

『――っ――――』キャッキャッ

『――――!!』ウフフ

『――……っ――』ワイワイ

長女「みんなはおにわですか。よふかししたふたごちゃんはげんきですね」

長女「……」グゥー

長女「ごはんたべないと」

ガチャッ トテトテトテトテ

『わー! 可愛いワンちゃんですね! お名前はなんですか?』

次女「……ぽち」

『カルティーラちゃんですね! こんにちはカルティーラちゃーん』

次女「……ちがった」


長女「じじょちゃん。おはようございます」

次女「……おはようございます、ねーねさま」

長女「ふたごちゃんたちはそとにいってますよ」

次女「……おにーちゃんとおねーちゃんも」

長女「じじょちゃんはいかなくていいんですか?」

次女「……さむいのはにがて」

長女「ふふふ、ふゆのじじょちゃんはこたつむりのてれびっこですもんね」

次女「……ここあつくりましょーか?」

長女「わたしがつくります。じじょちゃんものみますか?」

次女「……ありがとうございます」

長女「では、すぐおつくりしますので、しばらくおまちください」ペコリ

次女「……おねがいします」ペコリ


トテトテトテ

ガチャ カチャカチャ バタン ガサ カパ サラサラサラ

長女「ふんふーんふふーん」

ピッ 『依然として刑務所を抜け出した脱獄犯グループの足取りは掴めて――』

ピッ 『「よくも私の旦那に手を出してくれたわね!! 泥棒猫」「なによ! あんただって――』

ピッ 『今日のゲストは舞台、ドラマで活躍中。現代を駆け抜ける超人気俳優――』

トポトポトポ トポトポトポ

長女「おめにかなうばんぐみがないみたいですね。はい、どうぞ」

ピッ 『逃走から一週間経った今も捜査は難航し、進展を見せないまま――』

次女「……つまらない」

長女「ばんぐみめぐりがいっしゅうしましたね。おひるはおとなのじかんですからしかたないですよ」

次女「……かまくら」

長女「?」

次女「……おにわにかまくらがありました」

長女「たぶんふたごちゃんですね。きょうもおひさまがおかおをだしてからふとんにもぐってましたからきっとそうです」


次女「……かぜひけばいいのに」ズズズ

長女「ふたごちゃんががんばるのは、じじょちゃんのためですよ」クスクス

次女「……わたしのため?」

長女「そうですよ」ニコ

次女「……?」

『にぃにはじっとちてて! だきつけよんじょ!』

『やー! ……このにぃにはかてるにぃに』

『やはり』

『おらよ』

『わあすごい』

『ひゃんっ?!』

『よんじょがかちゅがれてちまった!! よんじょー!! たちゅけにいくからまってるでちゅよ!! かいじゅうにぃにかくご!』

『ばけものにぃにめー!!』ジタバタ

『……言ってくれんなちび共が』

次女「……たぶんちがう」


長女「うーん……いまだけみればそうおもいますよ」ズズズ

次女「……ねーねさまは」

長女「なんですか?」

次女「……あまりわらわない」

長女「わらってますよ」ニコニコ

次女「……わらってないです」

長女「……じじょちゃんはするどいですね。ごまかせません」

次女「……おなやみ?」

長女「ちょっとしたなやみごとです。おにいさまとおねえさまのことです」

次女「……そうですか」

長女「はい。おんがえしのしかたがおもいうかばなくて」

次女「……おはなあつめる?」

長女「よろこんではくれますけど、それではたぶんだめです」

次女「……むずかしい」

長女「むずかしいです。おとなのせかいはたいへんです」


次女「……たいへんです」

次女「…………ねねうえ」

長女「はい。なんでしょうか?」

次女「……おまもりつくりました」

長女「とがってますね……?」

『見回りを強化などを徹底して住民の安全を――』

次女「……おとなのせかい……たいへんですから」

長女「そういうことでしたか。ふふ、ありがとうございます。だいじにさせていただきますね」ニコ

次女「えへへ」デレデレ

嫌な予感しかしないのは俺だけか?

支援

連日投稿の予定が1日空いてしまったすまぬ




ガチャッ

『――てっ!!』

『――ら!』

長女「かえってきましたね」

次女「……」ピク

長女「ココアじゅんびしないと」

次女「……まって」

長女「どうかしましたか?」


『ああ、そうかい!! 結局、女も四女と同じように見てきてたってことか!!』

『だからそうじゃないって! 四女ちゃんは悪気があって男君のこと!』

『よんじょはほんきじゃなかったんでちゅ! にぃににおこられるとおもってなくて――』


『ならなんだよ!! 悪意じゃなかったらあれは何だってんだ?!』

『だから!』

『ついてくんな!』

バタンッ!

『男君! 男君!』


長女「おねえさまとさんじょちゃん? よんじょちゃんがなにかしたんですか?」

次女「……よんじょはまだおにわ」

長女「ようすをみてきます。じじょちゃんはよんじょちゃんをおうちにいれてまっててください」

次女「……りょうかい」


『男君! 話しを聞いて!』

男「健常者から見たら些細な悪戯なんだろ?! 俺がつまんないことで目くじら立ててるだけに見えてんだろ?!」

『誰もそんなこと言ってないじゃない!』

男「思ってたさ! 引き篭もってばっかの俺に、いきなり母親が人の子供を押し付けるなんておかしいってな! 障害者を見世物にしたかっただけかよ!」

『それは男君が考えすぎだよ!』

男「今までやってきたことが全部そうなんだよ! なんで姉妹は女じゃなくて俺を雪合戦に参加させた?! なんで女は皿洗いすらも素直に俺にさせようとしない?!」

男「一人じゃ満足に家事もこなせない俺を憐み同情して惨めだと手を差し伸べてきた! お前らの目に映った俺はさぞかし可哀相な生物だっただろうな! なあ?!」

『私は男君に元気になってもらいたいだけで』

『おねえさま! なにがあったんですか?! よんじょちゃんがなにをしたんですか?!』

男「っち。余計なのが来やがった」

『おにいさま。おにいさまがわけもなくおこるかただとおもっていません。よんじょちゃんがおにいさまになにかしらのぶれいをはたらいたのだとおもいます』

『よんじょちゃんはたのしいことをしているとまわりがみえなくなるんです。かんがえられなくなっちゃうんです。ですから、おにいさまになにかいったのならば、それは』

男「四女は俺のことを化け物と言ったさ」

『な?!』


男「姉妹から見れば化け物だわな。片腕の無い人間は人で非ず。左腕だけぶらぶらさせて歩き回る様はさぞかし滑稽だったろ」

『そんなことないですよ! かたうでがなくてもおにいさまはちゃんとわたしたちのおせわをしてくれました! わたしはおにいさまにあこがれてました!』

男「憧れ……な。便利な言葉知ってんだな長女」

『おにいさま! ほんしんですよ!』

男「女、ちょうどいいな。長年近くで引き篭もりを眺め続けてきたんだ。もう十分だろ? むしろ見飽きたろ?」

『私は男君を見飽きるなんてことないよ。ずっと見ていきたい』

男「そうそうお目にかかれない珍獣だもんな。好奇心が疼くか」

『おにいさま! おねえさまはそんなつもりでいったわけでは――』

『……そうかもしれないね』

『おねえさまっ!』

『男君の腕が無くなったのは私のせいだから。だから私は男君じゃなくて右腕ばかり見てたかもしれない』

男「だよな」

『ごめんね。男君を男君として見てきたかって訊かれたらちょっと自信ないや』

男「このまま数日一緒に過ごすのもお互い辛いだろ? 予定早めるか?」

『そうだね。男君も私が傍にいるのは迷惑だって言ってたもんね』


男「成立だな」

『うん』

『よてい? なんのよていですか?』

『長女ちゃん』

『めぅっ』

『男君の言う事ちゃんと聞いてね。あと、できるお手伝いはよろしくね』

『おねえさま?』

『短い時間だったけど6人で暮らせたの楽しかったよ。ありがとうね』

『おねえさまどこにいくんですか? またあえるんですよね!?』

『ちょっとお家に帰るだけ。男君に呼ばれたらまた来るよ』

男「呼ばねえよ」

『えへへ、だってさ。じゃあね、長女ちゃん。男君……ばいばい』

男「じゃ」

『いやです! いかないでください!』

『おにいさま! わるいのはおねえさまだけじゃないです! わたしだっておにいさまのおてつだいをしました! わたしもおこってください!』


男「長女は俺が世話を看るように頼まれて預かってるんだ。追い出すわけにはいかない。女は窓から勝手に押しかけてきただけだ」

長女『そんなの……そんなのあんまりです! あんまりですよぉ、ひっく……ふええぇぇん!』

男「……」

カチャッ

三女「ねえねちゃまをなかちたな。ちね」

男「部屋の鍵閉めてんのにどっから入ってきやがった」

三女「にぃにのこうどうをよちょくちゅるなんてこきゅうちゅるよりもかんたんでちゅ。かぎをちめるまえにちんにゅうちただけでちゅ」

男「無許可で入ってくるなって言い渡してただろ」

三女「いいのこちゅことばはちょれだけでちゅか?」

男「安物エアガンに殺されるほど軟弱じゃないわ」

三女「にぃにはねぇねがきらいなんでちゅか?」

男「嫌いだ」

三女「うちょでちゅ。うちょちゅきはごうもんのはじまりでちゅ」

男「嘘じゃねーよ」

三女「きらいならなんでてをちゅないであるいたんでちゅか? どうちておなじベッドでねれるんでちゅか?」

男「俺と女の仲が険悪だったらお前らが気分よく過ごせないだろ。そのためだ」

三女「だったらいちにちめのよるにねぇねをおうちにかえちておくべきでちたね。あとぢゅけのりゆうになんかだまちゃれまちぇん」

男「お前も何にも分かってない。目先のことばかりしか見てない」

三女「むっ」

男「俺が四女に怒ったのは本当だ。年甲斐もなく本気で怒鳴ったのは悪く思ってる」

三女「ちょうなると、ねぇねがおこられていいどうりがないでちゅ。ねぇねにあやまりにいくべきでちゅ」

男「女を追い出したのは別の理由だよ。女の為だ」

三女「くるちいいいのがれでちゅね。どうかんがえてもやちゅあたりでちゅ」

男「疑うってなら説明してやる。女は俺が怪我をしたときから罪悪感からなんでも手伝うようになった。学校が終わればその足で欠かさず俺の家に通うようにもなった」

三女「ねぇねはやちゃちいでちゅね。にぃにはどげどうでちゅ」

男「優しければ幸せ者か?」

三女「ちあわちぇでなければひとにやちゃちくなんてできないでちゅ」

男「女は俺が理由で友達に捨てられてる。俺を見限っていれば孤立せずに、いじめにも遭わずにすんだ」

三女「……いじめられてたんでちゅか?」

男「どの集まりにも権力者がいるだろ? 女はそいつの遊びの誘いを断ったのをきっかけにハブられ始めたんだよ」


『あそんできなよ。おんなちゃんもなかまはずれにされちゃうよ』

『わたしは』

『おんなちゃんはまだ『にんげん』なんだから。ほら』

『わかった。いってくる』

『……』

トテトテトテ


『おんなちゃんはなにしてあそびたい?』

『おとこくんはばけものじゃないよ!! にんげんがおとこくんとあそんじゃいけないなら、わたしもばけものでいい!!』


『っ?!』

テッテッテッ

『ただいま』

『お、おんなちゃん?』


『おもってたこと、いってきたよ』

『いってくるってそっち? だけどおんなちゃん……』


『おい! おんなちゃんもばけもののなかまだってよ!』

『おんなちゃんもばけものなんだー!』


『みんなが』

『いいからさ、あそぼ? ね?』


男「なあ? 小中でお別れなら良かったのに運悪く高校も同じで嫌がらせを受け続けた。幸福か?」

男「姉妹が生きてきた年数よりも長い間、大勢に忌み嫌われ続けるのが幸せなのか? 俺を庇わなければ人並みの生活だって送れたはずなのに」

三女「ねぇねがえらんだんでちゅ。にぃにがちんぱいちゅることじゃない」

男「これからも俺が女に依存していけば、今度は自由を縛られた女が俺みたいに腐っていく。堕落した人生にこれ以上女を巻き込めばどうなるかなんて想像できないし、したくもない」

男「女にちゃんとした人生を歩んでもらうには足枷を外さなきゃいけないんだよ。これがお荷物以外のなんだってんだ」

三女「よわむち」

男「なんつった?」

三女「よわむちといいまちた」

男「言ってくれるな。じゃあ! どうすれば女が苦しまずにいられるんだよ!」

三女「ねぇねをくるちめてるのは、あたまのかたいにぃにでちゅ。めちゃきのことちゅらもれいちぇいにみれないにぃに、これからをかんがえるちかくはないでちゅ」

男「子供のくせに随分知ったような口をきくんだな。俺がすべきだったことを言ってみろよ」

三女「こどもにこたえをちゅぐにきくんでちゅか? こどもがこたえたらちゅなおにきくんでちゅか?」


男「俺よりもまともな考えだったら女に頭下げてやってもいい。だが、ただの綺麗事なら部屋から追い出す」

三女「なら、おちえるでちゅ。おにいちゃんがちゅるべきだったことは――」


プルプルボクハワルイチャクシンジャナイヨ


三女「でんわ?」

男「女からだ。いいから続き」

三女「でてからでちゅ。じゃないとはなちまちぇん」

男「っち」

ピッ

男「女だろ。忘れものか?」

『ごめんね。さっき伝えておきたかったんだけど、どうしても姉妹ちゃんに聞かれたくなくて電話したの』

男「用件は?」

『一度だけでもいいから男君に私の気持ち聞いてもらいたいです。長くなってもいい?』

男「……飽きたら途中で切る」

『それでもいいから聞いてほしいな』


男「俺も取り込み中だから手短に話してくれ」

『うん。男君は嫌だったみたいだけど、お手伝いさせてくれてありがとうございました』

男「お疲れ様。それだけか?」

『ううん。まだあるよ。私ね、お手伝いしてきて気付いたことがあるの』

男「なんだ」

『男君といるとすっごく疲れる。会えたなら嬉しくならなきゃいけないのにどうしても心が落ち着かないの。お手伝いしてるときなんか特に疲れたよ』

男「なら無理して来なければいいだろ。誰も頼んじゃいないんだ」

『どうしても男君に会いたかった。私のせいであまり外に出なくなった男君の手を掴んで引っ張り出したかった。それに一生懸命になりすぎたんだと思う』

男「俺はそんなの願っちゃいないんだ。世話焼きの心情なんか知るかよ」

『切なかった。寂しかった。悲しかった。辛かった。それで、ようやくさっき男君にお別れを言うことができて、苦しみから、男君から解放されて気持ちが楽になるはずなのになんでだろうね』


『私、泣いてるんだ』


男「なあ」

『何も言わないで。私がお話しを聞いてもらいたかっただけだから。変な事言われたら男君のこと忘れられなくなっちゃう』


男「……」

『なんか心にぽっかり穴が開いた感じ。たぶんここに男君が詰まってたんだよね。でも、穴が開いたならもう私の中に男君はいないんだ。すぐに忘れられると思う』

『言いたかったのはそれだけ。えへへ、最後まで迷惑かけてごめんね。それ――ふぇ? ひっ?! んむぅっ?! ガタガタガチャッ――』

男「女?」

『ドタドタドタ、ガタン……』

男「どうした?」

『――――』

男「大丈夫か? 女?」

『……電話中じゃねーか。タイミング悪いなちくしょう』

『早く切れよノーナシ』

『わーってるよ』

男「お前……誰だ?」

ブツ、ツーツー

男「女? 女?!」

三女「ねぇねがどうかちたでちゅか?」


男「……いや、なにも。そうだ、窓から」

シャーッ

男「ちょうど閉められやがったか……っ!」

三女「にぃに? ねぇねがどうちたでちゅか? なんていってたんでちゅか?」

男「何もない。とりあえず呼ばれたから、ちょっと女の家に行ってくる」

ガチャッ スタスタスタ

三女「にぃに! ちゅいていくでちゅよ!」

男「来るな。俺は二人だけで話がしたいんだ」

四女「でもちゅいてく!」

男「来るなって」

次女「……ついていく」ガシッ

三女「ねねうえ!」

男「あのな、急いでるんだからふざけんのは」

次女「……すこしはなれたぎんこうでごーとーじけんはっせいのそくほー」チラ

『住民の方々は外出を控え、極力自宅から出ないようにしてください! 現在、予定していた番組を中断し――』


三女「ぶっちょうなよのなかでちゅね」

男「だからなんだよ」

次女「……はんにんはとーそーちゅー」

三女「とうそうちゅう?」

次女「……とーそーけいろはふめーですが、はんにんはくろづくめでふくすーにんのぐるーぷ」

男「……それを俺に伝えてどうする」

次女「……あやしいひとたちがおねーちゃんのおうちにはいっていくのを、おにわでないていたねーねさまがみてた」

三女「にぃに……ねぇねとは……、ねぇねとはちゃんとおはなちがおわってからでんわをきったんでちゅよね?」

男「お前らは警察に電話して大人しく待ってろ。俺が帰ってくるまで何があっても家から出るな」

三女「ちょうじきにいってくだちゃい! でんわはどうなったんでちゅか!」

男「切られたんだよ! 知らない男の声がした後に女との電話は切れた! 俺はこれから女の家に行ってくるからお前らは大人しく待ってろ!」

次女「……っ」

三女「ちょうでちゅか……」

男「お前らが怪我したら俺の信用にも傷がつく。だから大人しく待っててくれ」

三女「…………ぷくく」


男「何笑ってんだよ三女」

三女「くくく、ぎゃくでちゅよにぃに。いえでおとなちくまちゅべきなのはにぃにのほうでちゅ」

次女「……さんじょ?」

男「なに?」

三女「おいだちたにぃにがねぇねをたちゅけにいく? むりでちゅよ」

男「それとこれは関係ないだろ! 女の命がかかってんだぞ! ふざけんのも大概に――」

三女「ふざけてるのはにぃにでちゅ! うでいっぽんがなんでちゅか!」

三女「うでのいっぽんがないだけでねぇねとむきあえてこれなかったおくびょうもののにぃにに、なにができるといいまちゅか!!」

男「なっ?!」

三女「『どうちゅればよかったか?』でちたっけ?! こたえてやりまちゅよ! にぃにはにげぢゅに、ねぇねのゆうきにこたえるべきでちた!」

三女「ねぇねがおともだちにちゅてられたんじゃない! ねぇねがおともだちをちゅてたんでちゅ! なぢぇだかわかりまちゅか?!」

三女「ねぇねにとって、にぃにはおともだちいじょうに、たいちぇちゅなちょんぢゃいだったからでちゅよ!!」

男「っ!」

三女「ねぇねはにぃにのためにゆうきをもっておともだちをちゅてた! じぶんのみをぎちぇいにちてなかまをまもるちゅよちゃをねぇねはもっていまちた!」

三女「にぃにはなんのかくごをもってねぇねをちゅてたんでちゅか?! ほんとうにねぇねをおもってのこうどうだったんでちゅか?!」


三女「ねぇねのおてちゅだいをおちぇっかいといいまちたが、にぃにがねぇねをおいだちたほんとうのりゆうは」

三女「おちぇっかいにみちぇかけたとうひでちゅよね?!」

男「分かったように言いやがって……っ!」

三女「よんじょ! くるでちゅ!」

『はっはい!』

タッタッタッタッ

四女「なんでしょうか……」グス

三女「まだないてたんでちゅか。なちゃけない」

四女「でも……わたし……ひっく」ウルウル

三女「よんじょはちぇんじょうでみぎうでをもがれたらどうちゅるでちゅか?」

四女「えっ!?」ピクッ

三女「たたかいのちゃいちゅうにみぎうでをうちなったら、どうちゅるかときいてるんでちゅ!!」

四女「うぅ……」チラ

三女「にぃにはかんけいない!」

四女「ひっ?! わ、わたしはかたうでがなくなってもじぇんしぇんでたたかいましゅ! いのちはてるまでたたかいつづけましゅ!」


三女「よち! よんじょはちゅいてこい!」

四女「……どこに……でしゅか?」

三女「ねぇねのいえでちゅ! くんれんのちぇいかをだちゅときがきたんでちゅ!」

四女「わたし……」

三女「ねぇねをたちゅけたくないんでちゅか?! なみだでひとがちゅくえるならちょこでぢゅっとないていればいいでちゅ!」

四女「……いきましゅ」

次女「……ついていく」

三女「ねねうえ、てだちゅけかんちゃちまちゅ」

男「だからお前らは家に」

三女「おにもちゅにぃにはまったりここあでものみながら、けいちゃちゅをよんでるがいいでちゅ」

男「なんだよそれ……」

三女「ちぇんちょうをちゅるのにたたかえないこまはふようでちゅ」

三女「よんじょ、ねねうえ。ねぇねのいのちをおびやかちゅふとどきものをこらちめにいきまちゅよ」


次女「……ぎょい」

四女「さー……いえっさー……」

タッタッタッ

ガチャ

バタンッ

四女「にぃに……しゃっきはごめんなしゃい」グスン

タッタッタッ

ガチャ

バタン

男「……何も知らずに好き勝手言いやがって。仕方ないだろ! それしかなかったんだから!!」

長女「おにいさま」グス

男「なんだよ長女。妹たちは行ったぞ」

長女「わたしはいまのおにいさまがきらいです。わたしがすきなのは、おねえさまにおようふくをかすおにいさまです」

長女「おねえさまとならんであるくおにいさまです。さむいおそとやふとんのなかで、おねえさまのてをやさしくにぎるおにいさまです」

長女「おねえさまはじぶんのことをやくびょうがみといっていました。おにいさまにもおねえさまがやくびょうがみにみえましたか?」


男「それは」

長女「おねえさまのからだにはせなかのほかにも、いくつかべつのきずがありました」

長女「ふたごちゃんがたずねたところ、くわしくはきけないようでしたが『おとこくんをちゃんとまもれたあかし』と、わらっていたそうです」

男「っ!」

長女「おにいさまのためにもういちどかんがえなおしてください。おねえさまのしあわせはほんとうにおにいさまとわかれることですか?」

長女「おにいさまもそれでしあわせになれるのですか?」

男「……お前らが俺の何を理解しているってんだ?」

長女「いつかおねえさまにもみはなされてしまうのがこわかった。ほかのおともだちとおなじように」

長女「おねえさまがおにいさまをもうすこししんようできていれば、おてつだいのしすぎでおこられることはありませんでした」

長女「おにいさまがおねえさまをもうすこししんようできていれば、こわがっておねえさまをおいだすことはありませんでした」

長女「おにいさまもおねえさまもちょっとぶきようなだけだったんです。わたしのめからはそうみえました」

長女「おにいさまがいま、みずからきけんにとびこもうとしているのは……」

男「人間の命がかかってるから」

長女「ではなくて、おねえさまをうしないたくないから……ですよね?」

男「……」


長女「わたしは、おにいさまがかくしていたきもちをぜんぶおにいさまにおしえてあげました。おにいさまは、わたしにもおにいさまじしんにも、うそはつけません」

長女「これでもまだおにいさまのおきもちがかわらないようであれば、おにいさまはおねえさまをたすけるしかくはありません」

長女「では、じじょちゃんたちがまっていますのでこれで」ペコリ

トテトテトテトテ

ガチャ…バタン

男「なんだよ……どいつもこいつも知った風な口をききやがって……」

男「外に出れば必ず誰かに指を差される生活が続いてきたんだ。恐れられ責められ罵倒され他人と違う体を持ったことを嫌でも意識させられて」

男「あいつらは知らなさ過ぎなんだよ。境遇だって心情だってどれをとっても俺をまったく理解しちゃいない」

男「それでも俺が間違ってるって言うなら。変えた答えが違った時はお前らがちゃんと責任取れよちくしょうが!」




男「有難く思え。荷物が来てやったぞ迷彩っ子」

四女「あ、にぃに……」

三女「きゅうえんぶっちがとうちゃくちたでちゅ」

男「ただの荷物から格上げか。警察には連絡を入れておいたが現状はどんな感じだ?」

三女「こっかのいぬになにができるでちゅか」

男「事件解決のエキスパートに何言ってやがんだ」

四女「ねえねしゃまはおちゃくみちゅうでしゅ」

男「お茶汲み?」

三女「ねえねちゃまはねねうえいじょうにけはいをころちゅのがうまいでちゅから、ねえねちゃまみぢゅからていちゃちゅちにいきまちた」

男「次女は隠れるのが上手いが、確かに長女はそんなこともしないで堂々と近付いてきてたな」

三女「あいてがひとりならてきじょうちちゃちゅはぢぇったいにちぇいこうちゅるんでちゅが……」

男「そういや、次女は?」

四女「ねねうえはねえねしゃまのしゃぽーとでしゅ」

男「大丈夫なんだろうな?」


三女「きっとだいじょうぶでちゅよ。あたちたちはねえねちゃまもねねうえもちんらいちてまちゅから」

四女「じぇったいにかえってきましゅ」

男「そうか。で、お前らは何を言い渡されてる?」

四女「ひとまじゅたいきでしゅ」

三女「ねねうえがねえねちゃまからことぢゅけをあぢゅかってくるよていでちゅ」

男「中の様子は聞いてるか?」

三女「まだなにも」

スタッ

次女「……おまたせ」

三女「おかえりなちゃい」

四女「ごぶじでなによりでしゅ」

次女「……むっ」

男「お前の妹たちよろしく命捨てにきてんだ。しかめっ面はやめろ」

次女「……あいてはじゅーきをぶそーしたごにんぐみ」

三女「ほんかくてきでちゅね」


男「配置も見てこれたか?」

次女「……おねーちゃんのおへやにふたり、うらぐちとげんかんのちかくにひとりずつ、だいにんぐにひとり」

三女「ちろーとでちゅね。たたかいのいろはもちらない」

男「強気になるのはいいけど、お前らと違って相手は本物を武装してることを忘れるなよ」

三女「わかってるでちゅよ」

次女「……わるいしらせ」

三女「ちょれはきかないとだめでちゅか?」

次女「……じゆう」

男「聞くに越したことはないだろ。じゃなきゃ次女がその知らせを持って帰ってきた意味がない」

四女「おきかしぇくだしゃい、ねねうえ」

次女「……ねーねさまもつかまった」

四女「しょんな……」

三女「やっぱり。ねねうえだけかえちてものかげにたいき……では、なかったんでちゅね」

男「長女からの伝令は?」

次女「……ない」


三女「ぜんぶのことがうまくはこぶとはおもっていなかったでちゅが……むぅ」

四女「どうしようおねえちゃん」

三女「ちゃいあくのじたいでちゅがこうなることはかくごちてまちた。ここからはねえねちゃまにかわってあたちが」

次女「……ねーねさまからわかれぎわにめっせーじ」

三女「ほう。ねねうえはなんといわれたでしゅか?」

次女「……『おにいさまならたすけにきてくれます』と」

男「……」

三女「ねえねちゃまはとんだおひとよちでちゅね」


四女「にぃにはちゃんときましたよ。ねえねしゃま」

三女「おにもちゅにちきをとらちてもだいじょうぶでちゅか?」

次女「……いろんなち」

四女「ねえねしゃまをしんじましゅ」

三女「よわむちおにもちゅ。もとい、にぃに」

男「おう」

三女「いのちあぢゅけまちゅよ」

男「まかせろ。長女も女も絶対に助け出してやる」



連日投稿とか言っておいて、二日目にしてこの失態
謝罪と反省を態度で表わす早起き投稿
まじですまんかった



男「地面に図を描いて説明する。うろ覚えだから違ったら次女が訂正を入れてくれ」

次女「……ぎょい」

男「家の周りを回ったなら知ってると思うが、玄関と俺たちがいる裏庭の出入り口は、ちょうど四角形の対角になってる」

三女「でちゅね」

男「裏口から玄関に向かって順に、キッチンとダイニングとリビングがあって……風呂場は裏口からまっすぐ続く廊下をキッチンと挟む感じで対面にあるはずだ」

男「2階に上がれる階段は玄関から入ればすぐ目の前。ここだな」

次女「……あってる」

男「次女。内部の様子を大雑把に全部書いてくれ。時間がないから丁寧になんかしなくていい」

次女「……ぎょい」

サラサラ

三女「これは……」

四女「だれもちかいをきょうゆうできていないじゃないでちゅか。なめられてまちゅね」

男「気は抜くな。お前らがしてきた遊びとはわけが違う。さっきどこの鍵を開けて外に出てきた?」

次女「……にかいのといれ」


男「そこから入り直して1階のどこかの窓を開けられるか? 風呂場か脱衣場が望ましい」

次女「……たやすい」

男「じゃあ、すぐに行ってきてくれ」

次女「……ぎょい」

男「それとだが、女の部屋からどんな会話や物音が聞こえてきても任務を最優先にな。いかなる場合でも戦場では上からの命令が絶対だ。情は捨てろ」

次女「…………いってきまちゅ」

シュバッ

三女「みなおちまちた。わかってるでちゅね、にぃに」

四女「そるじゃーでしゅ」

男「ソルジャーなんかなりたくもないわ。お前らが家に来なけりゃ俺はずっと平和主義者でいられたのに余計な事しやがって」

三女「きあいをいれただけでちゅがよけいでちたか?」

男「入れ方が中途半端だったせいで逃げたくて体が震えてんのに、頭の中は逆に目の前の問題でいっぱいになってやがんだよ」

男「お前らが俺を無理矢理変えたせいでこんな変な気持ちにならなきゃいけなくなったんだ。さっきの勝手な文句も含めて責任取れよ」

四女「しぇきにんなんて」

男「だから、その責任として最後まで俺に力を貸してくれ」


三女「いわれるまでもないでちゅ」

四女「にぃにもわたしたちにちからをかしてくだしゃい」

男「ありがとうな双子」

男「よし! 次女が戻ってきてからの作戦を伝える。ただし全行程を完遂するまでに許されたリミットは警察が女の家を囲むまで」

四女「けいしゃつがくるまで?」

男「追い詰められた犯人が最悪の場合どんな行動を取るかなんて、戦場を知り尽くした双子には言うまでもないだろ?」

四女「しょんなことじぇったいにしゃしぇましぇん!」

男「こうしてる間にも俺たちに残された猶予は刻々と減っている。作戦には撤退も仕切り直しもない! 何が何でも成功させろ!」

双子『さーいえっさーっ!』

男「四女」

四女「はい」

男「さっきは怒鳴って悪かった」

四女「にぃにのことなにもしらないであんなこと……わるいのはわたしのほうでしゅ……」

男「無い右腕を意識されるのを嫌いながら、俺自信が誰よりも他人の体と比べて僻んできてた。俺が四女に大声を出したのは、両腕振って無邪気に遊ぶ姿に嫉妬してただけだったのかもしれない」

四女「にぃに……」


男「三女の喝で目が覚めたわ。怖い思いさせてごめんな」

三女「あたちはねぐちゃれちたにぃにがみてられなかっただけでちゅ」

男「それでも感謝してる。ありがとう、三女」

三女「ふんっ」

タシュッ

次女「……おふろばをあけた」

四女「おかえりなしゃい」

三女「おちゅかれでちゅ」

男「次女の仕事の早さと的確さにはつくづく頭が下がる。時間の都合で作戦は1度しか教えられないが、絶対に聞き漏らしなんてすんじゃねえぞ」

姉妹『さーいえっさーっ!』




四女「ねえねしゃま、ねぇね。きもちのじゅんびはできました。いまからたしゅけにいきましゅよ」

四女「ふいうちのうらぐちからのとつげき。しっぱいきんしのいちどきり」

四女「ちゃんしゅはいちどあればじゅうぶんでしゅ!」

四女「いじゃ!」

バンッ!

脱獄犯a「だ、誰だ?!」

四女「わたしでしゅ!」

脱獄犯a「ああ? ガキが何の用事だ? 死にたくなければお家に帰れ。忠告だぞ」

四女「めいれいじゃなければきょうみないでしゅ!」シュダッ

脱獄犯a「年上の言う事が聞けないなら、ナイフの錆にでもなってもらおうか!」ブオッ

四女「おしょい」スサッ

スカッ

脱獄犯a「お?」

四女「おおぶりなうえにおしょいでしゅよ! ここがしぇんじょうだったらとっくに、しんでましゅ!」バッ


四女「てえええいっ!」グワッ

脱獄犯a「のわっ?!」


テシッ


脱獄犯a「……ここがどこだったらどうなってるって?」

四女「……な、なんで」フラリ

脱獄犯a「あのな? そんな華奢な体で何しても大人に敵うわけないだろ。一般常識をしっかり学んでからくればよかったのに」ガシッ

四女「かはっ……は、はなしぇっ! おろしぇえっ」バタバタ

脱獄犯a「可哀相だが大人とガキの力差なんてこんなもんだ。生まれ変わったら今度は遊びじゃなくて本気を出してもらえる様になろうな」ギリギリ

四女「あ……あしょび、でしゅ……か。ふ、ふふふ」

脱獄犯a「窮地になれば笑いたくもなるか。俺も最期は笑顔で看取って、がっ?!」

四女「あ、あたしたちが、しょこにたてばっ!」ゲシッ

脱獄犯a「ぐぇうっ、あぎっ……!」フラ

四女「うひゃっ!」ドサッ

脱獄犯a「か……あがっ……」ガクッ


四女「けほっけほっ……ふぅ。どこであろうとしぇんじょうに!」

脱獄犯a「が……っ……」バタ

四女「あなたのはいいんは、しぇんじょうにゆだんをもちこんだことでしゅ。こんどがあれば、ほんきできてくだしゃい」

脱獄犯a「…………」

四女「みごとななわしゃばきでのこうしゅでした。でもちょっとだけ、えんごがおしょかったでしゅ」

四女「しゃばんなだったらあたししんでました。ねねうえ」

次女「……おふろばからはちょっとだけとおまわり」

四女「まにあったからゆるしましゅ」

次女「……なわでしばらないと」

グルグルグルグル

次女「……めーさいじゃなければきけんになることもなかった」

四女「しょのけっちゃくはふゆをこしてから、おねえちゃんもまじぇてでしゅ」




三女「ふぅ……」




四女「ねねうえ、はなしがちがいましゅ」

次女「……よそくふのうのじたいはつきもの」

四女「しゃくしぇんはじぇったいでしゅけれど、これはどうしましょう? にぃにからは――」

脱獄犯b「おい、この鼠はどっから迷い込んできた?」

脱獄犯c「玄関は俺が見てた」

脱獄犯b「じゃあ裏口の馬鹿か」

四女「にたいにでのしゃくしぇん、きいてないでしゅよ?」



男『いいか? 双子と次女が極度の戦闘好きでも大人との体格差に勝てるわけがない』

男『確実に白星が欲しければ命を賭けた汚い手段でもなんでも使っていく』

男『四女を囮にして油断させ、相手の裏に回りこんだ次女が一気に刈り取る。見せかけの一対一で相手の力を過信させれば増援を呼ばれる心配はない』

男『だが、失敗すれば四女も次女も長女も女もタダじゃ済まない可能性が出てくる。何があってもしくじるなよ』


四女「なんてにぃにはいってましたけど……っ!」

四女「ねねうえ! うしろ!」

次女「……くっ」

脱獄犯c「だーっもうっ! すばしっこいなこいつら!」

脱獄犯b「ちょこまかと走り回りやがって!」

四女「ってい!」テシッ

脱獄犯b「っとと……それだけ?」

四女「むぅ……」

次女「……たちどまるのはだめっ!」ドゲシッ

四女「うべらっ!」ドカッ


四女「ねねうえのしゃぽーとがてあらいでしゅ」スリスリ

次女「……じごーじとく」

脱獄犯c「っち、せっかくのチャンスだったんだからちゃんと取り押さえておけよ」

脱獄犯b「だったらお前が捕まえてみろよ。まあ、ムキになって追いかけ回すよりも一回蹴り飛ばせば早く静かになるだろうけどな!」

脱獄犯c「頭いいな。オラッ!」ブンッ

次女「……はずれ」

脱獄犯b「アタリだよクソガキ!」ゲスッ

次女「かはっ?!」ドガッ

ガタタッ ドシャー

四女「ねねうえ! っつ!」

脱獄犯c「またスカした。迷彩鼠は反応いいな!」

脱獄犯b「こっちの黒鼠は抑えたぞ。二階連れてくか?」ギュー

次女「あぐぅ……っ!」ジタバタ

四女「ねねうえをはなしぇ!」

脱獄犯c「だったら力ずくで奪い返してみろよ」ガバッ


四女「っふ!」サッ

脱獄犯b「はっ! お前も単純なんな!」ガスッ

四女「ぐはぁっ!」

ガタンッ ドザサッ

四女「きゅぅ……」

次女「よん……じょっ!」

脱獄犯b「動きは機敏なのに一発当たれば伸びるとか……鍛え方おかしいんじゃねーの?」

脱獄犯c「あーあー、いらん手間ばっかかけさせやがって。こいつら連れてっても上の連中に嘲笑われる光景しか見えねーよ」

脱獄犯b「それでも一応は上に知らせるけどな。間抜け晒した脱獄犯aを辱めついでに連れて行きゃ、俺たちに降りかかる火の粉は減ってくれるだろ」

脱獄犯c「あはははは、そりゃ名案だ! よいしょっと、うっひょ! 気を失ってる迷彩鼠の軽いこと軽いこと」

脱獄犯b「お前それ米俵や小鼓じゃねーんだからよ。もっと丁寧に抱えてやんなよ」

脱獄犯c「肩に乗せんのが運びやすいんだからいいだろ」

次女「よんじょ! めをさまして!」

脱獄犯b「はいはい。お前ももうちょっと静かになろうな」ギリギリ

次女「が……ぅ……っ!」

7時でいったん終了
続きは、早くて12時間後くらいに


脱獄犯c「意識落とすのはいいけど加減間違えて新しい罪増やすなよ」

脱獄犯b「わーってるよ。豚箱ぶち込まれる前にいくらでもしてきたから寸止めの感覚はしっかり覚えてるぜ」

次女「……ょ……じょ」

脱獄犯d「さっきから騒がしいから下の様子を見に来れば……何相手に苦戦してんだよボケナス共。サツじゃねーならさっさと済ませろアホンダラ!」

脱獄犯c「んだよ、口悪いなお前は。もう終わったんだからぎゃあぎゃあうるさ――」

ドシュッ

脱獄犯c「く言う……んあ? なん」ガクッ

四女「いしきがあるかもしれないてきへいをかかえて、むぼうびにしぇなかをみしぇるとは、ぎょうてんでしゅ」

ズポッ

脱獄犯c「お前……なに、を……」フラッ

ドサッ スタッ

四女「うらぐちのへいしからもらっておいたないふがやくにたちました」

四女「『ぶきがなければげんちちょうたつ』は、おねえちゃんからからおしょわったしゃばいばるのてっしょくでしゅ」

脱獄犯d「おい! このクソガキ本気で始末するぞ!」

脱獄犯b「黒鼠の始末が終わってから手伝うわ」


四女「ねねうえ! うけとって!」ブンッ

脱獄犯b「のわっ?!」バッ

次女「っ!」パシッ

シュバッ

脱獄犯d「おい馬鹿! 手を離すな! そいつが逃げんだろアンポンタン!!」

脱獄犯b「ナイフが顔面に飛んできたら誰だって避けるだろ!」

スタッ

四女「だいじょうぶでしゅか?」

次女「げほっげほっ、……おんにきる」

四女「しょこにねころがってるへいしのないふもちょうだいしました」

四女「いまのわたしは、ちょうじぇつにきれるないふでしゅ」



三女「…………はぁ」




脱獄犯e「おい! さっきからどんだけ時間かかってんだ! ちゃっちゃと処理しろや!」

『変なガキんちょに襲われてんだよ! お前も手が空いてるなら加勢しろトーヘンボク!!』

脱獄犯e「意味わかんねーことヌかしてんじゃねーよ! たかがガキくらいお前らでどうにかしろ」

『たかがガキくらいだったらとっくに片付けてるわ!! そいつら縛ってんだからお前も降りてこいや!!』

長女「なんだかくうきがわるいですね」

女「長女ちゃん。静かにしてないとだめ」

脱獄犯e「おい給仕の嬢ちゃん。俺はすっごくイラついてるんだ。変な事言うと大事なお姉さんよりも先に処分しちまうかもしれねーから口は慎んどけ」

長女「でも、おへやがあつくてくるしいですよ」

パシンッ

女「長女ちゃん!」

長女「っ」キッ

脱獄犯e「なんだその目は。ベッドの端に縛り付けられてるお前とお前をいつでも殺せる俺。ちょっとは立場考えろよ?」

長女「あついのはあついです。くるしいのはくるしいです」

脱獄犯e「その痛みで反省できてれば後悔せずに済んだのにな。俺が下から戻ってきたら、お前如きすぐにどうにでも出来たことを身をもって教えてやるよ」スタスタスタ


脱獄犯e「あと数分の命、悔いの残らないように隣のお姉さんと仲良くお喋りして待ってろ」ガチャ

ガララ バタバタバタッ

女「ひゃっ! さむっ!」

脱獄犯e「あ?」

長女「やっぱりかーてんをゆらすふゆのかぜはつめたくてきもちがいいです」

脱獄犯e「……お前どうやって縄から抜けた」

長女「ですが、それとはかんけいなく、だんぼうきぐをつかいたいならていきてきなかんきはひつようですよね」

脱獄犯e「答えろ。どうやって抜けた」

長女「あったかいおへやでにさんかたんそがふえるとすっごくねむくなるそうです。おひるねのじかんはしあわせですけど、ねてばかりだとたいへんですね」

脱獄犯e「おいガキ」

長女「うーん、かーてんはじゃまです。あけちゃいましょう」ニギッ

シャッ

脱獄犯e「聞けやガキが!」ガシッ

ドカッ

長女「あぅっ!」


女「長女ちゃん?! わ、私になにしてもいいですから! だから長女ちゃんを離してください!」

脱獄犯e「元からお前は後でなんでもしてもらう予定だ。ただ教育がなってないこのガキはさすがに我慢ならねえ」

女「お願いですからその子に手は出さないでください!!」

長女「えい」チク

脱獄犯e「いてっ」ビクッ

長女「この、ちくっとした『くない』で、おなわをきりました。これは、じじょちゃんからわたされたたいせつなおまもりです」

脱獄犯e「舐め腐りやがって!!」

長女「まどってかぜさまだけのげんかんじゃないってしってましたか?」

脱獄犯e「さっきから戯言ばかりでうるせえんだよ!! 死ね!!」ブンッ

長女「ですよね?」


長女「おにーさん」


脱獄犯e「おに、ぐべぁっ?!」ドグシャッ

ドガッシャン!


男「ないすしゅーっ。我ながら惚れ惚れする両脚顔面スタンプだぜ」

女「男君!?」

男「おい、ペド野郎。前科と脱獄だけじゃ求刑物足りなくてとうとう幼女を押し倒したか?」

脱獄犯e「がはっ! あ、ぐぁ……」ボタボタ

男「鼻血まで出して興奮するとはどうしようもない末期患者じゃねえか。お前が本来突っ込まれるべきは鉄格子よりも格子窓のついた隔離施設だな」

女「どうして男君が?!」

男「姉妹に教えられたんだ。俺はハンデに怯えて女の……俺の気持ちから逃げてきた臆病者だってよ」

男「何でも知ってたつもりだったのに何も知らない子供に叱られる。それってすっごく悔しいじゃん」

脱獄犯e「お前……殺すっ! 絶対に殺してやる!」

男「出来ないことばかり一丁前に言うのはよくないな。弱虫が気取りたい為だけに恰好付けてても、所詮取り繕えるのは上っ面だけ」

男「見栄も見透かされるほどに薄っぺらかったら情けないことこの上ない。お前もそう思うだろ?」

脱獄犯e「うだうだ訳分かんねーことほざいてんじゃねえぞ!! 害者の分際で!!」

男「腕一本が無いからなんだ。腕一本無くても俺は戦える」ドスッ

脱獄犯e「ぎゃっ?!」

男「床に尻つけた三下に許される台詞は命乞いが相場と決まってんだ。威勢よく吠えたいならせめて立ち上がってからにしてくれや」ゲシゲシッ


脱獄犯e「あがっ! や、やめっ!!」

男「俺が三女ならお前なんかとっくに窓から投げ飛ばされてるからな。対峙したのが俺であることを心の底から感謝しとけ」

脱獄犯e「う、うわああああああっ!」ブンッ

男「っぶねーな。いきなり凶器振り回すんじゃねえよ」

脱獄犯e「お、おい! 下なんか放っておいていい! てめーらさっさと上がってこい!!」

男「さっきまで馬鹿にしてた腕無しに一変して増援要請なんて恥ずかしくないの?」テクテク

脱獄犯e「くるな! 俺に近寄るんじゃねえっ!!」ブンッ

男「おわっと。ただ振りまわすだけだと三女から素人呼ばわりされて大目玉もらうことになるから気を付けな」

脱獄犯e「どうした!? 早く上にこいよ!! 先にこっち片付けるつってんだろ!!」

ドタドタドタドタッ

「……おくれやしたあにき」

「もうしわけねえ! ちぃっとばかし、したのやつにてまどっちまっただけだでしゅどくしゃれちくしょー!」

脱獄犯e「遅ーよ頓馬共! 呼ばれたらすぐに……ひぃっ!?」ドサッ


男「驚くほど似てねーから」

次女「……おにーちゃんはからくち」

四女「でも、てまどったのはほんとうでしゅよ?」

男「そんで、お前が呼び出したかったのはこいつらで合ってるか?」

脱獄犯e「ちがっちがう! 違っ! わあああぁぁあっ!!」ブオンッ

四女「ひゅわっ?!」サッ

次女「むっ」スサッ

四女「あっ! にげ――」

脱獄犯e「ああああああああっ!!」

四女「にーに! あやつにげて」

男「そうだな」



ドタドタドタドタ

脱獄犯e「玄関どこだっ?! 早くそとに!!」ガチャン

ガシッ

脱獄犯e「は?」フワリ

ズドンッ!

脱獄犯e「うげらっ?!」

グイッ カランカラン

脱獄犯e「つぁっ?! なに!? なにがおきて?!」

グイッ カシャッ ガチャリッ

脱獄犯e「ひっ?!」


三女「なってないでちゅ。ぢぇんぢぇんなってないでちゅ。とびらのあけかた、なにふのにぎりかた、くみふちぇられたときのたいちょほう」

三女「どちろうとのくちぇにあたちをここまでまたちぇるとは、なかなかいいこんじょうちてるでちゅね。ちゃんぢゃんまたちぇといてこのていどちゅか」

三女「あたちがとりがーにゆびをかけてるこのじゅうは、あんたからうばったものでちゅ」グイッ

脱獄犯e「や、やめっ! たすけっ!」

三女「いまのあたちは、ちゃいこうにきぶんがわるくて、なおかちゅちゃいこうにきぶんがいいでちゅ」

三女「ふちぇてりょうてをあたまのうちろでくむか、あごちたからのうてんまでだんがんにくいちぎられるか……ちゅきなほうをえらばちぇてあげまちゅよ?」グイグイ

脱獄犯e「あ……あぁ……」

三女「……ふぅ。まちぶちぇばかりだときがぬけてちかたないでちゅね。だからたいきめいれいはあたちにあわないんでちゅよ」




『ただいま私たちは凶悪な脱獄犯グループを捕まえたとされる――』

女「連日物凄い報道陣の量だね。男君出ちゃえば?」

男「何もしてない俺にカメラ向けられても喋ることなんか何もないわ」

女「えー、男君だってすっごく恰好良かったのに?」

男「冗談はやめてくれ。生傷作ってニンジャーソルジャーと鳴いてた次女と四女の方が、俺よりもよっぽど恰好がつくだろ」

女「でも、この収集が付かない状況が続いたままで家から出られないと食料尽きちゃうよ」

男「英雄が籠城戦を強いられるなんて世も末だな。姉妹は?」

女「長女ちゃんは『つかまってただけですから』って、次女ちゃんは『……ねーねさまがでないならでません』と」

男「その二人の言葉はなんか予想できてた。双子もか?」

女「双子ちゃん? 三女ちゃんは『あくをこらちめたのにおこられたからなにもちないでちゅ!』だって。顔真っ赤にしてた」

男「警察が来るまでエアガンで脱獄犯取り押さえてたせいで、一番無茶したと勘違いした警察に折檻されたのを根に持ってたもんな」

男「もっと戦いたさそうだったけど俺が何もさせなかったし誰よりも叱られるしで不貞腐れたくなる気持ちも分かるわ」

女「四女ちゃんは」

男「言わなくていい。どうせ四女も次女と同じ病だろ?」

女「うん。『おねえちゃんがでないなら、わたしもでしゅ』の一点張り」

男「最前線で死闘を繰り広げた二人が姉依存で取材拒否とはどうなってんだ。電話も事情聴取やら表彰やらインタビューのお願いやらで引っ切り無しになり続けるし」

女「いっそ私が出ましょうか? 被害者だし」

男「そうしてくれ」

長女「でなくていですよ。ここあおまたせいたしました」コト

男「お、ありがと」

女「ありがとう長女ちゃん!」ムギュー

長女「めぅっ?!」

男「ずずず……出なくてもいいとは言うが、ココアはその袋で最後だからな」

長女「うむぅ?! むむむむむむんむむ!」

男「おい、誰か通訳」

次女「……『それはたいへんです!』と、おっしゃってます」シュタッ

男「本当に訳しやがった」

次女「……あいがあればふくろづめされたねーねさまのきもちもよみとれる」

男「愛があったらその状況は想定しねえよ」


次女「……むぅ」

女「そっか! 愛が足りなかったから部屋に閉じこもってた男君の気持ちが読み取れなかったんだね!」

男「今一度愛を確かめる為にお前を家から叩きだしてやるから外で俺の気持ち読み取ってこいや」

女「そのわりに言葉が冷たいのはなんでろう」

長女「んむぅ……ぷはっ」

女「あ、待て!」

長女「きゃー」パタパタ

女「ねえ? 次女ちゃんなら買い物頼んでも大丈夫そうじゃない?」ギュー

長女「やー」ジタバタ

男「無理だろ。テレビ見てると家の裏にもカメラが回りこんでるし、チャンネル回せば空撮にも力入れてるみたいだ」

女「それは確かに辛そうだね。隠れる場所がないか」

次女「……はっぽうふさがり」

男「だからいっそのこと、長女と次女がマイクの前でテキトーに何か言えば片付くのによ」

長女「むむんうむむんうむ」

次女「……ねーねさまもこういってるいじょーわたしも」


男「どう言ってんだよ」

次女「……むぅ」

女「足腰を鍛えぬいた双子ちゃんの連携に任せるのもいいかも」

次女「……ふたごはいえにいない」

女「え?」

男「いないってどこに――」


『あたちたちがちょこにたてば!』

『どこであろうとしぇんじょうに!』

『いざっ! げこくじょー!』

『女の子が二人でしょうか?! たった今、二階の窓から飛び降りてきました!!』


男・女「……」

次女「……かいものいけそー」

長女「んむぅっしょ、あっ! ふたごちゃん、てれびにでたみたいですね」

次女「……まどからひとのむれにとびこみました」


男「あれだけ頑なに拒んでいたのはいったいなんだったのかと、三女に小一時間問い詰めたい」

女「人混みに触発されちゃったんだろうね。カメラやマイクがバズーカやランチャーや手榴弾に見えちゃったとか」

男「ありえるけれども、もうそれ禁断症状の域だろ」

長女「じじょちゃん。めいれいです」

次女「……なんなりと」

長女「わたしもおくれていきますので、ふたごちゃんのほじょをおねがいします」

次女「……ぎょい」シュバッ

男「とうとう行くのか?」

長女「ふたごちゃんがたのしそうにしてますので、わたしもいきたくなっちゃいました。おにいさまたちもあとでちゃんときてくださいね」

女「後で?」

男「姉妹が行くならすぐに行くけど」

長女「えっとですね、おにいさま。おみみをかしてください」

女「むっ! 内緒話!」

男「嫉妬すんな」

長女「では、さきにおねえさまのおみみをおかしください」


女「私も?」

長女「です」

女「ん」

長女「では」コホン

長女「ごにょごにょ」チラ

女「うんうん」チラ

長女「ごにょごにょごにょごにょ」チラチラ

女「うんうん、んふ。うんうん」チラチラ

男「なにその含み笑い? というかお前らいちいちこっち見んな」

長女「です」

女「えー? いいけど負けないよ?」

長女「まだわからないですよ」

女「まあ……そうだね?」チラ

長女「です」チラ

男「何言われたの? 女は何て言われたの?」


女「秘密。次は男君の番だよ」

男「いや、その前に色々とお前らに」

長女「おにいさまもおみみをかしてください」

男「なんか釈然としないが、ほら」

長女「おにいさまはまだこわがってますよ」ボソ

男「は?」

長女「おわりです」ニコ

男「なんだそりゃ? それで終わり?」

長女「ですです」

男「それを小声で言いたかったの?」


長女「きかれてこまるのはおにいさまですから」

男「聞かれたら困るって、あー……」

女「あ、次女ちゃんたちが何か言ってる」


『ねえねちゃま! じゅんびはととのいまちた!』

『ぜんいんあたまのうしろでてをくましぇてふしぇしゃしぇてましゅ!』

『……そーかん』


男「あいつらなにやっちゃってんの?」

女「色んな意味ですごいよ双子ちゃん」

長女「では、じじょちゃんたちをまたせていますので、わたしはおさきにしつれいします」

ガチャ バタン

女「姉妹ちゃん行っちゃったね」

男「そうだな。……あのさ、女」

女「なあに?」

男「その……今まで優しくしてくれてたのに泣かせるようなこと言ってごめんな」


女「ううん。私も考え無しに行動してごめんね」

男「それは俺が捻くれてただけだから女は全然悪くない」

女「悪いよ。男君が私のことを庇ってくれても私がしてきたことには変わりないから。……でもね、私はずっと男君のことす、んんっ?!」

男「……ふぅ」

女「じゅ……順番台無しなんですけれども」プルプル

男「だって女が先走って俺の台詞を言おうとするから」

女「実力行使以外だっていくらでも方法はあったはずだよ! それに私だって言いた……そんな見つめられたら恥ずかしいよ男君」

男「女、好きだ」

女「……うん」

男「これからも色んな事手伝ってほしい。何もしてなくても隣にいてほしい。ずっと傍にいてほしい」

女「私も男君の右腕として働きたい」

男「それだと意味が変わってくるけどこれからもよろしくな」

女「うん!」

男「……それで、長女から何を言われたんだ? 負けないとか」

女「私が勝ったって言えば分かるかな?」


男「なるほどな。八百長だろそれ」

女「そう言われるとなんか嬉しいかも。私の勝ちが決まってたの?」

男「……じろじろ見んな恥ずかしい! 姉妹が待ってるからさっさと行くぞ!」クルリ

女「あっ! 待って!」ギュッ

男「どうした? 幼児に報道陣がひれ伏すシュールな映像をお茶の間に流し続ける気か?」

女「あ、あのね……その……もう一回ちゃんとやり直し……」ボソボソ

男「……」ポリポリ

女「いい……かな?」

男「……顔あげて」


女「んっ」

男「ん」

女「……」

男「……ん。これで満足したか?」

女「うん! 男君、大好きだよ! ずーっと一緒にいようね!」

男「ああ、片時も離れないでくれ」


『はるのにほい!!』

『めすのかほり!!』

『……ほうじゅんなけはい!!』

『ふたごちゃん?! じじょちゃん?! きゅうにどうしましたか?!』


男「よし! 姉妹を叱責しに行こうか!」

女「ふふふ、ほどほどにね」



おわり

クローズアップ現代を見て待機児童というのを知り、可哀想な可愛い幼女を書くつもりだった。
『幼女「いまからこのへやをしょくみんちにする」』を読んでほっこりしてたら、こんなの出来上がってた。

読みにくい平仮名の羅列ばかりですまんかった!

完結作をまとめるスレに乗せる場合って、urlをただコピって貼ればいいの?
何に関しても初心者ですまん

女と離れるまではよかった
あんな説教はいらない

途中で不穏な気配漂ってきてどうなるかと思ったがハッピーエンドになって良かった

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